IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クアンタム−エスアイ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-547110順次結合電荷蓄積部を備える集積回路および関連技術
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】順次結合電荷蓄積部を備える集積回路および関連技術
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20231101BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20231101BHJP
   G01N 21/64 20060101ALN20231101BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N25/70
G01N21/64 F
G01N21/64 B
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524401
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 US2021056013
(87)【国際公開番号】W WO2022087240
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/104,393
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター、エリック エイ.ジー.
(72)【発明者】
【氏名】リアリック、トッド
(72)【発明者】
【氏名】サーストン、トーマス レイモンド
【テーマコード(参考)】
2G043
4B029
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA05
2G043KA08
2G043KA09
2G043LA03
4B029AA07
4B029BB01
4B029BB15
4B029BB20
4B029FA12
4B029FA15
4M118AA05
4M118AA10
4M118AB01
4M118AB04
4M118BA14
4M118CA04
4M118DD04
4M118FA38
4M118GA08
4M118GA09
4M118GC20
4M118GD11
4M118GD15
4M118HA30
5C024CY47
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY31
5C024HX35
5C024JX41
(57)【要約】
本開示は、集積回路における電荷キャリアの収集と読み出しを改良する技術である。本開示のいくつかの態様は、複数の電荷蓄積領域を備えるピクセルを有する集積回路に関する。本開示のいくつかの態様は、少なくとも部分的に電荷キャリアの収集と読み出しとを実質的に同時に行うように構成された集積回路に関する。本開示のいくつかの態様は、各ピクセル内の電荷蓄積領域間で実質的に同時に電荷キャリアを転送するように構成された複数のピクセルを有する集積回路に関する。本開示のいくつかの態様は、3つ以上の順次結合された電荷蓄積領域を有する集積回路に関する。本開示のいくつかの態様は、電荷転送速度を向上可能な集積回路に関する。本開示のいくつかの態様は、本開示の他の技術により集積回路を製造し動作させる技術に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1期間中に、第1電荷キャリアを第1電荷蓄積領域から第2電荷蓄積領域に転送することと、
第2期間中に、
前記第1電荷蓄積領域で第2電荷キャリアを受け取ること、および
前記第2電荷蓄積領域から前記第1電荷キャリアを読み出すことと
を備える方法。
【請求項2】
前記第1および第2電荷キャリアは、光検出領域での入射光子の到着に反応して、前記光検出領域で生成され、
前記第1期間の前に、前記第1電荷キャリアは前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域で受け取られ、
前記第2期間中に、前記第2電荷キャリアは前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域で受け取られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2期間内の複数のサブ期間にわたり、前記第2電荷キャリアが前記第1電荷蓄積領域で受け取られ、
前記第2期間内の各サブ期間は、サンプルに前記入射光子を放出させる前記サンプルの各励起の後に起こる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2電荷キャリアは、前記光検出領域から、前記光検出領域を前記第1電荷蓄積領域に接続する第1電荷転送チャネルを介して、前記第1電荷蓄積領域で受け取られ、
前記第1電荷キャリアは、前記第1電荷蓄積領域から、前記第1電荷蓄積領域を前記第2電荷蓄積領域に接続する第2電荷転送チャネルを介して、前記第2電荷蓄積領域に転送される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2電荷キャリアは、前記光検出領域から、前記光検出領域を前記第1電荷蓄積領域に接続する第1電荷転送チャネルを介して、前記第1電荷蓄積領域で受け取られ、
前記第1電荷キャリアは、前記第1電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域に、
前記第1電荷蓄積領域を中間電荷蓄積領域に接続する第2電荷転送チャネルと、
前記中間電荷蓄積領域と、
前記中間電荷蓄積領域を前記第2電荷蓄積領域に接続する第3電荷転送チャネルと、を介して転送される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2期間の第1サブ期間中に、前記第1電荷キャリアが前記第2電荷蓄積領域から読み出し領域に読み出され、
前記第2期間の第2サブ期間中に、第3電荷キャリアが前記中間電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域を介して前記読み出し領域に読み出される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記読み出すことは、前記第2電荷蓄積領域から前記第1電荷キャリアをサンプリングのための読み出し領域に転送することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
集積回路であって、
入射光子の受け取りに反応して電荷キャリアを生成するように構成された光検出領域と、
電荷キャリアを受け取るために前記光検出領域に電気的に結合された第1電荷蓄積領域と、
電荷キャリアを受け取るために前記第1電荷蓄積領域に電気的に結合された第2電荷蓄積領域と、を備え、
前記集積回路は、前記第1電荷蓄積領域が前記光検出領域から電荷キャリアを受け取っている間に前記第2電荷蓄積領域から電荷キャリアを読み出すように構成されている、集積回路。
【請求項9】
前記集積回路は、前記第1電荷蓄積領域が前記光検出領域から電荷キャリアを受け取り前記第2電荷蓄積領域が電荷キャリアを読み出している間に前記第1および第2電荷蓄積領域間に電位バリアを誘起するように構成されている、請求項8に記載の集積回路。
【請求項10】
前記第1および第2電荷蓄積領域間に少なくとも部分的に位置する第1転送ゲートであって、前記第1電荷蓄積領域が前記光検出領域から電荷キャリアを受け取り前記第2電荷蓄積領域が電荷キャリアを読み出している間に前記第1および第2電荷蓄積領域間の前記電位バリアを制御するための第1制御信号を受け取るように構成された前記第1転送ゲートをさらに備える請求項9に記載の集積回路。
【請求項11】
前記第1電荷蓄積領域を前記第2電荷蓄積領域に接続する第1電荷転送チャネルであって、前記第1および第2電荷蓄積領域間の前記電位バリアを制御するために前記第1転送ゲートによってバイアスされるように構成された前記第1電荷転送チャネルをさらに備える請求項10に記載の集積回路。
【請求項12】
前記光検出領域から電荷キャリアを受け取るために前記光検出領域に電気的に結合されたドレイン領域と、
前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域との間に少なくとも部分的に位置する第2転送ゲートであって、前記ドレイン領域が前記光検出領域から電荷キャリアを受け取っている間に前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域との間の電位バリアを制御するための第2制御信号を受け取るように構成された前記第2転送ゲートと、
前記光検出領域を前記第1電荷蓄積領域に接続する第2電荷転送チャネルであって、前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域との間の前記電位バリアを制御するために前記第2転送ゲートによってバイアスされるように構成された前記第2電荷転送チャネルと
をさらに備える請求項11に記載の集積回路。
【請求項13】
前記第1および第2電荷蓄積領域間に電気的に結合された中間電荷蓄積領域と、
前記第1電荷蓄積領域と前記中間電荷蓄積領域との間に少なくとも部分的に位置する第1転送ゲートであって、前記第1電荷蓄積領域が前記光検出領域から電荷キャリアを受け取り前記中間電荷蓄積領域および前記第2電荷蓄積領域が電荷キャリアを読み出している間に前記第1電荷蓄積領域と前記中間電荷蓄積領域との間の電位バリアを制御するための第1制御信号を受け取るように構成された前記第1転送ゲートと、
前記第1電荷蓄積領域を前記中間電荷蓄積領域に接続する第1電荷転送チャネルであって、前記第1電荷蓄積領域と前記中間電荷蓄積領域との間の前記電位バリアを制御するために前記第1転送ゲートによってバイアスされるように構成された前記第1電荷転送チャネルと、
前記中間電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域との間に少なくとも部分的に位置する第2転送ゲートであって、前記中間電荷蓄積領域が前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域を介して電荷キャリアを受け取り前記第2電荷蓄積領域が電荷キャリアを読み出している間に前記中間電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域との間の電位バリアを制御するための第2制御信号を受け取るように構成された前記第2転送ゲートと、
前記中間電荷蓄積領域を前記第2電荷蓄積領域に接続する第2電荷転送チャネルであって、前記中間電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域との間の前記電位バリアを制御するために前記第2転送ゲートによってバイアスされるように構成された前記第2電荷転送チャネルと
をさらに備える請求項10に記載の集積回路。
【請求項14】
前記第2電荷蓄積領域に電気的に結合された読み出し領域をさらに備え、
前記集積回路は、前記第2電荷蓄積領域から第1電荷キャリアをサンプリングのための前記読み出し領域に転送することによって、前記第2電荷蓄積領域から前記第1電荷キャリアを読み出すように構成されている、請求項8に記載の集積回路。
【請求項15】
第1電荷蓄積領域と、前記第1電荷蓄積領域に電気的に結合された第2電荷蓄積領域とを含む集積回路と、
前記集積回路に電気的に結合された制御回路であって、
第1期間中に、第1電荷キャリアを前記第1電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域に転送するように前記集積回路を制御し、
第2期間中に、
前記第1電荷蓄積領域で第2電荷キャリアを受け取り、かつ
前記第2電荷蓄積領域から前記第1電荷キャリアを読み出すように前記集積回路を制御する
ように構成された前記制御回路と
を備えるシステム。
【請求項16】
前記集積回路は、入射光子の受け取りに反応して、前記第1および第2電荷キャリアを生成するように構成された光検出領域をさらに備え、
前記制御回路は、前記集積回路を制御することにより、
前記第1期間の前に、前記第1電荷キャリアを前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域に転送し、
前記第2期間中に、前記第2電荷キャリアを前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域に転送するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記制御回路は、前記第2期間内の複数のサブ期間の過程にわたって、前記集積回路を制御することにより前記第2電荷キャリアを前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域に転送するように構成されており、前記第2期間内の各サブ期間は、サンプルに前記入射光子を放出させる前記サンプルの各励起の後に起こる、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記集積回路は、
前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域への電荷キャリアの転送を制御するように構成された第1転送ゲートと、
前記第1電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域への電荷キャリアの転送を制御するように構成された第2転送ゲートと、をさらに備えており、
前記制御回路は、
前記第1転送ゲートに第1信号を印加することにより電荷キャリアを前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域に転送し、
前記第2転送ゲートに第2信号を印加することにより電荷キャリアを前記第1電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域に転送するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記集積回路は、
中間電荷蓄積領域と、
前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域への電荷キャリアの転送を制御するように構成された第1転送ゲートと、
前記第1電荷蓄積領域から前記中間電荷蓄積領域への電荷キャリアの転送を制御するように構成された第2転送ゲートと、
前記中間電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域への電荷キャリアの転送を制御するように構成された第3転送ゲートと、をさらに備えており、
前記制御回路は、
前記第1転送ゲートに第1信号を印加することにより電荷キャリアを前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域に転送し、
前記第2転送ゲートに第2信号を印加することにより電荷キャリアを前記第1電荷蓄積領域から前記中間電荷蓄積領域に転送し、
前記第3転送ゲートに第3信号を印加することにより電荷キャリアを前記中間電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域に転送するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記集積回路は、読み出し領域をさらに備えており、
前記制御回路は、前記第2期間中に、前記第2電荷蓄積領域からサンプリングのための前記読み出し領域への前記第1電荷キャリアの読み出しを制御するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
光検出領域と、
第1電荷蓄積領域と、
第2電荷蓄積領域と、を備え、
前記光検出領域ならびに前記第1および第2電荷蓄積領域は、前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域への方向であるとともに前記第1電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域への方向である第1方向に真性電界を誘起するように構成されている、集積回路。
【請求項22】
前記光検出領域は第1真性電位レベルを有し、
前記第1電荷蓄積領域は、前記第1真性電位レベルとは異なる第2真性電位レベルを有する、請求項21に記載の集積回路。
【請求項23】
前記光検出領域は第1ピニング電圧を有し、
前記第1電荷蓄積領域は、前記第1ピニング電圧とは異なる第2ピニング電圧を有する、請求項22に記載の集積回路。
【請求項24】
前記第2電荷蓄積領域は、前記第1および第2ピニング電圧とは異なる第3ピニング電圧を有する、請求項23に記載の集積回路。
【請求項25】
前記光検出領域は第1導電型の第1ドーパント濃度を有し、
前記第1電荷蓄積領域は、前記第1ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第2ドーパント濃度を有し、および
前記第2電荷蓄積領域は、前記第2ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第3ドーパント濃度を有する、請求項24に記載の集積回路。
【請求項26】
前記第2電荷蓄積領域は、
前記第3ドーパント濃度を有する第1ドープサブ領域と、
前記第3ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第4ドーパント濃度を有する第2ドープサブ領域と、を含み、
前記第1電荷蓄積領域は、前記第1方向において前記第2ドープサブ領域よりも前記第1ドープサブ領域の近くに位置決めされている、請求項25に記載の集積回路。
【請求項27】
前記第2電荷蓄積領域から前記第1方向に離間するとともに前記第3ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第5ドーパント濃度を有する読み出し領域をさらに備える請求項26に記載の集積回路。
【請求項28】
集積回路であって、
光源からの入射光に反応して前記集積回路内で生成された電荷キャリアを受け取るように構成された第1電荷蓄積領域と、
前記第1電荷蓄積領域に電気的に結合されており、前記第1電荷蓄積領域を介して電荷キャリアを受け取るように構成された第2電荷蓄積領域と、を備え、
前記第2電荷蓄積領域は、前記第1電荷蓄積領域から離れる第1方向に第1真性電界を誘起するようにさらに構成されている、集積回路。
【請求項29】
前記第2電荷蓄積領域は、
第1真性電位レベルを有する第1ドープサブ領域と、
前記第1ドープサブ領域から前記第1方向に離間するとともに前記第1真性電位レベルとは異なる第2真性電位レベルを有する第2ドープサブ領域と、
を含む、請求項28に記載の集積回路。
【請求項30】
前記第1ドープサブ領域は第1ピニング電圧を有し、前記第2ドープサブ領域は、前記第1ピニング電圧とは異なる第2ピニング電圧を有する、請求項29に記載の集積回路。
【請求項31】
前記第1ドープサブ領域は第1導電型の第1ドーパント濃度を有し、前記第2ドープサブ領域は、前記第1ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第2ドーパント濃度を有する、請求項30の集積回路。
【請求項32】
前記第2電荷蓄積領域から前記第1方向に離間するとともに前記第1ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第3ドーパント濃度を有する読み出し領域をさらに備える請求項31に記載の集積回路。
【請求項33】
光検出領域をさらに備えており、前記第1電荷蓄積領域は、前記光検出領域から前記第1方向に離間するとともに、光源からの入射光に反応して前記光検出領域で生成された電荷キャリアを受け取るように構成されている、請求項32に記載の集積回路。
【請求項34】
前記光検出領域は、前記第1ドーパント濃度よりも低い前記第1導電型の第4ドーパント濃度を有する、請求項33に記載の集積回路。
【請求項35】
集積回路を製造する方法であって、
前記集積回路に光検出領域と第1電荷蓄積領域と第2電荷蓄積領域とを形成することであって、前記第1電荷蓄積領域が前記光検出領域から第1方向に離間し、前記第2電荷蓄積領域が前記第1電荷蓄積領域から前記第1方向に離間した状態で前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域とを形成することを備え、
前記光検出領域、前記第1電荷蓄積領域、および前記第2電荷蓄積領域は、前記第1方向に真性電界を誘起するように構成されている、方法。
【請求項36】
前記光検出領域を形成することは、第1導電型の第1ドーパント濃度で前記光検出領域をドープすることを含み、
前記第1電荷蓄積領域を形成することは、前記第1ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第2ドーパント濃度で前記第1電荷蓄積領域をドープすることを含み、
前記第2電荷蓄積領域を形成することは、前記第2ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第3ドーパント濃度で前記第2電荷蓄積領域をドープすることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域とを形成することは、
前記光検出領域、前記第1電荷蓄積領域、および前記第2電荷蓄積領域を前記第1導電型の第1ドーパントでドープすることと、
前記第1電荷蓄積領域および前記第2電荷蓄積領域を前記第1導電型の第2ドーパントでドープすることと、
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第2電荷蓄積領域をドープすることは、
前記第2電荷蓄積領域の第1ドープサブ領域を前記第3ドーパント濃度でドープすることと、
前記第3ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第4ドーパント濃度で第2ドープサブ領域をドープすることと、を含み、
前記第1電荷蓄積領域は、前記第1方向において前記第2ドープサブ領域よりも前記第1ドープサブ領域の近くに位置決めされている、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域とを形成することは、
前記光検出領域、前記第1電荷蓄積領域、および前記第2電荷蓄積領域を前記第1導電型の第1ドーパントでドープすることと、
前記第1電荷蓄積領域ならびに前記第2電荷蓄積領域の前記第1および第2ドープサブ領域を前記第1導電型の第2ドーパントでドープすることと、
前記第2電荷蓄積領域の前記第2ドープサブ領域を前記第1導電型の第3ドーパントでドープすることと、
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第2電荷蓄積領域から前記第1方向に離間した読み出し領域を形成することであって、前記第3ドーパント濃度よりも高い前記第1導電型の第5ドーパント濃度で前記読み出し領域をドープすることによって前記読み出し領域を形成することをさらに備える請求項38に記載の方法。
【請求項41】
集積回路を製造する方法であって、
光検出領域と、前記光検出領域から電荷キャリアを受け取るために前記光検出領域に電気的に結合された第1電荷蓄積領域と、前記第1電荷蓄積領域が前記光検出領域から電荷キャリアを受け取っている間に電荷キャリアを読み出すために前記第1電荷蓄積領域に電気的に結合された第2電荷蓄積領域とを形成すること
を備える方法。
【請求項42】
前記第1および第2電荷蓄積領域を形成することは、前記第1および第2電荷蓄積領域間に電位バリアを誘起することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
第1転送ゲートを前記第1および第2電荷蓄積領域間に少なくとも部分的に位置決めすることであって、前記第1および第2電荷蓄積領域間の前記電位バリアを制御するための第1制御信号を受け取る前記第1転送ゲートを位置決めすることをさらに備える請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1および第2電荷蓄積領域間の前記電位バリアを制御するために前記第1転送ゲートによってバイアスされるように、前記第1電荷蓄積領域を前記第2電荷蓄積領域に接続する第1電荷転送チャネルを形成することをさらに備える請求項43に記載の方法。
【請求項45】
電荷キャリアを前記光検出領域から受け取るために前記光検出領域に電気的に結合されるドレイン領域を形成することと、
第2転送ゲートを前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域との間に少なくとも部分的に位置決めすることであって、前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域との間の電位バリアを制御するための第2制御信号を受け取る前記第2転送ゲートを位置決めすることと、
前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域との間の前記電位バリアを制御するために前記第2転送ゲートによってバイアスされるように、前記光検出領域を前記第1電荷蓄積領域に接続する第2電荷転送チャネルを形成することと、
をさらに備える請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1および第2電荷蓄積領域間に電気的に結合される中間電荷蓄積領域を形成することと、
第1転送ゲートを前記第1電荷蓄積領域と前記中間電荷蓄積領域との間に少なくとも部分的に位置決めすることであって、前記第1電荷蓄積領域と前記中間電荷蓄積領域との間の電位バリアを制御するための第1制御信号を受け取る前記第1転送ゲートを位置決めすることと、
前記第1電荷蓄積領域と前記中間電荷蓄積領域との間の前記電位バリアを制御するために前記第1転送ゲートによってバイアスされるように、前記第1電荷蓄積領域を前記中間電荷蓄積領域に接続する第1電荷転送チャネルを形成することと、
第2転送ゲートを前記中間電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域との間に少なくとも部分的に位置決めすることであって、前記中間電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域との間の電位バリアを制御するための第2制御信号を受け取る前記第2転送ゲートを位置決めすることと、
前記中間電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域との間の前記電位バリアを制御するために前記第2転送ゲートによってバイアスされるように、前記中間電荷蓄積領域を前記第2電荷蓄積領域に接続する第2電荷転送チャネルを形成することと、
をさらに備える請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記電荷キャリアを前記第2電荷蓄積領域から読み出すために前記第2電荷蓄積領域に電気的に結合される読み出し領域を形成すること
をさらに備える請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サンプル分析のために何万ものサンプルウェルに対してより同時に短光パルスを提供するとともにサンプルウェルからの蛍光信号を受け取ることによって、サンプルの超並列分析を行うことを可能にした集積デバイスおよび関連する機器に関する。機器はポイント・オブ・ケア遺伝子シークエンシングおよび個人化医療に有用とすることができる。
【背景技術】
【0002】
光検出器は多様な用途で光を検出するために使用されている。入射光の強度を示す電気信号を生成する集積光検出器が開発されている。撮像用途のための集積光検出器は、シーン全体から受け取る光の強度を検出するためのピクセルのアレイを含む。集積光検出器の例には、電荷結合素子(CCD)および相補型金属酸化物半導体(CMOS)が含まれる。
【0003】
生体サンプルまたは化学的サンプルの超並列分析が可能である機器は、通常、研究室の環境に限定されている。これは、それらが大型で持ち運びができないこと、機器を操作するために熟練した技術者を必要とすること、動力の必要性、管理された動作環境の必要性、およびコストを含み得るいくつかの要因のためである。サンプルがそのような設備を使用して分析される場合、一般的なパラダイムは、臨床または現場においてサンプルを抽出し、サンプルを研究室に送り、分析結果を待つことである。結果の待ち時間は、数時間から数日に及ぶ可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示のいくつかの態様は方法に関し、方法は、第1期間中に、第1電荷キャリアを第1電荷蓄積領域から第2電荷蓄積領域に転送することと、第2期間中に、前記第1電荷蓄積領域で第2電荷キャリアを受け取り前記第2電荷蓄積領域から前記第1電荷キャリアを読み出すこととを備える。
【0005】
本開示のいくつかの態様は集積回路に関し、集積回路は、入射光子の受け取りに反応して電荷キャリアを生成するように構成された光検出領域と、電荷キャリアを受け取るために前記光検出領域に電気的に結合された第1電荷蓄積領域と、電荷キャリアを受け取るために前記第1電荷蓄積領域に電気的に結合された第2電荷蓄積領域とを備え、前記集積回路は、前記第1電荷蓄積領域が前記光検出領域から電荷キャリアを受け取っている間に前記第2電荷蓄積領域から電荷キャリアを読み出すように構成されている。
【0006】
本開示のいくつかの態様はシステムに関し、システムは、第1電荷蓄積領域と、前記第1電荷蓄積領域に電気的に結合された第2電荷蓄積領域とを含む集積回路と、前記集積回路に電気的に結合された制御回路とを備え、前記制御回路は、前記集積回路を制御することにより、第1期間中に、前記第1電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域に第1電荷キャリアを転送し、第2期間中に、前記第1電荷蓄積領域で第2電荷キャリアを受け取り前記第2電荷蓄積領域から前記第1電荷キャリアを読み出すように構成されている。
【0007】
本開示のいくつかの態様は集積回路に関し、集積回路は、光検出領域と、第1電荷蓄積領域と、第2電荷蓄積領域とを備え、前記光検出領域ならびに前記第1および第2電荷蓄積領域は、前記光検出領域から前記第1電荷蓄積領域への方向であるとともに前記第1電荷蓄積領域から前記第2電荷蓄積領域への方向である第1方向に真性電界を誘起するように構成されている。
【0008】
本開示のいくつかの態様は集積回路に関し、集積回路は、光源からの入射光に反応して集積回路で生成された電荷キャリアを受け取るように構成された第1電荷蓄積領域と、前記第1電荷蓄積領域に電気的に結合された第2電荷蓄積領域とを備え、前記第2電荷蓄積領域は、前記第1電荷蓄積領域を介して電荷キャリアを受け取るように構成されている。前記第2電荷蓄積領域は、前記第1電荷蓄積領域から離れる第1方向に第1真性電界を誘起するようにさらに構成されている。
