IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寧波吉利羅佑発動机零部件有限公司の特許一覧 ▶ 極光湾科技有限公司の特許一覧 ▶ 浙江吉利控股集団有限公司の特許一覧

特表2023-547021エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用
<>
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図1
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図2
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図3
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図4
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図5
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図6
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図7
  • 特表-エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20231101BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231101BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231101BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/28 301B
F01N3/28 J
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514060
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2021122422
(87)【国際公開番号】W WO2023050409
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523062903
【氏名又は名称】寧波吉利羅佑発動机零部件有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO GEELY ROYAL ENGINE COMPONENTS CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523062914
【氏名又は名称】極光湾科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】AUROBAY TECHNOLOGY CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 立峰
(72)【発明者】
【氏名】王 瑞平
(72)【発明者】
【氏名】沈 源
(72)【発明者】
【氏名】韋 虹
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ミャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】馬 金強
(72)【発明者】
【氏名】肖 逸閣
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB03
3G091BA07
3G091GB01W
3G091GB04Y
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB17X
3G091HA08
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148BA03X
4D148BA06X
4D148BA08X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA30Y
4D148BA31X
4D148BA33X
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB02
4D148BB17
4D148DA03
4D148DA11
4G169AA03
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA01C
4G169BA02C
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BA17
4G169BB06A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC41A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169CA03
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA27
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169EC28
4G169ED06
4G169EE06
4G169EE09
4G169FA02
4G169FA06
4G169FB14
4G169FC05
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用を提供し、酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、酸化触媒は、エンジン排気における還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、酸化部はエンジンの下流に位置し、三元転化部は酸化部の下流に位置し、本発明では、耐超高温の酸化触媒を三元触媒の上流に設置することにより、エンジン排気をまず酸化触媒で処理してから三元触媒で処理し、三元触媒処理プロセス中の燃焼による三元触媒の性能減衰を低減し、燃焼による高温の発生が三元転化反応及び三元触媒の構造及び性能に悪影響を及ぼすことを回避し、それによりシステムの三元転化機能の発揮を確保し、エンジンから排出された排気の浄化効率を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システムであって、耐高温酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、前記酸化触媒は、排気における還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、前記酸化部はエンジンの下流に位置し、前記三元転化部は前記酸化部の下流に位置する、
ことを特徴とするエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム。
【請求項2】
前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、且つ、
前記第1のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/g~1.2cc/gであること、
前記第1のアルミナ系材料の比表面積が130~180m/gであること、及び
前記第1のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が60m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の三元触媒転化システム。
【請求項3】
前記第1のアルミナ系材料はγ-アルミナを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項4】
前記第1のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第1のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は0~7%である、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項5】
前記酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量は0.06~1.0%である、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項6】
前記酸化部の数は少なくとも2つであり、隣接する2つずつの酸化部の間の距離は150mm以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項7】
前記酸化部は第1の担体と、第1の担体の表面に位置する第1の活性層とを含み、前記酸化触媒は前記第1の活性層内に存在する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の三元触媒転化システム。
【請求項8】
第1の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、
前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、
前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び
前記第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項9】
前記第1の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項10】
前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、前記酸化触媒におけるパラジウムの質量と前記第1の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項11】
前記第1の活性層の質量と前記第1の担体の体積との比は(100~200)グラム:1リットルである、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項12】
前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在する、
ことを特徴とする請求項1に記載の三元触媒転化システム。
【請求項13】
前記第2の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、
前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、
前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び
前記第2の活性層における三元触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項12に記載の三元触媒転化システム。
【請求項14】
前記三元触媒は多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属を含み、前記貴金属は白金、ロジウム及びパラジウムを含み、前記酸素貯蔵材料は前記多孔質基材内に充填され、前記ロジウムは前記酸素貯蔵材料に担持され、ロジウム以外の貴金属は、前記多孔質基材に担持されるか又は前記酸素貯蔵材料に担持される、
ことを特徴とする請求項1又は12に記載の三元触媒転化システム。
【請求項15】
前記酸素貯蔵材料はCeZrOを含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項16】
前記多孔質基材は第2のアルミナ系材料を含み、且つ、
前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/gより小さいこと、
前記第2のアルミナ系材料の比表面積が130m/g~240m/gであること、及び
前記第2のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が40m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項17】
前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.4cc/g~0.8cc/gである、
ことを特徴とする請求項16に記載の三元触媒転化システム。
【請求項18】
前記第2のアルミナ系材料はγ-アルミナ及び/又はθ-アルミナを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の三元触媒転化システム。
【請求項19】
前記第2のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第2のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は3%~7%である、
ことを特徴とする請求項16に記載の三元触媒転化システム。
【請求項20】
前記第2の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の三元触媒転化システム。
【請求項21】
前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在し、前記三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項22】
前記三元触媒はさらに白金を含み、ロジウムと白金との質量比は1:0~15であり、及び/又は、ロジウムとパラジウムとの質量比は1:2~15である、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の三元触媒転化システムのエンジン排気浄化処理での応用。
【請求項24】
前記エンジン排気は高酸素含有量のエンジン排気を含み、前記高酸素含有量のエンジン排気における酸素の体積含有率は1%以上である、
ことを特徴とする請求項23に記載の応用。
【請求項25】
前記エンジン排気は理論空燃比運転エンジン排気を含む、
