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特表2023-546958GaNスイッチモード電力変換器のためのドライバ回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】GaNスイッチモード電力変換器のためのドライバ回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20231031BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20231031BHJP
   H03K 17/06 20060101ALI20231031BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 H
H03K17/06 063
H03K17/687 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524989
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2021079366
(87)【国際公開番号】W WO2022090084
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/123770
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】20216346.5
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】チェン チークァン
(72)【発明者】
【氏名】フー ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユー
(72)【発明者】
【氏名】ワン シャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ガン
(72)【発明者】
【氏名】フー フエン
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS11
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE58
5H730FD51
5H730FG05
5H740BA12
5H740BB07
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH03
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5J055AX05
5J055BX16
5J055CX22
5J055DX02
5J055EY10
5J055EY12
5J055EZ13
5J055FX04
5J055FX08
5J055FX13
5J055FX32
5J055GX01
5J055GX02
(57)【要約】
ドライバ回路は、スイッチモード電力変換器のGaN電力転流スイッチを駆動するためのものである。電力転流のピーク電流などのパラメータを検知するために、検知構成要素が前記GaNスイッチに接続される。エネルギ蓄積構成要素が、前記GaNスイッチのゲートとソースとの間に或る特定のターンオン電圧を供給する。前記エネルギ蓄積構成要素の充電及び放電が調整され、前記エネルギ蓄積構成要素の充電及び放電機能と同期されるタイミングで検知が無効にされる。前記検知構成要素の両端の電圧が、前記GaNスイッチの生成されるゲート・ソース間駆動電圧を減らすことが、防止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチモード電力変換器の電力転流GaNスイッチを駆動するためのドライバ回路であって、前記電力変換器が、電力転流において、前記電力転流スイッチが閉じられているときのエネルギ蓄積フェーズと、前記電力転流スイッチが開いているときのフリーホイーリングフェーズとを有し、前記ドライバ回路が、
前記GaNスイッチに接続可能であり、前記電力転流のパラメータを検知するよう適合される検知構成要素であって、検知経路にある検知構成要素と、
前記GaNスイッチのゲートとソースとの間に或る特定のターンオン電圧を供給するためのエネルギ蓄積構成要素と、
フィードバック制御目的のために、前記電力転流の検知される前記パラメータに従って、前記GaNスイッチのスイッチングを制御し、前記エネルギ蓄積構成要素の充電及び放電を調整するために前記GaNスイッチに接続される制御回路とを有し、
前記制御回路が、
前記制御ユニットがこの時には前記検知構成要素における信号をフィードバック制御目的のために使用しないときに前記GaNスイッチの前記ゲートと前記ソースとの間に前記或る特定のターンオン電圧を得るよう、前記検知構成要素を介する前記エネルギ蓄積構成要素の充電を調整するよう適合され、且つ/又は
前記検知構成要素を前記電力転流の前記パラメータの検知からデカップリングすることにより前記検知構成要素を介さずに前記GaNスイッチをオンにするよう前記GaNスイッチに前記或る特定のターンオン電圧を供給するよう、前記エネルギ蓄積構成要素に蓄積されたエネルギの放電を調整するよう適合されるドライバ回路。
【請求項2】
前記検知構成要素が、前記GaNスイッチの前記ソースとグランドとの間に接続される検出抵抗器であり、前記ドライバ回路が、前記検知構成要素によって検知される前記パラメータを使用する制御ループ、好ましくはフィードバック制御ループを更に有する請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項3】
前記制御ユニットが、
前記充電フェーズにおいて前記検知構成要素における前記信号をフィードバック制御目的のために使用し、
前記フリーホイーリングフェーズにおいて前記検知構成要素における前記信号をフィードバック制御目的のために使用しないよう適合され、
前記エネルギ蓄積構成要素が、前記GaNスイッチの前記ゲート及び前記ソースに結合され、前記制御回路が、前記制御ユニットがこの時には前記検知構成要素における前記信号をフィードバック制御目的のために使用しない前記フリーホイーリングフェーズにおいて、前記検知構成要素を介して前記エネルギ蓄積構成要素を充電するよう適合される請求項1又は2に記載のドライバ回路。
【請求項4】
