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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ロールツーロールインプリント
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231101BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524386
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 FI2021050696
(87)【国際公開番号】W WO2022084585
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】20206041
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100217434
【弁理士】
【氏名又は名称】万野 秀人
(72)【発明者】
【氏名】フットゥネン・オッリ‐ヘイッキ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルトゥネン・ユッシ
(72)【発明者】
【氏名】ペタヤ・ヤルノ
(72)【発明者】
【氏名】ヒートラ‐ケイナネン・ヨハンナ
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AM28
4F209AR02
4F209PA03
4F209PB02
4F209PJ06
4F209PJ11
4F209PN06
4F209PN09
4F209PQ01
5F146AA31
(57)【要約】
本発明は、インプリント方法によるロールツーロール表面パターニングに関する。液相レジストの膜は、走行ウェブ上にコーティングされ、続いてその外面にパターニングされた特徴部を有するローリング複製ツールと接触させられる。同時ステップにおいて、レジストは、典型的には熱またはUV光によって硬化され、ローリング複製ツールのパターニングされた特徴部は、複製ツールとの接触中にレジスト膜に複製される。従来のロールツーロールインプリントの主な欠点は、閉じ込められた空気に起因するパターン内の欠陥の生成である。この制限を克服するために、本発明は、減圧または真空条件下でロールツーロールインプリントを実行するための方法および装置を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールツーロールインプリント装置であって、
基板ウェブを巻き出すように構成された巻き出しユニットと、
任意選択的に、前記基板ウェブを前処理するように構成された基板ウェブ前処理ユニットと、
少なくとも2つの成分物質を混合することによってレジストを調製するか、または単成分レジスト物質を取得して任意選択的に攪拌し、レジスト膜を形成するために前記基板ウェブをレジストでコーティングするように構成された混合およびコーティングユニットと、
前記基板ウェブと、ローリング複製ツールの外面に配置または形成された型との間の前記レジスト膜を押圧することで前記レジスト膜に圧力を印加することによって連続プロセスで前記レジスト膜をパターニングし、前記型はこれによって前記レジスト内に複数のナノ構造体を画定するように構成されたインプレッションローラユニットと、
前記インプレッションローラユニットに関連付けられ、前記パターンレジストを前記型から取り外す前に前記型パターンナノ構造体を備える前記パターンレジストを少なくとも部分的に硬化させるように構成された硬化ユニットと、
前記硬化ナノ構造体を有する前記基板ウェブを巻き戻すように構成された巻き戻しユニットと、を備え、
前記装置は、前記巻き出しユニット、前記任意選択的な前処理ユニット、前記混合およびコーティングユニット、前記インプレッションローラユニット、前記硬化ユニット、および前記巻き戻しユニットが封入された減圧チャンバをさらに備え、前記封入されたユニットの動作中の減圧チャンバ空気圧は、0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間である、
ロールツーロールインプリント装置。
【請求項2】
前記装置は、
動作中に前記減圧チャンバに封入され、前記前処理ユニットによって前記基板ウェブを前処理する前、および/または前記混合およびコーティングユニットによって前記基板ウェブを前記レジスト膜でコーティングする前に、前記巻き出された基板ウェブから保護ライナを巻き出すように構成されたライナ巻き出しユニット、および/または
動作中に前記減圧チャンバに封入され、前記硬化ナノ構造体を有する前記基板ウェブを巻き戻す前に、前記基板ウェブ上の前記硬化ナノ構造体の上に保護ライナを供給するように構成されたライナ巻き戻しユニットを備え、
前記ライナ巻き出しユニットおよび/または前記ライナ巻き戻しユニットは、その動作中に前記減圧チャンバ内にそれぞれ封入される、
