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特表2023-546952窒化ケイ素中の窒素含有量を増加させる熱間静水圧プレスのためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】窒化ケイ素中の窒素含有量を増加させる熱間静水圧プレスのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/587 20060101AFI20231031BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20231031BHJP
   A61L 27/42 20060101ALI20231031BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20231031BHJP
   C03B 19/06 20060101ALI20231031BHJP
   C03C 12/00 20060101ALI20231031BHJP
   C03C 14/00 20060101ALI20231031BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C04B35/587
A61L27/10
A61L27/42
A61L27/54
C03B19/06 B
C03B19/06 C
C03C12/00
C03C14/00
C04B35/645 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524937
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021056452
(87)【国際公開番号】W WO2022087522
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/104,852
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519324710
【氏名又は名称】シントクス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア、ブライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バル、バジャンジット シン
(72)【発明者】
【氏名】ボック、ライアン エム.
【テーマコード(参考)】
4C081
4G062
【Fターム(参考)】
4C081AB04
4C081AB05
4C081AB06
4C081BA14
4C081BB08
4C081CF111
4C081CF121
4C081CF131
4C081CF151
4C081CF22
4C081CF23
4C081CF24
4C081DA01
4C081DC12
4C081EA01
4C081EA04
4C081EA12
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4G062JJ05
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4G062KK05
4G062KK07
4G062KK08
4G062KK10
4G062MM18
4G062NN40
4G062PP10
(57)【要約】
窒素で過飽和されたセラミック材料又はガラス材料構成要素を製造する方法及びシステムが開示される。構成要素を製造するための方法は、典型的には、格納容器内にセラミック材料又はガラス材料を受容することと、加圧窒素ガスを使用して、格納容器内のセラミック材料又はガラス材料に対して第1の温度及び第1の圧力まで加熱及び静水圧印加を同時に行うことと、第1の温度及び第1の圧力をある時間保持することと、第1の圧力を維持しながら格納容器内のセラミック材料又はガラス材料を第2の温度に冷却することと、格納容器を第2の圧力に減圧することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料又はガラス材料を含む構成要素を製造する方法であって、前記方法は、
格納容器内に前記セラミック材料又はガラス材料を受容することと、
加圧窒素ガスを使用して、前記格納容器内の前記セラミック材料又はガラス材料に対して第1の温度及び第1の圧力まで加熱及び静水圧印加を同時に行うことと、
前記第1の温度及び前記第1の圧力をある時間保持することと、
前記第1の圧力を維持しながら、前記格納容器内の前記セラミック材料又はガラス材料を第2の温度に冷却することと、
前記格納容器を第2の圧力まで減圧することと、を含み、前記構成要素は、窒素で過飽和された前記セラミック材料又はガラス材料を含む、方法。
【請求項2】
前記格納容器から前記構成要素を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セラミック材料又はガラス材料は、粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記セラミック材料又はガラス材料は、前記格納容器内に受容される前に焼結される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック材料又はガラス材料は、前記格納容器内に受容される前に予備成形される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記セラミック材料は、窒化ケイ素である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の温度は、約1400℃~約1800℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の圧力は、約150MPa~約300MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記時間は、約0.5時間~約2時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の温度は、約25℃~約200℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の圧力は、ほぼ大気圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記構成要素中の前記セラミック材料又はガラス材料は、約10%~約15%の窒素で過飽和される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記セラミック材料又はガラス材料は、約0.1重量%以上の酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ランタン(La)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化ホウ素(B)、五酸化リン(P)又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却ステップは、断熱冷却を使用して生成された構成要素と比較して、前記構成要素の平均曲げ強度を200~300MPa増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
窒素で過飽和されたセラミック材料又はガラス材料を含むインプラントであって、前記インプラントは、
格納容器内に前記セラミック材料又はガラス材料を受容することと、
加圧窒素ガスを使用して、前記格納容器内の前記セラミック材料又はガラス材料に対して第1の温度及び第1の圧力まで加熱及び静水圧印加を同時に行うことと、
前記第1の温度及び前記第1の圧力をある時間保持することと、
前記第1の圧力を維持しながら、前記格納容器内の前記セラミック材料又はガラス材料を第2の温度に冷却することと、
前記格納容器を第2の圧力に減圧することと、を含む方法によって生成される、インプラント。
【請求項16】
前記セラミック材料は、窒化ケイ素である、請求項15に記載の方法によって生成された、インプラント。
【請求項17】
前記構成要素中の前記セラミック材料又はガラス材料は、約10重量%~約15重量%の窒素で過飽和されている、請求項15に記載の方法によって生成された、インプラント。
【請求項18】
前記インプラントは、約0.1重量%以上の酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ランタン(La)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化ホウ素(B)、五酸化リン(P)又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項15に記載の方法によって生成された、インプラント。
【請求項19】
前記インプラントは、抗病原性である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法によって生成された、インプラント。
