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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/151 20060101AFI20231101BHJP
   C07C 31/125 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 33/025 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 33/22 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 33/46 20060101ALI20231101BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20231101BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
C07C29/151
C07C31/125
C07C33/025
C07C33/22
C07C33/46
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518041
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 GB2021052850
(87)【国際公開番号】W WO2022096875
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】2017456.1
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、ローワン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、チャン
(72)【発明者】
【氏名】グレインジャー、ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ザノッティ-ジェローザ、アントニオ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA11
4G169AA14
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC73A
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE07A
4G169BE14A
4G169BE14B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE21A
4G169BE21B
4G169BE26A
4G169BE27A
4G169BE27B
4G169BE29A
4G169BE31A
4G169BE36A
4G169BE37A
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169BE46A
4G169BE46B
4G169CB02
4G169CB70
4G169DA04
4H006AA02
4H006AC13
4H006AC41
4H006BA23
4H006BA39
4H006BA47
4H006BA48
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
4H039CB40
(57)【要約】
本発明は、エステル含有基質を分子状水素の存在下で、塩基及び遷移金属触媒で処理することを含む、エステル含有基質の水素化プロセスであって、塩基が、エステル含有基質の総量に基づいて少なくとも30モル%で存在し、基質/触媒充填量が、10,000/1以上である、プロセスに関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル含有基質を分子状水素の存在下で塩基及び遷移金属触媒で処理することを含む、エステル含有基質の水素化プロセスであって、前記塩基が、エステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも30モル%で存在し、基質/触媒充填量が、10,000/1以上である、プロセス。
【請求項2】
前記塩基が、エステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも35モル%、好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも40モル%で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記塩基が、エステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも45モル%、好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも50モル%で存在する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記塩基が、金属アルコキシド、好ましくはアルカリ金属アルコキシドである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記塩基が、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、又はカリウムエトキシドから選択される、アルカリ金属エトキシド、好ましくはナトリウムエトキシドである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスが、溶媒の非存在下で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスが、少なくとも1種の溶媒の存在下で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1種の溶媒が、アルコール、トルエン、THF、及びMe-THFから選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1種の溶媒が、エステル含有基質の総体積に基づいて、10~100体積%の量で存在する、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記プロセスが、第1の溶媒及び第2の溶媒の存在下で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1溶媒が、トルエン又はTHFであり、前記第2溶媒が、アルコール、好ましくはエタノールである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の溶媒が、エステル含有基質の総体積に基づいて、10~100体積%の量で存在する、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2の溶媒が、前記エステル含有基質の総体積に基づいて、1~15体積%の量で存在する、請求項10~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
温度が、20~150℃の範囲、好ましくは20~140℃の範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
圧力が、5~100バールの範囲、好ましくは10~95バールの範囲である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記基質/触媒充填量が、20,000/1以上、好ましくは30,000/1以上である、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記基質/触媒充填量が、50,000/1以上、好ましくは100,000/1以上である、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記遷移金属触媒が、三座配位子を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記遷移金属触媒が、式(I)を有する三座配位子を含み、
【化1】
式中、
Xは、-SR、-OR、-CR、-NR、-PR、-P(=O)R、-OPR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又はR、並びにR3a及びR3bのうちの1つ、若しくはR、並びにR3a及びR3bのうちの1つが、それらが結合している原子と一緒になって、環を形成し、
又はXは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成し、
Yは、-SR、-OR、-CR、-NR、-PR、-P(=O)R、-OPR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又はR、並びにR4a及びR4bのうちの1つ、若しくはR、並びにR4a及びR4bのうちの1つが、それらが結合する原子と一緒になって、環を形成し、
又はYは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成し、
3a、R3b、R4a、及びR4bは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又はR3a、並びにR4a及びR4bのうちの1つ、若しくはR3b、並びにR4a及びR4bのうちの1つが、それらが結合している原子と一緒になって、複素環を形成し、
は、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、X及び/若しくはYが-NR、-PR、-OPR、若しくは-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記遷移金属触媒が、式(II)又は式(III)を有し、
[M(L)(L] (II)
[M(L)(L]W (III)
式中、
Mは、遷移金属であり、
は、請求項19に記載の三座配位子であり、
は、同じ又は異なり得る配位子であり、
dは、1、2、又は3であり、
Wは、非配位アニオン性配位子である、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
Mが、Ru及びOsから選択される遷移金属、好ましくはRuである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
各Lは独立して、-H、-CO、-CN、-P(R’)、-As(R’)、-CR’、-OR’、-O(C=O)R’、-NR’、ハロゲン(例えば、-Cl、-Br、-I)、及び溶媒から選択され、式中、各R’は、独立して、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換ヘテロアルキル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、及び置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される、請求項20又は21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記遷移金属触媒が、以下である、請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセス
【化2】
【請求項24】
前記エステル含有基質が、式(X)のものであり、
【化3】
式中、
及びRは独立して、1~70個の炭素原子を有する有機基であり、又は
/Rは、それらが結合している原子と一緒になって、環構造を形成する、請求項1~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記エステル含有基質が、メチルエステル又はエチルエステル、好ましくはエチルエステルである、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
バッチプロセス、好ましくは任意の過剰な塩基が再循環又は再使用されるバッチプロセスである、請求項1~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項27】