【0009】
本開示のいくつかの態様は集積回路を製造する方法に関し、方法は、集積回路に光検出領域と第1電荷蓄積領域と第2電荷蓄積領域とを形成することであって、前記第1電荷蓄積領域が第1方向に前記光検出領域から離間するとともに前記第2電荷蓄積領域が前記第1方向に前記第1電荷蓄積領域から離間した状態で前記光検出領域と前記第1電荷蓄積領域と前記第2電荷蓄積領域とを形成することを備える。前記光検出領域、前記第1電荷蓄積領域、および前記第2電荷蓄積領域は前記第1方向に真性電界を誘起するように形成される。
【0010】
以上の概要は限定することを意図していない。また、様々な実施形態に従い、本開示の態様は単独でも、または他の態様と組み合わせても実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】いくつかの実施形態による、ピクセルの行を示す例示的な集積デバイスの断面概略図である。
図1-2】いくつかの実施形態による、図1-1の集積デバイスの例示的なピクセルの断面図である。
図1-3A】いくつかの実施形態による、図1-2のピクセルの回路図である。
図1-3B】いくつかの実施形態による、図1-1の集積デバイスに含むことのできる、図1-2のピクセルの例示的アレイおよび処理回路のブロック図である。
図1-3C】いくつかの実施形態による、図1-1の集積デバイスに含むことのできる、図1-2のピクセルの代替の例示的アレイおよび複数の処理回路のブロック図である。
図1-4】いくつかの実施形態による、図1-1の集積デバイスに含むことのできる代替の例示的ピクセルの上面図である。
図1-5】いくつかの実施形態による、図1-4のピクセルの上部概要図である。
図1-6】いくつかの実施形態による、図1-5に明示される断面に沿った図1-4のピクセルの図である。
図1-7】いくつかの実施形態による、図1-6に図示されるピクセルの一部分の電位のグラフである。
図1-8】いくつかの実施形態による、図1-2のピクセルの例示的な動作の期間中の電荷転送を示す図である。
図1-9】いくつかの実施形態による、図1-2の複数のピクセルの例示的な動作中に受け取られる制御信号のタイムグラフである。
図2-1】いくつかの実施形態による、図1-1の集積デバイスに含むことのできる代替の例示的ピクセルの断面図である。
図2-2】いくつかの実施形態による、図2-1のピクセルの回路図である。
図2-3】いくつかの実施形態による、図1-1の集積デバイスに含むことのできるさらなる代替の例示的ピクセルの上面図である。
図2-4】いくつかの実施形態による、ピクセルのコンタクトおよびルーティングチャネルを示す図2-3のピクセルの代替上面図である。
図2-5】いくつかの実施形態による、断面に沿った図2-3のピクセルの図である。
図2-6】いくつかの実施形態による、図2-5に図示されるピクセルの一部分に関する真性電位対位置のグラフである。
図2-7】いくつかの実施形態による、図2-1のピクセルの例示的な動作の期間中の電荷転送を示す図である。
図2-8a】いくつかの実施形態による、図2-1の複数のピクセルの例示的な動作中に受け取られる制御信号のタイムグラフである。
図2-8b】いくつかの実施形態による、図2-8aのタイムグラフの一部の拡大図である。
図2-9】いくつかの実施形態による、図2-1のピクセルの代替の例示的な動作スキームの期間中の例示的な電荷転送を示す図である。
図3-1】いくつかの実施形態による、ピクセルの行を示す代替の例示的な集積デバイスの断面概略図である。
図3-2】いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスの例示的なピクセルの断面図である。
図3-3A】いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできる代替の例示的ピクセルの断面図である。
図3-3B】いくつかの実施形態による、図3-3Aのピクセルの一部分の上面図である。
図3-4】いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできる代替読み出し構成を有する例示的なピクセルの上面図である。
図3-5A】いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできるさらなる代替読み出し構成を有する例示的なピクセルの上面図である。
図3-5B】いくつかの実施形態による、図3-5Aのピクセルの一部分の断面図である。
図3-6】いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできるさらなる代替の例示的ピクセルの上面図である。
図3-7】いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできる帯電および/またはバイアス領域の代替構成を有する例示的ピクセルの上面図である。
図3-8】いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできる代替の電荷蓄積領域ドーピング構成を有する例示的なピクセルの上面図である。
図4-1A】いくつかの実施形態による、集積デバイスおよび機器のブロック図である。
図4-1B】いくつかの実施形態による、集積デバイスを含む装置の概略図である。
図4-1C】いくつかの実施形態による、小型モードロックレーザモジュールを含む分析機器のブロック図の図解である。
図4-1D】いくつかの実施形態による、分析機器に組み込まれている小型モードロックレーザモジュールを図示する。
図4-2】いくつかの実施形態による、光パルスのトレインを図示する。
図4-3】いくつかの実施形態による、1つまたは複数の導波路を介してパルスレーザによって光学的に励起させることができる平行な反応チャンバの実施例を図示する。
図4-4】いくつかの実施形態による、導波路からの反応チャンバの光励起を示す。
図4-5】いくつかの実施形態による、集積された反応チャンバ、光導波路および時間ビニング光検出器のさらなる詳細を図示する。
図4-6】いくつかの実施形態による、反応チャンバ内で生じることのできる生体反応の例を図示する。
図4-7】いくつかの実施形態による、異なる減衰特徴を有する2つの異なるフルオロフォアの放出確率曲線を図示する。
図4-8】いくつかの実施形態による、蛍光放出の時間ビニング検出を図示する。
図4-9】いくつかの実施形態による、時間ビニング光検出器を図示する。
図4-10A】いくつかの実施形態による、パルス励起およびサンプルからの蛍光放出の時間ビニングでの検出を図示する。
図4-10B】いくつかの実施形態による、サンプルを繰り返しパルス励起した後の、様々な時間ビンにおける蓄積した蛍光光子カウントのヒストグラムを図示する。
図4-11A】いくつかの実施形態による、Tヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に対応するヒストグラムを図示する。
図4-11B】いくつかの実施形態による、Aヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に対応するヒストグラムを図示する。
図4-11C】いくつかの実施形態による、Cヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に対応するヒストグラムを図示する。
図4-11D】いくつかの実施形態による、Gヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に対応するヒストグラムを図示する。
図4-12】いくつかの実施形態による、エドマン分解によるラベリングされたポリペプチドをシークエンシングする方法を示すフロー図である。
図4-13】いくつかの実施形態による、個別的な結合事象が信号出力の信号パルスを生じさせるシークエンシングの方法を示すフロー図、および信号出力を示すグラフを含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の様々な態様および実施形態を、図面を参照して記載する。図面は必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。複数の図面において見られるアイテムは、これらが見られるすべての図面において同じ参照符号によって示されている。
【0013】
本発明の特徴および利点は、図面とともに、以下に記載される詳細な説明からより明かになり得る。図面を参照して実施形態を説明するとき、方向の言及(「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」等)を使用することがある。このような参照は、通常の向きで図面を見る読者の助けとなることのみが意図される。これらの方向の言及は具現化されるデバイスの特徴部の好適な向きまたは唯一の向きを記述することが意図されているわけではない。デバイスは他の向きを使用しても具現化することができる。
【0014】
[I.序論]
本開示の態様は、単一の分子の同定、タンパク質シークエンシングおよび核酸シークエンシングを含む、サンプルを並列に分析可能な集積デバイス、機器および関連するシステムに関する。そのような機器は、コンパクトであり、持ち運びが容易であり、操作が容易であるものとすることができ、医師または他の提供者が機器を容易に使用すること、および、機器をケアが必要になり得る所望の場所まで輸送することを可能にする。サンプルの分析は、1つまたは複数の蛍光マーカでサンプルをラベリングすることを含むことができ、これはサンプルを検出し、かつサンプルの単一の分子を同定する(例えば、核酸シークエンシングの一部として個々のヌクレオチドの同定)ため、またはこのような検出もしくは同定のために使用することができる。蛍光マーカは、励起光(例えば、蛍光マーカを励起して励起状態にすることができる特徴的な波長を有する光)で蛍光マーカを照らすことに反応して、励起されることができ、蛍光マーカが励起されると、発光(例えば、励起状態から基底状態に戻ることにより蛍光マーカによって放出される特徴的な波長を有する光)を放出することができる。発光の検出は、蛍光マーカの同定、したがって、蛍光マーカによってラベリングされるサンプルまたはサンプルの分子の同定を可能にすることができる。いくつかの実施形態によると、機器は、超並列サンプル分析が可能であるものとすることができ、何万ものサンプルを、すなわちより同時的に取り扱うように構成することができる。
【0015】
本発明者らは、集積デバイスであって、サンプルを受け取るように構成されているサンプルウェル、および、集積デバイス上に形成される集積光学系を有する集積デバイス、ならびに、集積デバイスとインターフェースするように構成されている機器を使用して、この数のサンプルの分析を達成することができることを認識し、理解している。機器は、1つまたは複数の励起光源を含むことができ、集積デバイスは、集積デバイス上に形成される集積光学構成要素(例えば、導波路、光カプラ、光学スプリッタ)を使用して励起光がサンプルウェルに送達されるように、機器とインターフェースすることができる。光学構成要素は、集積デバイスのサンプルウェル間の照射の均一性を改善することができ、そうでなければ必要となり得る多数の外部の光学構成要素を減らすことができる。さらに、本発明者らは、集積デバイス上に光検出領域(例えば、フォトダイオード)を集積させることによって、サンプルウェルからの蛍光放出の検出効率を高め、他の場合は必要となり得る集光構成要素の数を減らすことができることを認識および理解している。
【0016】
いくつかの実施形態において、集積デバイスは蛍光放出光子を受け取り、1つまたは複数の電荷蓄積領域に電荷キャリアを伝送することができる。例えば、光検出領域は光軸に沿って蛍光放出を受け取るように集積デバイス上に位置決めすることができ、光検出領域は電気軸に沿って1つまたは複数の電荷蓄積領域(例えば、蓄積ダイオード)に結合することもできるので、電荷蓄積領域は蛍光放出に基づいて光検出領域で生成される電荷キャリアを収集することができる。いくつかの実施形態において、収集期間中、電荷蓄積領域は光検出領域から電荷キャリアを受け取ることができ、別の読み出し期間中に、電荷蓄積領域は蓄積された電荷キャリアを処理のために読み出し回路に提供することができる。いくつかの実施形態において、ドレイン期間中、集積デバイスのドレイン領域は、光検出領域からノイズ電荷キャリア(例えば、入射励起光子に反応して生成される励起電荷キャリア)を廃棄のために受け取ることができる。
【0017】
サンプルを励起して、所定の期間にわたってサンプルからできるだけ多くの蛍光電荷キャリアを収集することが望ましいかもしれないが、ピクセルが電荷キャリアを収集するよう構成される速度は、ピクセル内の電荷転送速度、ピクセルの電荷蓄積構成、電荷キャリアがピクセルから読み出されるプロセスなどの要因によって制限され得る。例えば、光検出領域と読み出し領域との間に電気的に結合されている単一の電荷蓄積領域を有するピクセルは、電荷キャリアを電荷蓄積領域で再び収集するためには、電荷キャリアを電荷蓄積領域から読み出すまたはその他の形で取り除く必要がある。ピクセルよりも少ない読み出し処理回路を有する集積デバイス(例えば、列ごとに、またはアレイ全体に対して、1つの読み出し回路)では、読み出し処理回路は集積デバイスの1つまたは複数のピクセルに選択的に結合(例えば、多重接続)され得るもので、選択されたピクセルの所定の読み出し期間中に選択されたピクセルから電荷キャリアを読み出す。電荷キャリアは一度に集積デバイスのピクセルの1つの部分集合からしか読み出せないため、ピクセルのすべてから電荷キャリアを読み出すには多数の読み出し期間がかかるであろう。また、ピクセルのアレイ全体は、電荷キャリアが各ピクセルから読み出されるまで、光検出領域から電荷キャリアを収集することはできないであろう。
【0018】
また、ピクセルの電荷転送速度は、ピクセルが電荷キャリアの収集と読み出しとの間をどれくらい迅速に移行することができるかを制限する可能性がある。例えば、ピクセルは、ピクセルで電界を誘起する制御信号を受け取って、収集または読み出し期間中にピクセル内に電荷キャリアを輸送するように構成することができる。収集または読み出し期間は、読み出し処理回路部が処理するのに十分大きい信号を受け取るために、多数の電荷キャリアを収集または読み出すのに十分長い必要があるだろう。しかし、ピクセルの電荷転送速度は、ピクセルに印加できる電界によって制限される可能性があり、ピクセルに印加することのできる電界に実際的な制限がある。そのため、ピクセルの電荷転送速度は、ピクセルの収集および読み出し期間がどれくらい短くなるかを制限する可能性があり、それによって所定の期間内にどれくらいの頻度で集積デバイスが電荷キャリアを収集および読み出しすることができるかを制限する。
【0019】
加えて、読み出し期間の持続時間は、少なくとも部分的に、電荷キャリアがピクセルから読み出されるプロセスに基づいて制限される可能性がある。例えば、集積デバイスの読み出し処理回路部は、電荷キャリアを読み出し領域へと転送して、処理のために電荷キャリアを読み出す前に、各ピクセルの読み出し領域の電圧をリセットするように構成することができる。この例では、集積デバイスは相関二重サンプリング(CDS)を行うように構成することができ、リセット後と電荷キャリアが読み出された後に再び、読み出し領域の電圧がサンプリングされて、サンプリングされた電圧間の差を用いて、読み出し領域内の電荷キャリアの数を示す電荷レベルを決定することができるようにする。このように、読み出し期間の持続時間は、読み出し領域の電圧をリセットするのに必要な時間によって制限される可能性があり、多くのピクセルが順次読み出されてサンプリングされるときには、長い時間期間になる可能性がある。また、読み出し期間の合間に読み出し領域をリセットすることは、例えば、読み出し領域を各リセット時にわずかに異なる電圧レベルにリセットすることによって、読み出し領域にノイズを導入する可能性もある。
【0020】
上記の問題を解決するために、発明者らは、ピクセルまたはピクセルのアレイにおける電荷キャリアの収集および読み出しを改良する集積デバイスおよび関連技術を開発した。本開示のいくつかの態様は、複数の電荷蓄積領域を備えるピクセルを有する集積回路に関する。いくつかの実施形態において、集積回路は、第1電荷蓄積領域と、第1電荷蓄積領域に電気的に結合されて、第1電荷蓄積領域を介して電荷キャリアを受け取るように構成される第2電荷蓄積領域と、第2電荷蓄積領域に電気的に結合されて、第2電荷蓄積領域を介して電荷キャリアを受け取るように構成される読み出し領域とを有することができる。第1電荷蓄積領域および読み出し領域に電気的に結合されている第2電荷蓄積領域を含むことによって、集積回路は、第1電荷蓄積領域で電荷キャリアを受け取り、電荷キャリアを第2電荷蓄積領域に転送し、第2電荷蓄積領域内の電荷キャリアが読み出し領域に読み出される時に関係なく、第1電荷蓄積領域でもう一度電荷キャリアを受け取ることを可能にすることができる。したがって、このような集積回路は、ピクセルごとに1つの電荷蓄積領域しか有していない集積回路よりも頻繁に電荷キャリアを収集するように構成することができる。いくつかの実施形態において、第1と第2の電荷蓄積領域、および第2電荷蓄積領域と読み出し領域とは、本明細書で説明される転送ゲートによって制御される各転送チャネルによって電気的に結合することができる。
【0021】
本開示のいくつかの態様は、実質的に同時に電荷キャリアの収集と読み出しとを少なくとも部分的に行うように構成される集積回路に関する。いくつかの実施形態において、集積回路は、第1電荷蓄積領域と、第1電荷蓄積領域に電気的に結合されて、第1電荷蓄積領域を介して第1電荷キャリアを受け取るように構成される第2電荷蓄積領域とを含むことができ、集積回路は、同じ期間中に、第1電荷蓄積領域で第2電荷キャリアを受け取るとともに、第2電荷蓄積領域から第1電荷キャリアを読み出すように構成される。例えば、集積回路は、第1期間中に、第1電荷蓄積領域で第1電荷キャリアを受け取り、第2期間中に、第1電荷蓄積領域で第2電荷キャリアを受け取るとともに、第2電荷蓄積領域から第1電荷キャリアの読み出しも行うように構成される。この実施例では、同じ期間(例えば、第2期間)中に電荷キャリアの受け取りと読み出しを行うことによって、電荷キャリアの収集が、第2電荷蓄積領域から電荷キャリアを読み出すのに必要な時間によって妨げられず、そのため集積回路が電荷キャリアを収集することが可能な頻度が改善する。
【0022】
いくつかの実施形態において、集積回路は、本明細書で説明するように、集積回路の領域間での電荷キャリアの受け取りおよび転送、または受け取りもしくは転送を制御する転送ゲートに制御信号を提供することによって、電荷キャリアの受け取りおよび読み出しのタイミングを制御するように構成することができる。いくつかの実施形態において、集積回路は、期間の始めから期間の終わりまで第2電荷キャリアを受け取り、期間の一部分のみの間に第1電荷キャリアを読み出すように構成することができるので、収集と読み出しとは少なくとも部分的に同時に行われる。例えば、集積回路は、電荷キャリアが第1電荷蓄積領域で受け取られる時間期間内の異なるサブ期間中に、ピクセルの部分集合から読み出されるように構成することができる。
【0023】
電荷キャリアは電荷キャリアが受け取られる期間全体の間に各ピクセルから読み出されることはできないため、および/または、1ピクセルの(または多数のピクセルの)転送ゲートに提供される制御信号における伝播遅延がわずかに異なる時に到着する可能性があるので、電荷キャリアの受け取りおよび転送がそれに応じた異なる時に起こるため、電荷キャリアの受け取りおよび読み出しは、正確に同時というよりも実質的に同時に起こり得ることは理解されたい。
【0024】
このような技術は、2より多くの順次結合された電荷蓄積領域を用いて実施することができることも理解されたい。例えば、第1電荷蓄積領域と第2電荷蓄積領域との間に中間電荷蓄積領域を結合することができる。いくつかの実施形態において、電荷蓄積領域は、本明細書でさらに説明するように、第1、第2および第3の電荷蓄積領域とすることができる。
【0025】
本開示のいくつかの態様は、各ピクセル内の電荷蓄積領域間で実質的に同時に電荷キャリアを転送するように構成される複数のピクセルを有する集積回路に関する。いくつかの実施形態において、集積回路は、第1および第2の電荷蓄積領域を有する第1ピクセルと、第1および第2の電荷蓄積領域を有する第2ピクセルとを含むことができる。集積回路は、同じ期間中に、第1ピクセルの第1電荷蓄積領域から第1ピクセルの第2電荷蓄積領域に第1電荷キャリアを転送するとともに、第2ピクセルの第1電荷蓄積領域から第2ピクセルの第2電荷蓄積領域に第2電荷キャリアを転送するように構成することができる。同じ期間中に、第1および第2の各ピクセル内で第1および第2電荷キャリアを転送することによって、第1および第2電荷キャリアが読み出される時に関係なく、第1電荷蓄積領域は、同じ後続期間に再び電荷キャリアを受け取るように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、電荷キャリアが各ピクセル内の電荷蓄積領域間で転送される期間を第1期間とすることができ、集積回路は、第2期間中に第1電荷キャリアを読み出し、第3期間中に第2電荷キャリアを読み出すように構成することができる。このように、異なる期間中に第1および第2電荷キャリアがそれぞれ第1および第2のピクセルから読み出されるにもかかわらず、第1および第2のピクセルは、同じ後続期間に電荷キャリアを受け取ることを可能にすることができる(例えば、いくつかの実施形態において、第2および第3の期間と同時に)。
【0026】
本開示のいくつかの態様は、3以上の順次結合される電荷蓄積領域を有する集積回路に関する。いくつかの実施形態において、集積回路は、第1電荷蓄積領域と、第1電荷蓄積領域に電気的に結合されている第2電荷蓄積領域と、第2電荷蓄積領域に電気的に結合されて、第2電荷蓄積領域を介して電荷キャリアを受け取るように構成される第3電荷蓄積領域とを含むことができる。第1および第2の電荷蓄積領域に加えて第3電荷蓄積領域を含むことによって、集積回路は、読み出し間に読み出し領域の電圧をリセットすることなく、第1および第2の電荷蓄積領域からそれぞれ電荷キャリアを読み出すことを可能にすることができる。例えば、読み出し領域の電圧はリセットされてサンプリングされることができ、電荷キャリアは第3電荷蓄積領域から読み出し領域に読み出されることができ、読み出し領域の電圧が再びサンプリングされてから、電荷キャリアが第2電荷蓄積領域から第3電荷蓄積領域を介して読み出されることができ、読み出し領域の電圧は、合間に読み出し領域の電圧をリセットすることなく、再びサンプリングされる。この実施例では、第2電荷蓄積領域から読み出される電荷キャリアの数は、第2サンプリング電圧と第3サンプリング電圧との差を用いて決定することができる。それぞれ第2と第3の電荷蓄積領域から電荷キャリアを読み出す合間に読み出し領域の電圧をリセットしないことによって、読み出しプロセスはより迅速に、また、それぞれ第2と第3の電荷蓄積領域からの電荷キャリアの読み出しの間に読み出し領域にノイズを導入することなく行うことができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、集積回路は、第1電荷キャリアを第3電荷蓄積領域から読み出し領域に転送し、その中に電荷キャリアを有する読み出し領域の第1電圧レベルに基づいて、電荷キャリアの第1電荷レベルを決定するように構成することができる。集積回路は、第2電荷キャリアを第2電荷蓄積領域から読み出し領域に転送し、その中に第2電荷キャリアを有する読み出し領域の第2電圧レベルに基づいて、第2電荷キャリアの第2電荷レベルを決定するようにさらに構成することができる。例えば、第2電荷レベルは、第2電圧レベルから第1電圧レベルを引くことによって決定することができる。このように、第1および第2電荷キャリアの電荷レベルは、第1および第2電荷キャリアを読み出す間に読み出し領域の電圧をリセットすることなく決定することができ、それによって読み出し期間に消費される時間を短縮し、集積デバイスのピクセルから読み出される信号のノイズを低減する。
【0028】
本開示のいくつかの態様は、電荷キャリアを増加速度で転送することのできる集積回路に関する。いくつかの実施形態において、集積回路は、光検出領域と、第1電荷蓄積領域と、第2電荷蓄積領域とを含むことができ、光検出領域と第1および第2の電荷蓄積領域は、光検出領域から第1電荷蓄積領域への、および第1電荷蓄積領域から第2電荷蓄積領域への第1方向に、真性電界を誘起するように構成される。外部電界が集積回路に印加されないときでも、集積回路に存在する真性電界を誘起することによって、外部電界が集積回路に印加されるときに電界をさらに増強することができ、それによって集積回路の電荷転送速度を増加させる。いくつかの実施形態において、集積回路の領域は、異なる真性電位レベル(例えば、本明細書でさらに説明される異なるピニング電圧、異なるドーパント濃度等)を有するように構成することができる。例えば、第1電荷蓄積領域の真性電位レベルは光検出領域よりも高く(例えば、n型ドープ領域の場合)または低く(例えば、p型ドープ領域の場合)することができ、第2電荷蓄積領域の真性電位レベルは第1電荷蓄積領域よりも高くまたは低くすることができる。異なる真性電位レベルは、集積回路で真性電界を誘起することができ、それによって集積回路の電荷転送速度を増加させる。いくつかの実施形態において、電荷蓄積領域は、本明細書でさらに説明するように、異なる真性電位レベルを有するように構成される多数のサブ領域を有することによってなど、電荷蓄積領域内で真性電界を誘起するように構成することができる。
【0029】
本明細書で説明する集積回路の真性電気特性(例えば、電界、電位レベル等)は外部電界がなくても維持される(例えば、電力または制御信号が集積回路にまたはそれによって印加されないとき)が、本明細書で説明されるように、このような外部電界によって影響を受ける(例えば、取り消される、減少される、追加される等)可能性があることは理解されたい。
【0030】
本開示のいくつかの態様は、多数の電荷蓄積領域を有する集積回路を形成すること、および光検出領域から第1電荷蓄積領域への、および第1電荷蓄積領域から第2電荷蓄積領域への第1方向に、真性電界を誘起するように集積回路を構成すること、またはそのいずれかを行うことによってなど、本明細書に記載される他の技術に従って集積回路を製造する技術に関する。
【0031】
本明細書に記載される技術は、本開示がそのように制限されていないため、単独で実施しても組み合わせて実施してもよいことを理解されたい。
[II.集積デバイスの概要]
いくつかの実施形態による、ピクセル1-112の行を示す集積デバイス1-102の断面概略図が、図1-1において示されている。集積デバイス1-102は、結合領域1-201、ルーティング領域1-202およびピクセル領域1-203を含むことができる。結合領域1-201は、励起光源から入射励起光を受け取るように構成することができる。ルーティング領域1-202は、結合領域1-201からの励起光をピクセル領域1-203に送達するように構成することができる。ピクセル領域1-203は、結合領域1-201から離れた位置にある表面に位置決めされた複数のサンプルウェル1-108を含むことができる。例えば、結合領域1-201は1つまたは複数の格子カプラ1-216を含むことができ、ルーティング領域1-202は格子カプラ1-216からの光をサンプルウェル1-108の下に伝播するように構成される1つまたは複数の導波路1-220を含むことができる。例えば、導波路1-220からの励起光のエバネッセント結合は、サンプルウェル1-108内のサンプルを励起して蛍光光を放出することができる。
【0032】
図1-1に図示されるように、1つまたは複数の少なくとも部分的な不透明(例えば、金属)層1-106を表面の上に配設して、導波路1-220から結合される入射励起光を反射することができる。サンプルウェル1-108は、サンプルをサンプルウェル1-108に配置させる層1-106がなくてもよい。いくつかの実施形態において、サンプルウェル1-108からの発光の方向性は、金属層1-106が発光を反射するように作用し得るため、金属層1-106に対するサンプルウェル1-108内のサンプルの位置決めに応じて変わる可能性がある。このように、金属層1-106とサンプルウェル1-108内に位置決めされるサンプル上の蛍光マーカとの間の距離は、蛍光マーカによって放出される光を検出するための、サンプルウェルと同じピクセル内にある光検出器1-110の効率に影響を与える可能性がある。金属層1-106と、動作中にサンプルを位置決めすることのできる場所に近接するサンプルウェル1-108の底面との間の距離は、100nm~500nmの範囲、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲にあるものとすることができる。いくつかの実施形態において、金属層1-106とサンプルウェル1-108の底面との間の距離は、およそ300nmである。
【0033】
図1-1に図示されるように、ピクセル領域1-203はピクセル1-112の1つまたは複数の行を含むことができる。点線の四角形で示される1つのピクセル1-112は、サンプルウェル1-108と、サンプルウェル1-108に関連付けられる1つまたは複数の光検出器1-110(例えば、光検出領域を含む)とを含む集積デバイス1-102の領域である。いくつかの実施形態において、各光検出器1-110は、光検出領域と、サンプルウェル108からの入射光に反応して光検出領域に生成される電荷キャリアを受け取るように構成される1つまたは複数の電荷蓄積領域とを含むことができる。導波路1-220から結合される励起光がサンプルウェル1-108内に配置されるサンプルを照射するとき、サンプルは励起状態に到達し、発光を放出することができる。発光は、サンプルウェル1-108に関連付けられる1つまたは複数の光検出器1-110によって検出することができる。図1-1は、ピクセル1-112のサンプルウェル1-108から光検出器1-110までの発光の光軸(実線として図示される)を概略的に示す。ピクセル1-112の光検出器1-110は、サンプルウェル1-108からの発光を検出するように構成され、位置決めすることができる。個々のピクセル1-112に関して、サンプルウェル1-108およびそのそれぞれの光検出器1-110は、共通の光軸に沿って位置合わせすることができる。このように、光検出器1-110は、ピクセル1-112内でサンプルウェル1-108に重なることができる。
【0034】
