(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】SARS-COV-2受容体結合ドメインと担体タンパク質との共有結合コンジュゲート並びにそれらを含有するワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20231101BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20231101BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231101BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231101BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231101BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20231101BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61K47/64 ZNA
A61K39/215
A61P37/04
A61P31/14
A61K39/39
C07K14/165
C07K14/195
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521032
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 CU2021050009
(87)【国際公開番号】W WO2022073528
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】CU-2020-0069
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523057415
【氏名又は名称】インスティテュート フィンレイ デ バクナス
(71)【出願人】
【識別番号】509352381
【氏名又は名称】セントロ デ インミュノロヒア モレキュラル
(71)【出願人】
【識別番号】518390697
【氏名又は名称】ウニベルシダ デ ラ ハバナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルデス バルビン、ユーリー
(72)【発明者】
【氏名】サンタナ メデロス、ダリエリス
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス カスティーリョ、ソンシレ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア リベラ、ダグマー
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア リベラ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア リカルド、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ノダ、ローラ マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス ゴンザレス、ウベル ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ラミレス、ベリンダ
(72)【発明者】
【氏名】ボッギアノ アヨ、タミー
(72)【発明者】
【氏名】オヒト マガス、エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】ベレス ベンコモ、ビンセント ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】オリバ、ヘルナンデス、レイナルド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB15
4C076CC06
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA03
4C085BA71
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4C085DD59
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
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4C085GG03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
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4H045BA10
4H045CA01
4H045CA11
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA10
4H045GA10
(57)【要約】
本発明は、バイオテクノロジー、より具体的にはヒトの健康の分野に関する。この文書は、特に、担体タンパク質に共有結合的にコンジュゲートされたSARS-CoV-2受容体結合ドメインのコンジュゲート、それらを得るために使用される方法、及びそれらを含有するワクチン組成物を記載する。本発明に記載されるワクチン組成物は、中和抗体の強い応答を誘導するので、SARS-CoV-2感染の予防に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)と担体タンパク質とを含む、共有結合コンジュゲート。
【請求項2】
担体タンパク質が、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、及びジフテリアトキソイド変異体CRM197を含む群から選択される、請求項1に記載の共有結合コンジュゲート。
【請求項3】
RBD-担体タンパク質のモル比が、担体タンパク質あたり1~8のRBDの範囲内である、請求項1又は2に記載の共有結合コンジュゲート。
【請求項4】
RBDが、配列番号1、2及び3を含む群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の共有結合コンジュゲート。
【請求項5】
配列番号1のRBDがその二量体形態で使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の共有結合コンジュゲート。
【請求項6】
RBDが、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌及び酵母を含む群から選択される宿主において産生される、請求項1から5のいずれか一項に記載の共有結合コンジュゲート。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の共有結合コンジュゲートを含むことを特徴とする、SARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導するために使用されるワクチン組成物。
【請求項8】
水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムを含む群から選択されるアジュバントも含む、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
コンジュゲートが、用量あたり1~30μgのRBDの濃度範囲である、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
アジュバントが、用量あたり200~1500μgの濃度範囲である、請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
適切な医薬賦形剤も含む、請求項7から10のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
以下の段階A)チオフィリック(thiophilic)基を導入するための担体タンパク質の官能基化、B)担体タンパク質のRBDへの共有結合コンジュゲーション、及びC)精製からなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の共有結合コンジュゲートを調製するための手順。
【請求項13】
段階Aの前にRBD二量体のインサイツ(in situ)還元からなる追加の工程を含む、請求項12に記載の手順。
【請求項14】
段階Aの前にRBDのN末端のチオール化からなる追加の工程を含む、請求項12に記載の手順。
【請求項15】
配列番号1が使用される、請求項13に記載の手順。
【請求項16】
配列番号1から3のいずれかが使用される、請求項14に記載の手順。
【請求項17】
段階Aで導入されるチオフィリック基が、マレイミド、ブロモアセチル、ビニルスルホン、アクリラート、アクリルアミド、アクリロニトリル、及びメタクリラートを含む群から選択される、請求項12に記載の手順。
【請求項18】
請求項12から17のいずれか一項に記載の手順に従って得られるコンジュゲート。
【請求項19】
SARS-CoV-2ウイルスによる感染を予防するための、請求項7から11のいずれか一項に記載のワクチン組成物の使用。
【請求項20】
ワクチン組成物の二回投与後に中和抗体応答が必要とされる際に、SARS-CoV-2ウイルスによる感染を予防するための、請求項7から11のいずれか一項に記載のワクチン組成物の使用。
【請求項21】
1μg~30μgでの1用量~3用量のRBDの筋肉内ワクチン接種スケジュールを適用してSARS-CoV-2抗体応答を誘導するための、請求項7から11のいずれか一項に記載のワクチン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー、より具体的にはヒトの健康の分野に関する。この文書は、特に、SARS-CoV-2受容体結合ドメインと担体タンパク質との共有結合コンジュゲート、それらを得るために使用される方法、及びそれらを含有するワクチン組成物を記載する。
【背景技術】
【0002】
COVID-19は、病因不明の肺炎の重篤な症例が報告され始めた2019年12月に中国の武漢で発見された非常に最近の疾患である。SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる疾患は、その急速な広がり、並びに50%未満を占める症候性患者の場合には発熱、咳、鼻漏、喉の痛み及び呼吸困難などの症状の出現を特徴とする。この疾患に感染した残りの人々は無症候性であり、これはウイルスの拡散における重要な要因であり、その制御に関して疫学的課題を表している(www.who.int/emergencies /diseases/novel-coronavirus-2019/situation-reports. Consulted on 13 August 2020におけるWHOコロナウイルス感染症(COVID-2019)状況報告書)。
