(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20231101BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20231101BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20231101BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61K8/891
A61Q1/00
A61Q1/04
A61K8/73
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515164
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2020125290
(87)【国際公開番号】W WO2022088051
(87)【国際公開日】2022-05-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ユージェ・ファン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB242
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC091
4C083AC092
4C083AC341
4C083AC351
4C083AC352
4C083AD022
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD261
4C083AD262
4C083CC11
4C083CC13
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE05
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物は、a)下の式(I):(式中、R基は互いに独立してメチル又はフェニルを表し、ただし、少なくとも1つのR基はフェニルを表す)に相当する、ジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、b)下の式(II):(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、OR'は-OSiMe
3基を表し、pは0であるか、又は1から1000の間であり、mは1から1000の間である)に相当する、少なくとも1つのジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、及びc)セルロースエーテルから選択される少なくとも1種の成膜性ポリマーを含み、式(I)に相当する不揮発性フェニルシリコーン油の、式(II)に相当する不揮発性フェニルシリコーン油に対する質量比は0.5~1である。ケラチン物質、例えば皮膚及び唇をケア及び/又はメイクアップするための方法は、ケラチン物質による無水組成物を適用する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物であって、
a)下の式(I):
【化1】
(式中、R基は、互いに独立してメチル又はフェニルを表し、ただし、少なくとも1つのR基が、フェニルを表す)に相当する、ジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、
b)下の式(II):
【化2】
(式中、Meは、メチルであり、Phは、フェニルであり、OR'は、-OSiMe
3基を表し、pは、0であるか、又は1から1000の間であり、mは、1から1000の間である)に相当する、少なくとも1つのジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、及び
c)セルロースエーテルから選択される少なくとも1種の成膜性ポリマー
を含み、
式(I)に相当する前記不揮発性フェニルシリコーン油の、式(II)に相当する前記不揮発性フェニルシリコーン油に対する質量比が、0.5~1である、
組成物。
【請求項2】
式(I)の前記不揮発性フェニルシリコーン油が、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つのフェニル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)の前記不揮発性フェニルシリコーン油が、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン及びテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の前記不揮発性フェニルシリコーン油が、前記組成物の総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは2質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~12質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
式(II)の不揮発性フェニルシリコーンが、少なくとも1つのジメチコンフラグメントを有し、pは、1から1000の間であり、mは特に、化合物(II)が不揮発性油となるようなものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
式(II)の前記不揮発性フェニルシリコーン油が、フェニルトリメチルシロキシトリシロキサン及びトリメチルシロキシフェニルジメチコンから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(II)の前記不揮発性フェニルシリコーン油が、前記組成物の総質量に対して、2質量%~40質量%、好ましくは6質量%~30質量%、より好ましくは10質量%~24質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の成膜性ポリマーが、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース及びメチルエチルセルロースから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記成膜性ポリマーが、前記組成物の総質量に対して、0.5質量%~10質量%、好ましくは1質量%~8質量%、より好ましくは2質量%~6質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
オクチルドデカノール、ヘプタン酸ステアリル、カプリル酸ステアリル、イソヘキサデカン、安息香酸C12~15アルキル、ジメチコン及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の追加の油を、前記組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは40質量%~65質量%の範囲内の量で更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
合成ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、VP/エイコセンコポリマー及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のワックスを、前記組成物の総質量に対して、5質量%~30質量%、好ましくは7質量%~20質量%、より好ましくは8質量%~15質量%の範囲内の量で更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
