(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】診断パラメータ予測誤差の変動を用いた電気設備の状態の判断
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20231101BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G01R31/00
H02J13/00 301A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513494
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2021059352
(87)【国際公開番号】W WO2022214201
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイム,ルイズ
(72)【発明者】
【氏名】ツァノール,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】アベイウィクラマ,ニランガ
【テーマコード(参考)】
2G036
5G064
【Fターム(参考)】
2G036AA20
2G036BA03
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA05
(57)【要約】
診断パラメータ予測誤差を用いて電気設備の状態を判断するための実施形態が開示される。予測誤差値が、電気設備の少なくとも1つのコンポーネントに関して、所定の期間にわたる複数の予測診断パラメータ値について決定される。予測誤差値は、少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される変動を抑制する。決定された予測誤差値は、予想予測誤差値と比較される。少なくとも1つのコンポーネントの状態の表示が、比較に基づいて選択的に生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気設備の少なくとも1つのコンポーネントに関して、所定の期間にわたる複数の予測診断パラメータ値の予測誤差値であって、前記少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲変動を抑制する前記予測誤差値を、プロセッサ回路によって決定することと、
決定された前記予測誤差値を予想予測誤差値と比較することと、
前記比較に基づいて、前記少なくとも1つのコンポーネントの状態の表示を、前記プロセッサ回路によって選択的に生成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのコンポーネントは、前記電気設備の絶縁コンポーネントを含み、
前記複数の予測診断パラメータ値は、複数の予測絶縁診断パラメータ値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の予測絶縁診断パラメータ値は、前記少なくとも1つの絶縁コンポーネントの予測静電容量値、予測容量性電流値、予測誘電正接値、および予測力率値のうちの少なくとも1つを複数含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気設備は、変圧器を備え、
前記少なくとも1つのコンポーネントは、前記変圧器の高電圧ブッシングを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
抑制される前記少なくとも1つのコンポーネントの前記挙動において観測される前記変動は、周囲条件に起因する変動を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
周囲条件に起因する前記変動は、環境条件、ノイズ、振動、および特殊要因による変動のうちの少なくとも1つに起因する変動を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記予測誤差値を決定することは、
前記複数の予測診断パラメータ値に関する少なくとも1つの誤差値を、前記プロセッサ回路によって予測すること、
前記少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲条件に起因する前記少なくとも1つの誤差値の変動を決定すること、および
前記少なくとも1つの誤差値および決定された前記変動に基づいて、前記予測誤差値を生成すること
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記予測誤差値を決定することは、
取得された診断パラメータ値に基づいて、前記所定の期間のうちの複数のそれぞれの時点について、前記複数の予測診断パラメータ値を予測することと、
前記それぞれの時点についての前記複数の予測診断パラメータ値と、前記それぞれの時点において取得された複数の実際の診断パラメータ値との比較に基づいて、複数の誤差値を決定することと
をさらに含み、
前記予測誤差値は、前記複数の誤差値の平均誤差値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の実際の診断パラメータ値は、前記少なくとも1つのコンポーネントに関連付けられたデバイスから生成されるパラメータ値データストリームから取得される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の時点は、前記所定の期間のうちの少なくとも100個の時点を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の予測診断パラメータ値は、前記少なくとも1つのコンポーネントの予想挙動に関連し、
前記予測誤差値は、前記少なくとも1つのコンポーネントについて観測される挙動の前記少なくとも1つのコンポーネントの前記予想挙動からの偏差を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記予想予測誤差値は、複数の以前の予測診断パラメータ値と、対応する複数の以前に取得された診断パラメータ値との比較に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の予測診断パラメータ値は、複数の以前に取得された診断パラメータ値のうちの所定の数の診断パラメータ値と、前記複数の以前に取得された診断パラメータ値のうちの少なくとも1つの後のパラメータ値との間の複数の決定された関係に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の以前に取得された診断パラメータ値は、前記少なくとも1つのコンポーネントとは異なるコンポーネントから取得される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の予測診断パラメータ値は、機械学習モデルおよび統計モデルの少なくとも一方に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記予想予測誤差値は、機械学習モデルおよび統計モデルの少なくとも一方に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記表示を選択的に生成することは、
前記予測誤差値が、前記予想予測誤差値に基づいて所定の予測誤差しきい値を満たすか否かを、前記プロセッサ回路によって判断することと、
前記所定の予測誤差しきい値を満たす予測誤差値に応答して、第1の警報表示を生成することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記表示を選択的に生成することは、前記所定の予測誤差しきい値を満たさない前記予測誤差値に応答して、第2の警報表示を生成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プロセッサ回路と、
機械可読命令を含むメモリと
を備え、
前記機械可読命令は、前記プロセッサ回路によって実行されたときに、
電気設備の少なくとも1つのコンポーネントに関して、所定の期間にわたる複数の予測診断パラメータ値を決定し、
前記少なくとも1つのコンポーネントから所定の期間にわたって複数の実際の診断パラメータ値を取得し、
前記複数の予測診断パラメータ値および前記複数の実際のパラメータ値に基づいて、前記少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲変動を抑制する予測誤差値を決定し、
決定された前記予測誤差値を予想予測誤差値と比較し、
前記比較に基づいて、前記少なくとも1つのコンポーネントの状態の表示を、前記電気設備に選択的に送信する
ことを前記プロセッサ回路に実行させる、絶縁診断システム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのコンポーネントは、前記電気設備の絶縁コンポーネントを備え、
前記複数の予測診断パラメータ値は、複数の予測絶縁診断パラメータ値を含み、
