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特表2023-546945高周波応答を有する大面積印刷圧電素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】高周波応答を有する大面積印刷圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/40 20230101AFI20231031BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20231031BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20231031BHJP
   H10N 30/06 20230101ALI20231031BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20231031BHJP
   H10N 30/85 20230101ALI20231031BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20231031BHJP
   H10N 30/045 20230101ALI20231031BHJP
【FI】
H10N30/40
H10N30/20
H10N30/30
H10N30/06
H10N30/87
H10N30/85
H10N30/857
H10N30/045
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524854
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 NL2021050649
(87)【国際公開番号】W WO2022093017
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】20204030.9
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519066452
【氏名又は名称】ネーデルラントセ オルハニサティエ フォール トゥーヘパスト-ナトゥールヴェッテンシャッペリーク オンデルズック テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ザラー, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】スミット, エドガー コンスタンツ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】バーグフォーン, マリア マーサ アントネッタ
(72)【発明者】
【氏名】ライテリ, ダニエレ
(57)【要約】
圧電素子は、下部電極と上部電極の間に圧電層を挟んで圧電トランスデューサを形成する圧電スタックを含む。下部電極および上部電極の少なくとも一方は、第1の抵抗率を有するポリマー系導電材料で形成されたポリマー電極である。導電線構造体は、ポリマー電極の接触領域と少なくとも部分的に重なる1つ以上の導電線を有し、これらの導電線の長さ方向に沿って接触領域との延長線接触部を形成する。導電線構造体は、延長線接触部を介してポリマー電極の全体に電界を分布させるために、第1の抵抗率よりも低い第2の抵抗率を有する導電性材料で形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極(3)と上部電極(4)との間に挟まれて圧電トランスデューサ(10)を形成する圧電層(2)を有する圧電スタックであって、前記下部電極(3)および前記上部電極(4)の少なくとも一方が、第1の抵抗率(Rp)を有するポリマー系導電材料(Mp)で形成されたポリマー電極(P)である、圧電スタックと、
ポリマー電極(P)の接触領域(Ap)と重なる1つ以上の導電線(5a,5b,5c,5d)を有し、当該導電線の各々の長さ方向に沿って前記接触領域(Ap)との延長線接触部(Lc)を形成する導電線構造体(5)であって、当該導電線構造体(5)は、前記延長線接触部(Lc)を介して前記ポリマー電極(P)の全体に電界(E)を分布させるために、前記第1の抵抗率(Rp)よりも低い第2の抵抗率(Rc)を有する導電性材料(Mc)で形成されている、導電線構造体(5)と
を備え、
前記導電線構造体(5)は、
バスバーであって、当該バスバーの長さが前記ポリマー電極(P)の周りに少なくとも部分的に延び、前記ポリマー電極(P)の異なる側部の周縁に接触することによって前記延長線接触部を形成する、バスバーと、
前記導電線の間を含む前記ポリマー電極(P)の隣接領域に電界(E)を分布させるために、前記ポリマー電極(P)の内側接触領域(Api)を覆う導電線(5b、5c、5d)のグリッドと
のうちの少なくとも一方を備える、圧電素子(100)。
【請求項2】
前記接触領域(Ap)に重なる前記導電線構造体(5)は、導電性金属線(5a,5b,5c,5d)の相互接続されたセットを含み、各線は0.5ミリメートル未満の線幅(Wl)を有する、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記バスバーの長さが、前記ポリマー電極(P)の周縁の少なくとも50パーセントに沿って延びている、請求項1または2に記載の素子。
【請求項4】
前記導電線の間の前記ポリマー電極(P)の隣接領域が、前記導電線構造体(5)によって覆われていない、請求項1から3のいずれかに記載の素子。