YELLOW 5レーキ、Blue 1レーキ、RED 22レーキ、RED 21、RED 7、二酸化チタン、酸化鉄、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の着色剤を、前記組成物の総質量に対して、3質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~12質量%の範囲内の量で更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の総質量に対して、
a)5質量%~12質量%のトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、
b)10質量%~24質量%のトリメチルシロキシフェニルジメチコン、
c)2質量%~6質量%のエチルセルロース、並びに
d)8質量%~15質量%の、合成ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、VP/エイコセンコポリマー及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のワックス、
e)5質量%~12質量%の、YELLOW 5レーキ、Blue 1レーキ、RED 22レーキ、RED 21、RED 7、二酸化チタン、酸化鉄、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の着色剤、並びに
f)60質量%~75質量%の、オクチルドデカノール、ヘプタン酸ステアリル、カプリル酸ステアリル、イソヘキサデカン、安息香酸c12~15アルキル、ジメチコン及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の追加の油
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ケラチン物質、例えば皮膚及び唇をケア及び/又はメイクアップするための方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン物質に適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇、好ましくは唇をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物に関する。本発明はまた、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇、好ましくは唇をケア及び/又はメイクアップするための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
皮膚及び/又は唇をケア及び/又はメイクアップするための組成物は、皮膚及び唇の加湿又は水分補給の必要性を満足するために製造される。
【0003】
多くの口紅は、適用後に移動する、すなわち、唇の小さな皺における滲みを有することになる。
【0004】
今日まで、皮膚及び/又は唇をメイクアップ及び/又はケアするための化粧用組成物に関するいくつかの先行技術文献が刊行されてきた。
【0005】
国際公開第2013/191300号は、生理学的に許容される媒体中に、
- 組成物の総質量に対して5~30質量%の(a)不揮発性炭化水素化無極性油又はその混合物、
- 組成物の総質量に対して43~90質量%の総含有量の(a)不揮発性シリコーン油(ここで、前記不揮発性シリコーン油の少なくとも1種は、不揮発性フェニル化シリコーン油である)、及び
- 組成物の総質量に対して3~30質量%の(a)ワックス又はその混合物
を含む少なくとも1種の脂肪相を含む、皮膚及び/又は唇をメイクアップ及び/又はケアするための固体化粧用組成物を開示している。
【0006】
国際公開第2012/165130号は、(a)5~30質量%の水素化(hydrogenerated)ポリイソブテン、(b)25℃で(a)と混合されると分離する30~70質量%の1種又は複数のメチルフェニルシリコーン、(c)25℃で(a)と混合、及び25℃で(b)と混合されると分離する0.5~15質量%の油、並びに(d)4~12質量%のワックスを含むことを特徴とする、唇のための化粧品を開示している。
【0007】
一般に、女性がメイクアップ製品、とりわけ唇用製品、例えば口紅又はリップグロスを使用する場合、唇用製品が安定であり、良好な適用特性、例えば滑り性(glideness)を有し、良好な光沢レベルを有する付着物を唇上に残すことを望む。製品は、適用後に容易には移動しないことが所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2013/191300号
【特許文献2】国際公開第2012/165130号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1086683号
【特許文献4】仏国特許出願公開第9910942号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Microemulsions Theory and Practice」、L. M. Prince編、Academic Press (1977)、21~32頁
【非特許文献2】「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」、1997年版、371~386頁及び524~528頁、「The Cosmetic, Toiletries and Fragrance Association」刊
【非特許文献3】「Fluorescent Whitening Agent, Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer」、11巻、227~241頁、第4版、1994、Wiley
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、安定であり、良好な滑り性を有し、良好な耐移動性を有する光沢のある付着物をケラチン物質、例えば皮膚及び唇上に残すことになる、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇をケア及び/又はメイクアップするための製品を得ることの必要性が、依然として存在する。
【0011】
本発明の概要
したがって、本発明の一目的は、安定であり、良好な滑り性を有し、良好な耐移動性を有する光沢のある付着物をケラチン物質、例えば皮膚及び唇上に残すことになる、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇をケア及び/又はメイクアップするための製品を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇、好ましくは唇をケア及び/又はメイクアップするための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、一態様によれば、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物であって、
a)下の式(I):
【化1】
(式中、R基は互いに独立してメチル又はフェニルを表し、ただし、少なくとも1つのR基はフェニルを表す)に相当する、ジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、
b)下の式(II):
【化2】
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、OR'は-OSiMe
3基を表し、pは0であるか、又は1から1000の間であり、mは1から1000の間である)に相当する、少なくとも1つのジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、及び
c)セルロースエーテルから選択される少なくとも1種の成膜性ポリマー(film-forming polymer)を含む組成物であり、
