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特表2023-546970高血圧のためのCYP11B2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(54)【発明の名称】高血圧のためのCYP11B2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20231031BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231031BHJP
   C07D 253/07 20060101ALN20231031BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P9/12
C07D253/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525457
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 US2021056499
(87)【国際公開番号】W WO2022093714
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/105,745
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/223,719
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523147200
【氏名又は名称】ミネラリス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mineralys Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】スリングズビー,ブライアン テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ワット,ウィリアム コノリー
(72)【発明者】
【氏名】ロッドマン,デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC64
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA52
4C086MA59
4C086MA65
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZC20
(57)【要約】
本開示は、とりわけ、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を使用して患者の高血圧を治療する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低レニン高血圧対象における高血圧を治療する方法であって、前記低レニン高血圧対象に、有効量のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記低レニン高血圧対象が、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの2つ以上の組み合わせから選択される高血圧薬を服用しているか、又は服用していた、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低レニン高血圧対象が、前記高血圧薬のうちの少なくとも2つを服用しているか、又は服用していた、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記低レニン高血圧対象が、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記低レニン高血圧対象が、1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記低レニン高血圧対象が、イムノアッセイによって測定されるとき、6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記低レニン高血圧対象が、LC-MSによって測定されるとき、1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、CYP 11β1ベータヒドロキシラーゼ活性の阻害と比較して、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ活性の阻害に対して選択的であり、好ましくは、CYP 11β1ベータヒドロキシラーゼの阻害定数(Ki)を、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼのKiで除したものが、100を超える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1,2,4-トリアジン化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
【化1】
(i)式中、X及びYが、以下の(a)~(c):
(a)XがNであり、YがCH若しくはC-RYである、
(b)XがCHであり、YがNである、又は
(c)XがCHであり、YがCHである、のうちのいずれかを表し、
(ii)Rが、アルキル基を表し、
(iii)Rが、置換され得るシクロアルキル基、置換され得るシクロアルケニル基、置換され得るアリール基、又は部分的に水素化され得、置換され得る6~10員の単環式若しくは二環式ヘテロアリール基を表し、
(iv)Rが、水素原子、又はアルキル基を表し、
(v)Rが、置換され得るアルキル基、置換され得るシクロアルキル基、置換され得る脂肪族複素環式基、又は部分的に水素化され得、置換され得るヘテロアリール基を表し、
(vi)Rが、水素原子、又はアルキル基を表す、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、式(A):
【化2】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物が、前記式(A)の化合物のHBr塩の形態である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)5mg~100mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日2回、12時間間隔で経口投与されるか、
(ii)10mg~50mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日2回、12時間間隔で経口投与されるか、
(iii)5mg~100mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日1回経口投与されるか、又は
(iv)10mg~50mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日1回経口投与される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
(i)12.5mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日2回、12時間間隔で経口投与されるか、
(ii)25mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日2回、12時間間隔で経口投与されるか、
(iii)12.5mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日1回経口投与されるか、
(iv)50mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日1回経口投与されるか、又は
(v)100mgの前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1日1回経口投与される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある減少の欠如によって示されるように、前記対象における11β-ヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後のコルチゾールレベルが18mcg/dLを超える、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、
(i)前記対象におけるアルドステロン産生を抑制し、
(ii)前記対象における血清及び/若しくは血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は
(iii)前記対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる量で、前記低レニン高血圧対象に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、前記低レニン高血圧対象に、前記対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチステロン(11-DOC)レベルが600pmol/Lを超える量未満、好ましくは前記対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルが400pmol/Lを超える量未満の量で投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、前記低レニン高血圧対象に、前記対象において0.1ng/mlを超える11-DOCの蓄積を引き起こす量未満の量で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(i)血清及び/若しくは血漿アルドステロンAUC-24が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象におけるアルドステロンレベルと比較して、前記対象において少なくとも25%減少し、
(ii)前記対象の血清及び/若しくは血漿カリウムレベルが、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿カリウムレベルと比較して少なくとも0.3mMol/L増加し、かつ/又は
(iii)前記対象におけるPRAが、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象における前記PRAと比較して少なくとも5ng/nl/時間増加する、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、前記対象の副腎皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない量で前記低レニン高血圧対象に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の前記投与が、
(i)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルの臨床的に意味のある減少を引き起こさず、
(ii)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさず、かつ/又は
(iii)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない量で、前記低レニン高血圧対象に投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、
(i)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルの20%を超える減少を引き起こさず、好ましくは、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルの10%を超える減少を引き起こさず、
(ii)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルの20%を超える増加を引き起こさず、好ましくは、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルの10%を超える増加を引き起こさず、かつ/又は
(iii)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルの20%を超える増加を引き起こさず、好ましくは、前記CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、前記対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルの10%を超える増加を引き起こさない量で、前記低レニン高血圧対象に投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(i)前記対象の診察室測定収縮期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下し、かつ/又は
(ii)自動診察室血圧測定(AOB)又は血圧計によって測定された、前記対象の自由行動下収縮期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の自由行動下収縮期血圧と比較して低下する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
(i)前記対象の診察室測定収縮期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の診察室測定収縮期血圧と比較して、少なくとも10mmHg低下し、かつ/又は
(ii)前記対象の自由行動下収縮期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の自由行動下収縮期血圧と比較して、少なくとも10mmHg低下する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(i)前記対象の自由行動下収縮期及び拡張期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の自由行動下収縮期及び拡張期血圧と比較して低下し、
(ii)前記対象の診察室測定収縮期及び拡張期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の診察室測定収縮期及び拡張期血圧と比較して低下し、
(iii)前記対象の診察室測定拡張期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の診察室測定拡張期血圧と比較して低下し、かつ/又は
(iv)前記対象の収縮期血圧が130mmHg未満に減少し、かつ/若しくは前記対象の拡張期血圧が80mmHg未満に減少する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
(i)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の自由行動下収縮期及び拡張期血圧の各々と比較して、それぞれ、前記対象の自由行動下収縮期血圧が少なくとも10mmHg低下し、前記対象の自由行動下拡張期血圧が少なくとも5mmHg低下し、
(ii)前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の診察室測定収縮期及び拡張期血圧の各々と比較して、それぞれ、前記対象の診察室測定収縮期血圧が少なくとも10mmHg低下し、前記対象の診察室測定拡張期血圧が少なくとも5mmHg低下し、
(iii)前記対象の診察室測定拡張期血圧が、前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の前記対象の診察室測定拡張期血圧と比較して少なくとも5mmHg低下し、かつ/又は
(iv)前記対象の収縮期血圧が130mmHg未満に減少し、かつ/若しくは前記対象の拡張期血圧が80mmHg未満に減少する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
低レニン高血圧対象の治療に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は組成物。
【請求項28】
(i)前記低レニン高血圧対象が、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、若しくはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される高血圧薬を服用しているか、若しくは服用しており、
(ii)前記低レニン高血圧対象が、前記高血圧薬のうちの少なくとも2つを服用しているか、若しくは服用しており、
(iii)前記低レニン高血圧対象が、高血圧薬を服用していない場合、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有するか、若しくは1つ以上の高血圧薬を服用している場合、1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有し、かつ/又は
(iv)前記低レニン高血圧対象が、イムノアッセイによって測定されるとき、6ng/dL以上、若しくはLC-MSによって測定されるとき、1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する、請求項27に記載のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は組成物。
【請求項29】
低レニン高血圧対象に投与されると、前記低レニン高血圧対象が、請求項15~26に記載の効果のうちの1つ以上又は全てを経験する、請求項27又は28に記載のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は組成物。
【請求項30】
CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対する対象を同定する方法であって、
(i)前記対象において130mmHgを超える収縮期血圧を測定することと、
(ii)前記対象において90mmHgを超える拡張期BPを測定することと、
(iii)前記対象が、高血圧薬を服用していないとき、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有すること、又は1つ以上の高血圧薬を服用しているとき、1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有することを決定することと、
(iv)イムノアッセイによって測定される場合、前記対象が6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有することを決定することと、を含み、
それにより、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対して前記対象を同定する、方法。
【請求項31】
ステップ(iv)が、LC-MSによって測定される場合、前記対象が1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有することを決定することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
高血圧の治療を必要とする対象において高血圧を治療する方法であって、
(i)前記対象において130mmHgを超える収縮期血圧を測定することと、
(ii)前記対象において90mmHgを超える拡張期BPを測定することと、
(iii)前記対象が、高血圧薬を服用していないとき、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有すること、又は1つ以上の高血圧薬を服用しているとき、1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有すること、を決定することと、
(iv)イムノアッセイによって測定される場合、前記対象が6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有することを決定することと、
(v)前記対象に有効量のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することと、を含む、方法。
【請求項33】