【請求項5】
前記導電線(5b,5c,5d)のグリッドは、前記バスバーを介して相互接続されている、請求項3または4に記載の素子。
【請求項6】
前記バスバーを形成する導電線(5a)は、前記ポリマー電極(P)の縁部における外側接触領域(Apo)を覆う、請求項5に記載の素子。
【請求項7】
前記ポリマー電極(P)が、第1の線幅(Wl)を有する導電線(5b,5c,5d)のグリッドによって覆われており、各線は、前記第1の線幅(Wl)の2分の1以下である第2の線幅(Wf)を有するヒューズ線(5f)を介してバスバー(5a)に接続されている、請求項1から6のいずれかに記載の素子。
【請求項8】
前記圧電素子(100)は、前記圧電層(2)の一方の側の前記導電線構造体(5)と前記圧電層(2)の他方の側の対向電極との間に配置された誘電材料(Md)のパターンによって形成された誘電体バリア(6)を含む、請求項1から7のいずれかに記載の素子。
【請求項9】
前記誘電体バリア(6)が前記圧電層(2)の上に配置され、誘電材料(Md)の前記パターンは、前記導電線構造体(5)の上方に配置され、前記誘電体バリア(6)と前記導電線構造体(5)との間に前記圧電層(2)を挟むことによって、前記上部電極(4)の導電材料が前記導電線構造体(5)の上方で前記圧電層(2)に接触することを防止する、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
前記誘電体バリア(6)は、前記導電線構造体(5)と前記圧電層(2)との間に配置され、前記導電線構造体(5)は、前記ポリマー電極(P)の上に配置される、請求項8または9に記載の素子。
【請求項11】
前記下部電極(3)および前記上部電極(4)の両方がポリマー電極(P)であり、前記下部電極(3)は第1の導電線構造体(5s)を備え、前記上部電極(4)は第2の導電線構造体(5t)を備え、前記第2の導電線構造体(5t)を形成する導電線が前記第1の導電線構造体(5s)を形成する導電線に対して互い違いに配置される、請求項1から10のいずれかに記載の素子。
【請求項12】
前記ポリマー電極(P)は、少なくとも2平方センチメートルの全表面積にわたって前記圧電層(2)に接触する1マイクロメートル未満の厚さを有するポリマー系導電性材料(Mp)の層によって形成されている、請求項1から11のいずれかに記載の素子。
【請求項13】
前記第2の抵抗率(Rc)は、前記第1の抵抗率(Rp)の100分の1以下である、請求項1から12のいずれかに記載の素子。
【請求項14】
前記圧電層(2)が、圧電ポリマー材料、またはポリマー材料と無機圧電材料との複合材料からなる、請求項1から13のいずれかに記載の素子。
【請求項15】
圧電素子(100)を製造する方法であって、
基板(1)上に配置された圧電スタックの下部電極および/または上部電極に、連続的な表面領域を形成するポリマー電極(P)を成膜する工程であって、前記圧電スタックは、前記下部電極(3)と前記上部電極(4)の間に挟まれて圧電トランスデューサ(10)を形成する圧電層(2)を含み、前記ポリマー電極(P)は第1の抵抗率(Rp)を有するポリマー系導電材料(Mp)から形成される、工程と、
前記ポリマー電極(P)を成膜する前または後に、導電線構造体(5)を印刷する工程であって、当該導電線構造体(5)は、前記ポリマー電極(P)の接触領域(Ap)と重なる1つ以上の導電線(5a,5b,5c,5d)を有し、当該導電線の各々の長さ方向に沿って前記接触領域(Ap)との延長線接触部(Lc)を形成し、当該延長線接触部(Lc)は前記連続的な表面領域のサブエリア部分と重なり、前記導電線構造体(5)は、前記延長線接触部(Lc)を介して、前記導電線構造体(5)によって覆われていない前記ポリマー電極(P)の隣接領域を含めて、前記ポリマー電極(P)の全体に電界(E)を分布させるために、前記第1の抵抗率(Rp)よりも低い第2の抵抗率(Rc)を有する導電性材料(Mc)で形成されている、工程と
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は、様々な用途に使われる。センシングやアクチュエーションなどの一部の用途では、比較的大きなセンサーエリア、例えばターゲット表面と同じような大きさのセンサーエリアが有益となり得る。圧電素子の典型的な構成では、圧電層が2つの電極に挟まれる。圧電素子の故障は、通常、ポーリング中に明らかになる。ポーリングは、抗電界以上の電界を印加して強誘電体結晶ドメインを配向させる。強誘電体を完全にポーリングするための抗電界は、強誘電体ポリマーでは通常100MV/mのオーダーである。大面積の素子を最適に得るために、圧電層は欠陥がなく、厚さが均一で、すべての処理工程でその状態が維持されることが好ましい。例えば、欠陥があるとショートやリークが発生する。そのため、ポーリングの過程では、強誘電体層を均一に分極させるために、無欠陥層の全体に均一な電界を印加する必要がある。特に、表面粗さが大きい(rms粗さが1μm以上)か、または表面エネルギーが小さい(1000mJ/m未満)基板や電極では、これらの条件を満たすことが難しい場合がある。
【0003】
