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特表2023-547191光重合性組成物を処理するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】光重合性組成物を処理するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/357 20170101AFI20231101BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20231101BHJP
【FI】
B29C64/357
B29C64/124
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525954
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 IB2021058957
(87)【国際公開番号】W WO2022090831
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/106,478
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】コルテン,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】ライア,ジョアッキーノ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AB11
4F213AR02
4F213AR12
4F213WA25
4F213WA52
4F213WA92
4F213WA97
4F213WB01
4F213WF01
4F213WF51
4F213WL12
4F213WL67
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
本開示は、各々が10~200マイクロメートルの直径を有する開口部を画定する篩を含むインサートを得るステップと、光重合性組成物及び汚染物質を含むある体積の流体をインサート内に配置するステップと、ある体積の流体に遠心力をかけて、汚染物質をインサート内に保持し、少なくとも一部の光重合性組成物をインサートの篩に通過させることによって、汚染物質を光重合性組成物の少なくとも一部から分離して、分離された光重合性組成物を提供するステップと、を含む方法を提供する。また、積層造形装置と、遠心分離器と、遠心分離器に挿入されるように構成されたインサートと、を含むシステムが提供される。本方法及びシステムは、汚染された光重合性組成物を再利用のために再生することを有利に支援することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートを得るステップと、
b)ある体積の流体であって、光重合性組成物及び汚染物質を含む流体を、前記インサート内に配置するステップと、
c)前記ある体積の前記流体に遠心力をかけて、前記汚染物質を前記インサート内に保持し、少なくとも一部の前記光重合性組成物を前記インサートの前記篩に通過させることによって、前記汚染物質を前記光重合性組成物の少なくとも一部から分離して、分離された光重合性組成物を提供するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記インサートの少なくとも一部が、遠心分離器に嵌合するように構成された容器内に配置され、前記インサートの前記篩を通過する前記光重合性組成物の前記一部が、容器内に収集される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記汚染物質が、オリゴマー、ポリマー、ダスト粒子、埃、前記光重合性組成物から形成された複数の硬化ボクセル、又は前記光重合性組成物の重合生成物で形成された部品のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光重合性組成物が、ずり減粘性挙動を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記分離された光重合性組成物が、微粒子充填剤を更に含み、前記方法が、d)前記分離された光重合性組成物を均質化に供するステップを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記均質化が、減圧下にて実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)が、周囲気圧にて実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記篩が第1の篩であり、前記インサートが、前記第1の篩に隣接して配置された第2の篩を更に含み、前記第2の篩が、各々が前記第1の篩の前記複数の開口部よりも小さい直径を有する複数の開口部を画定している、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
e)前記分離された光重合性組成物を追加の遠心分離に供して、前記光重合性組成物から溶解ガス又は気泡の少なくとも一部を除去するステップを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)の前に、f)化学線を使用して初期光重合性組成物を選択的に硬化させて、三次元物体、並びに前記光重合性組成物及び前記汚染物質を含む前記流体を提供するステップを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
g)前記三次元物体を移動させ、それによって、前記三次元物体上に配置された前記流体の一部に質量慣性力を生成するステップを更に含み、前記質量慣性力は、1つ以上の軸に沿って回転する遠心分離器、シェーカ、又はミキサを使用して生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
i)前記分離された光重合性組成物を、均質性又は光開始剤含有量のうちの少なくとも1つについて分析するステップを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
j)前記分離された光重合性組成物の少なくとも一部を積層造形装置内に配置するステップと、k)化学線を使用して前記積層造形装置内で前記分離された光重合性組成物を選択的に硬化させて三次元物体を形成するステップと、を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップj)又はステップk)の前に、l)前記分離された光重合性組成物の少なくとも一部をある体積の初期光重合性組成物とブレンドするステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
a)積層造形装置と、
b)遠心分離器と、
c)前記遠心分離器に挿入されるように構成されたインサートであって、各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートと、
を備える、システム。
【請求項16】
前記遠心分離器に挿入されるように構成された容器を更に備え、前記インサートの少なくとも一部は、前記容器に嵌合するようにサイズ決めされ、前記容器は、前記容器に嵌合するようにサイズ決めされた前記インサートの前記少なくとも一部の体積よりも大きい体積を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記篩が第1の篩であり、前記インサートが、前記第1の篩に隣接して配置された第2の篩を更に含み、前記第2の篩が、各々が前記第1の篩の前記複数の開口部よりも小さい直径を有する複数の開口部を画定している、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
前記遠心分離器が、不均衡を測定し、前記不均衡が閾値量を上回る場合、遠心力を終了させる、又は前記インサート内の充填レベルを測定する、センサを備える、請求項15~17のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物から汚染物質を除去するための光重合性組成物の処理、及び例えば積層造形技術で使用するための組成物を処理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性組成物は、積層造形技術の使用を含む多くの産業において用いられてきた。光重合性組成物の全体積未満を重合させて物品を形成してもよいが、残りの光重合性組成物は、重合プロセス中に生成される1つ以上の汚染物質を含有することが多い。
【発明の概要】
【0003】
光重合性組成物を処理するための方法及びシステムが提供される。
【0004】
第1の態様では、方法が提供される。本方法は、a)各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートを得るステップと、b)ある体積の流体であって、光重合性組成物及び汚染物質を含む流体を、インサート内に配置するステップと、c)ある体積の流体に遠心力をかけて、汚染物質をインサート内に保持し、少なくとも一部の光重合性組成物をインサートの篩に通過させることによって、汚染物質を光重合性組成物の少なくとも一部から分離して、分離された光重合性組成物を提供するステップと、を含む。