【0003】
MERS及びSARSとして知られるSARS-CoV-2と同様の他のコロナウイルスは、過去数十年に同様の流行を既に引き起こしている。SARSはSARS-CoV-2とのより大きな相同性を示し、それらの間の主な類似性の1つは、両方のウイルスがACE2タンパク質を受容体として使用してヒト細胞に浸透することである。したがって、SARSもSARS-CoV-2も、S1ウイルスタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)とACE2(アンジオテンシン変換酵素2)タンパク質との相互作用が、ヒトがウイルスに感染する決定的要因である。(Walls A et al (2020) Cell https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.02.058)。SARS-CoV-2のSタンパク質のRBDは、約195アミノ酸の断片(配列333~257)であり、それは、受容体結合モチーフ(RBM)を含有し、ウイルスがACE2受容体と相互作用する領域である。RBDは、システインCys336-Cys361、Cys379-Cys432、Cys391-Cys525及びCys480-Cys488の間に4つの分子内ジスルフィド架橋を含み、非常にコンパクトで安定した構造の作成に役立つ(Lan et al (2020), Nature Vol 581: 215-230)。
【0004】
RBDは小分子であり、その分子質量は、発現宿主及び組み込まれた炭水化物に応じて25~27kDaの範囲であり、主にアスパラギンN331及びN343に結合している(Chen WH et al., 2017, Journal of Pharmaceutical Sciences 106: 1961-1970)。
【0005】
SARS-Cov-2ワクチンのための戦略には、不活化ウイルス、アデノウイルスに組み込まれた又はメッセンジャーRNAとしてウイルス遺伝物質を含有する遺伝子構築物、及び遺伝子改変宿主において発現されるウイルスタンパク質サブユニット又は断片に基づくワクチンが含まれる。この場合、好ましい分子は、スパイクタンパク質としても知られるSタンパク質、又はその構造の断片、すなわちRBDである。この戦略が使用中の多くのワクチンの戦略に近いので、それらの主な利点は、安全性であるが、それにもかかわらず、その主な課題は、ウイルス感染から保護するのに十分な免疫応答の達成である。
【0006】
現在(2020年9月21日)までに、前臨床評価の対象となるSARS-CoV-2候補ワクチンは149種類あり、38種類が臨床試験中である。これら38種のうち、RBDを特異的抗原とするワクチン候補が少なくとも13種(5種は臨床試験中、8種は前臨床試験中)存在する(COVID-19候補ワクチンのDRAFTランドスケープ-2020年9月21日)。
【0007】
これらのワクチンは、用量あたり最大50マイクログラムの高濃度でアルミナに吸収されたRBDからなる(clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04466085?term=NCT04466085&draw=2&rank=1におけるワールド・ワイド・ウェブ、2020年8月17日に参照)。他のワクチン候補は、バキュロウイルス及び昆虫細胞で発現され、精製され、水酸化アルミニウムをアジュバントとして使用して製剤化されたアミノ酸残基319~545を含むRBDタンパク質を使用する。(Yang J et al (2020) Nature Vol 586: 572-592)。その単量体形態のRBDは、アルミナに吸収された動物実験でも使用されており、抗体依存性増強なしに中和抗体を誘導できることを実証している(Zang J. et al (2020) bioRxiv 2020.05.21.107565)。
【0008】
前述の技術的解決策はいずれも本発明に及ばない。本発明の発明者らは、RBD構造を利用して、担体タンパク質に共有結合的にコンジュゲートしたRBDを得る。これらのコンジュゲートは、333~527配列(配列番号2)又はその伸長を含む任意の断片から得ることができる。
【0009】
驚くべきことに、これらのコンジュゲートに対して誘発される免疫応答は、SARS-CoV-2を使用するウイルス中和アッセイ及びACE2受容体結合阻害アッセイで測定される、その動態及びウイルス中和能に関して、非コンジュゲート単量体RBDによって誘発されるものよりも強い。これらは、SARS-CoV-2によって引き起こされるパンデミックシナリオの中で極めて重要な特徴である。本発明に記載のワクチン組成物は、免疫後7日目に、IFNγの誘導を特徴とするTh1パターンへの細胞応答の極性化を伴う抗RBD IgG抗体応答を誘発し、したがって、Th2パターンを誘導するコロナウイルスワクチンについて報告された免疫病理学的効果は、この場合には予想されない。
【0010】
コロナウイルス感染後獲得免疫の1つの弱点は、それが長く持続しないことである。本発明に記載のワクチン組成物は、CD8+、CD4+及びT細胞メモリー応答、特にRBDに特異的でIFNγを産生するリンパ球を誘発する。
【0011】
本発明以前の技術的解決策又は科学的刊行物のいずれも、化学的方法によって得られた担体タンパク質に対するRBDの共有結合コンジュゲートも、そのようなコンジュゲートに基づくワクチン組成物も記載していないことは、言及する価値がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一実施形態は、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)及び担体タンパク質を含む共有結合コンジュゲートからなる。これらのコンジュゲートは、特に、RBD-担体タンパク質比が、好ましくは1つの担体タンパク質あたり1~8のRBDユニットのモル範囲内であるという事実を特徴とするが、13のRBDユニットまでのコンジュゲートも得ることができる。担体タンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド及びジフテリア毒素変異体CRM197を含む群から選択することができる。破傷風トキソイドとのコンジュゲーションによって達成される免疫効果は、他の担体タンパク質とのコンジュゲーションによっても生じる可能性があるので、本発明の効果は破傷風トキソイドの使用に限定されない。
【0013】
コンジュゲーションに使用されるRBD抗原は、以下のアミノ酸配列、すなわち319~541(配列番号1)、333~527(配列番号2)、328~533(配列番号3)のいずれかを有することができる。配列番号1は、特に二量体形態でも見出され得る。RBD抗原は、哺乳動物細胞(好ましくは非ヒト)、昆虫細胞、細菌及び酵母を含む群から選択される宿主において産生することができる。
【0014】
本発明の別の実施形態は、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)と担体タンパク質とで構成される共有結合コンジュゲートを介して、SARS-CoV-2に対する防御免疫応答を誘導するワクチン組成物を含む。これらのワクチン組成物はまた、とりわけ、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムなどの任意の無機塩を含む群から選択されるアジュバントを含むことができる。当該ワクチン組成物のコンジュゲートは、1用量あたり1~30μgのRBD濃度範囲を有し、アジュバントは、1用量あたり200~1500μgの濃度範囲内である。これらの組成物はまた、適切な医薬賦形剤を含有する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、以下の段階A)チオフィリック基(thiophilic group)を導入するための担体タンパク質の官能基化、B)担体タンパク質のRBDへの共有結合コンジュゲーション、及びC)精製を含む共有結合コンジュゲートを得るための手順を含む。この手順はまた、段階Aの前に、配列番号1がその二量体形態であるRBD二量体のインサイツ(in situ)還元からなる工程を含むことができる(
図1)。更に、手順は、段階Aの前に、配列番号1~3が使用されるRBD N末端のチオール化の別の工程を含むことができる(
図2)。手順の段階Aで導入されるチオフィリック基は、マレイミド、ブロモアセチル、ビニルスルホン、アクリラート、アクリルアミド、アクリロニトリル、及びメタクリラートを含む群から選択される。
【0016】
本発明の別の実施形態は、SARS-CoV-2ウイルスによる感染を予防するための上述のワクチン組成物の使用に関する。特に、中和抗体の応答が必要な場合の本明細書に記載のワクチン組成物の使用を含む。
【0017】
最後に、本発明の別の実施形態は、SARS-CoV-2に対する早期IgG抗体応答を誘導するための上述のワクチン組成物の使用において、1~30μgのRBD範囲で、1~3回の注射に及ぶ筋肉内ワクチン接種スケジュールを適用することからなる。
【0018】
本発明はここで、第1の態様において、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)及び担体タンパク質を含む共有結合コンジュゲートを提供する。
【0019】
本発明の共有結合コンジュゲートの好ましい実施形態では、担体タンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、及びジフテリアトキソイド変異体CRM197を含む群から選択される(
図3及び
図4)。
【0020】
本発明の共有結合コンジュゲートの好ましい実施形態では、RBD-担体タンパク質のモル比は、担体タンパク質あたり1~8のRBDの範囲内である(
図5)。
【0021】
本発明の共有結合コンジュゲートの好ましい実施形態では、RBDは、配列番号1、2及び3を含む群から選択される。
【0022】
本発明の共有結合コンジュゲートの好ましい実施形態では、配列番号1のRBDがその二量体形態で使用される。
【0023】
本発明の共有結合コンジュゲートの好ましい実施形態では、RBDは、哺乳動物細胞(好ましくは非ヒト)、昆虫細胞、細菌及び酵母を含むか又はそれらからなる群から選択される宿主中で産生される。
【0024】
