(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20231101BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231101BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231101BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231101BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M10/0566
H01M4/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524199
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2022009866
(87)【国際公開番号】W WO2023287110
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0091398
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082998
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジフン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョプ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ボン・ス・キム
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK05
5H029AL12
5H029HJ01
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、固体状態の硝酸リチウム保有体を含むリチウム二次電池に関するもので、電池を駆動する間、持続的に硝酸リチウムを供給することができ長時間の間高いクーロン効率を維持することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び前記正極と負極の間に介在する分離膜を含む単位セルを一つ以上含むセルスタック、
固体状態の硝酸リチウム保有体、
電解液、及び
前記セルスタック、固体状態の硝酸リチウム保有体、及び電解液を内蔵する電池ケースを含む、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記固体状態の硝酸リチウム保有体は、セルスタックの最外層の一面または両面に位置することを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記固体状態の硝酸リチウム保有体は、硝酸リチウム含有フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記硝酸リチウム含有フィルムは、硝酸リチウム及びバインダを含むフィルム、または
基材フィルムの一面または両面に硝酸リチウム及びバインダを含むコーティング層が形成されたフィルムであることを特徴とする、請求項3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記硝酸リチウム含有フィルムは、硝酸リチウム及びバインダを80:20~98:2の固形分の重量比で含むフィルム、または
基材フィルムの一面または両面に硝酸リチウム及びバインダを80:20~98:2の固形分の重量比で含むコーティング層が形成されたフィルムであることを特徴とする、請求項4に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記正極は、硫黄元素(S
8)、有機硫黄化合物(Li
2S
n(n≧1))、及び炭素-硫黄ポリマー((C
2S
x)
n:x=2.5~50、n≧2)からなる群より選択される1種以上の正極活物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月13日付の韓国特許出願第10-2021-0091398号及び2022年7月6日付の韓国特許出願第10-2022-0082998号に基づいた優先権の利益を主張し、該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、固体状態の硝酸リチウム保有体を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電子機器、通信機器の小型化、軽量化及び高性能化が急速に進んでおり、環境問題と関連して電気自動車の必要性が大きく台頭するに伴い、これらの製品のエネルギー源として使用できる二次電池の性能改善が大きく要求されている。このような要求を満たす二次電池として、正極活物質として硫黄系物質を使用するリチウム-硫黄電池に対する多くの研究が進められている。
【0004】
リチウム-硫黄電池は、硫黄-硫黄結合を含む硫黄系列化合物を正極活物質として使用し、リチウムのようなアルカリ金属またはリチウムイオン等のような金属イオンの挿入/脱挿入が起きる炭素系物質を負極活物質として使用する二次電池である。
【0005】
特に、リチウム-硫黄電池の理論放電容量は1,675mAh/gであり、理論エネルギー密度が2,600Wh/kgであって、現在研究されているリチウムイオン電池(約570Wh/kg)に比べて約5倍程度高い理論エネルギー密度を有するので、高容量、高エネルギー密度及び長寿命の具現が可能な電池である。また、正極活物質の主材料である硫黄は、低い原子当り重さを有し、資源が豊富で需給が容易で価格が廉価であり、毒性がなく、環境親和的物質という利点のために、リチウム-硫黄電池は、携帯用電子機器だけでなく電気自動車のような中大型装置のエネルギー源として注目を浴びている。
【0006】