フロープロセス、好ましくは任意の過剰な塩基が再循環又は再使用されるフロープロセスである、請求項1~25のいずれか一項に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル含有基質の水素化プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
エステルの還元は、第一級アルコールへの経路として化学工業において不可欠な変換である。エステルの還元は、従来、エタノール中のナトリウム金属などの試薬を(化学量論量若しくは過剰量で)使用して(Bouveault-Blanc還元)、又はより最近では、LiAlH若しくはNaBHなどの金属水素化物試薬を使用して行われてきた。しかしながら、これらの還元反応は、特に極度に発熱性の急冷工程と関連付けられる安全上の懸念に起因して、大規模で効果的に実施することが困難である。したがって、エステルの還元に関する研究は、より最近では、水素ガスを使用する接触還元に焦点を当てている。例えば、Cu又はZn系不均一触媒は、主に、非常に大規模な天然洗浄剤アルコール(Natural Detergent Alcohol、NDA)市場において、エステル還元のために使用される。しかしながら、これらの方法は、大規模な専用生産設備に加えて、非常に高い圧力及び/又は温度を必要とする。他の感受性官能基と比較したエステル還元の化学選択性も、これらの方法を使用するいくつかの場合において問題となり得る。
【0003】
遷移金属触媒を使用するエステル水素化のための多くの他のプロセスが開発されているが、これらのプロセスは、有用な変換率及びターンオーバー数(turnover number、TON)を達成するために大量の触媒の使用を必要とする傾向がある。これは、高価であり、かつ環境に悪影響を及ぼす。したがって、高い触媒活性及びTONを依然として維持しながら、より低い触媒充填量を必要とするエステル水素化のための改善されたプロセスを提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、エステル含有化合物の水素化のための改良されたプロセスを提供する。このプロセスは、単純、経済的、安全であり、標準的な水素化容器中で操作することができる。特定の実施形態において、本プロセスは、従来のプロセスで使用されるよりもはるかに少ない量の触媒の使用を必要とすることによって、環境上の利益を有し得る。
【0005】
第1の態様において、本発明は、エステル含有基質を分子状水素の存在下で、塩基及び遷移金属触媒で処理することを含む、エステル含有基質の水素化のためのプロセスであって、塩基が、エステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも30モル%で存在し、基質/触媒充填量が、10,000/1以上である、プロセスを提供する。
【0006】
定義
部分又は置換基の結合点は、「-」によって表される。例えば、-OHは、酸素原子を介して結合される。
【0007】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を指す。特定の実施形態において、アルキル基は、1~20個の炭素原子、特定の実施形態において、1~15個の炭素原子、特定の実施形態において、1~8個の炭素原子を有し得る。アルキル基は、非置換であり得る。代替的に、アルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、アルキル基は、任意の好適な炭素原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素基を指す。
【0009】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素基を指す。
【0010】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、飽和炭素環式炭化水素基を表すために使用される。シクロアルキル基は、単一の環又は複数の縮合環を有し得る。特定の実施形態において、シクロアルキル基は、3~15個の炭素原子、特定の実施形態において、3~10個の炭素原子、特定の実施形態において、3~8個の炭素原子を有し得る。シクロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、シクロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、シクロアルキル基は、任意の好適な炭素原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。典型的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
本明細書で使用される場合、「シクロアルケニル」という用語は、不飽和非芳香族炭素環式環(非芳香族炭素環)を指す。したがって、シクロアルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するが、より多くの炭素-炭素二重結合を有し得る。特定の実施形態において、シクロアルキル基は、3~15個の炭素原子、特定の実施形態において、3~10個の炭素原子、特定の実施形態において、3~8個の炭素原子を有し得る。シクロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、シクロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、シクロアルケニル基は、任意の好適な炭素原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。典型的なシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、式アルキル-O-又はシクロアルキル-O-[式中、アルキル及びシクロアルキルは、上記で定義されたとおりである]の任意選択的に置換された基を指す。
【0013】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、芳香族炭素環式基を指す。アリール基は、単一の環又は複数の縮合環を有し得る。特定の実施形態において、アリール基は、6~20個の炭素原子、特定の実施形態において、6~15個の炭素原子、特定の実施形態において、6~12個の炭素原子を有し得る。アリール基は、非置換であり得る。代替的に、アリール基は、置換され得る。別途指定されない限り、アリール基は、任意の好適な炭素原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書で使用される場合、「アリールアルキル」という用語は、式アリール-アルキル-[式中、アリール及びアルキルは、上に定義したとおりである]の任意選択的に置換された基を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」、「ハロ」、又は「hal」という用語は、-F、-Cl、-Br、及び-Iを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を指す。ヘテロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、ヘテロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、ヘテロアルキル基は、任意の好適な原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。ヘテロアルキル基の例としては、エーテル、チオエーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた飽和環状炭化水素基を指す。ヘテロシクロアルキル基は、非置換であり得る。代替的に、ヘテロシクロアルキル基は、置換され得る。別途指定されない限り、ヘテロシクロアルキル基は、任意の好適な原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。ヘテロシクロアルキル基の例としては、エポキシド、モルホリニル、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、チラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、チオモルホリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、1つ以上の炭素原子が1つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン及び/又は硫黄原子)で独立して置き換えられた芳香族炭素環式基を指す。ヘテロアリール基は、非置換であり得る。代替的に、ヘテロアリール基は、置換され得る。別途指定されない限り、ヘテロアリール基は、任意の好適な原子において結合され得、置換される場合、任意の好適な原子において置換され得る。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、キノリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「複素環」という用語は、ヘテロシクロアルキル基及びヘテロアリール基の両方を包含する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、1つ以上の水素原子が各々、同じ又は異なり得る置換基(例えば、1、2、3、4、5つ、又はそれら以上)で独立して置き換えられた基を指す。置換基の例としては、-ハロ、-C(ハロ)、-R、=O、=S、-O-R、-S-R、-NR、-CN、-NO、-C(O)-R、-COOR、-C(S)-R、-C(S)OR、-S(O)OH、-S(O)-R、-S(O)NR、-O-S(O)-R及び-CONR、例えば、-ハロ、-C(ハロ)(例えば、-CF)、-R、-O-R、-NR、-CN、又は-NOが挙げられるが、これらに限定されない。R及びRは、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールからなる群から独立して選択され、又は、R及びRはそれらが結合している原子と一緒になって、ヘテロシクロアルキル基を形成する。R及びRは、本明細書で定義されるように、非置換であり得るか、又は更に置換され得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸」という用語は、飽和又は不飽和のいずれかであり得る長い脂肪族鎖(例えば、>6個の炭素原子)を有するカルボン酸を指す。脂肪酸の脂肪族鎖は、分岐鎖又は非分岐鎖であり得る。特定の実施形態において、脂肪酸の脂肪族鎖は、12~24個の炭素原子を含む。特定の実施形態において、脂肪酸の脂肪族鎖は、0~5個の炭素-炭素二重結合を含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「脂肪アルコール」という用語は、飽和又は不飽和のいずれかであり得る長い脂肪族鎖(例えば、>6個の炭素原子)を有するアルコールを指す。脂肪アルコールの脂肪族鎖は、分岐鎖又は非分岐鎖であり得る。特定の実施形態において、脂肪アルコールの脂肪族鎖は、12~24個の炭素原子を含む。特定の実施形態において、脂肪アルコールの脂肪族鎖は、0~5個の炭素-炭素二重結合を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ワックスエステル」という用語は、脂肪酸と脂肪アルコールとのエステルを指し、ここで、脂肪酸及び脂肪アルコールは、上で定義したとおりである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「二座配位子」という用語は、2対の電子を金属原子に供与する配位子を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「三座配位子」という用語は、金属原子に3対の電子を供与する配位子を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「四座配位子」という用語は、金属原子に4対の電子を供与する配位子を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「Ru-SNS」という用語は、ジクロロトリフェニルホスフィン[ビス(2-(エチルチオ)エチル)アミン]ルテニウム(II)を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「Ru-PNN」という用語は、ジクロロトリフェニルホスフィン[2-(ジフェニルホスフィノ)-N-(2-ピリジニルメチル)エタンアミン]ルテニウム(II)を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「Ru-SNN」という用語は、ジクロロトリフェニルホスフィン[2-(エチルチオ)-N-(2-ピリジニルメチル)エタンアミン]ルテニウム(II)を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「S/C」という用語は、「基質/触媒」の略語であり、反応において用いられる触媒充填量を説明するために使用され、すなわち、反応混合物中に存在するエステル含有基質と触媒とのモル比を説明する。