前記制御回路が、前記制御ユニットがこの時には前記検知構成要素における前記信号をフィードバック制御目的のために使用しない前記フリーホイーリングフェーズにおいて、前記検知構成要素を介して供給電圧から前記エネルギ蓄積構成要素を充電するよう適合される請求項3に記載のドライバ回路。
【請求項5】
前記供給電圧が、電圧レギュレータを介して前記エネルギ蓄積構成要素に結合され、前記電圧レギュレータが、前記或る特定のターンオン電圧を出力するよう適合され、前記制御回路が、前記電圧レギュレータの出力電圧まで前記エネルギ蓄積構成要素の電圧を充電するよう適合される請求項4に記載のドライバ回路。
【請求項6】
前記電圧レギュレータが、グランドに接続され、前記エネルギ蓄積構成要素の陰極が、前記検知構成要素を介して前記グランドに結合され、前記エネルギ蓄積構成要素の陽極が、前記GaNスイッチの前記ゲートに結合される請求項5に記載のドライバ回路。
【請求項7】
前記制御回路が、前記GaNスイッチのターンオン中、前記検知構成要素を含む前記検知経路をデカップリングしている間に前記GaNスイッチをオンするよう、前記エネルギ蓄積構成要素に蓄積されたエネルギの放電を調整するよう適合される請求項1又は2に記載のドライバ回路。
【請求項8】
前記制御回路が、前記GaNスイッチがオンにされた後に、前記検知構成要素が、前記電力転流の前記エネルギ蓄積フェーズにおいて充電エネルギに関連する量を検知するよう適合されるように、前記検知経路を再結合するよう適合される請求項7に記載のドライバ回路。
【請求項9】
前記ドライバ回路が、前記エネルギ蓄積構成要素から前記制御回路に供給するための電圧レギュレータを有し、前記電圧レギュレータが、前記或る特定のターンオン電圧を出力するよう適合され、ゲート駆動端子及びグランドに結合される請求項7に記載のドライバ回路。
【請求項10】
前記検知構成要素を短絡するための短絡スイッチを有し、前記エネルギ蓄積構成要素が、供給電圧によって供給され、グランドに接続され、前記制御回路が、
前記短絡スイッチを使用して前記検知構成要素を一時的に短絡している間に前記GaNスイッチをオンにするよう前記GaNスイッチの前記ゲート及び前記ソースにわたって前記ターンオン電圧を供給するよう、前記電圧レギュレータを介して前記エネルギ蓄積構成要素を放電し、
前記GaNスイッチが完全にオンにされた後に前記検知構成要素の短絡を終了し、前記GaNスイッチをオンに保ち、前記検知構成要素が前記エネルギ蓄積フェーズの前記パラメータを検知することを可能にするよう、前記電圧レギュレータを介して前記エネルギ蓄積構成要素における電圧を使用するよう適合される請求項9に記載のドライバ回路。
【請求項11】
前記エネルギ蓄積構成要素が、前記電圧レギュレータとしての低ドロップアウトレギュレータを介して前記GaNスイッチの前記ゲートに結合される請求項10に記載のドライバ回路。
【請求項12】
前記低ドロップアウトレギュレータの出力においてゲートドライバ回路を更に有し、前記低ドロップアウトレギュレータ及び前記ゲートドライバ回路が、グランドに接続される請求項11に記載のドライバ回路。
【請求項13】
電力伝達構成要素と、
GaNスイッチと、
フリーホイーリングダイオードと、
前記GaNスイッチを駆動するための、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のドライバ回路とを有する電力変換器。
【請求項14】
前記電力伝達構成要素、前記GaNスイッチ及び前記検知構成要素が、電力入力とグランドとの間に直列にあり、前記検知経路を規定するよう適合される請求項13に記載の電力変換器。
【請求項15】
ブーストコンバータ、バックコンバータ、バックブーストコンバータ又はフライバックコンバータを有する請求項13又は14に記載の電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチモード電力変換器に関し、とりわけ、GaN電力転流スイッチ(power commutation switch)を有するスイッチモード電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチモード電力変換器は、広く使用されている。
【0003】
従来のスイッチモード電力変換器は、エネルギ蓄積構成要素(一般的にはインダクタ)のエネルギ蓄積モードと、エネルギ蓄積構成要素から出力負荷にエネルギが放出されるフライバック/フリーホイーリング(freewheeling)モードとの間の転流を制御するMOSFET電力転流スイッチを使用する。電力転流スイッチの、エネルギ蓄積モード及びフライバックモードのデューティサイクルなどの、切り替えは、入力と出力との間のエネルギ伝達率を制御し、回路は、例えば、ブーストコンバータ、バックコンバータ、バックブーストコンバータ又はフライバックコンバータであり得る。より高度な回路は、例えば、LLC、LCC、Cuk、SEPIC、又はBiFREDコンバータであり得る。大まかな原理は、同様であり、エネルギ蓄積及びフリーホイーリングである。
【0004】
電流検知フィードバック信号を供給するために、一般に、検出抵抗器が、MOSFET電力転流スイッチと直列に接続される。MOSFET電力転流スイッチのゲートドライバは、検出抵抗器を通した電圧降下が回路動作に影響を及ぼさないように、MOSFET電力転流スイッチの(約3.5Vなどの)閾値電圧Vthに比べて高い電圧、例えば12V又は15Vを有する。
【0005】
ゲートドライバは、検出抵抗器における電圧の影響を考慮に入れずに、直接、グランドに接続されることができる。
【0006】
高電力アプリケーションのためのスイッチモード電源のための電力転流スイッチとして、GaNトランジスタ、例えば、GaN HEMTを採用したいという要望がある。これらのトランジスタは、高いブレークダウン電圧、低い寄生容量、低いターンオン抵抗(従って、効率的な動作)を有する。GaNトランジスタの利点は、エネルギ蓄積構成要素のサイズを減らし、従って、スイッチモード電力変換器全体のサイズを最小化する、より高い周波数のスイッチングの能力も含む。
【0007】
しかしながら、これらのトランジスタのターンオン閾値電圧は、約1.5Vなど、ゼロにずっと近く、約6Vの一般的なゲート駆動電圧にも近い。GaNトランジスタのゲート駆動信号に対する、電流検出抵抗器における電圧の影響は、無視できず、そうしないと、それは、電力転流スイッチに害を及ぼす、発振又は線形動作又は高いドレイン・ソース間オン抵抗をもたらし得る。要するに、GaNスイッチのためのゲート・ソース間駆動電圧は、より大きな許容範囲を持つMOSFETのゲート・ソース間駆動電圧とは異なり、正確で安定したものでなければならない。