前記複数の実際の診断パラメータ値は、複数の実際の絶縁診断パラメータ値を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記複数の予測絶縁診断パラメータ値は、前記少なくとも1つの絶縁コンポーネントの予測静電容量値、予測容量性電流値、予測誘電正接値、および予測力率値のうちの少なくとも1つを複数含み、
前記複数の実際の絶縁診断パラメータ値は、前記少なくとも1つの絶縁コンポーネントの実際の静電容量値、実際の容量性電流値、実際の誘電正接値、および実際の力率のうちの少なくとも1つを複数表す、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのコンポーネントの前記挙動において観測される前記変動は、周囲条件に起因する変動を含む、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、高電圧変圧器などの電気設備の分析に関する。特には、本開示は、診断パラメータ予測誤差を用いた電気設備の状態の判断に関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備のコンポーネントの多くの診断パラメータは、周囲および他の現場の条件に起因する変動を示し、そのような変動ゆえに、コンポーネントの根本的な問題の検出が難しくなり、あるいは遅くなる。例えば、静電容量または力率などの高電圧変圧器用の絶縁ブッシングの絶縁パラメータの変動は、ブッシングの劣化または故障を表しているかもしれない。しかしながら、これらの絶縁パラメータは、温度、湿度、過電圧、あるいは電気設備内および電気設備の周囲の他の変化する環境、電気、および/または熱条件などの周囲条件によって、きわめて大きく影響される可能性がある。結果として、このような影響を受けやすい診断パラメータに基づく従来の診断技術は、進行中の故障を事前に検出することができない可能性があり、あるいはコンポーネントの状態を正確に検出できない可能性がある。したがって、そのような技術は、コンポーネントの状態を正確に検出するために変圧器をオフラインにすることを必要とする場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
いくつかの実施形態によれば、方法が、プロセッサ回路によって、電気設備の少なくとも1つのコンポーネントに関して、所定の期間にわたる複数の予測診断パラメータ値の予測誤差値を決定することを含み、予測誤差値は、少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲変動を抑制する。本方法は、決定された予測誤差値を予想予測誤差値と比較することをさらに含む。本方法は、プロセッサ回路によって、比較に基づいて、少なくとも1つのコンポーネントの状態の表示を選択的に生成することをさらに含む。
【0004】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのコンポーネントは、電気設備の絶縁コンポーネントを含む。複数の予測診断パラメータ値は、複数の予測絶縁診断パラメータ値を含む。
【0005】
いくつかの実施形態によれば、複数の予測絶縁診断パラメータ値は、少なくとも1つの絶縁コンポーネントの予測静電容量値、予測容量性電流値、予測誘電正接値、および予測力率値のうちの少なくとも1つを複数含む。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、電気設備は変圧器を備え、少なくとも1つのコンポーネントは、変圧器の高電圧ブッシングを備える。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、抑制される少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される変動は、周囲条件に起因する変動を含む。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、周囲条件に起因する変動は、環境条件、ノイズ、振動、および特殊要因による変動のうちの少なくとも1つに起因する変動を含む。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、予測誤差値を決定することは、複数の予測診断パラメータ値に関する少なくとも1つの誤差値を、プロセッサ回路によって予測すること、少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲条件に起因する少なくとも1つの誤差値の変動を決定すること、および少なくとも1つの誤差値および決定された変動に基づいて、予測誤差値を生成すること、のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、予測誤差値を決定することは、取得された診断パラメータ値に基づいて、所定の期間のうちの複数のそれぞれの時点について、複数の予測診断パラメータ値を予測することをさらに含む。予測誤差値を決定することは、それぞれの時点についての複数の予測診断パラメータ値と、それぞれの時点において取得された複数の実際の診断パラメータ値との比較に基づいて、複数の誤差値を決定することをさらに含み、予測誤差値は、複数の誤差値の平均誤差値を含む。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、複数の実際の診断パラメータ値は、少なくとも1つのコンポーネントに関連付けられたデバイスから生成されるパラメータ値データストリームから取得される。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、複数の時点は、所定の期間のうちの少なくとも100個の時点を含む。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、複数の予測診断パラメータ値は、少なくとも1つのコンポーネントの予想挙動に関連する。予測誤差値は、少なくとも1つのコンポーネントについて観測される挙動の少なくとも1つのコンポーネントの予想挙動からの偏差を表す。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、予想予測誤差値は、複数の以前の予測診断パラメータ値と、対応する複数の以前に取得された診断パラメータ値との比較に基づいて決定される。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、複数の予測診断パラメータ値は、複数の以前に取得された診断パラメータ値のうちの所定の数の診断パラメータ値と、複数の以前に取得された診断パラメータ値のうちの少なくとも1つの後のパラメータ値との間の複数の決定された関係に基づいて決定される。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、複数の以前に取得された診断パラメータ値は、少なくとも1つのコンポーネントとは異なるコンポーネントから取得される。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、複数の予測診断パラメータ値は、機械学習モデルおよび統計モデルの少なくとも一方に基づいて決定される。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、予想予測誤差値は、機械学習モデルおよび統計モデルの少なくとも一方に基づいて決定される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、表示を選択的に生成することは、予測誤差値が、予想予測誤差値に基づいて所定の予測誤差しきい値を満たすか否かを、プロセッサ回路によって判断することをさらに含む。表示を選択的に生成することは、所定の予測誤差しきい値を満たす予測誤差値に応答して、第1の警報表示を生成することをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、表示を選択的に生成することは、所定の予測誤差しきい値を満たさない予測誤差値に応答して、第2の警報表示を生成することをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、絶縁診断システムが、プロセッサ回路と、機械可読命令を含むメモリとを備える。プロセッサ回路によって実行されると、命令は、プロセッサ回路に、電気設備の少なくとも1つのコンポーネントに関して、所定の期間にわたる複数の予測診断パラメータ値を決定させる。さらに、命令は、プロセッサ回路に、少なくとも1つのコンポーネントから所定の期間にわたって複数の実際の診断パラメータ値を取得させる。さらに、命令は、プロセッサ回路に、複数の予測診断パラメータ値および複数の実際のパラメータ値に基づいて予測誤差値を決定させ、予測誤差値は、少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲変動を抑制する。さらに、命令は、プロセッサ回路に、決定された予測誤差値を予想予測誤差値と比較させる。さらに、命令は、プロセッサ回路に、比較に基づいて少なくとも1つのコンポーネントの状態の表示を電気設備へと選択的に送信させる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのコンポーネントは、電気設備の絶縁コンポーネントを含む。複数の予測診断パラメータ値は、複数の予測絶縁診断パラメータ値を含む。複数の実際の診断パラメータ値は、複数の実際の絶縁診断パラメータ値を含む。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、複数の予測絶縁診断パラメータ値は、少なくとも1つの絶縁コンポーネントの予測静電容量値、予測容量性電流値、予測誘電正接値、および予測力率値のうちの少なくとも1つを複数含む。複数の実際の絶縁診断パラメータ値は、少なくとも1つの絶縁コンポーネントの実際の静電容量値、実際の容量性電流値、実際の誘電正接値、および実際の力率のうちの少なくとも1つを複数表す。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、抑制される少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される変動は、周囲条件に起因する変動を含む。