薄膜(例えば50μm未満)圧電素子の素子面積を、高い歩留まりで、圧電体の周波数応答(例えば一部の用途では200kHz以上)を維持したまま、より大きな面積(例えば1平方センチメートル以上)に拡張する必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の態様は、圧電素子およびその製造方法に関する。一般的に、圧電スタックは、下部電極と上部電極の間に圧電層を挟んで圧電トランスデューサを形成する構成を有する。本明細書で説明するように、下部電極および上部電極の少なくとも一方は、第1の抵抗率を有するポリマー系導電材料で形成されたポリマー電極である。導電線構造体が、好ましくは印刷によって提供され、ポリマー電極の接触領域との延長線接触部を形成する。接触部は、接触領域と少なくとも部分的に重なる導電線構造体の1つ以上の導電線のそれぞれの長さ方向に沿って延びている。有利な態様としては、導電線構造体は、延長線接触部を介してポリマー電極の全体に電界を分布させるために、第1の抵抗率よりも低い第2の抵抗率を有する導電性材料で形成されている。
【0005】
ポリマー電極は、比較的平滑で、比較的高い表面エネルギーを持つことができ、例えば、無欠陥膜の形成を容易にする。そこで、ポリマー電極を使用することで、歩留まりの問題を緩和することができる。導電線構造体を用いれば、ポリマー系導電材料の比較的乏しい導電性、例えば高いシート抵抗を緩和することができる。これにより、圧電素子の周波数応答カットオフ周波数(RC時間)を向上させることができる。また、圧電素子の(接触)ポーリング時に電圧を均質に供給することや、ショートを防止することにも役立ち得る。このように、本開示は、大面積の圧電センサを高い歩留まりで製造することを可能にする様々な設計オプションを提供する。これらの設計では、圧電層が小さい素子設計で一般的に用いられる従来の素子構造(電極/圧電体/電極からなる単純なサンドイッチ)を採用したものと比較して、圧電素子の周波数応答を拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の装置、システムおよび方法の特徴、態様および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面からよりよく理解されるであろう。
【0007】
図1A】圧電素子の断面図である。
図1B】素子の一部を構成する選択層の上面図である。
図2A】圧電素子の断面図である。
図2B】素子の一部を構成する選択層の上面図である。
図3A】圧電素子の断面図である。
図3B】素子の一部を構成する選択層の上面図である。
図4A】圧電素子の断面図である。
図4B】素子の一部を構成する選択層の上面図である。
図5A】さらなる圧電素子の断面図である。
図5B】さらなる圧電素子の断面図である。
図5C】さらなる圧電素子の断面図である。
図6A】ヒューズ構造体を介してバスバーに接続された線のグリッドを示す図である。
図6B】ヒューズ構造体を介してバスバーに接続された線のグリッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特定の実施形態を説明するために使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図している。「および/または」という用語は、関連する列挙された要素の一つまたは複数の様々な組み合わせを含む。「備える」および/または「有する」という用語は、述べられた特徴が存在することを意味するが、他の一つまたは複数の特徴が存在することまたは追加されることを排除していない。方法の一の工程が別の工程の後に実施されると説明された場合、そうでないと明記されない限り、それは別の工程の後に一の工程が直接続くか、または一の工程を実行する前に一つまたは複数の中間工程を実行してもよいことを意味する。同様に、構造または構成要素間の接続が説明されている場合、特にそうでないと明記されない限り、この接続は直接行われるか、または中間の構造もしくは構成要素を介して行われることを意味する。
【0009】
本明細書で説明するように、歩留まり、ポーリング品質、および周波数応答の問題は、以下のうちの1つまたは複数によって軽減され得る。それらは、ポリマー電極、例えばPEDOT:PSSまたはポリアニリンの周囲に導電バスバー(例えばAg、Au、Cなど)を設けることによって、より均質なポーリング電界を確保すること;圧電層の上、例えば、導電バスバーの上方に誘電体バリアを設けることによって、ポーリング中のショートを防ぐこと;好ましくはポリマー電極層の上に印刷され、最も好ましくはグリッドの上に追加の誘電印刷体を有することを特徴とする導電グリッド(例えばAg、Au、Cなど)を設けること;およびヒューズに類似する動作によって重大なデバイス障害を回避するセグメンテーション戦略である。
【0010】
ポリマー電極は、通常、シート抵抗が大面積のデバイスには高すぎる(200Ω/sq以上)ため、独立した電極として使用することはできない。また、異なる基板(熱可塑性ポリウレタンなど)では、シート抵抗が公称値より高くなり、周波数応答が悪化することもあり得る。このように金属電極に比べて導電性が低いポリマー電極は、特に大面積の圧電層では応答時間が長くなる可能性がある。例えば、周波数応答は、コンデンサにかかる電圧の時間的変化の時定数を表す特性RC時間から理解することができる。そのため、比較的低い導電率を有するポリマー系導電材料は、一般的に、高い周波数応答を必要とする大面積の圧電素子には不向きとされている。バスバーまたは金属グリッド構造体、例えばプリント導体(例えばAg、Au、Cなど)によって形成されたものを用いることで、圧電素子の固有の周波数応答をほぼ維持することができる。
【0011】