【0008】
図1は、これらの問題に対処するための、スイッチモード電力変換器のGaN電力転流スイッチを駆動する既知の回路の例を示している。
【0009】
この例は、エネルギ蓄積インダクタL1、電力転流GaNスイッチM1、及びGaNスイッチのドレインとグランドとの間に直列の電流検出抵抗器RCSを備えるブーストコンバータを示している。入力コンデンサC3が、正入力とグランドとの間にある。インダクタL1と電力転流スイッチM1との間のノードは、フリーホイーリングダイオードD1を介して負荷LEDに接続し、出力コンデンサC1が、負荷と並列にある。
【0010】
供給電圧VCCは、電力転流スイッチM1の高電圧側から得られ、コンデンサC3に蓄積される。これは、制御ユニットMCUに電源を供給する第1の低ドロップアウトレギュレータ(first Low Dropout regulator)LDO1に供給するために使用される。この電源は、コンデンサC5に蓄えられる。制御ユニットMCUは、検出抵抗器RCSの両端の電圧を電流検知フィードバック信号CSとして受け取り、これは、コントローラによって、電力転流スイッチM1のスイッチングの時間を決めるために使用される。
【0011】
供給電圧VCCは、コンデンサC4に蓄えられるゲート駆動信号を電力転流スイッチに供給する第2の6Vの低ドロップアウトレギュレータLDO2に供給するためにも使用される。ゲート駆動信号は、随意に、プッシュプルトランジスタブリッジなどのようなゲートドライバ回路GDrを介して供給される。
【0012】
コンデンサC4は、(ゲートからグランドまでの電圧ではなく)電力転流スイッチM1のゲート・ソース間駆動電圧を蓄積する。
【0013】
この回路の問題は、供給電圧VCCはグランドを基準にしているが、6VのレギュレータLDO2は、グランドがGaN電力転流スイッチのソースに接続されるGaNドライバ回路GDrに供給するものであることである。これらの2つの電源は、異なるグランドを使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図1の回路は、レギュレータLDO2が電流検出抵抗器RCSを介してグランドに接続されることから、依然として、電力整流スイッチM1のゲート・ソース間電圧において電流検出抵抗器の影響を受ける。電力転流スイッチM1がオンであり、電流検出抵抗器RCSが電源電流を検知している場合における、電流検出抵抗器RCSにおける電圧スパイクは、コンデンサC4の両端の電圧の低下をもたらす可能性があり、従って、GaNスイッチM1のゲート・ソース間電圧であって、それがオンにするときのゲート・ソース間電圧の低下をもたらす可能性があり、このことは、GaNスイッチM1のターンオンを妨げる又は発振をもたらす可能性がある。とりわけ、レギュレータLD01は、レギュレータLD01の相対的に低い応答速度のため、及びレギュレータLD01を通した小さな電圧降下は(より良い効率のために)好ましいことから、RCSの両端の電圧によって影響を及ぼされる。従って、コンデンサC4の両端の電圧は、あまり安定していない可能性がある。C4が充電又は放電されるときにC4を流れる電流は、検出抵抗器RCSも流れ、RCSにおける検知電圧に影響を及ぼし、それによって、フィードバック制御ループに影響を及ぼし得る。
【0015】
それ故、スイッチモード電力変換器のGaNパワートランジスタを駆動するための改良されたドライバ回路に対するニーズがある。
【0016】
US20160181929A1及びリニアテクノロジー社の「力率補正付きLT8312ブーストコントローラ」は、スイッチがオンにされた後のしばらくの間の検出抵抗器における信号のブランキング(blanking)を開示している。EP0514064A2は、スイッチのタイミングを制御する回路であって、スイッチをオンにすることが、RCタイミング回路内のコンデンサが放電することをトリガし、コンデンサが或る特定の閾値未満に放電される場合にスイッチをオフにする回路を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、請求項によって規定されている。
【0018】
スイッチモード電源の検知構成要素は、電流制御ループなどの制御ループに不可欠であるが、スイッチモード電力変換器の電力転流スイッチをオンに切り替えるために必要とされるエネルギをエネルギ蓄積構成要素に蓄積し、前記電力転流スイッチが安定してオンにされることができるように前記検知構成要素に影響されずにそのエネルギ蓄積構成要素の充電及び/又は放電を制御することが、本発明の概念である。加えて、フィードバック検知機能は影響を及ぼされない。前記エネルギ蓄積構成要素の充電及び放電は、検知経路のデカップリング(decoupling)と同期されるタイミングで調整される。このデカップリングは、電気的なデカップリングであってもよく、又は論理的な(即ち、フィードバック制御タイミングに基づいて実施される)デカップリングであってもよい。要するに、本発明の例は、前記電力転流スイッチをオンに切り替えるために必要とされるエネルギを調整する瞬間においては、前記検知構成要素の機能を選択的に省く。この選択は、前記検知構成要素が、常に、電源電流を検知しており、前記スイッチモード電源における前記電力転流スイッチをオンに切り替えるためのエネルギの調整に影響を及ぼしている従来技術からは自明でない選択である。
【0019】
本発明の或る態様による例によれば、スイッチモード電力変換器の電力転流GaNスイッチを駆動するためのドライバ回路であって、前記電力変換器が、電力転流において、前記GaNスイッチが閉じられているときのエネルギ蓄積フェーズと、前記GaNスイッチが開いているときのフリーホイーリングフェーズとを有し、前記ドライバ回路が、
前記GaNスイッチに接続可能であり、前記電力転流のパラメータを検知するよう適合される検知構成要素であって、検知経路にある検知構成要素と、
前記GaNスイッチのゲートとソースとの間に或る特定のターンオン電圧を供給するためのエネルギ蓄積構成要素と、
