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特表2023-547179プロピレンの製造方法および製造装置
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  • 特表-プロピレンの製造方法および製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】プロピレンの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20231101BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 7/06 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 7/11 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C11/06
C07C7/06
C07C7/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525538
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2021127293
(87)【国際公開番号】W WO2022089570
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011196837.X
(32)【優先日】2020-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011196836.5
(32)【優先日】2020-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011198803.4
(32)【優先日】2020-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111253863.6
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522173712
【氏名又は名称】中石化(大連)石油化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】喬凱
(72)【発明者】
【氏名】周峰
(72)【発明者】
【氏名】楊秀娜
(72)【発明者】
【氏名】馬会霞
(72)【発明者】
【氏名】姜睿
(72)【発明者】
【氏名】張淑梅
(72)【発明者】
【氏名】金平
(72)【発明者】
【氏名】彭紹忠
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC26
4H006AD12
4H006AD18
4H006BA09
4H006BA30
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC37
4H006BD33
4H006BD52
4H006BD82
4H006BD84
4H006DA10
(57)【要約】
イソプロパノールを脱水してプロピレンにする方法であって、酸化アルミニウムを含む脱水触媒の存在下で、イソプロパノールを含む原料を脱水反応させてプロピレン含有生成物を製造する工程を含み、前記原料が、0.1~10.0質量%の水分含有量(原料の総質量を100質量%とする)を有し、C2不飽和不純物の含有量とC3-C4不飽和不純物の含有量との合計が80ppm以下(生成物の総質量を100質量%とする)である、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水方法であって、
アルミナを含む脱水触媒の存在下で、イソプロパノール含有出発物質を脱水反応に供して、プロピレン含有生成物を製造する工程(脱水工程と称する)を含み、
前記出発物質が、0.1~10.0質量%(好ましくは、出発物質の総質量の100質量%に対して、1.0~9.0質量%、より好ましくは3.0~5.0質量%)の水分含有量を有し、
前記生成物が、80ppm以下(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、75ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、または27ppm以下)のC2不飽和不純物およびC3-C4不飽和不純物の総含有量を有することを特徴とする、脱水方法。
【請求項2】
前記生成物が、
50ppm以下(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、30ppm以下、25ppm以下、または22ppm以下)のC2不飽和不純物含有量、および/または、
30ppm以下(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、20ppm以下、10ppm以下、または5ppm以下)のC3-C4不飽和不純物含有量、および/または、
65.0~69.8質量%(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、66.0~69.5質量%)のプロピレン含有量、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項3】
前記出発物質が、90.0~99.9質量%(好ましくは、前記出発物質の総質量の100質量%に対して、91.0~99.0質量%、より好ましくは92.0~97.0質量%)のイソプロパノール含有量を有し、および/または、
イソプロパノールの転化率が96.0~99.9%(好ましくは97.0~99.8%、より好ましくは98.5~99.5%)であることを特徴とする、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項4】
前記アルミナを含む脱水触媒は、
アルミナを含む固体酸触媒から選択され、
好ましくは、非晶質シリカ-アルミナおよびモレキュラーシーブから選択される少なくとも1つであり、
より好ましくは、非晶質シリカ-アルミナであり、
特に好ましくは、1~30質量%(好ましくは1~15質量%)のアルミナ含有量を有して残部がシリカである非晶質シリカ-アルミナであり、
より特に好ましくは、前記非晶質シリカ-アルミナは、300~500℃で飽和水蒸気処理に供されることを特徴とする、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項5】
前記脱水工程の操作条件は、反応温度150~450℃(好ましくは200~350℃)、反応圧力0.05~1.0MPaG(好ましくは0.1~0.5MPaG)、体積空間速度0.05~5.0h-1(好ましくは1~3h-1)であることを特徴とする、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項6】
さらに、前記生成物からイソプロパノール/水混合物(好ましくは共沸混合物)を分離する工程を含むか、または、
さらに、以下の工程:
(1) 吸収剤、好ましくは、水およびイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つ、特に水で生成物を洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得る工程と、
(2) 粗プロピレン生成物を分離、好ましくは精留に供し、重質成分を除去し、好ましくは重質成分のみを除去して、精製プロピレンを得る工程と、
(3) 濃厚吸収液を分離し、好ましくは精留に供し、イソプロパノール/水混合物、好ましくは共沸混合物を得る工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項7】
前記混合物が、前記混合物の総質量の100質量%に対して、5~90質量%(好ましくは10~80質量%、10~50質量%または10~20質量%、より好ましくは12~13質量%)の水分含有量を有することを特徴とする、請求項6に記載の脱水方法。
【請求項8】
さらに、前記混合物の少なくとも一部(好ましくは50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または実質的に100質量%)を前記脱水工程にリサイクルする工程(リサイクル工程と称する)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の脱水方法。
【請求項9】
前記リサイクル工程において、前記混合物の少なくとも一部が前記脱水工程の出発物質と混合され、場合により追加量の水が補充され、前記出発物質の水分含有量を所定のレベルに調整(例えば、増加または減少)することを特徴とする、請求項8に記載の脱水方法。
【請求項10】
さらに、前記生成物のC3-C4不飽和不純物含有量を測定し、前記含有量の測定値(単位ppm)を、前記生成物の総質量100質量%に対して予め設定された値(例えば、20ppm、10ppmまたは5ppm)と比較する工程を含み、
前記含有量の測定値が前記予め設定された値よりも大きい場合、イソプロパノールの転化率を測定して前記転化率の測定値(Cとして設定される、単位%)を得て、
(1)
前記測定値Cが96.0%~99.0である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~30倍、0.01~20倍、0.01~10倍、0.01~5倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)0.1~3.0質量%の範囲とし、
好ましくは、(出発点を96.0、終点を99.0として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を0.1、終点を3.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(96.0,0.1)から座標(99.0,3.0)まで直線区間を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A1)と設定し、ここでA1は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA1~3.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA1~A1+(3.0-A1)/2の範囲の値が選択され、
(2)
前記測定値Cが99.0%~99.5%である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)3.0~5.0質量%の範囲とし、
好ましくは、(出発点を99.0、終点を99.5として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を3.0、終点を5.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.0,3.0)から座標(99.5,5.0)まで直線区間を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A2)と設定し、ここでA2は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA2~5.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA2~A2+(5.0-A2)/2の範囲の値が選択され、
(3)
前記測定値Cが99.5%~99.9%である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)5.0~10.0質量%(好ましくは5.0~9.0質量%)の範囲とし、
好ましくは、(出発点を99.5、終点を99.9として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を5.0、終点を10.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.5,5.0)から座標(99.9,10.0)まで直線区間を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A3)と設定し、ここでA3は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA3~10.0(好ましくはA3~9.0)の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA3~A3+(10.0-A3)/2(好ましくはA3~A3+(9.0-A3)/2)の範囲の値が選択される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項11】
さらに、前記生成物のC2不飽和不純物含有量を測定し、前記含有量の測定値(単位ppm)を、前記生成物の総質量100質量%に対して予め設定された値(例えば、50ppm、30ppm、25ppmまたは22ppm)と比較する工程を含み、前記含有量の測定値が前記予め設定された値よりも大きい場合、イソプロパノールの転化率を測定して前記転化率の測定値(Dとして設定される、単位%)を得て、
(1)
前記測定値Dが96.0%~99.0である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~50倍、0.01~20倍、0.01~10倍、0.01~5倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)0.1~5.0質量%の範囲とし、
好ましくは、(出発点を96.0、終点を99.0として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を0.1、終点を5.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(96.0,0.1)から座標(99.0,5.0)まで直線区間を引き、前記直線区間上の測定値Dの座標を(Dとして設定される、B1)と設定し、ここでB1は前記直線区間上の測定値Dに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてB1~5.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてB1~B1+(5.0-B1)/2の範囲の値が選択され、
(2)
前記測定値Dが99.0%~99.9である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~3倍、0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)5.0~10.0質量%(好ましくは5.0~9.0質量%)の範囲とし、
好ましくは、(出発点を99.0、終点を99.9として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を5.0、終点を10.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.0,5.0)から座標(99.9,10.0)まで直線区間を引き、前記直線区間上の測定値Dの座標を(Dとして設定される、B2)と設定し、ここでB2は前記直線区間上の測定値Dに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてB2~10.0(好ましくはB2~9.0)の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてB2~B2+(10.0-B2)/2(好ましくはB2~B2+(9.0-B2)/2)の範囲の値が選択される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の脱水方法。
【請求項12】