【0005】
第2の態様では、システムが提供される。システムは、a)積層造形装置と、b)遠心分離器と、c)遠心分離器に挿入されるように構成されたインサートであって、各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートと、を含む。
【0006】
本方法及びシステムは、汚染物質(複数可)を含有しながら廃棄物として廃棄されるか又は再利用され、より低い品質の三次元物体の製造につながる光重合性組成物の量を減少させるために、光重合性組成物から汚染物質(複数可)を除去するのに有用であり得る。
【0007】
本開示の上記の「発明の概要」は、本発明の各開示された実施形態又は全ての実施態様の記載を意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願にわたり数箇所において、例の列挙を通して指針が提供されており、これらの例は、様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載の特定の例示的な構造に限定されるべきではなく、少なくとも特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びこれらの構造の同等物にまで拡大する。本明細書において選択肢として積極的に記載されている要素はいずれも、所望に応じた任意の組み合わせで、請求項に明示的に含めてもよい、又は請求項から除外してもよい。様々な理論及び可能な機構が本明細書で検討され得るが、いかなる場合であっても、このような検討は、特許請求可能な主題を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の例示的な方法のフロー図である。
図2A】積層造形装置の概略斜視図である。
図2B】遠心分離器の概略斜視図である。
図2C】本開示による、容器内に部分的に配置された例示的なインサートの概略斜視図である。
図2D図2Cのインサート及び容器の概略斜視断面図である。
図3A】本開示による、容器内に部分的に配置された例示的なインサートであって、ある体積の流体を保持するインサートの概略斜視図である。
図3B】本開示による、容器内に部分的に配置された例示的なインサートの概略斜視図である。
図4】本開示による、星形を有する複数の開口部を有する例示的な篩の概略上面図である。
図5】本開示による、2つの篩を有する例示的なインサートの概略斜視分解図である。
図6】光重合性組成物から回収された汚染物質の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
光重合性組成物から汚染物質を除去して、光重合性組成物の再使用を可能にすることができることが発見された。少なくとも特定の実施形態では、洗浄された光重合性組成物は、ある体積の未使用(例えば、初期)光重合性組成物と同じバッチで使用されるのに十分な清浄度を有する。粘性及び/又はペースト状の粘稠度を有する組成物であっても、本開示の少なくとも特定の実施形態による方法又はシステムを使用して、それらから汚染物質を首尾よく除去することができる。
【0010】
例えば、三次元物体(例えば、印刷された部品)の特定の幾何形状に応じて、印刷幾何形状における意図しないアンダーカットは、印刷部品の残りへの十分な接着なしに硬化され、残りの光重合性組成物を汚染する樹脂の小さな部品をもたらす可能性があり、この小さな部品は1つ以上のボクセルのサイズを有する。別の問題は、繰り返し使用した後、液槽の1つ以上の表面が印刷中に接着力の増加を示し、支持幾何形状の部品又は部分全体が壊れて液槽を汚染する可能性があることであり得る。更なる汚染は、例えば、周囲空気からの埃であり得るが、このような汚染は、例えば、クリーンルーム条件を適用するための層流システムを使用することによって最小限にされ得る。しかしながら、1つの液槽内で複数の部品を印刷する間、小さな壊れた部品、埃などの汚染物質を完全に防止することは実際的ではない。
【0011】
用語解説
本明細書で使用されるとき、「化学線」は、UV線、電子ビーム線、可視光線、赤外線、ガンマ線、及びこれらの任意の組み合わせを包含する。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「モノマー」は、それ自体又は他のモノマーと組み合わせてオリゴマー又はポリマーを形成し得る単一の1単位分子であり、「オリゴマー」は、2~9個の繰り返し単位を有する成分であり、及び「ポリマー」は、10個以上の繰り返し単位を有する成分である。
【0013】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族基」は、飽和又は不飽和の直鎖、分枝鎖、又は環状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を包含するものとして使用される。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、1~32個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の、環状又は非環状の、飽和一価炭化水素、例えば、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、ペンチルなどを意味する。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「アルキレン」は、1~12個の炭素原子を有する直鎖飽和二価の炭化水素、又は2~12個の炭素原子を有する分枝鎖飽和二価の炭化水素基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレンなどを意味する。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する、一価の直鎖又は分枝鎖不飽和脂肪族基、例えば、ビニルを指す。特に断らない限り、アルケニル基は、典型的には、2~20個の炭素原子を含有する。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「アルケンジイル」は、直鎖、分枝鎖、又は環状の二価不飽和脂肪族基、例えば、-CH=CH-、-CH=C(CH)CH-、-CH=CHCH-などを指す。特に断らない限り、アルケンジイル基は、典型的には、2~20個の炭素原子を含有する。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール」とは、芳香族炭素環式化合物の基である一価の基を指す。アリール基は、少なくとも1つの芳香族炭素環を有し、その芳香族炭素環に結合又は縮合している1~5個の任意選択の環を有し得る。追加の環は、芳香族、脂肪族、又はこれらの組合せであり得る。アリール基は通常、5~20個の炭素原子を有する。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「置換アリール」は、少なくとも1つのアルキル基で置換された、少なくとも1つのアルコキシ基で置換された、又は少なくとも1つのアルキル基及び少なくとも1つのアルコキシ基で置換された、アリール基を指す。置換アリール基は、6~40個の炭素原子を含有する。置換アリール基は、多くの場合、5~20個の炭素原子を有するアリール基並びにそれぞれ1~20個の炭素原子を有するアルキル基及び/又はアルコキシ基を含有する。
【0020】
本明細書で使用されるとき、用語「アラルキル」は、少なくとも1つのアリール基で置換されたアルキル基を指す。アラルキル基は、6~40個の炭素原子を含有する。アラルキル基は、多くの場合、1~20個の炭素原子を有するアルキル基及び5~20個の炭素原子を有するアリール基を含有する。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「エチレン性不飽和」は、2つの炭素原子間の二重結合を指し、ビニルエーテル(HC=CHO)、ビニルエステル(HC=CHOCO)、スチレン(例えば、ビニルベンゼン)、及びアルケニル(HC=CH(CH[式中、nは典型的には1~30又は1~20又は1~10の範囲である])を含むビニル(HC=CH-)などの官能基を含む。エチレン性不飽和基はまた、(メタ)アクリルアミド(HC=CHCONH-及びHC=CH(CH)CONH-)、並びに(メタ)アクリレート(CH=CHCOO-及びCH=C(CH)COO-)などの(メタ)アクリルも含む。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル(acrylic)」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル(acryl)」は、アクリル及びメタクリル基を指す省略表現である。「アクリル」は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドなどのアクリル酸の誘導体を指す。「(メタ)アクリル」とは、少なくとも1つのアクリル基若しくはメタクリル基を有するモノマー又はオリゴマーであって、2つ以上の基を含有する場合、脂肪族セグメントによって結合される、モノマー又はオリゴマーを意味する。本明細書で使用されるとき、「(メタ)アクリレート官能性化合物」は、とりわけ(メタ)アクリレート部分を含む化合物である。