ことを特徴とする請求項23又は24に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン後処理分野に関し、具体的にはエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
理論空燃比運転の自動車エンジンから排出された廃棄ガス(排気)にはHC、CO及びNOxなどの有害ガスが含有され、一般的には、三元触媒転化システム(TWCシステム)により除去され、現在のTWCシステムは三元触媒(TWC)の三元触媒転化機能に基づいて、排気内のHC、CO、NOxを二酸化炭素(CO)、窒素ガス(N)及び水に転化し、HC、CO及びNOxの除去を実現する。三元触媒の基本成分は主に、多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属であり、貴金属は主に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)であり、貴金属はTWCの活性成分であり、ここでPt及びPdの主な機能は、リーン排気(空燃比λ>1、排気酸素富化)の条件で炭素水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化を加速すること、及びリッチ排気(λ<1、排気希薄酸素)の条件でHCの水蒸気改質及びCOの水性ガス反応を触媒してHC及びCOを除去することであり、ロジウム(Rh)の主な機能は、理論空燃比(λ=1)及びリッチ(λ<1)排気の条件で窒素酸化物(NOx)を転化することであり、酸素貯蔵材料の基本的な機能は、λの値を小範囲で調節し、理論空燃比条件下での三元反応を維持するために、λ=1からの偏差を減少させることであり、酸素貯蔵材料は、その機能を効果的に発揮するために、一般的に貴金属と組み合わせることが必要であり、多孔質基材は、一般的に、疎で、大きな比表面積を有するアルミナ(Al)系材料であり、それは主に、貴金属を分散させ、触媒の活性及び安定性などの性能を保証するための負荷材料として機能する。Rhは高温でAlと反応して失効しやすいため、TWC触媒では、触媒の失効を回避するために、Rhは酸素貯蔵材料に担持され、酸素貯蔵材料はアルミナ系材料の表面に充填され、RhとAlを分離するという目的を達成する。
【0003】
一般的には、TWCの作動プロセスでは、酸素はHC、COなどの還元性成分と急速に反応し、大量の熱を放出してTWC温度を急激に上昇させ、特に酸素含有量の高い排気(例えば酸素の体積含有率が1%より大きく、さらには2~3%より大きい理論空燃比運転エンジンから生じた排気など)に対して三元触媒転化処理を行うとき、反応がより激しくなり、TWCをより高い温度に上昇させる。一方では、大量の燃焼反応はTWCのエンジン排気の流入端のTWC空間の大部分を占め、TWCの後端の部分だけが三元転化の役割を果たすことができ(即ち、TWCの大部分は、HC及びCOなどの還元性成分を燃焼すること及び酸素を消費することに用いられ、TWCのごく一部だけが三元転化機能を果たし、NOxを転化する)、TWC機能の発揮が制限され、他方では、燃焼により発生する高温は一般的には950℃以上と高く、TWCの転化温度窓(一般的には350~700℃)を超えて、三元転化反応に不利であり、NOxなどの有害ガスの転化効率に影響を与え、また、燃焼によりTWCで発生する高温はTWCを超高温(900~980℃)で作動させ、長時間超高温(例えば950℃)で動作すると、TWCのエージングを加速し、TWCの機能を著しく減衰させ、主に、(1)多孔質基材の細孔が崩壊すると共に、表面積が急激に減少し、TWCの全体構造及び性能に影響を与え、特に貴金属の一部が埋没し、触媒活性サイト数を減少させること、(2)酸素貯蔵材料がエージングし、貴金属との組み合わせが弱くなり、λに対する調節機能が減衰し、且つCOの水性ガスシフト反応及びHCの水蒸気改質機能が低下すると共に、Rhに対する保護機能が低下し、RhはAlと接触反応して失効しやすくなり、触媒によるNOxに対する触媒還元能力を著しく低下させること、(3)貴金属粒子が成長していき、TWCの三元触媒活性を減衰させることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に存在するTWCが過剰なHC及びCOなどの還元性成分を長時間触媒燃焼させることにより、温度が高くなりすぎて触媒性能が著しく損なわれたり、機能の発揮が制限されたりするという問題を少なくとも解決するために、エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様により提供されるエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システムは、耐高温酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、前記酸化触媒は、排気における還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、前記酸化部はエンジンの下流に位置し、前記三元転化部は前記酸化部の下流に位置する。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、且つ、前記第1のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/g~1.2cc/gであること、前記第1のアルミナ系材料の比表面積が130~180m/gであること、及び前記第1のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が60m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記第1のアルミナ系材料はγ-アルミナを含む。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記第1のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第1のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は0~7%である。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量は0.06~1.0%である。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化部の数は少なくとも2つであり、隣接する2つずつの酸化部の間の距離は150mm以上である。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化部は第1の担体と、第1の担体の表面に位置する第1の活性層とを含み、前記酸化触媒は前記第1の活性層内に存在する。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、第1の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び前記第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、前記酸化触媒におけるパラジウムの質量と前記第1の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の活性層の質量と前記第1の担体の体積との比は(100~200)グラム:1リットルである。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び前記第2の活性層における三元触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記三元触媒は多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属を含み、前記貴金属は白金、ロジウム及びパラジウムを含み、前記酸素貯蔵材料は前記多孔質基材内に充填され、前記ロジウムは前記酸素貯蔵材料に担持され、ロジウム以外の貴金属は、前記多孔質基材に担持されるか又は前記酸素貯蔵材料に担持される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記酸素貯蔵材料はCeZrOを含む。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記多孔質基材は第2のアルミナ系材料を含み、且つ、前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/gより小さいこと、
前記第2のアルミナ系材料の比表面積が130m/g~240m/gであること、及び前記第2のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が40m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.4cc/g~0.8cc/gである。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記第2のアルミナ系材料はγ-アルミナ及び/又はθ-アルミナを含む。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記第2のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第2のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は3%~7%である。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在し、前記三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記三元触媒はさらに白金を含み、ロジウムと白金との質量比は1:0~15であり、及び/又は、ロジウムとパラジウムとの質量比は1:2~15である。
【0027】
本発明の他の態様は、上記三元触媒転化システムのエンジン排気浄化処理での応用をさらに提供する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン排気は高酸素含有量のエンジン排気を含み、前記高酸素含有量のエンジン排気における酸素の体積含有率は1%以上である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン排気は理論空燃比運転エンジン排気を含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明により提供されるエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム(TWCシステム)は、エンジンから排出された排気をまず酸化触媒で処理し、酸素とHC及びCOなどの還元性成分とをまず酸化触媒の触媒作用下で燃焼させて酸素を除去し、三元触媒処理中の燃焼の程度を低減させ、燃焼が三元触媒の空間の大部分を占めること、及び燃焼による高温の発生が三元転化反応及び三元触媒の構造及び性能に悪影響を及ぼすことを回避し、それにより三元触媒の機能発揮を確保し、排気におけるHC、CO及びNOxなどの有害成分を効率的に除去し、本発明のTWCシステムにより処理された排気は目標排出基準を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】排気における酸素の濃度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
図2】酸化部の排気入口及び酸化部における触媒の温度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
図3】NMHC及びCOの転化率の酸化部における触媒のエージング時間に従う変化曲線のグラフである。
図4】NMHC及びCOの転化率のエージング時間に従う変化曲線のグラフである。
図5】エンジン排気が触媒システムにより処理された後のNOxの濃度の酸化部における触媒反応温度に従う変化曲線のグラフである。
図6】触媒システムNOxの転化率の酸化部における触媒反応温度に従う変化曲線のグラフである。
図7】本発明の一実施例における酸化部Bの排気入口温度、酸化部Bにおける酸化触媒の温度、酸化部Bの排気出口温度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
図8】本発明の一実施例における酸化部Bの排気入口の酸素濃度、酸化部Bの排気出口の酸素濃度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
当業者が本発明の態様をよりよく理解するために、以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明により提供されるエンジン排気浄化処理用のTWCシステムは、酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、酸化触媒は、排気における還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、酸化部はエンジンの下流に位置し、三元転化部は酸化部の下流に位置する。
【0034】
本発明では、三元転化部(三元触媒)は酸化部(酸化触媒)の下流/後端に位置し、即ちエンジンから排出された排気出口、酸化部、三元転化部は順次設置され、酸化部はエンジン排気の排出口と三元転化部との間に位置し、エンジンから排出された排気は酸化部及び三元転化部を順次流れるようにし、まず酸化部の酸化触媒で処理した後、三元転化部の三元触媒で処理して排気を浄化することを実現する。ここで、酸化触媒は酸素とHC、COなどの還元性成分との反応を触媒するために用いられ、排気における酸素の大部分及びHC、COなどの還元性成分を消費し、酸化触媒処理後の排気はさらに後端の三元触媒で処理され、三元触媒は三元転化(主に、HC、CO及びNOxを同時に転化する)に用いられ、三元触媒の処理プロセスでは、排気に残った酸素及びHC、COなどの還元性成分が少なく、燃焼の程度を低減させることができ、三元触媒が燃焼によって覆われることを回避してその三元転化機能を保証すると共に、高すぎる温度の発生を回避することができ、三元触媒が適宜の反応温度(350~700℃)で三元転化反応を行うようにし、また、高温の発生が三元触媒の構造及び性能に悪影響(例えば、多孔負荷材料の細孔が崩壊すること、貴金属の活性が低下すること、酸素貯蔵材料の機能が減衰することなど)を及ぼすことを回避して三元転化反応の効率及び耐久性能を向上させる。