圧電素子の様々な用途において、カットオフ周波数は、スピーカーや他の音響トランスデューサ/アクチュエータ(超音波デバイスなど)にとって、重要なデバイスパラメータである。ポリマー電極のシート抵抗の影響を排除するために、導電性リング(バスバー)にPEDOT:PSSをオーバープリントすることができる。バスバーを使用することで、ポーリング時の電界分布がより均一になるため、センサ領域の拡大が可能となる。バスバーは、より大きな統合製品および/またはコネクタにセンサを接続する配線に接続することもできる。バスバーと上部電極や配線が重なる領域では、圧電材料が局所的に薄くなるため、高電界(60V/μm以上)でのポーリング時にショートが発生するリスクが高くなる。ショートが発生するリスクは、例えば、導電性バスバーと上部電極との間の十分な距離を確保する誘電体バリアによって最小化することができる。誘電体バリアは、圧電材料の上、または下に適用することができる。
【0012】
ヒューズに類似した動作によって重大なデバイス障害を回避するセグメンテーション戦略によって、他のまたはさらなる利点を達成することができる。電極層の1つは、ヒューズを有するセグメント化された領域で構成される。ポーリング中に1つのセグメント化された領域でショートが発生すると、その結果生じる大電流によって、その領域とバスバーをつなぐ細い線(ヒューズ)が焼ける。この領域は機能不全に陥るが、圧電センサの残りの部分はまだ機能する。この構造は、上述の設計(誘電体ブリッジ)の態様を利用することができる。
【0013】
本開示により、デバイスの周波数応答を維持したまま、大きなセンサ領域を実現することが可能となる。この設計は、熱可塑性ポリウレタンなどの凹凸のある基板でも、デバイスの歩留まりを向上させることができる。この設計は、完全に印刷可能な、つまり拡張可能な設計である。この設計は、一部の部品が故障しても機能を持続できるなど、反脆弱性のある設計である。この設計は、上下電極に高分子電極を使用した場合、光学的に透明なアクティブセンサ/アクチュエータとなり得る設計である。
【0014】
本発明は、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下に説明される。説明を明確にするために、図面における、システム、構成要素、層および領域の絶対的および相対的サイズは誇張されている場合がある。実施形態が、本発明の理想化された実施形態および中間構造の概略図および/または断面図を参照して説明されるであろう。以下の説明および図面において、同様の番号は同様の要素を指す。相対的な関係を示す用語およびその派生語は、その時説明されているまたは説明中の図面に示されている方向に基づくと解釈されるべきである。これら相対的な関係を示す用語は説明の便宜上のものであり、特にそうでないと明記されない限り、システムを特定の向きで構築または操作する必要はない。
【0015】
図1A,2A,3A,4Aは、それぞれの圧電素子100の断面図であり、図1B,2B,3B,4Bは、それぞれの圧電素子の一部を形成する選択層の対応する上面図であり、図5Aから5Cは、さらなる圧電素子100の断面図であり、図6A,6Bは、ヒューズ構造体を介してバスバーに接続された線のグリッドを示す図である。各図は、好ましくは基板1上に配置された圧電スタックを含む圧電素子100を示す。圧電スタックは、下部電極3と上部電極4の間に圧電層2を挟んで圧電トランスデューサ10を形成する構成を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、下部電極3および上部電極4の少なくとも一方は、第1の抵抗率「Rp」を有するポリマー系導電材料「Mp」で形成されたポリマー電極「P」である。一実施形態では、この素子は、導電線構造体5を含む。導電線構造体5は、ポリマー電極「P」の接触領域「Ap」と少なくとも部分的に重なる1つ以上の導電線5a,5b,5c,5dを有し、これらの導電線の長さ方向に沿って接触領域「Ap」との延長線接触部「Lc」を形成する。好ましくは、導電線構造体5は、延長線接触部「Lc」を介してポリマー電極「P」の全体に電界「E」または電圧を分布させるために、第1の抵抗率「Rp」よりも低い第2の抵抗率「Rc」を有する導電性材料Mcで形成されている。
【0017】
一般的に、ポリマー系導電性材料「Mp」は、比較的高い抵抗率、すなわち低い導電率を有する。好ましくは、ポリマー系導電材料「Mp」は、「PEDOT:PSS」として知られるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネートからなる。また、ポリアニリンのような他のポリマー系導電材料も想定される。PEDOT:PSSなどのポリマー系導電材料「Mp」は、組成によって、500~5000Ω・cmの抵抗率を有する。これを、銅などの金属導体の抵抗率が10-6Ω・cm程度であることと比較するとよい。好ましい実施形態では、第2の抵抗率「Rc」は、第1の抵抗率「Rp」よりもはるかに低い。例えば、10分の1以下、100分の1以下、1000分の1以下、1万分の1以下、10万分の1以下、またはそれ以下である。
【0018】
一般的には、ポリマー電極「P」は、100オーム/平方(「Ω/sq」)を超える、あるいは200Ω/sqを超える比較的高いシート抵抗を有する。例えば、スクリーン印刷用ペーストの場合、一般的なシート抵抗率は200~500Ω/sqである。これを、一般的に0.5mΩ/sq程度のシート抵抗を持つ銅などの低抵抗金属電極と比較するとよい。好ましい実施形態では、導電線構造体5は、ポリマー電極「P」のシート抵抗よりもはるかに低いシート抵抗を有する。例えば、10分の1以下、100分の1以下、1000分の1以下、1万分の1以下、10万分の1以下、またはそれ以下のシート抵抗を有する。導電線構造体5の(シート)抵抗が低いほど、この構造体は、電界および/または電圧をポリマー電極「P」の全体に高速で分布させるように、より良好に作用することができる。また、デバイスの特性RC時間を短縮することができる。