フィードバック制御目的のために、前記電力転流の検知される前記パラメータに従って、前記GaNスイッチのスイッチングを制御し、前記エネルギ蓄積構成要素の充電及び放電を調整するために前記GaNスイッチに接続される制御回路とを有し、
前記制御回路が、前記制御ユニットがこの時には前記検知構成要素における信号(CS)をフィードバック制御目的のために使用しないときに前記GaNスイッチの前記ゲートと前記ソースとの間に前記或る特定のターンオン電圧を得るよう、前記検知構成要素を介する前記エネルギ蓄積構成要素の充電を調整するよう適合され、且つ/又は前記検知構成要素を前記電力転流の前記パラメータの検知からデカップリングすることにより前記検知構成要素を介さずに前記GaNスイッチをオンにするよう前記GaNスイッチに前記或る特定のターンオン電圧を供給するよう、前記エネルギ蓄積構成要素に蓄積されたエネルギの放電を調整するよう適合されるドライバ回路が提供される。
【0020】
このドライバ回路は、前記検知構成要素を通した電圧降下が、前記GaNスイッチをオンに切り替えるための前記エネルギ蓄積構成要素に影響を及ぼすことを、防止し、故に、所望のターンオン電圧(例えば6V)が供給される。
【0021】
前記検知経路を前記電力転流の前記パラメータの検知からデカップリングすることは、前記エネルギ蓄積構成要素に蓄積されるエネルギの充電/放電を調節するその時には、前記検知構成要素が、前記電力転流のパラメータを検知するその機能を実行していないことを意味する。
【0022】
以下により詳細に説明する例においては、前記エネルギ蓄積構成要素の充電電流は依然として前記検知構成要素を流れるかもしれないが、その時には、前記検知構成要素は前記電力転流の前記パラメータを検知していない。従って、「デカップリングする」という用語は、物理的又は電気的なデカップリングだけでなくてもよく、前記検知構成要素が依然として存在するが前記パラメータを検知していないという点で論理的なデカップリングであってもよい。例えば、充電又は放電電流は、前記検知経路がデカップリングさているときでも前記検知構成要素を流れ得るが、検知される前記信号(例えば電圧)はフィードバックパラメータとして解釈されず、前記検知構成要素における電圧降下は、結局、前記エネルギ蓄積構成要素の電圧に影響を及ぼさない。
【0023】
本発明の実施形態は、前記検知構成要素の両端の電圧が、前記GaNスイッチの生成されるゲート・ソース間駆動電圧を減らすことを、防止する。コンデンサなどの前記エネルギ蓄積構成要素は、例えば、所望の前記ゲート・ソース間駆動電圧が、前記ゲートと前記ソースとの間に印加されることができるように、前記所望のゲート・ソース間駆動電圧を蓄積し得る。他方で、本発明のこの例は、前記エネルギ蓄積構成要素の前記充電/放電が前記検知経路に影響を及ぼすことも防止する。
【0024】
(従来技術と同様に)ゲート・ソース間電圧を蓄積する受動的なエネルギ蓄積構成要素の代わりに、前記エネルギ蓄積構成要素の充電及び放電が前記制御回路によって調整される。これは、例えば、検知が行われているときに前記検知構成要素において電圧スパイクが生じないような充電及び放電電流のタイミングの制御を可能にする。
【0025】
検知される前記パラメータは、例えば、流れる電流であり、例えば、前記エネルギ蓄積フェーズにおけるピーク電流である。
【0026】
前記検知構成要素は、例えば、前記GaNスイッチの前記ソースと前記グランドとの間に接続される検出抵抗器である。
【0027】
或る例においては、前記ドライバ回路は、前記検知構成要素によって検知される前記パラメータを使用するよう適合される制御ループ、好ましくはフィードバック制御ループを更に有する。この実施形態は、前記検知経路は、当業者の観点では、通常、前記制御ループのために必須であり、不可欠であることを明示している。それ故、前記エネルギ蓄積構成要素を取り扱うために前記検知経路をデカップリングすることは、当業者にとって自明でない。
【0028】
本発明の或る例においては、前記制御回路は、前記GaNスイッチのターンオン中、前記検知構成要素を含む前記検知経路をデカップリングしている間に前記GaNスイッチをオンするよう、前記エネルギ蓄積構成要素に蓄積されたエネルギの放電を調整するよう適合されてもよい。
【0029】
換言すれば、前記GaNスイッチをオンにするための前記エネルギ蓄積構成要素の調整は、前記検知構成要素を含む前記検知経路の検知機能とは異なる時点にある。従って、前記検知経路は、前記検知機能が必要とされないときには、無効にされることができる。それ故、前記エネルギ蓄積構成要素は、前記GaNスイッチを安定してオンにするよう前記エネルギ蓄積構成要素の電圧を完全に前記GaNスイッチに供給することができ、前記エネルギ蓄積構成要素はまた、前記検知構成要素の前記検知機能に影響を及ぼさない。
【0030】
前記検知経路は、前記検知構成要素が短絡されることを提供することによって、無効にされてもよく、又は前記検知経路は、前記検知構成要素が、前記GaNスイッチが安定してオンされた後に、後で依然として機能するにしても、前記GaNスイッチのターンオン中には前記検知機能が実行されないことから、無効にされてもよい。
【0031】
前記制御回路は、前記GaNスイッチがオンにされた後に、前記検知構成要素が、前記電力転流の前記エネルギ蓄積フェーズにおいて充電エネルギに関連する量を検知するよう適合されるように、前記検知経路を(再)結合するよう適合されてもよい。その瞬間においては、前記GaNスイッチを維持するための前記GaNスイッチの前記ゲート及び前記ソースにわたる電圧に対する要件は緩和され、前記検知構成要素における如何なる電圧スパイクによる電圧変動も、これ以上、前記GaNスイッチのターンオンを妨げない。
【0032】
従って、前記検知構成要素は、前記エネルギ蓄積フェーズが始まるまで無効にされることができる。
【0033】
前記ドライバ回路は、前記エネルギ蓄積構成要素から前記制御回路に供給するための電圧レギュレータを有してもよく、前記電圧レギュレータは、前記或る特定のターンオン電圧を出力するよう適合され、ゲート駆動端子及びグランドに結合される。従って、前記LDOレギュレータ及び前記GaNスイッチが、(前記検知経路がデカップリングされることから)共通接地される(co-grounded)ことから、安定したターンオン電圧を供給するためには、前記回路において単一のLDOレギュレータが必要とされる。
【0034】
