IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2023-546919非多孔質基材上の印刷に適したインクジェットインク
<>
  • -非多孔質基材上の印刷に適したインクジェットインク 図1
  • -非多孔質基材上の印刷に適したインクジェットインク 図2
  • -非多孔質基材上の印刷に適したインクジェットインク 図3
  • -非多孔質基材上の印刷に適したインクジェットインク 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】非多孔質基材上の印刷に適したインクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20231031BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231031BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C09D11/36
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524326
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020056599
(87)【国際公開番号】W WO2022086516
(87)【国際公開日】2022-04-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】トリチャック トッド
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186BA09
2H186BA10
2H186DA08
2H186DA10
2H186DA12
2H186DA14
2H186DA18
2H186FB03
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB53
4J039AB08
4J039AD01
4J039AE02
4J039AE11
4J039AF05
4J039BC13
4J039BC18
4J039BE01
4J039CA07
4J039EA36
4J039EA41
4J039EA46
4J039FA01
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
(A)テルペン樹脂と、(B)(B1)メチルエチルケトンを含む溶媒系と、(C)1~12の親水性-親油性バランス(HLB)値を有するポリエーテル変性シリコーンとを含み、延長したデキャップ時間、速乾特性、及び高い画像鮮明度をもたらすことを特徴とするインクジェットインク。乾燥形態のインクジェットインクを含む印刷物、及びサーマルインクジェットプリントヘッドを用いて印刷画像を形成する方法も提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テルペン樹脂と、
(B)(B1)メチルエチルケトンを含む溶媒系と、
(C)1~12の親水性-親油性バランス(HLB)値を有するポリエーテル変性シリコーンと、
を含むインクジェットインク。
【請求項2】
前記テルペン樹脂(A)がα-ピネンから製造されるホモポリマーである、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記テルペン樹脂(A)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~10重量%の量で存在する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記メチルエチルケトン(B1)と前記テルペン樹脂(A)との重量比((B1):(A))が、10:1~100:1である、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記溶媒系(B)が(B2)アセトンを更に含む、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記メチルエチルケトン(B1)と前記アセトン(B2)との重量比((B1):(B2))が、1:1~5:1である、請求項5に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記インクジェットインクの総重量に基づいて少なくとも50重量%の総ケトン含有量を有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記溶媒系(B)が(B3)グリコールエーテルを更に含む、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
175℃より高い沸点を有する溶媒を実質的に含まない、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が、ペンダントグラフト構造を有するブロックコポリマーである、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が3~10のHLB値を有する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項12】
前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.001~4重量%の量で存在する、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項13】
(D)ロジン樹脂を更に含む、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項14】
前記ロジン樹脂(D)が水素添加酸性ロジンである、請求項13に記載のインクジェットインク。
【請求項15】
前記ロジン樹脂(D)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて10重量%までの量で存在する、請求項13に記載のインクジェットインク。
【請求項16】
(E)着色剤を更に含む、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項17】
基材と、前記基材上に配置された請求項1に記載のインクジェットインクの乾燥形態とを含む、印刷物。
【請求項18】
基材上に印刷画像を形成する方法であって、
サーマルインクジェットプリントヘッドを用いて請求項1に記載のインクジェットインクを前記基材上に塗布することと、
前記インクジェットインクを乾燥させることと、
を含む、方法。
【請求項19】
前記インクジェットインクが、30秒間以下の間空気に曝したままにすることによって乾燥される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記インクジェットインクを乾燥させるためにヒーターを使用しない、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクに関し、具体的には、(A)テルペン樹脂と、(B)(B1)メチルエチルケトンを含む溶媒系と、(C)1~12の親水性-親油性バランス(HLB)値を有するポリエーテル変性シリコーンとを含むインクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で提供される「背景技術」の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することを目的とするものである。この背景技術の項に記載されている範囲での本発明者らの研究、及び出願時に従来技術と見なされない可能性がある説明の態様は、本発明に対する従来技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0003】
サーマルインクジェット(TIJ)印刷は、連続式インクジェット法などの分野で競合する技術よりも低コストで高い印刷解像度を提供するので、印刷、コーディング、及びマーキングに望ましい技術である。サーマルインクジェット印刷プロセスでは、プリントカートリッジは一連の小さなチャンバを含み、各チャンバはヒーターを含み、インク溶媒の熱蒸発からインク液滴を生成する。噴射プロセスでは、抵抗器が急速に加熱されて蒸気泡を生成し(これが「バブルジェット」という言葉の由来である)、続いてオリフィスから液滴を吐出する。このプロセスは極めて効率的かつ再現可能であり、工業用グラフィックス用途のための最新のTIJプリントヘッドは、36kHz以上の周波数で4pL以下の容量の均一な液滴を生成することができる。
【0004】
しかしながら、サーマルインクジェット印刷は、経時的な信頼性の低さが問題となり得る。例えば、いくつかのインクジェットインクは、キャップされていないプリントヘッド内の空気への長期曝露による溶媒損失が、プリントヘッドノズルの目詰まり/詰まりをもたらし、したがって、経時的な信頼性の低いインク噴射及び画質浸食をもたらす、短いデキャップ時間に悩まされる。一方、キャップされていないプリントヘッド状況におけるそのような早期の溶媒損失を防止するために高沸点成分を有する特別な溶媒系を使用することは、インクが塗布された後の乾燥時間の延長を必要とし、したがって、全体的に非効率的な印刷プロセスとなる。そのため、長いデキャップ時間の必要性(遅い溶媒損失速度の必要性)と短い乾燥時間の必要性(速い溶媒損失速度の必要性)とを釣り合わせることはしばしば困難である。
【0005】
さらに、印刷システムがより多様な生産環境へとますます組み込まれるようになっているため、サーマルインクジェットインクのより高い汎用性に向けた需要が高まっている。例えば、サーマルインクジェットプリンタは、典型的には、多孔質/吸収性の基材上に非常に申し分なく印刷するが、ラベル、プラスチックボトル、金属缶、食品包装、及びブリスター包装(例えば、ワニスコート紙、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、及びアルミニウム)に共通するものなどのより「困難な」非多孔質基材への接着が問題となっている。接着性を改善する試みにおいて、バインダー樹脂を利用するいくつかのインクジェットインクシステムが報告されている。例えば、特許文献1(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、接着の改善のために、セルロースエステル樹脂、スルホンアミド変性エポキシ樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリウレタン、及びアクリル樹脂などのバインダー樹脂の使用を報告しており、特許文献2及び特許文献3(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、テルペンフェノール樹脂の使用を報告している。
【0006】
「困難な」基材への接着に対処することができたとしても、そのような非多孔質基材は、サーマルインクジェット用途に課題をもたらす。それというのも、サーマルインクジェットインク中の揮発性溶媒はインクに低い表面エネルギーを与えるため、塗布されたインクジェットインクの液滴は、非多孔質表面上では互いに混じり合うか又はにじみ合う傾向にあり、画像鮮明度が低下する。特に、コーディング用途及びマーキング用途は、個人情報、製造ロット、及び消費期限などの必須情報の印刷を含むため、これらの用途には粗悪な画像鮮明度は受け入れられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0251650号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0037269号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0291816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のことを考慮して、デキャップ時間が延長され、塗布されると迅速に乾燥し、所望の鮮明度を有する画像をもたらすインクジェットインクが必要とされている。
【0009】
したがって、本発明の1つの目的は、これらの基準を満たす新規なインクジェットインクを提供することである。
【0010】
本開示の別の目的は、インクジェットインクの乾燥形態を含む、新規な印刷物を提供することである。
【0011】
本開示の別の目的は、インクジェットインクを基材上に塗布し、乾燥させることによって、基材上に印刷画像を形成する新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これら及び他の目的は、以下の詳細な説明にあたって明らかになるであろうが、テルペン樹脂と、メチルエチルケトン(MEK)と、1~12のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーンとの組合せが、予期せぬことに、延長されたデキャップ時間、短い乾燥時間、及び「困難な」非多孔質基材上に印刷した場合でも高い画像鮮明度を特徴とするインクジェットインクを提供するという本発明者らの発見によって達成された。
【0013】
したがって、本発明は以下を提供する。
(1)(A)テルペン樹脂と、(B)(B1)メチルエチルケトンを含む溶媒系と、(C)1~12の親水性-親油性バランス(HLB)値を有するポリエーテル変性シリコーンとを含むインクジェットインク。
(2)前記テルペン樹脂(A)がα-ピネンから製造されるホモポリマーである、(1)に記載のインクジェットインク。
(3)前記テルペン樹脂(A)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~10重量%の量で存在する、(1)又は(2)に記載のインクジェットインク。
(4)前記メチルエチルケトン(B1)と前記テルペン樹脂(A)との重量比((B1):(A))が、10:1~100:1である、(1)~(3)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(5)前記溶媒系(B)が(B2)アセトンを更に含む、(1)~(4)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(6)前記メチルエチルケトン(B1)と前記アセトン(B2)との重量比((B1):(B2))が、1:1~5:1である、(5)に記載のインクジェットインク。
