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特表2023-547014永久励磁型の同期機用のロータ及び永久励磁型の同期機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】永久励磁型の同期機用のロータ及び永久励磁型の同期機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20231101BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512356
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021077979
(87)【国際公開番号】W WO2022089920
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】102020128552.3
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ドッベルケ・デーネス
(72)【発明者】
【氏名】ジェリン・アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】メックル・ダーニエール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイントル・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブルンフーバー・シュテファン
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】永久励磁型の同期機の増大された出力性能を達成することができるロータを得るとともに、このようなロータを有する永久励磁型の同期機を提供する。
【解決手段】永久励磁型の同期機用のロータ1において、積層された複数のプレート6を含む積層コアを有し、積層コアには、永久磁石9,10が収容された凹部7,8が形成されており、各凹部7,8が第1の端部範囲11を備えており、凹部7,8に、永久磁石9,10の同一の極Nが互いに対向するように永久磁石9,10が配置されており、ロータ1が、積層コアとは別の保持部材14を備えており、該保持部材を用いて、凹部7,8に隣接する積層コアの第1の部分15が、凹部7,8に隣接する積層コアの第2の部分16に結合されており、保持部材14が、体積が保持部材14の体積と同一である積層コアの部分範囲よりも小さな磁気伝導性を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久励磁型の同期機(2)用のロータ(1)であって、ロータ(1)の回転軸線(3)の方向に積層された複数のプレート(6)を含む少なくとも1つの積層コア(5)を有し、積層コア(5)には、それぞれ永久磁石(9,10)が収容された複数の凹部(7,8)が形成されており、各凹部(7,8)が、凹部(7,8)の第2の端部範囲(12)よりもロータ(1)の回転軸線(3)に近い第1の端部範囲(11)を備えている、前記ロータにおいて、
ロータ(1)の周方向に互いに隣り合うとともに第1の端部範囲(11)がロータ(1)の周方向において第2の端部範囲(12)よりも互いに近い凹部(7,8)に、永久磁石(9,10)の同一の極(N)が互いに対向するように永久磁石(9,10)が配置されており、ロータ(1)が、積層コア(5)とは別の少なくとも1つの保持部材(14)を備えており、該保持部材を用いて、隣り合う凹部(7,8)に隣接する積層コア(5)の第1の部分(15)が、隣り合う凹部(7,8)に隣接する積層コア(5)の第2の部分(16)に結合されており、少なくとも1つの保持部材(14)が、体積が保持部材(14)の体積と同一である積層コア(5)の部分範囲よりも小さな磁気伝導性を有していることを特徴とするロータ。
【請求項2】
少なくとも1つの保持部材(14)が、該保持部材(14)の体積と同一の積層コア(5)の部分範囲よりも大きな弾性限界及び/又はより大きな引張強度を有していることを特徴とする請求項1に記載のロータ(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの保持部材(14)が、積層コア(5)のプレート(6)を形成する材料よりも小さな磁気伝導性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータ(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの保持部材(14)が、ステンレス鋼、特にオーステナイト系の組織を有するステンレス鋼で形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項5】
特に積層コア(5)の部分(15,16)に係合式に結合された少なくとも1つの保持部材(14)が、該保持部材(14)の各端部(18,19)を互いに結合するウェブ(17)を備えており、保持部材(14)の第1の端部(18)が積層コア(5)の第1の部分(15)に結合されており、保持部材(14)の第2の端部(19)が積層コア(5)の第2の部分(16)に結合されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項6】
保持部材(14)のウェブ(17)が、隣り合う凹部(7,8)の第1の端部範囲(11)の間に配置されており、特に隣り合う凹部(7,8)がその第1の端部範囲(11)において保持部材(14)のウェブ(17)によって画定されていることを特徴とする請求項5に記載のロータ(1)。
