(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】プルロープ、ロープ駆動される装置および引張力測定方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/102 20200101AFI20231101BHJP
【FI】
G01L5/102
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524864
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2021078965
(87)【国際公開番号】W WO2022090001
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】102020213745.5
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】エーベルスベルガー,ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】フライターグ,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ゲルリヒ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】モーセ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】根本 健
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB06
(57)【要約】
本発明は、軸方向引張力(Fa)を伝達するためのプルロープ(1)に関する。プルロープ(1)は、管状のロープシース(3)を有し、ロープシース(3)は、複数のロープストランドおよび/又はファイバ(5)から成るメッシュを含み、個々のロープストランドおよび/又はファイバ(5)は、局所的なロープ軸(A)に対して斜めに延在しており、プルロープ(1)は、ロープシース{3}内の部分セクション(s)に配置された細長い形状のセンサ素子(11)を有し、センサ素子は、コンデンサ(20)を有し、コンデンサの静電容量は、前記センサ素子へのロープシース(3)の半径方向圧力(Pr)に依存しており、前記センサ素子(11)への半径方向圧力(Pr)は、プルロープ(1)への軸方向引張力(Fa)に依存する。本発明は、さらに、このようなプルロープを備えたロープ駆動される装置、ならびにこのようなプルロープに作用する引張力(Fa)を測定するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向引張力(F
A)を伝達するためのプルロープ(1)であって、
前記プルロープ(1)は、管状のロープシース(3)を有し、前記ロープシース(3)が、複数のロープストランドおよび/又はファイバ(5)からなるメッシュを含み、個々の前記ロープストランドおよび/又はファイバ(5)は、ローカルロープ軸(A)に対して斜めに延在しており、
前記ロープシース(3)の内側のセクション(s)に配置された細長いセンサ素子(11)を有し、前記センサ素子(11)が、コンデンサ(20)を有し、前記コンデンサ(20)の静電容量が、前記センサ素子(11)に対する前記ロープシース(3)の半径方向圧力(P
r)に依存しており、
前記センサ素子(11)にかかる半径方向圧力(P
r)が、前記プルロープ(1)にかかる軸方向引張力(F
A)に依存している、
軸方向の引張力(F
A)を伝達するためのプルロープ(1)。
【請求項2】
前記ロープシース(3)とその内部にある前記センサ素子(11)が、互いに同軸に構成されていることを特徴とする請求項1記載のプルロープ(1)。
【請求項3】
前記センサ素子(11)の前記コンデンサ(20)が、2つの電極(21,22)と、前記電極(21,22)間に配置され半径方向に弾性変形可能な誘電体(25)とを有する請求項1または2に記載のプルロープ(1)。
【請求項4】
前記コンデンサ(20)が、内側電極(21)と外側電極(22)を有し、
前記誘電体(25)が、前記内側電極(21)を同軸上に取り囲み、前記外側電極(22)が、前記誘電体(25)を同軸上に取り囲む、
請求項3記載のプルロープ(1)。
【請求項5】
前記コンデンサ(20)が、2つの電極(21,22)と前記電極間にある誘電体層(25)とを含む螺旋状に巻回された層スタック(29)により形成されており、
特に、その巻回軸が局所的なロープ軸(A)に対応している、
請求項3に記載のプルロープ(1)。
【請求項6】
前記巻回された層スタック(29)が、前記電極(21,22)としての2つの金属箔と、前記金属箔間にある誘電体層(25)としての少なくとも1つのエラストマ要素と、を有する請求項5に記載のプルロープ(1)。
【請求項7】
前記巻回された層スタック(29)が、少なくとも1つのエラストマ要素(25)を有し、
前記電極(21,22)の少なくとも1つが、前記エラストマ要素(25)の2つの主面の一方にコーティングによって形成されている、
請求項5に記載のプルロープ(1)。
【請求項8】
前記センサ素子(11)が、直径可変の金属ばね要素(22,23)を有し、
前記金属ばね要素が、前記コンデンサ(20)の前記外側電極(22)を形成しているか、又は、外側スリーブ(23)として前記コンデンサ(20)の2つの前記電極(21,22)のうちの1つに電気的に接続されている、
請求項3から7のいずれか1項に記載のプルロープ(1)。
【請求項9】
前記金属ばね要素(22,23)が、スリット付きクランプスリーブ(24)および/又は螺旋状に巻回されたクランプスリーブ(24)として構成されている請求項8記載のプルロープ(1)。
【請求項10】
前記センサ素子(11)の外側輪郭(12)が、前記プルロープ(1)への軸方向引張力(F
A)が前記センサ素子(11)への半径方向圧力(P
r)を生じさせるように、前記センサ素子の軸方向長さの大部分にわたって凸状に形成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載のプルロープ(1)。
【請求項11】
前記プルロープ(1)が、前記コンデンサ(20)の前記電極(21,22)を評価ユニットに接続するための2本の電気接続線(31,32)を有し、
前記2本の電気接続線(21,22)が、特に前記ロープ軸(A)に平行に案内されている、
請求項1から10のいずれか1項に記載のプルロープ(1)。
【請求項12】
前記ロープシース(3)が、少なくとも大部分が合成プラスチックからなる、請求項1から11のいずれか1項に記載のプルロープ(1)。
【請求項13】
駆動装置と、被駆動要素と、請求項1から12のいずれか1項に記載のプルロープ(1)とを備えた、ロープ駆動される装置であって、
前記プルロープ(1)が、引張方向(A)に対して力を伝達するように前記駆動装置と前記被駆動要素とを接続する、
ロープ駆動される装置。
【請求項14】
