(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】術中回収血液から腫瘍細胞を除去するためのex vivo方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20231101BHJP
A61M 1/38 20060101ALI20231101BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20231101BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
A61M1/02 130
A61M1/02 120
A61M1/02 100
A61M1/38
C07K16/46
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525969
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021079849
(87)【国際公開番号】W WO2022090325
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522022188
【氏名又は名称】リンディス ブラッド ケア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】リンドホーファー, ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ブラハ, フランツペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハイス, マークス
【テーマコード(参考)】
4C077
4H045
【Fターム(参考)】
4C077AA12
4C077BB02
4C077BB03
4C077BB04
4C077DD13
4C077EE01
4C077GG15
4C077MM05
4C077MM10
4C077NN20
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、術中回収血液から腫瘍細胞を除去するためのex vivo方法であって、三官能性抗体を前記血液と接触させて抗体、腫瘍細胞及び免疫細胞の凝集体又は会合体を形成することと、遠心分離して赤血球濃縮液を得ることと、濾過して前記凝集体又は会合体及び残存抗体を前記赤血球濃縮液から除去することとを含む方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(i)免疫細胞及び腫瘍細胞を含み得る術中回収血液をレザーバ中に収集する工程と、
(ii)工程(i)からの前記術中回収血液を、レザーバ中で少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は足場タンパク質と接触させて、細胞凝集体を含む術中回収血液を得る工程であって、前記抗体又は前記足場タンパク質が、以下の特性:
a) T細胞と結合する、
b) 腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原と結合する、
c) そのFc部分を介してFc受容体陽性細胞と結合する
を有し、前記細胞凝集体が、前記三官能性二重特異性抗体及び/又は前記足場タンパク質を含む、工程と、
(iii)工程(ii)から得られた術中回収血液から、赤血球濃縮液を遠心分離により分離する工程と、
(iv)工程(iii)からの前記赤血球濃縮液を洗浄する工程と、
(v)工程(iv)からの赤血球濃縮液を濾過して、前記凝集体の残渣並びに/又は前記細胞結合三官能性二重特異性抗体及び/若しくは足場タンパク質の残渣を除去する工程と
を含む、術中回収血液から腫瘍細胞を除去するためのex vivo方法。
【請求項2】
前記三官能性抗体が、二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体からなる群より選択され、好ましくは、全IgG二重特異性抗体である、請求項1に記載のex vivo方法。
【請求項3】
工程(ii)において前記術中回収血液と接触させるために用いる前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質の量が、2.5μg以上、好ましくは2.5μg以上、5.0μg以下である、請求項1又は2に記載のex vivo方法。
【請求項4】
工程(i)における前記術中回収血液が、三官能性二重特異性抗体の施用前にレザーバ中に収集された300ml以上、好ましくは400ml以上の容量であり、所望により、方法が、工程(i)における術中回収血液を、少なくとも300ml~500mlの未希釈術中回収血液を含む350mlから2800ml、好ましくは350mlから2000mlの容量に希釈する工程をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項5】
方法が、工程(i)から(v)を少なくとももう1回含み、少なくとも1回目では、前記三官能性抗体と接触させる術中回収血液が、400~1500mlの容量である、請求項1から4のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項6】
術中回収血液が、血液と希釈物との混合物である、請求項5に記載のex vivo方法。
【請求項7】
工程(ii)において、前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質を、前記術中回収血液と、10~180分間の期間、好ましくは20~90分間、より好ましくは30~60分間、所望により19~25℃の温度、好ましくは室温にて接触させて、細胞凝集体を含む術中回収血液を得る、請求項1から6のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項8】
前記細胞凝集体が、抗体、腫瘍細胞及び免疫細胞を含み、免疫細胞が、好ましくは、T細胞及び/又はFcガンマ受容体陽性細胞である、請求項1から7のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項9】
工程(v)において工程(iv)からの赤血球濃縮液を濾過するためにフィルターを用い、前記フィルターが、好ましくは、白血球除去フィルターである、請求項1から8のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の三官能性抗体が、以下のアイソタイプの組み合わせを有する抗体の群から選択される:
ラット-IgG2b/マウス-IgG2a、
ラット-IgG2b/マウス-IgG2b、
ラット-IgG2b/ヒト-IgG1、
マウス-[VH-CH1;VL-CL]-ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3
*-[CH2-CH3]
[
*=白人のアロタイプG3m(b+g)=プロテインAと結合しない]
請求項1から9のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項11】
前記腫瘍関連抗原が、EpCAM、Her2neu、EGFR、CD30、CD20、CD22、MUC1、糖鎖付加パターンが変化したMUC1
*、PSMA、CD33、MCSP、cMet、EphA2、エンドシアリン、炭酸脱水酵素IX、IGF-1R、FAP-アルファ、CD19、GD2、CEA、FR、プロテオグリカン、G250、GC182、GT468、GT512からなる群より選択され、好ましくは、腫瘍関連抗原が、EpCAMである、請求項1から10のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項12】
前記三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質が、T細胞表面抗原を介してT細胞と結合し、T細胞表面抗原が、CD2、CD3、CD4、CD8、CD28、CD40L及びCD44からなる群より選択され、好ましくは、T細胞表面抗原が、CD3である、請求項1から11のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質が、Fcγ受容体I、II及び/又はIII型についてのFc部分に結合部位を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質が、Fcγ受容体I、II及び/又はIII型により単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞及び/又は活性化好中球と結合できる、請求項1から13のいずれか一項に記載のex vivo方法。
【請求項15】
(i)免疫細胞及び腫瘍細胞を含み得る術中回収血液を収集する工程と、
(ii)工程(i)からの前記術中回収血液を三官能性抗体と接触させて、細胞凝集体を含む術中回収血液を得る工程であって、前記細胞凝集体が、前記三官能性抗体を含む工程と、
(iii)工程(ii)から得られた術中回収血液から、赤血球濃縮液を遠心分離、好ましくは密度勾配遠心分離により分離する工程と、
(iv)工程(iii)からの前記赤血球濃縮液を洗浄する工程と、
(v)工程(iv)からの赤血球濃縮液を濾過して、前記凝集体の残渣及び/又は前記細胞結合三官能性抗体の残渣を除去する工程と
を含む腫瘍又は癌を処置する方法において用いるための、以下の特性を有する前記三官能性抗体:
a) T細胞と結合する、
b) 腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原と結合する、
c) そのFc部分を介してFc受容体陽性細胞と結合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三官能性二重特異性抗体を用いることにより回収血液から腫瘍細胞を除去する方法と、そのようにして生成された赤血球濃縮液における残存抗体の低減とに関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代初期のAIDSエピデミック以来、特に待機手術について同種血輸血の代案に対する興味が増加してきている。米国及び欧州のいくつかの国で提供される血液の5%より多くを現在占めるある代案は、術前供血により主に得られる自己血輸血である。術前供血に加えて、手術野からの術中血液回収(IBS)(表A)は、輸血需要を担保する重要な選択肢である。このIBSプロセスに伴い、外科手術患者から失われる血液は、収集され、浄化され、その患者への再注入のために用いることができるようにされる。
【0003】
簡単に述べると、手術野に流出する血液は、その部位から特に設計された囲いの中に吸引される。クエン酸塩又はヘパリン抗凝固剤を加え、内容物を遠心分離及び/又は濾過して、白血球及び血塊及びデブリを除去する。用いるIBS装置は、抗凝固剤を充填した単純、安価な滅菌ボトルから、高価で洗練された高速細胞洗浄装置までさまざまであり得る(例えばMedtronic Sequestra 1000、Cobe BRAT 2、Medtronic Autolog、Haemonetics Cell Saver-5(登録商標)及びFresenius CATS(登録商標);Bentzienら、Anaesthesist49:505、2000;Serrickら、J.Extra Corpor.Technol.35(1):28、2003;Carlessら、The Cochrane Library中のThe Cochrane Review、John Wiley&Sons,Ltd.、第3巻、1~180頁、2010)。米国において毎年百万件近い手術において用いられているIBS手順は、病院の血液管理及び保存プログラムの肝要な部分になってきている(www.bloodbook.com)。
【0004】
術前貧血の症例が増加していることに伴い、術前の供血は、全体的な輸血率が高いことにより、深刻な経済的疑問をさらに生じる(Carlessら、Transfus.Med.14:123、2004)。さらに、規制ガイドラインに従って、必要でない自己血液生成物は同種血輸血自体から除かれるために、イタリアでは、約30%の術前自己供血が廃棄されている。この点で、IBS及びその後の自己輸血は、全般的に、血液管理において安全でより費用効果的な施策である。
【0005】
【0006】
術中血液回収の利点
同種赤血球細胞輸血とは対照的に、IBSは、安全で効力のある代案であると考えられる。重要なことに、優れたウイルス診断薬にもかかわらず、HIV感染の伝達の危険性は、493,000同種血輸血あたり1であり、C型肝炎ウイルス感染の伝達の危険性は、103,000あたり1であり、B型肝炎ウイルス感染の伝染の危険性は、63,000あたり1である(Schreiberら、N.Engl.J.Med.334:1685、1996)。1996年から2001年まで行われた「輸血の深刻な危険要因(Serious Hazards of Transfusions)」研究の結果は、同種輸血発生のこれらの危険性を文書化した(Dzikら、Transfusion43:1190、2003)。著しいことに、汚染血液輸血による感染性疾患の伝染は、供血及び輸血プロセスとともに管理事務上又は人的不備によるABO不適合血液による重大な危険性と比較して、小さい危険性であることがわかる(Sazama、Transfusion30:583、1990;Dzikら、Transfusion43:1190、2003)。輸血発生の70%より多くが、管理事務上の不備並びにサンプリング、指示及び成分収集における過誤を主な原因とする間違って輸血される血液成分に帰する可能性がある(Dzikら、Transfusion43:1190、2003)。術前及び術中の赤血球細胞の自己輸血は、同種血輸血に固有のこれらの危険性自体を回避する。全般的に、自己血液回収技術は、利点を提供するが、血液容量を保つために晶質又はコロイドの注入を必要としない(表A)。他の自家技術よりもかなり多くの容量の血液を、過度の出血中に術中に回収できる。