請求項1に記載のロールツーロールインプリント装置。
【請求項3】
前記インプレッションローラユニットは、
前記レジスト膜でコーティングされた前記基板ウェブの切り込み角度、
前記型と前記基板ウェブとの間で押圧されたときに前記レジストに印加される圧力、
前記レジストを硬化させるために使用される硬化温度、
前記レジストを硬化させるために使用される放射線強度、および
前記少なくとも部分的に硬化したレジストを有する前記基板ウェブの離型角度のうちの少なくとも1つの調整を可能にするように構成されている、
請求項1または2に記載のロールツーロールインプリント装置。
【請求項4】
前記レジストの前記少なくとも2つの成分物質または前記単成分レジスト物質は、各々がそれぞれの貯蔵容器に結合された、それぞれの1つ以上のパイプラインによって前記混合およびコーティングユニットに供給され、
前記貯蔵容器は、前記減圧チャンバ内、および前記減圧チャンバの外部のうちの1つにあり、
前記貯蔵容器内の内圧は、0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間、より好ましくは前記ロールツーロールインプリント装置の動作中の前記減圧チャンバ内の前記空気圧に等しい、
請求項1から3のいずれか一項に記載のロールツーロールインプリント装置。
【請求項5】
前記レジストは、前記少なくとも2つの成分物質を混合することによって調製された未硬化モノマーもしくはプレポリマー混合物である、または前記レジストは単成分レジスト物質である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のロールツーロールインプリント装置。
【請求項6】
ロールツーロールナノ構造体製造方法であって、
基板ウェブを巻き出すステップと、
任意選択的に前記基板ウェブを前処理するステップと、
少なくとも2つの成分物質を混合するかまたは単成分レジストを取得して任意選択的に攪拌することによってレジストを調製するステップと、
レジスト膜を形成するために前記レジストで前記基板ウェブをコーティングするステップと、
前記基板ウェブと、ローリング複製ツールの外面に配置または形成された型との間の前記レジスト膜を押圧することで前記レジスト膜に圧力を印加することによって連続プロセスで前記レジスト膜をパターニングするステップであって、前記型はこれによって前記レジスト内に複数のナノ構造体を画定する、ステップと、
前記型パターンナノ構造体を含む前記パターンレジスト膜を硬化させるステップであって、前記硬化は、前記パターンレジストを前記型から取り外す前に少なくとも部分的に行われる、ステップと、
前記硬化ナノ構造体を有する前記基板ウェブを巻き戻すステップと、を含み、
前記方法では、
減圧チャンバ内で上記各ステップを実行するために装置を封入し、
前記減圧チャンバ内の空気圧が0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間となるように、前記減圧チャンバ内の空気圧を低減し、
前記空気圧を低減した後に、前記減圧チャンバに封入された前記装置によって前記ロールツーロールナノ構造体製造方法の上記各ステップを実行する、
ロールツーロールナノ構造体製造方法。
【請求項7】
前記方法は、
前処理ユニットによって前記基板ウェブの前記任意選択的な前処理を実行する前、および/または前記基板ウェブを前記レジスト膜でコーティングする前に、前記巻き出された基板ウェブから保護ライナを巻き出すステップ、ならびに
前記硬化ナノ構造体を有する前記基板ウェブを巻き戻す前に、前記基板ウェブ上の前記硬化ナノ構造体の上に保護ライナを供給するステップのうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記保護ライナを巻き出すステップおよび/または前記保護ライナを供給するステップを実行するための装置は、前記減圧チャンバ内に封入され、
前記保護ライナを巻き出すステップおよび/または前記保護ライナを供給するステップは、空気圧を低減した後に前記減圧チャンバ内で実行される、
請求項6に記載のロールツーロールナノ構造体製造方法。
【請求項8】
前記方法は、
前記レジスト膜でコーティングされた前記基板ウェブの切り込み角度を調整するステップ、
前記型と前記基板ウェブとの間で押圧されたときに前記レジストに印加される圧力を調整するステップ、
前記レジストを硬化させるために使用される硬化温度を調整するステップ、
前記レジストを硬化させるために使用される放射線強度を調整するステップ、ならびに
前記少なくとも部分的に硬化したレジストを有する前記基板ウェブの離型角度を調整するステップのうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項6または7に記載のロールツーロールナノ構造体製造方法。
【請求項9】
前記方法は、それぞれの貯蔵容器から混合される前記レジストの前記物質の各々を取得するステップをさらに含み、