用語「(メタ)アクリロイル」は、式CH=CHR-(CO)-[式中、Rは水素又はメチルであり、基-(CO)-はカルボニル基を指す]の基を指す。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「直径」は、形状の中心と交差する形状(二次元又は三次元)を横切る最長直線長さを指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「流体」は、エマルション、分散液、懸濁液、溶液、及び連続液相を有する純粋な成分を指し、固体形態の粉末及び微粒子を除外する。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「液体」は、固体でも気体でもなく、一定の体積及び不定形を有する物質の状態を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「硬化」及び「重合」は各々、例えば、熱、光、放射線、電子ビーム、マイクロ波、化学反応、又はこれらの組み合わせの何らかの機構による組成物の硬質化又は部分的硬質化を意味する。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「硬化した」は、1つ以上の硬化機構によって硬質化又は部分的硬質化された(例えば、重合した又は架橋した)材料又は組成物を指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「光重合性」は、化学線を使用して硬化又は部分的に硬化することができる少なくとも1つの材料を含有する組成物を指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「初期光重合性組成物」は、その体積のいずれも化学線に曝露されていない光重合性組成物を指し、これは、配合物の各成分の全量を含有し、硬化中に形成されたいかなる汚染物質も含まない。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「分離された光重合性組成物」は、化学線を使用して硬化又は部分的に硬化することができる少なくとも1つの材料を含有し、配合物の少なくとも1つの成分の全量未満を含有する組成物を指す。分離された光重合性組成物は、その体積の一部が化学線に曝露されている。分離された光重合性組成物はまた、光重合性組成物から少なくとも1つの汚染物質を分離するためのプロセスに供されている。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「汚染物質」は、組成物配合物中に意図的に含まれなかった光重合性組成物中に配置された材料を指す。汚染物質は、オリゴマー、ポリマー、ダスト粒子、埃、光重合性組成物から形成された複数の硬化ボクセル、又は光重合性組成物の重合生成物で形成された部品のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0032】
用語「質量慣性力」は、本明細書において言及するとき、単位質量当たりの力として規定することができ、したがって、単位m/sで規定することができる。更に、質量慣性力は、重力加速度の要素であるG力によって表すことができる。本明細書の目的では、重力加速度は9.81m/sである。それゆえ、例えば、9.81m/sの質量慣性力は1Gと表すことができる。
【0033】
また、本明細書では、全ての数は「約」という用語で修飾されるものと想定され、好ましくは「厳密に」という用語で修飾されると想定される。本明細書で使用するとき、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0034】
特性又は属性に対する修飾語として本明細書で使用するとき、用語「概して」は、特に定めのない限り、その特性又は属性が、当業者によって容易に認識されるものであるが、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではないこと(例えば、定量化可能な特性に関しては、±20%の範囲内)を意味する。用語「実質的に」は、特に定めのない限り、高い近似度(例えば、定量化可能な特性に関しては、±10%の範囲内)を意味するが、この場合もまた、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではない。同一の、等しい、均一な、一定の、厳密に、などの用語は、絶対的な精度又は完全な一致を必要とするものではなく、特定の状況に適用可能な、通常の許容誤差又は測定誤差の範囲内にあるものと理解される。
【0035】
方法
第1の態様では、方法が提供される。方法は、
a)各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートを得るステップと、
b)ある体積の流体であって、光重合性組成物及び汚染物質を含む流体を、インサート内に配置するステップと、
c)ある体積の流体に遠心力をかけて、汚染物質をインサート内に保持し、少なくとも一部の光重合性組成物をインサートの篩に通過させることによって、汚染物質を光重合性組成物の少なくとも一部から分離して、分離された光重合性組成物を提供するステップと、を含む。
【0036】
図1を参照すると、第1の態様の方法のフローチャートが提供されている。より具体的には、本方法は、a)各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートを得るステップ110と、b)ある体積の流体であって、光重合性組成物及び汚染物質を含む流体を、インサート内に配置するステップ120と、を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、インサートは、流体をインサート内に堆積させる前に遠心分離器内に配置される。いくつかの実施形態では、インサートは、流体をインサート内に堆積させた後に遠心分離器内に配置される。インサートの構成は、インサートが篩を含み、ある体積の流体を保持するための開口領域を画定する限り、様々であってよい。図3Aを参照すると、例示的なインサート320(容器330及びスタンド350の各々と結合されている)が、実験室スケール300上に配置されて示されている。流体370が加えられた後にインサート320を秤量することは、流体を含む重り又は別のインサートがインサート320と同時に遠心力を受けるときに、遠心力の適用中に質量の好適な均衡状態を達成するのを助ける。例えば、図2Bは、流体270を含み、遠心分離器290内に設置されたカップ260内に配置されたインサート220を示す。不織布の形態を有する篩240は、部分的にインサート220内に位置し、篩240の縁部はインサート220の外側にある。インサート220の反対側の位置において、別のカップ260は、遠心分離器290内に釣り合い量の質量を提供する物体280を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ある体積の流体に遠心力をかける前に、ある体積の流体を、遠心分離器の、(例えば、第1の)インサートと反対の位置にある第2のインサート内に配置して、遠心分離器の均衡をとるステップを更に含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、遠心分離器は、不均衡を測定し、不均衡が(例えば、所定の)閾値量を上回る場合、遠心力を終了させるセンサを備える。遠心力の適用中に遠心分離器の内容物の均衡状態を監視することにより、篩開口部の少なくともいくつかの目詰まりに起因して、2つ以上のサンプルが、篩を通る光重合性組成物の異なる流速を示していることを高感度で検出できる。このような不均衡を測定すると、許容できない程度の目詰まりを有する任意の篩を、遠心力を更に適用する前に洗浄又は交換することができる。代わりに、超音波又は光学センサ(複数可)を用いて1つ以上のインサート内の光重合性組成物の充填レベルを測定するなど、他の測定方法を使用して篩目詰まりを検出することができる。
【0039】
本方法は更に、c)ある体積の流体に遠心力をかけて、汚染物質をインサート内に保持し、少なくとも一部の光重合性組成物をインサートの篩に通過させることによって、汚染物質を光重合性組成物の少なくとも一部から分離して、分離された光重合性組成物を提供するステップ130を含む。使用される遠心力は、1G超、1.5G以上、2G、2.5G、3G、3.5G、4G、5G、6G、7G、8G、9G、10G、11G、12G、13G、14G、15G、16G、17G、18G、19G、又は20G以上;及び100G以下、90G、85G、80G、75G、70G、65G、60G、55G、50G、45G、又は40G以下であってもよい。当業者は、特定の流体の粘度に基づいて好適なパラメータを決定することができ、より粘性の高い流体及び/又はペーストの粘稠度を有する流体は、典型的には、流体を篩開口部を通して付勢するためにより高い遠心力を必要とする。対照的に、粘度が非常に低い材料は、最小の遠心力で篩を通過することができ、高い遠心力を使用すると、特に部品が壊れやすい材料で形成されている場合、遠心分離中に破片部品が小さな破片に壊れる危険性がある。
【0040】