(7)前記インクジェットインクの総重量に基づいて少なくとも50重量%の総ケトン含有量を有する、(1)~(6)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(8)前記溶媒系(B)が(B3)グリコールエーテルを更に含む、(1)~(7)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(9)175℃より高い沸点を有する溶媒を実質的に含まない、(1)~(8)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(10)前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が、ペンダントグラフト構造を有するブロックコポリマーである、(1)~(9)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(11)前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が3~10のHLB値を有する、(1)~(10)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(12)前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.001~4重量%の量で存在する、(1)~(11)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(13)(D)ロジン樹脂を更に含む、(1)~(12)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(14)前記ロジン樹脂(D)が水素添加酸性ロジンである、(13)に記載のインクジェットインク。
(15)前記ロジン樹脂(D)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて10重量%までの量で存在する、(13)又は(14)に記載のインクジェットインク。
(16)(E)着色剤を更に含む、(1)~(15)のいずれかに記載のインクジェットインク。
(17)基材と、前記基材上に配置された(1)~(16)のいずれかに記載のインクジェットインクの乾燥形態とを含む、印刷物。
(18)基材上に印刷画像を形成する方法であって、サーマルインクジェットプリントヘッドを用いて(1)~(16)のいずれかに記載のインクジェットインクを前記基材上に塗布することと、前記インクジェットインクを乾燥させることとを含む、方法。
(19)前記インクジェットインクが、30秒間以下の間空気に曝されたままにすることによって乾燥される、(18)に記載の方法。
(20)前記インクジェットインクを乾燥させるためにヒーターを使用しない、(18)又は(19)に記載の方法。
【0014】
前述の段落は、概略紹介として提供されたものであって、以下の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。記載された実施形態は、更なる利点と一緒に、添付の図面と併せて考慮した場合に、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(上段)速乾性であるが不十分なデキャップ挙動に悩まされる低沸点成分を含む一般的なインクと、(中段)良好なデキャップ挙動を有するが乾燥が遅い高沸点成分を含む一般的なインクと、(下段)良好なデキャップ挙動及び速乾特性を兼ね備えた本発明によるインクとの間のデキャップ時間及び乾燥時間の試験比較を示す図である。
図2】「良好」評点(細線画像において線の欠落/不明瞭性がない)、「許容可能」評点(細線画像において1本又は2本の線の欠落/不明瞭性がある)、及び「不良」評点(細線画像において2本よりも多い線の欠落/不明瞭性がある)でのデキャップ時間の評価基準を示す図である。
図3】アルミ箔上に印刷された細線画像及び数字列の両方についての「G」評価(鮮明な画像、良好な分離)、「A」評価(少し広がりがあるが、線を認識することができ、適度な分離)、及び「NG」評価(広がりすぎており、線を認識することができず、不十分な分離)での画像鮮明度の評価基準を示す図である。
図4】普通(非コート)紙、ワニスコート紙、二軸延伸ポリプロピレン、ナイロン、及びアルミ箔上に印刷された数字列画像についての画像鮮明度の評価基準、並びに「不良」の画像鮮明度の評点を受けた一般的なインクと、「許容可能」の画像鮮明度の評点を受けたインク-Aと、「良好」の画像鮮明度の評点を受けたインク-Bとの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、他の実施形態が利用されてもよく、本明細書に開示される本実施形態の範囲から逸脱することなく、構造的及び動作的な変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0017】
「実質的に含まない」という語句は、特に明記しない限り、インクジェットインク中の特定の成分の量が、インクジェットインクの総重量に対して1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、更により好ましくは0.05重量%未満、なお更により好ましくは0重量%であることを表す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、続いて記載される事象(複数可)が起こる可能性もあり、若しくは起こらない可能性もあること、又は続いて記載される成分(複数可)が存在するかもしれず、若しくは存在しないかもしれない(例えば、0重量%)ことを意味する。
【0019】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個の炭素原子あり、そして22個まで、好ましくは20個まで、好ましくは18個まで、好ましくは12個まで、好ましくは8個までの炭素原子を有する、直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族フラグメントを指す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリルなどが挙げられ、ゲルベ型アルキル基(例えば、2-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルへプチル、2-ブチルオクチル、2-ペンチルノニル、2-ヘキシルデシル、2-ヘプチルウンデシル、2-オクチルドデシル、2-ノニルトリデシル、2-デシルテトラデシル、及び2-ウンデシルペンタデシル)を含むが、これらに限定されない。シクロアルキルは環化アルキル基の一種である。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、及びアダマンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「脂肪(fatty)」という用語は、水素及び概して8~22個の炭素原子から構成される長鎖(直鎖)疎水性部分を有し、完全飽和又は部分不飽和であってもよい化合物を表す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、芳香環(複数可)中に炭素のみを含む芳香族基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニルなどを指す。
【0022】
「アリールアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、それ自体が任意選択でアルキル基によって置換され得るアリール基(上記定義の通り)によって置換される直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル部分(上記定義の通り)を指し、その例としては、ベンジル、フェネチル、3-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、1-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、3-フェニルブチル、2-フェニルブチル、2-メチルベンジル、3-メチルベンジル、4-メチルベンジル、2,4-ジメチルベンジル、2-(4-エチルフェニル)エチル、3-(3-プロピルフェニル)プロピルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「(メタ)アクリレート」という用語は、本明細書では、アクリレート基及びメタクリレート基の両方を指すのに使用される。言い換えれば、この用語は、「メタ」が任意選択であると読まれるべきである。さらに、「(メタ)アクリレート」という用語は、一般に、アクリル酸系化合物及びアクリル酸エステル系化合物の両方を指すのに使用される。
【0024】
本明細書における「デキャップ挙動」という用語は、空気に長期間曝された場合に、インクジェットインクがプリントヘッドから容易に吐出する能力を意味する。インクジェットインクの「デキャップ時間」は、潜在的に印刷再開時の目詰まりや詰まりが原因でプリンタのノズルが適切に発射しなくなる前に、インクジェットプリントヘッドのキャップを外したままにしておくことができる時間量として測定される。一般的に、ノズル(複数可)は、溶媒の損失、インクの痂皮化、及び/又はノズル内及び/又はノズル周辺の様々なインク成分のコゲーションの結果としてノズル(複数可)内に形成される粘性プラグによって、目詰まりを起こす(すなわち、妨害される、減速される)、又は詰まる(すなわち、塞がれる、実質的に又は完全に閉鎖される)ことがある。ノズルが目詰まりした場合、ノズルのオリフィスを通して吐出されるインク液滴が誤った方向に向けられ、印刷品質に悪影響を及ぼす可能性がある。オリフィスが詰まると、実質的に又は完全に塞がれる。ノズルが詰まった結果、インク液滴は、影響を受けたノズルを通過することができなくなる場合がある。したがって、ノズルによる発射の失敗を測定する基準は、ノズルのオリフィスを通るインクの方向が多少なりとも間違っていること、又は完全に詰まっていることであり、これは、印刷画像を視覚的に検査することによって測定することができる。
【0025】
インクジェットインク
本開示は、周囲の温度及びプリントヘッドの動作温度の両方で適切な物理的及び化学的な安定性を有し、確実に噴射され、高い画像鮮明度をもたらし、基材上に塗布された後に依然として迅速に乾燥する(例えば、30秒間以下の乾燥時間)一方で、延長されたデキャップ時間を有するインクジェットインクを対象とする。本明細書に開示される成分の組み合わせは、驚くべきことに、迅速な乾燥時間と延長されたデキャップ時間との間のバランスをとる一方で、非多孔質基材(例えば、フィルム及び箔)上に鮮明な画像をもたらすことも見出された。
【0026】
本開示のインクジェットインクは、一般に、以下の成分:(A)テルペン樹脂と、(B)(B1)メチルエチルケトンを含む溶媒系と、(C)1~12のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーンとを含む。本開示のインクジェットインクはまた、任意選択で、溶媒系(B)の一部としての(B2)アセトン、溶媒系(B)の一部としての(B3)グリコールエーテル、(D)ロジン樹脂、(E)着色剤、及び(F)添加剤の1つ以上も含み得る。
【0027】
(A)テルペン樹脂
本開示のテルペン樹脂(A)は、テルペン樹脂(A)の全構成単位(100重量%)に基づいて、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、更により好ましくは少なくとも99.5重量%、なお更により好ましくは100重量%の重合可能なテルペン(複数可)から誘導される構成単位を有するオリゴマー又はポリマーを指す。テルペンは、基本骨格(Cを有し、式中、pは、連続して頭尾結合されたイソプレン単位の数を示す正の整数である。例えば、ヘミテルペン(p=1)は、C骨格を有し、モノテルペン(p=2)は、C1016骨格を有し、セスキテルペン(p=3)は、C1524骨格を有するなどである。
【0028】
いくつかの実施形態において、テルペン樹脂(A)は、モノテルペンモノマー単位に基づいている。モノテルペンは、直鎖モノテルペン(例えば、ミルセン、オシメンなど)、単環式モノテルペン(例えば、リモネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピノレンなど)、又は二環式モノテルペン(例えば、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、α-フェンチェン、カンフェンなど)(それらの様々な立体異性体を含む)、及びそれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態において、モノテルペンは、単環式モノテルペンであり、リモネンが特に好ましい。好ましい実施形態において、モノテルペンは、二環式モノテルペンであり、特に好ましくは、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、及びカンフェン、より好ましくは、α-ピネン及び/又はβ-ピネン、更により好ましくは、α-ピネンである。
【0029】
好ましいインクジェットインクは、α-ピネンの重合又はオリゴマー化から製造されるテルペン樹脂(A)が配合されたものである。当業者に知られているように、このようなテルペン樹脂は、例えば、α-ピネンモノマーの(溶液中での)触媒重合/オリゴマー化によって容易に得ることができ、このモノマーは、典型的には、テレビンノキ(Pistacia terebinthus)、フランスカイガンショウ(Pinus pinaster)、アレッポマツ(Pinus halepensis)、バビショウ(Pinus massoniana)、メルクシマツ(Pinus merkusii)、ダイオウマツ(Pinus palustris)、テーダマツ(Pinus taeda)、及びポンデローサマツ(Pinus ponderosa)などのマツから得られるゴム及び硫酸化テレピン油の分別蒸留から誘導される。
【0030】