【請求項7】
隣り合う凹部(7,8)に収容された永久磁石(9,10)が、保持部材(14)のウェブ(17)から離間していることを特徴とする請求項5又は6に記載のロータ(1)。
【請求項8】
保持部材(14)の端部(18,19)が、ロータ(1)の周方向において、保持部材(14)のウェブ(17)よりも大きな寸法を有していることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項9】
保持部材(14)の端部(18,19)が、それぞれ係合部を形成しつつ対応する収容部(20,21)へ配置されており、該収容部が、保持部材(14)を用いて互いに結合された積層コア(5)の部分(15,16)に形成されていることを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項10】
保持部材(14)の各端部(18,19)の特に断面において円形の外部輪郭が、対応する収容部(20,21)の内部輪郭に対応しており、特に、保持部材(14)の各端部(18,19)が、対応する収容部(20,21)に本質的に遊びなしに収容されていることを特徴とする請求項9に記載のロータ(1)。
【請求項11】
保持部材(14)の各端部(18,19)の特に断面においてきのこのカサ状の外部輪郭と、対応する収容部(20,21)の内部輪郭の間に少なくとも1つの空き空間(30)が形成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載のロータ(1)。
【請求項12】
保持部材(14)の各端部(18,19)が、直線状の、特にロータ(1)の径方向に対して垂直に向いた接触面(22)でもって収容部(20,21)の対応する接触面(23)に接触していることを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のロータ(1)と、該ロータ(1)をその回転軸線(3)を中心として回転させることが可能な回転磁場を提供するステータ巻線を備えたステータ(24)とを有する永久励磁型の同期機(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久励磁型の同期機用のロータであって、ロータの回転軸線の方向に積層された複数のプレートを含む少なくとも1つの積層コアを有するロータに関するものである。積層コアには、それぞれ永久磁石が収容された複数の凹部が形成されている。各凹部は第1の端部範囲を備えており、当該第1の端部範囲は、凹部の第2の端部範囲よりもロータの回転軸線に近い。さらに、本発明は、このようなロータを有する永久励磁型の同期機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冒頭に挙げた種類のロータは、特許文献1に記載されている。ここで、互いに隣り合うとともにロータの各磁極に割り当てられた、永久磁石を収容するための凹部が、V字状に配置されている。それぞれの磁極に割り当てられた凹部のV字形は、径方向に拡がっている。それぞれV字形の凹部が互いに近づく端部範囲では、凹部間に狭いウェブが存在し、当該ウェブは、積層コアの積層されたプレートで形成されている。特許文献1では、狭いウェブは散乱ウェブと呼ばれている。
【0003】
永久励磁型の同期機用のロータ又は回転子の構想においては、このようなウェブの幅、すなわちロータの周方向における各ウェブの寸法をできる限り小さく維持すべきである。なぜなら、当該ウェブ又は散乱ウェブの範囲では、凹部に配置された永久磁石の磁場線の不都合な閉鎖あるいは短絡が生じ、磁場線の当該閉鎖又は短絡は、散乱(漏れ)とも呼ばれる。散乱により電気機械の出力ポテンシャル及びトルクポテンシャルが低下するため、当該不都合な電磁的な散乱は欠点である。
【0004】
ロータの径方向に開放したV字形を形成する隣り合う凹部間のウェブが狭くなればなるほど、積層コアの材料又はプレートにより生じる磁気的な散乱は小さくなる。したがって、ウェブが狭く構成されれば、より幅広のウェブにおいて同一の大きさの出力あるいは同一の大きさのトルクを得るために必要な質量よりも小さな質量を有する永久磁石を用いることが可能である。
【0005】
しかし、ウェブ又は散乱ウェブが非常に狭いと、ロータの回転数が高い場合に、V字形に配置された凹部が互いに近づくか、あるいは接近する範囲において、又は当該範囲からロータの回転軸線へ向けても可塑化が生じる。したがって、積層コアのプレート、特に切り込みの範囲におけるこのような局所的な可塑化は、とりわけ、ウェブの幾何形状が薄いか、あるいは狭い場合及びロータの回転数が高い場合に生じる。当該可塑化は、ここでもプレートの材料破損、ロータの構造全体における不都合な設定特性又は場合によっては局所的な亀裂箇所の形成につながる。そうすると、ロータが、回転数又はトルクに関するこの設定された要件をもはや満たすことができないことが起こり得る。
【0006】
さらに、狭い散乱ウェブにより積層コアの機械的な強度が制限されるため、ロータの回転数がより大きい場合には、散乱ウェブにおいて積層コアの引裂きが生じることがある。したがって、相応により低い最大回転数のみを達成可能である。より幅広の散乱ウェブによってより大きな回転数強度を得ることができる。しかしながら、より多くの散乱が生じ、同一のトルクに対してより多くの磁石質量が必要である。永久磁石の磁石材料は高価であるため、これは欠点である。
【0007】
ロータのより高い回転数の目的は、永久励磁型の同期機の大きさを低減し、ひいては磁石質量も低減することであり得る。同期機の大きなトルク性能での大きな回転数強度は、大きな出力につながる。したがって、回転数強度を高めることは、出力密度の向上のために用いられることが可能である。