【0025】
図面の簡単な説明
本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本出願の一部を構成する添付の図面は、本発明の考え方の特定の非限定的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】いくつかの実施形態による絶縁コンポーネントの診断パラメータ値を取得するための技術を示している。
【
図1B】いくつかの実施形態による絶縁コンポーネントの診断パラメータ値を取得するための技術を示している。
【
図1C】いくつかの実施形態による絶縁コンポーネントの診断パラメータ値を取得するための技術を示している。
【
図2A】電気設備の予測診断パラメータ値の予測誤差に基づいて電気設備の状態を判断するためのいくつかの実施形態による動作を示している。
【
図2B】電気設備の予測診断パラメータ値の予測誤差に基づいて電気設備の状態を判断するためのいくつかの実施形態による動作を示している。
【
図3】
図2Bの動作の一部として予想予測誤差値を決定するためのいくつかの実施形態による動作を示している。
【
図4A】いくつかの実施形態による変圧器ブッシングの履歴力率データのグラフプロットである。
【
図4B】いくつかの実施形態による
図3の履歴力率データの時系列データストリームの機械学習モデルによる使用のための回帰モデルフラットテーブルへの変換を示している。
【
図5A】いくつかの実施形態による正常に機能している変圧器ブッシングの或る期間にわたる予測力率および実際の力率の比較を示すグラフプロットである。
【
図5B】いくつかの実施形態による正常に機能している変圧器ブッシングの前記期間にわたる
図5Aの比較の力率予測誤差を示すグラフプロットである。
【
図6A】いくつかの実施形態による経時的な変圧器ブッシングの予測静電容量と実際の静電容量との比較を示すグラフプロットである。
【
図6B】いくつかの実施形態による正常に機能している変圧器ブッシングの経時的な静電容量予測誤差を示すグラフプロットである。
【
図7】
図2Bの動作の一部として予測誤差値を決定するためのいくつかの実施形態による動作を示している。
【
図8A】いくつかの実施形態による経時的な変圧器ブッシングの予測静電容量と実際の静電容量との比較を示すグラフプロットであり、実際の静電容量が急な増加を示している。
【
図8B】いくつかの実施形態による変圧器ブッシングの経時的な静電容量予測誤差を示すグラフプロットである。
【
図9A】いくつかの実施形態による経時的な変圧器ブッシングの予測静電容量と実際の静電容量との比較を示すグラフプロットであり、実際の静電容量が経時的に線形増加を示している。
【
図9B】いくつかの実施形態による変圧器ブッシングの経時的な静電容量予測誤差を示すグラフプロットである。
【
図10A】いくつかの実施形態による経時的な変圧器ブッシングの予測力率と実際の力率との比較を示すグラフプロットであり、実際の力率が経時的に線形増加を示している。
【
図10B】いくつかの実施形態による変圧器ブッシングの経時的な力率予測誤差を示すグラフプロットである。
【
図11】予測診断パラメータ値の平均値および取得された予測誤差値の平均値に基づいて予測誤差を決定するためのいくつかの実施形態による動作を示している。
【
図12A】いくつかの実施形態による診断パラメータ値の時系列データストリームからの平均値の計算を示している。
【
図12B】いくつかの実施形態による診断パラメータ値の時系列データストリームからの平均値の計算を示している。
【
図13A】いくつかの実施形態による経時的な変圧器ブッシングの予測力率の複数の平均値および実際の力率の複数の平均値の比較を示すグラフプロットである。
【
図13B】いくつかの実施形態による正常に機能している変圧器ブッシングの経時的な平均力率予測誤差値を示すグラフプロットである。
【
図14A】いくつかの実施形態による経時的な変圧器ブッシングの平均予測力率と実際の平均力率との比較を示すグラフプロットであり、実際の力率が経時的に指数関数的増加を示している。
【
図14B】いくつかの実施形態による変圧器ブッシングの経時的な平均力率予測誤差値を示すグラフプロットである。
【
図15】いくつかの実施形態による動作を実行するための変圧器監視システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
次に、本発明の考え方を、本発明の考え方の実施形態の例を示している添付の図面を参照して、以下でさらに充分に説明する。しかしながら、本発明の考え方は、多数の異なる形態で具体化可能であり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものになり、本発明の考え方の範囲を当業者に充分に伝えるように提供される。また、これらの実施形態が相互に排他的ではないことに留意されたい。或る実施形態からの構成要素を、とくに示されなくても、別の実施形態に存在する/使用されると推定することができる。
【0028】
以下の説明は、本開示の主題のさまざまな実施形態を提示する。これらの実施形態は、教示例として提示されており、本開示の主題の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。例えば、記載された実施形態の特定の詳細を、記載された主題の範囲から逸脱することなく、修正、省略、または拡張することが可能である。
【0029】
実施形態は、電気設備のコンポーネントの状態を、コンポーネントの診断パラメータ値の予測誤差の変化を検出することによって判断する方法を含む。例えば、予測誤差値を、電気設備の少なくとも1つのコンポーネントに関して、所定の期間にわたる複数の予測診断パラメータ値について決定することができる。さらに、予測誤差値は、少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲変動を抑制することができ、したがって、より安定かつ/または信頼性の高い判断をもたらすことができる。本明細書において使用されるとき、「周囲変動」という用語は、例えば、環境温度、ノイズ、振動、湿度、空間/表面電荷の影響、コンポーネントの温度、流体圧力(例えば、シール部品または変圧器のハウジングにおけるガス漏れ)、振動、電気負荷、および/または特殊要因による変動などの周囲条件に起因する変動を指す。
【0030】
決定された予測誤差値を、予想予測誤差値と比較することができる。比較に基づいて、コンポーネントの状態の表示を選択的に生成することができる。
【0031】
説明の目的のために、本明細書に記載される例の多くは、本明細書に開示された特徴を使用した高電圧変圧器用のブッシングまたは他の絶縁コンポーネントの状態の判断に関する。しかしながら、本開示および特許請求の範囲が、そのように限定されず、本明細書で提供される特定の例を超えて広範囲の適用性を有することを理解されたい。本明細書において使用されるとき、「診断パラメータ値」という用語は、電気設備の任意のパラメータを指すことができる。
【0032】
本開示の実施形態の特徴を説明する前に、
図1A~
図1Cが、絶縁コンポーネントの診断パラメータのいくつかの例を示している。
図1Aは、1対の金属プレート102を隔てる絶縁体100を示している。
図1Bの回路図によって示されるように、電圧Vが絶縁体100をまたいで印加されるとき、総電流iは、自然容量性電流i
Cの成分と、抵抗損失電流i
Rの成分との間で分割される。例えば損傷していない正常に機能している絶縁体100の場合、i
Cは、損失電流i
Rと比べてきわめて大きいはずである。結果として、2つのパラメータ間の比が、絶縁体100の実際の状態または品質の信頼できる指標となり得る。
図1Cのベクトル図によって示されるように、いくつかのパラメータを、このようにして測定または導出することができる。例えば、容量性電流i
Cと総電流iとの間の角度δが、誘電正接(tanδ)を定め、tanδ=i
R/i
Cである。損失電流i
Rと総電流iとの間の余角φが、力率(cosφ)を定め、cosφ=i
R/iである。δが小さい高品質の絶縁体100の場合、誘電正接および力率はきわめて小さくなり、数値的にきわめて近くなる。
【0033】