前記ゲート駆動端子は、前記GaNスイッチの前記ゲートに接続してもよく、又はゲートドライバに接続してもよく、その場合、前記ゲートドライバが、前記ゲートに駆動電圧を印加する。前記GaNスイッチをオンにするために、プッシュプルトランジスタブリッジ/ハーフブリッジのようなゲートドライバが更に設けられてもよいが、それは随意のものでしかない。
【0035】
例の第1セットにおいては、前記検知構成要素を短絡するために短絡スイッチが設けられ、前記エネルギ蓄積構成要素は、供給電圧によって供給され、グランドに接続され、前記制御回路は、
前記短絡スイッチを使用して前記検知構成要素を一時的に短絡している間に前記GaNスイッチをオンにするよう前記GaNスイッチの前記ゲート及び前記ソースにわたって前記ターンオン電圧を供給するよう、前記電圧レギュレータを介して前記エネルギ蓄積構成要素を放電し、
前記GaNスイッチが完全にオンにされた後に前記検知構成要素の短絡を終了し、前記GaNスイッチをオンに保ち、前記検知構成要素が前記エネルギ蓄積フェーズの前記パラメータを検知することを可能にするよう、前記電圧レギュレータを介して前記エネルギ蓄積構成要素における電圧を使用するよう適合される。
【0036】
この例の第1セットにおいては、前記エネルギ蓄積構成要素によって供給される電圧は、前記検知構成要素に流れ込まずに、前記GaNスイッチの前記ゲートに(従って、ゲート・ソース接合部に)送られる(放電される)。従って、前記GaNスイッチを通る電流は、前記検知構成要素を流れず、前記GaNスイッチの前記ソースの電位を変化させず、故に、前記エネルギ蓄積構成要素における低い電圧でスイッチングが確実に実施されることができる。前記エネルギ蓄積構成要素の前記放電電流も、前記検知構成要素を流れず、従って、電流検知に影響を及ぼさない。
【0037】
その場合、前記エネルギ蓄積構成要素の放電が、前記エネルギ蓄積フェーズの開始時にあることがあり、この時には、前記検知構成要素は短絡される。前記検知構成要素の短絡は、前記GaNスイッチを通る電源電流によって前記検知構成要素において引き起こされる電圧スパイクの影響を回避する。
【0038】
前記エネルギ蓄積構成要素は、前記電圧レギュレータとしての低ドロップアウトレギュレータを介して前記GaNスイッチの前記ゲートに結合されてもよい。その場合、前記ドライバ回路は、前記低ドロップアウトレギュレータの出力においてゲートドライバ回路を更に有してもよく、前記低ドロップアウトレギュレータ及び前記ゲートドライバ回路は、グランドに接続される。
【0039】
従って、前記ゲートドライバ回路は、前記検知構成要素がグランドへの経路にあるにもかかわらず、グランドを基準とすることができる。なぜなら、前記検知構成要素は、前記GaNスイッチのターンオン中、短絡されるからである。
【0040】
前記GaNスイッチをオンにする時間は、前記エネルギ蓄積フェーズ全体と比較して非常に短いことから、前記検知構成要素は、再び、前記検知機能を果たすよう切り替えられ、その間、前記エネルギ蓄積構成要素の電圧は、前記GaNスイッチをオンに保つための電圧に対する要件が、前記GaNスイッチをオンにするための電圧に対する要件よりもはるかに緩い(それほど、正確であり、安定していることを要求されない)ことから、前記GaNスイッチをオンに保つのに十分である。
【0041】
例の第2セットにおいては、前記制御ユニットは、
前記充電フェーズにおいて前記検知構成要素における前記信号をフィードバック制御目的のために使用し、
前記フリーホイーリングフェーズにおいて前記検知構成要素における前記信号をフィードバック制御目的のために使用しないよう適合され、前記エネルギ蓄積構成要素は、前記GaNスイッチの前記ゲート及び前記ソースに結合され、前記制御回路は、前記制御ユニットがこの時には前記検知構成要素における前記信号(CS)をフィードバック制御目的のために使用しない前記フリーホイーリングフェーズにおいて、前記検知構成要素を介して前記エネルギ蓄積構成要素を充電するよう適合される。
【0042】
例の第2セットにおいては、前記エネルギ蓄積構成要素は、この場合には、グランドを基準としない。その代わりに、前記エネルギ蓄積構成要素は、前記検知構成要素を通した電圧降下が前記GaNスイッチのターンオンに影響を及ぼさないように、前記フリーホイーリングフェーズにおいて十分なレベルまで充電され、前記ゲートと前記ソースとの間に十分な電圧を直接印加する。しかしながら、前記回路の異なる部分においては異なるグランド基準があるにもかかわらず、別々の電源は必要とされない。前記フリーホイーリングフェーズにおいては、これは検知時間とは異なる時間であることから、前記検知構成要素は、転流パラメータを検知するよう動作されない。
【0043】
前記ゲート・ソース間電圧のための専用コンデンサでは、充電は前記フリーホイーリングフェーズのどの時点にあってもよい。なぜなら、この時には、前記検知構成要素によって検知されるべき電力転流がなく、前記電力転流がこのコンデンサの充電に影響を及ぼさないからである。
【0044】
前記制御回路は、例えば、前記制御ユニットがこの時には前記検知構成要素における前記信号(CS)をフィードバック制御目的のために使用しない前記フリーホイーリングフェーズにおいて、前記検知構成要素を介して供給電圧(VCC)から前記エネルギ蓄積構成要素を充電するよう適合される。前記検知経路をデカップリングすることは、前記フリーホイーリングフェーズにおいては電源スイッチが開いていることから、前記検知経路が論理的に開いていることを意味する。
【0045】
前記充電は、前記検知構成要素を通して行われる。しかしながら、前記検知経路は、この間、デカップリングされる。前記検知構成要素は、通常、低インピーダンス構成要素であることから、前記エネルギ蓄積構成要素は、前記フリーホイーリングフェーズにおいて、時間内に十分且つ正確な電圧まで充電されることができる。
【0046】
前記供給電圧は、電圧レギュレータを介して前記エネルギ蓄積構成要素に結合されてもよく、前記電圧レギュレータは、前記或る特定のターンオン電圧を出力するよう適合され、前記制御回路は、前記電圧レギュレータの出力電圧まで前記エネルギ蓄積構成要素の電圧を充電するよう適合される。
【0047】
前記電圧レギュレータは、グランドに接続されてもよく、前記エネルギ蓄積構成要素の負端子(陰極)は、前記検知構成要素を介して前記グランドに結合されてもよく、前記エネルギ蓄積構成要素の正端子(陽極)は、前記GaNスイッチの前記ゲートに結合されてもよい。この例においては、前記電圧レギュレータは、前記フリーホイーリングフェーズにおいて最終的に前記ターンオン電圧まで前記エネルギ蓄積構成要素を充電する。