有利には、遠心力は、典型的には、周囲気圧で流体に適用される。これは、光重合性組成物から汚染物質を効果的に分離するために、フィルタを通して光重合性組成物を動かすために負圧(例えば、真空)又は正圧のいずれかの力の使用を必要とする、光重合性組成物から汚染物質を分離する方法とは対照的である。正圧又は負圧の使用は、方法又はシステムに望ましくない追加の複雑さを組み込むことになる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法が有用である光重合性組成物は、ずり減粘性挙動を示す。かかる挙動は、遠心力が光重合性組成物に剪断力を与え、光重合性組成物が薄くなり、その粘度を低下させ、光重合性組成物が篩を通過して容器に入るのを促すので、光重合性組成物から汚染物質をうまく分離するのを助ける。本明細書に開示される方法は、ニュートン粘性挙動を示す流体にも好適である。更に、特定の方法は、三次元物体から未硬化光重合性組成物を除去するために遠心分離器を既に使用しており、したがって、汚染物質を、同じ遠心分離器を使用して流体から有利に除去することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、分離された光重合性組成物は、微粒子充填剤を更に含む。流体中に存在する任意の微粒子充填剤は、篩の開口部を通過するのに十分に小さく、したがって、200マイクロメートル未満、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、8、6、4、2、又は1マイクロメートル未満の有効直径を有することが理解されるであろう。一定の実施形態では、微粒子充填剤はナノ粒子を含み、微粒子充填剤の少なくとも1つの寸法は、1マイクロメートル未満、例えば、950ナノメートル以下、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、又は300ナノメートル以下;及び1ナノメートル以上、2、5、7、10、12、15、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、又は275ナノメートル以上である。いくつかの好適な微粒子充填剤としては、例えば、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオビウム、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(すなわち、端値を含む57~71の範囲の原子番号を有する元素)、セリウム、及びこれらの組み合わせの酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。非凝集二酸化ケイ素(シリカ)ナノ粒子の例は、Nalco Chemical Co.(Naperville,IL)から製品名NALCO COLLOIDAL SILICAS、例えば、NALCO製品#1040、1042、1050、1060、2327、及び2329で市販されているもの、並びに米国特許第6,899,948号(Zhangら)及び同第6,572,693号(Wuら)に記載されているシリカナノ粒子である。
【0042】
いくつかの実施形態では、インサートの少なくとも一部は、遠心分離器に嵌合するように構成された容器内に配置され、インサートの篩を通過する光重合性組成物の一部が、容器内に収集される。図2C及び図2Dを参照すると、容器230内に部分的に配置された例示的なインサート220の概略図が提供される。このインサート220は、使用時に容器230の体積の大部分の上に位置付けられて、遠心力及び重力の助けを借りて光重合性組成物をインサート220から下の容器230に通すのを助ける。篩240はインサート220内に位置する。篩240は、インサート220と一体的に形成されてもよく、又はインサート220の内側に配置されるように構成された別個のアイテムであってもよい。篩240は、典型的には、容器230に隣接して、又は容器230の中に位置付けられる。
【0043】
図2C及び図2Dに示す実施形態では、容器230は、本体254を支持する少なくとも2つの足部252を備えるスタンド250によって部分的に支持される。スタンド250の本体254は、インサート220を少なくとも部分的に取り囲むように構成される。一定の実施形態では、スタンド250は、インサート220を支持するように構成されたレッジ256を更に備える。集合的に、インサート220、容器230、篩240、及びスタンド250は、カップ260内に有利に(例えば、取り外し可能に)配置され得る。好ましい実施形態では、スタンド250は、遠心力を受ける間、カップ260内のインサート220及び容器230の動きを最小限に抑えるように構成される。同様に、カップ260は、インサート220内のある体積の流体に遠心力をかける特定の装置(例えば、遠心分離器)に嵌合するようなサイズにすることができる。
【0044】
スタンドを設けることは任意選択である。スタンドのない実施形態では、例えば、インサートは、遠心力を与える装置(例えば、遠心分離器)に嵌合するカップの内面に相補的なサイズ及び形状を有してもよい。
【0045】
図3Bは、容器内に部分的に配置された別の例示的なインサートの概略斜視図である。本実施形態では、インサート320の外側寸法は、カップ360に嵌合するようなサイズであり、カップ360はまた、インサート320の篩340を通過する分離された光重合性組成物を受け入れる容器としても機能する。図3Bに示す実施形態は、遠心力を受ける準備ができた状態で組み立てられて示されており、例えば、スタンド350によって支持されたインサート320を含み、全てが容器/カップ360内に配置されている。インサート320の上部は、容器/カップ360の頂部の上方に位置する。本実施形態のスタンド350は、インサート320の外部の少なくともいくらかを取り囲み、容器/カップ360内のインサート320に安定性を提供する一体壁355を含む。スタンド350は、スタンド350を容器/カップ360内に支持し、分離された光重合性組成物が篩340を通過して容器/カップ360内に入る際に分離された光重合性組成物と接触する複数の脚部352を含む。容器内に部分的に配置されたインサートを提供する他の構成が使用されてもよい。
【0046】
図4を参照すると、各々が星形を有する複数の開口部442を有する例示的な篩440の概略上面図が提供される。篩の開口部の形状は特に限定されず、いくつかの実施形態では、円形、楕円形、四辺形、三角形、又は星形のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、好適な篩は、四辺形(例えば、正方形又は長方形)の開口部を含む織布材料である。上述のように、本開示による篩は、各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する。いくつかの実施形態では、開口部は各々、10マイクロメートル以上、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、又は75マイクロメートル以上;及び200マイクロメートル以下、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、又は80マイクロメートル以下の直径を有する。開口部サイズは、汚染物質からの光重合性組成物の分離を完了する前に開口部が詰まることなく微粒子充填剤が通過することを可能にする最小開口部に基づいて選択することができる。
【0047】
図4は、1つの星形開口部442の直径がどこで測定されるかを示す線443を示す。この場合、星形開口部442は、等しいサイズの点を有し、したがって、直径443は、点のうちのいずれか1つから始まり、星形の中心を通り、星形開口部442の対向する縁部までの直線の長さを測定することによって決定され得る。1つの点444及び中心445の位置は、(明確にするために)別の星形開口部442上に示されている。星形の点が全て同じでない場合、直径443は、星形開口部442の中心から最も離れて位置する点から測定を開始することによって決定される。
【0048】
図5を参照すると、容器530内に部分的に配置された別の例示的なインサート520の概略斜視分解図が提供される。本実施形態では、インサート520はスタンド550と一体的に形成され、スタンドはカップ560内に嵌合するようなサイズである。例えば、インサートの壁522の下部は、容器530の壁532の上部内に入れ子になるように構成されてもよい。容器内に部分的に配置されたインサートを提供する他の構成が使用されてもよい。インサート520の上部は、構成要素が組み立てられたときにカップ560の頂部の上方に位置する。本実施形態のスタンド550は、カップ560内でインサート520を支持するための複数(例えば、4つ)の脚部552を含む。本実施形態では、篩540は第1の篩であり、インサート520は、第1の篩540に隣接して配置された第2の篩546を更に含み、第2の篩546は、各々が第1の篩540の複数の開口部よりも小さい直径を有する複数の開口部を画定する。より大きな開口部を有する第1の篩の使用は、より大きな汚染物質を保持することができ(第2の篩だけが使用された場合よりも目詰まりが少ない)、一方、第2の篩は、第1の篩よりも小さい汚染物質を保持することができる。図5に示す実施形態は、取り外し可能な篩安定具529を更に含み、この篩安定具は、インサート520の上部の所定の位置にあるとき、特に篩(例えば、546)が不織布を含むとき、1つ以上の篩540、546を所定の位置に保持するのに役立つ。本実施形態では、取り外し可能な篩安定具529は円筒形状を有するが、他の形状も有用であり得る。集合的に、取り外し可能な篩安定具529、一体インサート520及びスタンド550、篩540及び546、容器530は、カップ560内に有利に(例えば、取り外し可能に)配置され得る。