しかしながら、絶縁体100が、プレートの短絡、プレートの穿刺、空隙、水分、および/または粒子汚染などの欠陥を含む場合、例えば、容量性電流および総電流に対する損失電流の割合が著しく高い。結果として、静電容量、容量性電流、誘電正接、および力率はすべて、絶縁体100の状態を判断するための有用な診断パラメータである。
【0034】
例えば変圧器ブッシングなどの絶縁コンポーネントに関する多数の従来の診断技術は、変圧器を切り離してオフラインで静電容量、力率、および/または他の診断パラメータを測定することを必要とする。変圧器がオンラインである間にこれらの診断パラメータを測定することは可能であるが、これは、典型的には、測定されるパラメータ値に周囲条件(例えば、環境条件、温度、ノイズ、振動、特殊要因による変動、など)に起因する変動などの多数の変動を持ち込み、正確な読み取り値を取得することを困難にし、したがって変圧器がオンラインである間にブッシングまたは他の絶縁コンポーネントの問題を検出することを困難にする。
【0035】
この問題に対処するために、いくつかの実施形態によれば、複数の予測診断パラメータ値が、所定の期間にわたって取得され、対応する複数の実際の診断パラメータ値が、同じ期間にわたって取得される。予測診断パラメータ値が実際の診断パラメータ値と比較され、予測診断パラメータ値の予測誤差値が取得される。次いで、この予測誤差値が、予想予測誤差値と比較され、変圧器または他の電気設備をオフラインにする必要なく、絶縁コンポーネントの状態が正確に判断される。
【0036】
予測診断パラメータ値、予測誤差値、および予想予測誤差値を、いくつかのやり方で取得することができる。例えば、いくつかの実施形態において、予想予測誤差値を、履歴データに基づいて診断パラメータ値を予測するように機械学習モデルを訓練することによって取得することができる。例えば、訓練は、複数の以前に取得された診断パラメータ値のうちの所定の数の診断パラメータ値と、複数の以前に取得された診断パラメータ値のうちの少なくとも1つの後続のパラメータ値との間の複数の関係を決定することに基づくことができる。以前に取得された診断パラメータ値は、所望に応じて、同じコンポーネントから取得されていても、異なるコンポーネントから取得されていてもよい。
【0037】
次いで、訓練された機械学習モデルは、例えば、複数の決定された関係に基づいて、正常に機能していることが知られている絶縁コンポーネントの複数の診断パラメータ値を予測し、それらの予測値を、正常に機能している絶縁コンポーネントの対応する複数の実際の診断パラメータ値と比較することができる。次いで、得られた予測誤差値を、現場における絶縁コンポーネントの将来の測定値に関する予想予測誤差値として使用することができる。
【0038】
機械学習モデルは、同様に、例えば接続されてオンラインである変圧器の高電圧ブッシングなどの現場の絶縁コンポーネントについて、或る期間にわたって予測診断パラメータ値を取得することができる。予測診断パラメータ値を対応する実際の診断パラメータ値と比較することで、予測誤差値が取得され、次いで、予測誤差値が予想予測誤差値と比較され、絶縁コンポーネントの実際の状態が判断される。正常に機能しているコンポーネントの場合、予測誤差値は、予想予測誤差値にきわめて近いはずであるが、損傷したコンポーネントまたは機能不全のコンポーネントの場合、予測誤差が、予想予測誤差値と比較して桁違いに増加する可能性があり、電気設備をオフラインにすることなく問題をきわめて迅速かつ確実に検出することが可能になる。
【0039】
これらの実施形態および他の実施形態は、いくつかのやり方でコンポーネントの挙動において観測される変動を抑制することができる。例えば、機械学習モデルが、その訓練プロセスの一部としてデータの変動を考慮することができ、予測診断パラメータ値を予測するときにこれらの変動を抑制することができる。これに代え、あるいは加えて、複数のデータ点の移動平均を使用して、これらの変動を抑制することができる。例えば、予測誤差値を、複数の予測診断パラメータ値(例えば、100個の診断パラメータ値)についての予測診断パラメータ値の平均値を、対応する実際の診断パラメータ値の平均値と比較することによって取得することができる。別の例においては、複数の誤差値(例えば、100個の誤差値)を、それぞれの複数の予測診断パラメータ値に関して取得し、次いで、複数の誤差値に関して、平均予測誤差値を計算することができる。
【0040】
次に、電気設備の予測診断パラメータ値の予測誤差に基づいて電気設備の状態を判断するためのいくつかの実施形態による動作200を示している
図2Aを参照する。この例において、動作200は、プロセッサ回路によって、電気設備の少なくとも1つのコンポーネントに関して所定の期間にわたる複数の予測診断パラメータ値の予測誤差値を決定することを含み、予測誤差値は、少なくとも1つのコンポーネントの挙動において観測される周囲変動を抑制する(ブロック208)。動作200は、決定された予測誤差値を予想予測誤差値と比較することをさらに含む(ブロック210)。動作200は、プロセッサ回路によって、比較に基づいて少なくとも1つのコンポーネントの状態の表示を選択的に生成することをさらに含む(ブロック212)。これらの動作200のいずれかまたはすべてを、例えば、以下でさらに詳細に説明される
図2Bの動作200’など、本明細書に開示される他の実施形態において使用できることも理解されたい。さらに、これらの動作200のいずれかまたはすべてを、例えば、後述の
図7で説明される予測誤差値を決定するための追加の動作など、本明細書に開示される他の動作と共に使用することが可能である。
【0041】
ここで
図2Bを参照すると、電気設備の予測診断パラメータ値の予測誤差に基づいて電気設備の状態を判断するためのいくつかの実施形態による動作200’のさらに詳細な例が示されている。
図2Bの個々の動作200’を説明する際に、これらの特徴および他の特徴の追加の動作および例を示している
図3~
図12Bも参照される。
【0042】
図2Bの動作200’は、電気設備のコンポーネントの予想予測誤差値を決定することを含むことができる(ブロック202’)。予想予測誤差値の決定は、いくつかのやり方で達成可能である。例えば、いくつかの実施形態においては、機械学習モデルを訓練して、正常に機能しているコンポーネントの診断パラメータ値を予測することができ、これらを実際の診断パラメータ値と比較して、例えば「ベースライン」予測誤差値などの予想予測誤差値を決定することができる。
【0043】
これに関して、
図3が、
図2Bの動作200’の一部として予想予測誤差値を決定するための追加の動作を示している。追加の動作は、履歴診断パラメータ値の時系列データを取得すること(ブロック302)と、時系列データをフラットファイルに変換すること(ブロック304)とを含むことができる。
【0044】
例えば、
図4Aが、高電圧変圧器ブッシングの履歴力率データ402のグラフプロット400である。
図4Aによって示されるように、履歴力率データ402の時系列データストリーム404が、例えばこの例では回帰モデルフラットテーブルであるが、複数の行408および列410を有するフラットファイル406に変換され、各行408は、履歴力率データ402内の連続する診断パラメータ値の並び(例えば、「移動窓」)に対応する。
【0045】
再び
図3を参照すると、追加の動作は、履歴データに基づいて診断パラメータ値を予測するように機械学習モデルを訓練することをさらに含むことができる(ブロック306)。例えば、
図4Bのフラットファイル406を機械学習モデルによって使用して、フラットファイル406の各行408に多変量回帰アルゴリズムを繰り返し適用することができ、最終列412を先行列に基づく入力の目標出力として、経時的にアルゴリズムを決定および改良することができる。しかしながら、変数(すなわち、予測子)の数の選択は、各々の個別の問題に依存することを理解されたい。各行408の変数の数を、例えば、感度、モデル精度、ハードウェアおよびソフトウェアの制約、ならびに他のパラメータについての追加のテストに基づいて決定および最適化することができる。
【0046】
図4Bのこのデータ変換技術の1つの利点は、単一の変数データセット(例えば、時間に対するtanδ)の多変量問題への変換であり、回帰または分類の用途に適した多数の機械学習モデルの使用を容易にする。そのような機械学習モデルの強みは、多数の事例(または、例)を含み、多数の特徴(あるいは予測子、または独立変数)も含む大きなデータセットから「学習」できるという事実にある。
【0047】
これらの予測技術および他の予測技術を診断パラメータデータと共に使用する1つの利点は、これらの技術が、温度、休日、イベント、などの他の外部パラメータを必要とせずに、経時的な履歴診断パラメータ値の比較的小さな単一変数データセットに基づいて、将来の診断パラメータ値のきわめて正確な予測を提供できることである。さらに、外部周囲条件によって持ち込まれる変動の多くの寄与が、これらの予測技術および他の予測技術の適用によって抑制されることにより、電気設備の実際の状態のより正確な表示を提供することができる。
【0048】
