(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】カラー表示用発光ダイオード型光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20231101BHJP
H01L 33/20 20100101ALI20231101BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231101BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/20
H01L21/205
G09F9/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519562
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021076573
(87)【国際公開番号】W WO2022069431
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ダーノウン,メディ
(72)【発明者】
【氏名】シハウィ,ヴァルフ
【テーマコード(参考)】
5C094
5F045
5F241
【Fターム(参考)】
5C094BA25
5C094CA19
5C094DB01
5C094EA10
5F045AA15
5F045AB09
5F045AB14
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD12
5F045AD13
5F045AE03
5F045CA10
5F241AA12
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CB23
5F241CB27
5F241FF01
(57)【要約】
本開示は、アキシャル構成を有する第1、第2および第3の3次元発光ダイオードを備える光電子デバイス(10)に関するものである。各発光ダイオードは、半導体素子(20、22、24)と、半導体素子上に載置された活性領域と備える。各半導体素子は、マイクロワイヤ、ナノワイヤ、ナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐形または錐台形素子に対応する。第1、第2、および第3の発光ダイオードは、それぞれ第1、第2、および第3の波長で第1、第2、および第3の放射線を放出するように構成されている。第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子は、それぞれ第1、第2および第3の直径(D1、D2、D3)を有する。第1の直径(D1)は第2の直径(D2)よりも小さく、第2の直径(D2)は第3の直径(D3)よりも小さく、第1の波長は第3の波長よりも大きく、第2の波長は第1の波長よりも大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイス(10)であって、
アキシャル構成の第1、第2および第3の3次元発光ダイオードを備え、各発光ダイオードは、半導体素子(20、22、24)と、前記半導体素子上に載置された活性領域(76)とを備え、各半導体素子は、マイクロワイヤ、ナノワイヤ、ナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐形素子、またはナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐台形素子に対応し、前記第1の発光ダイオードは、第1の波長で第1の放射線を放出するように構成されており、前記第1の発光ダイオードの半導体素子は、第1の直径(D1)を有し、前記第2の発光ダイオードは、第2の波長で第2の放射線を放出するように構成されており、前記第2の発光ダイオードの半導体素子は、第2の直径(D2)を有し、前記第3の発光ダイオードは、第3の波長で第3の放射線を放出するように構成されており、前記第3の発光ダイオードの半導体素子は第3の直径(D3)を有し、前記第1の直径(D1)は前記第2の直径(D2)よりも小さく、前記第2の直径(D2)は前記第3の直径(D3)よりも小さく、前記第1の波長は前記第3の波長よりも大きく、前記第2の波長は前記第1の波長よりも大きい、光電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の直径(D1)は、80nmから150nmの範囲で変化する、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記第2の直径(D2)は、200nmから350nmの範囲で変化する、請求項1または2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記第3の直径(D3)は、370nmから500nmの範囲で変化する、請求項1~3のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記第1の波長は、510nmから570nmの範囲にある、請求項1~4のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記第2の波長は、600nmから720nmの範囲にある、請求項1~5のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項7】
前記第3の波長は、430nmから490nmの範囲にある、請求項1~6のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項8】
第2の電子回路(14)にボンディングされた第1の光電子回路(12)を備え、前記第2の電子回路(14)は導電性パッド(62)を備え、前記第1の光電子回路は画素を備え、各画素について、
-第1の導電層(18)を備え、
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードのそれぞれについて、前記半導体素子(20、22、24)は、前記第1の導電層に対して垂直に延び、前記第1の導電層と接触しており、前記第1の導電層とは反対側の前記半導体素子の端部に活性領域(76)が載置されており、
-前記導電性パッド(62)に電気的に結合された第2、第3、第4および第5の導電層(42、44、46、48)を備え、前記第2の導電層(42)は第1の発光ダイオードの活性領域(76)に結合され、前記第3の導電層(44)は前記第2の発光ダイオードの活性領域(76)に結合され、前記第4の導電層(46)は前記第3の発光ダイオードの活性領域(76)に結合され、前記第5の導電層(48)は前記第1の導電層に結合されている、請求項1~7のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項9】
各活性領域(76)は、単一の量子井戸または複数の量子井戸を備える、請求項1~8のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記半導体素子(20、22、24)および前記活性領域は、III-V族化合物で作られている請求項1~9のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)は、MOCVDにより形成されている、請求項1~10のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項12】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域(76)は、MBEにより形成されている、請求項1~11のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項13】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(20、22、24)は、基板(100)上に載置されており、前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(20、22、24)のエピタキシャル成長に適合する材料と接触している、請求項1~12のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項14】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードは、モノリシック構造を形成している、請求項1~13のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載の光電子デバイス(10)の製造方法であって、
以下の連続したステップ:
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)を同時に形成するステップと、
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)上に、前記第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域(76)を同時に形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)はMOCVDにより形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域(76)はMBEにより形成される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
以下の連続したステップ:
-支持体(110)上に前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)を形成すると同時に、前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)上に前記第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域(76)を形成するステップと、
