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特表2023-547004分光計、距離測定システム、及び、分光計を操作するための方法
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  • 特表-分光計、距離測定システム、及び、分光計を操作するための方法 図1
  • 特表-分光計、距離測定システム、及び、分光計を操作するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】分光計、距離測定システム、及び、分光計を操作するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/22 20060101AFI20231101BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20231101BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G01J3/22
G01J3/02 C
G01C3/06 120P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564612
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 DE2022200054
(87)【国際公開番号】W WO2023051877
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021211046.0
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513057784
【氏名又は名称】マイクロ‐エプシロン オプトロニク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オットー、 トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン、 アレクザンダー
(72)【発明者】
【氏名】グリューバ-、 クリストフ
【テーマコード(参考)】
2F112
2G020
【Fターム(参考)】
2F112AB10
2F112CA12
2G020CC04
2G020CC13
2G020CC43
2G020CC45
2G020CC46
2G020CC63
2G020CD03
2G020CD24
2G020CD38
2G020CD39
(57)【要約】
レンズ(1)と分散素子(2)と検出器(3)とを備えた分光計であって、前記レンズ(1)に導かれる測定光(4)が、前記レンズ(1)の手段により前記分散素子(2)に投射され、さらに、前記分散素子(2)によりスペクトル的に分散された方法で反射して前記レンズ(1)まで戻され、前記レンズ(1)により前記検出器(3)に導かれ、構造的にシンプルな手段によるコンパクトな構造サイズでもたらされる高性能に関するように設計され、前記レンズ(1)が、イメージングに影響を及ぼすために少なくとも1つの非球状面(5)を備えた単焦点レンズ又はインディビジュアルレンズである。
さらに、対応する距離測定システムと分光計を操作するための方法とが特定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ(1)と分散素子(2)と検出器(3)とを備えた分光計であって、
前記レンズ(1)に導かれる測定光(4)が、前記レンズ(1)により前記分散素子(2)に投射され、前記分散素子(2)によりスペクトル的に分散された方法で反射して前記レンズ(1)まで戻され、前記レンズ(1)により前記検出器(3)に導かれ、
前記レンズ(1)が、イメージングに影響を及ぼすための少なくとも1つの非球状面(5)を備えた単焦点レンズ又はインディビジュアルレンズである、分光計。
【請求項2】
前記非球状面(5)が、回転的に対称的な非球面、自由形状面、又は、ゾーン従属回折構造を有する、請求項1に記載の分光計。
【請求項3】
前記レンズ(1)が、前記レンズ(1)の分離されたゾーンにおいて光学的な機能を提供する、請求項1又は2に記載の分光計。
【請求項4】
前記光学的な機能が、前記測定光(4)のために光を平行化させること及び光を再焦点化させることである、請求項3に記載の分光計。
【請求項5】
前記イメージングに影響を及ぼすことは、前記スペクトル的に分散された前記測定光(4)のため、イメージング誤差の補正、好ましくは、波長固有の補正を備えている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の分光計。
【請求項6】
前記分散素子(2)が、平面型の反射型回折格子を有している、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の分光計。