【0008】
たしかに、通常、永久励磁型の同期機の最大出力は最大回転数において得られない。それでも、狭い散乱ウェブにより低減された回転数強度により、ロータのロータ軸に作用結合された、機械的なギヤ比を有する伝動装置の使用時に、伝動装置出力における最大回転数又は最大トルクが低減されることとなり得る。当該欠点は、電気的な同期機を大型化するか、又は磁石質量を大きくすることで再び補償されることが可能である。磁石質量を大きくする場合には、より小さな質量の永久磁石及び狭い散乱ウェブを有するロータの場合のように、同一の回転数強度を得るために、再びややより幅広の散乱ウェブを設けるべきである。
【0009】
しかしながら、上述のように、狭いウェブ又は散乱ウェブを設ける場合には、ロータの回転数強度、すなわちロータの動作時にロータが損傷することなくロータが動作され得る最大の回転数が低下する。これは、積層コアを形成するために用いられるプレートが好都合な電磁的な特性を有するものの比較的小さな弾性限界及び引張強度を伴うためである。したがって、狭いウェブは、限定されてのみ、ロータの動作時に、すなわち回転軸線を中心としたその回転時に生じる負荷に耐えるようになっている。加えて、積層コアに積層して配置されたプレートの厚さも比較的わずかである。
【0010】
ロータの周方向では、幅広のウェブは、たしかに、より大きなロータの達成可能な回転数強度に寄与する。しかし、これには、より狭いウェブを有するロータを使用する場合のように、永久励磁型の同期機によって同一の最大トルクを達成すべき場合に、より多く必要な磁石質量の欠点が伴う。
【0011】
逆に、より狭いウェブ又は散乱ウェブにより、よりわずかな各質量を有する永久磁石の使用が可能となる。しかし、その場合、ロータを有する電気機械あるいは同期機のより小さなトルクのみが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第19915664号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、所定の永久磁石において永久励磁型の同期機の増大された出力性能を達成することができる冒頭に挙げた種類のロータを得るとともに、このようなロータを有する永久励磁型の同期機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
当該課題は、本発明により、請求項1の特徴を有するロータによって、及び請求項13の特徴を有する永久励磁型の同期機によって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項及び本明細書の対象である。
【0015】
永久励磁型の同期機用の本発明によるロータは、ロータの回転軸線の方向に積層された複数のプレートを含む少なくとも1つの積層コアを備えている。積層コアには、それぞれ永久磁石が収容された複数の凹部が形成されている。各凹部は第1の端部範囲を備えており、当該第1の端部範囲は、凹部の第2の端部範囲よりもロータの回転軸線に近い。このとき、ロータの周方向に互いに隣り合うとともに第1の端部範囲がロータの周方向において第2の端部範囲よりも互いに近い凹部に、永久磁石の同一の極が互いに対向するように永久磁石が配置されている。加えて、ロータは、積層コアとは別の少なくとも1つの保持部材を備えており、該保持部材を用いて、隣り合う凹部に隣接する積層コアの第1の部分が、隣り合う凹部に隣接する積層コアの第2の部分に結合されている。少なくとも1つの保持部材は、体積が保持部材の体積と同一である積層コアの部分範囲よりも小さな磁気伝導性を有している。
【0016】
したがって、保持部材を設けることは、保持部材の代わりに積層コアのウェブの形態の部分範囲が積層コアの部分を結合するために寄与する場合よりも低減された不都合な磁気的な散乱が、永久磁石の磁場線の閉鎖の形態で、隣り合う凹部に隣接する積層コアの部分を保持部材が結合する範囲において生じることに寄与する。これは、少なくとも1つの保持部材が、積層コアの同一の体積の部分範囲、すなわち保持部材と同一の体積を有する部分範囲よりも小さな磁気伝導性を有することに起因している。つまり、少なくとも1つの保持部材の比較的小さな磁気伝導性により、わずかな規模で、隣り合う凹部に配置された永久磁石の磁場線の閉鎖又は短絡に至る。
【0017】
それでも、少なくとも1つの保持部材は、特にロータの径方向において互いに離間し、好ましくは当該径方向において保持部材によって結合される積層コアの各部分の結合に寄与する。したがって、保持部材は、同時に、保持部材が設けられてない場合よりも大きなロータの回転数強度に寄与する。
【0018】
したがって、ロータを用いて、各凹部に収容された所定の永久磁石において、ロータを有する永久励磁型の同期機の増大された出力性能を達成することが可能である。
【0019】
少なくとも1つの保持部材により、互いに隣り合う凹部に配置され、その同一の極が互いに対向する永久磁石の磁場線の散乱の低減が生じるため、ロータの所定の外径において、磁石質量の低減と、その結果、製造コストの低減とを達成することが可能である。
【0020】
これに代えて、磁石質量が低減されていない場合、又は磁石質量がわずかに低減されている場合には、ロータの所定の外径において、最大トルクの増大及び/又は最大出力の増大の形態で永久励磁型の同期機の出力性能の向上を達成することが可能である。永久磁石の質量が低減されるかどうか、あるいは永久磁石の質量がどの程度低減されるかに応じて、製造コストの低減あるいは出力性能の向上の各利点が異なる大きさで現れる。
【0021】