いくつかの実施形態においては、多数の異なる機械学習モデル(例えば、線形および非線形アルゴリズム)がフラット化データを使用して訓練され、結果が比較されて、最も高い精度の機械学習モデルが決定される。二乗平均平方根誤差(RMSE)、平均絶対誤差(MAE)、などの多数の異なる基準を使用して、精度を判断することができる。適切な線形機械学習モデルの例として、一般線形回帰、ロジスティック回帰(例えば、分類のための)、線形判別分析、などを挙げることができる。適切な非線形機械学習モデルの例として、分類および回帰ツリー、ナイーブベイジアン、K最近傍、サポートベクターマシン、などを挙げることができる。適切なアンサンブル機械学習モデルの例として、ランダムフォレスト、ツリーバギング、エクストリーム勾配ブースティングマシン、人工ニューラルネットワーク、などを挙げることができる。
【0049】
予測診断パラメータ値を、機械学習モデル、統計モデル、または任意の他の適切な技術を使用して予測することができる。例えば、ニューラルネットワークなどの教師付き、または教師なし機械学習モデルを使用して、データセット内の内在する関係を認識して、将来の値をより正確に予測することができる。別の例においては、自己回帰和分移動平均(「ARIMA」)などの統計モデルが、時系列における過去の値を考慮して、時系列における過去の値から学習することができ、したがって将来の値のより正確な予測をもたらす。しかしながら、任意のいくつかの予測技術が使用されてよく、開示される実施形態が、上記の例に限定されないことを理解されたい。多くの実施形態において、診断パラメータ値の予測の精度の向上は、より信頼性の高い予想予測誤差値をもたらすことができ、したがって予測誤差の予想外の増加の診断値を増加させることができる。しかしながら、本明細書に記載の実施形態において、電気設備の診断予測値の予測を可能にする任意の技術を使用できることを理解されたい。
【0050】
再び
図3を参照すると、次に、予測診断値が、履歴データの対応する実際の診断パラメータ値と比較され(ブロック308)、電気設備の複数の誤差値が取得される。この例において、予測診断値は、所定の期間の最中の特定の時点に対応し、対応する実際の診断パラメータ値は、同じそれぞれの時点に対応する。この例においては、複数の誤差値について平均誤差値が決定され(ブロック310)、これを後続の測定および比較のための予想予測誤差値として使用することができる。
【0051】
このようにして、機械学習モデルまたは他の適切な予測技術を使用して、いくつかの診断パラメータの予想予測誤差値を決定することができる。ここで、履歴力率データ(
図5Aおよび
図5B)および履歴静電容量データ(
図6Aおよび
図6B)について予想予測誤差値を決定する例を、以下で説明する。
【0052】
ここで
図5Aを参照すると、グラフプロット500が、正常に機能している変圧器ブッシングの或る期間にわたる複数の予測力率502および実際の力率504を示している。上述したように、予測力率502を、ニューラルネットワークなどの教師付き、または教師なし機械学習モデル、自己回帰和分移動平均(「ARIMA」)などの統計モデル、あるいは力率または他の診断パラメータ値を予測するための他の適切な技術を使用して予測することができる。実際の力率504は、対応する期間について変圧器ブッシングの測定値から測定または導出される。
【0053】
図5Bによって示されるように、予測力率502と実際の力率504との比較は、正常に機能している変圧器ブッシングについての複数の誤差値508のグラフプロット506を生成する。この例における複数の誤差値508の平均予測誤差510は、0.98%であり、これを、活線使用における変圧器ブッシングの将来の力率予測誤差決定と比較するための予想予測誤差値512として使用することができる。いくつかの実施形態においては、95パーセンタイル値514(すなわち、誤差値508のうちの最も大きい5%を除外した誤差値508のうちの最大値)、99パーセンタイル値516、などの別の値を予想予測誤差値として使用してもよい。
【0054】
これらの技術を使用して、容量性電流、誘電正接、および/または力率、などの他の診断パラメータについても、予想予測誤差値を決定することができる。これに関して、
図6Aが、或る期間にわたる変圧器ブッシングの予測静電容量602と実際の静電容量604との比較を示すグラフプロット600である。
図6Bが、正常に機能している変圧器ブッシングについての予測静電容量602と実際の静電容量604との比較によって生成された複数の誤差値608のグラフプロット606である。この例における複数の誤差値608の平均予測誤差610は、0.0043%であり、これを、活線使用における変圧器ブッシングの将来の静電容量予測誤差決定と比較するための予想予測誤差値612として使用することができる。上述したように、所望に応じて、95パーセンタイル値614、99パーセンタイル値616、などの別の値を使用することも可能である。
【0055】
再び
図2Bを参照すると、動作200’は、例えば、上述の訓練された機械学習モデルを用いて、所定の期間にわたって複数の予測診断パラメータ値を予測すること(ブロック204’)をさらに含むことができる。動作200’は、所定の期間に関する複数の実際の診断パラメータ値を取得すること(ブロック206’)をさらに含むことができ、それらは、例えば対応する期間についての変圧器ブッシングの測定値から測定または導出することが可能である。
【0056】
動作200’は、複数の予測診断パラメータ値の予測誤差値を、例えば予測診断パラメータ値を実際の診断パラメータ値と比較することによって決定すること(ブロック208’)をさらに含むことができる。これに関して、
図7が、
図2Bの動作の一部として予測誤差値を決定するためのいくつかの実施形態による追加の動作を示している。
【0057】
図7の追加の動作は、機械学習モデル(ブロック702)または他の適切な予測技術を使用して複数の診断パラメータ値を予測することをさらに含むことができる。対応する複数の実際の診断パラメータ値も取得される(ブロック704)。この点に関して、
図8Aが、現場の変圧器ブッシングについての経時的な予測静電容量802および実際の静電容量804を示すグラフプロット800である。この例において、予測診断値は、所定の期間の最中の特定の時点に対応し、対応する実際の診断パラメータ値は、同じそれぞれの時点に対応する。この例において、
図6Aの正常に機能している変圧器ブッシングの予測静電容量602を決定するために使用された訓練された機械学習モデルが、
図8Aの現場の変圧器ブッシングの予測静電容量802を予測するためにも使用される。この例に関して、実際の静電容量804の比較的小さいが突然の増加818(例えば、1pF)が、時間Tにおいて生じる。
【0058】
図7の追加の動作は、予測診断パラメータ値を、取得した実際の診断パラメータ値と比較して、複数の誤差値を決定することをさらに含むことができる。この点に関して、
図8Bが、現場の変圧器ブッシングについて
図8Aに示した予測静電容量802と実際の静電容量804との比較によって生成された複数の誤差値808のグラフプロット806である。
図8Aに示される実際の静電容量804の急激な増加818により、誤差値808も、時間Tにおいて大きな持続的な増加820を示す。
【0059】
図7の追加の動作は、複数の誤差値の平均誤差値を決定すること(ブロック708)をさらに含むことができる。例えば、
図8Bに示されるように、この例における複数の誤差値808の平均予測誤差810は、誤差値808の急激な増加820の結果として、0.0435%である。このようにして、平均予測誤差810は、予想挙動、すなわち予測静電容量802からの観測された挙動の逸脱、すなわち実際の静電容量804の突然の増加818を表す。上述したように、所望に応じて、95パーセンタイル値814、99パーセンタイル値816、などの別の値を使用することも可能である。
【0060】
再び
図2Bを参照すると、動作200’は、決定された予測誤差値を予想予測誤差値と比較すること(ブロック210)をさらに含むことができる。例えば、
図8Bの平均予測誤差810(すなわち、平均誤差値)を、正常に機能している変圧器ブッシングについて
図6Bで決定された予想予測誤差値612と比較することができる。この例において、0.0435%という平均予測誤差810は、静電容量の増加818が絶対値という意味では比較的小さな大きさであるにもかかわらず、0.0043%という予想予測誤差値612の約10倍である。これは、現場の変圧器ブッシングによる異常な挙動(すなわち、静電容量の急激な増加)の明確かつ容易に検出される表示を表す。この例および他の例において、実際の診断パラメータ値の著しい逸脱が、検出および監視することができる予測誤差の対応する増加をもたらし得る。
【0061】
この点に関し、再び
図2Bを参照すると、動作200’は、比較に基づいて少なくとも1つのコンポーネントの状態の表示を選択的に生成すること(ブロック212)をさらに含むことができる。例えば、いくつかの実施形態において、予測誤差しきい値を、予想予測誤差値に基づいて決定することができ、予測誤差値が所定の予測誤差しきい値を満たすと判断されたときに、警告表示を選択的に生成することができる。これに代え、あるいは加えて、予測誤差値が所定の予測誤差しきい値を満たさないときに、表示を選択的に生成することも可能である。
【0062】