【0007】
患者のIBSへの適性
術中血液回収は、25年以上前から利用されている。これは、心胸郭(cardiothoriac)手術、血管及び外傷手術、並びに肝臓移植において広く用いられている。この使用に対する禁忌は、細菌感染及び手術野の血液中におそらく脱落する腫瘍細胞、並びに手術部位でのミクロフィブリルコラーゲン又はその他の外来物質の使用である。現在、ドナー血液不足及び感染の伝染への恐れから、血液喪失が大きい癌手術においてもIBSの使用に対する興味が増加している。癌手術における自己輸血の使用を外科医が渋ることは少なくなってきており、標準的な生存データと比較して、報告は、局所再発又は転移疾患の増加を示していない(Klimbergら、Arch.Surg.212:1326、1986;Perseghinら、Vox Sang.72:221、1997)。Vanderlindeら(BMJ324:772、2002)により概説されるように、術前供血血液から回収される赤血球細胞自己輸血は、同種輸血と比較して結腸直腸癌手術中の感染及び再発の発生の低減を著しく導くことができた(表B)。これらの概説された臨床試験のいくつかは、結腸直腸手術がそれ自体細菌感染の伝染の固有の危険性のためにIBSの推奨から除かれているので、さらにより重要である。
【0008】
【0009】
それにもかかわらず、ある研究は、腫瘍細胞が手術野において検出可能であったことを明確に示したが、癌再発に対するその影響は明確でないままであった(Hansenら、Arch.Surg.130:387、1995)。例えば、腹部、整形外科、泌尿器科、婦人科又は頭頚部の悪性腫瘍の癌手術を受けた61名の患者の末梢血及びIBS中の腫瘍細胞の数を比較した。61名の患者のうち57名において、腫瘍細胞が、腫瘍学的手術中に流出した血液中で検出された。これらの腫瘍細胞は、500mL血液あたり10腫瘍細胞の感度で、増殖能、侵襲性及び腫瘍形成能により同定された(Hansenら、Arch.Surg.130:387、1995)。興味深いことに、流出血液中の腫瘍細胞数は、血液喪失量とは相関せず、これらの患者の26%のみにおいて、循環腫瘍細胞が末梢血において検出できた。よって、手術野に流出した血液中の腫瘍細胞数は、10から107までの範囲であり得ると推定される。これらの結果は、Daleら、Br.J.Surg.75:581、1988及びMullerら、Anaesthesist45:834、1996によっても独立して確認された。
【0010】
IBS試料中の残存腫瘍細胞の危険性に関する安全性の懸念にさらに対処するために、混入腫瘍細胞を効率的に排除するためにさらなるアプローチが必要である:
・ 自動化IBS装置、例えばCell Saver-5(登録商標)と組み合わせて用いるある方法が、白血球除去フィルター(例えばPall RC400、RCEZ1T)、RC XL-1)を通すさらなる試料の濾過により示されている(Bontadiniら、Transfusion34.531、1994;Yaprakら、Turk.J.Pediatr.40:89、1998;Gwakら、Liver Transplant.11:331、2005)。IBSにより回収された赤血球の安全な輸血は、いくつかの試験において評価されているように、臨床成績を損なわない(EdelmanらUrology47:179、1996;Perseghinら、Vox Sang.72:221、1996;Davisら、BJU International91:474、2003)。
・ 別のIBSアプローチにおいて、有核癌細胞の放射線感受性の根底にある原理及び無核赤血球細胞の放射線耐性のために、試料を50Gyにて照射する。
【0011】
さらなるスタッフの必要性、線量測定の問題、臨床部門における適切かつ認可された照射設備を含むこのIBS/照射アプローチの複雑なロジスティクスにおける要求のために、この後者の手順は、広い応用において好ましくない。これとは対照的に、白血球除去のための濾過手順は、IBS中の残存腫瘍細胞を低減するための手際のよいアプローチであるが、この技術は、残存腫瘍細胞がフィルターをまだ通過するという固有の危険性をまだ有する。
【0012】
よって、癌手術における安全性をさらに増進して残存腫瘍細胞を除去するために、例えば腫瘍を有する患者の創傷から手術中に得られた自己血液を再導入するための全ての既知の方法を改善して、混入する可能性がある腫瘍細胞の回収血液からの信頼できる除去を提供しなければならない。この改善は、例えばCell Saver-5(登録商標)若しくはCATS(登録商標)のような装置、又は手術を受けたか若しくは手術中の患者からの血液を再導入するための任意のその他の方法において容易に実行できるべきである。
【0013】
国際公開第2013050445号は、抗体駆動性腫瘍関連抗原認識と、所望によりさらに免疫細胞(白血球)、例えばT細胞及びFc受容体陽性アクセサリー細胞並びに/或いはさらに腫瘍細胞の認識により認識される腫瘍細胞を含む多重細胞複合体、すなわち会合体の抗体媒介形成と、その後の例えば遠心分離及び/又は濾過工程による前記会合体の除去とに基づく回収血液から腫瘍細胞を除去する方法について記載している。抗体の代わり又はそれと組み合わせて、抗体を模倣するタンパク質足場も用いることができる。この点について、しかし、残存抗体が処理血液中に過剰な量で存在し、それによりこの処理血液の再注入が重篤な副作用を生じるリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、腫瘍学的な大量失血術中にcell saver装置により生成された自己赤血球濃縮液(EC)の再注入を可能にする、術中回収血液から腫瘍細胞を除去する改善された方法であって、好ましくは副作用の発生が著しく減少した方法を提供することである。本発明では、腫瘍細胞を免疫細胞と物理的に会合させる三官能性二重特異性抗体の使用が、遠心分離工程とその後の濾過工程と組み合わせた場合に、腫瘍細胞及び残存抗体が顕著に低減したECをもたらし、よって、このECを、著しい副作用を引き起こすことなく患者に再注入して戻すことができることが明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の詳細な説明及び好ましい実施形態
以下の議論は、本発明について説明し、その好ましい実施形態について示す目的のために含まれる。
【0016】
そうでないと説明しない限り、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する当該技術の熟練者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないと明確に示さない限り、複数形の言及を含む。同様に、語句「又は(或いは、若しくは)」は、文脈がそうでないと明確に示さない限り、「及び」を含む意図である。本明細書に記載するものと同様又は等価な方法及び材料は本開示の実施又は試験において用いることができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。本明細書に記載する全ての出版物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、それらの全体が参照により組込まれている。矛盾がある場合、用語の説明を含む本明細書が支配する。また、材料、方法及び実施例は、例示のためだけであり、限定することを意図しない。
【0017】
本発明は、以下に関する:
(1)以下の工程:
(i)免疫細胞及び腫瘍細胞を含み得る術中回収血液を収集する工程と、
(ii)工程(i)からの前記術中回収血液を、少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は足場タンパク質と接触させて、細胞凝集体を含む術中回収血液を得る工程であって、前記抗体及び/又は前記足場タンパク質が、以下の特性:
a) T細胞と結合する、
b) 腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原と結合する、
c) そのFc部分を介してFc受容体陽性細胞と結合する
を有し、前記細胞凝集体が、前記三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質を含む、工程と、
(iii)工程(ii)から得られた術中回収血液から、赤血球濃縮液を遠心分離、好ましくは密度勾配遠心分離により分離する工程と、
(iv)工程(iii)からの前記赤血球濃縮液を洗浄する工程と、
(v)工程(iv)からの赤血球濃縮液を濾過して、前記凝集体の残渣並びに/又は前記細胞結合三官能性抗体及び/若しくは足場タンパク質の残渣を除去する工程と
を含む、術中回収血液から腫瘍細胞を除去するためのex vivo方法。
【0018】
(2)好ましくは、請求項1によるex vivo方法において、前記三官能性抗体は、二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体からなる群より選択され、より好ましくは、全IgG二重特異性抗体である。
【0019】
(3)好ましくは、(1)又は(2)によるex vivo方法において、工程(ii)において前記術中回収血液と接触させるために用いる前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質の量は、2.5μg以上、より好ましくは2.5μg以上、5.0μg以下である。
【0020】
(4)好ましくは、(1)から(3)のいずれか1つによるex vivo方法において、工程(i)における前記術中回収血液は、三官能性抗体の施用前に、300ml以上、好ましくは400ml以上の容量である。より好ましくは、前記術中回収血液は、レザーバに収集される。
【0021】
(5)好ましくは、(4)によるex vivo方法は、工程(i)における術中回収血液を、少なくとも300ml~500mlの未希釈術中回収血液を含む、350mlから2800ml、より好ましくは350mlから2000mlの容量まで希釈する工程をさらに含む。
【0022】
(6)好ましくは、(1)から(5)のいずれか1つによるex vivo方法において、方法は、工程(i)から(v)を少なくとももう1回含み、少なくとも1回目では、前記三官能性抗体と接触させる術中回収血液は、400~1500mlの容量である。
【0023】
(7)好ましくは、(6)によるex vivo方法において、術中回収血液は、血液と希釈物(dilution)との混合物である。
【0024】
(8)好ましくは、(1)から(7)のいずれか1つによるex vivo方法において、工程(ii)において、前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質は、前記術中回収血液と、10~180分間の期間、好ましくは20~90分間、より好ましくは30~60分間、所望により19~25℃の温度、好ましくは室温にて接触させて、細胞凝集体を含む術中回収血液を得る。
【0025】
(9)好ましくは、(1)から(8)のいずれか1つによるex vivo方法において、前記細胞凝集体は、前記抗体、腫瘍細胞及び免疫細胞を含み、免疫細胞は、好ましくは、T細胞及び/又はFcガンマ受容体陽性細胞である。
【0026】
(10)好ましくは、(1)から(9)のいずれか1つによるex vivo方法において、工程(v)において、工程(iv)からの赤血球濃縮液を濾過するためにフィルターを用い、前記フィルターは、好ましくは、白血球除去フィルターである。
【0027】
(11)好ましくは、(1)から(10)のいずれか1つによるex vivo方法において、前記少なくとも1種の三官能性抗体は、以下のアイソタイプの組み合わせを有する抗体の群から選択される:
ラット-IgG2b/マウス-IgG2a、
ラット-IgG2b/マウス-IgG2b、
ラット-IgG2b/ヒト-IgG1、
マウス-[VH-CH1;VL-CL]-ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
[*=白人のアロタイプG3m(b+g)=プロテインAと結合しない]。
【0028】
(12)好ましくは、(1)から(11)のいずれか1つによるex vivo方法において、前記腫瘍関連抗原は、EpCAM、Her2neu、EGFR、CD30、CD20、CD22、MUC1、糖鎖付加パターンが変化したMUC1*、PSMA、CD33、MCSP、cMet、EphA2、エンドシアリン、炭酸脱水酵素IX、IGF-1R、FAP-アルファ、CD19、GD2、CEA、FR、プロテオグリカン、G250、GC182、GT468、GT512からなる群より選択され、好ましくは、腫瘍関連抗原は、EpCAMである。
【0029】
(13)好ましくは、(1)から(12)のいずれか1つによるex vivo方法において、前記三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質は、T細胞表面抗原を介してT細胞と結合し、T細胞表面抗原は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD28、CD40L及びCD44からなる群より選択され、好ましくは、T細胞表面抗原は、CD3である。
【0030】
(14)好ましくは、(1)から(13)のいずれか1つによるex vivo方法において、前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質は、Fcγ受容体I、II及び/又はIII型についてのFc部分に結合部位を含む。
