(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】二次電池用乾式電極を製造するための電極用粉体、その製造方法、それを使用した乾式電極の製造方法、乾式電極、それを含む二次電池、エネルギー貯蔵装置、及び乾式電極の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20231101BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231101BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231101BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231101BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524436
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 KR2021014864
(87)【国際公開番号】W WO2022086247
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136913
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ナム-ジョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ミン・カク
(72)【発明者】
【氏名】キ-ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ク-スン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ドン-オ・シン
(72)【発明者】
【氏名】クワン-ホ・ユ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017DD05
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA16
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA29
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA15
5H050HA17
5H050HA19
5H050HA20
(57)【要約】
本発明の一実施形態は、二次電池用乾式電極を製造するための電極用粉体であって、前記粉体は活物質、導電材及びバインダーを含み、50MPaの圧力で加圧したときの比抵抗が700Ω・cm以下である電極用粉体、その製造方法、それを使用した乾式電極の製造方法、乾式電極、それを含む二次電池、エネルギー貯蔵装置、及び乾式電極の製造装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用乾式電極を製造するためにフィルム化可能な電極用粉体であって、
前記電極用粉体は、活物質、導電材、及びバインダーを含み、
前記電極用粉体を50MPaの圧力で加圧したときの比抵抗が700Ω・cm以下である、電極用粉体。
【請求項2】
請求項1に記載の電極用粉体の製造方法であって、
(a)活物質、導電材、及びバインダーを含む混合物を製造する工程と、
(b)前記バインダーを繊維化するため、前記混合物を70℃~200℃の範囲、常圧以上の圧力下で混練して混合物塊を製造する工程と、
(c)前記混合物塊を粉砕して電極用粉体を得る工程と、を含む、電極用粉体の製造方法。
【請求項3】
前記導電材が、活性炭、黒鉛、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種以上を含む、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項4】
前記バインダーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、またはこれらの混合物を含む、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項5】
前記(b)の工程の混練が、10rpm~100rpmの速度で1分~30分間行われる、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項6】
前記(b)の工程の混練が、10/s~500/sのせん断率で1分~30分間行われる、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項7】
前記(b)の工程の混練が、90℃~180℃で行われる、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項8】
前記(b)の工程の混練が、1atm~60atmの圧力下で行われる、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項9】
前記(c)の工程の粉砕が、500rpm~20,000rpmの速度で30秒~10分間行われる、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項10】
前記(c)の工程の後に、粉砕された前記電極用粉体を分級する段階をさらに含む、請求項2に記載の電極用粉体の製造方法。
【請求項11】
乾式電極の製造方法であって、
(d)請求項2に記載の電極用粉体の製造方法によって製造された電極用粉体をカレンダリングして合剤フィルムを製造する工程と、
(e)前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に配置し、ラミネーションして乾式電極を製造する工程と、を含む、乾式電極の製造方法。
【請求項12】
前記合剤フィルムの孔隙率が20~35%である、請求項11に記載の乾式電極の製造方法。
【請求項13】
前記乾式電極の耐屈曲性がΦ10mm未満である、請求項11に記載の乾式電極の製造方法。
【請求項14】
前記合剤フィルムの活物質のローディング量が3mAh/cm
2~15mAh/cm
2である、請求項11に記載の乾式電極の製造方法。
【請求項15】
前記合剤フィルムと前記集電体との間の界面抵抗が5Ω・cm
2以下である、請求項11に記載の乾式電極の製造方法。
【請求項16】
前記集電体上には伝導性プライマーが全体的または部分的にコーティングされている、請求項11に記載の乾式電極の製造方法。
【請求項17】
請求項11に記載の乾式電極の製造方法で製造された乾式電極。
【請求項18】
集電体と、
前記集電体上に位置し、活物質、導電材、及びバインダーを含む合剤フィルムと、を備え、
Φ10mm未満の耐屈曲性を有する乾式電極。
【請求項19】
前記乾式電極がΦ2~8mmの耐屈曲性を有する、請求項18に記載の乾式電極。
【請求項20】
前記乾式電極の耐屈曲性が測定標準JIS K5600-5-1方法に従って評価される、請求項18に記載の乾式電極。
【請求項21】
