(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】正極活性材、電気化学装置および電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/136 20100101AFI20231101BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231101BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231101BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231101BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231101BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
H01M4/136
H01M4/36 C
H01M4/58
H01M10/0566
H01M4/62 Z
H01M6/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525942
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022079167
(87)【国際公開番号】W WO2022267529
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110742609.6
(32)【優先日】2021-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】曽 毓群
【テーマコード(参考)】
5H024
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H024AA01
5H024FF15
5H024FF19
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050CA01
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA09
5H050FA16
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
本願は、正極活性材、電気化学装置および電子デバイスを提供する。
【解決手段】 正極活性材は、導電性基材、および、導電性基材に分布された活物質を含み、活物質は、コアシェル構造を含み、コアシェル構造は、コア層材とシェル層材からなる。コア層材は、リン酸基ナトリウム塩材料を含み、シェル層材は、金属酸化物を含み、導電性基材は、炭素材料を含む。本願に提供される正極活性材、電気化学装置および電子デバイスは、正極活性材の導電性を効果的に向上させ、材料のグラム容量および動的特性を向上させ、かつ、副反応の発生を減少させ、正極活性材のサイクル性能を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材、および、
前記導電性基材上に分布された、コア層材とシェル層材からなるコアシェル構造を有する活物質、
を含む正極活性材であって、前記導電性基材は炭素材料を含み、前記コア層材はリン酸基ナトリウム塩材料を含み、前記シェル層材は金属酸化物を含む、正極活性材。
【請求項2】
前記金属酸化物は、WO
3、Al
2O
3、ZnO、CuO、TiO
2のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の正極活性材。
【請求項3】
前記正極活性材は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する請求項1に記載の正極活性材。
(1)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式はNa
x1R
y1(PO
4)
Z1であり、そのうち、1≦x
1≦3、1≦y
1≦2、1≦z
1≦3であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含む。
(2)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式はNa
x2R
y2(P
2O
7)
Z2であり、そのうち、1≦x
2≦7、1≦y
2≦3、1≦z
2≦4であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含む。
(3)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式は、Na
x3R
y3(PO
4)
Z3(P
2O
7)
k3であり、そのうち、1≦x
3≦7、1≦y
3≦4、1≦z
3≦2、1≦k
3≦4であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含む。
(4)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式は、Na
x4R
y4(PO
4)
Z4M
l1であり、そのうち、1≦x
4≦3、1≦y
4≦2、1≦z
4≦2、1≦l1≦3であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含み、Mは、F、Cl、Brのうちの少なくとも1種を含む。