プロピレンの製造方法であって、
水素化触媒の存在下で、出発物質としてのアセトンを水素化反応に供してイソプロパノール含有生成物を製造する工程と、
前記イソプロパノール含有生成物を分離して水素含有ガスとイソプロパノール含有液とを得る工程と、
前記イソプロパノール含有液を分離してイソプロパノールを得る工程と、
前記イソプロパノールを脱水して請求項1~11のいずれか一項に記載の脱水方法によりプロピレン含有生成物を製造する工程(脱水工程と称する)と、
前記プロピレン含有生成物を吸収剤で洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得る工程と、
前記濃厚吸収液を分離してイソプロパノール/水共沸混合物を得る工程と、
前記粗プロピレン生成物から重質成分を分離除去して精製プロピレンを得る工程と、
を含むことを特徴とする、プロピレンの製造方法。
【請求項13】
さらに、イソプロパノール/水共沸混合物の少なくとも一部分(好ましくは50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または実質的に100質量%)を脱水工程にリサイクルする工程を含むことを特徴とする、請求項12に記載のプロピレンの製造方法。
【請求項14】
プロピレンの製造装置であって、
順次接続された、アセトン水素化反応器と、水素化生成物気液分離器と、分留塔と、イソプロパノール脱水反応器と、プロピレン吸収分離塔と、共沸蒸留塔と、粗プロピレン重質分留器と、を含む製造装置であって、
前記アセトン水素化反応器は、水素化触媒の存在下で、出発物質としてのアセトンを水素化反応させてイソプロパノール含有生成物を製造するように構成され、
前記水素化生成物気液分離器は、前記イソプロパノール含有生成物を分離して水素含有ガスとイソプロパノール含有液とを得るように構成され、
前記分留塔は、前記イソプロパノール含有液を分離してイソプロパノールを得るように構成され、
前記イソプロパノール脱水反応器は、アルミナ含有脱水触媒の存在下で、出発物質としてのイソプロパノールを脱水反応させてプロピレン含有生成物を製造するように構成され、
前記プロピレン吸収分離塔は、前記プロピレン含有生成物を吸収剤で洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得るように構成され、
前記共沸蒸留塔は、前記濃厚吸収液を分離してイソプロパノール/水共沸混合物を得るように構成され、
前記粗プロピレン重質分留器は、前記粗プロピレン生成物から重質成分を分離除去して精製プロピレンを得るように構成され、
前記共沸蒸留塔の上端部および/または上部の材料出口は、前記イソプロパノール脱水反応器の材料入口と連通している
ことを特徴とする、製造装置。
【請求項15】
前記イソプロパノール脱水反応器の生成物出口に、少なくとも2つの測定器、少なくとも1つの比較器、および少なくとも1つのコントローラが設けられ、
前記少なくとも2つの測定器において、少なくとも1つは、生成物のC3-C4不飽和不純物含有量および/またはC2不飽和不純物含有量を測定して、含有量の測定値を得るように構成され、少なくとも1つは、イソプロパノールの転化率を測定して、転化率の測定値を得るように構成され、
前記少なくとも1つの比較器は、前記測定値を予め設定された値と比較し、比較結果および転化率の前記測定値に基づいて、前記少なくとも1つのコントローラに命令を発行するように構成され、
前記少なくとも1つのコントローラは、前記命令を実行して、前記イソプロパノール脱水反応器の出発物質の水分含有量を増加させるように構成される
ことを特徴とする、請求項14に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は化学工業の分野に属し、イソプロパノールの脱水によってプロピレンを製造する方法、前記方法を含むアセトンからプロピレンを製造する方法、および関連する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的にフェノールの需要が大幅に増加しており、例えば、世界的に総フェノール生産能力は2017年に1363.7万トン/年に増加しており、これは、2009年の世界的な総フェノールエネルギーよりも47%高い。統計によると、近年、特にアジアおよび中国において、複数の新規に構築されたフェノール-アセトン装置が世界中で製造されている。現在のフェノール製造は、アセトンが共生成物であるクメン酸化プロセスを主に使用する。フェノールの強力な世界的需要に伴い、既存のフェノール-ケトン装置における共生成アセトンの剛性供給が大きすぎ、地域的または世界的なアセトン余剰の状況が現れるという問題が引き起こされる。
【0003】
中国および世界におけるアセトンの大量生産能力、大量市場需給および低価格、並びにプロピレンの不足および高価格の現状に鑑み、アセトンをフェノール-ケトン装置で水素化および脱水することによりプロピレンを製造する方法の統合は、低アセトン価格および非円滑な販売の問題を解決するために使用することができ、フェノール-ケトン装置のための生成物比率を調整するための技術的スキームを提供することができ、その結果、特に、プロピレンとアセトンとの間に大きな価格差がある期間において、フェノールおよびその下流生成物の市場競争力を著しく改善することができ、顕著な経済的利益を得ることができる。
【0004】
CN 102690172Aはアセトンの水素化によるイソプロパノールの製造方法を開示しており、これは、アセトンの水素化によってイソプロパノールを生成し、不純物、特に水をイソプロパノールから除去する際に遭遇する問題を解決することを目的とし、水素化によってアセトンをイソプロパノールに変換し、次いで、ジイソプロピルアミンをエントレーナーとして使用することによってイソプロパノールから水を除去し、次いで、重質成分を除去して、適格なイソプロパノール生成物を得ることを含む。
【0005】
CN 102728361Aは、アセトンの水素化によってイソプロパノールを製造するための触媒およびその適用を開示している。触媒は、150~359m/gのBET比表面積と0.30~0.8m/gの細孔容積を有するアルミナと、10~30m/gの全ニッケル含有量を有する8~25%のニッケルとを含む。
【0006】
CN 103772145Bは、アセトンの水素化によるイソプロパノールの生産に有用な分離方法であって、アセトン水素化生成物に対して共沸蒸留および抽出蒸留を行って高純度イソプロパノールを得ることを含む分離方法を開示している。本方法は具体的には、(1)アセトン水素化生成物を、共沸蒸留のための精留塔に供給し、塔の上端部から共沸混合物を取り出し、塔の底部から重質成分を取り出し、塔の側部線からイソプロパノール生成物を取り出す工程と、(2)精留塔の上端部から取り出された共沸混合物を回収塔に通過させ、抽出剤を使用して抽出および精留に供し、アセトンおよびイソプロパノールの還流を塔の上端部から取り出し、それをリサイクルのために反応器に戻し、抽出剤における濃厚水溶液を塔の底部から取り出す工程と、(3)回収塔の底部から脱水塔に材料を送り、抽出剤を塔の底部から取り出し、回収塔にリサイクルする工程とを含む。
【0007】
CN 103508833Bはイソプロパノールの脱水によるプロピレンの製造方法を開示しており、イソプロパノールを、イソプロパノール脱水反応のための条件下で触媒と接触させて、イソプロパノールの脱水によるプロピレンを得ることを含む。触媒は、以下の方法によって調製される:テンプレートおよびアルミニウム源を含むゲル系を調製すること;次いで、メソ多孔性ナノアルミナを除去すること。
【0008】
Huixia Maらは、Thermodynamic analysis of reaction for producing propylene by dehydration of isopropanol”, Modern Chemical Industry, volume 40, No. 6において、熱力学的平衡の観点から、イソプロパノールの脱水反応は、好ましくは高温大気圧気相脱水法を用いて行われると述べている。しかしながら、イソプロパノール脱水反応は依然として速度制御段階にあり、熱力学的平衡に達しないので、上記の参考文献は、イソプロパノール脱水反応を実施するための指針をほとんど提供しない。
【0009】
Chunyan Liuらは、Reaction for producing propylene by dehydration of isopropanol catalyzed with an acidic catalyst”, Petrochemical Industry, volume 19, No. 5において、反応温度を単純に上昇させることによりイソプロパノールのより高い転化率を達成することができるが、より多くの副反応によりプロピレンの選択性が低下し、その効果は理想的ではないと述べている。
【発明の概要】
【0010】
本願の発明者らは、市場でのフェノールの需要が強く、フェノール-ケトン装置によるアセトンの共生成が過剰である状況を考慮すると、プロピレンを生成するためのアセトンの水素化は生成物スキームを調節するための優れた技術的経路であると考える。しかしながら、従来技術におけるアセトンの水素化によるプロピレンの製造方法は、長いプロセスフロー、触媒の高い転化率および選択性、分離プロセスの高いエネルギー消費量、生成物純度に対する高い要求などの問題を有し、従来技術はアセトン水素化およびイソプロパノール脱水の単一段階プロセス操作を採用しており、アセトンからの水素化/脱水によるイソプロパノールの製造のための統合プロセスは存在せず、アセトンからプロピレンを製造するためには、ポリマーグレードのプロピレン生成物に対する品質要求(GB/T 7716-2014)が高いので、以下の問題がある:(1)アセトンの水素化およびイソプロパノールの脱水に対する単一段階の転化率および選択性要求が高く、または、そうではなく転化率およびいずれかの段階の選択性が低い場合は、プロピレンの品質要件を満たすことができないこと。(2)特に、イソプロパノールの脱水によるプロピレンの製造方法について、単段階の転化率および選択性は、プロピレンの精製および分離に対する、収率、生成物純度およびエネルギー消費量に直接影響を及ぼし、したがって、イソプロパノールの脱水によるプロピレンの製造方法の転化率および選択率の向上は、プロピレンの生成物純度の向上、イソプロパノールおよびアセトンの消費量の低減、および分離等のためのエネルギー消費量の低減のために非常に重要であること。したがって、アセトンからプロピレンを製造するプロセスの全体的な転化率および選択性の改善、特にイソプロパノールの脱水によるプロピレンを製造するプロセスの転化率および選択性の改善は、プロピレン生成物の純度を改善することができるだけでなく、プロセス全体の分離エネルギー消費量および原材料消費量を低減することにおいて重要な役割を果たす。
【0011】
したがって、本願の発明者らは、現在のフェノール-ケトン装置におけるアセトン共生成の過剰な供給によって引き起こされる過剰なアセトンおよびプロピレンの不足の状況に鑑みて、アセトンからプロピレンを生成するための統合されたプロセスまたはプロピレン生成をフェノール装置と組み合わせる統合された技術が先行技術に存在しない一方で、アセトンの水素化、次いでフェノール-ケトン装置を用いた脱水によってプロピレンを生成するためのプロセスの統合は、アセトンの低価格および不十分な市場性の問題を解決することができるだけでなく、フェノール-ケトン装置のための生成物割合を調整するための技術的スキームを提供することができ、したがって明らかな経済的利益を有すると考える。
【0012】
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、イソプロパノールの脱水反応において、プロピレンを製造するためのイソプロパノールの脱水反応の他に、プロピレンを二量体化してプロピレン二量体等の重質成分不純物を生成する顕著な副反応があること、および、脱水反応に必要な高温のため、脱水触媒がアルミナを含む場合、プロピレン二量体が開裂してエチレン等の軽質炭素成分やブテン等のC4重質成分等の不純物を生成することもあることを見出した。したがって、イソプロパノールの脱水によるプロピレンの製造方法において、脱水触媒がアルミナを含む場合、プロピレンの精製および分離の収率、生成物純度およびエネルギー消費量は、反応生成物中の二量体プロピレンおよび分解されたC2およびC4成分によって直接影響を受ける。そのため、副反応により発生する不純物により、製造されるプロピレンの品質が低下し、製造されるプロピレンは、ポリマーグレードのプロピレンに関する国家規格の要件を満たすために、さらに精製する必要がある。
【0013】
国家規格GB/T 7716-2014「重合用プロピレン-仕様」の優秀品・一級品の要求事項を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
表1から分かるように、ポリマーグレードプロピレンの一級品のプロピレンの含有量は≧99.2φ/%であることが要求され、優秀品のプロピレンの含有量は≧99.6φ/%であることが要求される;国家規格の優秀品のプロピレンの含有量は99.6%以上であることが単に要求されるが、さらに、国家規格の一級品において、C2エチレンの含有量が50ppm以下であり、アセチレンの含有量が5ppm以下であり、C3-C4不飽和不純物の含有量が10ppm以下であり、国家規格の優秀品において、C2不飽和不純物の含有量が20ppm以下であり、C3-C4不飽和不純物の含有量が5ppm以下であることが要求される。
【0016】
本願の発明者らはまた、エチレンおよびアセチレンなどの軽質成分の含有量がポリマーグレードのプロピレン生成物において厳密に制限されるので、脱水反応プロセスにおいて軽質成分不純物が生成されると、軽質成分不純物を分離するために約100メートルの軽質成分除去カラムが必要であり、これは、後続の分離プロセスにおけるエネルギー消費量および材料消費量の著しい増加をもたらすことを見出した。どのようにして、イソプロパノール脱水反応排液中のエチレン、アセチレン等の軽質成分不純物を、規格に要求される含有量範囲内で直接制御するか、その後の分離精製部のエネルギー消費量および材料消費量を低減するか、さらには、軽質成分除去カラムを完全に省略するか、より低コストでポリマーグレードのプロピレン生成物を得るか、も、本願が解決しようとする主な課題の一つであり、これも従来技術に存在する技術的課題の一つである。
【0017】
本願発明者らはさらに、イソプロパノール脱水反応において、脱水触媒がアルミナを含む場合、少量の水を添加することにより、プロピレンの二量化反応および二量化生成物の分解を抑制することにより、不純物成分の低減を達成できることを鋭意検討した。一方、本願発明者らは、このようなイソプロパノール脱水反応において、反応出発物質の水分含有量と特定不純物の生成量との間に密接な相関関係があることも見出した。また、比転化率の条件下での相関式により、出発物質の水分含有量を調整・制御することで、不純物発生量の制御可能な調整を実現することができ、イソプロパノール脱水で分離しにくい不純物を低減することができる。また、出発物質の水分含有量を調節・制御することにより反応不純物をさらに調節・制御する相関方法は、加熱するだけでイソプロパノールの転化率を上げるための現在の運転に起因する副反応の増加の問題を回避でき、現在の工業運転を案内し、反応制御手段を簡素化し、イソプロパノールの脱水副反応を効果的に抑制し、その後のプロピレン生成物の分離困難性を低減する。さらに、水蒸気はアルミニウム含有触媒からのアルミニウムの除去を引き起こし、ひいては触媒の安定性を損なうので、より大きな水蒸気雰囲気下での触媒への悪影響を回避することができ、反応中に添加される水の量を制御することによって反応の総エネルギー消費量を低減することができる。
【0018】
本願は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0019】
特に、本願は、以下の態様に関する。
【0020】
1.