【0031】
(15)好ましくは、(1)から(13)のいずれか1つによるex vivo方法において、前記少なくとも1種の三官能性抗体及び/又は前記足場タンパク質は、Fcγ受容体I、II及び/又はIII型により単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞及び/又は活性化好中球と結合できる。
【0032】
(16)好ましくは、(1)から(15)のいずれか1つによるex vivo方法において、前記腫瘍細胞は、上皮性、血液又は神経外胚葉性の腫瘍からである。
【0033】
他の好ましい実施形態は、以下の説明及び表1~3を組み合わせた実施例に記載される。本発明のさらに好ましい特徴は、特許請求の範囲から理解できる。
本明細書に記載する方法は、ex vivo、すなわち人体の外で行われる。術中血液回収(IBS)は、当該技術において公知であり、「自己血液回収」とも記載される。手術中に喪失される血液は、取り戻され、手術中に喪失された血液を得る同じ患者に再注入される。
【0034】
さらに、本発明は、(i)免疫細胞及び腫瘍細胞を含み得る術中回収血液を収集する工程と、
(ii)工程(i)からの前記術中回収血液を三官能性抗体と接触させて、細胞凝集体を含む術中回収血液を得る工程であって、前記細胞凝集体が、前記三官能性抗体を含む工程と、
(iii)工程(ii)から得られた術中回収血液から、赤血球濃縮液を遠心分離、好ましくは密度勾配遠心分離により分離する工程と、
(iv)工程(iii)からの前記赤血球濃縮液を洗浄する工程と、
(v)工程(iv)からの赤血球濃縮液を濾過して、前記凝集体の残渣及び/又は前記細胞結合三官能性抗体の残渣を除去する工程と
を含む腫瘍又は癌を処置する方法において用いるための、以下の特性を有する前記三官能性抗体に関する:
a) T細胞と結合する、
b) 腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原と結合する、
c) そのFc部分を介してFc受容体陽性細胞と結合する。
【0035】
好ましくは、上記の三官能性抗体は、二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体からなる群より選択され、より好ましくは二重特異性抗体である。
【0036】
術中回収血液から腫瘍細胞を除去する方法は、ex vivo方法について本明細書に記載する工程を含み、ex vivo方法に関して述べたことが、適切である場合に本方法に当てはまる。
【0037】
本明細書に記載する方法は、術中に得られた回収血液に混入する可能性がある腫瘍細胞の除去を指向する。血液は、好ましくは、手術処置を受け、かつ腫瘍及び/若しくは癌に罹患しているか、又は腫瘍形成性と考えられ得る細胞を有する疑いがある患者から得られる。
好ましくは、方法は、手術野から血液を吸引する外科医から開始する。収集工程は、好ましくは、吸引装置により行われ、希釈剤(dilutive)、例えばステロファンジンもこの工程中で用いることができる。その他の希釈剤、例えばヘパリンを含む0.9%NaClも用いることができる。吸引血液は、次いで、血液の凝固を避けるために抗凝固剤と混合される。吸引血液は、処理のために十分な血液が得られるまでレザーバに収集できる。
【0038】
「抗凝固剤」への言及は、抗凝固剤、例えば血小板凝集抑制剤、血栓溶解及び繊維素溶解剤、並びに金属イオンキレート化剤、例えばクエン酸塩、クエン酸デキストロース(ACD)及びEDTA並びにシュウ酸塩のクラスを含む。関連する態様において、抗凝固剤は、ヘパリン及びグリコサミノグリカン、例えば低分子量ヘパリン、例えばベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パマパリン(Pamaparin)、レビパリン及びチンザパリン、並びにヘパリン類似物質、例えばダナパロイド、スロデキシド、デルマタン硫酸;直接トロンビン(II)阻害剤、例えばアルガトロバン、ビバリルジン、ダビガトラン、デシルジン、ヒルジン、レピルジン、メラガトラン、キシメラガトラン;第Xa因子阻害剤(例えばダニ抗凝固ペプチド)、例えばアピキサバン、オタミキサバン、リバーロキサバン、並びにオリゴ糖類、例えばフォンダパリヌクス及びイドラパリヌクス;ビタミンKアンタゴニスト、例えばアセノクマロール、クロリンジオン、クマテトラリル、ジクマロール、ジフェナジオン、エチルビスクムアセテート、フェンプロクモン、フェニンジオン、チオクロマロール及びワルファリンを含む。
【0039】
本発明の一実施形態では、このように収集した回収血液は、腫瘍細胞の存在について試験でき、ここで、特に好ましくは、腫瘍関連抗原の種類を、前記抗体が結合し、本発明において用いる腫瘍抗原の種類を決定するために、当該技術において公知の方法、例えば腫瘍関連抗原のエピトープと特異的に反応する標識抗体により決定する。
【0040】
本発明では、用語「腫瘍細胞」は、絶え間なく分裂でき、かつ固形腫瘍を形成できるか又は異常細胞で血液をみなぎらせることができる任意の細胞のことをいう。好ましくは、本発明では、術中回収血液中に存在する腫瘍細胞は、上皮性、血液又は神経外胚葉性腫瘍からであり得る。
【0041】
本発明に含まれる腫瘍の例(それらに限定されないが)は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫及びその他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、リンパ性腫瘍、膵癌、乳癌(基底乳癌、乳管癌及び小葉乳癌を含む)、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌及びCNS腫瘍(例えば神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫及び網膜芽細胞腫)を含む肉腫並びに癌腫を含む。さらなる例は、上皮性腫瘍、血液腫瘍及び神経外胚葉性腫瘍を含む。
好ましくは、本発明のex vivo方法では、前記腫瘍細胞は、上皮性、血液又は神経外胚葉性腫瘍からである。
【0042】
本発明では、「免疫細胞」は、T細胞及びFc受容体陽性細胞を含む。本発明では、「Fc受容体細胞」は、細胞表面にFc受容体が存在する細胞のことをいう。好ましくは、「Fc受容体陽性細胞」は、単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球及び好酸球性細胞の1種以上のことをいう。
好ましくは、工程(i)では、免疫細胞及び腫瘍細胞を含み得る術中回収血液は、レザーバに収集される。
【0043】
術中回収血液を、次いで、少なくとも1種の腫瘍細胞の少なくとも1種の腫瘍関連抗原の少なくとも1種のエピトープと特異的に結合できる抗体又は適当なタンパク質足場と接触させる。
本発明では、「赤血球濃縮物」は、濃厚赤血球のことをいう。
本発明では、「細胞凝集体」は、互いに接着した細胞のことをいい、前記表現は、「会合体」又は「細胞会合体」と交換可能である。同様に、「会合する」と「凝集する」も交換可能である。
【0044】
さらなる要件として、前記抗体は、抗体及び腫瘍細胞を含む凝集体又は会合体を得るために、血液中に含まれる少なくとも前記抗体及び前記腫瘍細胞の三次元ネットワークを形成できなければならない。本発明のさらに特定の好ましい実施形態では、前記抗体は、抗体及び腫瘍細胞、所望により免疫細胞、並びに所望によりさらなる腫瘍細胞の三次元ネットワークを形成するために、1種より多い腫瘍細胞及び/又は免疫細胞とも結合できる。多重細胞複合体の形成に起因する前記会合体の組成、構造及びサイズのために、会合体は、遠心分離若しくは濾過又はその組み合わせにより前記IBSから除去できる。濾過及び遠心分離は、好ましい方法であるが、残存腫瘍細胞を含む前記会合体を効率的に除去するために、当業者は他の方法を認識し得ることが理解される。
【0045】
本発明は、よって、好ましくは、腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原、並びに免疫細胞との抗体の会合及び凝集により形成される会合体及び凝集体の機械的除去に焦点を当て、抗体特異的相互作用及び免疫学的効果による前記腫瘍細胞の破壊による腫瘍関連抗原を保有する腫瘍細胞の枯渇に焦点を当てない。免疫細胞と相互作用することにより腫瘍細胞を破壊するために、免疫学的物質と同様の従来の様式で抗体を用いるが、本発明は、本発明の場合は腫瘍細胞又はその断片上にある抗原を架橋できる抗体の能力から好ましくは恩恵を受ける。本発明の効果は、前記腫瘍細胞との抗体の相互作用により、特に遠心分離及び濾過分離法による前記三次元ネットワークの除去により達成される。
【0046】
本方法は、抗体又は抗体様分子が磁性成分、例えば磁性ビーズ又は構造要素を介する抗体複合体の除去を容易にするその他の構造要素と連結され得るか、或いは腫瘍細胞が細胞ソーティング法、例えばフローサイトメトリーにより除去される、当該技術において既知の他の方法を組み合わせて用いることもできる。AKのFc部分を介するT細胞及び/又はFcガンマ受容体陽性細胞上の腫瘍関連抗原、CD3との三官能性抗体の結合による腫瘍細胞及び免疫細胞の架橋によってのみ、細胞会合体及び凝集体が形成され得る。腫瘍細胞又はその断片上の抗原、例えば腫瘍関連抗原並びに所望により免疫細胞及び/又はその他の腫瘍細胞との抗体の三次元ネットワークの形成を理由として、前記会合体の機械的除去が可能である。この点で、本発明では、他の構造的成分、例えば磁性ビーズ又は蛍光分子を含めることにより前記除去を容易にする必要がなく、このことにより、本方法は、より単純で容易に行われる。
【0047】
本発明は、本発明の限定内での三官能性二重特異性抗体に関して本明細書に記載され、特許請求の範囲に記載され、三官能性二重特異性抗体、抗CD3×抗EpCAMに関して例示される。前記抗CD3×抗EpCAM三官能性二重特異性抗体は、腫瘍関連抗原EpCAMを指向し、T細胞表面抗原であるCD3及びそのFc部分によりFc受容体陽性細胞とさらに結合する。実施例に記載する具体的な実施形態は、本発明の実行可能性の証拠を提供する例示的実施形態として理解されなければならない。カツマキソマブによるIBSからの腫瘍細胞の優れた除去についての証拠を示しているが、ここで請求する方法が基礎となる原理についての概念の証明を提供する。この証拠を示して、当業者は、本発明によりカバーされる限り、この概念を、三次元ネットワーク、すなわち例えば遠心分離及び/又は濾過により除去できる多重細胞複合体を提供するために、前記腫瘍細胞及び所望により前記免疫細胞と相互作用できる他の腫瘍及び他の抗体に拡張する可能性を必然的に有する。
【0048】
本発明の抗体は、三官能性抗体から具体的に選択される。好ましくは、本発明における三官能性抗体は、二重、三重、四重及び多重特異性抗体であり得る。下で開示する三官能性抗体は、三官能性二重特異性抗体のことをいう。しかし、三重、四重及び多重特異性抗体も同じ特性又は作用を示すならば、前記三官能性抗体は、本明細書で用いるように、三官能性三重、四重及び多重特異性抗体ということもできる。
【0049】
一般的に、二重特異性抗体は、2つの異なるタイプの抗原と、好ましくはその可変領域を介して結合できる抗体と定義され、三重特異性抗体は、3つの異なるタイプの抗原と、好ましくはその可変領域を介して結合することを特徴とし、四重特異性抗体は、4つの異なるタイプの抗原と、好ましくはその可変領域を介して結合することを特徴とするが、多重特異性抗体は、複数の異なるタイプの抗原と、好ましくはその可変領域を介して結合できると定義される。ある具体的な一例として、三官能性二重特異性抗体である抗CD3×抗EpCAMは、腫瘍関連抗原EpCAMと一方で、T細胞表面抗原CD3と他方で、そしてそのFc部分によりアクセサリー細胞とも結合することにより定義される。
【0050】
一般的に、上記の二重、三重、四重及び多重特異性抗体は、一価、二価、三価、四価又は多価であり得る。一価結合特性を有する抗体は、1種の腫瘍関連抗原と結合できる抗体と定義される。二価モノクローナル抗体は、2種の腫瘍関連抗原又は1種の腫瘍関連抗原及び1種の免疫細胞関連抗原と結合できる抗体と定義される。三価モノクローナル抗体は、3種の異なる腫瘍関連抗原、又は2種の腫瘍関連抗原及び1種の免疫細胞関連抗原、又は1種の腫瘍関連抗原及び2種の免疫細胞関連抗原と結合できる抗体と定義される。四価モノクローナル抗体は、4種の異なる腫瘍関連抗原、又はそれぞれが2つの同一抗原結合アームを有する2種の異なる腫瘍関連抗原、又は2種/3種の腫瘍関連抗原及び1種の免疫細胞関連抗原、又は2種の腫瘍関連抗原及び2種の免疫細胞関連抗原と結合できる抗体と定義される。多価モノクローナル抗体は、1種以上の腫瘍関連抗原及び/又は1種以上の免疫細胞関連抗原と結合できる抗体と定義される。用語「腫瘍関連抗原と結合」は、腫瘍細胞上の前記腫瘍関連抗原のエピトープとの結合と定義される。請求項1に記載する三官能性二重特異性フォーマットを有する抗体のみが、本発明によりカバーされる。他の全ての抗体は、情報の目的のためにのみ記載される。
【0051】
二官能性又は三官能性抗体の一般的な記載は、Kontermann RE(編)、Springer Heidelberg Dordrecht London New York、1~28頁(2011)に記載され、二重特異性又は三重特異性(1種の腫瘍関連抗原及び白血球(すなわち免疫系の細胞)の1種以上の表面抗原との二重特異性又は三重特異性(二価、三価及び四価の三官能性フォーマット)結合特性を有することが本出願にとって重要である。
【0052】
・二価抗原結合特徴を有する二重特異性抗体フォーマット:
例えば、scFv(例えばBiTEクラス)、Db、scDb、dsDb、DART、dAb2/VHH2、ノブ・イントゥ・ホール誘導体、SEED-IgG、ヘテロFc-scfv、Fab-scFv、CrossMab
・三価抗原結合特徴を有する二重(三重)特異性抗体フォーマット:
例えば、トリプルボディ、DNL-F(ab)3、scFv2-CH1/CL、dAb3、Fab-scFv2、IgG-scFab
・四価抗原結合特徴を有する二重(三重)特異性抗体フォーマット:
例えば、IgG-scFv、scFv-IgG、scFv-Fc、F(ab’)2-scFv2、sDb-Fc、scDb-CH3、Db-Fc、scFv2-H/L、DVD-Ig、tandAb、scFv-dhlx-scFv、dAb2-IgG、2-イン-1 mAb、mAb2、dAb-IgG、dAb-Fc-dAb。
【0053】
本発明に従って用いるさらなる抗体は、以下の参考文献に記載されている。
Muller D及びRE Kontermann.Bispecific Antibodies.Kontermann RE(編)、Springer Heidelberg Dordrecht London New York、83~100頁(2011)
scFv (BiTE)
Baeuerle PA、Zugmaier G及びD Ruttinger.Bispecific Antibodies.Kontermann RE(編)、Springer Heidelberg Dordrecht London New York、273~288頁(2011)
DVD-Ig
Tarcsa E、Fraunhofer W、Ghayur T、Salfeld J及びJ Gu.Bispecific Antibodies.Kontermann RE(編)、Springer Heidelberg Dordrecht London New York、171~186頁(2011)
DNL誘導体
Chang C-H、Rossi EA、Sharkey RM、DM Goldenberg.Bispecific Antibodies.Kontermann RE(編)、Springer Heidelberg Dordrecht London New York、199~216頁(2011)
2-イン-1抗体
Koeing P及びG Fuh.Bispecific Antibodies.Kontermann RE(編)、Springer Heidelberg Dordrecht London New York、187~198頁(2011)
クロスMab
Schaeferら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108:11187(2011)
【0054】
本発明では、少なくとも1種の三官能性抗体を用いる。好ましくは、異なる特異性を有する2種以上の三官能性抗体を、腫瘍細胞と免疫細胞の会合体を媒介するために組み合わせることができる。
【0055】
好ましくは、工程(i)における術中回収血液は、300ml以上又は400ml以上の容量で未希釈である。この点において、「未希釈」は、術中回収血液が、他のいずれの液体とも混合されないことを意味する。より好ましくは、工程(i)における術中回収血液は、2550ml以下、2000ml以下、1500ml以下又は1300ml以下の容量で未希釈である。さらにより好ましくは、工程(i)における術中回収血液は、300mlから2550ml、350mlから2550ml、400mlから2550ml、300mlから2000ml、350mlから2000ml、400mlから2000ml、300mlから1500ml、350mlから1500ml、400mlから1500ml、300mlから1300ml、350mlから1300ml、又は400mlから1300mlの容量で未希釈である。
【0056】
好ましくは、工程(ii)における抗体は、レザーバ中の350mlの最小限の収集術中血液容量の後にのみ施用して、免疫細胞及び腫瘍細胞との抗体のよりよい相互作用及び結合を可能にする。
【0057】
好ましくは、本発明の方法は、工程(i)における術中回収血液を希釈溶液で希釈するさらなる工程を含み、前記希釈液は、2500ml以下、2000ml以下、1500ml以下、1000ml以下、500ml以下、400ml以下、300ml以下、200ml以下又は100ml以下の容量である。
【0058】
好ましくは、本発明の方法は、工程(i)における術中回収血液を、350mlから2800ml、350mlから2600ml、350mlから2400ml、350mlから2200ml、350mlから2000ml、400mlから2800ml、400mlから2600ml、400mlから2400ml、400mlから2200ml、400mlから2000ml、450mlから2800ml、450mlから2600ml、450mlから2400ml、450mlから2200ml、450mlから2000ml、500mlから2800ml、500mlから2600ml、500mlから2400ml、500mlから2200ml、500mlから2000ml、1000mlから2000ml、1000mlから2200ml、1000mlから2400ml、1000mlから2600ml、1200mlから2000ml、1200mlから2200ml、1200mlから2400ml、1200mlから2600ml、1400mlから2000ml、1400mlから2200ml、1400mlから2400ml又は1400mlから2600mlの容量に希釈するさらなる工程を含む。
【0059】
好ましくは、本発明における三官能性抗体は、工程(ii)において、1.0μg以上、1.5μg以上、2.0μg以上、2.5μg以上、3.0μg以上、3.5μg以上、4.0μg以上又は4.5μg以上の量で用いられる。より好ましくは、本発明における三官能性二重特異性抗体は、2.5μg以上の量で用いられる。さらにより好ましくは、本発明における三官能性二重特異性抗体は、工程(ii)において、1.0μgから1.5μg、1.5μgから2.0μg、2.0μgから2.5μg、2.5μgから3.0μg、3.0μgから3.5μg、3.5μgから4.0μg又は4.0μgから4.5μgの量で用いられる。好ましくは、本発明における三官能性抗体の濃度は、工程(ii)において、1ng/mlから7ng/ml、より好ましくは2ng/mlから6ng/ml、さらにより好ましくは3ng/mlから5ng/mlの濃度で用いられる。
【0060】
好ましくは、本発明における三官能性抗体は、工程(ii)において、5.0μg以下の量で用いられる。より好ましくは、本発明における三官能性二重特異性抗体は、工程(ii)において、1.0μg以上から5.0μg以下、1.5μg以上から5.0μg以下、2.0μg以上から5.0μg以下、2.5μg以上から5.0μg以下、3.0μg以上から5.0μg以下、3.5μg以上から5.0μg以下、4.0μg以上から5.0μg以下又は4.5μg以上から5.0μg以下の量で用いられる。さらにより好ましくは、本発明における三官能性二重特異性抗体は、工程(ii)において、2.5μg以上から5.0μg以下の量で用いられる。
【0061】
好ましくは、本発明では、工程(i)から(v)は、少なくとも1回繰り返され、そのうち、少なくとも1回目では、三官能性二重特異性抗体と接触させる術中回収血液は、300mlから1500ml、350mlから1500ml、400mlから1500ml、450mlから1500ml又は500mlから1500mlの容量である。
【0062】
より好ましくは、工程(i)から(v)は少なくとも1回繰り返され、そのうち、少なくとも1回目では、三官能性二重特異性抗体と接触させる術中回収血液は、300mlから1500ml、350mlから1500ml、400mlから1500ml、450mlから1500ml又は500mlから1500mlの容量であり、術中回収血液は、血液と希釈物との混合物である。
【0063】
本発明による三官能性抗体は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD28、CD40L及びCD44からなる群より選択されるT細胞表面抗原を介してT細胞と結合し得る。このことは、本発明に従って用いる抗体は、好ましくは、CD2、CD3、CD4、CD8、CD28、CD40L及びCD44からなる群より選択されるT細胞表面抗原のエピトープを認識して結合できるパラトープを含むことを意味する。この特異性は、好ましくは、T細胞の動員を促進する。
【0064】
好ましくは、T細胞表面抗原は、CD3である。このことは、本発明に従って用いる抗体は、好ましくは、CD3のエピトープを認識して結合できるパラトープをさらに含むことを意味する。
【0065】
三官能性抗体の一例であるカツマキソマブは、その二重特異性結合部位を介してEpCAM陽性腫瘍細胞及びCD3陽性T細胞と結合する。カツマキソマブは、三官能性の作用機序をもたらすそのインタクトな断片結晶化可能(Fc)領域の結合によりFcγR I、IIa及びIII型陽性アクセサリー細胞も動員する。本発明の関係におけるカツマキソマブの基本的な作用機序は、腫瘍細胞及びリンパ球/アクセサリー細胞の物理的な凝集と、遠心分離及び濾過によるその後の細胞凝集体の除去とからなる。本発明で用いる場合のカツマキソマブの作用機序を超えて、二重特異性三官能性抗体により誘導される腫瘍細胞破壊のいくつかの機構が記載されている。
【0066】
Zeidlerら[0]、[0]、[0]及びRiechelmannら[0]は、BiUII(これは、カツマキソマブに対するバリアント抗体である)及びカツマキソマブによるT細胞及びアクセサリー細胞のin vitroでの活性化と、腫瘍細胞死滅に対するそれらの寄与とを明らかにした。この三官能性抗体を末梢血単核細胞(PBMC)とともに用いて、彼らは、アクセサリー細胞活性化が、抗腫瘍活性に対する重要な貢献因子であることを示した。T細胞及びアクセサリー細胞の活性化は、サイトカイン(インターロイキン[IL]-1β、IL-2、IL-6、IL-12、TNF-α、インターフェロン-γ[IFN-γ]及びケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド18[CCL18])の生成を導いた。著しいことに、Riechelmannらは、IFN-γ及びTNF-αがそれぞれ5時間及び24時間以内にピーク値に達したことを証明した。彼らは、樹状細胞及びNK細胞上の活性化マーカーの上方制御も証明した。カツマキソマブは、B-リンパ球と結合しなかったが、FcγR陽性アクセサリー細胞を刺激して、直接の貪食作用により腫瘍細胞を排除した。
【0067】
特に本発明についてのこの関係において、Arva及びAndersson[0]による調査は、炎症誘発性サイトカインIL1β、TNF-α、IL-6、IL-8、IFN-γ及びIL-12が刺激後4時間分泌されなかったことを示しており、関連性がある。この期間は、通常の経路であるサイトカインのde novo合成についての刺激後に必要である[0]。
【0068】
[53]Zeidler R、Mayer A、Gires OらTNF-alpha contributes to the anti-tumor activity of a bispecific, trifunctional antibody. Anticancer Res.2001;21(5):3499~3503.
[54]Zeidler R、Mysliwietz J、Csanady MらThe Fc-region of a new class of intact bi-specific antibody mediates activation of accessory cells and NK cells and induces direct phagocytosis of tumor cells.Br J Cancer.2000;83(2):261~266.
[55]Zeidler R、Reisbach G、Wollenberg BらSimultaneous activation of T-cells and accessory cells by a new class of intact bi- specific antibody results in efficient tumor cell killing.J Immunol1999;163(3):1246~1252.
[1]Riechelmann H、Wiesneth M、Schauwecker P, et al. Adoptive therapy of head and neck squamous cell carcinoma with antibody coated immune cells:a pilot clinical trial.Cancer Immunol Immunother.2007;56(9):1397~1406.
[1]Abbas AK、Lichtman AH.General properties of cytokines.Cellular and Molecular Immunology.第5版、Philadephia,Pennsylvania:Saunders、Elsevier出版;2003:第IV節.
[3]Arva E、Andersson B.Kinetics of cytokine release and expression of lymphocyte cell-surface activation markers after in vitro stimulation of human peripheral blood mononuclear cells with Streptococcus pneumoniae.Scand J Immunol.1999:49(3):237~243.
