(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】単結晶シリコンインゴットを製造するための結晶引上げ炉、方法及び単結晶シリコンインゴット
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20231101BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20231101BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C30B29/06 502E
C30B15/00 Z
C30B33/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515716
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 CN2022122594
(87)【国際公開番号】W WO2023051695
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111165968.6
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522248559
【氏名又は名称】西安奕斯偉材料科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】Room 1-3-029, No.1888 South Xifeng Rd., Hi-Tech Zone Xi’an, Shaanxi 710100, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】張 婉婉
(72)【発明者】
【氏名】ムン、 ヨンヒ
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EB01
4G077EG20
4G077EG26
4G077FE00
4G077PE22
4G077PE27
(57)【要約】
本願の実施例は、単結晶シリコンインゴットを製造するための結晶引上げ炉、方法及び単結晶シリコンインゴットを開示する。前記結晶引上げ炉は、窒素ドープシリコン融液を用いてチョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを引き上げるように構成された引上げ機構と、前記単結晶シリコンインゴットのBMDを溶融させる第1の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットを熱処理するための第1の熱処理器と、前記第1の熱処理器の上方に配置され、前記単結晶シリコンインゴットにBMDを形成させる第2の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットを熱処理するための第2の熱処理器とを含む。前記引上げ機構は、更に、結晶引上げ方向に前記単結晶シリコンインゴットを、後端部が前記第1の熱処理器に、先端部が前記第2の熱処理器によって熱処理される位置に移動させるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンインゴットを製造するための結晶引上げ炉であって、
窒素ドープシリコン融液を用いてチョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを引き上げるように構成された引上げ機構と、
前記単結晶シリコンインゴットのBMDを溶融させる第1の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットを熱処理するための第1の熱処理器と、
前記第1の熱処理器の上方に配置され、前記単結晶シリコンインゴットにBMDを形成させる第2の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットを熱処理するための第2の熱処理器と
を含み、
前記引上げ機構は、更に、結晶引上げ方向に前記単結晶シリコンインゴットを、後端部が前記第1の熱処理器に、先端部が前記第2の熱処理器によって熱処理される位置に移動させるように構成されている、結晶引上げ炉。
【請求項2】
前記第1の熱処理温度は、950℃~1200℃である、請求項1に記載の結晶引上げ炉。
【請求項3】
前記第2の熱処理温度は、600℃~850℃である、請求項1に記載の結晶引上げ炉。
【請求項4】
前記第1の熱処理器の熱処理温度を感知するための第1の温度センサと、