【請求項4】
前記リン酸基ナトリウム塩材料は、NaFePO
4、Na
3V
2(PO
4)
3、Na
2FeP
2O
7、Na
2MnP
2O
7、NaCoP
2O
7、Na
7V
3(P
2O
7)
4、Na
2FePO
4F、Na
3V
2(PO
4)
2F
3、Na
4Fe
3(PO
4)
2(P
2O
7)、Na
4Mn
3(PO
4)
2(P
2O
7)、Na
4Co
3(PO
4)
2(P
2O
7)、Na
4Ni
3(PO
4)
2(P
2O
7)、Na
7V
4(PO
4)(P
2O
7)
4のうちの少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の正極活性材。
【請求項5】
前記金属酸化物における実際の酸素原子の質量は、前記金属酸化物における理論酸素原子の質量の70%~95%である、請求項1に記載の正極活性材。
【請求項6】
前記正極活性材は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項1または2に記載の正極活性材。
(5)前記シェル層材の厚さは、50nm~400nmである。
(6)前記正極活性材における前記シェル層材の質量含有量は、1%~10%である。
(7)前記正極活性材における前記コア層材の質量含有量は、90%~99%である。
(8)前記正極活性材における前記導電性基材の質量含有量は、1%~10%である。
【請求項7】
前記正極活性材は、下記の特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項1または2に記載の正極活性材。
(9)前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛のうちの少なくとも1種を含む。
(10)前記炭素材料は酸素含有基を含み、前記酸素含有基はカルボキシル基、ヒドロキシ基およびエーテル基から選ばれた少なくとも1種である。
(11)前記炭素材料は、酸素含有基を含み、前記炭素材料における酸素原子の質量含有量≧0.1%である。
(12)前記導電性基材は炭素材料である。
【請求項8】
前記正極活性材は、以下の特徴の少なくとも1つを有する、請求項1に記載の正極活性材。
(13)前記正極活性材は、20MPa圧力での抵抗率が0.005Ω・cm~100Ω・cmである。
(14)前記正極活性材の平均粒子径は、5μm~20μmである。
(15)前記正極活性材のグラム容量は、100mAh/g~180mAh/gである。
【請求項9】
請求項1~8のいずれの1項に記載の正極活性材を含む正極シート、負極シート、セパレーター及び電解液を含む、電気化学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気化学装置を含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本願は、2021年06月26日に出願された発明の名称が「正極活性材、電気化学装置および電子デバイス」である中国特許出願第202110742609.6号の優先権を主張するものであり、当該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、二次電池技術分野に関し、具体的に正極活性材、電気化学装置及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギーと環境の問題が顕在化するにつれ、新エネルギー産業が重要視されるようになってきた。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性が良い等の特徴から、近年重要な新しいエネルギー貯蔵装置として広く用いられている。しかしながら、リチウムイオン電池は、関連する活物質資源が不足し、電池コストが常に高いだけでなく、関連する資源の枯渇等の厳しい問題に直面しているため、別の低コスト金属イオン二次電池システムの開発が必要である。
【0004】
ナトリウムイオン電池は、その低コスト、ナトリウム金属資源の豊富化、リチウムイオン電池の製造プロセスに類似するなどの利点により、近年研究のホットスポットになっている。ナトリウムイオン二次電池システムにおいて、ピロリン酸基正極材料は、サイクル特性が良く、コストが安いため、広く注目されている。しかしながら、ピロリン酸基正極材料は、それ自体導電性に劣るため、そのまま使用するとピロリン酸基正極材のグラム容量の発揮に影響を与え、かつ電気化学的性能が劣り、その大規模な応用が著しく阻害される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、正極活性材の導電性を効果的に向上させ、材料のグラム容量および動的特性を向上させ、かつ、副反応の発生を減らし、正極活性材のサイクル性能を向上させることができる、正極活性材、電気化学装置および電子デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本願は、導電性基材および導電性基材に分布された、コア層材とシェル層材とからなるコアシェル構造を有する活物質を含む正極活性材であって、前記コア層材はリン酸基ナトリウム塩材料を含み、前記シェル層材は金属酸化物を含み、前記導電性基材は炭素材料を含む前記正極活性材を提供する。
【0007】
本願の第1の態様の実施形態によれば、前記金属酸化物は、WO3、Al2O3、ZnO、CuO、TiO2のうちの少なくとも1種を含む。