ステップ(iv)が、LC-MSによって測定される場合、前記対象が1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有することを決定することを含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼが、CYP 11β1ベータヒドロキシラーゼ活性の阻害と比較して、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ活性の阻害に対して選択的であり、好ましくは、CYP 11β1ベータヒドロキシラーゼの阻害定数(Ki)を、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼのKiで除したものが、100を超える、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、1,2,4-トリアジン化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤が、式(A):
【化3】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧のためのCYP11B2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧には様々な病因がある。少なくとも部分的にこれに起因して、ある形態の高血圧の治療における薬学的薬剤の成功は、その薬剤が別の形態の高血圧の治療に成功することを必ずしも示すものではない。高血圧の主な要因の1つは、強力な血管収縮アンジオテンシンIIの産生で頂点に達する「レニンカスケード」である。レニンは、アンジオテンシノーゲンを切断してアンジオテンシンIを形成するプロテアーゼであり、後者は第2の酵素(アンジオテンシン変換酵素又はACE)によって切断されてアンジオテンシンIIを形成する。レニン又はACEを阻害する、又はカスケードのアンジオテンシンII最終生成物を拮抗する薬学的薬剤の投与は、血圧を低下させ、高血圧患者集団の大部分に影響を及ぼすこの形態の高血圧の治療のための経路を提供することができる。
【0003】
しかしながら、一部の個体は、低レベルの血漿レニン濃度又は低血漿レニン活性を有するが、依然として顕著な高血圧を示す。この形態の高血圧は、低レニン高血圧と呼ばれる。これらの個人では、ナトリウム摂取量の増加に続いて、レニン血漿濃度が維持又は低下するという事実にもかかわらず、血圧の上昇が続く。ACE阻害剤などの本態性高血圧の治療に積極的な薬剤は、低レニン高血圧の治療には比較的効果がない。したがって、この形態の高血圧を効果的に治療することができる薬理学的薬剤が当技術分野で必要である。本開示は、他の重要な目的と同様に、これに向けられる。
【発明の概要】
【0004】
低レニン高血圧対象に有効量のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することによって、高血圧の治療を必要とする低レニン高血圧対象において高血圧を治療する方法が本明細書に提供される。実施形態において、低レニン高血圧対象は、原発性アルドステロン症を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、ELISAのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、1つ以上の高血圧薬(例えば、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬)を服用している。実施形態において、低レニン高血圧対象は、高血圧薬(例えば、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬)を服用していない。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、1,2,4-トリアジン化合物である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A):
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、遊離塩基の形態の式(A)の化合物である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の一臭化水素酸塩である。
【0005】
本明細書では、(i)対象における140mmHgを超える収縮期血圧を測定すること、(ii)対象における90mmHgを超える拡張期血圧を測定すること、(iii)対象における0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定すること、(iv)対象における6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を測定すること、又は(v)前述のうちの2つ以上の組み合わせることによって、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対して対象を同定することによって、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対する対象を同定する方法を提供する。実施形態において、対象は、原発性アルドステロン症を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、1つ以上の高血圧薬(例えば、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬)を服用している。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、1,2,4-トリアジン化合物である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A):
【化2】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、遊離塩基の形態の式(A)の化合物である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の一臭化水素酸塩である。
【0006】
(a)(i)対象における140mmHgを超える、若しくは130mmHgを超える収縮期血圧、(ii)対象における90mmHgを超える拡張期血圧、(iii)対象における0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性、(iv)対象における6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度、又は(v)前述のうちの2つ以上の組み合わせ、を測定することと、(b)対象に有効量のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することと、によって、高血圧の治療を必要とする対象において高血圧を治療する方法が本明細書に提供される。実施形態において、低レニン高血圧対象は、原発性アルドステロン症を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、1つ以上の高血圧薬(例えば、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬)を服用している。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、1,2,4-トリアジン化合物である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A):
【化3】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、遊離塩基の形態の式(A)の化合物である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の一臭化水素酸塩である。
【0007】
本開示のこれら及び他の実施形態及び態様は、本明細書で詳細に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】HBr塩の形態の式Aの化合物の単回漸増用量(SAD)試験における血清アルドステロンAUC-24(h*pg/ml)の測定。
図2】HBr塩の形態の式Aの化合物の単回漸増用量(SAD)試験における血清コルチゾールAUC-24(h*pg/ml)の測定。
図3】HBr塩の形態の式Aの化合物の尿Na及びNa/K比単回漸増用量(SAD)試験の測定。
図4】アルドステロンレベル(上部パネル)と式Aの化合物曝露(Cpu/Ki)の比較(下部パネル)。
図5】アルドステロン抑制の持続時間に対する式Aの化合物の用量効果。
図6】反復漸増用量(MAD)研究におけるアルドステロンレベル(上部パネル)に対する式Aの化合物曝露(下部パネル)の効果。
図7】反復漸増用量(MAD)研究における様々な用量レベルでの11-DOCの蓄積への影響。
図8】式Aの化合物の最大アルドステロン抑制期間に対する用量効果。
図9】式Aの化合物の血漿レニン活性(PRA)に対する用量効果。
図10】血清Kに対する式Aの化合物の生理学的効果。
図11】副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激後のアルドステロン分泌に対する式Aの化合物の様々な用量の影響。
図12】式Aの化合物の様々な用量が様々なバイオマーカーに及ぼす影響。
図13】低レニン動物モデル実験のためのテレメトリープロトコル。
図14】アグーチ黄色肥満高レプチン血症マウス(Ay)における平均動脈血圧(MAP)。Ayマウスは、Cyp11β2活性における直接的なレプチン媒介性上昇及びRas経路活性化とは無関係のアルドステロン過剰産生に起因して、野生型マウスと比較して、MAPにおいて約5~8mmHgの上昇を有する(Hypertension,2016 May;67(5):1020-1028;Circulation 2015 Dec.132(22);2134-2145)。マウスを、3つのCyp11β2阻害剤:本明細書に記載の式(A)HBrの化合物、LCI699、又はCIN-107のうちの1つで処置した。3つの阻害剤は全て、対照マウスに見られるものに匹敵する同程度及び値にMAPを減少させた。阻害剤処置マウスにおけるベースラインと処置されたMAPとを比較したプールデータは、アルドステロン媒介性のレニン血管形成非依存性高血圧の設定におけるCyp11β2阻害剤の血圧低下能力を検証する統計的に有意な低減(p=0.0022)を示した。3つの阻害剤間の治療効果に統計的に有意な差はなかった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
本明細書全体で使用される用語は、化学及び生物学の中での平易かつ通常の意味に従って使用される。別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,2nd ed.,J.Wiley & 20 Sons(New York,N.Y.1994)、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,N.Y.1989)を参照されたい。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法、デバイス、及び材料は、本開示の実施において使用され得る。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供され、特許請求の範囲又は開示の範囲を限定することを意図しない。
【0010】
「低レニン高血圧対象」又は「低レニン高血圧患者」は、以下の基準を満たす対象を指す:(i)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(ii)6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する、(iii)140mmHgを超える収縮期血圧を有する、(iv)90mmHgを超える拡張期血圧を有する、又は(v)前述のうちの2つ以上の組み合わせ。実施形態において、低レニン高血圧対象は、4つの基準全てを満たす。実施形態において、低レニン高血圧対象を有する対象は、上記の基準のうちの1つ以上を有する。実施形態において、低レニン高血圧を有する対象は、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、対象は低レニン高血圧対象である。実施形態において、低レニン高血圧対象は、ELISA等のイムノアッセイによって測定されるとき、6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、140mmHgを超える収縮期血圧を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、130mmHgを超える収縮期血圧を有する。実施形態において、対象は、自律アルドステロン産生によって引き起こされるアルドステロンのレベルが上昇している。実施形態において、対象は原発性アルドステロン症を有しない。実施形態において、対象は臨床的に定義された原発性アルドステロン症を有しない。
【0011】
「CYP11β2」又は「Cyp11B2」は、11-デオキシコルチコステロン(すなわち、アルドステロン前駆体)からアルドステロンに至る一連の反応を触媒するシトクロムP450酵素である。Cyp11B2は主に副腎皮質球状層で発現し、血漿アルドステロンのレベルは副腎に存在するCyp11B2の酵素活性によって調節される。アルドステロンは、心血管、腎臓、脂肪、及び脳などの他の組織で発現される。
【0012】
「阻害剤」は、化合物の不在又は既知の不活性を有する化合物などの、対照と比較して活性を低下させる化合物(例えば、本明細書に記載の化合物)を指す。阻害剤は、小分子阻害剤、抗体阻害剤、タンパク質阻害剤、生体分子阻害剤、天然リガンドなどであってもよい。「阻害剤」は、薬学的に許容される塩、例えば、本明細書に記載される化合物の形態であってもよい。
【0013】
「タンパク質阻害剤」は、化合物の不在又は既知の不活性な化合物などの、対照と比較してタンパク質活性を減少させる化合物を指す。
【0014】
参照における、タンパク質阻害剤相互作用に関する「阻害(inhibition)」、「阻害(inhibit)」、「阻害する(inhibiting)」等の用語は、阻害剤の不在下でのタンパク質の活性又は機能に対して、タンパク質の活性又は機能に悪影響を及ぼす(例えば、低下させる)ことを意味する。実施形態において、阻害とは、阻害剤の不在下でのタンパク質の濃度又はレベルに対して、タンパク質の濃度又はレベルに悪影響を及ぼす(例えば、低下させる)ことを意味する。実施形態において、阻害は、病患又は疾患の症状の減少を指す。実施形態において、阻害は、特定のタンパク質標的の活性の減少を指す。したがって、阻害には、少なくとも部分的に、刺激を部分的又は完全に遮断すること、活性化を減少、防止、若しくは遅延すること、又はシグナル伝達若しくは酵素活性若しくはタンパク質の量を不活性化、脱感作、若しくは下方調節することが含まれる。実施形態において、阻害は、直接相互作用(例えば、阻害剤が標的タンパク質に結合する)に起因する標的タンパク質の活性の減少を指す。実施形態において、阻害は、間接相互作用からの標的タンパク質の活性の減少を指す(例えば、阻害剤は、標的タンパク質を活性化するタンパク質に結合し、それによって標的タンパク質の活性化を防止する)。
【0015】
「阻害剤」、「リプレッサー」又は「アンタゴニスト」又は「ダウンレギュレーター」という用語は、所与の遺伝子又はタンパク質の発現又は活性を検出可能に低下させることができる物質を互換的に指す。アンタゴニストは、アンタゴニストの不在下での対照と比較して、発現又は活性を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上低下させることができる。実施形態において、発現又は活性は、アンタゴニストの不在下での発現又は活性よりも2倍以下、5倍以下、10倍以下である。
【0016】
「発現」という用語は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含むがこれらに限定されない、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含む。発現は、タンパク質を検出するための従来の技術(例えば、ELISA、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光、免疫組織化学など)を使用して検出することができる。
【0017】
「CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤」は、化合物の不在又は既知の不活性を有する化合物などの対照と比較して、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼの活性を低減させる化合物を指す。CYP11β2阻害剤は、血漿アルドステロンレベル、尿アルドステロンレベルなどを低減させる。CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、抗体阻害剤、アンチセンス核酸阻害剤、アプタマー阻害剤、小分子阻害剤、天然リガンド、タンパク質阻害剤、生体分子阻害剤などであり得る。例示的なCYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,029,993号及び米国特許第10,329,263号に記載されており、それらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。他のCYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,717,731B2号に記載されており、その開示もまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
式(A)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(A):
【化4】
で表される、N-[トランス-4-(アセチルアミノ)シクロヘキシル]-2-{4-[5-(4-メチルフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-イル]ピペラジン-1-イル}アセトアミド又はその薬学的に許容される塩を指す。
実施形態において、式(A)の化合物は、遊離塩基の形態である。実施形態において、式(A)の化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。実施形態において、式(A)の化合物は、一臭化水素酸塩の形態である。実施形態において、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩は、N-[トランス-4-(アセチルアミノ)シクロヘキシル]-2-{4-[5-(4-メチルフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-イル]ピペラジン-1-イル}アセトアミド一臭化水素酸塩という名称を有する。式(A)の化合物及びその薬学的塩は、例えば、米国特許第10,029,993号及び欧州公開第3549935号に記載されているプロセスによって作製することができ、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「化合物A HBr」は、式(A)の化合物の臭化水素酸塩を指す。
【0020】
「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子又はその機能的断片によってコードされるポリペプチドを指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、及びミュー定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンとして分類され、これは、それぞれ、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを定義する。
【0021】