脱水方法であって、
アルミナを含む脱水触媒の存在下で、イソプロパノール含有出発物質を脱水反応に供して、プロピレン含有生成物を製造する工程(脱水工程と称する)を含み、
前記出発物質が、0.1~10.0質量%(好ましくは、出発物質の総質量の100質量%に対して、1.0~9.0質量%、より好ましくは3.0~5.0質量%)の水分含有量を有し、
前記生成物が、80ppm以下(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、75ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、または27ppm以下)のC2不飽和不純物およびC3-C4不飽和不純物の総含有量を有することを特徴とする、脱水方法。
【0021】
2.
前記生成物が、
50ppm以下(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、30ppm以下、25ppm以下、または22ppm以下)のC2不飽和不純物含有量、および/または、
30ppm以下(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、20ppm以下、10ppm以下、または5ppm以下)のC3-C4不飽和不純物含有量、および/または、
65.0~69.8質量%(好ましくは、生成物の総質量の100質量%に対して、66.0~69.5質量%)のプロピレンの含有量、
を有することを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0022】
3.
前記出発物質が、90.0~99.9質量%(好ましくは、前記出発物質の総質量の100質量%に対して、91.0~99.0質量%、より好ましくは92.0~97.0質量%)のイソプロパノール含有量を有し、および/または、
イソプロパノールの転化率が96.0~99.9%(好ましくは97.0~99.8%、より好ましくは98.5~99.5%)であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0023】
4.
前記アルミナを含む脱水触媒は、
アルミナを含む固体酸触媒から選択され、
好ましくは、非晶質シリカ-アルミナおよびモレキュラーシーブから選択される少なくとも1つであり、
より好ましくは、非晶質シリカ-アルミナであり、
特に好ましくは、1~30質量%(好ましくは1~15質量%)のアルミナ含有量を有して残部がシリカである非晶質シリカ-アルミナであり、
より特に好ましくは、前記非晶質シリカ-アルミナは、300~500℃で飽和水蒸気処理に供されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0024】
5.
前記脱水工程の操作条件は、反応温度150~450℃(好ましくは200~350℃)、反応圧力0.05~1.0MPaG(好ましくは0.1~0.5MPaG)、体積空間速度0.05~5.0h-1(好ましくは1~3h-1)であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0025】
6.
さらに、前記生成物からイソプロパノール/水混合物(好ましくは共沸混合物)を分離する工程を含むか、または、
さらに、以下の工程:
(1) 吸収剤、好ましくは、水およびイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つ、特に水で生成物を洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得る工程と、
(2) 粗プロピレン生成物を分離、好ましくは精留に供し、重質成分を除去し、好ましくは重質成分のみを除去して、精製プロピレンを得る工程と、
(3) 濃厚吸収液を分離し、好ましくは精留に供し、イソプロパノール/水混合物、好ましくは共沸混合物を得る工程と、
を含むことを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0026】
7.
前記混合物が、前記混合物の総質量の100質量%に対して、5~90質量%(好ましくは10~80質量%、10~50質量%または10~20質量%、より好ましくは12~13質量%)の水分含有量を有することを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0027】
8.
さらに、前記混合物の少なくとも一部(好ましくは50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または実質的に100質量%)を前記脱水工程にリサイクルする工程(リサイクル工程と称する)を含むことを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0028】
9.
前記リサイクル工程において、前記混合物の少なくとも一部が前記脱水工程の出発物質と混合され、場合により追加量の水が補充され、前記出発物質の水分含有量を所定のレベルに調整(例えば、増加または減少)することを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0029】
10.
さらに、前記生成物のC3-C4不飽和不純物含有量を測定し、前記含有量の測定値(単位ppm)を、前記生成物の総質量100質量%に対して予め設定された値(例えば、20ppm、10ppmまたは5ppm)と比較する工程を含み、
前記含有量の測定値が前記予め設定された値よりも大きい場合、イソプロパノールの転化率を測定して前記転化率の測定値(Cとして設定される、単位%)を得て、
(1)
前記測定値Cが96.0%~99.0である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~30倍、0.01~20倍、0.01~10倍、0.01~5倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)0.1~3.0質量%の範囲とし、
好ましくは、(出発点を96.0、終点を99.0として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を0.1、終点を3.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(96.0,0.1)から座標(99.0,3.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A1)と設定し、ここでA1は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA1~3.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA1~A1+(3.0-A1)/2の範囲の値が選択され、
(2)
前記測定値Cが99.0%~99.5%である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)3.0~5.0質量%の範囲とし、
好ましくは、(出発点を99.0、終点を99.5として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を3.0、終点を5.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.0,3.0)から座標(99.5,5.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A2)と設定し、ここでA2は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA2~5.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA2~A2+(5.0-A2)/2の範囲の値が選択され、
(3)
前記測定値Cが99.5%~99.9%である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)5.0~10.0質量%(好ましくは5.0~9.0質量%)の範囲とし、
好ましくは、(出発点を99.5、終点を99.9として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を5.0、終点を10.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.5,5.0)から座標(99.9,10.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A3)と設定し、ここでA3は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA3~10.0(好ましくはA3~9.0)の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA3~A3+(10.0-A3)/2(好ましくはA3~A3+(9.0-A3)/2)の範囲の値が選択される、
ことを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0030】
11.
さらに、前記生成物のC2不飽和不純物含有量を測定し、前記含有量の測定値(単位ppm)を、前記生成物の総質量100質量%に対して予め設定された値(例えば、50ppm、30ppm、25ppmまたは22ppm)と比較する工程を含み、前記含有量の測定値が前記予め設定された値よりも大きい場合、イソプロパノールの転化率を測定して前記転化率の測定値(Dとして設定される、単位%)を得て、
(1)
前記測定値Dが96.0%~99.0である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~50倍、0.01~20倍、0.01~10倍、0.01~5倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)0.1~5.0質量%の範囲とし、
好ましくは、(出発点を96.0、終点を99.0として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を0.1、終点を5.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(96.0,0.1)から座標(99.0,5.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Dの座標を(Dとして設定される、B1)と設定し、ここでB1は前記直線区間上の測定値Dに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてB1~5.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてB1~B1+(5.0-B1)/2の範囲の値が選択され、
(2)
前記測定値Dが99.0%~99.9である場合、前記出発物質の水分含有量を(好ましくは0.01~3倍、0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、または0.01~0.1倍)増加させ、ただし、増加後の水分含有量は、(出発物質の総質量の100質量%に対して)5.0~10.0質量%(好ましくは5.0~9.0質量%)の範囲とし、
好ましくは、(出発点を99.0、終点を99.9として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を5.0、終点を10.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.0,5.0)から座標(99.9,10.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Dの座標を(Dとして設定される、B2)と設定し、ここでB2は前記直線区間上の測定値Dに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてB2~10.0(好ましくはB2~9.0)の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてB2~B2+(10.0-B2)/2(好ましくはB2~B2+(9.0-B2)/2)の範囲の値が選択される、
ことを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法。
【0031】
12.
プロピレンの製造方法であって、
水素化触媒の存在下で、出発物質としてのアセトンを水素化反応に供してイソプロパノール含有生成物を製造する工程と、
前記イソプロパノール含有生成物を分離して水素含有ガスとイソプロパノール含有液とを得る工程と、
前記イソプロパノール含有液を分離してイソプロパノールを得る工程と、
前記イソプロパノールを脱水して先行または後続の態様のいずれか1つに記載の脱水方法によりプロピレン含有生成物を製造する工程(脱水工程と称する)と、
前記プロピレン含有生成物を吸収剤で洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得る工程と、
前記濃厚吸収液を分離してイソプロパノール/水共沸混合物を得る工程と、
前記粗プロピレン生成物から重質成分を分離除去して精製プロピレンを得る工程と、
を含むことを特徴とする、プロピレンの製造方法。
【0032】
13.