【0008】
本願の第1の態様の実施形態によれば、前記正極活性材は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
(1)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式は、Nax1Ry1(PO4)Z1であり、そのうち、1≦x1≦3、1≦y1≦2、1≦z1≦3であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含む。
(2)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式は、Nax2Ry2(P2O7)Z2であり、そのうち、1≦x2≦7、1≦y2≦3、1≦z2≦4であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含む。
(3)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式は、Nax3Ry3(PO4)Z3(P2O7)k3であり、そのうち、1≦x3≦7、1≦y3≦4、1≦z3≦2、1≦k3≦4であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含む。
(4)前記リン酸基ナトリウム塩材料の化学式は、Nax4Ry4(PO4)Z4Ml1であり、そのうち、1≦x4≦3、1≦y4≦2、1≦z4≦2、1≦l1≦3であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含み、Mは、F、Cl、Brのうちの少なくとも1種を含む。
【0009】
本願の第1の態様の実施形態によれば、前記リン酸基ナトリウム塩材料は、NaFePO4、Na3V2(PO4)3、Na2FeP2O7、Na2MnP2O7、NaCoP2O7、Na7V3(P2O7)4、Na2FePO4F、Na3V2(PO4)2F3、Na4Fe3(PO4)2(P2O7)、Na4Mn3(PO4)2(P2O7)、Na4Co3(PO4)2(P2O7)、Na4Ni3(PO4)2(P2O7)、Na7V4(PO4)(P2O7)4のうちの少なくとも1種を含む。
【0010】
本願の第1の態様の実施形態によれば、前記金属酸化物における実際の酸素原子の質量は、前記金属酸化物における理論酸素原子の質量の70%~95%である。
【0011】
本願の第1の態様の実施形態によれば、前記正極活性材は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
(5)前記シェル層材の厚さは50nm~400nmである。
(6)前記正極活性材における前記シェル層材の質量含有量は1%~10%である。
(7)前記正極活性材における前記コア層材の質量含有量は90%~99%である。
(8)前記正極活性材における前記導電性基材の質量含有量は1%~10%である。
【0012】
本願の第1の態様の実施形態によれば、前記正極活性材は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
(9)前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛のうちの少なくとも1種を含む。
(10)前記炭素材料は酸素含有基を含み、前記酸素含有基は、カルボキシル、ヒドロキシおよびエーテル基から選ばれた少なくとも1種である。
(11)前記炭素材料は酸素含有基を含み、前記炭素材料における酸素原子の質量含有量≧0.1%である。
(12)前記導電性基材は炭素材料である。
【0013】
本願の第1の態様の実施形態によれば、前記正極活性材は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
(13)前記正極活性材は、20MPa圧力での抵抗率が0.005Ω・cm~100Ω・cmである。
(14)前記正極活性材は、平均粒子径が5μm~20μmである。
(15)前記正極活性材は、グラム容量が100mAh/g~180mAh/gである。
【0014】
第2の態様において、本願は、前述した正極活性材を含む正極シート、負極シート、セパレーターおよび電解液を含む電気化学装置を提供する。
【0015】
第3の態様において、本願は、前述した電気化学装置を含む電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本願に提供される技術案は、少なくとも以下の有益的な効果を有する。
【0017】
本願は、リン酸基ナトリウム塩材料の表面に金属酸化物を被覆した正極活性材を提供し、金属酸化物は比較的に高い機械強度を有するため、材料の充放電によって体積が変化しても被覆層の安定性を維持できると共に、多量の酸素空孔を有することで一定の導電性をもたらし、また、金属酸化物は、シャトルされるナトリウムイオンと高いナトリウムイオン導電率を有する金属ナトリウム塩を形成して材料の動的特性を向上させることができる。以上のことから、この被覆層は、リン酸基ナトリウム塩材料の導電性を改善してそのグラム容量の発揮と動的特性を向上させることができる一方、リン酸基ナトリウム塩材料の電解液との直接接触を防ぎ、副反応の発生を減らし、正極活性材のサイクル性能を向上させることができる。被覆した後の活物質を導電性基材に附着させることにより、導電性基材の高導電性能を利用して材料の導電性をさらに向上させることができ、導電性重合体で被覆された構造および導電性基材を有する正極活性材は、より高いグラム容量、より良い動的特性およびサイクル性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、実施例で使用される図面を以下に簡単に紹介する。以下の図面は、本願のいくつかの実施例のみを示すものであり、本願の範囲に限定するものとみなされないことを理解されたい。