エステル含有基質が2つ以上のエステル部分を含む場合、S/C値は、それに応じて調整される。例えば、10,000:1のトリグリセリド対触媒のモル比は、30,000:1のS/Cに等しい(トリグリセリド基質は3つのエステル部分を含有するので)。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ターンオーバー数」(TON)という用語は、1モルの触媒が失活する前に変換することができる基質のモル数を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、別途指定されない限り、「モル%」は、エステル含有基質のモル量に対する指定された材料(例えば、塩基)のモル量をパーセンテージとして説明する。特定の材料(例えば、塩基)について与えられる「モル%」量は、反応チャンバ(すなわち、水素化反応が起こる場所)において用いられるその材料の量である。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「ニート条件」という用語は、エステル含有基質及び塩基の混合物を少なくとも95体積%を含む反応混合物で開始する反応を説明するために使用される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「水素化」という用語は、分子状水素を使用する水素化を指す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
これより、本発明の好ましいかつ/又は任意選択的な特徴が、記載される。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。本発明のいずれの態様の好ましい又は任意選択的な特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせで、組み合わせることができる。
【0036】
本発明は、エステル含有基質を、分子状水素の存在下で、塩基及び遷移金属触媒で処理することを含む、エステル含有基質の水素化のためのプロセスであって、塩基が、エステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも30モル%で存在し、基質/触媒充填量が、10,000/1以上である、プロセスを提供する。
【0037】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、エステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも35モル%、好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも40モル%、より好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも45モル%、更により好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、少なくとも50モル%で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明のプロセスにおける多量の塩基の使用は、既知のプロセスと比較してより低い触媒充填量の使用を可能にすると考えられる。場合によっては、極めて低い触媒充填量、例えば、S/C=100,000/1以上が達成されている。
【0038】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、エステル含有基質の総量に基づいて、200モル%以下、より好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、125モル%以下で存在する。
【0039】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、エステル含有基質の総量に基づいて、30~70モル%の範囲、より好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、30~60モル%の範囲、更により好ましくはエステル含有基質の総量に基づいて、30~50モル%の範囲で存在する。
【0040】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、金属アルコキシドである。金属アルコキシドは、好ましくは、金属メトキシド、金属エトキシド、金属イソプロポキシド、又は金属tert-ブトキシドである。好ましい金属アルコキシドとしては、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、又はカリウムエトキシドが挙げられる。
【0041】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、アルカリ金属アルコキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属メトキシド、アルカリ金属エトキシド、アルカリ金属イソプロポキシド、又はアルカリ金属tert-ブトキシドである。アルカリ金属アルコキシドは、より好ましくは、アルカリ金属メトキシド又はアルカリ金属エトキシドである。
【0042】
本発明の特に好ましいプロセスにおいて、塩基は、アルカリ金属エトキシドである。アルカリ金属エトキシドは、好ましくはリチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド又はカリウムエトキシドであり、より好ましくはナトリウムエトキシドである。
【0043】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、固体形態である。
【0044】
本発明の好ましいプロセスにおいて、塩基は、支持されている。より好ましくは、塩基は、樹脂に支持されている。
【0045】
本発明の好ましいプロセスにおいて、本プロセスは、溶媒の非存在下で行われる。これは、プロセスを実行するのをより容易かつより安価にするという利点を有する。
【0046】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、プロセスは、ニート条件下で行われる。
【0047】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、プロセスは、少なくとも1つの溶媒の存在下で行われる。
【0048】
好ましくは、少なくとも1種の溶媒は、アルコール、トルエン、THF、及びMe-THFから選択される。より好ましくは、少なくとも1種の溶媒は、メタノール、エタノール、トルエン、THF、及びMe-THFから選択される。最も好ましくは、少なくとも1種の溶媒は、メタノール、エタノール、及びトルエンから選択される。
【0049】
本発明の好ましいプロセスにおいて、少なくとも1種の溶媒は、エステル含有基質の総体積に基づいて、10~100体積%、好ましくはエステル含有基質の総体積に基づいて、15~95体積%、より好ましくはエステル含有基質の総体積に基づいて20~90体積%(例えば、エステル含有基質の総体積に基づいて、50体積%)の量で存在する。
【0050】
本発明の好ましいプロセスにおいて、少なくとも1種の溶媒とエステル含有基質との体積比は、1:1以下、好ましくは1:2以下である。
【0051】
本発明の好ましいプロセスにおいて、少なくとも1種の溶媒とエステル含有基質との体積比は、1:2~1:1の範囲、好ましくは1:2~1:1.5の範囲である。
【0052】
本発明の好ましいプロセスにおいて、本プロセスは、2つ以上の溶媒の存在下で行われる。好ましい溶媒は、上記のとおりである。
【0053】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、本プロセスは、第1の溶媒及び第2の溶媒の存在下で行われる。
【0054】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒は、トルエン、THF、及びMe-THFから選択される。本発明の好ましいプロセスにおいて、第2の溶媒は、アルコール、好ましくはエタノールである。
【0055】
本発明の特に好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒は、トルエンであり、第2の溶媒は、アルコール、好ましくはエタノールである。
【0056】
本発明の代替的な特に好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒は、THFであり、第2の溶媒は、アルコール、好ましくはエタノールである。
【0057】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒は、エステル含有基質の総体積に基づいて10~100体積%、好ましくはエステル含有基質の総体積に基づいて、15~95体積%、より好ましくはエステル含有基質の総体積に基づいて、20~90体積%(例えば、エステル含有基質の総体積に基づいて、50体積%)の量で存在する。
【0058】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒とエステル含有基質との体積比は、1:1以下、好ましくは1:2以下である。
【0059】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒とエステル含有基質との体積比は、1:2~1:1の範囲、好ましくは1:2~1:1.5の範囲である。
【0060】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第2の溶媒は、エステル含有基質の総体積に基づいて、1~15体積%の量で、好ましくはエステル含有基質の総体積に基づいて、1~10体積%の量で、好ましくはエステル含有基質の総体積に基づいて、1~7.5体積%の量で、より好ましくはエステル含有基質の総体積に基づいて1~5体積%の量で存在する。
【0061】
本発明の好ましいプロセスにおいて、第1の溶媒は、エステル含有基質の総体積に基づいて、10~100体積%の量で存在し、第2の溶媒はエステル含有基質の総体積に基づいて、1~10体積%の量で存在し、好ましくは第1の溶媒はエステル含有基質の総体積に基づいて、15~95体積%の量で存在し、第2の溶媒はエステル含有基質の総体積に基づいて、1~7.5体積%の量で存在し、より好ましくは第1の溶媒はエステル含有基質の総体積に基づいて、20~90体積%の量で存在し、第2の溶媒はエステル含有基質の総体積に基づいて1~5体積%の量で存在する。
【0062】
本発明の好ましいプロセスにおいて、本プロセスは、20~150℃の範囲、より好ましくは20~140℃の範囲、より好ましくは25~130℃の範囲、より好ましくは25~120℃の範囲、より好ましくは30~100℃の範囲、より好ましくは30~90℃の範囲、より好ましくは30~80℃の範囲、より好ましくは35~75℃の範囲、更により好ましくは37.5~60℃の範囲、更により好ましくは40~55℃の範囲、最も好ましくは40~50℃の範囲(例えば40℃)の温度で行われる。本発明の好ましいプロセスは、比較的低い温度で実施され、これは、反応へのエネルギー入力がより低いので、プロセスがより経済的であることを意味する。エステル水素化のためのより低い温度もまた、触媒安定性を改善するのに役立ち得ると考えられる。
【0063】