【0035】
具体的に実施する場合、酸化触媒の後端に位置する三元触媒が350~700℃で動作すること(即ち、三元触媒処理プロセスにおける温度を約350~700℃に制御する)を満たすと共に、三元触媒が超高温(850~950℃)に長時間暴露されることを回避するために、エンジン排気組成などの要因に基づいて酸化触媒と三元触媒との間の距離又は両者の相対的な位置などの条件を調整することができる。
【0036】
また、まず排気を酸化触媒によって処理し、当該処理プロセスでは、酸化触媒によって排気におけるHC、COなどの還元性成分を酸素と反応するように触媒し、当該酸素の由来は、エンジンから生じた排気に含有される酸素(即ちエンジンから生じた排気に付属する酸素)であってもよく、又は必要に応じて酸化触媒の入口に酸素(排気中の過剰な還元剤の燃焼における二次空気噴射であって、コールドスタート段階での触媒の温度上昇を加速する)を導入し、それにより、排気におけるHC、COなどの還元性成分の大部分を消費し、三元触媒処理中に燃焼が起こり、高温が発生するなどの現象を回避し、三元触媒が適宜の反応温度(350~700℃)で三元転化反応を行うようにする。従って、いくつかの実施例では、酸化部のエンジン排気入口に連通している吸気管を含んでもよく、エンジンから生じた排気は酸化部の排気入口から酸化部に入り、当該吸気管は、酸化部に入った排気が酸化触媒で処理された後にHC、COなどの還元性成分の大部分を消費するように、酸化部に入った排気に空気(酸素)を入力し、当該吸気管にバルブがさらに設置され、酸化部に入った排気に酸素を入力する必要がない場合、空気の入力を停止し、酸化部に入った排気に酸素を入力する必要がある場合、空気を入力し、吸気管を介して酸化部に入った排気に空気(酸素)を入力する。
【0037】
酸化触媒の処理プロセス中の温度が相対的に高いが、一般的に1000℃(酸化触媒の組み合わせによって触媒が暴露される最高温度を制御することができる)を超えることはなく、上記酸化触媒は耐高温型酸化触媒であってもよく、具体的には1000℃~1100℃程度に耐える耐超高温型酸化触媒であってもよく、即ち、1000℃~1100℃程度の条件下では、酸化触媒の構造及び性能は基本的に安定し、例えば、基本的に細孔崩壊現象などは生じない。具体的には、当該酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、当該第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含んでもよく、当該第1のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/g~1.2cc/g(即ちcm/g)、例えば0.8cc/g、0.9cc/g、1cc/g、1.1cc/g、1.2cc/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、比表面積が130~180m/gであり、例えば130m/g、140m/g、150m/g、160m/g、170m/g、180m/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、且つ当該第1のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が60m/g以上であり、当該第1のアルミナ系材料を採用することで、酸化触媒の耐高温性及び安定性などの性能を向上させ、その触媒活性及び使用寿命をさらに確保することができる。
【0038】
具体的には、第1のアルミナ系材料はγ-アルミナを含んでもよく、それはドーピングされたアルミナ及び/又はドーピングされていないアルミナであってもよい。いくつかの実施例では、第1のアルミナ系材料には希土類元素が含有され、希土類元素の酸化物で、当該第1のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量が0~7%(即ち希土類元素の酸化物の質量が第1のアルミナ系材料の0~7%を占める)、例えば0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%であり、希土類元素の質量含有量が0である場合、第1のアルミナ系材料はドーピングされていないアルミナであり、希土類元素の質量含有量が0でない場合、第1のアルミナ系材料はドーピングされたアルミナ(又は希土類アルミナと呼ばれる)であり、比較して言うと、ドーピングされたアルミナを採用することで、アルミナ系材料の耐高温性能を向上させることに有利である。任意選択的に、希土類元素は例えばランタン(La)を含む。
【0039】
第1のアルミナ系材料は市販されているか又は自製であり、一般的には、アルミナ原料を高温エージング処理することにより、容易に崩壊する細孔を崩壊させて構造的に安定な耐高温アルミナ系材料を得ることができ、当該アルミナ系材料を高温条件に適用した場合に深刻な崩壊現象がほとんど生じないようにして、当該耐高温アルミナ系材料を基材として採用した酸化触媒の耐高温性能を向上させる。具体的には、いくつかの実施例では、第1のアルミナ系材料は以下のステップに従って製造されてもよく、アルミナ原料を1000℃~1500℃で少なくとも2時間エージング処理し、第1のアルミナ系材料を製造し、当該エージング処理によって製造された第1のアルミナ系材料は1000℃以下で良好な安定性を有し、それにより酸化触媒の耐高温性能を確保する。ここで、希土類元素がドーピングされていない第1のアルミナ系材料を製造する場合、上記アルミナ原料は、希土類元素がドーピングされていないアルミナ原料であり、希土類元素がドーピングされた第1のアルミナ系材料を製造する場合、上記アルミナ原料は、希土類元素がドーピングされたアルミナ原料であり、上記プロセスに使用されるアルミナ原料は市販されているか又は自製であり、本発明はこれについて特に制限しない。
【0040】
上記アルミナ系材料を1000℃~1500℃でエージング処理した後、浸漬法(例えば等体積浸漬法)などの当分野の常法によりパラジウムを第1のアルミナ系材料に担持して酸化触媒を得ることができる。具体的に実施する場合、パラジウム前駆体を第1の溶媒内に溶解して第1の浸漬液を製造し、当該第1の浸漬液を採用して第1のアルミナ系材料を浸漬し、例えば、第1のアルミナ系材料を当該第1の浸漬液に完全に浸入させるか、又は当該第1の浸漬液を第1のアルミナ系材料にスプレーして浸漬し、浸漬後に乾燥して、溶媒を除去し、即ち、パラジウムを第1のアルミナ系材料に担持して酸化触媒を得ることを実現し、ここで、第1の溶媒は水を含んでもよく、パラジウムの前駆体は、パラジウムの可溶性塩、例えば硝酸パラジウムを含んでもよい。また、酸化触媒中(又は後述する第1のコーティング層中)に、貴金属の安定性を高めるために、バリウム(Ba)などの貴金属を固定する機能を有する元素を添加してもよい。
【0041】
上記酸化部は、酸化触媒を担持するための第1の担体をさらに含んでもよく、即ち酸化触媒は当該第1の担体に設置され、いくつかの好ましい実施例では、酸化部は第1の担体と、第1の担体の表面に位置する第1の活性層とを含み、酸化触媒は第1の活性層内に存在する(即ち第1の活性層は上記酸化触媒を含む)。
【0042】
一般的には、第1の活性層はさらに接着剤及び/又は改質助剤を含み、酸化部の安定性などの性能をさらに向上させるように、接着剤はアルミペースト及び/又はシリカゲルを含んでもよく、改質助剤はセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含んでもよい。いくつかの実施例では、第1の活性層の総質量に基づいて、酸化触媒の質量パーセントは85%~98%(即ち第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が85%~98%である)、例えば85%、88%、90%、93%、95%、98%又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、余分は接着剤及び/又は改質助剤である。
【0043】
具体的に実施する場合、酸化触媒、接着剤及び/又は改質助剤と第4の溶媒とを混合してスラリーを製造し、さらに当該スラリーを第1の担体の表面に塗布し、乾燥などの処理を経た後、第1の担体の表面に上記第1の活物質層を形成することができる。
【0044】
任意選択的に、第1の担体の形成材料はセラミック(例えばコージェライトなど)、金属などのうちの少なくとも1つを含んでもよく、即ち、第1の担体はセラミック材料、金属などのうちの一種以上の混合物で形成されてもよく、当該第1の担体はガソリンパーティキュレートフィルター(GPF)であってもよく、ハニカム状の担体であってもよいが、これに限定されない。
【0045】
本発明の研究によれば、触媒酸化活性材料(即ち酸化触媒)の活性金属成分としてのパラジウムの含有量は酸化触媒の性能に影響を及ぼす重要な因子であり、いくつかの好ましい実施例では、酸化触媒の総質量に基づいて、パラジウムの質量パーセントは0.06~1.0%(即ち酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量が0.06~1.0%である)である。
【0046】
本発明では、酸化触媒を含有する上記酸化部の数は少なくとも1つであり、即ち1つであってもよいし、少なくとも2つ(即ち2つ以上の酸化触媒の組み合わせである)であってもよいが、酸化部の数が少なくとも2つの場合、隣接する2つの酸化部間の距離は、通常、150mm以上(当該距離はエンジン排気の流れ方向に沿った距離)である。ここで、隣接する2つの酸化部では、上流に位置する酸化部の酸化触媒におけるパラジウムの含有量は、下流に位置する酸化部の酸化触媒におけるパラジウムの含有量以下又はそれ以上であってもよく、具体的に実施する場合、必要に応じて設置してもよい。少なくとも2つの酸化部を組み合わせることにより、各酸化部が排気中の還元剤を部分的に酸化させ(一部の酸素を消費する)、非常に高い温度上昇が発生せず、即ち燃焼による熱を一定の間隔を有する2つの酸化触媒に分散させ、酸化部における酸化触媒が暴露される最高温度を制御することができ、エンジン排気の浄化処理効率及び耐久性をさらに向上させることに有利である。
【0047】
また、酸化触媒におけるパラジウムの質量と第1の担体の体積との比は、(3~50)グラム:1立方フィート(即ち(3~50)g/ft3)、例えば、3g:1立方フィート、5g:1立方フィート、10g:1立方フィート、20g:1立方フィート、30g:1立方フィート、40g:1立方フィート、50g:1立方フィート又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲であることを満たすこともでき、上記酸化触媒の処理効率を向上させることに有利である。
【0048】
さらに、第1の活性層の質量と第1の担体の体積との比は、(100~200)グラム:1リットル(即ち(100~200)g/L)、例えば、100g:1リットル、150g:1リットル、160g:1リットル、170g:1リットル、180g:1リットル、190g:1リットル、200g:1リットル又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲であってもよい。
【0049】
本発明は、当分野の通常の三元触媒(TWC)を採用することができ、いくつかの実施例では、三元触媒は多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属を含み、貴金属はパラジウム及びロジウムを含み、酸素貯蔵材料は多孔質基材内に充填され、ロジウムは酸素貯蔵材料に担持され、ロジウム以外の貴金属は、必要に応じて多孔質基材に担持されるか又は酸素貯蔵材料に担持されてもよく、パラジウムは多孔質基材に担持されるか又は酸素貯蔵材料に担持されてもよい。ここで、ロジウムが酸素貯蔵材料に担持されることは、ロジウムを保護し、それと多孔質基材などの他の成分との接触反応を低減することもできる。好ましくは、パラジウムは酸素貯蔵材料に担持され、より好ましくは、上記貴金属はいずれも酸素貯蔵材料に担持される。
【0050】
本発明は当分野の通常の方法を用いて、上記貴金属を酸素貯蔵材料又は多孔質基材に担持し、例えば浸漬法(例えば等体積浸漬法)などであり、例を挙げて言えば、ロジウム前駆体を第2の溶媒と混合して第2の浸漬液を製造し、さらに当該第2の浸漬液を採用して酸素貯蔵材料を浸漬することにより、ロジウムを酸素貯蔵材料に担持することを実現し、第2の溶媒は水を含んでもよく、ロジウム前駆体はロジウムの可溶性塩、例えば硝酸ロジウムであってもよく、白金前駆体を第3の溶媒と混合して第3の浸漬液を製造し、さらに当該第3の浸漬液を採用して多孔質基材を浸漬することにより、白金を多孔質基材に担持することを実現し、第3の溶媒は水を含んでもよく、白金前駆体は、白金の可溶性塩、例えば硝酸白金であってもよい。
【0051】
酸素貯蔵材料は、三元転化反応をほぼ理論空燃比で行うように、エンジン排気の触媒表面での空燃比(λ)を調節することができる。これにより、三元転化反応の効率を確保し、各成分の機能を発揮させる。いくつかの実施例では、酸素貯蔵材料はCeZrOを含んでもよく、さらにZrOを含んでもよく、即ちCeOとZrOとの組み合わせを含んでもよいが、本発明はこれに限定されない。多孔質基材は、貴金属などの成分を分散して三元触媒の分散及び触媒活性を保証するために用いられ、いくつかの実施例では、多孔質基材は第2のアルミナ系材料を含んでもよく、第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/gより小さく、一般的に好ましくは0.4cc/g~0.8cc/g、例えば0.4cc/g、0.5cc/g、6cc/g、7cc/g、8cc/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、その比表面積は130m/g~240m/g、例えば130m/g、140m/g、150m/g、160m/g、170m/g、180m/g、190m/g、200m/g、210m/g、220m/g、230m/g、240m/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、貴金属などの成分を多孔質基材に分散させ、三元触媒の性能を向上させることに有利である。また、当該第2のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積は一般的には40m/g以上である。