加えて、少なくとも1つの保持部材を設けることにより、ロータの回転数強度にネガティブな影響を与えることなく、保持部材の形態で、特に薄いか、あるいは互いに隣り合う凹部の第1の端部範囲間のロータの周方向において特に狭いウェブを実現することが可能である。したがって、軽量構造ポテンシャルを明らかにすることができるか、あるいは特にわずかな重量を有するロータを実現することが可能である。
【0022】
さらに、それぞれ隣り合う凹部の範囲に保持部材を設けることで、ロータの動作時に、すなわち回転軸線を中心とするその回転時に、積層コアにおける機械的な応力の特に有利な分配を達成することが可能である。なぜなら、材料の機械的な負荷を超過しないことを保証できるためである。これに合わせて、保持部材の範囲におけるロータの機械的な強度を向上させることができ、これにより、より大きな回転数強度ももたらされる。ロータの周方向は、回転軸線を中心とするロータの回転におけるロータの回転方向に対応している。
【0023】
ロータにおいては、保持部材の範囲における磁場の散乱の低減のこれに伴う回転数強度の低減からの分離を達成できることが有利である。したがって、ロータは、同時に大きな回転数強度と、小さな磁石質量と、更に大きな最大トルクとを有する永久励磁型の同期機において用いられることができる。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つの保持部材は、該保持部材の体積と同一の積層コアの部分範囲よりも大きな弾性限界及び/又はより大きな引張強度を有している。このような保持部材がそれぞれ隣り合う凹部の範囲、すなわち隣り合う凹部の第1の端部範囲が互いに近い箇所において用いられれば、特に、積層コアの第1の部分及び第2の部分が各保持部材によって互いに連結あるいは結合されている範囲においてロータの特に大きな強度を達成することが可能である。
【0025】
少なくとも1つの保持部材がより大きな弾性限度及び/又はより大きな強度を有していれば、少なくとも1つの保持部材によって、少なくとも1つの保持部材が積層コアの両部分の結合に寄与するロータの各箇所における特に薄いウェブを提供することが可能である。これにより、軽量構造の可能性が得られるか、あるいはロータを特に計量に設定することが可能である。特にこの種のウェブの範囲における同一の強度を達成するために積層コアの積層されたプレートのプレート材料が用いられるロータとの比較において重要である。
【0026】
好ましくは、少なくとも1つの保持部材は、積層コアのプレートを形成する材料よりも小さな磁気伝導性を有する材料で形成されている。したがって、少なくとも1つの保持部材の特に小さな磁気伝導性を非常に容易かつ少ない手間で実現することが可能である。
【0027】
保持部材用の材料として、一連の材料、例えば鋼、アルミニウム、繊維強化された、特にグラスファイバ強化された合成樹脂、セラミック又はこれらに類するものが考慮の対象となる。これら全ての材料は、このような材料で形成された保持部材が、保持部材の体積と同一の体積である積層コアの部分範囲についての磁気伝導性よりも小さな磁気伝導性を有することをもたらすものである。しかし、製造技術的な観点から、及び更に保持部材の好ましくは高い強度に関して、保持部材の提供には所定の材料が特に適している。
【0028】
したがって、好ましくは、少なくとも1つの保持部材がステンレス鋼で形成されている。保持部材を形成するためにこのような材料を用いることで、積層コアの部分の特に良好な結合を達成することが可能である。このことは、特に、ステンレス鋼又は特殊鋼により冷間硬化及び/又は硬化が他の態様で許容される場合に重要である。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの保持部材は、オーステナイト系の組織を有するステンレス鋼で形成されている。つまり、特に、オーステナイト系の組織を有するステンレス鋼又は特殊鋼においては、磁気伝導性が特に小さい。加えて、このようなステンレス鋼は、非常に良好に冷間硬化されることができ、したがって、特に高い材料強度を達成することができる。
【0030】
さらに、これに伴う保持部材の延性に関して、保持部材を提供するためにオーステナイト系の組織を有するステンレス鋼を使用することは有利である。なぜなら、この場合、保持部材が特に高い破断延びを有しているためである。換言すれば、保持部材は、最初の弾性的な変形につづいて弾性限度に到達した後、積層コアのプレートを形成する保持部材用の材料を使用する場合よりも明らかに後に破断する。
【0031】
特に保持部材がオーステナイト系の組織を有し冷間硬化するステンレス鋼で形成される場合に、同時に大きな弾性限度及び大きな引張強度において有利に大きな保持部材の延性が設定されている。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの保持部材は、積層コアの部分に係合式に結合されている。これにより、積層コアの部分の特に負荷に耐え得る結合が少なくとも1つの保持部材によって達成されている。このことは、ロータの回転数強度に関して有利である。
【0033】
さらに、特に、少なくとも1つの保持部材を提供するためにオーステナイト系の組織を有するステンレス鋼を用いる場合には、特に熱的な接合方法によって、積層コアの部分との係合式の結合をプロセス技術的に非常に容易かつ良好に実現することが可能である。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つの保持部材は、保持部材の各端部に互いに結合されたウェブを備えている。このとき、保持部材の第1の端部が積層コアの第1の部分に結合されており、保持部材の第2の端部が積層コアの第2の部分に結合されている。保持部材のこのような形状によって、一方では、互いに結合された部分間の特に薄いウェブを実現することが可能である。また、他方では、積層コアの部分との保持部材の良好な結合を達成することが可能である。なぜなら、保持部材の端部が、その形状によって、積層コアと保持部材の端部の間の連結あるいは結合が形成された積層コアの各部分の範囲に非常に良好に適合され得るためである。