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードの3次元半導体素子(20、22、24)の間に電気絶縁層(32)を形成するステップと、
-前記支持体を除去するステップと
を含む、請求項15~17のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ナノワイヤ型またはマイクロワイヤ型の3次元半導体素子を備える光電子デバイスおよびその製造方法に関し、より詳細には、画像を表示することができる光電子デバイス、特に表示スクリーンまたは画像投影デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
画像の画素は、光電子デバイスによって表示または捕捉される画像の単位要素に対応するものである。カラー画像を表示する場合、光電子デバイスは、一般に、画像の各画素を表示するために、それぞれが実質的に単一色(例えば、赤、緑、青)の光放射を放出する、表示副画素とも呼ばれる少なくとも3つの構成要素を備える。3つの表示副画素によって放出される放射線の重ね合わせは、表示された画像の画素に対応する色の感覚を観察者に提供する。この場合、画像の画素の表示に使用される3つの表示副画素によって形成される集合体は、光電子デバイスの表示画素と呼ばれる。
【0003】
III-V族化合物をベースとしたナノワイヤまたはマイクロワイヤ型の3次元半導体素子を備える光電子デバイスがあり、いわゆる3次元発光ダイオードを形成することができる。発光ダイオードは活性領域を備え、発光ダイオードによって供給される電磁放射線の大部分が発光ダイオードの活性領域から放出される。3次元発光ダイオードは、3次元半導体素子の外周部に活性領域が形成された、コア/シェル構成とも呼ばれる、いわゆるラジアル構成で形成されてもよい。また、活性領域が3次元半導体素子の外周部を覆わず、基本的に長手方向のエピタキシャル成長軸に沿って延びる、いわゆるアキシャル構成で形成されてもよい。
【0004】
アキシャル構成の3次元発光ダイオードは、ラジアル構成の発光ダイオードよりも発光面積が小さいが、結晶性に優れた半導体材料で作られ、したがって、特に半導体層間の界面の応力が緩和されやすいため、内部量子効率が高くなる利点がある。
【0005】
活性領域によって放出された電磁放射線を異なる波長の電磁放射線、特により高い波長の電磁放射線に変換することができるフォトルミネッセンス材料で発光ダイオードを覆うことが知られている。しかしながら、そのようなフォトルミネッセンス材料は、コストが高く、変換効率が低く、性能が経時的に劣化する可能性がある。
【0006】
したがって、フォトルミネッセンス材料を使用せずに、カラー表示を得るために3つの異なる色の放射線を直接放出するように構成された発光ダイオードを備える光電子デバイスを形成することができることが望まれる。
【0007】
さらに、III-V族化合物をベースとしたアキシャル型3次元発光ダイオードの活性領域の製造方法の産業上の開発は、面倒な作業である。異なる直径の半導体素子を用いて、異なる色の放射線を放出する発光ダイオードを同時に形成することは知られているが、活性領域によって放出される放射線の波長は、特に半導体素子の直径と半導体素子間の距離に依存し、理論的には波長が半導体素子の直径とともに短くなる。しかし、青色に発光する発光ダイオードを形成することは困難である可能性があり、発光ダイオードは、工業的規模での製造方法に適合するには直径が小さすぎる半導体素子に対応する。
【発明の概要】
【0008】
したがって、実施形態の目的は、発光ダイオードを備える上述の光電子デバイスの欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【0009】
実施形態の他の目的は、各発光ダイオードの活性領域が、III-V族化合物をベースとした半導体材料の層の積層体を備えることである。
【0010】
実施形態の他の目的は、光電子デバイスが、フォトルミネッセンス材料を使用せずに3つの異なる色の光放射を放出するように構成された発光ダイオードを備えることである。
【0011】
実施形態の他の目的は、光電子デバイスが、3つの異なる色の光放射を放出するように構成され、同時に製造される発光ダイオードを備えることである。
【0012】
実施形態は、アキシャル構成を有する第1、第2、および第3の3次元発光ダイオードを備える光電子デバイスを提供し、各発光ダイオードは、半導体素子と、半導体素子上に載置された活性領域とを備え、各半導体素子は、マイクロワイヤ、ナノワイヤ、ナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐形素子、またはナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐台形素子に対応し、第1の発光ダイオードは、第1の波長で第1の放射線を放出するように構成されており、第1の発光ダイオードの半導体素子は、第1の直径を有し、第2の発光ダイオードは、第2の波長で第2の放射線を放出するように構成されており、第2の発光ダイオードの半導体素子は第2の直径を有し、第3の発光ダイオードは、第3の波長で第3の放射線を放出するように構成されており、第3の発光ダイオードの半導体素子は第3の直径を有し、第1の直径は第2の直径よりも小さく、第2の直径は第3の直径よりも小さく、第1の波長は第3の波長よりも大きく、第2の波長は第1の波長よりも大きい。
【0013】
実施形態によれば、第1の直径は、80nmから150nmの範囲で変化する。
【0014】
実施形態によれば、第2の直径は、200nmから350nmの範囲で変化する。
【0015】
実施形態によれば、第3の直径は、370nmから500nmの範囲で変化する。
【0016】
実施形態によれば、第1の波長は、510nmから570nmの範囲にある。
【0017】
実施形態によれば、第2の波長は、600nmから720nmの範囲にある。
【0018】
実施形態によれば、第3の波長は、430nmから490nmの範囲にある。
【0019】
実施形態によれば、デバイスは、第2の電子回路にボンディングされた第1の光電子回路を備え、第2の電子回路は、導電性パッドを備え、第1の光電子回路は、画素を備え、各画素について、
-第1の導電層を備え;
-第1、第2および第3の発光ダイオードのそれぞれについて、前述した半導体素子は、第1の導電層に対して垂直に延び、第1の導電層と接触し、第1の導電層とは反対側の半導体素子の端部に活性領域が載置され;
-前記導電性パッドに電気的に結合された第2、第3、第4、第5の導電層を備え、第2の導電層は第1の発光ダイオードの活性領域に結合され、第3の導電層は第2の発光ダイオードの活性領域に結合され、第4の導電層は第3の発光ダイオードの活性領域に結合され、第5の導電層は第1の導電層に結合されている。
【0020】
実施形態によれば、各活性領域は、単一の量子井戸または複数の量子井戸を備える。
【0021】
実施形態によれば、半導体素子および活性領域は、III-V族化合物で作られている。
【0022】
実施形態によれば、第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子は、MOCVDにより形成されている。
【0023】
実施形態によれば、第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域は、MBEにより形成されている。
【0024】
実施形態によれば、第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子は、基板上に載置されており、第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子のエピタキシャル成長に適合する材料と接触している。
【0025】
実施形態によれば、第1、第2および第3の発光ダイオードは、モノリシック構造を形成している。
【0026】
また、実施形態は、先に定義されたような光電子デバイスを製造する方法を提供する。該方法は、以下の連続したステップ:
-第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子を同時に形成するステップと、
-第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子上に、第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域を同時に形成するステップと
を含む。
【0027】
実施形態によれば、本方法は、以下の連続したステップ:
-支持体上に第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子を形成すると同時に、第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子上に第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域を形成するステップと、
-第1、第2および第3の発光ダイオードの3次元半導体素子の間に電気絶縁層を形成するステップと、
-支持体を除去するステップと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
上記および他の特徴および利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0029】
【
図1】マイクロワイヤまたはナノワイヤを備える光電子デバイスの一実施形態を示す部分概略断面図である。
【
図3】試験により得られた、アキシャル型発光ダイオードが放出する放射線の中心波長の発光ダイオードの直径に応じた変化の曲線を示す図である。
【
図4】
図1の光電子デバイスで得ることができる色領域を示す色度図である。
【
図5】試験により得られた、
図1の光電子デバイスの3つの発光ダイオードによって放出される放射線の波長に応じた光強度の変化の曲線を示す図である。
【
図6】
図1の光電子デバイスの動作を説明する部分概略断面図である。
【
図7A】