さらに、イソプロパノール/水共沸混合物の少なくとも部分(好ましくは50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または実質的に100質量%)を脱水工程にリサイクルする工程を含むことを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載のプロピレンの製造方法。
【0033】
14.
プロピレンの製造装置であって、
アセトン水素化反応器と、
水素化生成物気液分離器と、
分留塔と、
イソプロパノール脱水反応器と、
プロピレン吸収分離塔と、
共沸蒸留塔と、
粗プロピレン重質分留器と、
を順次接続してなる製造装置であって、
前記アセトン水素化反応器は、水素化触媒の存在下で、出発物質としてのアセトンを水素化反応させてイソプロパノール含有生成物を製造するように構成され、
前記水素化生成物気液分離器は、前記イソプロパノール含有生成物を分離して水素含有ガスとイソプロパノール含有液とを得るように構成され、
前記分留塔は、前記イソプロパノール含有液を分離してイソプロパノールを得るように構成され、
前記イソプロパノール脱水反応器は、アルミナ含有脱水触媒の存在下で、出発物質としてのイソプロパノールを脱水反応させてプロピレン含有生成物を製造するように構成され、
前記プロピレン吸収分離塔は、前記プロピレン含有生成物を吸収剤で洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得るように構成され、
前記共沸蒸留塔は、前記濃厚吸収液を分離してイソプロパノール/水共沸混合物を得るように構成され、
前記粗プロピレン重質分留器は、前記粗プロピレン生成物から重質成分を分離除去して精製プロピレンを得るように構成され、
前記共沸蒸留塔の上端および/または上部の材料出口は、前記イソプロパノール脱水反応器の材料入口と連通している
ことを特徴とする、製造装置。
【0034】
15.
前記イソプロパノール脱水反応器の生成物出口に、少なくとも2つの測定器、少なくとも1つの比較器、および少なくとも1つのコントローラが設けられ、
前記少なくとも2つの測定器において、少なくとも1つが、生成物のC3-C4不飽和不純物含有量および/またはC2不飽和不純物含有量を測定して、含有量の測定値を得るように構成され、少なくとも1つが、イソプロパノールの転化率を測定して、転化率の測定値を得るように構成され、
前記少なくとも1つの比較器が、前記測定値を予め設定された値と比較し、比較結果および転化率の前記測定値に基づいて、前記少なくとも1つのコントローラに命令を発行するように構成され、
前記少なくとも1つのコントローラが、前記命令を実行して、前記イソプロパノール脱水反応器の出発物質の水分含有量を増加させるように構成される
ことを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の製造装置。
【0035】
あるいは、本願は、以下の態様にも関する。
【0036】
1.
イソプロパノールの脱水反応中に反応促進剤を添加し、反応促進剤がアルカノールと水の混合物であることを特徴とする、イソプロパノールの脱水方法。
【0037】
2.
前記アルカノールが、イソプロパノール、n-プロパノール、メタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1つであることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
3.
前記アルカノールと水との混合物中の前記アルカノールの質量含有量が、10質量%~90質量%、好ましくは50質量%~88質量%であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
4.
前記反応促進剤が、イソプロパノール出発物質の0.01~15.0質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは1.5~5.5質量%の量で添加されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
5.
イソプロパノール脱水反応中に触媒をさらに添加し、該触媒が、非晶質シリカ-アルミナ、ZSM-5モレキュラーシーブおよび樹脂触媒から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
6.
イソプロパノールの脱水反応の状態には、150~450℃の温度、0.05~1.0MPaGの圧力、および0.05~5.0h-1の触媒の体積空間速度が含まれることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
7.
イソプロパノールの脱水によるプロピレンの製造方法であって、イソプロパノール脱水反応工程と、イソプロパノール脱水生成物の吸収分離工程と、粗プロピレン精製工程と、を順次含み、前記イソプロパノール脱水反応工程中に反応促進剤が添加され、前記反応促進剤がアルカノールと水との混合物であることを特徴とする、プロピレンの製造方法。
【0043】
8.
前記アルカノールが、イソプロパノール、n-プロパノール、メタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1つであることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の処理。
【0044】
9.
前記アルカノールと水との混合物中の前記アルカノールの質量含有量が10質量%~90質量%であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
10.
前記反応促進剤が、イソプロパノール出発物質の0.01~15.0質量%の量で添加されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の処理。
【0046】
11.
前記反応促進剤が、アルカノールと水との共沸混合物であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載による方法。
【0047】
12.
イソプロパノール脱水生成物の吸収分離中に吸収剤が添加され、前記吸収剤が、イソプロパノール、n-プロパノール、メタノール、エタノールおよび水から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載による処理。
【0048】
13.
前記吸収剤が、水、イソプロパノール、またはイソプロパノールと水との任意の比率の混合物であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
14.
アセトンからプロピレンを製造する方法であって、アセトン水素化工程と、水素化生成物気液分離工程と、イソプロパノール精製工程と、先行または後続の態様のいずれか1つに記載のイソプロパノールの脱水によるプロピレンの製造方法と、を順に含むことを特徴とする、方法。
【0050】
15.
前記アルカノールが、イソプロパノール、n-プロパノール、メタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1つであることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
16.
前記アルカノールと水との混合物中の前記アルカノールの質量含有量が、10質量%~90質量%であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
17.
前記反応促進剤が、イソプロパノール出発物質の0.01~15.0質量%の量で添加されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
18.
前記反応促進剤が、アルカノールと水との共沸混合物であることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
19.
吸収剤が、イソプロパノール、n-プロパノール、メタノール、エタノールおよび水から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
20.
アセトンの水素化が、100~200℃の温度、0.5~6.0MPaGの圧力、0.05~15h-1の触媒の体積空間速度、および2:1~15:1のアセトンに対する水素のモル比率を含む条件下で実施されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
21.
アセトン水素化生成物の気液分離プロセスにおいて、得られたガスが水素であり、それがリサイクルされ、液体生成物が少量の未反応アセトンおよび重質成分副生成物を含み、それらが分留塔で除去されて精製イソプロパノールが得られることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
22.
アセトンからプロピレンを製造するための処理システムであって、アセトン出発物質貯蔵タンクと、アセトン水素化反応器と、気液分離器と、分留塔と、イソプロパノール貯蔵タンクと、イソプロパノール脱水反応器と、吸収分離塔と、コンプレッサと、粗プロピレン精製塔と、を順次連結して含み、前記吸収分離塔は吸収剤入口を備え、前記塔の底部の出口は共沸蒸留塔と接続され、前記共沸蒸留塔の共沸混合物出口は前記イソプロパノール脱水反応器の入口と接続されていることを特徴とする、処理システム。
【0058】
23.
前記共沸蒸留塔の底部の生成物出口が、さらに吸収-分離塔の入口に接続され、吸収-分離塔に入る吸収剤と並行して、生成物が吸収-分離塔に添加されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の処理システム。
【0059】
24.
気液分離器のガス出口がコンプレッサに接続され、最終的にアセトン水素化反応器に接続され、気液分離によって得られた水素がアセトン水素化のための補給水素として使用されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の処理システム。
【0060】
25.
分留塔のオーバーヘッド軽質成分生成物出口がアセトン出発物質貯蔵タンクに接続され、完全に反応しないアセトンがリサイクルされることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の処理システム。
【0061】
26.
アセトン水素化反応器が管状固定床反応器であり、管内に触媒が充填され、管の外部に熱除去媒体が導入されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の処理システム。
【0062】
27.