【0035】
好ましくは、保持部材のウェブは、隣り合う凹部の第1の端部範囲間に配置されている。したがって、保持部材は、積層コアの部分の結合に特に有効に寄与することができる。
【0036】
隣り合う凹部がその第1の端部範囲によって保持部材のウェブによって画定されていれば特に有利であることが分かった。なぜなら、この場合、隣り合う凹部の第1の端部範囲が特に近傍に並んで位置するロータの範囲には、隣り合う凹部に配置された永久磁石の磁場線の不都合な散乱あるいは不都合な閉鎖をもたらす積層コアの材料が全く存在しないためである。
【0037】
好ましくは、隣り合う凹部に収容された永久磁石は、保持部材のウェブから離間している。したがって、このような構成においては、保持部材のウェブの近傍における、他の材料で占められていないか、あるいは空気で満たされた範囲が磁束ブレーキとして用いられる。このことは、磁場線の不都合な散乱の低減に特に有利である。
【0038】
好ましくは、保持部材の端部は、ロータの周方向において、保持部材のウェブよりも大きな寸法を有している。このようにして、積層コアの各部分における保持部材の端部の定着を非常に容易に達成することが可能である。
【0039】
好ましくは、保持部材の端部は、各係合を形成しつつ対応する収容部に配置されており、収容部は、保持部材を用いて互いに結合された積層コアの部分に形成されている。積層コアの部分との保持部材のこのような係合式の結合は、ロータの動作時、すなわち回転軸線を中心とするロータの回転時に生じる引張負荷を保持部材によって特に良好に受け止め得ることに寄与する。
【0040】
特に、少なくとも1つの保持部材を積層コアへ設けるために熱的な接合方法又は温度指示式の接合方法が用いられれば、積層コアの部分と係合式に結合される保持部材によって大きな引張負荷を受け止めることが可能である。このとき、接合相手方、特に保持部材は、加熱され、加熱された状態で他の接合相手方へ設けられることが可能である。そして、あらかじめ加熱された接合相手方のこれにつづく冷却により、保持部材が積層コアの部分に引張応力で負荷を与えることとなる。1つの接合相手方の他の接合相手方へのこのような焼嵌めは、加熱される接合相手方が積層コアである一方、保持部材が当該接合プロセスにおいて低温のままであるか、あるいは加熱されない場合にも達成され得る。
【0041】
好ましくは、保持部材の各端部の外部輪郭は、対応する収容部の内部輪郭に対応する。このようにして、ロータの製造時に、保持部材の端部を対応する収容部へ良好に設けることが可能である。
【0042】
特に、保持部材の各端部が対応する収容部において本質的に遊びなしに収容されるように構成することが可能である。そして、各収容部の範囲において保持部材の各端部を包囲する積層コアの材料への、回転軸線を中心とするロータの回転時に生じる引張負荷の特に良好な分配を達成可能である。
【0043】
最後に挙げた利点は、保持部材の各端部の外部輪郭が断面において円形に形成されていれば特別な規模で得られる。したがって、保持部材が断面において円形の端部、又は更に少なくとも大幅に遊びなく対応する収容部へ収容されたヘッド範囲を備えていれば、積層コアの部分の範囲における、回転軸線を中心とするロータの回転時に生じ得る点状の負荷(集中負荷)を特に大幅に回避することが可能である。
【0044】
しかし、保持部材の各端部の外部輪郭と対応する収容部の内部輪郭の間に少なくとも1つの空き空間が形成されるように構成することも可能である。このような構成は、特に、取付、すなわちそれぞれ互いに結合されるべき部分の範囲における積層コアへの少なくとも1つの保持部材の設置に関して有利である。加えて、保持部材の各端部の外部輪郭と対応する収容部の内部輪郭の間に少なくとも1つの空き空間が存在すれば、保持部材及び/又は保持部材の端部に対応する収容部の公差、特に製造公差を特に良好に補整することが可能である。
【0045】
特に、保持部材の各端部の外部輪郭は、断面においてきのこのカサ状であってよく、すなわち断面においてきのこのカサの断面に対応し得る。保持部材の1つの端部又は両端部のこのような構成により、特に、収容部の側部に設けられた対向する支持面における、きのこのカサ形状のそれぞれ下側の良好な支持が可能となる。このことは、保持部材による引張負荷の受容に関して有利である。
【0046】
保持部材の各端部が直線状の接触面でもって収容部の対応する接触面に接触するように構成することが可能である。このような直線状の接触面を設けることは、製造技術的に、湾曲した、特に円形の接触面の場合よりもわずかな手間で済む。したがって、加えて、保持部材の各端部への負荷の良好な分配を達成することが可能である。
【0047】
直線状の接触面が保持部材の端部においてロータの径方向に対して本質的に垂直に向けられていれば、ロータの動作時、すなわちその回転軸線を中心とするその回転時に生じる負荷に関して有利であることが分かった。
【0048】
本発明による永久励磁型の同期機は、本発明によるロータを備えている。永久励磁型の同期機は更にステータを含んでおり、当該永久励磁型の同期機は、回転磁場を提供するためのステータ巻線を備えている。回転場を用いて、回転軸線を中心とするロータの回転を生じさせることができる。
【0049】