図1に示す光電子デバイスの製造方法の一実施形態のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
同様の特徴は、様々な図面で同様の参照符号によって指定されている。特に、様々な実施形態の間で共通である構造的および/または機能的特徴は、同じ参照符号を有し得、同一の構造的、寸法的および材料的特性を有し得る。明確にするために、本明細書に記載された実施形態の理解に有用なステップおよび要素のみが図示され、詳細に説明されている。特に、光電子デバイスの発光ダイオードを制御するための手段は、よく知られており、説明を省略する。
【0031】
以下の説明では、用語「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」などの絶対位置を修飾する用語、または用語「の上」、「の下」、「上方」、「下方」などの相対位置を修飾する用語、または用語「水平」、「垂直」などの方向を修飾する用語に言及する場合、それは図面の向きまたは通常の位置で使用する光電子デバイスを参照する。
【0032】
特に指定しない限り、2つの要素が接続されていると言及する場合は、導体以外の中間要素なしに直接に接続されていることを意味し、2つの要素が結合されていると言及する場合は、これら2つの要素が接続されていてもよいし、1つ以上の他の要素を介して結合されていてもよいことを意味する。
【0033】
特に明記しない限り、「およそ」、「約」、「実質的に」および「程度」という表現は、10%以内を意味し、好ましくは5%以内を意味する。さらに、特に明記しない限り、「絶縁性」という表現は「電気絶縁性」を意味し、「導電性」という表現は「電気伝導性」を意味する。以下の説明では、層の内部透過率は、層から出る放射線の強度と層へ入る放射線の強度との比に対応する。層の吸収は、1と内部透過率との差に等しい。以下の説明では、層を通る放射線の吸収が60%よりも小さい場合、層は放射線に対して透明であるという。以下の説明では、層における放射線の吸収が60%よりも高い場合、層は放射線に対して吸収性を有するという。放射線が、例えばガウス型など、一般的に「ベル」型のスペクトルを示し、最大値を有する場合、放射線の波長、または放射線の中心波長もしくは主波長は、スペクトルの最大値に達する波長を指す。以下の説明では、材料の屈折率は、光電子デバイスが放出する放射線の波長範囲に対する材料の屈折率に対応する。特に指定しない限り、屈折率は、有用な放射線の波長範囲にわたって実質的に一定であると考えられ、例えば、光電子デバイスによって放出される放射線の波長範囲にわたる屈折率の平均に等しい。
【0034】
本願は、特に、3次元素子、例えば、マイクロワイヤ、ナノワイヤ、ナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐形素子、またはナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐台形素子を備える発光ダイオードを備える光電子デバイスに関する。特に、錐形素子または錐台形素子は、円錐形素子または円錐台形素子であってもよく、角錐形素子または角錐台形素子であってもよい。以下の説明では、特に、マイクロワイヤまたはナノワイヤを備える電子デバイスのための実施形態が説明される。しかし、このような実施形態は、マイクロワイヤまたはナノワイヤ以外の3次元素子、例えば、錐形または錐台形の3次元素子に対して実施することができる。
【0035】
「マイクロワイヤ」、「ナノワイヤ」、「錐形素子」、または「錐台形素子」という用語は、好ましい方向に沿って細長い形状を有する3次元構造を指し、3次元構造は、5nmから2.5μm、好ましくは50nmから1μm、より好ましくは30nmから300nmの範囲の、マイナーディメンションと呼ばれる少なくとも2つの寸法を有し、メジャーディメンションと呼ばれる第3の寸法は、最大のマイナーディメンションの1倍以上、好ましくは5倍以上で、例えば1μmから5μmの範囲にある。
【0036】
以下の説明では、「ワイヤ」という用語は、「マイクロワイヤ」または「ナノワイヤ」を指すために使用される。好ましくは、ワイヤの好ましい方向に垂直な平面において、断面の重心を通るワイヤの中線は、実質的に直線的であり、以下、ワイヤの「軸」と呼ぶ。ワイヤの直径は、ここでは、断面のレベルでのワイヤの外周に関連する量であると定義される。これは、ワイヤの断面と同じ面を有する円盤の直径であってもよい。局部直径は、以下、直径とも呼ばれ、ワイヤの軸に沿った所定の高さのレベルでのワイヤの直径である。平均直径は、ワイヤまたはその一部に沿った局所的な直径の平均値、例えば算術平均値である。
【0037】
実施形態によれば、各アキシャル型発光ダイオードは、前述したように、ワイヤと、ワイヤの上部の活性領域とを備える。活性領域は、発光ダイオードから供給される放射線の大部分が放出される領域である。活性領域は、閉じ込め手段を備えてもよい。活性領域は、量子井戸、2つの量子井戸、または複数の量子井戸を備え、各量子井戸は2つの障壁層の間に介在し、量子井戸は障壁層のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有してもよい。活性領域は、ワイヤのIII族元素およびV族元素と、追加のIII族元素とを備える3元化合物で作られる一または複数の量子井戸を備えてもよい。活性領域によって放出される放射線の長さは、追加のIII族元素の組み込まれた割合に依存する。例えば、ワイヤはGaNで作られてもよく、量子井戸(複数可)はInGaNで作られてもよい。それに応じて、活性領域によって放出される放射線の長さは、Inの組み込まれた割合に依存する。
【0038】
ワイヤの直径に応じて追加のIII族元素の割合が変化することは知られている。しかし、このような変化に言及する従来の文献には、ワイヤの直径に応じて追加のIII族元素の割合が増加し、その結果、このようなワイヤを備えるアキシャル型発光ダイオードによって放出される放射線の波長が増加することが記載されている。
【0039】
本発明者らは、第1、第2および第3の連続する直径範囲が観察され得、ワイヤの直径が第1の直径範囲にわたって増加すると、発光ダイオードによって放出される放射線の波長が増加し、ワイヤの直径が第2の直径範囲にわたって増加すると、発光ダイオードによって放出される放射線の波長が減少し、ワイヤの直径が第3の直径範囲にわたって増加すると、発光ダイオードによって放出される放射線の波長が停滞することを明らかにした。
【0040】
この結果は、有機金属化学気相成長法(MOCVD)で形成したワイヤと、一般的な分子線エピタキシー法(MBE)で形成した活性領域とを利用して有利に得られる。
【0041】
前述した方法は、画像を表示することができる光電子デバイス、特に表示スクリーンまたは画像投影デバイスを製造するために実施されてもよい。特に、前述した方法は、異なる平均直径のワイヤ、例えば、小さな平均直径を有する第1のワイヤ、中間の直径を有する第2のワイヤ、および大きな平均直径を有する第3のワイヤを製造するために実施されてもよい。第1、第2および第3のワイヤに形成された活性領域は、異なる波長の放射線を放出する。特に、小さな平均直径を有する第1のワイヤは、第1の中心波長で放射線を放出し、中間の平均直径を有する第2のワイヤは、第2の中心波長で放射線を放出し、大きな平均直径を有する第3のワイヤは、第3の中心波長で放射線を放出し、第2の波長は第1の波長よりも大きく、第3の波長は第1の波長よりも小さい。そして、カラー表示画面を製造することができる。
【0042】
MOCVDによるワイヤの形成は、MBEによって得られるワイヤと比較して、欠陥の少ない、特に欠陥のないワイヤを得ることを可能にするという利点がある。MOCVDによるワイヤの形成は、ワイヤの高速成長を可能にするという利点がある。さらに、本発明に従って実施される直径-波長変化曲線に準拠する直径を有するワイヤを容易に得ることができる。MBE法は、MOCVD法と比較して、量子井戸に追加のIII族元素をより大きな割合で組み込むことを可能にするという利点がある。
【0043】
さらに、活性領域がワイヤの上部にのみ形成され、ワイヤの側面には形成されないという事実は、m面上ではなく、c面上または半極性面上にのみ活性領域を形成することを可能にするという利点がある。これにより、活性領域がm面上に成長する場合と比較して、量子井戸にIII族元素をより大きい割合で取り込むことを可能にするという利点がある。
【0044】
図1は、前述したようなワイヤから形成され、電磁放射線を放出することができる光電子デバイス10の部分概略断面図である。実施形態によれば、チップとも呼ばれる少なくとも2つの集積回路12および14を備える光電子デバイス10が提供される。第1の集積回路12は、発光ダイオードを備える。第2の集積回路14は、第1の集積回路12の発光ダイオードの制御に使用される電子コンポーネント、特にトランジスタを備える。第1の集積回路12は、例えば分子ボンディングによって、または「フリップチップ」タイプのボンディング、特にボールまたはマイクロチューブの「フリップチップ」法によって、第2の集積回路にボンディングされている。第1の集積回路12は、以下の説明では光電子回路または光電子チップと呼ばれ、第2の集積回路14は、以下の説明では制御回路または制御チップと呼ばれる。
【0045】
好ましくは、光電子チップ12は、発光ダイオードおよびこれらの発光ダイオードの接続素子のみを備え、制御チップ14は、光電子チップの発光ダイオードを制御するために必要なすべての電子コンポーネントを備える。変形例として、光電子チップ12は、発光ダイオードの他に、他の電子コンポーネントを備えてもよい。
【0046】
図1では、その左側の部分において、表示画素のための光電子チップ12の要素を示し、その構造が各表示画素に対して繰り返され、その右側の部分において、表示画素に隣接し、複数の表示画素に共通し得る要素を示す。
【0047】
光電子チップ12は、
図1において下から上へ、以下の要素を備える。
-電気絶縁層16:発光ダイオードによって放出される電磁放射線に対して少なくとも部分的に透明であり、表面17を画定する;