前記貯蔵容器は前記減圧チャンバ内にあるか、または前記貯蔵容器は前記減圧チャンバの外部にあり、前記貯蔵容器内の内圧は、0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間、より好ましくは前記ロールツーロールインプリント装置の動作中の前記減圧チャンバ内の前記空気圧に等しい、
請求項6から8のいずれか一項に記載のロールツーロールナノ構造体製造方法。
【請求項10】
前記レジストは、前記少なくとも2つの成分物質を混合することによって調製された未硬化モノマーもしくはプレポリマー混合物である、または前記レジストは単成分物質である、
請求項6から9のいずれか一項に記載のロールツーロールナノ構造体製造方法。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか一項に記載の製造プロセスによって製造されたナノ構造体であって、
前記ナノ構造体は、光ナノ構造体、電子ナノ構造体、データ記憶ナノ構造体、微小電気機械ナノ構造体、マイクロまたはナノ流体工学ナノ構造体、および生物医学ナノ構造体のいずれかを含む、
ナノ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロスケールおよびナノスケール構造体を作成することに関連するシステムおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、レジストの気泡形成を排除しながら、様々な目的のために迅速かつ連続的にマイクロおよびナノ構造体を製造するために使用され得るシステムおよび方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリントとも呼ばれるインプリントは、マイクロおよびナノメートルスケールのパターンおよび/または構造体を製造する方法である。インプリントプロセスは、低コスト、高スループットであり、レジスト材料の直接的な機械的変形によって高解像度が可能である。インプリントされたパターンおよび/または構造体は、例えば生物医学、マイクロおよびナノ流体工学、データ記憶、電子機器、および微小電気機械デバイスにおいて広範な用途を有する。得られた構造体は、完全にまたは少なくとも部分的に可撓性または伸縮性または剛性であり得る。
【0003】
ロールツーロールインプリントは、低コストパターニングの需要に応えるための高速処理を可能にするために開発されてきた。ロールで提供することができ、レジスト材料の硬化プロセスを妨げない任意の適切な材料で作られた基板ウェブ上に、レジストの膜、典型的にはモノマーまたはポリマー組成物がコーティングされる。例えば、基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィン共重合体(COC)、またはポリカーボネート(PC)などのプラスチックから作られてもよいが、紙、薄板、金属など、またはこれらのいずれかの組合せで作られてもよい。次に、その外面上に所定の形態的な型パターンを有する円筒形の複製ツールは、レジストと接触させられ、特定の圧力下で互いに押圧される。インプリントプロセスのパターニング段階の間、レジストは、少なくとも部分的に液体形態である。複製ツールとの接触時間中、レジストは、熱、UV光、IR、または他の適切な電磁放射線によって硬化される。
【0004】
インプリントにおける1つの問題は、レジスト内またはレジストと複製ツールとの間にガス泡または気泡が閉じ込められ、その結果、欠陥のあるインプリント製品をもたらす可能性があることである。バッチ式インプリントにおける気泡形成を低減または排除するための解決策が、以前に提供されている。しかしながら、ロールツーロールインプリントにおける気泡形成を低減または排除するための実用的な解決策は提供されていない。
【0005】
従来技術の説明
特許文献1は、紫外線ロールツーロールインプリント用のインプリント装置を開示している。レジスト、プラスチックウェブ、および型が互いに接する点にエキゾチックガスを注入することによって局所的なガス環境を有する疑似エンクロージャを作成するガス環境作成ユニットを使用して、プラスチックウェブ内に閉じ込められる空気が最小限に抑えられる。したがって、プラスチックウェブおよびインプリントドラムまたはシート側の収縮中に空気を排除することによって、気泡形成および酸素阻害が部分的に最小限に抑えられる。
【0006】