別の態様では、本発明は、上記の本発明の共有結合コンジュゲートを含むワクチン組成物を提供する。ワクチン組成物は、好ましくはSARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導するために使用される。
【0025】
本発明のワクチン組成物の好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムを含むか又はそれらからなる群から選択されるアジュバントを更に含む。
【0026】
本発明のワクチン組成物の好ましい実施形態では、コンジュゲートは、用量あたり1~30μgのRBDの濃度範囲である。
【0027】
本発明のワクチン組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、用量あたり200~1500μgの濃度範囲である。
【0028】
本発明のワクチン組成物の好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、適切な医薬賦形剤を更に含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、上記の本発明の共有結合コンジュゲートを調製するための方法であって、担体タンパク質及びRBDを提供する工程であって、RBDが単量体又は二量体の形態であってもよい工程と、チオフィリック基を導入することによって担体タンパク質を官能基化する工程と、担体タンパク質をRBDに共有結合的にコンジュゲートする工程と、得られたコンジュゲートを精製する工程とを含む方法を提供する。
【0030】
RBD二量体が使用される本発明の共有結合コンジュゲートを調製するための方法の好ましい実施形態では、本方法は、RBD二量体の還元の更なる工程を、好ましくは担体タンパク質へのそのコンジュゲーションの前にインサイツ(in situ)で、好ましくはチオフィリック基を導入することによる担体タンパク質の官能基化の前に含む。
【0031】
本発明の共有結合コンジュゲートを調製するための方法の好ましい実施形態では、配列番号1~3のいずれかのRBDを使用することができ、最も好ましくは、配列番号1がRBDとして使用される。
【0032】
本発明の共有結合コンジュゲートを調製するための方法の好ましい実施形態では、導入されるチオフィリック基は、マレイミド、ブロモアセチル、ビニルスルホン、アクリラート、アクリルアミド、アクリロニトリル及びメタクリラートを含むか又はそれらからなる群から選択される。
【0033】
別の態様では、本発明は、上記の本発明の共有結合コンジュゲートを調製するための方法によって得られるコンジュゲートを提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、SARS-CoV-2ウイルスによる感染の予防、特にSARS-CoV-2ウイルス感染によって引き起こされる疾患の予防のための本発明のワクチン組成物の使用を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス感染によって引き起こされる疾患を予防する方法であって、治療有効量の上記の本発明のワクチン組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0036】
好ましくは、本発明による感染を予防する使用又は疾患を予防する方法では、使用又は方法は、ワクチン組成物の2回の用量又はワクチン接種を受けた後の中和抗体応答を必要とする対象において、SARS-CoV-2ウイルスによる感染又はSARS-CoV-2ウイルスからの疾患を予防するためのものである。
【0037】
本発明による感染又は疾患を予防する使用及び方法の好ましい実施形態では、使用又は方法は、1~3用量の筋肉内ワクチン接種スケジュールを適用することによってSARS-CoV-2抗体応答を誘導することである。好ましくは、本発明によるスケジュール化されたワクチン接種用量では、用量中のRBDの量は1~30μgである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】チオフィリックマレイミド基で活性化された破傷風トキソイド(TT)へのSARS-Cov-2受容体結合ドメイン(RBD)の部位選択的コンジュゲーションのスキームを示す図である。コンジュゲーションは、受容体結合モチーフ(赤色で表される)から空間的に離れているCys538の遊離チオールで起こるため、RBDの抗原性に影響を及ぼさない。
【
図2】チオフィリックマレイミド基で活性化された破傷風トキソイド(TT)へのSARS-Cov-2受容体結合ドメイン(RBD)のN末端選択的コンジュゲーションのスキームを示す図である。RBDのN末端チオール化は、N末端アミノ基を選択的に修飾する新規な(社内で開発された)チオアセチル-ピリジノカルボアルデヒド試薬を用いて行われる。N末端残基は、受容体結合モチーフ(赤色で表される)から空間的に離れているため、RBDの抗原性に影響を及ぼさない。
【
図3】A)破傷風トキソイド、B)ジフテリアトキソイド又はC)交差反応性材料197(CRM197)を担体タンパク質として使用した、Cys538でコンジュゲートしたRBD(319~541)に基づくRBDコンジュゲートの図である。
【
図4】A)破傷風トキソイド、B)ジフテリアトキソイド又はC)交差反応性材料197(CRM197)を担体タンパク質として使用した、N末端でコンジュゲートしたRBD(328~533)に基づくRBDコンジュゲートの図である。
【
図5】破傷風トキソイド1ユニットあたり平均2、4及び6ユニットのRBDを有するRBD-TTコンジュゲートを表す図である。平均8、10又は13ユニットのRBDユニットを有するコンジュゲートも得た。
【
図6】RBD単量体に対するRBDの二量体(配列番号1)の減少を示し、RBD単量体の参照プロファイルと比較したHPSEC Superdex75クロマトグラムを示す図である。
【
図7】RBDの天然型及びRBD二量体(配列番号1)の還元に由来するRBDの10%SDS-PAGEを示す図である。R:試料を還元試料緩衝液中でインキュベートした後、ゲルにアプライした。NR:試料を非還元試料緩衝液中にアプライした。
【
図8】天然単量体及び二量体の抗原性と比較した、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)によるRBD二量体(配列番号1)の還元によって得られた単量体の抗原性を示す図である。
【
図9】破傷風トキソイドのクロマトグラムと比較した、精製RBD-TT2及び3コンジュゲート(例2)のHPSEC Superdex200クロマトグラムを示す図である。
【
図10】ELISA(A)及び抗RBDポリクローナル抗体を使用したドットブロット(B)によって分析した、ACE-2受容体によるRBD(319~541)-TTコンジュゲートの認識を示す図である。
【
図11】Al(OH)
3中に製剤化された又は製剤化されていないRBD-TTコンジュゲートを0日目及び14日目にワクチン接種した後に誘導された抗RBD IgG抗体の動態を、Al(OH)
3中に製剤化されたRBDと比較して示す図である。アステリスクは、各時点での群間の有意差(p≦0.05)を示す。
【
図12】Al(OH)
3中に製剤化された又は製剤化されていないRBD-TTコンジュゲートを0日目及び14日目にワクチン接種した後に誘導された抗TT IgG抗体の動態を示す図である。
【
図13】Al(OH)
3中に製剤化された又は製剤化されていないRBD-TTコンジュゲートのワクチン組成物を0日目及び14日目に免疫したマウスにおいて、28日目に誘導された抗体の希釈物を用いてELISAで測定されたRBD-ACE2結合の阻害を、Al(OH)
3中に製剤化されたRBDと比較して示す図である。
【
図14】Al(OH)
3中に製剤化された又は製剤化されていない2用量のRBD-TTコンジュゲートで免疫されたマウスからの28日目の血清の抗SARS-CoV-2中和活性を、Al(OH)
3中に製剤化されたRBDと比較して示す図である。アステリスクは有意差(p<0.05)を示す。
【
図15】定量的ELISAによって決定される、Al(OH)
3中に製剤化されたRBD-TT又はプラセボ(Al(OH)
3)で免疫されたマウスの脾臓細胞におけるIFNγ、IL4及びIL17Aの産生を示す図である。アステリスクは、テューキー検定による有意差(p<0.05)を示す。
【
図16】Al(OH)
3中に製剤化された2用量のRBD-TTコンジュゲートで免疫したマウスにおいて誘導された記憶細胞応答を示す図である。(A)CD8
+CD44
++Tリンパ球、(B)IFNγ産生CD8 Tリンパ球、(C)CD4
+CD44
++メモリーTリンパ球、及び(D)IFNγ産生CD4 Tリンパ球。RBD/RBD:2用量(T0、T14)のRBD-TTを受け、抽出されたリンパ球をインビトロでRBDで刺激した群。アルミニウム/RBD:2用量(T0、T14)のアルミニウムを受け、抽出されたリンパ球をインビトロでRBDで刺激した群。
【
図17】RBD単量体のN末端残基(配列番号3)の選択的チオール化を示し、RBD単量体の参照プロファイルと比較したHPSEC Superdex75クロマトグラムを示す図である。
【
図18】(A)N末端残基でチオール化されたRBD単量体(配列番号3)のコンジュゲーション(上のパネル)、RBD-TT4の16時間反応混合物(中央のパネル)、及びRBD-TT4精製コンジュゲート(下のパネル)を示すHPSEC Superdex 75クロマトグラムを示す図である。(B)破傷風トキソイドと比較したRBD-TT4精製コンジュゲートのHPSEC Superdex200クロマトグラムを示す図である。
【
図19】(A)ELISA試験によって、及び(B)ドットブロットによって試験された抗RBDポリクローナル抗体によって分析された、ACE-2受容体によるRBD(328~533)-TTコンジュゲートの認識を示す図である。
【
図20】第II相臨床試験(19~80歳)及び第I/II相臨床試験(3~18歳)におけるコンジュゲートワクチンの0日目及び28日目の免疫後14日目(T42)に誘導された抗RBD IgG抗体を示す図である。PCP:小児回復者からの血清のパネル。
【