【0019】
本明細書で説明するように、導電線、例えば回路レーンまたは電極線は、その幅よりも著しく大きい、例えば少なくとも5倍、10倍、20倍、またはそれ以上の長さを有する細長い構造体として理解される。線の厚さ「Tl」は、通常、線幅と同様、同一、またはそれ未満である。典型的には、各導電線は、1ミリメートル未満、500マイクロメートル未満、200マイクロメートル未満、または100マイクロメートル未満、例えば、1~50マイクロメートル、または5~30マイクロメートルの線幅「Wl」を有する。例えば、導電線は、1~50μm、好ましくは5~10μmの厚み「Tl」を有する。当然のことながら、厚さは、例えば材料の導電率に応じて変えることができる。
【0020】
好ましくは、隣接する線の間に少なくともいくらかの距離がある。いくつかの実施形態では、例えば図1~4に示すように、線間距離「Dl」は、線幅よりもはるかに大きく、例えば2倍、3倍、5倍、10倍またはそれ以上とすることができる。導電線間の距離を大きくとることで、より柔軟で製造しやすい構造とすることができる。他のまたはさらなる実施形態では、例えば図6Aに示すように、線間距離「Dl」は、線幅「Wl」と同じまたはそれより小さく、例えば線幅「Wl」の10パーセントから100パーセントの間であり得る。導電線を互いに近接して詰めることで、導電性の低いポリマー層でも好適に対応することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、導電線構造体5は、1つまたは複数の導電性金属(またはメタロイド)線、例えば銀、金、銅、炭素等の相互接続されたセットを含む。最も好ましくは、導電線構造体5は、1セットの印刷された金属線、例えば、印刷された銀インクまたは他のインクの線を含む。例えば、金属構造体は、ポリマー電極「P」を成膜する前に(例えば図1A,2A,3A,4Aに示すように)、および/またはポリマー電極「P」の上に(例えば図5A~5Cに示すように)、基板1上に印刷または他の方法で適用される。
【0022】
いくつかの実施形態では、例えば図1及び図2に示されるように、導電線構造体5は、バスバー、例えば導電線からなり、バスバーの長さがポリマー電極「P」の周りに少なくとも部分的に延び、ポリマー電極「P」の周縁に接触することによって延長接触部を形成する。例えば、バスバーは、周縁の少なくとも30パーセント、好ましくは少なくとも50パーセント、より好ましくは少なくとも80または90パーセントに沿って延び、または全周に亘って延びる。代替的に、または追加的に、バスバーは、少なくともポリマー電極Pの周縁の対向する縁部に接触するように延びる。言い換えれば、ポリマー電極「P」は、ポリマー系導電材料「Mp」に接触するバスバーによって1つまたは複数の側面で囲まれた島または半島を形成し得る。
【0023】
他のまたはさらなる実施形態では、例えば図3および図4に示されるように、導電線構造体5は、ポリマー電極「P」および/または圧電層2の内側接触領域「Api」を覆うおよび/またはセグメント化する導電線5b,5c,5dのグリッドを含む。好ましくは、導電線5b,5c,5dのグリッドは、バスバーを介して相互に接続される。一実施形態では、例えば図3に示すように、バスバーを形成する導電ライン5aは、ポリマー電極「P」の縁部における外側接触領域を覆う。ポリマー電極「P」を形成する層は、原則として、バスバーの周縁内の内側の領域に限定することも、バスバーを越えて続くより大きな領域を形成することも可能であり、後者の場合、例えば、それぞれのバスバーおよび/または線のグリッドを有する複数の圧電トランスデューサを形成することができる。いくつかの実施形態では、例えば図6に示すように、バスバーを形成する導電線5aは、ポリマー電極「P」に直接接触する必要はない。例えば、ポリマー電極「P」は、専ら線のグリッドを介して接触させることができる。
【0024】
本明細書で説明するように、圧電素子100は、好ましくは100~500nm、例えば200nmの層厚(Tp)を有する少なくとも1つのポリマー電極;およびこのポリマー電極の上または下に印刷された5~10μmの線厚を有するバスバーおよび/または金属線のグリッド、例えば印刷された銀からなる。ポリマー層の利点として、ポリマー電極を透明にできることが挙げられる。別のまたはさらなる利点は、金属、例えば銀のみでできた電極と比較して、歩留まりの向上/その後の圧電層の成膜のための表面粗さの低減であろう。好ましくは、圧電層2は、P(VDF-TrFE)のような圧電ポリマー材料、またはポリマー材料と無機材料、例えば圧電材料との複合材料からなる。
【0025】
典型的には、圧電層2は、1~50μm、好ましくは5~30μmの間の層厚Tiを有する。典型的には、圧電素子100はまた、例えば5~10μmの層厚を有する金属層(例えばバスバーと同じ)により形成された上部電極;または上部にそれぞれの導電線構造体5を有する別の導電性ポリマー層(例えば下部電極と同じ)を含む。例えば、上部および下部のポリマー電極層の各々と圧電層を透明とすることができる。層のスタックは、好ましくは、フレキシブル基板1上に配置され、フレキシブル基板1は、例えば、典型的な基板厚Tsが50マイクロメートル以上、例えば、最大1ミリメートル以上の厚さを有する。
【0026】