好ましい実施形態において、テルペン樹脂(A)は、テルペン樹脂(A)の全構成単位(100重量%)に基づいて、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、更により好ましくは少なくとも99.5重量%、なお更により好ましくは100重量%のα-ピネン含有量(α-ピネンから誘導される構成単位)を有する、α-ピネンから製造されるホモポリマーである。本開示のテルペン樹脂(A)は、α-テルペンモノマーから誘導される構成単位以外の他の構成単位を少量含み得るが、他の(例えば、非テルペン系の)構成単位の量は、テルペン樹脂(A)の全構成単位(100重量%)に基づいて、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満、更により好ましくは0.5重量%未満、なお更により好ましくは0重量%である。
【0031】
好ましい実施形態において、テルペン樹脂(A)は、テルペン樹脂(A)の全構成単位(100重量%)に基づいて、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも96重量%、より好ましくは少なくとも97重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、更により好ましくは少なくとも99.5重量%、なお更により好ましくは100重量%のβ-ピネン含有量(β-ピネンから誘導される構成単位)を有する、β-ピネンから製造されるホモポリマーである。本開示のテルペン樹脂(A)は、β-テルペンモノマーから誘導される構成単位以外の他の構成単位を少量含み得るが、他の(例えば、非テルペン系の)構成単位の量は、テルペン樹脂(A)の全構成単位(100重量%)に基づいて、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満、更により好ましくは0.5重量%未満、なお更により好ましくは0重量%である。
【0032】
テルペン樹脂(A)のポリマー形態及びオリゴマー形態の両方が、それらの組み合わせを含めて、本明細書中で使用され得る。典型的には、少なくとも330g/mol、好ましくは少なくとも340g/mol、好ましくは少なくとも400g/mol、好ましくは少なくとも450g/mol、好ましくは少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも550g/mol、より好ましくは少なくとも600g/mol、より好ましくは少なくとも650g/mol、更により好ましくは少なくとも700g/mol、なお更により好ましくは少なくとも750g/molであり、そして1500g/molまで、好ましくは1300g/molまで、より好ましくは1100g/molまで、より好ましくは1000g/molまで、より好ましくは900g/molまで、更により好ましくは800g/molまで、なお更により好ましくは790g/molまでの数平均分子量(M)を有するテルペン樹脂(A)が本明細書で使用される。
【0033】
テルペン樹脂(A)は、室温で固体又は液体の形態であり得る。本発明において利用されるテルペン樹脂(A)が固体の形態である場合、これはその軟化点(SP)に基づいて、例えば環球式軟化点法に従って分類することができる。環球式軟化点は、サンプルをグリセロール浴中で所定の速度で加熱しながら、水平リング内に保持されたサンプルの円板が鋼球の重量下で1インチ(25.4mm)の距離だけ下方に押し下げられる温度として定義される(例えば、JIS B7410に準拠し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、テルペン樹脂(A)は、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも40℃、好ましくは少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも115℃、より好ましくは少なくとも120℃、更により好ましくは少なくとも125℃、なお更により好ましくは少なくとも130℃であり、そして160℃まで、好ましくは155℃まで、好ましくは150℃まで、好ましくは145℃まで、好ましくは140℃まで、好ましくは138℃まで、好ましくは135℃までの軟化点を有する。
【0034】
臭素価は、100グラムのサンプルによって吸収されたグラム単位の臭素(Br)の量であり、サンプルの不飽和度の指標である。いくつかの実施形態において、インクジェットインクに使用されるテルペン樹脂(A)は、少なくとも12、好ましくは少なくとも15、好ましくは少なくとも19、好ましくは少なくとも22、好ましくは少なくとも25、好ましくは少なくとも26、より好ましくは少なくとも27であり、そして35まで、好ましくは34まで、より好ましくは33まで、より好ましくは32まで、更により好ましくは31まで、なお更により好ましくは30までの臭素価を有するが、これらの値を上回る又は下回る臭素価を有するテルペン樹脂(A)(例えば、水素化テルペン樹脂(A))もまた、開示したインクジェットインクに使用され得る。
【0035】
テルペン樹脂(A)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、更により好ましくは少なくとも2.5重量%、なお更により好ましくは少なくとも3重量%であり、そして10重量%まで、好ましくは9重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは7重量%まで、より好ましくは6重量%まで、更により好ましくは5重量%まで、なお更により好ましくは4重量%までの量でインクジェットインク中に存在し得る。
【0036】
本開示のインクジェットインクは、1種類のテルペン樹脂(A)を用いて、又は2種類以上のテルペン樹脂(A)の組み合わせが配合され得る。本明細書のインクジェットインクに単独で又は組み合わせて使用され得るテルペン樹脂(A)の例としては、それぞれ高純度のα-ピネンから製造されるピノヴァ社(Pinova)から入手可能なPICCOLYTE A115(環球式SP=112~118℃、臭素価=31.5)、PICCOLYTE A125(環球式SP=122~128℃、臭素価=31.5)、PICCOLYTE A135(環球式SP=132~138℃、臭素価=27)、PICCOLYTE A135 PLUS(環球式SP=132~138℃)、PICCOLYTE AO PLUS(オリゴマー、液体)、及びPINOVA RESIN 2495(環球式SP=132~138℃、臭素価=27)、並びにピノヴァ社から入手可能なPICCOLYTE S25(高純度β-ピネンから製造、環球式SP=22~28℃、臭素価19)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
テルペン樹脂(A)が配合されるインクジェットインクは、テルペン樹脂(A)が他のバインダー樹脂/粘着付与剤/接着物質(例えば、DERTOPHENE Tなどのテルペンフェノール樹脂、ロジン樹脂、例えばFORAL AXなどの水素添加酸性ロジン、それぞれピノヴァ社などから入手可能)で置き換えられた、デキャップ後30秒間以内に発生するノズルの不吐出を伴う不十分な(すなわち、短い)デキャップ時間に悩まされる傾向にあるインクジェットインク(例えば、表2及び表7、例13及び例14を参照)と比較して、優れた乾燥時間及びデキャップ時間を有することが予想外に発見された(例えば、表1及び表6、例3~例11を参照)。
【0038】
(B)溶媒系
溶媒系インクを利用する多くの印刷プロセスにおいて、特にサーマルインクジェット印刷において、適切な溶媒系の選択は、印刷プロセスの信頼性、印刷されたインク産物の特性/外観、及び全体的な印刷プロセス効率に影響を及ぼし得る。例えば、サーマルインクジェット印刷では、溶媒系の選択は、1)噴射プロセス中の気泡形成を助けて、信頼性のあるインク噴射をもたらし、2)溶媒(複数可)と様々なインクジェットインク成分との間の相互作用動態を変化させることによってインクジェットインクの安定性/揮発性に影響を与え、したがってデキャップ挙動、コゲーション、及び/又は液滴軌道に影響を与え、3)溶媒系と他のインクジェットインク成分との間の相互作用力によって、溶媒(複数可)が乾燥後にもはや存在しない場合も、又はより少ない量で存在する場合も、印刷画像の接着、摩擦及び引っかき抵抗性、並びに光学濃度特性に影響を与え、及び/又は4)塗布後の乾燥時間又は塗布したインクを乾燥させるのに必要な装置に影響を与える場合がある。
【0039】
上記に照らして、本明細書において特に好ましいのは、(B1)メチルエチルケトン(MEK)を含む溶媒系(B)を含むインクジェットインクである。メチルエチルケトン(B1)を含むことは、インクジェットインク成分の溶媒和を助け、乾燥時間の目的のために許容可能な揮発性を有するインクジェットインクを提供し得る。メチルエチルケトン(B1)が、本明細書のインクジェットインクに使用される溶媒系の大部分を構成すること、すなわち、MEK(B1)が、溶媒系(B)の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、更により好ましくは少なくとも70重量%、なお更により好ましくは少なくとも75重量%であり、そして100重量%まで、好ましくは95重量%まで、より好ましくは90重量%まで、更により好ましくは85重量%まで、なお更により好ましくは80重量%までを構成することが好ましい。いくつかの実施形態において、メチルエチルケトン(B1)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも55重量%、更により好ましくは少なくとも60重量%、なお更により好ましくは少なくとも65重量%であり、そして90重量%まで、好ましくは88重量%まで、好ましくは85重量%まで、より好ましくは80重量%まで、より好ましくは75重量%まで、なお更により好ましくは70重量%まで、なお更により好ましくは67重量%までの量でインクジェットインク中に存在する。
【0040】
いくつかの実施形態において、メチルエチルケトン(B1)とテルペン樹脂(A)との重量比((B1):(A))は、少なくとも10:1、好ましくは少なくとも14:1、好ましくは少なくとも16:1、好ましくは少なくとも18:1、好ましくは少なくとも20:1、より好ましくは少なくとも22:1、更により好ましくは少なくとも24:1、なお更により好ましくは少なくとも26:1であり、そして100:1まで、好ましくは80:1まで、好ましくは60:1まで、好ましくは50:1まで、好ましくは40:1まで、より好ましくは35:1まで、更により好ましくは34:1まで、なお更により好ましくは32:1までである。
【0041】
メチルエチルケトン(B1)以外に、3~6個の炭素原子を含むものなどの追加のケトン溶媒が、本明細書の溶媒系(B)中に任意選択で含まれていてもよい。(非MEK)ケトン溶媒の例としては、アセトン、3-ペンタノン、メチルn-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、インクジェットインクは、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも62重量%、更に好ましくは少なくとも64重量%、なお更により好ましくは少なくとも66重量%であり、そして95重量%まで、好ましくは92重量%まで、より好ましくは90重量%まで、より好ましくは88重量%まで、更により好ましくは86重量%まで、なお更により好ましくは84重量%までの総ケトン含有量を有する。上記の「総ケトン含有量」は、インクジェットインクに使用されるケトン系溶媒の総量を指し、インクジェットインクの総重量に基づく百分率として表される。したがって、MEK(B1)が追加のケトン溶媒を一切用いることなく単独で使用される場合、総ケトン含有量は、インクジェットインク中に存在するMEK(B1)の量を表し、MEK(B1)が1つ以上の追加のケトン(例えば、アセトン)と組み合わせて使用される場合、総ケトン含有量は、MEK(B1)に追加のケトン溶媒(複数可)を足した総合計を表す。
【0042】
特に、溶媒系(B)が(B2)アセトンを更に含む場合、極めて速い乾燥時間及び有利なデキャップ時間を実現することができる。例えば、アセトン(B2)を含むように配合された場合、インクジェットインクは、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、更により好ましくは少なくとも15重量%、なお更により好ましくは少なくとも20重量%であり、そして40重量%まで、好ましくは35重量%まで、より好ましくは30重量%まで、更により好ましくは25重量%までのアセトン(B2)含有量を有し得る。
【0043】
アセトン(B2)が存在する場合、メチルエチルケトン(B1)とアセトン(B2)との重量比は、所望の乾燥時間及びデキャップ時間に対して調整され得るが、典型的には、メチルエチルケトン(B1)とアセトン(B2)との重量比((B1):(B2))は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも2:1、好ましくは少なくとも3:1、好ましくは少なくとも3.2:1であり、そして5:1まで、好ましくは4:1まで、好ましくは3.5:1までの範囲である。
【0044】
溶媒系(B)はまた、インクの乾燥時間を実質的に悪化させることなくデキャップ性能を更に改善するために、任意選択でグリコールエーテル(B3)を含んでいてもよい。グリコールエーテル(B3)は、モノアルキルエーテル、ジアルキルエーテル、モノアルキルモノエステルエーテル、又はそれらの組み合わせであり得る。好ましい実施形態において、グリコールエーテル(B3)は、モノアルキルエーテルであり、すなわち、1つの遊離水酸基を含む。グリコールエーテル(B3)は、好ましくは少なくとも3個の炭素原子、より好ましくは少なくとも4個の炭素原子であり、そして12個までの炭素原子、好ましくは10個までの炭素原子、より好ましくは8個までの炭素原子を含み得る。開示されたインクジェットインクに任意選択で含まれ得るグリコールエーテル(B3)の許容可能な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
使用される場合、グリコールエーテル(B3)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、更により好ましくは少なくとも15重量%、なお更により好ましくは少なくとも20重量%であり、そして40重量%まで、好ましくは35重量%まで、より好ましくは30重量%まで、更により好ましくは25重量%までの量でインクジェットインク中に存在し得る。
【0046】