タンパク質又はペプチドを指す場合、「抗体に特異的に(又は選択的に)結合する」又は「と特異的に(又は選択的に)免疫反応する」という語句は、しばしばタンパク質及び他の生物製剤の不均一な集団において、タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下では、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的には、バックグラウンドの10~100倍を超えて特定のタンパク質に結合する。かかる条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質に対するその特異性のために選択される抗体を必要とする。例えば、ポリクローナル抗体は、選択された抗原と特異的に免疫反応する抗体のサブセットのみを得るように選択することができ、他のタンパク質は選択できないようにできる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことによって達成されてもよい。様々なイムノアッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性のある抗体を選択するために日常的に使用される(例えば、Harlow & Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manual(1998)for a description of immunoassay formats and conditions that can be used to determine specific immunoreactivityを参照されたい)。
【0022】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一の対のポリペプチド鎖から構成され、各対は、1つの「軽」(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100~110個又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。「可変重鎖」、「V」又は「VH」という用語は、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し、「可変軽鎖」、「V」又は「VL」という用語は、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0023】
抗体機能性断片の例としては、完全な抗体分子、Fvなどの抗体断片、単鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)2’、及び標的抗原に結合することができる免疫グロブリンペプチドのこれらの又は任意の他の機能性部分の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Fundamental Immunology(Paul ed.,4th ed.2001)を参照されたい)。当業者によって理解されるように、様々な抗体断片は、様々な方法、例えば、ペプシンなどの酵素によるインタクトな抗体の消化、又は新規合成によって得ることができる。抗体断片は、しばしば、化学的に、又は組換えDNA方法論を使用することによって、新規に合成される。したがって、本明細書で使用される場合、抗体という用語は、全抗体の修飾によって産生されたもの、組換えDNA方法論を使用して新規に合成されたもの(例えば、一本鎖Fv)、又はファージディスプレイライブラリーを使用して同定されたものである抗体断片、のいずれかを含む(例えば、McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552)を参照されたい。「抗体」という用語はまた、二価又は二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディを含む。二価及び二重特異性分子は、例えば、Kostelny et al(1992)J.Immunol.148:1547、Pack and Pluckthun(1992)Biochemistry 31:1579、Hollinger et al.(1993),PNAS.USA 90:6444、Gruber et al.(1994)J Immunol.152:5368、Zhu et al.(1997)Protein Sci.6:781、Hu et al.(1996)Cancer Res.56:3055、及びAdams et al.(1993)Cancer Res.53:4026に記載されている。
【0024】
本明細書で言及される「アンチセンス核酸」は、特定の標的核酸の少なくとも一部分に相補的であり、標的核酸(例えば、DNAからのmRNA)の転写を低減し、標的核酸(例えば、mRNA)の翻訳を低減し、転写物スプライシング(例えば、一本鎖モルホリノオリゴ)を変更し、又は標的核酸の内因性活性と干渉することができる核酸(例えば、DNA又はRNA分子)である。例えば、Weintraub,Scientific American,262:40(1990)を参照されたい。典型的には、合成アンチセンス核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)は、一般に、15~25塩基長である。したがって、アンチセンス核酸は、標的核酸にハイブリダイズ(例えば、選択的にハイブリダイズ)することができる。実施形態において、アンチセンス核酸は、インビトロで標的核酸にハイブリダイズする。実施形態において、アンチセンス核酸は、細胞内の標的核酸にハイブリダイズする。実施形態において、アンチセンス核酸は、生物内の標的核酸にハイブリダイズする。実施形態において、アンチセンス核酸は、生理学的条件下で標的核酸にハイブリダイズする。アンチセンス核酸は、天然に存在するヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0025】
細胞内で、アンチセンス核酸は、対応するRNAにハイブリダイズし、二本鎖分子を形成する。アンチセンス核酸は、RNAの内因性挙動を妨害し、アンチセンス核酸の非存在と比較してその機能を阻害する。更に、二本鎖分子は、RNAi経路を介して分解されてもよい。遺伝子のインビトロ翻訳を阻害するアンチセンス方法の使用は当業者に周知である(Marcus-Sakura,Anal.Biochem.,172:289,(1988))。更に、DNAに直接結合するアンチセンス分子が使用されてもよい。アンチセンス核酸は、一本鎖又は二本鎖核酸であり得る。アンチセンス核酸の非限定的な例としては、siRNA(それらの誘導体又はヌクレオチドアナログなどの前駆体を含む)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、saRNA(小活性化RNA)及び小核酸RNA(snoRNA)、又はそれらの誘導体又は前駆体の特定のものが挙げられる。
【0026】
本明細書で提供される「アプタマー」という用語は、タンパク質、ペプチド、及び小分子に結合する(例えば、高い親和性及び特異性を有する)オリゴヌクレオチド(例えば、短いオリゴヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)を指す。アプタマーは、典型的には、相補塩基対を形成する傾向のために確定された第二又は第三の構造を有し、したがって、多くの場合、多様で複雑な分子構造に折り畳むことができる。三次元構造は、アプタマー結合親和性及び特異性に不可欠であり、特定の三次元相互作用は、アプタマー標的複合体の形成を駆動する。アプタマーは、指数濃縮によるリガンドの系統的進化のプロセスによって(Ellington A D,Szostak J W(1990)In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands.Nature 346:818-822、Tuerk C,Gold L(1990)Systematic evolution of ligands by exponential enrichment:RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase.Science 249:505-510に記載されるSELEX)、又はSOMAmers(slow off-rate modified aptamers)(Gold L et al.(2010)Aptamer-based multiplexed proteomic technology for biomarker discovery.PLoS ONE 5(12):e15004)を発展させることにより、ランダム化配列の非常に大きなライブラリからインビトロで選択することができる。SELEX及びSOMAmer技術を適用することは、例えば、アプタマーの化学的多様性を拡大するためにアミノ酸側鎖を模倣する官能基を添加する場合を含む。結果として、ほぼ全てのタンパク質標的に対する高親和性アプタマーが濃縮され、同定される。アプタマーは、選択及び合成の容易さ、高い結合親和性及び特異性、フレキシブルな構造、低免疫原性、及び汎用性のある合成的アクセシビリティなど、標的薬物送達のための多くの所望の特性を示す。
【0027】
「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸オリゴマー」、「核酸配列」、「核酸断片」、及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、様々な長さ、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類似体、誘導体若しくは修飾を有し得る、共に共有結合したヌクレオチドのポリマー形態を含むことが意図されているが、これらに限定されない。異なるポリヌクレオチドは、異なる三次元構造を有してもよく、既知又は未知の様々な機能を実行してもよい。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、遺伝子間DNA(異質染色体DNAを含むが、これらに限定されない)、メッセンジャーRNA(mRNA)、転写RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、配列の単離DNA、配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーが挙げられる。本開示の方法に有用なオリゴヌクレオチドは、天然核酸配列及びその変異体、人工核酸配列、又はそのような配列の組み合わせを含んでもよい。
【0028】
「天然リガンド」という用語は、標的分子(例えば、タンパク質)に特異的反応性を示す(すなわち、特異的に認識し、結合する)分子である。受容体のリガンドは、受容体に結合し、それによって受容体の自然な機能を調節する任意の化合物を意味する。この用語には、ペプチド、修飾ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、並びに合成化学化合物、天然に存在する化合物、又は小有機分子などの小分子リガンドが含まれる。代替的に、リガンドは、抗体若しくは抗体断片、又は核酸若しくは核酸由来材料であってもよい。
【0029】
「小分子」という用語は、3000ダルトン未満の分子量を有する化合物を指す。「小有機分子」は、炭素を含む小分子である。
【0030】
「接触すること」は、その平易な通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子又は細胞を含む化学化合物)が、反応、相互作用、又は物理的に触れるのに十分に近接するようになることを可能にするプロセスを指す。しかしながら、得られた反応生成物は、添加された試薬間の反応から、又は反応混合物中で生成することができる1つ以上の添加された試薬からの中間体から直接生成することができることが理解されるべきである。「接触すること」という用語は、2つの種が反応するか、相互作用するか、又は物理的に触れることを可能にすることを含み得、2つの種は、本明細書に記載される化合物及びタンパク質又は酵素であり得る。実施形態において、接触することは、本明細書に記載される化合物が、シグナル伝達経路に関与するタンパク質又は酵素と相互作用することを可能にすることを含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「異常」という用語は、通常とは異なることを指す。酵素活性又はタンパク質機能を記述するために使用される場合、異常は、正常対照又は正常な非疾患対照試料の平均よりも大きい又は小さい活性又は機能を指す。異常活性は、疾患をもたらす活性の量を指してもよく、異常活性を正常又は非疾患関連量に戻す(例えば、化合物を投与することによって、又は本明細書に記載の方法を使用することによって)ことは、疾患又は1つ以上の疾患症状の軽減をもたらす。
【0032】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載される化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的無毒な酸又は塩基で調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。本開示の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態を十分な量の所望のニート又は好適な不活性溶媒中のいずれかの塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、又はマグネシウム塩、又は同様の塩が含まれる。本開示の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を十分な量の所望のニート又は好適な不活性溶媒中のいずれかの酸と接触させることにより得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、一臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭素、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリスルホン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、メタンスルホン酸などのような比較的に無毒な有機酸に由来する塩が挙げられる。また、アルギン酸などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツノール酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al.Journal of Pharmaceutical Science,66:1-19(1977)を参照されたい)。本開示の特定の化合物は、化合物が塩基付加塩又は酸付加塩のいずれにも変換されることを可能にする塩基性官能基と酸性官能基の両方を含有する。
【0033】
したがって、本開示の化合物は、薬学的に許容される酸などの塩として存在し得る。本開示は、そのような塩を含む。そのような塩の非限定的な例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩(例えば、ラセミ混合物を含む、(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩、又はこれらの混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩、及びグルタミン酸などのアミノ酸を有する塩、並びに四級アンモニウム塩(例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)が挙げられる。これらの塩は、当該技術分野で既知の方法によって調製することができる。
【0034】
化合物の中性形態は、塩を塩基又は酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することによって再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒中の溶解度などの特定の物理的特性において、様々な塩形態と異なってもよい。
【0035】
塩形態に加えて、本開示は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学変化を容易に受けて本開示の化合物を提供する化合物である。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、投与後にインビボで変換され得る。加えて、プロドラッグは、例えば、適切な酵素又は化学試薬と接触したときなど、エクスビボ環境での化学的又は生化学的方法によって、本開示の化合物に変換され得る。
【0036】
本開示のある特定の化合物は、非溶媒和形態並びに水和形態を含む溶媒和形態で存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本開示の範囲内に包含される。特定の化合物は、複数の結晶又は非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本明細書で企図される使用と同等であり、本開示の範囲内であることが意図される。
【0037】
「薬学的に許容される賦形剤」及び「薬学的に許容される担体」は、対象への活性剤の投与及び対象による吸収を補助し、患者に重大な毒性作用を引き起こすことなく、本開示の組成物に含まれ得る物質を指す。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、正常生理食塩水溶液、乳酸リンゲル、正常スクロース、正常グルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香味料、塩溶液(リンゲル溶液など)、アルコール、油、ゼラチン、ラクトース、アミロース又はデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、及び着色料などが挙げられる。このような調製物は、滅菌することができ、所望により、本開示の化合物と有害に反応しない潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色料、及び/又は芳香族物質などの補助剤と混合することができる。当業者は、他の薬学的賦形剤が本開示において有用であることを認識するであろう。
【0038】
「約」という用語は、指定された値を含む一連の値を意味し、当業者は、指定された値に合理的に類似するとみなすであろう。実施形態において、約は、当技術分野で一般に許容される測定値を使用した、標準偏差内を意味する。実施形態において、約は、指定された値の+/-10%まで及ぶ範囲を意味する。実施形態において、約は、指定された値を含む。
【0039】
「患者」又は「それを必要とする対象」は、本明細書に提供される化合物又は薬学的組成物の投与によって治療され得る、疾患又は状態に罹患しているか、又はそれに罹患しやすい生体を指す。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳類、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及び他の非哺乳類動物が挙げられる。実施形態において、患者は、ヒトである。
【0040】
用語「治療すること」又は「治療」は、損傷、疾患、病理学又は状態の療法又は改善における成功の任意の兆候を指し、これには、軽減、寛解、症状の緩和、又は損傷、病理又は状態の患者への耐性の向上、変性又は減少の速度の減速、変性の最終点の衰弱を減少させる、患者の身体的又は精神的幸福の改善などの任意の客観的又は主観的パラメータが含まれる。症状の治療又は改善は、身体検査、神経精神科検査、及び/又は精神科評価の結果を含む、客観的又は主観的なパラメータに基づくことができる。「治療する」という用語及びその語形変化は、損傷、病理学、状態、又は疾患の予防を含み得る。実施形態において、治療は、予防である。実施形態において、治療は、予防を含まない。
【0041】
本明細書で使用される場合、「治療すること」又は「治療」(及び当技術分野で十分に理解されるように)は、臨床結果を含む、対象の状態で有益な又は所望の結果を得るための任意のアプローチも広く含まれる。有益な又は所望の臨床結果は、部分的であるか全体的であるか、及び検出可能であるか検出不可能であるかに関わらず、1つ以上の症状又は状態の軽減又は改善、疾患の程度の低下、疾患の状態の安定(すなわち悪化しない)、疾患の伝播又は拡散の予防、疾患の進行の遅延又は緩徐、疾患の状態の改善又は緩和、疾患の再発の低下、及び寛解を含み得るが、これらに限定されない。言い換えると、本明細書で使用される「治療」は、疾患の任意の治癒、改善、又は予防を含む。治療は、疾患の発生を防ぐ、疾患の拡散を阻害する、疾患の症状を緩和する、疾患の根本的な原因を完全に又は部分的に除去する、疾患の持続時間を短縮する、又はこれらのものの組み合わせを行う。
【0042】