【請求項7】
前記レンズ(1)が、屈折、回折、又は、ハイブリッド設計のものである、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の分光計。
【請求項8】
前記レンズ(1)が、ブランクプレス、好ましくは、精密ブランクプレス、又は、射出成形、好ましくは、プラスチック射出成形のような複製方法によって製造される、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の分光計。
【請求項9】
前記測定光(4)のための入口開口の配置は、前記測定光(4)が前記分散素子(2)に斜めに入射し、さらに、前記分散素子(2)から概ね垂直に反射されるように、選択され、前記スペクトルの方向における開口の拡大が生じ、開口の拡大が前記スペクトルの方向における前記検出器(3)のイメージングスケールを減少させる、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の分光計。
【請求項10】
前記検出器(3)が、ライン状に又は行列状に配置されたイメージ要素を備えている、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の分光計。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の分光計を備えている共焦点のクロマティック距離測定システムである、距離測定システム。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の前記分光計を操作するための方法であって、
前記分光計が、前記レンズ(1)と前記分散素子(2)と前記検出器(3)とを有し、前記レンズ(1)に導かれる前記測定光(4)が、前記レンズ(1)の手段により前記分散素子(2)に投射され、スペクトル的に分散された方法で前記分散素子(2)により反射されて前記レンズ(1)まで戻り、前記レンズ(1)の手段により前記検出器(3)に導かれ、
少なくとも1つの前記非球状面(5)を備えた単焦点レンズ又はインディビジュアルレンズが、前記イメージングに影響を及ぼすための前記レンズ(1)として使用される、分光計を操作するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズと分散素子と検出器とを有する分光計に関し、前記レンズに導かれた測定光は、レンズによって分散素子に投射され、スペクトル的に分散される方法で反射されて前記分散素子によってレンズに戻され、このレンズによって検出器に導かれる。
【0002】
さらに、本発明は、このような分光計を有している距離測定システム、特に、共焦点クロマティック距離測定システムに関する。
【0003】
さらに、本発明は、このような分光計を操作するための方法に関し、この分光計は、レンズと分散素子と検出器とを備え、前記レンズに導かれる測定光は、レンズにより前記分散素子に投射され、スペクトル的に分散された方法で前記分散素子により反射されてレンズまで戻り、このレンズの手段により検出器に導かれる。
【背景技術】
【0004】
共焦点クロマティック距離測定システムの性能は、例えば、その分解能とその分解能で実現できる測定速度とに決定的に依存する。
1つの重要な方法は、適切な光学センサの手段による1次元共焦点クロマティック距離測定である。
これにより、白色光が、光学系を使用する面に投射される。
これにより、光学系は、クロマティック的に(chromatically)補正されず、むしろ、明確な縦方向のクロマティック誤差が測定軸に沿って生じるように、光学系が設計される。
これにより、試料によって反射された測定光のスペクトルにおける最大値が、この試料と測定ヘッドとの間の距離に明確に関連付ける波長が生じる。
分光計は、例えば、2つの収束レンズと分散素子と検出器とを有し、前記2つのレンズのうちの第1のレンズに導かれた測定光は、このレンズにより分散格子上に投射され、前記分散格子によってスペクトル的に分散され、第2のレンズにより検出器上に導かれ、分光計は、対応する距離測定システム又はセンサの評価ユニットとして機能する。
【0005】
使用のいくつかの分野のためには、現在のシステムに比べた性能の低下を受け入れる必要なく、そのような分光計の寸法、それに伴い、最終的に対応する距離測定システム又はセンサの寸法を著しく縮小することが望ましい。
分光計の性能は、感度とスペクトル分解能に起因する。
【0006】
今日の距離計測学がさらにより高い測定速度を要求するなかで、感度要求が正当化されている。
しかしながら、検出器の測定効率は、有限であるため、評価されるべき測定信号は、最小限の光強度を有しなければならない。
一方では、最小限の光強度は、照明ビームを強化することによって達成することができるが、これは、長寿命とロバスト性とに対応する利用可能な光学的放射源により限られた範囲までのみ可能となっている。