本明細書で説明し図示した実施形態から理解されるように、導電線構造体5は、ポリマー電極Pの一部のみを覆ってもよい。この場合、例えば、電界「E」をその間のポリマー電極Pの他の(隣接)領域に広げるが、この領域とは、導電線構造体5のない(それに覆われていない)ポリマー電極Pの他の領域であり、例えば導電線構造体5のそれぞれの線の間のおよび/またはそれに隣接する領域である。典型的には、導電線構造体5によって覆われたポリマー電極Pの割合は、90%未満、50%未満、30%未満、あるいは20%未満、例えば、5~90%である。例えば、ポリマー電極Pの表面積は、導電線構造体5よりも大きく、例えば、少なくとも1.1倍(10%)、1.2倍(20%)、1.5倍(50%)、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、又はそれ以上である。
【0027】
本開示は、比較的大きな表面積を有する1つまたは複数のポリマー電極Pを有する圧電素子に特に利益をもたらすことができる。例えば、ポリマー電極「P」は、1マイクロメートル未満、例えば100~500nmの厚さを有する層によって形成され、少なくとも1平方センチメートル以上、例えば少なくとも2、5、あるいは10平方センチメートルの表面積にわたって圧電層2に接触する。例えば、本発明の用途は、本明細書に記載の圧電素子100からなるセンサ、アクチュエータ、および/またはプッシュボタンを含み、これらは、1つまたは複数の透明ポリマー電極を透かすバックライトを有することがある。
【0028】
いくつかの実施形態では、例えば図6に示すように、導電線5b,5c,5dのグリッドは、本明細書では「ヒューズ線」5fとして説明する構造体を介して相互に接続される。一実施形態では、ポリマー電極「P」が、第1の線幅「Wl」を有する導電線5b,5c,5dのグリッドによって覆われており、各線は、第1の線幅「Wl」よりも小さい、例えば2分の1以下、3分の1以下、またはそれ以下の第2の線幅Wfを有するヒューズ線5fを介してバスバー5aに接続されている。
【0029】
好ましくは、バスバーを形成する導電線5aは、比較的大きな第3の線幅Wbを有し、第3の線幅Wbは、例えば第1の線幅「Wl」と同じか、または例えば少なくとも10、20、または30パーセントだけ大きい。図6Bに示すように、比較的細いヒューズ線5fは、その線への電流が電流閾値を超えたときに、導電線5aへの接続を切断する(焼き切る)「ヒューズ」として有効に機能し得る。これは、例えばポーリング中または通常の使用中に、圧電層2を介した(局所的な)ショートの場合に、素子の完全な故障を防ぐことができる。このようなヒューズ構造は、線間に電界を広げるためのポリマー電極「P」との組み合わせで特に有利になるが、原理的にはポリマー電極「P」を省略することも可能である。例えば、バスバーにそれぞれのヒューズを介して接続された線5b,5c,5dのグリッドは、圧電層2に直接接触することができる。例えば、線間の距離は比較的小さく、例えば線幅の50%未満とすることができるため、線は圧電層2の大部分を効果的に被覆する。
【0030】
いくつかの実施形態では、例えば図2図4、および図5に示すように、圧電素子100は、圧電層2の一方の側の導電線構造体5と、圧電層2の他方の側の対向電極との間に配置された誘電材料「Md」のパターンによって形成された誘電体バリア6を含む。例えば、誘電体バリア6は、第1の抵抗率「Rp」よりも(はるかに)高い、例えば少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上の第3の抵抗率Rdを有する誘電材料「Md」から形成されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、例えば図2Aおよび図5Cに示すように、誘電体バリア6が圧電層2の上に配置される。ここで、誘電材料「Md」のパターンは、導電線構造体5の上方に配置され、誘電体バリア6と導電線構造体5との間に圧電層2を挟み、これによって上部電極4の導電材料が導電線構造体5の上方で圧電層2に接触することを防止する。例えば、図2B及び図4Bに示すように、誘電体バリア6は、(圧電層2の反対側の)導電線構造体5のパターンに合わせて圧電層2上に配置され、任意に、いくらかの、例えば少なくとも10マイクロメートルのマージンXcを設ける。誘電体バリアに適した材料の例としては、例えば、ポリウレタンなどのポリマー材料、または無機フィラー/ポリマーからなる複合材料などを挙げることができる。誘電体バリア6を用いることにより、圧電層2の下の導電線構造体5の最も近い線に対して横方向に(マージンXcの分だけ)オフセットした位置で、上部電極4が圧電層2に独占的に接触することを確実にできる。このようにすれば、特にポーリング時に、導電線構造体5と対向電極との間のショートを防止することができる。
【0032】
一実施形態では、例えば図2Aに示すように、対向(上部)電極は、導電線構造体5と同じかまたは同程度の高導電率/低抵抗率を有する導電材料で形成することができる。例えば、誘電体バリア6を成膜した後に、上部電極4の導電材料を印刷することができる。別のまたはさらなる実施形態では、例えば図5Cに示すように、対向(上部)電極は、それぞれの導電線構造体5tを有するポリマー電極「P」でもあり得る。例えば、誘電体バリア6の後にポリマー系導電材料「Mp」を成膜し、その上(または下)に導電線構造体5を成膜することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、例えば図4Aおよび図5Bに示すように、誘電体バリア6は、導電線構造体5と圧電層2との間に配置され、導電線構造体5は、ポリマー電極「P」の上に配置される。好ましい実施形態では、誘電体バリア6は、導電線構造体5の上に丸みを帯びた構造体を形成する。これにより、圧電層2を成膜するために比較的平滑な層を提供することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、例えば図5A図5Cに示すように、圧電素子100は、下部電極3および上部電極4の両方をポリマー電極Pで構成している。例えば、本明細書で説明するように、下部電極3には第1の導電線構造体5sが設けられ、上部電極4には第2の導電線構造体5tが設けられる。