前記第2の熱処理器の熱処理温度を感知するための第2の温度センサと、
前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサの感知温度に基づいて、前記第1の熱処理器及び前記第2の熱処理器がそれぞれ異なる熱処理温度を提供するように制御するコントローラと
を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶引上げ炉。
【請求項5】
前記第2の熱処理器は、600℃~700℃の熱処理温度を提供するための第1のセグメントと、700℃~850℃の熱処理温度を提供するための第2のセグメントとを、前記結晶引上げ方向に含む、請求項4に記載の結晶引上げ炉。
【請求項6】
前記引上げ機構は、更に、前記単結晶シリコンインゴットを、熱処理される位置に2時間滞留させるように構成されている、請求項1に記載の結晶引上げ炉。
【請求項7】
径方向寸法の小さい上炉室と、径方向寸法の大きい下炉室とを含み、
前記第1の熱処理器と前記第2の熱処理器は、前記上炉室に配置され、
前記下炉室内には、るつぼと前記るつぼを加熱するためのヒータとが設けられている、請求項1に記載の結晶引上げ炉。
【請求項8】
前記単結晶シリコンインゴット全体が前記第1の熱処理器及び前記第2の熱処理器に同時に熱処理されることができるように、前記第1の熱処理器及び前記第2の熱処理器の前記結晶引上げ方向に沿った全長は、前記単結晶シリコンインゴットの長さ以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶引上げ炉。
【請求項9】
単結晶シリコンインゴットを製造するための方法であって、
窒素ドープシリコン融液を用いてチョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを引き上げることと、
前記単結晶シリコンインゴットを結晶引上げ方向に沿って熱処理される位置に移動させることと、
前記単結晶シリコンインゴットのBMDを溶融させる第1の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットの後端部を熱処理することと、
前記単結晶シリコンインゴットにBMDを形成させる第2の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットの先端部を熱処理することと
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって製造された単結晶シリコンインゴット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年9月30日に中国で提出された中国特許出願NO.202111165968.6の優先権を主張し、その全ての内容が援用によりここに取り込まれる。
【0002】
本願は、半導体シリコンウェーハ製造の分野に係り、特に単結晶シリコンインゴットを製造するための結晶引上げ炉、方法及び単結晶シリコンインゴットに係る。
【背景技術】
【0003】
周知のように、現在の集積回路は、主にシリコンウェーハの表面から5ミクロン以内の近表層に製造されている。そのため、シリコンウェーハの本体内又は裏面に欠陥領域を導入し、近表面に10ミクロンから20ミクロンの欠陥のない、不純物のない清浄領域を導入するためには、イントリンシックゲッタリング又はエクストリンシックゲッタリングなどの技術が必要である。近年、一般的なイントリンシックゲッタリングやエクストリンシックゲッタリング技術のほか、新しい酸素アニーリング技術、高速熱処理技術及び窒素ドーピング技術が開発されて応用されている。
【0004】
上記の集積回路において、表側から本体内に延在する無結晶欠陥領域(DZ:DenudedZone)と、DZに隣接して本体内に更に延在し、バルク微小欠陥(BMD:BulkMicroDefect)を含む領域とを有するシリコンウェーハを提供することは、非常に有利である。ここでの表側とは、電子部品が形成されるシリコンウェーハの表面を指す。上記のDZは、重要であり、シリコンウェーハ上に電子部品を形成するためには、電子部品の形成領域に結晶欠陥がないことが求められ、さもないと回路の断線などの故障の原因となるため、電子部品がDZで形成されることで結晶欠陥の影響を回避することができるからである。上記のBMDの役割は、金属不純物に対してイントリンシックゲッタリング(IG:IntrinsicGetter)効果を持ち、シリコンウェーハ中の金属不純物をDZから遠ざけることにより、金属不純物によるリーク電流増加やゲート酸化膜の膜質の劣化などの悪影響を避ける。
【0005】