もう一つの他のアプローチは、より弱い信号でも十分に評価できるようにするため、光強度を考慮した最適化である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9964443号
【特許文献2】米国特許第7817274号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コンパクトなサイズでもたらされる高性能が構造的にシンプルな手段により可能とされることにより、分光計と、距離測定システムと、分光計を操作する方法とを特定するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、前述の目的は、請求項1の特徴を有する分光計、請求項11の特徴を有する距離測定システム、及び、請求項12の特徴を有する分光計を操作する方法によって達成される。
【0010】
従って、請求項1に記載の分光計は、前記レンズがイメージングに影響を及ぼすために少なくとも1つの非球状面を備えた単焦点レンズ又はインディビジュアルレンズとなるように、設計されている。
【0011】
請求項12による前記方法によれば、少なくとも1つの非球状面を備えた単焦点レンズ又はインディビジュアルレンズは、前記イメージングに影響を及ぼすためのレンズとして使用されるように、設計されている。
【0012】
本発明による方法において、前述の目的が、レンズの巧妙な設計によってシンプルな方法で達成される。
本発明によるさらなる方法では、レンズは、イメージングへのシンプルな影響のために、少なくとも1つの非球状面を有するように設計される。
前記レンズの少なくとも1つの非球状面により、単焦点レンズのみ又はインディビジュアルレンズ要素のみを備えたコンパクトな分光計を実現することが可能であり、高イメージング性能が、コンパクトな設計及び構造的にシンプルな設計にもかかわらず単焦点レンズのみを備えることにより可能となる。
本発明による分光計は、単焦点レンズと分散素子と検出器とを備えた、とてもわずかな光学的な影響のみを与える構成要素を使用し、分光計の熱的挙動を容易に管理可能とする。
【0013】
結果として、本発明による分光計、本発明による距離測定システム、及び、本発明による前記方法により、分光計、距離測定システム、及び、方法が、コンパクトなサイズでもたらされる高性能が構造的にシンプルな手段により実現される。
【0014】
この点において、「単焦点レンズ」又は「インディビジュアルレンズ」という用語は、この書面において「単焦点レンズ」又は「インディビジュアルレンズ」は、個々の1部品(one-piece)のレンズだけでなく、例えば、二重配置又は三重配置を有する、又は、互いに固定された又は接合された2つの自由形状及び/又は非球面を有する、複数部品(multi-piece)レンズ要素も含むような、インディビジュアルレンズを意味する。
【0015】
実施例において、非球状面は、回転的に対称的な非球面、自由形状面、又は、ゾーン従属回折構造を備えることができる。
使用事例及び個々の要求に基づいて、適切な実施例が柔軟な方法で選択されることができ、分光計の所望の性能がシンプルな方法で実現されることができる。
【0016】
前記レンズは、前記レンズの分離されたゾーンにおいて光学的な機能を提供できる。
これにより、前記レンズは、異なる機能のために個々の異なるレンズを提供する必要なく、異なる機能に対して使用することができる。
これにより、分光計の設計を著しく単純化する。
【0017】
もう一つの実施例では、光を平行化すること(collimation)及び光を再焦点化すること(refocusing)の光学的機能は、測定光のためのものであってもよい。
【0018】
特に、このような実施例を考えると、前記イメージングに影響を及ぼすことは、イメージング誤差の補正を含むことができ、光を平行化することと光を再焦点化することの2つの機能の最適化を可能にするため、波長固有の補正が、スペクトル的に分散された測定光に対して行われることができる。
これにより、高い、波長に最適化された性能が、分光計により達成される。
【0019】
より多いライン数でもたらされる高性能及び低電力損失に関して、分散素子は、平面型の反射型回折格子を有することができる。
そのような平面型の反射型回折格子は、容易に、再現可能に、そして、安価に製造でき、温度の影響に対して御しやすい線形応答を示す。
【0020】
もう一つの別の実施例では、前記レンズは、屈折、回折、又は、ハイブリッド、例えば、自由形状支持部上の回折構造、になるように設計することができる。
前記レンズ設計の選択は、特定の使用事例の考慮のもとで柔軟になされることができる。
【0021】
前記分光計の高性能に関して、レンズは、ブランクプレス、好ましくは、精密ブランクプレス、又は、射出成形、好ましくは、プラスチック射出成型によって製造することができる。