【0049】
光重合性組成物中に存在し得る典型的な汚染物質材料の例としては、例えば、オリゴマー、ポリマー、ダスト粒子、埃、光重合性組成物の重合生成物で形成された部品、又は光重合性組成物から形成された複数の硬化ボクセル(例えば、非常に小さい部品)のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。図6は、光重合性組成物の重合生成物で形成された部品602a、602b、埃604a、604b、及び複数の硬化ボクセル606を含む、光重合性組成物から回収された汚染物質の写真である。部品602aは不規則な形状を有し、より大きな部品から破断された可能性が高い。部品602bは、矩形角柱形を有する。本明細書で使用されるとき、用語「埃」は、個々に、1つ以上の他の微細繊維と共に、又は多くの微細繊維の蓄積物として存在し得る微細繊維を包含する。埃の中又は上にダストが存在することもある。図6では、部品602b上に配置された2本の糸埃604aと、埃604bの別個のクラスタとが見える。複数の硬化ボクセル606は、約200マイクロメートルの長さを有する。
【0050】
任意選択的に、本開示による方法は、d)分離された光重合性組成物を均質化に供するステップを更に含む。均質化は、存在する任意の微粒子充填剤が、分離された光重合性組成物全体にわたって概して均一に懸濁されることを確実にするために有用であり得る。均質化は、混練機、ハンドミキサ、スピードミキサ、ソニケーター、ミルなどを使用して行うことができる。選択された実施形態では、混練機又はミキサが均質化のために好ましい。均質化は、真空下で行われてもよい。有利には、混練機を使用する場合、均質化中に光重合性組成物から溶解ガス及び気泡を除去するために真空を適用することが可能である。いくつかの実施形態では、分離された光重合性組成物を受け入れるための容器は、均質化装置に適合するものを選択することができ、したがって、分離された光重合性組成物を均質化のために異なる容器に移す必要はない。流体に適用される遠心力はまた、光重合性組成物が汚染物質から分離されるときに光重合性組成物からいくらかの気泡を除去するのに役立つことに留意されたい。同様に、いくつかの実施形態では、本開示による方法は、e)分離された光重合性組成物を追加の遠心分離に供して、光重合性組成物から溶解ガス又は気泡の少なくとも一部を除去するステップを更に含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、ステップa)の前に、f)化学線を使用して初期光重合性組成物を選択的に硬化させて、三次元物体、並びに光重合性組成物及び汚染物質を含む流体を提供するステップを更に含む。上述のように、初期光重合性組成物は、まだ化学線に供されていない。三次元物体を形成するための選択的硬化プロセス(例えば、積層造形)もまた、流体中に1つ以上の汚染物質を生成する。選択的に硬化される好適な光重合性組成物は、特に限定されない。本開示による方法において有用であり得る1つの組成物は、共有の国際公開第2018/231583号(Hermannら)に記載されている通りである。例えば、そのような光重合性組成物は、
樹脂マトリックスであって、
ウレタン部分を含まない重合性(メタ)アクリレート(複数可)、及び
重合性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)を含み、
ウレタン部分を含まない重合性(メタ)アクリレート(複数可)が、重合性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)よりも過剰に使用されている、樹脂マトリックスと、
充填剤マトリックスであって、
ナノクラスター(複数可)、及び
任意選択的に、好ましくは8重量%未満の量のヒュームドシリカを含み、
好ましくは5~45重量%の量で存在する、充填剤マトリックスと、
開始剤系であって、
光開始剤(複数可)、及び
有機染料(複数可)を含む、開始剤系と、を含んでもよく、
硬化性組成物は、5重量%を超える量の軟化剤を含まず、
ここでの重量%は組成物全体の重量に対する重量%であり、
硬化性組成物は、23℃及び1s-1の剪断速度において150Pas未満の粘度を有する。
【0052】
このような光重合性(例えば、硬化性)組成物に関する更なる詳細は、国際公開第2018/231583号(Hermannら)に記載されている通りである。
【0053】
(初期又は分離された)光重合性組成物の選択的硬化は、光造形法(例えば、液槽重合)を使用するなど、積層造形を介して有利に行うことができる。好適な積層造形方法は、第2の態様(すなわち、システム)に関して以下でより詳細に論じられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、g)三次元物体を移動させ、それによって、三次元物体上に配置された未硬化光重合性組成物に質量慣性力を生成し、それによって、三次元物体上に未硬化光重合性組成物のコーティング層を形成し、質量慣性力は、遠心分離器、シェーカ、又は1つ以上の軸に沿ってスピンするミキサを使用して発生させる、ステップを更に含む。いくつかの実施形態では、三次元物体上の未硬化光重合性組成物のコーティング層(質量慣性力の適用後)は、20マイクロメートル以上、25、30、35、40、45、又は50マイクロメートル以上;及び200マイクロメートル以下の厚さを有する。他の実施形態では、可能な限り多くの未硬化光重合性組成物が、質量慣性力を使用して三次元物体の少なくとも1つの表面から除去される(例えば、それによって、三次元物体から未硬化光重合性組成物をきれいにする)。質量慣性力を発生させる好適な方法は、例えば、共有の国際公開第2019/102304号(Kirchnerら)及び国際公開第2020/157598号(Chakrabortyら)に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、質量慣性力は、遠心分離器、シェーカ、又は1つ以上の軸に沿ってスピンするミキサを使用して発生させてもよい。いくつかの実施形態では、物体の動きは、物体の回転又はスピンである。したがって、質量慣性力は遠心力であり得る。2つ以上の軸に沿ってスピンする1つの好適なミキサは、Flacktek(Landrum,SC)から入手可能なDAC400FVZなどのデュアル非対称遠心ミキサである。デュアル非対称遠心ミキサは、スピン中に物体の向きを自動的に変える同時の二軸スピンを提供し、未硬化の組成物を三次元物体の凹状の特徴部から短時間(例えば、20秒、15秒、又は10秒以下)で引き出すのに役立つ。
【0055】
選択された実施形態では、質量慣性力は、本開示による方法のステップc)において遠心力を受けるのと同じインサート内の三次元物体に有利に適用され得る。更に任意選択的に、同じ遠心力を使用して、汚染物質を光重合性組成物から分離すること、及び未硬化光重合性組成物を三次元物体から除去することの両方を、例えば、一般に同時に行うことができる。いくつかの実施形態では、未硬化光重合性組成物は、例えば、未硬化光重合性組成物のバルクから三次元物体を除去する際に、滴り落ちる未硬化光重合性組成物を収集する液槽を備えた自動プラットフォームチェンジャー内に、及び質量慣性力の適用(例えば、スピンクリーニング)中に容器内に収集することができる。例えば、溶媒(例えば、水、アルコール、及び/又はブレンド)、圧縮ガス、又はその両方のいずれかを使用して、三次元物体の1つ以上の外面又は内面から未硬化光重合性組成物を除去するために、追加のクリーニングもまた行ってよい。
【0056】
三次元物体の製造後の流体の収集がクリーンルーム雰囲気内で行われる場合、収集源の更なる汚染を有利に回避することができる。更に、未硬化光重合性組成物のバルク(例えば、積層造形液槽内に残っている)が部品断片を含有する場合、任意選択的に、液槽の残りの内容物全体に遠心力をかけて、少なくとも部品断片を光重合性組成物から分離して、光重合性組成物から三次元物体を連続して製造できるようにしてもよい。光重合性組成物のバルク再利用が有用であるいくつかのシナリオとしては、例えば、印刷ジョブが失敗し、壊れた部品が光重合性組成物中に存在する場合、又は多くの部品の(例えば、連続的な)印刷の後が挙げられる。
【0057】