イソプロパノール脱水反応器が管状固定床反応器であり、管内に触媒が充填され、管の外側に熱供給媒体が導入されることを特徴とする、先行または後続の態様のいずれか1つに記載の処理システム。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本願による、アセトンからプロピレンを製造するための処理システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本願はその実施形態を参照して以下に詳細に説明されるが、本願の範囲はそれらの実施形態によって限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義されることに留意されたい。
【0065】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書に記載の含有量が優先されるべきである。
【0066】
本明細書において、材料、物質、方法、工程、装置、構成要素等が「当業者に一般的に知られている」、「従来技術」等と記載されている場合、当該材料、物質、方法、工程、装置および構成要素は、本願の出願時に当該技術分野で従来使用されていたものだけでなく、現在は一般的に使用されていないが、同様の目的に適していることが当該技術分野で一般的に知られたものになるであろうものもカバーすることが理解されるべきである。
【0067】
本願の文脈において、特に明記しない限り、全ての百分率、部、比率などは重量で表され、与えられる全ての圧力はゲージ圧である。
【0068】
本願の文脈において、C2不飽和不純物としてはエチレンおよびアセチレンが挙げられ、C3-C4不飽和不純物としてはメチルアセチレン、プロパジエン、ブテン、ブタジエン、ジアセチレンなど、特にメチルアセチレン、プロパジエン、ブテンおよびブタジエンが挙げられる。
【0069】
本願の文脈において、生成物中のイソプロパノール(未反応)の含有量(質量%)は、反応器の出口のガス上の赤外分光分析器によってオンラインで直接測定することができ、または、出口の反応流出物を凝縮し、凝縮後の液体を取り、ガスクロマトグラフィーによって液体生成物中のイソプロパノール含有量(質量%)を分析することによってガスクロマトグラフィーによって分析することができる。また、イソプロパノール出発物質の水分含有量は、反応器の入口で出発物質をサンプリングし、ガスクロマトグラフィーまたは水分計を用いて出発物質の水分含有量(質量%)を測定することによって測定することができる。
【0070】
本願の文脈において、生成物のイソプロパノール含有量A(質量%)は赤外分光分析器を用いて測定され、出発物質の水分含有量B(質量%)は水分計を用いて測定され、イソプロパノールの転化率Xは:
X=A/(1-B)
として算出される。
【0071】
本願において、出発物質のイソプロパノール含有量C(質量%)、および生成物縮合物のイソプロパノール含有量D(質量%)はガスクロマトグラフィーにより測定され、出発物質の供給量M(g単位)はポンプ流速およびサンプリングタイムにより算出することができ、縮合物(凝縮液)の質量N(g単位)は秤量により求めることができ、イソプロパノールの転化率Xは次式:
X=(DN)/(CM)
により算出される。
【0072】
本願の文脈において、本願の任意の2つ以上の実施形態を任意に組み合わせることができ、得られる技術的解決策は本願の最初の開示の一部を形成し、本願の範囲内に入る。
【0073】
本願の文脈において記載される任意の数値範囲の終点および任意の数値は、正確な範囲または値に限定されず、前記範囲または値に近い値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載の任意の数値範囲に関して、範囲の端点間、各端点と範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値との間で、任意の組み合わせを行って、1つまたは複数の新しい数値範囲を提供することができ、この新しい数値範囲は、本願に具体的に記載されたと考えるべきである。
【0074】
本願の一実施形態によれば、本発明は、イソプロパノールの脱水によるプロピレンの製造処理であるような脱水方法に関する。
【0075】
本願の一実施形態によれば、脱水方法は、アルミナを含む脱水触媒の存在下で、イソプロパノール含有出発物質を脱水反応に供して、脱水工程と呼ばれる、プロピレン含有生成物を生成する工程を含む。本願によれば、本願の技術的効果は、脱水触媒がアルミナを含む場合に特に顕著である。
【0076】
本願の一実施形態によれば、出発物質の水分含有量は、出発物質の総質量の100質量%に対して、0.1~10.0質量%、好ましくは1.0~9.0質量%、より好ましくは3.0~5.0質量%である。本願によれば、水分含有量が0.1質量%未満である場合、生成物中のC2不飽和不純物およびC3-C4不飽和不純物の合計含有量が、本願で規定する数値範囲の上限を超え、不純物含有量の大幅な低減等の本願の所望の効果を達成することができない。また、水分含有量が10.0質量%を超えると、脱水工程のエネルギー消費量が増加するだけでなく、生成物中のC2不飽和不純物およびC3-C4不飽和不純物の合計含有量が、本願で規定する数値範囲の上限を超え、不純物含有量の大幅な低減等の本願の所望の効果を達成することができない。
【0077】
本願の一実施形態によれば、生成物のC2不飽和不純物の含有量とC3-C4不飽和不純物の含有量との合計は、生成物の総質量100質量%に対して、80ppm以下、好ましくは75ppm以下、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、または27ppm以下である。好ましくは、生成物は、生成物の総質量100質量%に対して、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、25ppm以下または22ppm以下のC2不飽和不純物含有量を有する。好ましくは、生成物は、生成物の総質量100質量%に対して、30ppm以下、好ましくは20ppm以下、10ppm以下または5ppm以下のC3-C4不飽和不純物含有量を有する。
【0078】
本願の一実施形態によれば、生成物のプロピレンの含有量は、生成物の総質量の100質量%に対して、65.0~69.8質量%、好ましくは66.0~69.5質量%である。
【0079】
本願の一実施形態によれば、出発物質のイソプロパノール含有量は、出発物質の総質量の100質量%に対して、90.0~99.9質量%、好ましくは91.0~99.0質量%、より好ましくは92.0~97.0質量%である。イソプロパノールおよび水に加えて、出発物質は、アセトンまたはメタノールなどの、アセトン水素化反応から保持されるものなどの他の成分を含有する可能性がある。
【0080】
本願の一実施態様によれば、イソプロパノールの転化率は、本願の効果を顕著に奏する観点から、96.0~99.9%、好ましくは97.0~99.8%、より好ましくは98.5~99.5%である。
【0081】
本願の一実施形態によれば、脱水触媒は、イソプロパノールを脱水することができる当技術分野で公知の任意の固体酸触媒であり得るが、アルミナを含まなければならない。本願の望ましい効果は、脱水触媒がアルミナを含む場合に最も顕著である。脱水触媒は、好ましくは非晶質シリカ-アルミナおよびモレキュラーシーブから選択される少なくとも1つであり、より好ましくは、非晶質シリカ-アルミナである。ここで、非晶質シリカ-アルミナとしては、アルミナの含有量が1~30質量%(好ましくは1~15質量%)であり、残部がシリカである非晶質シリカ-アルミナが特に好ましい。非晶質シリカ-アルミナは、市販されていてもよく、従来の方法で製造されていてもよい。より好ましくは、非晶質シリカ-アルミナは、300~500℃で飽和水蒸気処理された非晶質シリカ-アルミナである。非晶質シリカ-アルミナの製造方法としては、例えば、アルミナの質量含有量が1~15質量%の市販の非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中、300~500℃で5~10時間処理することが挙げられる。触媒は、イソプロパノール脱水工程において、非常に穏やかな状態で、良好な脱水活性、選択性および長期安定性を有する。また、脱水触媒としては、CN102451674に記載のコアシェル型アルミナ触媒も挙げられる。
【0082】
本願の一実施形態によれば、脱水工程の反応温度は、150~450℃、好ましくは200~350℃である。
【0083】
本願の一実施形態によれば、脱水工程の反応圧力は、0.05~1.0MPaG、好ましくは0.1~0.5MPaGである。
【0084】
本願の一実施形態によれば、脱水工程の体積空間速度は、0.05~5.0h-1、好ましくは1~3h-1である。
【0085】
本願の一実施形態によれば、脱水方法は、生成物からイソプロパノール/水混合物を分離する工程をさらに含む。ここで、混合物としては、共沸混合物が好ましい。
【0086】
本願の一実施形態によれば、脱水方法はさらに、以下の工程を含む:
(1) 吸収剤で生成物を洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得る工程。ここで、前記吸収剤は、イソプロパノールの脱水生成物中の水溶性成分を吸収することができる溶媒であり、好ましくは、水、イソプロパノール、またはイソプロパノールと水との任意の比率の混合物である。前記吸収剤は、添加される前の希薄な吸収液であり、可溶性成分を吸収した後に濃厚な吸収液となる。
(2) 粗プロピレン生成物を分離して重質成分を除去し、精製プロピレンを得る工程。ここで、分離は精留が好ましい。加えて、本願によれば、得られる粗プロピレン生成物中の軽質成分の含有量は本願のイソプロパノール脱水方法のために非常に低いので、精製プロピレン生成物、特に、ナショナルポリマーグレードのプロピレンの要件を満たす精製プロピレン生成物は、分離によって粗プロピレン生成物から重質成分を除去するだけで得ることができることが好ましい。この好ましい実施形態によれば、分離は、重質成分を除去する工程のみを含み、従来技術において典型的に必要とされる、軽質成分を除去する工程を含む必要はない。本明細書で使用するとき、「重質成分」は、典型的には4個以上の炭素を有する炭化水素物質、特にC4不飽和不純物を指し、「軽質成分」は、典型的には2個以下の炭素を有する炭化水素物質、特にC2不飽和不純物を指す。
(3) 濃厚吸収液を分離し、イソプロパノール/水混合物を得る工程。ここで、分離としては、精留、特に共沸精留が好ましい。
【0087】
本願の一実施形態によれば、脱水方法において、混合物は、混合物の総質量の100質量%に対して、5~90質量%、好ましくは10~80質量%、10~50質量%、または10~20質量%、より好ましくは12~13質量%の水分含有量を有する。
【0088】
本願の一実施形態によれば、本発明は、前記混合物の少なくとも一部を前記脱水工程にリサイクルさせる工程(リサイクル工程と称する)をさらに含む。ここで、前記少なくとも一部としては、50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または実質的に100質量%(すなわち、実質的に全てリサイクルされる)であることが好ましい。混合物、特に共沸混合物を脱水工程にリサイクルすることによって、出発物質の水分含有量を柔軟に調整することができ、脱水方法の全体的なエネルギー消費量を大幅に低減することができる。この目的のために、リサイクル工程において、混合物の少なくとも一部を脱水工程の出発物質と混合し、場合により追加量の水を補充して、出発物質の水分含有量を所定のレベルに調整(例えば、増加または減少)することが好ましい。ここで、本願は、これらの材料が十分に混合されている限り、混合物を出発物質(任意に追加量の水を含む)と混合する方法には特に制限を有しない。出発物質の水分含有量を調整する観点から、これらの物質は典型的には出発物質の脱水反応の前に(例えば、脱水反応器に入る前に)混合される。
【0089】
本願の発明者らは、反応過程において、イソプロパノール出発物質の水分含有量がイソプロパノールの転化率および生成物中のC3-C4不飽和不純物またはC2不飽和不純物の含有量に密接に関連することを見出した。具体的には、例えば反応温度を高くすることにより、反応転化率が96%を超える場合には、反応転化率が高くなるほど、反応生成物中のC3-C4不飽和不純物またはC2不飽和不純物の含有量が大きくなる。この目的のために、本願は、以下の実施形態におけるそのような不純物を制御するためのスキームにも関する。
【0090】
本願の一実施形態によれば、脱水方法はさらに、生成物のC3-C4不飽和不純物含有量を測定する工程を含む。含有量は例えば、赤外分光分析装置によって測定することができる。典型的には、測定は、脱水反応器の反応生成物出口で行われる。含有量の測定は、連続的、間欠的、オンライン、またはオフラインで行うことができ、特に限定されない。
【0091】
本願のこの実施形態によれば、含有量を測定することによって、含有量の測定値(単位ppm)が得られる。そして、含有量の測定値と、予め設定された含有量の値とを比較する。ここで、予め設定された値としては、例えば、(生成物の総質量の100質量%に対して)20ppm、10ppm、5ppmが挙げられる。予め設定された値は、当業者に許容される反応生成物中のC3-C4不飽和不純物の最大レベルを表す。