前記乾式電極の耐屈曲性が、
100mm×50mmの長方形の電極サンプルを製造する段階と、
2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、16mm、20mm、25mm、32mmの直径をそれぞれ有する測定棒を用意し、最大直径の測定棒を用いて前記電極サンプルを測定棒に接触させた後、前記電極サンプルの両端を持ち上げるとき、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生するか否かを判断する段階と、
前段階でクラックが発生しなければ、次に直径が大きい測定棒を用いて前段階と同様に前記電極サンプルの合剤フィルムのクラック発生如何を判断する段階を繰り返し、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生しない測定棒の最小直径値を耐屈曲性として決定する段階と、を経て評価される、請求項20に記載の乾式電極。
【請求項22】
前記合剤フィルムの孔隙率が20~35%である、請求項18に記載の乾式電極。
【請求項23】
前記合剤フィルムの活物質のローディング量が3~15mAh/cm
2である、請求項18に記載の乾式電極。
【請求項24】
前記合剤フィルムと前記集電体との間の界面抵抗が5Ω・cm
2以下である、請求項18に記載の乾式電極。
【請求項25】
前記集電体上には伝導性プライマーが全体的または部分的にコーティングされている、請求項18に記載の乾式電極。
【請求項26】
請求項17から25のいずれか一項に記載の乾式電極を含む二次電池であって、
前記乾式電極は正極であり、前記正極、負極、及び分離膜を含む電極組立体がリチウム含有非水系電解質とともに電池ケースに収納されている、二次電池。
【請求項27】
請求項26に記載の二次電池を単位電池として含むエネルギー貯蔵装置。
【請求項28】
乾式電極の製造装置であって、
活物質、導電材、及びバインダーを含む合剤原料物質を混合して混合物を製造するブレンダーと、
前記バインダーを繊維化するため、前記混合物を混練して混合物塊を製造するニーダーと、
前記混合物塊を粉砕して電極用粉体を形成する粉砕機と、
前記電極用粉体を合剤フィルムとして形成するカレンダーと、
前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に配置してラミネーションするラミネーションロールと、を含む、乾式電極の製造装置。
【請求項29】
前記ニーダーが70℃~200℃の範囲、常圧以上の圧力条件に設定される、請求項28に記載の乾式電極の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用乾式電極を製造するための電極用粉体、その製造方法、それを使用した乾式電極の製造方法、乾式電極、それを含む二次電池、エネルギー貯蔵装置、及び乾式電極の製造装置に関する。
【0002】
本出願は、2020年10月21日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0136913号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の使用が急増することにより、代替エネルギー、清浄エネルギーの使用に対する要求が増加している。その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学を用いた発電、蓄電分野である。
【0004】
このような電気化学的エネルギーを用いる電気化学素子の代表的な例としては、現在、二次電池が挙げられ、その使用領域が益々拡がっている趨勢である。
【0005】
このような二次電池のうちの代表的なものであるリチウム二次電池は、モバイル機器のエネルギー源だけでなく、近年は、大気汚染の主な原因の一つであるガソリン車両、ディーゼル車両などの化石燃料を使用する車両を代替する電気自動車、ハイブリッド電気自動車の動力源としての使用が実現されている。また、グリッド(grid)化を通じた電力補助電源などの用途としても使用領域が拡がっている。
【0006】
このようなリチウム二次電池の製造工程は、電極工程、組み立て工程、エージング工程の3段階に大きく分けられる。前記電極工程は、活物質混合工程、電極コーティング工程、乾燥工程、圧延工程、スリット工程、巻き取り工程などにさらに分けられる。
【0007】
このうち、活物質混合工程は、電極において実際の電気化学反応が起きる電極活性層を形成するためのコーティング物質を配合する工程であって、詳しくは、電極の必須要素である電極活物質、その他の添加剤である導電材と充填材、粉体間の結着と集電体に対する接着のためのバインダー、及び粘度付与と粉体分散のための溶媒などを混合して流動性を有するスラリーの形態で製造する工程である。
【0008】
このように電極活性層の形成のために混合された組成物を広い意味で電極合剤(electrode mixture)とも称する。
【0009】
その後、電極合剤を電気伝導性の集電体上に塗布する電極コーティング工程、及び電極合剤に含有されていた溶媒を除去するための乾燥工程が行われ、追加的に電極が圧延されて所定の厚さで製造される。
【0010】
一方、前記乾燥工程において、電極合剤に含有されていた溶媒が蒸発することにより、既に形成されていた電極活性層にピンホールやクラックのような欠陥が誘発されることがある。また、活性層の内部と外部とが均一に乾燥されず、溶媒の蒸発速度の差による粉体浮遊現象、すなわち、先に乾燥される部位の粉体が浮き上がりながら、相対的に後に乾燥される部位と間隙を形成することで、電極品質が低下するおそれがある。
【0011】
そこで、以上のような問題を解決するため、活性層の内部と外部とが均一に乾燥しながらも、溶媒の蒸発速度を調節可能な乾燥装置などが考慮されているが、このような乾燥装置は非常に高価であり、運用にも相当なコストと時間を要するため、製造工程性の面で不利である。
【0012】
したがって、最近は溶媒を使用しない乾式電極を製造する研究が活発に行われている。
乾式電極は、一般に、集電体上に、活物質、バインダー、導電材などを含んでフィルム形態で製造されたフリー・スタンディング(free‐standing)フィルムをラミネーションすることで製造される。
【0013】
従来の乾式電極を製造する段階を
図1に模式的に示す。
【0014】
図1を参照すると、まず、活物質、導電材としての炭素材料、及び繊維化可能なバインダーを一緒にブレンダーなどで混合し、ジェットミリング(jet‐milling)のような高せん断混合(high shear mixing)工程を通じてバインダーを繊維化した後、このような混合物をフィルム状にカレンダリングしてフリー・スタンディングフィルムを製造する工程を含む。その後、カレンダリング後の製造されたフリー・スタンディング(free‐standing)フィルムを集電体上にラミネーションすることで製造される。
【0015】