【0069】
好ましい実施形態において、本発明で用いる抗体は、モノクローナル抗体である。これは、本明細書で詳細に開示する三官能性二重特異性抗体について特に当てはまる。
【0070】
本発明では、術中血液の容量が多い場合(例えば>1500ml)、ここに記載する手順の新しい回を開始しなければならない。
よって、好ましくは、1500mlの術中血液の収集と、2.5μg以上の抗体、より好ましくは2.5μgから5.0μgの抗体、さらにより好ましくは2.5μgの抗体の供給との後に、遠心分離をまず開始しなければならず、その後に、少なくともさらなる回の工程(i)から(v)を開始でき、ここでは、工程(i)から(v)のさらなる回において、好ましくは2.5μg以上の抗体、より好ましくは2.5μgから5.0μgの抗体、さらにより好ましくは2.5μgの抗体を好ましくは1500ml以下の容量の術中血液と接触させる。
【0071】
好ましくは、300~400mlの最小限の容量の術中血液をIBSレザーバに収集した後に、レザーバにおいて抗体を施用して、抗体の局所的な過剰濃度を回避しなければならず、そのことにより、抗体の高い局所濃度を回避でき、最終生成物ECへの過剰なレベルの抗体の持ち越しを著しく抑制できるという利点がある。好ましくは、最小限で400mlの未希釈術中血液を収集し、その後、遠心分離を開始して、抗体に対してリンパ球上の十分な結合部位を提供することができる。好ましくは、1500mlの最大限の容量の希釈剤と混合した収集術中血液がレザーバに達する場合、IBS装置の1回目の遠心分離は、2.5μgの第1回抗体用量で開始し、その後、手術野からさらなる術中血液を収集した場合に、さらに2.5μgの用量の抗体をレザーバに加えることができる。
【0072】
好ましくは、1500mlを超える術中血液が個別の患者から入手可能であるならば、最初の運転と同様の基準が満たされるならば、2回目のIBSを行うことができる。さらなる運転、例えば4回以上は、再注入される残存Abの量を制限するために、好ましくは回避する。好ましくは、2又は3回のECの操業中に蓄積される残存抗体の全量は、70ngを超えるべきでない。
比較的規定された三次元構造を有するタンパク質は、タンパク質足場と一般的によばれる。これらのタンパク質足場は、人工的に改変された抗体の設計のための試剤として用いることができる。これらの足場は、典型的に、特異的又は無作為配列変動に適する1つ以上の領域を含み、このような配列無作為化は、所望の抗体足場をそこから選択できるタンパク質のライブラリーを生成するためにしばしば行われる。このような足場は、抗体設計の分野において特に有用である。
【0073】
これらの抗体足場は、例えば腫瘍細胞及び免疫細胞との結合活性に関してモノクローナル抗体の特性を模倣する非免疫グロブリンタンパク質である。足場は、前記抗体足場の結合部位を形成するループ又はドメインをしばしば含む。これらの抗体模倣物は、実質的に任意の興味対象化合物と結合できるタンパク質を設計する目的のために用いることができる。この定方向進化アプローチは、興味対象の抗原について高い親和性を有する抗体様分子の生成をもたらす。さらに、これらの足場は、導入されたループと結合する分子の進化を駆動するために、規定された露出ループ(例えば以前に無作為化され、抗原結合に基づいて選択されたループ)を提示するために用いることができる。抗体様足場タンパク質をどのようにして得るかについての方法は、当該技術において既知である。以下に、抗体様足場タンパク質を得るための一つの可能性のあるアプローチを記載する。
【0074】
興味対象の無作為化又は変異タンパク質を単離又は同定するために有用な第一のスクリーニング方法は、(a)興味対象の化合物を、候補タンパク質と接触させることであって、候補タンパク質が、免疫グロブリン様折り畳みを有するドメインを含む誘導非抗体タンパク質であり、非抗体タンパク質が、変異アミノ酸配列を有することにより参照タンパク質から導かれ、非抗体タンパク質が、少なくとも1マイクロMほどきついKdで、参照タンパク質とはそれほどきつくは結合しない化合物と結合し、前記接触が、化合物-タンパク質複合体形成を可能にする条件下で行われることと、(b)複合体から、化合物と結合する誘導タンパク質を得ることとを含む。
【0075】
第二のスクリーニング方法は、興味対象の腫瘍関連タンパク質と結合する化合物を単離又は同定するためである。この方法は、免疫グロブリン様折り畳みを有し、変異アミノ酸配列を有することにより参照タンパク質から導かれるドメインを含む非抗体タンパク質から始まり、非抗体タンパク質は、少なくとも1μMほどきついKdで、参照タンパク質とはそれほどきつくは結合しない化合物と結合する。この誘導タンパク質を、次いで、候補化合物(腫瘍関連抗原又はそのエピトープ)と接触させ、前記接触は、化合物-タンパク質複合体形成を可能にする条件下で行われ、誘導タンパク質と結合する化合物が、複合体から得られる。ここでもまた、この一般的な技術は、任意のタンパク質を用いて行うことができる。
【0076】
興味対象の化合物(腫瘍関連抗原又はそのエピトープ)と結合する非抗体タンパク質を得るさらなる方法を、以下に記載する。このような方法の一つは、(a)免疫グロブリン様折り畳みを含む非抗体足場タンパク質を準備することであって、足場タンパク質が、1マイクロMほどきついKdで化合物と結合しないことと、(b)非抗体足場タンパク質の変異誘導体を作製することにより、変異タンパク質のライブラリーを生成することと、(c)ライブラリーを化合物と接触させることと、(d)ライブラリーから、少なくとも1μMほどきついKdで化合物と結合する少なくとも1種の誘導タンパク質を選択することと、(e)反復工程(b)における非抗体足場タンパク質を先の工程(d)からの生成物で置換して、工程(b)~(d)を所望により反復することとを含む。ここでもまた、この一般的な技術は、任意のタンパク質を用いて行うことができる。
【0077】
そのようにして生成された足場タンパク質は、上及び下に開示する抗体の機能を模倣し、免疫グロブリンベースの抗体の代わりに又はそれと組み合わせて用いることができる。本発明では、前記三官能性抗体は、T細胞との結合、腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原との結合、及びFc部分を介するFc受容体陽性細胞との結合に関して同じ機能をともに示す限り、前記足場タンパク質で置き換えて、細胞凝集体を含む術中回収血液を得ることができる。本発明では、前記三官能性抗体及び前記足場タンパク質は、単独又は組み合わせて施用できる。
【0078】
以下に、三官能性二重特異性及び三重特異性抗体についてより詳細に記載する。これらのモノクローナル抗体の完全な定義を提供するために、人体における作用機序に関してもここで三官能性二重特異性及び三重特異性抗体について記載することに留意されたい。しかし、前記三官能性二重特異性及び三重特異性抗体のこれらの固有の特性は、本発明において影響しない。なぜなら、抗体は、IBSからほぼ完全に、少なくとも検出不能又は関連しない程度までに除去され、腫瘍細胞枯渇赤血球濃縮液の再注入後の人体においていずれの関連する作用機序も提供しないからである。特に、本方法は、人体外のin vitroで行われ、このことは、EpCAM陽性腫瘍細胞及びCD3陽性T細胞との二重特異性結合部位を介する上記のカツマキソマブ結合及びその除去により説明できるので、抗体のいずれの固有の生物学的活性も生じ得ない。
【0079】
本発明で用いる抗体は、好ましくは、I、II及びIII型のFcγ受容体を介するFc受容体陽性細胞との結合によるFc受容体陽性細胞の結合のさらなる効果を特徴とする。
【0080】
好ましくは、本発明に従って用いる抗体は、そのFc部分中にFcγ受容体I、II及び/又はIII型との結合部位を含む。
好ましくは、本発明に従って用いる抗体は、Fcγ受容体陽性細胞である、単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球及び/又は好酸球性細胞と結合できる。
【0081】
本発明では、腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の表面で発現される腫瘍細胞で生成される抗原性物質のことをいう。
好ましくは、三官能性抗体又は足場タンパク質が結合する腫瘍関連抗原は、EpCAM、Her2neu、EGFR、CD30、CD20、CD22、MUC1、糖鎖付加パターンが変化したMUC1*、PSMA、CD33、MCSP、cMet、EphA2、エンドシアリン、炭酸脱水酵素、IGF-1R、FAP-アルファ、CD19、GD2、CEA、FR、プロテオグリカン、G250、GC182、GT468及びGT512からなる群より選択される。
【0082】
より好ましくは、三官能性抗体又は足場タンパク質が結合する前記腫瘍関連抗原は、EpCAM、Her2/neu、MUC1、EGFR、EphA2、GD2又はCD20である。
【0083】
好ましくは、本発明の三官能性抗体は、1種のT細胞表面抗原及び1種の腫瘍関連抗原を指向し、CD2、CD3、CD4、CD8、CD28、CD40L及びCD44からなる群より選択される該T細胞表面抗原は、EpCAM、Her2neu、EGFR、CD30、CD20、CD22、MUC1、糖鎖付加パターンが変化したMUC1*、PSMA、CD33、MCSP、cMet、EphA2、エンドシアリン、炭酸脱水酵素、IGF-1R、FAP-アルファ、CD19、GD2、CEA、FR、プロテオグリカン、G250、GC182、GT468及びGT512からなる群より選択される任意の腫瘍関連抗原と組み合わせることができる。
好ましくは、本発明の三官能性抗体は、CD3である1種のT細胞表面抗原及びEpCAMである1種の腫瘍関連抗原を指向する。
【0084】
好ましい抗体は、以下のアイソタイプの組み合わせの1種以上から選択される、好ましくはモノクローナルの、異種三官能性二重特異性抗体である:
・ ラット-IgG2b/マウス-IgG2a、
・ ラット-IgG2b/マウス-IgG2b、
・ ラット-IgG2b/マウス-IgG3、
・ ラット-IgG2b/ヒト-IgG1、
・ ラット-IgG2b/ヒト-IgG2、
・ ラット-IgG2b/ヒト-IgG3[東洋人のアロタイプG3m(st)=プロテインAと結合]、
ラット-IgG2b/ヒト-IgG4;
・ ラット-IgG2b/ラット-IgG2c;
・ マウス-IgG2a/ヒト-IgG3[白人のアロタイプG3m(b+g)=プロテインAと結合しない、以下において、*で示す]
・ マウス-IgG2a/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ マウス-IgG2a/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ マウス-IgG2a/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3*[CH2のC末端領域:>aa251位]-ヒト-IgG3*[CH3]
・ at-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ-CH2-CH3]
・ ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG2-[ヒンジ-CH2-CH3]
・ ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG3-[ヒンジ-CH2-CH3,東洋人のアロタイプ]
・ ラット-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ-CH2-CH3]
・ ヒト-IgG1/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3*[CH2のC末端領域:>aa251位]-ヒト-IgG3*[CH3]
・ ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3*[CH2のC末端領域:>aa251位]-ヒト-IgG3*[CH3]
・ ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG2[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3*[CH2のC末端領域:>aa251位]-ヒト-IgG3*[CH3]
ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG2[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3*[CH2のC末端領域:>aa251位]-ヒト-IgG3*[CH3]
・ ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ ヒト-IgG1/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ ヒト-IgG2/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG2-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ ヒト-IgG4/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG4-[ヒンジ]-ヒト-IgG4[CH2のN末端領域]-ヒト-IgG3*[CH2のC末端領域:>aa251位]-ヒト-IgG3*[CH3]
・ マウス-IgG2b/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ マウス-IgG2b/ヒト-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
・ マウス-IgG2b/マウス-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
【0085】
本発明による特に好ましい一実施形態において用いられる一価結合特異性を有する三官能性二重特異性抗体は、以下の特性を有する:
a)T細胞と結合する、
b)腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原と結合する、
c)そのFc部分を介してFc受容体陽性細胞と結合する、
三官能性二重特異性抗体は、さらに好ましくは、以下のアイソタイプの組み合わせを有する抗体の群から選択される:
ラット-IgG2b/マウス-IgG2a、
ラット-IgG2b/マウス-IgG2b、
ラット-IgG2b/ヒト-IgG1、
マウス-[VH-CH1;VL-CL]-ヒト-IgG1/ラット-[VH-CH1,VL-CL]-ヒト-IgG1-[ヒンジ]-ヒト-IgG3*-[CH2-CH3]
[*=白人のアロタイプG3m(b+g)=プロテインAと結合しない]。
【0086】
特に好ましくは、抗体、好ましくは、ラット-IgG2b/マウス-IgG2aのアイソタイプの組み合わせで、EpCAM及びCD3を指向する三官能性二重特異性抗体及び/又は足場タンパク質である。前記三官能性二重特異性抗体の好ましい例は、抗CD3×抗EpCAM抗体である。好ましくは、前記抗体は、モノクローナルである。