ロボット装置として構成されている、請求項13に記載の装置(50)。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1項に記載のプルロープ(1)に作用する引張力(F
A)を測定するための方法
前記コンデンサ(20)の静電容量によって影響を及ぼされる電気信号が測定され、前記電気信号の大きさが、前記センサ素子(11)に対する前記ロープシース(3)の半径方向圧力(P
r)に依存し、
前記センサ素子(11)にかかる前記半径方向圧力(P
r)が、前記プルロープ(1)にかかる前記軸方向引張力(F
A)に依存する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向引張力を伝達するためのプルロープ(Zugseil)に関する。このプルロープは、複数のロープストランドおよび/又はファイバから成るメッシュを含む管状のロープシースを有する。個々のロープストランドおよび/又はファイバは、局所的なロープ軸に対して斜めに延在している。さらに、本発明は、そのようなプルロープを備えたロープ駆動される装置およびプルロープの引張力を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から高強度ロープが知られており、これらの高強度ロープは、ロープ駆動される装置において、引張力を伝達するために使用される。例えば、ロボット装置では、人体内の腱と同様に、駆動装置とそれから離間した位置にある被駆動要素との間で力を伝達する働きをするプルロープが使用される。しかし、力伝達ロープ運動学が適用される機械工学技術および電気工学技術では、さらに多数の他の用途が存在する。ロープ材料としての高強度プラスチックの開発に伴い、このようなロープ運動学的装置は、ますますコンパクトに構成することができる。これらの用途の多くでは、使用されているプルロープの実際の荷重状態を知り、特に連続的に測定することが有用である。基本的に、従来技術では、ロープの引張応力を測定する方法が知られている。種々のハンドセットおよび固定式引張応力測定装置が市販されており、これらの装置では、引張応力下にあるロープが、典型的には複数のローラの間に挟み込まれ、これらのローラに作用する力が、力センサを用いて測定される。この種の測定の欠点は、その測定には付加的な偏向プーリによるロープガイドの変位が必要となることである。さらに、それに測定装置を配置するためには十分に長い自由なロープ部分が存在しなければならないので、この種の測定には、一般的に比較的大きな設置スペースが必要である。しかし、このような長い自由なロープ部分は、特にコンパクトなロボット装置および他のコンパクトなロープ運動学的装置において、常に利用可能であるとは限らず、又は全ての動作状態においてアクセス可能ではない。さらに、少なくとも1つの偏向要素に力センサを取り付ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、上述の欠点を克服するプルロープを提供することにある。特に、ロープ駆動される装置において動作中に作用する引張力を、簡単かつ省スペースの方法で測定することを可能にするプルロープを提供すべきである。さらに、有利には、プルロープの機能性、特にプルロープの可撓性および/又は引張強さは、測定配置によって可能な限り影響を及ぼされないようにすべきである。さらに、その測定は、全体の動作中、可能な限り連続的に行われるべきである。更なる課題は、そのようなプルロープを備えたロープ駆動される装置、ならびにそのようなプルロープの引張力を測定するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの目的は、請求項1に記載されたプルロープ、請求項13に記載されたロープ駆動される装置、および請求項15に記載された測定方法によって達成される。
【0005】
本発明によるプルロープは、軸方向引張力を伝達するように構成されている。そのプルロープは、複数のロープストランドおよび/又はファイバからなるメッシュを含む管状のロープシースを有し、個々のロープストランドおよび/又はファイバは、局所的なロープ軸に対して斜めに延在している。本発明によれば、前記ロープシース内の部分セクションに細長いセンサ素子が配置されている。このセンサ素子は、コンデンサを有し、該コンデンサの静電容量は、前記センサ素子への前記ロープシースの半径方向圧力に依存する。前記センサ素子への半径方向圧力は、前記プルロープへの軸方向引張力に依存する。
【0006】
「軸方向」および「半径方向」という用語は、それぞれ、局所的なロープ軸に関係し、即ち、その都度において考慮されるロープ部分におけるロープの長手方向を指す。非円形断面のプルロープの場合でさえ、用語「半径方向」は、円形の形状と同様に、外部点からロープの中心への(又はその逆への)方向を意味するべきである。ロープシースは、一般にロープの場合に普通であるように、ロープ軸に対して斜めに横たわっている複数のロープストランドおよび/又はファイバを含む。例えば、クライミングロープは、今日では、外部のロープシースが内部のロープコアを放射状に囲むカーンマントルロープ(コアとシースのあるロープ)として製造される。ここに記載されるロープシースは、そのようなカーンマントルロープのロープシースに相当し、この場合、内部のロープコアは、原理的に(少なくとも部分的に)存在することができるが、特に有利には、完全に省略することもできる。ロープコアの代わりに、又は場合によってはこれに加えて、細長いセンサ素子が、ロープシースの内側に配置されている。このセンサ素子は、引張応力を、その場で、即ちプルロープ自体内で測定することを可能にする。センサ素子は、該センサ素子へのロープシースの半径方向圧力を測定するように設計されている。これは、センサ素子がコンデンサを含むことによって可能にされ、そのコンデンサの静電容量は、この半径方向圧力の変化によって変化させることができる。斜めに延在している複数のロープストランドおよび/又はファイバを有するロープシースの構造は、さらに、軸方向の引張力が変化するとき、センサ素子へのロープシースの半径方向の圧力を変化させる。これは、次のことによって起きる。即ち、軸に対して傾斜した姿勢に基づいて、ロープ軸に沿った引張力が、常にロープ中心の方向へのロープシースの押圧を生じさせ、それにより個々のストランドもしくはファイバとロープ軸との角度が小さくなることによって起きる。逆に、引張力の減少は、応力の減少をもたらす。組込み状況によっては、ファイバ角度の増加により、ロープシースが短くなり、同時に圧縮される。ロープ軸に対するストランド又はファイバの角度がこのように増加し、それに応じてロープシースの直径が増加する場合、細長いセンサ素子への半径方向圧力も減少する。個々のストランド又はファイバは、互いに編み込まれ、織り込まれ、ねじられ、交差させられおよび/又は絡み合わされ得る。唯一の重要なことは、ファイバ又はストランドの少なくともかなりの部分が、長手軸に対して角度を成していることであり、その結果、内部のセンサ素子への軸方向引張力と半径方向圧力との間における上述の相互作用が実現される。ロープの単一のストランドは、一方では、複数のファイバから編み込まれ、織り込まれ、ねじられ、交差させられおよび/又は絡み合わされ得る。しかし、すでに個々のファイバをストリング又はワイヤから適切な方法で作り上げてロープシースを形成することもできる。引張力が増加するにつれてセンサ素子をロープシース内部の中心に配置(センタリング)させるためには、内部のセンサ素子の細長い形状が好都合である。