非特許文献1は、バッチモードUVナノインプリントのためにガス閉じ込めを抑制する様々な解決策が、ロールツーロールナノインプリントに適合され得ることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】シンガポール特許第10201403829号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Dumondらによる「High resolution UV roll-to-roll nanoimprinting of resist molds and subsequent replication via thermal nanoimprint lithography」、Nanotechnology 23(48):485310,2012年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ロールツーロールインプリントにおいてレジスト内の気泡形成を低減するという問題を解決するための装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の装置によって達成される。本発明の目的は、請求項6に記載の製造方法によってさらに達成される。製造方法は、請求項11において定義されるナノ構造体の製造を可能にする。
【0011】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0012】
第1の態様によれば、ロールツーロールインプリント装置が提供される。装置は、基板ウェブを巻き出すように構成された巻き出しユニットと、任意選択的に、基板ウェブを前処理するように構成された基板ウェブ前処理ユニットとを備える。装置はまた、少なくとも2つの成分物質を混合することによってレジストを調製するか、または単成分レジスト物質を取得して任意選択的に攪拌し、レジスト膜を形成するために基板ウェブをレジストでコーティングするように構成された、混合およびコーティングユニットも備える。装置はまた、基板ウェブと、ローリング複製ツールの外面に配置または形成された型との間のレジスト膜を押圧することでレジスト膜に圧力を印加することによって連続プロセスでレジスト膜をパターニングするように構成されたインプレッションローラユニットであって、型はこれによってレジスト内に複数のナノ構造体を画定する、インプレッションローラユニットと、インプレッションローラユニットに関連付けられ、パターンレジストを型から取り外す前に型パターンナノ構造体を備えるパターンレジストを少なくとも部分的に硬化させるように構成された硬化ユニットと、硬化ナノ構造体を有する基板ウェブを巻き戻すように構成された巻き戻しユニットとを備える。
【0013】
装置は、動作中に巻き出しユニット、任意選択的な前処理ユニット、混合およびコーティングユニット、インプレッションローラユニット、硬化ユニット、および巻き戻しユニットが封入され、前記封入されたユニットの動作中の減圧チャンバ空気圧は、0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間である、減圧チャンバをさらに備える。
【0014】
第2の態様によれば、ロールツーロールインプリント装置は、動作中に減圧チャンバに封入され、前処理ユニットによって基板ウェブを前処理する前、および/または混合およびコーティングユニットによって基板ウェブをレジスト膜でコーティングする前に、巻き出された基板ウェブから保護ライナを巻き出すように構成されたライナ巻き出しユニット、および/または動作中に減圧チャンバに封入され、硬化ナノ構造体を有する基板ウェブを巻き戻す前に、基板ウェブ上の硬化ナノ構造体の上に保護ライナを供給するように構成されたライナ巻き戻しユニットをさらに備える。前記ライナ巻き出しユニットおよび/またはライナ巻き戻しユニットは、その動作中に減圧チャンバ内にそれぞれ封入される。
【0015】
第3の態様によれば、インプレッションローラユニットは、レジスト膜でコーティングされた基板ウェブの切り込み角度、型と基板ウェブとの間で押圧されたときにレジストに印加される圧力、レジストを硬化させるために使用される硬化温度、レジストを硬化させるために使用される放射線強度、および少なくとも部分的に硬化したレジストを有する基板ウェブの離型角度のうちの少なくとも1つの調整を可能にするように構成されている。
【0016】
第4の態様によれば、レジストの前記少なくとも2つの成分物質または前記単成分レジスト物質は、各々がそれぞれの貯蔵容器に結合された、それぞれの1つ以上のパイプラインによって混合およびコーティングユニットに供給される。前記貯蔵容器は、減圧チャンバ内または減圧チャンバの外部のいずれかにある。貯蔵容器内の内圧は、0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間、より好ましくはロールツーロールインプリント装置の動作中の減圧チャンバ内の空気圧に等しい。
【0017】
第5の態様によれば、レジストは、前記少なくとも2つの成分物質を混合することによって調製された未硬化モノマーまたはプレポリマー混合物であるか、またはレジストは単成分レジスト物質である。
【0018】