本明細書で使用される場合、「治療すること」及び「治療」は、予防的処置を含む。治療方法は、対象に、治療有効量の活性薬剤を投与することを含む。投与工程は、単回投与であってもよく、一連の投与を含んでもよい。治療期間の長さは、状態の重症度、患者の年齢、活性剤の濃度、治療に使用される組成物の活性、又はそれらの組み合わせなどの様々な要因に依存する。治療又は予防に使用される薬剤の有効投与量は、特定の治療又は予防レジームの経過にわたって増加又は減少し得ることも理解されるであろう。投与量の変化は、当該技術分野で既知の標準的な診断アッセイによって生じ、明らかになり得る。実施形態において、慢性投与が必要であり得る。例えば、組成物は、患者を治療するのに十分な量及び期間、対象に投与される。実施形態において、治療すること又は治療は、予防的処置ではない。
【0043】
「防止する」という用語は、患者における疾患症状の発生の減少を指す。上述のように、防止は、完全であってもよく(検出可能な症状はない)、又は部分的であってもよく、その結果、治療がない場合に生じる可能性がある症状よりも少ない症状が観察される。
【0044】
「有効量」は、化合物が、化合物の非存在に対して、決められた目的を達成するのに十分な量である(例えば、それが投与される効果を達成する、疾患を治療する、酵素活性を低下させる、酵素活性を増加させる、シグナル伝達経路を低下させる、又は疾患若しくは状態の1つ以上の症状を低下させる)。「有効量」の例は、症状又は疾患の症状の治療、予防、又は軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも呼ばれ得る。症状の「減少」(及びこのフレーズの文法的同等物)は、症状の重症度又は頻度の減少、又は症状の除去を意味する。薬物の「予防的有効量」は、対象に投与されたときに、意図される予防効果、例えば、損傷、疾患、病理学若しくは状態の発症(又は再発)を予防若しくは遅延する、又は損傷、疾患、病理若しくは状態、若しくはそれらの症状の発症(又は再発)の可能性を低減する、薬物の量である。完全な予防効果用量は、必ずしも1回の用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じ得る。したがって、予防的に有効な量は、1回以上の投与で投与されてもよい。本明細書で使用される場合、「活性減少量」は、アンタゴニストの非存在に対して酵素の活性を低減させるために必要なアンタゴニストの量を指す。本明細書で使用される場合、「機能破壊量」とは、アンタゴニストの非存在に対する酵素又はタンパク質の機能を破壊するために必要なアンタゴニストの量を指す。正確な量は、処置の目的に依存し、既知の技法を使用して当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、Pickar,Dosage Calculations(1999)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0045】
本明細書に記載される任意の化合物について、治療上有効な量は、最初に、細胞培養アッセイから決定され得る。標的濃度は、本明細書に記載される方法を使用して測定されるか、又は当該技術分野で既知であるように、本明細書に記載される方法を達成することができる活性化合物の濃度である。
【0046】
当技術分野で周知であるように、ヒトで使用するための治療上有効な量はまた、動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトのための用量は、動物に有効であることが見出されている濃度を達成するために製剤化することができる。ヒトにおける投与量は、上記のように、化合物の有効性を監視し、投与量を上方又は下方に調整することによって調整することができる。上記の方法及び他の方法に基づいて、ヒトにおいて最大の有効性を達成するために用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、上述のように、障害を改善するのに十分な治療剤の量を指す。例えば、所与のパラメータの場合、治療有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は少なくとも100%の増加又は減少を示す。治療効力は、「倍」増加又は減少としても表すことができる。例えば、治療有効量は、対照に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、又はそれ以上の効果を有することができる。
【0048】
投与量は、患者及び使用される化合物の要件に応じて変化し得る。患者に投与される用量は、本開示の文脈において、経時的に患者に有益な治療応答をもたらすのに十分でなければならない。用量の大きさは、有害な副作用の存在、性質、及び程度によっても決定される。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、開業医の能力の範囲内である。一般に、治療は、化合物の最適用量未満である、より少ない投与量で開始される。その後、投与量は、状況下で最適な効果に達するまで、わずかな増分によって増加される。投与量及び間隔は、治療される特定の臨床適応症に対して有効な投与される化合物のレベルを提供するために個別に調整することができる。これにより、個体の疾患状態の重症度に見合った治療レジメンが提供される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「投与する」という用語は、経口投与、坐剤としての投与、局所接触、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、病変内、髄腔内、鼻腔内若しくは皮下投与、又は対象への徐放デバイス、例えば、ミニ浸透圧ポンプの移植を意味する。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、口腔、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、又は経皮)を含む任意の経路によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、心室内、及び頭蓋内が挙げられる。他の投与様式としては、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが挙げられるが、これらに限定されない。実施形態において、投与は、列挙された活性剤以外の任意の活性剤の投与を含まない。「共投与する」とは、本明細書に記載の組成物が、1つ以上の追加の療法の投与と同時、直前、又は直後に投与されることを意味する。本明細書に提供される化合物は、単独で投与され得るか、又は患者に共投与され得る。共投与は、化合物を個別に又は組み合わせて(2つ以上の化合物)同時又は連続投与することを含むことを意味する。このため、組成物は、必要に応じて、他の活性物質と組み合わせることもできる(例えば、代謝分解を低減するために)。
【0050】
「対照」又は「対照実験」は、その平易な通常の意味に従って使用され、実験の手順、試薬、又は変数の省略を除き、実験の対象又は試薬が並列実験として扱われる実験を指す。いくつかの事例では、対照は、実験効果を評価する際の比較の基準として使用される。いくつかの実施形態において、対照は、本明細書に記載される化合物(実施形態及び実施例を含む)の非存在下でのタンパク質の活性の測定である。
【0051】
「高血圧薬」は、高血圧を治療することができる任意の薬を指す。例示的な高血圧薬としては、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬などが挙げられる。
【0052】
「利尿薬」は、尿の産生を増加させ、それによって体から除去される水及び塩の量を増加させる高血圧薬を指す。利尿薬は、炭酸脱水酵素阻害薬、ループ利尿薬、カリウム保存性利尿薬、チアジド利尿薬、又は当技術分野で既知の任意の他の利尿薬であり得る。例示的な炭酸脱水酵素阻害薬としては、アセタゾールアミド、ブリンゾールアミド、ドルゾールアミド、ジクロルフェナミド、エトキサオールアミド、ゾニアミド、インディスラム、及びメタゾールアミドが挙げられる。例示的なループ利尿薬としては、ブマテニド、エタクリル酸、トルセミド、及びフロセミドが挙げられる。例示的なカリウム保存性利尿薬としては、エペレノン、トリアムテレン、スピロノラクトン、及びアミロライドが挙げられる。例示的なチアジド利尿薬としては、インダパミド、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、メトラゾン、メチクロチアジド、クロロチアジド、メチルクロチアジド、メトラゾン、ベンドロフルメチアジド、ポリチアジド、及びヒドロフルメチアジドが挙げられる。他の利尿薬としては、パマブロム及びマンニトールが挙げられる。
【0053】
「アンジオテンシン変換酵素阻害剤」又は「ACE阻害剤」は、アンジオテンシンIがアンジオテンシンIIに変換されるのを遮断し、それによって血管を拡張し、血圧を低下させる高血圧薬を指す。例示的なACE阻害剤としては、ベナゼプリル、ゾフェノプリル、ペリンドプリル、トランドラプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、及びラミプリルが挙げられる。
【0054】
「アンジオテンシン受容体遮断薬」又は「アンジオテンシンII阻害剤」は、アンジオテンシンIIの受容体結合を遮断し、それによって血管を拡張させ、血圧を低下させる高血圧薬を指す。例示的なアンジオテンシン受容体遮断薬としては、エプロサルタン、オルメサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、及びアジルサルタンメドキソミルが挙げられる。
【0055】
「カルシウムチャネル遮断薬」は、カルシウムチャネルを介してカルシウムが心臓及び動脈の細胞に入るのを遮断し、それによって血圧を低下させることができる高血圧薬を指す。カルシウムチャネル遮断薬は、ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬、フェニルアルキルアミンカルシウムチャネル遮断薬、ベンゾチアゼピンカルシウムチャネル遮断薬、非選択的カルシウムチャネル遮断薬、又は当技術分野で既知の任意の他のカルシウムチャネル遮断薬であり得る。ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬としては、アモルジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジン、クレビジピン、エフォニジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、及びプラニジピンが挙げられる。フェニルアルキルアミンカルシウムチャネル遮断薬としては、フェンディリン、ガリパミル、及びベラパミルが挙げられる。ベンゾチアゼピンカルシウムチャネル遮断薬としては、ジルチアゼムが挙げられる。非選択的カルシウムチャネル遮断薬としては、ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、フルスピリレン、及びフェンディリンが挙げられる。他のカルシウムチャネル遮断薬としては、ガバペンチン、プレガバリン、及びジコノチドが挙げられる。
【0056】
治療方法
有効量のCYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を対象に投与することによって、高血圧の治療を必要とする低レニン高血圧対象において高血圧を治療する方法が、本明細書に提供される。実施形態において、本方法は、低レニン高血圧対象における高血圧の治療を含む。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β1ベータヒドロキシラーゼ活性の阻害と比較して、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ活性の阻害に対して選択的であり、好ましくは、CYP 11β1ベータヒドロキシラーゼの阻害定数(Ki)をCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼのKiで除したものは、100を超える。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,029,993号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,329,263号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP11B2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、1,2,4-トリアジン化合物又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A):
【化5】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0057】
実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の一臭化水素酸塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の遊離塩基形態である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、抗体(例えば、抗体阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンス核酸阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、アプタマー(例えば、アプタマー阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、小分子(例えば、小分子阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、天然リガンド、タンパク質阻害剤、生体分子阻害剤などである。
【0058】
本明細書に記載の方法の実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
【化6】
1)式中、X及びYは、以下の(i)~(iii):
(i)XがNであり、YがCH若しくはC-RYである、
(ii)XがCHであり、YがNである、又は
(iii)XがCHであり、YがCHである、のうちのいずれかを表し、
2)Rはアルキル基を表し、
3)Rは、置換され得るシクロアルキル基、置換され得るシクロアルケニル基、置換され得るアリール基、又は部分的に水素化され、置換され得る6~10員の単環式若しくは二環式ヘテロアリール基を表し、
4)Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、
5)Rは、置換され得るアルキル基、置換され得るシクロアルキル基、置換され得る脂肪族複素環式基、又は部分的に水素化され、置換され得るヘテロアリール基を表し、
6)Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。
【0059】
実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、若しくは服用していた、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、又は(iv)それらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、又は服用していた、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、又は服用していた、(ii)高血圧薬を服用していない場合の血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時間以下である、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、又は服用していた、(ii)血漿レニン活性が1単位/ミリリットル/時間以下である、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。
【0060】
実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、又は(iv)それらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、(ii)高血圧薬を服用していない場合の血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時間以下である、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、(ii)血漿レニン活性が1単位/ミリリットル/時間以下である、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。
【0061】
実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)2つの高血圧薬を服用している、若しくは服用していた、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、又は(iv)それらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)2つの高血圧薬を服用している、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)2つの高血圧薬を服用しているか、又は服用していた、(ii)高血圧薬を服用していない場合の血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時間以下である、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、(i)2つの高血圧薬を服用している、又は服用していた、(ii)1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、3つ又は4つの高血圧薬を服用している、又は服用していた。
【0062】
実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)2つの高血圧薬を服用している、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、又は(iv)それらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)2つの高血圧薬を服用している、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)2つの高血圧薬を服用している。(ii)高血圧薬を服用していない場合の血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時間以下である、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)2つの高血圧薬を服用している、(ii)1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、及び(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象又は低レニン高血圧対象は、3つ又は4つの高血圧薬を服用している。
【0063】
実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(ii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、又は(iii)それらの組み合わせである。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有するか、(ii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、又は(iii)それらの組み合わせである。
【0064】