【請求項20】
前記インプラントは、細菌、真菌、及びウイルスのうちの少なくとも1つの増殖を阻害する、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法によって生成された、インプラント。
【請求項21】
前記インプラントは、断熱冷却を使用して生成されたインプラントよりも200~300MPa高い平均曲げ強度を有する、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法によって生成された、インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年10月23日出願の米国仮出願第63/104,852号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、セラミック及びガラス中の窒素含有量を増加させる熱間静水圧プレスのためのシステム及び方法に関する。本開示の態様は、本明細書に開示されるシステム及び方法によって生成される構成要素又はインプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
ウイルス、細菌、及び真菌の安全で信頼性の高い不活性化及び溶解の必要性は世界共通である。ヒトの健康及び農産物に影響を及ぼす病原体を制御する広範な必要性がある。生物医学的インプラント、デバイス、及び媒介物のための抗病原性特性を保有する化合物、材料、又は構成要素を製造するための改善された多様な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、化合物、材料、又は構成要素を製造する方法及びシステムに関し、具体的には、非断熱冷却を用いた熱間静水圧プレスを使用して、化合物、材料、又は構成要素を製造することに関する。本開示の態様はまた、本明細書に開示される方法によって生成される化合物、材料、構成要素、又はインプラントに関する。
【0005】
本明細書に開示される化合物、材料、構成要素、又はインプラントを製造する方法は、窒素でのそれらの飽和を有利に可能にする。加えて、本明細書に開示される方法は、窒素含有量の増加により抗病原性特性が増加した化合物、材料、構成要素、又はインプラントの生成を可能にする。この製造方法は、密度の増加、窒素の過飽和、及び抗病原性の改善を同時に有する化合物、材料、構成要素又はインプラントを生成する独自のプロセスを利用し、これは非常に望ましい。いくつかの例では、構成要素は、人工歯科インプラント、脊椎インプラント、全関節インプラントなどに望ましい窒素で過飽和されたインプラントであるように構成され得る。
【0006】
第1の態様によれば、セラミック材料又はガラス材料を含む構成要素を製造する方法は、典型的には、セラミック又はガラス化合物若しくは材料から作られたセラミック又はガラス化合物、材料、若しくは構成要素を格納容器内に配置することと、格納容器内のセラミック又はガラス化合物、材料、若しくは構成要素に対して加圧窒素ガスを使用して第1の温度及び第1の圧力まで加熱及び静水圧印加を同時に行うことと、第1の温度及び第1の圧力をある時間保持することと、第1の圧力を維持しながら、格納容器内のセラミック材料又はガラス材料を第2の温度まで冷却することと、格納容器を第2の圧力まで減圧することと、を含む。完成した構成要素は、窒素で過飽和されたセラミック又はガラス化合物、材料、若しくは構成要素を含む。
【0007】
本方法は、化合物、材料、又は構成要素を格納容器から取り出すことを更に含んでもよい。セラミック材料又はガラス材料は、粉末であってもよく、窒化ケイ素を含んでもよい。いくつかの態様では、セラミック材料又はガラス材料は、格納容器内に受容される前に焼結されてもよく、及び/又は構成要素は、格納容器内に受容される前に有用な形状に予備成形されてもよい。
【0008】
様々な実施形態では、第1の温度は、約1800℃であってもよく、第2の温度は、100℃未満であってもよく、第1の圧力は、約200MPaであってもよく、第2の圧力は、ほぼ大気圧であってもよく、時間は、約2時間であってもよい。
【0009】
いくつかの態様では、冷却ステップは、断熱冷却を使用して生成された構成要素と比較して、構成要素の平均曲げ強度を200~300MPa増加させる。
【0010】
第2の態様によれば、セラミック材料又はガラス材料を有用な形状に予備成形することと、格納容器内に予備成形されたセラミック材料又はガラス材料を配置することと、格納容器内の予備成形されたセラミック材料又はガラス材料に対して加圧窒素ガスを使用して第1の温度及び第1の圧力まで加熱及び静水圧印加を同時に行うことと、第1の温度及び第1の圧力をある時間保持することと、格納容器内のセラミック材料又はガラス材料を第1の圧力を維持しながら第2の温度まで冷却することと、格納容器を第2の圧力まで減圧することと、を含む方法によって生成されるインプラントが提供される。いくつかの態様では、化合物、材料、構成要素、又はインプラントは、約0.1重量%以上の酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ランタン(La)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化ホウ素(B)、五酸化リン(P)又はそれらの組み合わせを更に添加した窒化ケイ素(Si)であってもよい。
【0011】
好ましくは、化合物、材料、構成要素、又はインプラントは、抗病原性であってもよい。例えば、化合物、材料、構成要素、又はインプラントは、細菌、真菌、及びウイルスのうちの少なくとも1つの増殖を阻害し得る。
【0012】
いくつかの態様では、インプラントは、断熱冷却を使用して生成されたインプラントよりも200~300MPa高い平均曲げ強度を有する。
【0013】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を例示し、説明とともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一態様による、構成要素を製造する方法の例示的で非限定的な実施形態の流れ図表現である。
図2A】HIPなしで製造された構成要素、断熱冷却手順を用いて製造された構成要素、10ksi冷却手順を用いて製造された構成要素、及び25ksi冷却手順を用いて製造された構成要素からの試料の表面に関する共焦点レーザ走査顕微鏡画像及び強度マップを示す。
図2B】HIPなしで製造された構成要素、断熱冷却手順を用いて製造された構成要素、10ksi冷却手順を用いて製造された構成要素、及び25ksi冷却手順を用いて製造された構成要素からの試料の表面に関する共焦点レーザ走査顕微鏡画像及び強度マップを示す。
図2C】HIPなしで製造された構成要素、断熱冷却手順を用いて製造された構成要素、10ksi冷却手順を用いて製造された構成要素、及び25ksi冷却手順を用いて製造された構成要素からの試料の表面に関する共焦点レーザ走査顕微鏡画像及び強度マップを示す。
図2D】HIPなしで製造された構成要素、断熱冷却手順を用いて製造された構成要素、10ksi冷却手順を用いて製造された構成要素、及び25ksi冷却手順を用いて製造された構成要素からの試料の表面に関する共焦点レーザ走査顕微鏡画像及び強度マップを示す。
図3A】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の低倍率二次電子画像を示す。
図3B】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の低倍率二次電子画像を示す。
図3C】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の低倍率二次電子画像を示す。
図3D】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の低倍率二次電子画像を示す。
図4A】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の高倍率二次電子画像を示す。
図4B】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の高倍率二次電子画像を示す。
図4C】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の高倍率二次電子画像を示す。
図4D】焼成のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの焼成されたまま及び加圧されたままの表面の高倍率二次電子画像を示す。
図5A】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの研磨断面の逆散乱電子画像を示す。
図5B】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの研磨断面の逆散乱電子画像を示す。
図5C】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの研磨断面の逆散乱電子画像を示す。