【0007】
本発明によるプルロープの主な利点は、内部のセンサ素子により、大きな追加スペースを必要とすることなく、簡単な方法で、ロープの現場で引張応力の測定を可能にすることにある。センサ素子を配置することができる比較的短い自由なロープセクションが利用可能にされるだけでよい。例えば、この部分セクションの長さは、例えばロープ直径の20倍以下とすることができる。例えば、そのロープセクションの長さは、ロープ直径の4倍から20倍の間とすることができる。ロープ内部にセンサを組み込むことにより、引張応力を測定するための非常にコンパクトな構造が利用可能になり、これはコンパクトなロープ駆動される装置での使用に特に適している。これにより、プルロープの動作中における引張応力の持続的監視が可能にされる。半径方向圧力の関数として可変である静電容量を有するセンサ素子の構成は、多くの用途に対して十分に精密な力測定と同時に、単純かつ省スペースの装置構造を可能にする。特に、ロープ駆動される装置内部において、ロープの自由領域内に、即ち、そこに存在する偏向点もしくは取付点の間に、該当ロープセクションが配置されている場合には、プルロープの機械的特性は、組み込まれたセンサ素子によって殆ど変化しない。特に、ロープの引張強さと軸方向の剛性は、センサ素子の内部配置によってはごく僅かな影響しか受けない。このようにして、本発明は、引張力を連続的に測定するために、プルロープにセンサを永久的に組み込むことを可能にする。
【0008】
本発明によるロープ駆動される装置は、駆動装置と、被駆動要素と、引張方向に対して力を伝達するように前記駆動装置と前記被駆動要素とを接続する本発明によるプルロープとを有する。プルロープの本発明による実施形態は、前記装置内の引張応力を簡単な方法で測定することを可能にし、この機能のための追加の構造スペースを殆ど必要としない。プルロープを介した前記駆動装置と前記被駆動要素との間の上記接続は、直接接続である必要はない。言い換えれば、他の中間接続要素を排除すべきではない。しかし、力伝達接続は、少なくとも前記プルロープを介して行われなければならない。
【0009】
本発明による方法は、本発明によるプルロープに作用する引張力を測定するために使用される。この場合、コンデンサの静電容量の影響を受ける電気信号が測定され、その大きさは、ロープシースがセンサ素子に及ぼす半径方向圧力に依存する。さらに、センサ素子への半径方向圧力は、プルロープへの引張力に依存する。本発明によるロープ駆動される装置および本発明による測定方法の利点は、上述した本発明によるプルロープの利点に類似している。
【0010】
本発明の有利な実施形態および発展形態は、請求項1および13に従属する請求項から、また、以下の説明から明らかである。プルロープ、ロープ駆動される装置および測定方法の記載された実施形態は、一般に、互いに有利に組み合わせることができる。
【0011】
従って、細長く形成されたセンサ素子は、それの長手方向の軸線が局所的なロープ軸に沿って整列させられていて、少なくとも2:1のアスペクト比を有すると有利である。このアスペクト比は、センサ素子の長さ対(最大)直径の比を意味するものとして理解されるべきである。このように設計されたセンサ素子は、ロープに作用する引張力によってロープシースの内部においてセンタリングされる。
【0012】
ロープシースと内側のセンサ素子とは、一般に有利には、正確な形状に関係なく、互いに同軸に構成されているとよい。この場合、外側のロープシースおよび内側のセンサ素子は、両方とも回転対称の基本形状を有することが、即ち、それぞれが円形断面形状を有することが、特に有利である。これら2つの、特に回転対称形状の同軸配置では、その対称性のために、ロープシースの特性は、特に影響が少ない。しかしながら、上述のロープシースおよびセンサ素子の回転対称な形状は必須ではない。本発明は、原理的には、例えば、平坦な断面形状を有するセンサ素子が、これに対応して平坦に形成されたロープシース内に配置される場合にも、実現することができる。
【0013】
一般に特に好ましい実施形態によれば、センサ素子のコンデンサは、2つの電極と、それらの間に放射状に存在する弾性変形可能な誘電体とを有する。その弾性変形可能性によって、格別に簡単な方法で、結果として生じる電極間の距離の変化により、静電容量の変化をもたらすことができる。誘電体が(電極の正確な形状および配置に関係なく)2つの電極の間に放射状に存在する場合、それに作用する半径方向圧力の変化は、誘電体の半径方向厚さの変化およびそれに付随する静電容量の変化を引き起こし得る。例えば、プルロープへの引張応力が増大する場合、センサ素子に作用する半径方向圧力が増大し、これは、弾性変形可能な誘電体の圧縮およびそれに応じて静電容量の増大をもたらす。これに対して、このように増大した引張応力が再び減少する際に、誘電体の弾性に基づいてこの圧縮が再び逆行し、電極間隔が再び増加し、それに応じて静電容量が低下する。このようにして、引張力に依存する電気的な測定変数を、特に簡単な方法で利用可能にすることができる。この可変の静電容量を測定することにより、多くの用途に対してロープの引張力を十分な精度で測定することができる。
【0014】
弾性変形可能な誘電体を有するこの実施形態では、電極のうちの少なくとも1つは、可撓性であるように適切に設計されているので、当該電極も破壊されることなく変形可能である。特に有利な方法では、両方の電極は、特に巻回された層スタックを有する実施例の場合には、機械的に可撓性であるように形成することさえ可能である。
【0015】
弾性変形可能な誘電体は、特に好ましくは、エラストマとして構成されているか、又は少なくとも1つのエラストマを材料成分として含んでいるとよい。このエラストマは、例えば、ゴム、シリコーン、シリコーンゴム、アクリルおよび/又は例えば可塑剤によって弾性にされた別のプラスチックであってもよく、又はこのような材料を含むことができる。
【0016】
一般に、材料の選択とは無関係に、コンデンサは、有利には、円筒形状に構成することができ、又は少なくとも円筒状の基本形状を基づいて構成することができる。特に、コンデンサは、円形-円筒形の基本形状を有することができる。軸方向の全長に亘って延びる理想的な円筒形状とは異なって、原理的には、傾斜した又は丸みを帯びた端部領域を有することも可能である。この形状は、センサ素子の軸方向端部の領域における座屈荷重からロープシースを保護するために有利であり得る。しかしながら、それは、コンデンサが、その軸方向長さのかなりの部分にわたって楕円形又は卵形であるか、又は二重円錐の態様で両軸端に向かって先細りの縦断面形状を有する場合にも、可能であり、ときには有利である。このようなテーパ形のコンデンサの形状では、それにもかかわらず十分な変形可能性を達成するために、それに関連する外側電極のより高い剛性を、それに対応する低い肉厚によって補うことができる。コンデンサの長円形の縦断面形状は、例えば、軸方向端部の領域の電極間に位置する丸いキャップによって、および/又は軸方向端部領域の外側電極から突出する誘電体によって支持することができる。