式(I)に相当する不揮発性フェニルシリコーン油の、式(II)に相当する不揮発性フェニルシリコーン油に対する質量比が0.5~1である、
組成物を提供する。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇をケア及び/又はメイクアップするための方法であって、上記の無水組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
驚くべきことに、得られる無水組成物は、良好な滑り性を有し、良好な耐移動性を有する光沢のある付着物をケラチン物質、例えば皮膚及び唇上に残すことが見出された。
【0016】
加えて、本発明による無水組成物は安定である、すなわち、20℃、37℃及び45℃で2カ月間放置した後に使えなくならない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細な説明
ここで使用される場合、別段の指示がない限り、値の範囲の限界値は、特に「…から…の間」及び「…から…までの範囲内」という表現では、その範囲内に含まれる。
【0018】
ここで使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、すべての具体的に言及される特徴部に加えて、任意選択の、追加の、不特定の特徴部をも包含する。
【0019】
ここで使用される場合、「含む(comprising)」という用語の使用はまた、具体的に言及される特徴部以外の特徴部が存在しない(すなわち「~からなる」)実施形態も開示している。
【0020】
別段定義されない限り、ここで使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野における当業者によって通例理解されると同じ意味を有する。本記載における用語の定義が、本発明が属する分野における当業者によって通例理解される意味と対立する場合、ここで記載される定義を適用するものとする。
【0021】
別段特定されない限り、本記載及び特許請求の範囲において使用される、成分の量等を表現するすべての数値は、「約」という用語によって修飾されているものとする。したがって、反対の指示がない限り、ここで記載される数値及びパラメータは、要求される場合に得られる所望の性能に応じて変化させることができる、およその値である。
【0022】
本発明の目的では、「無水」という用語は、本発明による組成物が、組成物の総質量に対して、2質量%未満、好ましくは0.5質量%未満の水を含有することを意味する。該当する場合、このような少量の水は、それを残存量で含有する組成物の成分によって提供されうるが、作為的に提供されるものではない。
【0023】
ここで使用される場合、「ケラチン物質」という用語は、皮膚及び唇を指す。「皮膚」によって、頭皮を含むすべての身体の皮膚を意味することを意図している。好ましくは、ケラチン物質は唇である。
【0024】
本発明による、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物は、
a)下の式(I):
【化3】
(式中、R基は互いに独立してメチル又はフェニルを表し、ただし、少なくとも1つのR基はフェニルを表す)に相当する、ジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、
b)下の式(II):
【化4】
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、OR'は-OSiMe
3基を表し、pは0であるか、又は1から1000の間であり、mは1から1000の間である)に相当する、少なくとも1つのジメチコンフラグメントを任意選択で有する、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、及び
c)セルロースエーテルから選択される少なくとも1種の成膜性ポリマーを含み、
式(I)に相当する不揮発性フェニルシリコーン油の、式(II)に相当する不揮発性フェニルシリコーン油に対する質量比が0.5~1である、組成物である。
【0025】
一部の実施形態では、本発明による無水組成物は固体である。
【0026】
ここで使用される「固体」という用語は、20℃且つ大気圧(760mmHg)での組成物の硬度が、下記のプロトコルに従って測定した場合に、30Nm-1以上であることを意味する。
【0027】
硬度が決定される組成物は、硬度を測定する前に、20℃で24時間保管される。
【0028】
硬度は、「チーズワイヤ」法によって20℃で測定されてもよく、この方法は、好ましくは円柱である棒状製品を、直径250μmの硬質タングステンワイヤを用いて、この棒に対して100mm/分の速さでワイヤを動かすことによって横方向に切断することからなる。
【0029】
本発明の組成物の試料の硬度は、Nm-1で表され、Indelco-Chatillon社製のDFGS2引張試験機を使用して測定される。
【0030】
測定は3回繰り返され、次いで平均される。上述の引張試験機を使用して読み取った3つのせん断値の平均値を、Yと記し、グラムで与えられる。この平均値をニュートンに変換し、次いで、ワイヤが通過する最も長い距離を表すLで除する。円柱形の棒の場合には、Lは直径(メートル単位)に等しい。
【0031】
硬度は、下の式によってNm-1に変換される。
(Y×10-3×9.8)/L
【0032】
異なる温度で測定する場合、測定の前に、組成物をこの新しい温度で24時間保管する。
【0033】
この測定方法によれば、本発明による組成物は、好ましくは、20℃且つ大気圧で40Nm-1以上、好ましくは55Nm-1超の硬度を有する。
【0034】
好ましくは、本発明による組成物は、とりわけ、20℃で200Nm-1未満、とりわけ150Nm-1未満、好ましくは100Nm-1未満の硬度を有する。
【0035】
有利には、組成物は、50~90gF、好ましくは65~80gFの範囲内のせん断値を有する。したがって、組成物は、一切の組成物支持手段を必要としない、標準的な包装中に配合されうる。
【0036】
不揮発性フェニルシリコーン油
一態様によれば、本発明による組成物は、式(I)に相当する少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油、及び式(II)に相当する少なくとも1種の第2の不揮発性フェニルシリコーン油を含む。
【0037】
「油」という用語は、室温(25℃)且つ大気圧(760mmHg)で液状である、水不混和性の非水性化合物を意味する。
【0038】
「不揮発性」という用語は、25℃且つ大気圧での蒸気圧がゼロでなく、0.02mmHg(2.66Pa)未満、更に良好には10-3mmHg(0.13Pa)未満である油を意味する。
【0039】
「シリコーン油」という用語は、少なくとも1個のケイ素原子を含有し、特にSi-O基を含有する油を意味する。
【0040】
「フェニルシリコーン油」という表現は、少なくとも1つのフェニル置換基を有するシリコーン油を示す。
【0041】
これらの不揮発性フェニルシリコーン油は、少なくとも1つのジメチコンフラグメントを有するものから、又はそれを有しないものから選択されうる。
【0042】
本発明によれば、ジメチコンフラグメントは次の単位:
-Si(CH3)2-O-
に相当する。
【0043】
式(I):
【化5】
(式中、R基は互いに独立してメチル又はフェニルを表し、ただし、少なくとも1つのR基はフェニルを表す)に相当する、ジメチコンフラグメントを任意選択で有する不揮発性フェニルシリコーン油。
【0044】
好ましくは、式(I)のフェニルシリコーン油は、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つのフェニル基を含む。
【0045】
上記の異なるフェニルオルガノポリシロキサン化合物の混合物を使用できる。