しかし、壊れ易い活物質に上記のような高せん断混合工程を適用する場合、粉体サイズの小さな微粉が多く生成され、機械的性能や電気化学的性能が低下し易く、高せん断混合が過剰になる場合は、生成されたバインダー繊維を切断してフリー・スタンディングフィルムの柔軟性を低下させるおそれがある。また、ジェットミリング工程時に設備の内部に構成成分が付着して高圧空気の流れを妨害するなどで流路が詰まる問題が生じるため、量産にも適さない。
【0016】
したがって、このような問題を解決することができる乾式電極製造技術の開発が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の問題を解決するため、活物質の微粉化を最小化し、バインダー繊維化を最大化した乾式電極用粉体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、それを含むことで、電極の機械的性能を改善するとともに量産に適した乾式電極の製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
本発明は、さらに、前記製造方法で製造された乾式電極、それを含む二次電池、及び前記乾式電極の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題を解決するため、本発明の一態様は、下記の具現例の電極用粉体を提供する。
【0021】
第1具現例によれば、二次電池用乾式電極を製造するためにフィルム化可能な電極用粉体であって、前記粉体は、活物質、導電材、及びバインダーを含み、50MPaの圧力で加圧したときの比抵抗が700Ω・cm以下である電極用粉体が提供される。
【0022】
第2具現例によれば、第1具現例による電極用粉体の製造方法であって、(a)活物質、導電材、及びバインダーを含む混合物を製造する段階と、(b)前記バインダーを繊維化するため、前記混合物を70℃~200℃の範囲、常圧以上の圧力下で混練して混合物塊を製造する段階と、(c)前記混合物塊を粉砕して電極用粉体を得る段階と、を含む、電極用粉体の製造方法が提供される。
【0023】
第3具現例によれば、第2具現例において、前記導電材は、活性炭、黒鉛、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0024】
第4具現例によれば、第2具現例または第3具現例において、前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、またはこれらの混合物を含み得る。
【0025】
第5具現例によれば、第2具現例~第4具現例のうちのいずれか一具現例において、前記(b)段階の混練は、10rpm~100rpmの速度で1分~30分間行われ得る。
【0026】
第6具現例によれば、第2具現例~第5具現例のうちのいずれか一具現例において、前記(b)段階の混練は、10/s~500/sのせん断率で1分~30分間行われ得る。
【0027】
第7具現例によれば、第2具現例~第6具現例のうちのいずれか一具現例において、
前記(b)段階の混練は、90℃~180℃で行われ得る。
【0028】
第8具現例によれば、第2具現例~第7具現例のうちのいずれか一具現例において、前記(b)段階の混練は、1atm~60atmの圧力下で行われ得る。
【0029】
第9具現例によれば、第2具現例~第8具現例のうちのいずれか一具現例において、前記(c)段階の粉砕は、500rpm~20,000rpmの速度で30秒~10分間行われ得る。
【0030】
第10具現例によれば、第2具現例~第9具現例のうちのいずれか一具現例において、前記(c)段階の後に、前記粉砕された電極用粉体を分級する段階をさらに含み得る。
【0031】
本発明の一態様は、下記の具現例の乾式電極の製造方法を提供する。
【0032】
第11具現例によれば、乾式電極の製造方法であって、(d)第2具現例~第10具現例のうちのいずれか一具現例の電極用粉体をカレンダリング(calendering)して合剤フィルムを製造する段階と、(e)前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に位置させてラミネーションする段階と、を含む、乾式電極の製造方法が提供される。
【0033】
第12具現例によれば、第11具現例において、前記合剤フィルムの孔隙率は20~35%であり得る。
【0034】
第13具現例によれば、第11具現例または第12具現例において、前記乾式電極の耐屈曲性はΦ(直径)10mm未満であり得る。
【0035】
第14具現例によれば、第11具現例~第13具現例のうちのいずれか一具現例において、前記合剤フィルムの活物質のローディング量は3mAh/cm2~15mAh/cm2であり得る。
【0036】
第15具現例によれば、第11具現例~第14具現例のうちのいずれか一具現例において、前記合剤フィルムと集電体との間の界面抵抗は5Ω・cm2以下であり得る。
【0037】
第16具現例によれば、第11具現例~第15具現例のうちのいずれか一具現例において、前記集電体上には伝導性プライマーが全体的または部分的にコーティングされ得る。
本発明の他の一態様は、下記の具現例の乾式電極を提供する。
【0038】
第17具現例によれば、第11具現例~第16具現例のうちのいずれか一具現例の製造方法で製造された乾式電極が提供される。
【0039】
第18具現例によれば、電極集電体と、前記電極集電体上に位置し、活物質、導電材、及びバインダーを含む合剤フィルムと、を備え、Φ(直径)10mm未満の耐屈曲性を有する乾式電極が提供される。
【0040】
第19具現例によれば、第18具現例において、前記乾式電極はΦ(直径)2~8mmの耐屈曲性を有し得る。
【0041】
第20具現例によれば、第18具現例または第19具現例において、前記乾式電極の耐屈曲性は、測定標準JIS K5600-5-1方法に従って評価され得る。
【0042】
第21具現例によれば、第18具現例~第20具現例のうちのいずれか一具現例において、前記乾式電極の耐屈曲性は、100mm×50mmの長方形の電極サンプルを製造する段階と、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、16mm、20mm、25mm、32mmの直径をそれぞれ有する測定棒を用意し、これらのうちの最大直径の測定棒を用いて前記電極サンプルを測定棒に接触させた後、前記電極サンプルの両端を持ち上げるとき、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生するか否かを判断する段階と、前段階でクラックが発生しなければ、次に直径が大きい測定棒を用いて前段階と同様に前記電極サンプルの合剤フィルムのクラック発生如何を判断する段階を繰り返し、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生しない測定棒の最小直径値を耐屈曲性として決定する段階と、を経て評価され得る。
【0043】
第22具現例によれば、第18具現例~第21具現例のうちのいずれか一具現例において、前記合剤フィルムの孔隙率は20~35%であり得る。
【0044】
第23具現例によれば、第18具現例~第22具現例のうちのいずれか一具現例において、前記合剤フィルムの活物質のローディング量は3mAh/cm2~15mAh/cm2であり得る。
【0045】