実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(ii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、(iii)140mmHg超の収縮期血圧を有する、(iv)90mmHg超の拡張期血圧を有する、又は(v)前述のうちの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(ii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、(iii)140mmHg超の収縮期血圧を有する、及び(iv)90mmHg超の拡張期血圧を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用していない場合、血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時以下である、若しくは高血圧薬を服用している場合、1単位/ミリリットル/時以下である、(ii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、(iii)収縮期血圧が130mmHgを超える、(iv)拡張期血圧が90mmHgを超える、又は(v)前述のうちの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用していない場合、血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時以下である、又は高血圧薬を服用している場合、1単位/ミリリットル/時以下である、(ii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上又はLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、(iii)収縮期血圧が130mmHgを超える、及び(iv)拡張期血圧が90mmHgを超える。
【0065】
実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用しているか、若しくは服用していた、(ii)0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、(iv)140mmHg超の収縮期血圧を有する、(v)90mmHg超の拡張期血圧を有する、又は(vi)それらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、対象は高血圧薬を服用している。実施形態において、対象は2つの高血圧薬を服用している。実施形態において、低レニン高血圧対象は:(i)高血圧薬を服用している、若しくは服用していた、(ii)高血圧薬を服用していない場合、血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時以下である、若しくは高血圧薬を服用している場合、1単位/ミリリットル/時以下である、(iii)ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上若しくはLC-MSによって測定される1ng/dLの血漿アルドステロン濃度を有する、(iv)130mmHg超の収縮期血圧を有する、(v)90mmHg超の拡張期血圧を有する、又は(vi)それらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、対象は高血圧薬を服用している。実施形態において、対象は2つの高血圧薬を服用している。
【0066】
本明細書に記載の方法の実施形態において、対象は高血圧薬を服用している、又は服用していた。実施形態において、対象は高血圧薬を服用している。実施形態において、対象は2つの高血圧薬を服用している、又は服用していた。実施形態において、対象は2つの高血圧薬を服用している。高血圧薬は、当業者に既知の任意のものである。実施形態において、高血圧薬は、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、利尿薬は、炭酸脱水酵素阻害剤、ループ利尿薬、カリウム保存性利尿薬、又はチアジド利尿薬である。実施形態において、利尿薬は、アセタゾールアミド、ブリンゾールアミド、ドルゾールアミド、ジクロルフェナミド、エトキサオールアミド、ゾニアミド、インディスラム、メタゾールアミド、ブマテニド、エタクリニン酸、トルセミド、フロセミド、エペレノン、トリアムテレン、スピロノラクトン、アミロリド、インダパミド、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、メトラゾン、メチクロチアジド、クロロチアジド、メトラゾン、ベンドロフルメチアジド、ポリチアジド、ヒドロフルメチアジド、又はそれらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、ACE阻害剤は、ベナゼプリル、ゾフェノプリル、ペリンドプリル、トランドラプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、又はこれらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、アンジオテンシン受容体遮断薬は、エプロサルタン、オルメサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、アジルサルタンメドキソミル、又はそれらの2つ以上の組み合わせである。実施形態において、カルシウムチャネル遮断薬は、アモルジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジン、クレビジピン、エフォニジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、プラニジピン、フェンディリン、ガリパミル、ベラパミル、ジルチアゼム、ミベフラジル、ベプリジン、フルナリジン、フルスピリレン、フェンディリン、ガペンチン、プレガビン、ゾチコン、又はこれらの2つ以上の組み合わせである。対象が2つ以上の高血圧薬を服用している場合、高血圧薬は一般に2つ以上の異なるクラスの高血圧薬である。
【0067】
本明細書に記載の方法の実施形態において、低レニン高血圧対象は、1.0単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、対象は、0.9単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、対象は、0.8単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、対象は、0.7単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、対象は、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、対象は、0.5単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、血漿レニン活性は、24時間試料として採取される。実施形態において、血漿レニン活性は、血液検査中に採取される。実施形態において、血漿レニン活性は、尿検査中に採取される。血漿レニン活性は、当該技術分野で既知の標準的な市販の試験によって測定することができる。そのような測定は、FDA承認された研究所によって実施され得る。例えば、Hung et al,The Scientific World Journal,2013:294594(2013)を参照されたい。多くの高血圧薬は、対象の血漿レニン活性の増加を引き起こす。したがって、血漿レニン活性を増加させる高血圧薬を服用していないときの血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時以下の低レニン高血圧対象は、血漿レニン活性を増加させる1つ以上の高血圧薬を服用するときの血漿レニン活性が1単位/ミリリットル/時以下の対象であってもよいことが当業者には理解されるであろう。血漿レニン活性を測定するアッセイの等価代替物は、直接活性レニン(DAR)濃度を測定するアッセイであることも当業者によって理解されるであろう。したがって、血漿レニン活性を測定するステップ、又は所与の閾値未満の血漿レニン活性を有する対象を同定するステップを含む、本明細書に記載の方法のいずれかについて、対象のDAR濃度を測定する代替方法が存在する。例えば、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する対象は、対象の活性レニン濃度を適切なアッセイで測定することによって識別され得る。1ng/mL/時間のPRAから8.4mU/LのDRA濃度への変換率が、Stowasser et al,Clin Biochem Rev,31(2):39-56(2010)に報告されている。
【0068】
本明細書に記載される方法の実施形態において、低レニン高血圧対象は、4ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、対象は5ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、対象は6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する。実施形態において、対象は7ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する。血漿アルドステロン濃度は、当該技術分野で既知の標準的な市販の試験によって測定することができる。そのような測定は、FDA承認された研究所によって実施され得る。例えば、Schirpenbach,et al.Clinical chemistry 52,no.9(2006)を引用するStowasser et al,Clin Biochem Rev,31(2):39-56(2010)1749-1755を参照されたい。特に、Schirpenbachらに報告されているアルドステロンを測定するためのアッセイは、イムノアッセイである。Guo et al.The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 103,no.11(2018):3965-3973に報告されているように、LC-MSアッセイは、より高い特異性を有することが示されている。本明細書で使用される場合、ELISA等のイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度は、LC-MSによって測定される約1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度に対応する。
【0069】
本明細書に記載される方法の実施形態において、低レニン高血圧対象又は低レニン高血圧対象は、120mmHg以上の収縮期血圧を有する。実施形態において、対象は、130mmHg以上の収縮期血圧を有する。実施形態において、対象は、140mmHg以上の収縮期血圧を有する。実施形態において、対象は、140mmHgを超える収縮期血圧を有する。実施形態において、対象は、150mmHg以上の収縮期血圧を有する。実施形態において、対象は、160mmHg以上の収縮期血圧を有する。本明細書に記載される方法の実施形態において、低レニン高血圧対象又は低レニン高血圧対象は、70mmHg以上の拡張期血圧を有する。実施形態において、対象は80mmHg以上の拡張期血圧を有する。実施形態において、対象は90mmHg以上の拡張期血圧を有する。実施形態において、対象は90mmHgを超える拡張期血圧を有する。実施形態において、対象は100mmHg以上の拡張期血圧を有する。本明細書に記載の方法の実施形態において、低レニン高血圧対象又は低レニン高血圧対象は、120mmHg以上の収縮期血圧及び70mmHg以上の拡張期血圧を有する。実施形態において、対象は、収縮期血圧130mmHg以上及び拡張期血圧80mmHg以上を有する。実施形態において、対象は対象の収縮期血圧が140mmHgを超え、拡張期血圧が90mmHgを超える。血圧を測定するための方法は、当技術分野で周知である。実施形態において、血圧は、自動診察室血圧測定(AOB)によって測定される。Wright et al,N Engl J Med.,373(22):2103-2116(2015)(修正がN Engl J Med.,377(25):2506(2017)に掲載された)を参照されたい。実施形態において、自動診察室血圧測定は、自動オシロメトリック機器によって行われる。例えば、Andreadis et al,Journal of Clinical Hypertension,22:555-559(2020)を参照されたい。
【0070】
実施形態において、5mg~100mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を1日2回経口投与する。実施形態において、10mg~50mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を、1日2回、12時間間隔で経口投与する。実施形態において、5mg~100mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回経口投与する。実施形態において、10mg~50mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回経口投与する。
【0071】
実施形態において、12.5mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を、12時間間隔で1日2回経口投与する。実施形態において、25mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を、1日2回、12時間間隔で経口投与する。実施形態において、12.5mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を、1日1回経口投与する。実施形態において、50mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回経口投与する。実施形態において、100mgのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回経口投与する。
【0072】
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある低下の欠如によって示されるように、対象における11β-ヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後コルチゾールレベルが18mcg/dLを超える。
【0073】
ACTH刺激試験は、副腎の機能及びそれらのACTHに応答する能力を評価する。副腎皮質刺激ホルモンは、副腎を刺激してコルチゾールを放出する下垂体で産生されるホルモンである。コルチゾールレベルの変化に基づいて、ACTH刺激試験を実施してもよく、対象の治験薬の用量を保留してもよい。
【0074】
ACTH刺激試験は、副腎不全のゴールドスタンダードアッセイとして認識されている。ACTH刺激試験は、低い朝の血清コルチゾールレベル(すなわち、<3mcg/dL)及び副腎不全の臨床的証拠に基づいて、選択された患者で実施され得る。コシントロピンはACTHの総合的な形態である。試験は以下の手順で構成されている:
・事前血清コルチゾール測定のための血液サンプルを入手する(合成ACTHを投与する前に収集)
・静脈内プッシュを介して0.25mgの合成ACTHを投与する
・合成ACTHの投与後30分及び60分での血清コルチゾール測定のための血液サンプルを取得する
【0075】
刺激後の血清コルチゾールレベルは、18mcg/dLを超えるはずである。
【0076】
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、低レニン高血圧対象に、対象において0.1ng/mlを超える11-デオキシコルチステロン(11-DOC)の蓄積を引き起こす量未満の量で投与され、
(i)対象におけるアルドステロン産生を抑制し、
(ii)対象における血清及び/若しくは血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は
(iii)対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる。
【0077】
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、低レニン高血圧対象に、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルが600pmol/Lを超えない量で投与される。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、低レニン高血圧対象に、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルが400pmol/Lを超えない量で投与される。
【0078】
実施形態において、血清及び/又は血漿アルドステロンAUC-24は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿アルドステロンAUC-24と比較して、対象において少なくとも25%減少する。実施形態において、対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルは、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルと比較して、少なくとも0.3mMol/L増加する。実施形態において、対象におけるPRAは、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象におけるPRAと比較して、少なくとも5ng/nl/時間増加する。
【0079】
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、低レニン高血圧対象に、対象の副腎皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない量で投与される。
【0080】
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与は、低レニン高血圧対象に、以下の量で投与される:
(i)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルの臨床的に意味のある減少を引き起こさず、
(ii)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさず、かつ/又は
(iii)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない。
【0081】
実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、低レニン高血圧対象に、以下の量で投与される:
(i)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルに対して、対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルの20%超の低下を引き起こさず、好ましくは、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルに対して、対象の血清及び/若しくは血漿コルチゾールレベルの10%超の低下を引き起こさず、
(ii)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルに対して、対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルの20%を超える増加を引き起こさず、好ましくは、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/若しくは血漿11-DOCレベルの10%を超える増加を引き起こさず、かつ/又は
(iii)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルの20%を超える増加を引き起こさず、好ましくは、CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/若しくは血漿11-デオキシコルチゾールレベルの10%を超える増加を引き起こさない。
【0082】
一実施形態において、対象の診察室測定収縮期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下する。一実施形態において、対象の自由行動下収縮期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比較して低下する。実施形態において、対象の自由行動下収縮期血圧は、自動診察室血圧測定(AOB)又は血圧計によって測定される。
【0083】
一実施形態において、対象の診察室測定収縮期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して少なくとも10mmHg低下する。一実施形態において、対象の自由行動下収縮期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比較して少なくとも10mmHg低下する。
