(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】導電性音響ミラーを有する電気音響デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20231101BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20231101BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H3/02 B
H03H9/54 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523111
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021074323
(87)【国際公開番号】W WO2022089816
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520142767
【氏名又は名称】アールエフ360・ヨーロップ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレット、ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】ミッターマイヤー、トーマス
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA07
5J108BB01
5J108BB02
5J108BB07
5J108BB08
5J108EE03
5J108EE05
5J108EE13
5J108FF01
5J108HH01
5J108KK01
5J108KK02
5J108MM11
(57)【要約】
本開示のある特定の態様は、電気音響デバイスにおいて実装され得る。電気音響デバイスは、一般に、基板と、基板の上に配置された下部電極層と、下部電極層の上に配置された誘電体層および誘電体層の上に配置された導電層を有する音響ミラースタックと、音響ミラースタックの上に配置された圧電層と、下部電極層と導電層との間に配置された1つまたは複数のビアと、を含み、1つまたは複数のビアは、下部電極層と導電層とを電気的に結合する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気音響デバイスであって、
基板と、
前記基板の上に配置された下部電極層と、
音響ミラースタックであって、
前記下部電極層の上に配置された第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層と、
を有する音響ミラースタックと、
前記音響ミラースタックの上に配置された圧電層と、
前記下部電極層と前記第1の導電層との間に配置された1つまたは複数の第1のビアと、前記1つまたは複数の第1のビアは、前記下部電極層と前記第1の導電層とを電気的に結合する、
を備える電気音響デバイス。
【請求項2】
前記圧電層の上に配置された上部電極層をさらに備える、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項3】
前記音響ミラースタックは、
前記下部電極層の上に配置された1つまたは複数の第2の誘電体層と、
前記1つまたは複数の第2の誘電体層のそれぞれの1つの上にそれぞれ配置された1つまたは複数の第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記1つまたは複数の第2の導電層のそれぞれの1つとの間に配置された1つまたは複数の第2のビアと、前記1つまたは複数の第2のビアは、前記第1の導電層と前記1つまたは複数の第2の導電層の前記それぞれの1つとを電気的に結合する、
をさらに備える、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項4】
前記圧電層は、前記1つまたは複数の第2の導電層の最上導電層と直接接触している、請求項3に記載の電気音響デバイス。
【請求項5】
前記圧電層は、前記第1の導電層と直接接触している、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項6】
前記下部電極層と前記第1の誘電体層との間に結合された第2の導電層をさらに備える、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項7】
前記第1の誘電体層は、二酸化ケイ素(SiO
2)を備える、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項8】
前記第1の導電層は、タングステン(W)を備える、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項9】
前記1つまたは複数の第1のビアは、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を備える、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項10】
前記基板と前記下部電極層との間に第2の誘電体層をさらに備える、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項11】
前記電気音響デバイスは、バルク音波(BAW)共振器として構成される、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の電気音響デバイスを備える無線周波数(RF)フィルタ。
【請求項13】
前記下部電極層の厚さは、100ナノメートルより大きい、請求項1に記載の電気音響デバイス。
【請求項14】
信号処理のための方法であって、
電気音響デバイスの端子において信号を受信することと、
前記電気音響デバイスを介して前記信号を処理することと、
を備え、ここにおいて、前記電気音響デバイスは、
基板と、
前記基板の上に配置された下部電極層と、
音響ミラースタックであって、
前記下部電極層の上に配置された第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層と、
を有する音響ミラースタックと、
前記音響ミラースタックの上に配置された圧電層と、
前記下部電極層と前記第1の導電層との間に配置された1つまたは複数の第1のビアと、前記1つまたは複数の第1のビアは、前記下部電極層と前記第1の導電層とを電気的に結合する、
を備える、方法。
【請求項15】
前記電気音響デバイスの前記端子は、前記下部電極層を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電気音響デバイスは、前記圧電層の上に配置された上部電極層をさらに備え、前記電気音響デバイスの前記端子は、前記上部電極層を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記音響ミラースタックは、
前記下部電極層の上に配置された1つまたは複数の第2の誘電体層と、
前記1つまたは複数の第2の誘電体層のそれぞれの1つの上にそれぞれ配置された1つまたは複数の第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記1つまたは複数の第2の導電層のそれぞれの1つとの間に配置された1つまたは複数の第2のビアと、前記1つまたは複数の第2のビアは、前記第1の導電層と前記1つまたは複数の第2の導電層の前記それぞれの1つとを電気的に結合する、
をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記圧電層は、前記1つまたは複数の第2の導電層の最上導電層と直接接触している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記圧電層は、前記第1の導電層と直接接触している、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記電気音響デバイスは、前記下部電極層と前記第1の誘電体層との間に結合された第2の導電層をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の誘電体層は、二酸化ケイ素(SiO
2)を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の導電層は、タングステン(W)を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数の第1のビアは、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記電気音響デバイスは、前記基板と前記下部電極層との間の第2の誘電体層をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記電気音響デバイスは、バルク音波(BAW)共振器として構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記下部電極層の厚さが、100ナノメートルより大きい、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
電気音響デバイスを製作する方法であって、
基板の上に下部電極層を形成することと、
前記下部電極層の上に配置された第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層と、
を備える音響ミラースタックを形成することと、
前記下部電極層と前記第1の導電層とを電気的に結合する1つまたは複数のビアを形成することと、
前記音響ミラースタックの上に圧電層を形成することと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本願は、2020年10月28日に出願された米国仮出願第63/106,727号の利益および優先権を主張し、これは、以下に完全に記載されているかのように、全ての適用可能な目的のために、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本開示の態様は、電子デバイスに関し、より詳細には、電気音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]電子デバイスは、デスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチのようなウェアラブルデバイス、およびインターネットサーバなどのような、従来のコンピューティングデバイスを含む。これらの様々な電子デバイスは、人間のユーザに対して、情報、娯楽、社会的相互作用、セキュリティ、安全性、生産性、輸送、製造、および他のサービスを提供する。これらの様々な電子デバイスは、それらの機能の多くについてワイヤレス通信に依存する。ワイヤレス通信システムおよびデバイスは、音声、ビデオ、パケットデータ、メッセージング、ブロードキャストなどのような、様々なタイプの通信コンテンツを提供するために広く展開されている。ワイヤレス通信デバイスは、限定はしないが、5G New Radio(NR)、Long Term Evolution(LTE(登録商標))、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、広帯域CDMA(WCDMA(登録商標))、Global System for Mobility(GSM(登録商標))、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(BLE)、ZigBee、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)RAT(例えば、IEEE802.11)、および同様のものを含む、様々な好適な無線アクセス技術(RAT)のいずれかを介して、無線周波数(RF)信号を送信および/または受信し得る。
【0004】
[0004]これらの電子デバイスにおいて使用されるワイヤレス通信トランシーバは、一般に、特定の周波数または周波数の範囲について信号をフィルタリングするための複数の無線周波数(RF)フィルタを含む。電気音響デバイス(例えば、「音響フィルタ」)は、多くの用途において高周波(例えば、一般的に500MHzより大きい)信号をフィルタリングするために使用される。圧電材料を振動媒体として使用して、音響共振器は、導電体に沿って伝搬する電気信号波を、圧電材料を介して伝搬する音波に変換することによって動作する。音波は、電磁波の伝搬速度よりも著しく小さい大きさを有する速度で伝搬する。一般に、波の伝搬速度の大きさは、波の波長のサイズに比例する。その結果、電気信号の音響信号へのコンバージョン後、音響信号波の波長は、電気信号波の波長よりも著しく小さい。結果として生じる音響信号のより小さい波長は、より小さいフィルタデバイスを使用してフィルタリングが実行されることを可能にする。これは、音響共振器が、上記に列挙した電子デバイス(例えば、特にセルラフォンなどの携帯型電子デバイスを含む)などの、サイズ制約を有する電子デバイスにおいて使用されることを可能にする。
【0005】
[0005]ワイヤレス通信において使用される周波数帯域の数が増大するにつれて、およびフィルタの所望の周波数帯域が広くなるにつれて、音響フィルタの性能は、抵抗損失を低減させ、帯域外信号の減衰を増大させ、電子デバイスの全体的な性能を増大させるために、重要性が増大する。したがって、改善された性能を有する音響フィルタが求められている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本開示のシステム、方法、およびデバイスは、いくつかの態様をそれぞれ有し、それらのうちの何れも、その望ましい属性を単独で担うものではない。以下の特許請求の範囲によって表される本開示の範囲を限定することなく、いくつかの特徴がこれより簡潔に説明される。この説明を考慮した後、特に「発明を実施するための形態」と題するセクションを読んだ後、本開示の特徴が、本明細書で説明される基板によって提供される熱放散により、高動作電力におけるバルク音波(BAW:bulk acoustic wave)共振器からの望ましい性能を含む利点をどのようにもたらすかが理解されよう。
【0007】
[0007]本開示のある特定の態様は、電気音響デバイスにおいて実装され得る。電気音響デバイスは、一般に、基板と、基板の上に配置された下部電極層と、下部電極層の上に配置された第1の誘電体層および第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層を有する音響ミラースタックと、音響ミラースタックの上に配置された圧電層と、下部電極層と第1の導電層との間に配置された1つまたは複数の第1のビアと、を含み、1つまたは複数の第1のビアは、下部電極層と第1の導電層とを電気的に結合する。
【0008】