乾燥時間を大幅に延長することなくインクジェットインクのデキャップ性能を改善するという観点で、好ましいグリコールエーテル(B3)は、214℃未満、好ましくは200℃未満、好ましくは190℃未満、好ましくは180℃未満、より好ましくは175℃未満、より好ましくは170℃未満、より好ましくは165℃未満、より好ましくは160℃未満、更により好ましくは155℃未満、なお更により好ましくは150℃未満の沸点(標準圧力で)を有するものである。
【0047】
上記に照らして、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(これらの混合物を含む)からなる群から選択されるグリコールエーテル(B3)が好ましく、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルが特に好ましい。
【0048】
メチルエチルケトン(B1)、及び任意選択で追加のケトン溶媒(例えば、アセトン(B2))及び/又はグリコールエーテル(B3)に加えて、本明細書の溶媒系(B)の一部として任意選択で利用され得る他の有機溶媒としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
- メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどの1~8個の炭素原子を含む低級アルコール;
- エーテル(非グリコールエーテル)、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフランなどの4~8個の炭素原子を含むエーテル;
- 3~8個の炭素原子を有するものを含むエステル、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート;
- 及び同等物、並びにそれらの2種以上の混合物。
【0049】
存在する場合、追加の有機溶媒は、インクジェットインクの総重量に基づいて、20重量%まで、好ましくは15重量%まで、好ましくは10重量%まで、好ましくは5重量%まで、より好ましくは4重量%まで、更により好ましくは2重量%まで、なお更により好ましくは1重量%までの量で含まれ得る。
【0050】
一般に、好ましいインクジェットインクは、175℃より高い沸点を有する溶媒、好ましくは170℃より高い沸点を有する溶媒、好ましくは165℃より高い沸点を有する溶媒、より好ましくは160℃より高い沸点を有する溶媒、更により好ましくは155℃より高い沸点を有する溶媒を実質的に含まないものである。
【0051】
いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、低級アルコール溶媒(1~8個の炭素原子を有する)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、エーテル溶媒(グリコールエーテル(B3)以外)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、グリコールエーテル(B3)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、ケトン溶媒(MEK以外)、特にアセトン(B2)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、エステル溶媒を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、追加の有機溶媒、すなわち、メチルエチルケトン(B1)、追加のケトン溶媒(例えば、アセトン(B2))、及びグリコールエーテル(B3)以外の有機溶媒を実質的に含まない。好ましい実施形態において、溶媒系(B)は、メチルエチルケトン(B1)と、アセトン(B2)又はグリコールエーテル(B3)のうちの1つとからなる。
【0052】
好ましい実施形態では、本開示のインクジェットインクは実質的に非水性であり、これは、周囲条件に由来する偶発的な量の水分であり得るもの以外の水がインクジェットインクに添加されないことを意味する。このような場合、インクジェットインクは、インクジェットインクの総重量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0重量%の水を有し得る。
【0053】
ポリエーテル変性シリコーン(C)
本開示のインクジェットインクは、特定の界面活性剤、すなわちポリエーテル変性シリコーン(C)が配合される。特に、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、更により好ましくは少なくとも4.5、なお更により好ましくは少なくとも5であり、そして12まで、好ましくは11まで、好ましくは10まで、好ましくは9まで、より好ましくは8まで、更により好ましくは7まで、なお更により好ましくは6までのグリフィン法による親水-親油バランス(HLB)値を有するポリエーテル変性シリコーン(C)が使用される場合に、適切な画像鮮明度が達成可能である。
【0054】
開示されたインクジェットインクにおいて利用されるポリエーテル変性シリコーン(C)は、好ましくは、(i)シリコーン骨格(主鎖)と、(ii)前記シリコーン骨格に結合された1つ以上のポリエーテル側鎖と、任意選択で(iii)前記シリコーン骨格に結合された1つ以上の脂肪アルキル側鎖とを含む又はこれらからなる、ペンダントグラフト構造を有するブロックコポリマーである。したがって、少なくとも1つのポリエーテル側鎖がシリコーン骨格に結合されている限り、追加の側鎖型(例えば、脂肪アルキル側鎖)がまたシリコーン骨格に結合されているかどうかにかかわらず、この材料は「ポリエーテル変性シリコーン(C)」の定義を満たす。好ましくは、ポリエーテル変性シリコーン(C)においては、ポリエーテル側鎖(複数可)及び任意選択で脂肪アルキル側鎖(複数可)以外の他の側鎖が存在しない。本明細書で言及される場合、「側鎖」は、(例えばA-B-A構造の線状ブロックコポリマーの場合がそうであるような)シリコーン骨格の続きではなく、ペンダントグラフトとしてシリコーン骨格(主鎖)に結合され、それにより、共有結合を介してシリコーン骨格から延びる側鎖とのシリコーン骨格上の分岐点を形成する。好ましいポリエーテル変性シリコーン(C)は、非加水分解性のもの、すなわち、側鎖がSi-C結合を介してシリコーン骨格に結合されているものである。
【0055】
<(i)シリコーン骨格>シリコーン骨格は、適切に官能化されたシランの重合及び/又は重縮合から形成することができ、かつポリシロキサン骨格構造(酸素原子を介してケイ素原子が繋ぎ合わされている;-Si-O-Si-)を有し、アルキル基、アリール基、及び/又はアリールアルキル基が(四価)ケイ素原子に直接結合されている、様々な分子量の線状構造又は分岐構造のあらゆる有機ケイ素ポリマー又はオリゴマー(ポリオルガノシロキサン)に基づき得る。例えば、ポリオルガノシロキサン骨格は、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)骨格(この骨格中の各ケイ素原子は2つのメチル基に直接結合されている)、ポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルフェニルシロキサン)骨格、ポリ(ジメチルシロキサン-co-ジフェニルシロキサン)骨格、及びポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルアルキルシロキサン)骨格を含むがこれらに限定されない線状構造、又はポリジメチルシロキシエチルジメチコンが具体的に挙げられる分岐構造であり得る。
【0056】
<(ii)ポリエーテル側鎖>ポリエーテル変性シリコーン(C)は、ポリアルキレングリコールオリゴマー又はポリマー、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及び/又はブチレンオキシド(BO)が最も好ましいものである1つ以上のアルキレンオキシドの開環重合から形成されるもの(それらのブロックコポリマーなどのコポリマーを含む)に基づく、少なくとも1つのポリエーテル側鎖を含む。好ましくは、ポリエーテル側鎖は、シリコーン骨格から延びるポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールコポリマーであり、より好ましくは、ポリエーテル側鎖は、ポリエチレングリコール側鎖(エチレンオキシド(EO)のみから形成される)である。
【0057】
ポリエーテル変性シリコーン(C)のHLB値が上記で示される範囲内に留まる限り、様々な長さのポリエーテル側鎖(複数可)を利用することができる。典型的には、側鎖当たりのアルキレンオキシド単位のモル数は、少なくとも2mol、好ましくは少なくとも3mol、より好ましくは少なくとも4mol、更により好ましくは少なくとも5mol、なお更により好ましくは少なくとも6molであり、そして50molまで、好ましくは40molまで、好ましくは30molまで、好ましくは20molまで、好ましくは15molまで、より好ましくは12molまで、更により好ましくは10molまで、なお更により好ましくは9molまでの範囲であり、ここで、側鎖当たり3mol~10mol、好ましくは4mol~9molのエチレンオキシド(EO)単位が特に好ましい。
【0058】
さらに、存在するポリエーテル側鎖は一切封鎖されていなくてもよく(これにより、シリコーン骨格の反対側のポリエーテル側鎖の末端が-Hで終わり、末端水酸官能基を形成する)、又はメチル、エチル、プロピル、及びブチルが具体的に挙げられる1個、2個、3個、若しくは4個の炭素原子を有するアルキル基で封鎖されていてもよい(末端アルキルエーテル基を形成する)。好ましい実施形態において、ポリエーテル変性シリコーン(C)は、封鎖されていないポリエーテル側鎖のみを含む、すなわち、各ポリエーテル側鎖は末端水酸基を含む。
【0059】
<(iii)脂肪アルキル側鎖>ポリエーテル変性シリコーン(C)は、任意選択で、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子であり、そして22個までの炭素原子、好ましくは20個までの炭素原子、より好ましくは18個までの炭素原子、更により好ましくは16個までの炭素原子、なお更により好ましくは14個までの炭素原子を含むものなどの1つ以上の脂肪アルキル側鎖で変性されていてもよい。例示的な脂肪アルキル側鎖基としては、カプリル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、パルミトレイル、ヘプタデシル、ステアリル、オレイル、アラキジル、及びベヘニルが挙げられるが、これらに限定されず、具体的には、ラウリル、ミリスチル、セチル、及びステアリル、好ましくはラウリルが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態において、ポリエーテル変性シリコーン(C)は、少なくとも120mm/s、好ましくは少なくとも130mm/s、より好ましくは少なくとも140mm/s、更により好ましくは少なくとも150mm/s、なお更により好ましくは少なくとも160mm/sであり、そして1000mm/sまで、好ましくは950mm/sまで、好ましくは900mm/sまで、好ましくは850mm/sまで、より好ましくは800mm/sまで、更により好ましくは750mm/sまで、なお更により好ましくは700mm/sまでの25℃での動粘度を有する。
【0061】
ポリエーテル変性シリコーン(C)は、インクジェットインクにおいて、インクジェットの総純量に基づいて、少なくとも0.001重量%、好ましくは少なくとも0.005重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.02重量%、より好ましくは少なくとも0.03重量%、更により好ましくは少なくとも0.04重量%、なお更により好ましくは少なくとも0.05重量%であり、そして4重量%まで、好ましくは3.5重量%まで、好ましくは3重量%まで、好ましくは2.5重量%まで、好ましくは2重量%まで、好ましくは1.5重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.8重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、より好ましくは0.3重量%まで、更により好ましくは0.2重量%まで、なお更により好ましくは0.1重量%までの量で使用される場合に、デキャップ時間を犠牲にすることなく、所望の画像鮮明度の効果をもたらすことができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、ポリエーテル変性シリコーン(C)は、例えば式(I-A)によって表される1つ以上のポリエーテル側鎖を含む線状ポリジメチルシロキサン骨格から形成されるペンダントグラフト構造を有するブロックコポリマーであり、
【化1】

式(I-A)において、
oは、0又は正の整数、例えば、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、更により好ましくは少なくとも4、なお更により好ましくは少なくとも5であり、そして500まで、好ましくは400まで、好ましくは300まで、より好ましくは200まで、更により好ましくは100まで、なお更により好ましくは50までであり、
pは、ポリエーテル側鎖を含む構成単位の数を表し、正の整数、例えば、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、更により好ましくは少なくとも4、なお更により好ましくは少なくとも5であり、そして100まで、好ましくは80まで、好ましくは60まで、より好ましくは40まで、更により好ましくは20まで、なお更により好ましくは10までであり、かつ、
Aは、式(II)により表されるポリエーテル含有基であり、
【化2】

式(II)において、
wは、少なくとも2、好ましくは少なくとも3であり、そして6まで、好ましくは5まで、より好ましくは4までであり、更により好ましくは、wは3であり、
nは、0又は少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、更により好ましくは少なくとも4であり、そして30まで、好ましくは20まで、より好ましくは10まで、更により好ましくは9までの整数であり、なお更により好ましくは、nは3~10であり、
mは、0又は30まで、好ましくは10まで、好ましくは9まで、好ましくは5まで、より好ましくは2まで、更により好ましくは1までの整数であり、なお更により好ましくは、mは0であり、かつ、