【0087】
好ましくは、本発明による抗体は、例えばFv、Fab、scFv又はF(ab)2断片を有する、モノクローナル、キメラ、組換え、合成、半合成又は化学改変インタクト抗体である。
【0088】
本発明の方法では、ヒト起源の抗体又は誘導体若しくは断片、又はヒトでの使用に適するように改変された抗体(いわゆる「ヒト化抗体」)を用いることができる(例えば、Shalabyら、J.Exp.Med.175(1992)、217;Mocikatら、Transplantation57(1994)、405を参照されたい)。
【0089】
上記の異なるタイプの抗体及び抗体断片の調製は、当業者に明らかである。好ましくは哺乳動物起源、例えばヒト、ラット、マウス、ウサギ又はヤギのモノクローナル抗体の調製は、例えばKohler及びMilstein(Nature256(1975)、495)、Harlow及びLane(Antibodies,A Laboratory Manual(1988)、Cold Spring Harbor)又はGalfre(Meth.Enzymol.73(1981)、3)に記載された従来の方法を用いて行うことができる。
【0090】
さらに、当業者に明らかな技術に従って組換えDNA技術により記載される抗体を調製することが可能である(Kuruczら、J.Immunol.154(1995)、4576;Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90(1993)、6444を参照されたい)。
【0091】
2つの異なる特異性を有する抗体、いわゆる二重特異性抗体の調製は、例えば、組換えDNA技術を用いて行うことができるが、いわゆるハイブリッドハイブリドーマ融合技術(例えばMilsteinら、Nature305(1983)、537を参照されたい)によっても行うことができる。この技術は、所望の特異性の1つを有する抗体をそれぞれ生成するハイブリドーマ株化細胞を融合し、両方の特異性を有する抗体を生成する組換え株化細胞を同定及び単離することを含む。
【0092】
本発明の基礎をなす課題は、好ましい実施形態において、本明細書に記載する特性及び効果を示すならば三官能性二重特異性又は三重特異性三官能性抗体のいずれかを用いることにより克服できる。本発明は、特に、三官能性二重特異性抗体により記載される。しかし、同様の効果を示す以下の三重特異性抗体もカバーすることが理解される。上において、用語「抗体」又は「足場タンパク質」が三官能性二重特異性抗体に言及し得るが、これは、同様の効果を示す以下の三重特異性抗体もカバーできることが理解される。
【0093】
本発明の課題を解決するためにこれもまた適切である3つの特異性を示す抗体、いわゆる三重特異性抗体の調製も、例えば、例えば「単鎖可変断片」(scFv)の形でさらなる特異性を有する第三抗原結合部位を、二重特異性抗体のIgG重鎖の1つに結合させることにより行うことができる。さらに、組換え技術、例えばタンパク質合成又はオリゴヌクレオチド合成のためのベクターに基づく方法を用いることができる。
【0094】
同様に、三重特異性F(ab)2構築物は、二重特異性抗体の1つの特異性の重鎖のCH2-CH3領域を、第三の特異性を有するscFvで置き換えることにより調製でき、他方の特異性を有する重鎖のCH2-CH3領域は、例えば、例えば相同組換えによりコード遺伝子に(「ヒンジ」5領域の末端に)停止コドンを挿入することにより除去できる。
【0095】
3つの異なる特異性を示す3つのVH-VL領域が直列に配置された三重特異性scFv構築物を調製することもできる。
【0096】
インタクトな二重特異性抗体は、それぞれある特異性を示す2つの抗体半分子(それぞれH及びL免疫グロブリン鎖を有する)と、さらに公知のエフェクター機能を行うFc部分を有する例えば通常の抗体とで構成される。これらは、好ましくは、クアドローマ技術を用いて調製される。この調製方法は、DE-A-4419399に例示される。完全な開示のために、この文献は、二重特異性抗体の定義に関しても参照によりその全体が組込まれている。本発明により必要とされる上記の定義に従うインタクトな二重特異性抗体を導くならば、他の調製方法も有用であることが理解される。
【0097】
例えば、インタクトな二重特異性抗体は、新しく開発された調製方法を用いて、十分な量で生成できる(Lindhoferら、J.Immunology、155:219(1995))。乳癌細胞上の2種の異なる腫瘍関連抗原(例えばc-erb-B2、EpCAM、例えばGA-733-2=C215)を指向する2種の二重特異性抗体の組み合わせは、抗原の一方のみを発現する腫瘍細胞が同定されないままになる危険性を最小限にする。
【0098】
本発明の方法に従って、腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原を認識する抗体又は足場タンパク質は、前記腫瘍細胞及び所望により免疫細胞への前記抗体の結合により形成される会合体を除去するために、ツールとして当該技術において用いられてきたであろう磁性粒子又は磁性ビーズのような手段と又はそれにより結合しない。さらに、従来技術は、例えば発色物質、例えば蛍光色素での腫瘍細胞又は抗体の標識化と、その後の細胞ソーティング、例えばフローサイトメトリーについて記載している。これとは反対に、本発明の原理は、フィルターに保持され得るか又は遠心力により分離されるのに十分なサイズの上記の三次元ネットワーク(会合体)の形成と、機械的手段、例えば濾過又は遠心分離又はそれらの組み合わせによる前記ネットワークの直接的除去にある。抗体との相互作用により形成される会合体のサイズは、濾過又は遠心分離により除去され得る大きさにある。抗体と腫瘍細胞との間の会合体を除去するための間接的補助手段として抗体又は腫瘍細胞と結合する磁性ビーズ又は類似のツールを用いる実施形態は、本発明と組み合わせることができる。腫瘍細胞を通常細胞から分離する分離方法、例えばフローサイトメトリー法も、本発明と組み合わせて用いることができる。
【0099】
用語「会合体」、「多重細胞複合体」及び「凝集体」は、交換可能に用いられ、遠心分離又は濾過又はそれらの組み合わせにより除去できる架橋腫瘍細胞を形成するための抗体、足場タンパク質、腫瘍細胞及び/又は免疫細胞並びに/或いはさらなる腫瘍細胞の間の三次元ネットワークを常に定義する。前記会合体は、抗体と、腫瘍細胞と、T細胞及び/又はFc受容体陽性細胞である免疫細胞とで具体的に構成される。
少なくとも1種の抗体は、会合体を得るために腫瘍細胞並びに所望により免疫細胞及び/又は他の腫瘍細胞を架橋するために十分な期間、前記術中に得られた回収血液と接触させる。好ましくは、前記腫瘍細胞及び前記免疫細胞は、前記術中に得られた回収血液中に存在する。前記腫瘍細胞は、前記少なくとも1種の抗体又は前記少なくとも1種の足場タンパク質により特異的に認識され得る。
【0100】
前記架橋を達成するために必要な期間は、慣例の方法を用いて当業者が決定できる。本発明において用いる期間は、細胞凝集体を含む術中回収血液を得るために、好ましくは10から180分間である。本発明では、接触期間は、好ましくは10と118分間の間、より好ましくは20と90分間の間、さらにより好ましくは30と60分間の間である。温度は、好ましくは、室温であり、その範囲は19℃から25℃、好ましくは約21℃であり得る。
【0101】
濾過は、好ましくは、腫瘍細胞を含む凝集体又は会合体が全て又は実質的に除去されるが、赤血球はフィルターを通過して回収される、白血球低減又は枯渇濾過である。フィルターは、本発明の方法により形成される会合体、並びに例えばフィブリンストランド及び死滅細胞の塊を保持する20μmから40μmの間の孔サイズを有するスクリーンフィルターから選択され得る。約8μmのサイズの赤血球は、フィルターを通過し得る。微小凝集体フィルターは、好ましくは、手術中又は後に回収される流出自己血液の再注入のために用いられる。
【0102】
分離方法を含むcell saver装置について記載する概説は、Carless PA、Henry DA、Moxey AJ、O’Connell D、Brown T、Fergusson DA、Cell salvage for minimizing perioperative allogeneic blood transfusion、2010、The Cochrane Collaboration、John Wiley&Sons,Ltd.であり、これは、参照により全体が組込まれている。
【0103】
赤血球含有画分のみを受容するための微小凝集体血液フィルターの例は、Pall SQ 40S輸血フィルターである。
遠心分離は、一般的に、密度勾配遠心分離工程と、その後の、前記腫瘍細胞を含む会合体を除去し、かつ前記腫瘍細胞会合体及び所望により白血球から赤血球を分離するために、生理食塩水を用いて十分な時間及び回転速度で洗浄することにより行われる。
濾過は、一般的に、前記腫瘍細胞を含む会合体を除去し、前記腫瘍細胞会合体及び所望により白血球から赤血球を分離するために十分な期間行われる。
好ましい実施形態では、混入腫瘍細胞を含まないか又は実質的に含まない前記赤血球の濃縮物は、生理食塩水の添加なしで用いられる。
【0104】
さらなる濾過工程は、残存会合体及び/又は白血球を除去するために用いることができる。
根底にある濾過技術は、目詰まりの問題を含む古典的でミクロン定格の手順とは異なるので、この進歩した腫瘍細胞除去方策は、実行可能であると考えられる。
腫瘍細胞の前記除去に含まれる時間が、抗体を用いる破壊、或いは磁性ビーズを用いる除去又は細胞ソーティング方法での除去による腫瘍細胞の枯渇と比較して、本発明により劇的に低減されることが、本発明の利点の一つである。
【0105】
本発明のその他の利点は、手術中の血液から得られる、生成された赤血球濃縮物からの腫瘍細胞が著しく低減され、手術を通じて外傷により手術野において生成される炎症誘発性サイトカインも著しく低減されることを含む。また、残存三官能性抗体は、再注入の準備ができた最終EC濃縮物中で問題にならない量まで低減できる。
本発明の方法により得られる血液製品は、好ましい実施形態によると、その後、出発血液試料を得た患者に再投与され、このことは、重篤な副作用を引き起こさない。
【発明を実施するための形態】
【0106】
実施例
以下において、本発明を行うための一つの例示的な例を記載する。このアプローチに従う当業者は、請求する利益を必ず得る。この例に従って、本発明から逸脱することなく様々な改変を行うことができる。以下の実施例は、上の開示を説明するためだけであり、本発明の範囲を限定するとみなされるべきでない。
【0107】
Catuvabを、運転装置の一部であり、標準としてECから白血球を除去する機械的自己血輸血装置と組み合わせて用いた。医療装置Catuvabキットは、以下の要素からなる:カニューレを有し、滅菌及び滅菌充填され、ヨーロッパ適合(CE)マークを付与された100μl緩衝液(滅菌充填)中に10μg抗体(カツマキソマブ)を含むシリンジ、5.7mL 0.9% NaCl溶液(滅菌充填)を含む6Rバイアル、100μLの目盛りを有し、カニューレを有する2つの2mLシリンジ(21G×1.5”、40mm)、シリコンホースを有し、標準連結を有する滅菌及び滅菌充填され、CEマークを付与された2つの滅菌LDF、孔サイズ40μm。調査している医療装置Catuvabの製造者は、LINDIS Blood Care GmbH、Neuendorfstr.20b,Henningsdorf,Germanyである。カツマキソマブは、マウス免疫グロブリンG(IgG)2a鎖及びラットIgG2b鎖からなる、生物学的に操作されたインタクトな三官能性二重特異性抗EpCAM×抗CD3結合モノクローナル抗体である[21,24,25]。
【0108】
EpCAMは、上皮組織由来の扁平上皮癌において強く発現され、上皮起源の様々な腫瘍(胃癌、卵巣癌、膵癌、結腸/直腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、膀胱癌、食道癌、子宮内膜癌、EpCAM陽性肝癌又は腹膜癌腫症)で見い出すことができる[25~27]。過去には、カツマキソマブは、癌性腹水及びEpCAM抗原を発現する上皮癌(例えば膀胱、卵巣、膵臓、肺、結腸、乳、前立腺及び胃癌)の腹腔内処置のための標的療法として開発された。上皮癌による癌性腹水の主要な徴候の処置において、欧州医薬品庁(EMA)は、2009年にカツマキソマブを承認した。商業的な理由から、この製品は、2017年に撤退した。
【0109】
Catuvab装置におけるカツマキソマブの主要な作用形態は、腫瘍細胞及びリンパ球/アクセサリー細胞の物理的な凝集と、機械的自己輸血の一部としての遠心分離及び濾過による細胞凝集体のその後の除去とからなる。(抗体のCD3特異的領域を介する)患者の術中血液中のリンパ球、腫瘍細胞及びFcγR陽性アクセサリー免疫細胞への抗体のex vivoでの同時結合は、より大きい細胞凝集体の形成を最終的に導く。
【0110】
[21]Ruf P、Kluge M、Jager M、Burges AらPharmacokinetics,immunogenicity and bioactivity of the therapeutic antibody catumaxomab intraperitoneally administered to cancer patients.British Journal of Clinical Pharmacology2007、69:6/617~625 2010.
[24]Riesenberg R、Buchner A、Pohla H、Lindhofer H.Lysis of prostate carcinoma cells by trifunctional bi-specific antibodies (alpha EpCAM x alpha CD3).Journal of Histochemistry&Cytochemistry2001;49(7):911~917.
[25]Schmitt M、Schmitt A、Reinhardt PらOpsonization with a trifunctional bispecific(aCD3 x aEpCAM)antibody results in efficient lysis in vitro and in vivo of EpCAM positive tumor cells by cytotoxic T lymphocytes.International Journal of Oncology2004;25(4):841~848。
[26]Spizzo G、Fong D、Wurm M、Ensinger C、Obrist PらEpCAM expression in primary tumour tissues andmetastases:an immunohistochemical analysis.Journal of Clinical Pathology2011;64:41.
[27].Keller L、Werner S、Pantel K.Biology and clinical relevance of EpCAM.Cell Stress.2019;3(6):165~180.