第24具現例によれば、第18具現例~第23具現例のうちのいずれか一具現例において、前記合剤フィルムと集電体との間の界面抵抗は5Ω・cm2以下であり得る。
【0046】
第25具現例によれば、第18具現例~第24具現例のうちのいずれか一具現例において、前記集電体上には伝導性プライマーが全体的または部分的にコーティングされ得る。
【0047】
本発明の一態様は、下記の具現例の二次電池を提供する。
【0048】
第26具現例によれば、第17具現例~第25具現例のうちのいずれか一具現例による乾式電極を含む二次電池であって、前記乾式電極は正極であり、前記正極、負極、及び分離膜を含む電極組立体がリチウム含有非水系電解質とともに電池ケースに収納されている二次電池が提供される。
【0049】
本発明の一態様は、下記の具現例のエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0050】
第27具現例によれば、第26具現例の二次電池を単位電池として含むエネルギー貯蔵装置が提供される。
【0051】
本発明の一態様は、下記の具現例の乾式電極の製造装置を提供する。
【0052】
第28具現例によれば、乾式電極の製造装置であって、活物質、導電材、及びバインダーを含む合剤原料物質を混合するブレンダーと、前記バインダーを繊維化するため、前記混合物を混練して混合物塊を製造するニーダーと、前記混合物塊を粉砕して電極用粉体を形成する粉砕機と、前記電極用粉体を合剤フィルムとして形成するカレンダー(calender)と、前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に位置させてラミネーションするラミネーションロールと、を含む乾式電極の製造装置が提供される。
【0053】
第29具現例によれば、第28具現例において、前記ニーダーは70℃~200℃の範囲、常圧以上の圧力条件に設定され得る。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、高せん断混合工程の代わりに、高温低せん断混練工程の後、粉砕する工程を導入することで、活物質の微粉化を最小化し、バインダー繊維化を最大化し、繊維化されたバインダーの切断を最小化することができる。
【0055】
また、このような電極用粉体を使用して乾式電極を製造することで、乾式電極の柔軟性を確保することができる。
【0056】
さらに、高せん断のジェットミリング工程ではなく、混練機を用いた混練、及び粉砕段階を経ることで、構成成分の固まりによって流路が詰まる問題がなく、量産にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】従来の二次電池用乾式電極の製造方法を示したフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態による二次電池用乾式電極の製造方法を示したフロー図である。
【
図3】本発明の実験例1による実施例1の電極用粉体のSEM写真である。
【
図4】本発明の実験例1による比較例1の電極用粉体のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をより詳しく説明する。
【0059】
本明細書及び請求範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0060】
本明細書で使われる用語は、例示的な実施例を説明するために使用されるものであり、本発明を限定するものではない。単数の表現は、特に明示されない限り、複数の表現を含む。
【0061】
また、明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、二次電池用乾式電極を製造するためにフィルム化可能な電極用粉体であって、前記粉体は、活物質、導電材、及びバインダーを含み、50MPaの圧力で加圧したときの比抵抗が700Ω・cm以下である電極用粉体が提供される。
【0063】
上記のような特性を有するためには、電極用粉体内に活物質、導電材、及びバインダーの分散を最大化し、且つ、微粉の発生を最小化しなければならない。
【0064】
本発明による電極用粉体は、後述する新たな製造方法で製造され、微粉の発生を最小化することができるため、上記のように比抵抗が低い値を有し、乾式電極の製造のためのフィルム化が容易である。
【0065】
上記の範囲から外れて高い比抵抗を有すると、その後に製造される合剤フィルム及び乾式電極の抵抗が高くなって電池性能を低下させるおそれがあるため、望ましくない。
【0066】
前記比抵抗は、底に4点探針が内蔵されている直径22mmのセラミック容器に電極用粉体2gを入れ、2,000kgfの力、すなわち約50MPaの圧力で加圧した後の抵抗を測定し、加圧された電極用粉体の厚さを掛けて計算し得る。
【0067】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、前記電極用粉体の製造方法であって、(a)活物質、導電材、及びバインダーを含む混合物を製造する工程と、(b)前記バインダーを繊維化するため、前記混合物を70℃~200℃の範囲、常圧以上の圧力下で混練して混合物塊を製造する工程と、(c)前記混合物塊を粉砕して電極用粉体を得る工程と、を含む電極用粉体の製造方法が提供される。
【0068】
また、本発明のさらに他の一実施形態によれば、前記電極用粉体を使用した乾式電極の製造方法であって、(d)前記電極用粉体をカレンダリングして合剤フィルムを製造する工程と、(e)前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に位置させてラミネーションして乾式電極を製造する工程と、を含む乾式電極の製造方法が提供される。
【0069】
図2には、本発明の一実施形態による電極用粉体の製造方法を含む乾式電極の製造方法を示したフロー図が模式的に示されている。
【0070】
図2を参照すると、本発明によれば、まず、活物質、導電材、及びバインダーを含む混合物を製造する。
【0071】
このとき、前記混合物を製造するための混合は、前記活物質、導電材、及びバインダーが均一に分布するように行われるものであり、パウダー状に混合されるため、これらの単純な混合が可能であれば、限定なく多様な方法によって混合し得る。但し、本発明では、溶媒を使用しない乾式電極を製造するため、前記混合は乾式混合で行われ得、ブレンダーまたはスーパーミキサーのような機器に前記物質を投入して行われ得る。
【0072】
また、前記混合は、均一性を確保するため、混合機を用いて5,000rpm~20,000rpmで30秒~20分間、詳しくは10,000rpm~15,000rpmで30秒~5分間行われ得る。
【0073】
このとき、前記乾式電極は正極であり得、活物質は正極活物質であり得る。
【0074】