【0052】
具体的には、第2のアルミナ系材料はγ-アルミナ及び/又はθ-アルミナを含んでもよく、それはドーピングされたアルミナ及び/又はドーピングされていないアルミナであってもよく、ドーピングされたアルミナには一般的には希土類元素がドーピングされてもよい。いくつかの実施例では、第2のアルミナ系材料には希土類元素が含有され、希土類元素の酸化物で、当該第2のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量が3%~7%(即ち希土類元素の酸化物の質量が第2のアルミナ系材料の3%~7%を占める)、例えば3%、4%、5%、6%、7%又はそのうちのいずれか2つからなる範囲である。任意選択的に、希土類元素は例えばLaを含む。当該第2のアルミナ系材料は市販されているか又は自製であり、本発明はこれについて特に制限しない。
【0053】
上記三元転化部はさらに三元触媒を担持するための第2の担体を含んでもよく、即ち三元触媒は当該第2の担体に設置され、三元触媒は第2の担体にコーティング層を形成することができるが、これに限定されない。いくつかの好ましい実施例では、三元転化部は第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、三元触媒は第2の活性層内(即ち第2の活性層は上記三元触媒を含む)に存在する。
【0054】
一般的には、第2の活性層はさらに接着剤及び/又は改質助剤を含み、三元転化部の安定性などの性能をさらに向上させるように、接着剤はアルミペースト及び/又はシリカゲルを含んでもよく、改質助剤はセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含んでもよい。いくつかの実施例では、第2の活性層の総質量に基づいて、三元触媒の質量パーセントは85%~98%(即ち第2の活性層における三元触媒の質量含有量が85%~98%である)、例えば85%、88%、90%、93%、95%、98%又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、余分は接着剤及び/又は改質助剤である。
【0055】
具体的に実施する場合、三元触媒、接着剤及び/又は改質助剤と第5の溶媒とを混合してスラリーを製造し、さらに当該スラリーを第2の担体の表面に塗布し、乾燥などの処理を経た後、第2の担体の表面に上記第2の活物質層を形成することができる。
【0056】
任意選択的に、第2の担体の形成材料はセラミック(例えばコージェライトなど)、金属などのうちの少なくとも1つを含んでもよく、当該第2の担体は微粒子捕集フィルター(GPF)であってもよく、ハニカム状の担体であってもよいが、これに限定されず、第2の担体と第1の担体とは同じであっても異なってもよい。
【0057】
いくつかの実施例では、上記貴金属は白金を含み、ここで、ロジウムと白金との質量比は1:0~15であり、好ましくは1:0.5~8、例えば1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、ロジウムとパラジウムとの質量比は1:2~15、例えば1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であってもよい。ここで、白金は多孔質基材に担持されるか又は酸素貯蔵材料に担持されてもよい。
【0058】
いくつかの実施例では、三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は、(5~50)グラム:1立方フィート、例えば5g:1立方フィート、10g:1立方フィート、20g:1立方フィート、30g:1立方フィート、40g:1立方フィート、50g:1立方フィート又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲である。ここで、前記貴金属の質量は、三元触媒における全ての種類の貴金属の質量の和であり、例えば三元触媒における貴金属はロジウム、白金、パラジウムであり、従って当該貴金属の質量とは、三元触媒におけるロジウムの質量、白金の質量、パラジウムの質量の和である。
【0059】
本発明はさらに、上記TWCシステムのエンジン排気浄化処理での応用を提供する。本発明のエンジンは具体的には、燃料油エンジンであってもよく、その排気には炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの成分が含有され、応用中では、エンジンから生じた排気はエンジンの排気出口から排出し、そして酸化部の排気入口から酸化部に入り、酸化部で酸化触媒と接触し、酸化触媒の作用下で、排気におけるHC、COなどの還元性成分を酸素と反応させ、そして酸化部の排気出口から排出し、三元転化部の排気入口から三元転化部に入り、三元転化部内で三元触媒と接触して三元転化を行い、排気におけるHC、CO、NOxを二酸化炭素(CO)、窒素ガス(N)及び水に転化させれば、浄化排気を得、浄化排気は三元転化部の排気出口から排出される。
【0060】
本発明のTWCシステムは特に高酸素含有量のエンジン排気の処理に用いられてもよく、いくつかの実施例では、エンジン排気は高酸素含有量のエンジン排気を含み、当該高酸素含有量のエンジン排気における酸素の体積含有率は1%以上、例えば2%、2.5%、3%、3.5%など以上である。
【0061】
高酸素含有量の理論空燃比運転エンジンの排出廃棄ガス(排気)は、酸素(O)、NOxなどの酸化性成分と、HC、COなどの還元性成分を有し、且つ還元性成分はOの含有量と基本的に相当し(いずれも高含有量)、従来のTWCシステムでは、多量のOとHC及びCOなどの還元性成分とのTWCでの反応は、大量の熱を放出し、高温を生じ、TWCの三元触媒転化効率及び耐エージング性に影響を及ぼし、エンジン排気中の有害成分が基準に達して排出されないようにし、本発明の三元触媒転化システムを採用することにより、このような問題を効果的に解決することができ、いくつかの実施例では、上記エンジン排気は理論空燃比運転エンジン排気を含み、特に酸素の体積含有率が1%より大きい(1%よりもはるかに大きい場合を含む)高酸素含有量の理論空燃比運転エンジン排気であってもよい。
【0062】
具体的に言えば、当該高酸素含有量の理論空燃比運転エンジン排気における酸素(O)含有量が高く、また、HC、COなどの還元性成分の量もOと基本的に相当するため、従来のTWC処理プロセスにおいてより燃焼しやすく、同時に高温(さらには850~980℃より高い)を生じ、高温(>850℃)で長時間運転すると、TWCの構造破壊を引き起こし、TWCの機能発揮に影響を与え、本発明の触媒システムは特に、高酸素含有量の理論空燃比運転排気が、超高触媒温度を引き起こすなどの問題を解決し、TWCの耐高温限界を超えるエンジン排気の後処理システムに用いることができる。
【0063】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施例と組み合わせて本発明の技術案を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部であり、実施例の全てではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造な労働をしない前提で得た全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
(実施例1)
【0064】
本実施例では、三元触媒転化システムは、酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、酸化触媒は、排気におけるHC、COなどの還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、酸化部はエンジンの下流に位置し、三元転化部は酸化部の下流に位置し、ここで、
酸化部は第1の担体、及び第1の担体の表面に位置する第1の活性層からなり、第1の活性層は酸化触媒及び接着剤を含み、第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が90~98%であり、余分が接着剤であり、接着剤はアルミペースト及びシリカゲルであり、第1の担体はコージェライトであり、第1の活性層の質量と第1の担体の体積との比は160グラム:1リットルであり、
酸化触媒は第1のアルミナ系材料と、第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、当該酸化触媒は、硝酸パラジウムを等体積浸漬法によって第1のアルミナ系材料に浸漬させることによって製造され、第1のアルミナ系材料は、佰哲星エネルギー有限公司からの耐高温希土類アルミナ(ここでのアルミナはγ-アルミナである)であり、その細孔容積(Pore Volume)は約0.94cc/gであり、比表面積(Surface Area)は約169.4m/gであり、1200℃で4時間エージングした後の比表面積は約61.23m/gであり、それに含まれる希土類元素はLaであり、Laの酸化物(La)で、第1のアルミナ系材料におけるLaの質量含有量は約4%であり、
酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量は約0.22%(酸化触媒1リットル当たりには0.353gのパラジウムが含まれる)であり、酸化部では、酸化触媒におけるパラジウムの質量と第1の担体の体積との比は10グラム:1立方フィートであり、
三元触媒は第2の担体、及び第2の担体の表面に位置する第2の活性層からなり、第2の活性層は三元触媒及び接着剤を含み、第2の活性層における三元触媒の質量含有量が90~98%であり、余分が接着剤であり、接着剤はアルミペースト及びシリカゲルであり、第2の担体はコージェライトであり、
三元触媒は第2のアルミナ系材料、CeZrO及び貴金属からなり、貴金属はロジウム及びパラジウムからなり、ロジウム及びパラジウムはCeZrOに担持され、CeZrOは第2のアルミナ系材料内に充填され、第2のアルミナ系材料は佰哲星エネルギー有限公司からの希土類アルミナ(ここでのアルミナはγ-アルミナである)であり、その細孔容積(Pore Volume)は約0.49cc/gであり、比表面積(Surface Area)は約145m/gであり、1000℃で4時間エージングした後の比表面積は約110m/gであり、それに含まれる希土類元素はLaであり、Laの酸化物(La)で、第2のアルミナ系材料におけるLaの質量含有量は約4%であり、
三元転化部では、三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は10グラム:1立方フィートであり、ここで、ロジウム、パラジウムの質量比は3:7である。
(応用実施例)
【0065】
以下、エンジンベンチ試験により上記触媒システムの性能を検証し、実験プロセスでは、排気はエンジンから排出された後に順次酸化部及び三元転化部を流れ、プロセスを以下のように簡単に説明し、エンジンから生じた排気はエンジンの排気出口から排出された後、酸化部の排気入口から酸化部に入り、酸化部で酸化触媒と接触し、その中の酸素が還元性成分と酸化還元反応を行うようにし、そして酸化部の排気出口から排出し、三元転化部の排気入口から三元転化部に入り、三元転化部で三元触媒と接触して三元転換を行った後、三元転化部の排気出口から排出すれば、浄化排気を得る。上記プロセスをそれぞれ参照して以下の実験1~実験3、比較実験1及び比較実験2を行う。
以下の実験において、NMHCの転化率=((模擬排気におけるNMHCの量-酸化部反応を経て酸化部排気出口から排出された排気におけるNMHCの量)/模擬排気におけるNMHCの量)×100%であり、CO転化率=((模擬排気中のCO量-酸化部反応後に酸化部排気出口から排出された排気中のCO量)/模擬排気中のCO量)×100%であり、
高酸素含有量の理論空燃比運転エンジン排気をシミュレートし(模擬排気)、排気における酸素の濃度(体積含有率)のエンジン出力に伴う変化曲線を図1に示し、NMHCとCOの含有量は酸素と基本的に相当し、酸化部の排気入口の温度のエンジン出力に伴う変化曲線、酸化部における温度のエンジン出力に伴う変化曲線を図2に示し(酸化部の温度が800℃以上(800~950℃の間)と高く、TWCの転化温度窓(350~700℃)を超える)、ここで、図2は実験1及び比較実験1の酸化部における温度のエンジン出力に伴う変化曲線を示し、以下の残りの実験において、特に説明しない場合、酸化部における反応温度はこれと類似する。
【0066】
比較実験1:酸化部の酸化触媒は通常のTWCであり(それと実施例1の三元触媒との違いは以下のとおりであり、貴金属の質量と第2の担体の体積との比が40グラム:1立方フィートであり、ここで、パラジウムとロジウムの質量比が7:1である)、図3に示すように、酸化部の酸化触媒の反応時間(又はエージング時間と呼ばれる)が制御される。酸化部におけるNMHCとCOの転化率(850℃で酸化触媒前後の雰囲気濃度変化を測定する)の転化率の酸化部におけるエージング時間に従う変化曲線(エンジンベンチ950℃で)(図3を参照する)を測定し、転化効率はエージング時間の増加に従って減衰し、300時間エージングした後、転化効率は顕著に減衰する。
【0067】
実験1:実施例1の酸化触媒を1050℃でエージングし、エージング後の触媒を酸化部の酸化触媒とし、実験1のプロセスを参照し、酸化触媒が1050℃で異なる時間(110~830時間)エージングした後のエージング触媒のNMHCとCOの転化率への影響を測定し、NMHCとCO(850℃で酸化触媒前後の雰囲気濃度変化を測定する)の転化率のエージング時間に伴う変化曲線(図4を参照する)を得て、NMHCとCOの転化率が比較的高く、且つエージング時間の増加に伴って安定する傾向が見られ、上記酸化触媒は良好な耐エージング性を有する。