BMD領域を有する上記したシリコンウェーハの製造において、シリコンウェーハに窒素をドープすることは、非常に有利である。例えば、シリコンウェーハに窒素がドープされている場合、高温では窒素原子が最初に互いに結合して二原子窒素を形成し、酸素沈殿を促進して大量のベイカンスィ(Vacancy)を消費し、ベイカンスィの濃度を減少させる。空孔(VOID)欠陥がベイカンスィからなるため、ベイカンスィの濃度の低下によって、VOID欠陥のサイズが減少し、比較的低い温度では、VOID欠陥のサイズが減少したシリコンウェーハが形成される。集積回路製造工程の高温熱処理では、窒素ドープシリコン単結晶のVOID欠陥が容易に除去され、集積回路の歩留まりが向上する。同時に、窒素をドープすることは、窒素を核とするBMDの形成が促進され、BMDが一定の密度に達し、BMDが金属のゲッタリング源として有効に機能し、また、シリコンウェーハの半径方向にBMDの密度分布をより均一にすることや、BMDの密度をDZに隣接する領域で高くしてシリコンウェーハの本体内に近づくにつれて徐々に減少させるなど、BMDの密度分布に好ましい効果がある。
【0006】
関連技術では、上記の集積回路などの半導体電子部品を製造するためのシリコンウェーハは、主にチョクラルスキー(Czochralski)法で引き上げられた単結晶シリコンインゴットをスライスして製造される。チョクラルスキー法は、石英製るつぼ内の多結晶シリコンを溶融してシリコン融液を取得し、単結晶の種結晶をシリコン融液に浸し、そして種結晶を連続的に持ち上げてシリコン融液の表面から離すことにより、移動中に相界面で単結晶シリコンインゴットが成長する。チョクラルスキー(Czochralski)法による単結晶シリコンインゴットの引上げは、一般的に結晶引上げ炉の内部で行われる。ドーピング元素とシリコン元素の格子が一致しないため、単結晶シリコンの成長過程において偏析現象が存在し、即ち、単結晶シリコンインゴットに結晶するドーピング元素の濃度が溶融体(原料)中の濃度より小さく、るつぼ内のドーピング元素の濃度が上昇し続け、単結晶シリコンインゴット内のドーピング元素の濃度も上昇し続ける。シリコン単結晶における窒素の偏析係数が7×10
-4と小さいため、単結晶シリコンインゴットの引上げ中に、窒素濃度の分布は、結晶インゴットの先端から結晶インゴットの後端にかけて徐々に増加する。
図1に示すように、窒素ドープ単結晶における窒素濃度の結晶成長方向に沿った理論分布を示し、窒素ドープ単結晶における先端と後端の窒素濃度の差が大きく、それに応じて、窒素ドープ単結晶の先端と後端のBMD濃度の差が大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の技術問題を解決するために、本願の実施例は、単結晶シリコンインゴットを製造するための結晶引上げ炉、方法及び単結晶シリコンインゴットを提供することが期待され、結晶インゴットの引上げ中に、結晶インゴットの先端から後端まで窒素含有量の差が大きすぎるために単結晶シリコンインゴットの先端と後端のBMD含有量の差が大きいという問題を解決し、全体的にBMD濃度が均一な単結晶シリコンインゴットを得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の技術手段は、下記のように実現される。
【0009】
第1の態様として、本願の実施例は、単結晶シリコンインゴットを製造するための結晶引上げ炉を提供する。前記結晶引上げ炉は、窒素ドープシリコン融液を用いてチョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを引き上げるように構成された引上げ機構と、前記単結晶シリコンインゴットのBMDを溶融させる第1の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットを熱処理するための第1の熱処理器と、前記第1の熱処理器の上方に配置され、前記単結晶シリコンインゴットにBMDを形成させる第2の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットを熱処理するための第2の熱処理器とを含む。前記引上げ機構は、更に、結晶引上げ方向に前記単結晶シリコンインゴットを、後端部が前記第1の熱処理器に、先端部が前記第2の熱処理器によって熱処理される位置に移動させるように構成されている。
【0010】
任意に、前記第1の熱処理温度は、950℃~1200℃である。
【0011】
任意に、前記第2の熱処理温度は、600℃~850℃である。
【0012】