図1-1にさらに図示されるように、集積デバイス1-102は、サンプルウェル1-108と光検出器1-110との間に位置決めされている1つまたは複数のフォトニック構造1-230および金属層1-240、またはフォトニック構造1-230もしくは金属層1-240を含むことができる。例えば、フォトニック構造1-230は、サンプルウェル1-108から光検出器1-110に到達する発光の量を増大するように構成することができる。代替的にまたは付加的に、フォトニック構造1-230は、励起光が光検出器1-110に到達することを低減または防止するように構成することができ、そうでなければ、励起光が発光を検出する際の信号ノイズの一因となる可能性がある。図1-1に図示されるように、フォトニック構造1-230は、導波路1-220と光検出器1-110との間に位置決めすることができる。様々な実施形態によると、フォトニック構造1-230は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタおよび空間フィルタを含む1つまたは複数の光除去フォトニック構造を含むことができる。いくつかの実施形態において、フォトニック構造1-230は、共通の軸に沿って個々のサンプルウェル1-108およびそれらのそれぞれの光検出器1-110と位置合わせするように位置決めすることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、金属層1-240は、集積デバイス1-102の部分におよび集積デバイス1-102の部分から、または集積デバイス1-102の部分にもしくは集積デバイス1-102の部分から、制御信号をルーティングするように構成することができる。例えば、制御信号は、集積デバイス1-102内のおよび/またはその1つまたは複数の導電性パッド(図示せず)の制御回路に結合されている制御回路から受け取られて、金属層1-240を介してピクセル1-112にルーティングすることができる。いくつかの実施形態において、金属層1-240は空間フィルタおよび偏光フィルタの両方またはそのいずれかのフィルタとしても作用することができる。そのような実施形態において、1つまたは複数の金属層1-240は、いくらかまたはすべての励起光が光検出器1-110に到達するのを阻止するように位置決めすることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、サンプルと光検出器との間の距離も、発光を検出する効率に影響を与える可能性がある。光がサンプルと光検出器1-110との間を移動しなければならない距離を減らすことによって、発光の検出効率を改善することができる。加えて、サンプルと光検出器1-110との間の距離を小さくすると、集積デバイスに占めるピクセルの設置面積を小さくすることを可能にすることができ、これにより、より多くの数のピクセルを集積デバイスに含めるようにすることができる。サンプルウェル1-108の底面と光検出器1-110との間の距離は、いくつかの実施形態において、5μm~15μmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲にすることができるが、本発明はそのように制限されない。いくつかの実施形態においては、発光は励起光源およびサンプルウェル以外の手段によって提供できることは理解されたい。したがって、いくつかの実施形態はサンプルウェル1-108を含まなくてもよい。
【0037】
分析されるサンプルは、ピクセル1-112のサンプルウェル1-108内に導入することができる。サンプルは、生物サンプル、または、化学的サンプルなどの任意の他の好適なサンプルであるものとすることができる。サンプルは、複数の分子を含むことができ、サンプルウェルは、単一の分子を分離するように構成することができる。いくつかの例においては、サンプルウェル1-108の寸法は、単一の分子をサンプルウェル1-108内に閉じ込めるように作用することができ、測定を単一の分子に対して行うことを可能にする。励起光は、サンプル、またはサンプルに付けられるか、もしくはサンプルウェル1-108内の照射エリア内にある間にサンプルに別様に関連付けられる少なくとも1つの蛍光マーカを励起するように、サンプルウェル1-108内に送達されることができる。
【0038】
動作時、サンプルウェル1-108内のサンプルの並列な分析を、励起光を使用してウェル内のサンプルのいくつかまたはすべてを励起し、サンプル発光からの信号を光検出器1-110で検出することによって行う。サンプルからの発光は、対応する光検出器1-110によって検出されて、少なくとも1つの電気信号に変換されることができる。電気信号は、集積デバイス1-102の導電線(例えば、金属層1-240)に沿って伝送することができ、これは、集積デバイス1-102とインターフェースする機器および制御回路の両方に、またはそのいずれかに接続することができる。電気信号は、その後、機器および/または制御回路によって処理および分析または処理もしくは分析することができる。
【0039】
[III.例示的な二重電荷蓄積ピクセル構造]
本開示のいくつかの態様は、複数の電荷蓄積領域(例えば、ピクセルごとに)を有する集積回路に関する。図1-2は、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102のピクセル1-112の断面図を示す。図1-3Aは、ピクセル1-112の回路図を示す。図1-3Bは、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102に含むことのできる、ピクセル1-112の例示的アレイおよび処理回路1-114を示す。図1-3Cは、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102に含むことのできる、ピクセル1-112の代替の例示的アレイならびに処理回路1-114a、1-114bおよび1-114mを示す。
【0040】
図1-2および1-3Aでは、ピクセル1-112は、埋め込みフォトダイオード(PPD)とすることのできる光検出領域と、蓄積ダイオード(SD0およびSD1)とすることのできる2つの電荷蓄積領域と、浮遊拡散(FD)領域とすることのできる読み出し領域とを含む。これも図示されるように、ピクセル1-112はまた、ドレイン領域Dと、転送ゲートST0、TX0、TX1およびREJとを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDは、基板の部分をドープすることによって、集積回路基板上に形成することができる。例えば、基板を低濃度でドープすることができ、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDをより高濃度でドープすることができる。この実施例では、基板は低濃度でp型ドープすることができ、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDをn型ドープすることができる。代替的に、本明細書に記載される実施形態はそのように制限されていないので、基板は低濃度でn型ドープすることができ、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDをp型ドープすることができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、光検出領域PPDは、入射光子がその中に受け取られるとき、電荷キャリア(例えば、光電子)を生成するように構成することができる。いくつかの実施形態において、電荷蓄積領域SD0およびSD1は、光検出領域PPDに対しておよび互いの間で、またはそのいずれかのように電気的に結合されることができる。例えば、ピクセル1-112は、電荷蓄積領域SD0およびSD1を光検出領域PPDにおよび/または互いに電気的に結合する1つまたは複数の転送チャネルを含むことができる。いくつかの実施形態において、転送チャネルは、領域間に配設される集積回路基板の部分をドープすることによって形成することができる。例えば、該部分を領域と同じ導電型でドープすることができる(例えば、n型ドープPPDとSD0との間に配設されるn型ドープチャネル)。図1-3Aを参照すると、例えば、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間に結合されるトランジスタのチャネルは、光検出領域PPDを電荷蓄積領域SD0に電気的に結合する転送チャネルである。同様に、電荷蓄積領域SD0とSD1との間に結合されるトランジスタのチャネルは、電荷蓄積領域SD0をSD1に電気的に結合する転送チャネルであり、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとの間に結合されるトランジスタのチャネルは、電荷蓄積領域SD1を読み出し領域FDに電気的に結合する転送チャネルである。光検出領域PPDとドレイン領域Dとの間に結合されるトランジスタのチャネルは、光検出領域PPDとドレイン領域Dとの間の転送チャネルである。
【0043】
いくつかの実施形態において、転送ゲートST0、TX0、TX1およびREJは、光検出領域PPDから蓄積領域SD0およびSD1への、電荷蓄積領域SD0とSD1間および電荷蓄積領域SD0およびSD1と読み出し領域FDとの間の、またはこれらのいずれかの間の、電荷キャリアの転送を制御するように構成することができる。例えば、転送ゲートST0、TX0、TX1およびREJは電気的に結合され、ピクセル1-112の領域を電気的に結合する転送チャネルをバイアスするように構成されて、適切な制御信号が転送ゲートに印加されたときに領域間で電荷キャリアを転送することができる。転送ゲートは、様々な実施形態により、転送チャネルに導電的に(例えば、物理的に)結合することができ、ならびに/または転送チャネルに容量的に結合するために転送チャネルの十分近くに位置決めし、および/もしくは十分薄い絶縁体によって分離することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される転送ゲートは、金属などの導電材料を使用して形成することができる。代替的にまたは付加的に、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される転送ゲートは、ポリシリコンなどの半導体材料を使用して形成することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される転送ゲートを形成するために使用される材料は、少なくとも部分的に不透明にすることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、制御信号が転送ゲートで受け取られると、転送ゲートは制御信号を転送チャネルに電気的に結合して、転送チャネルをバイアスすることができ、それによって転送チャネルの伝導度を高める。いくつかの実施形態において、転送チャネルは、転送チャネルによって電気的に結合されているピクセル1-112の領域と同じ導電型であるが、それよりも低いドーパント濃度でドープすることができ、それによって領域間の真性電位バリアを生成する。真性電位バリアは、転送ゲートまたは転送チャネルに外部電界が印加されないときでも、領域間に存在することができる。例えば、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間の転送チャネルのドーパント濃度が、光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間に真性電位バリアを生成することができる。いくつかの実施形態において、制御信号を転送ゲートに印加することができ、制御信号は、転送チャネルによって電気的に結合されている領域間の真性電位バリアを低くするように構成され、それによって転送チャネルの伝導度を高め、領域間の電荷キャリアの転送を生じさせる。例えば、n型ドープ転送チャネルの場合、制御信号は領域のうちの1つ(例えば、転送チャネルのソース端子)の電圧よりも、少なくとも転送チャネルの閾値電圧の分だけ大きい電圧を有することができ、閾値電圧は転送チャネルのサイズ、転送チャネルに近接する集積デバイス1-102の基板電圧、および他のこのようなパラメータに依存する。同様に、p型ドープ転送チャネルの場合、制御信号は領域のうちの1つの電圧よりも、少なくとも閾値電圧の分だけ低い電圧を有することができる。いくつかの実施形態において、本明細書でさらに説明するように、集積デバイス1-102の制御回路および集積デバイス1-102を含むシステムの制御回路の両方、またはそのいずれかの制御回路は、このような制御信号を生成して、転送ゲートに提供するように構成することができる。
【0045】
図1-3Aでは、ピクセル1-112は、読み出し領域FDに結合されて、高電圧VDDPへの結合のために構成されるリセット(RST)転送ゲートと、読み出し領域FDとビットラインとの間に結合されている行選択(RS)転送ゲートとをさらに含む。集積デバイス1-102が電源(例えば、少なくとも1つのDC電源)に結合されているとき、転送ゲートRSTは高電圧VDDPに結合することができ、これは電源によって供給され、また集積デバイス1-102の電圧レギュレータによって調整される、またはそのように供給もしくは調整される。
【0046】
いくつかの実施形態において、転送ゲートRSTは、読み出し領域FDの電圧をリセットするように構成することができる。例えば、リセット信号が転送ゲートRSTに印加されると、転送ゲートRSTは、読み出し領域FDを高電圧VDDPに電気的に結合する転送チャネルをバイアスすることができ、それによって転送チャネルの伝導度を高め、電荷キャリアを読み出し領域FDから高電圧VDDPに転送する。いくつかの実施形態において、リセット転送ゲートRSTは、電荷蓄積領域SD0およびSD1の両方またはいずれかの電圧をリセットするようにさらに構成することができる。例えば、リセット信号がリセット転送ゲートRSTに印加され、制御信号が転送ゲートTX1に印加されると、転送ゲートTX1は電荷蓄積領域SD1の電荷キャリアを読み出し領域FDに転送することができ、転送ゲートRSTは電荷キャリアを高電圧VDDPに転送することができる。同様に、リセット信号がリセット転送ゲートRSTに印加され、制御信号が転送ゲートTX1およびTX0に印加されると、転送ゲートTX0は電荷蓄積領域SD0の電荷キャリアをSD1に転送することができ、転送ゲートTX1は電荷蓄積領域SD1の電荷キャリアを読み出し領域FDに転送することができ、転送ゲートRSTは電荷キャリアを高電圧VDDPに転送することができる。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを収集して読み出す前に、読み出し領域FDと電荷蓄積領域SD0およびSD1とをリセットするように構成することができる。例えば、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを収集して読み出す前に、読み出し領域FDをリセットし、次に電荷蓄積領域SD1をリセットし、次に電荷蓄積領域SD0をリセットするように構成することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、ビットラインを、読み出し領域FDに読み出される電荷キャリアを示す電圧レベルを受け取るように構成される、集積デバイス1-102上の処理回路部および外部回路、または処理回路部もしくは外部回路に結合することができる。例えば、図1-3Bに図示されるように、単一ビットラインがアレイの各ピクセル1-112と処理回路部1-114との間に電気的に結合されている。いくつかの実施形態において、処理回路部1-114はアナログ・デジタルコンバータ(ADC)を含むことができる。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、電荷キャリアを読み出す前に、各ピクセルの読み出し領域FDの電圧をリセットするように構成することができる。例えば、集積デバイス1-102は読み出し領域FDの電圧をリセットし、電圧をサンプリングし、電荷キャリアを読み出し領域FDに転送し、電圧を再びサンプリングするように構成することができる。この実施例では、2回目にサンプリングされる電圧は、1回目にサンプリングされる電圧と比較すると、読み出し領域FDへと転送される電荷キャリアの数を示すことができる。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、行ごとおよび列ごと、または行ごともしくは列ごとなど、各ピクセル1-112からビットラインに順次電荷キャリアを読み出すように構成することができる。
【0048】
ピクセル1-112のいくつかのアレイは、図1-3Cに図示されるように、ピクセル1-112の異なるものおよびピクセル1-112のグループに、またはそのいずれかのようなピクセル1-112に電気的に結合される多数のビットラインを有してもよいことは理解されるべきであり、ビットラインaは、ピクセル1-112の第1列を処理回路部1-114aに結合し、ビットラインbは、ピクセル1-112の第2列を処理回路部1-114bに結合し、最後のビットラインMは、ピクセル1-112の第m列を処理回路部1-114mに結合する。いくつかの実施形態において、多数の列のピクセルは同時に各処理回路部に読み出されることができる。例えば、各列の第1ピクセル(例えば、ピクセル(1,1)と(1,2)など)は同時に各処理回路部に読み出されることができ、次に各列の第2ピクセル(例えば、ピクセル(2,1)と(2,2)など)が同時に各処理回路部に読み出されることができる。いくつかの実施形態において、処理回路部は、各列の代替としてまたは付加的に、アレイの各列について設けてもよいことは理解されたい。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、各々がビットラインに電気的に結合されているなど、処理回路部の多数のユニットを含むことができる。
【0049】
様々な実施形態によると、本明細書に記載される転送ゲートは半導体材料および金属の両方、またはそのいずれか一方を含むことができ、また電界効果トランジスタ(FET)のゲート、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)のベース、および/または同様なものを含むことができることは理解されたい。様々な転送ゲートに印加される、本明細書に記載される制御信号は、半導体領域および半導体領域に電気的に結合されている領域(例えば、隣接する領域)の電位によるなど、形や電圧が変わってもよいことも理解されたい。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるピクセルは2より多くの電荷蓄積領域を含んでもよい。例えば、図2-1から図2-8に関連して本明細書に記載されるピクセル2-112は3つの電荷蓄積領域を含む。
【0051】
図1-4は、いくつかの実施形態による、代替ピクセル1-112’の平面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル1-112’は、ピクセル1-112について説明したように構成することができる。図1-4では、ピクセル1-112’のドレイン領域Dは、電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDと同じ光検出領域PPDの側に位置決めされている。図1-4にさらに図示されるのは、光検出領域PPDが三角形の開口部のあるマスクを含むことができ、三角形の開口部の底辺は電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびにドレイン領域Dに近接する光検出領域の側にあり、三角形の開口部の対応する頂点はドレイン領域Dならびに電荷蓄積領域SD0およびSD1と反対の光検出領域PPDの側にあることである。
【0052】
いくつかの実施形態において、光検出領域PPDは、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0およびSD1に向かう方向に真性電界を誘起するように構成することができる。例えば、光検出領域PPDは開口部から集積デバイス1-102の基板をドープすることによって形成することができ、その結果、開口部から露出する基板の領域のドーパント濃度の方が、ドーピング中にマスクによって被覆される領域よりも高くなる。この実施例では、三角形の開口部の底辺側でドーパント(例えば、n型ドーパント)の量がより多いことにより、ドレイン領域Dおよび電荷蓄積領域SD0に近接する光検出領域PPDのベース側の電位を、光検出領域PPDの反対側の光検出領域PPDの頂点側の電位よりも低くさせることができる。光検出領域PPDの真性電界は、ピクセル1-112に印加される外部電界がなくても存在することができる。発明者らは、光検出領域PPDの真性電界が光検出領域PPDからドレイン領域Dならびに/または蓄積領域SD0およびSD1への電荷転送速度を増大し、ピクセル1-112の動作中に電荷キャリアを放電および収集する、または放電もしくは収集する効率が高まることを認識した。図1-4の実施例では、真性電界は点線の矢印に沿ってドレイン領域と電荷蓄積領域SD0との間に方向付けることができる。例えば、真性電界は電荷キャリアを点線の矢印に沿って流れさせることができ、転送ゲートREJまたはST0に印加される制御信号によって誘起される真性電界は電荷キャリアをドレイン領域Dまたは電荷蓄積領域SD0にそれぞれ流れさせることができる。
【0053】
図1-5は、いくつかの実施形態による、ピクセル1-112’の上部概略図である。図1-5では、電荷蓄積領域SD1は2つのサブ領域SD1-0およびSD1-1を有することが示されており、読み出し領域FDはサブ領域SD1-0よりもサブ領域SD1-1の近くに位置決めされている。図1-5に図示されるように、コンタクトをピクセル1-112’の部分の上に配設することができる。いくつかの実施形態において、コンタクトは入射光子が光検出領域PPD以外のピクセル1-112’の部分に到達するのを阻止するように、および/または隣接するピクセルの光検出領域に斜めの入射角で到達するのを阻止するように構成することができる。例えば、コンタクトは、光検出領域PPDがそれに沿って入射光子を受け取るように構成される光軸と平行な方向に延伸されてもよい。いくつかの実施形態において、コンタクトはタングステンなどの不透明な材料を使用して形成することができる。発明者らは、本明細書に記載されるコンタクトは多くまたはすべての入射光子が光軸以外の光路に沿って電荷蓄積領域SD0およびSD1に到達するのを防止し、それによって入射光子が電荷蓄積領域SD0およびSD1でノイズ電荷キャリアを生成するのを防止することを認識している。
【0054】
図1-5では、1対のコンタクトが光検出領域PPDの両側に配設されており、対のうちの第1コンタクトはマスクの三角形の開口部の頂点に近い方に配設され、対のうちの第2コンタクトはマスクの三角形の開口部の底辺に近い方に配設される。第2コンタクトは入射光子が電荷蓄積領域SD0およびSD1に到達するのを阻止するように構成することができる。第3コンタクトは、光検出領域PPDが配設される端とは反対のピクセル1-112の端に配設される。第1および第3のコンタクトはピクセル1-112とそれぞれの隣接するピクセルとの間に配設され、第2コンタクトは光検出領域PPDと転送ゲートST0およびREJとの間に位置決めされる。いくつかの実施形態において、光検出領域PPDの両側にある対のコンタクトは、単一の円筒形コンタクト壁など、少なくとも部分的に光検出領域PPDを取り囲む少なくとも1つのコンタクト壁に取り替えてもよいことは理解されたい。
【0055】
図1-6は、いくつかの実施形態による、図1-4に図示される断面A-A’に沿ったピクセル1-112’の図である。図1-6に図示されるように、ピクセル1-212は、電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDと、収集層および保護層との周りに配設されるバリアも含む。いくつかの実施形態において、バリア、保護層および収集層は、入射電荷キャリアが、転送ゲートST0、TX0およびTX1によって制御される転送チャネル以外の経路に沿って、電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDに到達するのを阻止するように構成することができる。
【0056】
発明者らは、ノイズ電荷キャリアが蓄積領域SD0およびSD1の外側から蓄積領域SD0およびSD1に流れることがあることを認識している。ある場合には、光検出領域PPDを電荷蓄積領域SD0およびSD1に電気的に結合する転送チャネルが無バイアスで、真性電位バリアを誘起するときでも、励起光に反応して生成される励起電荷キャリアが電荷キャリアSD0およびSD1に流れることがある。例えば、電荷キャリアはピクセル1-112’のバルク基板領域を通して流れることがある。ある場合には、電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0に転送される期間中に受け取られる蛍光放出電荷キャリアが、異なる電気経路に沿って蓄積領域SD1に流れることがある。いずれの場合も、これらの望ましくない電荷キャリアは、ある特定の時に電荷蓄積領域SD0およびSD1に収集および蓄積される、または収集もしくは蓄積されることが意図される蛍光放出電荷キャリアと事実上区別できない可能性があるため、電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0およびSD1から読み出されるときに、ノイズ電荷キャリアが信号を歪ませる。
【0057】
これらの問題に対処するために、本明細書に記載されるいくつかの技術は、少なくともいくつかのノイズ電荷キャリアが異なる経路に沿って電荷蓄積領域SD0およびSD1に到達するのを阻止することができる。例えば、本明細書に記載されるいくつかの技術は、励起光子によって生成される励起電荷キャリアが、光検出領域PPDを電荷蓄積領域SD0に電気的に結合する転送チャネルおよび電荷蓄積領域SD0を電荷蓄積領域SD1に電気的に結合する転送チャネルとは異なる経路に沿って電荷蓄積領域SD0およびSD1に到達するのを阻止することができ、および/または蓄積領域SD0に意図される蛍光放出電荷キャリアが蓄積領域SD1に到達するのを、およびその逆を阻止することができる。いくつかの実施形態において、このような技術は、ノイズ電荷キャリアが読み出し領域FDに到達するのを阻止するため、および/または電荷キャリアが集積デバイス1-102のピクセル1-112’間で移動するのを阻止するために使用することもできる。
【0058】
図1-6では、保護層は光軸に沿って光検出領域PPDから離間している。いくつかの実施形態において、保護層は、光軸に沿って移動する少なくともいくつかの光子が光検出領域PPDを離れるのを阻止して、光検出領域PPDに光子を吸収させ、反応して電荷キャリアを生成させるように構成される真性電位バリアを誘起するように構成することができる。いくつかの実施形態において、保護層のドープ型および濃度またはそのいずれかは、外部電界が集積デバイス1-102に印加されないときでも、真性電位バリアを誘起することができる。例えば、保護層は、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに/または読み出し領域FDとは反対の導電型を有することができる。いくつかの実施形態において、保護層によって阻止されて、光検出領域PPDによって吸収される電荷キャリアは、本明細書でさらに説明されるように、電荷キャリアが排除期間中に吸収されるかまたは収集期間中に吸収されるかによって、蓄積領域SD0またはドレイン領域に転送することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、収集層は、少なくとも部分的に光軸に沿って収集層に入射する電荷キャリアを吸収するように構成される真性電位ウェルを誘起するように構成することができる。例えば、光軸に沿って入射する光子は保護層を通過して収集層に到達し、該収集層は光子の受け取りに反応して電荷キャリアを生成することができる。代替的にまたは付加的に、ピクセル1-112’に斜めに入射する電荷キャリアは、図1-6に図示されるように、収集領域は光検出領域PPDから読み出し領域FDまで延伸されることができるので、収集領域に到達することができる。ピクセル1-112’の保護層およびバリアは、収集層で生成されて収集層から離れる電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに/または読み出し領域FDに到達するのを阻止することができる。いくつかの実施形態において、収集層のドープ型および濃度またはそのいずれかは、集積デバイス1-102に外部電界が印加されないときでも、真性電位ウェルを誘起するように構成することができる。例えば、収集層は光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに/または読み出し領域FDと同じ導電型を有することができる。
【0060】
図1-6では、収集層は光軸に沿って保護層から離間しており、第1および第2の領域を含む。第1領域は光軸に沿って光検出領域PPDから離間し、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD1まで、電荷蓄積領域SD0およびSD1が光検出領域PPDから離間する方向に延伸している。第2領域は光軸に平行な方向に電荷蓄積領域SD1から離間しており、光軸に平行な方向に第1領域よりも電荷蓄積領域SD1に近い方に配設される。
【0061】
図1-6では、ピクセル1-112’のバリアは、光軸に平行な方向に電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDから離間しており、第1バリア(BPW)は電荷蓄積領域SD0およびSD1が光検出領域PPDから離間する方向に延伸し、第2バリア(LPW)は光軸に平行な方向に延伸する。いくつかの実施形態において、バリアBPWおよびLPWは、これらが、集積デバイス1-102に外部電界が印加されないときでも、ピクセル1-112’内を移動する電荷キャリアが蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDに到達するのを阻止するように構成されるように、ピクセル1-112’に内因性のものとすることができる。いくつかの実施形態において、バリアBPWおよびLPWのドープ型および濃度またはそのいずれかは、真性電位バリアを誘起することができる。例えば、バリアBPWおよびLPWは、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに/または読み出し領域FDとは反対の導電型でドープすることができる。いくつかの実施形態において、第2バリアLPWは、電荷キャリアが集積デバイス1-102の隣のピクセル1-112’に到達するのを阻止するように構成することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、ピクセル1-112は、光検出領域PPDから読み出し領域FDの方向に真性電界を誘起するように構成することができる。例えば、本明細書でさらに説明するように、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDは、少なくとも部分的に、異なる真性電位レベルを有することによって真性電界を誘起するように構成することができる。
【0063】