前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物またはリチウム金属鉄リン酸化物、金属酸化物の形態であれば限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(x=0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLi2Mn3MO8(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;リチウム金属リン酸化物LiMPO4(M=Fe、Co、NiまたはMn)、ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0075】
または、前記乾式電極は負極であり得、活物質は負極活物質であり得る。
【0076】
前記負極活物質は、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の第1族、第2族、第3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SiO、SiO/C、SiO2などのシリコン系酸化物;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li‐Co‐Ni系材料などを使用し得る。
【0077】
但し、前記乾式電極は、詳しくは正極であり得、したがって、活物質は、詳しくは、正極活物質であり得、より詳しくは、リチウム遷移金属酸化物、リチウムニッケル‐マンガン‐コバルト酸化物、リチウムニッケル‐マンガン‐コバルト酸化物の一部が他の遷移金属で置換された酸化物、リン酸鉄リチウムなどであり得る。
【0078】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉体などの金属粉体;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得るが、詳しくは、導電材の均一な混合と伝導性向上のため、活性炭、黒鉛、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種以上を含み得、より詳しくは、活性炭を含み得る。
【0079】
前記バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、またはこれらの混合物を含み得、詳しくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み得、より詳しくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり得る。
【0080】
具体的には、前記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、全体バインダーの重量を基準にして60重量%以上含まれ得る。
【0081】
勿論、このとき、前記バインダーにはポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF‐HFP)などがさらに含まれ得る。
【0082】
前記活物質、導電材、及びバインダーの混合比は、活物質:導電材:バインダーが重量比で80~98重量%:0.5~10重量%:0.5~10重量%で含まれ得、詳しくは、85~98重量%:0.5~5重量%:0.5~10重量%で含まれ得る。
【0083】
上記の範囲を超えてバインダーの含量が多過ぎる場合は、バインダーがその後の混練工程で過度に繊維化されながら工程に影響を及ぼし得、少な過ぎる場合は、十分に繊維化できず、混合物塊を形成するほどに凝集されないか、合剤フィルムが製造され難いか、または合剤フィルムの物性が低下するおそれがある。
【0084】
また、上記の範囲を超えて導電材の含量が多過ぎる場合、相対的に活物質の含量が減少して容量が減少するかまたは合剤フィルムの物性が低下するおそれがあり、少な過ぎる場合は、十分な伝導性を確保できないため、望ましくない。
【0085】
一方、場合に応じて、前記混合物に電極の膨張を抑制する成分である充填材がさらに投入され得、前記充填材は、当該電池に化学的変化を誘発せず繊維状材料であれば特に制限されなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用され得る。
【0086】
このように混合物を製造した後、このような混合物でバインダーを繊維化するための工程が行われ得る。
【0087】
このとき、前記バインダーを繊維化するため、従来はジェットミリングのような高せん断混合が行われたが、このような混合によって活物質が微粉化され、形成された繊維が切断される問題が生じるおそれがあるため、本発明では、高せん断混合ではなく、低せん断混練の方法で問題を解消した。
【0088】
このとき、前記混練は、限定されないが、例えば、ニーダーのような混練機を用いて行われ得る。
【0089】
このような混練は、前記バインダーが繊維化されながら前記活物質と導電材粉体とを結合または連結することで、固形分100%の混合物塊を形成する段階である。
【0090】
具体的には、前記(b)段階の混練は、10rpm~100rpmの速度で1分~30分間行われ得、詳しくは25rpm~50rpmの速度で3分~7分間行われ得る。このとき、10/s~500/sのせん断率で1分~30分間行われ得る。せん断率は、より詳しくは、30/s~100/sの範囲であり得る。
【0091】
また、このような混練段階は、高温及び常圧以上の圧力条件で行われ得、より詳しくは、常圧よりも高い圧力条件で行われ得る。
【0092】
より具体的には、前記混練は、70℃~200℃の範囲、詳しくは、90℃~180℃または90℃~150℃で行われ得る。
【0093】
上記の範囲から外れて低い温度で行う場合、混練時にバインダーの繊維化及び混練による塊状化が不十分になり、カレンダリング時のフィルム化が円滑に行われず、高過ぎる温度で行う場合は、バインダーが急激に繊維化され、その後、過度なせん断力によって既に形成されていた繊維が切断される問題があるため、望ましくない。
【0094】
また、常圧以上、詳しくは1atm~60atmの圧力下、1atm~30atmの圧力下、1atm~10atmの圧力下、1atm~3atmの圧力下、または1.1atm~3atmの圧力下で行われ得る。
【0095】
上記の範囲から外れて高過ぎる圧力で行う場合は、過度なせん断力と圧力が加えられ、形成された繊維が切断されるかまたは混合物塊の密度が過剰に高くなる問題があるため望ましくない。
【0096】
すなわち、本発明によれば、高せん断混合の代わりに、高温及び常圧以上の圧力条件で低せん断混合工程を行うとき、本発明が意図した効果を果たすことができる。
【0097】
次いで、本発明によれば、混練段階を通じて製造された混合物塊を再度粉砕して電極用粉体を収得する段階が行われる。
【0098】
具体的には、前記混練を通じて製造された混合物塊を直ちにカレンダリングしてもよいが、この場合、高圧と高温で混合物塊を押して薄いフィルム状にする必要があり、それにより、フィルムの密度が過度に高くなるか、または、均一なフィルムが得られないという問題が生じる。そこで、本発明では、製造された混合物塊を粉砕段階に供する。
【0099】