第1の方法態様によれば、ロールツーロールナノ構造体製造方法が提供される。方法は、基板ウェブを巻き出すステップと、任意選択的に基板ウェブを前処理するステップと、少なくとも2つの成分物質を混合するかまたは単成分レジストを取得して任意選択的に攪拌することによってレジストを調製するステップと、レジスト膜を形成するためにレジストで基板ウェブをコーティングするステップと、基板ウェブと、ローリング複製ツールの外面に配置または形成された型との間のレジスト膜を押圧することでレジスト膜に圧力を印加することによって連続プロセスでレジスト膜をパターニングするステップであって、型はこれによってレジスト内に複数のナノ構造体を画定する、ステップと、型パターンナノ構造体を含むパターンレジスト膜を硬化させるステップであって、硬化は、パターンレジストを型から取り外す前に少なくとも部分的に行われる、ステップと、硬化ナノ構造体を有する基板ウェブを巻き戻すステップとを含む。方法は、減圧チャンバ内でステップを実行するために装置を封入するステップと、減圧チャンバ内の空気圧が0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間となるように、減圧チャンバ内の空気圧を低減するステップと、空気圧を低減する前記ステップの後に、減圧チャンバに封入された前記装置によってロールツーロールナノ構造体製造方法のステップを実行するステップとを含む。
【0019】
第2の方法態様によれば、方法は、前処理ユニットによって基板ウェブの任意選択的な前処理を実行する前、および/または基板ウェブをレジスト膜でコーティングする前に、巻き出された基板ウェブから保護ライナを巻き出すステップ、ならびに硬化ナノ構造体を有する基板ウェブを巻き戻す前に、基板ウェブ上の硬化ナノ構造体の上に保護ライナを供給するステップのうちの少なくとも1つをさらに含む。保護ライナを巻き出す前記ステップおよび/または保護ライナを供給する前記ステップを実行するための装置は、減圧チャンバ内に封入され、保護ライナを巻き出す前記ステップおよび/または保護ライナを供給する前記ステップは、空気圧を低減する前記ステップの後に減圧チャンバ内で実行される。
【0020】
第3の方法態様によれば、方法は、レジスト膜でコーティングされた基板ウェブの切り込み角度を調整するステップ、型と基板ウェブとの間で押圧されたときにレジストに印加される圧力を調整するステップ、レジストを硬化させるために使用される硬化温度を調整するステップ、レジストを硬化させるために使用される放射線強度を調整するステップ、ならびに少なくとも部分的に硬化したレジストを有する基板ウェブの離型角度を調整するステップのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0021】
第4の方法態様によれば、方法は、それぞれの貯蔵容器から混合されるレジストの物質の各々を取得するステップであって、前記貯蔵容器は減圧チャンバ内にあるか、または前記貯蔵容器は減圧チャンバの外部にあり、貯蔵容器内の内圧は、0atmから0.5atmの間、好ましくは0.1atmから0.5atmの間、より好ましくはロールツーロールインプリント装置の動作中の減圧チャンバ内の空気圧に等しい、ステップをさらに含む。
【0022】
第5の方法態様によれば、レジストは、前記少なくとも2つの成分物質を混合することによって調製された未硬化モノマーまたはプレポリマー混合物であるか、またはレジストは単成分物質である。
【0023】
別の態様によれば、ナノ構造体が提供され、ナノ構造体は、上記の方法態様のいずれかによる製造プロセスによって製造され、ナノ構造体は、光ナノ構造体、電子ナノ構造体、データ記憶ナノ構造体、微小電気機械ナノ構造体、マイクロまたはナノ流体工学ナノ構造体、および生物医学ナノ構造体のいずれかを含む。
【0024】
本発明は、減圧チャンバ内にロールツーロールインプリントプロセス実行装置全体を配置し、減圧または真空雰囲気中でインプリントプロセスを実行することを可能にするという着想に基づく。
【0025】
本発明は、基板ウェブを使用して高い生産速度で高品質のナノおよび/またはマイクロ構造体をインプリントすることを可能にするという利点を有する。
【0026】
以下では、添付の図面を参照して、好適な実施形態に関連して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】通常の周囲雰囲気におけるローリング複製ツールの動作を示す図である。
図2】減圧雰囲気または真空におけるローリング複製ツールの動作を示す図である。
図3】本発明によるロールツーロールインプリントプロセスの典型的な実装形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(1つまたは複数の)ナノ構造体という用語は、(1つまたは複数の)ナノおよび/またはマイクロパターンおよび構造体を指す。
【0029】