Zは、H、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはH(封鎖されていない)である。
【0063】
開示されるインクジェットインクにおいて使用することができるこの種類のポリエーテル変性シリコーン(C)の適切な例としては、それぞれ信越化学工業株式会社(Shin-Etsu Chemical Co.)から入手可能なKF-6013(PEG-9ジメチコン、封鎖されていない、HLB=10.0)、KF-6015(PEG-3ジメチコン、封鎖されていない、HLB=4.5)、及びKF-6017(PEG-10ジメチコン、封鎖されていない、HLB=4.5)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
いくつかの実施形態において、ポリエーテル変性シリコーン(C)は、例えば式(I-B)によって表されるような1つ以上のポリエーテル側鎖及び1つ以上の脂肪アルキル側鎖を含む分岐状ポリジメチルシロキサン骨格から形成されるペンダントグラフト構造を有するブロックコポリマーであり、
【化3】

式(I-B)において、
o、p、及びAは、上記の通りであり、
Bは、脂肪アルキル基、好ましくは、少なくとも10個の炭素原子、好ましくは少なくとも12個の炭素原子であり、そして18個までの炭素原子、好ましくは少なくとも16個の炭素原子、好ましくは少なくとも14個の炭素原子を有する脂肪アルキル基であり、具体的には、ラウリル、ミリスチル、セチル、及びステアリルが挙げられ、
qは、脂肪アルキル側鎖を含む構成単位の数を表し、正の整数、例えば、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、更により好ましくは少なくとも4、なお更により好ましくは少なくとも5であり、そして50まで、好ましくは40まで、好ましくは30まで、より好ましくは20まで、更により好ましくは10まで、なお更により好ましくは5までであり、
rは、ポリジメチルシロキサン骨格における分岐を表し、正の整数、例えば50まで、好ましくは40まで、好ましくは30まで、好ましくは20まで、好ましくは10まで、好ましくは5まで、より好ましくは3まで、更により好ましくは2まで、なお更により好ましくは1までの正の整数であり、
xは、正の整数、例えば、少なくとも1、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、更により好ましくは少なくとも4、なお更により好ましくは少なくとも5であり、そして200まで、好ましくは150まで、好ましくは100まで、より好ましくは75まで、更により好ましくは50まで、より好ましくは30まで、更により好ましくは20まで、なお更により好ましくは10までであり、かつ、
yは、少なくとも2であり、そして6まで、好ましくは2である。
【0065】
開示されるインクジェットインクにおいて使用することができるこの種類のポリエーテル変性シリコーン(C)の適切な例としては、信越化学工業株式会社から入手可能なKF-6038(ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、封鎖されていない、HLB=3.0)が挙げられるが、これに限定されない。
【0066】
後で明らかになるように、特定の種類の界面活性剤(1~12のHLB値を有し、かつ好ましくは封鎖されていないポリエーテル側鎖を有するペンダントグラフト構造を有するポリエーテル変性シリコーン(C))が、ワニスコート紙、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、アルミニウムなどの「困難な」非多孔質物質上に印刷する場合でも、所望の画像鮮明度の生成を可能にすることが予想外に発見された(例えば、表1、表2、表6、及び表7、例3~例11、例15、及び例17~例19を参照)。理論により縛られるものではないが、ポリエーテル変性シリコーン(C)のポリエーテル側鎖(複数可)は、基材表面上に吸着する/基材表面に向かって配向するが、シリコーン骨格は基材表面から離れて配向し、それにより、基材表面が溶媒(複数可)及びあらゆる他のインクジェットインク成分に対してより疎水性となるため、塗布時にインクジェットインクが過度に広がるのを防ぐと考えられる。ポリエーテル変性シリコーン(C)と基材表面との間のこの相互作用が、高い画像鮮明度の生成を可能にすると考えられ、HLB値は、ビヒクル溶解性と基材吸着との間のバランスをもたらす。
【0067】
一方、1~12の範囲外のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーン、並びにシリコーンアクリレートコポリマー及びインクジェットインクに一般的な他の界面活性剤を含む他の種類の界面活性剤(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))は、1~12のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーンの代わりに使用すると、許容可能な画像鮮明度をもたらすことができないことが分かった(例えば、表1及び表6、例2及び例12を参照)。これらの他の界面活性剤の種類の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
- シルテック・コーポレーション(Siltech Corporation)社から入手可能なSILTECH C-32、それぞれモメンティブ(Momentive)社から入手可能なCOATOSIL 1211C及び3573、信越化学工業株式会社から入手可能なKF-410(アリールアルキル変性ポリジメチルシロキサン)、並びにそれぞれビックアディティブズ・アンド・インストルメンツ(BYK Additives & Instruments)社から入手可能なBYK-322及びBYK-323(アリールアルキル変性ポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルアルキルシロキサン))などの有機変性シリコーン(例えば、アルキル、アリール、及び/又はアリールアルキル変性シリコーン)を含むポリシロキサン;
- KP-541、KP-543、KP-545、KP-550、及びKP-575(ポリジメチルシロキサン側鎖でグラフトされたアクリルポリマー、信越化学工業株式会社から入手可能)、並びにBYK-3550(ビックケミー・ジャパン株式会社(BYK Japan K.K.)から入手可能)などのシリコーンアクリレートコポリマー;
- それぞれエボニック・インダストリーズ(Evonik Industries)社から入手可能なTEGO RAD 2100、TEGO RAD 2200、TEGO RAD 2250、TEGO RAD 2300(シリコーンポリエーテルアクリレート)、並びにBYK社から入手可能なBYK-UV 3500及び3530などの光架橋性シリコーンアクリレート又はシリコーンポリエーテルアクリレート;
- それぞれBYK社から入手可能なBYK-381及びBYK-361N(ポリアクリレートコポリマー)、並びにそれぞれルブリゾール(Lubrizol)社から入手可能なPEMULEN EZ-4U(アクリレート/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー)及びPEMULEN TR-2(アクリル酸/C10~C30アルキルアクリレートクロスポリマー)などのポリアクリレートコポリマー及びクロスポリマーを含むポリアクリレート;
- スリーエム・コーポレーション(3M Corporation)社から入手可能なFC-4430及びFC-4432などのフルオロポリマー;
- エボニック・インダストリーズ社から入手可能なSURFYNOL SEF及びDYNOL界面活性剤などのアセチレンジオール及びアセチレングリコール系ジェミニ型界面活性剤;
- エボニック・インダストリーズ社から入手可能なTEGO TWIN 4100などのポリシロキサン系ジェミニ型界面活性剤;
- エボニック・インダストリーズ社から入手可能なTEGO WET 510(親水性ポリエーテル基材湿潤界面活性剤)などの、例えば基材湿潤界面活性剤としての非イオン性ポリエーテル;
- ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド及び2~20molのエチレンオキシドと反応したヤシ脂肪酸モノエタノールアミドなどの脂肪酸のアルコキシル化モノアルカノールアミドを含む脂肪酸のアミド又はモノアルカノールアミド;
- それぞれステパン(Stepan)社から入手可能なBIO-SOFT N-600(C12~C13アルコールエトキシレート)、MAKON DA-4(エトキシル化イソデシルアルコール)、MERPOL SE(アルコールエトキシレート)、及びPOLYSTEP TD-6(エトキシル化トリデシルアルコール)、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、アルコキシル化アルキルフェノールなどのアルコキシル化脂肪アルコールを含むアルコキシル化C~C22アルコール、並びに脂肪アルコールとグルコースとの反応から製造されるものなどのアルキルポリグリコシド(APG)などのエーテル;
- エトキシル化及び/又はプロポキシル化脂肪酸(例えば、2~40molのエチレンオキシドを含むヒマシ油)、アルコキシル化グリセリド(例えば、PEG-24グリセリルモノステアレート)、グリコールエステル及び誘導体、モノグリセリド、ポリグリセリルエステル、ポリアルコールのエステル、並びにソルビタンモノラウレート(例えば、花王株式会社(Kao)から入手可能なEMASOL L-10V)のようなソルビタン/ソルビトールエステル、並びにステパン社から入手可能なTOXIMUL SEE-340(ソルビタントリオレエートエトキシレート(20))などの一価、二価、又は三価脂肪酸エステル化ポリソルベートを含むポリソルベートなどの脂肪エステル;並びに、
- クラリアント(Clariant)社から入手可能なPLANTASENS NATURAL EMULSIFIER HE20(セテアリルグルコシド、ソルビタンオリベート)などの脂肪アルコールのグリコシド。
【0068】
開示されたインクジェットインクにおける使用から他の種類の界面活性剤が必ずしも除外されるわけではないが、それらの任意選択の使用は、許容可能な画像鮮明度のためにポリエーテル変性シリコーン(C)を伴うべきである。しかしながら、好ましいインクジェットインクは、ポリエーテル変性シリコーン(C)が唯一の存在する界面活性剤であるものである。
【0069】
ロジン樹脂(D)
インクジェットインクは、任意選択でロジン樹脂(D)が配合され得る。テルペン樹脂(A)、メチルエチルケトン(B1)、及びポリエーテル変性シリコーン(C)と相溶性であるあらゆるロジン樹脂(D)を本明細書で利用することができ、これにはガムロジン、ウッドロジン、及びトール油ロジン(その主成分は、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、イソピマル酸、及び/又はデヒドロアビエチン酸などの樹脂酸である)から誘導されるロジン樹脂(D)、好ましくはウッドロジンから誘導されるロジン樹脂(D)が挙げられる。使用される場合、ロジン樹脂(D)は、インクジェットインクの総重量に基づいて、10重量%まで、例えば少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、更により好ましくは少なくとも2.5重量%、なお更により好ましくは少なくとも3重量%であり、そして10重量%まで、好ましくは8重量%まで、より好ましくは6重量%まで、更により好ましくは5重量%まで、なお更により好ましくは4重量%までの量で使用され得る。インクジェットインクがロジン樹脂(D)が配合される場合、ロジン樹脂(D)の(重量%に関する)量は、テルペン樹脂(A)の量以下であることが好ましい。
【0070】
ロジン樹脂(D)は、エステル化、水素化(部分水素化を含む)、二量体化、及び/又は他の変性/官能化、例えば、不飽和二酸(例えば、マレイン酸又はフマル酸/無水物)とのディールス-アルダー反応、それぞれのアルデヒド/アルコールへのカルボン酸還元、二重結合異性化、脱水素化、酸化、不均化などによって前述のロジンを変性することによって形成され得る。例示的なロジン樹脂(D)としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
- ロジンエステル樹脂、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、メタノールなどのアルコール(複数可)と反応させたアビエチン酸型又はピマル酸型の樹脂酸から主に構成されるロジンのエステルであって、任意選択で水素化又は部分水素化されたものなど、具体的には、ハリマ化成グループ株式会社(Harima Chemicals,Inc.)から入手可能なHARIESTER製品、それぞれイーストマン(Eastman)社から入手可能なSTAYBELITE ESTER 10-E、及びPERMALYN 6110、荒川化学工業株式会社(Arakawa Chemical Industries,Ltd.)から入手可能なSUPER ESTER A-125、SUPER ESTER A-75、PENSEL D-125、PINECRYSTAL KE-359、並びにピノヴァ社から入手可能なFORAL 85、FORAL 105、HERCOLYN製品、PEXALYN製品、及びPENTALYN製品が挙げられる;
- それぞれピノヴァ社から入手可能なFORAL AX及びFORAL DXなどの水素化酸性ロジン;
- 部分水素化酸性ロジン、例えば、イーストマン社から入手可能なSTAYBELITE RESIN-E、並びにそれぞれピノヴァ社から入手可能なSTAYBELITE及びSTAYBELITE A;
- イーストマン社から入手可能なPOLY-PALE部分二量体化ロジンなどの二量体化ロジン;並びに、
- 官能化ロジン樹脂、例えば、マレイン酸無水物で変性されたロジンのエステル(例えば、グリセロールエステル)、又はカルボン酸還元条件に付されたロジン、具体的には、それぞれイーストマン社から入手可能なLEWISOL 28-M及びAbitol-Eヒドロアビエチルアルコールが挙げられる;
- 並びにそれらの混合物。
【0071】