図5D】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの研磨断面の逆散乱電子画像を示す。
図6】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルのX線回折パターンを示す。参照用にβ-Si標準が含まれる。
図7】異なるプロセスによって製造された4つのセラミック材料に対するS.ブドウ球菌を使用したバイオフィルムアッセイの結果を示す。
図8A】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルのレーザ走査顕微鏡写真を示す。
図8B】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルのレーザ走査顕微鏡写真を示す。
図8C】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルのレーザ走査顕微鏡写真を示す。
図8D】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルのレーザ走査顕微鏡写真を示す。
図8E】走査レーザ顕微鏡法によって測定された沈着鉱化骨マトリックスの体積を示す。
図8F】アリザリン赤染色後の450nmにおける培地の光学密度値を示す。
図9】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルのラマン画像マップ及び平均ラマンスペクトルを示す。
図10A】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの無機対有機比、HAp結晶度、及びHAp対TCP比を示す。
図10B】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの無機対有機比、HAp結晶度、及びHAp対TCP比を示す。
図10C】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したSiサンプルの無機対有機比、HAp結晶度、及びHAp対TCP比を示す。
図11】標準断熱HIP冷却及び実験25ksi HIP冷却サイクルで処理された窒化ケイ素ロットのワイブル故障確率プロットを示す。ワイブル分布パラメータを生成するために直線近似が含まれる。
図12A】800MPa未満の強度を示した試料における破断起点の可視光立体顕微鏡写真を示す。矢印は、破断起点の流れを示す。
図12B】800MPa未満の強度を示した試料における破断起点の可視光立体顕微鏡写真を示す。矢印は、破断起点の流れを示す。
図12C】800MPa未満の強度を示した試料における破断起点の可視光立体顕微鏡写真を示す。矢印は、破断起点の流れを示す。
図13A】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したβ-Siサンプル中の[110]、[210]、[200]、及び[101]面のX線回折ピーク位置を示す。
図13B】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したβ-Siサンプル中の[110]、[210]、[200]、及び[101]面のX線回折ピーク位置を示す。
図13C】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したβ-Siサンプル中の[110]、[210]、[200]、及び[101]面のX線回折ピーク位置を示す。
図13D】焼結のみ、断熱冷却手順、10ksi冷却手順、及び25ksi冷却手順を施したβ-Siサンプル中の[110]、[210]、[200]、及び[101]面のX線回折ピーク位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
様々な態様は、図面に示される配置に限定されないことを理解されたい。
【0016】
本開示の様々な実施形態が、以下に詳細に考察される。具体的な実装形態が論じられるが、これは例示目的のみのために行われることを理解されたい。当業者は、他の構成要素及び構成が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用され得ることを認識するであろう。したがって、以下の説明及び図面は例示であり、限定として解釈されるべきではない。本開示の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかし、特定の事例では、説明を不明瞭にすることを避けるために、周知又は通例の詳細は説明されていない。
【0017】
本明細書における「一実施形態」、「実施形態」、又は同様の形式化への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、動作、又は特性が本技術の少なくとも一実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な箇所における「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではなく、他の実施形態と相互排他的な別個の又は代替の実施形態でもない。更に、いくつかの実施形態によって示され、他の実施形態によって示されない可能性がある様々な特徴が記載される。したがって、本開示における1つ又はある実施形態への言及は、同じ実施形態又は任意の実施形態への言及となり得、そのような言及は、実施形態の少なくとも1つを意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語は、一般に、開示される主題の文脈内で、及び各用語が使用される特定の文脈内で、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本明細書で論じられる用語のいずれか1つ又は複数について代替の言語及び同義語を使用することができ、用語が本明細書で詳述又は議論されるか否かに特別な重要性は置かれるべきではない。場合によっては、特定の用語の同義語が提示される。1つ又は複数の同義語の列挙は、他の同義語の使用を排除しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書のどこかの例の使用は、例示にすぎず、本開示又は任意の例示的な用語の範囲及び意味を更に限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「約」は、明示的に示されているか否かにかかわらず、整数、分数、パーセンテージなどを含む数値を指す。「約」という用語は、一般に、数値の範囲、例えば、列挙された値の±0.5~1%、±1~5%又は±5~10%を指し、例えば、同じ機能又は結果を有する列挙された値と等価と考えられる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「有する(having)」、及び「含む(including)」という用語は、それらのオープンで非限定的な意味で使用される。「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数及び単数を包含すると理解される。したがって、「その混合物」という用語はまた、「それらの混合物」に関する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「窒化ケイ素」という用語は、α-Si、β-Si、SiYAlON、SiYON、SiAlON、又はそれらの組み合わせを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「構成要素」という用語は、抗病原性目的に有用であるセラミック又はガラス材料、化合物、インプラント、デバイス、若しくは同様のものを含む。
【0023】
一般に、提供される範囲は、所与の範囲内の全ての特定の範囲、及び所与の範囲間の部分範囲の組み合わせを含むことを意味する。したがって、1~5の範囲は、具体的には、1、2、3、4、及び5、並びに2~5、3~5、2~3、2~4、1~4などの部分範囲を含む。本明細書に開示される全ての範囲及び値は、包括的であり、組み合わせ可能である。例えば、本明細書に記載される範囲内に入る本明細書に記載される任意の値又は点は、部分範囲などを導出するための最小値又は最大値として機能し得る。操作例以外で、又は別段の指示がある場合には、成分の量及び/又は反応条件を表す全ての数字は、全ての例において「約」という用語によって修飾され得るものであり、これは示された数の±5%以内を意味する。
【0024】
続く説明において、本開示の追加の特徴及び利点を述べ、一部は、説明から明らかであるか、又は本明細書に開示される原理の実践により知得できる。本開示の特徴及び利点は、別添の特許請求の範囲で特に指摘される器具及び組み合わせによって実現及び取得することができる。本開示のこれら及び他の特徴は、以下の説明及び別添の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、又は本明細書で述べる原理の実践によって知得することができる。