本発明の好ましいプロセスは、少なくとも5バール、より好ましくは少なくとも10バール、更により好ましくは少なくとも20バール、更により好ましくは少なくとも30バール、更により好ましくは少なくとも40バール、最も好ましくは少なくとも50バールである圧力で行われる。
【0064】
本発明の好ましいプロセスは、5~100バールの範囲、より好ましくは10~95バールの範囲、更により好ましくは20~90バールの範囲、更により好ましくは25~70バールの範囲、最も好ましくは30~50バールの範囲である圧力で行われる。
【0065】
本発明の好ましいプロセスは、1~24時間、より好ましくは2~16時間、更により好ましくは3~10時間、最も好ましくは4~8時間の期間にわたって行われる。
【0066】
本発明のプロセスは、エステル水素化のための工業的に有用なTON及び変換を依然として達成しながら、低い触媒充填量を必要とする。より低い触媒充填量は、反応がより環境に優しく、より効率的であることを意味する。より低い触媒充填量はまた、反応のコストが低減され得ることを意味する。
【0067】
本発明のプロセスにおいて、基質/触媒充填量は、10,000/1以上である。本発明の好ましいプロセスにおいて、基質/触媒充填量は、20,000/1以上、より好ましくは30,000/1以上、より好ましくは40,000/1以上、更により好ましくは50,000/1以上、より好ましくは60,000/1以上、更により好ましくは70,000/1以上、更により好ましくは80,000/1以上、更により好ましくは90,000/1以上、更により好ましくは100,000/1以上、更により好ましくは200,000/1以上、更により好ましくは300,000/1以上、更により好ましくは400,000/1以上、更により好ましくは500,000/1以上、更により好ましくは600,000/1以上、更により好ましくは700,000/1以上、更により好ましくは800,000/1以上、更により好ましくは900,000/1以上、更により好ましくは1,000,000/1以上である。
【0068】
本発明のプロセスのいくつかの実施形態において、基質/触媒充填量は、2,000,000/1以下である。
【0069】
本発明のプロセスは、遷移金属触媒を用いる。遷移金属触媒は、予備形成され得るか、又はエステル水素化反応中にその場で形成され得る。好ましくは、遷移金属触媒は、予備形成される。代替的に、遷移金属触媒は、エステル水素化反応中にその場で形成される。
【0070】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒中の遷移金属は、第6族、第7族、第8族、又は第9族の遷移金属である。より好ましくは、遷移金属触媒中の遷移金属は、第7族、第8族、又は第9族の遷移金属である。更により好ましくは、遷移金属触媒中の遷移金属は、第8族の遷移金属である。
【0071】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒中の遷移金属は、Mo、Mn、Fe、Ru、Co及びOsから選択される。より好ましくは、遷移金属触媒中の遷移金属は、Ru及びOsから選択される。最も好ましくは、遷移金属触媒中の遷移金属は、Ruである。
【0072】
本発明の好ましいプロセスにおいて、本発明のプロセスにおいて用いられる遷移金属触媒は、三座配位子を含む。
【0073】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
【0074】
【化1】
式中、
Xは、-SR、-OR、-CR、-NR、-PR、-P(=O)R、-OPR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又はR、並びにR3a及びR3bのうちの1つ、若しくはR、並びにR3a及びR3bのうちの1つが、それらが結合している原子と一緒になって、環を形成し、
又はXは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成し、
Yは、-SR、-OR、-CR、-NR、-PR、-P(=O)R、-OPR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又はR、並びにR4a及びR4bのうちの1つ、若しくはR、並びにR4a及びR4bのうちの1つが、それらが結合する原子と一緒になって、環を形成し、
又はYは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成し、
3a、R3b、R4a、及びR4bは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又はR3a、並びにR4a及びR4bのうちの1つ、若しくはR3b、並びにR4a及びR4bのうちの1つが、それらが結合する原子と一緒になって、複素環を形成し、
は、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、X及び/若しくはYが-NR、-PR、-OPR、若しくは-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって複素環を形成する。
【0075】
式(I)の三座配位子において、Xは、好ましくは-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択される。より好ましくは、Xは、-SR、-PR、及び-NHPRから選択される。更により好ましくは、Xは-SR及び-PRから選択される。最も好ましくは、Xは-SRである。
【0076】
式(I)の三座配位子において、R及びRは、各々独立して、好ましくは、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、R及びRは、各々水素である。
【0077】
式(I)の代替的な好ましい三座配位子において、Xは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成する。より好ましくは、Xは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成する。より好ましくは、任意選択的に置換されたヘテロ芳香環は、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香環である。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される。最も好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環はピリジニルである。
【0078】
式(I)の三座配位子において、Yは、好ましくは-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択される。より好ましくは、Yは-SR、-PR、及び-NHPRから選択される。更により好ましくは、Yは-SR及び-PRから選択される。最も好ましくは、Yは-SRである。
【0079】
式(I)の三座配位子において、R及びRは、各々独立して、好ましくは、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、R及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、R及びRは、各々水素である。
【0080】
式(I)の代替的な好ましい三座配位子において、Yは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成する。より好ましくは、Yは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成する。より好ましくは、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環は、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環である。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される。更により好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される。最も好ましくは、任意選択的に置換された窒素含有ヘテロ芳香族環はピリジニルである。
【0081】
式(I)の三座配位子において、R3a、R3b、R4a、及びR4bは、各々独立して、好ましくは、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、R3a、R3b、R4a、及びR4bは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、R3a、R3b、R4a、及びR4bは、各々水素である。
【0082】
式(I)の代替的な好ましい三座配位子において、R3a、並びにR4a及びR4bのうちの1つ、又はR3b、並びにR4a及びR4bのうちの1つは、それらが結合している原子と一緒になって、複素環を形成する。好ましくは、複素環は、6員環複素環である。
【0083】
式(I)の三座配位子において、Rは、好ましくは、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択される。より好ましくは、Rは、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキルから選択される。更により好ましくは、Rは水素である。
【0084】
式(I)の三座配位子において、各m及びnは、好ましくは1である。
【0085】
式(I)の三座配位子において、R及びRは、存在する場合、各々独立して、好ましくは水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択される。より好ましくは、R及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル(例えば、C1~10-アルキル)及び置換若しくは非置換C6~20-アリールから選択される。特に好ましいC1~20-アルキル基としては、エチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシル、より好ましくはメチル、エチル、イソ-プロピル、tert-ブチル、更により好ましくはエチルが挙げられる。好ましいC6~20-アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニルが挙げられ、より好ましくはフェニルである。
【0086】
式(I)の代替的な好ましい三座配位子において、X及び/若しくはYが-NR、-PR、-OPR、若しくは-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0087】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
式中、
Xは、-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はXは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-SR、-CR、-NR、-PR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はYは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、X及び/若しくはYが-NR、-PR若しくは-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0088】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
式中、
Xは、-SR、-PR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はXは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-SR、-PR、及び-NHPRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はYはヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、Rが存在しない場合、ヘテロ芳香族環を形成し、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、X及び/若しくはYが-PR若しくは-NHPRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0089】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