【0084】
一実施形態において、対象の自由行動下収縮期及び拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期及び拡張期血圧と比較して低下する。一実施形態において、対象の診察室測定収縮期及び拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期及び拡張期血圧と比較して低下する。一実施形態において、対象の診察室測定拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定拡張期血圧と比較して低下する。一実施形態において、対象の収縮期血圧は、130mmHg未満に減少し、かつ/又は対象の拡張期血圧は、80mmHg未満に減少する。
【0085】
一実施形態において、対象の自由行動下収縮期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期及び拡張期血圧とそれぞれ比較して、少なくとも5mmHg、好ましくは少なくとも10mmHg低下し、対象の自由行動下拡張期血圧は、少なくとも2.5mmHg、好ましくは少なくとも5mmHg低下する。一実施形態において、対象の診察室測定収縮期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期及び拡張期血圧とそれぞれ比較して、少なくとも5mmHg、好ましくは少なくとも10mmHg低下し、対象の診察室測定拡張期血圧は、少なくとも2.5mmHg、好ましくは少なくとも5mmHg低下する。一実施形態において、対象の診察室測定拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定拡張期血圧と比較して、少なくとも2.5mmHg、好ましくは5mmHg低下する。一実施形態において、対象の収縮期血圧は、130mmHg未満に減少し、かつ/又は対象の拡張期血圧は、80mmHg未満に減少する。
【0086】
一実施形態において、CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期及び拡張期血圧の各々と比較して、それぞれ、対象の自由行動下収縮期血圧は、2.5~10mmHg、好ましくは5~15mmHg低下し、対象の自由行動下拡張期血圧は、2.5~7.5mmHg、好ましくは5~10mmHg低下する。一実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期及び拡張期血圧の各々と比較して、それぞれ、対象の診察室測定収縮期血圧は、2.5~10mmHg、好ましくは5~15mmHg低下し、対象の診察室測定拡張期血圧は、2.5~7.5mmHg、好ましくは5~10mmHg低下する。一実施形態において、対象の診察室測定拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定拡張期血圧と比較して、2.5~7.5mmHg、好ましくは5~10mmHg低下する。一実施形態において、対象の収縮期血圧は、130mmHg未満に減少し、かつ/又は対象の拡張期血圧は、80mmHg未満に減少する。
【0087】
上に開示される種々の要素の全ての組み合わせは、本発明の範囲内である。以下は、そのような実施形態の非限定的な例である。
【0088】
一実施形態において、12.5mgのCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤、好ましくは式(A)のCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤を1日2回、12時間間隔で投与し、以下の特徴のうちの1つ以上又は全てが適用される:(a)CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤は、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある減少の欠如によって示されるように、対象における11βヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後コルチゾールレベルが18mcg/dを超える、(b)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼは、対象において、0.1ng/mlを超える11-デオキシコルチステロン(11-DOC)の蓄積を引き起こさず、対象におけるアルドステロン産生を抑制し、対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる、(c)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象の副腎臓皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない、(d)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルの臨床的に有意な減少を引き起こさない、(e)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象へのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルに、臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(f)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(g)対象の診察室測定収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下する、(h)対象の自由行動下収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比較して低下する。コルチゾール、11-DOC、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、カリウム、PRA、血圧等のレベルについて本明細書に記載される全ての増加又は減少(該当する場合)は、本実施形態の一部である。
【0089】
一実施形態において、25mgのCYP11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤、好ましくは式(A)のCYP11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤は、1日2回、12時間間隔で投与され、以下の特徴のうちの1つ以上又は全てが適用される:(a)CYP11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤は、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある減少の欠如によって示されるように、対象における11β-ヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後コルチゾールレベルが18mcg/dを超える、(b)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼは、対象において、0.1ng/mlを超える11-デオキシコルチステロン(11-DOC)の蓄積を引き起こさず、対象におけるアルドステロン産生を抑制し、対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる、(c)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象の副腎臓皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない、(d)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルの臨床的に有意な減少を引き起こさない、(e)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(f)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(g)対象の診察室測定収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下する、(h)対象の自由行動下収縮期及び/又は拡張期血圧は、対象のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の自由行動下収縮期血圧と比較して低い。コルチゾール、11-DOC、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、カリウム、PRA、血圧等のレベルについて本明細書に記載される全ての増加又は減少(該当する場合)は、本実施形態の一部である。
【0090】
一実施形態において、12.5mgのCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤、好ましくは式(A)のCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回投与し、以下の特徴のうちの1つ以上又は全てが適用される:(a)CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤は、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある減少の欠如によって示されるように、対象における11βヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後コルチゾールレベルが18mcg/dを超える、(b)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼは、対象において、0.1ng/mlを超える11-デオキシコルチステロン(11-DOC)の蓄積を引き起こさず、対象におけるアルドステロン産生を抑制し、対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる、(c)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象の副腎臓皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない、(d)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルの臨床的に有意な減少を引き起こさない、(e)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象へのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルに臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(f)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(g)対象の診察室測定収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下する、(h)対象の自由行動下収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比較して低下する。コルチゾール、11-DOC、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、カリウム、PRA、血圧等のレベルについて本明細書に記載される全ての増加又は減少(該当する場合)は、本実施形態の一部である。
【0091】
一実施形態において、25mgのCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤、好ましくは式(A)のCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回投与し、以下の特徴のうちの1つ以上又は全てが適用される:(a)CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤は、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある減少の欠如によって示されるように、対象における11βヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後コルチゾールレベルが18mcg/dを超える、(b)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼは、対象において、0.1ng/mlを超える11-デオキシコルチステロン(11-DOC)の蓄積を引き起こさず、対象におけるアルドステロン産生を抑制し、対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる、(c)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象の副腎臓皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない、(d)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルの臨床的に有意な減少を引き起こさない、(e)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(f)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(g)対象の診察室測定収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下する、(h)対象の自由行動下収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比較して低下する。コルチゾール、11-DOC、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、カリウム、PRA、血圧等のレベルについて本明細書に記載される全ての増加又は減少(該当する場合)は、本実施形態の一部である。
【0092】
一実施形態において、50mgのCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤、好ましくは式(A)のCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回投与し、以下の特徴のうちの1つ以上又は全てが適用される:(a)CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤は、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある減少の欠如によって示されるように、対象における11βヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後コルチゾールレベルが18mcg/dを超える、(b)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼは、対象において、0.1ng/mlを超える11-デオキシコルチステロン(11-DOC)の蓄積を引き起こさず、対象におけるアルドステロン産生を抑制し、対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる、(c)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象の副腎臓皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない、(d)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルの臨床的に有意な減少を引き起こさない、(e)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象へのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルに臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(f)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(g)対象の診察室測定収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下する、(h)対象の自由行動下収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比較して低下する。コルチゾール、11-DOC、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、カリウム、PRA、血圧等のレベルについて本明細書に記載される全ての増加又は減少(該当する場合)は、本実施形態の一部である。
【0093】
一実施形態において、100mgのCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤、好ましくは式(A)のCYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤を1日1回投与し、以下の特徴のうちの1つ以上又は全てが適用される:(a)CYP 11β2ヒドロキシラーゼ阻害剤は、ACTH(Cortrosyn)刺激試験におけるコルチゾール産生の臨床的に意味のある減少の欠如によって示されるように、対象における11βヒドロキシラーゼの活性を阻害せず、好ましくは、刺激後コルチゾールレベルが18mcg/dを超える、(b)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼは、対象において、0.1ng/mlを超える11-デオキシコルチステロン(11-DOC)の蓄積を引き起こさず、対象におけるアルドステロン産生を抑制し、対象における血清及び/又は血漿カリウムレベルを増加させ、かつ/又は対象における血漿レニン活性(PRA)を増加させる、(c)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象の副腎臓皮質ホルモン合成の臨床的に意味のある上方調節を引き起こさない、(d)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿コルチゾールレベルの臨床的に有意な減少を引き起こさない、(e)CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、対象へのCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼの投与前の対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-DOCレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(f)CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルと比較して、対象の血清及び/又は血漿11-デオキシコルチゾールレベルの臨床的に意味のある増加を引き起こさない、(g)対象の診察室測定収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の診察室測定収縮期血圧と比較して低下する、(h)対象の自由行動下収縮期及び/又は拡張期血圧は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の投与前の対象の自由行動下収縮期血圧と比較して低下する。コルチゾール、11-DOC、11-デオキシコルチゾール、アルドステロン、カリウム、PRA、血圧等のレベルについて本明細書に記載される全ての増加又は減少(該当する場合)は、本実施形態の一部である。
【0094】
また、低レニン高血圧対象の治療に使用するための、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は本明細書に記載の組成物のいずれかが、本明細書に提供される。
【0095】