【0046】
挙げられうる例には、トリフェニル、テトラフェニル、又はペンタフェニルオルガノポリシロキサンの混合物が含まれる。
【0047】
式(I)の化合物の中でも、特に、式(I)(式中、少なくとも4つ又は少なくとも5つのR基はフェニル基を表し、残りの基はメチルを表す)に相当する、一切のジメチコンフラグメントを有しないフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0048】
そのような不揮発性フェニルシリコーン油は、好ましくはトリメチルペンタフェニルトリシロキサン又はテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンである。これらは、特にDow Corning社により参照名PH-1555HRI若しくはDow Corning(登録商標) 555 Cosmetic Fluid(化学物質名: 1,3,5-トリメチル-1,1,3,5,5-ペンタフェニルトリシロキサン、INCI名:トリメチルペンタフェニルトリシロキサン)で販売されており、又はDow Corning社により参照名Dow Corning 554 Cosmetic Fluidで販売されているテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンを使用することもできる。
【0049】
これらは、特に、下の式(Ia)及び(Ib):
【化6】
(式中、Meはメチルを表し、Phはフェニルを表す)に相当する。
【0050】
一部の実施形態によれば、式(I)の不揮発性フェニルシリコーン油は、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン及びテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンから選択される。
【0051】
好ましくは、式(I)の不揮発性フェニルシリコーン油は、組成物の総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは2質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~12質量%の範囲内の量で存在する。
【0052】
少なくとも1つのジメチコンフラグメントを任意選択で有する不揮発性フェニルシリコーン油は、式(II):
【化7】
(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、OR'は-OSiMe
3基を表し、pは0であるか、又は1から1000の間であり、mは1から1000の間である)に相当する。特に、m及びpは、式(II)のフェニルシリコーン油が不揮発性油となるようなものである。
【0053】
一実施形態によれば、式(II)の不揮発性フェニルシリコーンは、少なくとも1つのジメチコンフラグメントを有し、pは1から1000の間であり、mは特に、化合物(II)が不揮発性油となるようなものである。トリメチルシロキシフェニルジメチコン、例えば、特にWacker社により参照名Belsil PDM 1000で販売されているものを使用してもよい。
【0054】
一実施形態によれば、式(II)の不揮発性フェニルシリコーンはジメチコンフラグメントを有せず、pは0に等しく、mは1から1000の間であり、特に、mは化合物(II)を不揮発性油とするようなものである。
【0055】
例えば、フェニルトリメチルシロキシトリシロキサン、特に参照名Dow Corning(登録商標) 556 Cosmetic Grade Fluid(DC556)で販売されているものを使用してもよい。
【0056】
一部の実施形態によれば、式(II)の不揮発性フェニルシリコーン油は、フェニルトリメチルシロキシトリシロキサン及びトリメチルシロキシフェニルジメチコンから選択される。
【0057】
好ましくは、式(II)の不揮発性フェニルシリコーン油は、組成物の総質量に対して、2質量%~40質量%、好ましくは6質量%~30質量%、より好ましくは10質量%~24質量%の範囲内の量で存在する。
【0058】
セルロースエーテル
一態様によれば、本発明の組成物は、セルロースエーテルから選択される少なくとも1種の成膜性ポリマーを含む。
【0059】
セルロースエーテルの非限定例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(セルロースガム)、エチルカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
好ましい一部の実施形態では、少なくとも1種の成膜性ポリマーは、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース及びメチルエチルセルロースから選択される。
【0061】
セルロースエーテルの市販の例として、ASHLAND社から入手可能なAQUALON(商標) EC N7 PHARM(エチルセルロース)を挙げることができる。
【0062】
好ましくは、成膜性ポリマーは、組成物の総質量に対して、0.5質量%~10質量%、好ましくは1質量%~8質量%、より好ましくは2質量%~6質量%の範囲内の量で存在する。
【0063】
追加の油
本発明による無水組成物は、上記の不揮発性フェニルシリコーン油の他に、1種又は複数の追加の油を更に含んでもよい。
【0064】
追加の油は、不揮発性油及び/又は揮発性油でありうる。
【0065】
「揮発性油」という用語は、室温且つ大気圧で、皮膚又は唇に接触して1時間未満で蒸発可能な、任意の非水性媒体を意味する。より具体的には、揮発性油は、両端を含む0.01mg/cm2/分から200mg/cm2/分の間の蒸発速度を有する。
【0066】
油は、シリコーン油、フルオロ油、炭化水素系油又はこれらの混合物であってもよい。
【0067】
「フルオロ油」という用語は、少なくとも1個のフッ素原子を含む油を意味する。
【0068】
油は、任意選択で、例えばヒドロキシル基又は酸基の形態で、酸素、窒素、硫黄及び/又はリン原子を含んでもよい。
【0069】
シリコーン油及びフルオロ油は、極性油、無極性油又はこれらの混合物から選択されうる。
【0070】
追加の油として使用される「炭化水素系油」は、極性油とすることもできる。
【0071】
本発明の目的では、「極性油」という用語は、25℃での溶解パラメータδaが、0(J/cm3)1/2ではない油を意味する。
【0072】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、オクチルドデカノール、ヘプタン酸ステアリル、カプリル酸ステアリル、イソヘキサデカン、安息香酸C12~15アルキル、ジメチコン及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の追加の油を含む。
【0073】
存在する場合、追加の油は、組成物の総質量に対して、30質量%~70質量%、好ましくは40質量%~65質量%の範囲内の量で本発明の組成物中に存在する。
【0074】
有利には、すべての油の総量は、組成物の総質量に対して、50質量%~80質量%、好ましくは60質量%~75質量%の範囲内で本発明の組成物中に存在する。
【0075】
本発明による無水組成物は、追加の油、少なくとも1種のワックス及び/又は少なくとも1種の着色剤を更に含んでもよい。
【0076】
ワックス
本発明の文脈において検討されるワックスは、一般に、室温(25℃)で固体であり、状態が固体/液体に可逆的に変化し、30℃以上、好ましくは40℃以上の融点を有し、融点が最大200℃、特に最大120℃であってもよい親油性化合物である。
【0077】
本発明において使用されるワックスとしては、動物起源のワックス、植物起源のワックス、鉱物起源のワックス、合成ワックス及び天然起源のワックスの様々な画分が挙げられる。