任意に、前記結晶引上げ炉は、前記第1の熱処理器の熱処理温度を感知するための第1の温度センサと、前記第2の熱処理器の熱処理温度を感知するための第2の温度センサと、前記第1の温度センサ及び前記第2の温度センサの感知温度に基づいて、前記第1の熱処理器及び前記第2の熱処理器がそれぞれ異なる熱処理温度を提供するように制御するコントローラとを更に含む。
【0013】
任意に、前記第2の熱処理器は、前記結晶引上げ方向に配列される600℃~700℃の熱処理温度を提供するための第1のセグメントと、700℃~850℃の熱処理温度を提供するための第2のセグメントとを含む。
【0014】
任意に、前記引上げ機構は、更に、前記単結晶シリコンインゴットを、熱処理される位置に2時間滞留させるように構成されている。
【0015】
任意に、前記結晶引上げ炉は、径方向寸法の小さい上炉室と、径方向寸法の大きい下炉室とを含み、前記第1の熱処理器と前記第2の熱処理器は、前記上炉室に配置され、前記下炉室内には、るつぼと前記るつぼを加熱するためのヒータとが設けられている。
【0016】
任意に、前記単結晶シリコンインゴット全体が前記第1の熱処理器及び前記第2の熱処理器に同時に熱処理されることができるように、前記第1の熱処理器及び前記第2の熱処理器の前記結晶引上げ方向に沿った全長は、前記単結晶シリコンインゴットの長さ以上である。
【0017】
第2の態様として、本願の実施例は、単結晶シリコンインゴットを製造するための方法を提供する。前記方法は、窒素ドープシリコン融液を用いてチョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを引き上げることと、前記単結晶シリコンインゴットを結晶引上げ方向に沿って熱処理される位置に移動させることと、前記単結晶シリコンインゴットのBMDを溶融させる第1の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットの後端部を熱処理することと、前記単結晶シリコンインゴットにBMDを形成させる第2の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットの先端部を熱処理することとを含む。
【0018】
第3の態様として、本願の実施例は、第2の態様に記載の方法によって製造された単結晶シリコンインゴットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、関連技術における窒素ドープシリコン単結晶で結晶成長方向に沿った窒素濃度の理論分布の概略図である。
【
図2】
図2は、一般的な結晶引上げ炉の一実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、本願の実施例における結晶引上げ炉の概略図であり、シリコン融液から単結晶シリコンインゴットが引き上げられていることを示す。
【
図4】
図4は、
図3の結晶引上げ炉の別の概略図であり、単結晶シリコンインゴットが完全にシリコン融液から引き上げられ、第1の熱処理器と第2の熱処理器の中にあることを示す。
【
図5】
図5は、本願の別の実施例における結晶引上げ炉の概略図である。
【
図6】
図6は、本願の別の実施例における結晶引上げ炉の概略図である。
【
図7】
図7は、本願の実施例における単結晶シリコンインゴットを製造するための方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願の実施例における添付の図面を参照して、本願の実施例における技術手段を明確に、完全に説明する。
【0021】
図2を参照すると、一般的な結晶引上げ炉の一実施形態が示されている。前記結晶引上げ炉100は、径方向寸法の小さい上炉室101と、径方向寸法の大きい下炉室102とを含む。前記下炉室102には、シリコン材料を載置するためのるつぼ200が設けられている。このるつぼは、具体的に黒鉛るつぼと石英るつぼを含む。下炉室の内壁とるつぼの外周との間に、るつぼ及びその内部のシリコン材料を加熱してシリコン融液S2を形成するためのヒータ300が設けられている。下炉室102の上部には、上炉室101に連通し、単結晶シリコンインゴットS3が引き上げられる引上げ通路が開設されている。また、下炉室102内には、るつぼ回転機構400とるつぼ載置装置500とが設けられている。るつぼ200は、るつぼ載置装置500によって載置される。るつぼ200を自身の軸線回りに方向Rに回転駆動するためのるつぼ回転機構400は、るつぼ載置装置500の下方に位置する。
【0022】