[0008]本開示のある特定の態様は、信号処理のための方法において実施され得る。この方法は、一般に、電気音響デバイスの端子において信号を受信することと、電気音響デバイスを介して信号を処理することと、を含む。電気音響デバイスは、基板と、基板の上に配置された下部電極層と、下部電極層の上に配置された第1の誘電体層および第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層を有する音響ミラースタックと、音響ミラースタックの上に配置された圧電層と、下部電極層と第1の導電層との間に配置された1つまたは複数の第1のビアと、を備え、1つまたは複数の第1のビアは、下部電極層と第1の導電層とを電気的に結合する。
【0009】
[0009]本開示のある特定の態様は、電気音響デバイスを製作する方法を対象とする。この方法は、一般に、基板の上に下部電極層を形成することと、(a)下部電極層の上に配置された第1の誘電体層と、(b)第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層と、を備える音響ミラースタックを形成することと、下部電極層と第1の導電層との間に電気的に結合された1つまたは複数の第1のビアを形成することと、音響ミラースタックの上に圧電層を形成することと、を含む。
【0010】
[0010]前述した目的および関連する目的を達成するために、1つまたは複数の態様は、以下で十分に説明されかつ特許請求の範囲において具体的に示される特徴を備える。以下の説明および添付の図面は、1つまたは複数の態様のある特定の例示的な特徴を詳細に記載する。しかしながら、これらの特徴は、様々な態様の原理が用いられ得る様々な方法のうちのごく一部を示すものである。
【0011】
[0011]本開示の上記の特徴が詳細に理解され得るように、上記では簡潔に概要を述べた内容のより詳しい説明が、態様を参照することによって得られ得、そのいくつかは、図面に例示されている。しかしながら、添付の図面は、本開示のある特定の典型的な態様のみを例示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。というのも、この説明は、他の同様に有効な態様にも当てはまり得るからである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】[0012]
図1Aは、本開示のある特定の態様による、例となる電気音響デバイスを概念的に例示する図である。
【
図1B】[0013]
図1Bは、本開示のある特定の態様による、
図1Aの例となる電気音響デバイスの断面を例示する図である。
【
図2】[0014]
図2は、本開示のある特定の態様による、リフレクタ層を通るビアを用いて実装される、例となる電気音響デバイスの断面を例示する。
【
図3】[0015]
図3は、本開示のある特定の態様による、
図2の電気音響デバイスを含み得る、例となる電気音響フィルタ回路の概略図である。
【
図4A】[0016]
図4Aは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4B】
図4Bは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4C】
図4Cは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4D】
図4Dは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4E】
図4Eは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4F】
図4Fは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4G】
図4Gは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4H】
図4Hは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図4I】
図4Iは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示する。
【
図5】[0017]
図5は、本開示のある特定の態様による、信号処理のための例となる動作を例示するフロー図である。
【
図6】[0018]
図6は、本開示のある特定の態様による、
図3の電気音響フィルタが用いられ得る、例となるトランシーバの図である。
【
図7】[0019]
図7は、本開示のある特定の態様による、
図6のトランシーバなどのトランシーバを有するワイヤレス通信デバイスを含むワイヤレス通信ネットワークの図である。
【
図8】[0020]
図8は、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0021]理解を容易にするために、可能な場合、図面に共通する同一の要素を指すために、同一の参照番号が使用されている。一態様において開示される要素は、具体的な記載がなくとも、他の態様に対して有益に利用され得ることが企図される。
【0014】
[0022]本開示の態様は、音響ミラーの反射層を通るビア(via)を有し、電気音響デバイスの下部電極(BE)が反射層の下に実装されることを可能にする、電気音響デバイスを提供する。
【0015】
[0023]電極構造間に配置された圧電材料を用いる、バルク音波(BAW)共振器などの電気音響デバイスは、より多くの周波数範囲(例えば、500MHz~7GHz)をカバーし、より高い帯域幅(例えば、最大20%)を有し、改善された効率および性能を有するように設計されている。一般に、BAW共振器は、定在音波(standing acoustic wave)が、電気信号が印加される電極間に配置された圧電材料のバルク内で電気信号によって生成される、電気機械デバイスである。BAW共振器の1つのタイプは、薄膜BAW共振器(FBAR)と呼ばれる。FBARは、2つの電極の間に挟まれ、周囲の媒体から音響的に絶縁された、薄膜法によって製造される圧電材料を含み得る。ソリッドマウント共振器(SMR:Solidly Mounted Resonator)は、2つの電極の間に挟まれた圧電薄膜と、1/4波長の厚さの交互の高い音響インピーダンス層および低い音響インピーダンス層を有するブラッグリフレクタと、を有するBAW共振器の一種である。
【0016】
[0024](例えば、SMRを使用する)いくつかの実装形態では、BEは、1つまたは複数のリフレクタ層と圧電層との間に実装される。BEは、比較的薄い層として実装され得る。したがって、薄いBEに関連付けられた電気損失は、電気音響デバイスの性能および耐電力性を低下させ得る。換言すれば、BEへの接続は、主にアルミニウム銅(AlCu)を通じて実現され得、Alは、音響的に損失の多い材料であるので、比較的薄い層として実装され得る。電気音響デバイスの自己発熱は、BEの抵抗をさらに増大させる。
【0017】
[0025]本開示のある特定の態様は、リフレクタ層の下にBEを実装するための技法を対象とし、従来の実装形態と比較して、BEの厚さを増大させることを可能にする。BEの厚さを増大させることは、BEの抵抗率を低減させ、電気音響デバイスの性能および耐電力性を改善する。本明細書で提供される電気音響デバイスは、従来の実装形態と比較して、電気損失および音響損失を低下させ、より高い音響反射を提供し、電気音響デバイスの電気伝導および周波数の温度係数(TCF)を低下させる。BEと圧電層との間の電気的結合は、本明細書でより詳細に説明されるように、リフレクタ層を通るビアによって容易にされ得る。
【0018】
[例となる電気音響デバイス]
【0019】
[0026]