【0078】
動物性ワックスとしては、限定するものではないが、ビーズワックス、鯨蝋、ラノリンワックス、ラノリンの誘導体及びイボタ蝋(China insect waxes)が挙げられる。植物性ワックスとしては、限定するものではないが、イネワックス、カルナウバワックス、カンデリラワックス、オーリクリーワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビワックス、カカオバター、木蝋及びスマックワックスが挙げられる。鉱物性ワックスとしては、限定するものではないが、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィン、オゾケライト、石油ゼリー及びセレシンが挙げられる。合成ワックスとしては、限定するものではないが、ポリエチレンホモポリマー及びコポリマーワックス、合成(synthecit)ビーズワックス、フィッシャー・トロプシュ合成によって得られるワックス並びにケイ素ワックスが挙げられる。
【0079】
直鎖状又は分枝状C8~C32脂肪鎖を有する、動物性又は植物性油の触媒的水素化によって得られるワックス、並びに脂肪エステル及びグリセリドも使用される。
【0080】
ワックスとしてはシリコーンワックスも挙げられ、中でも、ポリメチルシロキサンアルキル、アルコキシ及び/又はエステルを挙げることができる。ワックスは、公知の方法、例えば「Microemulsions Theory and Practice」、L. M. Prince編、Academic Press (1977)、21~32頁によれば、コロイド状ワックス粒子の安定な分散体の形状でありうる。リグネートワックスを使用してもよい。
【0081】
本発明による組成物において有用なワックスは、限定するものではないが、バルキング、テクスチャ及びある程度の耐水性を含む特性の1つ又は複数を提供しうる。ワックスは、存在する場合、艶膜形成剤のグロス特性を実質的に低減するべきではない。
【0082】
特に好ましい実施形態によれば、本発明に使用されるワックスは、合成ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、VP/エイコセンコポリマー及びこれらの混合物から選択される。
【0083】
存在する場合、ワックスは、組成物の総質量に対して、5質量%~30質量%、好ましくは7質量%~20質量%、より好ましくは8質量%~15質量%の範囲内の量で存在してもよい。
【0084】
着色剤
本発明の目的では、「着色剤」という用語は、好適な化粧品媒体中に十分な量で配合された場合、有色の光学効果を生じることができる化合物を意味する。
【0085】
本発明の文脈において検討される着色剤は、水溶性又は非水溶性で、脂溶性又は非脂溶性の有機又は無機着色剤、及び光学効果を有する材料、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0086】
水溶性染料
本発明に従って使用される水溶性着色剤は、特に、水溶性染料である。
【0087】
本発明の目的では、「水溶性染料」という用語は、水性相又は水混和性溶媒中に可溶性であり、色を与えることが可能な、一切の天然又は合成の、一般に有機の化合物を意味する。特に、「水溶性」という用語は、25℃で測定して、少なくとも0.1g/lに等しい濃度まで水に溶解する化合物の能力(巨視的に等方性の、透明な、有色又は無色の溶液の生成)を特徴付けることが意図される。この溶解性は、特に1g/l以上である。
【0088】
本発明における使用に好適な水溶性染料として、特に、合成又は天然の水溶性染料、例えば、FD&C Red 4(CI:14700)、DC Red 6(リソールルビンNa;CI:15850)、DC Red 22(CI:45380)、DC Red 28(CI:45410 Na塩)、DC Red 30(CI:73360)、DC Red 33(CI:17200)、DC Orange 4(CI:15510)、FDC Yellow 5(CI:19140)、FDC Yellow 6(CI:15985)、DC Yellow 8(CI:45350 Na塩)、FDC Green 3(CI:42053)、DC Green 5(CI:61570)、FDC Blue 1(CI:42090)を挙げることができる。
【0089】
本発明の文脈において使用されうる水溶性着色剤の供給源の非限定例として、特に天然起源のもの、例えば、コチニールカルミン、ビートの根、ブドウ、ニンジン、トマト、アナトー、パプリカ、ヘンナ、カラメル及びクルクミンの抽出物を挙げることができる。
【0090】
したがって、本発明中における使用に好適な水溶性着色剤は、特に、カルミン酸、ベタニン、アントシアン、エノシアニン、リコペン、β-カロテン、ビキシン、ノルビキシン、カプサンチン、カプソルビン、フラボキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、リボフラビン、ロドキサンチン、カンタキサンチン及びクロロフィル、並びにこれらの混合物である。
【0091】
これらはまた、硫酸銅、硫酸鉄、水溶性のスルホポリエステル、ローダミン、ベタイン、メチレンブルー、タートラジンの二ナトリウム塩、及びフクシンの二ナトリウム塩であってもよい。
【0092】
これらの水溶性着色剤のいくつかは、食品使用について特に認可されている。挙げることができるこれらの染料の代表例には、特に、食品コードE120、E162、E163、E160a~g、E150a、E101、E100、E140及びE141で参照される、カロテノイドファミリーの染料が含まれる。
【0093】
顔料
「顔料」という用語は、液体有機相に不溶性であり、組成物及び/又は組成物によって生成する付着物を着色及び/又は不透明化することが意図される、白色又は有色の無機(鉱物)又は有機粒子を意味するものと理解されるべきである。
【0094】
顔料は、鉱物顔料、有機顔料及び複合顔料(すなわち、鉱物材料及び/又は有機材料をベースとした顔料)から選択されうる。
【0095】
顔料は、単色顔料、レーキ及び光学効果を有する顔料、例えば、ゴニオクロマチック(goniochromatic)顔料及び真珠光沢剤(nacres)から選択されうる。
【0096】
鉱物顔料は、金属酸化物顔料、例えば、酸化クロム、酸化鉄(黒色、黄色、赤色)、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及び酸化ジルコニウム、クロム水和物、マンガンバイオレット、プルシアンブルー、ウルトラマリンブルー、フェリックブルー、合成フルオロフロゴパイト、金属粉末、例えばアルミニウム粉末及び銅粉末、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0097】
有機レーキは、基材に結合した染料から形成される有機顔料である。
【0098】
レーキは、有機顔料としても公知であり、下の材料:
- コチニールカルミン、
- アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、キサンテン染料、ピレン染料、キノリン染料、トリフェニルメタン染料又はフルオラン染料の有機顔料、
及びこれらの混合物から選択されうる。
【0099】
特に挙げることができる有機顔料の中には、次の名称:D&C Blue No. 4、D&C Brown No. 1、D&C Green No. 5、D&C Green No. 6、D&C Orange No. 4、D&C Orange No. 5、D&C Orange No. 10、D&C Orange No. 11、D&C Red No. 6、D&C Red No. 7、D&C Red No. 17、D&C Red No. 21、D&C Red No. 22、D&C Red No. 27、D&C Red No. 28、D&C Red No. 30、D&C Red No. 31、D&C Red No. 33、D&C Red No. 34、D&C Red No. 36、D&C Violet No. 2、D&C Yellow No. 7、D&C Yellow No. 8、D&C Yellow No. 10、D&C Yellow No. 11、FD&C Blue No. 1、FD&C Green No. 3、FD&C Red No. 40、FD&C Yellow No. 5、FD&C Yellow No. 6、で公知のものがある;