図1-7は、いくつかの実施形態による、ピクセル1-112’の一部分の真性電位対位置のグラフである。図1-7では、第1真性電位レベルは光検出領域PPDについて示され、第2真性電位レベルは電荷蓄積領域SD0について示され、第3および第4の電位レベルは電荷蓄積領域SD1の各サブ領域SD1-0およびSD1-1について示され、第5電位レベルは読み出し領域FDについて示される。図1-7では、第1真性電位レベルは第2真性電位レベルよりも低く、第2真性電位レベルは第3真性電位レベルよりも低く、第4真性電位レベルは第5真性電位レベルよりも低い。例えば、図示される光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDはn型ドープして、光源からの入射光子に反応して、光検出領域PPDに生成される電子を蓄積し、読み出すように構成することができる。この実施例では、電子のマイナス電荷のために、および光検出領域PPDから読み出し領域FDに向かってピクセル1-112’の領域の電位レベルが連続して高くなっていくために、真性電界は電子を光検出領域PPDから読み出し領域FDに向かう第1方向に押しやることができる。p型ドープ領域を有するピクセルの場合、ピクセル領域の真性電位レベルは光検出領域PPDから読み出し領域FDに向かって連続して低下するので、真性電界は光検出領域PPDで生成されるホールを読み出し領域FDに向かって押しやることができることは理解されたい。
【0064】
いくつかの実施形態において、図1-7に図示されるピクセル1-112’の各領域は、それぞれの真性電位レベルを誘起するように構成されるピニング電圧を有することができる。例えば、光検出領域PPDは第1ピニング電圧を有することができ、電荷蓄積領域SD0は第1ピニング電圧よりも高い第2ピニング電圧を有することができ、電荷蓄積領域SD1はサブ領域SD1-0に第3ピニング電圧を、サブ領域SD1-1に第4ピニング電圧を有することができ、第3ピニング電圧は第2ピニング電圧よりも高く、第4ピニング電圧は第3ピニング電圧よりも高く、読み出し領域は第4ピニング電圧よりも高い第5ピニング電圧を有することができる。p型ドープ領域を有するピクセルでは、領域のピニング電圧は光検出領域PPDから読み出し領域FDに向かって連続して低下することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、光検出領域PPDは第1ドーパント濃度を有するようにドープすることができ、電荷蓄積領域SD0は第1ドーパント濃度よりも高い第2ドーパント濃度を有するようにドープすることができ、電荷蓄積領域SD1のサブ領域SD1-0は第2ドーパント濃度よりも高い第3ドーパント濃度を有するようにドープすることができ、電荷蓄積領域SD1のサブ領域SD1-1は第3ドーパント濃度よりも高い第4ドーパント濃度を有するようにドープすることができ、読み出し領域FDは第4ドーパント濃度よりも高い第5ドーパント濃度を有するようにドープすることができる。
【0066】
一実施例のプロセスでは、ピクセル1-112’は、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDを第1ドーパント濃度を有するようにドープすることによって形成することができる。次に、電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDを、第2ドーパント濃度を有するようにドープすることができる。この実施例では、光検出領域PPDをマスクによって被覆して、光検出領域PPDが第2ドーパント濃度を有するようにドープされるのを防止することができる。次に、電荷蓄積領域SD1および読み出し領域FDを第3ドーピング濃度を有するようにドープすることができる。光検出領域PPDおよび電荷蓄積領域SD0は、このステップ中、マスクによって被覆することができる。次に、読み出し領域FDおよび電荷蓄積領域SD1のサブ領域SD1-1を第4ドーパント濃度を有するようにドープすることができる。光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0および電荷蓄積領域SD1のサブ領域SD1-0は、このステップ中、マスクによって被覆することができる。次に、読み出し領域を第5ドーパント濃度を有するようにドープすることができる。光検出領域PPDならびに電荷蓄積領域SD0およびSD1は、このステップ中、マスクによって被覆することができる。いくつかの実施形態において、読み出し領域FDは縮退ドープすることができる。例えば、読み出し領域FDのフェルミ準位は、伝導帯内にしてもよい。光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、電荷蓄積領域SD1のサブ領域SD1-0およびSD1-1、ならびに読み出し領域FDは、本明細書に記載される真性電位、ピニング電圧および/または電界を誘起するn型ドープおよびp型ドープの両方の実施形態では、連続して増えていくドーパント濃度を有することができる。
【0067】
図1-7にさらに図示されるのは、第1真性電位バリアが光検出領域PPDと電荷蓄積領域SD0との間に配設され、第2真性電位バリアが電荷蓄積領域SD0と電荷蓄積領域SD1との間に配設され、第3真性電位バリアが電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとの間に配設されることである。転送ゲートに信号が印加されて、ピクセル1-112’の領域間に電荷キャリアが転送されるとき、転送ゲートはピクセル1-112’の真性電位バリアのうち対応するものを低下させることができる。
【0068】
光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、サブ領域SD1-0およびSD1-1、ならびに読み出し領域FDは、任意の適切な方法で、また任意の順序でドープして、本明細書に記載されるドーパント濃度を有することができることは理解されたい。例えば、各領域(および/またはサブ領域)は、ドーピングステップ中他のすべての領域をマスクで被覆した状態で、それ自体の別個のドーピングステップでドープすることができる。
【0069】
電荷蓄積領域SD0は、代替的にまたは付加的に、電荷蓄積領域SD1について本明細書で説明した2以上のサブ領域を含んでもよいことも理解されたい。例えば、電荷蓄積領域SD0のサブ領域は、サブ領域SD1-0およびSD1-1について本明細書で説明するように、異なる真性電位レベルを有することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるピクセルのいくつかのコンポーネントは、集積回路の1つまたは複数の基板層上に配設および形成するまたは、配設もしくは形成することができる。いくつかの実施形態において、基板層は、代替的にまたは付加的に、他の基板層の上と下または上か下に配設される1つまたは複数の補助層(例えば、エピタキシャル層)を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるピクセルのいくつかのコンポーネントは、基板および補助層の両方またはいずれかの少なくとも一部分をエッチングで除去することによって形成することができる。
【0071】
[IV.例示的な二重電荷蓄積ピクセルの動作]
図1-8は、いくつかの実施形態による、ピクセル1-112の動作の期間中の電荷転送を示す図である。図1-8に図示されるように、ピクセル1-112の動作は、期間1-1、1-2、1-3、1-4および1-5に行われる多数の電荷収集および転送ステップを含むことができる。図1-9は、いくつかの実施形態による、0からN-1まで符号が付けられたN個のピクセル1-112の動作中に、転送ゲートTX0、TX1、RSTおよびRSで受け取られる制御信号のタイムグラフ1-900である。制御信号は図示されていないが、タイムグラフ1-900には、転送ゲートREJおよびST0で受け取られる1つまたは複数の制御信号を含み得る第1および第2の収集シーケンスも表されている。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるように、転送ゲートREJおよびST0で受け取られる制御信号は、他の転送ゲートで受け取られる制御信号よりも桁違いに短い時間にすることができる。図1-8および図1-9の説明はピクセル1-112の動作しか述べていないが、ピクセル1-112’はピクセル1-112について本明細書に説明されるのと同じように動作するように構成することができる。
【0072】
図1-8では、ピクセル1-112の動作は周期的とすることができる。例えば、本明細書でさらに説明されるように、各動作サイクルは期間1-1から1-4中に行うことができ、期間1-5中のピクセル動作は後のサイクルの期間1-1中に行うことができる(例えば、後のサイクルの期間1-1中に行われるステップと同時に)。いくつかの実施形態において、図1-9のピクセル0からN-1は、行と列を有するグリッドアレイに配列することができる(例えば、図1-3Bのアレイ)。代替的にまたは付加的に、いくつかの実施形態において、ピクセル0からN-1は、より大きいアレイの単一列(例えば、図1-3Cのアレイの列)など、より大きいアレイの部分集合としてもよい。いくつかの実施形態において、各ピクセル0からN-1はピクセルの行を表すことができ、図1-9のピクセルによって受け取られることが図示される制御信号を、行の各ピクセルが受け取る。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるように、集積デバイス1-102の制御回路および集積デバイス1-102を含むシステムの制御回路、またはそのいずれかの制御回路は、図1-9に図示される制御信号を生成して、ピクセル1-112の各転送ゲートに提供するように構成することができる。例えば、制御回路は集積デバイス1-102に電気的に結合することができ(例えば、1つまたは複数のプリント回路基板上のトレースを介して)、集積デバイス1-102は受け取った制御信号を制御回路から各ピクセル1-112の適切な転送ゲートに提供する導電路を含むことができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、期間1-1は1つまたは複数の収集シーケンスを含むことができる。例えば、各収集シーケンス中、光源からの光に反応して、光検出領域PPDで電荷キャリアを生成することができる。いくつかの実施形態において、各収集シーケンスは、排除期間の後に収集期間を含むことができる。例えば、排除期間中、制御回路はドレイン信号を転送ゲートREJに印加して、光検出領域PPDで生成される電荷キャリアをドレイン領域Dに転送することができる。排除期間中、光検出領域PPDを転送ゲートに電気的に結合する転送チャネルは、真性電位バリアが光検出領域PPD内の電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0に到達するのを防止するように、実質的に無バイアスにすることができる。この実施例では、制御回路は、光検出領域PPDが励起光を受け取ると予想される期間中、および光検出領域がサンプルから蛍光光を受け取ると予想される前にドレイン信号を印加して、励起電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0に収集されるのではなく廃棄されるようにすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、各収集期間は、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で電荷キャリアを受け取ることを含むことができる。図1-8に図示されるように、電荷キャリアQ1は、期間1-1中に光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られる。例えば、制御回路は信号を転送ゲートST0に印加して、電荷キャリアを光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0に転送することができる。収集期間中、光検出領域PPDをドレイン領域Dに電気的に結合する転送チャネルは、真性電位バリアが光検出領域PPD内の電荷キャリアがドレイン領域Dに到達するのを防止するように、実質的に無バイアスにすることができる。この実施例では、制御回路は、光検出領域PPDがサンプルから蛍光光を受け取ると予想される期間中に信号を転送ゲートST0に印加して、蛍光電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0で収集されるようにすることができる。いくつかの実施形態において、電荷蓄積領域SD0を電荷蓄積領域SD1に電気的に結合する転送チャネルは、真性電位バリアが電荷キャリアが電荷蓄積領域SD1に到達するのを防止するように、無バイアスにすることができる。いくつかの実施形態において、期間1-1は5ミリ秒(ms)と10msの間の長さにすることができる。いくつかの実施形態において、多数の収集シーケンスを各期間1-1内に行うことができる。例えば、各収集シーケンスは、2ナノ秒(ns)など、1nsと5nsとの間の排除期間の後に、5nsと10nsとの間など、5nsと20nsとの間の収集期間を含むことができる。この実施例では、各収集期間中に受け取られる電荷キャリア(例えば、励起パルスに反応して)を、一連の収集シーケンスにわたり電荷蓄積領域SD0に集めることができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、図1-9の各ピクセル0からN-1は、実質的に同時に収集シーケンスを行うことができる。例えば、各ピクセルは実質的に同時に励起電荷キャリアを廃棄することができ、実質的に同時に電荷蓄積領域SD0に蛍光電荷キャリアを収集することができる。制御回路に対する各ピクセルの位置決めによるピクセルに提供される制御信号の伝播遅延が、各ピクセルの排除や収集の間にごく短い遅延を生じさせる可能性があるので、各ピクセルは正確に同時に収集および排除するわけではないことは理解されたい。異なるピクセルの転送ゲートに同じ信号を印加することができるが、各ピクセルの伝播遅延および異なる電圧バイアスの両方、またはそのいずれかによって、異なるピクセルに印加される信号が正確には同じにならない可能性があることも理解されたい。
【0076】
いくつかの実施形態において、期間1-2は1つまたは複数の転送シーケンスを含むことができる。例えば、図1-8では、電荷キャリアQ1は、期間1-2中に蓄積領域SD0からSD1に転送される。図1-9では、制御回路は信号を転送ゲートTX0に印加して、電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に電荷キャリアを転送する。いくつかの実施形態において、光検出領域PPDを電荷蓄積領域SD0に電気的に結合する転送チャネルは、電荷キャリアが光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られないように、無バイアスにすることができる。いくつかの実施形態において、図1-9の各ピクセル0からN-1は、収集シーケンスについて本明細書で説明したようになど、実質的に同時に転送シーケンスを行うことができる。いくつかの実施形態において、期間1-2は、例えば、10nsと100nsの間、100nsと1マイクロ秒(μs)の間、1μsと10μsの間、1μsと20μsの間、または10μsと20μsの間など、10nsと20μsとの間にすることができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、期間1-3は1つまたは複数の読み出しシーケンスを含むことができる。例えば、各読み出しシーケンス中、集積デバイス1-102は電荷蓄積領域SD0およびSD1から電荷キャリアを読み出すことができる。例えば、図1-8では、電荷キャリアQ1は、期間1-3中に電荷蓄積領域SD1から読み出し領域FDに転送される。図1-9では、制御回路は、期間1-3中に、信号を転送ゲートTX1に印加して、電荷蓄積領域SD1の電荷キャリアを読み出し領域FDに転送する。
【0078】
いくつかの実施形態において、期間1-3中、制御回路は、そのピクセルから電荷キャリアを読み出すための所定の異なる時に、信号を各ピクセル0からN-1の転送ゲートTX1に印加することができる。例えば、いくつかの実施形態において、制御回路は信号を一度に1つのピクセルのみの転送ゲートTX1に印加することができる。例えば、集積デバイス1-102は、一度に1つのピクセルずつ、ピクセルの行から電荷キャリアを読み出すように構成することができる。この実施例では、集積デバイス1-102は、信号がピクセルの転送ゲートRSに印加されるときに、ピクセルの読み出し領域FDに選択的に結合するために構成される読み出し処理回路部(例えば、図1-3Bの処理回路部1-114)を含むことができる。電荷蓄積領域SD0を読み出し領域FDに電気的に結合し、読み出し領域FDをビットラインに電気的に結合する各ピクセルの転送チャネルは、電荷が読み出し領域FDおよびビットラインにまたは、読み出し領域FDもしくはビットラインに読み出されるのを真性電位バリアにより防止するように、このような信号が印加されないときは無バイアスにすることができる。いくつかの実施形態において、制御回路は、多数のピクセルから実質的に同時に電荷キャリアを読み出せるように、多数のピクセルの転送ゲートTX1(および転送ゲートRS)に実質的に同時に信号を印加することができる。例えば、制御回路は実質的に一度にピクセルの行の転送ゲートTX1およびRSに信号を印加し、実質的に別の時にピクセルの別の行の転送ゲートTX1およびRSに信号を印加して、一度にピクセルの1つの行ずつ電荷キャリアを読み出せるようにすることができる。
【0079】
図1-9に図示されるようないくつかの実施形態において、制御回路は信号を転送ゲートRSTに印加して、電荷蓄積領域SD1から読み出し領域FDに電荷キャリアを転送する前に、読み出し領域FDの電圧をリセットすることができる。図1-9に図示されるようないくつかの実施形態において、制御回路は信号を転送ゲートTX1に印加するとともに、信号を転送ゲートRSTに印加して、読み出し領域FDから電荷キャリアが読み出された後に、蓄積領域SD1の電圧をリセットすることができる。いくつかの実施形態において、読み出し領域FDに電気的に結合されている(例えば、ビットラインを介して)処理回路部は、電荷キャリアが電荷蓄積領域SD1から読み出し領域FDに転送された後、読み出し領域FDの第2電圧をサンプリングする前に読み出し領域FDの第1電圧をサンプリングすることができ、第1および第2の電圧を使用して電荷キャリアの数を決定する。例えば、第1電圧を第2電圧から引いて、またはその逆を行って、その中に電荷キャリアを有する読み出し領域の電荷レベルを決定することができ、電荷レベルは電荷キャリアの数を示す。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、読み出し領域FDの第2電圧をサンプリングした後に、読み出し領域FDの電圧をリセットすることができる。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、集積デバイス1-102の各ピクセルについて、読み出し領域FDの電圧のリセット、電圧のサンプリング、電荷キャリアの読み出し領域FDへの読み出し、および再度の電圧のリセットのプロセスを繰り返すことができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、期間1-3は、期間1-1について説明されるように行われる1つまたは複数の収集シーケンスを含むこともできる。例えば、図1-8では、電荷キャリアQ2は、期間1-3中に光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られる。いくつかの実施形態において、期間1-3の始まりから期間1-3の終わりまで、電荷キャリアは光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られることができ、期間1-3の一部の間のみ、電荷キャリアが電荷蓄積領域SD1から読み出し領域FDに読み出されることができる。このような実施形態では、期間1-3は収集シーケンスの収集期間のみを含み、収集シーケンスの排除期間は期間1-3の開始前に起こる。したがって、各ピクセル1-112の電荷蓄積領域SD0が光検出領域PPDから電荷キャリアを受け取る間に、集積デバイス1-102は集積デバイス1-102の第1ピクセル1-112(またはグループ、例えば、ピクセル1-112の行)の電荷蓄積領域SD1から、次に集積デバイス1-102の第2ピクセル(またはグループ、例えば、ピクセル1-112の行)の電荷蓄積領域SD1から、電荷キャリアを読み出すことができる。いくつかの実施形態において、期間1-3中に行われる収集シーケンスは、期間1-1の収集期間に対して時間がずれている収集期間を含むことができる。例えば、期間1-3の収集期間は、期間1-1の収集期間とは異なる特性(例えば、蛍光寿命)を示す電荷キャリアを捕捉するようなタイミングとすることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、期間1-4は、期間1-2について説明されるように行われる1つまたは複数の転送シーケンスを含むことができる。例えば、図1-8では、電荷キャリアQ2は、期間1-4中に電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に転送される。図1-9では、期間1-4中に、信号が転送ゲートTX0に印加されて、電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に電荷キャリアを転送する。
【0082】
いくつかの実施形態において、期間1-5は、期間1-3について説明されるように行われる1つまたは複数の読み出しシーケンスおよび1つまたは複数の収集シーケンスを含むことができる。例えば、図1-8では、期間1-5中に、電荷キャリアQ2は電荷蓄積領域SD1から読み出し領域FDに転送され、電荷キャリアQ1’は光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られる。この実施例では、図示される動作サイクルの期間1-5は、少なくとも部分的に、後のサイクルの期間1-1(例えば、電荷キャリアQ2が特定のピクセルから読み出されるとき)と重なるため、電荷キャリアQ1’を受け取ることは、後の動作サイクルの期間1-1中にも起こる。図1-9では、前の動作サイクルの期間1-5は、図示される動作サイクルの期間1-1中に起こっていることが示されている。図1-9に図示されるようないくつかの実施形態において、期間1-5は期間1-5aの後に起こることができ、その中で信号が転送ゲートRTSに印加されて、読み出し領域FDで電圧をリセットする。期間1-5aは後の動作サイクルの期間1-1中に起こることもできる。図1-9では、各ピクセル0からN-1は、電荷キャリアがピクセルの読み出し領域FDから読み出されるそれ自体の期間1-5、および読み出し領域FDの電圧がリセットされるそれ自体の期間1-5aを含む。図1-9では、期間1-5および1-5aはピクセル0について示されているが、ピクセル1からN-1についても、ピクセル0について説明されるように起こる。いくつかの実施形態において、期間1-5や期間1-5aは、10nsと20nsとの間、10nsと15nsとの間、50nsと100nsとの間、100nsと1μsのとの間、1μsと10μsのとの間、10μsと100μsとの間、および/または10μsと50μsとの間など、10nsと100μsとの間にすることができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるピクセルの動作は、本明細書に記載される期間の間の期間を含んでもよく、および/または本明細書に記載される一定の期間を省いてもよいことは理解されたい。いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるピクセルの動作は、例えば、期間1-5が完了した後に新たな期間(例えば、期間1-1から1-5のいずれでもない)に移行することによって、周期的ではなくてもよいことも理解されたい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される期間は、本明細書に記載されるものとは異なる順序で起こってもよい。
【0084】
図1-9は10msの持続期間を有する収集シーケンスを示しており、収集シーケンスごとに、電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1までの電荷キャリアの転送は1回であるが、他の収集シーケンスの持続時間も可能であることも理解されたい。例えば、図1-9の実施例では、毎秒、電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1への100回の転送が起こってよい。本明細書に記載される実施形態ではそのように制限されていないため、この転送は、毎秒あたり少なくとも50回、少なくとも75回、および/または少なくとも100回、あるいは毎秒あたり任意の他の適切な回数起こることができる。
【0085】
[V.例示的な三重電荷蓄積ピクセル構造]
本開示のいくつかの態様は、3以上の電荷蓄積領域(例えば、ピクセルごとに)を有する集積回路に関する。図2-1は、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102に含むことのできるピクセル2-112の断面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル2-112は、図1-1~図1-9に関連してピクセル1-112について説明したように構成することができる。例えば、図2-1に図示されるように、ピクセル2-112は、光検出領域PPDと、電荷蓄積領域SD0およびSD1と、読み出し領域FDと、ドレイン領域Dと、転送ゲートとを含み、その各々はピクセル1-112に関して説明されるように構成することができる。ピクセル2-112は、電荷蓄積領域SD1と読み出し領域FDとの間に電気的に結合されている電荷蓄積領域SD2をさらに含む。例えば、転送チャネルは電荷蓄積領域SD1を電荷蓄積領域SD2に、また電荷蓄積領域SD2を読み出し領域FDに電気的に結合することができる。図2-1では、転送ゲートTX0は、電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2への電荷キャリアの転送を制御するように構成され、転送ゲートTX1は、電荷蓄積領域SD2から読み出し領域FDへの電荷キャリアの転送を制御するように構成される。
【0086】
図2-2は、いくつかの実施形態による、ピクセル2-112の回路図である。図2-2に図示されるように、電荷蓄積領域SD1を電荷蓄積領域SD2に電気的に結合する転送チャネルは転送ゲートTX0を有するトランジスタのチャネルであり、電荷蓄積領域SD2を読み出し領域FDに電気的に結合する転送チャネルは転送ゲートTX1を有するトランジスタのチャネルである。リセットゲートRSTを有するトランジスタおよび行選択転送ゲートRSを有するトランジスタなど、図2-2に図示されるピクセル2-112の他のトランジスタは、図1-3Aおよび図1-3Bに関連してピクセル1-112について説明したように構成することができる。例えば、ピクセル2-112のアレイは、図1-3Bおよび図1-3Cに関連してピクセル1-112について本明細書に説明される処理回路部を備える構成で配列することができる。
【0087】
図2-3は、いくつかの実施形態による、集積デバイス1-102に含むことのできるピクセル2-112’の上面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル2-112’は、ピクセル1-112’について本明細書で説明したように構成することができる。例えば、ピクセル2-112’の光検出領域PPDは、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0およびドレイン領域Dに向かう方向に、真性電界を誘起するように構成することができる。図2-3では、電荷蓄積領域SD2は2つのサブ領域SD2-0およびSD2-1を有することができる。
【0088】
図2-4は、いくつかの実施形態による、ピクセル2-112’のコンタクトおよびルーティングチャネルを示す代替上面図である。図2-4に図示されるように、ルーティングチャネルVST0、VST1およびVTX0の第1層は、それぞれ転送ゲートST0、ST1およびTX0に結合される。図2-4は、それぞれ転送ゲートRS、TX1およびRSTに結合されるルーティングチャネルVRS、VTX1およびVRSTの第2層も示す。ルーティングチャネルの第2層は、読み出し領域FDと、転送ゲートRSによって制御される転送チャネルに読み出し領域FDを結合するソースフォロワ(SF)転送ゲートとの間に結合されているルーティングチャネルを含むことも示される(例えば、図2-2に概略的に示される)。ルーティングチャネルVREJ、VDDP、V、およびビットラインの第3層は、それぞれ転送ゲートREJ、転送ゲートRSTによって制御される転送チャネル、ドレイン領域D、および転送ゲートRSによって制御される転送チャネルに結合されていることが示されている。
【0089】
図2-4は、光検出領域PPDの両側に位置決めされている1対のコンタクト、および光検出領域PPDの反対のピクセル2-112’の端に位置決めされている第3コンタクトも示しており、これはピクセル1-112’のコンタクトについて説明したように構成することができる。
【0090】
ピクセル1-112’の読み出し領域FDは、ピクセル1-112’の層上の転送ゲートSF(図1-5には図示せず)に、ピクセル2-112’について本明細書で説明したように電気的に結合されてもよいことは理解されたい。いくつかの実施形態において、図2-4に図示されるルーティングチャネルは、ピクセル1-112’の集積デバイス1-102に含めることもできる。
【0091】
図2-5は、いくつかの実施形態による、図2-3に示される断面B-B’に沿った図2-3のピクセルの図である。図2-5は、ピクセル2-112’の保護層、収集層、ならびにバリアBPWおよびLPWをさらに示しており、これらはピクセル1-112’の保護層、収集層、ならびにバリアBPWおよびLPWについて説明したように構成することができる。例えば、保護層、収集層、ならびにバリアBPWおよびLPWは、ノイズ電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0、SD1およびSD2ならびに読み出し領域FDに到達するのを防止するように構成することができる。
【0092】