図21】ワクチン接種対象又はワクチン未接種対象の唾液試料からの抗RBD IgGを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で使用される「SARS-CoV-2」という用語は、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を指す。SARS-CoV-2の陽性症例の検査は、必要に応じて核酸配列決定による確認を伴うリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)などのNAATによるウイルスRNA配列の検出に基づくことができる。これまでに標的とされたウイルス遺伝子には、N、E、S及びRdRP遺伝子が含まれる。「SARS-CoV-2感染症」及び「COVID」という用語は、本明細書では互換的に使用され、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)によって引き起こされるウイルス感染症に関する。一般的なCOVID-19症状としては、発熱、咳、及び息切れが挙げられる。筋肉痛、痰の産生及び喉の痛みはあまり一般的ではない。症例の大部分は軽度の症状をもたらすが、一部は重度の肺炎及び多臓器不全に進行する。感染は、典型的には、咳中に産生される呼吸液滴を介してある人から別の人に広がる。また、汚染された表面に触れた後に、顔に触れることから感染が広がる可能性がある。
【0040】
本明細書で使用される「受容体結合ドメイン(RBD)」という用語は、コロナウイルスのコロナウイルススパイク(S)タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を指し、対象の細胞上の受容体へのウイルス付着、及びその後の細胞への侵入に関与するコロナウイルススパイク(S)タンパク質の一部への言及を含む。細胞受容体は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体であってもよい。好ましくは、RBDは、配列番号1~3のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。RBDの定義の範囲内で、配列番号1~3のアミノ酸配列の抗原性部分であるRBDも想定される。本明細書に記載のRBDは、配列番号1~3のアミノ酸配列又はその抗原性部分から1~100個、好ましくは1~50個、より好ましくは1~10個のアミノ酸残基が付加、置換又は欠失されているという点で改変することができ、好ましくは、当該改変RBDは、本明細書に記載のコンジュゲートで対象を免疫した際に誘発される免疫応答の産物、好ましくは抗体に結合し、当該コンジュゲートのRBDは、配列番号1~3のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。したがって、RBDという用語は、配列番号1~3と80%、好ましくは90%、より好ましくは95%の配列同一性を有し、本明細書に記載のコンジュゲートで対象を免疫した際に誘発される免疫応答の産物、好ましくは抗体に結合する配列への言及を含み、当該コンジュゲートのRBDは、配列番号1~3のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0041】
本発明の様々な態様では、「コロナウイルススパイク(S)タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)」という用語は、完全なコロナウイルススパイク(S)タンパク質のRBD部分のみのことを指す。
【0042】
「スパイク(S)タンパク質」という用語又は「スパイク(S)糖タンパク質」という同等の用語は、S1サブユニット(N末端頭部)及びS2サブユニット(C末端柄)からなるコロナウイルスSタンパク質を指す。S1サブユニットは、N末端S1Aドメイン(ウイルス付着因子であるシアル酸を含む)及びSARS ACE2受容体に結合するC末端受容体結合ドメイン(RBD)を介したウイルスの付着及び侵入を媒介する。S2サブユニットはより保存されており、融合ペプチド(FP)及び2つの7アミノ酸繰り返しHR1及びHR2を介した宿主細胞へのウイルス融合を媒介する。ヒトACE2及びCLEC4M/DC-SIGNR受容体へのSARS-CoV Sタンパク質RBDの結合は、宿主細胞のエンドソームへのウイルスの内在化をもたらす。
【0043】
本明細書で使用される「担体タンパク質」という用語は、タンパク質、オリゴ糖又は多糖などの抗原が結合し得る免疫原性タンパク質を指す。担体に結合すると、結合した分子はより免疫原性になってもよい。担体への分子の共有結合は、免疫原性及びT細胞依存性を増強させる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、「ポリペプチド」としても知られる、隣接する残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに接続された一連のアミノ酸残基を指すために本明細書で使用される。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、そのサイズ又は機能にかかわらず、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)及びアミノ酸類似体を含むアミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、比較的大きなポリペプチドに関して使用されることが多く、「ペプチド」という用語は、小さなポリペプチドに関して使用されることが多いが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は重複する。本発明の文脈において、「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は完全に交換可能である。
【0045】
本発明の(RBD)抗原を含むタンパク質は、本明細書に例示及び記載される正確な配列とは異なり得ることを理解されたい。したがって、本発明は、配列が本発明の方法に従って機能する限り、示される配列に対する欠失、付加及び置換が企図される。これに関して、特に好ましい置換は、一般に、本質的に保存的であり、すなわちアミノ酸ファミリー内で起こる置換である。例えば、アミノ酸は一般に4つのファミリー(1)酸性のアスパラギン酸及びグルタミン酸、(2)塩基性のリジン、アルギニン、ヒスチジン、(3)非極性のアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、(4)非荷電極性のグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族アミノ酸として分類されることがある。イソロイシン若しくはバリンによるロイシンの単独置換、又はその逆;グルタミン酸によるアスパラギン酸の単独置換、又はその逆;セリンによるトレオニンの単独置換、又はその逆;又は構造的に関連するアミノ酸によるアミノ酸の同様の保存的置換は、生物学的活性に大きな影響を及ぼさないことが合理的に予測可能である。したがって、例示及び記載された配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさない軽微なアミノ酸置換を有するタンパク質は、本発明の範囲内である。少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%のRBDタンパク質の全長にわたる配列同一性は、配列番号1~3のRBDタンパク質の機能的変異体であると考えられ、本発明の態様で使用することができる。「配列同一性%」という用語は、本明細書では、最大のパーセント配列同一性を達成するために、配列をアライメントさせ、必要に応じてギャップを導入した後の、目的の核酸又はアミノ酸配列中のそれぞれヌクレオチド、アミノ酸と同一である、核酸配列中のヌクレオチド、又はアミノ酸配列中のアミノ酸のパーセンテージとして定義される。アライメントのための方法及びコンピュータプログラムは、当技術分野で公知である。配列同一性は、目的のアミノ酸配列の実質的に全長にわたって、好ましくは全長(完全長)にわたって計算される。当業者は、1つのアミノ酸配列中の連続するアミノ酸残基が別のアミノ酸配列中の連続するアミノ酸残基と比較されることを理解する。
【0046】
本明細書で使用される「破傷風トキソイド」という用語は、公知の破傷風トキソイドペプチドを指し、ペプチドは破傷風毒素の残基830~844のエピトープを表す。この配列は、複数のHLA-DR対立遺伝子に結合することが示されており、一般的に免疫原性であると記載されている。アミノ酸配列はQYIKANSKFIGITELである。
【0047】
本明細書で使用される「ジフテリアトキソイド」という用語は、ジスルフィド架橋によって連結された2つのサブユニットからなる535アミノ酸の単一ポリペプチド鎖である、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)によって分泌される不活性化外毒素を指す。ジフテリアトキソイドは、世界的に標準的な様式で製造されており、米国では、生産及び試験手順は連邦規則集に規定されている。
【0048】
本明細書で使用される「ジフテリアトキソイド変異体CRM197」という用語は、多糖類及びハプテンの担体タンパク質として定期的に使用されてそれらを免疫原性にする、ジフテリア毒素の非毒性変異体を指す。野生型ジフテリアトキソイド配列における単一のG→A転移は、グルタミン酸によるグリシン-52の置換をもたらす(Giannini et al.1984 Nucleic Acids Res.12(10):4063-4069)。
【0049】
本明細書で使用される「共有結合」という用語は、2つの原子が1つ又は複数の電子対を共有して、それらを一緒に保持する化学結合を指す。
【0050】
本明細書で使用される「共有結合コンジュゲート」という用語は、抗原ポリペプチドが担体タンパク質に共有結合している化合物を指す。
【0051】
本明細書で使用される「共有結合的にコンジュゲートする」という用語は、化学反応によってコンジュゲートを調製する工程を指す。
【0052】
本明細書で使用される「ワクチン」という用語は、活性免疫を生成するために、ほとんどの場合アジュバントと共に体内に投与される、通常は改変型生(modified-live)(弱毒化)若しくは不活化感染因子、又は感染因子の一部からなる抗原性部分の組成物への言及を含む。本発明は、薬学的に許容される担体中に上記のコンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。そのような担体は、水性液体又はエアロゾル組成物であってもよい。
【0053】
本明細書で使用される「用量」という用語は、特定の時間に投与されるか又は投与されることが推奨される本発明のコンジュゲート又は組成物の量又は測定量を指す。
【0054】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、製剤中の特定のワクチン抗原と組み合わせて使用される場合、得られる免疫応答を増強又はそうでなければ変更若しくは修飾する1つ又は複数の化合物への言及を含む。好ましくは、アジュバントは、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム(アルミニウム塩)である。