具体的には、リチウム-硫黄電池の負極(negative electrode)ではリチウムの酸化反応が発生し、正極(positive electrode)では硫黄の還元反応が発生する。放電前の硫黄は環状のS8構造を有しているが、還元反応(放電)時に硫黄-硫黄結合が切れながら硫黄の酸化数が減少し、酸化反応(充電)時に硫黄-硫黄結合がまた形成されながら硫黄の酸化数が増加する酸化-還元反応を利用して、電気エネルギーを貯蔵及び生成する。このような電気化学反応中、硫黄は、環状のS8から還元反応によって線形構造のリチウムポリサルファイド(lithium polysulfide、Li2Sx、x=8,6,4,2)に変換されるようになり、このようなリチウムポリサルファイドが完全に還元されると、最終的にリチウムサルファイド(lithium sulfide、Li2S)が生成されるようになる。それぞれのリチウムポリサルファイドに還元される過程によって、リチウム-硫黄電池の放電挙動は、リチウムイオン電池とは異なり段階的に放電電圧を示す。
【0007】
リチウム-硫黄電池の電気化学反応の中間生成物であるLi2S8、Li2S6、Li2S4、Li2S2等のリチウムポリサルファイドのうちで、硫黄の酸化数が高いリチウムポリサルファイド(Li2Sx、普通x>4)は、極性が強い物質で親水性有機溶媒を含む電解液に容易に溶ける。電解液に溶けたリチウムポリサルファイドは、濃度差によって正極から拡散していく。このように正極から溶出したリチウムポリサルファイドは、正極の電気化学反応領域を外れるようになって、リチウムサルファイド(Li2S)への段階的還元が不可能である。すなわち、正極を外れて電解液に溶解された状態で存在するリチウムポリサルファイドは、電池の充・放電反応に参与することができなくなるため、正極活物質として使用される硫黄が損失し、リチウム-硫黄電池の容量及び寿命低下を起こす主要因となる。
【0008】
また、溶出したリチウムポリサルファイドは、負極の表面と直接反応して還元され、再び正極の表面で酸化されるシャトル反応(shuttle reaction)を行い得る。前記シャトル反応は、放電容量を減少させ、充電容量を増加させるため、放電容量/充電容量の比率で示されるクーロン効率(coulomb efficiency)が減少する問題がある。
【0009】
このような問題を解決するために、添加剤を電解質に添加する方法が研究されたが、サイクルが進むほど添加剤が徐々に消費され、添加剤が全て消費された以後には、クーロン効率が急激に減少する結果を示した。
【0010】
したがって、長いサイクルの間、高いクーロン効率を維持できるリチウム二次電池の開発が要求されている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2015-0032670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明者らは、前記の問題を解決しようと多角的に研究を行った結果、リチウム二次電池に固体状態の硝酸リチウム保有体を含ませる場合、電池駆動中に硝酸リチウムが持続的に供給されて、長いサイクルの間高いクーロン効率を維持することを確認して本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、長いサイクルの間高いクーロン効率を維持できるリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、
本発明は、正極、負極、及び前記正極と負極の間に介在する分離膜を含む単位セルを一つ以上含むセルスタック、
固体状態の硝酸リチウム保有体、
電解液、及び
前記セルスタック、固体状態の硝酸リチウム保有体、及び電解液を内蔵する電池ケースを含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリチウム二次電池は、固体状態の硝酸リチウム保有体を含むことにより、電池駆動中、持続的に硝酸リチウムを供給することができて、長いサイクルの間高いクーロン効率を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のリチウム二次電池の構造を示した模式図である。
【
図2】従来のリチウム二次電池の構造を示した模式図である。
【
図3】リチウム二次電池駆動前の硝酸リチウム含有フィルムの写真である。
【
図4】リチウム二次電池駆動後の硝酸リチウム含有フィルムの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
リチウム二次電池、その中でもリチウム-硫黄電池は、充・放電時にリチウムポリサルファイドが電解液に溶出し、シャトル現象が発生し得る。前記シャトル現象は、放電容量を減少させ、充電容量を増加させて放電容量/充電容量の比率で示されるクーロン効率が減少する問題がある。
【0019】
従来は、前記シャトル現象を防止するために電解液に添加剤として硝酸リチウム(Lithium nitrate,LiNO3)を使用して長いサイクルの間高いクーロン効率を維持しようとする努力が試みられた。しかしサイクルが進むにつれて硝酸リチウムは徐々に消費されるため、硝酸リチウムが全て消費された以後にはクーロン効率が急激に低くなる問題が発生した。電解液に対する硝酸リチウムの溶解度は限界が存在するため、長いサイクルを進める間に使用されることができる量の硝酸リチウムを電解液に添加することは不可能である。したがって、電解液の添加剤として硝酸リチウムを使用することは、高いクーロン効率を維持できるサイクル数が短い問題がある。
【0020】
そこで本発明では、長いサイクルの間高いクーロン効率を維持できるリチウム二次電池を提供しようとした。
【0021】
すなわち、本発明は、正極20、負極40、及び前記正極と負極の間に介在する分離膜30を含む単位セルを一つ以上含むセルスタック10、
固体状態の硝酸リチウム保有体50、
電解液、及び
前記セルスタック、固体状態の硝酸リチウム保有体、及び電解液を内蔵する電池ケースを含むリチウム二次電池に関するものである。