形成された三次元物体の後処理は、例えば、後硬化、クリーニング、又はその両方を含めて、任意選択的に行われる。いくつかの実施形態では、三次元物体は、未反応の光重合性成分を含み、本方法は、h)三次元物体を化学線又は熱のうちの少なくとも1つに供して、未反応の光重合性成分を硬化させるステップを更に含む。化学線への曝露は、約1分~60分超の範囲の時間にわたる、任意の好都合な放射線源、概して紫外線、可視放射線及び/又は電子ビーム放射線により行われ得る。加熱は概して、不活性雰囲気下で、約10~60分超の範囲の時間、約50~250℃の範囲の温度で行われる。紫外線と熱エネルギーとを組み合わせる、いわゆる後硬化オーブンは、後硬化プロセスでの使用に特に好適である。一般的に、後硬化は、後硬化されていない同じ三次元物体と比較して、三次元物体の機械的特性及び安定性を改善する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、i)分離された光重合性組成物を、均質性又は光開始剤含有量のうちの少なくとも1つについて分析するステップを更に含む。いくつかの実施形態では、均質性は、分離された光重合性組成物の複数のサンプルの密度を測定すること、色を測定すること、又は充填剤含有量を測定することのうちの少なくとも1つによって分析される。いくつかの実施形態では、均質性は、分離された光重合性組成物の複数のサンプルから三次元物体を調製し、続いて機械的特性(例えば、引張強度)を試験し、物理的寸法を測定することによって分析される。典型的には、機械的特性標準試験方法に従う形状(例えば、ドッグボーン)を有する試験バーは、分離された光重合性組成物のサンプルを積層造形することによって、又は分離された光重合性組成物のサンプルを鋳型を使用すること及び鋳造することによって、のいずれかで形成される。機械的特性の試験は、光開始剤濃度が初期光重合性組成物から減少したかどうか、又は均質性の欠如を示すことができる。物体の物理的寸法が設計されたものよりも小さい又は大きい場合、分離された光重合性組成物は、それぞれ硬化不足又は硬化過剰である可能性があり、均質性要件を満たさない。典型的には、積層造形に好適であるために、光重合性組成物は、少なくとも印刷ジョブを完了するのに必要な時間スケールで、その成分の著しい分離に対して安定でなければならない。任意選択的に、光重合性組成物を溶媒で抽出して、その微粒子充填剤含有量を測定し、好ましくは光重合性組成物のいくつかのセクションを試験して、微粒子充填剤含有量が全体を通してほぼ同じであるかどうかを決定し、光重合性組成物の均質性を示すことができる。光開始剤含有量を分析するための好適な方法としては、赤外(IR)分光法及び高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)の各々が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、j)分離された光重合性組成物の少なくとも一部を積層造形装置内に配置するステップと、k)化学線を使用して積層造形装置内で分離された光重合性組成物を選択的に硬化させて三次元物体を形成するステップと、を更に含む。更に、いくつかの実施形態では、本開示による方法は、ステップj)又はステップk)の前に、l)分離された光重合性組成物の少なくとも一部をある体積の初期光重合性組成物とブレンドするステップを更に含む。少なくとも特定の実施形態では、分離された光重合性組成物は、未使用(例えば、初期)光重合性組成物の代わりに単独で、又は未使用(例えば、初期)光重合性組成物と同じバッチで使用されるのに十分な清浄度を有する。有利には、そのようなプロセスは、1つのバッチ内でのリサイクルを可能にし、実際の材料バッチ混合なしにリサイクルされた光重合性組成物を再使用することによって、医療製品プロセスにおいて使用され得る。また、実用性の問題として、光重合性組成物は、いくつかの単純な形状の製造部品と直接接触するだけであり得、光重合性組成物を部品及び任意の汚染物質から分離することによって容易にリサイクル可能にする。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、m)篩の複数の開口部が汚染物質によって目詰まりしたら、篩をきれいにすること、又は篩を交換することのうちの少なくとも1つのステップを更に含む。少なくとも1回使用した後、篩は、1つ以上の汚染物質によって目詰まりする傾向があり、洗浄又は清浄な篩との交換を必要とする。更に、異なる開口部サイズを有する篩に変更することが有用であり得る。選択された実施形態では、篩がナイロンから構成される場合、イソプロパノールが篩のための好適なクリーニング溶媒である。任意選択的に、使用後に廃棄される使い捨て篩を使用してもよい。
【0061】
システム
第2の態様では、システムが提供される。システムは、
a)積層造形装置と、
b)遠心分離器と、
c)遠心分離器に挿入されるように構成されたインサートであって、各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートと、を備える。
【0062】
本明細書に記載の三次元物体を印刷する方法は、1層ずつ重ねる方式により、本明細書に記載の光重合性組成物の複数の層から物品を形成することを含むことができる。更に、構築される材料組成物の層を、コンピュータ可読形式の三次元物体の画像に従って堆積させることができる。いくつか又は全ての実施形態では、光重合性組成物は、予め選択されたコンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)パラメータ(例えば、データファイル)に従って堆積される。
【0063】
更に、本明細書に記載の三次元物体を製造する方法は、いわゆる「光造形法/液槽重合」3Dプリンティング方法を含むことができることが理解される。三次元製造のための他の技法が知られており、本明細書に記載の用途で使用するために好適に適応されてもよい。より全般的には、三次元製作技法が次々と利用可能になってきている。そのような技法は全て、指定された物品特性にかなう製作粘度及び分解能を提供する限り、本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように改変することができる。製作は、本明細書に記載の製作技術のいずれかを、単独で又は様々な組み合わせのいずれかで使用し、三次元のオブジェクトを表すデータを使用して行われてもよく、このデータは必要に応じて、特定のプリンティング技術又は他の製作技術に合わせてフォーマットし直されるか、又は他の方法で適応されてもよい。
【0064】
本明細書に記載の光重合性組成物から液槽重合(例えば、光造形法)を使用して三次元物体を形成することは、完全に可能である。例えば、いくつかの事例では、三次元物体を印刷する方法は、本明細書に記載の光重合性組成物を流体状態で容器内に保持し、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを印加して光重合性組成物の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、それによって、三次元物体の断面を画定する硬質化された層を形成することを含む。更に、本明細書に記載の方法は、光重合性組成物の硬質化された層を昇降させて、未硬質化の光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層を容器内の流体の表面に提供し、続いて、容器内の光重合性組成物に再び選択的にエネルギーを印加して、光重合性組成物の新たな、つまり第2の流体層の少なくとも一部分を凝固させ、三次元物体の第2の断面を画定する第2の凝固された層を形成することを更に含むことができる。更に、光重合性組成物を凝固させるためのエネルギーの印加によって、三次元物体の第1及び第2の断面をz方向(つまり、上記の昇降の方向に相当する構築方向)に互いに結合又は接着することができる。更に、容器内の光重合性組成物に選択的にエネルギーを印加することは、光重合性組成物を硬化させるのに十分なエネルギーを有する、紫外線、可視放射線又は電子ビーム放射線などの化学線を適用することを含むことができる。方法はまた、昇降機のプラットフォームを昇降させることによって提供される光重合性組成物の流体の新たな層を平坦化することを含むことができる。このような平坦化は、いくつかの事例では、ワイパー又はローラ又はリコータを利用することにより行うことができる。平坦化では、分注された材料を平らにして余分の材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一かつ滑らかに露出した又は平らな上向きの面を作り出すことによって、1つ以上の層の厚さを、材料を硬化させる前に補正する。
【0065】
三次元物体を提供するために前述のプロセスを選択された回数だけ繰り返すことができることについて、更に理解されたい。例えば、いくつかの事例では、このプロセスを「n」回繰り返すことができる。更に、光重合性組成物の層にエネルギーを選択的に印加するステップなどの、本明細書に記載の方法の1つ以上のステップをコンピュータ可読形式の三次元物体の画像に従って行うことができると理解される。好適な光造形プリンタとしては、3D Systems(Rock Hill,SC)から入手可能なViper Pro SLA及び、Asiga USA(Anaheim Hills,CA)から入手可能なAsiga PICO PLUS39が挙げられる。
【0066】
図2A図2Dを参照すると、a)積層造形装置(図2A)と、b)遠心分離器(図2B)と、c)遠心分離器に挿入されるように構成されたインサートであって、各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサート(図2C図2D)と、を含む、例示的なシステムが集合的に示されている。図2B図2C、及び図2Dは、上で詳細に説明されている。システムの積層造形装置、遠心分離器、及びインサートは、例えば、第1の態様に関して上述したように、組み合わせて使用されてもよい。
【0067】