【0055】
本明細書で使用される「医薬賦形剤」という用語は、アジュバント、担体、pH調整剤及び緩衝剤、等張性調整剤、湿潤剤、保存剤などの材料を指す。ワクチン賦形剤は、例えば、欧州薬局方及び米国薬局方9CFRなどの政府規制、及びThe Handbook of Pharmaceutical Excipients (R. Rowe et al., Pharmaceutical press 2012, ISBN 08571 10276)、Remington: the science and practice of pharmacy (2000, Lippincot, USA, ISBN: 683306472)などのハンドブックに記載されている。
【0056】
本明細書で使用される「インサイツ(in situ)還元」という用語は、本明細書に記載のRBDの二量体から単量体への変換を指す。二量体の還元は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用して行うことが好ましい。好ましくは、還元はインサイツ(in situ)であり、これは、二量体がTCEPと混合され、その後、中間精製工程なしで担体タンパク質と混合されることを意味する。
【0057】
本明細書で使用される「チオール化」という用語は、RBDのN末端又はN末端残基へのスルフヒドリル(SH)基の導入を指す。チオール化は、RBDを過剰の2-チオアセチル-ピリジン-2-カルボキシアルデヒドと反応させ、続いてヒドロキシルアミンで処理することによって達成することができる。
【0058】
本明細書で使用される「官能基化」という用語は、担体タンパク質中の1つ又は複数のチオフィリック基の導入を指す。チオフィリック基としては、マレイミド、ブロモアセチル、ビニルスルホン、アクリラート、アクリルアミド、アクリロニトリル及びメタクリラートを挙げることができる。当業者は、タンパク質中の1つ又は複数のチオフィリック基を導入するための方法について熟知している。官能基化は、例えば、担体タンパク質を適切な緩衝液中でマレイミド-プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させることによって達成することができる。
【0059】
本発明の態様では、次いで、チオール化RBDを、チオフィリック基により官能基化された担体タンパク質と反応させて、本発明のコンジュゲートを形成させる。反応化学量論に応じて、得られるコンジュゲートは、担体タンパク質のユニット当たり1~8のRBDユニットを含有する。本発明について記載されるコンジュゲーション手順は、化学選択的及び残基特異的である。本発明による共有結合コンジュゲートは、好ましくは、RBDと担体タンパク質とがペプチド結合を介して結合している融合タンパク質ではない。
【0060】
本明細書で使用される場合、「投与する」という用語は、所望の部位でのコンジュゲートの少なくとも部分的な送達をもたらす方法又は経路により、本明細書に開示される化合物又は組成物を対象に配置することを指す。本明細書中に開示される化合物を含む医薬組成物は、対象において有効な治療をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。好ましくは、投与は注射、好ましくは筋肉内注射によるものである。
【0061】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒト又は非ヒト動物を意味する。通常、非ヒト動物は、脊椎動物、例えば霊長類、げっ歯類、家畜又は狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカック、例えばアカゲザルが挙げられる。げっ歯動物としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ及びハムスターが挙げられる。動物としては、数例を挙げると、アルマジロ、ヘッジホッグ、及びラクダも挙げられる。家畜及び狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えばイエネコ、イヌ種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、並びに魚、例えばマス、ナマズ及びサケが挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「個体」、「患者」及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、又はブタであってもよいが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、所与の状態の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。対象は、好ましくはヒトである。対象は、男性又は女性であってもよい。対象は、治療を必要とする状態に罹患しているか又はその状態を有していると、以前に診断されているか又は特定されており、場合により、既に治療を受けている対象であってもよい。或いは、対象は、状態を有すると以前に診断されていない対象であってもよい。例えば、対象は、1つ若しくは複数の危険因子を示す対象、又は危険因子を示さない対象であってもよい。
【0062】
特定の症状に対する治療を「必要とする対象」は、その症状を有する対象、その症状を有すると診断された対象、又はその症状を発症するリスクがある対象であってもよい。
【0063】
本明細書で使用される「SARS-CoV-2ウイルスによる感染の予防」という用語及び本明細書で使用される「SARS-CoV-2ウイルス感染によって引き起こされる疾患を予防する」という用語は、COVID-19疾患、又はSARS-CoV-2ウイルス若しくはその変異体によって引き起こされる疾患を予防又は治療することを指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、「治療すること」又は「改善」という用語は、治療的処置を指し、目的は、疾患又は障害、例えば癌又は炎症に関連する状態の進行又は重症度を逆転、緩和、改善、阻害、減速又は停止することである。「治療すること」という用語は、状態、疾患又は障害の少なくとも1つの有害作用又は症状を軽減又は緩和することを含む。1つ又は複数の症状又は臨床マーカーが低下している場合、治療は一般に「有効」である。或いは、疾患の進行が軽減又は停止する場合、治療は「有効」である。すなわち、「治療」には、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療がない場合に予想されるものと比較して、症状の進行又は悪化の停止又は少なくとも遅延も含まれる。有益な又は所望の臨床結果としては、限定されないが、検出可能であろうと検出不能であろうと、1つ又は複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の引き延ばし又は遅延、疾患状態の改善又は緩和、寛解(部分的であろうと全体的であろうと)、及び/又は死亡率の低下が挙げられる。疾患の「治療」という用語はまた、疾患の症状又は副作用からの軽減を提供すること(緩和治療を含む)を含む。
【0065】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、疾患又は障害の少なくとも1つ又は複数の症状を緩和するのに必要なワクチン抗原の量を指し、所望の効果を提供するのに十分な量の薬理学的組成物に関する。したがって、「治療有効量」という用語は、一般的な対象に投与された場合に特定の効果をもたらすのに十分なワクチン抗原の量を指す。本明細書で使用される有効量はまた、様々な状況において、疾患の症状の発症を遅延させる、疾患の症状の経過を変化させる(例えば、限定されないが、疾患の症状又はその重症度の進行を遅らせること)、又は疾患の症状を逆転させるのに十分な量を含む。したがって、正確な「有効量」を特定することは一般に実用的ではない。しかしながら、任意の所与の場合について、適切な「有効量」は、ルーチンの実験のみを使用して当業者によって決定することができる。有効量は、好ましくは、対象において中和抗体応答を引き起こす。
【0066】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、所望の障害又は状態を治療、改善、抑制、阻害又は予防するための、又は検出可能な治療効果又は予防効果を示すための治療剤の量を指す。対象に必要な正確な有効量は、対象のサイズ及び健康状態、状態の性質及び程度、並びに投与のために選択される治療薬又は治療薬の組み合わせに依存する。所与の状況に対する治療有効量は、ルーチンの実験によって決定することができる。
【0067】
「中和抗体応答」という用語は、外来タンパク質、例えばSARS-CoV-2のRBDに結合し、その活性を低下又は減少させる、対象における抗体の産生を指す。外来タンパク質の活性は、例えば、中和抗体応答の非存在下又は誘発前の外来タンパク質の活性と比較して、検出可能な量、例えば10%、25%、50%、75%又は100%(すなわち、完全に不活性化されている)低下させることができる。外来タンパク質の活性は、当該分野で公知の任意の方法によって決定することができる外来タンパク質に依存する。
【0068】
本明細書で使用される「ワクチン接種」という用語は、疾患からの保護をもたらすために、レシピエントの免疫系によって中和抗体応答を誘導するワクチンの投与を指す。
【0069】
「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書で使用される。
【0070】
RBD抗原の取得方法
RBDタンパク質のコード配列を合成し、適切な発現ベクター、好ましくはpcDNA3.1にサブクローニングする。選択されるRBDアミノ酸配列は、配列番号1~3又はその伸長である。標的タンパク質を含有する構築物は、バイオテクノロジーで従来使用されている宿主の1つ、すなわち哺乳動物細胞(CHO、HEK293)、昆虫細胞、細菌及び酵母、好ましくはCHO細胞で発現することができる。
【0071】
発現した標的タンパク質を遠心分離及び濾過によって回収し、アフィニティーカラム、好ましくはNi-Sepharoseカラムで精製し、続いてサイズ排除クロマトグラフィー精製、好ましくはSuperdex200で精製する。精製したタンパク質をSDS-PAGE、HPSEC及びMSなどの適切な方法を使用して分析し、他の分子特性の中でも、分子サイズ、純度、同一性及びアミノ酸配列を決定する。