結晶引上げ炉100を用いて単結晶シリコンインゴットS3を引き上げる場合、まず、るつぼ200に高純度の多結晶シリコン原料を投入し、るつぼ回転機構400によってるつぼ200を回転駆動しながらヒータ300によってるつぼ200を加熱し続け、るつぼ内に収容された多結晶シリコン原料を溶融状態、すなわち溶融したシリコン融液S2に溶融する。ここで、加熱温度は、約1000℃に維持する。炉内のガスは、通常不活性ガスとするため、多結晶シリコンが溶融すると同時に、不要な化学反応が生じない。ヒータ300による熱場を制御して、シリコン融液S2の液面温度を結晶化臨界点に制御する場合、液面の上方に位置する単結晶種結晶S1を液面から方向Pに沿って上方に引き上げると、シリコン融液S2は、単結晶種結晶S1の引上げに伴い上昇し、単結晶種結晶S1の結晶方向に従って単結晶シリコンインゴットS3を成長させる。最終的に製造されるシリコンウェーハに高いBMD密度を持たせるためには、単結晶シリコンインゴットの引上げ中に単結晶シリコンインゴットに窒素をドープすることを選択することができる。例えば引上げ中に結晶引上げ炉100の炉室内に窒素を注入したり、るつぼ200内のシリコン溶融体S2に窒素をドープしたりすることによって、引き上げられた単結晶シリコンインゴット及び単結晶シリコンインゴットから切断されたシリコンウェーハに窒素をドープすることができる。しかし、
図1から分かるように、結晶引上げ炉100で作られた単結晶シリコンインゴットは、後端のN濃度が高く、先端のN濃度が低いため、単結晶シリコンインゴットの先端のBMD濃度が低く、後端のBMD濃度が高く、単結晶シリコンインゴットの品質と良率が低下する。
【0023】
単結晶シリコンインゴット全体のBMD濃度が均一ではないという問題を解決するために、本願は、結晶引上げ炉110を提供する。
図3に示すように、結晶引上げ炉110は、窒素ドープシリコン融液S2を用いてチョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットS3を引き上げるように構成された引上げ機構700と、第1の熱処理器610と、前記第1の熱処理器610の上方に配置された第2の熱処理器620とを含む。第1の熱処理器610及び第2の熱処理器620は、いずれも前記上炉室101内に配置され、結晶引上げ方向Pに沿って垂直に積み重ねられる。第1の熱処理器610は、前記単結晶シリコンインゴットS3のBMDを溶融させる第1の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットS3を熱処理する。第2の熱処理器620は、前記単結晶シリコンインゴットS3にBMDを形成させる第2の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットS3を熱処理する。引上げ機構700は、更に、結晶引上げ方向に前記単結晶シリコンインゴットS3を、後端部が前記第1の熱処理器610に、先端部が前記第2の熱処理器620によって熱処理される位置に移動させるように構成されている。
【0024】
第1の熱処理器610は、950~1200℃の第1の熱処理温度を提供し、単結晶シリコンインゴットの第1の熱処理器610にある部分に950~1200℃の温度範囲の下部温度領域を提供する。単結晶シリコンインゴットS3に窒素含有量の高い部分が下部温度領域で熱処理されると、この部分のBMDがこの温度で溶融し、この部分のBMD含有量を低減する目的を達成する。第2の熱処理器620は、600~850℃の第2の熱処理温度を提供し、単結晶シリコンインゴットの第2の熱処理器中にある部分に600~700℃の温度範囲の上温度領域を提供する。単結晶シリコンインゴットS3に窒素含有量の低い部分が上温度領域で熱処理されると、この部分におけるBMDの核生成に寄与し、この部分のBMD濃度を増加させる目的を達成する。これにより、単結晶シリコンインゴットのBMD濃度が一致しない部分を異なる熱処理温度で対応する熱処理を行い、単結晶シリコンインゴットの全体BMD濃度が均一でないことを回避する。
【0025】
図1から分かるように、上温度領域内に位置する単結晶シリコンインゴットの先端におけるBMD濃度が小さい。任意に、第2の熱処理器は、前記結晶引上げ方向Pに沿って垂直に配列される第1のセグメントと第2のセグメントを含む。前記第1のセグメントは、600℃~700℃の熱処理温度を提供し、前記第2のセグメントは、700℃~850℃の熱処理温度を提供する。第1セグメントと第2セグメントによって単結晶シリコンインゴットS3の異なるBMD濃度を有する部分に対して異なる熱処理温度を選択し、BMDの核生成がより十分であることを保証し、全体的にBMD濃度がより均一な単結晶シリコンインゴットS3を得る。
【0026】