特に、ブランクプレス又は精密ブランクプレスにより、複雑な自由形状面を備えたレンズをより大きな量でさえ高品質で再現性よく製造することができる。
【0022】
別の実施例では、測定光が分散素子に斜めに入射し、この分散素子から概ね垂直に反射されるように、測定光用の入口開口の配置が選択でき、開口の拡大が、前記スペクトルの方向において生じ、これにより、スペクトルの方向の前記検出器のイメージングスケールが減少される。
前記分光計は、同じ光感度と仮定するとより高いスペクトル分解能を達成することができる、又は、逆に、同じスペクトル分解能と仮定するとより多くの光を捕捉することができ、従って、より高い光感度にすることができる。
【0023】
構造的にシンプルな方法で、検出器は、使用事例に応じて柔軟に、ライン状に又は行列状に配置されたイメージ要素を有することができる。
【0024】
本発明による分光計の実施例は、以下の特徴を有することができる:
【0025】
本発明による分光計の実施例は、例えば、距離測定システムの必須サブコンポーネントとして、最適なコンパクトサイズの条件のもとで分解能と測定速度との2つのパラメータについて最適化することができる。
【0026】
そのコンパクトな設計により、本発明による分光計は、原則として、コンパクト分光計とも称される。
【0027】
本発明の分光計の1つの実施例は、リトロー分光計と似た二重経路配置を有している。
それにより、実施例は、以下の構成要素を含むことができる。
a)受光素子又は検出器の周りに任意(上、下、左、右)に配置された開口又は入口開口。
b)少なくとも1つの非球状面を有するレンズであって、異なる横方向のゾーンにおいて前記光学面を使用することによってイメージ力の波長従属補正を可能にするレンズ。
c)平面の又は平面型の反射型回折格子。
d)入射光又は測定光のスペクトル構成要素が焦点に集められ、さらに、それらの強度を評価する受光素子又は検出器。
e)すべての光学的要素及び電子要素の統合を可能にする支持構造。

それにより、使用されるレンズは、このような方法で設計されることができる。
a)それは又はこれらは、屈折、回折、又は、ハイブリッドになるように設計される。
b)それは又はこれらは、複製方法によって製造されることができる。
c)非球状面の形状は、非球面、自由形状面、又は、ゾーン従属回折構造を明示的に有している。
d)レンズは、前記複製方法において、直方体としてトリミングされる又は直接にプレスされる又は射出成形されることができる。
【0028】
入口開口の配置は、配置が前記測定光の斜めの照射と前記回折格子からの概ね垂直な出射とをもたらすような方法で選択でき、配置は、前記スペクトルの方向への前記開口の拡大をもたらし、これにより、前記スペクトルの方向における前記受光素子のイメージングスケールを減少させる。
【0029】
前記レンズ要素の中心平面部は、回折格子と検出器との間の距離の25%から75%の範囲内にあってもよい。
【0030】
それに関して、使用される受光素子は、一つの行要素又は行列要素であるか、又は複数行、並列の行、又は行列をなしてもよい。
【0031】
それに関して、前記支持構造が前記構成要素の準理想的な熱的に補償された配置及び固定を可能にするような方法で、支持構造が設計されることができる。
【0032】
本発明による分光計の実施例の性能を見積もるために、市場分析が行われた。
これにより、品質基準Qが計算され、この基準は、次の関係に従って、所定の最小表示可能スペクトル範囲のパフォーマンスを記述している:
【0033】
ここで、NAは、入射ビームの開口数を表す。
スリット幅は、入口開口又は入射ファイバーのコア直径から生じ、スペクトル分解能は、どのスペクトル幅が前記イメージセンサにおいて個別に依然として評価されうるかを示す。
【0034】
前記市場で入手できた前記調査対象とされた分光計は、構造形状が大きすぎたり、性能が不十分だったりしていた。
以下の表において、最後の2つのモデル、「MEO、二重非球面」及び「MEO、自由形状面」は、本発明の実施例である。
それにより、実施例「MEO、二重非球面」は、出願人の現在の前記分光計の品質基準に概ね対応するが、しかしながら、これは、著しく大きな寸法を有している。
【0035】
本発明を設計及び発展させるための様々な可能性がある。
これに関して、図面により、一方では、従属請求項に、他方では、本発明の実施例の以下の説明に参照がなされる。
図面に基づく本発明の実施例の図示に関連して、一般的に実施例及び発展例もまた図示される。
次に続くものが図に示される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による分光計の第1の実施例の設計の概略図である。
図2】本発明による分光計の第2の実施例の設計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明による分光計の第1実施例の構成を概略的に示し、分光計は、レンズ1と、平面反射格子の形態の分散素子2と、走査線付き検出器3とを備えている。