図2-6は、いくつかの実施形態による、ピクセル2-112’の一部分の真性電位対位置のグラフである。図2-6に図示されるように、ピクセル2-112’は、ピクセル1-112’について説明されたように、光検出領域PPDから読み出し領域FDへ真性電界を誘起するように構成することができる。例えば、図2-6に図示されるように、光検出領域PPDは第1真性電位レベルを有するように構成することができ、電荷蓄積領域SD0は第1真性電位レベルより高い第2真性電位レベルを有するように構成することができ、電荷蓄積領域SD1は第2真性電位レベルより高い第3真性電位レベルを有するように構成することができ、電荷蓄積領域SD2のサブ領域SD2-0およびSD2-1は第3真性電位レベルより高い第4および第5の真性電位レベルを有するように構成することができ(例えば、ピクセル1-112’の電荷蓄積領域SD1のサブ領域SD1-0およびSD1-1について説明したように)、読み出し領域FDは第5真性電位レベルより高い第6真性電位レベルを有するように構成することができる。いくつかの実施形態において、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0、SD1およびSD2、ならびに読み出し領域FDの真性電位は、図1-7に関連してピクセル1-112’について本明細書で説明したように、光検出領域PPDから読み出し領域FDへと連続して低下することは理解されたい。
【0093】
電荷蓄積領域SD0およびSD1の両方またはいずれかは、代替的にまたは付加的に、電荷蓄積領域SD2について本明細書で説明した2以上のサブ領域を含んでもよいことは理解されたい。例えば、電荷蓄積領域SD0やSD1のサブ領域は、サブ領域SD2-0およびSD2-1について本明細書で説明するように、異なる真性電位レベルを有することができる。
【0094】
[VI.例示的な三重電荷蓄積ピクセルの動作]
図2-7は、いくつかの実施形態による、ピクセル2-112の動作の期間中の電荷転送を示す図である。図2-7に図示されるように、ピクセル2-112の動作は、期間2-1、2-2、2-3、2-4、2-5および2-6で行われる多数の電荷収集および転送ステップを含む。図2-8aは、いくつかの実施形態による、0からN-1まで符号が付けられたN個のピクセル2-112の転送ゲートREJ、ST0、ST1、TX0、TX1、RSTおよびRSで受け取られる制御信号のタイムグラフ2-800である。図2-8bは、図2-8aに図示されるタイムグラフ2-800の一部分の拡大図である。図2-7ならびに図2-8aおよび図2-8bの説明はピクセル2-112の動作しか述べていないが、ピクセル2-112’はピクセル2-112について本明細書で説明されるのと同じように動作するように構成することができる。
【0095】
図2-7では、ピクセル2-112の動作は周期的とすることができる。例えば、本明細書でさらに説明するように、各動作サイクルは2-1から2-4の期間中に行うことができ、2-5および2-6の期間中のピクセル動作は、後の動作サイクルの期間2-1中に行うことができる(例えば、次のサイクルの期間2-1中に行われるステップと同時に)。いくつかの実施形態において、図2-8aおよび図2-8bのピクセル0からN-1は、図1-9のピクセル0からN-1について説明されるように構成することができる。いくつかの実施形態において、本明細書で説明されるように、集積デバイス1-102の制御回路および集積デバイス1-102も含むシステムの制御回路、またはそのいずれかの制御回路は、図2-8aおよび図2-8bに図示される制御信号を生成して、ピクセル2-112の各転送ゲートに提供するように構成することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、期間2-1は、図1-8および図1-9に関連して期間1-1について説明したように行われる1つまたは複数の収集シーケンスを含むことができる。例えば、図2-7に図示されるように、電荷キャリアQ1は、期間2-1中に光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られる。いくつかの実施形態において、制御回路が信号を転送ゲートREJに印加して、光検出領域PPDで生成される励起電荷キャリアをドレイン領域Dに転送することのできる排除期間後、制御回路は、収集期間中に、信号を転送ゲートST0に印加して、光検出領域PPDで生成される蛍光電荷キャリアを電荷蓄積領域SD0に転送することができる。いくつかの実施形態において、図2-8aおよび図2-8bの各ピクセル0からN-1の排除や収集の各期間は、実質的に同時に行うことができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、期間2-2は、図1-8および図1-9に関連して期間1-2について説明したように行われる1つまたは複数の転送シーケンスを含むことができる。例えば、図2-7に図示されるように、電荷キャリアQ1は、期間2-2中に電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1を介して電荷蓄積領域SD2に転送される。いくつかの実施形態において、制御回路は、期間2-2中に、信号を転送ゲートST1に印加して、電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に電荷キャリアを転送することができる。図2-8aに図示されるように、制御回路は、期間2-2中に、信号を転送ゲートTX0に印加して、電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2に電荷キャリアを転送することができる。いくつかの実施形態において、各ピクセル0からN-1で、電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1を介して電荷蓄積領域SD2に実質的に同時に転送されることができる。
【0098】
いくつかの実施形態において、期間2-3は、期間2-1について説明したように行われる1つまたは複数の収集シーケンスを含むことができる。例えば、図2-7に図示されるように、期間2-3中に、電荷キャリアQ2は光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られ、電荷キャリアQ1は電荷蓄積領域SD2に蓄積されたままである。図2-8aに図示されるように、期間2-3中に転送ゲートST1、TX0またはTX1に信号は印加されない。
【0099】
いくつかの実施形態において、期間2-4は、図1-8および図1-9に関連して期間1-2について説明したように行われる1つまたは複数の転送シーケンスを含むことができる。例えば、図2-7に図示されるように、期間2-4中に、電荷キャリアQ2は電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に転送され、電荷キャリアQ1は電荷蓄積領域SD2に蓄積されたままである。図2-8aでは、前の動作サイクルの期間2-4は、図示される動作サイクルの期間2-1の前に起こっていることが示されている。図2-8aに図示される期間2-4中、制御回路は信号を転送ゲートST1に印加して、電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に電荷キャリアを転送することができる。いくつかの実施形態において、期間2-4は、各ピクセル0からN-1について実質的に同時に起こることができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、期間2-5は、図1-8および図1-9に関連して期間1-5について説明したように行われる収集シーケンスおよび1つまたは複数の読み出しシーケンスを含むことができる。例えば、図2-7に図示されるように、電荷キャリアQ1’は、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られる。この実施例では、図示される動作サイクルの期間2-5は、少なくとも部分的に、後のサイクルの期間2-1(例えば、電荷キャリアQ1が特定のピクセルから読み出されるとき)と重なるため、電荷キャリアQ1’を受け取ることは、後の動作サイクルの期間2-1中にも起こる。図2-8aでは、前の動作サイクルの期間2-5は、図示される動作サイクルの期間2-1中に示されている。図2-8aおよび図2-8bに図示されるようないくつかの実施形態において、期間2-5は期間2-5aの後に起こることができ、その中で信号が転送ゲートRTSに印加されて、読み出し領域FDで電圧をリセットする。例えば、図1-8および図1-9に関連してなどここに説明されるように、読み出し領域FDに電気的に結合されている処理回路部は、電圧がリセットされた後に読み出し領域FDの第1電圧をサンプリングし、電荷キャリアQ1が読み出し領域FDへと転送された後に読み出しFDの第2電圧をサンプリングすることができる。期間2-5aは後の動作サイクルの期間2-1中にも起こることができる。図2-8aでは、各ピクセル0からN-1は、電荷キャリアがピクセルの読み出し領域FDから読み出されるそれ自体の期間2-5、および読み出し領域FDの電圧がリセットされるそれ自体の期間2-5aを有する。図2-8aおよび図2-8bでは、期間2-5および2-5aはピクセル0について示されているが、ピクセル1からN-1についても、ピクセル0について説明されるように起こる。
【0101】
いくつかの実施形態において、期間2-6は、期間2-5について説明したように行われる1つまたは複数の収集シーケンスおよび1つまたは複数の読み出しシーケンスを含むことができる。例えば、図2-7では、期間2-6中に、電荷キャリアQ1’は光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られ、電荷キャリアQ2は電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2に、また電荷蓄積領域SD2から読み出し領域FDへと転送される。いくつかの実施形態において、読み出し領域FDの電圧は、読み出し領域FDへの電荷キャリアQ1とQ2の読み出し間にリセットしなくてもよい。例えば、読み出し領域FDに電気的に結合されている処理回路部は、読み出し領域FDの電圧がリセットされた後かつ電荷キャリアQ1が読み出し領域FDへと転送される前に、読み出し領域FDの第1電圧をサンプリングし、電荷キャリアQ1が読み出し領域FDへ転送された後に読み出しFDの第2電圧をサンプリングし、電荷キャリアQ2が読み出し領域FDへ転送された後に読み出しFDの第3電圧をサンプリングすることができる。この実施例では、第2電圧は電荷キャリアQ1の数を示すことができ(例えば、第1電圧レベルと比較して)、第3電圧レベルは電荷キャリアQ2の数を示すことができる(例えば、第2電圧レベルと比較して)。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は、集積デバイス1-102の各ピクセル2-112の読み出し領域FDを読み出すために、このプロセスを繰り返すことができる。
【0102】
図2-7では、期間2-5について説明されるように、期間2-6は後の動作サイクルの期間2-1(の少なくとも一部)中に起こる。いくつかの実施形態において、期間2-5および2-6は、後のサイクルの期間2-1の単一の収集シーケンスの過程中に起こることができる。図2-8aおよび図2-8bに図示されるように、制御回路は信号を転送ゲートTX1およびTX0に印加して、電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2を介して読み出し領域FDに電荷キャリアを転送することができる。図2-8aおよび図2-8bに図示されるようないくつかの実施形態において、期間2-6の後に期間2-7が起こることができ、その間に制御回路は、読み出し領域FDから電荷キャリアが読み出された後に、信号を転送ゲートRST、TX1およびTX0に印加して、電荷蓄積領域SD1およびSD2の電圧をリセットすることができる。
【0103】
図2-8aおよび図2-8bでは、期間2-5a、2-5、2-6および2-7はピクセル0について示されているが、ピクセル1からN-1についても、ピクセル0について説明したように起こる。例えば、各ピクセル0からN-1は、それぞれの期間に電荷キャリアをピクセルの読み出し領域FDから読み出すことのできるそれ自体の期間2-5および期間2-6、ならびに読み出し領域FDおよび/または電荷蓄積領域SD1およびSD2の電圧をリセットすることのできる期間2-5aおよび2-7を有することができる。
【0104】
図1-9について本明細書に説明されるような図2-8aおよび図2-8bの実施例では、本明細書に記載される実施形態ではそのように制限されていないため、電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1または電荷蓄積領域SD2への電荷キャリアの転送は、適宜、毎秒あたり少なくとも50回、少なくとも75回、および/または少なくとも100回、あるいは毎秒あたり任意の他の適切な回数起こることができる。
【0105】
図2-9は、いくつかの実施形態による、ピクセル2-112(および/またはピクセル2-112’)の代替動作スキームの期間中の電荷転送を示す図である。図2-9に図示されるように、ピクセル2-112の動作は、期間2-1’、2-2’、2-3’、2-4’、2-5’および2-6’で行われる多数の電荷収集および転送ステップを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、期間2-1’および2-2’の動作は、図2-9では電荷キャリアQ1が期間2-2’中に電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に転送されることしか示されていないことを除き、図2-7に関連して期間2-1および2-2について説明されたように行うことができる。いくつかの実施形態において、電荷キャリアQ1は、期間2-2’中に電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1を介して電荷蓄積領域SD2に転送できることは理解されたい。いくつかの実施形態において、各ピクセル2-112またはピクセル2-112の部分集合で、電荷キャリアQ1が電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に、実質的に同時に転送されることができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、期間2-3’は図2-7に関連して期間2-3について説明したように行うことができ、電荷キャリアQ2は光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られる。図2-9では、電荷キャリアQ1は、期間2-3’中に電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2に転送される。いくつかの実施形態において、各ピクセル2-112またはピクセル2-112の部分集合で、電荷キャリアQ1が電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2に、実質的に同時に転送されることができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、期間2-4’は、1つまたは複数の転送シーケンスおよび1つまたは複数の読み出しシーケンスを含むことができる。例えば、図2-9では、電荷キャリアQ2は電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に転送され、電荷キャリアQ1は電荷蓄積領域SD2から読み出し領域FDに転送される。いくつかの実施形態において、各ピクセル2-112またはピクセル2-112の部分集合で、電荷キャリアQ2が電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に、実質的に同時に転送されることができる。いくつかの実施形態において、各ピクセル2-112またはピクセル1-112の各部分集合は、電荷キャリアがピクセルの読み出し領域FDから読み出される、期間2-4’のうちそれ自体の部分を有することができる。いくつかの実施形態において、電荷キャリアQ1が読み出し領域FDに転送される前に、読み出し領域FDの電圧をリセットすることができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、期間2-5’および2-6’は、それぞれ期間2-3’および期間2-4’について説明したように行うことができる。例えば、図2-9では、期間2-5’中に、電荷キャリアQ1’は光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られ、電荷キャリアQ2は電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2転送され、また期間2-6’中に、電荷キャリアQ1’は電荷蓄積領域SD0から電荷蓄積領域SD1に転送され、電荷キャリアQ2は電荷蓄積領域SD2から読み出し領域FDに転送される。図2-9では、期間2-5および2-6について本明細書で説明されるように、期間2-5’および2-6’の両方またはいずれか一方は後の動作サイクルの期間2-1’中に起こることができる。例えば、電荷キャリアQ1’が光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0で受け取られる期間の少なくとも一部分の間に、電荷キャリアQ2は電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2に転送することができ、および/または電荷蓄積領域SD2から読み出し領域FDに読み出すことができる。
【0110】
[VII.順次結合される蓄積部を備える追加の例示的な構造]
前述の実施例において、集積デバイス1-102は、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、ならびに読み出し領域FDが転送ゲートREJ、ST0、TX0およびTX1から離間する方向に、入射光子を受け取る構成を示している。いくつかの実施形態において、集積デバイス1-102は表面照射型(FSI)構成を有することができる。
【0111】
本開示のいくつかの態様は、他の方向に入射光子を受け取るように構成され、集積デバイス1-102について本明細書に説明されるように、多数の順次結合される電荷蓄積領域を含む構造に関する。例えば、発明者らは、転送ゲートが光検出領域、電荷蓄積領域および/または読み出し領域から離間する方向に入射光子を受け取るように構成される集積デバイスが、転送ゲートの光学特性が入射光子に対して低減された影響を有するため、改善された光学特性および電気特性を有し得ることを認識した。
【0112】
図3-1は、いくつかの実施形態による、ピクセル3-112の行を示す代替の例示的な集積デバイス3-102の断面概略図である。
いくつかの実施形態において、集積デバイス3-102は、集積デバイス1-102について本明細書で説明したように構成することができる。例えば、図3-1に図示されるように、集積デバイス3-102は、1つまたは複数の格子カプラ3-216を含む結合領域3-201と、1つまたは複数の導波路3-220を含むルーティング領域3-202と、1つまたは複数のピクセル3-112を含むピクセル領域3-203とを含むことができる。図3-1では、例示的なピクセル3-112が点線のボックスで示されており、サンプルウェル3-108および光検出器3-110を含む。図3-1にさらに図示されているのは、集積デバイス3-102がサンプルウェル3-108と光検出器3-110との間に位置決めされる1つまたは複数のフォトニック構造3-230を含むことができることである。
【0113】
図3-1に図示されるように、集積デバイス3-102は第1側で入射光子を受け取るように構成されることが示されており、金属層3-240は、集積デバイス3-102が入射光子を受け取るように構成される方向の第1側とは反対の、集積デバイス3-102の第2側に位置決めされている。いくつかの実施形態において、集積デバイス3-102は裏面照射型(BSI)構成を有することができる。
【0114】
図3-2は、いくつかの実施形態による、集積デバイス3-102の例示的なピクセル3-112を示す断面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル3-112は、本明細書に記載されるピクセル1-112、ピクセル1-112’、ピクセル2-112、ピクセル2-112’および/または任意の他のピクセルについて本明細書で説明したように構成することができる。例えば、図3-2に図示されるように、ピクセル3-112は、光検出領域PPDと、2つの電荷蓄積領域SD0およびSD1と、読み出し領域FDと、ドレイン領域Dと、転送ゲートST0、TX0、TX1およびREJとを含むことができる。ピクセル3-112は、ピクセル1-112、1-112’、2-112および2-112’について本明細書で説明されるように、任意の数の電荷蓄積領域を含むことができることは理解されたい。
【0115】
図3-2に図示されるように、転送ゲートST0、TX0、TX1およびREJは、光検出領域PPDが入射光子を受け取るように構成される方向Dir1に、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、読み出し領域FDおよびドレイン領域Dから離間させることができる。図3-2にさらに図示されているのは、金属層3-240が、光検出領域PPD、電荷蓄積領域SD0およびSD1、読み出し領域FDおよびドレイン領域D、ならびに転送ゲートST0、TX0、TX1およびREJから方向Dir1に離間させることができることである。
【0116】
図3-2では、電荷蓄積領域SD0は、方向Dir1に垂直な第2方向に、光検出領域PPDから離間し、電荷蓄積領域SD1は電荷蓄積領域SD0から第2方向に離間している。図3-2にさらに図示されているのは、転送ゲートST0が光検出領域PPDから第2方向に離間し、転送ゲートTX0が転送ゲートST0から第2方向に離間していることである。いくつかの実施形態において、読み出し領域FDは電荷蓄積領域SD1から第2方向に離間させることができ、および/または転送ゲートTX1は転送ゲートTX0から第2方向に離間させることができる(例えば、図3-3B、図3-4)。代替的にまたは付加的に、いくつかの実施形態において、読み出し領域FDは電荷蓄積領域SD1から第2方向とは異なる第3方向に離間させることができ、および/または転送ゲートTX1は転送ゲートTX0から第3方向に離間させることができる(例えば、図3-5A、図3-6)。
【0117】
いくつかの実施形態において、ピクセル3-2は、光検出領域PPDに並んで位置決めされる1つまたは複数の帯電および/またはバイアス(C/B)領域を含むことができる。例えば、C/B領域は、光検出領域PPDから電荷キャリアを内因的に空にする酸化物層(例えば、二酸化ケイ素)内に1つまたは複数の電荷層(例えば、酸化アルミニウムなどの金属酸化物化合物)を含むことができる。代替的にまたは付加的に、C/B領域は、バイアス電圧をC/B領域に印加したときに光検出領域PPDから電荷キャリアを空にするバイアス電圧(例えば、電源によって供給される)への結合のために構成される導電材料(例えば、金属)を含むことができる。発明者らは、C/B領域が、光検出領域PPDで生成される電荷キャリアがドレイン領域および/または電荷蓄積領域SD0,SD1に流れる速度を増大することができることを認識している。いくつかの実施形態において、C/B領域は、光検出領域PPDが入射光子を受け取るように構成される側を除き、光検出領域PPDの各側に位置決めすることができる。
【0118】
図3-3Aは、いくつかの実施形態による、集積デバイス3-102に含むことのできる代替の例示的なピクセル3-312の断面図である。図3-3Bは、いくつかの実施形態による、ピクセル3-312の一部分の上面図である。
【0119】
いくつかの実施形態において、ピクセル3-312は、本明細書に記載されるピクセル1-112’および/または任意の他のピクセルについて本明細書で説明したように構成することができる。例えば、図3-3Aおよび図3-3Bに図示されるように、ピクセル3-312は、電荷キャリアが電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDに到達するのを阻止するように位置決めされるバリアBPWおよびLPWを含むことができる。
【0120】
図3-3Aおよび図3-3Bに図示されるように、電荷蓄積領域SD1は第1および第2のサブ領域SD1-0およびSD1-1を有することができ、これらはピクセル1-112’の第1および第2のサブ領域SD1-0およびSD1-1、および/またはピクセル2-112’の第1および第2のサブ領域SD2-0およびSD2-1について本明細書で説明されるように構成することができる。図3-3Aおよび図3-3Bにさらに図示されるのは、電荷蓄積領域SD0が第1および第2のサブ領域SD0-0およびSD0-1を有することができ、これらは第1および第2のサブ領域SD1-0およびSD1-1ならびにSD2-0およびSD2-1について説明されるように異なる真性電位レベルを有することができることである。例えば、第1および第2のサブ領域SD0-0およびSD0-1は、第2サブ領域SD0-1が第1サブ領域SD0-0よりも高いドーピング濃度を有するためなどにより、異なるピニング電圧を有することができる。
【0121】
図3-3Aに図示されるように、光検出領域PPDは、光検出領域PPDが入射光子を受け取るように構成される方向Dir1に隔てられた第1および第2のサブ領域PPD-0およびPPD-1を含むことができる。いくつかの実施形態において、ピクセル3-312のC/B領域は、第1サブ領域PPD-0から電荷キャリアを空にするように構成することができる。いくつかの実施形態において、第2サブ領域PPD-1の電荷キャリアは、転送ゲートREJがバイアスされて電荷キャリアをドレイン領域Dに流させるとき、および転送ゲートST0がバイアスされて電荷キャリアを電荷蓄積領域SD0に流させるとき、またはそのいずれかのときに、空にすることができる。いくつかの実施形態において、電荷キャリアが方向Dir1に流れる速度をさらに増大させるために、第1サブ領域PPD-0は第2サブ領域PPD-1よりも高いドーパント濃度を有することができる。
【0122】
図3-3Aおよび図3-3Bにさらに図示されるのは、ピクセル3-312が、C/B領域の周りおよびC/B領域と光検出領域PPDとの間、またはC/B領域の周りもしくはC/B領域と光検出領域PPDとの間に配設される、バリアDPIを含むことができることである。例えば、バリアDPIは、電荷キャリアが隣り合うピクセル3-312間に流れるのを阻止するように、および/またはC/B領域の周りに電荷分離を施すように構成することができる。図3-3Aにさらに図示されるのは、少なくともいくつかの光子がピクセル3-312の電荷蓄積領域SD0およびSD1ならびに読み出し領域FDに到達するのを阻止するために、ピクセル3-312の少なくとも一部分の上に金属シールドを配設することができることである。図3-3Aにさらに図示されるのは、金属シールドが入射光子が光検出領域PPDに到達するための開口部を含むことができることである。図3-3Aに図示されるように、金属シールドは、ピクセル3-312の表面(例えば、光検出領域PPDの)から、方向Dir1に、100ナノメートル(nm)以下などのギャップ分だけずらすことができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、ピクセル3-312は、ピクセル3-312のドレイン領域Dと読み出し回路部との間に位置決めされる1つまたは複数のバリアを含むことができる。例えば、図3-3Bに図示されるように、分離バリアISOをドレイン領域Dと転送ゲートRST、SFおよびRSとの間に位置決めすることができる。例えば、分離バリアISOは、図3-3Bで転送ゲートRST、SFおよびRSの下に示されるピクセル3-312のドープ部分間に1つまたは複数のホウ素インプラントを注入することによって形成することができる。発明者らは、分離バリアISOが、電荷キャリアがドレイン領域Dと読み出し回路部との間で移動するのを防止することができることを認識しており、これは電荷キャリアがピクセル3-312から読み出される精度に影響を与える可能性がある。ある場合には、酸化物バリアではなく(または、それに加えて)注入された分離バリアISOを使用することは、電荷蓄積領域に到達する暗電流およびノイズ電荷キャリアを低減することができる。
【0124】
図3-4は、いくつかの実施形態による、集積デバイス3-102に含むことのできる代替の読み出し構成を有する例示的なピクセル3-412の上面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル3-412は、本明細書に記載されるピクセル3-312および/または任意の他のピクセルについて本明細書で説明したように構成することができる。いくつかの実施形態において、ピクセル3-412の読み出し回路部は角度オフセットすることができる。例えば、図3-4に図示されるように、読み出し回路部は読み出し領域FDに従って角度オフセットすることができる(例えば、45度)。発明者らは、角度オフセットされた読み出し回路部がピクセル3-412の幅寸法(例えば、電荷蓄積領域SD0からドレイン領域Dの方向)を減少させることができ、ピクセル3-412を小さくさせられることを認識している。図3-4にさらに図示されるのは、1つまたは複数の分離バリアISOが、ピクセル3-312について本明細書に説明されるように、ドレイン領域Dと角度オフセットされた読み出し回路部との間に位置決めすることができる。
【0125】
図3-5Aは、いくつかの実施形態による、集積デバイス3-102に含むことのできるさらに代替の読み出し構成を有する例示的なピクセル3-512の上面図である。図3-5Bは、いくつかの実施形態による、図3-5Aの断面C-C’に沿ったピクセル3-512の図である。いくつかの実施形態において、ピクセル3-512は、本明細書に記載されるピクセル3-312、3-412および/または任意の他のピクセルについて本明細書で説明したように構成することができる。図3-5Aに図示されるように、ピクセル3-512の読み出し回路部は、例えば、ピクセル1-112’について本明細書で説明したように位置決めすることができる。
【0126】
図3-5Aおよび図3-5Bに図示されるように、1つまたは複数の分離バリアISOは、ドレイン領域Dと転送ゲートSFおよびRSとの間および転送ゲートSFおよびRSと転送ゲートTX1およびRSTとの間の両方、またはそのいずれかの間に位置決めすることができる。図3-5Bに図示されるように、ドレイン領域Dと転送ゲートSFとの間の分離バリアISOは、ドレイン領域Dや転送ゲートSFの下のドープ領域よりも深くピクセル3-512の中に延びることができる(例えば、転送ゲートSFが配設されている表面から離れて)。
【0127】