【0017】
コンデンサの幾何学的形状に関する第1の実施変形例によれば、このコンデンサは、内側電極および外側電極を有することができ、誘電体は、内側電極を同軸的に取り囲み、外側電極は、誘電体を同軸的に取り囲む。この実施例は、同軸ケーブルの構造に対応し、同軸ケーブルのコアは内側電極によって与えられ、同軸ケーブルの外側導体は外側電極によって与えられており、誘電体は弾性変形可能である。原理的には、内側電極は中実または中空のいずれかとすることができる。内側電極は、格別に簡単な実施形態によれば、導電性材料で作られた単純なワイヤまたはピンとして実施することができる。
【0018】
しかし、代替の第2の実施変形例によれば、コンデンサは、2つの電極およびそれらの間に配置された誘電体層を含む、コイル状に巻回された層スタックによって形成することもできる。特に、その巻回軸は局所的なロープ軸に対応する。この巻回型の変形例の利点は、巻回数によって、半径方向圧力の所与の変化で、静電容量の格別に高い変化を達成することができることにある。
【0019】
この巻回型のコンデンサの有利な第1の派生変形例では、巻回された層スタックは、2つの金属箔を電極として、それらの間にある少なくとも1つのエラストマ要素を誘電体層として有するこことできる。このエラストマ要素は、一種の箔又はマットとして構成することができ、その結果、エラストマ要素と2つの金属箔との重ね合わせによって巻回可能なスタックが形成される。層スタック内に2つのこのようなエラストマ要素が存在すること、即ち、1つは両金属箔の間に、そして1つは該スタックの外側に存在することが格別に好ましく、それによって巻層間において両金属箔間の短絡が回避されると同時に、引張応力に依存した静電容量の格別に高い変化が達成される。この実施形態において、両金属箔は、有利には、弾性的に変形可能であるように設計することができるので、両金属箔は、コンデンサ全体の可逆的な変形可能性に寄与し、したがって、可逆的な静電容量変化に寄与する。両金属箔は、それらの電気的接触を容易にするために、誘電体に対して軸方向に突出しているとよい。例えば、紙コンデンサと同様に、一方の電極は、第1の軸方向端部に向かって突出することができ、他方の電極は、反対の、第2の軸方向端部に向かって突出することができる。
【0020】
一般に、層のスタックが緩く組み立てられたこの実施形態では、半径方向圧力が増加し、それに対応して半径方向厚さが減少するとき、エラストマ要素は、電極間の中間空間から軸方向端部領域に向かって膨らむことができる。誘電体の軸方向の膨張と同時に、2つの電極が軸方向にも膨張する際に、その面積増加は、静電容量のさらなる増加をもたらし、これは、半径方向距離の減少による静電容量の増加をさらに強める。しかし、電極の軸方向の長さは殆ど一定であり得る。
【0021】
巻回型のコンデンサの有利な第2の派生変形例では、巻回された層スタックは、この場合も先と同様、少なくとも1つのエラストマ要素を有するとよく、電極の少なくとも1つは、エラストマ要素の2つの主面の1つの上のコーティングによって形成されている。換言すれば、この実施例では、電極の少なくとも1つは、固定コーティングとして、そのエラストマ要素に接続されている。このコーティングは、特に、金属コーティングであるとよい。両電極は、格別に有利には、そのようなコーティングによって形成されているとよい。エラストマ要素は、両面にコーティングをすることができ、別のエラストマ要素又は別の絶縁体が巻回前に介在させられているとよい。あるいは、2つのエラストマ要素を組み合わせて、巻回することができるスタックを形成することができ、エラストマ要素の各々は、片側だけに、電極でコーティングされている。1つ又は複数の電極の金属コーティングは、特に、それぞれのエラストマ要素上に蒸着することができる。しかし、これに代えて、電極自体も導電性エラストマとして構成することができ、このエラストマは、特に、隣接する誘電エラストマ要素上のコーティングとして被着されている。この実施例の利点は、格別にフレキシブルに変形可能な電極が得られることである。導電性エラストマは、例えば、金属的に導電性である充填剤で充填された弾性変形可能なポリマーである。これで達成できる電気伝導率は、純粋に金属製の材料のそれよりも低いが、しかし、コンデンサの静電容量変化を測定するのに、電極の格別に高い伝導率も必要としない。
【0022】
コーティングとして形成された電極を有するこの実施例では、コンデンサの弾性、したがって、元の幾何学的形状の方向へのリセットは、とりわけ誘電体の弾性によってもたらされる。しかし、コーティングとして被着された電極は、誘電体の幾何学的形状の変化に伴って伸長または収縮するのに十分に柔軟でなければならない。したがって、この実施形態では、誘電体の長さの軸方向の変化には電極も含められる。
【0023】
一般に、電極および誘電体の正確な設計に関係なく、センサ素子が、コンデンサの外側電極を形成しているか、又は2つの電極のうちの1つに電気的に接続されているかのいずれかである直径可変の少なくとも1つのばね要素を有する場合に有利である。この金属ばね要素は、変形可能な誘電体と共に、力の一時的な変化による可逆的な変形に基づいて元の幾何学的形状に戻ることをもたらすことができる。両方の電極を金属ばね要素の形態とすることもできるが、少なくとも外側の電極がばね要素の形態とすることが特に有利である。そのような弾性電極に対する代替又は追加として、ばね要素として作用する外側スリーブがあり得、これは、外側電極に好都合に電気的に伝導的に接続され、同様の方法で復元効果を発揮する。
【0024】
金属ばね要素は、例えば、スリット付きクランプスリーブとしておよび/又は螺旋状に巻回されたクランプスリーブとして設計することができる。このようなクランプスリーブは、従来技術から周知であり、クランプピンまたはスプリングピンとも呼ばれることもある。金属ばね要素は、有利には、円形-円筒形の基本形状を有し、この場合、軸方向端部領域は、ここでも、何らかの他の方法で、丸めたり、面取りしたり、又は円錐形にテーパをつけたりすることができる。
【0025】
このようなスリット付きクランプスリーブは、例えば、波状および/又は歯状のスリット付きクランプスリーブとして、特に簡単なスリット加工で形成することができる。波形スリットおよび/又は歯付きのスリットは、外側に放射状に配置されたロープシースがスリットに挟まれにくいという利点を有する。クランプスリーブは、多重スリットクランプスリーブとしても設計することができる。個々のスリットは、交互に開口する方向を有する軸方向の部分的なスリットとして設計することができ、その結果、互いに接続された部品に対して蛇行構造が生じる。このような蛇行クランプスリーブは従来技術で知られている。さらに、1つ又は複数のスリットは、半径方向の部分的なスリットとして設計することができ、これにより、ばね作用は、半径方向内側又は半径方向外側の凹部によってもたらされる。外側に放射状に形成されたスリットは、ロープシースを保護するために弾性材料で満たすことができる。