【0068】
実験2:実施例1の酸化触媒を1050℃で830時間エージングした後、エージング後の触媒を酸化部の酸化触媒とし、酸化部の酸化触媒反応温度を図5及び図6に示すように制御し、触媒システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)浄化排気におけるNOxの濃度、NOxの転化率(浄化排気におけるNOxの量と酸化部に入る前の模擬排気におけるNOxの量との比)の反応温度に伴う変化曲線をそれぞれ図5及び図6に示すように測定し、酸化触媒は1050℃で830時間エージングした後に性能が安定し、触媒システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)浄化後の排気におけるNOxの濃度が<5ppmであり、排出要求を満たす。
【0069】
比較実験2:比較実験1のTWCを950℃で300時間エージングし、エージング後のTWCを酸化部の触媒とし、酸化部の反応温度を図5及び図6に示すように制御し、システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)浄化排気におけるNOxの濃度、NOxの転化率(排気における触媒システム処理前後のNOx変化量と酸化部に入る前の模擬排気におけるNOx量との比)の反応温度に伴う変化曲線をそれぞれ図5及び図6に示すように測定し、比較実験1のTWCは950℃で300時間エージングした後に性能減衰が顕著であり、触媒システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)が浄化した後のNOxの濃度は>15ppmであり、排出要求(<5ppm)より高い。
【0070】
実験3:実験1及び実験2の相違点は、以下のとおりであり、実験3における酸化部の数は2つであり、それぞれ酸化部A及び酸化部Bであり、酸化部Bは酸化部Aの上流に位置し(即ちエンジン排気はまず酸化部Bにおける酸化触媒によって処理された後に酸化部Aにおける酸化触媒によって処理される)、酸化部Aは上記実験1又は実験2における酸化部と同じであり(即ち実験1又は実験2の酸化部の上流に1つの酸化部Bを添加することに相当する)、酸化部Bの酸化触媒におけるパラジウムの質量と第1の担体の体積との比は3グラム:1立方フィートであり、その他の条件は酸化部Aと同じであり、
【0071】
実験2のプロセスを参照して実験を行って測定された酸化部Bの排気入口温度、酸化部Bにおける酸化触媒の温度、酸化部Bの排気出口温度のエンジン出力に従う変化曲線は図7に示すとおりであり、酸化部Bの排気入口の酸素濃度、酸化部Bの排気出口の酸素濃度のエンジン出力に従う変化曲線は図8に示すとおりである。酸化部Bの酸化触媒は、排気中の還元剤を部分的に酸化し、排気中の酸素の一部を消費するため、下流側の酸化部Aの酸化触媒における排気の酸化還元反応を効果的に弱めることができ、且つ酸化還元反応によって熱が発生することによる触媒温度の上昇を抑制することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の精神と原則内で行われる任意の修正、同等の置換、及び改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン排気後処理システムの分野に関し、具体的にはエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
理論空燃比運転の自動車エンジンから排出された廃棄ガス(排気)にはHC、CO及びNOxなどの有害ガスが含有され、一般的には、三元触媒転化システム(TWCシステム)により除去され、現在のTWCシステムは三元触媒(TWC)の三元触媒転化機能に基づいて、排気内のHC、CO、NOxを二酸化炭素(CO)、窒素ガス(N)及び水に転化し、HC、CO及びNOxの除去を実現する。三元触媒の基本成分は主に、多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属であり、貴金属は主に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)であり、貴金属はTWCの活性成分であり、ここでPt及びPdの主な機能は、リーン排気(空燃比λ>1、排気酸素富化)の条件で炭素水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化を加速すること、及びリッチ排気(λ<1、排気希薄酸素)の条件でHCの水蒸気改質及びCOの水性ガス反応を触媒してHC及びCOを除去することであり、ロジウム(Rh)の主な機能は、理論空燃比(λ=1)及びリッチ(λ<1)排気の条件で窒素酸化物(NOx)を転化することであり、酸素貯蔵材料の基本的な機能は、λの値を小範囲で調節し、理論空燃比条件下での三元反応を維持するために、λ=1からの偏差を減少させることであり、酸素貯蔵材料は、その機能を効果的に発揮するために、一般的に貴金属と組み合わせることが必要であり、多孔質基材は、一般的に、多孔質で、大きな比表面積を有するアルミナ(Al)系材料であり、それは主に、貴金属を分散させ、触媒の活性及び安定性などの性能を保証するための負荷材料として機能する。Rhは高温でAlと反応して失効しやすいため、TWC触媒では、触媒の失効を回避するために、Rhは酸素貯蔵材料に担持され、酸素貯蔵材料はアルミナ系材料の表面に充填され、RhとAlを分離するという目的を達成する。
【0003】
一般的には、TWCの作動プロセスでは、酸素はHC、COなどの還元性成分と急速に反応し、大量の熱を放出してTWC温度を急激に上昇させ、特に酸素含有量の高い排気(例えば酸素の体積含有率が1%より大きく、さらには2~3%より大きい理論空燃比運転エンジンから生じた排気など)に対して三元触媒転化処理を行うとき、反応がより激しくなり、TWCをより高い温度に上昇させる。一方では、大量の燃焼反応はTWCのエンジン排気の流入端のTWC空間の大部分を占め、TWCの後端の部分だけが三元転化の役割を果たすことができ(即ち、TWCの大部分は、HC及びCOなどの還元性成分を燃焼すること及び酸素を消費することに用いられ、TWCのごく一部だけが三元触媒転化機能を果たし、NOxを転化する)、TWC機能の発揮が制限され、他方では、燃焼により発生する高温は一般的には950℃以上と高く、TWCの転化温度窓(一般的には350~700℃)を超えて、三元転化反応に不利であり、NOxなどの有害ガスの転化効率に影響を与え、また、燃焼によりTWCで発生する高温はTWCを超高温(900~980℃)で作動させ、長時間超高温(例えば950℃)で動作すると、TWCのエージングを加速し、TWCの機能を著しく減衰させ、主に、(1)多孔質基材の細孔が崩壊すると共に、表面積が急激に減少し、TWCの全体構造及び性能に影響を与え、特に貴金属の一部が埋没し、触媒活性サイト数を減少させること、(2)酸素貯蔵材料がエージングし、貴金属との組み合わせが弱くなり、λに対する調節機能が減衰し、且つCOの水性ガスシフト反応及びHCの水蒸気改質機能が低下すると共に、Rhに対する保護機能が低下し、RhはAlと接触反応して失効しやすくなり、触媒によるNOxに対する触媒還元能力を著しく低下させること、(3)貴金属粒子が成長していき、TWCの三元触媒活性を減衰させることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に存在するTWCが過剰なHC及びCOなどの還元性成分を長時間触媒燃焼させることにより、温度が高くなりすぎて触媒性能が著しく損なわれたり、機能の発揮が制限されたりするという問題を少なくとも解決するために、エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様により提供されるエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システムは、耐高温酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、前記酸化触媒は、排気における還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、前記酸化部はエンジンの下流に位置し、前記三元転化部は前記酸化部の下流に位置する。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、且つ、前記第1のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/g~1.2cc/gであること、前記第1のアルミナ系材料の比表面積が130~180m/gであること、及び前記第1のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が60m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記第1のアルミナ系材料はγ-アルミナを含む。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記第1のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第1のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は0~7%である。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量は0.06~1.0%である。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化部の数は少なくとも2つであり、隣接する2つずつの酸化部の間の距離は150mm以上である。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化部は第1の担体と、第1の担体の表面に位置する第1の活性層とを含み、前記酸化触媒は前記第1の活性層内に存在する。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、第1の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び前記第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、前記酸化触媒におけるパラジウムの質量と前記第1の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記第1の活性層の質量と前記第1の担体の体積との比は(100~200)グラム:1リットルである。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び前記第2の活性層における三元触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記三元触媒は多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属を含み、前記貴金属は白金、ロジウム及びパラジウムを含み、前記酸素貯蔵材料は前記多孔質基材内に充填され、前記ロジウムは前記酸素貯蔵材料に担持され、ロジウム以外の貴金属は、前記多孔質基材に担持されるか又は前記酸素貯蔵材料に担持される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記酸素貯蔵材料はCeZrOを含む。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記多孔質基材は第2のアルミナ系材料を含み、且つ、前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/gより小さいこと、
前記第2のアルミナ系材料の比表面積が130m/g~240m/gであること、及び前記第2のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が40m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.4cc/g~0.8cc/gである。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記第2のアルミナ系材料はγ-アルミナ及び/又はθ-アルミナを含む。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、前記第2のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第2のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は3%~7%である。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、前記第2の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在し、前記三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、前記三元触媒はさらに白金を含み、ロジウムと白金との質量比は1:0~15であり、及び/又は、ロジウムとパラジウムとの質量比は1:2~15である。
【0027】
本発明の他の態様は、上記三元触媒転化システムのエンジン排気浄化処理での応用をさらに提供する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン排気は高酸素含有量のエンジン排気を含み、前記高酸素含有量のエンジン排気における酸素の体積含有率は1%以上である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン排気は理論空燃比運転エンジン排気を含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明により提供されるエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム(TWCシステム)は、エンジンから排出された排気をまず酸化触媒で処理し、酸素とHC及びCOなどの還元性成分とをまず酸化触媒の触媒作用下で燃焼させて酸素を除去し、三元触媒処理中の燃焼の程度を低減させ、燃焼が三元触媒の空間の大部分を占めること、及び燃焼による高温の発生が三元転化反応及び三元触媒の構造及び性能に悪影響を及ぼすことを回避し、それにより三元触媒の機能発揮を確保し、排気におけるHC、CO及びNOxなどの有害成分を効率的に除去し、本発明のTWCシステムにより処理された排気は目標排出基準を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】排気における酸素の濃度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