-導電層18:発光ダイオードによって放出される電磁放射線に対して少なくとも部分的に透明である;
-直径D1の第1のワイヤ20(3本の第1のワイヤが示されている)、直径D2の第2のワイヤ22(3本の第2のワイヤが示されている)、および直径D3の第3のワイヤ24(3本の第3のワイヤが示されている):第1、第2、および第3のワイヤ20、22、24は、互いに平行かつ表面17に垂直な軸を有し、導電層18から延びて導電層18と接触し、直径D1は直径D2よりも小さく、直径D2は直径D3よりも小さい;
-第1、第2、および第3のヘッド26、28、30:第1のヘッド26は導電層18とは反対側の各第1のワイヤ20の端部に設けられ、第2のヘッド28は導電層18とは反対側の各第2のワイヤ22の端部に設けられ、第3のヘッド30は導電層18とは反対側の各第3のワイヤ24の端部に設けられている;
-ワイヤ20、22、24間の第1の電気絶縁材料で作られた電気絶縁層32:ワイヤ20、22、24と、関連するヘッド26、28、30との、ワイヤの軸に沿って測定された高さHの合計に実質的に等しい厚さを有する;
-第1の絶縁材料と異なるか、または第1の絶縁材料と同一であり得る第2の電気絶縁材料の電気絶縁層34:第1の絶縁層32の周囲に延び、厚さが絶縁層32と同じである;
-開口部36:絶縁層34の厚み全体にわたって絶縁層34を貫通して延びる;
-導電層38:開口部36内に延び、導電層18と接触している;
-別個の導電層42、44、46、48:導電層42が第1のヘッド26と接触し、導電層44が第2のヘッド28と接触し、導電層46が第3のヘッド30と接触し、導電層48が導電層38と接触している;
-電気絶縁層50:導電層42、44、46、および48を覆い、導電層42、44、46、および48の間に延び、好ましくは実質的に平面である表面51を画定する;および
-導電性パッド52、54、56、58:多層構造を有することが可能であり、絶縁層50を貫通して延び、表面51と面一であり、導電性パッド52は導電層42と接触し、導電性パッド54は導電層44と接触し、導電性パッド56は導電層46と接触し、導電性パッド58は導電層48と接触している。
【0048】
制御チップ14は特に、光電子チップ12の一側に、好ましくは実質的に平面である表面61を画定する電気絶縁層60と、表面61と面一の導電性パッド62とを備え、導電性パッド62は導電性パッド52、54、56、58に電気的に結合される。制御チップ14が分子ボンディングによって光電子チップ12にボンディングされる場合、導電性パッド62は導電性パッド52、54、56、58と接触してもよい。制御チップ14が「フリップチップ」タイプのボンディングによって光電子チップ12にボンディングされる場合、導電性パッド62と導電性パッド52、54、56、58との間に、はんだボールまたはマイクロチューブが介在されてもよい。
【0049】
各ワイヤ20、22、24と関連するヘッド26、28、30とによって形成される集合体は、アキシャル構成のワイヤ状の基本発光ダイオードを形成する。
【0050】
図2は、発光ダイオードのヘッド26のより詳細な実施形態を示す部分概略断面図である。ヘッド28および30は、同様の構造を有してもよい。
【0051】
ヘッド26は、
図2において下から上へ、以下の要素を備える。
-半導体層70(場合によって):半導体キャップとも呼ばれ、ワイヤ20と同じ材料で作られ、第1の導電型、例えばN型がドープされ、ワイヤ20の上端72を覆い、上面74を有する;
-活性領域76:半導体層70の表面74を覆う;および
-半導体積層体78:活性領域76を覆い、ワイヤ20とは反対の導電型を有する少なくとも1つの半導体層80を備える。
【0052】
各ワイヤ20、22、24および各半導体層70、80は、少なくとも一部が少なくとも1つの半導体材料から形成されている。実施形態によれば、半導体材料は、III-V族化合物、例えば、III-N族化合物からなるグループから選択される。III族元素の例は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、またはアルミニウム(Al)を含む。III-N族化合物の例は、GaN、AlN、InN、InGaN、AlGaN、またはAlInGaNである。他のV族元素も使用することができ、例えば、リンまたはヒ素が挙げられる。一般に、III-V族化合物に含まれる元素は、異なるモル分率で組み合わせることができる。ワイヤ20、22、24、および/または半導体層70、80の半導体材料は、ドーパント、例えば、III-N族化合物のN型ドーピングを確保するシリコン、またはIII-N族化合物のP型ドーピングを確保するマグネシウムを含んでもよい。
【0053】
積層体78は、活性領域76と半導体層80との間の電子遮断層82と、活性領域76の反対側で半導体層80を覆うボンディング層84とをさらに備えてもよく、ボンディング層84は導電層42で覆われている。ボンディング層84は、半導体層80と同じ半導体材料で作られ、半導体層80と同じ導電型であるが、より大きいドーパント濃度を有するものであってもよい。ボンディング層84は、半導体層80と導電層42との間にオーミックコンタクトを形成することを可能にする。
【0054】
活性領域76は、発光ダイオードから供給される放射線の大部分が放出される領域である。一例によれば、活性領域76は、閉じ込め手段を備えてもよい。活性領域76は、半導体層70および半導体層80のバンドギャップエネルギーよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する追加の半導体材料の層を備える少なくとも1つの量子井戸を備えてもよく、好ましくは2つの障壁層の間に介在し、したがって電荷キャリアの閉じ込めを向上させる。追加の半導体材料は、ドープされた半導体層70、80のIII-V族化合物を含んでもよく、そこに少なくとも1つの追加元素が組み込まれている。一例として、GaNで作られるワイヤ20、22、24の場合、量子井戸を形成する追加材料は、好ましくはInGaNである。活性領域76は、単一の量子井戸で作られてもよいし、複数の量子井戸で作られてもよい。
【0055】
好ましい実施形態によれば、各ワイヤ20、22、24はGaNで作られている。半導体層70は、GaNで作られ、第1の導電型、例えばN型、特にシリコンでドープされてもよい。軸Cに沿って測定された半導体層70の高さは、10nmから1μmの範囲、例えば、20nmから200nmの範囲にあってもよい。活性領域76は、例えばInGaNで作られた単一または複数の量子井戸を備えてもよい。活性領域76は、半導体層70、80の間に延びる単一の量子井戸を備えてもよい。変形例として、活性領域76は複数の量子井戸を備えてもよく、例えばInGaNで作られた量子井戸86と、例えばGaNで作られた障壁層88とが軸Cに沿って交互に形成されており、3つのGaN層88と2つのInGaN層86とは
図2に例として示されている。GaN層88は、例えば、N型またはP型がドープされてもよいし、ノンドープであってもよい。軸Cに沿って測定された活性領域76の厚さは、2nmから100nmの範囲にあってもよい。半導体層80は、GaNで作られ、第1の導電型とは反対の第2の導電型、例えばP型、特にマグネシウムがドープされてもよい。半導体層80の厚さは、20nmから100nmの範囲であってもよい。電子遮断層82が存在する場合、それは、GaNまたは三元III-N族化合物、例えばAlGaNまたはAlInNで作られてもよく、有利にはP型がドープされたものである。これにより、活性領域76における放射結合率を向上させることができる。電子遮断層82の厚さは、10nmから50nmの範囲にあってよもい。電子遮断層82は、InAlGaNまたはAlGaNおよびGaNの層の超格子に対応してもよく、各層は例えば2nmの厚さを有する。
【0056】
試験が実施された。試験では、ワイヤ20はGaNで作られたものである。活性領域76は、それぞれ、GaN層によって分離されたInGaNで作られた7つの量子井戸を備える。ワイヤ20はMCVDによって形成され、活性領域76はMBEによって形成されている。活性領域76によって放出される放射線の波長と、ワイヤ20の直径とが測定されている。
【0057】
図3は、これらの試験結果を集めたものである。縦軸は、活性領域76によって放出される放射線の中心波長λをナノメートルで表し、横軸は、ワイヤ20の直径Dをナノメートルで表す。第1の一連の試験の結果は、
図3に白丸で示され、第2の一連の試験の結果は、
図3に黒丸で示される。曲線CTは、第1および第2の試験で得られた値から三次スプライン回帰により得られた、直径Dに応じた波長λの変化曲線である。横線R、G、Bはそれぞれ、赤、緑、青の色に対応する。
【0058】
比較として、黒菱形は、Kishinoらの論文「Monolithic integration of four-colour InGaN-based nanocolumn LEDs」(Elec Letters 28th May 2015 Vol 51 pages 852-854)で開示した結果を示し、十字を含む六角形は、Miらの論文「Tunable, Full-Color Nanowire Light Emitting Diode Arrays Monolithically Integrated on Si and Sapphire」(Proc. of SPIE Vol. 9748+, 2016)で開示した結果を示している。比較結果は、GaNワイヤおよび単一のInGaN量子井戸を有する活性領域で得られた。さらに、Miらの論文およびKishinoらの論文では、ワイヤおよび活性領域がMBEによって形成された。比較結果については、ワイヤの直径が大きくなるにつれて放出される放射線の波長が長くなることが観察される。量子井戸におけるインジウムの割合が増加すると、活性領域によって放出される放射線の波長が増加することが知られている。したがって、この比較結果は、ワイヤの直径が大きくなると、単一の量子井戸におけるインジウムの割合が増加することを示唆している。
【0059】