【0026】
一般に、またコンデンサの正確な構成に関係なく、センサ素子の外側輪郭がその軸方向長さの支配的な部分にわたって凸状であるならば、プルロープ上の軸方向引張力がセンサ素子に半径方向の圧力を生じさせることができるので有利である。この形状は、ロープシース上の引張力に基づいて、局所的に(例えば、軸方向端部領域において)だけでなく、センサ素子の長さのかなりの部分にわたっても、半径方向の圧縮力を発生させる。その形状としては、結果として生じる半径方向の圧力が、センサ素子の長さの大部分にわたって可能な限り均一となるような形状が有利である。これは、できるだけ広がっている凸形状によって実現される。しかしながら、軸方向端部領域では、センサ素子の凸形状は、ロープシース内でのセンサ素子の中心合わせを促進するために、任意に尖った端部片に移行することができる。
【0027】
センサ素子の上述の好ましい形状は、必ずしもコンデンサの凸状の外側輪郭によって達成される必要はない。むしろ、コンデンサは、製造を容易にするために円筒形状に形成されているが、所望の外側輪郭を達成するためにアダプタスリーブによって取り囲まれているとよい。任意に、このアダプタスリーブは、個々のリブ内で可能な限り半径方向に整列させられる局所的な力成分をコンデンサにもたらすために、軸方向に離間したリブ内の凹部によって構造化することができる。これらのリブの間の空間は、ここでも、外側ロープシースを保護するために、弾性材料で満たすことができる。
【0028】
一般的に有利には、プルロープが、コンデンサの電極を評価ユニットに接続するための2つの電気接続線を有するとよく、両接続線は、特にセンサ素子の領域において、ロープ軸に平行に案内されている。両接続線は、該当する部分セクションの同じ軸方向端部で、又は向かい合った軸方向端部で、センサ素子の領域の外に導出されているとよい。前者の場合には、プルロープの領域内か外部かのいずれかにある評価電子装置への格別に簡単な共通接続線案内がもたらされる。両接続線は、相互に近接して案内されている場合、必要に応じて電気的に相互に絶縁する必要がある。後者の場合には、両接続線による追加容量が少なくなる。一般に、両接続線は、例えば、ワイヤ、より線又はケーブルとして実施することができる。両接続線は、接続領域内の個々のロープストランド又はファイバのメッシュを半径方向外側に通過させることによって、ロープシースを通過させることができる。
【0029】
ロープシースは、一般に、少なくとも大部分が合成プラスチックからなることが好ましい。合成プラスチックは、有利には、超高分子量ポリエチレン(特にダイニーマ又はスペクトル)、芳香族ポリエステル(特にベクトラン)、アラミド(特にケブラー(登録商標)又はノーメックス)、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)(特にPBO又はZylon)又はポリアミドであるとよい。これらの材料は、特に高い引張強さを特徴とする。さらに、それらは可撓性かつ非導電性であるため、多くの用途にも有利である。一般的に有利には、材料の正確な選択とは無関係に、ロープシースの材料の比引張強度が、例えば、2500N/mm2以上にあるとよい。このような高い引張強度は、高い引張力の伝達のために、小さなロープ直径を有するプルロープを使用することを可能にする。例えば、センサ素子が占有する部分領域の外側の領域におけるロープ直径は、0.5mmと10mmとの間にあるとよい。これに対して、センサ素子で満たされる部分領域内のロープ直径は、例えば、3倍増加され得る。例えば、4mmの通常の外径を有するロープシースは、センサ素子の領域において、12mmにまで増大した外径を有することができる。一般に、ロープ直径に対する係数は、有利には、1.5と5との間の範囲にあるとよい。比較的高い係数の場合には、引張応力測定の感度は格別に高いが、センサ素子の領域におけるロープシースへの機械的負荷も増加する。
【0030】
本発明は、高強度合成プラスチックからなるロープシースに限定されない。代替として、ロープシースは、従来の材料、例えば、鋼、銅または麻から構成されており、相応の方法で、引張力を測定するためのセンサ素子を局所的に詰められていてもよい。
【0031】
一般に、プルロープは、それぞれが別個のロープシースを有するいくつかの部分ロープから構成することができる。このような場合、これらの部分ロープの少なくとも1つに引張力を測定するために内部センサ素子が局所的に設けられていれば十分である。
【0032】
ロープ駆動される装置の有利な一実施形態によれば、センサ素子が内側に位置する部分セクションは、プルロープの自由走行領域に配置されている。このような自由走行領域は、偏向プーリとの機械的接触がなく、取付点がなく、それ以外にもプルロープが他の案内要素と機械的に接触していないプルロープのセクションである。
【0033】
ロープ駆動される装置は、引張力に依存する静電容量変化を測定可能な評価ユニットを含むことができる。この評価ユニットは、プルロープの一部として、又は別途に実施することができる。評価ユニットは、例えばコイルを有することができ、そのインダクタンスは、コンデンサの静電容量と共に振動共振回路を形成する。さらに、評価ユニットは、この発振器の周波数を測定することを可能に構成することができる。コンデンサの静電容量が減少すると、この周波数は増加し、また逆にコンデンサの静電容量が増大すると、この周波数は減少する。このようにして、比較的簡単な方法で、引張応力に依存する信号を供給する電気的測定が可能になる。
【0034】
ロープ駆動される装置は、例えば、ロボット装置として構成することができる。プルロープは、ロボット装置内で、引張力を伝達するために、例えば、組み込まれた駆動装置の助けを借りてロボット式関節ユニットを動かために、使用することができる。換言すれば、プルロープは、人体内の腱(テンドン)に類似した機能を引き受けることができる。しかし、「駆動テンドン」(駆動装置と被駆動要素とを力伝達接続する)の代わりとして、このようなテンドンは支持ブレースの機能も果たすことができ、これを通して駆動列の可動要素が機械的質量又は他の機械的剛性要素に対して支持される。例えば、本発明によるプルロープは、いわゆるテンセグリティ構造(Tensegrity-Strukture)の支持ブレースに一体化することができる。
【0035】
測定方法の格別に有利な実施形態によれば、電気信号を測定することによって引張応力の急速な変化も検出するように、この測定方法を設計することができる。このようにして、プルロープの領域内の振動を測定することができる。特に有利には、このような測定は、ロープ駆動される装置における能動的な振動減衰の基礎として使用することができる。
【0036】