このとき、前記粉砕は、特に限定されないが、ブレンダーを用いて行われるか、または、カッターミルやファインインパクトミルのようなグラインダーなどの機器を用いて行われ得る。前記粉砕は、具体的には、500rpm~20,000rpmの速度で30秒~10分間、詳しくは1,000rpm~10,000rpmの速度で30秒~1分間行われ得る。
【0100】
上記の範囲から外れてrpmが低過ぎるかまたは粉砕時間が短い場合は、粉砕が十分に行われず、フィルム化に適さない大きさの粉体が生じ得、rpmが高過ぎるかまたは粉砕時間が長い場合は、混合物塊から微粉が多量に発生し得るため望ましくない。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、前記(c)段階の後に、前記粉砕された電極用粉体を分級する段階をさらに含み得る。分級段階では、前記粉砕された電極用粉体を一定サイズ以下の細孔を有するメッシュ(mesh)を用いて一定大きさ以上の電極用粉体を濾して収得し得る。
【0102】
このような方法で電極用粉体を製造する。その後、このような電極用粉体を使用して乾式電極を製造する。
【0103】
具体的には、上記のように粉砕段階まで完了して製造された電極用粉体をカレンダリングして合剤フィルムを製造する段階を経る。
【0104】
このようなカレンダリングは、前記電極用粉体をフィルム形態に加工するものであって、例えば、50μm~300μmの平均厚さを有するようにフィルム形態に圧延して製造する段階であり得る。
【0105】
このとき、前記カレンダリングは、例えば、対向して配置されているロールによって行われ得、このとき、ロールの温度は50℃~200℃であり得、ロールの回転速度は10rpm~50rpmであり得る。
【0106】
このようなカレンダリング段階まで行えば、電極合剤の役割を果たす合剤フィルムが製造され得る。従来、このような合剤フィルムはフリー・スタンディング(free‐standing)フィルムとも称される。
【0107】
このように製造される合剤フィルムは、溶媒を含まないため、流動性が殆どなくて取り扱いが容易であり、所望の形態で加工して多様な形態の電極の製造に用いられ得る。さらに、本発明の電極合剤を電極の製造に用いる場合、溶媒を除去するための乾燥工程を省略可能であるため、電極の製造工程性を大きく改善できるだけでなく、従来の乾式電極の製造において問題となった活物質の微粉や繊維化したバインダーの切断などの問題を解消することができる。
【0108】
また、本発明によれば、カレンダリングの後、前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に形成させるラミネーション段階が行われる。
【0109】
前記ラミネーションは、前記合剤フィルムを集電体上に所定の厚さで圧延、付着する段階であり得る。
【0110】
前記ラミネーションもラミネーションロールによって行われ得、このとき、ラミネーションロールは常温(25℃)~200℃の温度に維持され得る。
【0111】
このようにラミネーションまで行われた乾式電極における合剤フィルムの孔隙率は、20~35%、22~30%、20~28%、20~26%、23.1~27.4%、23.1~24.8%、または24.8~27.4%であり得る。このような孔隙率は重点を置く効果に応じて少しずつ変化され得る。
【0112】
但し、上記の範囲内であると、多様な効果の面で望ましい。上記の範囲から外れて孔隙率が小さ過ぎる場合は、電解液が含浸し難くて寿命特性、出力特性などの面で望ましくなく、大き過ぎる場合は、同一容量を発現するための体積が増加するため、体積対比エネルギー密度の面で望ましくない。
【0113】
前記孔隙率は、電極の体積と重量から集電体の体積と重量を差し引いて合剤フィルムのみの見掛け密度を測定し、各構成成分の真密度と組成を基準にして計算した真密度を用いて、下記のような数式1によって計算可能である。
【0114】
[数式1]
孔隙率(%)={1-(見掛け密度/真密度)}×100
【0115】
また、上記のように製造された乾式電極の耐屈曲性は、Φ(直径)10mm未満、Φ(直径)8mm以下、Φ(直径)5mm以下、Φ(直径)2~8mm、Φ(直径)2~5mm、またはΦ(直径)2~3mmであり得る。
【0116】
すなわち、上述したように、本発明によって製造された乾式電極は、繊維化したバインダーの切断が減少するため、柔軟性を向上させることができる。
【0117】
前記耐屈曲性は、測定標準JIS K5600-5-1の方法に従って評価され得、具体的には、前記製造された乾式電極を多様な直径の測定棒に接触させた後、両端を持ち上げることでクラックの発生如何とクラックが発生しない最小直径を測定して得られる。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、前記乾式電極の耐屈曲性は、100mm×50mmの長方形の電極サンプルを製造する段階と、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、16mm、20mm、25mm、32mmの直径をそれぞれ有する測定棒を用意し、これらのうちの最大直径の測定棒を用いて前記電極サンプルを測定棒に接触させた後、前記電極サンプルの両端を持ち上げるとき、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生するか否かを判断する段階と、前段階でクラックが発生しなければ、次に直径が大きい測定棒を用いて前段階と同様に前記電極サンプルの合剤フィルムのクラック発生如何を判断する段階を繰り返し、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生しない測定棒の最小直径値を耐屈曲性として決定する段階と、を経て評価され得る。
【0119】
また、前記合剤フィルムの活物質のローディング量は、3mAh/cm2~15mAh/cm2であり得、詳しくは4mAh/cm2~10mAh/cm2、4mAh/cm2~6mAh/cm2、4mAh/cm2~5mAh/cm2、または4.8mAh/cm2~4.9mAh/cm2であり得る。
【0120】
ここで、前記活物質のローディング量は、下記の数式2のように計算した値である。
【0121】
[数式2]
ローディング量(mAh/cm2)=活物質の容量(mAh/g)×合剤フィルム内の活物質の重量比(wt%)×合剤フィルムの単位面積当り重量(g/cm2)
【0122】
また、前記合剤フィルムと集電体との間の界面抵抗は、5Ω・cm2以下、4.3Ω・cm2以下、4Ω・cm2以下、3Ω・cm2以下、1.3~4.3Ω・cm2、1.3~1.8Ω・cm2、または1.8~4.3Ω・cm2であり得る。
【0123】
ここで、前記界面抵抗は、MP(Multi Probe)抵抗測定方法を用いて電極に100μAの電流を印加し、46個の探針の間で測定される電位差をもって合剤フィルムと集電体層との間の抵抗値を計算した。
【0124】
上記の範囲から外れて界面抵抗が高い場合は、その後に製造される二次電池の電池性能を低下させるおそれがあるため、望ましくない。
【0125】
一方、前記集電体は、電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。また、集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用され得る。