【0111】
準備的なin vitro研究において、処理中及び最終生成物において、術中血液中の3つのパラメータを調べて、安全性及び有効性を証明した:
1) EpCAM陽性腫瘍細胞
2) 炎症誘発性サイトカイン、及び
3) 残存抗体カツマキソマブ。
【0112】
手術中に蓄積した血液及びパージ溶媒を、骨片フィルターを含むレザーバ(例えばATR 120レザーバ、Fresenius Kabi)に収集した。レザーバに収集した血液及びパージ溶媒の混合物を、IBS装置(C.A.T.S.+、Fresenius Kabi、AT3 Autotransfusionsset,Fresenius Kabi)を用いて遠心分離及び洗浄し、赤血球濃縮液(EC)を得た。赤血球濃縮液(EC)を、40μm白血球除去フィルター(LDF、RS1、Haemonetics)を用いて濾過した(LDF試料3)。全ての分析用試料を、出力接続部/出口を介して抜き取り、滅菌管に収集した。抗体分析用に収集した試料を、1~2時間以内に凍結した(-20℃)。試料を、直ちにTrion Research GmbHに送った。サイトカイン分析用の血液試料を遠心分離し、上清(血漿)を収集し、1~2時間以内に凍結した(-20℃)。試料を、ドライアイス上に載せて直ちに分析実験室に送った。
【0113】
カツマキソマブをまず希釈し、規定量の希釈抗体(2.5μg又は5μgの抗体)を、レザーバの孔を介して、シリンジを用いて血液混合物に供給した。抗体を術中血液に分散させ、腫瘍及び免疫細胞の凝集体がおよそ30分以内に生じた。IBSの通常の洗浄及び濃縮処理中に、比較的低密度の細胞凝集体を、遠心分離により全体の混合物中の赤血球細胞から分離できた。第二の濾過工程(CatuvabのLDFフィルター)により、いずれの残存細胞凝集体も除去した。
【0114】
腫瘍細胞の分析により、69から約260.000までの範囲で、16の試験した患者試料のうち10の試料で、術中血液試料の63%において腫瘍細胞が存在することが証明された。重要なことに、Catuvab手順中に、すなわち三官能性二重特異性抗体を施用して、免疫細胞を腫瘍細胞で架橋することにより細胞凝集体を作製し、腫瘍細胞フリーの赤血球濃縮液を生成するために遠心及び濾過工程を組み合わせることを含むcell saver装置(機械処理自己輸血装置(MAT)ともいう)を用いて生成された最終赤血球濃縮液において、残存腫瘍細胞は検出されなかった。
【0115】
Catuvab手順の安全性の点について対応するために、ECの再注入後の可能性のある副作用について最も関連する指標の2つである炎症誘発性サイトカインIL-6及びIL-8を測定した。レザーバ中の未処理の収集された術中血液と比較して、最終生成物(EC)におけるIL-6の全量について、平均で28倍の低減が示された。IL-8については、平均で52倍もの低減が観察された。最終EC生成物中のIL-6及びIL-8の全量の平均値は、それぞれ53及び9ngであり、これらの量が患者の体内で約2000~3000倍に希釈され得ることを念頭に置くと、問題にならない値である。この解釈は、患者の体の血液容量は、約2~3リットルの血漿を含んで平均5~7リットルの間であるという計算に基づく。IL-6の測定されたピーク値264ngでさえ、このシナリオにおいては重要な値を導かない。よって、本研究のデータから、炎症誘発性サイトカインにより影響される安全性の点は、Catuvab手順について問題ではない。
【0116】
Catuvab手順を医療装置として承認する点に特における第三の重要なパラメータは、最終EC生成物中の残存抗体の量である。
ここで、研究中に2つの手順の変更を導入し(結果の項に記載する)、これらは、最終生成物中の残存抗体を強く低減した。よって、変更の実行後に、定量限界(125pg/ml)と9ngとの間の抗体全量だけが、最終EC生成物中で見いだされた。抗体を受けた15名全ての患者の測定値に基づいて推奨を与えることができ、ここで、ピーク値は最終生成物において69ngであった。よって、最終EC生成物中の70ngの量の抗体が、残存抗体についての限界を規定するために用られる値であり得る。
【0117】
研究の目的は、腫瘍手術中に収集された患者血液からの腫瘍細胞の除去のためにCatuvabを利用することと、Catuvab手順の前及び手順中、並びに最終生成物、すなわち赤血球濃縮液(EC)中の腫瘍細胞、サイトカイン及び残存カツマキソマブ抗体を評価することであった。
Catuvab手順は、(i)二重特異性三官能性抗体カツマキソマブを用いて、EpCAM陽性腫瘍細胞を、CD3陽性T細胞及びFcガンマ受容体陽性免疫細胞と架橋し、(ii)そのようにして作製したECから遠心分離工程中にこのような細胞凝集体を除去し、(iii)40μm白血球除去フィルター(LDF)を用いる最終濾過工程中に、細胞凝集体を含む残存腫瘍細胞を除去する。
本パイロット研究の試験的な特徴及び患者数が低いことにより、平均値を用いる記述統計のみを行った。
【0118】
1.材料
1.1.抗体
名称: カツマキソマブ
特徴的な特性: 二重特異性三官能性抗体(抗EpCAM×抗CD3)
供給業者/製造業者: Lindis Biotech GmbH/Trion Pharma GmbH
バッチ番号: 1Q01-0/1
濃度: 100μg/ml
貯蔵条件: 2~8℃
【0119】
1.2.術中血液
1.2.1 MAT/レザーバ
手術中に蓄積した血液及びパージ溶媒を、骨片フィルターを含むレザーバに収集した(MAT/レザーバ試料)。
【0120】
1.2.2 EK_b(EC)
レザーバに収集した血液及びパージ溶媒の混合物を、Cell Saver装置(Fresenius)を用いて遠心分離及び洗浄し、赤血球濃縮液(EC)を得た(Erythrozytenkonzentrat、EK_b試料)。
【0121】
1.2.3 LDF
赤血球濃縮液(EC又はEK_b)を、40μm白血球除去フィルター(LDF、Haemonetics)を用いて濾過して、もはや白血球細胞をほぼ含まない赤血球濃縮液を得た(LDF試料)
全ての分析用試料は、出力接続部/出口を介して抽出し、滅菌管に収集した。
【0122】
2.方法
2.1 フランクフルト大学病院による試料の作製
全ての試料は、手術中に収集し、腫瘍細胞検出用の血液試料は、手術後にTNTにより室温にて直ちに送り、次の朝午前9時までにTrion Research GmbHに到着した。抗体分析用に収集した試料は、1~2時間以内に凍結し(-20℃)、ドライアイスに載せてTrion Research GmbHに送った。サイトカイン分析用の血液試料は、遠心分離し、上清(血漿)を収集し、1~2時間以内に凍結し(-20℃)、これもまたドライアイスに載せてTrion Research GmbHに送った。
【0123】
2.2 Trion Research GmbHで行った方法
第一工程において、MAT、EK_b及びLDFに由来する試料から末梢血単核細胞(PBMC)及び可能性のある腫瘍細胞を、フィコール密度勾配遠心分離により単離した。第二工程において、cytospinを作製した。血液試料の処理及びcytospinの作製は、以下のSOPに従って行った:
・ AY-028.01「PBMCの単離(Isolierung von PBMC)」
・ TR-AS-0107-V01「細胞計数及び細胞生存性の決定」
・ TR-SOP-KF-004「カツマキソマブを用いる臨床研究におけるCytospinの調製」
さらに、MAT、EK_b及びLDF試料における抗体濃度を、以下のSOPを適用して、ELISA測定により決定した:
・ AY-006.02カツマキソマブ-ELISA
【0124】
試料が脂肪質ではなかったので重要でないと考えて、試料の脱脂は行わなかった。EK_b及びLDF試料は、遠心分離しなかった(MAT試料とは対照的に)が、試料希釈緩衝液と1:1で混合し、被覆ELISAプレートに直接入れた。この手順は、予備的な添加研究において示すように、より正確な結果を達成する。抗体測定用の全ての試料は、フランクフルトの研究側にてCatuvab手順を行っている間に収集し、1~2時間以内に凍結し、ドライアイスに載せてTrion Researchにいくつかまとめて発送するまで、<-15℃にて貯蔵した。Trion Researchにて、試料は、測定まで<-15℃にて貯蔵した。
【0125】
2.3外部の認定実験室が行った方法
外部の認定実験室は、EpCAM陽性腫瘍細胞の存在について、抗体BER-EP4を用いてcytospinを分析した。
【0126】
2.4 Synlab MVZ Labor Munchen Zentrum GbRが行った方法
Synlab MVZ Laborは、MAT、EK_b及びLDF試料中のサイトカインプロファイルを測定した。
【0127】
3.結果
2019年3月から2019年11月の間にドイツのフランクフルト大学病院にて腹部腫瘍切除を受ける16名の癌治療継続患者が、本研究に参加した(平均66.8歳)。EpCAM陽性であることが知られている腫瘍徴候のみ、例えば進行結腸癌、胆管細胞癌、食道癌、卵巣癌、膵癌、胆管癌、直腸癌及び肺門周囲胆管細胞癌を選択した。本臨床研究プロトコールは、2018年12月に、フランクフルト大学病院倫理委員会により承認され(第325/18号)、各患者は、インフォームドコンセントを受けた。全ての患者は、手順を認識しており、流出血液を研究目的のために収集し、患者に輸血して戻さないかもしれないことを知らされていた。
【0128】
Catuvab手順を、15名の患者の術中血液に対して手術中に体外で施用した。1名の患者(第9号)の収集血液に対しては、抗体を施用しなかった(レザーバにおいて抗体が検出できず、データ示さず)ので、この患者及び関連する試料は、統計学的計算から外した。文献に従ってEpCAM陽性であることが知られている腫瘍徴候のみを選択した(表1を参照されたい)。術中血液混合物(血液及び希釈流体)の容量は、500mlから2800mlまでの範囲であり、手術中に加えた希釈液の容量は、0から2500mlまでの範囲であった。腫瘍細胞凝集体を作成するために2.5μgのカツマキソマブで処理した患者試料の群について、未希釈術中血液の容量は、300と1300mlの間の範囲であった。5μgで処理した患者試料の群について、未希釈(及び希釈)術中血液の容量は、300ml(1400ml)から2550ml(2600ml)までの範囲であった。
【0129】
3.1 術中血液中のEpCAM陽性腫瘍細胞の検出
EpCAM陽性腫瘍細胞の検出及び定量は、腫瘍マーカーEpCAM及びサイトケラチンを用いる免疫蛍光染色により行った。リンパ球及び腫瘍細胞についての分離媒体として、Ficoll-Paqueを用いる密度勾配遠心分離を用い、これらのリンパ球及び腫瘍細胞は、cytospin調製物の遠心分離後に染色した。これらのcytospinを、抗体BER-EP4を用いて、EpCAM陽性腫瘍細胞の存在について分析した。腫瘍細胞の定量は、デジタル画像分析(Applied Imaging)を内蔵する免疫蛍光顕微鏡分析により行った[28]。
[28].Jager M、Schoberth A、Ruf P、Hess Jら:Immunomonitoring results of a phase II/III study of malignant ascites patients treated with the trifunctional antibody catumaxomab(anti-EpCAM x anti-CD3).Cancer Research2012、72(1):24~32.