【0092】
本願のこの実施形態によれば、前記比較により、含有量の測定値が、予め設定された値よりも大きい(トリガー条件)場合に、イソプロパノールの転化率を測定し、転化率の測定値(Cとして設定される、単位%)を得る。典型的には、転化率の測定は、脱水反応器の反応生成物出口で実施される。転化率の測定は連続的、断続的、オンライン、またはオフラインで行うことができ、特に限定されない。また、本願によれば、含有量の測定と転化率の測定とは同時に行ってもよいし、一定の順序で順次行ってもよく、特に限定されるものではないが、効率の観点からは、通常は、トリガー条件を満たす場合に転化率の測定が行われる。
【0093】
本願のこの実施形態によれば、計測値Cが96.0%~99.0%の間である場合、増加後の水分含有量が(出発物質の総質量の100質量%に対して)0.1~3.0質量%の範囲であることを条件として、出発物質の水分含有量が増加する。ここで、増加の大きさ(振幅)としては、通常、0.01~30倍、0.01~20倍、0.01~10倍、0.01~5倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、0.01~0.1倍である。本願によれば、好ましくは、(出発点を96.0、終点を99.0として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を0.1、終点を3.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(96.0,0.1)から座標(99.0,3.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A1)と設定し、ここでA1は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA1~3.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA1~A1+(3.0-A1)/2の範囲の値が選択される。増加後の水分含有量の値として、典型的には、A1またはその近傍が選択される。本願によれば、反応温度を変化させる(例えば、反応温度を上昇させる)ことによりイソプロパノールの転化率を変化させる場合などには、この制御方式により、反応生成物中のC3-C4不飽和不純物の含有量を10ppm以下、好ましくは5ppm以下に制御することができる。
【0094】
本願のこの実施形態によれば、計測値Cが99.0%~99.5%の間である場合、増加後の水分含有量が(出発物質の総質量の100質量%に対して)3.0~5.0質量%の範囲であることを条件として、出発物質の水分含有量が増加する。ここで、増加の大きさ(振幅)としては、通常、0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍または0.01~0.1倍である。本願によれば、好ましくは、(出発点を99.0、終点を99.5として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を3.0、終点を5.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.0,3.0)から座標(99.5,5.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A2)と設定し、ここでA2は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA2~5.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA2~A2+(5.0-A2)/2の範囲の値が選択される。増加後の水分含有量の値として、典型的には、A2またはその近傍が選択される。本願によれば、反応温度を変化させる(例えば、反応温度を上昇させる)ことによりイソプロパノールの転化率を変化させる場合などには、この制御方式により、反応生成物中のC3-C4不飽和不純物の含有量を10ppm以下、好ましくは5ppm以下に制御することができる。
【0095】
本願のこの実施形態によれば、計測値Cが99.5%から99.9%の間である場合、増加後の水分含有量が(出発物質の総質量の100質量%に対して)5.0~10.0質量%(好ましくは5.0~9.0質量%)の範囲であることを条件として、出発物質の水分含有量が増加する。ここで、増加の大きさ(振幅)としては、通常、0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍または0.01~0.1倍である。本願によれば、好ましくは、(出発点を99.5、終点を99.9として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を5.0、終点を10.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.5,5.0)から座標(99.9,10.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Cの座標を(Cとして設定される、A3)と設定し、ここでA3は前記直線区間上の測定値Cに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてA3~10.0(好ましくはA3~9.0)の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてA3~A3+(10.0-A3)/2(好ましくはA3~A3+(9.0-A3)/2)の範囲の値が選択される。増加後の水分含有量の値として、典型的には、A3またはその近傍が選択される。本願によれば、反応温度を変化させる(例えば、反応温度を上昇させる)ことによりイソプロパノールの転化率を変化させる場合などには、この制御方式により、反応生成物中のC3-C4不飽和不純物の含有量を10ppm以下、好ましくは5ppm以下に制御することができる。
【0096】
本願の一実施形態によれば、さらに、脱水方法は、生成物のC2不飽和不純物含有量を測定する工程を含む。含有量は例えば、赤外分光分析装置によって測定することができる。典型的には、測定は、脱水反応器の反応生成物出口で行われる。含有量の測定は、連続的、間欠的、オンライン、またはオフラインで行うことができ、特に限定されない。
【0097】
本願のこの実施形態によれば、含有量を測定することによって、含有量の測定値(単位ppm)が得られる。そして、含有量の測定値と、予め設定された含有量の値とを比較する。ここで、予め設定された値としては、例えば、(生成物の総質量の100質量%に対して)50ppm、30ppm、25ppm、22ppmが挙げられる。予め設定された値は、当業者に許容される反応生成物中のC2不飽和不純物(典型的にはエチレン+アセチレン)の最大レベル、例えば20ppmのエチレン、2ppmのアセチレンを表す。
【0098】
本願のこの実施形態によれば、前記比較により、含有量の測定値が、予め設定された値よりも大きい(トリガー条件)場合に、イソプロパノールの転化率を測定し、転化率の測定値(Dとして設定される、単位%)を得る。典型的には、転化率の測定は、脱水反応器の反応生成物出口で実施される。転化率の測定は連続的、断続的、オンライン、またはオフラインで行うことができ、特に限定されない。また、本願によれば、含有量の測定と転化率の測定とは同時に行ってもよいし、一定の順序で順次行ってもよく、特に限定されるものではないが、効率の観点からは、通常は、トリガー条件を満たす場合に転化率の測定が行われる。
【0099】
本願のこの実施形態によれば、計測値Dが96.0%から99.0%の間である場合、増加後の水分含有量が(出発物質の総質量の100質量%に対して)0.1~5.0質量%の範囲であることを条件として、出発物質の水分含有量が増加する。ここで、増加の大きさ(振幅)としては、通常、0.01~50倍、0.01~20倍、0.01~10倍、0.01~5倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、0.01~0.1倍である。本願によれば、好ましくは、(出発点を96.0、終点を99.0として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を0.1、終点を5.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(96.0,0.1)から座標(99.0,5.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Dの座標を(Dとして設定される、B1)と設定し、ここでB1は前記直線区間上の測定値Dに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてB1~5.0の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてB1~B1+(5.0-B1)/2の範囲の値が選択される。増加後の水分含有量の値として、典型的には、B1またはその近傍が選択される。本願によれば、反応温度を変化させる(例えば、反応温度を上げる)ことによりイソプロパノールの転化率を変化させるなどには、この制御方式により、反応生成物中のエチレン不純物の含有量を20ppm以下に制御することができ、反応生成物中のアセチレンの含有量を2ppm以下に制御することができる。
【0100】
本願のこの実施形態によれば、計測値Dが99.0%から99.9%の間である場合、増加後の水分含有量が(出発物質の総質量の100質量%に対して)5.0~10.0質量%(好ましくは5.0~9.0質量%)の範囲であることを条件として、出発物質の水分含有量が増加する。ここで、増加の大きさ(振幅)としては、通常、0.01~3倍、0.01~2倍、0.01~1倍、0.01~0.5倍、0.01~0.3倍、0.01~0.2倍、0.01~0.1倍である。本願によれば、好ましくは、(出発点を99.0、終点を99.9として)イソプロパノールの転化率の値(単位%)を横座標とし、(出発点を5.0、終点を10.0として)出発物質の水分含有量の値(単位%)を縦座標とし、座標(0,0)を原点として平面直交座標系が確立される場合、座標(99.0,5.0)から座標(99.9,10.0)まで直線区間(線分)を引き、前記直線区間上の測定値Dの座標を(Dとして設定される、B2)と設定し、ここでB2は前記直線区間上の測定値Dに対応する水分含有量の値を表すものとすると、増加後の水分含有量の値としてB2~10.0(好ましくはB2~9.0)の範囲の値が選択され、好ましくは、増加後の水分含有量の値としてB2~B2+(10.0-B2)/2(好ましくはB2~B2+(9.0-B2)/2)の範囲の値が選択される。増加後の水分含有量の値として、典型的には、B2またはその近傍が選択される。本願によれば、反応温度を変化させる(例えば、反応温度を上げる)ことによりイソプロパノールの転化率を変化させるなどには、この制御方式により、反応生成物中のエチレン不純物の含有量を20ppm以下に制御することができ、反応生成物中のアセチレンの含有量を2ppm以下に制御することができる。
【0101】
本願の一実施形態によれば、本発明はプロピレンの製造方法にも関し、この方法は:水素化触媒の存在下で、出発物質としてのアセトンを水素化反応に供してイソプロパノールを含有する生成物を製造工程と、
イソプロパノール含有生成物を分離して水素含有ガスとイソプロパノール含有液を得る工程と、
イソプロパノール含有液を分離してイソプロパノールを得る工程と、
イソプロパノールを脱水反応に付して上記のいずれかの態様の脱水方法によりプロピレン含有生成物を製造する工程(脱水工程と称する)と、
プロピレン含有生成物を吸収剤で洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得る工程と、
濃厚吸収液を分離してイソプロパノール/水共沸混合物を得る工程と、
粗プロピレン生成物から重質成分を分離除去して精製プロピレンを得る工程と、
を含む。
【0102】
本願の一実施形態によれば、アセトンの水素化は、当技術分野で公知の任意の方法で実施することができる。例えば、アセトンの水素化はアセトンの水素化触媒の存在下で実施することができ、アセトンを水素化してイソプロパノールにすることができる任意の触媒を使用することができるが、好ましくは製造コスト、適用性などの観点から、ニッケル系触媒または銅系触媒が典型的に使用され、ここで、ニッケル系触媒のニッケル含有量は典型的には5~45質量%であり、他の活性成分または補助成分もまた含まれてもよく、銅系触媒の銅含有量は典型的には8~45質量%であり、他の活性成分または補助成分もまた含まれてもよい。さらに好ましくは、アセトンの水素化によるイソプロパノールの製造方法において、銅系触媒は非常に穏やかな条件で良好な水素化活性および選択性を有し、その結果、装置全体のエネルギー消費量および材料消費量が低い。また、一般的に、アセトン水素化処理では、反応温度は100~200℃、反応圧力は0.5~6.0MPaG、触媒の体積空間速度は0.05~15h-1、水素とアセトンのモル比率は2:1~15:1である。
【0103】