式中、
Xは、-SR及び-PRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はXは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-SR及び-PRから選択され、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はYは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
及びRは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、X及び/若しくはYが-PRである場合、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0090】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは、-SRであり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
Yは-SRであり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択される。
【0091】
好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは、-SRであり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択され、
Yは-SRであり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択され、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択される。
【0092】
より好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは、-SRであり、
及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキルから選択され、
Yは-SRであり、
及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキルから選択され、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキルから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
は、各々独立して、水素及び置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択される。
【0093】
更により好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
X及びYは、各々-SRであり、
、R、R、R、R3a、R3b、R4a、R4b及びRは、各々水素であり、
m及びnは、各々1であり、
は、各々独立して、置換若しくは非置換のC1~20アルキル、好ましくはC1~10アルキルである。
【0094】
更により好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
X及びYは、各々-SEtであり、
、R、R、R、R3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々水素であり、
m及びnは、各々1である。
【0095】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは、ヘテロ原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、
Yは、-PRであり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、R及びRは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0096】
好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは窒素原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-PRであり、
及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、及び置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択され、
3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキルから選択され、
各m及びnは、独立して、1若しくは2であり、
及びRは、各々独立して、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択される。
【0097】
より好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは、窒素原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、及びキノリニルから選択される、窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-PRであり、
、R3a、R3b、R4a、R4b及びRは、各々水素であり、
各m及びnは、1であり、
及びRは、各々独立して、置換若しくは非置換C1~20-アルキル及び置換若しくは非置換C6~20-アリールから選択される。
【0098】
更により好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは窒素原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を形成し、ヘテロ芳香族環は、ピリジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びピリミジルから選択される窒素含有ヘテロ芳香族環であり、
Yは、-PRであり、
、R、R3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々水素であり、
各m及びnは、1であり、
及びRは、各々独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニルから選択される。
【0099】
更により好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは、窒素原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたピリジニル環を形成し、
Yは、-PRであり、
、R、R3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々水素であり、
各m及びnは、1であり、
及びRは、各々独立して、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニルから選択される。
【0100】
更により好ましくは、遷移金属触媒は、式(I)を有する三座配位子を含み、
Xは、窒素原子であり、Rと一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換されたピリジニル環を形成し、
Yは、-PRであり、
、R、R3a、R3b、R4a、R4b、及びRは、各々水素であり、
各m及びnは、1であり、
及びRは、各々フェニルである。
【0101】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(II)又は式(III)を有する。
[M(L)(L] (II)
[M(L)(L]W (III)
式中、
Mは、遷移金属であり、
は、先に定義した三座配位子であり、
は、同じ又は異なり得る配位子であり、
dは、1、2又は3であり、
Wは、非配位アニオン性配位子である。
【0102】
本発明の好ましいプロセスにおいて、Mは、第6族、第7族、第8族又は第9族の遷移金属である。より好ましくは、Mは、第7族、第8族、又は第9族の遷移金属である。更により好ましくは、Mは、第8族の遷移金属である。
【0103】
本発明の好ましいプロセスにおいて、Mは、Mo、Mn、Fe、Ru、Co及びOsから選択される遷移金属である。より好ましくは、MはRu及びOsから選択される遷移金属である。最も好ましくは、MはRuである。
【0104】
本発明の好ましいプロセスにおいて、dは、3である。
【0105】
当業者によって理解されるように、各Lは、L配位子の組み合わせが原子価の規則によって許容されるという条件で、単座配位子又は多座配位子であり得る。本発明の好ましいプロセスにおいては、各Lは単座配位子である。好ましくは、各Lは、独立して、中性単座配位子又はアニオン性単座配位子である。本発明の好ましいプロセスにおいて、各Lは、独立して、-H、-CO、-CN、-P(R’)、-As(R’)、-CR’、-OR’、-O(C=O)R’、-NR’、ハロゲン(例えば、-Cl、-Br、-I)及び溶媒から選択され、式中、各R’は、独立して、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アルキニル、置換若しくは非置換ヘテロアルキル、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、及び置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される。好ましくは、各Lは、独立して、-H、-CO、-P(R’)、及びハロゲンから選択される。より好ましくは、各Lは、独立して、-CO、-PPh、及び-Clから選択される。Lが溶媒である場合、溶媒は、好ましくは、THF、Me-THF、MeCN、HO及びアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)から選択される。
【0106】
式(III)の遷移金属触媒において、Wは非配位アニオン性配位子である。「非配位アニオン性配位子」とは、アニオン配位子が金属中心の外圏に強制的に配置されることを意味する。したがって、アニオン性配位子は金属中心から解離される。これは、アニオン配位子が配位圏内の金属に結合している中性錯体とは対照的である。アニオン性配位子は、一般に、カチオン性錯体のX線結晶構造を分析することによって、非配位性として同定することができる。好ましくは、Wは、トリフレート(すなわち、TfO又はCFSO )、テトラフルオロホウ酸塩(すなわちBF)、ヘキサフルオロアンチモネート(すなわちSbF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF )、[B[3,5-(CF([BAr )、ハロゲン化物(例えばCl、Br、I)及びメシレート(MsO又はMeSO )からなる群から選択される。
【0107】
好ましくは、遷移金属触媒は、式(II)の遷移金属触媒である。
【0108】
代替的に、遷移金属触媒は、式(III)の遷移金属触媒である。
【0109】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、以下のものである
【0110】
【化2】
【0111】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、Ru-SNS又はRu-PNNである。
【0112】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、以下のものである
【0113】
【化3】
【0114】
本発明の好ましいプロセスにおいて、本発明のプロセスにおいて用いられる遷移金属触媒は、二座配位子を含む。
【0115】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(IV)を有する二座配位子を含み、