【0048】
前記ゲートとの結合は、ゲートドライバ回路を介するものであってもよい。その場合、前記ゲートドライバ回路のグランド端子は、前記GaNスイッチの前記ソースに接続されてもよい。
【0049】
本発明は、
電力伝達構成要素(power communication component)と、
GaNスイッチと、
フリーホイーリングダイオードと、
前記GaNスイッチを駆動するための、上記で規定されているドライバ回路とを有する電力変換器も提供する。
【0050】
前記電力伝達構成要素、前記GaNスイッチ及び前記検知構成要素は、電力入力とグランドとの間に直列にあり、前記検知経路を規定するよう適合される。
【0051】
(直列の負荷の有無にかかわらず)電力転流スイッチ及び検知構成要素の直列接続を含む限り、任意のトポロジのコンバータが使用されることができ、本発明の例は、それらのトポロジにおいて前記GaNスイッチをオンにするための前記エネルギ蓄積構成要素と前記検知構成要素との間の干渉を克服することができる。前記電力変換器は、例えば、ブーストコンバータ、バックコンバータ、バックブーストコンバータ又はフライバックコンバータを有してもよい。
【0052】
下記の例を参照して、本発明のこれら及び他の態様を説明し、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明のより良い理解のために、及び本発明がどのようにして実施され得るかをより明確に示すために、ここで、ほんの一例として、添付図面を参照する。
図1】スイッチモード電力変換器のGaN電力転流スイッチを駆動する既知の回路の例を示す。
図2】ブーストコンバータアーキテクチャの第1例を示す。
図3図2の回路の動作波形を示す。
図4図2と同じ回路手法をバックコンバータアーキテクチャに適用したものを示す。
図5】ブーストコンバータアーキテクチャの第2例を示す。
図6図5の回路の動作波形を示す。
図7図5と同じ回路手法をバックコンバータアーキテクチャに適用したものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図を参照して本発明について説明する。
【0055】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な例を示しているが、説明の目的のためのものでしかなく、本発明の範囲を限定しようとするものではないことは理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面からよりよく理解されるようになるだろう。図は、単に概略的なものに過ぎず、縮尺通りには描かれていないことは、理解されたい。図の全体を通して、同じ参照符号は、同じ又は同様のパーツを示すために使用されていることも、理解されたい。
【0056】
本発明は、スイッチモード電力変換器のGaN電力転流スイッチを駆動するためのドライバ回路を提供する。電力転流のピーク電流などのパラメータを検知するために、検知構成要素がGaNスイッチに接続される。エネルギ蓄積構成要素が、GaNスイッチのゲートとソースとの間に或る特定のターンオン電圧を供給する。エネルギ蓄積構成要素の充電及び/又は放電は、特定の時間に調整され、検知は、エネルギ蓄積構成要素の充電及び/又は放電の特定の時間と同期されるタイミングで無効にされる。検知構成要素の両端の電圧が、エネルギ蓄積構成要素における電圧を減らし、それによって、GaNスイッチの生成されるゲート・ソース間駆動電圧を減らすことが、防止される。エネルギ蓄積構成要素の充電及び放電が検知構成要素の検知に影響を及ぼすことも防止される。
【0057】
図2は、本発明の第1例のドライバ回路を採用するブーストコンバータアーキテクチャを示している。
【0058】
図2は、図1の回路と同じインダクタL1、フリーホイーリングダイオードD1、出力蓄積コンデンサC1、電力転流GaNスイッチM1、検知構成要素RCS、入力コンデンサC2及び負荷LEDを示している。図1の例と同様に、検知構成要素は、GaNスイッチのソースとグランドGNDとの間に接続される検出抵抗器RCSである。
【0059】
電力変換器は、GaNスイッチM1が閉じられているときにエネルギ蓄積フェーズを有する。その時、電流は、入力からインダクタL1及びGaNスイッチM1を通ってグランドに流れる。インダクタにエネルギが蓄積され、負荷LEDは出力コンデンサC1によって供給される。フリーホイーリングフェーズは、GaNスイッチM1が開いているときに生じる。入力及びインダクタL1に蓄積されたエネルギが、負荷(及び出力コンデンサC1)に供給される。
【0060】
制御回路20は、GaNスイッチM1のスイッチングを制御するためだが、エネルギ蓄積構成要素、即ち、コンデンサC3の充電及び放電を調整するためにも、GaNスイッチM1のゲートGに接続される。コンデンサC3は、供給電圧VCCを蓄積し、GaNスイッチのゲートとソースとの間に或る特定のターンオン電圧を供給するよう放電するエネルギ蓄積構成要素として機能する。
【0061】
この回路は、エネルギ蓄積構成要素C3から制御回路20に供給するための単一のレギュレータ22を有する。電圧レギュレータ22は、或る特定のターンオン電圧を出力するよう適合され、ゲート駆動端子及びグランドGNDに結合される。この例においては、ゲート駆動端子は、ゲートドライバ回路24(GDr)への入力であり、その場合、前記ゲートドライバ回路24(GDr)が、ゲートGに接続する。ゲートドライバ回路24は、ゲートGにおける制御を容易にするための、ハーフブリッジ回路などのよく知られている回路である。留意されるべきことは、ゲートドライバ回路24は随意のものであり、最も重要なことは、(特定のGaNスイッチ設計に依存する)或る例においては6Vのような、正確で安定したターンオン電圧が、GaNスイッチのゲート・ソースに供給される必要があるということである。
【0062】
レギュレータ22は、例えば、低ドロップアウトレギュレータ22であってもよく、ゲートドライバ回路24は、グランドGNDに接続される。従って、この回路においては、1つのグランド基準しかない。
【0063】
この例においては、検知経路のデカップリングは、検知構成要素を短絡するための、検知構成要素RCSと並列の短絡スイッチM2の使用を含む。短絡スイッチは、低電圧MOSFETであり得る。