MOCVDによるワイヤの形成により、一般的なMBEにより達成されるものよりも大きい直径のワイヤを形成することができ、そのため、MBEによる活性領域の形成後、変化曲線CTが連続的に第1の上昇部分C1、第2の下降部分C2および第3の実質的に一定の部分C3を含むことが予想外に観察され、第1の上昇部分C1では、放出される放射線の波長がワイヤの直径とともに増加し、第2の下降部分C2では、放出される放射線の波長がワイヤの直径とともに減少し、第3の実質的に一定の部分C3では、放出される放射線の波長がワイヤの直径によってほとんど変化しない。
【0060】
実施形態によれば、第1の上昇部分C1は、約50nmから約300nmの第1の範囲P1で変化するワイヤの直径に対して得られる。第1の上昇部分にわたって放出される放射線の波長は、約510nmから約675nmまで増加する。実施形態によれば、第2の下降部分C2は、約300nmから約375nmの第2の範囲P2で変化するワイヤの直径に対して得られる。第2の下降部分にわたって放出される放射線の波長は、約675nmから約475nmまで減少する。実施形態によれば、第3の一定部分C3は、約375nmから約550nmの第3の範囲P3のワイヤの直径に対して得られる。第3の一定部分にわたって放出される放射線の波長は、約460nmから490nmの間で変化する。
図3に示すように、青色に発光する発光ダイオードを第3の範囲P3の直径で形成し、緑色に発光する発光ダイオードおよび赤色に発光する発光ダイオードを第1の範囲P1の直径で形成してもよい。緑色に発光する発光ダイオードは、第2の範囲P2の直径で形成されてもよい。しかし、実際には、直径に応じて得られる波長の変動が工業的規模での応用には大きすぎる可能性がある。
【0061】
表示画素は、小さい直径D1のワイヤ20を有する第1の発光ダイオード、中間の直径D2のワイヤ22を有する第2の発光ダイオード、大きい直径D3のワイヤ24による第3の発光ダイオードを形成することで形成されている。
【0062】
図4は、第1および第2の試験の結果を黒丸で示したXY色度図である。放射線が色度図の「頂点」に最も近い丸DR、DG、DBに対応する発光ダイオードを選択して表示副画素を形成することで、丸DR、DG、DBに対応する色の組み合わせによって得られる色を画像画素として表示することが可能である。丸DRは、直径が約200nm~250nmに等しい。丸DGは、直径が約100nm~150nmに等しい。丸DBは、直径が約370nm以上である。色度図の大部分に到達することができると分かる。
【0063】
図5は、
図4の丸DR、DG、DBに対応する発光ダイオードそれぞれによって放出される放射線の波長λ(ナノメートル(nm)で表示)に応じる、光強度I(任意単位(a.u.)で表示)の曲線C
R、C
G、およびC
Bを示す。
図5に示すように、これらの発光ダイオードの放射線のスペクトルは、相対的に狭い。
【0064】
図6は、
図3の曲線CTの変化の可能な解釈を示す。
図6は、関連する活性領域76、半導体積層体78および導電層42、44、46を示すことなく、3つのワイヤ20、22、24を非常に模式的に示す。各ワイヤ20、22、24の上部は、c面(軸Cに垂直な表面90)および/または半極性面(軸Cに対して傾斜した表面92)を備えてもよい。活性領域76は、c面および/または半極性面を覆っていると考えられる。c面を覆う活性領域76の部分の光学特性は、半極性面を覆う活性領域76の部分の光学特性と同じではない。特に、c面を覆う活性領域76の部分への追加要素の最大取り込み率は、半極性面を覆う活性領域76の部分への追加要素の最大取り込み率よりも大きい。
図3の曲線CTの変化の解釈は次のようになる。すなわち、直径の第1の範囲P1では、活性領域76によって放出される一般的な放射線において、c面に載置された活性領域76の部分の寄与が、半極性面に載置された活性領域76の部分の寄与よりも優位である。それによって、ワイヤの直径に伴う一般的な放射線の波長の増加が観察され得る。直径の第2の範囲P2では、c面に載置された活性領域76の部分の一般的な放射線における寄与と、半極性面に載置された活性領域76の部分の一般的な放射線における寄与の重要性が逆転し、半極性面に載置された活性領域76の部分へのインジウムの取り込みが減少するので、一般的な放射線の中心波長が低下する。直径の第3の範囲P3では、活性領域76によって放出される一般的な放射線において、半極性面に載置された活性領域76の部分の寄与がc面に載置された活性領域76の部分の寄与よりも優位であり、放出される放射線の中心波長が停滞することになる。
【0065】
図1を再び考慮すると、実施形態によれば、光電子デバイス10の各表示画素は、少なくとも3つのタイプの発光ダイオードを備える。実施形態によれば、例えばワイヤ20およびヘッド26を備える第1のタイプの発光ダイオードは、第1の中心波長で第1の放射線を放出するように適合される。第2のタイプの発光ダイオードは、例えばワイヤ22およびヘッド28を備え、第2の中心波長で第2の放射線を放出するように適合される。第3のタイプの発光ダイオードは、例えば、ワイヤ24およびヘッド30を備え、第3の中心波長で第3の放射線を放出するように適合される。第1、第2、および第3の中心波長は異なる。
【0066】
実施形態によれば、第1の波長は、緑色光に対応し、510nmから550nmの範囲にある。実施形態によれば、第1の直径D1は、80nmから150nmの範囲で変化する。実施形態によれば、第2の波長は、赤色光に対応し、600nmから720nmの範囲にある。実施形態によれば、第2の直径D2は、200nmから350nmの範囲で変化する。実施形態によれば、第3の波長は、青色光に対応し、430nmから490nmの範囲にある。実施形態によれば、第3の直径D3は、370nmから500nmの範囲で変化する。
図3から分かるように、約400nmに等しい直径を超えると、活性領域76によって放出される放射線の波長がワイヤの直径の影響をほとんど受けないという利点がある。
【0067】
実施形態によれば、各表示画素Pixは、第4のタイプの発光ダイオードを備え、第4のタイプの発光ダイオードは、第4の波長で第4の放射線を放出するように適合されている。第1、第2、第3、および第4の波長は、異なってもよい。実施形態によれば、第4の波長は、黄色光に対応し、570nmから600nmの範囲にあるか、またはシアンに対応し、490nmから510nmの範囲にあるか、または一般的に第1、第2、および第3の放射線以外の任意の色に対応する。
【0068】
実施形態によれば、各表示画素について、同じ直径のワイヤを有する基本発光ダイオードが共通電極を有し、導電層18と導電層42、44または46との間に電圧が印加されると、これらの基本発光ダイオードの活性領域によって光放射が放出される。
【0069】
本実施形態では、各発光ダイオードによって放出される電磁放射線は、表面17を通って光電子デバイス10から脱出する。好ましくは、各導電層42、44、46は、反射性であり、発光ダイオードによって放出された放射線のうち、表面17を通って光電子デバイス10から脱出する割合を増加させることができるという利点がある。
【0070】
光電子チップ12および制御チップ14が積層されることにより、光電子デバイス10の横方向の嵩は減少する。実施形態によれば、ワイヤの軸に垂直に測定された表示画素の横方向寸法は、5μmよりも小さく、好ましくは4μmよりも小さく、例えば、約3μmに等しい。さらに、光電子チップ12は、制御チップ14と同じ寸法を有してもよい。それにより、光電子デバイス10のコンパクト性が向上できるという利点がある。
【0071】
導電層18は、ヘッド26、28、30の活性領域をバイアスし、発光ダイオードによって放出される電磁放射線を通すことを可能にする。導電層18を形成する材料は、グラフェンまたは透明導電性酸化物(TCO)、特に酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(アルミニウム、ガリウムで、もしくはボロンでドープされたか、もしくはドープされていない)、または銀ナノワイヤなどの透明導電材料であってもよい。一例として、導電層18は、20nmから500nmの範囲、好ましくは20nmから100nmの範囲の厚さを有する。
【0072】
導電層38、導電層42、44、46、48、および導電性パッド52、54、56、58は、金属(例えばアルミニウム、銀、白金、ニッケル、銅、金、もしくはルテニウム)、またはこれらの化合物の少なくとも2つを含む合金(特にPdAgNiAu合金もしくはPtAgNiAu合金)で作られてもよい。導電層38は、100nmから3μmの範囲の厚さを有してもよい。導電性部分42、44、46、48は、100nmから2μmの範囲の厚さを有してもよい。表面17に垂直な平面における最小横方向寸法は、150nmから1μmの範囲、例えば、約0.25μmである。導電性パッド52、54、56、58は、0.5μmから2μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0073】
絶縁層16、32、34、50の各々は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy、ここで、xは約3に等しく、yは約4に等しく、例えば、Si3N4)、酸窒化ケイ素(特に一般式SiOxNy、例えば、Si2ON2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化チタン(TiO2)、または酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される材料で作られている。層34および/または層32は、さらに、例えば、パリレン製またはベンゾシクロブテン(BCB)製の有機絶縁材料で作られてもよい。絶縁層16は、100nmから5μmの範囲の最大厚さを有してもよい。絶縁層32および34は、0.5μmから2μmの範囲の最大厚さを有してもよい。絶縁層50は、0.5μmから2μmの範囲の最大厚さを有してもよい。
【0074】