前記レンズ1上に導かれた測定光4は、このレンズ1によって分散素子2上に投射され、分散素子2によりスペクトル的に分散された方法でレンズ1に戻るように反射され、レンズ1によって検出器3上に導かれる。
前記分散素子2は、レンズ1から適切に予め設定可能な距離に配置される。
構造的にシンプルな手段によるコンパクトな構造サイズでもたらされる高性能に関して、レンズ1は、イメージングに影響を及ぼすため、特に、イメージング誤差を補正するため、少なくとも1つの非球状面5、ここでは、2つの非球状面5を有する二重非球面、を備えた単焦点レンズ又はインディビジュアルレンズである。
【0038】
図2に示す実施例は、図1に示す実施例に対応し、ここで、図1に示す実施例と対照的に、レンズ1は、図2において左の自由形状面5を備え、さらに、図2において右の分散素子2に向けて面する非球状面5を備えた単焦点レンズ又はインディビジュアルレンズである。
【0039】
両方の実施例において、前記測定光4は、(ここでは図示されない)入口開口を通って前記レンズ1上に導かれるが、ここで、測定光4の2つの端ビーム6のみが明確さのために図示されている。
【0040】
通常の概念に従って光をスペクトル的に分散させるためには、光は、十分に平行化された方法で分散素子に最初に指向されなければならない。
ここで生じるスペクトル分割(角度分散)は、ライン検出器がその中に位置するイメージ平面内の局所分散に光学系を焦点を合わせることによって変化される。
【0041】
コンパクトな分光計を作り出すために、分光計内でビームを折り曲げることは、従来技術である。
分散素子は、光学系配置内において中心に配置されるため、分散素子は、この目的に特に適している。
構造形態には、プリズムと透過型回折格子と反射型回折格子とがある。
プリズムは、制限された角度分散及び好ましくない構造サイズという不利な点がある。
ライン数がより多くなる場合において、反射型回折格子は、透過型回折格子と比較して出力損失が非常に低いという特徴がある。
一般に、高角度分散によれば、検出器要素上の同じ局所的な分光であれば、より短く焦点化する焦点距離を可能とできる。
しかし、同時に、仮に、分光計の開口が感度を維持するために減少できない場合には、前記イメージングシステムへの需要が高まる。
【0042】
本発明による分光計は、リトロー型分光計の原理に類似している。
レンズを備えた一実施例においては、分光計は、入射ビーム用の光を平行化させる光学系と、検出器ライン上のスペクトルのイメージング用の焦点を合わせる光学系との両方となる1つのみのレンズからなる。
同様に、フラット型回折格子は、分散素子としての用途を見出している。
さらに、リトロー型分光計を考えると、所望のスペクトル範囲内の中心とされる1波長に対して、入射角は、回折角に等しく、この例における画角依存イメージング誤差は、光学的にほぼ理想的に補正可能な中心波長の周りに対称的に分布される。
しかしながら、実際には、一方では、入射ビームと出射ビームとの分離要求のために、他方では、要求される局所的な分割のためにも、光源とイメージング要素とは、設計依存最小距離を常に有している。
仮に、光源とイメージング要素とが互いに水平に頂部に配置されている場合、分解能のわずかな損失が予想される。
しかしながら、分光計の局所的な分割と開口とが相応じて大きくなると、生じるイメージング誤差は、シンプルな球面レンズでは制御できない。
複数レンズ対象の解決法も、米国特許第9964443号に見られるように、この目的のために知られている。
しかし、決定的に不利な点は、関連するコスト、多大な調整労力、及び、熱補償と共に予想されるより大きな困難性である。
【0043】
しかしながら、精密ブランクプレス等の製造プロセスのさらなる発展により、複雑な自由形状面を備えたレンズをより大量であっても再現可能に製造することが今までに可能となっている。
本発明は、これの利点を利用して、複雑な光学表面輪郭(非球面、自由形状、回折構造)を備えた新しいタイプの分光計を製造する。
【0044】
図1及び図2を参照して、得られた測定光4は、中央ビームと端ビーム6とを備えた発散自由ビームで、入口開口(ここでは、図示せず)を介して単焦点レンズ1に投射される。
これは、レンズ1によって光が平行にされ、平面型の反射型回折格子の形態における分散素子2に投射される。
前記反射型回折格子は、スペクトル的に分散された光ペンシルを反射して同じ単焦点レンズ1に戻し、次に、これにより波長分離の方法において光ペンシルを検出器3の走査ラインに向ける。
これにより、本発明は、少なくとも1つの非球状面5又は回転的に対称な非球面(又は最適には自由形状面)により特徴付けられ、比較的大きな画角によって生じるイメージング誤差を補正する。