図2Aは、例えば、本明細書に記載の光重合性組成物及び方法と共にシステム内で使用されてもよい光造形装置(stereolithography apparatus、「SLA」)を示す。一般的に、装置200は、レーザ202、光学素子204、ステアリングミラー又はレンズ206、昇降機208、及びプラットフォーム210を、光重合性組成物219で満たされた液槽214内に含んでもよい。動作中、レーザ202は、液槽214の壁220(例えば、床)を通って光硬化性組成物に導かれ、光硬化性組成物219の断面を硬化させて、物品217を形成し、その後、昇降機208がプラットフォーム210をわずかに上昇させ、別の断面が硬化される。好適な光造形プリンタとしては、両方とも3D Systems(Rock Hill,SC)から入手可能なNextDent 5100及びFigure 4、並びにAsiga USA(Anaheim Hills,CA)から入手可能なAsiga PICO PLUS39が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態では、デジタル光処理(Digital Light Processing、「DLP」)による液槽重合は、硬化性ポリマー(例えば、光重合性組成物)の容器を使用する。DLPに基づくシステムでは、硬化性材料の上に二次元の断面を投影して、投影されたビームを横切る平面全体の所望のセクションを一度に硬化させる。光重合性組成物と共に使用するための1つの好適な装置は、Rapid Shape D40 II DLP 3D printer(Rapid Shape GmbH,Heimsheim,Germany)である。本明細書に記載の光重合性組成物と共に使用するように適合されてもよいこのような硬化性ポリマー系は全て、本明細書で使用されるとき「液槽重合」又は「光造形」の範囲内にあることが意図される。一定の実施形態では、例えば、米国特許第9,205,601号及び同第9,360,757号(両方ともDeSimoneら)に記載されているように、連続モードでの使用に適応した装置、例えば、Carbon 3D,Inc.(Redwood City,CA)から市販されている装置が用いられてもよい。
【0069】
インサート、容器、及び1つ以上の篩は全て、第1の態様に関して上で詳細に記載されている通りである。
【0070】
光重合性組成物から汚染物質を除去するための方法及びシステムを含む様々な実施形態が提供される。
【0071】
第1の実施形態では、本開示は、方法を提供する。本方法は、a)各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含むインサートを得るステップと、b)光重合性組成物及び汚染物質を含むある体積の流体をインサート内に配置するステップと、c)ある体積の流体に遠心力をかけて、汚染物質をインサート内に保持し、少なくとも一部の光重合性組成物をインサートの篩に通過させることによって、汚染物質を光重合性組成物の少なくとも一部から分離して、分離された光重合性組成物を提供するステップと、を含む。
【0072】
第2の実施形態では、本開示は、ある体積の流体をインサート内に配置する前又は後のいずれかに、インサートを遠心分離器内に配置するステップを更に含む、第1の実施形態に記載の方法を提供する。
【0073】
第3の実施形態では、本開示は、インサートの少なくとも一部が、遠心分離器に嵌合するように構成された容器内に配置され、インサートの篩を通過する光重合性組成物の一部が、容器内に収集される、第1の実施形態に記載の方法を提供する。
【0074】
第4の実施形態では、本開示は、ステップc)の前に、ある体積の流体を、遠心分離器の、ステップb)のインサートと反対の位置にある第2のインサート内に配置して、遠心分離器の均衡をとるステップを更に含む、第3の実施形態に記載の方法を提供する。
【0075】
第5の実施形態では、本開示は、汚染物質が、オリゴマー、ポリマー、ダスト粒子、埃、光重合性組成物から形成された複数の硬化ボクセル、又は光重合性組成物の重合生成物で形成された部品のうちの少なくとも1つを含む、第1~第3の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0076】
第6の実施形態では、本開示は、光重合性組成物が、ずり減粘性挙動を示す、第1~第5の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0077】
第7の実施形態では、本開示は、分離された光重合性組成物が、微粒子充填剤を更に含む、第1~第6の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0078】
第8の実施形態では、本開示は、d)分離された光重合性組成物を均質化に供するステップを更に含む、第7の実施形態に記載の方法を提供する。
【0079】
第9の実施形態では、本開示は、均質化が、減圧下にて実施される、第8の実施形態に記載の方法を提供する。
【0080】
第10の実施形態では、本開示は、分離された光重合性組成物を、混練機又はミキサを使用して均質化に供するステップを含む、第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0081】
第11の実施形態では、本開示は、ステップc)が、周囲気圧にて実施される、第1~第10の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0082】
第12の実施形態では、本開示は、篩の複数の開口部が、円形、楕円形、四辺形、三角形、又は星形を含む、第1~第11の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0083】
第13の実施形態では、本開示は、篩の複数の開口部が各々、20マイクロメートル以上、30マイクロメートル以上、40マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、又は60マイクロメートル以上の直径;及び100マイクロメートル以下、90マイクロメートル以下、又は80マイクロメートル以下の直径を有する、第1~第12の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0084】
第14の実施形態では、本開示は、篩が第1の篩であり、インサートが、第1の篩に隣接して配置された第2の篩を更に含み、第2の篩が、各々が第1の篩の複数の開口部よりも小さい直径を有する複数の開口部を画定している、第1~第13の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0085】
第15の実施形態では、本開示は、ステップc)において、流体が、1Gを超える遠心力を受ける、第1~第14の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0086】
第16の実施形態では、本開示は、e)分離された光重合性組成物を追加の遠心分離に供して、光重合性組成物から溶解ガス又は気泡の少なくとも一部を除去するステップを更に含む、第1~第15の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0087】
第17の実施形態では、本開示は、ステップa)の前に、f)化学線を使用して初期光重合性組成物を選択的に硬化させて、三次元物体、並びに光重合性組成物及び汚染物質を含む流体を提供するステップを更に含む、第1~第16の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0088】
第18の実施形態では、本開示は、g)三次元物体を移動させ、それによって、三次元物体上に配置された流体の一部に質量慣性力を生成するステップを更に含み、質量慣性力は、1つ以上の軸に沿って回転する遠心分離器、シェーカ、又はミキサを使用して生成される、第17の実施形態に記載の方法を提供する。
【0089】
第19の実施形態では、本開示は、質量慣性力を発生させることが、三次元物体上に未硬化光重合性組成物のコーティング層を形成し、コーティング層が、20マイクロメートル以上、30マイクロメートル以上、40マイクロメートル以上、又は50マイクロメートル以上の厚さを有する、第18の実施形態に記載の方法を提供する。
【0090】
第20の実施形態では、本開示は、三次元物体が、未反応の光重合性成分を含み、本方法が、h)三次元物体を化学線又は熱のうちの少なくとも1つに供して、未反応の光重合性成分を硬化させるステップを更に含む、第17~第19の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0091】
第21の実施形態では、本開示は、i)分離された光重合性組成物を、均質性又は光開始剤含有量のうちの少なくとも1つについて分析するステップを更に含む、第1~第20の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0092】
第22の実施形態では、本開示は、均質性が、分離された光重合性組成物から形成された三次元物体の密度を測定すること、色を測定すること、機械的特性及び/若しくは物理的寸法を測定すること、又は分離された光重合性組成物の複数のサンプルの充填剤含有量を測定することのうちの少なくとも1つによって分析される、第21の実施形態に記載の方法を提供する。
【0093】