【0022】
本発明で前記固体状態の硝酸リチウム保有体は、リチウム二次電池の駆動中に硝酸リチウムを持続的に供給することができる。したがって、硝酸リチウム減少によるクーロン効率の減少を防止することができ、長いサイクルの間高いクーロン効率を維持することができる。一般的に長いサイクルは200サイクル以上を意味し、高いクーロン効率は98%以上を意味する。
【0023】
前記固体状態の硝酸リチウム保有体50は、セルスタックの最外層の一面または両面に位置することができる。これは、電池ケースとセルスタックの間の空間に位置されることであり得る。
【0024】
もし前記硝酸リチウム保有体がセルスタックの内部に位置する場合、硝酸リチウム保有体は、電池の抵抗を増加させる要素として作用して電池の性能を劣化させ得る。前記硝酸リチウム保有体がセルスタックの内部に位置することは、正極と分離膜の間または負極と分離膜の間に位置することを意味する。
【0025】
具体的には、硝酸リチウム保有体が有する物理的な構造により、負極と正極の間の物質伝達通路を狭めて物質伝達を妨害し得る。また、硝酸リチウム保有体の厚さにより正極と負極間の距離が遠くなり、電池駆動時に物質が移動しなければならない距離が増加し得る。したがって、硝酸リチウム保有体がセルスタックの内部に位置すると、前記硝酸リチウム保有体は抵抗を増加させる要因として作用し得る。これによる抵抗の増加は、電池駆動時に過電圧を誘発するため、電池のエネルギーが減少し得るし、最大放電可能な電流が減少して出力特性が劣化する問題が発生し得る。
【0026】
しかし、硝酸リチウム保有体をセルスタックの最外層の一面または両面に位置させれば、正極と負極間の物質伝達を構造的に妨害せず、正極と負極間の距離の増加が発生しないため、抵抗の増加なしに硝酸リチウムを電解質として供給する役割を行うことができる。
【0027】
前記固体状態の硝酸リチウム保有体は、硝酸リチウム含有フィルム(LiNO3 film)であり得る。
【0028】
前記硝酸リチウム含有フィルムは、硝酸リチウム及びバインダを混合して製造されたフィルム、または別途の基材フィルムの一面または両面に硝酸リチウム及びバインダを含むコーティング組成物をコーティングしてコーティング層が形成されたフィルムであり得る。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記硝酸リチウム含有フィルムは、硝酸リチウム及びバインダを80:20~98:2の固形分の重量比で含むフィルム、または別途の基材フィルムの一面または両面に硝酸リチウム及びバインダを80:20~98:2の固形分の重量比で含むコーティング層が形成されたフィルムであり得る。
【0030】
具体的には、前記重量比の範囲で硝酸リチウムは、80以上、85以上、90以上、93以上、95以上、97以上、85以下、90以下、93以下、95以下、98以下であり得る。また、前記バインダは、2以上、5以上、7以上、10以上、12以上、15以上、17以上、19以上、3以下、5以下、7以下、10以下、12以下、15以下、17以下、20以下であり得る。
【0031】
前記バインダが前記重量比未満で含まれると、硝酸リチウムがフィルムに固定されず脱離する現象が発生し、前記重量比を超過するとバインダが過度に多く含まれていてフィルムに同一の重さの硝酸リチウムを適用時にコーティング層の重さが増加し、リチウム二次電池のエネルギー密度が低くなり得る。
【0032】
また、前記硝酸リチウムが前記重量比未満で含まれると、硝酸リチウムの含量が少な過ぎて長いサイクルの間高いクーロン効率を維持することが難しく、前記重量比を超過するとバインダ含量が少なくて硝酸リチウムが脱離したりコーティングが難しい問題が発生し得る。
【0033】
前記基材フィルムは、当業界で使用されるものであればその種類を特に限定せず、例えば、アルミニウムホイル(Al foil)、銅ホイル(Cu foil)、ポリエチレン(Polyethylene、PE)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)、及びポリイミド(Polyimide、PI)等を使用することができる。
【0034】
前記バインダは、硝酸リチウムをフィルムに維持させる役割をする。前記バインダは、例えば、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid) カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose,CMC)等の多様な種類のバインダが使用されることができ、好ましくはカルボキシルメチルセルロースが使用され得る。
【0035】
前記コーティング組成物は、追加で溶媒をさらに含むことができ、前記溶媒は、コーティング組成物の総重量に対して50~90重量%で含まれ得る。
【0036】
前記コーティング組成物を基材フィルムの一面または両面にコーティングしてから乾燥を進めることができる。
【0037】
前記乾燥は、30~80℃の温度、好ましくは40~60℃の温度で行われることができる。
【0038】
前記乾燥温度が30℃未満であれば、溶媒の乾燥が十分に行われず硝酸リチウムフィルムの形成が不可能であり、80℃を超過すると、乾燥速度が早過ぎてフィルムが多孔化し、硝酸リチウムが脱離する問題が発生し得る。
【0039】
前記乾燥時間は、水溶液が十分に乾燥するのにかかる時間であり得、2~8時間であり得るがこれに限定されるものではない。
【0040】
前記乾燥以後、追加で2次乾燥を行うことができる。前記2次乾燥は、50~150℃の温度で行われることができ、15~30時間の間行われることができる。前記2次乾燥を行うことにより、硝酸リチウム含有フィルムの含水量を減少させて、水分によるリチウム二次電池の退化を抑制することができる。
【0041】
前記乾燥以後、製造された硝酸リチウム含有フィルムを圧延して最終的に硝酸リチウム含有フィルムを製造することができる。