本願によれば、イソプロパノール含有生成物を分離して、水素含有ガスおよびイソプロパノール含有液を得る。ここで、ガスはリサイクルすることができ、液体は少量の未反応アセトンおよび重質成分副生成物を含み、液体は、精製イソプロパノールを得るために不純物除去のための分留塔に送られる。本願によれば、分離除去等に制限はなく、当該技術分野で公知の知見をそのまま適用することができる。
【0104】
本願の一実施形態によれば、本方法はさらに、イソプロパノール/水共沸混合物の少なくとも一部分を脱水工程にリサイクルさせる工程を含む。ここで、少なくとも一部分としては、50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または実質的に100質量%(すなわち、実質的に全てリサイクルされる)であることが好ましい。
【0105】
本願の一実施形態によれば、本発明はさらに、プロピレンを製造するための装置に関し、装置は、順次接続された、アセトン水素化反応器、水素化生成物気液分離器、分留塔、イソプロパノール脱水反応器、プロピレン吸収分離塔、共沸蒸留塔および粗プロピレン重質精留塔を含む、プロピレンを製造するための装置に関する。ここで、プロピレン装置とは、上述した本願のプロピレンの製造方法を実施するために特に用いられる装置である。
【0106】
本願の一実施形態によれば、プロピレンを製造するための装置において、前記アセトン水素化反応器は、水素化触媒の存在下で、出発物質としてのアセトンを水素化反応させてイソプロパノール含有生成物を製造するように構成され、
前記水素化生成物気液分離器は、前記イソプロパノール含有生成物を分離して水素含有ガスとイソプロパノール含有液とを得るように構成され、
前記分留塔は、前記イソプロパノール含有液を分離してイソプロパノールを得るように構成され、
前記イソプロパノール脱水反応器は、アルミナ含有脱水触媒の存在下で、出発物質としてのイソプロパノールを脱水反応させてプロピレン含有生成物を製造するように構成され、
前記プロピレン吸収分離塔は、前記プロピレン含有生成物を吸収剤で洗浄して、粗プロピレン生成物および濃厚吸収液を得るように構成され、
前記共沸蒸留塔は、前記濃厚吸収液を分離してイソプロパノール/水共沸混合物を得るように構成され、
前記粗プロピレン重質分留器は、前記粗プロピレン生成物から重質成分を分離除去して精製プロピレンを得るように構成されている。本願によれば、精製プロピレンを得るために軽質成分を除去するための塔を設ける必要がない。
【0107】
本願の一実施形態によれば、プロピレンを製造するための装置において、共沸蒸留塔の上端部および/または上部の材料出口は、イソプロパノール脱水反応器の材料入口と連通している。この特定の連通構造によって、イソプロパノール/水共沸混合物の少なくとも一部分の脱水工程へのリサイクルを達成することが可能である。
【0108】
本願の一実施形態によれば、プロピレンを製造するための装置において、共沸蒸留塔の底部液体出口は、プロピレン吸収分離塔の吸収剤入口と連通している。
【0109】
本願の一実施形態によれば、アセトン水素化反応器は、固定床反応器、好ましくは管状固定床反応器であり、アセトン水素化反応は激しい熱放出を有するので、管内に触媒が充填され、管外に熱除去媒体が導入される。
【0110】
本願の一実施形態によれば、イソプロパノール脱水反応器は、固定床反応器、好ましくは管状固定床反応器である。イソプロパノールの脱水は吸熱反応であるため、管内に触媒が充填され、管外に熱供給媒体が導入される。
【0111】
本願の一実施形態によれば、プロピレンを製造するための装置において、少なくとも2つの測定器、少なくとも1つの比較器、および少なくとも1つのコントローラがイソプロパノール脱水反応器の生成物出口に設けられ、少なくとも2つの測定器において、少なくとも1つは、生成物のC3-C4不飽和不純物含有量および/またはC2不飽和不純物含有量を測定して、含有量の測定値を得るように構成され、少なくとも1つは、イソプロパノールの転化率を測定して、転化率の測定値(上述の測定値Cまたは測定値Dなど)を得るように構成される。加えて、少なくとも1つの比較器は、含有量の測定値を予め設定された値と比較し、好ましくは、比較結果(例えば、含有量の測定値が、予め設定された値よりも大きい)および転化率の測定値に基づいて、上述のような不純物制御スキームを実施するために、コントローラに命令を発行するように構成され、命令は、典型的には、不純物制御スキームに従ってイソプロパノール脱水反応器の出発物質の水分含有量を増加させるものである。また、コントローラは、イソプロパノール脱水反応器の出発物質の水分含有量を実質的に増加させる命令を実行するように構成されている。例えば、コントローラは、共沸混合物の循環線上に設けられて共沸混合物の循環比を増加させてもよく、または,水補給線上に設けられて出発物質への補給水の量を増加させてもよい。
【0112】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本願の発明者らは、イソプロパノールの脱水反応において、脱水触媒がアルミナを含む場合、プロピレンの4メチル-1ペンテンなどのプロピレン二量体への二量体化、ならびに、C2およびC4オレフィンおよびアルキン成分への二量体の開裂が、脱水触媒上のB酸部位の存在により促進されると考える。B酸部位の求核性の反応競合者として出発物質中に少量の水(例えば、0.1質量%超)を含むことにより、本願はプロピレン二量化と二量化生成物の分解との2つの副反応との競合を実現することができ、それによって、反応効率を維持しながら、副反応の発生を阻害する。しかし、水分含有量が高すぎる(例えば、10.0質量%を超える)場合、脱水触媒が加水分解等を受けやすく、B酸サイトが増加するため、副反応が悪化するおそれがある。加えて、本願は、反応後の水分含有量と重質成分および軽質成分との間の関連を同定し、それによって、反応プロセス中の予測可能性を伴う操作を容易にし、不純物の生成に対する盲目的操作の影響を回避し、同時に、イソプロパノールの高い転化率を提供することができる条件下での不純物含有量の効果的な阻害を実現する。
【実施例
【0113】
以下、実施例および比較例を挙げて本願を更に詳細に説明するが、本願はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0114】
本実施例は、アセトンからプロピレンを製造するための処理システムを提供する:
図1に示されるように、処理システムは、順次接続された、アセトン出発物質貯蔵タンク、アセトン水素化反応器、気液分離器、分留塔、イソプロパノール貯蔵タンク、イソプロパノール脱水反応器、吸収分離塔、コンプレッサ、および粗プロピレン精製塔を備え、この場合、吸収分離塔の上端部の出口はコンプレッサと接続され、吸収分離塔の底部の出口は共沸蒸留塔と接続され、共沸蒸留塔の共沸出口はイソプロパノール脱水反応器の入口と接続され、共沸蒸留塔の底部の出口は、吸収分離塔に入る吸収剤と並列に吸収分離塔の入口と接続され、気液分離器のガス出口は、コンプレッサと接続されて最後にアセトン水素化反応器と接続され、気液分離によって得られる水素はアセトン水素化のための補給水素として使用され、分留塔の上端部の軽質成分生成物出口はアセトン出発物質貯蔵タンクに接続され、完全には反応していないアセトンがリサイクルされる。
【0115】
アセトン水素化反応器は管状反応器であり、管内にアセトン水素化触媒が充填され、管外に熱除去媒体が導入され、時間的に反応熱が除去される。イソプロパノール脱水反応器は管状反応器であり、管内にイソプロパノール脱水触媒が充填され、管外に熱供給媒体が導入され、熱を供給する。
【0116】
上記の処理システムを用いてアセトンからプロピレンを製造する方法は、アセトン水素化セクションとイソプロパノール脱水セクションとに分けられる。
【0117】
アセトン水素化セクション:アセトン出発物質をアセトン出発物質貯蔵タンクに通し、その圧力を上げ、アセトン出発物質を循環水素と混合して加熱し、アセトン水素化触媒の存在下、水素化反応のためのアセトン水素化反応器に混合物を供給し、イソプロパノールを含む反応流出物を得る。反応流出物は凝縮され、冷却され、次いで気液分離器に送られ、分離されたガスはコンプレッサによって加圧されて次いでリサイクルされ、分離された液体は分留塔に送られる。イソプロパノールを含有する混合物を分留塔で分留して少量の軽質成分および重質成分を除去して精製イソプロパノールが得られ、ここで、除去された軽質成分は、典型的には未反応アセトンであり、出発物質タンクにリサイクルされ、除去された重質成分は、典型的にはアセトン水素化副生成物であり、連続的または断続的に排出することができる。
【0118】
イソプロパノール脱水セクション:アセトン水素化セクションから得られた精製イソプロパノールを出発物質として用いてイソプロパノール貯蔵タンクに通し、共沸蒸留塔で得られた共沸蒸留生成物および/または追加添加水と混合し、脱水触媒の存在下、イソプロパノール脱水反応のためのイソプロパノール脱水反応器に送り、プロピレンを含む反応流出物を得、反応流出物を吸収分離塔の底部に通し、吸収剤を吸収分離塔の上端部に導入し、塔内で熱交換および吸収物質移動交換を行った後、粗プロピレンを塔の上端部から排出して圧縮機で加圧し、塔の底部から濃厚吸収液を排出し、共沸蒸留塔に通す。粗プロピレンは、コンプレッサによって加圧された後、粗プロピレン精製塔に送られ、精製プロピレンおよび少量の重質成分が分離され、ここで、重質成分は典型的にはプロピレンのポリマーであり、少量の重質成分は断続的に排出される。共沸蒸留塔に送られた濃厚吸収液は、塔内で共沸蒸留されて塔の上端部で共沸混合物が得られ、塔の底部生成物は吸収剤として吸収分離塔に再利用のためにリサイクルされる。
【0119】
以下の実施例および比較例で使用したアセトン出発物質は装置から入手可能であり、その仕様を表1に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
プロピレンは、上述のシステムおよび方法を用いて、以下のようにアセトンから製造した。
【0122】
プロピレンは、上述のアセトン出発物質から製造した:
ここで、アセトン水素化反応器の管の大きさはφ20×2.0であり、管の長さは1.5mであり、反応管の外部に熱除去媒体水を導入し、水を気化させて熱除去して0.3MPaの蒸気を生成した。アセトン水素化の条件は、温度170℃、圧力3.5MPa、触媒の空間速度1.5h-1、水素/アセトン体積比10:1を含んでいた。アセトン水素化触媒は、Sinopec(Dalian)Research Institute of Petroleum and Petrochemicals Co.Ltd.によって開発された銅系触媒であり、円筒形状を有していた。
【0123】
イソプロパノールはアセトンの水素化により調製し、イソプロパノール出発物質を、共沸塔の上端部で得られた精留生成物および水と混合した後、脱水に供した。
【0124】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0125】
イソプロパノール脱水セクションにおいて、イソプロパノール出発物質の水分含有量は8質量%、生成物中のイソプロパノール含有量は3.2質量%、反応流出物中のC2不飽和不純物の含有量は9ppm、反応流出物中のC3-C4不飽和不純物の含有量は3ppm、イソプロパノールの転化率は96.8%であった。
【0126】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例2】
【0127】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0128】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0129】
イソプロパノール脱水セクションにおいて、イソプロパノール出発物質の水分含有量は0.5質量%、生成物中のイソプロパノール含有量は2.0質量%、反応流出物中のC2不飽和不純物の含有量は40ppm、反応流出物中のC3-C4不飽和不純物の含有量は18ppm、イソプロパノールの転化率は98.0%であった。
【0130】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例3】
【0131】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0132】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0133】
イソプロパノール脱水セクションにおいて、イソプロパノール出発物質の水分含有量は2質量%、生成物中のイソプロパノール含有量は2.3質量%、反応流出物中のC2不飽和不純物の含有量は21ppm、反応流出物中のC3-C4不飽和不純物の含有量は9ppm、イソプロパノールの転化率は97.7%であった。
【0134】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例4】
【0135】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用し、生成物中のイソプロパノールを抽出精留によって精製して再利用した。
【0136】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0137】
イソプロパノール脱水セクションにおいて、イソプロパノール出発物質の水分含有量は8質量%、生成物中のイソプロパノール含有量は3.1質量%、反応流出物中のC2不飽和不純物の含有量は4ppm、反応流出物中のC3-C4不飽和不純物の含有量は3ppm、イソプロパノールの転化率は96.9%であった。