実施形態において、上記低レニン高血圧対象が、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの2つ以上の組み合わせから選択される高血圧薬を服用しているか、又は服用していた。実施形態において、低レニン高血圧対象は、上記高血圧薬のうちの少なくとも2つを服用しているか、又は服用していた。実施形態において、低レニン高血圧対象は、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する。実施形態において、低レニン高血圧対象は、6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を有する。低レニン高血圧対象のこれらの特徴の任意の組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0096】
一実施形態において、低レニン高血圧対象の治療に使用するための、本明細書に記載のCYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤及び組成物は、低レニン高血圧対象に投与すると、段落[0085]~[0099]に記載される対象に対する効果の1つ以上又は全てを引き起こすであろう。
【0097】
対象の同定、選択、又は治療の方法
本開示は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対する対象を同定する方法であって、(i)対象における140mmHgを超える収縮期血圧を測定すること、(ii)対象における90mmHgを超える拡張期血圧を測定すること、(iii)対象における0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定すること、(iv)対象における6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を測定すること、又は(v)前述のうちの2つ以上の組み合わせを測定すること、それによってCYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対して対象を同定すること、を含む、方法を提供する。本開示は、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対する対象を同定する方法であって、(i)対象における130mmHgを超える収縮期血圧を測定することと、(ii)対象における90mmHgを超える拡張期血圧を測定することと、(iii)対象が、高血圧薬を服用していない場合に0.6単位/ミリリットル/時以下の血漿レニン活性、若しくは1つ以上の高血圧薬を服用している場合の1単位/ミリリットル/時以下の血漿レニン活性を有することを決定すること、(iv)対象が、ELISAなどのイムノアッセイによって測定された場合の6ng/dL以上、若しくはLC-MSによって測定された場合の1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を測定することと、又は(v)前述の2つ以上の組み合わせを決定すること、それによって、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤での高血圧治療に対して対象を同定すること、を含む、方法を提供する。実施形態において、対象は、低レニン高血圧対象又は低レニン高血圧対象である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,029,993号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,329,263号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、1,2,4-トリアジン化合物又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A):
【化7】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0098】
実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の一臭化水素酸塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、抗体(例えば、抗体阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンス核酸阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、アプタマー(例えば、アプタマー阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、小分子(例えば、小分子阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、天然リガンド、タンパク質阻害剤、生体分子阻害剤などである。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの少なくとも2つを測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの少なくとも3つを測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(ii)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(iii)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(ii)及び(iii)の測定を含む。実施形態において、方法は、(ii)及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(iii)及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、及び(iii)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(iii)、及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(ii)、(iii)、及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの少なくとも2つを決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの少なくとも3つを決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(ii)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(iii)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(iv)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(ii)及び(iii)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(ii)及び(iv)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(iii)及び(iv)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、及び(iii)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、及び(iv)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(iii)、及び(iv)を決定することを含む。実施形態において、方法は、(ii)、(iii)、及び(iv)を決定することを含む。
【0099】
本開示は、(a)(i)140mmHgを超える収縮期血圧、(ii)90mmHgを超える拡張期血圧、(iii)高血圧薬を服用していない場合の0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性、若しくは高血圧薬を服用している場合の1単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性、(iv)ELISAなどのイムノアッセイによって測定された場合の6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度、若しくはLC-MSによって測定された場合の1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度、又は(v)前述の2つ以上の組み合わせ、を対象において測定すること若しくは対象が有することを決定することと、(b)対象に、有効量のCYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することと、を含む、高血圧の治療を必要とする対象において高血圧を治療する方法を提供する。実施形態において、対象は、低レニン高血圧対象又は低レニン高血圧対象である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,029,993号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,329,263号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、1,2,4-トリアジン化合物又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A):
【化8】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0100】
実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の一臭化水素酸塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、抗体(例えば、抗体阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンス核酸阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、アプタマー(例えば、アプタマー阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、小分子(例えば、小分子阻害剤)である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、天然リガンド、タンパク質阻害剤、生体分子阻害剤などである。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの少なくとも2つを測定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの少なくとも3つを測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(ii)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(iii)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)及び(iv)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(ii)及び(iii)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(ii)及び(iv)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(iii)及び(iv)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、及び(iii)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(ii)、及び(iv)を測定又は決定することを含む。実施形態において、方法は、(i)、(iii)、及び(iv)を測定することを含む。実施形態において、本方法は、(ii)、(iii)、及び(iv)を測定又は決定することを含む。
【0101】
実施形態において、本方法は、対象が高血圧薬を服用しているか、又は服用していたことを同定することを更に含む。実施形態において、方法は、対象が高血圧薬を服用していることを同定することを更に含む。実施形態において、方法は、対象が2つの高血圧薬を服用しているか、又は服用していたことを同定することを更に含む。実施形態において、方法は、対象が2つの高血圧薬を服用していることを同定することを更に含む。実施形態において、方法は、対象が3つ以上の高血圧薬を服用しているか、又は服用していたことを同定することを更に含む。実施形態において、方法は、対象が3つ以上の高血圧薬を服用していることを同定することを更に含む。実施形態において、本方法は、対象が、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの高血圧薬を服用していることを同定することを更に含む。実施形態において、本方法は、対象が、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの高血圧薬を服用していることを同定することを更に含む。実施形態において、本方法は、対象が、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される2つの高血圧薬を服用していることを同定することを更に含む。
【0102】
本明細書に記載される方法の実施形態において、方法は、対象における1.0単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における0.9単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における0.8単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における0.7単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における0.5単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を測定することを含む。実施形態において、血漿レニン活性は、24時間試料として採取される。実施形態において、血漿レニン活性は、血液検査中に採取される。実施形態において、血漿レニン活性は、尿検査中に採取される。血漿レニン活性は、当該技術分野で既知の標準的な市販の試験によって測定することができる。そのような測定は、FDA承認された研究所によって実施され得る。例えば、Hung et al,The Scientific World Journal,2013:294594(2013)を参照されたい。多くの高血圧薬は、対象の血漿レニン活性の増加を引き起こす。したがって、血漿レニン活性を増加させる高血圧薬を服用していないときの血漿レニン活性が0.6単位/ミリリットル/時以下の低レニン高血圧対象は、血漿レニン活性を増加させる1つ以上の高血圧薬を服用するときの血漿レニン活性が1単位/ミリリットル/時以下の対象であってもよいことが当業者には理解されるであろう。血漿レニン活性を測定するアッセイの等価代替物は、直接活性レニン(DAR)濃度を測定するアッセイであることも当業者によって理解されるであろう。したがって、血漿レニン活性を測定するステップ、又は所与の閾値未満の血漿レニン活性を有する対象を同定するステップを含む、本明細書に記載の方法のいずれかについて、対象のDAR濃度を測定する代替方法が存在する。例えば、0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性を有する対象は、対象の活性レニン濃度を適切なアッセイで測定することによって識別され得る。1ng/mL/時間のPRAから8.4mU/LのDRA濃度への変換率が、Stowasser et al,Clin Biochem Rev,31(2):39-56(2010)に報告されている。
【0103】
本明細書に記載の方法の実施形態において、方法は、対象における4ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における5ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における7ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度を測定することを含む。血漿アルドステロン濃度は、当該技術分野で既知の標準的な市販の試験によって測定することができる。そのような測定は、FDA承認された研究所によって実施され得る。例えば、Schirpenbach,et al.Clinical chemistry 52,no.9(2006)を引用するStowasser et al,Clin Biochem Rev,31(2):39-56(2010)1749-1755を参照されたい。特に、Schirpenbachらに報告されているアルドステロンを測定するためのアッセイは、イムノアッセイである。Guo et al.The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 103,no.11(2018):3965-3973に報告されているように、LC-MSアッセイは、より高い特異性を有することが示されており、ELISAなどのイムノアッセイによって測定される6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度が、LC-MSによって測定される約1ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度に対応することを意味する。
【0104】
本明細書に記載される方法の実施形態において、方法は、対象における120mmHg以上の収縮期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における130mmHg以上の収縮期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における140mmHg以上の収縮期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における140mmHgを超える収縮期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における150mmHg以上の収縮期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における160mmHg以上の収縮期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における70mmHg以上の拡張期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における80mmHg以上の拡張期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における90mmHg以上の拡張期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における90mmHgを超える拡張期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における100mmHg以上の拡張期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における120mmHg以上の収縮期血圧及び70mmHg以上の拡張期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における130mmHg以上の収縮期血圧及び80mmHg以上の拡張期血圧を測定することを含む。実施形態において、方法は、対象における140mmHgを超える収縮期血圧及び90mmHgを超える拡張期血圧を測定することを含む。血圧を測定するための方法は、当技術分野で周知である。実施形態において、血圧は、自動診察室血圧測定(AOB)によって測定される。Wright et al,N Engl J Med.,373(22):2103-2116(2015)(修正がN Engl J Med.,377(25):2506(2017)に公開された)を参照されたい。実施形態において、自動診察室血圧測定は、自動オシロメトリック機器によって行われる。例えば、Andreadis et al,Journal of Clinical Hypertension,22:555-559(2020)を参照されたい。
【0105】
薬学的組成物