【0042】
前記正極20は、正極集電体と正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質層を含むことができる。
【0043】
正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用されることができる。このとき、前記正極集電体は、正極活物質との接着力を高めることもできるように、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等、多様な形態を使用することができる。
【0044】
正極活物質層は正極活物質を含み、導電材、バインダ、及び添加剤等をさらに含むことができる。
【0045】
正極活物質は硫黄を含み、具体的には硫黄元素(S8)、有機硫黄化合物(Li2Sn(n≧1))、及び炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。好ましくは、前記正極活物質は、無機硫黄であり得る。したがって、本発明のリチウム二次電池は、リチウム-硫黄電池であり得る。
【0046】
前記正極活物質に含まれる硫黄の場合、単独では電気伝導性がないので、炭素材のような導電性素材と複合化して使用される。これによって、前記硫黄は硫黄-炭素複合体の形態で含まれ、好ましくは前記正極活物質は、硫黄-炭素複合体であり得る。
【0047】
前記硫黄-炭素複合体に含まれる炭素は多孔性炭素材で、前記硫黄が均一で安定的に固定されることができる骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学的反応が円滑に進むことができるようにする。
【0048】
前記多孔性炭素材は、一般的に多様な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造されることができる。前記多孔性炭素材は、内部に一定でない気孔を含み、前記気孔の平均径は1~200nmの範囲であり、気孔度または孔隙率は多孔性炭素材の全体体積の10~90%範囲であり得る。もし前記気孔の平均径が前記範囲未満である場合、気孔の大きさが分子水準に過ぎず硫黄の含浸が不可能であり、これと逆に前記範囲を超過する場合、多孔性炭素材の機械的強度が弱体化して電極の製造工程に適用するのに好ましくない。
【0049】
前記多孔性炭素材の形態は、球形、棒形、針状形、板状形、チューブ型またはバルク型で、リチウム-硫黄電池に通常的に使用されるものであれば制限なしに使用されることができる。
【0050】
前記多孔性炭素材は、多孔性構造であるか比表面積が高いもので、当業界で通常的に使用されるものであればどれでも構わない。例えば、前記多孔性炭素材としては、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)等の炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化炭素ファイバー(ACF)等の炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛、及び活性炭素からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに制限されない。好ましくは前記多孔性炭素材は炭素ナノチューブであり得る。
【0051】
前記硫黄-炭素複合体は、硫黄-炭素複合体100重量部を基準として硫黄を60~90重量部、好ましくは65~85重量部、より好ましくは70~80重量部で含むことができる。前記硫黄の含量が上述の範囲未満である場合、硫黄-炭素複合体内の多孔性炭素材の含量が相対的に多くなることにより比表面積が増加して、正極の製造時にバインダの含量が増加する。このようなバインダの使用量増加は、結局正極の面抵抗を増加させて電子移動(electron pass)を妨げる絶縁体の役割をするようになり、電池の性能を低下させ得る。これと逆に前記硫黄の含量が上述の範囲を超過する場合、多孔性炭素材と結合できなかった硫黄同士が固まったり、多孔性炭素材の表面で再溶出することにより、電子を受けるのが難しくなって電気化学的反応に参与できなくなり、電池の容量損失が発生し得る。
【0052】
また、前記硫黄-炭素複合体で、前記硫黄は、上述の多孔性炭素材の内部及び外部表面のうち少なくともいずれか一ヶ所に位置し、このとき前記多孔性炭素材の内部及び外部全体表面の100%未満、好ましくは1~95%、より好ましくは60~90%領域に存在することができる。前記硫黄が多孔性炭素材の内部及び外部表面に前記範囲内で存在するとき、電子伝達面積及び電解質との濡れ性面で最大効果を現わすことができる。具体的には、前記範囲領域で硫黄が多孔性炭素材の内部及び外部表面に薄く均一に含浸されるため、充・放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が多孔性炭素材の内部及び外部全体表面の100%領域に位置する場合、前記炭素材が完全に硫黄で覆われて電解質に対する濡れ性が落ち、電極内に含まれる導電材と接触性が低下して電子伝達を受けることができず、電気化学反応に参与することができなくなる。
【0053】
前記硫黄-炭素複合体の製造方法は、本発明で特に限定せず、当業界で通常的に使用される方法が使用されることができる。一例として、前記硫黄と多孔性炭素材を単純混合した後、熱処理して複合化する方法が使用されることができる。
【0054】
前記正極活物質は、上述の組成以外に遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これら元素の硫黄化合物、及びこれら元素と硫黄の合金のうちから選択される一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0055】
前記遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、またはHg等が含まれ、前記IIIA族元素としては、Al、Ga、In、Tl等が含まれ、前記IVA族元素としては、Ge、Sn、Pb等が含まれ得る。