各ワイヤ20、22、24は、表面17に実質的に垂直な軸に沿って細長い半導体構造を有してもよい。各ワイヤ20、22、24は、概ね円筒形の形状を有してもよく、その断面は、例えば、楕円形、円形、または多角形(特に三角形、長方形、正方形、もしくは六角形)などの異なる形状を有してもよい。2つの隣接するワイヤ20、22、24の軸は、100nmから3μm、好ましくは200nmから1.5μmだけ離れてもよい。各ワイヤ20、22、24の高さは、150nmから10μm、好ましくは200nmから1μm、より好ましくは250nmから750nmの範囲にあってもよい。各ワイヤ20、22、24の平均直径は、50nmから10μmの範囲、好ましくは100nmから2μmの範囲、より好ましくは120nmから1μmの範囲にあってもよい。
【0075】
実施形態によれば、ワイヤ20、22、24は、シード層からMOCVDによって同時に形成される。反応器内の成長条件は、各ワイヤ20、22、24のその軸Cに沿った優先的な成長に有利となるように適合される。これは、軸Cに沿ったワイヤの成長速度が、軸Cに垂直な方向に沿ったワイヤの成長速度よりもはるかに大きく、好ましくは少なくとも1桁大きいことを意味する。一例では、方法は、反応器にIII族元素の前駆体とV族元素の前駆体とを注入することを含んでもよい。III族元素の前駆体の例は、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、またはトリメチルアルミニウム(TMAl)である。V族元素の前駆体の例は、アンモニア(NH3)、トリブチルホスフェート(TBP)、アルシン(AsH3)、またはジメチルヒドラジン(UDMH)である。前駆体ガスの一部は、水混合物およびキャリアガスを用いることで生成されてもよい。
【0076】
実施形態によれば、反応器内の温度は、900℃から1,065℃の範囲、好ましくは1,000℃から1,065℃の範囲にあり、特に1,050℃である。実施形態によれば、反応器内の圧力は、50Torr(約6.7kPa)から200Torr(約26.7kPa)の範囲にあり、特に100Torr(約13.3kPa)である。実施形態によれば、III族元素の前駆体、例えばTEGaの流量は、500sccmから2,500sccmの範囲にあり、特に1,155sccmである。実施形態によれば、V族元素の前駆体、例えばNH3の流量は、65sccmから260sccmの範囲にあり、特に130sccmである。実施形態によれば、反応器に注入されるV族元素の前駆体ガスの流量と、反応器に注入されるIII族元素の前駆体ガスの流量との比(V/III比と呼ばれる)は、5から15の範囲にある。キャリアガスは、N2およびH2を含んでもよい。実施形態によれば、反応器に注入される水素の割合は、キャリアガスの総質量に対して、3重量%から15重量%の範囲にあり、特に5重量%である。得られたワイヤ34の成長速度は、1μm/hから15μm/hの範囲にあり、特に5μm/hであってもよい。
【0077】
ドーパントの前駆体を反応器に注入してもよい。例えば、ドーパントがSiである場合、前駆体はシラン(SiH4)であってもよい。前駆体の流量は、5×1018から5×1019atoms/cm3の範囲、特に1019atoms/cm3の平均ドーパント濃度を目標とするように選択されてもよい。
【0078】
別の実施形態では、半導体層70は、存在する場合、MBEによって各ワイヤ上に成長される。実施形態によれば、半導体層70のMBE成長のために、反応器内の温度は、800℃から900℃の範囲にある。実施形態によれば、反応器内の圧力は、3×10-8Torr(約4×10-3mPa)から5×10-5Torr(約6.7mPa)の範囲にある。実施形態によれば、プラズマは、300Wと600Wとの間、例えば360WのRFパワーで作成される。実施形態によれば、III族元素、例えばGaの固体ソースの温度は、800℃から1000℃の範囲にあり、特に850℃である。実施形態によれば、V族元素の前駆体ガス、例えば、N2の流量は、0.5sccmから5sccmの範囲にあり、特に1.5sccmである。
【0079】
ドーパントの前駆体を反応器に注入してもよい。例えば、ドーパントがSiである場合、前駆体はシラン(SiH4)であってもよい。前駆体の流量は、5×1018から2×1019atoms/cm3の範囲、特に1019atoms/cm3の平均ドーパント濃度を目標とするように選択されてもよい。
【0080】
実施形態によれば、活性領域76の各層は、MBEによって成長される。実施形態において、MOCVDステップおよびMBEステップは、異なる反応器で実施される。実施形態では、方法は、III族元素およびV族元素のための固体/気体ソース前駆体をMBEに使用してもよい。実施形態によれば、III族元素がGaである場合には固体ソースを使用し、V族元素がNである場合には気体またはプラズマ前駆体を使用することができる。実施形態によれば、活性窒素のビームは、DCプラズマソースによって供給される。このソースでは、励起された中性窒素分子は、電界のない領域で形成され、真空チャンバの圧力勾配によって基板に向かって加速される。
【0081】
活性領域76の特定の層、特に量子井戸86の形成は、反応器に追加元素の固体/気体前駆体を注入することを含んでもよい。実施形態によれば、追加のIII族元素がIn、Ga、またはAlである場合、固体ソースを使用してもよい。活性領域76への追加元素の取り込み速度は、特に、活性領域76の横方向寸法、ワイヤ20、22、24間の距離、および支持体(そこから延びるワイヤ20、22、24を有する)に対する活性領域76の高さに依存する。
【0082】
ドーパントを反応器に注入してもよい。例えば、ドーパントがSiで作られた場合、固体ソースを使用してもよい。実施形態によれば、ドーパント元素の固体ソースの温度は、1,000℃から1,200℃の範囲にある。
【0083】
実施形態によれば、各障壁層88のMBE成長のために、反応器内の温度は570℃~640℃の範囲にあり、特に620℃である。実施形態によれば、反応器内の圧力は、3×10-8Torr(約4×10-3mPa)から5×10-5Torr(約6.7mPa)の範囲にある。実施形態によれば、プラズマは、300Wと600Wとの間、例えば360WのRFパワーで作成される。実施形態によれば、III族元素、例えばGaの固体ソースの温度は、850℃から950℃の範囲にあり、特に895℃である。実施形態によれば、V族元素の前駆体ガス、例えば、N2の流量は、0.5sccmから5sccmの範囲にあり、特に1.5sccmである。
【0084】
実施形態によれば、各量子井戸86のMBE成長のために、反応器内の温度は、570℃から640℃の範囲にあり、特に620℃である。実施形態によれば、反応器内の圧力は、3×10-8Torr(約4×10-3mPa)から5×10-5Torr(約6.7mPa)の範囲にある。実施形態によれば、プラズマは、300Wと600Wとの間、例えば360WのRFパワーで作成される。実施形態によれば、III族元素、例えばGaの固体ソースの温度は、850℃から950℃の範囲にあり、特に895℃である。実施形態によれば、追加元素、例えばInの固体ソースの温度は、750℃から900℃の範囲にあり、特に790℃である。実施形態によれば、V族元素の前駆体ガス、例えばN2の流量は、0.5sccmから5sccmの範囲にあり、特に1.5sccmである。
【0085】
実施形態によれば、半導体積層体78の各層は、MBEによって成長される。実施形態によれば、半導体層80は、実質的にc面配向で成長される。実施形態によれば、電子遮断層82のMBE成長のために、反応器内の温度は700℃から900℃の範囲にあり、特に800℃である。実施形態によれば、反応器内の圧力は、3×10-8Torr(約4×10-3mPa)から5×10-5Torr(約6.7mPa)の範囲にある。実施形態によれば、プラズマは、300Wと600Wとの間、例えば360WのRFパワーで作成される。実施形態によれば、III族元素、例えばGaの固体ソースの温度は、850℃から950℃の範囲にあり、特に905℃である。実施形態によれば、追加元素、例えばAlの固体ソースの温度は、1,000℃から1,100℃の範囲にあり、特に1,010℃である。実施形態によれば、V族元素の前駆体ガス、例えばN2の流量は、0.5sccmから5sccmの範囲にあり、特に1.5sccmである。ドーパントを反応器に注入してもよい。例えば、ドーパントがMgである場合、固体ソースを使用してもよい。実施形態によれば、ドーパント元素の固体ソースの温度は、150℃から350℃の範囲、特に190℃である。
【0086】
図7A~
図7Nは、
図1に示す光電子デバイス10の製造方法の他の実施形態の連続するステップで得られた構造体の部分概略断面図である。
【0087】
図7Aは、以下のステップの後に得られた構造体を示す:
-支持体100を形成し、支持体100は、
図7Aの下から上へ、基板101と、シード層とも呼ばれる少なくとも1つの核生成層(
図7Aでは2つの核生成層102および103が例として示されている)と、電気絶縁層104と、絶縁層104上の電気絶縁層106との積層体に対応し、絶縁層104、106は異なる材料で作られている;
-絶縁層104および106に第1の開口部108を形成して、第1のワイヤ20の所望の位置で核生成層103の部分を露出させ、第1の開口部108の直径は第1のワイヤ20の直径に実質的に対応し、絶縁層104および106に第2の開口部110を形成して、第2のワイヤ22の所望の位置で核生成層103の部分を露出させ、第2の開口部110の直径は、第2のワイヤ22の直径に実質的に対応し、絶縁層104および106に第3の開口部112を形成して、第3のワイヤ24の所望の位置で核生成層103の一部を露出させ、第3の開口部112の直径は、第3のワイヤ24の直径に実質的に対応する;
-開口部108、110、112において核生成層103からMOCVDによりワイヤ20、22、24を同時に成長させる;
-ワイヤ20、22、24上にMBEによってヘッド26、28、30を同時に成長させ、各ヘッド26、28、30は活性領域76および半導体積層体78を備える。
【0088】
変形例として、絶縁層104、106を単一の絶縁層で置き換えてもよい。
【0089】