【0116】
【化4】
式中、
X’は、-NHRaxであり、
Y’は、-SRax、-ORax、-CRax、-NRaxbx、-PRaxbx、-P(=O)Raxbx、-OPRaxbx、及び-NHPRaxbxから選択され、
8a、R8b、R9a、及びR9bは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
pは、1若しくは2であり、
ax及びRbxは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、X’及び/又はY’が-NRaxbx、-PRaxbx、-OPRaxbx、若しくは-NHPRaxbxである場合、Rax及びRbxは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0117】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(V)又は式(VI)を有する。
[M(L(L] (V)
[M(L(L]W (VI)
式中、
Mは、遷移金属であり、
は、同じ又は異なり得る、先に定義した二座配位子であり、
は、存在する場合、同じ又は異なり得る配位子であり、
eは1又は2であり、eが1である場合、fは2、3又は4であり、eが2である場合、fは0、1又は2であり、
Wは、非配位アニオン性配位子である。
【0118】
M、L及びWは、一般的に上記のとおりである。
【0119】
本発明の好ましいプロセスにおいて、本発明のプロセスにおいて用いられる遷移金属触媒は、四座配位子を含む。
【0120】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(VII)を有する四座配位子を含み、
【0121】
【化5】
式中、
Qは、-SRay、-ORay、-CRay、-NRayby、-PRayby、-P(=O)Rayby、-OPRayby、及び-NHPRaybyから選択され、
15及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はQは、ヘテロ原子であり、R15と一緒になった場合、それは、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成し、
Wは、S、O、NR、及びPRから選択され、
16、R及びRは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
又はR16は、Rと一緒になった場合、Rが存在しない場合、任意選択的に置換された複素環を形成し、
Zは、-SRay、-ORay、-CRay、-NRayby、-PRayby、-P(=O)Rayby、-OPRayby、及び-NHPRaybyから選択され、
10a、R10b、R11a、及びR11bは、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、R10a、並びに及びR11a及びR11bのうちの1つ、若しくは、R10b、並びにR11a及びR11bのうちの1つは、それらが結合している原子と一緒になって、複素環を形成し、
12a、R12b、R13a、R13b、及びR14は、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、
各q及びrは、各々独立して、1又は2であり、
sは、0、1又は2であり、
ay及びRbyは、存在する場合、各々独立して、水素、置換若しくは非置換C1~20-アルキル、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C1~20-アルコキシ、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~20-アリール、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリールから選択され、又は、Q及び/又はZが-NRayby、-PRayby、-OPRayby、若しくは-NHPRaybyである場合、Ray及びRbyは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、複素環を形成する。
【0122】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、式(VIII)は式(IX)を有し、
[M(L)(L] (VIII)
[M(L)(L]W (IX)
式中、
Mは、遷移金属であり、
は、先に定義した四座配位子であり、
は、存在する場合、同じ又は異なり得る配位子であり、
gは、0、1又は2であり、
Wは、非配位アニオン性配位子である。
【0123】
M、L及びWは、一般的に上記のとおりである。
【0124】
本発明の好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、共溶媒を使用する沈殿工程によって反応混合物から除去される。
【0125】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、生成物の蒸留によって反応混合物から除去される。
【0126】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、生成物の結晶化によって反応混合物から除去される。
【0127】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、遷移金属触媒は、金属スカベンジャを使用して反応混合物から除去される。
【0128】
本発明の好ましいプロセスにおいて、エステル含有基質は、少なくとも1つのエステル部分を含有する。
【0129】
本発明の好ましいプロセスにおいて、エステル含有基質は、1つのエステル部分を含有する。好ましくは、エステル含有基質は、式(X)のものである
【0130】
【化6】
式中、
及びRは独立して、1~70個の炭素原子を有する有機基であり、又は
/Rは、それらが結合している原子とともに環構造を形成する。
【0131】
本発明の好ましいプロセスにおいて、R及びRは独立して、1~70個の炭素原子を有する有機基である。
【0132】
本発明の好ましいプロセスにおいて、Rは、置換若しくは非置換C1~70-アルキル、置換若しくは非置換C2~70-アルケニル、置換若しくは非置換C2~70-アルキニル、置換若しくは非置換C1~70-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C3~70-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~70-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~70-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~70-アリール、及び置換若しくは非置換C4~70-ヘテロアリール、好ましくは置換若しくは非置換C1~50-アルキル、置換若しくは非置換C2~50-アルケニル、置換若しくは非置換C2~50-アルキニル、置換若しくは非置換C1~50-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C3~50-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~50-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~50-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~50-アリール、及び置換若しくは非置換C4~50-ヘテロアリール、より好ましくは置換若しくは非置換C1~30-アルキル、置換若しくは非置換C2~30-アルケニル、置換若しくは非置換C2~30-アルキニル、置換若しくは非置換C1~30-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C3~30-シクロアルキル、置換若しくは非置換C3~30-シクロアルケニル、置換若しくは非置換C2~30-ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換C6~30-アリール、及び置換若しくは非置換C4~30-ヘテロアリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~20-アルキル(例えば、C8~20-アルキル)、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル(例えば、C8~20-アルケニル)、置換若しくは非置換C2~20-アルキニル(例えば、C8~20-アルキニル)、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル(例えば、C8~20-ヘテロアルキル)、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルキル(例えば、C8~20-シクロアルキル)、置換若しくは非置換C3~20-シクロアルケニル(例えば、C8~20-シクロアルケニル)、置換若しくは非置換C2~20-ヘテロシクロアルキル(例えば、C8~20-ヘテロシクロアルキル)、置換若しくは非置換C6~20-アリール(例えば、C8~20-アリール)、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリール(例えば、C8~20-ヘテロアリール)から選択される。好ましくは、Rは、置換若しくは非置換C1~70-アルキル、置換若しくは非置換C2~70-アルケニル、置換若しくは非置換C1~70-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C6~70-アリール、及び置換若しくは非置換C4~70-ヘテロアリール、より好ましくは置換若しくは非置換C1~50-アルキル、置換若しくは非置換C2~50-アルケニル、置換若しくは非置換C1~50-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C6~50-アリール、及び置換若しくは非置換C4~50-ヘテロアリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~30-アルキル、置換若しくは非置換C2~30-アルケニル、置換若しくは非置換C1~30-ヘテロアルキル、置換若しくは非置換C6~30-アリール、及び置換若しくは非置換C4~30-ヘテロアリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~20-アルキル(例えば、C8~20-アルキル)、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル(例えば、C8~20-アルケニル)、置換若しくは非置換C1~20-ヘテロアルキル(例えば、C8~20-ヘテロアルキル)、置換若しくは非置換C6~20-アリール(例えば、C8~20-アリール)、及び置換若しくは非置換C4~20-ヘテロアリール(例えば、C8~20-ヘテロアリール)から選択される。より好ましくは、Rは、置換若しくは非置換C1~70-アルキル、置換若しくは非置換C2~70-アルケニル、及び置換若しくは非置換C6~70-アリール、より好ましくは置換若しくは非置換C1~50-アルキル、置換若しくは非置換C2~50-アルケニル、及び置換若しくは非置換C6~50-アリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~30-アルキル、置換若しくは非置換C2~30-アルケニル、及び置換若しくは非置換C6~30-アリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~20-アルキル(例えば、C8~20-アルキル)、置換若しくは非置換C2~20-アルケニル(例えば、C8~20-アルケニル)、及び置換若しくは非置換C6~20-アリール(例えば、C8~20-アリール)から選択される。より好ましくは、Rは、置換若しくは非置換C1~70-アルキル及び置換若しくは非置換C6~70-アリール、より好ましくは置換若しくは非置換C1~50-アルキル及び置換若しくは非置換C6~50-アリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~30-アルキル及び置換若しくは非置換C6~30-アリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~20-アルキル(例えば、C8~20-アルキル)、及び置換若しくは非置換C6~20-アリール(例えば、C8~20-アリール)から選択される。更により好ましくは、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、フェニル、トリル、キシリル、及びメトキシフェニルから選択される。