【0025】
本開示の態様は、構成要素を製造するシステム及び方法に関し、具体的には、非断熱冷却を伴う熱間静水圧プレスを使用して構成要素を製造することに関する。熱間静水圧プレスの高温及び高圧条件下では、構成要素の粒間相は液体である。いくつかの実施例では、粒間相液体は、溶融容器ガラスと同様の粘稠度を有し得る。理論に束縛されるものではないが、窒素ガスの溶解度は、熱間静水圧プレスの温度及び圧力が上昇すると高くなる。したがって、冷却中に高い過圧を維持することによって、窒素の溶解度の低下によりガラスから沈殿する窒素の能力が阻害される。また、理論に束縛されるものではないが、より高い過圧が長い時間冷却されるほど、窒素の溶解が長い時間維持され、したがって、完成した構成要素中の窒素の過飽和が促進される。過圧を解放するのが早過ぎる場合でも、かなりの量の窒素が依然として構成要素の粒間相内で移動し得る。
【0026】
本明細書に開示される方法は、非断熱冷却を使用すること(すなわち、冷却サイクル中に熱間静水圧プレス圧力を一定に保持すること)によって、ガラス系組成物を窒素で過飽和させる気圧熱間静水圧プレスを含んでもよい。例えば、本方法は、冷却サイクル全体中の熱間静水圧プレス動作中に窒素の高圧かつ一定圧力を保持することを含んでもよい。驚くべきことに、これにより、熱間静水圧プレス材料内の窒素の過飽和が維持される。その結果、過剰な窒素は、抗病原性目的で利用可能である。
【0027】
本明細書に開示される構成要素を製造する方法は、窒素で過飽和された構成要素の生成を有利に可能にして、構成要素の抗病原性特性を高める。例えば、本明細書に開示される方法は、歯科用インプラント、脊椎インプラント、関節構成要素、整形外科用インプラント、椎弓根スクリュー、留置カテーテル、気管内チューブ、結腸内視鏡スコープ、及び他の同様のデバイスなどを含むがこれらに限定されない生物医学的インプラント及びデバイスなどの抗病原性構成要素の生成を可能にする。
【0028】
あるいは、いくつかの実施形態では、構成要素は、高い接触面を有する媒介物として製造されてもよい。非限定的な例としては、ハンドル、ノブ、トレイ、カウンタ、家具、レバー、ベッドレール、椅子、可動ランプ、照明スイッチ、携帯電話ケース、トレイテーブル、小さなカウンタ表面、又は他の表面、マスク、布、ドレープ、ガウン、及び他の衣服、若しくは道具、ツール、器具、備品などの感染症を運ぶ可能性が高い材料又は表面が挙げられる。当業者であれば、様々な産業において本発明の態様を使用することに対する他の利点を認識するであろう。
【0029】
特定の理論に限定されることなく、窒化ケイ素内の窒素含有量が増加すると、増加したアンモニア(NH)がウイルス、細菌、又は真菌の不活性化若しくは溶解のために利用可能であるような表面化学を提供し得る。
【0030】
窒素は、表面のシラノールが比較的安定であるため、ケイ素よりも速く(数分以内に)溶出する。ウイルスの場合、驚くべきことに、窒化ケイ素は、ゲノムの完全性の喪失及びウイルス不活性化をもたらすアルカリ性エステル交換によるRNA切断を提供し得ることが見出された。窒化ケイ素材料中の窒素含有量が増加すると、窒素がRNA切断の発生に利用できるようになる。
【0031】
一実施形態では、抗病原性構成要素は、(i)通常のガス状態からではなく固体状態からのアンモニアの遅いが連続的な溶出、(ii)哺乳類細胞への損傷又は悪影響なし、及び(iii)pHの低下とともに増加するインテリジェント溶出を示す溶出動態を呈し得る。
【0032】
図1は、セラミック又はガラス材料を含む構成要素を製造する例示的で非限定的な方法100の流れ図である。簡潔に概説すると、方法100は、ステップ110で格納容器内にセラミック又はガラス材料を受容することと、ステップ120で、格納容器内のセラミック又はガラス材料に対して加圧窒素ガスを使用して第1の温度及び第1の圧力まで加熱及び静水圧印加を同時に行うことと、ステップ130で第1の温度及び第1の圧力をある時間保持することと、ステップ140で第1の圧力を維持しながら格納容器内のセラミック又はガラス材料を第2の温度まで冷却することと、ステップ150で格納容器を第2の圧力まで減圧することと、を含む。方法100によって形成される構成要素は、窒素で過飽和されたセラミック又はガラス材料を含む。
【0033】
ステップ110では、セラミック又はガラス材料が格納容器内に受容される。いくつかの例では、セラミック又はガラス材料は、窒化ケイ素、ガラスセラミック、及び/若しくは多結晶セラミックを含んでもよいが、これらに限定されない。本セラミック又は本ガラス材料は、粉末の形態であってもよく、又は格納容器内に配置される前に予備焼結されてもよい。セラミック又はガラス材料は、格納容器内に受容される前に、所望の構成要素の形状に既に形成されてもよい。あるいは、セラミック又はガラス材料は、格納容器内に配置され、その後、格納容器内で所望の構成要素の形状に形成される場合に粉末であってもよい。
【0034】
セラミック又はガラス材料は、約75~約99.9重量%の窒化ケイ素粉末を含有してもよい。例えば、セラミック又はガラス材料中に存在する窒化ケイ素粉末の量は、セラミック又はガラス材料の総重量に対して、約75~約80重量%、約80~約85重量%、約85~約90重量%、約90~約95重量%、約95~約99重量%、又は約100重量%であってもよい。セラミック又はガラス材料は、構成要素のうちの約30重量%~約99.9重量%であってもよい。例えば、完成構成要素中に存在するセラミック又はガラス材料の量は、構成要素の総重量に対して、約30重量%~約50重量%、約50重量%~約75重量%、約75重量%~約80重量%、約80重量%~約85重量%、約85重量%~約90重量%、約90重量%~約95重量%、約95重量%~約99重量%、又は約100重量%であってもよい。
【0035】
本方法は、セラミック又はガラス材料の総体積に対して、約25重量%以下の追加の粉末を含むセラミック又はガラス材料を使用してもよい。いくつかの例では、セラミック又はガラス材料中に存在する追加の粉末の量は、約25重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、約14重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約8重量%以下、約6重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、又は約1重量%以下である。少なくとも1つの例では、セラミック又はガラス材料は、窒化ケイ素粉末及び不純物からなるか、又は本質的に窒化ケイ素粉末及び不純物からなる。追加の粉末は、約0.1重量%以上の酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ランタン(La)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、三酸化ホウ素(B)、五酸化リン(P)又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0036】
ステップ120では、熱及び静水圧が、格納容器内のセラミック又はガラス材料に同時に印加される。セラミック又はガラス材料を第1の温度まで加熱し、圧力を第1の圧力まで上昇させる。温度及び圧力は、格納容器内で均一に印加され得る。格納容器は、動作中に高温及び高圧で動作するように構成され得る。一実施形態では、格納容器は、加圧窒素(N)ガスを使用して、格納容器内の圧力を増加させ得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1の温度は、約1400℃~約1800℃であってもよい。例えば、第1の温度は、約1400℃~約1450℃、約1450℃~約1500℃、約1500℃~約1550℃、約1550℃~約1600℃、約1600℃~約1650℃、約1650℃~約1700℃、約1700℃~約1750℃、又は約1750℃~約1800℃であってもよい。いくつかの例では、第1の温度は、少なくとも1600℃、少なくとも1700℃、又は少なくとも1800℃であってもよい。一実施形態では、第1の温度は、約1800℃である。格納容器は、第1の温度に達するまで、約10℃/分の速度で加熱されてもよい。
【0038】
一実施形態では、第1の圧力は、約100MPa~約300MPaであってもよい。例えば、第1の圧力は、約100MPa~約150MPa、約150MPa~約200MPa、約200MPa~約250MPa、又は約250MPa~約300MPaであってもよい。いくつかの例では、第1の圧力は、少なくとも100MPa、少なくとも150MPa、少なくとも200MPa、少なくとも250MPa、又は少なくとも300MPaであってもよい。一実施形態では、第1の圧力は、約150MPaである。別の実施形態では、圧力は毎分約1.2MPa増加する。
【0039】
ステップ130では、第1の温度及び第1の圧力は、ある時間保持される。時間は、約0.5時間~約2時間の範囲であってもよい。例えば、第1の温度及び第1の圧力は、格納容器内で少なくとも約0.5時間、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、又は少なくとも約2時間維持されてもよい。一実施形態では、第1の温度及び第1の圧力は、格納容器内で約1時間維持されてもよい。