【0056】
前記正極活物質は、前記正極を構成する正極活物質層全体100重量%を基準として40~95重量%、好ましくは45~90重量%、より好ましくは60~90重量%で含むことができる。前記正極活物質の含量が前記範囲未満である場合、正極の電気化学的反応を十分に発揮することが難しく、これと逆に前記範囲を超過する場合、後述する導電材とバインダの含量が相対的に不足して正極の抵抗が上昇し、正極の物理的性質が低下する問題がある。
【0057】
前記正極活物質層は、選択的に電子が正極(具体的には正極活物質)内で円滑に移動するようにするための導電材、及び正極活物質を集電体によく付着させるためのバインダをさらに含むことができる。
【0058】
例えば、前記導電材としては、スーパーP(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素ナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の炭素誘導体;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性高分子を単独または混合して使用することができる。
【0059】
前記バインダは、前記正極活物質を前記正極集電体に維持させ、前記正極活物質間を有機的に連結させてこれらの間の結着力をより高めるもので、当該業界で公知となった全てのバインダを使用できる。前記バインダは、上述のとおりである。
【0060】
本発明で前記正極の製造方法は、特に限定されず、通常の技術者によって公知の方法またはこれを変形する多様な方法が使用可能である。
【0061】
一例として、前記正極は、上述した組成を含む正極スラリー組成物を製造した後、これを前記正極集電体の少なくとも一面に塗布することにより製造されたものであり得る。
【0062】
前記正極スラリー組成物は、上述の正極活物質、導電材及びバインダを含み、その他に溶媒をさらに含むことができる。
【0063】
前記溶媒としては、正極活物質、導電材及びバインダを均一に分散させることができるものを使用する。このような溶媒としては、水系溶媒として水が最も好ましく、このとき水は蒸溜水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)であり得る。ただし、必ずしもこれに限定するものではなく、必要な場合、水と容易に混合が可能な低級アルコールが使用されることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びブタノール等があり、好ましくは、これらは水と共に混合して使用されることができる。
【0064】
前記溶媒の含量は、コーティングを容易にできる程度の濃度を有する水準で含有されることができ、具体的な含量は、塗布方法及び装置によって変わる。
【0065】
前記正極スラリー組成物は、必要に応じて該当の技術分野でその機能の向上等を目的に通常的に使用される物質を必要に応じて追加で含むことができる。例えば粘度調整剤、流動化剤、充填剤等を挙げることができる。
【0066】
前記正極スラリー組成物の塗布方法は、本発明で特に限定せず、例えば、ドクターブレード(doctor blade)、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)等の方法を挙げることができる。また、別途の基材(substrate)上に成形した後、プレッシング(pressing)またはラミネーション(lamination)方法によって正極スラリーを正極集電体上に塗布することもできる。
【0067】
前記塗布後、溶媒除去のための乾燥工程を行うことができる。前記乾燥工程は、溶媒を十分に除去できる水準の温度及び時間で行い、その条件は溶媒の種類によって変わり得るため本発明に特に制限されない。一例として、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線及び電子線等の照射による乾燥法を挙げることができる。乾燥速度は、通常応力集中によって正極活物質層に亀裂が生じたり正極活物質層が正極集電体から剥離しない程度の速度の範囲内で可能な限り早く溶媒を除去できるように調整する。
【0068】
追加的に、前記乾燥後、集電体をプレスすることにより正極内正極活物質の密度を高めることもできる。プレス方法としては、金型プレス及びロールプレス等の方法を挙げることができる。
【0069】
前記負極40は、集電体とその一面または両面に形成された負極活物質層で構成されることができる。または前記負極はリチウム金属板であり得る。
【0070】
前記集電体は、負極活物質の支持のためのもので、優れた導電性を有しリチウム二次電池の電圧領域で電気化学的に安定したものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチール表面にカーボン、ニッケル、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用されることができる。
【0071】
前記負極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、ホイル、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等、多様な形態を使用することができる。
【0072】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション(Intercalation)またはディインターカレーション(Deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質、リチウム金属またはリチウム合金を使用することができる。