図4を参照すると、前記引上げ機構700は、前記単結晶シリコンインゴットS3を前記結晶引上げ方向Pに沿って移動させ、前記単結晶シリコンインゴットS3を前記下炉室102内に位置する相界面から成長させ、前記第1の熱処理器610と前記第2の熱処理器620によって熱処理される位置に移動させる。単結晶シリコンインゴットS3が所定の条件下での熱処理を受けるようにするために、任意に、前記引上げ機構700は、前記単結晶シリコンインゴットS3全体を前記第1の熱処理器610及び前記第2の熱処理器620に所要の熱処理時間だけ滞留させるように構成される。
図4に示すように、単結晶シリコンインゴットS3は、第1の熱処理器610及び前記第2の熱処理器620に完全に位置するように引上げ機構700によって引き上げられており、引上げ機構700は、予め設定された熱処理時間が経過するまで単結晶シリコンインゴットS3をその位置に保持することができる。
【0027】
本願の任意の実施例において、前記熱処理時間は、2時間であってもよい。
【0028】
熱処理温度の正確性を更に制御するために、任意に、
図5を参照し、前記結晶引上げ炉110は、前記第1の熱処理器610の熱処理温度を感知するための第1の温度センサ801と、前記第2の熱処理器620の熱処理温度を感知するための第2の温度センサ802と、前記第1の温度センサ801及び前記第2の温度センサ802によって感知された熱処理温度に基づいて前記第1の熱処理器610及び前記第2の熱処理器620を制御するコントローラ900とを更に含む。前記第1の温度センサ801は、前記第1の熱処理器610の前記上炉室101の内室に向く側に設置され、感知プローブによって下温度領域の温度を感知して単結晶シリコンインゴットS3の異なる部位が位置する温度領域の熱処理温度を得、次いでそれに電気的に接続されたコントローラ900によって第1の熱処理器610の加熱電力を制御して第1の熱処理温度を正確に調整し、下温度領域の温度を一定に保つ。前記第2の温度センサ802は、前記第2の熱処理器620の前記上炉室101の内室に向く側に配置され、その動作原理は、前記第1の温度センサ801と一致し、ここではその説明を省略する。
【0029】
本願の一実施例において、前記結晶引上げ炉110は、単結晶シリコンインゴットS3全体を同時に第1の熱処理器と第2の熱処理器に位置させて熱処理できるように設置されている。これに対して、任意に、
図6に示すように、前記第1の熱処理器610と第2の熱処理器620の前記結晶引上げ方向Pに沿った長さHは、前記単結晶シリコンインゴットS3の長さL以上である。それによって、前記単結晶シリコンインゴットS3は、第1の熱処理器610と第2の熱処理器620に完全に位置し、同時に単結晶シリコンインゴットS3の異なる部分に対して、対応する熱処理を行うことができる。
【0030】
本願の実施例に係る結晶引上げ炉を用いることにより、窒素ドープ単結晶シリコンインゴットを引き上げる際に、Nの偏析係数が小さいために、結晶インゴットの先端のN濃度が結晶インゴットの後端のN濃度よりはるかに小さくなり、単結晶シリコンインゴット全体のBMD濃度が均一でないという問題を解決する。
【0031】
図7を参照し、本願の実施例は、単結晶シリコンインゴットを製造するための方法を更に提供する。前記方法は、窒素ドープシリコン融液を用いてチョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを引き上げることと、前記単結晶シリコンインゴットを結晶引上げ方向に沿って熱処理される位置に移動させることと、前記単結晶シリコンインゴットのBMDを溶融させる第1の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットの後端部を熱処理することと、前記単結晶シリコンインゴットにBMDを形成させる第2の熱処理温度で前記単結晶シリコンインゴットの先端部を熱処理することとを含む。
【0032】
本願の実施例は、更に単結晶シリコンインゴットを提供する。前記単結晶シリコンインゴットは、本願の実施例による単結晶シリコンインゴットを製造するための方法によって製造される。
【0033】
なお、本願の実施例に記載の各技術手段は、矛盾しない限り、任意に組み合わせることができる。
【0034】
上記は、本願の具体的な実施形態にすぎないが、本願の保護範囲は、これに限定されず、本願に開示された技術範囲内に当業者が容易に想到できる変化又は代替は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。従って、本願の保護範囲は、前記特許請求の範囲の保護範囲を基準とするべきである。
【国際調査報告】