いくつかの実施形態において、ロジン樹脂(D)は、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも55℃、より好ましくは少なくとも60℃、更により好ましくは少なくとも65℃であり、そして80℃まで、好ましくは75℃まで、より好ましくは70℃まで、更により好ましくは68℃までの軟化点(環球式SP)を有する。いくつかの実施形態において、ロジン樹脂(D)は酸性ロジン(非エステル化)であり、少なくとも100、好ましくは少なくとも110、より好ましくは少なくとも120、より好ましくは少なくとも130、更により好ましくは少なくとも140、なお更により好ましくは少なくとも150であり、そして170まで、好ましくは165まで、より好ましくは160まで、更により好ましくは158までの酸価(mgKOH/g)を有する。
【0072】
好ましい実施形態では、ロジン樹脂(D)は、水素化酸性ロジン、好ましくは水素化酸性ウッドロジン、例えば、それぞれピノヴァ社から入手可能なFORAL AX及びFORAL DXである。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、ロジン樹脂(D)を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、ロジンエステル樹脂、部分水素化酸性ロジン、二量体化ロジン、及び他の官能化/変性ロジン樹脂を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、水素化酸性ロジンは、インクジェットインク中に存在する唯一のロジン樹脂(D)である。
【0073】
その他のバインダー樹脂
テルペン樹脂(A)及び任意選択のロジン樹脂(D)に加えて、インクジェットインクは、インクジェットインクの総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも1.5重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも2.5重量%であり、そして10重量%まで、好ましくは9重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは7重量%まで、好ましくは6重量%まで、好ましくは5重量%まで、好ましくは4重量%まで、好ましくは3重量%までの量で、他のバインダー樹脂/粘着付与剤/接着物質を任意選択で含み得る。このような追加の樹脂、バインダー、粘着付与剤、又は接着物質としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
- (i)少なくとも1つの水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位に少なくとも2つの置換可能な水素原子を有する1つ以上の一価又は多価フェノール化合物と、(ii)1つ以上のテルペンとのアルキル化からの共重合体反応生成物であるテルペンフェノール樹脂(TPR)、例えば(i)フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール、2,3-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、イソプロピルフェノール(例えば、4-イソプロピルフェノール)、tert-ブチルフェノール(例えば、4-tert-ブチルフェノール)、アミルフェノール(例えば、4-tert-アミルフェノール)、ヘプチルフェノール(例えば、4-ヘプチルフェノール)、オクチルフェノール(例えば、o-オクチルフェノール、p-オクチルフェノールなど)、ノニルフェノール(例えば、4-(2,4-ジメチルヘプタン-3-イル)フェノール)、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ジフェニロールプロパン(ビスフェノールA)、フェニルフェノール(例えば、3-フェニルフェノール)、クミルフェノール、メキノール、ベンジルオキシフェノール、グアイアコール、エトキシフェノール(例えば、4-エトキシフェノール)、レゾルシノール、ピロガロール、カテコール、p-ハイドロキノン、1-ナフトール、及び/又は2-ナフトールなどの1つ以上のフェノール化合物と、(ii)直鎖モノテルペン(例えば、ミルセン、オシメンなど)、単環式モノテルペン(例えば、リモネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、テルピノレンなど)、及び/又は二環式モノテルペン(例えば、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、α-フェンチェン、カンフェンなど)を含む1つ以上のテルペンモノマーとの共重合から形成されるものなど;具体的には、ヤスハラケミカル株式会社(Yasuhara Chemical Co.Ltd.)から入手可能なU130 POLYSTER(水酸基価(OHV)=25mgKOH/g)、U115 POLYSTER(OHV=30mgKOH/g)、T160 POLYSTER(OHV=60mgKOH/g)、T145 POLYSTER(OHV=65mgKOH/g)、及びピノヴァ社から入手可能なDERTOPHENE T(OHV=40mgKOH/g)、DERTOPHENE T160(OHV=60mgKOH/g)が挙げられる;
- フェノール樹脂(すなわち、フェノール化合物とホルムアルデヒドとのコポリマー)、例えば、DIC株式会社(DIC Corp.)から入手可能なPHENOLITE TD-2131及びPHENOLITE TD-2090などのノボラック樹脂;
- ポリアミド樹脂、例えば、BASFジャパン株式会社(BASF Japan Ltd.)から入手可能なVERSAMID 725、744、756、759、サンホーケミカル社(Sanho Chemical Co.Ltd.)から入手可能なTOHMIDE 90、92、394-N、及びエボニック社から入手可能なSUNMIDE 550、554、615A、638、640;
- スルホンアミド変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、例えば、リット・ケム(Rit-Chem)社から入手可能なAD-PRO MTS;
- (メタ)アクリレート及びスチレン/(メタ)アクリレート樹脂、例えば、BASF社から入手可能なJONCRYL 63、JONCRYL 67、JONCRYL 586、JONCRYL 611、JONCRYL 682、JONCRYL 693、パルマー・ホーランド(Palmer Holland)社から入手可能なPARALOID DM-55及びPARALOID B-66、ダウケミカル(Dow Chemical)(米国)から入手可能なPARALOID B-72、並びにルーサイト社(Lucite Inc.)から入手可能なELVACITE 2013;
- ポリウレタン樹脂、例えば(i)エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフランジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、ポリエチレングリコールアジペートジオール、ポリエチレングリコールサクシネートジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールアジペート)グリコール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンジオールテレフタレート)グリコールなどのポリエステルポリオール、カーボネートポリオールを含むがこれらに限定されるものではないポリオールと、(ii)2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートを含むがこれらに限定されるものではないジイソシアネートとの反応から形成されるものなどのポリウレタン樹脂、例えばルブリゾール社から入手可能なPERMAX 200、PERMAX 202、及びSANCURE 20025F;
- ポリビニルブチラール樹脂、例えばクラレ・アメリカ社(Kuraray America,Inc.)から入手可能なPIOLOFORM BN16及びMOWITAL B20H;
- ポリヒドロキシスチレン樹脂、例えばデュポン(DuPont)社製のポリ(p-ヒドロキシスチレン);
- ビニル樹脂、例えば、ダウケミカル社から入手可能なUCAR VYHH、VMCH、VMCA、及びVAGF、並びにワッカー・ケミー社(Wacker Chemie AG)(ドイツ)から入手可能なVINNOL E15/45、H14/36、E15/45M、及びE16/40A;
- p-トルエンスルホンアミドホルムアルデヒド樹脂などのスルホンアミド変性ホルムアルデヒド樹脂;
- イーストマン社から入手可能なセルロースアセテートブチレート(CAB-551-0.01)などのセルロースエステル樹脂;
- 並びにポリエステル、スルホン化ポリエステル、セルロースエーテル、硝酸セルロース樹脂、ポリ無水マレイン酸、アセタールポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、メラミンホルムアルデヒド樹脂、スルホンアミド変性メラミンホルムアルデヒド樹脂、ケトン-アルデヒド樹脂、及びポリケトン樹脂;
- 並びに、それらの混合物を含む同等物。
【0074】
いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、テルペン樹脂(A)及び任意選択のロジン樹脂(D)以外に、上述のものなどの追加のバインダー樹脂/粘着付与剤/接着物質を実質的に含まない。いくつかの実施形態においては、インクジェットインクはポリウレタン樹脂を実質的に含まない。いくつかの実施形態においては、テルペン樹脂(A)は、インクジェットインク中に存在する唯一のバインダー樹脂/粘着付与剤/接着物質である。いくつかの実施形態において、インクジェットインクは、テルペン樹脂(A)及びロジン樹脂(D)の組み合わせを含み、好ましくは、追加の樹脂、バインダー、粘着付与剤、又は接着物質を実質的に含まない。
【0075】
(E)着色剤
当業者によれば、インクジェットインクに1つ以上の着色剤(E)を任意選択で含めて、様々な印刷目的に使用できる着色インクを提供することができ、インクジェットインクは特定の色に一切限定されるものではないことは容易に理解されるべきである。インクジェットインクにおいて、所望の色を出すために、染料、顔料、それらの混合物などを含むあらゆる着色剤(E)を使用することができるが、ただし、着色剤(E)は、インクジェットインク内に溶解又は分散され得るものとする。適切な色としては、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びキー(ブラック)(「CMYK」)、ホワイト、オレンジ、グリーン、ライトシアン、ライトマゼンタ、バイオレットなど(スポットカラー及びプロセスカラーの両方を含む)が挙げられる。一般に、着色剤(E)は、インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%であり、そして20重量%まで、好ましくは15重量%まで、好ましくは10重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは7重量%までの量で使用され得る。
【0076】
インクジェットインクは、種々の染料を配合することができ、ここで、オリヱント化学工業株式会社(Orient Chemical Industries)から入手可能なOIL BLACK 860などの有機染料、及び金属錯体染料が特に好ましい。
【0077】
インクジェットインクは、様々な無機顔料及び/又は有機顔料が配合され得る。インクジェットインクに色を与えることに加えて、そのような顔料は、印刷画像の耐光性、耐候性などを改善することができる場合がある。
【0078】
(F)添加剤(複数可)
既に述べた成分に加えて、インクジェットインクはまた、様々なインク特性及び性能を改善するために任意選択で様々な添加剤(F)が配合され得る。例えば、インクジェットインクは、任意選択で、コゲーション防止剤、安定剤、湿潤剤、及び安全保障のための追跡用添加物(security taggant)のうちの1つ以上を当業者によって知られる当該技術分野において適切なレベルで含み得る。
【0079】
製造方法
本明細書に記載されるインクジェットインクの実施形態は、当業者に知られるあらゆる適切な技術によって、例えば、成分(A)テルペン樹脂、(C)ポリエーテル変性シリコーン、及びあらゆる所望の任意選択の成分(例えば、(D)ロジン樹脂、(E)着色剤、及び/又は添加剤(F))と、(B1)メチルエチルケトン及び任意選択で(B2)アセトン及び(B3)グリコールエーテルの1つ以上を含む又はそれらからなる適切な溶媒系(B)とを任意の順序で合わせ、20℃から100℃の間の温度で適切な時間量にわたって撹拌、かき混ぜ、及び/又は均質化して均質な溶液を形成することによって調製することができる。
【0080】
一例では、インクジェットインクは、最初に、テルペン樹脂(A)及びポリエーテル変性シリコーン(C)と、メチルエチルケトン(B1)及びあらゆる任意選択の樹脂(例えば、(D)ロジン樹脂)又は他の任意選択の添加剤(複数可)(F)とを容器中で合わせた後、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、好ましくは少なくとも25分間、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは少なくとも35分間、好ましくは少なくとも40分間、好ましくは少なくとも45分間撹拌することによって製造することができる。アセトン(B2)及び/又はグリコールエーテル(B3)を使用する場合には、これらを得られた混合物に添加し、続いて少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、好ましくは少なくとも25分間撹拌することができる。次いで、着色剤(E)を最終成分として連続的に混合しながら添加し、次いで、溶液を少なくとも10分間、好ましくは少なくとも15分間、好ましくは少なくとも20分間、好ましくは少なくとも25分間、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは少なくとも35分間、好ましくは少なくとも40分間、好ましくは少なくとも45分間混合して、インクジェットインクを得ることができる。次いで、得られたインクジェットインクを、印刷カートリッジ、例えば、船井電機株式会社(Funai Co.)によって製造されたFUNAI TIJカートリッジ、又はMEKベースのインクに適した他のプリントヘッドに入れることができる。