【0072】
担体タンパク質への共有結合コンジュゲートを得るために、本発明者らは、195アミノ酸(配列Thr333~Pro527、配列番号2)を含有する球状タンパク質であるRBDの構造を利用する。当該配列は、システイン(Cys336-Cys361、Cys379-Cys432、Cys391-Cys525及びCys480-Cys488)の間に4つの分子内ジスルフィド架橋を含み、非常にコンパクトで安定した構造を作り出す。この配列は、この分子について記載される4つの免疫優性エピトープ並びに受容体結合モチーフを含有するので、RBDのコンジュゲーションに使用される生物学的に関連する構造を構成する。これらのコンジュゲートは、333~527配列又はその伸長を含む任意の断片から得ることができる。
【0073】
更に、RBDを作成するために使用される遺伝子構築は、333~300アミノ酸のいずれかのN末端、又は527~560アミノ酸領域のC末端のいずれかにおいて、333~527配列の末端の一方又は両方に伸長を含むことができる。遺伝子構築自体によって、特に、活性であると考えられる天然アミノ酸の1つ、例えばシステイン538を含むように配列を伸長することによって、生物学的に関連する構造に影響を与えることなく末端の一方を活性化することが可能である。別の解決策は、末端の一方に活性官能基を導入することからなり、この例は、N末端アミノ酸、例えば328~533 RBD配列(配列番号3)のアルギニン328のチオール基官能基化である。
【0074】
配列番号1の標的タンパク質のアミノ酸配列は、4つの分子内ジスルフィド架橋(Cys336-Cys361、Cys379-Cys432、Cys391-Cys525及びCys480-Cys488)に関与する8個を含む9個のシステインを含み、非常にコンパクトで安定な構造をもたらす。RBDの精製中及び空気の存在下(穏やかな酸化条件)で、配列番号1のRBDは、2つのRBD分子の位置538の2つの遊離システインの間にジスルフィド架橋を形成することによって二量体化することができる。それにもかかわらず、RBDが不活性ガス(すなわち、窒素又はアルゴン)の雰囲気中に維持されている場合、システイン538は反応せず、RBDはその単量体形態のままであり、したがって、RBDはチオフィリック基との化学反応に関与することができる。
【0075】
担体タンパク質へのRBDの共有結合コンジュゲートを得るための方法
担体タンパク質は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、及びジフテリア毒素変異体CRM197、又はヒトで使用するためのワクチンにおいて同じ機能を果たす任意の他のタンパク質を含む群から選択することができる。これらの担体タンパク質を得て特性決定する方法は、利用可能な文献に見出すことができる。
【0076】
本発明について記載されるコンジュゲーション手順は、化学選択的及び残基特異的である。当該手順は3つの段階に分けられる。第1段階(A)は、担体タンパク質を官能基化して、チオフィリック基、好ましくはマレイミドを導入することからなるが、既知のチオフィリック基、すなわちブロモアセチル、ビニルスルホン、アクリラート、アクリルアミド、アクリロニトリル及びメタクリラートのいずれを使用してもよい。官能基化は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中のマレイミド-プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを、適切な緩衝液中でタンパク質に対して100~200のモル比で使用することによって達成することができる。官能基化タンパク質は、精製中のタンパク質に適合するMWCO値を有する膜を使用した透析濾過によって精製され、官能基化の程度は、改変Ellman手順を使用して決定される。
【0077】
段階(B)は、RBDと官能基化担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを包含し、これらは適切な緩衝液中で0.2~9.4のRBD:担体タンパク質(w:w)の質量比で反応混合物に添加され、混合物は、不活性ガス雰囲気中、5±3℃で4~18時間穏やかに撹拌される。残りのチオフィリック基は、シスタミンの右部分を添加することによってブロックされる。
【0078】
段階(C)は、担体タンパク質に適合するMWCO値を有する膜を使用した透析濾過によって達成することができる、得られたコンジュゲートの精製からなる。
【0079】
コンジュゲーションは、その単量体及び二量体の両方の形態の配列番号1のRBDを使用することによって達成することができる。段階(A)の前に、RBD二量体中の分子間ジスルフィド架橋の還元を含む別の段階を導入し、この段階は、ジスルフィド結合の還元剤、好ましくはジチオスレイトール(DDT)又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用して穏やかな還元条件下、125μM~420μMの範囲の濃度で、5~20分間及び0~23℃の範囲の温度で達成される。これらの条件は、特に、上記の他の4つの分子内ジスルフィド架橋に影響を及ぼすことなく、この架橋を選択的に切断する。単量体への二量体の還元はHPSECによって検証することができ、4つの分子内ジスルフィド架橋の保存性及び抗原性はそれぞれSDS-PAGE及び間接ELISA試験によって確認される。
【0080】
本発明の別の実施形態は、段階Aの前にRBDのN末端残基をチオール化するための別の工程を含む。この手順は、過剰の2-チオアセチル-ピリジン-2-カルボキシアルデヒド(RBDに対して20~50当量)と23~37℃で12~48時間反応させ、続いて洗浄し、過剰のヒドロキシルアミンを用いて周囲温度で1~5時間処理することを伴う。
【0081】
反応化学量論に応じて、得られるコンジュゲートは、担体タンパク質のユニット当たり1~8のRBDユニットを含有する。
【0082】
ワクチン組成物及び投与経路
受容体結合ドメインと担体タンパク質との共有結合コンジュゲートに基づくSARS-CoV-2ワクチンは、1~30μg、好ましくは5~25μgの範囲のRBD用量で、筋肉内又は皮下経路を介して投与される。これらのワクチン組成物は、200~1500μg、好ましくは500~1000μgの範囲の用量で、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムを含むがこれらに限定されない任意の無機塩をアジュバントとして含有することができる。ワクチン組成物は、pHを調節することができる適切な医薬賦形剤、例えば3.0~7.0mMの範囲の濃度のリン酸緩衝液、50~150mMの範囲の濃度の塩化ナトリウムとしての等張溶液、並びに保存剤、例えばチオメルサール、フェノール、2-フェノキシエタノール、メチルパラヒドロキシベンゾアート、ホルムアルデヒド、m-クレゾール、又は他のメチル及びプロピル-パラベン、好ましくはチオメルサールを含む。
【0083】
これらのワクチン組成物製剤は、好ましくは1~3用量、好ましくは7~28日ごと、より好ましくは14~28日ごと、より好ましくは21~28日ごとのスケジュールに従って投与される。好ましくは、連続投与の間に少なくとも1~3週間の間隔、好ましくは少なくとも2週間の間隔がある。投与のための単回用量は、好ましくは1~30μgの量のRBDを含む。注射フラスコなどの容器は、複数の対象のワクチン接種のための複数回用量を含むことができる。各用量は、好ましくは約0.05~約1mL、好ましくは各用量は約0.3~0.5mL、最も好ましくは約0.3mLである。投与量は、濃縮形態又は凍結乾燥形態で容器に含まれてもよく、投与前に適切な注射液で希釈又は再構成されてもよい。
【0084】
投与は、好ましくは筋肉内である。投与は、好ましくは血管内、皮下又は皮内ではない。本発明で提案されるワクチン組成物は、アジュバント化非コンジュゲート化RBDを含有するワクチン組成物と比較して、その優位性を示し、パンデミックの現在の状況下で重要なこれらのワクチン組成物のいくつかの特徴、すなわち誘発される応答の迅速性、並びにSARS-CoV-2ウイルスの中和剤及びRBD-ACE2受容体相互作用の遮断薬として作用する高レベルの抗体力価が存在する。これらの組成物は、Th1パターン免疫応答、並びにRBDに特異的なCD8+、CD4+及びT細胞の記憶応答、特にIFNγを産生する細胞の記憶応答を誘発する。
【0085】
更なる利点
本発明で提案されるワクチン組成物は、小児集団における臨床試験で優れた結果を示している。
【0086】
更に、本発明で提案されるワクチン組成物は、ワクチン接種されたヒトにおける粘膜IgG応答を実証している。これの重要性は、そのような誘導された粘膜応答が、ウイルスの伝染並びにその感染力を減少させたことである。本発明者は、これが現在入手可能なCOVID-19ワクチンの中で独特の新しい特性であると考える。
【0087】
完全なスパイクタンパク質ワクチンが心筋炎及び心膜炎のような重要な有害事象を示すので、完全なスパイクタンパク質ワクチンの一部として現在提案されているRBD構造は重要な利点を有すると考えられる。これらの副作用は、スパイクタンパク質のカルボキシル領域に関連している。この領域は、現在提案されているRBD-担体タンパク質コンジュゲートワクチンには存在しない。完全なスパイクタンパク質ワクチンの言及された副作用が小児集団において特に劇的であるので、現在提案されているワクチン組成物は、小児使用に非常に適していることは注目に値する。
【0088】
最初の結果は、免疫抑制の対象及び免疫減弱状態の対象の免疫応答が非常に有益であり、他のワクチンよりも良好であることを示している。
【0089】
本発明者らは、不活化ウイルスワクチン又はアデノウイルスベクターワクチンについて報告されるような他の有害事象を同定しておらず、免疫応答又は中和抗体応答の評価は不活化ウイルスワクチンよりも高い。
【実施例】
【0090】
例1 Cys538で二量体化したRBDからのRBD(319~541)単量体の調製。
RBD二量体(319~541)をPBS緩衝液(35mM、pH7.4)、0.5mM EDTAに溶解して、最終タンパク質濃度を5~10mg/mLにした。TCEPを125μM~420μMの最終濃度まで添加した。周囲温度で中程度に撹拌しながらアルゴン雰囲気中で反応を10分間維持した。
【0091】
単量体形態への変換及びその分子の完全性を、それぞれHPSEC及びポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検証した。
図6は、還元から得られた単量体が天然単量体と同じ分子分布を有することを示すHPSECプロファイルを示している。