【0019】
【
図1】本願実施例に提供される1種の正極活性材の構成模式図である。
【
図2】本願実施例に提供される正極活性材における活物質の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願の目的、技術案及びメリットをより明確にするために、図面及び実施例を参照して本願をさらに詳しく説明する。ここに説明される具体的な実施例は、本願を説明するためだけのものであり、本願を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0021】
本明細書の説明において、「第1」、「第2」という用語は、特に明記され、限定されていない限り、説明の目的のためにのみ使用され、相対的な重要性を示すかまたは暗示するものとして理解されるべきではない。用語「複数」は、特に規定され、説明されていない限り、2つまたは2つ以上を意味する。用語「接続」、「固定」などは、広義に理解されるべきであり、例えば、「接続」は、固定接続、または、取り外し可能な接続、一体化的な接続、または、電気的接続であってもよく、直接つながっても中間媒体を介して間接につながってもよい。
【0022】
当業者によって、本願における上記の用語の特定の意味は、特定の状況に照らして理解することができる。
【0023】
本明細書の説明において、本願実施例に記載の「上」、「下」などの方位語は、図面に示す角度で説明するものであり、本願の実施例を限定するものであると理解されるべきではない。また、文脈において、ある要素が別の要素「上」または「下」に接続されていると言及する場合、別の要素の「上」または「下」に直接接続できるだけでなく、中間要素を介して別の要素の「上」または「下」に間接接続できることも理解されたい。
【0024】
第1の態様として、本願は、正極活性材を提供し、
図1は、本願実施例で提供された正極活性材の構成模式図であり、
図1に示されるように、正極活性材は、導電性基材1および導電性基材1上に分布された活物質2を含む。活物質2は、コアシェル構造を有し、
図2は、本願実施例に提供された正極活性材における活物質の構成模式図であり、
図2に示されるように、コアシェル構造は、コア層材21とシェル層材22からなる。そのうち、コア層材21は、リン酸基ナトリウム塩材料を含み、シェル層材22は、金属酸化物を含み、導電性基材1は、炭素材料を含む。
【0025】
本願において、導電性基材1は、導電性ネットワークを構築するために用いられ、活物質2は、導電性基材1の表面に粘着され、または、導電性基材1の空孔構造内などに付着されてもよく、ここで限定されない。活物質2を導電性基材1に付着させることにより、導電性基材の高導電性を利用して正極活性材の導電性能を向上させることができる。
【0026】
前述した案において、導電性基材1は、炭素材料であり、そのうち、炭素材料は、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛のうちの少なくとも1種を含む。具体的に、炭素材料は、酸素含有基を含み、酸素含有基は、カルボキシル基、ヒドロキシ基およびエーテル基から選ばれた少なくとも1種である。酸素含有基における酸素原子の質量含有量≧0.1%であり、任意に、酸素含有基における酸素原子の質量含有量は、具体的に0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%等であってもよく、ここで限定されない。炭素材料における酸素原子の質量含有量を制御することにより、導電性基材の過電位を低下させ、活物質と正極集電体との親和性不良の現像を改善し、活物質と正極集電体との粘着力を高めることができる。
【0027】
実際の応用過程において、正極活性材における導電性基材1の質量含有量は、1%~10%であり、任意に、正極活性材における導電性基材の質量含有量は、具体的に1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%等であってもよく、ここで限定されない。正極活性材における導電性基材1の質量含有量が大き過ぎると、比表面積が大きく、容量がなく、圧密密度が低い炭素材料が多くなりすぎ、電池容量が小さくなるため、電池のエネルギー密度およびサイクル寿命の低下を招く。正極活性材における導電性基材1の質量含有量が低すぎると、活物質2の間の導電ネットワークは、効果的に形成されにくくなり、導電速度が低下し、電池の導電性能および寿命の低下を招く。好ましくは、正極活性材における導電性基材1の質量含有量は、4%~8%であってもよい。
【0028】
前述した案において、導電性基材1上の活物質2は、コアシェル構造を有し、コアシェル構造は、コア層材21とシェル層材22からなり、コア層材21は、シェル層材22で被覆され、被覆構造は、全被覆または半被覆であり、被覆の方式は、固相被覆法、液相被覆法または気相被覆法などであってもよく、具体的な被覆方式は、必要に応じて選択することができ、ここで限定されない。具体的に、活物質2のシェル層材22とコア層材21とは、電荷のクーロン引力により吸着されており、またはコア層材21とシェル層材22との間の強固な化学結合により密着されている。