【0040】
ステップ140では、セラミック又はガラス材料は、第1の圧力(例えば、非断熱冷却)を維持しながら、格納容器内で第2の温度まで冷却される。第2の温度は、第1の温度よりも冷たい任意の温度であってもよい。例えば、第2の温度は、約30℃~約50℃、約50℃~約100℃、約70℃~約120℃、又は約100℃~約150℃であってもよい。いくつかの例では、第2の温度は、約100℃未満、約50℃未満、又は約30℃未満であってもよい。いずれか1つの理論に限定されることなく、窒素ガスの圧力下での非断熱冷却は、セラミック又はガラス材料が窒素で過飽和されることを可能にする。いくつかの実施形態では、セラミック又はガラス材料は、約5℃~約10℃の速度で冷却されてもよい。
【0041】
過飽和は、材料の組成に依存する。セラミック又はガラス材料は、10重量%~15重量%の範囲で過飽和され得る。一実施形態では、セラミック又はガラス材料は、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約11重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、少なくとも約14重量%、又は少なくとも約15重量%非断熱的に冷却されないセラミック又はガラス材料よりも多くの窒素含有量を含む。
【0042】
ステップ150では、格納容器は、第2の圧力まで減圧される。一実施形態では、第2の圧力は、約0.1MPa~約5MPaであってもよい。例えば、第2の圧力は、約0.1MPa~約0.5MPa、約1MPa~約2MPa、約2MPa~約3MPa、約3MPa~約4MPa、又は約4MPa~約5MPaであってもよい。一実施形態では、第2の圧力は、ほぼ大気圧である。別の実施形態では、圧力は、約2MPa~約3MPaの速度で低下されてもよい。
【0043】
いくつかの場合では、方法100は、格納容器から構成要素を取り出すことを更に含んでもよい。セラミック又はガラス材料を非断熱的に冷却し、次いで圧力を減少させた後、窒素中で過飽和したセラミック又はガラス材料で作製された構成要素を格納容器から取り出してもよい。
【0044】
第2の態様によれば、格納容器内にセラミック又はガラス材料を受容することと、格納容器内のセラミック又はガラス材料に対して加圧窒素ガスを使用して第1の温度及び第1の圧力まで加熱及び静水圧印加を同時に行うことと、第1の温度及び第1の圧力をある時間保持することと、第1の圧力を維持しながら格納容器内のセラミック又はガラス材料を第2の温度まで冷却することと、格納容器を第2の圧力まで減圧することと、を含む方法によって生成される窒素中で過飽和した窒化ケイ素を含む構成要素(例えば、インプラント)が提供される。いくつかの例では、インプラントは、上述の方法100の1つ以上の特徴を使用して製造されてもよい。
【0045】
構成要素は、典型的には、約30重量%~約100重量%のセラミック又はガラス材料を含む。例えば、完成構成要素に存在するセラミック又はガラス材料の量は、構成要素の総重量に対して、約30重量%~約50重量%、約50重量%~約75重量%、約75重量%~約80重量%、約80重量%~約85重量%、約85重量%~約90重量%、約90重量%~約95重量%、約95重量%~約99重量%、又は約100重量%であってもよい。様々な実施形態では、セラミック又はガラス材料は、窒化ケイ素、ガラスセラミック、及び/又は多結晶セラミックである。セラミック又はガラス材料は、約75~約99.9重量%の窒化ケイ素粉末を含有してもよい。例えば、セラミック又はガラス材料中に存在する窒化ケイ素粉末の量は、セラミック又はガラス材料の総重量に対して、約75~約80重量%、約80~約85重量%、約85~約90重量%、約90~約95重量%、約95~約99重量%、又は約100重量%であってもよい。一実施形態では、セラミック又はガラス材料は、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約11重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、少なくとも約14重量%、又は少なくとも約15重量%非断熱的に冷却されないセラミック又はガラス材料よりも多くの窒素含有量を含む。
【0046】
好ましくは、構成要素(例えば、インプラント)は、抗病原性である。例えば、構成要素は、細菌、真菌、及びウイルスのうちの少なくとも1つの増殖を阻害し得る。いくつかの実施形態では、細菌は、S.ブドウ球菌であってもよい。追加的に及び/又は代替的に、構成要素は、骨芽細胞増殖を促すインプラントであるように構成されてもよい。少なくとも1つの実施形態において、窒化ケイ素粉末を含まないインプラントと比較して、インプラント上で骨芽細胞増殖が促進する。この構成要素は、骨の修復を加速する表面化学を有し得る。いくつかの実施形態では、構成要素(例えば、インプラント)は、構成要素の表面からケイ酸及び窒素を放出し、細胞分化の初期段階及びその後の骨性アパタイト沈着中の両方で、骨肉腫及び間葉系細胞の骨形成活性を促進する。任意の特定の理論に限定されるものではないが、窒化ケイ素粉末は、高品質の骨組織の骨芽細胞による合成を刺激することができ、前者は骨マトリックスの鉱化に有利であり、後者は骨マトリックスの細胞増殖及び形成を促進する。加えて、構成要素は、生体適合性であり、同時骨形成、骨誘導、骨伝導、及び静菌を含む多数の生物医学的用途を提供する表面化学を有し得る。
【0047】
構成要素は、骨に接触する領域又は骨付近の領域で患者の体内に植え込まれ得るインプラント又はデバイスの形態であってもよい。インプラントの非限定的な例は、椎間脊椎スペーサ又はケージ、骨ネジ、整形プレート、及び他の固定デバイス、脊柱、腰、膝、肩、足首、及び指骨の関節屈曲デバイス、顔面又は他の再建形成手術のためのインプラント、中耳インプラント、歯科デバイス、椎弓根ネジ、留置カテーテル、気管内チューブ、結腸内視鏡スコープ、及び他の同様のデバイスなどを含む。
【実施例
【0048】
実施例1
熱間静水圧プレス(HIP)後の冷却中の保持圧力は、Siの二次シリコンイットリウムアルミニウムオキシニトライド(SiYAlON)ガラス状相を過剰窒素で過飽和させる手段として使用できると仮定した。更に、ガラス中に貯蔵された過剰な窒素は、SiYAlONが加水分解されるにつれて、アンモニアの生理学的培地内への加速放出を引き起こし、次に、材料の観察される抗菌特性を促進すると仮定した。4ロットの窒化ケイ素試験ディスクを、同じ標準粉末ロットから処理し、異なるHIPサイクルに供した。すなわち、(1)1種の雰囲気でのみHIP/焼結なし、(2)断熱(圧力と温度の同時放出)クールダウンを伴う標準的なHIP、(3)HIPクールダウン中の10ksi保持、及び(4)HIPクールダウン中の25ksi保持、である。HIPサイクルの変化が材料の特性及び生物学的応答にどのような影響を及ぼしたか(もしあれば)を評価するために、ディスクを、S.epidermidis及び骨芽前KUSA-A1間葉系幹細胞のバイオフィルム形成株での一連の材料特性評価技術及びインビトロ曝露に供した。
【0049】
また、冷却中のHIP圧を制御することにより、過剰な窒素が少数のSIYAlONガラス状相内に隔離されると、(1)HIPクールダウン中の強度制限細孔の形成を防止又は緩和し、(2)処理後に、β-Si格子歪みとして測定可能な残留応力を生成し得ると仮定した。ガス形成された細孔欠陥集団の緩和及び残留応力の存在は、材料中の亀裂伝播を阻害し、曲げ強度の観察可能な増加をもたらすように連携して作用し得る。HIP冷却中に断熱HIP冷却及び25ksi保持を使用して曲げバーロットを作製した。曲げ試験の後、これらのロットの結果を分析し、比較して、材料の強度分布への影響を求めた。上述のように異なるHIP条件で処理されたディスクをX線回折に供した。4つの主ピークのピーク位置を代表サンプルについて比較して、格子歪みを評価した。
【0050】
サンプルサイズ
細菌実験のサンプルサイズは、確立されたプロトコル当たり条件及び時点ごと、分析技術(KUSA-A1実験)ごとにn=3(細菌)及びn=可変であった。曲げ強度試験のサンプルサイズは、ASTM C1161-186当たりn≧30であった。
【0051】
仮説/合格基準
帰無仮説1-抗菌特性の変化:HIPクールダウン中に圧力を制御しても、25ksiのHIP冷却サンプルのCFUカウントが、Staphylococcus epidermidis(S.epidermidis)のバイオフィルム形成株でSINTXの標準的な細菌バイオフィルムアッセイを使用して並行して試験された焼結のみ又は断熱冷却されたSiよりも低くなるように、Siの抗菌特性を変更することはできない。この仮説は、24時間及び48時間の時点でのCFUカウントが、断熱冷却材料及び焼結のみの材料と比較して25ksiのHIPクールダウン材料のスチューデントのt検定(2テール、不均一分散)を介して統計的に有意なp値で低い場合に却下されることになる。
【0052】