図1Aは、本開示のある特定の態様による、例となる電気音響デバイス100の概念的な断面を示す。電気音響デバイス100は、BAW共振器として構成され得るか、またはBAW共振器の一部であり得る。ある特定のケースでは、ワイヤレス通信装置は、例えば、
図3、
図6、
図7、および
図8に関して本明細書にさらに説明されるように、BAW共振器を含み得る。
【0020】
[0027]示されるように、電気音響デバイス100は、電極構造102(例えば、上部電極(TE)とも呼ばれる)と、圧電層104と、電極構造106(例えば、下部電極(BE)とも呼ばれる)と、1つまたは複数のリフレクタ層108と、基板110と、を含む。本開示のある特定の態様では、1つまたは複数のリフレクタ層108は、電極構造106と圧電層104との間に配置され得る。1つまたは複数のビア(
図1Aには図示せず)が、1つまたは複数のリフレクタ層108を通して実装され得、電極構造106の圧電層104への電気的拡張を可能にする。
【0021】
[0028]電極構造102は、圧電層104の上に配置され得る。電極構造102は、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、金(Au)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、これらの組合せ(例えば、AlCu)、あるいはその他任意の好適な材料を含む金属または金属合金などの導電性材料を含み得る。ある特定のケースでは、導電性材料は、グラフェンまたは他の導電性の非金属材料を含み得る。圧電層104は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、水晶(タンタル酸リチウム(LiTaO3)またはニオブ酸リチウム(LiNbO3)など)、これらのドープバリアント(doped variants)などの圧電材料、または他の好適な圧電材料を含み得る。
【0022】
[0029]電極構造106は、例えば、電極構造102に関して本明細書で説明されるように、金属または金属合金などの導電性材料を含み得る。ある特定の態様では、電極構造106は、電極構造102と同じ形態、サイズ、および構造を有し得る。例えば、電極構造102、106は、両方とも電極板であり得る。ある特定のケースでは、電極構造106は、電極構造102とは異なる形態、サイズ、または構造を有し得る。
【0023】
[0030]1つまたは複数のリフレクタ層108は、BAW共振器を基板110から音響的に分離するか、またはBAW共振器と基板110との間の音響結合を少なくとも低減するためのブラッグリフレクタとして機能し得る。一般に、1つまたは複数のリフレクタ層108は、
図1Bに関して本明細書でさらに説明されるように、低い音響インピーダンスを有する材料と、高い音響インピーダンスを有する材料との交互の層を含み得る。
【0024】
[0031]基板110は、基板110が電極構造102および電極構造106の下に配置されるように、1つまたは複数のリフレクタ層108の下に配置され得る。基板110は、BAW共振器のための担体として機能し得る。態様において、基板110は、シリコン(Si)ウエハなどの半導体ウエハから形成され得る。基板110は、アルミナ、ガラス、またはサファイアなどの、様々な他の好適な材料のいずれかを備え得る。
【0025】
[0032](例えば、AC電圧を印加して)電極構造102と106との間で励起された電気信号が、圧電層104において伝搬する音波112に変換される。すなわち、電極構造102および106を通じて圧電層104に電気信号を印加することは、電気信号を圧電層104において音波112に変換する。ある特定の周波数において、共振または反共振の機械的定在波が形成され得、したがって、フィルタ機能を可能にする。基板への漏れを回避するために、リフレクタ層が、電気音響共振器の下に配置され得る。1つまたは複数のリフレクタ層108はまた、音波114を、高い音響反射率で圧電層104および電極構造102に向かって反射して戻し得る。音波114を反射することは、BAW共振器の効率を高め、基板110をBAW共振器から音響的に減結合(decouple)し得る。多くの用途において、圧電層104は、電極構造102が圧電層104の結晶配向に対して配置されるとき、音波が主に電極構造102から電極構造106に向かう方向に伝搬するように、特定の結晶配向を有する。
【0026】
[0033]
図1Bは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイス100の1つまたは複数のリフレクタ層108の例となる層を例示する。
【0027】
[0034]この例では、1つまたは複数のリフレクタ層108は、リフレクタ層116と、リフレクタ層118と、リフレクタ層120と、リフレクタ層122と、を含む。ある特定のケースでは、1つまたは複数のリフレクタ層108は、この例に図示されるような4つよりも少ないまたは多いリフレクタ層など、任意の好適な数のリフレクタ層を有し得る。リフレクタ層116およびリフレクタ層120は、リフレクタ層118およびリフレクタ層122の材料の音響インピーダンスよりも高い音響インピーダンスを有する材料を含み得る。例えば、リフレクタ層118およびリフレクタ層122は、二酸化ケイ素(SiO2)を含み得、一方、リフレクタ層116およびリフレクタ層120は、タングステン(W)、または二酸化ケイ素もしくは窒化アルミニウムよりも高い音響インピーダンスを有する他の好適な材料を含み得る。
【0028】
[0035]1つまたは複数のリフレクタ層108は、同じ厚さ(例えば、電気音響デバイス100の動作周波数範囲に応じた1/4波長(λ/4)の厚さ)を有し得るか、または厚さが異なり得る。この例では、1つまたは複数のリフレクタ層108は、同じ長さを有するものとして図示されているが、1つまたは複数のリフレクタ層108は、長さが異なり得る(すなわち、個々の層が異なる長さを有し得る)。
【0029】
[0036]
図2は、本開示のある特定の態様による、リフレクタ層を通るビアを用いて実装された、例となる電気音響デバイス200の断面を例示する。電気音響デバイス200は、誘電体領域250(例えば、SiO
2から構成される)を含み得、ここで、リフレクタ層118、122は、例示されるように、誘電体領域250の一部である。さらに、(例えば、SiO
2の)誘電体層260が、電極構造106と基板110(例えば、シリコン(Si)ウエハの一部)との間に含まれ得る。電気音響デバイスは、リフレクタ層118を通るビア206、208、210を含み得る。
図2は、理解を容易にするために、各層(例えば、リフレクタ層122)を通る3つのビアを例示するが、3つより少ないまたは3つより多い任意の数のビアが実装され得る。リフレクタ層118は、誘電体(例えば、SiO
2)を使用して実装されるので、リフレクタ層118を通るビア206、208、210は、導電性材料(例えば、W)を使用して実装されるリフレクタ層116、120間の電気的結合を容易にする。いくつかの態様では、ビア212、214、216はまた、電極構造106とリフレクタ層120との間の電気的結合を容易にするために、リフレクタ層122(例えば、同じくSiO
2から構成される)を通して形成され得る。オプションで、リフレクタ層202は、例示されるように、電極構造106とリフレクタ層122との間に実装され得る。
【0030】
[0037]ビア206、208、210、212、214、216の形成により、電極構造106は、リフレクタ層の下に実装され得、電極構造がリフレクタ層の上に実装される従来の実装形態と比較して、電極構造106が、より厚い電極層として実装されることを可能にする。例えば、電極構造106は、100nmより大きい厚さ(例えば、1000nm)を有し得、従来の実装形態と比較して、電極構造106の抵抗率を低減させる。