図2】酸化部の排気入口及び酸化部における触媒の温度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
図3】NMHC及びCOの転化率の酸化部におけるTWC触媒のエージング時間に従う変化曲線のグラフである。
図4】NMHC及びCOの転化率の酸化部における触媒のエージング時間に従う変化曲線のグラフである。
図5】エンジン排気が触媒システムにより処理された後のNOxの濃度の酸化部における触媒反応温度に従う変化曲線のグラフである。
図6】触媒システムNOxの転化率の酸化部における触媒反応温度に従う変化曲線のグラフである。
図7】本発明の一実施例における酸化部Bの排気入口温度、酸化部Bにおける酸化触媒の温度、酸化部Bの排気出口温度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
図8】本発明の一実施例における酸化部Bの排気入口の酸素濃度、酸化部Bの排気出口の酸素濃度のエンジン出力に従う変化曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
当業者が本発明の態様をよりよく理解するために、以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明により提供されるエンジン排気浄化処理用のTWCシステムは、酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、酸化触媒は、排気における還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、酸化部はエンジンの下流に位置し、三元転化部は酸化部の下流に位置する。
【0034】
本発明では、三元転化部(三元触媒)は酸化部(酸化触媒)の下流/後端に位置し、即ちエンジンから排出された排気出口、酸化部、三元転化部は順次設置され、酸化部はエンジン排気の排出口と三元転化部との間に位置し、エンジンから排出された排気は酸化部及び三元転化部を順次流れるようにし、まず酸化部の酸化触媒で処理した後、三元転化部の三元触媒で処理して排気を浄化することを実現する。ここで、酸化触媒は酸素とHC、COなどの還元性成分との反応を触媒するために用いられ、排気における酸素の大部分及びHC、COなどの還元性成分を消費し、酸化触媒処理後の排気はさらに後端の三元触媒で処理され、三元触媒は三元転化(主に、HC、CO及びNOxを同時に転化する)に用いられ、三元触媒の処理プロセスでは、排気に残った酸素及びHC、COなどの還元性成分が少なく、燃焼の程度を低減させることができ、三元触媒が燃焼によって覆われることを回避してその三元触媒転化機能を保証すると共に、高すぎる温度の発生を回避することができ、三元触媒が適宜の反応温度(350~700℃)で三元転化反応を行うようにし、また、高温の発生が三元触媒の構造及び性能に悪影響(例えば、多孔負荷材料の細孔が崩壊すること、貴金属の活性が低下すること、酸素貯蔵材料の機能が減衰することなど)を及ぼすことを回避して三元転化反応の効率及び耐久性能を向上させる。
【0035】
具体的に実施する場合、酸化触媒の後端に位置する三元触媒が350~700℃で動作すること(即ち、三元触媒処理プロセスにおける温度を約350~700℃に制御する)を満たすと共に、三元触媒が超高温(850~950℃)に長時間暴露されることを回避するために、エンジン排気組成などの要因に基づいて酸化触媒と三元触媒との間の距離又は両者の相対的な位置などの条件を調整することができる。
【0036】
また、まず排気を酸化触媒によって処理し、当該処理プロセスでは、酸化触媒によって排気におけるHC、COなどの還元性成分を酸素と反応するように触媒し、当該酸素の由来は、エンジンから生じた排気に含有される酸素(即ちエンジンから生じた排気に付属する酸素)であってもよく、又は必要に応じて酸化触媒の入口に酸素(排気中の過剰な還元剤の燃焼における二次空気噴射であって、コールドスタート段階での触媒の温度上昇を加速する(エンジンがリッチ運転に設定されている場合))を導入し、それにより、排気におけるHC、COなどの還元性成分の大部分を消費し、三元触媒処理中に燃焼が起こり、高温が発生するなどの現象を回避し、三元触媒が適宜の反応温度(350~700℃)で三元転化反応を行うようにする。従って、いくつかの実施例では、酸化部排気入口に接続している吸気管を含んでもよく(エンジンがリッチ運転に設定されている場合)、当該吸気管は、酸化部に入った排気が酸化触媒で処理された後にHC、COなどの還元性成分の大部分を消費するように、酸化部に入った排気に空気(酸素)を入力し、当該吸気管にバルブがさらに設置され、酸化部に入った排気に酸素を入力する必要がない場合、空気の入力を停止し、酸化部に入った排気に酸素を入力する必要がある場合、空気を入力し、吸気管を介して酸化部に入った排気に空気(酸素)を入力する(エンジンがリッチ運転に設定されている場合)
【0037】
酸化反応中の温度が相対的に高いが、一般的に1000℃(酸化触媒の組み合わせによって触媒が暴露される最高温度を制御することができる)を超えることはなく、上記酸化触媒は耐高温型酸化触媒であってもよく、具体的には1000℃~1100℃程度に耐える耐超高温型酸化触媒であってもよく、即ち、1000℃~1100℃程度の条件下では、酸化触媒の構造及び性能は基本的に安定し、例えば、基本的に細孔崩壊現象などは生じない。具体的には、当該酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、当該第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含んでもよく、当該第1のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/g~1.2cc/g(即ちcm/g)、例えば0.8cc/g、0.9cc/g、1cc/g、1.1cc/g、1.2cc/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、比表面積が130~180m/gであり、例えば130m/g、140m/g、150m/g、160m/g、170m/g、180m/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、且つ当該第1のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が60m/g以上であり、当該第1のアルミナ系材料を採用することで、酸化触媒の耐高温性及び安定性などの性能を向上させ、その触媒活性及び使用寿命をさらに確保することができる。
【0038】
具体的には、第1のアルミナ系材料はγ-アルミナを含んでもよく、それはドーピングされたアルミナ及び/又はドーピングされていないアルミナであってもよい。いくつかの実施例では、第1のアルミナ系材料には希土類元素が含有され、希土類元素の酸化物で、当該第1のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量が0~7%(即ち希土類元素の酸化物の質量が第1のアルミナ系材料の0~7%を占める)、例えば0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%であり、希土類元素の質量含有量が0である場合、第1のアルミナ系材料はドーピングされていないアルミナであり、希土類元素の質量含有量が0でない場合、第1のアルミナ系材料はドーピングされたアルミナ(又は希土類アルミナと呼ばれる)であり、比較して言うと、ドーピングされたアルミナを採用することで、アルミナ系材料の耐高温性能を向上させることに有利である。任意選択的に、希土類元素は例えばランタン(La)を含む。
【0039】
第1のアルミナ系材料は市販されているか又は自製であり、一般的には、アルミナ原料を高温エージング処理することにより、容易に崩壊する細孔を崩壊させて構造的に安定な耐高温アルミナ系材料を得ることができ、当該アルミナ系材料を高温条件に適用した場合に深刻な崩壊現象がほとんど生じないようにして、当該耐高温アルミナ系材料を基材として採用した酸化触媒の耐高温性能を向上させる。具体的には、いくつかの実施例では、第1のアルミナ系材料は以下のステップに従って製造されてもよく、アルミナ原料を1000℃~1500℃で少なくとも2時間エージング処理し、第1のアルミナ系材料を製造し、当該エージング処理によって製造された第1のアルミナ系材料は1000℃以下で良好な安定性を有し、それにより酸化触媒の耐高温性能を確保する。ここで、希土類元素がドーピングされていない第1のアルミナ系材料を製造する場合、上記アルミナ原料は、希土類元素がドーピングされていないアルミナ原料であり、希土類元素がドーピングされた第1のアルミナ系材料を製造する場合、上記アルミナ原料は、希土類元素がドーピングされたアルミナ原料であり、上記プロセスに使用されるアルミナ原料は市販されているか又は自製であり、本発明はこれについて特に制限しない。
【0040】
上記アルミナ系材料を1000℃~1500℃でエージング処理した後、浸漬法(例えば等体積浸漬法)などの当分野の常法によりパラジウムを第1のアルミナ系材料に担持して酸化触媒を得ることができる。具体的に実施する場合、パラジウム前駆体を第1の溶媒内に溶解して第1の浸漬液を製造し、当該第1の浸漬液を採用して第1のアルミナ系材料を浸漬し、例えば、第1のアルミナ系材料を当該第1の浸漬液に完全に浸入させるか、又は当該第1の浸漬液を第1のアルミナ系材料にスプレーして浸漬し、浸漬後に乾燥して焼成し、溶媒を除去し、即ち、パラジウムを第1のアルミナ系材料に担持して酸化触媒を得ることを実現し、ここで、第1の溶媒は水を含んでもよく、パラジウムの前駆体は、パラジウムの可溶性塩、例えば硝酸パラジウムを含んでもよい。また、酸化触媒中(又は後述する第1のコーティング層中)に、貴金属の安定性を高めるために、バリウム(Ba)などの貴金属を固定する機能を有する元素を添加してもよい。
【0041】
上記酸化部は、酸化触媒を担持するための第1の担体をさらに含んでもよく、即ち酸化触媒は当該第1の担体に設置され、いくつかの好ましい実施例では、酸化部は第1の担体と、第1の担体の表面に位置する第1の活性層とを含み、酸化触媒は第1の活性層内に存在する(即ち第1の活性層は上記酸化触媒を含む)。
【0042】
一般的には、第1の活性層はさらに接着剤及び/又は改質助剤を含み、酸化部の安定性などの性能をさらに向上させるように、接着剤はアルミペースト及び/又はシリカゲルを含んでもよく、改質助剤はセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含んでもよい。いくつかの実施例では、第1の活性層の総質量に基づいて、酸化触媒の質量パーセントは85%~98%(即ち第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が85%~98%である)、例えば85%、88%、90%、93%、95%、98%又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、余分は接着剤及び/又は改質助剤である。
【0043】
具体的に実施する場合、酸化触媒、接着剤及び/又は改質助剤と第4の溶媒とを混合してスラリーを製造し、さらに当該スラリーを第1の担体の表面に塗布し、乾燥などの処理を経た後、第1の担体の表面に上記第1の活物質層を形成することができる。
【0044】
任意選択的に、第1の担体の形成材料はセラミック(例えばコージェライトなど)、金属などのうちの少なくとも1つを含んでもよく、即ち、第1の担体はセラミック材料、金属などのうちの一種以上の混合物で形成されてもよく、当該第1の担体はガソリンパーティキュレートフィルター(GPF)であってもよく、ハニカム状の担体であってもよいが、これに限定されない。
【0045】
本発明の研究によれば、触媒酸化活性材料(即ち酸化触媒)の活性金属成分としてのパラジウムの含有量は酸化触媒の性能に影響を及ぼす重要な因子であり、いくつかの好ましい実施例では、酸化触媒の総質量に基づいて、パラジウムの質量パーセントは0.06~1.0%(即ち酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量が0.06~1.0%である)である。
【0046】
本発明では、酸化触媒を含有する上記酸化部の数は少なくとも1つであり、即ち1つであってもよいし、少なくとも2つ(即ち2つ以上の酸化触媒の組み合わせである)であってもよいが、酸化部の数が少なくとも2つの場合、隣接する2つの酸化部間の距離は、通常、150mm以上(当該距離はエンジン排気の流れ方向に沿った距離)である。ここで、隣接する2つの酸化部では、上流に位置する酸化部の酸化触媒におけるパラジウムの含有量は、酸化部の下流に位置する酸化触媒におけるパラジウムの含有量以下又はそれ以上であってもよく、具体的に実施する場合、必要に応じて設置してもよい。少なくとも2つの酸化部を組み合わせることにより、各酸化部が排気中の還元剤を部分的に酸化させ(一部の酸素を消費する)、非常に高い温度上昇が発生せず、即ち燃焼による熱を一定の間隔を有する2つの酸化触媒に分散させ、酸化部における酸化触媒が暴露される最高温度を制御することができ、エンジン排気の浄化処理効率及び耐久性をさらに向上させることに有利である。
【0047】