【0081】
特性
他の利点の中でも、本明細書に開示されるインクジェットインクは、延長されたデキャップ時間及び塗布後の迅速な乾燥時間という優れた組み合わせを有し、インクの広がりを促進する傾向にある非多孔質基材上でも画質鮮明度をもたらす。本明細書に開示されるインクジェットインクはまた、所望の光沢が得られるように調整することもできる。
【0082】
乾燥時間は、インクジェットインクをソリッドブロック画像(例えば、1cm×10cm)の形態で基材上に塗布し、インクジェットインクが周囲条件下(室温、約23℃の空気中、熱を加えない)で乾燥するのを一定時間、例えば、5秒間、10秒間、20秒間、又は30秒間待ち、次いで、指による摩耗試験を行って、試験された時間間隔で印刷画像から指に色が移るかどうかを試験することによって測定することができる(例えば、図1を参照)。色移りが生じた場合、試験された乾燥時間は、完全な乾燥を達成するのに十分ではない(「不合格」の評点)。色移りが生じない場合、試験された乾燥時間は、完全な乾燥を達成するのに十分である(「合格」の評点)。「合格」評点を達成するのに30秒間を超える乾燥時間を必要とするどのインクジェットインクも、許容不可能な/遅い乾燥(「不良」)と見なされ、20秒間超から30秒間までの乾燥時間で「合格」評点を達成するものは、「許容可能」と見なされ、10秒間超から20秒間の乾燥時間で「合格」評点を達成するものは、「迅速」と見なされ、10秒間以内の乾燥時間で「合格」評点を達成するものは、「非常に迅速」と見なされる。好ましい実施形態においては、本開示のインクジェットインクは、塗布後30秒間以内、好ましくは25秒間以内、より好ましくは20秒間以内、更により好ましくは15秒間以内、なお更により好ましくは10秒間以内に乾燥するため、「許容可能」、「迅速」、又は「非常に迅速」の乾燥時間の評点、好ましくは「迅速」又は「非常に迅速」の乾燥時間の評点、より好ましくは「非常に迅速」の乾燥時間の評点を有する。
【0083】
本明細書に開示されるインクジェットインクはまた、例えば、細線画像(例えば、バーコード)(1mm×1cm、細線、モノクロビットマップ)を印刷し、インクジェットインクを特定の時間(例えば、30秒間、1分間、60分間など)空気に曝露し(インクカートリッジをデキャップする)、同じ細線画像を再印刷し、デキャップ後に再印刷した画像を元の画像と比較して細線画像において線の欠落/線の明瞭性の損失が生じたかどうかを判定することによって測定される、延長されたデキャップ時間を有する(例えば、図2を参照)。試験された時間間隔で線の欠落/線の明瞭性の損失が生じない場合、インクジェットインクには、その時間間隔について「良好」のデキャップ評点が与えられる。試験された時間間隔で1~2本の線が欠落する/明瞭性が失われるが、細線画像の明瞭性又は可読性に大きな影響を与えるほどではない場合、そのインクジェットインクには「許容可能」のデキャップ評点が与えられる。試験された時間間隔で2本よりも多い線が欠落する/明瞭性が失われる場合、インクジェットインクは、その時間間隔で「不良」として分類される。適切なインクジェットインクは、30秒間、1分間、及び60分間の時間間隔にわたってデキャップすることができ、かつ試験された時間間隔の1つ以上、好ましくは試験された時間間隔の2つ以上にわたって、より好ましくは各試験された時間間隔でデキャップした(すなわち、空気に曝した)ときに「良好」又は「許容可能」のデキャップ分類を達成することができるものである。好ましいインクジェットインクは、30秒間以上、好ましくは1分間以上、より好ましくは10分間以上、更により好ましくは30分間以上、なお更により好ましくは60分間以上にわたってデキャップしたときに「良好」又は「許容可能」のデキャップ評点を維持するものである。
【0084】
画像鮮明度についてインクジェットインクを試験するために、細線画像及び数字列を多孔質の対照基材(普通非コート紙)、及び一連の非多孔質基材(例えば、ワニスコート紙、二軸延伸ポリプロピレン、ナイロン、及びアルミ箔)上に印刷することができる。次いで、印刷画像を、各基材上で広がりについて視覚的に評価することができる。広がりのない細線画像をもたらし/すべての個々の線を認識することができ、かつ各数字が明瞭で、隣接する数字と離れている数字列をもたらすインクジェットインクには、「G」(良好)評価が与えられる。幾らかの広がりが起こるが依然として個々の線を認識することができる細線画像をもたらし、かつ各数字が明瞭であるが、幾らかの数字が隣接する数字と離れていない数字列をもたらすインクジェットインクには、「A」(許容可能)評価が与えられる。個々の線を認識することができなくなる程度まで実質的な広がりが起こる細線画像をもたらし、かつ数字が明瞭でなく(過度の広がり)、一般に隣接する数字と離れていない数字列をもたらすインクジェットインクには、「NG」(不良)評価が与えられる(例えば、図3及び図4を参照)。次いで、各基材に対する評価をまとめ、インクジェットインクを、以下の基準に従って画像鮮明度について採点する:「G」評価のみが得られる場合に「良好」、一切「NG」評価なしに「G」及び「A」の両方の評価が得られる場合に「許容可能」、そして少なくとも1つの基材に対して「NG」評価が得られる場合に「不良」。
【0085】
開示されたインクジェットインクの別の利点は、それらを光沢に関して容易に調整して、特定の用途に望まれるように、高光沢、中光沢、又は低光沢を有する印刷画像を提供することができることである。光沢は、単純な視覚的な検査方法によって評価することができ、「高」光沢、「中」光沢、又は「低」光沢として分類することができる。あるいは、光沢計(例えば、BYK-ガードナー(BYK-Gardner)社(ドイツ、ゲーレッツソート)製のBYK-Gardnerヘイズ-光沢反射計)を使用して、60°測定角度(鏡面反射)で印刷画像の光沢強度を測定し、光沢を光沢単位(GU)で記録することができ、「高」光沢は70GU超の60°値であり、「中」光沢は10~70GUの60°値であり、「低」光沢は10GU未満の60°値である。
【0086】
印刷物
インクジェットインクは、多種多様な印刷物の製造のために、三次元部品及びロール形態で供給される平坦なシート又はウェブを含む様々な基材上に印刷することができる。加えて、基材は、様々な表面タイプ、例えば、平坦な表面、粒状化された表面などの構造化された表面、並びに湾曲した及び/又は複雑な表面などの三次元表面を有することができ、これらは、湾曲した及び/又は複雑な表面のすべての部分に到達するためにインクが移動しなければならない距離が長いため、困難な基材であることがよく知られている。このような印刷物は、グラフィックアート、テキスタイル、包装(例えば、食品包装、医薬品包装など)、宝くじ、ダイレクトメール、ビジネスフォーム、及び出版業界において適している場合があり、その例としては、タグ又はラベル、宝くじ券、出版物、包装(例えば、食品包装、医薬品包装、ブリスター包装、他の様々な軟包装など)、折り畳み式カートン、硬質容器(例えば、プラスチックカップ又は桶、ガラス容器、金属缶、PETボトルなどのボトル、ジャー、及びチューブ)、封筒、コルゲート、売り場のディスプレイなどが挙げられる。
【0087】
インクジェットインクは、多孔質(すなわち浸透性)基材上に印刷することができ、その例としては、非コート紙、木材、膜、コルゲート(段ボール/ファイバーボード)、及び布(例えば、織布、不織布、及びホイルラミネート布が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
インクジェットインクはまた、非多孔質(すなわち非浸透性)基材、例えば、様々なプラスチック、ガラス、金属(例えば、鋼、アルミニウムなど)、及び/又は非浸透紙(例えば、ワニスコート紙などのコート紙)上に印刷することもでき、これらとしては、成形プラスチック部品又は金属部品及びプラスチックフィルム又は金属フィルムの平坦なシート又はロールが挙げられるが、これらに限定されない。例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、及び二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)などのポリオレフィン、ポリ乳酸(PLA)、ナイロン及び延伸ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルローストリアセテート(TAC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ワニスコート紙などのコート紙、並びに鋼及びアルミニウムなどの金属を含む基材が挙げられる。特に、本開示のインクジェットインクは、過度に広がることなくそのような非多孔質基材上で使用するために配合されており、アルミ箔などの最も困難な基材上でさえ鮮明な画像の形成を可能にする。
【0089】
印刷画像の形成方法
インクジェット印刷では、ドットの精密なパターンが、プリントヘッドとして知られる液滴生成デバイスから印刷媒体上に吐出されると、所望の印刷画像が形成される。プリントヘッドは、ノズルプレート上に配置され、インクジェットプリントヘッド基材に取り付けられた、精密に形成されたノズルのアレイを有する。インクジェットプリントヘッド基材は、1つ以上のインクリザーバとの流体連通を通してインクジェットインクを受容する発射チャンバのアレイを内蔵する。各発射チャンバは、発射抵抗器として知られる抵抗素子を有し、この抵抗素子は、インクジェットインクが発射抵抗器とノズルとの間に集まるように、ノズルの反対側に配置される。各抵抗素子は典型的には抵抗材料のパッドであり、例えば約35μm×35μmの大きさである。プリントヘッドは、プリントカートリッジ又はインクジェットペンと呼ばれる外装によって保持及び保護される。特定の抵抗素子に通電すると、インクジェットインクの液滴がノズルを通って印刷媒体に向かって吐出される。インク液滴の発射は、典型的には、マイクロプロセッサの制御下にあり、マイクロプロセッサの信号は、電気トレースによって抵抗素子に伝達され、印刷媒体上に英数字及び他の画像パターンを形成する。ノズルは小さく、典型的には直径10μm~40μmであるので、目詰まりを最小限に抑えるインクが望ましい。特に、サーマルインクジェット(TIJ)は開放雰囲気プリントヘッド設計(ノズルオリフィスは大気に開放されており、インク加圧を可能にするためにオリフィスにバルブシールが存在しない)であるため、TIJ印刷は、デキャップ時間(プリントアイドル時間)がノズル内及び周囲のインクの早期乾燥を引き起こす間欠印刷中の性能不良に歴史的に悩まされてきた。
【0090】
本開示は、1つ以上の実施形態において、サーマルインクジェットプリントヘッドによって基材の表面上にインクジェットインクを塗布し、インクジェットインクを乾燥させることによって、印刷画像を形成する方法を提供する。本明細書に記載されるインクジェットインクを使用することで、サーマルインクジェットプロセスに一般的に関連する短いデキャップ時間(溶媒損失の速度が速すぎる)及び遅い乾燥時間(溶媒損失の速度が遅すぎる)という相反する問題を克服しながら、「困難な」非多孔質基材上でさえも依然として高品質の印刷が生成される。
【0091】
本方法の印刷ユニットとしては、インクジェット印刷の当業者に知られている任意のドロップオンデマンドプリントヘッドを使用することができ、これには、連続プリントヘッド、サーマルプリントヘッド、静電プリントヘッド、及び音響プリントヘッドが挙げられるが、好ましくはサーマルプリントヘッド(熱変換器を有する)が使用される。例えば、印刷解像度、印刷速度、プリントヘッドパルス加温温度、駆動電圧、及びパルス長などの典型的なパラメータは、プリントヘッドの仕様に従って調整することができる。本明細書の方法での使用に一般に適したプリントヘッドは、2~80pLの範囲の液滴サイズ及び10~100kHzの範囲の液滴周波数を有し、高品質の印刷は、例えば、駆動電圧を8.0~9.5ボルトに、印刷速度を300フィート/分まで、パルス加温温度を25~45℃に、及びパルス長を0.7~2.5マイクロ秒に設定することによって得ることができるが、これらの値を上回った、又は下回った値も使用することができ、依然として満足のいく印刷を得ることができる。開示された方法での使用に適した1つの非限定的なプリントヘッドの例は、船井電機株式会社製のFUNAI TIJカートリッジである。
【0092】
塗布後、インクジェットインクを乾燥させる。好ましい実施形態では、乾燥は、塗布されたインクジェットインクを周囲条件下(空気中、約23℃)で30秒間以下、好ましくは25秒間以下、より好ましくは20秒間以下、更により好ましくは15秒間以下、なお更により好ましくは10秒間以下乾燥させることによって達成される。
【0093】
塗布されたインクジェットインクを乾燥させるために外部熱を加えてもよいが、好ましい実施形態では、乾燥を促進するために、又は乾燥速度を増加させるために外部熱を加えない。例えば、塗布後にインクジェットインクを乾燥させるためにヒーターを使用しないことが好ましい。更に、本開示の方法は、エネルギー硬化(例えば、UV又は電子ビーム硬化)を必要としない。塗布されたインクが乾燥したと見なされたら、更にインクジェットインクのコーティングを塗布してもよいし、又は当業者に知られる任意の処理ステップを必要に応じて実行してもよい。
【0094】
また、本明細書の方法では、インクジェットインクを塗布する前に、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、及び火炎処理などの基材表面処理を任意選択で使用して、印刷物特性、例えばインク接着性を改善することができることも認識すべきである。このような基材表面処理のパラメータは、印刷される基材材料、利用される特定のインクジェットインク、適用される印刷方法、並びに印刷物の所望の特性及び用途に応じて大きく変動し得る。
【0095】
以下の実施例は、インクジェットインクを更に例示することを意図しており、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0096】
インクジェットインク
インクジェットインクのいくつかの例を以下の表1及び表2に示す。各成分の量は、インクジェットインクの総重量(100%)に対する重量百分率で表される。は、例が比較例であることを示す。
【0097】
使用される材料