【0031】
[0038]
図3は、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイス200を含み得る電気音響フィルタ回路300の概略図である。フィルタ回路300は、電気音響デバイス200が使用され得る場合の一例を提供する。フィルタ回路300は、入力端子302と、出力端子314と、を含む。入力端子302と出力端子314との間には、電気音響デバイス(例えば、BAW共振器)のラダー型ネットワークが設けられている。フィルタ回路300は、第1のBAW共振器304と、第2のBAW共振器306と、第3のBAW共振器308と、を含み、これらは全て、入力端子302と出力端子314との間に電気的に直列に接続されている。第4のBAW共振器310(例えば、シャント共振器)は、第1のBAW共振器304と第2のBAW共振器306との間に接続された第1の端子と、接地電位ノードに接続された第2の端子と、を有する。第5のBAW共振器312(例えば、シャント共振器)は、第2のBAW共振器306と第3のBAW共振器308との間に接続された第1の端子と、接地電位ノードに接続された第2の端子と、を有する。電気音響フィルタ回路300は、例えば、選択された周波数範囲を有する(例えば、500MHz~7GHzの周波数範囲にある)通過帯域を有するバンドパス回路であり得る。
【0032】
[0039]
図4A~
図4Iは、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイス200を製作するための例となる動作を例示する。
図4Aに例示されるように、誘電体層260(例えば、SiO
2から構成される)、電極構造106(例えば、AlCuから構成される)、およびリフレクタ層202(例えば、Wから構成される)は、基板110(例えば、Siウエハの一部)の上に形成され得る。
図4Bに例示されるように、導電層402(例えば、Wから構成される)は、リフレクタ層202の上に形成され得、この導電層402は、
図4Cに例示されるように、リソグラフィ(lithography)または自己組織化(self-assenbly)を使用してビア212、214、216を形成するために使用され得る。次いで、誘電体領域250(例えば、SiO
2から構成される)の一部が、
図4Dに例示されるように、ビア212、214、216およびリフレクタ層202の上に形成され得る。
図4Eに例示されるように、誘電体領域250の上面が、図示のようにビア212、214、216の上部と同じレベルになるまで、化学機械研磨(CMP)または他の好適な除去技術が、誘電体領域250に対して実行され得る。次いで、
図4Fに例示されるように、リフレクタ層120が、平坦化された表面上に形成され得る。
図4Gに例示されるように、図示されるようなテーパ構造(tapered strausture)を形成するために、層スタックがエッチングされ得る。次いで、
図4Hに例示されるように、誘電体領域250の別の部分が、堆積または他の方法で形成され得、
図4Iに例示されるように、誘電体領域250の上面がリフレクタ層120の上面と同じレベルになるように、誘電体領域250のCMPによって後続される。このプロセスは、反射層の上の圧電層の形成より前に、
図2に示されるような追加の反射層を形成するために、繰り返され得る。
【0033】
[0040]
図5は、本開示のある特定の態様による、信号処理のための例となる動作500を例示するフロー図である。動作500は、例えば、電気音響デバイス200(例えば、BAW共振器)などの電気音響デバイスによって実行され得る。
【0034】
[0041]動作500は、ブロック502において、電気音響デバイスが、電気音響デバイスの端子(例えば、電極)において信号を受信することから開始し得る。ブロック504において、電気音響デバイスは、信号を処理する。電気音響デバイスは、基板(例えば、基板110)と、基板の上に配置された下部電極層(例えば、電極構造106)と、音響ミラースタックと、を含み得る。音響ミラースタックは、下部電極層の上に配置された第1の誘電体層(例えば、リフレクタ層122)と、第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層(例えば、リフレクタ層120)と、を含み得る。ある特定の態様では、電気音響デバイスは、音響ミラースタックの上に配置された圧電層(例えば、圧電層104)と、下部電極層と第1の導電層との間に配置された1つまたは複数の第1のビア(例えば、ビア212、214、216)と、を含み得、1つまたは複数の第1のビアは、下部電極層と第1の導電層とを電気的に結合する。
【0035】
[0042]いくつかの態様では、信号が受信される電気音響デバイスの端子は、下部電極層であり得る。いくつかの態様では、電気音響デバイスは、圧電層の上に配置された上部電極層(例えば、電極構造102)を含み得る。いくつかのケースでは、信号が受信される電気音響デバイスの端子は、上部電極層であり得る。
【0036】
[0043]いくつかの態様では、音響ミラースタックは、下部電極層の上に配置された1つまたは複数の第2の誘電体層(例えば、リフレクタ層118)と、1つまたは複数の第2の誘電体層のそれぞれの1つの上にそれぞれ配置された1つまたは複数の第2の導電層(例えば、リフレクタ層116)と、第1の導電層と1つまたは複数の第2の導電層のそれぞれの1つとの間に配置された1つまたは複数の第2のビア(例えば、ビア206、208、210)と、を含み得る。1つまたは複数の第2のビアは、第1の導電層と、1つまたは複数の第2の導電層のうちのそれぞれの1つとを電気的に結合し得る。いくつかの態様では、圧電層は、1つまたは複数の第2の導電層の最上導電層(例えば、リフレクタ層116)と直接接触し得る。いくつかの態様では、圧電層は、第1の導電層と直接接触し得る。
【0037】
[0044]ある特定の態様では、電気音響デバイスはまた、下部電極層と第1の誘電体層との間に結合された第2の導電層(例えば、リフレクタ層202)を含み得る。第1の導電層は、タングステン(W)を含み得る。いくつかの態様では、1つまたは複数の第1のビアは、アルミニウム(Al)もしくはアルミニウム銅(AlCu)、W、Mo、またはその他任意の好適な材料を備える。ある特定の態様では、電気音響デバイスは、基板と下部電極層との間に第2の誘電体層(例えば、誘電体層260)を含み得る。いくつかの実装形態では、下部電極層の厚さは、100ナノメートルより大きくなり得る。
【0038】
[0045]
図6は、本開示のある特定の態様による、例となるRFトランシーバ600のブロック図である。ある特定の態様では、本明細書で説明される電気音響デバイスは、例えば、電気音響フィルタまたはデュプレクサとして機能するために、様々な回路(RFトランシーバなど)において用いられ得る。RFトランシーバ600は、1つまたは複数のアンテナ606を介して信号を送信するための少なくとも1つの送信(TX)経路602(送信チェーンとしても知られる)と、アンテナ606を介して信号を受信するための少なくとも1つの受信(RX)経路604(受信チェーンとしても知られる)と、を含む。TX経路602およびRX経路604がアンテナ606を共有するとき、これら経路は、インターフェース608を介してアンテナと接続され得、これは、電気音響フィルタ638(例えば、電気音響フィルタ回路300)、デュプレクサ(これは、BAW共振器を含み得る)、ダイプレクサ、マルチプレクサ、および同様のものなどの、様々な好適なRFデバイスのいずれかを含み得る。