本発明によるロータについて説明した利点及び好ましい実施形態は、同様に本発明による永久励磁型の同期機にも当てはまる。
【0050】
本発明の別の特徴は、特許請求の範囲、図面及び図面による説明から明らかである。本明細書において上述した特徴及び特徴の組合せ並びに以下における図面による説明及び/又は図面において単に示される特徴及び特徴の組合せは、それぞれ記載された組合せにおいてのみならず、他の組合せ又は特有の箇所においても用いられることが可能である。
【0051】
本発明を、好ましい実施例に基づいて、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】複数の積層コアを有する、永久励磁型の同期機用のロータの概略的な斜視図である。
図2】ロータの各積層コアを形成する積層されたプレートのうち1つの、ロータの回転軸線の方向へ見た概略的な平面図である。
図3】ロータの部分を概略的に示す図であり、径方向に互いに離間した積層コアの部分は、第1の態様による保持部材によって結合されている。
図4】ロータの部分を概略的に示す図であり、径方向に互いに離間した積層コアの部分は、第2の態様による保持部材によって結合されている。
図5】保持部材を有する図1によるロータを有する永久励磁型の同期機の一部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1には、永久励起型の同期機2(図5参照)用のロータ1又は回転子が概略的な斜視図で示されている。図1に例示的に示されたロータ1の構成においては、ロータ1は内部回転子として形成されている。しかし、如何に説明するロータ1の構造上の構成は、外部回転子として形成されたロータにおいても用いられることが可能である。
【0054】
永久励磁型の同期機2(図5参照)の動作時には、ロータ1は、ここではロータ1のロータ軸4の中央に配置された回転軸線3を中心として回転する。これ自体公知の態様では、ロータ1は複数の積層コア5を備えており、図1では、見やすさの理由からそのうちいくつかのみに符号が付されている。それぞれ個々の積層コア5は、わずかなシート厚さの多数の個別のプレート(シート)6を備えており、当該プレートのうち1つが、図2において回転軸線3の方向における平面図で概略的に図示されている。
【0055】
プレート6は、各積層コア5において回転軸線3の方向に積層されているとともに、例えば溶接によって互いに結合されている。特に、各積層コア5には、例えば100以上のプレート6が回転軸線3の方向に積層して配置されることが可能である。個々のプレート6は、例えばレーザ工具又は打抜き工具を用いて大きな圧延プレートから切り抜かれることができ、各プレート6に凹部7,8を設けることが可能である。
【0056】
ここでは、各個別のプレート6は、永久励磁型の同期機2のロータ1のために複数の凹部7,8を備えており、図2では、見やすさの理由からそのうちいくつかのみにそれぞれ符号が付されている。回転軸線3の方向に重ねて積層された積層コア5のプレート6では、凹部7,8が互いに一直線(面一)となっているため、各積層コア5も対応する凹部7,8を備えている。
【0057】
凹部7,8には、永久励磁型の同期機2のロータ1においてそれぞれ永久磁石9,10が収容されており(図3及び図4参照)、当該永久磁石は、見やすさの理由から図2では図示されていない。
【0058】
ここでは、永久磁石9,10は、それぞれ、同一の磁極、すなわち例えば互いに隣り合う凹部7,8に収容された永久磁石9,10のN極あるいはS極が互いに対向するように、互いに隣り合う凹部7,8に配置されている。例えば、図2の上側に図示された隣り合う両凹部7,8には、N極が互いに対向するように永久磁石9,10が配置されている。これに対して、当該凹部7,8に径方向において対向する凹部7,8においては、ここでは永久磁石9,10のS極が互いに対向するように(図2では不図示の)別の永久磁石9,10が配置されている。
【0059】
同様のことは、ロータ1の周方向、すなわち回転軸線3を中心とする回転の方向において図2における上側に示された凹部7,8に隣接する、それぞれ隣り合う凹部7,8においても当てはまる。したがって、図2に示されたロータ1の構成では、隣り合う凹部7,8におけるそれぞれ2つの永久磁石9,10が周方向において常に交代し、そのN極は互いに対向し、S極は互いに対向している。
【0060】
さらに、図2にそのプレート6が示されたロータ1においては、互いに隣り合う凹部7,8は、隣り合う凹部7,8がV字形を形成するように、永久磁石9,10の互いに対向する同一の磁極をもって配置されている。プレート6の図2に示された構成では、V字形の脚部は、回転軸線3の範囲ではなく、ロータ1の径方向において回転軸線3から離れて、積層コア5の範囲において交差する。
【0061】
しかし、後述の説明は、凹部7,8が厳格に径方向に延在しており、その結果V字形の脚部が回転軸線3の範囲で交差するロータ1についても当てはまる。しかし、ロータ1の当該構成では、図2に示されたものとは異なり、それぞれ隣り合う永久磁石9,10の同一の極N,Sが互いに対向するように、永久磁石9,10が、ロータ1の周方向において互いに隣り合う全ての凹部7,8において配置されている。したがって、当該構成では、凹部7,8に収容された永久磁石9,10のそれぞれの向きは、ロータ1の周方向において互いに隣り合う凹部7,8において互い違いとなる。
【0062】
しかし、以下では、ロータ1に関する事項の例示的な説明のために、特に凹部7,8の図2に示されたV字形の配置及び図2において磁極N,Sの記載によって明確にされた永久磁石9,10の配置に関して言及することとする。
【0063】