【0029】
具体的に、コア層材21の成分としてリン酸基ナトリウム塩材料を含み、リン酸基ナトリウム塩材料の化学式は、Nax1Ry1(PO4)Z1、Nax2Ry2(P2O7)Z2、Nax3Ry3(PO4)Z3(P2O7)k3、Nax4Ry4(PO4)Z4Ml1のうちの少なくとも1種を含む。そのうち、1≦x1≦3、1≦y1≦2、1≦z1≦3、1≦x2≦7、1≦y2≦3、1≦z2≦4、1≦x3≦7、1≦y3≦4、1≦z3≦2、1≦k3≦4、1≦x4≦3、1≦y4≦2、1≦z4≦2、1≦l1≦3であり、Rは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、Ta、WおよびPbのうちの少なくとも1種を含み、Mは、F、Cl、Brのうちの少なくとも1種を含む。
【0030】
任意に、リン酸基ナトリウム塩材料は、具体的にNaFePO4、Na3V2(PO4)3、Na2FeP2O7、Na2MnP2O7、NaCoP2O7、Na7V3(P2O7)4、Na2FePO4F、Na3V2(PO4)2F3、Na4Fe3(PO4)2(P2O7)、Na4Mn3(PO4)2(P2O7)、Na4Co3(PO4)2(P2O7)、Na4Ni3(PO4)2(P2O7)、Na7V4(PO4)(P2O7)4等であってもよく、ここで限定されない。好ましくは、リン酸基ナトリウム塩材料がNa4Fe3(PO4)2(P2O7)であってもよい。
【0031】
コア層材21の被覆に用いるシェル層材22は、金属酸化物を含み、そのうち、金属酸化物は、WO3、Al2O3、ZnO、CuO、TiO2のうちの少なくとも1種を含む。具体的に、金属酸化物における実際の酸素原子質量は、金属酸化物における理論酸素原子質量の70%~95%である。任意に、金属酸化物における実際の酸素原子質量は、金属酸化物における理論酸素原子質量の70%、75%、80%、85%、90%、95%等であってもよく、ここで限定されない。なお、金属酸化物における実際の酸素原子質量が理論酸素原子質量と差があるのは、酸素空孔欠陥が存在するからであり、すなわち、元の金属酸化物表面から酸素の一部が失われて酸素空孔欠陥の多い無秩序な構造層が形成され、金属酸化物表面に一定量の酸素空孔が形成されている。酸素空孔が多すぎると、材料の金属性が高くなりすぎて機械的強度が低下するとともに、ナトリウムイオンと結合してイオン導電率の高い金属ナトリウム塩を形成する割合を減らしてナトリウムイオン導電率が低下する。酸素空孔が少なすぎると、酸素イオンは、その中に自由に移動できず、電気抵抗効果における電界の酸素イオン移動に対する制御ができなくなる。好ましくは、金属酸化物における実際の酸素原子質量は、金属酸化物における理論酸素原子質量の85%である。
【0032】
本願の技術案のオプションとして、金属酸化物被覆構造の正極活性材は、充放電過程中により優れた可逆性を有する。金属酸化物は、比較的に良好な機械強度および比較的に高い導電性を有するため、正極活性材の導電性を改善でき、正極活性材のグラム容量の発揮及び動的特性を向上させることができる。一方、正極活性材の電解液との直接接触を防ぎ、副反応の発生を減らし、正極活性材のサイクル性能を向上させることができる。正極活性材において、活物質2は、導電性基材1上に担持されており、孤立した多量の活物質2を外部に構築された一次元または二次元導電ネットワークで繋げることができ、導電性をさらに向上させることができる。かつ、導電性基材1の酸素含有官能基を増加し、酸素含有官能基を利用して活物質2表面のシェル層材22と結合力のより強い水素結合を形成し、活物質2と導電性基材1との結合強度を向上させることができる。
【0033】
実際の応用過程において、正極活性材におけるコア層材21の質量含有量は、90%~99%である。任意に、正極活性材におけるコア層材21の質量含有量は、具体的に90%、91%、92%、93%、96%、97%、98%、99%などであってもよく、ここでは、限定されない。正極活性材におけるコア層材21の質量含有量が多すぎると、コア層材を被覆する金属酸化物の割合が小さすぎ、正極活性材の導電性が低下し、電池のグラム容量の発揮及び動的特性に影響を与える。正極活性材におけるコア層材21の質量含有量が小さすぎると、良好なサイクル性能を有するリン酸基ナトリウム塩材料の割合が少なくなり、電池のサイクル性能が低下する。好ましくは、正極活性材におけるコア層材21の質量含有量は、95%であってもよい。
【0034】
正極活性材におけるシェル層材22の質量含有量は、1%~10%であり、任意に、正極活性材におけるシェル層材22の質量含有量は、具体的に1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%等であってもよく、シェル層材の厚さは、50nm~400nmであり、任意に、シェル層材の厚さは、具体的に50nm、100nm、150nm、200nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm等であってもよく、ここで限定されない。正極活性材におけるシェル層材22の質量含有量および厚さが高すぎる場合、シェル層が厚すぎになり、金属酸化物の質量割合が高すぎ、コア層におけるサイクル性能が良好なリン酸基ナトリウム塩材料の質量割合が少なくなり、最終的に、電池のサイクル性能に影響を与える。正極活性材におけるシェル層材22の質量含有量及び厚さが低すぎる場合、コア層材上に被覆された金属酸化物被覆層が薄すぎ、正極活性材の導電性が低下し、かつ正極活性材表面が電解液と直接接触しやすくなり、副反応の発生につながる。好ましくは、正極活性材におけるシェル層材22の質量含有量は、4%~8%であり、シェル層材の厚さは、100nm~300nmであってもよい。