【0039】
[0046]デジタルアナログコンバータ(DAC)610から同相(I)または直交(Q)ベースバンドアナログ信号を受信すると、TX経路602は、ベースバンドフィルタ(BBF)612と、ミキサ614と、ドライバ増幅器(DA)616と、電力増幅器(PA)618と、を含み得る。ある特定の態様では、BBF612、ミキサ614、およびDA616は、無線周波数集積回路(RFIC)などの半導体デバイス中に含まれ得、一方、PA618は、この半導体デバイスの外部にあり得る。
【0040】
[0047]BBF612は、DAC610から受信されたベースバンド信号をフィルタリングし、ミキサ614は、対象のベースバンド信号を異なる周波数にコンバートする(例えば、ベースバンドから無線周波数にアップコンバートする)ために、フィルタリングされたベースバンド信号を送信局部発振器(LO)信号と混合する。この周波数コンバージョンプロセスは、LO周波数と対象のベースバンド信号の周波数との間の和周波数および差周波数を生成する。和周波数および差周波数は、ビート周波数(beat frequencies)と呼ばれる。ビート周波数は、典型的にRF範囲内にあり、これにより、ミキサ614によって出力される信号は、典型的にRF信号であり、これは、アンテナ606による送信前に、DA616によっておよび/またはPA618によって増幅され得る。ある特定のケースでは、BBF612は、BAW共振器を有する電気音響フィルタ(例えば、電気音響フィルタ回路300)を使用して実装され得る。
【0041】
[0048]RX経路604は、低雑音増幅器(LNA)624と、フィルタ626と、ミキサ628と、ベースバンドフィルタ(BBF)630と、を含み得る。LNA624、フィルタ626、ミキサ628、およびBBF630は、RFICに含まれ得、これは、TX経路構成要素を含むRFICと同じであってもなくてもよい。アンテナ606を介して受信されたRF信号は、LNA624によって増幅され、フィルタ626によってフィルタリングされ得、ミキサ628は、対象のRF信号を異なるベースバンド周波数にコンバートする(例えば、ダウンコンバートする)ために、増幅されたRF信号を受信局部発振器(LO)信号と混合する。ミキサ628によって出力されたベースバンド信号は、デジタル信号処理のためにアナログデジタルコンバータ(ADC)632によってデジタルI信号またはQ信号にコンバートされる前に、BBF630によってフィルタリングされ得る。ある特定のケースでは、フィルタ626および/またはBBF630は、BAW共振器を有する電気音響フィルタ(例えば、電気音響フィルタ回路300)を使用して実装され得る。
【0042】
[0049]LOの出力が周波数において安定した状態を保つことが望まい一方で、異なる周波数に同調することは、可変周波数発振器を使用することを意味し、これは、安定性と同調性との間の妥協を伴い得る。現代のシステムは、特定の同調範囲で安定した同調可能なLOを生成するために、電圧制御発振器(VCO)を有する周波数シンセサイザを用い得る。したがって、送信LOは、TX周波数シンセサイザ620によって生成され得、これは、ミキサ614においてベースバンド信号と混合される前に、増幅器622によってバッファリングまたは増幅され得る。同様に、受信LOは、RX周波数シンセサイザ634によって生成され得、これは、ミキサ628においてRF信号と混合される前に、増幅器636によってバッファリングまたは増幅され得る。
【0043】
[0050]
図7は、ワイヤレス通信デバイス702を含む環境700の図であり、これは、
図6のRFトランシーバ600などのワイヤレストランシーバ722を有する。環境700において、ワイヤレス通信デバイス702は、ワイヤレスリンク706を通じて基地局704と通信する。示されるように、ワイヤレス通信デバイス702は、スマートフォンとして図示されている。しかしながら、電子ワイヤレス通信デバイス702は、セルラ基地局、ブロードバンドルータ、アクセスポイント、セルラまたはモバイルフォン、ゲームデバイス、ナビゲーションデバイス、メディアデバイス、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、サーバコンピュータ、ネットワークに接続された記憶装置(NAS:network-attached storage)デバイス、スマートアプライアンス、車両ベースの通信システム、モノのインターネット(IoT)デバイス、センサまたはセキュリティデバイス、およびアセットトラッカなどのような、任意の好適なコンピューティングデバイスまたは他の電子デバイスとして実装され得る。
【0044】
[0051]基地局704は、ワイヤレスリンク706を介してワイヤレス通信デバイス702と通信し、これは、任意の好適なタイプのワイヤレスリンクとして実装され得る。セルラ無線ネットワークの基地局タワーとして図示されているが、基地局704は、衛星、地上ブロードキャストタワー、アクセスポイント、ピアツーピアデバイス、メッシュネットワークノード、光ファイバ線、および概して上記で説明されたような別の電子デバイスなどのような、別のデバイスを表し得るか、または別のデバイスとして実装され得る。したがって、ワイヤレス通信デバイス702は、ワイヤード接続、ワイヤレス接続、またはこれらの組合せを介して、基地局704または別のデバイスと通信し得る。ワイヤレスリンク706は、基地局704からワイヤレス通信デバイス702に通信されるデータまたは制御情報のダウンリンクと、ワイヤレス通信デバイス702から基地局704に通信される他のデータまたは制御情報のアップリンクと、を含み得る。ワイヤレスリンク706は、3rd Generation Partnership Project Long-Term Evolution(3GPP(登録商標) LTE)、3GPP New Radio Fifth Generation(NR 5G)、IEEE802.11(WiFi)、IEEE802.16(WiMAX)、およびBluetooth(登録商標)などのような、任意の好適な通信プロトコルまたは規格を使用して実装され得る。
【0045】
[0052]ワイヤレス通信デバイス702は、プロセッサ708と、メモリ710と、を含む。メモリ710は、コンピュータ可読記憶媒体の一部であり得るか、またはその一部を形成し得る。プロセッサ708は、メモリ710によって記憶されたプロセッサ実行可能命令(例えば、コード)を実行するように構成された、アプリケーションプロセッサまたはマルチコアプロセッサなどの任意のタイプのプロセッサを含み得る。メモリ710は、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)、光媒体、および磁気媒体(例えば、ディスクまたはテープ)などのような、任意の好適なタイプのデータ記憶媒体を含み得る。本開示のコンテキストでは、メモリ710は、ワイヤレス通信デバイス702の命令712、データ714、および他の情報を記憶するように実装され、したがって、コンピュータ可読記憶媒体として、またはその一部として構成されるとき、メモリ710は、一時的な伝搬信号または搬送波を含まない。すなわち、メモリ710は、非一時的なコンピュータ可読媒体(例えば、有形媒体)を含み得る。
【0046】
[0053]ワイヤレス通信デバイス702はまた、入力/出力ポート716を含み得る。I/Oポート716は、他のデバイス、ネットワーク、またはユーザとの、あるいはデバイスの構成要素間のデータ交換または相互作用を可能にする。
【0047】