ロータ1の当該構成では、ロータ1の周方向において互いに隣り合うとともに、永久磁石9,10の同一の極N,Sが互いに対向するように永久磁石9,10が配置された、それぞれV字形に配置された2つの凹部7,8と、各第1の端部範囲11と、各第2の端部範囲12とを備えている(図3も参照)。
【0064】
それぞれ互いに割り当てられた凹部7,8の第1の端部範囲11は、当該凹部7,8の第2の端部範囲12よりもロータ1の回転軸線3に近い。当該凹部に収容され、永久磁石9,10の互いに対向する同一の極を有する凹部7,8の第1の端部範囲11が互いに非常に近い箇所には、通常、積層コア5においてウェブ又は材料ブリッジ13が存在し、図2には、見やすさの理由からそのうちいくつかのみに符号が付されている。
【0065】
しかし、実際には、図1に示されたロータ1においては、通常は積層コア5のプレート6の材料で形成されている当該材料ブリッジ13に代えて、それぞれ保持部材14が存在する。図2では、見やすさの理由からこれら保持部材14のうち1つのみが図示されており、そのうち各態様が図3及び図4において拡大して示されている。しかし、実際には、積層コア5ではいずれの箇所にも保持部材14が存在し、当該箇所には、図2ではプレート6の材料から形成された材料ブリッジ13が図示されている。
【0066】
したがって、第1の端部範囲11がロータ1の周方向において第2の端部範囲12よりも互いに近い隣り合う凹部7,8において、永久磁石9,10の同一の極N,Sが互いに対向するように永久磁石9,10が配置された積層コア5の箇所に保持部材14が配置されている。したがって、保持部材14は、ロータ1において、通常は各プレート6の材料から形成される材料ブリッジ13を積層コア5において置換する。
【0067】
ここでは、保持部材14は、特にわずかな磁気伝導性を有する材料で形成されている。このとき、各保持部材14の磁気伝導性は、保持部材14によって占められる体積が保持部材14と同一の体積を有する積層コア5の部分範囲によって形成される場合に比べて小さい。
【0068】
保持部材14のわずかな磁気伝導性は、各保持部材14の範囲に電磁散乱が生じないか、あるいは特にわずかな不都合な電磁散乱、すなわち各永久磁石9,10の磁場線の不都合な閉鎖しか生じないことにつながる。これに対して、このような磁場線の閉鎖は、ロータ1において材料ブリッジ13のような磁気伝導性の材料が保持部材14の代わりに存在する場合に生じる。なぜなら、磁気的に良好な伝導性を有する材料は、各永久磁石9,10の磁場線の短絡につながるためである。
【0069】
したがって、通常のロータでは、当該材料ブリッジにより生じる電磁散乱により散乱ウェブとも呼ばれる各積層コア5の材料ブリッジ13の幅をできる限り小さく保持すべきである。しかし、ロータの周方向において、薄いか、又は狭い材料ブリッジ13あるいは散乱ウェブは、ロータがわずかな回転数強度につながる。
【0070】
両問題は、有利にはここに説明されるロータ1において回避されている。つまり、互いに隣り合う凹部7,8間の散乱ウェブあるいは材料ブリッジ13は、ここでは、磁気的に不導性あるいは特にわずかな磁気伝導性を有する材料で形成された各保持部材14で置き換えられている。
【0071】
例えば、この目的のために、各保持部材14は、オーステナイト系の組織を有する耐食性の鋼又はステンレス鋼で形成されることが可能である。換言すれば、ステンレス鋼あるいは特殊鋼、特にオーステナイト系の組織を有するステンレス鋼で形成され、不都合な散乱あるいは永久磁石9,10の磁場線の不都合な閉鎖を特に大幅に低減する散乱ウェブを保持部材14によって形成することできる。
【0072】
このとき、保持部材14は、同時にロータ1の高い回転数強度に寄与する。なぜなら、各保持部材14は、互いに隣り合うか、あるいは互いに割り当てられた凹部7,8に隣接する積層コア5の第1の部分15を、互いに隣り合う凹部7,8に隣接する積層コア5の第2の部分16に結合するためである(図3参照)。
【0073】
このとき、ここでは、積層コア5の第1の部分15は、積層コア5の第2の部分16よりもロータ1の回転軸線3から離間している。これに対応して、保持部材14は、ロータ1の回転時に回転軸線3を中心として生じる引張負荷を受けるのに特に良好に適している。換言すれば、保持部材14は、特にV字形に配置された互いに隣り合う凹部7,8の間の範囲において機械的な結束を担い、凹部においては、互いに対向する同一の極Nを有する永久磁石9,10が配置されている(図3参照)。
【0074】
ロータの製造時には、積層コア5に、又は積層コア内に保持部材14を設置するために、ひいては保持部材14を部分15,16と結合するために、熱的な接合方法を用いることができる。例えば、保持部材14は、溶接によって各部分15,16と結合されることが可能である。
【0075】
例えば図3から分かるように、好ましくは保持部材14のウェブ17が互いに隣り合う凹部7,8の各境界を形成している。換言すれば、隣り合う凹部7,8は、その第1の端部範囲11において保持部材14のウェブ17によって区画されることができる。
【0076】
このとき、好ましくは、隣り合う凹部7,8に収容された永久磁石9,10は、保持部材14のウェブ17から離間するように構成されている。換言すれば、好ましくは、隣り合う凹部7,8あるいは互いに割り当てられた凹部7,8の互いに近傍の端部範囲11が互いに近づく積層コア5の範囲には、積層コア5の各プレート6によって形成される材料が全く存在せず、保持部材14のウェブ17のみが存在する。
【0077】