本発明により、スペクトル的に分散された光ペンシルの正確に整合している波長固有の補正を得ることが可能であり、レンズ1において、光を平行化することと光を再焦点化することの2つの機能がレンズ1の分離されたゾーンにおいて最適化される。
【0045】
ここでは、開口の形状は、関連性がない。
ラインピクセルが正方形の場合に、これは、光学的な導波路の端部のように理想的には円形である。
他方、ピクセルが長方形である場合には、ラインに垂直に配置されたスリット開口が、光の収集を最適化するために有利である可能性がある。
【0046】
複雑な自由形状面の製造は、例えば、精密ブランクプレスによって実現することができる。
これは、高精度であると同時にガラスレンズの経済的な成形プロセスである。
既知のプラスチック注入レンズとは対照的に、ガラスレンズは、著しく低い温度影響を有し、材料における干渉点がより少なく、より長期の安定性を有している。
しかしながら、プラスチック射出成形による製造も考えられる。
【0047】
少なくとも1つの非球状面(より低い分解能要求のためには、非球面でも十分である)を介してのみ、光源と検出器ラインの省スペース配置を考慮した、分解能最適化補正を実施でき、これにより、高いイメージング性能がコンパクトなデザインにもかかわらず可能となる。
【0048】
レンズ面を自由に形成することができることにより、光源の縮小イメージが前記ライン検出器に結像されるように、可能な範囲内でイメージスケールを調整することができる。
これにより、分光計は、同じ光感度と仮定するとより高いスペクトル分解能を達成することができる、又は、逆に、同じスペクトル分解能と仮定するとより多くの光を捕捉することができ、従ってより高い光感度にすることができる。
【0049】
平面型回折格子は、容易に、複製可能に、且つ、安価に製造できるという利点を有し、また、温度の影響のもとで管理可能な直線的な挙動を有している。
【0050】
全体として、このタイプの分光計の実施例では、
1.光学的に影響を与える4つのコンポーネント(開口、レンズ、回折格子、ライン検出器)のみが使用され、
2.光学構成要素間にほんのわずかな短い距離があり、
3.金属とガラスとの組み合わせで作られた複数パーツレンズシステムが使用されない、従って、熱挙動は、制限内で管理可能である。

<実施例の構成要素の利点>
自由形状面を備えた単焦点レンズ、対、二重レンズ又は二重レンズシステム:
【0051】
自由形状面を備えた単焦点レンズを有する分光計を発展させるというアイデアは、さまざまな以下の観点を有している:
1.少なくとも同じ光学性能と仮定すると、著しくよりコンパクトな構造形態(約3倍)が可能である。
2.二重レンズの形態における2つの球面レンズの組み合わせは、要求されるイメージング性能を達成しないであろう、なぜなら、自由形状光学系とは対照的に、波長と共に大きく変化する画角(高い角分散)のための補正ができないためである。
3.個々のレンズの光学特性上の熱の影響は、レンズシステム上の熱の影響よりもはるかに管理可能としやすい、なぜなら、材料の応力と膨張係数の影響は単一の影響のみを有し、制御されない方法で相互に影響を与えないためである。
加えて、レンズパテや対物ハウジングなど、潜在的に問題のある構成要素が存在していない。
4.現在の先行技術を考えれば、精密ブランクプレスは、リーズナブルなコストで高品質の経済的な製造を可能とする。

<平面型回折格子、対、凹面型回折格子>
【0052】
平面型回折格子の利点は、この大量生産品の調達にある。
平面型回折格子は、安価であり、さらに、幅広い範囲の変形におけるカタログ製品として市場で入手することができる。
焦点距離、ライン幅、及びライン配置が、適切なカタログ製品に対し、あまりにも多くの変数となるため、凹面型回折格子は、常にカスタムメイドの製品となる。
加えて、各回折格子を個別に成形する必要があるため、製造プロセスが著しく複雑になる。
【0053】
同様に、平面型回折格子の熱挙動は、凹面型回折格子の熱挙動よりもより複雑でない。
ライン間隔とライン深さのみが変更されてもよい。
どちらも、設計において補正したり、必要に応じて較正によって修正したりできる予測可能な挙動をもたらす。
一方、凹面回折格子を考えると、焦点距離も温度によって変化し、これが、ライン、複数のライン、又は、イメージ行列上のイメージング品質に負の影響を一般に有する。

<先行技術における分類>
【0054】
本発明に係る分光計は、リトロー分光計に技術的に類似し、さらに同時にダイソン分光計の特性を示さなければならない。

<リトロー分光計>
【0055】
ウィキペディアによれば、リトロー分光計は、入射光用のコリメータと分散素子から反射された光のための対物レンズとの両方として同時に機能する1つのみの焦点を合わせるレンズを備えた分光計である。
この配置は、オットー・フォン・リトロー(1843-1864)によって考案された。
このような配置は、オートコリメーション配置と称される。