【0073】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーションまたはディインターカレーションすることができる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であり得る。
【0074】
前記リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレート、またはシリコンであり得る。
【0075】
前記リチウム合金は、例えば、リチウムLiとナトリウムNa、カリウムK、ルビジウムRb、セシウムCs、フランシウムFr、ベリリウムBe、マグネシウムMg、カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、ラジウムRa、アルミニウムAl及びスズSnよりなる群から選択される金属の合金であり得る。
【0076】
上述の正極と負極の間には、追加で分離膜30が含まれ得る。
【0077】
前記分離膜は、前記正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極の間にリチウムイオン輸送を可能にするもので、多孔性非導電性または絶縁性物質よりなることができる。このような分離膜は、フィルムのような独立的な部材でもあり得るし、正極及び/または負極に付加したコーティング層であり得る。
【0078】
前記分離膜としては、電解質のイオン移動に対して低抵抗ながら電解質に対する含湿能力が優れたものが好ましい。
【0079】
前記分離膜は、多孔性基材からなることができるが、前記多孔性基材は、通常的に二次電池に使用される多孔性基材であれば全て使用が可能であり、多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなった不織布、またはポリオレフィン系多孔性膜を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0080】
前記多孔性基材の材質としては、本発明で特に限定せず、通常的に電気化学素子に使用される多孔性基材ならば全て使用が可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)等のポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)等のポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルサルフォン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene benzobisoxazole)、及びポリアリレート(polyarylate)からなる群より選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0081】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1~100μm、好ましくは5~50μmであり得る。前記多孔性基材の厚さ範囲が上述の範囲に限定されるものではないが、厚さが上述の下限より薄すぎる場合には機械的物性が低下して電池使用中に分離膜が容易に損傷し得る。
【0082】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均径及び気孔度もやはり特に制限されないが、それぞれ0.001~50μm及び10~95%であり得る。
【0083】
前記電解液は、リチウムイオンを含み、これを媒介として正極と負極で電気化学的な酸化または還元反応を起こすためのものである。
【0084】
前記電解液は、リチウム金属と反応しない非水電解液または固体電解質が可能であるが、好ましくは非水電解液であり、電解質塩及び有機溶媒を含む。
【0085】
前記非水電解液に含まれる電解質塩はリチウム塩である。前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常的に使用されるものであれば制限なしに使用されることができる。例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLi、(SO2F)2NLi、(CF3SO2)3CLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド等が使用されることができる。
【0086】
前記リチウム塩の濃度は、イオン伝導度、溶解度等を考慮して適切に決まることができ、例えば、0.1~4.0M、好ましくは0.5~2.0Mであり得る。前記リチウム塩の濃度が前記範囲未満である場合、電池駆動に適したイオン前途度の確保が難しく、これと逆に前記範囲を超過する場合、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性を低下させ、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池の性能が低下し得るため前記範囲内で適切に調節する。
【0087】
前記非水電解液に含まれる有機溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常的に使用されるものを制限なしに使用することができ、例えば、エーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、環状カーボネート等をそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0088】
前記エーテル系化合物は、非環状エーテル及び環状エーテルを含むことができる。
【0089】
例えば、前記非環状エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテルからなる群より選択される1種以上が使用されることができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