また、酸化触媒におけるパラジウムの質量と第1の担体の体積との比は、(3~50)グラム:1立方フィート(即ち(3~50)g/ft3)、例えば、3g:1立方フィート、5g:1立方フィート、10g:1立方フィート、20g:1立方フィート、30g:1立方フィート、40g:1立方フィート、50g:1立方フィート又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲であることを満たすこともでき、上記酸化触媒の処理効率を向上させることに有利である。
【0048】
さらに、第1の活性層の質量と第1の担体の体積との比は、(100~200)グラム:1リットル(即ち(100~200)g/L)、例えば、100g:1リットル、150g:1リットル、160g:1リットル、170g:1リットル、180g:1リットル、190g:1リットル、200g:1リットル又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲であってもよい。
【0049】
本発明は、当分野の通常の三元触媒(TWC)を採用することができ、いくつかの実施例では、三元触媒は多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属を含み、貴金属はパラジウム及びロジウムを含み、酸素貯蔵材料は多孔質基材内に充填され、ロジウムは酸素貯蔵材料に担持され、ロジウム以外の貴金属は、必要に応じて多孔質基材に担持されるか又は酸素貯蔵材料に担持されてもよく、パラジウムは多孔質基材に担持されるか又は酸素貯蔵材料に担持されてもよい。ここで、ロジウムが酸素貯蔵材料に担持されることは、ロジウムを保護し、それと多孔質基材などの他の成分との接触反応を低減することもできる。好ましくは、パラジウムは酸素貯蔵材料に担持され、より好ましくは、上記貴金属はいずれも酸素貯蔵材料に担持される。
【0050】
本発明は当分野の通常の方法を用いて、上記貴金属を酸素貯蔵材料又は多孔質基材に担持し、例えば浸漬法(例えば等体積浸漬法)などであり、例を挙げて言えば、ロジウム前駆体を第2の溶媒と混合して第2の浸漬液を製造し、さらに当該第2の浸漬液を採用して酸素貯蔵材料を浸漬することにより、ロジウムを酸素貯蔵材料に担持することを実現し、第2の溶媒は水を含んでもよく、ロジウム前駆体はロジウムの可溶性塩、例えば硝酸ロジウムであってもよく、白金前駆体を第3の溶媒と混合して第3の浸漬液を製造し、さらに当該第3の浸漬液を採用して多孔質基材を浸漬することにより、白金を多孔質基材に担持することを実現し、第3の溶媒は水を含んでもよく、白金前駆体は、白金の可溶性塩、例えば硝酸白金であってもよい。
【0051】
酸素貯蔵材料は、三元転化反応をほぼ理論空燃比条件で行うように、エンジン排気の触媒表面での空燃比(λ)を調節することができる。これにより、三元転化反応の効率を確保し、各成分の機能を発揮させる。いくつかの実施例では、酸素貯蔵材料はCeZrOを含んでもよく、さらにZrOを含んでもよく、即ちCeOとZrOとの組み合わせを含んでもよいが、本発明はこれに限定されない。多孔質基材は、貴金属などの成分を分散して三元触媒の分散及び触媒活性を保証するために用いられ、いくつかの実施例では、多孔質基材は第2のアルミナ系材料を含んでもよく、第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/gより小さく、一般的に好ましくは0.4cc/g~0.8cc/g、例えば0.4cc/g、0.5cc/g、0.6cc/g、0.7cc/g、0.8cc/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、その比表面積は130m/g~240m/g、例えば130m/g、140m/g、150m/g、160m/g、170m/g、180m/g、190m/g、200m/g、210m/g、220m/g、230m/g、240m/g又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、貴金属などの成分を多孔質基材に分散させ、三元触媒の性能を向上させることに有利である。また、当該第2のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積は一般的には40m/g以上である。
【0052】
具体的には、第2のアルミナ系材料はγ-アルミナ及び/又はθ-アルミナを含んでもよく、それはドーピングされたアルミナ及び/又はドーピングされていないアルミナであってもよく、ドーピングされたアルミナには一般的には希土類元素がドーピングされてもよい。いくつかの実施例では、第2のアルミナ系材料には希土類元素が含有され、希土類元素の酸化物で、当該第2のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量が3%~7%(即ち希土類元素の酸化物の質量が第2のアルミナ系材料の3%~7%を占める)、例えば3%、4%、5%、6%、7%又はそのうちのいずれか2つからなる範囲である。任意選択的に、希土類元素は例えばLaを含む。当該第2のアルミナ系材料は市販されているか又は自製であり、本発明はこれについて特に制限しない。
【0053】
上記三元転化部はさらに三元触媒を担持するための第2の担体を含んでもよく、即ち三元触媒は当該第2の担体に設置され、三元触媒は第2の担体にコーティング層を形成することができるが、これに限定されない。いくつかの好ましい実施例では、三元転化部は第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、三元触媒は第2の活性層内(即ち第2の活性層は上記三元触媒を含む)に存在する。
【0054】
一般的には、第2の活性層はさらに接着剤及び/又は改質助剤を含み、三元転化部の安定性などの性能をさらに向上させるように、接着剤はアルミペースト及び/又はシリカゲルを含んでもよく、改質助剤はセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含んでもよい。いくつかの実施例では、第2の活性層の総質量に基づいて、三元触媒の質量パーセントは85%~98%(即ち第2の活性層における三元触媒の質量含有量が85%~98%である)、例えば85%、88%、90%、93%、95%、98%又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、余分は接着剤及び/又は改質助剤である。
【0055】
具体的に実施する場合、三元触媒、接着剤及び/又は改質助剤と第5の溶媒とを混合してスラリーを製造し、さらに当該スラリーを第2の担体の表面に塗布し、乾燥などの処理を経た後、第2の担体の表面に上記第2の活物質層を形成することができる。
【0056】
任意選択的に、第2の担体の形成材料はセラミック(例えばコージェライトなど)、金属などのうちの少なくとも1つを含んでもよく、当該第2の担体は微粒子捕集フィルター(GPF)であってもよく、ハニカム状の担体であってもよいが、これに限定されず、第2の担体と第1の担体とは同じであっても異なってもよい。
【0057】
いくつかの実施例では、上記貴金属は白金を含み、ここで、ロジウムと白金との質量比は1:0~15であり、好ましくは1:0.5~8、例えば1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であり、ロジウムとパラジウムとの質量比は1:2~15、例えば1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15又はそのうちのいずれか2つからなる範囲であってもよい。ここで、白金は多孔質基材に担持されるか又は酸素貯蔵材料に担持されてもよい。
【0058】
いくつかの実施例では、三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は、(5~50)グラム:1立方フィート、例えば5g:1立方フィート、10g:1立方フィート、20g:1立方フィート、30g:1立方フィート、40g:1立方フィート、50g:1立方フィート又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲である。ここで、前記貴金属の質量は、三元触媒における全ての種類の貴金属の質量の和であり、例えば三元触媒における貴金属はロジウム、白金、パラジウムであり、従って当該貴金属の質量とは、三元触媒におけるロジウムの質量、白金の質量、パラジウムの質量の和である。
【0059】
本発明はさらに、上記TWCシステムのエンジン排気浄化処理での応用を提供する。本発明のエンジンは具体的には、燃料油エンジンであってもよく、その排気には炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの成分が含有され、応用中では、エンジンから生じた排気はエンジンの排気出口から排出し、そして酸化部の排気入口から酸化部に入り、酸化部で酸化触媒と接触し、酸化触媒の作用下で、排気におけるHC、COなどの還元性成分を酸素と反応させ、そして酸化部の排気出口から排出し、三元転化部の排気入口から三元転化部に入り、三元転化部内で三元触媒と接触して三元転化を行い、排気におけるHC、CO、NOxを二酸化炭素(CO)、窒素ガス(N)及び水に転化させれば、浄化排気を得、浄化排気は三元転化部の排気出口から排出される。
【0060】
本発明のTWCシステムは特に高酸素含有量のエンジン排気の処理に用いられてもよく、いくつかの実施例では、エンジン排気は高酸素含有量のエンジン排気を含み、当該高酸素含有量のエンジン排気における酸素の体積含有率は1%以上、例えば2%、2.5%、3%、3.5%など以上である。
【0061】
高酸素含有量の理論空燃比運転エンジンの排出廃棄ガス(排気)は、酸素(O)、NOxなどの酸化性成分と、HC、COなどの還元性成分を有し、且つ還元性成分はOの含有量と基本的に相当し(いずれも高含有量)、従来のTWCシステムでは、多量のOとHC及びCOなどの還元性成分とのTWCでの反応は、大量の熱を放出し、高温を生じ、TWCの三元触媒転化効率及び耐エージング性に影響を及ぼし、エンジン排気中の有害成分が排出基準を満たすように十分に変換されないようにする。本発明の三元触媒転化システムを採用することにより、このような問題を効果的に解決することができ、いくつかの実施例では、上記エンジン排気は理論空燃比運転エンジン排気を含み、特に酸素の体積含有率が1%より大きい(1%よりもはるかに大きい場合を含む)高酸素含有量の理論空燃比運転エンジン排気であってもよい。
【0062】
具体的に言えば、当該高酸素含有量の理論空燃比運転エンジン排気における酸素(O)含有量が高く、また、HC、COなどの還元性成分の量もOと基本的に相当するため、従来のTWC処理プロセスにおいてより燃焼しやすく、同時に高温(さらには850~980℃より高い)を生じ、高温(>850℃)で長時間運転すると、TWCの構造破壊を引き起こし、TWCの機能発揮に影響を与え、本発明の触媒システムは特に、高酸素含有量の理論空燃比運転排気が、超高触媒温度を引き起こすなどの問題を解決し、TWCの耐高温限界を超えるエンジン排気の後処理システムに用いることができる。
【0063】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施例と組み合わせて本発明の技術案を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部であり、実施例の全てではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造な労働をしない前提で得た全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
(実施例1)
【0064】
本実施例では、三元触媒転化システムは、酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、酸化触媒は、排気におけるHC、COなどの還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、酸化部はエンジンの下流に位置し、三元転化部は酸化部の下流に位置し、ここで、
酸化部は第1の担体、及び第1の担体の表面に位置する第1の活性層からなり、第1の活性層は酸化触媒及び接着剤を含み、第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が90~98%であり、余分が接着剤であり、接着剤はアルミペースト及びシリカゲルであり、第1の担体はコージェライトであり、第1の活性層の質量と第1の担体の体積との比は160グラム:1リットルであり、
酸化触媒は第1のアルミナ系材料と、第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、当該酸化触媒は、硝酸パラジウムを等体積浸漬法によって第1のアルミナ系材料に浸漬させることによって製造され、第1のアルミナ系材料は、佰哲星エネルギー有限公司からの耐高温希土類アルミナ(ここでのアルミナはγ-アルミナである)であり、その細孔容積(Pore Volume)は約0.94cc/gであり、比表面積(Surface Area)は約169.4m/gであり、1200℃で4時間エージングした後の比表面積は約61.23m/gであり、それに含まれる希土類元素はLaであり、Laの酸化物(La)で、第1のアルミナ系材料におけるLaの質量含有量は約4%であり、
酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量は約0.22%(酸化触媒1リットル当たりには0.353gのパラジウムが含まれる)であり、酸化部では、酸化触媒におけるパラジウムの質量と第1の担体の体積との比は10グラム:1立方フィートであり、
三元触媒は第2の担体、及び第2の担体の表面に位置する第2の活性層からなり、第2の活性層は三元触媒及び接着剤を含み、第2の活性層における三元触媒の質量含有量が90~98%であり、余分が接着剤であり、接着剤はアルミペースト及びシリカゲルであり、第2の担体はコージェライトであり、
三元触媒は第2のアルミナ系材料、CeZrO及び貴金属からなり、貴金属はロジウム及びパラジウムからなり、ロジウム及びパラジウムはCeZrOに担持され、CeZrOは第2のアルミナ系材料内に充填され、第2のアルミナ系材料は佰哲星エネルギー有限公司からの希土類アルミナ(ここでのアルミナはγ-アルミナである)であり、その細孔容積(Pore Volume)は約0.49cc/gであり、比表面積(Surface Area)は約145m/gであり、1000℃で4時間エージングした後の比表面積は約110m/gであり、それに含まれる希土類元素はLaであり、Laの酸化物(La)で、第2のアルミナ系材料におけるLaの質量含有量は約4%であり、