同様に、ここでは、永久磁石9,10は、各凹部7,8の径方向における外側の縁部から離間している。これに対応して、好ましくは、凹部7,8の第2の端部範囲12によっても磁束バリアあるいは磁束ブレーキが提供されている。なぜなら、当該第2の端部範囲12においても、積層コア5のプレート6により形成される材料が存在しないためである。
【0078】
通常は設けられる材料ブリッジ13(図3参照)の範囲におけるくぼみ部により、あるいは当該範囲において各プレート6の材料が存在しないことにより、ロータ1の電磁的な設定は、ロータ1の所定の外径における励磁された同期機2の特に高いトルクポテンシャル及び出力ポテンシャルにつながる。
【0079】
これに代えて、保持部材14のウェブ17に代えて材料ブリッジ13が設けられる場合のように、永久励磁型の同期機2の同一の性能を得るために、より小さな、したがってよりわずかな質量を有する永久磁石9,10を用いることが可能である。したがって、調達において高価な磁石分量を削減することができ、及び/又は永久励磁型の同期機2の性能を高めることが可能である。
【0080】
特に、保持部材14が、良好な冷間硬化ポテンシャルを有しこれに相応して冷間硬化されたオーステナイト系の組織を有するステンレス鋼で形成されていれば、保持部材14が部分15,16を結合する箇所において特に高い積層コア5の材料強度を得ることができる。これにより、各保持部材14の特に薄い幾何形状が可能である。これにより、ロータ1の設定時に、プレート6の材料で形成された材料ブリッジ13(図2参照)が存在する標準的な、又は通常のロータに比べて、軽量構造の可能性が開かれる。
【0081】
図3に図示された保持部材14の態様では、保持部材14の各端部18,19は、断面において円形の外部輪郭をもって形成されている。このとき、当該外部輪郭は、各部分15,16の範囲に形成された各収容部20,21の内部輪郭に対応している。ここで、保持部材14の端部19のための収容部20は断面において円形の内部輪郭を有し、保持部材14の端部18のための収容部21も同様に断面において円形の内部輪郭を有している。
【0082】
保持部材14の当該構成においては、保持部材14の範囲における積層コア5の引裂きを特に大幅に回避することが可能である。これは、各端部18,19の円形の外部輪郭によりロータ1の動作時に積層コア5の各部分15,16において機械的な応力ピークの発生を特に大幅に回避することができることにある。
【0083】
図4に示された態様では、保持部材14は、図3に示された態様とはわずかに異なるように構成されている。すなわち、図4によれば、端部18,19は、図3に示された保持部材14の場合の形状とは異なる形状を有している。ここで、各端部18,19の外部輪郭は、断面においてきのこのカサ状に形成されているか、あるいはきのこのカサの断面に対応して形成されている。
【0084】
加えて、各端部18,19の外部輪郭と対応する収容部20,21の内部輪郭の間には空き空間30が形成されている。当該空き空間30を設けることで、積層コア5におけるその取付位置への保持部材14の設置が容易となる。なぜなら、端部18,19が特に良好に各収容部20,21へ挿入され得るためである。
【0085】
さらに、各端部18,19は直線状の接触面22を備えており、当該接触面は、対応する収容部20,21の対応する接触面23に接触する。このような直線状の接触面22あるいは対応する接触面23は、製造技術的に特に容易に提供されることが可能である。加えて、部分15,16の側に設けられた当該接触面23におけるきのこのカサ状の端部18,19の良好な支持を達成可能である。
【0086】
これに加えて、図4には、ロータ1の図3では不図示のロータ軸4の一部が示されている。
【0087】
図5には、ロータ1を有する永久励磁型の同期機2が大きく概略化された側面図において部分的に図示されている。永久励磁型の同期機2は、それ自体公知の態様で、ここでは概略的にのみ示唆されたステータ巻線25を有するステータ24を備えている。ステータ24とロータ1の間には空隙26が形成されている。ステータ巻線25を用いて回転磁界を提供することができ、回転磁界を用いて、永久励磁型の同期機2の動作時にロータの回転軸線3を中心としてロータ1を回転させることが可能である。
【0088】
さらに、図1には、このような永久励磁型の同期機2に配置されたロータ1から更にクランププレート27,28あるいはカバープレートが示されており、当該クランププレートあるいはカバープレートの間には、積層コア5が互いに対して押圧されて配置されている。当該クランププレート27,28には複数の箇所29において孔を穿設することができ、図1ではこれら箇所29のうちいくつかにのみ符号が付されている。当該箇所29のうち1つ又は複数に適当な孔を設けることで、ロータ1は均衡を保つことができるか、あるいは、ロータ1の回転時のアンバランスを除去することが可能である。
【0089】
全体として、例は、例えば永久励磁型の同期機2のロータ1の保持部材の形態で特殊鋼で形成された散乱ウェブが設けられることで、永久励磁型の同期機2の同様に高い性能においてどのようにロータの高い回転数強度を得ることができるかを示している。
【符号の説明】
【0090】
1 ロータ
2 同期機
3 回転軸線
4 ロータ軸
5 積層コア
6 プレート
7 凹部
8 凹部
9 永久磁石
10 永久磁石
11 端部範囲
12 端部範囲
13 材料ブリッジ
14 保持部材
15 部分
16 部分
17 ウェブ
18 端部
19 端部
20 収容部
21 収容部
22 接触面
23 接触面
24 ステータ
25 ステータ巻線
26 空隙
27 クランププレート
28 クランププレート
29 箇所
30 空き空間
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】