【0035】
好ましい実施形態では、第2の導電線構造体5tを形成する導電線は、第1の導電線構造体5sを形成する導電線に対して、例えば基板面に垂直な上面投影で互い違いに配置(横方向にオフセットするように配置)されている。圧電層2に対向する導電線を互い違いに配置することで、圧電層2を通る最近接線間の距離「Dc」を最大化することができる。これにより、例えば、圧電層2を介したショートを防止することができる。好ましくは、圧電層2を通る線間距離「Dc」は、圧電層2の層厚「Ti」から下部の導電線の任意の高さ「Tl」を引いた値よりも大きく、例えばDcは(Ti-Tl)よりも少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、またはそれ以上大きい。一実施形態では、第1の導電線構造体5sのそれぞれの線は、第2の導電線構造体5tのそれぞれの対になる線の間に(例えば等距離に)配置され、および/またはその逆もまた同様である。別のまたはさらなる実施形態では、第1の導電線構造体5sを形成する一組の線と第2の導電線構造体5tを形成する一組の線とは、互いに平行であるが、基板1に平行な面内で横方向にオフセットされている。
【0036】
例えば図5Bに示されるように、互い違いの構成は、第1の導電線構造体5sおよび第2の導電線構造体5tの線の間に配置された誘電体バリア6と組み合わせることができる。これにより、ショートに対する保護をさらに強化することができ、例えば、圧電層2の厚さ「Ti」をより小さくすることが可能になる。例えば図5Cに示されるように、第2の導電線構造体5tを形成する互い違いの線は、第1の導電線構造体5sを形成するバスバーと、及び/又は上部ポリマー電極「P」を画定する誘電バリア6と組み合わせることもできる。また、他の組み合わせも可能であり、例えば、図6を参照して説明したように、バスバーおよび/またはグリッド線と1つまたは複数のヒューズ線5fを組み合わせることができる。
【0037】
明確且つ簡潔に説明することを目的として、同一または別個の実施形態の一部として本明細書では特徴を説明している。しかし、本発明の範囲は、記載された特徴のすべてまたは一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されたい。例えば、ポリマー層、バスバー、グリッド線、誘電体バリア、およびヒューズ線の様々な配置で実施形態を示したが、同様の機能および結果を達成するための代替方法も、本開示の利益を享受する当業者によって想定され得る。説明および図示された実施形態の様々な要素は、高歩留まりおよび高周波応答を有する大面積の圧電素子を提供するなどの特定の利点を提示するものである。無論、上記の実施形態またはプロセスのいずれか一つを、一つもしくは複数の他の実施形態またはプロセスと組み合わせて、設計および利点の発見およびマッチングを改善できることは明らかである。本開示は、印刷された圧電素子に特定の利点を提供するものであり、概して、圧電素子におけるポリマー電極および導電線構造体のあらゆる用途に適用できることが理解される。
【0038】
添付の特許請求の範囲を解釈する際に、「備える」という言葉は、特許請求の範囲に記載されているもの以外の他の要素または行為の存在を除外していないことを理解されたい。「a(一の)」または「an(1つの)」という単語は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。また、特許請求の範囲に記載されている参照番号によって、その範囲を制限されない。いくつかの「手段」は、同じもしくは異なる項目、実装構造または機能によって表される場合がある。特にそうでないと明記しない限り、開示された装置またはその部分のいずれも一緒に組み合わせるまたはさらなる別の部分へと分離することができる。一の請求項が別の請求項を参照している場合、これは、それぞれの機能の組み合わせによって達成される相乗効果を示している可能性がある。しかしながら、特定の手段が相互に異なる請求項で引用されているとしても、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。したがって、本実施形態は、請求項の全ての実用的な組み合わせを包含し、各請求項は文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、原則として先行する任意の請求項を参照することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極(3)と上部電極(4)との間に挟まれて圧電トランスデューサ(10)を形成する圧電層(2)を有する圧電スタックであって、前記下部電極(3)および前記上部電極(4)の少なくとも一方が、第1の抵抗率(Rp)を有するポリマー系導電材料(Mp)で形成されたポリマー電極(P)である、圧電スタックと、