【0133】
本発明の代替的な好ましいプロセスにおいて、Rは、少なくとも9個の炭素原子を含有する脂肪族基である。好ましくは、Rは、置換若しくは非置換C9~70-アルキル、置換若しくは非置換C9~70-アルケニル、置換若しくは非置換C9~70-シクロアルキル、及び置換若しくは非置換C9~70-シクロアルケニル、より好ましくは置換若しくは非置換C9~50-アルキル、置換若しくは非置換C9~50-アルケニル、置換若しくは非置換C9~50-シクロアルキル、及び置換若しくは非置換C9~50-シクロアルケニル、より好ましくは置換若しくは非置換C9~30-アルキル、置換若しくは非置換C9~30-アルケニル、置換若しくは非置換C9~30-シクロアルキル、及び置換若しくは非置換C9~30-シクロアルケニル、更により好ましくは置換若しくは非置換C9~20-アルキル、置換若しくは非置換C9~20-アルケニル、置換若しくは非置換C9~20-シクロアルキル、及び置換若しくは非置換C9~20-シクロアルケニルから選択される。
【0134】
本発明の好ましいプロセスにおいて、Rは、置換若しくは非置換C1~70-アルキル又は置換若しくは非置換C6~70-アリール、好ましくは置換若しくは非置換C1~50-アルキル又は置換若しくは非置換C6~50-アリール、より好ましくは置換若しくは非置換C1~30-アルキル又は置換若しくは非置換C6~30-アリール、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~20-アルキル(例えば、C8~20-アルキル)又は置換若しくは非置換C6~20-アリール(例えば、C8~20-アリール)から選択される。好ましくは、Rは、置換若しくは非置換C1~70-アルキル、より好ましくは置換若しくは非置換C1~50-アルキル、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~30-アルキル、更により好ましくは置換若しくは非置換C1~20-アルキル(例えば、C8~20-アルキル)から選択される。より好ましくは、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルから選択される。
【0135】
本発明の好ましいプロセスにおいて、エステル含有基質は、メチルエステル(例えば、酢酸メチル)である。
【0136】
本発明の好ましいプロセスにおいて、エステル含有基質は、エチルエステル(例えば、酢酸エチル)である。
【0137】
本発明の好ましいプロセスにおいて、エステル含有基質は、ワックスエステルである。
【0138】
本発明の好ましいプロセスにおいて、R/Rは、それらが結合している原子とともに環構造を形成する(すなわち、環構造は、ラクトンである)。好ましくは、環構造は、4~7員環系である。より好ましくは、環構造は、5~6員環系である。
【0139】
本発明の好ましいプロセスにおいて、エステル含有基質は、2つ以上のエステル部分、好ましくは2つ又は3つのエステル部分を含有する。
【0140】
本発明の好ましいプロセスにおいて、エステル含有基質は、以下から選択される
【0141】
【化7】
【0142】
【化8】
【0143】
エステル含有基質がモノエステルである場合、本発明のプロセスの生成物は、アルコールである。エステル含有基質がラクトンである場合、本発明のプロセスの生成物は、ジオールである。エステル含有基質が複数のエステル部分を含有する場合、本発明のプロセスの生成物は、ポリオール及びアルコールである。本発明の好ましいプロセスにおいて、本プロセスは、ヘミアセタール副生成物を生成しない。
【0144】
エステル含有基質がアルケニル及び/又はアルキニル部分を含有する場合、本発明のプロセスは、好ましくは、アルケン及び/又はアルキンの不飽和炭素-炭素結合よりもエステル部分を選択的に水素化する。代替的に、エステル含有基質がアルケニル及び/又はアルキニル部分を含有する場合、本発明のプロセスは、好ましくは、アルケン及び/又はアルキンのエステル部分及び不飽和炭素-炭素結合の両方を水素化する。
【0145】
エステル含有基質がケトン及び/又はアルデヒド部分を含有する場合、本発明のプロセスは、好ましくはエステル部分並びにケトン及び/又はアルデヒドの炭素-酸素二重結合の両方を水素化する。
【0146】
エステル含有基質がアルケニル及び/又はアルキニル部分、並びにケトン及び/又はアルデヒド部分を含有する場合、本発明のプロセスは、好ましくは、アルケン及び/又はアルキンの不飽和炭素-炭素結合よりも、エステル部分並びにケトン及び/又はアルデヒドの炭素-酸素二重結合の両方を選択的に水素化する。代替的に、エステル含有基質がアルケニル及び/又はアルキニル部分、並びにケトン及び/又はアルデヒド部分を含有する場合、本発明のプロセスは、好ましくは、エステル部分、アルケン及び/又はアルキンの不飽和炭素-炭素結合、並びにケトン及び/又はアルデヒドの炭素-酸素二重結合を水素化する。
【0147】
当業者によって理解されるように、アルコキシド塩基が添加され、本発明の水素化プロセスの間、存在し続ける。アルコキシド塩基は、反応混合物から回収され、本発明のその後の水素化プロセスにおいて再循環又は再使用することができる。例えば、エステル含有基質が酢酸エチルであり、塩基がナトリウムエトキシドである場合、水素化反応はエタノールを生成し、ナトリウムエトキシドを生成物として戻し、回収されたナトリウムエトキシドは再循環又は再利用することができる。別の例として、エステル含有基質がデカン酸エチルであり、塩基がナトリウムエトキシドである場合、水素化反応はエタノール及びデカノールを生成する。この場合、回収され再使用可能なアルコキシド塩基は、ナトリウムエトキシド及び/又はデカン酸ナトリウムであり得る。
【0148】
本発明の好ましいプロセスにおいて、プロセスはバッチプロセスである。好ましくは、本プロセスはバッチプロセスであり、任意の過剰の塩基は再循環又は再使用される。塩基は、1回、2回、3回、又はそれ以上再循環又は再使用され得る。
【0149】
本発明の好ましいプロセスにおいて、プロセスは、フロープロセスである。好ましくは、本プロセスは、任意の過剰な塩基が再循環又は再使用されるフロープロセスである。塩基は、1回、2回、3回、又はそれ以上再循環又は再使用され得る。
【0150】
これから、以下の非限定的な実施例を用いて本発明を更に説明する。
【実施例
【0151】
材料
Ru-SNS及びRu-PNNは、Johnson Mattheyから市販されている。
【0152】
Ru-SNNは、Puylaert et al.,Chem.Eur.J.2017,23,8473-8481に概要を述べた手順により作製された。
【0153】
NaOEt並びにエステル含有基質EE1、EE2、EE3、EE5、EE6、ME1、ME2、ME6、WE1、MM、EM、ETD、ED、MO、及び酢酸エチルは全て、例えばSigma Aldrich、Fisher Scientific、Alfa Aesar、Acros Organicsなどから市販されている。
【0154】
測定方法
ガスクロマトグラフィ(gas chromatography、GC)測定は、Varian3900又は3800ガスクロマトグラフシステムを使用して行った。別途示されない限り、反応変換率は、GC分析によって判定した。
【0155】
核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)測定は、Bruker Avance III 400(400MHz)分光計を使用して行った。
【0156】
エステル水素化のための一般手順
8mLバイアルに、触媒Ru-SNS、Ru-PNN、Ru-SNNを添加し、続いて固体塩基、NaOEt、次いで10~20mmolのエステル含有基質を添加した。次いで、バイアルをBiotage Endeavorスクリーニングシステムに加えた後、撹拌ヘッドを密封し、反応混合物を窒素でパージした。パージシーケンスは、約45psiの窒素に加圧し、次いで圧力を解放することを含んでいた(5回繰り返した)。次いで、反応器を水素で加圧し、次いで加熱し、水素の設定圧力まで加圧した。反応時間(典型的には16時間)が完了したら、反応物を室温まで冷却した。次いで、窒素パージサイクル(5回繰り返し)を行って水素を除去した。次いで、反応混合物をGC及びNMRによって分析した。
【0157】
実施例1:エステル水素化
上記の一般的手順を、以下のエステル含有基質に対して行った
【0158】
【化9】
【0159】
各反応で使用した条件を以下の表1a及び1bに列挙する。変換率及びTONに関する各反応の結果も表1a及び1bに列挙する。基質がEE3及びETDであった場合、炭素-炭素二重結合は反応条件下で還元されなかった(すなわち、プロセスはエステル部分の還元について選択的であった)。
【0160】
表1a及び1bの結果は、本発明のプロセスが、メチルエステル、エチルエステル、更にワックスエステルを含む広範囲のエステル含有基質のエステル水素化のための高い変換率及び工業的に有用なTONを、極めて低い触媒充填量(例えば、400,000/1 S/C以下)で達成することができることを示す。これらの結果はまた、三座配位子を含有する様々な異なる遷移金属触媒を使用して水素化反応を行うことができることを示している。
【0161】
表1aのエントリ1は更に、5バールという低い水素圧力でさえ、効率的なターンオーバー(TON=48650)及び変換率(97.3%)が、非常に低い触媒充填量(50,000/1 S/C、EE1/Ru-PNN)で依然として達成され得ることを実証する。
【0162】
表1aのエントリ3は、324000の非常に高いTONが達成されたので、経済的なエステル水素化プロセスが極めて低い触媒充填量(400,000/1 S/C、EE1/Ru-SNS)で達成され得ることを更に示す。反応は81.0%の変換率で進行したが、これは、非常に低い触媒充填量で生じる触媒活性と変換率との間のトレードオフによるものと考えられる。そのような高いTON値では、出発物質及び生成物が容易に分離可能であるため、部分的な変換は問題ではない。回収された出発物質は、次に、本発明のエステル水素化プロセスに再度供することができる。
【0163】
表1bのエントリ5及び6は、少量の溶媒(例えば、EtOH)の使用が変換又はTONに有害でないことを更に示す。反対に、本発明者らは、この方法での溶媒の使用が、特定のタイプの基質に対する反応性能の改善に役立ち得ることを見出した。
【0164】
実施例2a:塩基の量の変化
エステル含有基質としてドデカン酸エチル(EE2)及び触媒としてRu-SNS又はRu-PNNのいずれかを使用して(100,000/1のS/C充填量で)、上記の一般的手順を実施した。温度、圧力、触媒充填量、及び基質量を一定に保ったが、固体NaOEt塩基の量を変化させた。結果を下記表2aに示す。
【0165】
表2aの結果は、反応混合物中の固体NaOEt塩基の量が増加すると、S/C触媒充填量が極めて低いままである(すなわち、100,000/1)にもかかわらず、エステル水素化反応の変換率が劇的に増加することを明確に示している。これは、両方の組の実験、すなわち、Ru-SNS触媒を含むもの及びRu-PNN触媒を含むものについて観察された。各組の実験において、変換率は、塩基が10モル%から40モル%まで増加するにつれて増加する。更に、塩基の量が少なくとも30モル%である場合、96%を超える変換率を達成することができる。30モル%未満の塩基量では著しく低い変換率が観察され、例えば20モル%の塩基では、Ru-SNSについて85.7%の変換率が観察され、Ru-PNNについて59.3%の変換率が観察されたが、10モル%の塩基では、Ru-SNSについて53.5%の変換率が観察され、Ru-PNNについて25.4%の変換率が観察された。
【0166】
実施例2b:塩基の量の変化