図3-5Aにさらに図示されるのは、ドレイン領域D、ピクセル3-512の読み出し回路部のドープ部分(例えば、読み出し領域FD)、および分離バリアISOは、分離バリアISOとドレイン領域Dおよび/または読み出し回路部のドープ部分との間にギャップGを提供するように位置決めすることができることである。発明者らは、ピクセル3-512の分離バリアとドープ部分との間のギャップGが、ピクセル3-512のドープ部分と隣のドープ部分との間(例えば、ドレイン領域Dと転送ゲートSFの下のドープ部分との間)の電界をさらに減らすことができ、それにより電荷キャリアが分離バリアを越えていくのをさらに防止することを認識した。いくつかの実施形態において、ギャップGは、動作中(例えば、バイアス電圧がピクセルに印加されるとき)、ピクセル内の電界を500,000V/cm未満にさせるようなサイズにすることができる。図3-3Aから図3-4では符号を付けていないが、ピクセルの読み出し回路部、ドレイン領域Dおよび分離バリアISOは、ピクセル3-512について本明細書で説明されるようにギャップを作るように位置決めすることができることは理解されたい。
【0128】
図3-2から図3-5に関連して本明細書で説明されるピクセルは、前の実施例で図示される分離バリアのいくつかまたはすべてを含まなくてもよいことはさらに理解されたい。
【0129】
図3-6は、いくつかの実施形態による、集積デバイス3-102に含むことのできるさらに代替のピクセル3-612の上面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル3-612は、本明細書に記載されるピクセル3-312、3-412、3-512および/または任意の他のピクセルについて本明細書で説明したように構成することができる。図3-6に図示されるように、ピクセル3-612の読み出し回路部は、ピクセル3-512について本明細書で説明したように位置決めすることができる。図3-6にさらに図示されるのは、ピクセル3-612のドレイン領域Dおよび読み出し回路部は、その間に分離バリアISOなしで位置決めすることができることである。図3-6では、バリアBPWの一部分は、転送ゲートTX1および読み出し領域FDの下に位置決めされて示されている。図3-6はピクセル3-612のC/B領域も示しており、これは図示されていないがピクセル3-412および3-512の両方またはいずれか一方にも含まれてもよい。図3-6では、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0の方向および/または光検出領域PPDからドレイン領域Dの方向に平行に走るC/B領域は、ピクセル3-712の周囲に沿って連続して示されている。図3-7にさらに図示されるのは、電荷蓄積領域SD0からドレイン領域Dの方向に平行に走るC/B領域が、C/B領域の部分を隔てるギャップありで、ピクセル3-712の周囲に沿って断続的に示されている。
【0130】
図3-7は、いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできるC/B領域の代替構成を有する例示的なピクセル3-712の上面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル3-712は、本明細書に記載されるピクセル3-312、3-412、3-512、3-612および/または任意の他のピクセルについて本明細書で説明したように構成することができる。図3-7では、電荷蓄積領域SD0からドレイン領域Dの方向に平行に走るC/B領域は、ピクセル3-712の周囲に沿って連続して示されている。図3-7にさらに図示されるのは、光検出領域PPDから電荷蓄積領域SD0の方向および/または光検出領域PPDからドレイン領域Dの方向に平行に走るC/B領域が、C/B領域の部分を隔てるギャップありで、ピクセル3-712の周囲に沿って断続的に示されている。
【0131】
図3-8は、いくつかの実施形態による、図3-1の集積デバイスに含むことのできる代替の電荷蓄積領域ドーピング構成を有する例示的なピクセルの上面図である。いくつかの実施形態において、ピクセル3-812は、本明細書に記載されるピクセル3-312、3-412、3-512、3-612および/または任意の他のピクセルについて本明細書で説明したように構成することができる。図3-8に図示されるように、電荷蓄積領域SD1はサブ領域SD1-0、SD1-1およびSD1-2を含むことができる。例えば、サブ領域SD1-2は、サブ領域SD1-1とは異なる真性電位レベルを有することができる。例えば、サブ領域SD1-1およびSD1-2は、サブ領域SD1-2がサブ領域SD1-1よりも高いドーパント濃度を有するためなどにより、異なるピニング電圧を有することができる。
【0132】
図3-2から図3-5に関連して本明細書で説明される例示的なピクセル構成は、2つの順次結合される電荷蓄積領域を有するが、本明細書に記載される実施形態はそのように制限されないため、このようなピクセルは3以上の電荷蓄積領域を有することができることは理解されたい。
【0133】
[VIII.DNAシークエンシングアプリケーションおよび/またはRNAシークエンシングアプリケーション]
本明細書で説明される分析システムは、集積デバイス、および、集積デバイスとインターフェースするように構成されている機器を含むことができる。集積デバイスはピクセルのアレイを含むことができ、この場合、ピクセルは、反応チャンバおよび少なくとも1つの光検出器を含む。集積デバイスの表面は、複数の反応チャンバを有することができ、この場合、反応チャンバは、集積デバイスの表面に配置される懸濁液からサンプルを受け取るように構成されている。懸濁液は、同じタイプの複数のサンプル、および、いくつかの実施形態においては異なるタイプのサンプルを含有することができる。この点に関し、「本明細書で使用される「対象のサンプル」という句は、例えば、懸濁液に分散される同じタイプの複数のサンプルを指すことができる。同様に、本明細書で使用される「対象の分子」という句は、懸濁液に分散される同じタイプの複数の分子を指すことができる。複数の反応チャンバは、反応チャンバの少なくとも一部分が懸濁液から1つのサンプルを受け取るように、好適なサイズおよび形状を有することができる。いくつかの実施形態においては、反応チャンバ内のサンプルの数は、いくつかの反応チャンバが1つのサンプルを含有し、他の反応チャンバがゼロ個、2個またはそれ以上のサンプルを含有するように、反応チャンバ間で分配することができる。
【0134】
いくつかの実施形態においては、懸濁液は、複数の一本鎖DNAテンプレートを含むことができ、集積デバイスの表面上の個々の反応チャンバは、シークエンシングテンプレートを受け取るようにサイズ決めおよび形状決めすることができる。シークエンシングテンプレートは、集積デバイスの反応チャンバの少なくとも一部分がシークエンシングテンプレートを含有するように、集積デバイスの反応チャンバ間で分配することができる。懸濁液は、ラベリングされたヌクレオチドも含有することができ、これは、次に、反応チャンバに入り、反応チャンバ内の一本鎖DNAテンプレートに対して相補的なDNAの鎖に組み込まれると、ヌクレオチドの同定を可能にすることができる。いくつかの実施形態においては、懸濁液はシークエンシングテンプレートを含有することができ、ラベリングされたヌクレオチドは、ヌクレオチドが反応チャンバ内の相補的な鎖に組み込まれると、続いて反応チャンバに導入されることができる。このように、ヌクレオチドの組み込みのタイミングは、ラベリングされたヌクレオチドが集積デバイスの反応チャンバに導入される時によって制御することができる。
【0135】
励起光は、集積デバイスのピクセルアレイから離れて位置付けられる励起源から提供される。励起光は、少なくとも一部が集積デバイスの要素によって、1つまたは複数のピクセルに向かって方向付けられ、反応チャンバ内の照射領域を照らす。次に、マーカが、照射領域内に位置付けられると、励起光によって照らされることに反応して、発光を放出することができる。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の励起源はシステムの機器の一部であり、この場合、機器および集積デバイスの構成要素は、励起光を1つまたは複数のピクセルに向かって方向付けるように構成されている。
【0136】
反応チャンバから(例えば、蛍光ラベルによって)放出される発光は、次に、集積デバイスのピクセル内の1つまたは複数の光検出器によって検出することができる。検出された発光の特徴は、発光に関連付けられるマーカを同定するための指示を提供することができる。そのような特徴は、光検出器によって検出される光子の到着時間、光検出器によって経時にわたって蓄積される光子の量、および/または2つ以上の光検出器にまたがる光子の分布を含む、任意の好適なタイプの特徴を含むことができる。いくつかの実施形態においては、光検出器は、発光に関連付けられる1つまたは複数のタイミング特徴(例えば、蛍光寿命)を検出することを可能にする構造を有することができる。光検出器は、励起光のパルスが集積デバイスを通して伝播した後の光子到着時間の分布を検出することができ、到着時間の分布は、発光のタイミング特徴(例えば、蛍光寿命のプロキシ)の指示を提供することができる。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の光検出器は、マーカによって放出される発光の確率(例えば、蛍光強度)の指示を提供する。いくつかの実施形態においては、複数の光検出器は、発光の空間的な分布を捕捉するようにサイズ決めおよび配置することができる。次に、1つまたは複数の光検出器からの出力信号を使用して、あるマーカを複数のマーカの中から区別することができ、この場合、複数のマーカを使用してサンプルまたはその構造を同定することができる。いくつかの実施形態においては、サンプルは、複数の励起エネルギーによって励起させることができ、複数の励起エネルギーに反応して反応チャンバからの発光および発光のタイミング特徴またはそのいずれかが、マーカを複数のマーカから区別することができる。
【0137】
システム5-100の概略的な概説が、図4-1Aにおいて示されている。システムは、機器5-104とインターフェースする集積デバイス5-102の双方を備える。いくつかの実施形態においては、機器5-104は、機器5-104の一部として集積される1つまたは複数の励起源5-106を含むことができる。いくつかの実施形態においては、励起源は、機器5-104および集積デバイス5-102の双方の外部にあるものとすることができ、機器5-104は、励起光を励起源から受け取るとともに、励起光を集積デバイスに方向付けるように構成することができる。集積デバイスは、集積デバイスを受けるとともに集積デバイスを励起源と光学的に正確に位置合わせして保持するため、任意の好適なソケットを使用して機器とインターフェースすることができる。励起源5-106は、集積デバイス5-102に励起光を提供するように構成することができる。図4-1Aにおいて概略的に示されているように、集積デバイス5-102は、複数のピクセル5-112を有し、この場合、ピクセルの少なくとも一部分は、対象のサンプルの独立した分析を行うことができる。ピクセルがそのピクセルとは別個の源5-106から励起光を受け取るため、そのようなピクセル5-112は、「受動源ピクセル」と称することができ、この場合、この源からの励起光が、ピクセル5-112のうちのいくつかまたはすべてを励起する。励起源5-106は、任意の好適な光源であるものとすることができる。好適な励起源の例は、2015年8月7日に出願され、「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/821,688号に記載されており、参照によりその全体が援用される。いくつかの実施形態においては、励起源5-106は、励起光を集積デバイス5-102に送達するように組み合わせられる複数の励起源を含む。複数の励起源は、複数の励起エネルギーまたは波長を生成するように構成することができる。
【0138】
ピクセル5-112は、単一の対象のサンプルを受け取るように構成されている反応チャンバ5-108、および、励起源5-106によって提供される励起光によってサンプルおよび反応チャンバ5-108の少なくとも一部分を照らすことに反応して、反応チャンバから放出される発光を検出する光検出器5-110を有する。いくつかの実施形態においては、反応チャンバ5-108は、集積デバイス5-102の表面に近接してサンプルを保持することができ、これは、サンプルへの励起光の送達、および、サンプルまたは反応成分(例えば、ラベリングされたヌクレオチド)からの発光の検出を容易にすることができる。
【0139】
励起光源5-106からの励起光を集積デバイス5-102に結合するとともに、励起光を反応チャンバ5-108にガイドする光学素子が、集積デバイス5-102および機器5-104の双方に位置付けられる。源からチャンバへの光学素子は、集積デバイス5-102に位置付けられる1つまたは複数の格子カプラを備えることができ、励起光を集積デバイスおよび導波路に結合して、励起光を機器5-104からピクセル5-112内の反応チャンバに送達する。1つまたは複数の光学スプリッタ素子を、格子カプラと導波路との間に位置決めすることができる。光学スプリッタは、格子カプラからの励起光を結合し、励起光を導波路のうちの少なくとも1つに送達することができる。いくつかの実施形態においては、光学スプリッタは、励起光を、すべての導波路にわたって実質的に均一に送達することを可能にする構造を有することができ、それによって、導波路のそれぞれは、実質的に同様の量の励起光を受け取る。そのような実施形態は、集積デバイスの反応チャンバによって受け取られる励起光の均一性を改善することによって、集積デバイスの性能を改善することができる。
【0140】
反応チャンバ5-108、励起源からチャンバへの光学系の一部分、および、反応チャンバから光検出器への光学系は、集積デバイス5-102に位置付けられる。励起源5-106および源からチャンバへの構成要素の一部分は、機器5-104内に位置付けられる。いくつかの実施形態においては、単一の構成要素が、励起光を反応チャンバ5-108に結合すること、および、反応チャンバ5-108からの発光を光検出器5-110に送達することの双方においての役割を果たすことができる。集積デバイスに含まれるため、励起光を反応チャンバに結合しかつ発光を光検出器に方向付ける、またはそのいずれかのための好適な構成要素の例は、2015年8月7日に出願された「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/821,688号、および、2014年11月17日に出願された「INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING, DETECTING, AND ANALZING MOLECULES」と題する米国特許出願第14/543,865号に記載されており、これらの双方は参照によりその全体が援用される。
【0141】
ピクセル5-112は、それ自体の個々の反応チャンバ5-108および少なくとも1つの光検出器5-110に関連付けられる。集積デバイス5-102の複数のピクセルは、任意の好適な形状、サイズおよび寸法、またはそれらのいずれかを有するように構成することができる。集積デバイス5-102は、任意の好適な数のピクセルを有することができる。集積デバイス5-102内のピクセルの数は、およそ10,000ピクセル~1,000,000ピクセルの範囲内、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲にすることができる。いくつかの実施形態においては、ピクセルは、512個のピクセル×512個のピクセルのアレイに配置することができる。集積デバイス5-102は、任意の好適な方法で機器5-104とインターフェースすることができる。いくつかの実施形態においては、機器5-104は、集積デバイス5-102に着脱可能に結合するインターフェースを有することができ、それによって、ユーザは、集積デバイス5-102の使用のために集積デバイス5-102を機器5-104に取り付け、懸濁液中の少なくとも1つの対象のサンプルを分析するとともに、別の集積デバイスを取り付けることを可能にするために、集積デバイス5-102を機器5-104から取り外すことができる。機器5-104のインターフェースは、機器5-104の回路部と結合するように集積デバイス5-102を位置決めし、1つまたは複数の光検出器からの読み出し信号を機器5-104に送信することを可能にすることができる。集積デバイス5-102および機器5-104は、大きなピクセルアレイ(例えば、10,000超のピクセル)に関連付けられるデータを取り扱うためにマルチチャネル高速通信リンクを含むことができる。
【0142】
ピクセル5-112の行を示す集積デバイス5-102の断面概略図が、図4-1Bに示されている。集積デバイス5-102は、結合領域5-201、ルーティング領域5-202、およびピクセル領域5-203を含むことができる。ピクセル領域5-203は、励起光(破線の矢印として示されている)が集積デバイス5-102に結合するところである、結合領域5-201から離れた位置にある表面に位置決めされた反応チャンバ5-108を有する複数のピクセル5-112を含むことができる。反応チャンバ5-108は金属層5-116を貫通して形成することができる。点線の矩形によって示されている1つのピクセル5-112は、集積デバイス5-102の一領域で、反応チャンバ5-108および1つまたは複数の光検出器5-110を有する光検出領域を含む領域である。
【0143】
図4-1Bは、励起光のビームを結合領域5-201および光検出領域5-108に結合することによって励起の経路を示す(破線で示されている)。図4-1Bにおいて示されている反応チャンバ5-108の行は、導波路5-220と光学的に結合するように位置決めすることができる。励起光は反応チャンバ内に位置づけられるサンプルを照らすことができる。サンプルまたは反応成分(例えば、蛍光ラベル)は、励起光に照らされることに反応して、励起状態に到達することができる。サンプルまたは反応成分が励起状態にあるとき、サンプルまたは反応成分は発光を放出することができ、これを反応チャンバに関連付けられた1つまたは複数の光検出器によって検出することができる。図4-1Bは、反応チャンバ5-108からピクセル5-112の光検出器5-110への発光の経路(実線として示されている)を概略的に示している。ピクセル5-112の光検出器は、反応チャンバ5-108からの発光を検出するように構成および位置決めすることができる。好適な光検出器の例は、2015年8月7日に出願された「INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS」と題する米国特許出願第14/821,656号に記載されており、参照によりその全体が援用される。個々のピクセル5-112に関して、反応チャンバ5-108およびそのそれぞれの光検出器5-110は、共通の軸に沿って(図4-1Bに示されているy方向に沿って)位置合わせすることができる。このように、光検出器はピクセル5-112内で反応チャンバに重なることができる。
【0144】
反応チャンバ5-108からの発光の方向性は、金属層5-116が発光を反射するように作用し得るため、金属層5-116に対する反応チャンバ5-108内におけるサンプルの位置決めに応じて変わる可能性がある。このように、金属層5-116と反応チャンバ5-108内に位置決めされる蛍光マーカとの間の距離は、蛍光マーカによって放出される光を検出するための、反応チャンバと同じピクセル内にある光検出器5-110の、蛍光マーカによって放出される光を検出する効率に影響を与える可能性がある。金属層5-116と、動作中にサンプルを位置決めすることのできる場所に近接する、反応チャンバ5-108の底面との間の距離は、100nm~500nmの範囲、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲にあるものとすることができる。いくつかの実施形態において、金属層5-116と反応チャンバ5-108の底面との間の距離は、およそ300nmである。
【0145】
サンプルと光検出器との間の距離も、発光を検出する効率に影響を与える可能性がある。光がサンプルと光検出器との間を移動しなければならない距離を減らすことによって、発光の検出効率を改善することができる。加えて、サンプルと光検出器との間の距離を小さくすると、集積デバイスに占めるピクセルの設置面積を小さくすることを可能にすることができ、これにより、より多くの数のピクセルを集積デバイスに含めるようにすることができる。反応チャンバ5-108の底面と光検出器との間の距離は、1μm~15μmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲にすることができる。
【0146】
反応チャンバ5-108と光検出器5-110との間にフォトニック構造5-230を位置決めし、励起光が光検出器5-110に到達するのを低減または防止するように構成することができ、そうでなければ、励起光が発光を検出する際の信号ノイズに寄与する可能性がある。図4-1Bに図示するように、1つまたは複数のフォトニック構造5-230を導波路5-220と光検出器5-110の間に位置決めすることができる。フォトニック構造5-230は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタおよび空間フィルタを含む1つまたは複数の光除去フォトニック構造を含むことができる。フォトニック構造5-230は、共通の軸に沿って個々の反応チャンバ5-108およびそれらのそれぞれの光検出器5-110と位置合わせするように位置決めすることができる。集積デバイス5-102の回路部として作用することのできる金属層5-240も、いくつかの実施形態によると、空間フィルタとして作用することができる。そのような実施形態において、1つまたは複数の金属層5-240は、いくらかまたはすべての励起光が光検出器5-110に到達するのを阻止するように位置決めすることができる。
【0147】
結合領域5-201は、外部の励起源からの励起光を結合するように構成された1つまたは複数の光学構成要素を含むことができる。結合領域5-201は、励起光のビームのいくらかまたはすべてを受け取るように位置決めされている格子カプラ5-216を含むことができる。好適な格子カプラの例は、2017年12月15日に出願された「OPTICAL COUPLER AND WAVEGUIDE SYSTEM」と題する米国特許出願第15/844,403号に記載されており、参照によりその全体が援用される。格子カプラ5-216は励起光を導波路5-220に結合することができ、該導波路は励起光を1つまたは複数の反応チャンバ5-108の近傍に伝播するように構成することができる。代替的には、結合領域5-201は、光を導波路内に結合する他の周知の構造を備えることができる。
【0148】
集積デバイスから離れて位置付けられる構成要素を使用して、励起源5-106を集積デバイスに対して位置決めするとともに位置合わせすることができる。このような構成要素は、レンズ、鏡、プリズム、ウィンドウ、アパーチャ、減衰器および/または光ファイバーを含む光学構成要素を含むことができる。付加的な機械的な構成要素を、1つまたは複数の位置合わせ構成要素の制御を可能にするために機器に含めることもできる。そのような機械的な構成要素は、アクチュエータ、ステッパモータおよび/またはノブを含むことができる。好適な励起源および位置合わせ機構の例は、2016年5月20日に出願された「PULSED LASER AND SYSTEM」と題する米国特許出願第15/161,088号に記載されており、参照によりその全体が援用される。ビームステアリングモジュールの別の例は、2017年12月14日に出願された「COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY」と題する米国特許出願第15/842,720号に記載されており、参照により本明細書に援用される。
【0149】
分析されるサンプルは、ピクセル5-112の反応チャンバ5-108内に導入することができる。いくつかの場合においては、懸濁液は、生物サンプル、または、化学的サンプルなどの任意の他の好適なサンプルであるものとすることができる。サンプルは、複数の対象の分子を含むことができ、反応チャンバは、単一の分子を分離するように構成することができる。いくつかの例においては、反応チャンバの寸法は、単一の分子を反応チャンバ内に閉じ込めるように作用することができ、測定を単一の分子に対して行うことを可能にする。励起光は、サンプル、またはサンプルに付けられるか、もしくは反応チャンバ5-108内の照射エリア内にある間にサンプルに別様に関連付けられる少なくとも1つの蛍光マーカを励起するように、反応チャンバ5-108内に送達されることができる。
【0150】
動作時、反応チャンバ内のサンプルの並列な分析を、励起光を使用して反応チャンバ内のサンプルのいくつかまたはすべてを励起し、反応チャンバからの発光を表す信号を光検出器で検出することによって行う。サンプルまたは反応成分(例えば、蛍光ラベル)からの発光は、対応する光検出器によって検出されて、少なくとも1つの電気信号に変換されることができる。電気信号は集積デバイスの回路部の導電線(例えば、金属層5-240)に沿って伝送することができ、該導電線は、集積デバイスとインターフェースする機器に接続することができる。電気信号は、続いて処理および分析される、または処理もしくは分析されることができる。電気信号の処理または分析は、機器上にまたは機器から離れて位置付けられる好適なコンピューティングデバイスにおいて行うことができる。
【0151】
機器5-104は、機器5-104および集積デバイス5-102の両方またはそのいずれかの動作を制御するためにユーザインターフェースを含むことができる。ユーザインターフェースは、ユーザが、機器の機能を制御するために使用されるコマンドおよび設定、またはコマンドもしくは設定などの情報を機器に入力することを可能にするように構成することができる。いくつかの実施形態においては、ユーザインターフェースは、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および、音声命令のためのマイクを含むことができる。ユーザインターフェースは、ユーザが、適切な位置合わせおよび/または集積デバイス上の光検出器からの読み出し信号によって得られる情報などの、機器および集積デバイスのまたはそのいずれかの性能に関するフィードバックを受け取ることを可能にすることができる。いくつかの実施形態においては、ユーザインターフェースは、スピーカを使用してフィードバックを提供し、可聴フィードバックを提供することができる。いくつかの実施形態においては、ユーザインターフェースは、ユーザに視覚的なフィードバックを提供するための、インジケータライトおよびディスプレイスクリーン、またはインジケータライトもしくはディスプレイスクリーンを含むことができる。
【0152】
いくつかの実施形態においては、機器5-104は、コンピューティングデバイスと接続するように構成されているコンピュータインターフェースを含むことができる。コンピュータインターフェースは、USBインターフェース、ファイヤーワイヤーインターフェース、または任意の他の好適なコンピュータインターフェースであるものとすることができる。コンピューティングデバイスは、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、コンピューティングデバイスは、好適なコンピュータインターフェースを介して無線ネットワークを通じてアクセス可能なサーバ(例えば、クラウドベースのサーバ)であるものとすることができる。コンピュータインターフェースは、機器5-104とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を容易にすることができる。機器5-104を制御および構成する、または制御もしくは構成するための入力情報を、コンピュータインターフェースを介して、コンピューティングデバイスに提供するとともに、機器5-104に送信することができる。機器5-104によって発生される出力情報は、コンピュータインターフェースを介してコンピューティングデバイスによって受信されることができる。出力情報は、機器5-104の性能、集積デバイス5-112の性能、および/または、光検出器5-110の読み出し信号から発生されるデータについてのフィードバックを含むことができる。
【0153】
いくつかの実施形態においては、機器5-104は、集積デバイス5-102の1つまたは複数の光検出器から受信されるデータを分析し、かつ制御信号を励起源2-106に送信する、または集積デバイス5-102の1つまたは複数の光検出器から受信されるデータを分析するか、もしくは制御信号を励起源2-106に送信するように構成されている処理デバイスを含むことができる。いくつかの実施形態においては、処理デバイスは、汎用プロセッサ、特別に適応されたプロセッサ(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラコアなどの中央処理ユニット(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組合せ)を含むことができる。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、機器5-104の処理デバイスおよび外部のコンピューティングデバイスの双方によって行うことができる。他の実施形態においては、外部のコンピューティングデバイスは省いてもよく、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、集積デバイス5-102の処理デバイスのみによって行うことができる。
【0154】
図4-1Cを参照すると、持ち運び可能な、高度な分析機器5-100は、機器5-100内に交換可能なモジュールとして実装されるか、または機器5-100に別様に結合される、1つまたは複数のパルス光源を備えることができる。持ち運び可能な分析機器5-100は、光学結合システム5-115および分析システム5-160を含むことができる。光学結合システム5-115は、光学構成要素(例えば、レンズ、鏡、光学フィルタ、減衰器、ビームステアリング構成要素、ビーム成形構成要素の中からいずれも含まないか、1つまたは複数の構成要素を含むことができる)のいくつかの組合せを含み、出力光パルス5-122に対して動作し、かつパルス光源5-106から分析システム5-160まで出力光パルス5-122を結合する、またはその動作もしくは結合を行うように構成することができる。分析システム5-160は、サンプル分析のために少なくとも1つの反応チャンバに光パルスを方向付け、少なくとも1つの反応チャンバから1つまたは複数の光信号(例えば、蛍光、後方散乱放射)を受け取り、受け取った光信号を表す1つまたは複数の電気信号を生成するように構成されている複数の構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態においては、分析システム5-160は、1つまたは複数の光検出器を含むことができ、また光検出器からの電気信号を処理するように構成されている信号処理電子部品(例えば、1つまたは複数のマイクロコントローラ、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ、論理ゲートなど)も含んでもよい。分析システム5-160は、データを外部のデバイス(例えば、機器5-100が1つまたは複数のデータ通信リンクを介して接続することのできるネットワーク上の1つまたは複数の外部デバイス)に送信し、データを外部のデバイスから受信するように構成されているデータ送信ハードウェアも含むことができる。いくつかの実施形態においては、分析システム5-160は、分析される1つまたは複数のサンプルを保持することができるバイオ光電子チップ5-140を受け取るように構成することができる。