以下において、添付の図面を参照しながら、いくつかの好ましい実施例をもとに本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】センサ素子が挿入されるプルロープの概略平面図を示す。
【
図2】センサ素子が挿入されたプルロープの概略平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
これらの図において、同一の要素又は同一機能を有する要素には、同一の参照記号が付されている。
図1は、本発明の第1の例に係るプルロープ1の概略平面図、具体的には、センサ素子11がこのプルロープのロープシース3の内部に挿入される製造工程中でのプルロープ1の概略平面図を示す。ロープシース3は、数本のロープストランド又はファイバで構成されるホース状のメッシュであり、そのうちの1本を例として5と表記する。これらの個々のストランド又はファイバは、それぞれ、局所的なロープ軸に対してある角度で存在する。ロープシース3の内側を外にむき出しにしてメッシュの間隙を一時的に拡大することによって、センサ素子は、破壊されることなく、ロープシース3の内部に挿入することができる。
図2は、センサ素子11をロープシースの内部に挿入し、個々のロープストランド5を再び押し合わせて対称メッシュを形成したプルロープ1の状態を示す。この2つの図は、本発明によるプルロープが、内部空洞を有する管状ロープシースを有する従来のロープのその後の変更によって、どのようにして簡単な方法で製造されるかを示している。センサ素子は、プルロープ1の部分セクションsに導入されるだけであり、この部分セクションでは、直径は、その後、それに対応して大きくなる。しかし、その他のセクションでは、プルロープは変化しない。全体として、引張強さや軸方向剛性のような本質的特性は、センサ素子を挿入することによって無視できる程度にしか変化しない。
【0039】
センサ素子11は、細長い形状を有し、完全に挿入された状態ではロープ軸Aと同軸上に存在する。このセンサ素子は、この例では、外側輪郭12を有し、この外側輪郭は、その長さのかなりの部分にわたって凸状である。それにもかかわらず、該輪郭は、両方の軸方向端部領域でテーパ状になっている。このテーパ状の形により、引張荷重を受けるロープシース内でのセンサ素子の中心合わせが容易になる。ロープシース3に引張力FAが加えられると、周囲のロープファイバ5の斜めの姿勢に基づいて、内側に配置されたセンサ素子に半径方向圧力Prがもたらされる。センサ素子の凸状の外側輪郭12により、得られる圧縮力は、センサ素子の長さの大部分にわたって大きい半径方向成分を有し、この成分は、印加される引張力FAの大きさの尺度を得るべく、センサ素子を使用して測定することができる。この測定は、センサ素子内部の静電容量の影響を受ける電気信号を測定して行う。この電気的測定を可能にするために、センサ素子は2本の接続線31,32を有する。これらは、最初は、ロープシース3内でロープ軸Aと平行に延在しているが、その後、斜めの端部セクションを通ってシースのロープメッシュを通して内部から引き出される。このようにして、ここに詳細には示されていない評価ユニットを介して、電気的測定を可能にすることができる。
【0040】
センサ素子の内部構造についてのいくつかの変形例を、以下の図に例として示す。
図3は、このようなセンサ素子11の第1の例に係る概略縦断面を示す。上述のように、センサ素子は、細長い形状を有し、ここには図示されていないロープシースの内の局所的なロープ軸Aに沿って配置されている。これは、半径方向圧力P
rを(又は特定の場所で斜めに作用する圧縮力の半径方向成分も)測定するために使用される。このために、センサ素子の内部にはコンデンサ20が配置され、そのコンデンサの静電容量はその半径方向圧力に依存する。コンデンサは、2つの電極21,22と、両電極間に放射状に存在する誘電体25とを有する。ここに示した実施形態では、第1の電極21は内部ワイヤとして設計されている。誘電体25は、このワイヤ21を同心的に取り囲む円形円筒形の要素であり、誘電体25は、ここでも、外側電極22によって同心的に取り囲まれる。したがって、同軸ケーブルと同様に、円形-円筒形の同軸構造である。誘電体25は、エラストマによって提供され、その半径方向の厚さdは、半径方向の圧力負荷の下で可逆的に変化することができる。これによって静電容量の可逆的変化がもたらされ、その静電容量の可逆的変化は、電極21,22に接続された接続線31,32を介して、ここには図示さていない外部回路より、例えば、該外部回路に含まれるコイルと共に変化した発振周波数を検出することによって測定することができる。ここに示されるコンデンサの円形円筒形状は、製造が格別に簡単である。それにもかかわらずセンサ素子11の凸状の外側輪郭12を達成するために、コンデンサは、ここでは凸状のアダプタスリーブ13によって囲まれている。このアダプタスリーブ13の形状によって、センサ素子の長さの大部分にわたって、周囲のロープシース上の引張力により、高い半径方向成分を有する圧力がコンデンサにもたらされることが達成される。
【0041】
図4は、センサ素子11のさらなる例を概略縦断面で示す。
図3の例と同様に、ここでもコンデンサ20は、内側電極21と、円筒状にそれを包囲する誘電体25と、包囲する円筒状の外側電極とから構成されている。前の例とは対照的に、ここでは、2つの電極についての接続線31,32は、センサ素子の同じ軸方向端部に導出される。そこでは、
図2に示すように、これらは、ここでは図示していないロープシースのメッシュを介して外部に導くことができる。前の例との更なる違いは、エラストマから形成された誘電体が、非圧縮状態であっても外側電極22を越えて軸方向に突出し、したがって実際のコンデンサよりも長いことである。誘電体は、これらの突出領域で面取りされ、したがって、センサ素子の凸状の外側輪郭の整形に寄与する。コンデンサ20の内側領域では、凸状の外側輪郭も、ここでは周囲のアダプタスリーブ13によって達成される。
図4は、このアダプタスリーブが原理的に異なる構成とすることができることを例としてのみ示している。図の下側には、
図3の例と同様に、軸方向に連続的なアダプタスリーブが示されている。これに対して、上部では、アダプタスリーブは、中央領域の外側でもコンデンサに圧力のできるだけ均一な半径方向伝達をもたらすために、複数の凹部によって軸方向リブ17に細分されている。任意に、これらのリブ間の間隙は、鋭いエッジでのロープシースの摩耗を避けるために、弾性変形可能な材料で充填することができる。そのようなリブを有する実施形態の場合、それらは、もちろん、アダプタスリーブの全周にわたって延在すべきである。
【0042】
図5には、図のコンデンサ20の概略斜視図が示されており、ここでは、周囲のアダプタスリーブを除いて示されている。このコンデンサの簡単に実現される円筒形の構造と、従来の同軸ケーブルの構造に対する類似性とが、ここでは特に明らかである。原理的には、このような円筒形コンデンサは、引張応力を測定するために、凸形アダプタスリーブなしにロープシース内部に挿入することも可能であるが、そうすると、コンデンサの長さにわたる半径方向圧縮力の分布は一様性が低くなる。