[0054]ワイヤレス通信デバイス702は、信号プロセッサ(SP)718(例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP)など)をさらに含み得る。信号プロセッサ718は、プロセッサ708と同様に機能し得、メモリ710と連携して命令を実行することおよび/または情報を処理することが可能であり得る。
【0048】
[0055]通信目的ために、ワイヤレス通信デバイス702はまた、モデム720と、ワイヤレストランシーバ722と、アンテナ(図示せず)と、を含む。ワイヤレストランシーバ722は、無線周波数(RF)ワイヤレス信号を使用して、それぞれのネットワークおよびそれに接続された他のワイヤレス通信デバイスへの接続性を提供し、
図6のRFトランシーバ600を含み得る。ワイヤレストランシーバ722は、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)、ピアツーピア(P2P)ネットワーク、メッシュネットワーク、セルラネットワーク、ワイヤレスワイドエリアネットワーク(WWAN)、ナビゲーションネットワーク(例えば、北米の全地球測位システム(GPS)もしくは別の全地球航法衛星システム(GNSS))、および/またはワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)などの、任意の好適なタイプのワイヤレスネットワーク上の通信を容易にし得る。
【0049】
[0056]
図8は、本開示のある特定の態様による、電気音響デバイスを製作するための例となる動作800を例示するフロー図である。動作800は、例えば、製作設備によって実行され得る。
【0050】
[0057]動作800は、ブロック802において、製作設備が、基板の上に下部電極層(例えば、電極構造106)を形成することから開始し得る。ブロック804において、製作設備は、下部電極層の上に配置された第1の誘電体層(例えば、リフレクタ層122)と、第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層(例えば、リフレクタ層120)と、を含む音響ミラースタックを形成する。ブロック806において、製作設備は、下部電極層と第1の導電層とを電気的に結合する1つまたは複数のビア(例えば、ビア212、214、216)を形成し、ブロック808において、音響ミラースタックの上に圧電層(例えば、圧電層104)を形成する。
【0051】
[例となる態様]
【0052】
[0058]態様1.電気音響デバイスであって、基板と、基板の上に配置された下部電極層と、下部電極層の上に配置された第1の誘電体層および第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層を有する音響ミラースタックと、音響ミラースタックの上に配置された圧電層と、下部電極層と第1の導電層との間に配置された1つまたは複数の第1のビアと、を備え、1つまたは複数の第1のビアは、下部電極層と第1の導電層とを電気的に結合する、電気音響デバイス。
【0053】
[0059]態様2.圧電層の上に配置された上部電極層をさらに備える、態様1に記載の電気音響デバイス。
【0054】
[0060]態様3.音響ミラースタックは、下部電極層の上に配置された1つまたは複数の第2の誘電体層と、1つまたは複数の第2の誘電体層のそれぞれの1つの上にそれぞれ配置された1つまたは複数の第2の導電層と、第1の導電層と1つまたは複数の第2の導電層のそれぞれの1つとの間に配置された1つまたは複数の第2のビアと、をさらに備え、1つまたは複数の第2のビアは、第1の導電層と1つまたは複数の第2の導電層のそれぞれの1つとを電気的に結合する、態様1~2のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0055】
[0061]態様4.圧電層は、1つまたは複数の第2の導電層の最上導電層と直接接触している、態様3に記載の電気音響デバイス。
【0056】
[0062]態様5.圧電層は、第1の導電層と直接接触している、態様1~2のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0057】
[0063]態様6.下部電極層と第1の誘電体層との間に結合された第3の導電層をさらに備える、態様1~2および5のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0058】
[0064]態様7.第1の誘電体層は、二酸化ケイ素(SiO2)を備える、態様1~6のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0059】
[0065]態様8.第1の導電層は、タングステン(W)を備える、態様1~7のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0060】
[0066]態様9.1つまたは複数の第1のビアは、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を備える、態様1~8のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0061】
[0067]態様10.基板と下部電極層との間に第3の誘電体層をさらに備える、態様1~2および5~9のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0062】
[0068]態様11.電気音響デバイスは、バルク音波(BAW)共振器として構成される、態様1~10のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0063】
[0069]態様12.態様1~11のいずれかに記載の電気音響デバイスを備える無線周波数(RF)フィルタ。
【0064】
[0070]態様13.下部電極層の厚さが、100ナノメートルより大きい、態様1~12のいずれかに記載の電気音響デバイス。
【0065】
[0071]態様14.信号処理のための方法であって、電気音響デバイスの端子において信号を受信することと、電気音響デバイスを介して信号を処理することと、を備え、ここにおいて、電気音響デバイスは、基板と、基板の上に配置された下部電極層と、下部電極層の上に配置された第1の誘電体層および第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層を有する音響ミラースタックと、音響ミラースタックの上に配置された圧電層と、下部電極層と第1の導電層との間に配置された1つまたは複数の第1のビアと、を備え、1つまたは複数の第1のビアは、下部電極層と第1の導電層とを電気的に結合する、方法。
【0066】
[0072]態様15.電気音響デバイスの端子は、下部電極層を備える、態様14に記載の方法。
【0067】
[0073]態様16.電気音響デバイスは、圧電層の上に配置された上部電極層をさらに備え、電気音響デバイスの端子は、上部電極層を備える、態様14に記載の方法。
【0068】
[0074]態様17.音響ミラースタックは、下部電極層の上に配置された1つまたは複数の第2の誘電体層と、1つまたは複数の第2の誘電体層のそれぞれの1つの上にそれぞれ配置された1つまたは複数の第2の導電層と、第1の導電層と1つまたは複数の第2の導電層のそれぞれの1つとの間に配置された1つまたは複数の第2のビアと、をさらに備え、1つまたは複数の第2のビアは、第1の導電層と1つまたは複数の第2の導電層のそれぞれの1つとを電気的に結合する、態様14~16のいずれかに記載の方法。
【0069】