図1は、通常の周囲雰囲気におけるローリング複製ツール(15b)の動作を概略的に示す。1つ以上のナノ構造体を画定するための型は、インプリントプロセス中にその中心軸の周りで回転される、典型的には円筒として形成された、ローリング複製ツールの外面に配置または形成される。この簡略図は、ローリング複製ツール(15b)の外面上の複数の「歯」としての型を示す。中心対称軸の周りの円筒状のローリング複製ツール(15b)の転動方向は、湾曲矢印(25)によって示されている。基板ウェブ(150)は、レジスト(160)でコーティングされる。レジスト、特に少なくとも2つの成分物質から調製されたレジストは、例えば、少なくとも部分的に液体形態の、未硬化モノマーまたはプレポリマー混合物を含み得る。あるいは、レジストは、液状シリコーンゴムなどの当該技術分野で知られる任意の単成分レジストを含み得る。レジスト(160)を有する基板ウェブは、矢印26で示されるように、レジスト(160)がローリング複製ツール(15b)と基板ウェブ(150)との間で所定の圧力で押圧されるように、ローリング複製ツール(15b)を超えて搬送される。ローリング複製ツール(15b)の外面上にパターニングされた型は、このようにレジスト(160)に対して押圧され、これにより、型パターンによって画定された形状を取る。パターンレジスト(165’)は、インプリントされたナノ構造体を固定するために硬化される。硬化は、取り外し中にレジスト内に生成されたナノ構造体の変形を回避するために、パターンレジスト(165’)が型から取り外される前に、少なくとも部分的に行われる。
【0030】
約1atmの通常の周囲雰囲気中でインプリントプロセスが実行されるとき、気泡(10)は、基板のレジスト層をコーティングしている間および/またはその後にレジスト(160)内に、および/またはレジストとローリング複製ツール(15b)の外面に配置または形成された型との間に閉じ込められる可能性がある。このような閉じ込められた気泡(10)は、パターンレジスト(165’)内のナノ構造体の変形を引き起こす。これは、ロール式インプリントにおける主要な品質問題であり、バッチ式インプリントと比較して、より低コストでより高いインプリント速度を可能にする。
【0031】
図2は、減圧雰囲気中または真空中でローリング複製ツール(15b)を使用するインプリントプロセスの段階を概略的に示す。減圧雰囲気とは、通常の周囲雰囲気の圧力(1atm)よりも著しく低い空気圧、好ましくは0.5atm以下の空気圧を有する雰囲気を指す。インプリントプロセス自体は、図1と基本的に同じである。しかしながら、減圧雰囲気または真空では、レジスト中に閉じ込められた気泡(10)が除去され、ローリング複製ツール(15b)の表面における型とレジスト(160)との間に気泡が閉じ込められることはない。したがって、硬化されたレジスト(165)内に生じるナノ構造体には、本質的に、気泡によって生じる変形がない。したがって、低雰囲気圧中または真空中でインプリントプロセスを実行することで、インプリントプロセスを使用して製造される製品の品質が大幅に向上する。
【0032】
ほとんどの用途では、真空よりも減圧が好ましい。減圧雰囲気の方が実現しやすく、真空は、レジストに問題を引き起こす可能性がある。例えば、真空は、レジスト材料の成分の気化を引き起こす可能性があり、気泡によって引き起こされるものと同様の品質問題を引き起こすガス泡の新しい供給源を作り出す。減圧雰囲気中の好ましい空気圧は0.1atmから0.5atmの間であるが、いくつかのプロセスでは、最善の結果のために、さらに低い空気圧または真空が好ましいかまたは必要とされ得る。
【0033】
図3は、本発明の好適な実施形態の概略図を示す。
【0034】
略して基板(150)と呼ばれる基板ウェブ(150)は、巻き出しユニット(100)上のプロセスに持ち込まれる。基板(150)は、巻き出しユニット(100)を出る二重線で示されるように、保護ライナ(155)で覆われてもよい。保護ライナ(155)は、基板材料を処理に曝すために除去され、保護ライナ(155)はライナ巻き戻しユニット(101)によって巻き戻される。次いで、インプリントプロセスが基板(150)に適用される。
【0035】
基板(150)は、基板(150)がレジスト(160)でコーティングされる前にインプリントのために基板(150)を前処理するために、前処理ユニット(102)によって任意選択的に前処理されてもよい。例えば、前処理ユニット(102)は、基板(150)を処理するためのコロナユニットおよび/またはプラズマ処理ユニットを備えてもよい。後続のレジスト(160)による基板ウェブ(150)の濡れおよび/または基板ウェブ(150)とレジスト(160)との間の接着を改善するためのコロナ処理およびプラズマ処理が、当該技術分野で知られている。あるいは、前処理ユニット(102)は、必要でなければ、省略されるかまたは単純に使用されなくてもよい。
【0036】