基板101は、モノブロック構造に対応してもよいし、他の材料で作られた支持体を覆う層に対応してもよい。基板101は、好ましくは、半導体基板(例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化ケイ素、GaNもしくはGaAsなどのIII-V族化合物で作られた基板)、ZnO基板、または導電性基板(例えば、金属もしくは金属合金、特に銅、チタン、モリブデン、ニッケル基合金、および鋼で作られた基板)である。好ましくは、基板101は、単結晶シリコン基板である。好ましくは、マイクロエレクトロニクスで実施される製造方法と互換性のある半導体基板である。基板101は、SOIとも呼ばれるシリコンオンインシュレータ型の多層構造に対応してもよい。基板101は、重ドープ、軽ドープ、またはノンドープであってもよい。
【0090】
核生成層102、103は、ワイヤ20、22、24の成長に有利な材料で作られている。各核生成層102、103を形成する材料は、金属、金属酸化物、元素周期表のIV、VもしくはVI列の遷移金属の窒化物、炭化物もしくはホウ化物、またはこれらの化合物の組み合わせであってよく、好ましくは、元素周期表のIV、VもしくはVI列の遷移金属の窒化物、またはこれらの化合物の組み合わせである。一例として、各シード層102、103は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、ホウ素(B)、窒化ホウ素(BN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN)、ニオブ(Nb)、窒化ニオブ(NbN)、ジルコニウム(Zr)、ホウ酸ジルコニウム(ZrB2)、窒化ジルコニウム(ZrN)、炭化ケイ素(SiC)、炭化窒化タンタル(TaCN)、MgxNy形の窒化マグネシウム(ここで、xが3にほぼ等しく、yが2にほぼ等しく、例えば、Mg3N2形の窒化マグネシウム)で作られてもよい。各核生成層102、103は、例えば、1nmから100nmの範囲、好ましくは、10nmから30nmの範囲の厚さを有する。
【0091】
絶縁層104および106の各々は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy、ここでxはほぼ3に等しく、yはほぼ4に等しい、例えば、Si3N4)、酸窒化シリコン(特に一般式SiOxNy、例えば、Si2ON2)、酸化ハフニウム(HfO2)または酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される材料で作られる。実施形態によれば、絶縁層104は酸化シリコンで作られ、絶縁層106は窒化シリコンで作られている。各絶縁層104、106の厚さは、10nmから100nmの範囲、好ましくは20nmから60nmの範囲にあり、特に約40nmに等しい。
【0092】
ワイヤ20、22、24の成長方法は、前述したようなMOCVD法である。成長ステップ終了時の各ワイヤ20、22、24の高さは、250nmから15μmの範囲、好ましくは500nmから5μmの範囲、より好ましくは1μmから3μmの範囲にあってもよい。第1のワイヤ20の高さは、第2のワイヤ22の高さおよび第3のワイヤ24の高さとは異なる。ワイヤ20、22、24の高さは、特に、ワイヤの直径と、ワイヤ間の距離とに依存する。実施形態によれば、第1のワイヤ20の高さは、第2のワイヤ22の高さよりも大きく、第2のワイヤ22の高さは、第3のワイヤ24の高さよりも大きい。
【0093】
各シード層102、103および各絶縁層104、106は、一例として、プラズマエンハンスド化学気相成長法(PECVD)、低圧化学気相成長法(LPCVD)、亜大気化学気相成長法(SACVD)、CVD、物理気相成長法(PVD)、または原子層堆積法(ALD)によって堆積されてもよい。
【0094】
図7Bは、すべてのワイヤ20、22、24の上およびワイヤ20、22、24の間の絶縁層106の上に誘電体層113を堆積させた後に得られた構造体を示す。
【0095】
誘電体層113は、絶縁層106と同じ材料で作られてもよい。実施形態によれば、層113の最小厚さは、最小のワイヤ20、22、24の高さと、関連するヘッド26、28、30の高さとの合計よりも大きい。好ましくは、層113の最小厚さは、最大のワイヤ20、22、24の高さと、関連するヘッド26、28、30の高さとの合計よりも大きい。
【0096】
一例として、誘電体層113の厚さは、250nmから15μmの範囲、好ましくは300nmから5μmの範囲にあり、例えば、約2μmに等しい。絶縁層113は、絶縁層104、106を形成するために使用される方法と同じ方法によって形成されてもよい。
【0097】
図7Cは、絶縁層113およびヘッド26、28、30の一部を薄層化して平坦化し、例えば150nmから10μmの範囲の絶縁層106の高さで平坦面114を画定した後に得られた構造体を示す。エッチングは、例えばCMP(Chemical-Mechanical Planarization)である。ワイヤ20、22、24の間に絶縁層113が存在することにより、CMPタイプのエッチング方法を実施することができ、ワイヤのみが存在する場合に、該方法を実施することが困難であるか、ひいては不可能である。このステップの後、すべてのワイヤヘッド集合体20-26、22-28、24-30は、同じ高さを有する。絶縁層113およびワイヤ20、22、24の一部のエッチングは、複数のステップで実施されてもよい。変形例として、ワイヤヘッド集合体20-26、22-28、24-30が実質的に同じ高さを有する場合、絶縁層113およびヘッド26、28、30の一部を薄層化して平坦化するステップは存在しなくてもよい。
【0098】
図7Dは、誘電体層113を完全に除去して絶縁層106およびワイヤヘッド集合体20-26、22-28、24-30を露出させた後に得られた構造体を示す。絶縁層106は、その後、誘電体層113のエッチング中にエッチングストップ層の役割を果たすことができる。誘電体層113の除去は、ウェットエッチングによって実行されてもよい。変形例として、誘電体層113のエッチングが部分的にしか行われず、残留層が絶縁層106上に保持される場合がある。
【0099】
図7Eは、以下のステップの後に得られた構造体を示す:
-絶縁層32を形成する;
-絶縁層34を形成する;および
-絶縁層34をその厚さの一部にわたってエッチングまたは薄層化して、実質的に平面的な表面116を画定する。
【0100】
絶縁層32は、例えば、LPCVDによるコンフォーマル堆積によって形成されてもよい。絶縁層32の形成方法は、発光ダイオードの活性領域にダメージを与えないように、700℃よりも低い温度で実施することが好ましい。さらに、LPCVD式の方法は、ワイヤ20、22、24間の充填性を良好にすることができる。絶縁層32の堆積厚さは、100nmから1μmの範囲にあり、例えば約500nmであってもよい。絶縁層34は、例えば、PECVDによるコンフォーマル堆積によって形成されてもよい。絶縁層34の堆積厚さは、2μm以上であってもよい。絶縁層34の部分的なエッチングは、CMPによって実行されてもよい。エッチングの停止は、
図7Eに示すように、絶縁層34、または絶縁層32で実行されてもよいが、いずれの場合もヘッド26、28、30を露出する前に実行される。
【0101】
図7Fは、絶縁層32、34をエッチングしてヘッド26、28、30の上面を露出させた後に得られた構造体を示す。エッチングは、例えば、反応性イオンエッチング型(RIE)または誘導結合プラズマエッチング(ICP)である。ヘッド26、28、30が異なる寸法を有してもよいので、一部のヘッド26、28、30は他のヘッドよりも多く露出してもよい。ヘッド26、28、30は、このステップではエッチングされない。エッチングは、好ましくは、異方性エッチングである。層32の図示しない部分は、ヘッド26、28、30の側壁に保持されてもよい。ヘッド26、28、30の上部に位置する層は、エッチングストップ層の役割を果たす。実施形態によれば、ヘッド26、28、30の形成時に、ヘッド26、28、30の上部に追加の層が追加されて、エッチングストップ層の役割を果たす。それはAlN層であってもよい。
【0102】
図7Gは、以下のステップの後に得られた構造体を示す:
-ヘッド26、28、30にエッチングストップ層が存在する場合、エッチングストップ層を除去する;
-例えばカソードスパッタリングにより、例えば0.5μmの厚さを有する金属層を
図7Eに示す構造上に堆積させる;および
-金属層をエッチングして、導電層42、44、46、48を画定する。
【0103】
ヘッド26、28、30上のエッチングストップ層がAlNで作られた場合、水酸化テトラメチルアンモニウム型(TMAH)のエッチングにより除去してもよい。導電層42、44、46、48を形成する前に、構造体全体にわたって分離した金属部分を形成してもよい。これは、1nmの厚さを有する金属層、例えばニッケルまたは白金の堆積と、例えば550℃の温度で行う熱アニールステップにより実行されてもよい。その結果、分離した部分が形成される。
【0104】
図7Hは、以下のステップの後に得られた構造体を示す:
-
図7Gに示す構造上に絶縁層50を堆積させる;および
-例えば銅で作られた導電性パッド52、54、56、58を形成する。
【0105】
図7Iは、制御チップ14を光電子チップ12にボンディングした後に得られた構造体を示す。制御チップ14の光電子チップ12へのボンディングは、図示しない接続マイクロボールなどのインサートを使用することによって実行されてもよい。変形例として、制御チップ14の光電子チップへのボンディングは、インサートを使用せずに、直接ボンディングによって実行されてもよい。直接ボンディングは、制御チップ14の金属領域、特に導電性パッド62、および光電子チップ12の金属領域、特に導電性パッド52、54、56、58の直接金属間ボンディングと、制御チップ14の誘電領域、特に絶縁層50、および光電子チップ12の誘電領域、特に絶縁層50の誘電体間ボンディングとを含んでもよい。制御チップ14と光電子チップ12とのボンディングは、光電子チップ12を制御チップ14に対して圧力および熱を加えながら押し付ける熱圧着法によって実行されてもよい。