エステル含有基質としてデカン酸エチル(ethyl decanoate、ED)及び触媒としてRu-PNN(100,000/1のS/C充填量で)を使用して、上記の一般的手順を実施した。温度、圧力、触媒充填量、及び基質量を一定に保ったが、固体NaOEt塩基の量を変化させた。いくつかの実験において、用いられる塩基の量は、実施例2aの実験で用いられる量よりも多かった。結果を下記表2bに示す。
【0167】
表2bの結果は、反応混合物中の固体NaOEt塩基の量が増加すると、S/C触媒充填量が極めて低いままである(すなわち、100,000/1)にもかかわらず、エステル水素化反応の変換率が増加することを示す。これらの実験において、変換率は、塩基が30モル%から50モル%まで増加するにつれて増加した。
【0168】
実施例2c:塩基の量の変化
エステル含有基質としてデカン酸エチル(ED)及び触媒としてRu-SNS又はRu-PNNのいずれかを使用して(50,000/1のS/C充填量で)、上記の一般的手順を実施した。温度、圧力、触媒充填量、及び基質量を一定に保ったが、固体NaOEt塩基の量を変化させた。結果を下記表2cに示す。
【0169】
実施例2a及び2bに説明される実験と比較して、実施例2cの実験は、12バールのより低い水素圧力で行った。これは、反応がより低い水素濃度によって制限されるので、塩基の量の変化の効果がより顕著であることを意味する。表2cの結果は、より多くの塩基を使用する反応においてより高い活性が観察されたことを示す:Ru-SNS及びRu-PNNの両方について、使用される塩基の量も増加するにつれて、変換率が徐々に増加した。ターンオーバー頻度(turnover frequency、TOF)は、反応変換率と同様のパターンに従うことが見出され、Ru-PNN触媒反応についての値は、Ru-SNSによって触媒されるものよりも高く、Ru-PNNがより低い水素圧力でより活性な触媒であることを示唆した。したがって、実施例2cは、より多量の塩基を使用することにより、低い水素圧力で触媒活性及び変換率を改善することができることを示す。
【0170】
実施例3a:温度の変化
エステル含有基質として安息香酸エチル(EE1)及び触媒としてRu-SNS(50,000/1又は100,000/1のいずれかのS/C充填量で)を使用して、上記の一般的手順を行った。圧力及び塩基の量を一定に保ったが、反応を行う温度を変化させた。結果を下記表3に示す。
【0171】
第1の点として、触媒を用いなかった場合(エントリ1)に0%の変換率が観察されたので、このエステル含有基質の水素化をもたらすために触媒が必要であることが明らかである。
【0172】
エントリ2及び3は、同じ実験の繰り返しであり、ここでは以下の条件を使用した:50,000/1触媒充填量、30バール水素圧力、50mol%NaOEt塩基、20mmol基質、及び40℃温度。水素化反応について高い変換率が観察された(それぞれ99.0%及び99.2%)。65℃のより高い温度を使用して実験を繰り返した場合、変換率は、79.0%に有意に減少した(エントリ4)。
【0173】
エントリ5及び6は、同じ実験の繰り返しであり、ここでは以下の条件を使用した:100,000/1触媒充填量、30バール水素圧、50mol%NaOEt塩基、20mmol基質、及び40℃温度。水素化反応について高い変換率が観察された(それぞれ99.0%及び99.4%)。65℃のより高い温度を使用して実験を繰り返した場合、変換率は、82.5%に有意に減少した(エントリ7)。
【0174】
表3の結果は、エステル水素化反応がより低い温度でより高い変換率を達成することを示す。
【0175】
実施例3b及び3c:温度の変化
オレイン酸エチルEE3(工業グレード、70%、Alfa Aesar製)を最初に純度についてGCによって分析した。結果は、実施例3b及び3cで使用したオレイン酸エチルが以下の組成を有することを示し、いくつかの副生成物がその後の水素化反応において予想されることを示した。
【0176】
【表1】
【0177】
実施例3b
エステル含有基質としてオレイン酸エチル(EE3)及び触媒としてRu-SNSを使用して、上記の一般的手順を行った。圧力、基質量、及び塩基量を一定に保ったが、反応が行われる触媒充填量(S/C)及び温度を変化させた。結果を下記表4に示す。
【0178】
25,000/1(S/C)の触媒充填量では、C18:1水素化反応変換率は、40℃及び65℃の温度を用い、他の全ての条件を一定に保った場合と同様であった。温度を80℃に上昇させた場合、C18:1変換率の有意な減少が観察された(エントリ1、4、及び7)。
【0179】
50,000/1(S/C)の触媒充填量では、C18:1水素化反応変換率は、温度を40℃から65℃に上昇させ、全ての他の条件を一定に維持した場合、100%から93.2%に減少した(エントリ2及び5)。
【0180】
100,000/1(S/C)の触媒充填量では、C18:1水素化反応変換率は、温度を40℃から及び65℃に上昇させ、全ての他の条件を一定に維持した場合、99.1%から9.7%に劇的に減少した(エントリ3及び6)。
【0181】
表4の結果は、エステル水素化がより低い温度でより高いC18:1変換率を達成することを示している。更に、この効果は、より低い触媒充填量でより顕著であり、温度が増加するにつれて、C18:1変換率のより大きい減少が見られる。
【0182】
実施例3c
エステル含有基質としてオレイン酸エチル(EE3)及び触媒としてRu-PNNを使用して、上記の一般的手順を行った。圧力、基質量、及び塩基量を一定に保ったが、反応が行われる触媒充填量(S/C)及び温度を変化させた。結果を下記表5に示す。
【0183】
25,000/1(S/C)の触媒充填量では、C18:1水素化反応変換率は、40℃、65℃及び80℃の温度を用い、他の全ての条件を一定に保った場合(エントリ1、4、及び7)と同様であった。
【0184】
100,000/1(S/C)の触媒充填量では、C18:1水素化反応変換率は、温度を40℃から65℃に上昇させ、全ての他の条件を一定に維持した場合、100%から51.6%に劇的に減少した(エントリ3及び6)。
【0185】
表5の結果は、エステル水素化がより低い温度でより高いC18:1変換率を達成することを示している。再び、この効果は、より低い触媒充填量でより顕著であり、温度が増加するにつれてC18:1変換率のより大きい減少が見られる。
【0186】
実施例3a、3b及び3cの結果は、エステル水素化反応が温度に敏感であり、より低い温度(例えば、約40℃)での反応変換に関して最良に機能することを示す。これは、一連のエステル含有基質及び触媒にわたって実証されている。より低い反応温度は、非常に低い触媒充填量が使用される場合に特に有益である。
【0187】
実施例3d:温度の変化
最初に、オレイン酸メチル(ThermoFisher Scientificからの工業グレード、C18’70~85%)を純度についてGCによって分析した。結果は、実施例3dで使用したオレイン酸メチルが以下の組成を有することを示し、いくつかの副生成物がその後の水素化反応において予想されることを示した。
【0188】
【表2】
【0189】
エステル含有基質としてオレイン酸メチルを使用し、触媒としてRu-SNSを使用して、上記の一般的手順を行った。圧力、基質量、及び塩基量を一定に保ったが、反応が行われる触媒充填量(S/C)及び温度を変化させた。結果を下記表6に示す。
【0190】
25,000/1(S/C)の触媒充填量では、C18:1水素化反応変換率は、40℃、50℃及び60℃の温度を用い、他の全ての条件を一定に保った場合と同様であった。温度を70℃に上昇させると、C18:1変換率の有意な減少が観察された。
【0191】
50,000/1(S/C)の触媒充填量では、C18:1水素化反応変換率は、温度が40℃から70℃(10℃の増分で)に増加するにつれて一貫して減少し、他の全ての条件は、一定に保たれた。
【0192】
表6の結果は、エステル水素化がより低い温度でより高いC18:1変換率を達成することを示している。再び、この効果は、より低い触媒充填量でより顕著であり、温度が増加するにつれてC18:1変換率のより大きい減少が見られる。
【0193】
実施例4:圧力の変化
実施例3b及び3cで使用したオレイン酸エチル(EE3)試料を、実施例4でも用いた。
【0194】
エステル含有基質としてオレイン酸エチル(EE3)及び触媒としてRu-SNS又はRu-PNNを使用して、上記の一般的手順を実施した。この実施例において、エステル水素化反応は、10バールのより低い水素圧力で行った。結果を下記表7に示す。
【0195】
表7のエントリ1と表4のエントリ2との比較は、匹敵する結果を示す。したがって、全ての他の変数が一定のままである場合、Ru-SNSを使用して行われるエステル水素化反応は、(表4のエントリ2における30バールと比較して)10バールのはるかに低い水素圧であっても高いC18:1変換率を達成する。
【0196】
表7のエントリ2と表5のエントリ2との比較もまた、匹敵する結果を示す。したがって、全ての他の変数が一定のままである場合、Ru-PNNを使用して行われるエステル水素化反応は、(表5のエントリ2における30バールと比較して)10バールのはるかに低い水素圧であっても高いC18:1変換率を達成する。
【0197】
本発明のエステル水素化プロセスをより低い圧力で操作することができることは、コストの削減及び安全性の改善という追加の利点を提供する。加えて、高圧に耐えなければならない特別な装置の必要性が回避される。
【0198】
実施例5:塩基の再循環/再利用
一連の実験を行って、水素化反応の1回目の実行からの塩基を後続の2回目の実行において再循環/再使用することが可能であるかどうかを判定した。
【0199】
・1回目の実行
エステル含有基質として酢酸エチルを、触媒としてRu-PNNを(50,000/1のS/Cの充填量で)使用して、上記の一般的手順を実施した。以下の表8aに示す条件を使用して、反応を3回繰り返した。
【0200】
・2回目の実行
水素化反応のエタノール生成物を、1回目の実行の反応混合物の各々から真空下で除去した。次いで、各反応から回収された塩基(この場合、NaOEt)を、第2の実行のために3つの別個のバイアルに移した。次いで、バイアルを以下のように調製した。
【0201】
試験(i)、表8aの実験1の反応混合物を使用-新鮮な酢酸エチル基質(2mL、20.47mmol)の添加、新鮮なRu-PNN触媒(0.309mg、4.09×10-3mmol)の添加、及び新鮮なNaOEt塩基の最大50mol%までの添加、
試験(ii)、表8aの実験2の反応混合物を使用-新鮮な酢酸エチル基質(2mL、20.47mmol)の添加及び新鮮なRu-PNN触媒(0.309mg、4.09×10-3mmol)の添加。
【0202】
次いで、バイアルをBiotage Endeavorスクリーニングシステムに添加し、上記の一般的手順に従って水素化反応を行った。結果を下記表8bに示す。
【0203】
結果は、再循環/再使用された塩基のみを使用して行われた反応(試験(ii))が、新鮮な塩基で補充された反応(試験(i))と比較して、変換率に関して同等に良好に機能し、同様の反応速度が両方について観察されたことを示す。これらの結果は、水素化反応の1回目の実行において生成された塩基が、2回目の実行において効果的に再循環/再使用され得ることを示す。生成された塩基の更なる再循環/再使用が、例えば3回目の実行において行われ得ることも想定される。これは、特に工業規模で、プロセス全体をより費用効果的にする可能性を有する。結果はまた、例えばプロセスを小規模で操作する場合に、機械的損失を軽減するために、再循環/再使用される塩基を新鮮な塩基で補充することが可能であることを示す。
【0204】
【表3】
【0205】
【表4】
パージシーケンスの前にバイアルに0.1mLのEtOHを添加した)
【0206】
【表5】
【0207】
【表6】
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】
【0210】
【表9】
【0211】
【表10】
【0212】
【表11】
【0213】
【表12】
【0214】
【表13】
a1H NMRスペクトルにおける対応する生成物ピーク及び出発物質ピークの積分から計算された変換率。
【0215】
【表14】
a1H NMRスペクトルにおける対応する生成物ピーク及び出発物質ピークの積分から計算された変換率;第2の実行の前に添加された新鮮な基質の量に基づいて計算されたS/C。
【国際調査報告】