【0155】
図4-1Dは、小型のパルス光源5-108を含む持ち運び可能な分析機器5-100のさらに詳細な実施例を示す。この実施例では、パルス光源5-108は、小型の受動モードロックレーザモジュール5-113を備える。受動モードロックレーザは、外部のパルス信号を印加しなくても、光パルスを自律的に生成することができる。いくつかの実施態様では、モジュールは機器のシャーシまたはフレーム5-103に実装することができ、機器の外部ケーシングの内部に位置付けてもよい。いくつかの実施形態によると、パルス光源5-106は、光源を動作させ、光源5-106からの出力ビームを操作するために使用することのできる追加の構成要素を含むことができる。モードロックレーザ5-113は、レーザキャビティ内に、またはレーザキャビティに連結されて、レーザの縦周波数モードの位相同期を誘起する要素(例えば、可飽和吸収体、音響光学変調器、カーレンズ)を備えることもできる。レーザキャビティは、一部をキャビティエンドミラー5-111、5-119によって画定することができる。このような周波数モードの同期は、レーザのパルス動作をもたらし(例えば、キャビティ内パルス5-120はキャビティエンドミラー間を往復して跳ね返る)、部分的に伝送している一方のエンドミラー5-111から出力光パルス5-122の流れを生成する。
【0156】
いくつかの場合において、分析機器5-100は、取り外し可能な、パッケージ化された、バイオ光電子チップまたは光電子チップ5-140(「使い捨てチップ」とも称する)を受け入れるように構成される。使い捨てチップは、例えば、複数の反応チャンバ、光励起エネルギーを反応チャンバに送達するように構成される集積された光学構成要素、および反応チャンバからの蛍光放出を検出するように構成される集積された光検出器を備えるバイオ光電子チップを含むことができる。いくつかの実施態様において、チップ5-140は1回使用後に使い捨てにすることができるのに対し、他の実施態様では、チップ5-140は2回または3回再利用することができる。チップ5-140が機器5-100によって受け入れられると、パルス光源5-106と分析機器5-160の装置とに電気的および光学的に連通状態にすることができる。電気的連通は、例えば、チップパッケージ上の電気コンタクトを通して行うことができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、また図4-1Dを参照して、使い捨てチップ5-140は、追加の機器電子部品を含むことができるプリント回路基板(PCB)などの電子回路基板5-130上に実装することができる(例えば、ソケット接続により)。例えば、PCB5-130は、電力、1つまたは複数のクロック信号、および制御信号を光電子チップ5-140に提供するように構成された回路部と、反応チャンバから検出される蛍光放出を表す信号を受信するように構成された信号処理回路部とを含むことができる。光電子チップから戻されるデータを、機器5-100上の電子部品によって一部または全体を処理することができるが、いくつかの実施態様においては、データはネットワーク接続により1つまたは複数の遠隔データプロセッサに送信してもよい。PCB5-130は、光電子チップ5-140の導波路内に結合される光パルス5-122の光結合および電力レベルに関して、チップからフィードバック信号を受信するように構成された回路部も含むことができる。フィードバック信号はパルス光源5-106および光学システム5-115の一方または双方に提供されて、光パルス5-122の出力ビームの1つまたは複数のパラメータを制御することができる。いくつかの場合において、PCB5-130は、光源および光源5-106内の関連回路部を動作させるために、パルス光源5-106に電力を提供または経由させることができる。
【0158】
いくつかの実施形態によると、パルス光源5-106は小型のモードロックレーザモジュール5-113を備える。モードロックレーザは、利得媒質5-105(いくつかの実施形態ではソリッドステート材料とすることができる)、出力カプラ5-111およびレーザキャビティエンドミラー5-119を備えることができる。モードロックレーザの光キャビティは、出力カプラ5-111およびエンドミラー5-119によって結束することができる。レーザキャビティの光軸5-125は、レーザキャビティの長さを増やし、所望のパルス繰り返し率を提供するために1つまたは複数の折り返し(ターン)を有することができる。パルス繰り返し率は、レーザキャビティの長さによって決定される(例えば、光パルスがレーザキャビティ内で往復する回数)。
【0159】
いくつかの実施形態において、ビーム成形、波長選択および/またはパルス形成のために、レーザキャビティ内に追加の光学要素(図4-1Dには図示せず)が存在することができる。いくつかの場合において、エンドミラー5-119は、縦キャビティモードの受動的なモード同期を誘起し、モードロックレーザのパルス動作を引き起す可飽和吸収ミラー(SAM)を備える。モードロックレーザモジュール5-113は、利得媒質5-105を励起するために、ポンプ源(例えば、レーザダイオード、図4-1Dには図示せず)をさらに含むことができる。モードロックレーザモジュール5-113のさらなる詳細は、2017年12月15日に出願された「Compact Mode-Locked Laser Module」と題する、米国特許出願第15/844,469号に記載されており、参照により本明細書に援用される。
【0160】
レーザ5-113がモードロックされるとき、キャビティ内パルス5-120はエンドミラー5-119と出力カプラ5-111との間を循環することができ、キャビティ内パルスの一部分を出力パルス5-122として出力カプラ5-111に送信することができる。したがって、図4-2のグラフに図示される出力パルス5-122のトレインは、キャビティ内パルス5-120が出力カプラ5-111とレーザキャビティ内のエンドミラー5-119との間を往復して跳ね返ると、出力カプラで検出することができる。
【0161】
図4-2は、図は縮尺通りではないが、出力パルス5-122の時間的な強度プロファイルを示している。いくつかの実施形態においては、放出されたパルスのピーク強度値は、ほぼ等しいものとすることができ、プロファイルは、ガウス型の時間的プロファイルを有することができるが、sech型のプロファイルなどの他のプロファイルも可能であるものとすることができる。いくつかの場合においては、パルスは、対照的な時間的プロファイルを有しない場合があり、他の時間的形状を有する可能性がある。各パルスの持続時間は、図4-2に図示するように、全値半幅(FWHM)値によって特徴付けることができる。モードロックレーザのいくつかの実施形態によると、超短光パルスは、100ピコ秒(ps)未満のFWHM値を有することができる。いくつかの場合においては、FWHM値は、およそ5ps~およそ30psであるものとすることができる。
【0162】
出力パルス5-122は、規則的な間隔Tだけ隔てることができる。例えば、Tは、出力カプラ5-111とキャビティエンドミラー5-119との間の往復移動時間によって求めることができる。いくつかの実施形態によると、パルスを隔てる間隔Tは、約1nsから約30nsの間にすることができる。いくつかの場合において、パルスを隔てる間隔Tは、約0.7メートル~約3メートル間のレーザキャビティ長(レーザキャビティ内の光軸5-125のおよその長さ)に対応して、約5nsから約20nsの間にすることができる。実施形態において、パルスを隔てる間隔はレーザキャビティ内の往復移動時間に対応し、それによって3メートルのキャビティ長(6メートルの往復距離)がおよそ20nsのパルスを隔てる間隔Tを提供するようにする。
【0163】
いくつかの実施形態によると、所望のパルスを隔てる間隔Tおよびレーザキャビティ長は、チップ5-140上の反応チャンバの数、蛍光放出特徴、および、光電子チップ5-140からデータを読み取るためのデータ取扱い回路部の速度の組合せによって決めることができる。実施形態において、異なるフルオロフォアを、それらの異なる蛍光減衰率または特徴的な寿命によって区別することができる。したがって、それらの異なる減衰率を区別するために、選択されたフルオロフォアの十分な統計値を収集するように、十分なパルスを隔てる間隔Tがある必要がある。さらに、パルスを隔てる間隔Tが短すぎる場合、データ取扱い回路部は、多数の反応チャンバによって収集される大量のデータについていくことができない。約5ns~約20nsのパルスを隔てる間隔Tが、最高で約2nsの減衰率を有するフルオロフォア、および約60,000個~10,000,000個の反応チャンバからのデータを取り扱うために好適である。
【0164】
いくつかの実施態様によると、ビームステアリングモジュール5-150が、パルス光源5-106から出力パルスを受け取ることができ、光電子チップ5-140の光カプラ(例えば、格子カプラ)への光パルスの少なくとも位置および入射角度を調整するように構成される。いくつかの場合においては、パルス光源5-106からの出力パルス5-122は、光電子チップ5-140上の光カプラにおけるビーム形状およびビームの回転の両方またはいずれかを付加的にまたは代替的に変更するために、ビームステアリングモジュール5-150によって操作することができる。いくつかの実施態様においては、ビームステアリングモジュール5-150は、光カプラへの出力パルスのビームの焦点および偏光、または焦点もしくは偏光の調整をさらに提供することができる。ビームステアリングモジュールの1つの例が、2016年5月20日に出願された「Pulsed Laser and Bioanalytic System」と題する米国特許出願第15/161,088号に記載されており、参照により本明細書に援用される。ビームステアリングモジュールの別の例は、2016年12月16日に出願された「Compact Beam Shaping and Steering Assembly」と題する別の米国特許出願第62/435,679号に記載されており、参照により本明細書に援用される。
【0165】
図4-3を参照すると、パルス光源からの出力パルス5-122は、例えば、バイオ光電子チップ5-140上の1つまたは複数の光導波路5-312内に結合することができる。いくつかの実施形態においては、光パルスは、格子カプラ5-310を介して1つまたは複数の導波路に結合することができるが、いくつかの実施形態においては、光電子チップ上の1つまたは複数の光導波路の端に結合することを採用することができる。いくつかの実施形態によると、光パルス5-122のビームを格子カプラ5-310に位置合わせすることを助けるために、クアッド検出器5-320を半導体基板5-305(例えば、シリコン基板)に位置付けることができる。1つまたは複数の導波路5-312および反応チャンバまたは反応チャンバ5-330は、基板、導波路、反応チャンバおよび光検出器5-322間に誘電体層(例えば、二酸化ケイ素層)が介在した状態で、同じ半導体基板に集積させることができる。
【0166】
それぞれの導波路5-312は、反応チャンバ5-330の下にテーパ状部分5-315を含み、導波路に沿って反応チャンバに結合される光出力を均質化することができる。先細りテーパは、より多くの光エネルギーを導波路のコアの外に押しやることができ、反応チャンバへの結合を増大させ、反応チャンバ内への光の結合の損失を含む、導波路に沿う光損失を相殺する。第2の格子カプラ5-317を、それぞれの導波路の端に位置付け、光エネルギーを集積されたフォトダイオード5-324に方向付けることができる。集積されたフォトダイオードは、導波路を下って結合される出力の量を検出し、検出された信号を、例えば、ビームステアリングモジュール5-150を制御するフィードバック回路部に提供することができる。
【0167】
反応チャンバ5-330は、導波路のテーパ状部分5-315と位置合わせし、タブ5-340において窪ませることができる。それぞれの反応チャンバ5-330について、半導体基板5-305に位置付けられる光検出器5-322が存在することができる。いくつかの実施形態においては、導波路と各ピクセルの光検出器5-322との間に、半導体吸収体(図4-5に光学フィルタ5-530として図示される)を位置付けてもよい。金属コーティングおよび多層コーティング5-350の両方またはそのいずれかを、反応チャンバの周りおよび導波路の上に形成し、反応チャンバ内にない(例えば、反応チャンバ上の溶液中に分散している)フルオロフォアの光励起を防止することができる。金属コーティングおよび多層コーティング5-350の両方またはそのいずれかは、タブ5-340の縁を越えて隆起させ、それぞれの導波路5-312の入力端および出力端における導波路内の光エネルギーの吸収損失を低減することができる。
【0168】
光電子チップ5-140上には導波路、反応チャンバおよび時間ビニング光検出器の複数の行があるものとすることができる。例えば、いくつかの実施態様においては、128個の行があるものとすることができ、それぞれが512個の反応チャンバを有し、全部で65,536個の反応チャンバがある。他の実施態様は、より少ないかまたはより多い反応チャンバを含むことができ、他のレイアウト構造を含むことができる。パルス光源5-106からの光出力は、1つまたは複数のスターカプラまたはマルチモード干渉カプラを介して、またはチップ5-140の光カプラ5-310と複数の導波路5-312との間に位置付けられる任意の他の手段によって、複数の導波路に分配することができる。
【0169】
図4-4は、導波路のテーパ状部分5-315内の光パルス5-122から反応チャンバ5-330までの光エネルギーの結合を示している。図面は、導波路の寸法、反応チャンバの寸法、異なる材料の光学的特性、および反応チャンバ5-330からの導波路のテーパ状部分5-315の距離を考慮した光波の電磁場シミュレーションから作成した。導波路は、例えば、二酸化ケイ素の周囲の媒体5-410において窒化ケイ素から形成することができる。導波路、周囲の媒体、および反応チャンバは、2015年8月7日に出願された「Integrated Device for Probing, Detecting and Analyzing Molecules」と題する米国特許出願第14/821,688号に記載された微細加工方法によって形成することができる。いくつかの実施形態によると、エバネッセント光場5-420が、導波路によって運ばれる光エネルギーを反応チャンバ5-330に結合する。
【0170】
反応チャンバ5-330内で生じる生体反応の非限定的な例が、図4-5に示されている。この例は、標的核酸に対して相補的な成長鎖へのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の順次組み込みを示している。順次組み込みは、反応チャンバ5-330内で生じることができ、DNAをシークエンシングする高度な分析機器によって検出することができる。反応チャンバは、約150nm~約250nmの間の深さ、約80nm~約160nmの間の直径を有することができる。金属化層5-540(例えば、電気的な参照電位のための金属化)を、光検出器5-322の上にパターニングし、隣接する反応チャンバおよび他の望ましくない光源からの迷光を阻止するアパーチャまたは虹彩絞りを提供することができる。いくつかの実施形態によると、ポリメラーゼ5-520を反応チャンバ5-330内に位置付ける(例えば、チャンバのベースに付着させる)ことができる。ポリメラーゼは、標的核酸5-510(例えば、DNA由来の核酸の一部分)を取り込み、相補的な核酸の成長鎖をシークエンシングして、DNA5-512の成長鎖を生成することができる。異なるフルオロフォアでラベリングされたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、反応チャンバの上および反応チャンバ内の溶液中に分散させることができる。
【0171】
ラベリングされたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体5-610が、図4-6に示されているように、相補的な核酸の成長鎖に組み込まれると、1つまたは複数の付着しているフルオロフォア5-630を、導波路5-315から反応チャンバ5-330内に結合される光エネルギーのパルスによって繰り返し励起することができる。いくつかの実施形態においては、フルオロフォア(単数または複数)5-630は、任意の好適なリンカー5-620によって1つまたは複数のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体5-610に付着させることができる。組み込み事象は、最長で約100msの時間期間にわたって続くことができる。この時間の間に、モードロックレーザからのパルスによるフルオロフォアの励起の結果として生じる蛍光放出のパルスを、例えば、時間ビニング光検出器5-322によって検出することができる。いくつかの実施形態においては、信号の取扱い(例えば、増幅、読み出し、ルーティング、信号前処理など)のため、各ピクセルに1つまたは複数の追加の集積された電子デバイス5-323が存在することができる。いくつかの実施形態によると、各ピクセルは、蛍光放出を通過させるとともに、励起パルスからの放射の透過を低減する少なくとも1つの光学フィルタ5-530(例えば、半導体吸収体)を含むことができる。いくつかの実施態様は光学フィルタ5-530を使用しなくてもよい。異なる放出特徴(例えば、蛍光減衰率、強度、蛍光波長)を有するフルオロフォアを、異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させることによって、DNA5-512の鎖が核酸を組み込む間に、異なる放出特徴を検出および区別することは、DNAの成長鎖の遺伝子配列の決定を可能にする。
【0172】
いくつかの実施形態によると、蛍光放出特徴に基づいてサンプルを分析するように構成されている高度な分析機器5-100は、異なる蛍光分子間の蛍光寿命および/または強度の差、ならびに/あるいは異なる環境における同じ蛍光分子の寿命および/または強度の差を検出することができる。説明として、図4-7は2つの異なる蛍光放出確率曲線(AおよびB)をプロットしており、これは例えば、2つの異なる蛍光分子からの蛍光放出を表すことができる。曲線A(破線)を参照すると、短光パルスまたは超短光パルスによって励起された後で、第1の分子からの蛍光放出の確率p(t)は、図示されるように、時間とともに減衰する可能性がある。いくつかの場合においては、経時にわたって放出される光子の確率の低下は、指数関数的減数関数p(t)=pA0-t/τ1によって表すことができ、式中、pA0は初期の放出確率であり、τは、放出減衰確率を特徴付ける第1の蛍光分子に関連付けられる時間的パラメータである。τは、第1の蛍光分子の「蛍光寿命」、「放出寿命」または「寿命」と称することもある。いくつかの場合においては、τの値は、蛍光分子の局所的な環境によって変わる可能性がある。他の蛍光分子は、曲線Aに示されているものとは異なる放出特徴を有することができる。例えば、別の蛍光分子は、単一の指数関数的減衰とは異なる減衰プロファイルを有する可能性があり、その寿命は、半減期値または何らかの他のメトリックによって特徴付けることができる。
【0173】
第2の蛍光分子は、図4-7において曲線Bについて示されるように、急激であるが、明らかに異なる寿命τを有する減衰プロファイルp(t)を有することができる。図示される例では、曲線Bの第2の蛍光分子の寿命は、曲線Aの寿命よりも短く、放出の確率p(t)は、曲線Aの場合よりも、第2の分子の励起後により早く高くなる。図4-7に図示されるように、p(t)はpB0の初期の放出確率を有することができる。異なる蛍光分子は、いくつかの実施形態においては、約0.1ns~約20nsの範囲の寿命または半減期を有することができる。
【0174】
蛍光放出寿命の差を使用して、異なる蛍光分子の有無を判別し、かつ蛍光分子が供される異なる環境もしくは状況を判別すること、またはそのいずれかの判別をすることができる。いくつかの場合においては、(例えば、放出波長ではなく)寿命に基づいて蛍光分子を判別することは、分析機器5-100の態様を簡略化することができる。一例として、寿命に基づいて蛍光分子を判別する場合には、波長を識別する光学系(波長フィルタ、それぞれの波長の専用の検出器、異なる波長における専用のパルス光源、および/または、回折光学系)の数を減らすか、またはそれを排除することができる。いくつかの場合においては、単一の特徴的な波長で動作する単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で放出するが、明らかに異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起することができる。同じ波長領域において放出する異なる蛍光分子を励起および判別するために、異なる波長で動作する多数の源ではなく、単一のパルス光源を使用する分析システムは、操作およびメンテナンスするためにあまり複雑ではないものとすることができ、よりコンパクトであり、より低いコストで製造することができる。
【0175】
蛍光寿命分析に基づく分析システムは特定の利点を有することができるが、分析システムによって得られる情報の量および検出精度、またはそのような情報量もしくは検出精度は付加的な検出技術を可能にすることによって高めることができる。例えば、いくつかの分析システム5-160は、蛍光波長および蛍光強度またはそのいずれかに基づいてサンプルの1つまたは複数の特性を判別するように付加的に構成することができる。
【0176】
図4-7を再び参照し、いくつかの実施形態によると、蛍光分子の励起後の蛍光放出事象を時間ビニングするように構成されている光検出器によって、異なる蛍光寿命を区別することができる。時間ビニングは光検出器の単一の電荷蓄積サイクルの間に行うことができる。電荷蓄積サイクルは、読み出し事象間の間隔であり、その間に、光生成キャリアが時間ビニング光検出器のビンに蓄積される。放出事象の時間ビニングによって蛍光寿命を求めるという概念は、図4-8にグラフによって導入されている。tの直前の時点tにおいて、ある蛍光分子または同じタイプ(例えば、図4-7の曲線Bに対応するタイプ)の蛍光分子のアンサンブルが、短光パルスまたは超短光パルスによって励起される。分子の大きいアンサンブルの場合、放出の強度は、図4-8に示されるように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有することができる。
【0177】
しかし、この例の場合に、単一の分子または少数の分子に関しては、蛍光光子の放出は、図4-7の曲線Bの統計値に従って生じる。時間ビニング光検出器5-322は放出事象から生成されるキャリアを別個の時間ビンに蓄積させることができる。図4-8には3個のビンが示されているが、実施形態においてより少ないビンまたはより多くのビンを使用してもよい。ビンは蛍光分子の励起時間tに関して時間的に分解される。例えば、第1のビンは、時間tの励起事象後に起こる時間tとtとの間の間隔中に生成されるキャリアを蓄積させることができる。第2のビンは時間tとtとの間の間隔中に生成されるキャリアを蓄積させることができ、第3のビンは時間tとtとの間の間隔中に生成されるキャリアを蓄積させることができる。多数の放出事象が合計される場合、時間ビンに蓄積されるキャリアは、図4-8に示される減衰強度曲線に近似することができ、ビニングされた信号を使用して、異なる蛍光分子または蛍光分子が位置付けられる異なる環境を区別することができる。
【0178】
時間ビニング光検出器5-322の例は、2015年8月7日に出願された「Integrated Device for Temporal Binning of Received Photons」と題する米国特許出願第14/821,656号、および、2017年12月22日に出願された「Integrated Photodetector with Direct Binning Pixel」と題する米国特許出願第15/852,571号に記載されており、ともに参照によりその全体が本明細書に援用される。説明のために、時間ビニング光検出器の非限定的な実施形態が図4-9に示されている。単一の時間ビニング光検出器5-322は、光子吸収/キャリア発生領域5-902、キャリア放電チャネル5-906、および複数のキャリア蓄積領域5-908a、5-908bを備えることができ、すべて半導体基板上に形成される。キャリア輸送チャネル5-907は、光子吸収/キャリア発生領域5-902とキャリア蓄積領域5-908a、5-908bとの間を接続することができる。図示される例では2つのキャリア蓄積領域が示されているが、より多いかまたはより少なくてもよい。キャリア蓄積領域に接続されている読み出しチャネル5-910が存在することができる。光子吸収/キャリア発生領域5-902、キャリア放電チャネル5-906、キャリア蓄積領域5-908a、5-908b、および読み出しチャネル5-910は、半導体を局所的にドーピングし、かつ隣接する絶縁領域を形成する、または半導体を局所的にドーピングするかもしくは隣接する絶縁領域を形成することによって形成され、光検出機能、キャリアの閉じ込めおよび輸送を提供することができる。時間ビニング光検出器5-322は、基板上に形成される複数の電極5-920、5-921、5-922、5-923、5-924を含むこともでき、これらはキャリアをデバイスを通して輸送するために、デバイス内に電界を発生するように構成されている。
【0179】
動作時、パルス光源5-106(例えば、モードロックレーザ)からの励起パルス5-122の一部分は、時間ビニング光検出器5-322により反応チャンバ5-330に送達される。最初に、いくらかの励起放射光子5-901は、光子吸収/キャリア発生領域5-902に到着して、キャリア(薄く影を付けた円として示される)を生成することができる。励起放射光子5-901とともに到着して、対応するキャリア(濃い影を付けた円として示す)を生成する蛍光放出光子5-903もいくらか存在する可能性がある。最初に、励起放射によって生成されるキャリアの数は、蛍光放出によって生成されるキャリアの数に比べて多すぎる可能性がある。時間間隔t-t中に生成される最初のキャリアは、例えば、第1転送ゲート5-920を使用して、それをキャリア放電チャネル5-906に入れることによって排除することができる。
【0180】
後の時点で、ほとんどの蛍光放出光子5-903は光子吸収/キャリア発生領域5-902に到達し、反応チャンバ5-330からの蛍光放出を表す有用かつ検出可能な信号を提供するキャリア(濃い影を付けた円によって示される)を生成する。いくつかの検出方法によると、後の時点で第2の電極5-921および第3の電極5-923をゲーティングして、後の時点(例えば、第2の時間間隔t-t中)に生成されるキャリアを第1キャリア蓄積領域5-908aに方向付けることができる。その後、後の時点(例えば、第3の時間間隔t-t中)で第4の電極5-922および第5の電極5-924をゲーティングして、キャリアを第2キャリア蓄積領域5-908bに方向付けることができる。多数の励起パルスについて、励起パルス後に電荷蓄積をこのように続けて、各キャリア蓄積領域5-908a、5-908bにかなりの数のキャリアおよび信号レベルを蓄積することができる。後の時点で、信号をビンから読み出すことができる。いくつかの実施態様において、それぞれの蓄積領域に対応する時間間隔はサブナノ秒の時間スケールであるが、いくつかの実施形態においては(例えば、フルオロフォアがより長い減衰時間を有する実施形態においては)より長い時間スケールを使用することができる。
【0181】
励起事象(例えば、パルス光源からの励起パルス)後にキャリアを発生させるとともに時間ビニングするプロセスは、時間ビニング光検出器5-322の1回の電荷蓄積サイクル中に、単一の励起パルス後に1回生じるか、または、多数の励起パルス後に多数回繰り返すことができる。電荷の蓄積が完了した後で、キャリアを読み出しチャネル5-910を介して蓄積領域から読み出すことができる。例えば、適切なバイアスシーケンスを電極5-923、5-924および少なくとも電極5-940に適用し、キャリアを蓄積領域5-908a、5-908bから取り出すことができる。電荷蓄積および読み出しプロセスは、光電子チップ5-140上にて超並列操作で行うことができ、その結果データがフレーム化される。
【0182】
図4-9に関連して説明される例は多数の電荷蓄積領域5-908a、5-908bを含んでいるが、いくつかの場合においては、代わりに1個の電荷蓄積領域を使用してもよい。例えば、時間ビニング光検出器5-322にはビン1のみが存在することができる。このような場合、異なる励起事象後に異なる時間間隔を見るために、1個の蓄積領域5-908aを可変時間ゲート方式で動作させることができる。例えば、第1シリーズの励起パルスのパルス後に、蓄積領域5-908aの電極をゲーティングして、第1の時間間隔中(例えば、第2時間間隔t-t中)に発生したキャリアを収集することができ、蓄積された信号は第1の所定パルス数の後に読み出すことができる。同じ反応チャンバでの後続シリーズの励起パルスの後、蓄積領域5-908aの同じ電極をゲーティングして、異なる間隔中(例えば、第3の時間間隔t-t中)に発生したキャリアを収集することができ、蓄積された信号は第2の所定のパルス数の後に読み出すことができる。必要なら、後の時間間隔中に同様にキャリアを収集することもできるであろう。このように、反応チャンバに励起パルスの到着後の異なる期間中の蛍光放出に対応する信号レベルは、1個のキャリア蓄積領域を使用して生成することができる。
【0183】
いくつかの実施形態において、第2および第3の時間間隔中に生成されるキャリアは、上記説明される技術に従い、順次結合される電荷キャリア蓄積領域(例えば、SD0,SD1、および/または、SD0,SD1,SD2)を使用して収集および蓄積することができる。例えば、ピクセル1-112および1-112’について本明細書で説明されるように、時間間隔t-t中に生成される電荷キャリアは、電荷蓄積領域SD0で収集して、電荷蓄積領域SD1に転送することができ、その後、時間間隔t-t中に収集された電荷キャリアが読み出し領域FDに読み出されている間に、時間間隔t-t中に生成される電荷キャリアを電荷蓄積領域SD0で収集することができる。代替的にまたは付加的に、ピクセル1-112および1-112’について本明細書で説明されるように、時間間隔t-t中に生成される電荷キャリアはさらに電荷蓄積領域SD2に転送されて、そこから読み出すことができ、その後、時間間隔t-t中に生成される電荷キャリアを電荷蓄積領域SD1から電荷蓄積領域SD2を介して読み出すことができる(例えば、合間に読み出し領域FDの電圧をリセットすることなく)。