【0106】
図7Jは、以下のステップの後に得られた構造体を示す:
-基板101を除去する;
-シード層102、103を除去する;
-絶縁層104、106を除去する;
-絶縁層32、絶縁層34、およびワイヤ20、22、24を部分的にエッチングして、実質的に平面状の表面118を画定する。
【0107】
基板101の除去は、研削および/またはウェットエッチングによって実行されてもよい。シード層102、103、絶縁層32、絶縁層34、およびワイヤ20、22、24の除去は、ウェットエッチング、ドライエッチング、またはCMPによって実行されてもよい。絶縁層104または106は、シード層103のエッチングの際に、エッチングストップ層の役割を果たすことができる。
【0108】
図7Kは、例えば50nmの厚さを有するTCO層を表面118全体にわたって堆積させ、この層をフォトリソグラフィ技術によってエッチングしてTCO層18のみを残すことによって表面118上に導電層18を形成した後に得られた構造体を示す。
【0109】
図7Lは、絶縁層34の開口部36を絶縁層34の厚さ全体にわたってエッチングして導電層48を露出させた後に得られた構造体を示す。これは、フォトリソグラフィ技術によって実施されてもよい。
【0110】
図7Mは、開口部36内および表面118上に導電層18と接触する導電層38を形成した後に得られた構造体を示す。これは、例えばTi/TiN/AlCuタイプの導電層の積層体を表面118側で構造体全体にわたって堆積させ、この積層体をフォトリソグラフィ技術によってエッチングして導電層38のみを残すことによって実行されてもよい。
【0111】
図7Nは、導電層18上に、表面17を画定する絶縁層16を形成した後に得られた構造体を示す。例えば、PECVDにより1μmの厚さで堆積されたSiON層である。
【0112】
光の取り出しを増加させるために、テクスチャリングステップとも呼ばれる、表面17に隆起した領域を形成する追加のステップを提供してもよい。
【0113】
裏面からのワイヤの高さの減少は、前述したようなCMPタイプの方法、または他の任意のドライエッチングまたはウェットエッチング法によって実施されてもよい。特にGaNで作られたワイヤの得られる高さは、ワイヤ自体の中の光学的相互作用によってワイヤの根元からの光の取り出しを増加させるように選択されてもよい。さらに、この高さは、異なるワイヤ間の光結合に有利となり、したがって、ワイヤの集合体の集団発光を増加させるように選択されてもよい。
【0114】
様々な実施形態および変形例について説明した。当業者であれば、これらの様々な実施形態および変形例の特定の特徴を組み合わせることができ、他の変形例も当業者に生じることを理解するであろう。特に、前述した実施形態では、光電子デバイスは互いにボンディングされた2つのチップを備えるが、光電子デバイスが1つのチップを備え、電子発光ダイオード制御回路が発光ダイオードと一体的に形成されてもよいことは明らかである。最後に、記載された実施形態および変形例の実際の実施は、ここで与えられた機能的な表示に基づいて、当業者の能力の範囲内にある。
【0115】
本特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる仏国特許出願第20/09895号明細書の優先権を主張している。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイス(10)であって、
アキシャル構成の第1、第2および第3の3次元発光ダイオードを備え、各発光ダイオードは、半導体素子(20、22、24)と、前記半導体素子上に載置された活性領域(76)とを備え、各半導体素子は、マイクロワイヤ、ナノワイヤ、ナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐形素子、またはナノメートルもしくはマイクロメートルの範囲の錐台形素子に対応し、前記第1の発光ダイオードは、第1の波長で第1の放射線を放出するように構成されており、前記第1の発光ダイオードの半導体素子は、第1の直径(D1)を有し、前記第2の発光ダイオードは、第2の波長で第2の放射線を放出するように構成されており、前記第2の発光ダイオードの半導体素子は、第2の直径(D2)を有し、前記第3の発光ダイオードは、第3の波長で第3の放射線を放出するように構成されており、前記第3の発光ダイオードの半導体素子は第3の直径(D3)を有し、前記第1の直径(D1)は前記第2の直径(D2)よりも小さく、前記第2の直径(D2)は前記第3の直径(D3)よりも小さく、前記第1の波長は前記第3の波長よりも大きく、前記第2の波長は前記第1の波長よりも大きい、光電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の直径(D1)は、80nmから150nmの範囲で変化する、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記第2の直径(D2)は、200nmから350nmの範囲で変化する、請求項1または2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記第3の直径(D3)は、370nmから500nmの範囲で変化する、請求項1~3のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記第1の波長は、510nmから570nmの範囲にある、請求項1~4のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記第2の波長は、600nmから720nmの範囲にある、請求項1~5のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項7】
前記第3の波長は、430nmから490nmの範囲にある、請求項1~6のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項8】
第2の電子回路(14)にボンディングされた第1の光電子回路(12)を備え、前記第2の電子回路(14)は導電性パッド(62)を備え、前記第1の光電子回路は画素を備え、各画素について、
-第1の導電層(18)を備え、
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードのそれぞれについて、前記半導体素子(20、22、24)は、前記第1の導電層に対して垂直に延び、前記第1の導電層と接触しており、前記第1の導電層とは反対側の前記半導体素子の端部に活性領域(76)が載置されており、
-前記導電性パッド(62)に電気的に結合された第2、第3、第4および第5の導電層(42、44、46、48)を備え、前記第2の導電層(42)は第1の発光ダイオードの活性領域(76)に結合され、前記第3の導電層(44)は前記第2の発光ダイオードの活性領域(76)に結合され、前記第4の導電層(46)は前記第3の発光ダイオードの活性領域(76)に結合され、前記第5の導電層(48)は前記第1の導電層に結合されている、請求項1~7のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項9】
各活性領域(76)は、単一の量子井戸または複数の量子井戸を備える、請求項1~8のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記半導体素子(20、22、24)および前記活性領域は、III-V族化合物で作られている請求項1~9のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(20、22、24)は、基板(100)上に載置されており、前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(20、22、24)のエピタキシャル成長に適合する材料と接触している、請求項1~1
0のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項12】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードは、モノリシック構造を形成している、請求項1~1
1のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項13】
請求項1~1
2のいずれか1つに記載の光電子デバイス(10)の製造方法であって、
以下の連続したステップ:
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)を同時に形成するステップと、
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)上に、前記第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域(76)を同時に形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)はMOCVDにより形成される、請求項1
3に記載の方法。
【請求項15】
前記第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域(76)はMBEにより形成される、請求項1
3または1
4に記載の方法。
【請求項16】
以下の連続したステップ:
-支持体(110)上に前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)を形成すると同時に、前記第1、第2および第3の発光ダイオードの半導体素子(22、24、26)上に前記第1、第2および第3の発光ダイオードの活性領域(76)を形成するステップと、
-前記第1、第2および第3の発光ダイオードの3次元半導体素子(20、22、24)の間に電気絶縁層(32)を形成するステップと、
-前記支持体を除去するステップと
を含む、請求項1
3~1
5のいずれか1つに記載の方法。
【国際調査報告】