三元転化部では、三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は10グラム:1立方フィートであり、ここで、ロジウム、パラジウムの質量比は3:7である。
(応用実施例)
【0065】
以下、エンジンベンチ試験により上記触媒システムの性能を検証し、実験プロセスでは、排気はエンジンから排出された後に順次酸化部及び三元転化部を流れ、プロセスを以下のように簡単に説明し、エンジンから生じた排気はエンジンの排気出口から排出された後、酸化部の排気入口から酸化部に入り、酸化部で酸化触媒と接触し、その中の酸素が還元性成分と酸化還元反応を行うようにし、そして酸化部の排気出口から排出し、三元転化部の排気入口から三元転化部に入り、三元転化部で三元触媒と接触して三元転換を行った後、三元転化部の排気出口から排出すれば、浄化排気を得る。上記プロセスをそれぞれ参照して以下の実験1~実験3、比較実験1及び比較実験2を行う。
以下の実験において、NMHCの転化率=((模擬排気におけるNMHCの量-酸化部反応を経て酸化部排気出口から排出された排気におけるNMHCの量)/模擬排気におけるNMHCの量)×100%であり、CO転化率=((模擬排気中のCO量-酸化部反応後に酸化部排気出口から排出された排気中のCO量)/模擬排気中のCO量)×100%であり、
高酸素含有量の理論空燃比運転エンジン排気をシミュレートし(模擬排気)、排気における酸素の濃度(体積含有率)のエンジン出力に伴う変化曲線を図1に示し、NMHCとCOの含有量は酸素と基本的に相当し、酸化部の排気入口の温度のエンジン出力に伴う変化曲線、酸化部における温度のエンジン出力に伴う変化曲線を図2に示し(酸化部の温度が800℃以上(800~950℃の間)と高く、TWCの転化温度窓(350~700℃)を超える)、ここで、図2は実験1及び比較実験1の酸化部における温度のエンジン出力に伴う変化曲線を示し、以下の残りの実験において、特に説明しない場合、酸化部における反応温度はこれと類似する。
【0066】
比較実験1:酸化部の酸化触媒は通常のTWCであり(それと実施例1の三元触媒との違いは以下のとおりであり、貴金属の質量と第2の担体の体積との比が40グラム:1立方フィートであり、ここで、パラジウムとロジウムの質量比が7:1である)、図3に示すように、酸化部のTWC触媒の反応時間(又はエージング時間と呼ばれる)が制御される。酸化部におけるNMHCとCOの転化率(850℃で触媒前後の気体濃度変化を測定する)酸化部におけるエージング時間に従う変化曲線(エンジンベンチ950℃で)(図3を参照する)を測定し、転化効率はエージング時間の増加に従って減衰し、300時間エージングした後、転化効率は顕著に減衰する。
【0067】
実験1:実施例1の酸化触媒を1050℃でエージングし、エージング後の触媒を酸化部の酸化触媒とし、実験1のプロセスを参照し、酸化触媒が1050℃で異なる時間(110~830時間)エージングした後のエージング触媒のNMHCとCOの転化率への影響を測定し、NMHCとCO(850℃で酸化触媒前後の雰囲気濃度変化を測定する)の転化率のエージング時間に伴う変化曲線(図4を参照する)を得て、NMHCとCOの転化率が比較的高く、且つエージング時間の増加に伴って安定する傾向が見られ、上記酸化触媒は良好な耐エージング性を有する。
【0068】
実験2:実施例1の酸化触媒を1050℃で830時間エージングした後、エージング後の触媒を酸化部の酸化触媒とし、酸化部の酸化触媒反応温度を図5及び図6に示すように制御し、触媒システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)浄化排気におけるNOxの濃度、NOxの転化率(浄化排気におけるNOxの量と酸化部に入る前の模擬排気におけるNOxの量との比)の反応温度に伴う変化曲線をそれぞれ図5及び図6に示すように測定し、酸化触媒は1050℃で830時間エージングした後に性能が安定し、触媒システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)浄化後の排気におけるNOxの濃度が<5ppmであり、排出基準の要求を満たす。
【0069】
比較実験2:比較実験1のTWCを950℃で300時間エージングし、エージング後のTWCを酸化部の触媒とし、酸化部の反応温度を図5及び図6に示すように制御し、システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)浄化排気におけるNOxの濃度、NOxの転化率(排気における触媒システム処理前後のNOx変化量と酸化部に入る前の模擬排気におけるNOx量との比)の反応温度に伴う変化曲線をそれぞれ図5及び図6に示すように測定し、比較実験1のTWCは950℃で300時間エージングした後に性能減衰が顕著であり、触媒システム(酸化部の触媒+三元転化部の触媒)が浄化した後のNOxの濃度は>15ppmであり、排出要求(<5ppm)より高い。
【0070】
実験3:実験1及び実験2の相違点は、以下のとおりであり、実験3における酸化部の数は2つであり、それぞれ酸化部A及び酸化部Bであり、酸化部Bは酸化部Aの上流に位置し(即ちエンジン排気はまず酸化部Bにおける酸化触媒によって処理された後に酸化部Aにおける酸化触媒によって処理される)、酸化部Aは上記実験1又は実験2における酸化部と同じであり(即ち実験1又は実験2の酸化部の上流に1つの酸化部Bを添加することに相当する)、酸化部Bの酸化触媒におけるパラジウムの質量と第1の担体の体積との比は3グラム:1立方フィートであり、その他の条件は酸化部Aと同じであり、
【0071】
実験2のプロセスを参照して実験を行って測定された酸化部Bの排気入口温度、酸化部Bにおける酸化触媒の温度、酸化部Bの排気出口温度のエンジン出力に従う変化曲線は図7に示すとおりであり、酸化部Bの排気入口の酸素濃度、酸化部Bの排気出口の酸素濃度のエンジン出力に従う変化曲線は図8に示すとおりである。酸化部Bの酸化触媒は、排気中の還元剤を部分的に酸化し、排気中の酸素の一部を消費するため、下流側の酸化部Aの酸化触媒における排気の酸化還元反応を効果的に弱めることができ、且つ酸化還元反応によって熱が発生することによる触媒温度の上昇を抑制することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の精神と原則内で行われる任意の修正、同等の置換、及び改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システムであって、耐高温酸化触媒を含有する酸化部と、三元触媒を含有する三元転化部とを含み、前記酸化触媒は、排気における還元性成分と酸素との酸化反応を触媒するために用いられ、前記酸化部はエンジンの下流に位置し、前記三元転化部は前記酸化部の下流に位置する、
ことを特徴とするエンジン排気浄化処理用の三元触媒転化システム。
【請求項2】
前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、且つ、
前記第1のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/g~1.2cc/gであること、
前記第1のアルミナ系材料の比表面積が130~180m/gであること、及び
前記第1のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が60m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の三元触媒転化システム。
【請求項3】
前記第1のアルミナ系材料はγ-アルミナを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項4】
前記第1のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第1のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は0~7%である、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項5】
前記酸化触媒におけるパラジウムの質量含有量は0.06~1.0%である、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項6】
前記酸化部の数は少なくとも2つであり、隣接する2つずつの酸化部の間の距離は150mm以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載の三元触媒転化システム。
【請求項7】
前記酸化部は第1の担体と、第1の担体の表面に位置する第1の活性層とを含み、前記酸化触媒は前記第1の活性層内に存在する、
ことを特徴とする請求項に記載の三元触媒転化システム。
【請求項8】
第1の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、
前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、
前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び
前記第1の活性層における酸化触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項9】
前記第1の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項10】
前記酸化触媒は、第1のアルミナ系材料と、前記第1のアルミナ系材料に担持されるパラジウムとを含み、前記酸化触媒におけるパラジウムの質量と前記第1の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項11】
前記第1の活性層の質量と前記第1の担体の体積との比は(100~200)グラム:1リットルである、
ことを特徴とする請求項7に記載の三元触媒転化システム。
【請求項12】
前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在する、
ことを特徴とする請求項1に記載の三元触媒転化システム。
【請求項13】
前記第2の活性層にはさらに接着剤及び/又は改質助剤が含まれ、且つ、
前記接着剤がアルミペースト及び/又はシリカゲルを含むこと、
前記改質助剤がセリウム材料及び/又はジルコニウム材料を含むこと、及び
前記第2の活性層における三元触媒の質量含有量が85%~98%であり、余分が前記接着剤及び/又は改質助剤であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項12に記載の三元触媒転化システム。
【請求項14】
前記三元触媒は多孔質基材、酸素貯蔵材料及び貴金属を含み、前記貴金属は白金、ロジウム及びパラジウムを含み、前記酸素貯蔵材料は前記多孔質基材内に充填され、前記ロジウムは前記酸素貯蔵材料に担持され、ロジウム以外の貴金属は、前記多孔質基材に担持されるか又は前記酸素貯蔵材料に担持される、
ことを特徴とする請求項に記載の三元触媒転化システム。
【請求項15】
前記酸素貯蔵材料はCeZrOを含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項16】
前記多孔質基材は第2のアルミナ系材料を含み、且つ、
前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.8cc/gより小さいこと、
前記第2のアルミナ系材料の比表面積が130m/g~240m/gであること、及び
前記第2のアルミナ系材料の1200±100℃で4±0.5時間エージングした後の比表面積が40m/g以上であること、のうちの少なくとも1つの特徴を満たす、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項17】
前記第2のアルミナ系材料の細孔容積が0.4cc/g~0.8cc/gである、
ことを特徴とする請求項16に記載の三元触媒転化システム。
【請求項18】
前記第2のアルミナ系材料はγ-アルミナ及び/又はθ-アルミナを含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の三元触媒転化システム。
【請求項19】
前記第2のアルミナ系材料に希土類元素が含有され、前記第2のアルミナ系材料における希土類元素の質量含有量は3%~7%である、
ことを特徴とする請求項16に記載の三元触媒転化システム。
【請求項20】
前記第2の担体の形成材料はセラミック、金属のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の三元触媒転化システム。
【請求項21】
前記三元転化部はさらに第2の担体と、第2の担体の表面に位置する第2の活性層とを含み、前記三元触媒は前記第2の活性層内に存在し、前記三元触媒における貴金属の質量と第2の担体の体積との比は(3~50)グラム:1立方フィートである、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項22】
前記三元触媒はさらに白金を含み、ロジウムと白金との質量比は1:0~15であり、及び/又は、ロジウムとパラジウムとの質量比は1:2~15である、
ことを特徴とする請求項14に記載の三元触媒転化システム。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の三元触媒転化システムのエンジン排気浄化処理での応用。
【請求項24】
前記エンジン排気は高酸素含有量のエンジン排気を含み、前記高酸素含有量のエンジン排気における酸素の体積含有率は1%以上である、
ことを特徴とする請求項23に記載の応用。
【請求項25】
前記エンジン排気は理論空燃比運転エンジン排気を含む、
ことを特徴とする請求項23又は24に記載の応用。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】