この目的のために、分散素子は、波長によって分けられた光を入射方向に反射して戻さなければならず、これは、1つの波長ごとに非常に正確に実現されることができる。
反射型回折格子と、平面ミラーの前にあるプリズム又は透過型回折格子との両方が、分散素子となりうる。
反射型回折格子は、観察されるべき回折次数が入射方向に対して戻るように反射されるように、回転されなければならない。
正確に選択されたブレーズ角を備えたブレーズド回折格子は、リトロー分光計での使用に特に適している。
反射光が検出できるように、入口スリットと検出器は、分散方向に対して垂直に互いからオフセットされている。
【0056】
一見したところ、本発明による分光計は、二重経路で使用されるそのレンズを備えたリトロー分光計に非常に似ているが、決定的な違いがある。
リトロー分光計では、オートコリメーションの原理が使用され、そこで、外向きの経路上で光を平行化するレンズへの入射角は、戻り経路上で光を焦点に向けて集束させるレンズからの出射角に等しくなる。
入口スリットと検出器との空間的分離は、イメージングへの顕著な劣化を招かないように、分散方向に対して垂直でなければならない(平面図においては両者が「重なり合って」いる)。
記載された発明を考えると、非球面又はさらに優れた自由形状面の追加の自由度が、互いに独立して最適化されるべき光を平行化させることと光を焦点に向けて集束させることとの原因となるレンズ領域を制限内で可能とさせている。
従って、本発明は、オートコリメーションの原理を使用していない。

<ダイソン分光計>
【0057】
ダイソン分光計は、凹面型反射回折格子を備えた単焦点レンズ分光計であり、回折格子に向けて面する前記レンズ面が回折格子の曲率に関して同心状に形成され且つ配置されているという特徴を有している。
入口開口は、理想的には光軸内に配置され、実際には可能な限り光軸に近付けて配置される。
互いに同心に実施されている回折格子とレンズ面とが、イメージング誤差を可能な限り最大限に補正するため、ダイソン分光計は、特に、ハイパースペクトルイメージングに使用される。
【0058】
ダイソン分光計の特別な可能性は、光点だけでなくラインもスペクトル的に分散させることである。
しかしながら、この特性は、姿勢付けされた対象物には必要とされない。
分光計の大規模な空間的広がり、特に、1次元の点には必要のない垂直面におけるものは、さらに不利となる。
別の不利な点は、本発明の平面型回折格子とは対照的に、凹面型回折格子は高価であることであり、加えて、凹面型回折格子は、回折格子と後部側レンズ面との同心度の要求を満たすために、レンズに対して非常に正確に配置されなければならない。
ここで、2つの異なる光学構成要素の製造の公差は、相互の位置決めの公差と累乗されることになる。

<米国特許第7817274号によるコンパクト分光計>
【0059】
コンパクトな設計の目的を有する多数の分光計の配置が、この文献から、知られている。
それに関して、図6(b)に示す実施例が本発明に最も近い。
この実施例の核心は、開口と第1のレンズとの間、又は光を焦点に集束させるレンズと検出器ラインとの間の戻り経路上のシリンドリカルレンズであり、これにより、シリンドリカルレンズが従来技術と比較して著しく低い構造高さを有している。
【0060】
この実施例と本発明との間の本質的な違いは、この実施例によれば、使用されるものは自由形状レンズではなく、むしろ、球面状二重レンズであるということである。
米国特許第7817274号の図6(b)に見られるように、入口開口と検出器ラインとの間で達成される垂直距離も、また、イメージング品質の過度の低下を招かないように非常に小さい。
加えて、レンズは、回折格子の前に非常に接近しているのに対して、本発明のレンズは、回折格子と検出器ラインとの間の距離の25~75%の範囲内にある。
【0061】
加えて、米国特許第7817274号では、入口開口の直後の入口ビームは、二重レンズがそれを平行化させる前に、シリンドリカルレンズによって先ず「平坦化」される。
前記ラインに衝突する前に、スペクトルラインは、同じレンズによって高さにおいて再び圧縮される。
ここで、本発明は、要求される局所的分割と併せて、平坦なアスペクト比を有するシステムがすでに生じる、そのような程度まで、焦点距離が自由形状レンズによって短くされるという点で異なる。
【0062】
本発明による分光計、距離測定システム、及び、本発明による方法のさらなる実施例に関しては、繰り返しを避けるため、明細書及び添付の特許請求の範囲が参照される。
【0063】
最後に、前述の実施例は、特許請求の範囲に記載された教示を説明することに役立つのみであり、実施例に限定するものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 ・・・レンズ
2 ・・・分散素子
3 ・・・検出器
4 ・・・測定光
5 ・・・非球状面
6 ・・・端ビーム
図1
図2
【国際調査報告】