【0043】
図6は、本発明の他の例によるプルロープ1の概略縦断面を示す。センサ素子は、ここでは、おおよそ、ロープシース3の内部に配置されたコンデンサ20により形成されている。これまでの例とは対照的に、ここでは追加のアダプタスリーブはないが、コンデンサ自体はすでに凸形状になっている。この凸形状は、コンデンサのレンズ状断面プロフィールによって明らかであり、このプロフィールもまた、この例では、回転対称であるべきである。外側電極22およびその内部に配置される誘電体はいずれも凸形状の断面形状を有する。図面の左右の部分には、例としてのみ、異なる実施オプションが示されているが、実際の例では、両方の軸方向端部領域において殆ど同じである統一のとれた設計を有利に選択することができる。右側の部分は、例として、凸状に膨らんだ誘電体25が、軸方向端部領域26において、外側電極22から突出することができ、この端部領域26もまた丸みを帯びた形状を有することを示している。コンデンサ20が半径方向に圧縮されると、誘電体の突出部の割合が増加する。2つの電極21および22の殆ど固定された軸方向の長さのために、コンデンサの有効長は変化しない。左側部分は、一例として、軸方向端部領域における外側電極22の凸形状を、内側電極と外側電極との間に配置された軸方向にテーパを有する端部キャップ27によって支持することができることを示す。この端部キャップは、比較的剛性のプラスチックから形成することができる。エラストマ誘電体25が半径方向に圧縮されると、この端部キャップは、オプションとして、軸方向端部に向かって変位させることができる。しかしながら、
図6に詳しく示されているように、一方の側に突出する丸みのある誘電体と、反対側の端部キャップ27との組み合わせが存在することも考えられ得る。
【0044】
これまで
図3~
図6に示した例では、外側電極22が中空体としての誘電体25を囲んでいる。エラストマの半径方向の圧縮性のために、誘電体の半径方向の厚さdは可逆的に変化することができ、その弾性はまた、復元力を引き起こし、これは再び、半径方向の圧力作用が終了するか又は減少するときに、コンデンサの膨張をもたらす。この可逆的変形を容易にするためには、外側電極もその直径が可変であるように可逆的に変形することができれば有利である。理想的には、外側電極のこのような変形も復元力につながる。これは、記載された例において、外側電極が、可変直径を有する金属ばね要素として実施されることによって達成することができる。このようなばね要素は、従来技術から、例えば、いわゆるクランプスリーブの形態で知られている。
【0045】
図7から
図11は、クランプスリーブ24の異なる構成のいくつかの例を示し、特に、それらが外側電極22としてどのように使用されるかを示している。例えば、
図7は、円筒壁に単純な直線スリット24aを備えた単純な中空円筒状のクランプスリーブ24を示す。このクランプスリーブにかかる半径方向の圧力に応じて、このスリット24aの幅が変化し、これがスリーブ直径の変化につながる。金属円筒壁のばね作用に基づいて、このような変形によって復元力も生じる。
【0046】
同様に、
図8に示すクランプスリーブ24は、可変直径を有する円筒ばねとして作用する。しかし、ここでは、スリット24aは波状の鋸歯状スリットとして形成されている。これは、同様のばねたわみを有する円筒面に、より小さなギャップが形成されるという利点を有する。これに対応して、外側に接触するロープシースや、クランプスリーブの外側に配置されたアダプタスリーブがスリット24aに引っ掛かって結果として損傷するという危険性は少ない。
【0047】
図9には、同様に直径が可変の半径方向ばねとして作用する螺旋状に巻かれたクランプスリーブ24が示されている。直径が変化すると、金属製ロールばねの個々の巻層は比較的少ない摩擦で互いに滑り合い、その結果、連続したスリットがなくてもばね作用を達成することができる。
【0048】
図10は、複数の軸方向スリット24aを備えたクランプスリーブ24を示し、各スリットは部分的なスリットとして形成されている。残りの連結ブリッジ部は、2つの軸方向端部の間で交互に入れ代わり、その結果、静止円筒壁のための蛇行構造が生じる。全体として、スリットの圧縮および開口は、ばね作用およびクランプスリーブ24の可変直径をもたらす。
【0049】
最後に、
図11は、複数のスリット24aが軸方向に連続しているが、半径方向には部分的なスリットとしてのみ形成されているクランプスリーブ24の一実施形態を示している。一例として、ここでは、部分的なスリットは半径方向外側にある配置で示されているが、半径方向内側にある配置も可能であり、ロープの詰まりを回避するために有利である場合がある。一般に、
図10および
図11に示すスリット24aおよび特に部分的なスリットは、金属製の中空円筒の後続の機械加工、例えば、レーザ又はブローチによる機械加工によって製造することができる。さらに、これらのスリットを弾性変形可能な材料で充填することができる。
【0050】
図12は、本発明の更なる例によるコンデンサ20の概略断面図を示す。コンデンサの局所的な円筒軸に垂直な断面が示されており、この円筒軸は、ここでも先と同様に、完成したプルロープの局所的なロープ軸Aに沿って整列されているべきである。中心部には、軸方向に第1の接続線31が延在しており、この接続線は、ここでもワイヤとして形成することができる。このワイヤの周りには、層スタック29がロール状に巻回されている。この例では、この層スタックは、内側の第1の電極21および外側の第2の電極22と、マットのように形成された2つのエラストマ要素25aおよび25bとを備えている。第1の電極は内部接続線31に電気的に接続され、外側電極22は周囲の金属製の外側スリーブ23に電気的に接続されている。この電気的接続を容易にするために、ここでは、外側の第2のエラストマ要素25bは、第1のエラストマ要素25aよりも小さい巻回層を有する。しかし、示されている巻回層の個数は、ここでは例示にすぎないものとして理解すべきであり、有利には、実際の実施形態では著しく大きくすることもできる。このような巻回装置の主要な利点は、互いに重なり合う複数の誘電体巻回層が、半径方向の圧縮または膨張の際に、静電容量の変化において増大したストロークをもたらすことである。
【0051】
層スタック29の正確な構成については異なる変形例が考えられる。例えば、2つのマット状のエラストマ要素25aおよび25bのスタックとすることができ、これらの2つのエラストマ要素の間に、ならびに該スタックの外側側面の1つに、それぞれ金属箔が電極として配置されている。ここに示されている接触の代わりとして、これらの金属箔は、特に該金属箔が端部領域の1つにおいてエラストマ要素を越えて突出している場合には、巻回体の軸方向端部領域において接触させることもできる。金属箔が十分に厚ければ、金属箔は巻かれたスタックのばね効果にも寄与できる。また、この層スタックの個々の要素は、特に軸方向に互いにスライドすることができ、これにより、例えば、圧縮中にエラストマ要素25aおよび25bを元のシリンダーから軸方向に押し出すことができ、金属電極箔は、その軸方向長さを殆ど保持する。