いくつかの例において、予測誤差しきい値は、特定の値または値の範囲であってよい。表示は、所望に応じて、特定の値または値の範囲の表示、例えば「良好または不良」、「イエスまたはノー」、レベル1、2、3、などの分類の種類の表示、あるいは任意の他の適切な表示を含むことができる。
【0063】
本明細書に開示される実施形態は、他の種類の異常な挙動も検出および表示することができる。例えば、
図9Aが、実際の静電容量が経時的に線形増加918を示す変圧器ブッシングについて、予測静電容量902と実際の静電容量904との比較を示すグラフプロット900である。
図9Bによって示されるように、静電容量のこの比較的小さい線形増加918(例えば、3pF)は、対応する誤差値908の測定可能な増加920ももたらし、結果として、平均予測誤差910は、0.0043%である予想予測誤差値612(
図6Bに示されている)の9倍を超える0.0408%である。上述したように、所望に応じて、95パーセンタイル値914、99パーセンタイル値916、などの別の値を使用することも可能である。
【0064】
別の例において、
図10Aが、現場の変圧器ブッシングについての予測力率1002と実際の力率1004との経時的な比較を示すグラフプロット1000であり、実際の力率1004は、経時的に線形増加1018を示している。ここでもやはり、
図10Bによって示されるように、静電容量のこの線形増加1018は、対応する誤差値1008の測定可能な増加1020ももたらし、これは、(
図5Bに示される)0.98%の予想予測誤差値512よりもはるかに大きい2.36%の平均予測誤差1010をもたらす。上述したように、所望に応じて、95パーセンタイル値1014、99パーセンタイル値1016、などの別の値を使用することも可能である。
【0065】
上述したように、変圧器ブッシング(または、他のコンポーネント)について観測される挙動の変動を、いくつかのやり方で検出および/または抑制することができる。例えば、本明細書に開示の機械学習モデル例に関して上述したように、予測技術自体が、外部周囲条件によって持ち込まれる変動の多くを抑制することができる。例えば、予測技術を、周囲条件およびコンポーネントの通常の経年劣化に起因する変動、すなわち「健全な」変動と、損傷、過度の摩耗、または他の望ましくない変動などのコンポーネントに関する根本的な問題に起因する変動とを、区別するように訓練または構成することができる。これに代え、あるいは加えて、経時的に診断パラメータ値のセットの平均値を取得することによって、変動を抑制することも可能である。
【0066】
次に
図11を参照すると、予測診断パラメータ値の平均値および取得された予測誤差値の平均値に基づいて予測誤差を決定するためのいくつかの実施形態による動作1100。これらの動作1100を、例えば、予想予測誤差値の決定(ブロック202’)および/または複数の予測診断パラメータ値の予測誤差値の決定(ブロック208’)などの
図2Bの動作200’の一部として使用することができる。
【0067】
図11の動作1100は、複数の取得された診断パラメータ値に基づいて複数の平均の取得された診断パラメータ値を決定すること(ブロック1102)を含むことができる。例えば、
図12Aおよび
図12Bが、いくつかの実施形態による診断パラメータ値の時系列データストリーム1204からの複数の平均値(すなわち、移動平均)の計算を示している。
図12Aにおいて、力率値1202が、環境要因、温度、などの周囲条件に起因して経時的な変動を示す可能性がある時系列データストリーム1204から取得される。力率値1202は、測定値への周囲変動の影響をさらに低減する複数の平均力率値1206に変換される。この例においては、20個の取得された力率値1202からなる各セットが、単一の平均力率値1206を生成するために平均化される。
【0068】
いくつかの例においては、取得された診断パラメータ値の充分に大きなセットが、
図12Aの技術を使用して、使用可能な平均診断パラメータ値のセット(例えば、100個の時点に関する100個の値)を生むことができる。これに代え、あるいは加えて、機械学習モデル、統計モデル、または他の予測技術による使用のためのデータ点のより大きなセットを取得するために、取得された診断パラメータ値ごとに平均値を決定することが望ましい場合がある。これに関して、
図12Bが、時系列データストリーム1204から取得された力率値1202の複数の平均力率値1206’への変換を示しており、各々の平均力率値は、取得された力率値および系列内の先行の19個の取得された力率値に基づく。このようにして、各々の平均力率値1206’は、取得された力率値1202の変動を依然として抑制することができるが、予測技術による使用のための平均力率値1206’の数がはるかに多く、したがって予測技術の全体的な精度が向上する。
【0069】
図11の動作1100は、複数の取得された診断パラメータ値に基づいて複数の平均予測診断パラメータ値を予測すること(ブロック1104)をさらに含むことができる。例えば、上述の機械学習モデルまたは他の予測技術を使用して、複数の予測診断パラメータ値を決定することができる。次いで、例えば、
図12Aおよび/または
図12Bの同一または同様のプロセスを使用して、複数の予測診断パラメータ値に基づいて複数の平均予測診断パラメータ値を決定することができる。
【0070】
図11の動作1100は、
図3および
図7などに関して上述した技術と同様に、平均予測診断パラメータ値を平均履歴診断パラメータ値と比較して、複数の平均誤差値を取得すること(ブロック1106)と、複数の平均誤差値の平均予測誤差値を決定すること(ブロック1108)とをさらに含むことができる。
【0071】
図11の動作1100のさらなる応用が、
図13A~
図14Bの例によって示される。
図13Aは、正常に機能している変圧器ブッシングの複数の平均予測力率1302と実際の力率の複数の平均値1304との経時的な比較を示すグラフプロット1300である。この実施形態において、各々の平均予測力率データ点1318は、100個の予測力率サンプルの平均を表し(
図11のブロック1104を参照)、実際の力率の各々の平均データ点1320は、100個の対応する実際の力率サンプルの平均を表す(
図11のブロック1102を参照)。
図13Bのグラフプロット1306によって示されるように、平均誤差値1308は、複数の平均予測力率1302と実際の力率の複数の平均値1304との比較から取得される(
図11のブロック1106を参照)。例えば、上記の例と同様に、
図13Bの平均予測誤差1310が、複数の平均誤差値1308について計算される(
図11のブロック1108を参照)。この例において、平均予測誤差1310は、0.03%であり、これを、活線使用における変圧器ブッシングの将来の予測誤差決定と比較するための予想予測誤差値1312として使用することができる(例えば、
図3を参照)。上述したように、所望に応じて、95パーセンタイル値1314、99パーセンタイル値1316、などの別の値を使用することも可能である。この例において、平均誤差値1308の決定に先立って予測力率サンプルおよび実際力率サンプルのグループを平均することによって、変圧器ブッシングの観測された挙動における変動がさらに抑制され、この例における予想予測誤差が、この例においては0.98%(この例の移動平均技術を使用していない
図5Bを参照)から0.03%に低減される。予想予測誤差値1312、すなわちベースライン値のこの減少は、現場で設備を監視するときに予測誤差の増加を検出する可能性を高め、したがって設備の異常な挙動の検出可能性を高める。
【0072】
同様の移動平均技術を使用して、診断パラメータ値を予測し、現場の設備の予測誤差値を決定することができる(例えば、
図7を参照)。これに関して、
図14Aが、現場の変圧器ブッシングの複数の平均予測力率1402と実際の力率の複数の平均値1404との経時的な比較を示すグラフプロット1400である。この例において、
図13Aの正常に機能している変圧器ブッシングの平均予測力率1302を決定するために使用された訓練された機械学習モデルが、
図14Aの現場の変圧器ブッシングの複数の平均予測力率1402を予測するためにも使用される。この例において、実際の力率の複数の平均値1404は、経時的に線形増加1414を示す。
図14Bのグラフプロット1406によって示されるように、実際の力率の平均値1404のこの線形増加1414は、対応する誤差値1408の測定可能な増加1416ももたらし、結果として、平均予測誤差値1410は0.9%であり、0.03%という予想予測誤差値1312(
図14Bに示されている)の約30倍である。上述したように、所望に応じて、95パーセンタイル値1414、99パーセンタイル値1416、などの別の値を使用することも可能である。
【0073】
上述したように、上記の実施形態の多くは、静電容量、力率、などに関する診断パラメータに基づく絶縁コンポーネント(例えば、高電圧ブッシング)の状態の判断に関するが、本明細書に開示された実施形態が広範囲の用途を有することを理解されたい。例えば、静電容量に基づく診断パラメータに影響を及ぼす同じ周囲条件の多くが、例えば部分放電(PD)、油温、および/または溶存ガス分析(DGA)などの変圧器および他の電気設備の他の態様を検出および測定するための診断パラメータにも影響を及ぼし得る。本明細書に開示される実施形態から利益を得ることができる他の種類の電気設備として、接点(すなわち、物理的摩耗)、ガス漏れ、動作機構(例えば、移動時間)、などの状態を監視するための回路遮断器を挙げることができる。