【0064】
コントローラ20は、GaNスイッチM1をオンにするようGaNスイッチのゲート及びソースにわたってターンオン電圧を供給するよう、電圧レギュレータ22を介してエネルギ蓄積構成要素C3を放電する。このとき、検知構成要素RCSは、短絡スイッチM2を使用して一時的に短絡される。この瞬間においては、エネルギ蓄積構成要素C3と、LDO22と、GaNスイッチM1のソースとが、共通接地される(RCSは短絡される)ことから、LDO22は、正確に、安定して、6V電圧をGaNスイッチM1のゲート・ソースに供給することができ、従って、干渉なしにGaNスイッチM1をオンにすることができる。
【0065】
短絡機能は、GaNスイッチM1が完全にオンにされた後に、終了される。その後、検知経路が(再)結合される。エネルギ蓄積構成要素C3における電圧は、電圧レギュレータ22を介してGaNスイッチM1をオンに保ち(GaNスイッチは、電流駆動であるBJTトランジスタとは異なり、電圧駆動である)、検知構成要素RCSがエネルギ蓄積フェーズのパラメータを検知することを可能にし続ける。従って、検知されるパラメータが、フィードバック検知信号として使用されることができる。
【0066】
従って、この例においては、GaNスイッチのターンオン中、GaNスイッチをオンにするための、エネルギ蓄積構成要素C3に蓄積されたエネルギの放電が行われる。この間、検知構成要素を含む検知経路は、デカップリングされる。
【0067】
この回路は、共通グランドに接続されるコンデンサC3に蓄積された安定した電圧基準VCCを有する。それは、6Vのような正確なGaN駆動電圧を生成するために使用される。C3の充電は、変換器の充電又はフリーホイーリングフェーズとタイミングを合わせる必要はない。
【0068】
検出抵抗器RCSは、GaNスイッチのターンオン時間あたりでバイパス(短絡)され、その間、GaNスイッチM1のソースは、共通グランドに結合される。従って、GaNスイッチM1のソースとコンデンサC3とが、共通接地される。C3における電圧は、LDO22を介して、過電圧駆動状態による損傷なしに、且つGaNスイッチM1を完全にオンするには不十分な不足電圧で駆動することなしに、正確にGaNスイッチM1をオンにすることができる。
【0069】
短絡機能はまた、GaNスイッチM1がオンにされるとき、GaNスイッチM1を通る電源電流によって検出抵抗器において引き起こされる電圧スパイクが、ゲート及びグランド(従って、ソース)にわたる6V電圧に及ぼす影響を回避する。
【0070】
検知経路は、ターンオン過渡期間が完全に経過した後には、再結合されることができる。その後、検出抵抗器は、従来のやり方でコンバータ回路の制御のためにピーク電流信号を検出するために使用されることができる。入力電流が検出抵抗器によって検出されるピーク電流に到達するのに、まだ十分な時間があり、従って、スイッチモード電源の電流制御は影響を受けない。
【0071】
抵抗器RCSが回路に再結合されるときには、ゲート・ソース間電圧Vgsは、わずかに変化し、より具体的には、RCSにおける電圧によって低減される。しかしながら、GaNスイッチM1は、既に完全にオンにされていることから、この変化した電圧Vgsは、GaNスイッチM1の状態に著しくは影響を及ぼさず、又はGaNスイッチM1をオフにせず、又はGaNスイッチM1を発振させない。
【0072】
図3は、回路の動作波形を示している。
【0073】
一番上のプロットは、インダクタ電流IL1を示している。2番目のプロットは、電力転流GaNスイッチM1のゲート電圧VM1Gを示している。3番目のプロットは、短絡スイッチM2のゲート電圧VM2Gを示している。一番下のプロットは、電流検出抵抗器の両端の電圧VRCSを示している。GaNスイッチM1のターンオンプロセスは、ソースがグランドに接続されるようにM2がオンにされることから、ソースにおける電圧スパイクによって影響を及ぼされない。回路ループ制御のためのピーク電流検知も、ピーク電流を反映する有効な信号がまだ存在することから、影響を及ぼされない。従って、ドライバ回路は、フィードバック制御ループによって使用される電流検知機能に影響を及ぼさずに、単一の電源で電力転流スイッチの動作を保証することができる。
【0074】
図2は、ブーストコンバータアーキテクチャを示している。図4は、同じ回路手法をバックコンバータアーキテクチャに適用したものを示す。
【0075】
同じ構成要素には、同じ名称が付与されている。短絡スイッチM2は、この場合も先と同様に、電力転流スイッチM1がオンにされる前にオンにされ、GaNスイッチM1のターンオン過渡期間の終了後にオフにされる低電圧MOSFETである。
【0076】
バックコンバータトポロジにおいては、電力転流GaNスイッチM1がオンにされるときには、入力が、負荷LEDと出力コンデンサC1とインダクタL1とに順次に電流を供給する。GaNスイッチM1がオフにされるときには、インダクタL1が、フリーホイーリングダイオードD2を通して、負荷LEDと出力コンデンサとインダクタL1とに順次に電流を供給する。
【0077】
図5は、第2回路手法をブーストコンバータアーキテクチャに適用したものを示している。
【0078】
図5は、図1の回路と同じインダクタL1、フリーホイーリングダイオードD1、出力蓄積コンデンサC1、電力転流GaNスイッチM1、検知構成要素RCS、入力コンデンサC2及び負荷LEDを示している。図1の例と同様に、検知構成要素は、GaNスイッチのソースとグランドGNDとの間に接続される検出抵抗器RCSである。
【0079】
電力変換器は、GaNスイッチM1が閉じられているときにエネルギ蓄積フェーズを有する。その時、電流は、入力からインダクタL1及びGaNスイッチM1を通ってグランドに流れる。インダクタにエネルギが蓄積され、負荷LEDは出力コンデンサC1によって供給される。フリーホイーリングフェーズは、GaNスイッチM1が開いているときに生じる。インダクタL1に蓄積されたエネルギが、負荷(及び出力コンデンサC1)に供給される。
【0080】
この回路は、電力転流スイッチM1のゲート・ソース間電圧を蓄積するための別個のエネルギ蓄積構成要素C4を有する。エネルギ蓄積構成要素C4は、GaNスイッチM1のゲートとソースとの間に接続される。
【0081】