【0035】
本願の技術案のオプションとして、正極活性材の平均粒子径は、5μm≦Dv50≦20μmを満たし、任意に、正極活性材の平均粒子径Dv50は、具体的に5μm、7μm、9μm、11μm、13μm、15μm、17μm、19μm、20μmなどであってもよく、ここでは、限定されない。正極活性材の平均粒子径が小さすぎると、正極活性材粒子の凝集現象が生じやすくなり、電解液との副反応が生じやすくなる。正極活性材の平均粒子径が大きすぎると、正極活性材内部での活性イオンの拡散速率が低下し、動的特性が低下し、正極活性材グラム容量の発揮及び電池サイクル性能に影響を与える。好ましくは、正極活性材の粒子径Dv50が8μm≦Dv50≦15μmを満たす。
【0036】
第2の態様として、本願は、前述した正極活性材を含む正極シート、負極シート、セパレーターおよび電解液を含む電気化学装置を提供する。
【0037】
正極シートは、正極集電体および正極集電体上に位置する正極活性材層を含み、正極活性材層は、前記第1の態様の正極活性材を含む。
【0038】
負極シートは、負極集電体および負極集電体上に位置する負極活性材層を含む。負極活性材層は負極活性材を含む。
【0039】
本願の技術案のオプションとして、負極活性材は、黒鉛、ケイ素材料、シリコン-酸素材料、スズ材料、スズ-酸素材料またはシリコン-炭素複合材料のうちの少なくとも1種を含む。
【0040】
本願の技術案のオプションとして、負極活性材層は、粘着剤を含み、粘着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシ化ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレン、エチレン酸素含有重合体、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂またはナイロン等を含むが、これらに限られない。
【0041】
本願の技術案のオプションとして、負極活性材層は、さらに導電性材料を含み、導電性材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀またはポリフェニレン誘導体等を含むが、これらに限られない。
【0042】
本願の技術案のオプションとして、負極集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅または複合集電体を含むが、これらに限られない。
【0043】
ナトリウムイオンがアルミニウムと合金を形成しないため、コスト低減や軽量化の観点から、好ましくは、アルミ箔、アルミニウム合金箔、および、アルミニウム基複合集電体のいずれを含むアルミニウム基集電体を用い、アルミニウム基複合集電体は、高分子基材と高分子基材の両側に形成されたアルミニウム箔および/またはアルミニウム合金箔を含む。具体的に、アルミニウム基複合集電体は、高分子ベースフィルムが中間に位置し、その両側にアルミ箔が設けられており、または、その両側にアルミニウム合金箔が設けられており、もしくは、高分子ベースフィルムの一方の側にアルミ箔が設けられており、他方の側にアルミニウム合金箔が設けられている「サンドイッチ」構造である。高分子ベースフィルムは、ポリアミド、ポリテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、エチレンプロピレンゴム、ポリホルムアルデヒド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンゴム、ポリカーボネートのうちの少なくとも1種であってもよい。ナトリウム堆積/脱離過程中の電極の完全性の維持を促進する、より良好な延性を有するアルミニウム基複合集電体は、本願に好ましい。
【0044】
本願の技術案のオプションとして、セパレーターは、電気化学的エネルギー貯蔵装置のセパレーターに適用される当該技術分野の様々な材料であり得、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル及び天然繊維のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限られない。
【0045】
本願の技術案のオプションとして、電気化学装置は、電解液をさらに含み、前記電解液は、有機溶剤、ナトリウム塩および添加剤を含む。
【0046】
本願による電解液の有機溶剤は、従来技術に知られている電解液の溶剤として用いられる有機溶剤のいずれであってもよい。本願による電解液に用いられる電解質は、限られず、従来技術に知られている電解質のいずれであってもよい。本願による電解液の添加剤は、従来技術に知られている電解液添加剤として用いられる添加剤のいずれであってもよい。
【0047】
具体的な実施例において、前記有機溶剤は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピオン酸プロピル、又はプロピオン酸エチルのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限られない。
【0048】