グリコールエーテルPnPは、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(沸点150℃)である。グリコールエーテルDPnPは、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(沸点212℃)である。PICCOLYTE A135は、ピノヴァ社から入手可能なα-ピネンから製造されたテルペン樹脂(環球式SP=132~138℃、臭素価=27)である。PICCOLYTE S25は、ピノヴァ社から入手可能なβ-ピネンから製造されたテルペン樹脂(環球式SP=22~28℃、臭素価19)である。DERTOPHENE Tは、ピノヴァ社から入手可能なテルペンフェノール樹脂(OHV=40mgKOH/g)である。FORAL AXは、ピノヴァ社から入手可能なロジン樹脂(水素化酸性ウッドロジン)である。KF-6011(PEG-11ジメチコン、メチルエーテル封鎖されている、HLB=14.5)、KF-6013(PEG-9ジメチコン、封鎖されていない、HLB=10.0)、KF-6015(PEG-3ジメチコン、封鎖されていない、HLB=4.5)、KF-6017(PEG-10ジメチコン、封鎖されていない、HLB=4.5)、及びKF-6038(ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、封鎖されていない、HLB=3.0)は、それぞれ信越化学工業株式会社から入手可能なポリエーテル変性シリコーンである。BYK-3550は、ビックケミー・ジャパン株式会社から入手可能なシリコーンアクリレートコポリマーである。OIL BLACK 860は、オリヱント化学工業株式会社から入手可能な有機染料である。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
調製方法
例のインクを調製するために、樹脂(複数可)と任意の界面活性剤を最初にメチルエチルケトン(MEK)と合わせ、機械的撹拌機によって少なくとも30分間混合した。次いで、アセトン又はグリコールエーテルを混合物に添加し、少なくとも15分間混合した。次いで、染料を混合物に添加し、少なくとも30分間混合して、インクジェットインクを得た。次いで、インクジェットインクの例を、船井電機株式会社製のFUNAI TIJカートリッジにより評価した。
【0101】
樹脂の軟化点(SP)値
樹脂の軟化点を決定する方法の一例は、以下の通りである。溶融状態の2.1gのサンプルを所与のリングに注入し、次にサンプルを室温まで冷却した後、JIS B7410に規定される以下の条件でSP値を測定する。
測定装置:自動環球式軟化点
試験機:ASP-MGK2(株式会社メイテック社(MEITECH Company Ltd.)製)
加熱速度:5℃/分
加熱を開始する温度:40℃
測定溶媒:グリセロール。
【0102】
インクジェットインク評価方法
印刷サンプル作製
船井電機株式会社に関連する熱印刷技術を使用してインクを評価した(ソフトウェア及びハードウェアはXiJet社製、搬送台はカーク・ルディー(Kirk Rudy)社製)。
【0103】
乾燥時間の評価
乾燥時間を評価するために利用した印刷条件は以下の通りであった。
- 印刷基材:ワニスコート紙
- 印刷解像度:600dpi×300dpi(縦×横)
- 印刷速度:100フィート/分
- プレファイア 260nsec
- デッドタイム 1200nsec
- メインファイア 500nsec
- 電圧 9.0V
- 温度 30℃
- 印刷画像:100%デューティ(1cm×10cm、モノクロビットマップ、ソリッドブロック画像)(例えば、図1を参照)。
【0104】
摩耗試験は、特定の時間(10秒間、20秒間、及び30秒間)の経過後に指によって行った。色のついた指は、完全な乾燥に十分な時間が経過していないことを示し(「不合格」)、色のついていない指は、完全な乾燥に十分な時間であることを示す(「合格」)。次いで、インクジェットインクを、以下の表3による「合格」評点を達成するのに必要とされた乾燥時間に従って採点した。
【0105】
【表3】
【0106】
デキャップ時間の評価
デキャップ時間を評価するために使用した印刷条件は以下の通りであった。
- 印刷基材:普通(非コート)紙
- 印刷解像度:300dpi×300dpi(縦×横)
- 印刷速度:100フィート/分
- プレファイア 260nsec
- デッドタイム 1200nsec
- メインファイア 500nsec
- 電圧 9.0V
- 温度 30℃
- 印刷画像:100%デューティ(1mm×1cm、モノクロビットマップ、細線画像)(例えば、図2を参照)。
【0107】
細線画像を印刷して、印刷画像に欠落した線又は不明瞭な線(ノズルの詰まり又はノズル欠けの前触れ)が含まれていないことを確認した。確認後、プリントヘッドを特定の時間(30秒間、1分間、又は60分間)デキャップしたままにし、次いで同じ細線画像を使用して再印刷した。再印刷した細線画像(特定の時間経過後)を確認して、線の欠落/線の明瞭性の損失が生じたかどうかを調べた。試験された時間間隔で線の欠落/線の明瞭性の損失が生じなかった場合、そのインクジェットインクには、その時間間隔にわたる「良好」のデキャップ評点を与えた。試験された時間間隔で1~2本の線が欠落した/明瞭性が失われたが、細線画像の明瞭性又は可読性に大きな影響を与えるほどではなかった場合、そのインクジェットインクには、試験された時間間隔で「許容可能」のデキャップ評点を与えた。試験された時間間隔で2本よりも多い線が欠落した/明瞭性が失われた場合、そのインクジェットインクを、その時間間隔で「不良」として分類した。適切な/所望のインクジェットインクは、試験された時間間隔の1つ以上にわたってデキャップした(すなわち、空気に曝した)ときに「良好」又は「許容可能」のデキャップ分類を達成するものである。
【0108】
画像鮮明度の評価
画像鮮明度を評価するために利用した印刷条件は以下の通りであった:
- 画像鮮明度を決定するために使用した印刷基材は、普通(非コート)紙、ワニスコート紙、二軸延伸ポリプロピレン、ナイロン、及びアルミ箔であった。
- 印刷解像度:300dpi×300dpi(縦×横)
- 印刷速度:100フィート/分
- プレファイア 260nsec
- デッドタイム 1200nsec
- メインファイア 500nsec
- 電圧 9.0V
- 温度 30℃
- 印刷画像:100%デューティ(例えば、図3及び図4を参照)
・ 1mm×12.7mm、モノクロビットマップ、細線画像、
・ 「123456789」と読める数字列。
【0109】
細線画像及び数字列を、多孔質の対照基材(普通非コート紙)、及び一連の非多孔質基材:ワニスコート紙、二軸延伸ポリプロピレン、ナイロン、及びアルミ箔上に印刷した。得られた印刷画像を、以下の表4の評価基準に従って、各基材上で広がりについて視覚的に評価した。
【0110】
【表4】
【0111】
次いで、各基材に対する上記の評価からの結果をまとめ、次にインクジェットインクに、以下の表5の評価システムに従って、「良好」、「許容可能」、又は「不良」の画像鮮明度の評点を与えた。
【0112】
【表5】
【0113】
光沢評価
完全乾燥後、乾燥時間測定からの印刷画像サンプルを光沢について視覚的に検査し、「高」光沢、「中」光沢、又は「低」光沢として分類した。
【0114】
インクジェットインク性能
以下の表6及び表7に示されるように、1~12のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーン及びメチルエチルケトンが配合されたインクジェットインクは、「許容可能」又は「良好」の画像鮮明度の評点を有することが分かった(例3~例11、例13~例15、例17~例19)。反対に、界面活性剤を含まないインクジェットインク(例1)、高すぎるHLB値を有するポリエーテル変性シリコーンを含むインクジェットインク(例2、14.5のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーン界面活性剤を使用)、シリコーンアクリレートコポリマーを含むインクジェットインク(例12、界面活性剤としてBYK-3550を使用)、又はMEKを別の低沸点溶媒に置き換えたインクジェットインク(例16、エタノールを使用)はそれぞれ、画像鮮明度に関して許容不可能な画像をもたらすことが分かった(表6及び表7を参照)。
【0115】
【表6】
【0116】
【表7】
【0117】
1~12のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーンの量に関しては、極めて低い負荷量でさえ、許容可能な画像鮮明度を得るのに十分であることが分かった(例5、0.001重量%の負荷量のポリエーテル変性シリコーン)。例9における1重量%及び例10における3重量%などのより高い負荷量のポリエーテル変性シリコーンも所望の画像鮮明度をもたらしたが、3重量%の負荷量のポリエーテル変性シリコーンは、早いデキャップ時間に影響を及ぼし始めた(表6、例10)。それでもなお、3重量%の負荷量のポリエーテル変性シリコーンの例10は、試験した最長の60分間のデキャップ時間で申し分なく機能した。
【0118】
表6及び表7に見られるように、1~12のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーンを、テルペン樹脂及びメチルエチルケトンと組み合わせて使用した場合、画像鮮明度、乾燥時間、及びデキャップ時間に関して顕著な効果が達成された(例3~例11、例15、及び例17~例19)。
【0119】
一方、テルペン樹脂をテルペンフェノール樹脂で置き換えたインクジェットインク(例13)、又はロジン樹脂のみを使用したインクジェットインク(例14)は、試験したすべてのデキャップ時間で許容不可能なデキャップ時間を被った(表7)。
【0120】
MEK及びアセトンの混合物に基づく溶媒系(例3~例11、及び15)に加えて、MEKを単独で使用するか(例19)、又はMEKをグリコールエーテルと組み合わせて使用することで(例17及び例18)、MEK及びグリコールエーテルの組み合わせを使用して調製されたインクではわずかにより長い乾燥時間がもたらされたにもかかわらず、所望のデキャップ時間を有するインクジェットインクを製造することができる。
【0121】
数値の限界又は範囲が本明細書に記載されている場合、端点も含まれる。また、数値の限界又は範囲内のすべての値及び部分範囲は、明示的に記載されているかのように具体的に含まれる。
【0122】
本明細書で使用される場合、単語「a」及び「an」などは、「1つ以上」という意味を有する。
【0123】
本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示される実施形態又は要素を「含む(comprising)」、これら「からなる(consisting of)」及びこれら「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態を企図する。
【0124】
上記の教示に照らして、明らかに本発明の多数の変更及び変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【0125】
上記のすべての特許及び他の参考文献は、詳細に記載されている場合と同じように、この参考文献によって完全に本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テルペン樹脂と、
(B)(B1)メチルエチルケトンを含む溶媒系と、
(C)1~12の親水性-親油性バランス(HLB)値を有するポリエーテル変性シリコーンと、
を含むインクジェットインク。
【請求項2】
前記テルペン樹脂(A)がα-ピネンのホモポリマーである、請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記テルペン樹脂(A)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.1~10重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記メチルエチルケトン(B1)と前記テルペン樹脂(A)との重量比((B1):(A))が、10:1~100:1である、請求項1~3のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記溶媒系(B)が(B2)アセトンを更に含む、請求項1~4のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記メチルエチルケトン(B1)と前記アセトン(B2)との重量比((B1):(B2))が、1:1~5:1である、請求項5に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記インクジェットインクの総重量に基づいて少なくとも50重量%の総ケトン含有量を有する、請求項1~6のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記溶媒系(B)が(B3)グリコールエーテルを更に含む、請求項1~7のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項9】
175℃より高い沸点を有する溶媒を実質的に含まない、請求項1~8のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が、ペンダントグラフト構造を有するブロックコポリマーである、請求項1~9のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項11】
前記ポリエーテル変性シリコーン(C)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて0.001~4重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項12】
(D)ロジン樹脂を更に含む、請求項1~11のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項13】
前記ロジン樹脂(D)が、前記インクジェットインクの総重量に基づいて10重量%までの量で存在する、請求項12に記載のインクジェットインク。
【請求項14】
(E)着色剤を更に含む、請求項1~13のいずれかに記載のインクジェットインク。
【請求項15】
基材上に印刷画像を形成する方法であって、
サーマルインクジェットプリントヘッドを用いて請求項1~14のいずれかに記載のインクジェットインクを前記基材上に塗布することと、
前記インクジェットインクを乾燥させることと、
を含む、方法。
【国際調査報告】