【0126】
さらに、前記集電体は、表面で抵抗を下げて接着力を向上させるための伝導性プライマーを全体的にまたは部分的にコーティングしたものが使用され得る。
【0127】
ここで、前記伝導性プライマーは、伝導性物質とバインダーを含み得、前記伝導性物質は伝導性を有する物質であれば限定されないが、例えば、炭素系物質であり得る。
【0128】
前記バインダーは、溶剤に溶解可能なフッ素系(PVdF及びPVdF共重合体を含む)、アクリル系バインダー及び水系バインダーなどを含み得る。
【0129】
本発明の他の一実施形態によれば、前記乾式電極の製造方法で製造された乾式電極が提供される。
【0130】
本発明によれば、電極集電体と、前記電極集電体上に位置し、活物質、導電材、及びバインダーを含む合剤フィルムと、を備え、Φ(直径)10mm未満の耐屈曲性を有する乾式電極が提供される。
【0131】
このとき、合剤フィルムと集電体は上述した通りである。
【0132】
本発明の一実施形態によれば、前記乾式電極の耐屈曲性は、Φ(直径)10mm未満、Φ(直径)8mm以下、Φ(直径)5mm以下、Φ(直径)2~8mm、Φ(直径)2~5mm、またはΦ(直径)2~3mmであり得る。
【0133】
このとき、前記乾式電極の耐屈曲性は、上述したように測定標準JIS K5600-5-1方法に従って評価され得る。
【0134】
本発明の一実施形態によれば、前記乾式電極の耐屈曲性は、100mm×50mmの長方形の電極サンプルを製造する段階と、2、3、4、5、6、8、10、12、16、20、25、32mmの直径をそれぞれ有する測定棒を用意し、これらのうちの最大直径の測定棒を用いて前記電極サンプルを測定棒に接触させた後、前記電極サンプルの両端を持ち上げるとき、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生するか否かを判断する段階と、前段階でクラックが発生しなければ、次に直径が大きい測定棒を用いて前段階と同様に前記電極サンプルの合剤フィルムのクラック発生如何を判断する段階を繰り返し、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生しない測定棒の最小直径値を耐屈曲性として決定する段階と、を経て評価され得る。
【0135】
例えば、乾式電極のサンプルを測定棒に接触させた後、電極サンプルの両端を持ち上げたとき、直径32mmの測定棒から直径3mmの測定棒までの場合は電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生しなかったが、直径2mmの測定棒に電極サンプルを接触させた後、電極サンプルの両端を持ち上げたとき、電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生した場合は、この乾式電極の耐屈曲性を電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生していない測定棒の最小直径値であるΦ(直径)3mmと決定する。
【0136】
本発明の一実施形態によれば、前記合剤フィルムの孔隙率は、20~35%、22~30%、20~28%、20~26%、23.1~27.4%、23.1~24.8%、または24.8~27.4%であり得る。前記孔隙率の評価方法は上述した通りである。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、前記合剤フィルムの活物質のローディング量は3mAh/cm2~15mAh/cm2であり得、詳しくは4mAh/cm2~10mAh/cm2、4mAh/cm2~6mAh/cm2、4mAh/cm2~5mAh/cm2、または4.8mAh/cm2~4.9mAh/cm2であり得る。前記活物質のローディング量の評価方法は上述した通りである。
【0138】
前記合剤フィルムと集電体との間の界面抵抗は、5Ω・cm2以下、4.3Ω・cm2以下、4Ω・cm2以下、3Ω・cm2以下、1.3~4.3Ω・cm2、1.3~1.8Ω・cm2、または1.8~4.3Ω・cm2であり得る。前記界面抵抗の評価方法は上述した通りである。
【0139】
また、本発明によれば、前記乾式電極を含む二次電池であって、前記乾式電極が正極であり、前記正極、負極、及び分離膜を含む電極組立体がリチウム含有非水系電解質とともに電池ケースに収納されている二次電池、及びそれを単位電池として含むエネルギー貯蔵装置を提供される。
【0140】
このとき、前記二次電池及びエネルギー貯蔵装置の具体的な構造などは従来周知であるため、本明細書では説明を省略する。
【0141】
一方、本発明の一実施形態によれば、乾式電極の製造装置であって、活物質、導電材、及びバインダーを含む合剤原料物質を混合するブレンダーと、前記混合物を混練して混合物塊を製造するニーダーと、前記混合物塊を粉砕して電極用粉体を形成する粉砕機と、前記電極用粉体を合剤フィルムとして形成するカレンダーと、前記合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に位置させてラミネーションするラミネーションロールと、を含む乾式電極の製造装置が提供される。
【0142】
前記ブレンダーは、原料物質を混合する混合機であって、上述したように5,000rpm~20,000rpmの速度で合剤原料物質を混合し得る。
【0143】
前記ニーダーは、本発明でジェットミリングの代わりに使われるバインダー繊維化装置であって、ニーダーを用いた混練を通じて混合物が混合物塊として収得され得る。
【0144】
このとき、本発明が意図した結果物を収得するため、ニーダーは70℃~200℃の範囲、常圧以上の圧力条件に設定され得る。詳しくは、90℃~180℃、または90℃~150℃、1atm~60atmの圧力条件、1atm~30atmの圧力条件、1atm~10atmの圧力条件、1atm~3atmの圧力条件、または1.1atm~3atmの圧力条件に設定され得る。
【0145】
前記粉砕機は、混合物塊を粉砕して電極用粉体を形成する装置であって、ブレンダーを使用し得、またはカッターミルやファインインパクトミルのようなグラインダーなどを使用し得る。
【0146】
前記カレンダーは、前記電極用粉体をフィルム形態に成形する装置であって、例えば、対面する一対のローラーであり得、これらの間隔をもってフィルムの厚さを調節可能である。
【0147】
前記ラミネーションロールは、前記カレンダーによって成形される合剤フィルムを集電体の少なくとも一面に付着、圧延する役割を果たす。
【0148】
すなわち、本発明による乾式電極の製造装置は、ジェットミリング機器を含まず、ニーダーと粉砕機を含むことに特徴がある。
【0149】
前記ブレンダー、ニーダー、カレンダー、ラミネーションロールの具体的な構造などは周知であるため、本明細書では具体的な説明を省略する。
【0150】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者が容易に理解できるように、本発明を実施例、比較例、及び実験例を挙げて詳しく説明する。
【0151】