帰無仮説2-強度改善:HIPクールダウン中に圧力定数を保持しても、材料の曲げ強度の改善につながらない。この仮説は、25ksi HIP冷却材料の平均3点曲げ強度(940006に従う)が改善され、断熱クール試験群と25ksi試験群との強度分布の比較が、スチューデントのt検定(2テール、不均一分散、95%信頼性)を介して0.05未満のp値をもたらす場合に却下されることになる。
【0053】
帰無仮説3-格子歪み:HIPクールダウン中に圧力を一定に保持しても、残留格子歪みを生じることはない。この仮説は、X線回折ピークシフトが、HIPクールダウン中に印加される圧力の大きさと相関するβ-Si格子歪み(d間隔の変化として測定される)の漸進的な増加を示す場合に却下されることになる。
【0054】
材料及び方法
本研究で使用した窒化ケイ素粉末ロットは、0.75%TiO(New Brunswick,NJ USA)、3.97%Al(UFX-MAR,Baikowski-Malakoff,Malakoff,TX USA)、5.96%Y(Triebacher Industrie AG,Althofen,Austria)、及び残りはSi(Ube SN-E10,Ube,Japan)の公称組成(質量パーセント)を有した。簡潔に述べると、この材料は、一般的な市販の有機分散剤及び結合剤を含有する水性スラリをバッチ処理し、循環消耗ミル(Q6、Union Process、Akron、OH USA)でスラリを粉砕してスラリを脱凝集させ、次いで、スプレードライヤ(NIRO(登録商標)SD-6.3-N、GEA、Copenhagen、Denmark)を使用してスラリを霧化及び乾燥させることによって調製した。噴霧乾燥後、一般的なプレス潤滑剤を非常に低い濃度(<1質量%)で粉末中に混合し、次いで、粉末をふるい分けて粗い凝集体を除去し、最終的にその粉末を制御された湿度チャンバ(Lunaire CEO932、Tenney Environmental、New Columbia、PA USA)に少なくとも1週間保持し、その残留水分含有量の安定化を可能にした。
【0055】
全ての試験ディスクを、単軸油圧プレス(Carver,Wabash,IN USA)及びPAR2096、2097、2098及び2099ごとに実験室KBrペレット(φ12.7mm×約1mm厚)ダイ(VWR,Radnor,PA USA)を使用して300MPaの目標圧力に加圧し、それぞれのHIPサイクルを除いて同一のパラメータを使用して同時焼成した。一般的な焼成ステップは、(1)500℃までの空気中での結合剤除去(ThermalTek,Concord,NC USA)、(2)バッチ炉(Centorr Vacuum Industries,Nashua,NH USA)中に1600℃で2時間保持した2psiの窒素中での結合剤除去及び予備焼結、(3)連続ベルト炉(Centorr Vacuum Industries,Nashua,NH USA)中に充満窒素(1種の雰囲気)条件下1710℃で3時間焼結することであった。使用されるHIP(Quintus Technologies,LLC,Columbus,OH USA)サイクルが、表1に詳述されている。
【0056】
【表1】
【0057】
熱処理に続いて、ディスクをCOブラスト、超音波洗浄、及びクリーン焼成(空気中で30分間700℃)に供して、それらの表面が処理されたインプラントを代表するものであることを確認した。
【0058】
ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)ディスクもまた、細菌バイオフィルムアッセイにおける対照として使用するために生成した。PEEKロッドストック(φ12.7mm)(ASTM D6262、Ketron(登録商標) PEEK1000,McMaster-Carr,Santa Fe Springs,CA)を、商業加工所によって厚さ1mmのディスクに加工した。
【0059】
曲げバーの生成:標準断熱冷却HIPサイクルで処理された曲げバーの対照群を生成した。これらの試験バーを、エラストマ金型内で乾燥静水圧プレス(310MPa)して、約21mm×21mmの正方形断面バーストックを形成した。プレスしたバーストックは、(1)700℃まで真空下で一連の低温降下及び保持を実施して有機成分を揮発させ、次いで2psiの窒素中で1600℃まで上昇させ、2時間保持することによる結合剤除去及び予備焼結(バッチ炉)、(2)充満窒素(1種の雰囲気)条件下1710℃で3時間(ベルト炉)焼結、(3)HIPサイクル-1690℃、断熱クールダウンで22ksi N中に2時間曝露、を施した。HIPに続いて、ストック片をアルキメデス密度試験(n=3)に供し、次いで、ASTM C1161-187構成B試験バー(3mm×4mm断面×45mm長)に加工するために商業研削所に出荷した。研削されたバーが戻って来たら、それらの引張面をラッピング加工装置(Lapmaster15、Lapmaster、Mt.Prospect,IL USA)を使用して研磨した。
【0060】
実験曲げバー群を処理した。この群の処理は、HIPサイクルを例外として、対照群の処理と全ての点で同じであった。このサイクルは、22ksi Nで1690°で2時間の同じ昇降及び保持から構成される。断熱冷却ではなく、圧力はクールダウン中に25ksi Nまで上昇させ、容器温度が300℃未満になるまで保持される。HIP後の処理及び試験は、対照群に対して実施したものと同一であった。
【0061】
寸法密度測定は、6つの試験ディスク上で実施した。直径測定を使用して、6つの試験ディスクから線形収縮(S)を計算した。
【0062】
断面サンプルは、ディスクサンプルをエポキシ樹脂(EpoThin、Buehler、Lake Bluff、IL)に取り付け、表面研削盤(ACC12-24DX Grind-X、Okamoto Corp.、Vernon Hills、IL USA)上の400グリットダイヤモンド埋め込みホイールを使用してディスク内に数ミリメートルの深さで研削し、続いてより細かいダイヤモンドグリット(Engis、Wheeling、IL USA)を使用して鋳鉄プレートに対してラッピングし、研磨パッド(Suba IV、Engis)に対してコロイドシリカ(Engis)を使用した化学的機械的研磨(CMP)プロセスで仕上げることによって調製した。
【0063】
表面形態及び微細構造の評価:共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)(LEXT OLS5000,Olympus,Japan)を使用して、焼成されたままの面を評価して、それらの粗さパラメータを定量した。上記のように調製された焼成及び研磨されたままの断面を、エネルギー分散型X線分光計(EDS)(EDAX,Mahwah,NJ USA)を備えた電界放射銃走査電子顕微鏡(FEG-SEM)(Quanta,FEI,Hillsboro,OR USA)を使用して評価した。サンプルを、スパッタコーティングし(PECS1,Gatan,Pleasanton,CA USA)、金-パラジウム合金の薄い(約3nm)層で電子撮像に必要な導電路を形成した。
【0064】
X線回折:回折計(PANalytical X-Pert、Malvern、United Kingdom)を使用して、0.02°のステップサイズ及び0.75秒のステップ当たりの時間で20°~70°2θの走査範囲を使用して、各ロットからのディスクサンプルに対してX線回折を実施した。真鍮マスク(10mm)、発散スリット(1/2°)、散乱防止スリット(1/4°)、及び受容スリット(1/8°)とともに、Cu K-α源(λ=1.540598Å)を使用した。
【0065】
接触角測定:脱イオン水(17.5MΩcm抵抗率、750II、Myron L Company、Carlsbad、CA)の液滴(25μL)をサンプル表面(n=1条件当たり3サンプル、1サンプル当たり2測定)に沈着させ、光学コンパレータ(2600シリーズ、S-T Industries、St.James、MN)を使用して、以前の作業で確立された手順によって測定した。
【0066】
細菌バイオフィルムアッセイ:インビトロS.epidermidis(ATCC(登録商標)14990(商標))細菌バイオフィルムアッセイを、条件ごとにn=3ディスクを使用して、以前に確立された手順によって実施した。簡潔に述べると、サンプルを、105細胞/mLを含有するウェルで、希釈されたヒト血漿及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のグルコースからなる栄養ブロス中に浸した。曝露後(24時間及び48時間の時点)、サンプルをブロスから取り出し、PBSですすぎ、付着していない細菌を除去し、ボルテックスしてサンプル表面から付着細菌を分離した。付着細菌懸濁液を連続的に希釈し、Petrifilm(商標)(6400/6406/6442 Aerobic Count Plates,The 3M Company,Minneapolis,MN)上に配置し、24時間の培養期間後にコロニ形成単位(CFU)をカウントした。各時点で、スチューデントのt検定(2テール、不均一分散、95%信頼性)を使用して、各条件について試料表面積によって正規化されたCFUの差異を統計的有意性について評価した。