図7(SDS-PAGE)は、還元によって再生されたRBD単量体(ライン3)が、天然RBD単量体(ライン2、天然の立体配座)と同じ泳動パターンを有することを示し、これは、より遅い泳動を示す、分子間架橋及び分子内架橋を還元するための徹底的な条件に供された対照試料(ライン4)とは対照的である。
【0092】
還元によって得られた単量体の抗原性を、COVID-19ヒト回復期血清を用いた間接ELISAによって分析した。
図8は、還元によって再生されたRBDが天然のRBDと同様に認識されたが、徹底的な条件下で還元され、分子間及び分子内ジスルフィド架橋を破壊したRBD単量体(合計、C-)は、血清によって認識されないことを証明している。
【0093】
例2 RBD(319~541)-破傷風トキソイドコンジュゲートの調製
担体タンパク質の官能基化:DSMO中のマレイミド-プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(75mg/mL)と反応させたHEPES緩衝液(100mM、pH7.8)中の破傷風トキソイド担体タンパク質(5mg/mL)を反応混合物中にゆっくり滴下した。反応物を周囲温度で1時間維持した。PBS緩衝液(35mM、pH7.4)、5mM EDTAで洗浄することによる透析濾過によって、官能基化破傷風トキソイドを精製した。官能基化の程度を改変Ellman手順によって決定した。
【0094】
コンジュゲーション:官能基化破傷風トキソイドを、0.2対0.4のRBD/TTモル比で、単量体形態のRBDの溶液又は単量体にインサイツ(in situ)還元されたRBDの溶液に添加した。反応物をアルゴン雰囲気下、5±3℃で4~18時間穏やかに撹拌しながら保持した。残りのマレイミド基をブロックするために、システアミン塩酸塩を最大157μMの濃度で添加し、撹拌を30分間維持した。
【0095】
精製:PBS(6mM、pH7.0)で洗浄しながら、100kDaのMWCO値を有する膜を使用した透析濾過によって精製を達成した。
【0096】
RBD/TT比は、ドットブロットデンシトメトリー及び比色法の組み合わせによって決定した。非コンジュゲート化RBDの含有量及び分子サイズ分布をHPSECによって決定した。動的光散乱(DLS)によって分子サイズ及び多分散指数を決定した。表1は、コンジュゲートのモル比が1.8~6.3mol RBD/mol TTの範囲であり、一方、非結合RBDの含有量が15%未満であることを示している。分子サイズ分布定数(Kd)は、破傷風トキソイドと比較して、コンジュゲートの分子サイズの増加を実証している(Kd=0.31)。また、より多くのRBDモルが担体タンパク質に取り込まれるにつれて、コンジュゲート集団の相対サイズが増加したことも示されている(表1及び
図9)。
【表1】
*RBD二量体のインサイツ(in situ)還元によって再生された単量体
【0097】
例3 ACE2受容体及び特異的抗体によるRBD(319~541)-破傷風トキソイドコンジュゲートの認識の実証。
ACE2受容体によるRBD-破傷風トキソイドコンジュゲート(RBD-TT)の認識を、組換えACE2受容体でプレートをコーティングしたELISA試験によって分析した。試料(RBD-TTのバッチ1及び2、陽性対照としてのRBD二量体、及び陰性対照としてのhPDLHys)を異なる濃度(0.001、0.004、0.019、0.078、0.3125、1.25及び5μg/ml)で添加した。インキュベーション後、RBD特異的ウサギポリクローナル血清を添加し、続いてペルオキシダーゼにコンジュゲートした抗ウサギIgGを添加した。対応する基質によって反応を明らかにし、405nmで読み取った。
【0098】
図10Aは、2つのコンジュゲートバッチが、RBD二量体(陽性対照)と同様にACE2受容体によって認識されることを示している。したがって、インサイツ(in situ)還元及びコンジュゲーションは、ACE2受容体によるRBDの認識に関与するRBDエピトープに影響を及ぼさないことが証明されている。
【0099】
抗RBD特異的ポリクローナルIgG血清を使用したドットブロットにより、RBD-TTの抗原性を確認した。
図10Bは、コンジュゲートが、試験された全ての希釈において抗RBD特異的抗体によって強く認識される一方で、1:80希釈でアプライされた破傷風トキソイド(TT)は認識されないことを示している。したがって、コンジュゲーションは抗体によるRBDの認識に影響を及ぼさないことが実証される。
【0100】
例4 RBD(319~541)-TTコンジュゲートは、BALB/cマウスにおいて強い抗体応答を誘導する。
BALB/cマウスを、0及び14日目に、0.1mLの以下の製剤のうちの1つで筋肉内に免疫した。
-第1群:1μgのRBD-(319~541)-TT。
-第2群:500μgのAl(OH)3に吸収された1μgのRBD-(319~541)-TT。
-第3群:3μgのRBD-(319~541)-TT。
-第4群:500μgのAl(OH)3に吸収された3μgのRBD-(319~541)-TT。
-第5群:500μgのAl(OH)3に吸収された3μgのRBD-(319~541)-TT。
-第6群:プラセボ。PBS及び500μgのAl(OH)3。
第6群は陰性対照製剤である。
【0101】
血液を7、14、21及び28日目に抽出した。動物血清を間接ELISAによって分析して、抗RBD抗体価を決定した。96ウェルのNUNC Maxisorpマイクロタイタープレートを炭酸-重炭酸緩衝液(pH9.6)中の50μLのRBD(3μg/mL)でコーティングし、37℃で1時間インキュベートした。その後、プレートを洗浄液で3回洗浄した。その後、コーティングされていない部位を100μLの5%スキムミルクを用いて37℃で1時間ブロッキングした。プレートを記載のように再び洗浄した後、リン酸緩衝液(pH7.2)、1%BSAに1:3で希釈した血清(50μL/ウェル)の段階希釈液を添加し、一般に1:50希釈から開始した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、再び洗浄した。次に、ペルオキシダーゼにコンジュゲートした抗マウスIgGの希釈液50μLをリン酸緩衝液(pH7.2)、1%BSA(1:5000)中に添加し、1時間インキュベートした。最後に1回洗浄した後、ペルオキシダーゼ酵素基質溶液(50μL/ウェル)をアプライした。次いで、これを暗所で20分間インキュベートし、50μL/ウェルの2N H2SO4で反応を停止させた。Multiskan EX ELISAリーダ(Thermo Scientific)で吸光度を450nmで読み取った。IgG力価は、1:50希釈で免疫前血清の平均吸光度(T0)の値の4倍に達する血清希釈の逆数として定義した。結果の分析及び提示のために、各動物についての力価のLog10を計算した。応答動物を定義するために、1:50超の血清希釈に対応する、1.70超のlog力価をカットオフ値とした。力価がアッセイ検出限界より低い動物については、25の力価及び1.4のlog10を設定した。
【0102】
図11は、Al(OH)
3でアジュバントした3μgのRBD-TTによる免疫によって誘導されたIgG応答が、Al(OH)
3でアジュバントした同じ用量の非コンジュゲート化RBDによって誘導されたものよりも有意に強い(p<0.05)初期抗体応答(免疫後7日目及び14日目)を誘発することを示している。この特性は、RBDと担体タンパク質とのコンジュゲーションに起因する。Al(OH)
3でアジュバントした1μgのRBD-TTが、3μgの非コンジュゲート化RBDによって誘導されるものと同様の抗体動態を誘導することも示されており、コンジュゲーションが抗原に対する応答を増強することを実証している。
【0103】
アジュバント化コンジュゲートは、同じ用量の非アジュバント化製剤と比較して、抗RBD抗体レベルを増加させることも分かる。
【0104】
例5 RBD(319~541)-TTコンジュゲートによって誘導される抗破傷風トキソイド抗体価
例4に記載の手順に従って、免疫後7、14、21及び28日目にマウスから抽出した血清を使用して、抗TT抗体の誘導を評価した。96ウェルのNUNC Maxisorpマイクロタイタープレートを、PBS(pH7.2)中2.5μg/mLの濃度で100μLの破傷風トキソイドでコーティングし、湿潤チャンバー中4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄液で3回洗浄した。血清をリン酸緩衝液(pH7.2)、1%BSA中、様々な希釈で添加した(100μL/ウェル)。プレートを37℃で1時間インキュベートし、再び洗浄した。次に、ペルオキシダーゼにコンジュゲートした抗マウスIgGの希釈液100μLをリン酸緩衝液(pH7.2)、1%BSA(1:10000)中に37℃で1時間添加した。最後の洗浄の後、100μL/ウェルのペルオキシダーゼ酵素基質溶液をアプライし、暗所で25分間インキュベートし、2N H2SO4(50μL/ウェル)で反応を停止させた。Multiskan EX ELISAリーダ(Thermo Scientific)で吸光度を450nmで読み取った。力価は、吸光度値をIU/ml(国際単位/ミリリットル)に変換することによって決定し、4パラメータログロジスティック関数を使用して、標準の段階希釈に基づいて基準曲線を作成した。
【0105】
図12は、Al(OH)
3でアジュバントしたコンジュゲートを含有する製剤が、非アジュバント化製剤によって誘発されたものよりも有意に強い(p<0.05)抗TT IgG応答を誘発したことを示している。
【0106】
例6 RBD-ACE2相互作用阻害アッセイによって評価した、RBD(319~541)-破傷風トキソイドコンジュゲートによって誘導される抗RBD抗体の機能的活性。
例4に記載の手順に従って、免疫後28日目にマウスから抽出した血清をELISA試験で分析して、RBD-ACE2相互作用の阻害を決定した。別のELISA試験を行って、抗RBD抗体によって誘導されるRBD-ACE2相互作用の阻害を分析した。RBD-ACE2相互作用の阻害率を決定するために、マウスACE2-Fc(5μg/mL)でコーティングしたプレートをブロッキングし、次いで、様々な実験用製剤で免疫したマウスからの血清と共に37℃で1時間インキュベートしたヒトRBD-Fcを、1:25~1:10000の範囲の希釈で添加した。認識の検出のために、SSTF-T緩衝液、0.2%ミルクで希釈した抗ヒトIgG(ガンマ鎖特異的)-アルカリホスファターゼコンジュゲートを使用した。最後に1回洗浄した後、pNPP(1mg/mL、50μL/ウェル)をジエタノールアミン緩衝液中にアプライした。プレートを暗所で20分間インキュベートし、3M NaOH(50μL/ウェル)で反応を停止させた。吸光度を405nmで読み取った。阻害率を以下の式(1-Abs405nmヒトRBD-Fc+マウス血清/Abs405nmヒトRBD-Fc)