- 有機レーキは、酸性染料、例えばアゾ、アントラキノン、インジゴイド、キサンテン、ピレン、キノリン、トリフェニルメタン又はフルオラン染料の不溶性ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム又はチタン塩であってもよく、これらの染料は、少なくとも1つのカルボン酸又はスルホン酸基を場合によって含む。
【0100】
有機レーキはまた、有機支持体、例えば、ロジン又は安息香酸アルミニウム等に支持されていてもよい。
【0101】
有機レーキの中でも、次の名称で公知のものを、特に挙げることができる: D&C Red No. 2 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 3 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 4 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 6 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 6 Bariumレーキ、D&C Red No. 6 Barium/Strontiumレーキ、D&C Red No. 6 Strontiumレーキ、D&C Red No. 6 Potassiumレーキ、D&C Red No. 7 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 7 Bariumレーキ、D&C Red No. 7 Calciumレーキ、D&C Red No. 7 Calcium/Strontiumレーキ、D&C Red No. 7 Zirconiumレーキ、D&C Red No. 8 Sodiumレーキ、D&C Red No. 9 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 9 Bariumレーキ、D&C Red No. 9 Barium/Strontiumレーキ、D&C Red No. 9 Zirconiumレーキ、D&C Red No. 10 Sodiumレーキ、D&C Red No. 19 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 19 Bariumレーキ、D&C Red No. 19 Zirconiumレーキ、D&C Red No. 21 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 21 Zirconiumレーキ、D&C Red No. 22 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 27 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 27 Aluminium/Titanium/Zirconiumレーキ、D&C Red No. 27 Bariumレーキ、D&C Red No. 27 Calciumレーキ、D&C Red No. 27 Zirconiumレーキ、D&C Red No. 28 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 30レーキ、D&C Red No. 31 Calciumレーキ、D&C Red No. 33 Aluminiumレーキ、D&C Red No. 34 Calciumレーキ、D&C Red No. 36レーキ、D&C Red No. 40 Aluminiumレーキ、D&C Blue No. 1 Aluminiumレーキ、D&C Green No. 3 Aluminiumレーキ、D&C Orange No. 4 Aluminiumレーキ、D&C Orange No. 5 Aluminiumレーキ、D&C Orange No. 5 Zirconiumレーキ、D&C Orange No. 10 Aluminiumレーキ、D&C Orange No. 17 Bariumレーキ、D&C Yellow No. 5 Aluminiumレーキ、D&C Yellow No. 5 Zirconiumレーキ、D&C Yellow No. 6 Aluminiumレーキ、D&C Yellow No. 7 Zirconiumレーキ、D&C Yellow No. 10 Aluminiumレーキ、FD&C Blue No. 1 Aluminiumレーキ、FD&C Red No. 4 Aluminiumレーキ、FD&C Red No. 40 Aluminiumレーキ、FD&C Yellow No. 5 Aluminiumレーキ及びFD&C Yellow No. 6 Aluminiumレーキ。
【0102】
脂溶性染料、例えば、スーダンレッド、DC Red 17、DC Green 6、β-カロテン、ダイズ油、スーダンブラウン、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5及びキノリンイエロー等も挙げることができる。
【0103】
上に挙げた有機着色剤の各々に相当する化学物質は、「The Cosmetic, Toiletries and Fragrance Association」によって刊行されたに刊行物「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」、1997年版、371~386頁及び524~528頁、に述べられており、その内容は、参照により本特許出願に組み込まれる。
【0104】
顔料はまた、疎水性処理を施されていてもよい。
【0105】
疎水性処理剤は、シリコーン、例えば、メチコン、ジメチコン、アルコキシシラン及びペルフルオロアルキルシラン;脂肪酸、例えばステアリン酸;金属石鹸、例えば、ジミリスチン酸アルミニウム、水添タロウグルタミン酸のアルミニウム塩、リン酸ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラザン、ポリヘキサフルオロプロピレンオキシド、ペルフルオロアルキルペルフルオロポリエーテル基を含むポリオルガノシロキサン及びアミノ酸;N-アシルアミノ酸又はその塩;レシチン、イソプロピルトリイソステアリルチタネート、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0106】
N-アシルアミノ酸は、8~22個の炭素原子を含有するアシル基、例えば、2-エチルヘキサノイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はココイル基等を含むことができる。これらの化合物の塩は、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ジルコニウム塩、亜鉛塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であってもよい。アミノ酸は、例えば、リジン、グルタミン酸又はアラニンであってもよい。
【0107】
上に挙げた化合物において言及した「アルキル」という用語は、特に、1~30個の炭素原子を含有し、好ましくは5~16個の炭素原子を含有するアルキル基を示す。
【0108】
疎水性処理した顔料は、特に、欧州特許出願公開第1086683号に記載されている。
【0109】