ポリマー電極(P)の接触領域(Ap)と重なる1つ以上の導電線(5a,5b,5c,5d)を有し、当該導電線の各々の長さ方向に沿って前記接触領域(Ap)との延長線接触部(Lc)を形成する導電線構造体(5)であって、当該導電線構造体(5)は、前記延長線接触部(Lc)を介して前記ポリマー電極(P)の全体に電界(E)を分布させるために、前記第1の抵抗率(Rp)よりも低い第2の抵抗率(Rc)を有する導電性材料(Mc)で形成されている、導電線構造体(5)と
を備え、
前記導電線構造体(5)は、
バスバーであって、当該バスバーの長さが前記ポリマー電極(P)の周りに少なくとも部分的に延び、前記ポリマー電極(P)の異なる側部の周縁に接触することによって前記延長線接触部を形成する、バスバーと、
前記導電線の間を含む前記ポリマー電極(P)の隣接領域に電界(E)を分布させるために、前記ポリマー電極(P)の内側接触領域(Api)を覆う導電線(5b、5c、5d)のグリッドと
のうちの少なくとも一方を備える、圧電素子(100)。
【請求項2】
前記接触領域(Ap)に重なる前記導電線構造体(5)は、導電性金属線(5a,5b,5c,5d)の相互接続されたセットを含み、各線は0.5ミリメートル未満の線幅(Wl)を有する、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記バスバーの長さが、前記ポリマー電極(P)の周縁の少なくとも50パーセントに沿って延びている、請求項1または2に記載の素子。
【請求項4】
前記導電線の間の前記ポリマー電極(P)の隣接領域が、前記導電線構造体(5)によって覆われていない、請求項1から3のいずれかに記載の素子。
【請求項5】
前記導電線(5b,5c,5d)のグリッドは、前記バスバーを介して相互接続されている、請求項1から4のいずれかに記載の素子。
【請求項6】
前記バスバーを形成する導電線(5a)は、前記ポリマー電極(P)の縁部における外側接触領域(Apo)を覆う、請求項1から5のいずれかに記載の素子。
【請求項7】
前記ポリマー電極(P)が、第1の線幅(Wl)を有する導電線(5b,5c,5d)のグリッドによって覆われており、各線は、前記第1の線幅(Wl)の2分の1以下である第2の線幅(Wf)を有するヒューズ線(5f)を介してバスバー(5a)に接続されている、請求項1から6のいずれかに記載の素子。
【請求項8】
前記圧電素子(100)は、前記圧電層(2)の一方の側の前記導電線構造体(5)と前記圧電層(2)の他方の側の対向電極との間に配置された誘電材料(Md)のパターンによって形成された誘電体バリア(6)を含む、請求項1から7のいずれかに記載の素子。
【請求項9】
前記誘電体バリア(6)が前記圧電層(2)の上に配置され、誘電材料(Md)の前記パターンは、前記導電線構造体(5)の上方に配置され、前記誘電体バリア(6)と前記導電線構造体(5)との間に前記圧電層(2)を挟むことによって、前記上部電極(4)の導電材料が前記導電線構造体(5)の上方で前記圧電層(2)に接触することを防止する、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
前記誘電体バリア(6)は、前記導電線構造体(5)と前記圧電層(2)との間に配置され、前記導電線構造体(5)は、前記ポリマー電極(P)の上に配置される、請求項8または9に記載の素子。
【請求項11】
前記下部電極(3)および前記上部電極(4)の両方がポリマー電極(P)であり、前記下部電極(3)は第1の導電線構造体(5s)を備え、前記上部電極(4)は第2の導電線構造体(5t)を備え、前記第2の導電線構造体(5t)を形成する導電線が前記第1の導電線構造体(5s)を形成する導電線に対して互い違いに配置される、請求項1から10のいずれかに記載の素子。
【請求項12】
前記ポリマー電極(P)は、少なくとも2平方センチメートルの全表面積にわたって前記圧電層(2)に接触する1マイクロメートル未満の厚さを有するポリマー系導電性材料(Mp)の層によって形成されている、請求項1から11のいずれかに記載の素子。
【請求項13】
前記第2の抵抗率(Rc)は、前記第1の抵抗率(Rp)の100分の1以下である、請求項1から12のいずれかに記載の素子。
【請求項14】
前記圧電層(2)が、圧電ポリマー材料、またはポリマー材料と無機圧電材料との複合材料からなる、請求項1から13のいずれかに記載の素子。
【請求項15】
圧電素子(100)を製造する方法であって、
基板(1)上に配置された圧電スタックの下部電極および/または上部電極に、連続的な表面領域を形成するポリマー電極(P)を成膜する工程であって、前記圧電スタックは、前記下部電極(3)と前記上部電極(4)の間に挟まれて圧電トランスデューサ(10)を形成する圧電層(2)を含み、前記ポリマー電極(P)は第1の抵抗率(Rp)を有するポリマー系導電材料(Mp)から形成される、工程と、
前記ポリマー電極(P)を成膜する前または後に、導電線構造体(5)を印刷する工程であって、当該導電線構造体(5)は、前記ポリマー電極(P)の接触領域(Ap)と重なる1つ以上の導電線(5a,5b,5c,5d)を有し、当該導電線の各々の長さ方向に沿って前記接触領域(Ap)との延長線接触部(Lc)を形成し、当該延長線接触部(Lc)は前記連続的な表面領域のサブエリア部分と重なり、前記導電線構造体(5)は、前記延長線接触部(Lc)を介して、前記導電線構造体(5)によって覆われていない前記ポリマー電極(P)の隣接領域を含めて、前記ポリマー電極(P)の全体に電界(E)を分布させるために、前記第1の抵抗率(Rp)よりも低い第2の抵抗率(Rc)を有する導電性材料(Mc)で形成されている、工程と
を備える方法。
【国際調査報告】