制御回路20は、GaNスイッチM1のスイッチングを制御するためだが、この場合も先と同様に、エネルギ蓄積構成要素、即ち、コンデンサC4の充電及び放電を調整するためにも、GaNスイッチM1のゲートGに接続される。エネルギ蓄積構成要素C4の充電はフリーホイーリングフェーズにおいて行われ、これは検知経路がデカップリングされるときである。
【0082】
この場合も先と同様に、回路は、入力として電圧源VCCを有する単一のレギュレータ22を有する。電圧レギュレータ22は、グランドに接続され、エネルギ蓄積構成要素C4の負端子は、検知構成要素を介して同じグランドに結合される。レギュレータ22の出力は、グランドに接続するコンデンサC5において蓄積される。エネルギ蓄積構成要素C4の陽極は、GaNスイッチのゲートに結合される。
【0083】
スイッチSWが、レギュレータ22の出力とコンデンサC4の陽極(正端子)との間に直列にある。コンデンサC4は、このスイッチSWを通して、且つ検知構成要素RCSを通して充電される。フリーホイーリングフェーズ中であるこの間、検知経路はデカップリングされる。
【0084】
この場合には、デカップリングは論理機能である。充電電流が流れている間、検知構成要素RCSの両端の電圧が依然として存在するが、制御ユニットは、この時には、信号CSをフィードバック制御目的のために使用しない。コンデンサC4は、DC電圧によって充電されるRC回路において、十分な時間がある場合には、最終的にDC電圧まで充電する。検知構成要素は非常に小さいことから、(コンデンサC4が、最後のターンオン動作後に依然として残留電圧を有する)通常動作において、コンデンサC4を6Vレベルまで充電する時間は、非常に短い。
【0085】
ゲートドライバ24は、スイッチSWの動作を制御する。とりわけ、ゲート駆動信号の反転が、スイッチSWを制御するために使用され得る。このやり方においては、エネルギ蓄積構成要素C4は、主スイッチがフリーホイーリングフェーズにおいてオフにされているときに、充電される。従って、エネルギ蓄積構成要素C4の充電は、ブーストコンバータの充電フェーズでしか行われないRCSの検知機能に影響を及ぼさない。エネルギ蓄積構成要素C4は、安定状態において6Vまで完全に充電される。その後、充電電流はなく、従って、RCSを通した電圧降下はない。
【0086】
エネルギ蓄積構成要素C4は、既にゲートとソースとの間で結合していることから、主スイッチを安定してオンにするよう放電される。GaNスイッチがオンであるとき、スイッチSWはオフであり、故に、この間、エネルギ蓄積構成要素C4が、直接的には、共通グランドではなく、スイッチM1のソースを基準として、この期間中、電力転流スイッチを駆動するようエネルギを供給する。入力からの、検出抵抗器を通る電源電流は、GaNスイッチのゲート及びソースにわたる電圧に影響を及ぼさず、同様に、検出抵抗器における電圧スパイクは、前記電圧に影響を及ぼさず、前記電圧は、コンデンサC4によって独立して供給される。
【0087】
図6は、回路の動作波形を示している。
【0088】
一番上のプロットは、インダクタ電流IL1を示している。2番目のプロットは、GaNスイッチM1のゲート電圧VM1Gを示している。3番目のプロットは、直列スイッチSWのためのイネーブル信号ENを示している。一番下のプロットは、電流検出抵抗器の両端の電圧VRCSを示している。
【0089】
GaNスイッチM1のターンオンプロセスは、この場合も先と同様に、電圧スパイクによって影響を及ぼされない。とりわけ、電力転流GaNスイッチM1のゲートとソースとの間にGaNを駆動するエネルギ蓄積構成要素C4を結合することによって、主スイッチがオンにされるとき、ゲート・ソース間電圧に対する、検出抵抗器RCSにおける電圧スパイクの影響が、この場合も先と同様に、回避される。
【0090】
回路ループ制御のためのピーク電流検知も、この場合も先と同様に、ピーク電流を反映する有効な信号がまだ存在することから、影響を及ぼされない。従って、ドライバ回路は、制御ループのための電流検知機能に影響を及ぼさずに、単一の電源で電力転流スイッチの動作を保証することができる。
【0091】
レギュレータ22は、エネルギ蓄積構成要素C4と検知構成要素RCSとの直列接続を充電する。最終的には、レギュレータの全出力電圧、例えば6Vが、コンデンサC4に蓄積される。このやり方においては、回路は、コントローラ20がグランドを基準としているにもかかわらず、2つのレギュレータの必要性をなくす。
【0092】
図5は、ブーストコンバータアーキテクチャを示している。図7は、同じ回路手法をバックコンバータトポロジに適用したものを示している。
【0093】
同じ構成要素には、同じ名称が付与されている。回路は、図4の回路と同じように動作するが、図5を参照して説明したような第2手法で動作する。
【0094】
本発明は、上記のように、ブースト又はバックコンバータのような電流検出抵抗器とカスケード接続されるGaN電力転流スイッチを有する任意のトポロジにおいて使用され得る。当業者は、本発明は、電源スイッチにターンオン電圧を供給するためのエネルギ蓄積構成要素の充電/放電を妨げる検知構成要素の問題を解決するために、バックブースト若しくはフライバックコンバータのような他のトポロジ、又は他のタイプのコンバータにおいても使用され得ることを、理解するだろう。
【0095】
本発明は、例えば、LEDドライバ内で使用されてもよい。
【0096】
当業者は、請求項記載の発明の実施において、図面、明細及び添付の特許請求の範囲の研究から、開示されている例に対する変形を、理解し、達成することができる。特許請求の範囲において、「有する」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形表記は、複数性を除外しない。
【0097】
単に、或る特定の手段が、相互に異なる従属請求項において挙げられているという事実は、これらの手段の組み合わせは有利になるようには使用されることができないことを示すものではない。
【0098】
特許請求の範囲又は明細書において「~するよう適合される」という用語が使用されている場合には、「~するよう適合される」という用語は、「~するよう構成される」という用語と同等であるよう意図されていることに留意されたい。
【0099】
特許請求の範囲における如何なる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】