具体的な実施例において、ナトリウム塩は、有機ナトリウム塩または無機ナトリウム塩のうちの少なくとも1種を含む。
【0049】
具体的な実施例において、ナトリウム塩は、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、ジフルオロリン酸ナトリウム(NaPO2F2)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムNaN(CF3SO2)2(NaTFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドナトリウムNa(N(SO2F)2)(NaFSI)、ビスオキサレートホウ酸ナトリウムNaB(C2O4)2(NaBOB)、ジフルオロオキサラトホウ酸ナトリウムNaBF2(C2O4)(NaDFOB)または過塩素酸ナトリウムを含むが、これらに限られない。
【0050】
本願の技術案のオプションとして、本願に係る電気化学装置は、すべての種類の一次電池、二次電池を含むが、これらに限られない。前記電池は、ソフトバッグ、方形アルミニウムケース、方形スチールケース、円柱状アルミニウムケース、および、円柱状スチールケース電池のうちの少なくとも1種を含む。
【0051】
第3の態様として、本願は、前述した電気化学装置を含む電子デバイスを提供する。電気化学装置は、電子デバイスに電力を供給するために使用され得る。
【0052】
本願の技術案のオプションとして、前記電子デバイスは、ノートパソコン、ペン入力型パソコン、モバイルコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンタ、ヘッドフォンステレオ、ビデオレコーダ、液晶テレビ、ハンディクリーナ、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリカード、ポータブルレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モータ、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池、エネルギー貯蔵用またはナトリウムイオンキャパシタ等を含むが、これらに限られない。
【0053】
第4の形態として、本願は、以下のステップを含む正極活性材の製造方法をさらに提供する。
【0054】
S10:炭素材料を濃硫酸:濃硝酸=3:1の溶液に入れて4h攪拌し、脱イオン水で洗浄し、ろ過した後、オーブンに入れ、80℃で乾燥し、そのうち、ろ過篩の孔径として、400メッシュを選択する。
【0055】
S20:前記処理した後の炭素材料を水に入れて超音波分散させた後、化学量論比の硝酸鉄、リン酸二水素ナトリウム溶液と均一になるように混合攪拌し、次いでスプレードライ技術により前駆体粉末を作製する。
【0056】
そのうち、超音波分散させた後の炭素材料は、平均粒子径サイズは、50nm~20μmを満たし、噴霧乾燥の入口温度は、150℃~250℃であり、噴霧乾燥の出口温度は、80℃~150℃である。
【0057】
S30:600℃の高温で前駆体粉末を6時間焙焼した後、金属酸化物溶液に入れて十分に攪拌し、PH値を調整して前駆体ゲルをリン酸基ナトリウム塩材料の表面に被覆し、そして400℃~800℃、水素ガス雰囲気で焙焼し、得られた生成物を篩過した後正極活性材を得る。
【0058】
そのうち、攪拌時間は、2h~8hであり、調整後のPH値は、10~12であり、焙焼時間は、4h~10hであり、篩過した後の正極活性材の平均粒子径は、8μm≦Dv50≦15μmを満たす。
【0059】
前述した製造方法及びシェル層材質量分率、導電性基材質量分率、シェル層材種類、正極活性材粒子径の調整により、最終的に正極活性材を得る。
【0060】
当業者が本発明の技術案をより良く理解するために、具体的な実施例を参照して以下に本願をさらに詳細に説明する。
【0061】
実施例1:
(1)負極シートの製造
【0062】
まず、炭素材料を体積比3:1の濃硫酸と濃硝酸の混合溶液に入れて4h攪拌し、脱イオン水で洗浄、ろ過した後オーブンに入れ、80℃の条件で乾燥した。炭素材料と高分子重合体をN-メチルピロリドンに添加し、均一なスラリーになるように攪拌し、スラリーを銅箔に塗り、かつ乾燥して、使用される炭素材料塗層を得た。Arガス雰囲気でナトリウム金属をステンレス製坩堝に入れ、200℃まで加熱して完全に融解させ、そして、合金成分粉末を液体ナトリウム金属に添加し、金属粉末とナトリウム金属液体との均一な混合を確実にするために、2時間十分に攪拌し、冷却してナトリウム金属合金活物質を得た。ナトリウム金属合金活物質を冷間プレスにより炭素材料塗層の表面に複合してナトリウム金属負極シートを得た。
【0063】
(2)正極シートの製造
10wt%ポリフッ化ビニリデン粘着剤をN-メチルピロリドンに完全に溶解し、10wt%カーボンブラック導電剤と80wt%正極活性材を添加し、均一に分散したスラリーに作製した。スラリーを、ジルコニウム表面に均一に塗り、そして真空乾燥オーブンに移して完全に乾燥させた。得られたシートをロールプレスした後、打ち抜いて目的のウェハを得た。
【0064】
(3)セパレーターの製造
ポリプロピレン重合体フィルムを採用した。
【0065】
(4)電解液の製造
エチレングリコールジメチルエーテル(DME)を有機溶剤とし、そして、十分に乾燥されたナトリウム塩NaPF6を、混合した後の有機溶剤に溶解して濃度1mol/Lの電解液に調製した。
【0066】
(5)ボタン型電池の製造