【0052】
しかし、層スタックの代替的な実施形態では、マット状エラストマ要素は、導電性電極21、22にコーティングとしてしっかりと接続することもできる。このようなコーティングは、例えば、蒸着金属層、又は誘電体に接続された導電性エラストマであり得る。原理的には、エラストマ要素のどちらか一方を電極で両側に被覆することができ、被覆されていない絶縁層のみが隣接する巻層のために提供されている。これに代えて、互いに重なり合いそれぞれ片面だけコーティングされた2つのエラストマ要素が層スタック29を形成することができる。
【0053】
いずれにせよ、
図12の巻かれた実施形態は、半径方向の圧力、従ってロープの引張応力の関数としての測定信号の大きな変化を達成するために特に有利である。図示の外側スリーブ23は、可変直径を有する金属ばね要素として有利に設計することができ、従って、層スタックの復元効果に寄与する。特に有利には、この外側スリーブ23は、この場合も先と同様に、クランプスリーブとして実施することができ、特に、
図7~11のクランプスリーブ24の1つと同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 プルロープ
3 ロープシース
5 ロープストランド又はファイバ
11 センサ素子
12 外側輪郭
13 アダプタスリーブ
17 リブ
20 コンデンサ
21 第1の電極(内側電極)
22 第2の電極(外側電極)
23 外側スリーブ
24 クランプスリーブ
24a スリット
25 誘電体
25a 第1のエラストマ要素
25b 第2のエラストマ要素
26 誘電体の端部領域
27 端部キャップ
29 層スタック
31 第1の接続線
32 第2の接続線
A 局所的ロープ軸
d 誘電体の半径方向厚さ
FA 軸方向引張力
Pr 半径方向圧力
s 部分セクション
【手続補正書】
【提出日】2023-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向引張力(F
A)を伝達するためのプルロープ(1)であって、
前記プルロープ(1)は、管状のロープシース(3)を有し、前記ロープシース(3)が、複数のロープストランドおよび/又はファイバ(5)からなるメッシュを含み、個々の前記ロープストランドおよび/又はファイバ(5)は、ローカルロープ軸(A)に対して斜めに延在しており、
前記ロープシース(3)の内側のセクション(s)に配置された細長いセンサ素子(11)を有し、前記センサ素子(11)が、コンデンサ(20)を有し、前記コンデンサ(20)の静電容量が、前記センサ素子(11)に対する前記ロープシース(3)の半径方向圧力(P
r)に依存しており、
前記センサ素子(11)にかかる
前記半径方向圧力(P
r)が、前記プルロープ(1)にかかる
前記軸方向引張力(F
A)に依存している、
プルロープ(1)。
【請求項2】
前記ロープシース(3)とその内部にある前記センサ素子(11)が、互いに同軸に構成されていることを特徴とする請求項1記載のプルロープ(1)。
【請求項3】
前記センサ素子(11)の前記コンデンサ(20)が、2つの電極(21,22)と、前記電極(21,22)間に配置され半径方向に弾性変形可能な誘電体(25)とを有する請求項1または2に記載のプルロープ(1)。
【請求項4】
前記コンデンサ(20)が、内側電極(21)と外側電極(22)を有し、
前記誘電体(25)が、前記内側電極(21)を同軸上に取り囲み、前記外側電極(22)が、前記誘電体(25)を同軸上に取り囲む、
請求項3記載のプルロープ(1)。
【請求項5】
前記コンデンサ(20)が、
前記2つの電極(21,22)と前記電極間にある誘電体層(25)とを含む螺旋状に巻回された層スタック(29)により形成されており、
その巻回軸が
前記ローカルロープ軸(A)に対応している、
請求項3に記載のプルロープ(1)。
【請求項6】
前記巻回された層スタック(29)が、前記電極(21,22)としての2つの金属箔と、前記金属箔間にある誘電体層(25)としての少なくとも1つのエラストマ要素と、を有する請求項5に記載のプルロープ(1)。
【請求項7】
前記巻回された層スタック(29)が、少なくとも1つのエラストマ要素(25)を有し、
前記電極(21,22)の少なくとも1つが、前記エラストマ要素(25)の2つの主面の一方にコーティングによって形成されている、
請求項5に記載のプルロープ(1)。
【請求項8】
前記センサ素子(11)が、直径可変の金属ばね要素(22,23)を有し、
前記金属ばね要素が、前記コンデンサ(20)の前記外側電極(22)を形成しているか、又は、外側スリーブ(23)として前記コンデンサ(20)の2つの前記電極(21,22)のうちの1つに電気的に接続されている、
請求項
4に記載のプルロープ(1)。
【請求項9】
前記金属ばね要素(22,23)が、スリット付きクランプスリーブ(24)および/又は螺旋状に巻回されたクランプスリーブ(24)として構成されている請求項8記載のプルロープ(1)。
【請求項10】
前記センサ素子(11)の外側輪郭(12)が、前記プルロープ(1)への
前記軸方向引張力(F
A)が前記センサ素子(11)への半径方向圧力(P
r)を生じさせるように、前記センサ素子の軸方向長さの大部分にわたって凸状に形成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載のプルロープ(1)。
【請求項11】
前記プルロープ(1)が、前記コンデンサ(20)の前記電極(21,22)を評価ユニットに接続するための2本の電気接続線(31,32)を有し、
前記2本の電気接続線(21,22)が、
前記ローカルロープ軸(A)に平行に案内されている、
請求項
3から
9、及び請求項3を直接または間接的に引用する請求項10のいずれか1項に記載のプルロープ(1)。
【請求項12】
前記ロープシース(3)が、少なくとも大部分が合成プラスチックからなる、請求項1から11のいずれか1項に記載のプルロープ(1)。
【請求項13】
駆動装置と、被駆動要素と、請求項1から12のいずれか1項に記載のプルロープ(1)とを備えた、ロープ駆動される装置であって、
前記プルロープ(1)が、引張方向(A)に対して力を伝達するように前記駆動装置と前記被駆動要素とを接続する、
ロープ駆動される装置。
【請求項14】
ロボット装置として構成されている、請求項13に記載の装置(50)。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1項に記載のプルロープ(1)に作用する引張力(F
A)を測定するための方法
であって、
前記コンデンサ(20)の静電容量によって影響を及ぼされる電気信号が測定され、前記電気信号の大きさが、前記センサ素子(11)に対する前記ロープシース(3)の半径方向圧力(P
r)に依存し、
前記センサ素子(11)にかかる前記半径方向圧力(P
r)が、前記プルロープ(1)にかかる
前記引張力(F
A)に依存する、
方法。
【国際調査報告】