真珠光沢剤
本特許出願の目的では、「真珠光沢剤」という用語は、虹色であることも、虹色でないこともある、特に、ある特定の軟体動物によりその殻に生成されるか、又は代わりに合成される、光学干渉を介した色彩効果を有する、任意の形状の有色粒子を意味する。
【0110】
挙げることができる真珠光沢剤の例には、真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄でコーティングされているチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスでコーティングされているマイカ、酸化クロムでコーティングされているチタンマイカ、有機染料、特に上述のタイプのものでコーティングされているチタンマイカ、及びまたオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料が含まれる。
【0111】
これらはまた、表面に金属酸化物及び/又は有機着色剤の少なくとも2つの連続層が重ねられているマイカ粒子であってもよい。
【0112】
真珠光沢剤は特に、黄、ピンク、赤、青銅、オレンジ、茶、金、及び/又は銅の色又は色調を有しうる。
【0113】
干渉顔料として第1の組成物に導入されうる真珠光沢剤の例証として、特にBASF社により名称Brilliant gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle gold(Timica)及びMonarch gold 233X(Cloisonne)で販売されている金色に着色された真珠光沢剤、特にMerck社により名称Bronze fine(17384)(Colorona)及びBronze(17353)(Colorona)で、並びにBASF社により名称Super bronze(Cloisonne)で販売されている青銅色の真珠光沢剤、特にBASF社により名称Orange 363C(Cloisonne)で、並びにMerck社により名称Passion orange(Colorona)及びMatte orange(17449)(Microna)で販売されているオレンジ色の真珠光沢剤、特にEngelhard社により名称Nu-antique copper 340XB(Cloisonne)及びBrown CL4509(Chroma-lite)で販売されている茶色の色調の真珠光沢剤、特にBASF社により名称Copper 340A(Timica)で販売されている銅色の色調の真珠光沢剤、特にMerck社により名称Sienna fine(17386)(Colorona)で販売されている赤色の色調の真珠光沢剤、特にBASF社により名称Yellow(4502)(Chromalite)で販売されている黄色の色調の真珠光沢剤、特にBASFにより名称Sunstone G012(Gemtone)で販売されている金色の色調の赤色の真珠光沢剤、特にBASF社により名称Tan opale G005(Gemtone)で販売されているピンク色の真珠光沢剤、特にBASF社により名称Nu antique bronze 240 AB(Timica)で販売されている金色の色調の黒色の真珠光沢剤、特にMerck社により名称Matte blue(17433)(Microna)で販売されている青色の真珠光沢剤、特にMerck社により名称Xirona Silverで販売されている銀色の色調の白色の真珠光沢剤、並びに特にMerck社により名称Indian summer(Xirona)で販売されている金緑色でピンク-オレンジ色の真珠光沢剤、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0114】
ゴニオクロマチック顔料
本発明の目的では、「ゴニオクロマチック顔料」という用語は、組成物を支持体上に塗り広げた場合、CIE 1976比色空間のa*b*平面において、例えば45°の入射光角度の場合、垂線に対する観察の角度が0°から80°の間で変動すると、色相角度h°における変動Dh°が少なくとも20°に相当する色軌跡を得ることができる顔料を示す。
【0115】
色軌跡は、例えば、Erichsenブランドの参照名Typ 24/5というコントラストカード上に、自動延展機を使用して組成物を流体形態で300μmの厚さに塗り広げた後、Instrument Systemsブランドの参照名GON 360 Goniometerという分光角度反射率測定装置(spectrogonioreflectometer)を使用して測定することができ、測定はカードの黒色背景において取得される。
【0116】
ゴニオクロマチック顔料は、例えば、多層干渉構造体及び液晶彩色剤から選択されうる。
【0117】
多層構造体の場合、例えば、少なくとも2つの層を含み、各層が例えば、次の材料:MgF2、CeF3、ZnS、ZnSe、Si、SiO2、Ge、Te、Fe2O3、Pt、Va、Al2O3、MgO、Y2O3、S2O3、SiO、HfO2、ZrO2、CeO2、Nb2O5、Ta2O5、TiO2、Ag、Al、Au、Cu、Rb、Ti、Ta、W、Zn、MoS2、氷晶石、合金、ポリマー、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの材料から作製されてもよい。
【0118】
多層構造体は、積み重ねられた層の化学的性質において、中央層に対する対称性を有することも、有しないこともある。
【0119】
様々な層の厚さ及び性質に応じて、異なる効果が得られる。
【0120】
対称性多層干渉構造体の例は、例えば、次の構造体である:Fe2O3/SiO2/Fe2O3/SiO2/Fe2O3、この構造を有する顔料は、BASF社によりSicopearlの名称で販売されている;MoS2/SiO2/酸化マイカ/SiO2/MoS2; Fe2O3/SiO2/酸化マイカ/SiO2/Fe2O3; TiO2/SiO2/TiO2及びTiO2/Al2O3/TiO2、これらの構造を有する顔料は、Merck社によりXironaの名称で販売されている。
【0121】
液晶彩色剤は、例えば、液晶性基(mesomorphic groups)がグラフトされているシリコーン又はセルロースエーテルを含む。使用されうる液晶ゴニオクロマチック粒子の例としては、例えば、Chenix社により販売されているもの、及びまたWacker社によりHelicone(登録商標) HCの名称で販売されているものが挙げられる。
【0122】
やはり使用されうるゴニオクロマチック顔料としては、ある特定の真珠光沢剤、合成基材、特にアルミナ、シリカ、ホウケイ酸塩、酸化鉄若しくはアルミニウム等の基材において効果を有する顔料、又はポリテレフタレートフィルムから得られる干渉フレークが挙げられる。
【0123】
ゴニオクロマチック顔料の非限定例として、特に、単独又は混合物の、SunChemicals社により販売されているSunShine(登録商標)ゴニオクロマチック顔料、東洋アルミニウム株式会社製のCosmicolor Celeste(登録商標)、Merck社製のXirona(登録商標)及びBASF社製のReflecks Multidimensions(登録商標)を挙げられる。
【0124】
任意選択で、これらの粒子は、光学明色化剤(又は有機白色蛍光物質)を含んでも、又は光学明色化剤によって覆われていてもよい。
【0125】
光学明色化剤は、当技術分野における当業者に周知の化合物である。このような化合物は、「Fluorescent Whitening Agent, Encyclopedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer」、11巻、227~241頁、第4版、1994、Wileyに記載されている。
【0126】