現在の例では、混合およびコーティングユニット(103)は、1つ以上の外部貯蔵容器(104a、104b)からレジストを調製するための成分物質または単成分レジスト物質を受け取る。1つ以上の外部貯蔵容器は、好ましくは、動作中にインプリント装置と同じ圧力である。これにより、レジスト材料の制御可能なコーティングが保証され、レジスト内部の空気トラップが低減される。したがって、レジスト成分物質中または単成分レジスト物質中のガス泡の量、ひいてはレジスト中のガスの量を低減することができ、レジストを混合している間の気泡の形成もまた低減される。レジストが少なくとも2つの成分物質の混合物である場合、受け取った成分物質は、レジスト(160)を調製するために混合およびコーティングユニット(103)によって混合される。液状シリコーンゴムなどの単成分レジストは混合を必要としないが、混合およびコーティングユニットによって任意選択的に攪拌されてもよい。レジスト(160)の薄膜は、例えばナイフ、スパイラルバー、または当該技術分野で知られるような任意の他の適用可能な方法を用いて、基板上にコーティングされ得る。レジスト(160)コーティング基板(150)はその後、インプレッションローラ(15a、15c)のセットおよびローリング複製ツール(15b)を備えるインプレッションローラユニット(105)内に供給される。ナノ構造体を画定するための型は、型パターンに対して押圧されたレジスト材料に対する圧力を生成するために、基板ウェブ(150)とローリング複製ツール(15b)との間でレジストが押圧されるように、レジストに向かうローリング複製ツール(15b)の外面に取り付けられるかまたはパターニングされる。パターンは、典型的にはマイクロスケールおよび/またはナノスケールの特徴部であるが、本質的に平坦なパターンおよび/またはマイクロスケール特徴部よりも大きくてもよく、および/またはそのようなものを備えてもよい。したがって、型はレジストを所望のパターンに押し込み、こうしてレジストに望ましいトポロジの形状を取らせる。インプレッションローラユニット(105)のインプレッションローラ(15a、15c)は、切り込み角度と離型角度および/または圧力の両方が調整され得るように、好ましくは調整可能である。型およびローリング複製ツール(15b)からレジストを解放する前に、レジストはナノ構造体を固定するために、硬化ユニット(図示せず)によって少なくとも部分的に硬化される。硬化は、レジストに応じて、任意の適切な硬化方法で実施され得る。例えば、重合および/または架橋などの硬化プロセスをトリガする、熱硬化、紫外線硬化、赤外線硬化、または任意の他の適切な放射線硬化が適用され得る。ナノ構造体の硬化は成形段階(パターニング段階)中に開始されるが、ナノ構造体は、離型による変形なしに離型、言い換えると型からの取り外しを可能にする点まで硬化されれば十分であり、ナノ構造体は、離型後にさらに硬化されてもよい。
【0037】
熱硬化の場合、硬化温度は好ましくは調整可能である。最適な硬化温度は、例えば、使用されるレジストのタイプおよび/またはレジスト層の厚さおよび/またはナノ構造体の構造特性および/またはウェブ速度などの他の処理パラメータに依存する。例えば、シリコーンエラストマをレジストとして使用するとき、硬化温度は、使用されるシリコーンレジストに応じて、好ましくは135°Cから165°Cの間である。基板ウェブ(150)のナノ構造体(165)はその後、前方に搬送されながら冷却される。同様に、UV放射線などの他のタイプの放射線で硬化させる場合、放射線の強度は好ましくは調整可能である。硬化の期間は、例えば、硬化が行われるローリング複製ツールのセクタの幅を調整することによって、および/または基板の転動速度を調整することによって、調整され得る。
【0038】
基板(150)によって担持される硬化ナノ構造体は、巻き戻しユニット(107)上にナノ構造体を有するライナ保護基板(180)を巻き戻す前に、ライナ供給ユニット(106)から供給された保護ライナ(170)で保護され得る。複数のローラ(110)は、プロセス全体を通して基板ウェブ(150)の案内を容易にし、基板ウェブ(150)が円滑に進み、製造プロセスを通して適切かつ均一に張力がかけられることを保証する。
【0039】
インプリントプロセス中にレジスト内の気泡またはガス泡の発生を抑制するために、ロールツーロールインプリント装置は、巻き出しユニット(100)から巻き戻しユニット(107)まで減圧または真空チャンバ(120)に封入される。ライナ(155、170)が利用される場合、好ましくはライナ巻き出しユニット(101)およびライナ供給ユニット(106)もまた減圧チャンバ(120)に封入される。減圧または真空チャンバは、好ましくは空気を排出するための少なくとも1つのポンプに結合され、こうして空気圧を低下させる。既に上述されたように、減圧チャンバ内の圧力は、好ましくは0.1atmから0.5atmの間の範囲内である。真空も適用可能な選択肢であり得るが、レジスト中のいくつかの成分材料は真空中で気化する傾向があり、これによってレジスト自体の中でガス泡を生成する可能性があるため、すべてのタイプのレジストで実用可能ではない。制御された環境でロールツーロールインプリントプロセス全体を実行することにより、生成されたナノ構造体の品質を損なうことなく、インプリントプロセスを連続的に大量に実行することができる。
【0040】
技術が進歩するにつれて、本発明の基本的な概念が様々な方法で実現され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明およびその実施形態は、上記の例に限定されず、特許請求の範囲内で変化し得る。
図1
図2
図3
【国際調査報告】