前記正極シート、セパレーター、負極シートを、セパレーターが正極、負極シートの間になるように位置させて隔離の役割を果たすように順に積み重ねて、前記電解液を加えてボタン型電池を組み立てた。
【0067】
前述した方法で製造された実施例1~22及び比較例1~7の具体的なパラメータは、表1に示した。
【0068】
【0069】
性能試験:
(1)正極活性材の抵抗率:正極活物質粉末を粉体抵抗計を用いて20MPaの圧力で測定した。
(2)正極活性材のグラム容量:
実施例と比較例で作製した電池を25℃で0.1Cレートで4Vまで充電し、0.1Cレートで1Vまで放電し、満充放電試験を行い、材料のグラム容量としての放電容量を得た。
(3)電池のサイクル性能:
25℃で実施例と比較例で作製した電池を、ナトリウムイオン電池の容量が最初容量の80%未満になるまで0.1Cレートで4Vまで充電し、0.1Cレートで1Vまで放電し、満充放電サイクル試験を行って、サイクル回数を記録し、その試験結果を表2に示した。
【0070】
【0071】
実施例1~4から分かるように、成分の異なる正極活性材から作製した電池のグラム容量の発揮及び電池サイクル回数は、僅かな差があった。好ましくは、正極活性材がNa4Fe3(PO4)2(P2O7)である。
【0072】
実施例5~9及び比較例1~2から分かるように、正極活性材におけるシェル層材の質量含有量が1%~10%の範囲内である場合、電池のグラム容量の発揮、動的特性及びサイクル性能は、良好であった。正極活性材におけるシェル層材の質量含有量が高すぎる場合、コア層の厚さが高すぎ、金属酸化物の質量割合が高すぎ、コア層材におけるサイクル性能の良いリン酸基ナトリウム塩材料の質量割合が小さくなり、最終に電池のサイクル性能に影響した。正極活性材におけるシェル層材の質量含有量が低すぎる場合、コア層材上に被覆された金属酸化物の被覆層が薄すぎ、正極活性材の導電性が低下し、かつ正極活性材表面が電解液と直接接触しやすくなり、副反応の発生を招いた。好ましくは、正極活性材におけるシェル層材の質量含有量が4%~8%である。
【0073】
実施例10~14及び比較例3~4から分かるように、正極活性材における導電性基材の質量含有量が1%~10%の範囲内である場合、材料導電性を向上させ、材料のグラム容量を向上させた。正極活性材における導電性基材の質量含有量が高すぎる場合、比表面積が大きく、容量がなく、圧密密度が低い炭素材料が多くなりすぎ、電池容量が小さくなり、電池のエネルギー密度およびサイクル寿命が低下した。正極活性材における導電性基材の質量含有量が低すぎる場合、活物質の間の導電ネットワークは、効果的に形成されにくくなり、電池の導電速度が低下し、活物質のグラム容量は発揮しにくくなり、電池寿命が低下した。好ましくは、正極活性材における導電性基材の質量含有量は、4%~8%である。
【0074】
実施例15~実施例17から分かるように、金属酸化物の種類の選択は、電池のグラム容量の発揮およびサイクル寿命に影響を与えた。好ましくは、シェル層材がTiO2であってもよい。
【0075】
実施例18~22及び比較例5~6から分かるように、正極活性材の平均粒子径が5μm~20μmの範囲内である場合、電池のグラム容量の発揮およびサイクル性能は、最も優れていた。正極活性材の平均粒子径が小さすぎる場合、凝集が生じやすくなり、かつ電解液との副反応が発生しやすくなった。正極活性材の平均粒子径が大きすぎる場合、材料内部での活性イオンの拡散速率を低下させ、動的特性を低下させ、グラム容量の発揮及び電池サイクル性能に影響を与えた。好ましくは、正極活性材の平均粒子径Dv50が8μm≦Dv50≦15μmを満たす。
【0076】
実施例1~22、比較例7のデータから分かるように、実施例1~22において、導電性基材質量分率、シェル層材の種類、正極活性材粒径の変化に伴い、正極活性材のグラム容量の発揮は、若干影響され、電池のサイクル寿命は、若干影響され、しかし、比べられた比較例7は、コア層材の表面にシェル層材が被覆されていないため、正極活性材の導電性が低下し、抵抗率が上昇して材料のグラム容量が大幅に低下し、かつ、コア層材が電解液と直接接触して副反応の発生を引き起こし、電池のサイクル性能が低下した。
【0077】
前記実施例は、いずれも例示的なものであり、限定的なものではないことが、当業者には理解されるであろう。異なる実施例に見られる異なる技術的特徴は、有益な効果を得るために組み合わせることができる。当業者は、図面、明細書、および特許請求の範囲を検討したうえ、開示された実施例の他を変化した実施例を理解し、かつ実施すべきである。請求の範囲において、用語「含む」は、他の装置又はステップを除外せず、物品が数詞を用いて修飾されていない場合、1つ/1種類又は複数/複数種類の物品を含むことが意図され、「1つ/1種類又は複数/複数種類の物品」と交換可能に使用され得、「第1」、「第2」という用語は、任意の特定の順序を表すために使用されるわけではなく、名称を指定するために使用される。請求項における任意の符号は、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。請求項に記載の複数の部分の機能は、単一のハードウェアまたはソフトウェアモジュールによって実現され得る。特定の技術的特徴が異なる従属請求項に存在するということは、これらの技術的特徴を組み合わせて有益な効果を得ることができないことを意味するものではない。
【符号の説明】
【0078】
1-導電性基材
2-活物質
21-コア層材
22-シェル層材
【国際調査報告】