【0138】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例5】
【0139】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0140】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および、および、自製モレキュラーシーブ触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた。触媒はクローバー形状であった。
【0141】
イソプロパノール脱水セクションにおいて、イソプロパノール出発物質の水分含有量は8質量%、生成物中のイソプロパノール含有量は2.8質量%、反応流出物中のC2不飽和不純物の含有量は10ppm、反応流出物中のC3-C4不飽和不純物の含有量は5ppm、イソプロパノールの転化率は97.2%であった。
【0142】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例6】
【0143】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0144】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、イソプロパノール出発物質の水分含有量1%、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0145】
装置の運転中、反応温度を上昇させて、反応の転化率を維持または増加させ、反応効率を改善した。反応温度を290℃に上昇させ、測定を行い、測定によれば、ガス生成物中のメチルアセチレンおよびプロパジエンの含有量は6ppmであり、ガス生成物中のブチレンおよびブタジエンの含有量は7ppmであり、生成物中のイソプロパノール含有量は2.5質量%であり、その転化率は97.5%であった。本願に記載される再構成材料の水分含有量を調整するための式に従って計算した後、出発物質中のイソプロパノールの水分含有量を1.5%に調整し、このような反応条件下で行われた測定によれば、反応流出液中のC2不飽和不純物の含有量は15ppmであり、メチルアセチレンおよびプロパジエンの含有量は5ppmであり、ブチレンおよびブタジエンの含有量は4ppmであった。
【0146】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例7】
【0147】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0148】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度290℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、イソプロパノール出発物質の水分含有量1%、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0149】
装置の運転中、反応温度を上昇させて、反応の転化率を維持または増加させ、反応効率を改善した。反応温度を290℃に上昇させ、測定を行い、測定によれば、ガス生成物中のエチレンの含有量は23ppmであり、ガス生成物中のアセチレンの含有量は2ppmであり、生成物中のイソプロパノール含有量は2.5質量%であり、その転化率は97.5%であった。本願に記載される水分含有量を調整するための式に従って計算した後、出発物質中のイソプロパノールの水分含有量を2.5%に調整し、このような反応条件下で行われた測定によれば、反応流出物中のエチレンの含有量は14ppmであり、アセチレンの含有量は1ppmであり、メチルアセチレンおよびプロパジエンの含有量は4ppmであり、ブテンおよびブタジエンの含有量は4ppmであった。
【0150】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例8】
【0151】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0152】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、イソプロパノール出発物質の水分含有量3.5%、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0153】
装置の運転中、反応温度を上昇させて、反応の転化率を維持または増加させ、反応効率を改善した。反応温度を301℃に上昇させ、測定を行い、測定によれば、ガス生成物中のメチルアセチレンおよびプロパジエンの含有量は7ppmであり、ガス生成物中のブチレンおよびブタジエンの含有量は8ppmであり、生成物中のイソプロパノール含有量は0.7質量%であり、その転化率は99.3%であった。本願に記載される再構成材料の水分含有量を調整するための式に従って計算した後、出発物質中のイソプロパノールの水分含有量を4.2%に調整し、このような反応条件下で行われた測定によれば、反応流出物中のC2不飽和不純物の含有量は16ppmであり、メチルアセチレンおよびプロパジエンの含有量は4ppmであり、ブチレンおよびブタジエンの含有量は5ppmであった。
【0154】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例9】
【0155】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0156】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、イソプロパノール出発物質の水分含有量3.5%、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0157】
装置の運転中、反応温度を上昇させて、反応の転化率を維持または増加させ、反応効率を改善した。反応温度を301℃に上昇させ、測定を行い、測定によれば、ガス生成物中のエチレンの含有量は22ppmであり、ガス生成物中のアセチレンの含有量は2ppmであり、生成物中のイソプロパノール含有量は0.7質量%であり、その転化率は99.3%であった。本願に記載される水分含有量を調整するための式に従って計算した後、出発物質中のイソプロパノールの水分含有量を6.6%に調整し、このような反応条件下で行われた測定によれば、反応流出液中のエチレンの含有量は18ppm、アセチレンの含有量は1ppm、メチルアセチレンおよびプロパジエンの含有量は4ppm、ブテンおよびブタジエンの含有量は4ppmであった。
【0158】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【実施例10】
【0159】
実施例1に記載の出発物質および方法を用いてイソプロパノールを製造し、イソプロパノールおよび水を直接混合し、次いで脱水のための出発物質として使用した。
【0160】
イソプロパノール脱水反応器の管の大きさはφ10×2.0であり、イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、イソプロパノール出発物質の水分含有量7.0%、圧力0.2MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和水蒸気雰囲気中で450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であった。
【0161】
装置の運転中、反応温度を上昇させて、反応の転化率を維持または増加させ、反応効率を改善した。反応温度を308℃に上昇させ、測定を行い、測定によれば、ガス生成物中のメチルアセチレンとプロパジエンの含有量は7ppmであり、ガス生成物中のブチレンとブタジエンの含有量は6ppmであり、生成物中のイソプロパノール含有量は0.3質量%であり、その転化率は99.7%であった。本願に記載される再構成材料の水分含有量を調整するための式に従って計算した後、出発物質中のイソプロパノールの水分含有量を8.7%に調整し、このような反応条件下で行われた測定によれば、反応流出液中のC2不飽和不純物の含有量は21ppmであり、メチルアセチレンおよびプロパジエンの含有量は3ppmであり、ブチレンおよびブタジエンの含有量は5ppmであった。
【0162】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノール脱水触媒の選択性、生成物中の不飽和炭化水素不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【比較例1】
【0163】
純粋なイソプロパノールを出発物質として使用し、脱水のために反応器に供給し、イソプロパノール脱水反応器の管のサイズはφ10×2.0であった。
【0164】
イソプロパノール脱水の条件は、温度280℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和蒸気雰囲気中、450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であり、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0165】
ここで、イソプロパノール出発物質の水分含有量は0質量%であり、生成物中のイソプロパノール含有量は0.9質量%であった。
【0166】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノールの転化率、生成物中のアルケンおよびアルキン不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【比較例2】
【0167】
純粋なイソプロパノールを出発物質として使用し、脱水のために反応器に供給し、イソプロパノール脱水反応器の管のサイズはφ10×2.0であった。
【0168】
イソプロパノール脱水の条件は、温度300℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和蒸気雰囲気中、450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であり、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0169】
ここで、イソプロパノール出発物質の水分含有量は0質量%であり、生成物のイソプロパノール含有量は0.3質量%であった。
【0170】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノールの転化率、生成物中のアルケンおよびアルキン不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【比較例3】
【0171】
純粋なイソプロパノールを出発物質として使用し、脱水のために反応器に供給し、イソプロパノール脱水反応器の管のサイズはφ10×2.0であった。
【0172】
イソプロパノール脱水の条件は、温度330℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、および以下のように調製された自製アルミナ系触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた:10質量%のアルミナ含有量を有する非晶質シリカ-アルミナペレットを、飽和蒸気雰囲気中、450℃の温度で10時間処理して、イソプロパノール脱水触媒を得た。触媒は球形であり、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0173】
ここで、イソプロパノール出発物質の水分含有量は16質量%であり、生成物のイソプロパノール含有量は0.5質量%であった。
【0174】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノールの転化率、生成物中のアルケンおよびアルキン不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【比較例4】
【0175】
純粋なイソプロパノールを出発物質として使用し、脱水のために反応器に供給し、イソプロパノール脱水反応器の管のサイズはφ10×2.0であった。
【0176】
イソプロパノールの脱水の条件は、温度300℃、圧力0.3MPa、触媒の空間速度1.5h-1、およびヘテロポリ酸型触媒であるイソプロパノール脱水触媒を含んでいた。得られた生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0177】
ここで、イソプロパノール出発物質の水分含有量は3.0質量%であり、生成物のイソプロパノール含有量は0.2質量%であった。
【0178】
最終プロピレン生成物の特性、イソプロパノールの転化率、生成物中のアルケンおよびアルキン不純物の組成、および、エネルギー消費量(エネルギー消費量は、イソプロパノールの脱水によって適格なプロピレン生成物が製造される場合の全プロセスの生成物1トン当たりのエネルギー消費量を指す)を表2に示す。
【0179】
【表3】
図1
【国際調査報告】