【0067】
骨伝導率試験:サンプルを、以前に確立された手順によって、28日間、KUSA-A1幹細胞にインビトロで曝露した。サンプルを、アリザリン赤による染色及びその後の450nm(n=5)での培地光学密度(OD)の測定、共焦点走査レーザ顕微鏡法(CSLM)(Keyence,Japan)による沈着した鉱化骨組織の体積測定(n=10)、骨塩及び軟マトリックスの形成を定性的に評価するためのラマンイメージング、並びに沈着した骨組織の無機対有機比、ヒドロキシアパタイト(HAp)結晶度、及びリン酸トリカルシウム(TCP)に対するHApの比を評価するための高分解能ラマン分光法(n=8)に供した。
【0068】
曲げ強度:試験は、ASTM C1161-187(構成B)に適合する940006-曲げ強度試験手順によって、試験バー(ロット当たりn=36バー)に対して実施した。簡単に言えば、これは、0.50mm/分のクロスヘッド速度を使用して、ユニバーサルメカニカルテストフレーム(5567、Instron、Norwood、MA USA)で実行される40mmスパンの3点曲げ試験である。各ロットについて得られたデータを、スチューデントのt検定(2テール、不均一分散、95%信頼性)を用いて比較した。ASTM C12399によって更なる分析を行い、両方の材料ロットの故障分布を記述するためのワイブルパラメータを得た。ワイブルプロットのグラフィック構築は、ASTM C1239のセクション8.8及び8.9によって実施し、得られたワイブル係数の不偏化は、ASTM C1239のセクション9.2によって実施した。選択された低強度(<800MPa)サンプルについて、可視光立体顕微鏡(SZX9、Olympus、Japan)を使用して限られた破面分析を行った。
【0069】
格子歪み評価:市販の位相分析ソフトウェア(MATCH!,Crystal Impact,Bonn,Germany)を使用して回折データを分析し、β-Si3N4のパターンにおける[110]、[210]、[200]、及び[101]反射のピーク位置を求めた。これらは、この材料の参照標準パターン(JCPDS-ICDD No.33-1160)における4つの主な反射である。
【0070】
結果及び考察
試験ディスク特性評価:表2は、様々なHIP条件に供されたサンプルの寸法密度及び線形収縮を示す。表2のデータから、HIP化サンプルは、焼結のみサンプルよりも適度に密度が高かった可能性があると結論付けることができる。更に、HIPのクールダウン圧力が増加すると、密度のわずかな増加をもたらすことが定性的に現れる。
【0071】
【表2】
【0072】
CLSMを使用して捉えた光学画像及び対応する強度マップを図2A図2Dに示す。対応する粗さパラメータデータを表3に提示する。プレス、ダイ壁排除効果、及び中空凝集体形態からの欠陥が明らかである。Sa値は、約1μmで、全てのサンプルについて類似していた。最も低い絶対測定値は、25ksi冷却サンプルの0.8μmであった。得られたSaの絶対値がこれらの測定において異なる(約2.5μm)が、全てのサンプルは、再び同様の粗さ特性を示した。絶対測定値の不一致は、撮像分解能の違いに起因する可能性がある。ここで提示されたデータは、より高い倍率対物レンズ(したがってより高い解像度/忠実度)を使用して約2.2mmの領域にわたって得られたが、Piezotechで実施されたスキャンは、KUSA-1MSC実験中に沈着されたHApの体積を定量化するための準備において、より低い倍率/解像度でディスクサンプル表面全体(約127mm)を特徴付けた。
【0073】
【表3】
【0074】
図3A図3Dの低倍率二次電子画像は、噴霧乾燥凝集体形態及びダイ壁排除効果からの残留押圧欠陥を示す。これは、断熱冷却サンプルにおいて最も誇張されているようであり、HIPクールダウン圧力が保持され、増加するにつれて、効果が緩和される。欠陥サイズの縮小は、HIPクールダウンステップ中のNのアウトガスの縮小に起因すると仮定される。これらのプレス欠陥領域は、焼結中にそれらを溶融及び充填する二次SiYAlON相が豊富である。
【0075】
図4A図4Dのより高い倍率では、典型的な異方性β相粒子形態は、全てのサンプルにおいて明らかである。六角形の粒子断面は、焼結のみサンプルと比較して、HIPサンプルではややよく画定されているように見える。
【0076】
後方散乱モードでは、原子番号/密度による対比が得られる。これにより、密度が著しく異なる位相を容易に視覚化することができる。高密度材料はより多くの電子を反射し、したがって、より明るく現れ、より低密度の相はより暗く現れる。図5A図5Dで撮像された全てのサンプルにおいて、典型的なβ-Si微細構造が明らかである。結晶性ベータ粒子は濃い灰色として現れ、イットリア含有粒間相(IGP)ははるかに明るく現れる。最後に、SiバッチにTiO粒子が含まれているために形成された酸化チタン(TiON)固体溶液であると考えられる少数着色剤相が最も明るく現れる。HIPサンプルと比較して、焼結のみサンプル中に、大きな閉じた細孔がTiON着色剤相のより多くの凝集したクラスタとともに見られる。細孔ははるかに細かく(約1μm)、断熱冷却HIPサンプル中ではそれほど優勢ではない。細孔は依然として存在するが、10ksi HIPクールダウンサンプルでは更に細かく、25ksiクールダウンサンプルに存在する少数の細孔は、サイズがミクロンの数分の一である。重要なことに、25ksiサンプルは、クールダウン圧力がプロセス圧力(22ksi)を上回るレベルに上昇した唯一のサンプルであった。これにより、冷却中の細孔形成及び成長が大幅に緩和された可能性が高い。また、細孔はIGPと結晶性粒子との界面で形成されるように見えることは注目に値し、これは細孔形成が溶融した過飽和IGPからの窒素の沈殿の結果であるという主張に信憑性を与える。
【0077】
図6に示される4つのサンプル群は全て、β-Si標準に適合している。サンプルごとにテクスチャリングのいくつかの変化が起こる。また、43°2θ付近の少数派のピークは、β-Siとは一致しないが、窒化チタン(TiN)とは一致している(JCPDS#96-110-003511)。IGP窒素隔離を増加させるHIP条件はまた、材料バッチ中のTiOの包含に起因して形成される着色剤相の形成及び/又は結晶化を促進するようである。
【0078】
水接触角を表4に示す。HIPサンプルは全て、非常に類似した水接触角を示した。焼結体のみのサンプルは、有意に大きな接触角を示した。これは、HIPサンプルと比較して表面粗さ及び多孔性の増加に起因する可能性があった。加えて、焼結体のみのサンプルは、HIPサンプルが処理されている間、長期間保存されていた。したがって、測定前に十分に洗浄されていない焼結体のみのサンプル上に、より偶発的な炭素蓄積があった可能性がある。
【0079】
【表4】
【0080】
S.epidermidisインビトロ細菌バイオフィルムアッセイ:図7Aに図示されるデータは、24時間の時点で、25ksi HIP冷却サンプルについて、他のHIPサンプルと比較して有意に低いCFU/mm濃度を示す。しかしながら、差は、1log10未満の減少である(図7Bを参照)。48時間時点で、いずれの窒化ケイ素サンプル間にも有意差はない。興味深いことに、両時点で、全ての窒化ケイ素サンプルは、PEEK対照と比較して最小2.5log10の減少を示し、これは、この生物でのこのアッセイにおける典型的な結果である。これらのデータは、HIPサイクルクールダウン圧力(又は省略されたHIPサイクル)の変化が、Siの抗菌特性に有意に影響しなかったことを示唆している。
【0081】
KUSA-A1 MSCアッセイ1-アリザリン赤及び体積骨組織沈着:図8A図8Dは、窒化ケイ素サンプルのレーザ走査顕微鏡写真を示す。平均沈着HAp体積(図8E)は、10ksi冷却サンプルの約1μm/μmから25ksi冷却サンプルの約2.75μm/μmまで変化した。断熱冷却サンプルは、25ksi冷却群と比較して実施し、焼結のみの群は、中間体積のHApを沈着させた。25ksi群及び断熱群を除き、他の全てのサンプルデータセットは統計的に有意であった。しかしながら、これらの測定には多くのばらつきがあった。鉱化骨組織の存在を評価する代替方法として、アリザリン赤キレートカルシウムは、鉱化骨組織を形成し、450nmで光を吸収する複合体を形成する。450nmにおけるより高い光学密度値は、より多くのカルシウムが、サンプル上の骨組織から溶解されたことを意味する。したがって、OD450nmが高いほど、多くの鉱化骨組織が存在することを意味する。図8Fに見られるように、断熱冷却サンプル群は、他の群よりも約30%(統計的に有意)高い平均OD450nmを示し、これにより、互いにほぼ同等の結果が得られた。
【0082】
KUSA-A1 MSCアッセイ2-ラマンイメージング:図9に示すラマンイメージングデータは、Si基質(青色)、ヒドロキシアパタイト及びリン酸カルシウム(赤色)に含まれるPO 3-、及びKUSA-1細胞によって分泌される細胞外ポリマ(ECP)に存在するアミド結合における結合摂動に特徴的であるスペクトル特性を捉えている。断熱冷却サンプル及び25ksiサンプルの960cm-1の領域におけるピークは、最も明確に画定されており、これらのサンプル上のHApのより高い相対濃度を示している。同様に、アミドピークは、より多くのECPが存在することを示すサンプルについてもよく現れている。10ksiサンプルにはECPがほとんど存在せず、脆弱化し得る骨組織の形成を示すようである。