<実施例1>
正極活物質としてLiMnO2を94g、導電材として活性炭0.5g、及びカーボンブラック3g、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)2.5gをブレンダーに投入し、15,000rpmで1分間混合して混合物を製造した。ニーダーの温度を90℃に安定化させ、前記混合物をニーダーに投入した後、圧力1.1atmで50rpmの速度で5分間作動して混合物塊を収得した。
【0152】
前記混合物塊をブレンダーに投入し、10,000rpmで1分間粉砕して電極用粉体を収得した。
【0153】
<比較例1>
実施例1において、ニーダーを用いた混練及び粉砕段階を行わず、混合物をジェットミリング工程(繰り出し圧力50psi、粉砕圧力45psi)を通じて電極用粉体を収得した。
【0154】
<実験例1>
実施例1で製造された電極用粉体と比較例1で製造された電極用粉体のSEM写真を
図3及び
図4に示す。
【0155】
図3及び
図4を参照すると、活物質の微粉化程度を確認できる。
【0156】
比較例1の乾式電極で微粉化がさらに多く行われることを確認することができる。
【0157】
<実施例2>
ニーダーの温度を150℃にしたことを除き、実施例1と同様の方法で電極用粉体を収得した。
【0158】
<実施例3>
導電材としてカーボンブラックのみを3.5g使用し、ニーダーの温度を150℃にしたことを除き、実施例1と同様に電極用粉体を収得した。
【0159】
<比較例2>
ニーダーの温度を25℃にしたことを除き、実施例1と同様の方法で電極用粉体を収得した。
【0160】
<比較例3>
ニーダーの温度を60℃にしたことを除き、実施例1と同様の方法で電極用粉体を収得した。
【0161】
<実験例2>
実施例1~3、比較例1~3で製造された電極用粉体に対し、加圧比抵抗を下記のような方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0162】
電極用粉体の加圧比抵抗:底に4点探針が内蔵されている直径22mmのセラミック容器に電極用粉体2gを入れ、2,000kgfの力、すなわち約50MPaの圧力を加えた後の抵抗を測定し、加圧された電極用粉体の厚さを掛けて粉体比抵抗を計算した。
【0163】
その後、実施例1~3、比較例1~3で製造された電極用粉体を、下記のような活物質のローディング量条件でラップカレンダー(ロール径:88mm、ロール温度:85℃、20rpm)に投入して合剤フィルムを製造した。該合剤フィルムを伝導性プライマー層とし、カーボンブラック:アクリル系バインダーが5:6の重量比で混合されたプライマー層がコーティングされたアルミニウムホイル(19μm)の一面に位置させて、120℃に維持されるラミネーションロールを用いてラミネーションして電極を製造した。
【0164】
このとき、目標孔隙率を23~30%にし、上記の範囲内に収まるように合剤フィルムの初期密度と厚さに基づいてラミネーションロールのギャップを調節した。
【0165】
製造された電極に対して下記のようなパラメータを測定した。一方、比較例2及び3は、カレンダーを通じた合剤フィルムの製造可能性を評価した。その測定方法は以下の通りであり、その結果を下記の表1に示した。
【0166】
孔隙率:電極の体積と重量から集電体の体積と重量を差し引いて合剤フィルムのみの見掛け密度を測定し、各構成成分の真密度と組成を基準にして計算した真密度を用いて下記のような数式1によって各電極の実際孔隙率を求めた。
【0167】
[数式1]
孔隙率(%)={1-(見掛け密度/真密度)}×100
【0168】
耐屈曲性:測定標準JIS K5600-5-1方法に従って、各電極を多様な直径の測定棒に接触させた後両端を持ち上げることで、クラックの発生如何とクラックが発生しない最小直径を測定した。
【0169】
具体的には、耐屈曲性の評価は、100mm×50mmの長方形の電極サンプルを製造し;2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、16mm、20mm、25mm、32mmの直径をそれぞれ有する測定棒を用意し、これらのうちの最大直径の測定棒を用いて前記電極サンプルを測定棒に接触させた後、前記電極サンプルの両端を持ち上げるとき、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生するか否かを判断し;このとき、前段階でクラックが発生しなければ、次に直径が大きい測定棒を用いて前段階と同様に前記電極サンプルの合剤フィルムのクラック発生如何を判断する段階を繰り返し、前記電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生しない測定棒の最小直径値を耐屈曲性として決定する段階で実施された。
【0170】
例えば、乾式電極のサンプルを測定棒に接触させた後、電極サンプルの両端を持ち上げたとき、直径32mmの測定棒から直径3mmの測定棒までの場合は電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生しなかったが、直径2mmの測定棒に電極サンプルを接触させた後、電極サンプルの両端を持ち上げたとき、電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生した場合は、この乾式電極の耐屈曲性を電極サンプルの合剤フィルムにクラックが発生していない測定棒の最小直径値であるΦ(直径)3mmと決定する。
【0171】
合剤フィルムと集電体との間の界面抵抗:MP(Multi Probe)抵抗測定方法を用いて電極に100μAの電流を印加し、46個の探針の間で測定される電位差をもって合剤フィルムと集電体層との間の抵抗値を計算した。
【0172】
【0173】
表1を参照すると、本発明によって製造された乾式電極は、耐屈曲性がΦ(直径)3mm以下であることが確認できる。しかし、従来の方法で製造された乾式電極はΦ(直径)10mmであり、ニーダー温度が低いと、前記カレンダリング条件で容易にフィルム化されず、電極製造工程に適さないことが確認できる。
【0174】
<実験例3>
銅ホイル上に厚さ70μmでリチウム金属を蒸着して負極を製造した。
【0175】
実施例1~3、比較例1で製造された乾式電極と前記負極との間にポリエチレン膜(Celgard製、厚さ:20μm)を介在して電極組立体を製造した。
【0176】
前記電極組立体を電池ケースに収納した後、エチレンカーボネート、ジメチレンカーボネート、ジエチルカーボネートが1:2:1(体積比)で混合された溶媒にLiPF6が1Mで溶解されている液体電解液を注液し、密封して二次電池を製造した。
【0177】
前記二次電池を0.1Cで4.3VまでCC(定電流(Constant Current))‐CV(定電圧(Constant Voltage))充電した後、0.1Cで3.0Vまで放電し、これらの容量と効率を計算し、その結果を表2に示した。
【0178】
【0179】
表2を参照すると、本発明による方法で製造しても、従来の方法で製造した場合と同様またはより良い充放電効率を見せることを確認できる。
【国際調査報告】