一例として、前記環状エーテルは、1,3-ジオキソラン、4,5-ジメチル-ジオキソラン、4,5-ジエチル-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、4-エチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、2-エトキシテトラヒドロフラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、2-メトキシ-1,3-ジオキソラン、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、イソソルビドジメチルエーテル(isosorbide dimethyl ether)からなる群より選択される1種以上が使用されることができるが、これに限定されるものではない。
【0091】
前記有機溶媒のうちエステルとしては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記線形カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物等が代表的に使用されることができるが、これに限定されるものではない。
【0093】
また前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物がある。これらのハロゲン化物としては、例を挙げれば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)等があり、これに限定されるものではない。
【0094】
前記電解液は、上述の電解質塩と有機溶媒以外に添加剤として硝酸リチウム(LiNO3)を含むことができ、硝酸リチウムを含むことによってリチウム金属電極に安定した被膜を形成し、充・放電効率を向上させる効果がある。
【0095】
前記電解質の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電気化学素子の製造工程中適切な段階で行われることができる。すなわち、電気化学素子の組立前または電気化学素子の組立最終段階等で適用されることができる。電解液の注入で、セルスタック及び硝酸リチウムフィルムは電解液によって含浸されることができる。
【0096】
発明によるリチウム二次電池は、一般的な工程である巻取り(winding)以外にもセパレーターと電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。そして、電池ケースは、円筒形、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型等になることができる。本発明の一実施例によれば、前記リチウム二次電池は、円筒形リチウム二次電池、角形リチウム二次電池、パウチ型リチウム二次電池、またはコイン型リチウム二次電池であり得、特にパウチ型リチウム二次電池であり得る。
【0097】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものであるだけで、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能なことは当業者にあって明白なことであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0098】
<リチウム-硫黄電池の製造>
実施例1
リチウム-カルボキシメチルセルロース(Li-CMC)が2重量%で含まれた水溶液を製造した。前記水溶液に硝酸リチウム(LiNO3)を添加してコーティング組成物を製造した。このとき、前記硝酸リチウム及びリチウム-カルボキシメチルセルロースの固形分の重量比は93:7となるようにした。
【0099】
前記コーティング組成物をアルミニウムホイル(Al foil)上に塗布し、mathis coater(Mathis Switzerland、SV-M)でコーティングした。コーティング完了後、50℃の温度のオーブンで5時間の間1次乾燥を実施し、以後80℃の温度のオーブンで20時間の間2次乾燥を実施して硝酸リチウム含有フィルムを製造した。
【0100】
この後、前記硝酸リチウム含有フィルムを圧延して最終的に硝酸リチウム含有フィルムを製造した。
【0101】
正極活物質として硫黄-炭素(CNT)複合体(S:C=75:25(重量比))及び3重量%のリチウム-ポリアクリル酸(Li-PAA)水溶液を混合して混合溶液を製造した。このとき、硫黄-炭素複合体及びリチウム-ポリアクリル酸の固形分の重量比は95:5となるようにした。
【0102】
前記混合溶液に追加で水を添加して、混合溶液の総重量に対して固形分が30重量%であるスラリーを製造した。
【0103】
前記スラリーをアルミニウムホイル集電体上に塗布した後、Mathis coater(Mathis Switzerland、SV-M)を用いて一定の厚さにコーティングした。その後50℃の温度で2時間の間乾燥して正極を製造した。
【0104】
負極として30μm厚さのリチウム金属薄膜を使用した。
【0105】
0.75MのLiFSIと6重量%の硝酸リチウム(LiNO3)を1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane、DME)及び2-メチルフラン(2-methylfuran、2-MeF)を3:7の体積比で混合した有機溶媒に溶解させて電解液を製造した。
【0106】
前記正極と負極を対面するように位置させ、その間に16μm厚さのポリエチレン分離膜を介在してセルスタックを製造した。
【0107】
前記セルスタックをアルミニウムパウチに入れ、前記硝酸リチウム含有フィルムをセルスタックとパウチの間の空間に挿入した。すなわち、前記硝酸リチウム含有フィルムをセルスタックの最外層の一面に挿入した。
【0108】
この後、電解液を注入した後、密封してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0109】
比較例1.