[0075]態様18.圧電層は、1つまたは複数の第2の導電層の最上導電層と直接接触している、態様17に記載の方法。
【0070】
[0076]態様19.圧電層は、第1の導電層と直接接触している、態様14~16のいずれかに記載の方法。
【0071】
[0077]態様20.電気音響デバイスは、下部電極層と第1の誘電体層との間に結合された第3の導電層をさらに備える、態様14~16および19のいずれかに記載の方法。
【0072】
[0078]態様21.第1の誘電体層は、二酸化ケイ素(SiO2)を備える、態様14~20のいずれかに記載の方法。
【0073】
[0079]態様22.第1の導電層は、タングステン(W)を備える、態様14~21のいずれかに記載の方法。
【0074】
[0080]態様23.1つまたは複数の第1のビアは、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を備える、態様14~22のいずれかに記載の方法。
【0075】
[0081]態様24.電気音響デバイスは、基板と下部電極層との間に第3の誘電体層をさらに備える、態様14~16および19~23のいずれかに記載の方法。
【0076】
[0082]態様25.電気音響デバイスは、バルク音波(BAW)共振器として構成される、態様14~24のいずれかに記載の方法。
【0077】
[0083]態様26.下部電極層の厚さが、100ナノメートルより大きい、態様14~25のいずれかに記載の方法。
【0078】
[0084]態様27.電気音響デバイスを製作する方法であって、基板の上に下部電極層を形成することと、下部電極層の上に配置された第1の誘電体層と、第1の誘電体層の上に配置された第1の導電層と、を備える音響ミラースタックを形成することと、下部電極層と第1の導電層とを電気的に結合する1つまたは複数のビアを形成することと、音響ミラースタックの上に圧電層を形成することと、を備える方法。
【0079】
[0085]上記で説明された方法の様々な動作は、対応する機能を行うことが可能な任意の好適な手段によって行われ得る。手段は、限定はしないが、回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプロセッサを含む、様々なハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素(複数可)および/またはモジュール(複数可)を含み得る。概して、図に例示された動作がある場合、それらの動作は、対応するカウンターパートのミーンズプラスファンクション構成要素を有し得る。
【0080】
[0086]以下の説明は、様々なフィルタリング用途のための電気音響デバイスの例を提供するものであり、特許請求の範囲に記載される範囲、適用可能性、または例を限定するものではない。本開示の範囲から逸脱することなく、説明された要素の機能および配置において変更が行われ得る。様々な例は、必要に応じて、様々なプロシージャまたは構成要素を省略、置換、または追加し得る。例えば、説明された方法は、説明された順序とは異なる順序で行われ得、様々なステップが、追加、省略、または組み合わされ得る。また、いくつかの例に関して説明された特徴は、いくつかの他の例において組み合わされ得る。例えば、本明細書で記載された任意の数の態様を使用して、装置が実装され得るか、または方法が実施され得る。加えて、本開示の範囲は、本明細書に記載された本開示の様々な態様に加えて、またはそれら以外の他の構造、機能、もしくは構造および機能を使用して実施される、そのような装置または方法をカバーするように意図されている。本明細書で開示される本開示の任意の態様は、請求項の1つまたは複数の要素によって具現化され得ることを理解されたい。「例示的(exemplary)」という用語は、本明細書では、「例、事例、または例示を提供する」という意味で使用される。「例示的」として、本明細書で説明された任意の態様は、必ずしも他の態様よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。
【0081】
[0087]本明細書で開示された方法は、方法を達成するための1つまたは複数のステップまたはアクションを備える。方法のステップおよび/またはアクションは、特許請求の範囲から逸脱することなく互いに置き換えられ得る。換言すれば、ステップまたはアクションの特定の順序が指定されない限り、特定のステップおよび/またはアクションの順序および/または使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく修正され得る。
【0082】
[0088]本明細書で使用される場合、項目の列挙「のうちの少なくとも1つ」を指す表現は、単一のメンバを含む、それらの項目の任意の組合せを指す。例として、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、およびa-b-c、ならびに複数の同じ要素との任意の組合せ(例えば、a-a、a-a-a、a-a-b、a-a-c、a-b-b、a-c-c、b-b、b-b-b、b-b-c、c-c、およびc-c-c、またはa、b、およびcのその他任意の順序付け)をカバーするように意図される。
【0083】
[0089]上記の説明は、当業者が本明細書で説明された様々な態様を実施することを可能にするために提供されている。これらの態様に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかになり、本明細書で定義される一般原理は、他の態様に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書で示された態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲が与えられるものとし、単数形の要素への言及は、そうであることが明記されていない限り、「1つ、および1つのみ」を意味するようには意図されず、「1つまたは複数」を意味するように意図される。そうでないことが明記されていない限り、「いくつか」という用語は、1つまたは複数を指す。当業者に知られているか、または後に知られるようになる、本開示全体を通して説明された様々な態様の要素に対する全ての構造的および機能的な等価物は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲によって包含されるように意図される。さらに、本明細書で開示されたものはいずれも、そのような開示が特許請求の範囲において明記されているかどうかにかかわらず、公衆に放棄されるようには意図されない。いずれの請求項の要素も、その要素が「~のための手段(means for)」という表現を使用して明確に記載されていない限り、または、方法の請求項のケースでは、その要素が「~のためのステップ(step for)」という表現を使用して記載されていない限り、米国特許法第112条(f)の規定のもとで解釈されるべきではない。
【0084】
[0090]上記で説明された方法の様々な動作は、対応する機能を行うことが可能な任意の好適な手段によって行われ得る。手段は、様々なハードウェア構成要素を含み得る。概して、図に例示された動作がある場合、それらの動作は、同様の番号付けを有する、対応するカウンターパートのミーンズプラスファンクション構成要素を有し得る。
【0085】
[0091]特許請求の範囲は、上記に例示された厳密な構成および構成要素に限定されないことを理解されたい。様々な修正、変更、および変形が、特許請求の範囲から逸脱することなく、上記で説明された方法および装置の配置、動作、および詳細において行われ得る。
【国際調査報告】