本開示は、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,029,993号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、米国特許第10,329,263号に記載されている化合物であり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、1,2,4-トリアジン化合物又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の薬学的に許容される塩である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤は、式(A)の化合物の一臭化水素酸塩である。提供される薬学的組成物は、本明細書に記載される方法での投与に好適である。好適な賦形剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21 st Edition,David B. Troy,ed.,Lippicott Williams & Wilkins(2005)に記載されている。
【0106】
「薬学的に許容される賦形剤」は、対象への活性剤の投与及び対象による吸収を補助し、患者に著しい有害な毒性作用を引き起こすことなく、本開示の組成物に含まれ得る物質を指す。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、正常生理食塩水溶液、乳酸リンゲル、正常スクロース、正常グルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香味料、塩溶液(リンゲル溶液など)、アルコール、油、ゼラチン、ラクトース、アミロース又はデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、及び着色料などが挙げられる。このような調製物は、滅菌することができ、所望により、本開示の化合物と有害に反応しない潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色料、及び/又は芳香族物質などの補助剤と混合することができる。当業者は、他の薬学的賦形剤が有用であることを認識するであろう。
【0107】
遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物、並びに油中で調製することもできる。通常の保管及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含有することができる。
【0108】
薬学的組成物は、鼻腔内又は吸入可能な溶液又はスプレー、エアロゾル又は吸入剤を介して送達され得る。鼻液(Nasal solution)は、液滴又はスプレーで鼻腔に投与されるように設計された水溶液であり得る。鼻液は、それらが多くの点で鼻の分泌物に類似するように調製することができる。したがって、水性鼻液は、通常、等張であり、5.5~6.5のpHを維持するようにわずかに緩衝される。更に、必要に応じて、眼科用製剤及び適切な薬物安定剤で使用されるものと同様の抗菌防腐剤を製剤に含めることができる。様々な市販の鼻用調製物が既知であり、例えば、抗生物質及び抗ヒスタミン剤を含み得る。
【0109】
経口製剤は、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどとしての賦形剤を含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤、又は粉末の形態をとる。実施形態において、経口薬学的組成物は、不活性希釈剤又は食用担体を含むか、又はそれらは、硬質又は軟質シェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、又はそれらは、錠剤に圧縮されてもよく、又はそれらは、直接、食品に組み込まれてもよい。経口治療投与のため、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で使用され得る。組成物及び調製物の割合は、もちろん、変化させてもよく、好都合には、単位重量の約1~約80%であってもよい。かかる組成物中の活性化合物の量は、好適な投与量を得ることができるような量である。
【0110】
例えば、水溶液中での非経口投与のために、溶液を適切に緩衝し、液体希釈剤を最初に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にすべきである。水溶液、特に滅菌水性媒体は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に適している。例えば、1つの投与量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下溶解液に添加するか、又は提案された注入部位に注入することができる。
【0111】
滅菌された注射可能な溶液は、活性化合物を必要な量で適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、種々の滅菌された有効成分を、塩基性分散媒体を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。有効成分の粉末と任意の追加の所望の成分をもたらす真空乾燥及び凍結乾燥技術を使用して、滅菌注射可能溶液の再構築のための滅菌粉末を調製することができる。直接注射のための、より、又は高度に濃縮された溶液の調製も企図される。ジメチルスルホキシドは、急速な浸透のための溶媒として使用され得、高濃度の活性剤を小さな領域に送達する。
【0112】
化合物の製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量又は複数用量密封容器で提示され得る。したがって、組成物は、単位剤形であり得る。そのような剤形では、調製物は、適切量の活性成分を含有する単位用量に細分化される。したがって、組成物は、投与方法に応じて、様々な単位剤形で投与され得る。例えば、経口投与に好適な単位剤形としては、粉末、錠剤、丸剤、カプセル剤及びロゼンジ剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
実施形態において、本明細書に記載の組成物は、約0.001mg~約1,000mgの用量のCYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤を含む。実施形態において、用量は、約0.01mg~約900mgである。実施形態において、用量は、約0.1mg~約800mgである。実施形態において、用量は、約1mg~約700mgである。実施形態において、用量は、約1mg~約600mgである。実施形態において、用量は、約1mg~約500mgである。実施形態において、用量は、約1mg~約400mgである。
【0114】
CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は本明細書に記載の薬学的組成物の投与の頻度(例えば、1日1回、1日2回、1日3回)及び期間(例えば、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、1年、5~10年、又は疾患進行まで)は、様々な要因、例えば、患者が別の疾患に罹患しているかどうか、及び投与経路、サイズ、年齢、性別、健康、体重、治療される疾患の症状の性質及び程度、同時治療、治療されている疾患からの合併症、又は他の健康関連問題があるかどうかに応じて変化し得る。処置の頻度及び持続時間の調整及び操作は、当業者の能力の範囲内である。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は本明細書に記載の薬学的組成物は、患者に1日1回投与される。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は薬学的組成物は、1日2回投与される。実施形態において、CYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤又は薬学的組成物は、1日3回投与される。
【0115】
実施形態において、高血圧を治療する方法は、第2の薬剤(例えば、治療剤)を投与することを更に含む。実施形態において、方法は、第2の薬剤(例えば、治療剤)を治療有効量で投与することを含む。実施形態において、第2の薬剤は、高血圧薬である。実施形態において、第2の薬剤は、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの2つ以上の組み合わせである。
一般
【0116】
本明細書に開示される様々な要素の全ての組み合わせは、本発明の範囲内である。例えば、本発明の範囲内には、本明細書に記載の任意の閾値レベルが、本明細書に記載の任意の他の閾値レベルと組み合わされ得る実施形態がある。
【0117】
本明細書で使用される場合、全ての見出しは単に組織化のためのものであり、いかなる方法でも開示を限定することを意図しない。個々のセクションの内容は、全てのセクションに等しく適用され得る。本明細書に開示される様々な要素の全ての組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0118】
本発明の追加の目的、利点、及び新規の特徴は、限定することを意図しない以下の実施例を調べると、当業者に明らかとなるであろう。加えて、本明細書で上記に記載され、以下の特許請求の範囲のセクションで請求される本発明の様々な実施形態及び態様のそれぞれは、以下の実施例に実験的な支持を見出す。
【0119】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴はまた、組み合わせられて単一の実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の好適な下位組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態で好適であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で記載される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【実施例
【0120】
以下の実施例は、例示を目的としており、本開示又は特許請求の範囲の趣旨又は範囲を限定することを意図しない。
【0121】
実施例1
アルドステロン合成酵素阻害剤を用いた新規の標的療法のための低レニン高血圧患者の同定は、新規のCYP11β2ベータヒドロキシラーゼ阻害剤の便益:リスク比を最大化する。実際には、患者は、診断された本態性高血圧(原発性高血圧とも呼ばれる)を有する個体の中から段階的に同定され、選択される。まず、患者の収縮期及び拡張期血圧を測定する。最初の選択基準は、例えば2018 ESH-ESC Guidelines(Williams et al,2018 Practice Guidelines for the management of arterial hypertension of the European Society of Hypertension and the European Society of Cardiology:ESH/ESC Task Force for the Management of Arterial Hypertension[published correction appears in J Hypertens.2019 Feb;37(2):456].J Hypertens.2018;36(12):2284-2309)によって定義されるように、自動診察室血圧測定によって測定される、140mmHgを超える収縮期血圧又は90mmHgを超える拡張期血圧であろう。(SPRINT Research Group,Wright JT Jr,Williamson JD,et al.A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control [published correction appears in N Engl J Med.2017 Dec 21; 377(25):2506].N Engl J Med.2015;373(22):2103-2116)。これらの個人の中で、標準的な高血圧薬(例えば、利尿薬、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬)からそれらの最大用量及び/又は最大耐容用量で2つ以上の血圧薬を服用している患者が選択されるであろう。次に、この群の患者は、視床下部-下垂体-副腎軸、レニン及びアルドステロンにおける2つのホルモンの血漿濃度について評価される。市販のFDA承認のラボアッセイを使用して、24時間試料として採取した0.6単位/ミリリットル/時間以下の血漿レニン活性の値を1つの選択基準とみなす。市販されているFDA承認のラボアッセイを使用して、6ng/dL以上の血漿アルドステロン濃度の値を第2のホルモン基準とみなす。
【0122】
この選択プロセスから生じる基礎高血圧患者のサブセットは、アルドステロン合成酵素の選択的阻害剤(例えば、CYP 11β2ベータヒドロキシラーゼ)による治療に好ましい素因となる。アルドステロン合成酵素の選択的阻害剤(例えば、式(A)の化合物又はその薬学的に許容される塩(例えば、一臭化水素酸塩))による治療を受けた後、これらの患者は、例えば、血圧(例えば、収縮期及び/又は拡張期)の急性及び長期の改善を示すであろう。これらの患者はまた、とりわけ、心臓及び腎血管器官系の損傷及び機能不全を含む、罹患のリスク及び症状発現の低下を示す。
【0123】
実施例2
アルドステロンは、遺伝子CYP11B2によってコードされるアルドステロン合成酵素によって産生される。アルドステロン合成酵素は、アルドステロン合成における最後の3段階を、(1)11-デオキシコルチコステロン(11-DOC)からコルチコステロンへ、(2)コルチコステロンから18-OH-コルチコステロンへ、及び(3)18-OH-コルチコステロンからアルドステロンへと順次触媒する。特に、アルドステロン合成酵素は、コルチゾール産生を担う遺伝子CYP11B1によってコードされる11β-ヒドロキシラーゼと高い相同性を共有する。11β-ヒドロキシラーゼは、11-デオキシコルチゾールからコルチゾールへ、及び11-デオキシコルチコステロン(11-DOC)からコルチコステロンへの変換を触媒する。
【0124】
11-DOCは、CYP11B1及びCYP11B2の両方の基質であるため、CYP11B1の活性を保持する選択的アルドステロンシンターゼ阻害剤の使用は、前駆体11-DOCの蓄積を防止するために重要である。この実施例に示されるように、式(A)の化合物は、11-DOCの増加又はコルチゾール産生の変化なしにアルドステロンが抑制される広い用量範囲を示すため、選択的である。
【0125】
単回漸増用量(SAD)及び反復漸増用量(MAD)研究
無作為化二重盲検プラセボ対照研究を実施し、116人の患者が無作為化され、87人がHBr塩の形態の式Aの化合物を投与された。以下に考察され、添付の図に示されるように、この研究は、コルチゾールレベルに影響を及ぼさない血漿アルドステロンの迅速かつ耐久性のある減少/抑制を示した。死亡又は重篤な有害事象(SAE)は発生しなかった。更に、有害事象(AE)は、化合物を投与された群とプラセボ群との間で同等であった。臨床検査室、バイタルサイン、ECG又は身体検査に関して臨床的に意味のある所見は報告されなかった。高カリウム血症は認められなかった。
【0126】
SAD試験では、50mgの用量で血清アルドステロンの50%減少が観察され(図1)、血清コルチゾールの用量依存的減少の証拠はなかった(図2)。更に、10mgを超える用量で、投与後のスポット尿中の同様の量のナトリウム尿が観察された(図3)。阻害定数(Ki)の約3~4倍を超える曝露は、アルドステロン抑制の持続時間と関連していた(図4)。最大アルドステロン抑制の持続時間の用量依存的増加が観察された(図5)。
【0127】
MAD研究では、薬物の蓄積はほとんど観察されなかった。360mgの用量では、処置中の11-DOCの蓄積と一致する、ウォッシュアウトフェーズ中の血清アルドステロンのオーバーシュートが観察された(図6)。360mgの用量レベルでの11-DOCの蓄積は、7日目の化合物の投与中止後のアルドステロン産生における観察されたオーバーシュートの根底にある可能性が高い(図7)。最大アルドステロン抑制期間に対する化合物の用量効果は、SAD試験と一致しており、薬物蓄積がほとんどなく、7日目にSADに対してアルドステロンの期間が同等であった(図8)。血漿レニン活性(PRA)の用量依存的増加は、40mg用量で最大の50%で観察された(図9)。複数回投与では、試験された全ての用量で、生理学的、非有害性、Kの増加(図10)及び副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激アルドステロン分泌の抑制(図11)が観察された。腎尿細管ナトリウム排泄の利点は、レニンの刺激及び11-DOCの蓄積に必要な用量よりも低い用量で見られた(図12)。
【0128】
本明細書に記載される例及び実施形態は、例示的な目的のためだけのものであり、そのための様々な修正又は変更が当業者に提案され、本出願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全ての目的に関して、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0129】
実施例3
目的:(アルドステロンシンターゼ阻害による)CYP11B2遮断が、低レニン高血圧に対する動物モデルにおける心血管機能を改善するかどうかを決定すること。
【0130】
動物モデル:全ての実験は、12~16週齢の肥満AY雌マウスで実施した。全ての動物は、この年齢で高血圧を示し、血管機能障害を示した。
【0131】
テレメトリープロトコル:テレメトリープロトコルを図13に示す。
【0132】
治療プロトコル:10週齢の雄及び雌のBalb/Cマウス(Jackson Labs、Bar Harbor,ME、カタログ番号000651)を全ての研究に利用した。マウスを、前述のようにイソフルラン麻酔下で留置テレメーター(頸動脈カテーテル)(DSI(著作権)Model #PA-C10,New Brighton,MN)で移植した。7日間の回復期間後、ベースラインBP測定値を、マウスが通常塩食(NS)(0.2%NaCl、Teklad#2918、Envigo、United Kingdom)である間、意識的に7日間記録した。次いで、マウスを、埋め込まれたミニ浸透圧ポンプを介して注入された試験物(式(A)の化合物、LCI699又はCIN-107、3mg/kg/日を送達するように計算された)で更に7日間処置した。
【0133】
血圧測定:図13に記載される各プロトコルについて、12匹のマウスを使用して、電波テレメトリーを介して、収縮期、拡張期、平均動脈圧、心拍数及び活性を記録した。テレメトリー送信機は、生後12週で頸動脈に移植された。手術からの回復の2週間後、ベースライン血圧は7日間連続して記録された。次いで、動物を処置(式(A)の化合物HBr/LCI/CIN)した。
【0134】
RAAS活性化度に対する式(A)HBr、LCI、CINの化合物の効果の定量化:血液を全ての処置マウスから採取し、LC-MS/MSによって血漿アルドステロン、アンジオテンシンII、及びRAS活性化の指標に対するアルドステロンシンターゼ阻害剤の効果を調査した。
【0135】
結果:図14は、処置及び未処置のアグーチ黄色肥満高レプチン血症マウス(Ay)における平均動脈血圧(MAP)を示す。Ayマウスは、Cyp11β2活性における直接的なレプチン媒介性上昇及びRas経路活性化とは無関係のアルドステロン過剰産生に起因して、野生型マウスと比較して、MAPにおいて約5~8mmHgの上昇を有する(Hypertension,2016 May;67(5):1020-1028;Circulation 2015 Dec.132(22),;2134-2145)。マウスを、3つのCyp11β2阻害剤:本明細書に記載の式(A)HBrの化合物、LCI699、又はCIN-107、のうちの1つで処置した。3つの阻害剤は全て、対照マウスに見られるものに匹敵する同程度及び値にMAPを減少させた。阻害剤処置マウスにおけるベースラインと処置されたMAPとを比較したプールデータは、アルドステロン媒介性のレニン血管形成非依存性高血圧の設定におけるCyp11β2阻害剤の血圧低下能力を検証する統計的に有意な低減(p=0.0022)を示した。3つの阻害剤間の治療効果に統計的に有意な差はなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】