【0074】
例えば、遮断器の移動時間の監視に関連する診断パラメータとして、アーク放電、絶縁ガス特性(例えば、ガス電気陰性度、ガス混合物)、負荷電流、スイッチングの瞬間、接点周辺の温度、六フッ化硫黄または他の冷却ガス中の空間電荷、接点間の瞬時電位差、負荷電流、負荷の種類(例えば、インピーダンス)、などのいくつかの周囲条件によって影響を受ける可能性がある遮断器接点が被る力を挙げることができる。これらの種々の診断パラメータの充分な量の履歴データを用いて、これらの予測技術および他の予測技術を、測定データに対する周囲条件の程度または影響に関係なく、コンポーネントの状態および予想される状態からの逸脱を検出するように訓練または構成することができる。
【0075】
ここで
図15を参照すると、変圧器監視システム1500のブロック図が示されている。この例における変圧器監視システム1500は、
図2、
図3、
図7、および/または
図11などの動作などのいくつかの実施形態による動作を実行するように構成される。変圧器監視システム1500の変圧器監視デバイス30は、1つまたは複数の変圧器10A、10Bを監視することができる。いくつかの実施形態において、変圧器監視デバイス30は、デバイスとして提供される変圧器10A内に統合され、変圧器10Aのみを監視することを可能にすることができるが、他の実施形態においては、変圧器監視デバイス30が、変圧器10Aを監視するとともに、随意により近傍の1つ以上の電気設備(例えば、変圧器10Bあるいは別の電力または電流変成器または回路遮断器)または接続された送電/配電線も監視し、あるいはこれらからデータを受信するように、変圧器10Aと統合されてもよい。さらに別の実施形態において、変圧器監視デバイス30は、監視対象の変圧器10A、10Bとは別個である。
【0076】
変圧器監視デバイス30は、プロセッサ回路34と、プロセッサ回路に結合した通信インターフェース32と、プロセッサ回路34に結合したメモリ36とを含む。メモリ36は、プロセッサ回路34によって実行されると、例えば
図2、
図3、
図7、および/または
図11の動作などの本明細書において図示および説明された動作のいくつかをプロセッサ回路34に実行させる機械可読コンピュータプログラム命令を含む。
【0077】
図示されるように、変圧器監視システム1500は、有線または無線通信チャネル14を介して、例えば変圧器10A、10B内のセンサ20などの他のデバイスとの通信を提供するように構成された通信インターフェース32(ネットワークインターフェースとも呼ばれる)を含む。変圧器監視デバイス30は、例えば変圧器10A、10Bに関連する電圧、電流、油温、周囲温度、などの変圧器10A、10Bの診断パラメータを表すセンサ20からの信号を受信することができる。
【0078】
この例において、変圧器監視デバイス30は、例えば、サーバ-クライアントモデル、クラウドベースのプラットフォーム、変電所において使用される変電所自動化システム、電力システム管理に使用される配電管理システム、または他のネットワーク構成において、通信チャネル14を介して変圧器10A、10Bの回路と通信する別個の監視デバイスとして示されている。クライアント-サーバ構成の1つの利点は、変圧器10A、10Bなどの複数の個別の設備について診断パラメータの監視および予測を取得することができることである。例えば、電力システム内の1つの電気設備に関する問題の診断は、異なる電気設備の状態の判断に基づいて、異なる電気設備の間で負荷を再分配することを含むことができる。しかしながら、他の実施形態において、変圧器監視デバイス30が、所望に応じて、変圧器10A、10Bまたは他の電気設備の一部であってもよいことも理解されたい。
【0079】
サーバ-クライアントモデルの別の実施形態において、変圧器監視システムは、監視対象の変圧器に関連するデバイス(例えば、クライアント)を有することができ、デバイスは、機械学習モデル、統計モデル、または他の予測ツールを備え、中央システム(例えば、サーバ)は、複数の電気設備/変圧器を監視するように構成される。さらに、サーバは、変圧器に関連するデバイスに含まれる機械学習モデルまたは他の予測ツールのインスタンスを含むことができる。サーバ内の機械学習モデルまたは他の予測ツールについて、変圧器または/および複数の電気設備から受信したデータで継続的に訓練、調整、適合、などを行うことができ、サーバは、サーバ内の予測ツールの調整/適合のための情報/データを提供する。さらに、サーバは、変圧器内の状態(例えば、変圧器に接続されたデバイスまたはセンサによって利用可能にされる静電容量および/または力率データに基づいて、変圧器ブッシングの故障または劣化)を予測/シミュレートし、そのような判断に関する情報を変圧器に接続されたデバイス(例えば、クライアント)に提供して、デバイスによって変圧器(または他の電気設備)に関連する少なくとも1つのパラメータ(例えば、冷却、出力、オンライン状態)を変更するために、シミュレーションまたは高度な処理を実行することが可能であってよい。種々の実施形態によれば、変圧器監視デバイス30は、診断パラメータ値を測定および予測し、変圧器に関連する少なくとも1つの活動を実行するための電子、計算、および通信ハードウェアおよびソフトウェアを含むことができる。
【0080】
また、変圧器監視デバイス30は、プロセッサ回路34(プロセッサとも呼ばれる)と、プロセッサ回路34に結合したメモリ回路36(メモリとも呼ばれる)とを含む。他の実施形態によれば、プロセッサ回路34は、別個のメモリ回路が不要であるように、メモリを含むように定められてもよい。
【0081】
本明細書で説明されるとおり、変圧器監視デバイス30および変圧器監視システム1500の他の態様の動作を、プロセッサ回路34および/または通信インターフェース32によって実行することができる。例えば、プロセッサ回路34は、通信インターフェース32を介して通信を1つ以上の他のデバイスに送信し、かつ/またはネットワークインターフェースを介して通信を1つ以上の他のデバイスから受信するように、通信インターフェース32を制御することができる。さらに、モジュールは、メモリ36に記憶されてよく、これらのモジュールは、モジュールの命令がプロセッサ回路34によって実行されると、プロセッサ回路34がそれぞれの動作(例えば、例示的な実施形態に関して本明細書で説明した動作)を実行するように、命令を提供することができる。例えば、モジュールを、診断パラメータ値を取得し、診断パラメータ値を予測し、予測誤差値を決定し、電気設備のコンポーネントの状態および/または状況を決定するようにさらに構成することができる。
【0082】
例えば高電圧変圧器であってよい変圧器10は、変圧器10の種々のコンポーネントの電圧、電流、動作負荷、周囲温度、水分、および/または酸素含有量など、変圧器10A、10Bに関連するさまざまな量を測定し、測定値を通信チャネル14を介して変圧器監視デバイス30に送信するセンサ20を含む。例えば、センサ30を、この例においては、ブッシング22または変圧器10の他の絶縁コンポーネントに関連する測定値を取得するように構成することができる。さらに、変圧器10は、電力線28(例えば、架空送電線)に結合した活線部分24、冷却システム26(例えば、変圧器またはリアクトル用)、などのサブシステムを含むことができ、これらは、例えば、プロセッサ回路34からの命令によって動作してよく、あるいはプロセッサ回路34からの命令に応答して動作してよい。
【0083】
この例および他の例において、説明を簡単にするために実施形態が変圧器の文脈において説明されているが、リアクトル、伝送線路、計器用変圧器、発電機、などの多数の他の種類の電気設備およびそのコンポーネントが、本明細書に記載の実施形態から利益を得ることができ、すべてのそのような電気設備が本開示の範囲に含まれると考えられるべきであることを理解されたい。
【0084】
これらの測定量を、変圧器10A、10Bの種々のコンポーネントまたはサブシステムにおける障害の存在、および/または変圧器10の一般的な障害状態を検出および/または判断するために、変圧器監視デバイス30によって使用することができる。通信チャネル14は、有線または無線リンクを含むことができ、いくつかの実施形態においては、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)あるいは4Gまたは5G通信ネットワークなどのセルラー通信ネットワークを含むことができる。
【0085】
変圧器監視システム1500は、変圧器10A、10Bから電圧、電流、動作負荷、温度、水分、酸素含有量、などのオンラインまたはオフライン測定値を受信し、測定値を処理して本明細書に記載の動作を実行することができる。変圧器監視システム1500を、サーバ、サーバクラスタ、クラウドベースのリモートサーバシステム、および/またはスタンドアロンのデバイスに実装することができる。センサデータを、変圧器監視システム1500によって、1つの変圧器および/または複数の変圧器から取得することができる。
【0086】