*100によって計算した。ソフトウェアGraphPad7.00(GraphPad Software,Inc.、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して非線形回帰によって最大阻害濃度(IC50)を決定した。
図13は、本発明の製剤で免疫したマウス由来の血清の阻害能を示す。アジュバント化RBD-TT製剤によって誘導される抗体は、非アジュバント化製剤によって誘導される抗体よりも大きい阻害能を有する。更に、アジュバント化コンジュゲートの阻害能(IC50)は、非コンジュゲート化製剤(RBD 3μg/Al(OH)
3)の阻害能の2倍(RBD-TT 1μg/Al(OH)
3)及び6.5倍(RBD-TT 3μg/Al(OH)
3)であり、これは、RBDコンジュゲーションが低用量でさえ抗体の機能性を増強することを実証している。
【0107】
例7 SARS-CoV-2中和能によって評価した、RBD(319~541)-破傷風トキソイドコンジュゲートの製剤によって誘導される抗RBD抗体の機能的活性。
1回目の投与後28日目にRBD-TT 3μg/Al(OH)3及びRBD 3μg/Al(OH)3で免疫したマウスからの血清のSARS-CoV-2中和能(例4)を、ニュートラルレッドを使用する比色アッセイによって試験した。Vero E6細胞を、2%ウシ胎児血清、25mM/mL L-グルタミン、2μg/mL重炭酸塩、80μg/mLゲンタマイシン、及び5μg/mLアムホテリシンBを添加したMEM中でインキュベートした。上清をプレートから除去し、0.02%ニュートラルレッドを含有するPBS、pH7.2を添加した(100μl/ウェル)。プレートを周囲温度で1時間インキュベートした。溶液を捨て、細胞単層を滅菌PBS、0.05%Tween20で2回洗浄した。溶解溶液(無水エタノール:超純水:氷酢酸、50:49:1)を添加した(100μL/ウェル)。プレートを周囲温度で15分間インキュベートし、分光光度計で540nmで測定した。中和力価は、カットオフ値より高い光学濃度値を有する最も高い血清希釈であった。カットオフ値は、細胞対照に対応するウェルの光学密度の平均を2で割ったものであった。
【0108】
図14は、RBD-TTコンジュゲートによって誘導された中和抗体価が、非コンジュゲート化RBDによって誘導された中和抗体価よりも有意に高い(p<0.01)ことを示しており、誘導された抗体の機能性を増強するので、RBDコンジュゲーションの優位性を実証している。
【0109】
例8 RBD(319~541)-破傷風トキソイドコンジュゲートによって誘導されるIFNγによって決定されるTh1細胞性免疫応答。
例4に記載の手順に従って免疫したマウスにおいて、免疫後21日目に血清を抽出し、細胞性免疫応答を評価した。Al(OH)3中1μgのRBD-TT又はプラセボAl(OH)3のいずれかで免疫したマウスからの脾細胞を単離し、インビトロでRBD(5μg/mL)で再刺激して、定量的ELISAによって決定した。アプライした濃度は1×106細胞/mLであった。刺激の72時間後に培養上清中のIL4、IL17A及びIFNγを測定した。
【0110】
図15は、1μgのRBD-TT/Al(OH)
3による免疫がIFNγを誘導することを示し、T細胞応答のTh1分極を実証している。IL4及びIL17Aは検出されず、これはコンジュゲートがTh2又はTh17パターン応答に分極しないことを証明している。
【0111】
例9 RBD(319~541)-破傷風トキソイドコンジュゲートによって誘導される、SARS-CoV-2 RBDタンパク質に特異的なメモリーT細胞応答。
例4に記載の手順に従って免疫したマウスにおいて、免疫後21日目にメモリーT細胞応答を評価した。Al(OH)3で製剤化された1μgのRBD-TT又はプラセボAl(OH)3のいずれかで免疫したマウスからの脾細胞を単離し、RPMI1640、10%ウシ胎児血清、100Uペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1mMピルビン酸塩、50μM β-メルカプトエタノール、及び20U/mL IL-2中で72時間培養した。細胞を活性化するために、5μg/ml RBDを添加した。サイトカインの分泌をブロックするために、ブレフェルジンA(BD Biosciences)を染色の4~6時間前に添加した。細胞をPBS 1Xで洗浄し、抗CD8、抗CD4、抗CD44及び抗CD220(BioLegend)を用いて4℃で30分間染色した。細胞を固定し、透過処理して、抗IFNγ及び抗IL4(BioLegend)による細胞内染色を促進した。細胞計測データをGalliosフローサイトメータ(Beckman Coulter)で取得し、結果をソフトウェアKaluza(Beckman Coulter)によって処理した。
【0112】
図16は、1μgのRBD-TT/Al(OH)
3による免疫が、表現型CD44
++を有するRBD特異的CD4
+(C)及びCD8
+(A)メモリーT細胞を生成することを示している。免疫はまた、IFNγを産生するCD8(B)及びCD4(D)メモリーT細胞を増加させた。
【0113】
例10 N末端がチオール化されたRBD(328~533)の調製
5~10mLのPBS(50mM、pH7.5、5mM EDTA)中、20~200μMの最終濃度のRBD(328~533)を、2-チオアセチル-ピリジン-2-カルボキシアルデヒドで処理(最終濃度1~10mM)した。反応混合物を23~37℃の温度で12~48時間の範囲の時間撹拌した。PBS(35mM、pH7.4、5mM EDTA)で洗浄することにより、透析濾過によって精製を達成した。官能基化RBD(328~533)を20~200μMまで濃縮し、ヒドロキシルアミン塩酸塩で40mMの最終濃度まで処理した。反応混合物を窒素雰囲気下、周囲温度で1~5時間撹拌し、Ellman手順によって90%超の変換度を決定した。
【0114】
質量分析によって決定されたN末端残基の変換レベルは80%より高かった。HPSEC分析は、反応中に凝集が起こらず、チオール化RBDがその分子サイズ分布を保存したことを証明した(
図17)。
【0115】
例11 N末端チオール化RBD(328~533)のRBD(328~533)破傷風トキソイドコンジュゲートへの変換。
例2に記載の手順に従って、チオール化RBD(328~533)を破傷風トキソイドにコンジュゲートさせる。
【0116】
図18Aは、RBD、16時間のコンジュゲーション後の反応混合物及び精製コンジュゲートについてのHPSEC Superdex75クロマトグラムを示す。精製コンジュゲートは、RBD-TTモル比が1.9であり、非結合RBD含有量が15%未満である。HPSEC Superdex200クロマトグラム(
図18B)は、担体タンパク質(Kd=0.31)と比較した、コンジュゲート(Kd=0.27)の分子サイズの増加を示している。
【0117】
例2に記載の手順に従って、配列番号1及び配列番号3から得られたコンジュゲートは、同様の物理化学的特性を有する。
【0118】
例12 ACE2受容体及び特異的RBD抗体によるRBD(328~533)-破傷風トキソイドコンジュゲートの認識の保存。
ACE2受容体及び特異的抗RBD抗体によるRBD-破傷風トキソイドコンジュゲートの認識を、例3に記載したように評価した。
【0119】
図19Aは、RBD-破傷風トキソイドコンジュゲートがACE2受容体によって認識されると共に、RBD陽性対照(破傷風トキソイドの非存在下でのRBD)でも認識されることを示している。したがって、RBDのN末端残基のチオール化もコンジュゲーションプロセスも、ACE2受容体によるRBDの認識に関与するRBDエピトープに影響を及ぼさないことが証明される。
【0120】
抗RBD特異的ポリクローナルIgG血清を使用したドットブロットにより、コンジュゲートの抗原性を確認した。
図19Bは、コンジュゲートが、試験された全ての希釈において抗RBD特異的抗体によって強く認識される一方で、1:80希釈での破傷風トキソイド(TT)は認識されないことを示している。したがって、コンジュゲーションは抗体によるRBDの認識に影響を及ぼさないことが実証される。
【0121】
例13 RBD(319~541)-TTコンジュゲートは、ヒト、特に小児集団において強い抗体応答を誘発する。
アルミニウムにRBD-(319~541)-TTを含むワクチン製剤を、2用量(T0、T28日)スケジュールで臨床試験で評価した。成人(第II相19~80歳)及び小児集団(第I/II相3~18歳)における臨床試験の手順は、https://rpcec.sld.cu/trials/RPCEC00000347-En , https://rpcec.sld.cu/trials/RPCEC00000374-Enに記載されている。
【0122】
図20は、両臨床試験における2回目の投与の14日後の血清中の特異的抗RBD IgGの結果を示す。全ての年齢群で高レベルの抗体が上昇し、成人集団(19~80歳)で74%の抗体陽転があった。注目すべきことに、小児は、12~18歳及び3~11歳の群でそれぞれ抗体陽転が92.8%及び99.3%に達した。更に、両小児群の中央値である50.3(12~18歳で15.9;62.0)及び99.8(3~11歳で39.1;216.8)は、COVID-19回復期小児で作成された血清パネルの中央値である8.7(3.4;15.7)よりも優れていた。
【0123】
例14 RBD(319~541)-TTコンジュゲートはヒトにおいて特異的粘膜IgGを誘導する
アルミニウム中のRBD-(319~541)-TTの製剤の2用量(T0、28日)及びアルミニウム中の二量体RBDのブースター用量(T56)で免疫した対象からの唾液を、以下のhttps://rpcec.sld.cu/trials/RPCEC00000360-Enに記載されるように、「社内の」ELISAアッセイによって分析した。コーティングとしてのRBD(5μg/mL)及びブロッキングとしての3%PBS-BSA。唾液試料を複製によって純粋であると評価した。インキュベーション工程の後、適切な緩衝液中のペルオキシダーゼ抗IgGヒトコンジュゲート(シグマA6029、1:2500)を添加した。OPD基質を添加することによって、最終的な蛍光定量反応を誘導した。結果を吸光度値で表した。
【0124】
図16は、免疫された対象が唾液中で特異的抗RBD IgG応答を誘発したことを示している。
【配列表フリーテキスト】
【0125】
配列表1 <223>組換えDNA技術による
配列表2 <223>組換えDNA技術による
配列表3 <223>組換えDNA技術による
【配列表】
【国際調査報告】