【0184】
励起後の異なる時間間隔中にいかに電荷蓄積を行うかに関係なく、読み出された信号は、例えば、蛍光放出減衰特徴を表すビンのヒストグラムを提供することができる。例示的なプロセスを図4-10Aおよび図4-10Bに示しており、2つの電荷蓄積領域を使用して、反応チャンバから蛍光放出を取得する。ヒストグラムのビンは、反応チャンバ5-330でのフルオロフォアの励起後の各時間間隔中に検出された光子の数を示すことができる。いくつかの実施形態において、ビンの信号は、図4-10Aに示されるように、多数の励起パルスの後に蓄積される。励起パルスは、パルス時間間隔Tによって隔てられる時点te1、te2、te3・・・teNで発生することができる。いくつかの場合において、反応チャンバで観察される1回の事象(例えば、DNA分析における1回のヌクレオチド組み込み事象)について、電子蓄積領域への信号の蓄積中に反応チャンバに印加される励起パルス5-122(またはその部分)は10個から10個存在することができる。いくつかの実施形態において、1つのビン(ビン0)は各光パルスとともに送達される励起エネルギーの振幅を検出するように構成することができ、基準信号として使用することができる(例えば、データを正規化するため)。他の場合においては、励起パルスの振幅は安定していて、信号取得中に1回または複数回判断され、各励起パルス後には判断しなくてもよいので、各励起パルス後にビン0の信号取得はない。このような場合、図4-9に関連して上記説明するように、励起パルスが生成するキャリアは排除して、光子吸収/キャリア発生領域5-902から捨てることができる。
【0185】
いくつかの実施態様においては、図4-10Aに示すように、単一の光子のみが励起事象後にフルオロフォアから放出されることができる。時点te1、における第1の励起事象後に、時点tf1において放出される光子は第1の時間間隔内(例えば、時点tとtとの間)で生じることができるため、結果として生じる電子信号が第1の電子蓄積領域に蓄積される(ビン1に寄与する)。時点te2における後続の励起事象において、時点tf2において放出される光子は第2の時間間隔内(例えば、時点tとtとの間)で生じることができるため、結果として生じる電子信号はビン2に寄与する。時点te3における次の励起事象後、光子は第1の時間間隔内で起こる時点tf3で放出することができる。
【0186】
いくつかの実施態様においては、反応チャンバ5-330で各励起パルスが受け取られた後に放出および検出される、または放出もしくは検出される蛍光光子は存在しないこともある。いくつかの場合において、反応チャンバに送達される10,000個の励起パルスごとに、わずか1つの蛍光光子しか反応チャンバで検出されないことがあり得る。パルス励起源5-106としてモードロックレーザ5-113を実装する1つの利点は、モードロックレーザが高パルス繰り返し率(例えば、50MHzから250MHzの間)で高強度および素早いターンオフ時間を有する短い光パルスを生成することができることである。このような高いパルス繰り返し率では、10ミリ秒の電荷蓄積間隔内の励起パルスの数は50,000~250,000にすることができるので、検出可能な信号を蓄積することができる。
【0187】
多数の励起事象およびキャリア蓄積の後で、時間ビニング光検出器5-322のキャリア蓄積領域を読み出し、反応チャンバの多値信号(例えば、2つ以上の値のヒストグラム、N次元ベクトルなど)を提供することができる。それぞれのビンの信号値は、フルオロフォアの減衰率に応じて変わることがある。例えば、図4-8を再び参照すると、減衰曲線Bを有するフルオロフォアは減衰曲線Aを有するフルオロフォアよりもビン1~ビン2においてより高い信号の比を有する。ビンからの値を分析し、校正値に対しておよび互いに比較して、または校正値に対してもしくは互いに比較して、存在する特定のフルオロフォアを決定することができる。シークエンシングアプリケーションの場合、フルオロフォアの同定は、例えば、DNAの成長鎖に組み込まれることになるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を決定することができる。他のアプリケーションの場合、フルオロフォアの同定は、フルオロフォアにリンクすることのできる対象の分子または対象の試料のアイデンティティを決定することができる。
【0188】
信号分析の理解をさらに助けるために、蓄積されるマルチビン値は、例えば、図4-10Bに示されるように、ヒストグラムとしてプロットすることができるか、またはN次元空間におけるベクトルもしくは位置として記録することができる。校正の実行は、4つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体にリンクする4個の異なるフルオロフォアに関して、多値信号の校正値(例えば、校正ヒストグラム)を取得するように別個に行うことができる。一例として、校正ヒストグラムは、図4-11A(Tヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)、図4-11B(Aヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)、図4-11C(Cヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)、および図4-11D(Gヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)において示されるように見える場合がある。(図4-10Bのヒストグラムに対応する)測定された多値信号と、校正用の多値信号との比較によって、DNAの成長鎖に組み込まれているヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のアイデンティティ「T」(図4-11A)を求めることができる。
【0189】
いくつかの実施態様においては、蛍光強度を付加的にまたは代替的に使用して、異なるフルオロフォアを区別することができる。例えば、いくつかのフルオロフォアは、有意に異なる強度で放出するか、または、それらの減衰率が同様であり得る場合であってもそれらの励起の確率に有意な差を有することがある(例えば、少なくとも35%の差)。ビニングされた信号(ビン5-3)を測定された励起エネルギーおよび取得された他の信号、またそのいずれかに参照することによって、強度レベルに基づいて異なるフルオロフォアを区別することを可能にすることができる。
【0190】
いくつかの実施形態においては、同じタイプの異なる数のフルオロフォアを異なるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体にリンクすることができるため、ヌクレオチドはフルオロフォア強度に基づいて同定することができる。例えば、2個のフルオロフォアを第1のヌクレオチド(例えば、「C」)またはヌクレオチド類似体にリンクさせることができ、4個以上のフルオロフォアを第2のヌクレオチド(例えば、「T」)またはヌクレオチド類似体にリンクさせることができる。異なる数のフルオロフォアのために、異なるヌクレオチドに関連付けられる異なる励起およびフルオロフォア放出確率があり得る。例えば、信号蓄積間隔の間に、「T」ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体についてより多くの放出事象があってもよく、それによってビンの見かけの強度は「C」ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の場合よりも有意に高くなる。
【0191】
フルオロフォアの減衰率およびフルオロフォアの強度、またはフルオロフォアの減衰率もしくはフルオロフォアの強度に基づいて、ヌクレオチドまたは任意の他の生体試料もしくは化学的試料を区別することが、分析機器5-100における光励起および検出システムの簡略化を可能にする。例えば、光励起を単一の波長源(例えば、多数の源または多数の異なる特徴的な波長で動作する源ではなく、1つの特徴的な波長を生成する源)を用いて行うことができる。付加的に、波長を識別する光学系およびフィルタは、異なる波長のフルオロフォア間を区別するために、検出システムにおいて必要ではないものとすることができる。また、異なるフルオロフォアからの放出を検出するために、それぞれの反応チャンバに単一の光検出器を使用することができる。
【0192】
「特徴的な波長」または「波長」という句は、放射の限定された帯域幅内の中央のまたは主な波長を指すのに使用される(例えば、パルス光源によって出力される20nmの帯域幅内の中央またはピークの波長)。いくつかの場合においては、「特徴的な波長」または「波長」は、源によって出力される放射の全帯域幅内のピーク波長を指すのに使用される場合がある。
【0193】
約560nm~約900nmの範囲の放出波長を有するフルオロフォアが、(CMOSプロセスを使用してシリコンウェハ上に製造することができる)時間ビニング光検出器によって検出される十分な量の蛍光を提供することができる。これらのフルオロフォアは、遺伝子シークエンシングアプリケーションのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体などの、対象の生体分子にリンクすることができる。この波長範囲の蛍光放出は、より長い波長における蛍光よりも、シリコンベースの光検出器においてより高い感度で検出することができる。付加的に、この波長範囲におけるフルオロフォアおよび関連付けられるリンカーは、DNAの成長鎖へのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の組み込みを妨げないものとすることができる。いくつかの実施態様において、約560nm~約660nmの範囲の放出波長を有するフルオロフォアを、単一波長源によって光学的に励起することができる。この範囲内の例示的なフルオロフォアは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific Inc.)(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能なAlexa Fluor 647である。(例えば、約500nm~約650nmの)より短い波長における励起エネルギーを使用して、約560nm~約900nmの波長において放出するフルオロフォアを励起することができる。いくつかの実施形態においては、時間ビニング光検出器は、例えば、Geなどの他の材料を光検出器の活性領域に組み込むことによって、反応チャンバからのより長い波長の放出を効率的に検出することができる。
【0194】
[IX.タンパク質シークエンシングアプリケーション]
本開示のいくつかの態様は、タンパク質シークエンシングに有用であり得る。例えば、本開示のいくつかの態様は、ポリペプチドからアミノ酸配列情報を決定するのに(例えば、1つまたは複数のポリペプチドをシークエンシングするのに)有用である。いくつかの実施形態において、単一のポリペプチドの分子について、アミノ酸配列情報を決定することができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸をラベリングして(例えば、直接的または間接的に)、ポリペプチド内のラベリングされたアミノ酸の相対位置を求める。いくつかの実施形態において、タンパク質内のアミノ酸の相対位置は、一連のアミノ酸ラベリングおよび開裂ステップを使用して求める。
【0195】
いくつかの実施形態において、末端アミノ酸(例えば、N末端またはC末端アミノ酸)のアイデンティティを評価し、その後に末端アミノ酸を除去して、末端の次のアミノ酸のアイデンティティを評価し、このプロセスをポリペプチド内の複数の連続するアミノ酸が評価されるまで繰り返す。いくつかの実施形態において、アミノ酸のアイデンティティを評価することは、存在するアミノ酸の種類を判断することを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸の種類を判断することは、例えば、天然由来の20のアミノ酸のうちのどれが末端アミノ酸であるかを判断することによって(例えば、個々の末端アミノ酸に固有の認識分子を使用して)、実際のアミノ酸のアイデンティティを判断することを含む。しかし、いくつかの実施形態において、末端アミノ酸の種類のアイデンティティを評価することは、ポリペプチドの末端に存在する可能性のある候補アミノ酸の部分集合を判断することを含むことができる。いくつかの実施形態において、これはアミノ酸が1つまたは複数の固有アミノ酸ではない(そのため、他のアミノ酸のいずれかであり得る)と判断することによって実現することができる。いくつかの実施形態において、これは指定されるアミノ酸の部分集合(例えば、サイズ、電荷、疎水性、結合特性に基づいて)のうちのどれが、ポリペプチドの末端にあり得るかを判断することによって実現することができる(例えば、2つ以上の末端アミノ酸の指定部分集合に結合する認識分子を使用して)。
【0196】
ポリペプチドのアミノ酸は、例えば、ポリペプチド上のアミノ酸の1つまたは複数の種類を選択的に結合するアミノ酸認識分子を使用して、間接的にラベリングすることができる。ポリペプチドのアミノ酸は、例えば、一意に同定可能なラベルを用いて、ポリペプチド上のアミノ酸側鎖の1つまたは複数の種類を選択的に修飾することによって、直接的にラベリングすることができる。アミノ酸側鎖の選択的なラベリングの方法、ならびにラベリングされたポリペプチドの調製および分析に関する詳細は、当業界において公知である(例えば、Swaminathan, et al., PLoS Comput Biol., 2015, 11(2): e1004080を参照)。したがって、いくつかの実施形態において、アミノ酸の1つまたは複数の種類は、アミノ酸の1つまたは複数の種類を選択的に結合する1つまたは複数のアミノ酸認識分子の結合を検出することによって同定される。いくつかの実施形態において、アミノ酸の1つまたは複数の種類は、ラベリングされたポリペプチドを検出することによって同定される。
【0197】
いくつかの実施形態において、タンパク質におけるラベリングされたアミノ酸の相対位置は、タンパク質からアミノ酸を除去しなくても求めることができるが、例えば、タンパク質分子におけるラベリングされたアミノ酸の相対位置を求めるために、ラベリングされたタンパク質を孔(例えば、タンパク質チャネル)に移行し、孔に移行中にラベリングされたアミノ酸からの信号(例えば、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)信号)を検出することによって求めることができる。
【0198】
本明細書で使用されるとき、ポリペプチドのシークエンシングとは、ポリペプチドの配列情報を決定することをいう。いくつかの実施形態において、これはポリペプチドの一部分(またはすべて)について各アミノ酸配列のアイデンティティを決定することを伴うことができる。しかし、いくつかの実施形態において、これは、ポリペプチド内のアミノ酸の部分集合のアイデンティティを評価すること(例えば、また、ポリペプチド内の各アミノ酸のアイデンティティを決定せずに、1つまたは複数のアミノ酸の種類の相対位置を決定すること)を伴うことができる。しかし、いくつかの実施形態において、アミノ酸含有量情報は、ポリペプチド内のアミノ酸の異なる種類の相対位置を直接決定せずに、ポリペプチドから取得することができる。アミノ酸含有量のみを使用して、存在するポリペプチドのアイデンティティを推測することもできる(例えば、アミノ酸含有量をポリペプチド情報のデータベースと比較し、どのポリペプチドが同じアミノ酸含有量を有するかを決定することにより)。
【0199】
いくつかの実施形態において、より長いポリペプチドまたはタンパク質から得られる(例えば、酵素による開裂および化学的な開裂、またはそのいずれかの開裂を介して)複数のポリペプチド生成物についての配列情報を分析して、より長いポリペプチドまたはタンパク質の配列を再構築または推測することができる。したがって、いくつかの実施形態は、ポリペプチドの複数の断片をシークエンシングすることによって、ポリペプチドをシークエンシングのための組成および方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドをシークエンシングすることは、複数のポリペプチドの断片についての配列情報を組み合わせて、そのポリペプチドの配列を同定および決定する、または同定もしくは決定することを含む。いくつかの実施形態において、配列情報を組み合わせることは、コンピュータハードウェアおよびソフトウェアによって行うことができる。本明細書で説明される方法は、有機体のプロテオーム全体など、関連するポリペプチドの集合をシークエンシングすることを可能にすることができる。いくつかの実施形態において、複数の単一分子シークエンシング反応を並列して行うことができる(例えば、単一のチップ上で)。例えば、いくつかの実施形態において、複数の単一分子シークエンシング反応は、それぞれ単一チップ上の個別のサンプルウェルで行われる。
【0200】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、タンパク質の複合混合物を含むサンプル内の個々のタンパク質のシークエンシングおよび同定に使用することができる。いくつかの実施形態は、タンパク質の複合混合物内の個々のタンパク質を一意に同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、個々のタンパク質は、タンパク質の部分的なアミノ酸配列を決定することによって、混合サンプル内で検出される。いくつかの実施形態において、タンパク質の部分的なアミノ酸配列は、およそ5~50のアミノ酸の連続した区間内にある。
【0201】
いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、ほとんどのヒトタンパク質はプロテオームデータベースを参照して不完全な配列情報を使用して同定することができると考えられている。例えば、ヒトプロテオームの単純なモデリングにより、タンパク質のおよそ98%は6~40のアミノ酸の区間の中からわずか4種類のアミノ酸を検出することによって一意に同定することができることが証明されている(例えば、Swaminathan, et al., PLoS Comput Biol., 2015, 11(2): e1004080およびYao, et al. Phys. Biol. 2015, 12(5):055003を参照)。そのため、タンパク質の複合混合物は、およそ6~40のアミノ酸の短いポリペプチド断片に分解する(例えば、化学的に分解する、酵素分解する)ことができ、このポリペプチドライブラリのシークエンシングはオリジナルの複合混合物に存在するタンパク質の各々のアイデンティティおよび存在量を明らかにするであろう。部分的な配列情報を決定することによる選択的なアミノ酸ラベリングおよびポリペプチドの同定のための組成および方法は、2015年9月15日に出願された「SINGLE MOLECULE PEPTIDE SEQUENCING」と題する米国特許出願第15/510,962号に記載されており、参照によりその全体が援用される。
【0202】
いくつかの実施形態によるシークエンシングは、チップまたは集積デバイスなどの基板または固体支持体の表面上にポリペプチドを固定化することを伴うことができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは基板のサンプルウェルの表面上(例えば、サンプルウェルの底面上)に固定化することができる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの第1の末端が表面に対して固定化され、他の末端が本明細書で説明されるようにシークエンシング反応を受ける。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドはC末端側から表面に対して固定化され、末端アミノ酸の認識および分解は、ポリペプチドのN末端側からC末端側に向かって進める。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのN末端アミノ酸が固定化される(例えば、表面に付着させられる)。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのC末端アミノ酸が固定化される(例えば、表面に付着させられる)。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の非末端アミノ酸が固定化される(例えば、表面に付着させられる)。固定化されたアミノ酸は、例えば、本明細書で説明されるように、任意の好適な共有結合または非共有結合のリンケージを使用して付着することができる。いくつかの実施形態において、複数のポリペプチドが複数のサンプルウェルに(例えば、1つのポリペプチドを、各サンプルウェルの1表面、例えば底面に、付着させる)、例えば、基板上のサンプルウェルのアレイで付着される。
【0203】
本開示のいくつかの態様は、末端アミノ酸の修飾および開裂の繰り返しサイクルを受けるラベリングされたポリペプチドのルミネセンスを検出することによって、ポリペプチドをシークエンシングする方法を提供する。例えば、図4-12は、いくつかの実施形態による、エドマン分解によりラベリングされたポリペプチドをシークエンシングする方法を示す。いくつかの実施形態において、方法は、一般に、エドマン分解によるシークエンシングの他の方法について、本明細書で説明したように進める。例えば、いくつかの実施形態において、図4-12に図示されるステップ(1)および(2)は、エドマン分解反応において、末端アミノ酸修飾および末端アミノ酸開裂についてそれぞれ本明細書の他の箇所で説明したように行うことができる。
【0204】
図4-12に図示される例に示されるように、いくつかの実施形態において、方法は、(1)ラベリングされたポリペプチドの末端アミノ酸を修飾するステップを含む。本明細書の他の箇所で説明するように、いくつかの実施形態において、修飾することは、末端アミノ酸をイソチオシアネート(例えば、PITC)に接触させて、イソチオシアネート修飾末端アミノ酸を作成することを含む。いくつかの実施形態において、イソチオシアネート修飾5-1210は、末端アミノ酸を、開裂試薬(例えば、本明細書で説明されるように、化学的または酵素による開裂試薬)による除去をより受けやすい形態に変換する。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、(2)エドマン分解について本明細書の他の箇所で詳述される化学的または酵素による手段を使用して、修飾された末端アミノ酸を除去するステップを含む。
【0205】
いくつかの実施形態において、方法は、複数のサイクルにわたりステップ(1)から(2)を繰り返すことを含み、その間ラベリングされたポリペプチドのルミネセンスが検出され、末端からのラベリングされたアミノ酸の除去に対応する開裂事象は検出信号の減少として検出することができる。いくつかの実施形態において、図4-12に図示されるステップ(2)の後の信号の無変化は、未知の種類のアミノ酸を特定する。したがって、いくつかの実施形態において、部分的な配列情報は、各逐次ラウンド中にステップ(2)の後に検出される信号を、検出信号の変化に基づいて決定されるアイデンティティごとにアミノ酸の種類を割り当てるか、または検出信号の無変化に基づいてアミノ酸の種類を未知のものとして特定することにより評価して決定することができる。
【0206】
本開示のいくつかの態様は、ラベリングされたアミノ酸認識分子およびラベリングされた開裂試薬(例えば、ラベリングされたエキソペプチダーゼ)との末端アミノ酸の結合相互作用を評価することによって、リアルタイムでポリペプチドシークエンシングをする方法を提供する。図4-13は、個別的な結合事象が信号出力5-1300のパルスを生じさせるシークエンシングの方法の例を示す。図4-13の挿入図は、このアプローチによるリアルタイムシークエンシングの一般的スキームを示す。図示されるように、ラベリングされたアミノ酸認識分子5-1310は、末端アミノ酸(ここではリジンとして示される)と選択的に結合および分離し、それが信号出力5-1300に一連のパルスを生じさせ、それを使用して末端アミノ酸を同定することができる。いくつかの実施形態において、一連のパルスは対応する末端アミノ酸のアイデンティティの診断に役立ち得るパルシングパターンを提供する。
【0207】
理論に束縛されるものではないが、ラベリングされたアミノ酸認識分子5-1310は、結合の結合速度(kon)および結合の解離速度(koff)によって定義される結合親和性(K)に従って選択的に結合する。速度定数koffおよびkonは、それぞれパルス持続時間(例えば、検出可能な結合事象に対応する時間)およびパルス間持続時間(例えば、検出可能な結合事象間の時間)の重要な決定因子である。いくつかの実施形態において、これらの速度は、最善のシークエンシング精度を与えるパルス持続時間およびパルスレートを達成するように工作することができる。
【0208】
挿入図に示されるように、シークエンシング反応混合物は、ラベリングされたアミノ酸認識分子5-1310のものとは異なる検出可能なラベルを含むラベリングされた開裂試薬5-1320をさらに含む。いくつかの実施形態において、ラベリングされた開裂試薬5-1320は、ラベリングされたアミノ酸認識分子5-1310のものより低い濃度で混合物中に存在する。いくつかの実施形態において、ラベリングされた開裂試薬5-1320は、末端アミノ酸のほとんどまたはすべての種類を開裂するように広い特異性を呈する。
【0209】
信号出力5-1300の進行によって示されるように、いくつかの実施形態において、ラベリングされた開裂試薬5-1320による末端アミノ酸開裂は、一意に識別可能な信号パルスを生じさせ、これらの事象はラベリングされたアミノ酸認識分子5-1310の結合パルスよりも低い周波数で発生する。このように、ポリペプチドのアミノ酸をリアルタイムのシークエンシングプロセスでカウントおよび同定する、またはカウントもしくは同定することができる。信号出力5-1300にさらに示されるように、いくつかの実施形態において、ラベリングされたアミノ酸認識分子5-1310は、各種類に対応する異なる結合特性を有する2つ以上の種類のアミノ酸を結合するように工作され、これが一意に識別可能なパルシングパターンを生む。いくつかの実施形態において、複数のラベリングされたアミノ酸認識分子を使用することができ、それぞれが対応する末端アミノ酸を同定するために使用することのできる診断に役立つパルシングパターンを有するものである。
【0210】
本開示の技術のいくつかの態様および実施形態をこのように記載したが、様々な改変、変更および改良が当業者に容易に想起されることを理解されたい。そのような改変、変更および改良は、本明細書に記載される技術の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、上記の実施形態は例として提示されているものにすぎないこと、ならびに、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は詳細に記載されているものとは別様に実践され得ることを理解されたい。加えて、本明細書に記載される2つ以上の特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾するものでなければ、本開示の範囲内に含まれる。
【0211】
また、記載したように、いくつかの態様は、1つまたは複数の方法として具現化してもよい。方法の一部として実施される行為は、任意の好適な形で順序付けることができる。それに応じて、例示的な実施形態では連続的な行為として示されている場合であっても、いくつかの行為を同時に実施することを含み得る、示されているものとは異なる順序で行為が実施される実施形態を構築することができる。
【0212】
本明細書において定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により援用される文献中の定義および定義される用語の通常の意味の両方、またはそのいずれかを超えて統括するものと理解されたい。
【0213】
本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で「1つ」と使用されるとき、明らかにそれとは反対のことが示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されたい。
【0214】
「および/または」などの句は、本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、そのように連結された要素の「一方または両方」を、すなわち、ある場合には連言的に存在し、他の場合には選言的に存在する要素を意味するものと理解されたい。
【0215】
本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、1つまたは複数の要素の列挙に関して、「少なくとも1つ」という句は、要素の列挙中の要素のうちのいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されたいが、必ずしも、要素の列挙内に具体的に列挙されるあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また要素の列挙中の要素の任意の組み合わせを排除するわけではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が言及する要素の列挙内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関するか関しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。
【0216】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「から構成される」などのようなすべての移行句は、オープンエンドであり、すなわち、限定はされないが含むことを意味するものであると理解されたい。「からなる」および「本質的に~からなる」という移行句は、それぞれ、クローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。
図1-1】
図1-2】
図1-3A】
図1-3B】
図1-3C】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8a】
図2-8b】
図2-9】
図3-1】
図3-2】
図3-3A】
図3-3B】
図3-4】
図3-5A】
図3-5B】
図3-6】
図3-7】
図3-8】
図4-1A】
図4-1B】
図4-1C】
図4-1D】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図4-7】
図4-8】
図4-9】
図4-10A】
図4-10B】
図4-11A】
図4-11B】
図4-11C】
図4-11D】
図4-12】
図4-13】
【国際調査報告】