第23の実施形態では、本開示は、光開始剤含有量が、赤外(IR)分光法又は高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)のうちの少なくとも1つによって分析される、第21の実施形態又は第22の実施形態に記載の方法を提供する。
【0094】
第24の実施形態では、本開示は、j)分離された光重合性組成物の少なくとも一部を積層造形装置内に配置するステップと、k)化学線を使用して積層造形装置内で分離された光重合性組成物を選択的に硬化させて三次元物体を形成するステップと、を更に含む、第1~第23の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0095】
第25の実施形態では、本開示は、ステップj)又はステップk)の前に、l)分離された光重合性組成物の少なくとも一部をある体積の初期光重合性組成物とブレンドするステップを更に含む、第24の実施形態に記載の方法を提供する。
【0096】
第26の実施形態では、本開示は、m)篩の複数の開口部が汚染物質によって目詰まりしたら、篩をきれいにすること、又は篩を交換することのうちの少なくとも1つのステップを更に含む、第1~第25の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供する。
【0097】
第27の実施形態では、本開示はシステムを提供する。システムは、a)積層造形装置と、b)遠心分離器と、c)遠心分離器に挿入されるように構成されたインサートと、を備える。インサートは、各々が10~200マイクロメートルの直径を有する複数の開口部を画定する篩を含む。
【0098】
第28の実施形態では、本開示は、遠心分離器に挿入されるように構成された容器を更に備え、インサートの少なくとも一部は、容器に嵌合するようにサイズ決めされる、第27の実施形態に記載のシステムを提供する。
【0099】
第29の実施形態では、本開示は、容器が、容器に嵌合するようにサイズ決めされたインサートの少なくとも一部の体積よりも大きい体積を有する、第28の実施形態に記載のシステムを提供する。
【0100】
第30の実施形態では、本開示は、篩の複数の開口部が、円形、楕円形、四辺形、三角形、又は星形を含む、第27~第29の実施形態のいずれか1つに記載のシステムを提供する。
【0101】
第31の実施形態では、本開示は、篩の複数の開口部が各々、20マイクロメートル以上、30マイクロメートル以上、40マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、又は60マイクロメートル以上の直径;及び100マイクロメートル以下、90マイクロメートル以下、又は80マイクロメートル以下の直径を有する、第27~第30の実施形態のいずれか1つに記載のシステムを提供する。
【0102】
第32の実施形態では、本開示は、篩が第1の篩であり、インサートが、第1の篩に隣接して配置された第2の篩を更に含み、第2の篩が、各々が第1の篩の複数の開口部よりも小さい直径を有する複数の開口部を画定している、第27~第31の実施形態のいずれか1つに記載のシステムを提供する。
【0103】
第33の実施形態では、本開示は、取り外し可能な篩安定具を更に備える、第27~第32の実施形態のいずれか1つに記載のシステムを提供する。
【0104】
第34の実施形態では、本開示は、遠心分離器が、不均衡を測定し、不均衡が閾値量を上回る場合、遠心力を終了させるセンサを備える、第27~第33の実施形態のいずれか1つに記載のシステムを提供する。
【0105】
以下の実施例は、本発明の更なる特徴及び実施形態を説明するために記載される。特に断らない限り、部は全て重量部である。
【実施例
【0106】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量基準である。
【0107】
【表1】
【0108】
試験方法
粘度
粘度は、プレート/プレートシステム(直径15mm)及び0.2mmのスリットを有するPhysica Rheometer MCR 301デバイスを使用して測定した。100s-1の一定の剪断速度を120秒間(s)適用した後、剪断速度を100s-1~0.001s-1まで減少させることによって(指数関数的に60回減少)、前剪断ステップを行った。最後に、粘度値(Pas)は、各剪断速度に対して(0.001s-1から開始して1.000s-1まで指数関数的に60回増加させて)、23℃で記録した。各剪断速度について、典型的には5秒の待機の使用後、データを収集した。上述の測定方法は、DIN 53018-1と本質的に対応している。
【0109】
インサートの製造
インサートは、コンピュータ支援設計(CAD)を介して設計され、アセンブリの部品(篩布を除く)は、溶融積層モデリング(FDM)プリンタ(Anycubic Predator)を使用してポリ乳酸(PLA)から3D印刷された。
【0110】
初期光重合性組成物の調製
実施例1
表2の配合物を有する組成物を調製した。これは、国際公開第2018/231583号(Herrmannら)の実施例6に対応する。成分の量は、重量パーセント(%)で与えられる:
【0111】
【表2】
【0112】
上記粘度試験方法による実施例1の初期光重合性組成物の粘度測定は、以下の結果であった。
【0113】
【表3】
【0114】
印刷
自動プラットフォームチェンジャーを備えたRapid Shape D90 Triple Fine SLA Printer(Rapid Shape,Heimsheim,Germany)を使用して、上記で特定した実施例1の初期光重合性組成物を使用し、支持構造体を有する1920個の歯冠の三次元印刷製造作業を行った。印刷パラメータは以下の通りであった:100W/mの光エネルギー、35マイクロメートルのピクセルサイズ、50マイクロメートルの層高さ、1秒の露光時間。
【0115】
流体の収集
Rapid Shape D90 Triple Fine SLA Printerの8つのプラットフォームチェンジャースロットの各々は、印刷後にビルドプレートから滴り落ちる未硬化光重合性組成物を収集するために、コート紙(3M ESPE Mixing Pad,3M Oral Care,Seefeld,Germany)のシートを有していた。印刷ジョブに続いて、プラットフォームチェンジャー内の滴り落ちた材料を、シリコーンスクレーパーを用いてコート紙から収集容器内に収集した。
【0116】
インサートアセンブリ
篩布片(63マイクロメートルメッシュサイズ、約120×120mm)を、ロール/バルクからはさみで切り取った。第1の篩布ホルダーをインサート本体内に配置した。次に、篩布片を篩布ホルダーの頂部に配置した。第2の篩布ホルダーを篩上に配置した。第2の篩布ホルダーの頂部に、インサート(例えば、取り外し可能な篩安定具)の上部を取り付けた。次に、分離された光重合性組成物(例えば、再生材料)を収集するための容器をインサート本体の底部側に取り付けた。次いで、100gの流体(例えば、汚染された物質)をインサートの上部に提供した。次いで、流体を含むアセンブリ全体を実験室スケールで秤量した。第2のインサートを上述したのと同じ方法で調製した。遠心分離中の不均衡を回避するために、2つのアセンブリが同じ重量を有するまで、流体を第2のインサートに添加した。次いで、アセンブリを遠心分離カップに挿入し、互いに正反対に遠心分離器内に配置した。
【0117】
遠心分離
Sigma 6-15 lab遠心分離器(Sigma Laborzentrifugen GmbH,Osterode,Germany)を遠心分離ステップに使用した。遠心分離器中の均衡状態にあるアセンブリを350rpmで2分間遠心分離した。遠心分離後、インサートの上部からの光重合性組成物は、遠心力により、篩布を通過し、分離された光重合性組成物(例えば、再生材料)のための容器(例えば、スピードミキサカップ)に入った。次いで、分離された光重合性組成物の入った容器に蓋をし、ラベルを貼った。
【0118】
次の遠心分離実行のための準備
図5に記載されたインサートアセンブリの全ての部品を分解し、アルコールで洗浄した。フィルターケーキを含む使用済みの篩布は、廃棄されるか、又はエタノールで洗浄して再使用することができた。
【0119】
フィルターケーキの評価
フィルターケーキを検査するために、フィルターケーキ布を含む篩布をイソプロピルアルコール(IPA)に浸漬して、残留樹脂を洗い流した。フィルターケーキをヒュームフード中で乾燥させた後、フィルターケーキの固形分を顕微鏡下で検査した。図6に関して上述したように、典型的な内容物、すなわち、小さな破損部品(例えば、支持体幾何形状の断片)、半硬化残留物、及び埃が、フィルターケーキ中に観察された。
【0120】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書の記載と、参照によって本明細書に組み込んだいずれかの文書の開示との間に何らかの矛盾又は不一致が存在する場合、本明細書の記載が優先するものとする。当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることは意図していないこと、並びにそのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例としてのみ提示されることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】