本明細書に記載の変圧器監視システム1500は、多数の異なるやり方で実装可能である。例えば、いくつかの実施形態による変圧器監視システム1500は、オンライン/オフラインデータを受信することができ、受信したデータは、種々の実施形態において説明した機械学習または他の予測技術によって使用される。デバイスは、診断パラメータ値および/または他の種類の測定データを受信するために、1つ以上の変圧器10に接続可能であってよい。
【0087】
本発明の考え方の種々の実施形態の上記の説明において、本明細書で使用される用語が、特定の実施形態を説明するという目的のためのものにすぎず、本発明の考え方を限定することを意図したものではないことを理解されたい。とくに定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明の考え方が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されている用語などの用語が、本明細書および関連技術の文脈におけるそれらの用語の意味に矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであることがさらに理解されよう。
【0088】
或る要素が別の要素に「接続される」、「結合する」、「応答する」、またはこれらの変種として称される場合、それは、直接的な接続、結合、または応答であっても、介在する要素が存在してもよい。対照的に、或る要素が別の要素に「直接接続される」、「直接結合する」、「直接応答する」、あるいはこれらの変種として称される場合、介在する要素は存在しない。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指している。さらに、本明細書において使用されるとき、「結合」、「接続」、「応答」、またはこれらの変種は、無線での結合、接続、または応答を含むことができる。本明細書において使用されるとき、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、文脈がそのようでないことが明らかでない限り、複数形も含むように意図される。周知の機能または構成は、簡潔さおよび/または分かりやすさの目的で、詳細には説明されない場合がある。用語「および/または」は、この用語に関連して挙げられたアイテムのうちの1つ以上からなるありとあらゆる組み合わせを含む。「AおよびBの少なくとも一方」という語句は、「AまたはB」または「AおよびB」を意味する。
【0089】
「第1の」、「第2の」、「第3の」、などの用語が、本明細書において種々の要素/動作を説明するために使用されるかも知れないが、これらの要素/動作がこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、或る要素/動作を別の要素/動作と区別するために使用されているにすぎない。したがって、いくつかの実施形態における第1の要素/動作を、本発明の考え方の教示から逸脱することなく、他の実施形態において第2の要素/動作と呼ぶことができる。同じ参照番号または同じ参照符号は、本明細書の全体を通して同一または類似の要素を指す。
【0090】
本明細書において使用されるとき、「・・・を備える(comprise)」、「・・・を備えている(comprising)」、「・・・を備える(comprises)」、「・・・を含む(include)」、「・・・を含んでいる(including)」、「・・・を含む(includes)」、「・・・を有する(have)」、「・・・を有する(has)」、または「・・・を有している(having)」という用語、あるいはこれらの変種は、オープンエンドであり、1つ以上の述べられた特徴、完全体、要素、ステップ、構成要素、または機能を含むが、1つ以上の他の特徴、完全体、要素、ステップ、構成要素、機能、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0091】
例示的な実施形態が、本明細書において、コンピュータによって実現される方法、装置(システムおよび/またはデバイス)、および/またはコンピュータプログラム製品のブロック図および/またはフローチャート図を参照して説明されている。フローチャート図および/またはブロック図のブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図のブロックの組み合わせを、1つ以上のコンピュータ回路によって実行されるコンピュータプログラム命令によって実現できることが理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ回路、専用コンピュータ回路、および/または他のプログラマブルデータ処理回路のプロセッサ回路に提供され、命令がコンピュータおよび/または他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行されることで、トランジスタ、メモリ位置に格納された値、およびそのような回路内の他のハードウェア構成要素が変換および制御されて、ブロック図および/またはフローチャートの1つ以上のブロックで指定された機能/動作を実行することにより、ブロック図および/またはフローチャートのブロックで指定された機能/動作を実施するための手段(機能)および/または構造が生成されるように、マシンを生み出すことができる。
【0092】
さらに、これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置を特定のやり方で機能するように導くことができる有形のコンピュータ可読媒体に記憶されてもよく、したがって、コンピュータ可読媒体に記憶された命令は、ブロック図および/またはフローチャートの1つ以上のブロックで指定された機能/動作を実施する命令を含む製品を生む。したがって、本発明の考え方の実施形態は、ハードウェア、ならびに/あるいは集合的に「回路」、「モジュール」、またはその変種と称されてよいデジタル信号プロセッサなどのプロセッサ上で実行されるソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード、などを含む)にて実現されてよい。
【0093】
いくつかの代替の実装形態において、ブロックに記載された機能/動作が、フローチャートに記載された順序とは異なる順序で行われてもよいことにも留意されたい。例えば、連続して示されている2つのブロックが、実際には、実質的に同時に実行されてもよく、あるいはそれらのブロックが、関連する機能/動作に応じて、時には逆の順序で実行されてもよい。さらに、フローチャートおよび/またはブロック図の所与のブロックの機能が、複数のブロックに分離されてもよく、さらには/あるいはフローチャートおよび/またはブロック図の2つ以上のブロックの機能が、少なくとも部分的に統合されてもよい。最後に、本発明の考え方の範囲から逸脱することなく、図示されているブロックの間に他のブロックを追加/挿入することができ、さらには/あるいはブロック/動作を省略することができる。さらに、図のいくつかは、通信の主な方向を示すために通信経路上に矢印を含んでいるが、通信が、描かれた矢印とは反対の方向に発生し得ることを理解されたい。
【0094】
本発明の考え方の原理から実質的に逸脱することなく、実施形態に対して多くの変形および修正を行うことができる。そのような変形および修正はすべて、本明細書において、本発明の考え方の範囲内に含まれることが意図されている。したがって、上記で開示された主題は、限定ではなく例示と見なされるべきであり、実施形態の例は、本発明の考え方の精神および範囲に含まれるすべてのそのような修正、強化、および他の実施形態を網羅することを意図している。したがって、法律によって許容される最大限の範囲で、本発明の考え方の範囲は、実施形態およびそれらの均等物の例を含む本開示の最も広い許容される解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限または限定されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
同様の移動平均技術を使用して、診断パラメータ値を予測し、現場の設備の予測誤差値を決定することができる(例えば、
図7を参照)。これに関して、
図14Aが、現場の変圧器ブッシングの複数の平均予測力率1402と実際の力率の複数の平均値1404との経時的な比較を示すグラフプロット1400である。この例において、
図13Aの正常に機能している変圧器ブッシングの平均予測力率1302を決定するために使用された訓練された機械学習モデルが、
図14Aの現場の変圧器ブッシングの複数の平均予測力率1402を予測するためにも使用される。この例において、実際の力率の複数の平均値1404は、経時的に線形増加1414を示す。
図14Bのグラフプロット1406によって示されるように、実際の力率の平均値1404のこの線形増加1414は、対応する誤差値1408の測定可能な増加1416ももたらし、結果として、平均予測誤差値1410は0.9%であり、0.03%という予想予測誤差値1312(
図13Bに示されている)の約30倍である。上述したように、所望に応じて、95パーセンタイル値1414、99パーセンタイル値1416、などの別の値を使用することも可能である。
【国際調査報告】