前記硝酸リチウム含有フィルムを使用しないことを除いては、実施例1と同一に実施してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0110】
実験例1.リチウム-硫黄電池のクーロン効率の評価
前記実施例1及び比較例1で製造したリチウム-硫黄電池に対し、充・放電測定装置(PESCO5-0.01、PNE solution、韓国)を使用して性能を評価した。
【0111】
初期3サイクルでは0.1C電流密度で2.5から1.8Vまでの充・放電容量を測定し、4回目のサイクルからは0.3Cで放電し、0.2Cで充電して充・放電容量を測定した。
【0112】
この後、下記数学式1によって実施例1及び比較例1のリチウム-硫黄電池のクーロン効率を計算し、結果を下記表1に示した。
【0113】
[数学式1]
クーロン効率(%)=(現在サイクルの放電容量/直前サイクルの放電容量)X100
【表1】
【0114】
前記表1の結果で、実施例1のリチウム-硫黄電池は、サイクルが進んでもクーロン効率が減少せず一定の水準で維持する結果を示した。
【0115】
しかし比較例1のリチウム-硫黄電池は、サイクルが進むほどクーロン効率が減少する結果を示した。
【0116】
これから、硝酸リチウム含有フィルムを含むリチウム-硫黄電池は、長いサイクルの間持続的に硝酸リチウムを供給することがわかり、硝酸リチウムの供給によって長時間の間高いクーロン効率を維持することを確認することができた。
【0117】
クーロン効率の減少は、充電された物質中の一部が放電されなかったことであり、これは活物質中の一部が非可逆的に変化したということを意味し、電池寿命の退化に直接的な影響を与える。
【0118】
実施例1と比較例1の200サイクルのクーロン効率結果は約1%の差を示した。リチウム-硫黄電池は、サイクルが繰り返されるため、非可逆容量が幾何級数的に累積して前記1%差は大きい差を引き起こすことができる。したがって、クーロン効率が少しでも高い状態で維持させることが、リチウム-硫黄電池の寿命向上において非常に重要な役割をする。そのため実施例1のリチウム-硫黄電池は、比較例1のリチウム-硫黄電池より寿命特性が非常に優れているとみることができる。
【0119】
すなわち、本発明のリチウム-硫黄電池は、長いサイクルの間クーロン効率を高く維持することができ、それによって寿命特性が優れた効果を挙げることができる。
【0120】
追加で、電池駆動時に硝酸リチウム含有フィルムが硝酸リチウムを供給することを確認するために、前記実施例1のリチウム-硫黄電池の駆動後の硝酸リチウム含有フィルムを確認した。硝酸リチウム含有フィルムで電解液の色が確認された。硝酸リチウム含有フィルムは、電解液と接触した状態で存在したため、リチウム-硫黄電池の駆動時に硝酸リチウム含有フィルムが硝酸リチウムを供給したということがわかった。
【符号の説明】
【0121】
10:セルスタック
20:正極
30:分離膜
40:負極
50:固体状態の硝酸リチウム保有体
【国際調査報告】