【0083】
KUSA-A1 MSCアッセイ3-高分解能ラマン分光法:図10Aのデータは、沈着した骨組織中の鉱物又は有機物の比率が、25ksi冷却条件で最も低く、10ksi冷却条件で最も高く、断熱冷却及び焼結のみの条件では中間及びほぼ等価であることを示している。しかしながら、平均が標準偏差より大きく離れている唯一の違いは、10ksiのケースと25ksiのケースとの間の比較である。断熱冷却及び25ksi冷却サンプル(p<0.01)の場合、骨組織内のHApは、より結晶性であり(図10Bを参照)、したがって、より成熟した骨組織の構成要素である可能性が高い。しかしながら、全てのサンプル平均にわたる差は、最小サンプルの値の30%未満である。骨成熟度の別の指標である、リン酸トリカルシウムに対するヒドロキシアパタイトの比(図10Cを参照)は、断熱冷却されたサンプルでは、互いに等価である焼結のみ及び25ksi冷却サンプルと比較して、適度に高い。これらの3つの群は全て、10ksi群に示されるものより70~80%高い比率を有する。
【0084】
10ksiサンプル群を除き、全ての群は、生成された骨組織の量及び質の観点から同様の挙動を示した。25ksiサンプル群に曝露した細胞は、他のものと比較してより多くの細胞外ポリマを分泌するように見えたが、これは必ずしも有害ではない。10ksiサンプル上の細胞は、細胞外ポリマの生成が最も少なく、これは、次いで、他の群からの骨組織よりも少ない程度まで成熟度が低く鉱化も少ない。これらの観察された差異が統計的に有意であったにもかかわらず、分化は依然として全てのケースで十分に1桁以内であった。したがって、インビトロで観察されたこれらの中等度の差異が、in vivoでの挙動の有意な変化をもたらすかどうかは疑わしい。
【0085】
曲げ強度:表5に提示されるデータは、25ksi HIPクールダウンサイクルを使用して生成される窒化ケイ素の密度及び平均強度を示す。
【0086】
【表5】
【0087】
測定された密度は、標準的な生成断熱冷却サイクルを使用して生成された材料と同等である。断熱冷却ロットの最も弱いバーは、650~700MPaの強度で破損し、欠陥駆動挙動を示した。注目すべきことに、25ksi冷却ロット中の最も弱いバーは、断熱冷却ロットの平均強度である1000MPaで破損した。断熱冷却ロットからの最強のバーは1170MPaで破損し、実験ロットからの最強のバーは1420MPaで破損した。実験ロットの平均曲げ強度は約250MPa増加し、スチューデントのt検定(2テール、不均一分散)は、2つの曲げ実験サンプルセット間の差が統計的に有意であることを示している。ロット平均、最大、及び最小強度の差は、2つの群間の強度分布全体で200~300MPaオーダのシフトを示す。一般に、欠陥除去は、分布のより少ない欠陥影響を受けるハイエンドでの強度値に影響を与えることなく、強度分布から低強度テールを除去する傾向がある。したがって、完全な分布シフトは、欠陥集団全体の除去/サイズ縮小又は他の何らかの基本的な材料変化の発生のいずれかを示している可能性がある。
【0088】
脆性材料の故障分布は、正規分布よりもワイブル分布によく適合する傾向がある。したがって、両方のロットの故障データは、図11にワイブル確率プロットとして提示される。断熱冷却ロットは、1059MPaの特性強度と8.60のワイブル係数を示す。25ksi冷却ロットは、1298MPaの特性強度と14.48のワイブル係数を示す。ASTM C1239によれば、n=36の試験片を有するロットデータから導出されたワイブル係数の不偏係数は、0.962である。したがって、断熱冷却ロット及び25ksi冷却ロットについての不偏ワイブル係数値は、それぞれ8.27及び13.93である。この特性強度及び係数の変化は、ロット特性の大幅な改善を表している。どちらのロットもワイブル分布(断熱冷却についてR=0.935、25ksi冷却について0.9778)にかなりよく適合しているが、断熱冷却群におけるいくつかの低強度の故障は直線近似から比較的離れている。これらの故障は、材料中の欠陥によって引き起こされた可能性がある。また、このチャートは、低強度の欠陥を排除するだけでなく、分布全体の挙動のシフトも非常に明確に示している。
【0089】
800MPa未満で破損した試料の破断起点の画像が、図12に提示されている。25ksi HIP冷却ロットの最低強度のバーは1000MPaで破損したため、画像化された全ての試料は、635~748MPaの範囲の破壊強度を有する断熱HIP冷却ロットからのものである。典型的なミラーミストハックルパターンが、全てのケースに観察される。試料2059-01及び13は、その破断起点で容易に明らかな含有物を有する。試料2059-14は原点に含有物を有するように見えるが、それはエッジロードされた可能性があるかのようにも見える。試料-01及び-13の含有物は、処理の間にSiYAlON IGPで満たされた未焼結状態の欠陥の結果として形成された(暗い、反射率の高い)ガラスが豊富な欠陥と一致している。
【0090】
XRDピークシフトからの格子歪み:β-Siの4つの一次反射のピーク位置を示すチャートが、図13A図13Dに提示されている。いずれのケースも、ピーク位置は、最終焼成サイクルからのクールダウン中により高い窒素過圧が印加されるのと同様の大きさだけより高い角度にシフトしている。
【0091】
Eqn.1はブラッグの法則であり、式中、nは、反射の順序、λは、入射放射の波長、dは、結晶内の平面間隔、θは、入射角である。
【0092】
【数1】
【0093】
nλは、所与の反射及び放射線源に対して一定であり、θがθ=90°まで増加するにつれてsinθが増加するので、観測範囲内のより高い回折角へのピークシフトは、そのピークの向きの原子平面間のより狭いd間隔に対応している。全ての主ピークについて非常に類似した回折角度増加の大きさを伴うピークシフトの同じ傾向の観察は、HIPクールダウン中に印加された圧力が増加するにつれて大きさが増加する残留等方性圧縮歪みの状態にあるHIPサンプル中のβ相結晶体と一致している。これはまた、連続ガラス相におけるより高い程度の窒素過飽和を引き起こすより高い過圧とも一致しており、これは(1)体積欠陥の閉鎖(2)N発生による細孔形成の防止、及び(3)残留歪みの体積制約となる。
【0094】
結論
HIPサイクルのクールダウン段階を制御することは、結果として生じるSi材料の微細構造及び特性に重大な影響を及ぼす。冷却中にガス圧力を一定に保持することにより、ガラス中の窒素の溶解度が低下する中間温度での窒素の発生が緩和されるが、移動度は依然として比較的高い。これにより、HIPプロセスのクールダウン段階中に形成される細孔のサイズが小さくなる。圧力をプロセス圧力よりも大きい値に保持することにより、微細構造内の細孔のサイズ及び頻度が大幅に減少するようである。これらの細孔欠陥のサイズ及び頻度を減少させることは、十分に確立された破壊力学科学から予想されるように、強度の直接的な改善につながる。更に、XRDデータは、HIPクールダウン中に印加される圧力の大きさに比例する残留応力状態が材料中に存在することを示す。この残留応力状態は、HIPクールダウン中の高圧保持による処理に伴う強度の大幅な改善に寄与する可能性がある。
【0095】
25ksiのHIPクールダウンサイクルを施した材料について、細菌バイオフィルムアッセイ性能又は骨伝導性試験性能について有害な影響は観察されず、実現され得る強度増加は相当なものである。強度と信頼性の大幅な改善を示した実験は、MC処理に25ksiのクールダウンHIPサイクルを導入するための正式な制御プロセス変更の検証作業の一部として繰り返す必要がある。
【0096】
いくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正、代替の構成、及び均等物を使用することができることが当業者によって認識されるであろう。更に、本発明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、いくつかの周知のプロセス及び要素は記載されていない。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0097】
当業者は、ここに開示される実施形態が限定ではなく例として教示することを理解するであろう。したがって、上記の説明に含まれる、又は添付の図面に示される事項は、例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載された全ての一般的及び特定の特徴、並びに本方法及びシステムの範囲の全ての記述を包含することを意図しており、これらは、言語の問題として、それらの間にあると言われる場合がある。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
【国際調査報告】