化粧品におけるその使用は、特に、これらが蛍光特性を有する化学化合物からなり、紫外領域(400nm未満の波長に最大吸収)で吸収して、380nmから830nmの間の波長にわたり、蛍光によってエネルギーを再放出するという事実を有効活用している。これらは特に、300nmから390nmの間のUVA領域において本質的に吸収して、400nmから525nmの間で本質的に再放出する化合物として定義されうる。照明効果は特に、400nmから480nmの間でのエネルギーの放出に基づき、これは可視領域の青色部分における発光に相当し、皮膚上で発光が起こると、皮膚を視覚的に明るくすることに寄与する。
【0127】
特に公知の光学明色化剤としては、スチルベン誘導体、特にポリスチリルスチルベン及びトリアジニルスチルベン、クマリン誘導体、特にヒドロキシクマリン及びアミノクマリン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イミダゾール、トリアゾール及びピラゾリン誘導体、ピレン誘導体、ポルフィリン誘導体並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0128】
使用することができる光学明色化剤はまた、仏国特許出願公開第9910942号に記載されている通り、光学明色化剤基がグラフトされている、例えばアクリレート及び/又はメタクリレートのコポリマーの形態であってもよい。
【0129】
好ましい実施形態によれば、本発明に使用される着色剤は、金属酸化物顔料、有機レーキ、合成又は天然水溶性染料、及びこれらの混合物から選択される。
【0130】
特に好ましい実施形態によれば、本発明に使用される着色剤は、YELLOW 5レーキ、Blue 1レーキ、RED 22レーキ、RED 21、RED 7、二酸化チタン、酸化鉄、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの混合物から選択される。
【0131】
存在する場合、着色剤は、組成物の総質量に対して、3質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~12質量%の範囲内の量で存在してもよい。
【0132】
添加剤
本発明による無水組成物は、検討している分野において通常使用される、少なくとも1種の添加剤を更に含んでもよい。特に、添加剤は、アニオン性、カチオン性、両性若しくは非イオン性界面活性剤、増粘剤、充填剤(例えば、メタクリル酸メチルクロスポリマー)、酸化防止剤、保存剤、香料、中和剤、防腐剤、追加の美容活性成分、例えば、ビタミン、保湿剤、皮膚軟化剤又はコラーゲン保護剤及びこれらの混合物から選択される。
【0133】
本発明によって使用される組成物の有利な特性が、想定される添加による悪影響を受けない、又は実質的に受けないように、本発明に従った組成物中に存在する添加剤の性質及び量を調節することは、当業者にとって常法的事項である。
【0134】
好ましい実施形態によれば、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物であって、組成物の総質量に対して、
a)5質量%~12質量%のトリメチルペンタフェニルトリシロキサン、
b)10質量%~24質量%のトリメチルシロキシフェニルジメチコン、
c)2質量%~6質量%のエチルセルロース、並びに
d)8質量%~15質量%の、合成ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、VP/エイコセンコポリマー及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のワックス、
e)5質量%~12質量%の、YELLOW 5レーキ、Blue 1レーキ、RED 22レーキ、RED 21、RED 7、二酸化チタン、酸化鉄、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の着色剤、並びに
f)60質量%~75質量%の、オクチルドデカノール、ヘプタン酸ステアリル、カプリル酸ステアリル、イソヘキサデカン、安息香酸C12~15アルキル、ジメチコン及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の追加の油
を含む、組成物を提供する。
【0135】
ガレヌス形態
本発明の組成物は、スキンケア又はメイクアップ製品として使用するのに好適である。特に、本発明の組成物は、口紅等の形態である。
【0136】
本発明による組成物は、従来の方法で調製されうる。
【0137】
本発明はまた、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇をケア/メイクアップするための方法であって、上記の無水組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、方法を提供する。
【0138】
以下の実施例は、本発明の非限定的例示として与えられるものである。百分率は質量百分率である。
【実施例】
【0139】
実施例
(実施例1)
本発明の配合による口紅(IE.)1及び比較例の配合による口紅(CE.)1~3を、Table 1(表1)に列挙される成分を用いて調製した(別段の指示がない限り、含有量は、各口紅の総質量に対する、活性物質の質量百分率として表される)。
【0140】
【0141】
調製手順
以下の工程に従うことによって、口紅を調製した。
i)すべての着色剤(レーキ、染料、二酸化チタン及び酸化鉄)を3本ローラーミルを用いて粉砕して、顔料ペーストにする、
ii)顔料ペーストと、エチルセルロース、ジメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン及びトリメチルペンタフェニルトリシロキサンを除くすべての他の成分とを、105℃のもと、均一になるまで混合し、VMIタイプホモジナイザーを用いて300rpmで混合物を撹拌する、
iii)次いで、エチルセルロースを混合物に少しずつ導入し、エチルセルロースが完全に溶解するまで、VMIタイプホモジナイザーを用いて500rpmで撹拌する、
iv)残りの成分を導入し、混合する、
v)均一化された混合物を、42±2℃に予熱された口紅型枠に注ぎ込み、25℃のもと、混合物を凝固するまで型枠内で放置する、
vi)約4℃に冷却された口紅型枠から、固体混合物を取り出す。
【0142】
評価
口紅のせん断値、硬度及び安定性、並びに使用上の効果、例えば、適用後の付着物の滑り性及び光沢性に関する評価を行った。
【0143】
せん断値及び硬度は、以前に記載したプロトコルに従って評価した。
【0144】
安定性は、5人の専門家が次の工程によって評価した。
i)20℃、37℃及び45℃のオーブン中に口紅を入れる、及び
ii)2カ月後に、口紅の外観を確認する。
【0145】
滑り性は、唇上への適用の際に、口紅が容易且つ滑らかに滑ることができるかを評価するために使用される。
【0146】
滑り性は、5人の専門家が次の通りに評価した:同じ力を使用して、上唇において両側に2回、及び下唇に2回、口紅をゆっくりと適用し、2回目の適用中の口紅と唇の皮膚との間の力を注意深く感じる。摩擦力が弱いほど滑り性が高い。
【0147】
光沢性及び耐移動性は、5人の専門家が、同じ力を使用して、上唇において両側に2回、及び下唇に2回、口紅を適用することによって評価した。移動性とは、唇の小さな皺において、製品が滲みを有することを意味する。移動性が少ないほど良好である。
【0148】
最後に、安定性、滑り性、光沢性及び耐移動性に関して、専門家がコメント又はスコアを与えた。
5:非常に良好
4:基本的に良好
3:許容される
2:わずかに不良であり、許容されない
1:不良、許容されない
【0149】
各口紅の評価結果を、次のTable 2(表2)にまとめた。
【0150】
【0151】
発明1の口紅は安定であり、望ましいせん断値及び硬度、並びに使用上の効果、例えば滑り性を有し、ケラチン物質上で良好な耐移動性を有する光沢のある付着物を残すことが観察された。
【国際調査報告】