【0130】
16個の患者術中血液試料のうち10個において(62.5%)、Catuvab手順の異なる工程(レザーバ及び/又はEC)にてEpCAM陽性腫瘍細胞が検出された。EpCAM陽性腫瘍細胞の量は、EC試料(濾過前)で見いだされた69からMAT-レザーバにおける263.076までの範囲であった。重要なことに、最後の精製工程(濾過)の後にEC最終生成物において腫瘍細胞は検出されなかった(表2)。腫瘍細胞の染色は、癌に由来するEpCAM陽性腫瘍細胞の検出についての経験が豊富な外部の認定実験室のチームにより行われた。
【0131】
3.2 炎症誘発性サイトカインIL-6及びIL-8の測定
カツマキソマブは、異なる種類の免疫細胞を活性化する能力があることがよく知られているので、この測定の狙いは、Catuvab手順中の炎症誘発性サイトカインの増加の可能性を決定することであった[29]。試料をSynlab MVZ laboratory(Munich,Germany)に送り、サイトカインを、磁性マイクロスフェアビーズを用いるLuminex(登録商標)Corporation Multiplex技術により決定した。このMultiplex ELISAは、特定のサイトカインと結合する独特な蛍光サイン被覆マイクロビーズに基づき、これらのサイトカインは、レーザ技術によりその後測定される。
[29].Zeidler R、Reisbach G、Wollenberg BらSimultaneous activation of T-cells and accessory cells by a new class of intact bi- specific antibody results in efficient tumor cell killing.Journal of Immunology1999;163(3):1246~1252.
【0132】
Catuvab手順中に、安全性パラメータを評価するために炎症誘発性サイトカインを測定するための試料も採取した。つまり、IL-6及びIL-8を、レザーバ中で架橋抗体カツマキソマブの添加前に、そしてEC中で濾過(最終生成物)の前後に測定した。カツマキソマブは、異なる種類の免疫細胞を活性化することがよく知られているので、この測定の狙いは、Catuvab手順中の炎症誘発性サイトカインの増加の可能性を決定することであった。
【0133】
表1に示すように、術中血液中のIL-6(及びIL-8に下線)の値は、レザーバ中でカツマキソマブの添加前に定量レベル未満(4pg/mlのBLQ;6pg/ml)から2633pg/ml;518pg/ml(平均:662pg/ml;129pg/ml)までであった。カツマキソマブの添加後に、値は、EC(濾過前)中で49から1070pg/ml(平均:339pg/ml;323pg/ml)までの範囲であった。EC中で濾過後に、値は、20;BLQから2488pg/ml;139pg/ml(平均:516pg/ml;46pg/ml)までの範囲であった。Catuvab手順中に術中血液の容量はレザーバ中の例えば2800ml(平均:1461ml)からEC中の40ml(平均:99ml)まで減少したので、サイトカインの全量もレザーバ及びEC(濾過後)中で計算して、(i)Catuvab手順中のサイトカインの全量の低減と、(ii)患者に再注入できるであろうサイトカインの量とを評価した。サイトカインIL-6;IL-8の全量は、レザーバ中の収集術中血液中で5.2ng、8.4ngから7372ng;901ng(平均:1502ng;204ng)までの範囲であった。Catuvab手順の完了後に、IL-6;IL-8の値は、EC(最終生成物)中で1ng;0.1ngから264ng;16ng(平均:53ng;3.9ng)までの範囲であった。平均値については、レザーバ中の未処理収集術中血液と比較して、最終生成物(EC)中のIL-6;IL-8の全量について28倍;52倍の低減があった。
【0134】
3.3 濾過後のEC最終生成物中の残存抗体(カツマキソマブ)の評価
カツマキソマブ濃度を、確立された2サイトELISAにより測定した。簡単に述べると、カツマキソマブを、抗ラットIgG軽鎖特異的抗体(LA1B12、TRION Research、Munich,Germany)で捕捉した。結合したカツマキソマブを、次いで、抗マウスIgG2a特異的ビオチン標識検出抗体(BD Pharmingen、San Diego,CA)で検出した。次いで、ストレプトアビジン-b-ガラクトシダーゼ及びその対応する基質であるクロロフェノールレッド-β-D-ガラクトピラノシド(Roche Diagnostics、Mannheim,Germany)を加え、比色反応を570nmにて測定した。カツマキソマブ濃度を、標準曲線上での補間により計算した。アッセイの定量の下限(LLOQ)は、125pg ml-1と決定し、定量の上限は、4000pg ml-1と決定した。全ての試料は、1点につき2回測定する前に1:2に希釈した[21,28]。
[21].Ruf P、Kluge M、Jager M、Burges AらPharmacokinetics,immunogenicity and bioactivity of the therapeutic antibody catumaxomab intraperitoneally administered to cancer patients.British Journal of Clinical Pharmacology2007、69:6/617~625 2010.
[28].Jager M、Schoberth A、Ruf P、Hess Jら:Immunomonitoring results of a phase II/III study of malignant ascites patients treated with the trifunctional antibody catumaxomab (anti-EpCAM x anti-CD3).Cancer Research2012,72(1):24~32.
【0135】
医療装置についての重要な必要条件は、患者に再注入することを意図する最終生成物中に抗体が存在しないか又は残存抗体が非常に低いことである。よって、定量限界が125pg/mlという非常に感度の高いELISAアッセイを用いて残存抗体を測定した。
【0136】
パイロット研究中に、抗体の異なる施用様式について調べた。つまり、患者1~10について、抗体の施用様式は明確に規定されておらず、いくつかの場合では、抗体は術中血液の収集開始前のレザーバ中でまず施用した。抗体の測定により、そのような施用計画では抗体の分散が不十分で、レザーバの底で抗体の局所的に高い濃度が発生したことが明らかになった。その結果、未結合の抗体が蓄積し、最終EC生成物中でCatuvab手順の最後にもまだ比較的高い量で検出された。このことは、患者2及び7でそうであり、これらの患者では、比較的高い抗体濃度が、2.5μgの抗体の施用後に1.694pg/ml及び1.026pg/mlで測定された(表3)。
【0137】
状況を改善する限りにおいて、患者11~16において、レザーバ中に350mlの最小限の収集術中血液容量が入っている後にのみ抗体を施用して、免疫細胞及びEpCAM陽性腫瘍細胞と抗体とがよりよい相互作用及び結合ができるようにした。2.5μgの施用後に抗体濃度は、患者11及び16においてBLQに下落し、患者15において160pg/mlに下落したので、実験設定のこの変更は、明らかに状況を改善した。
【0138】
別の重要な発見は、術中血液の容量が多い場合(>1500ml)、追加の抗体(+2.5μg)をレザーバに施用すると、最終生成物中で見いだされる抗体の濃度も高くなり得るということであった。つまり、患者12及び13において、比較的高い濃度の抗体、888pg/ml及び628pg/mlが検出された。
【0139】
これらの結果は、IBSサイクルあたり術中血液の容量を1,500mLに制限することを示唆した(術中血液の全量が≧1,500mLならば、2回目のサイクルを開始できる)。患者14~16から開始してレザーバ中の抗体の施用に関する両方の改善を確立した後に、最終EC中で見いだされる抗体の全量は、BLQ(≦125pg/mL)から9ngまでの範囲であった(表3)。
【0140】
よって、主研究のプロトコールについて、1500ml術中血液の収集と2.5μgの抗体の供給との後に、遠心分離をまず開始し、その後、新しいCatuvab手順の開始及び新しい抗体(2.5μg)の供給とともに術中血液の新しい収集を開始できることを決定した。
【0141】
本研究の別の重要な狙いは、最終ECと一緒に患者に戻す可能性がある抗体の全量を測定することである。
ここで、検出された抗体の全量は、患者1~10において抗体施用を改善する前に、BLQから69ngまでの範囲であった(2.5μg施用群)。レザーバ中での抗体施用の改善を確立した後に、最終ECで見いだされた抗体の全量は、2.5μg施用群においてBLQから9ngまで、5μg群においてBLQから59ngの範囲であった(表3)。
【0142】
4 考察
15名の腫瘍患者の術中血液を、遠心分離及び濾過工程と組み合わせて三官能性抗体を含む医療装置手順に供する上の例において、以下の基準を満たすために、パラメータを最適化した:
1) 術中血液からの生成された赤血球濃縮液からの腫瘍細胞の除去。
2) 手術による外傷により手術野で生成される炎症誘発性サイトカインの低減
3) 免疫及び腫瘍細胞を架橋するために用いた三官能性抗体の、再注入の用意ができた最終赤血球濃縮液(EC)中で問題にならない量までの低減
【0143】
最適化のために、以下のパラメータを調べて規定した:
1) 抗EpCAM、抗CD3及びFc-ガンマ受容体陽性細胞と結合するFc部分の特異性を有する用いる三官能性抗体に対する十分な結合部位を有する、最小限の量のリンパ球及び単球。最小限の量の免疫細胞は、上皮起源の抗EpCAM結合アーム腫瘍細胞とも架橋して細胞凝集体(細胞複合体)を作製し得る用いる三官能性抗体の定量的結合も可能にし得る。
2) よって、実験は、2.5μgの量の抗EpCAM×抗CD3三官能性抗体が、約300×10e6リンパ球及び単球を含む最小限で300mlの未希釈術中血液と定量的に結合し得ることを証明する。未希釈術中血液の最小限の量は、例えばsolo-sterofundin溶液で5倍まで希釈しても、上記の基準をまだ満たすことができる。その結果、残存抗体は、最終EC生成物中で、定量限界未満(BLQ)から9ngまでと決定された。
3) 三官能性抗体により免疫細胞を腫瘍細胞と架橋した後にMAT-cell saver装置で遠心分離することにより生成した赤血球濃縮液は、免疫細胞及び容量が強く低減された。ECをその後濾過すると、炎症誘発性サイトカインIL-6及びIL-8の量が、未処理の術中血液と比較して、それぞれ28及び52倍低減された、再注入の用意ができた最終EC生成物が作製された。
【0144】
概念実証研究において、LDF後にEC中で実質的な残存抗体があった患者の詳細な分析をしたところ、上の例において回避しなければならない、この観察結果の原因となる状況が明らかになった。つまり、最小限の容量(300~400ml)の術中血液をIBS-レザーバに収集した後にレザーバ中で抗体を施用して、抗体の局所的に過剰な濃度を回避しなければならない。第二に、最小限の未希釈術中血液(400ml)を収集した後にCatuvab手順を開始して(ECを生成するための遠心分離の開始)、抗体に対する十分なリンパ球の結合部位を提供することができる。1500mlの最大限の容量の収集術中血液混合物(血液及び希釈剤)にレザーバ中で達した場合は、IBS装置の1回目の遠心分離を2.5μgの最初の抗体用量で開始し、その後、手術野からさらなる術中血液が収集された場合は、さらに2.5μgの用量のカツマキソマブをレザーバに加えることができる。
【0145】
1500mlを超える術中血液が個別の患者から入手可能ならば、1回目の運転と同様の基準が満たされるならば2回目のIBSを行うことができる。さらなる運転(3回目以上)は、再注入される残存Abの量を制限するために、許容されない。一般的に、EC中に2回の運転で蓄積される残存抗体の全量は、70ngを超えるべきでない。
【0146】
Catuvab手順を医療装置として承認する観点で特に重要な第三のパラメータは、最終EC生成物中の残存抗体の量である。ここで、手順の2つの変更点[(i)最小限の量の術中血液を収集した後に抗体を加えなければならない、(ii)1500mlの術中血液が収集された場合、手順を開始し、より多い容量の術中血液について2回目の手順を開始しなければならない]を、研究中に導入し(結果の項に記載する)、このことは、最終生成物中の残存抗体を強く低減した。よって、変更の実行後、定量限界(125pg/ml)と9ngとの間の抗体の全量だけが最終EC生成物中で見いだされた。
【0147】
手術中の腫瘍細胞の広がりは、切除線に残った腫瘍細胞、不注意による腫瘍の破壊、腹腔内に既に存在していた腫瘍細胞、又は加圧による血液中への術中の放出に起因する可能性があるが、循環腫瘍細胞による可能性は低い[30,31]。いくつかの研究により、腫瘍細胞は、自己再注入バッグ中の濃厚赤血球において62%~90%の場合に一般的に検出され、これらの細胞は増殖能、侵襲性及び腫瘍形成能を示すことが示されている[30,32,42]。Hansenら[30]は、手術野から同定される腫瘍細胞が、末梢血液中を循環するものとは異なり、腫瘍細胞の検出頻度及び数がともに、手術の最後に循環中にあるものよりも手術野においてかなり高いことを示唆した。IBS自体が、ほとんどの場合、腫瘍細胞を除去するために十分でないことも見出された[32]。
【0148】
この問題に対処するために、白血球除去フィルター(LDF)を、脊椎癌患者、並びに前立腺、尿路上皮、腎臓及び肝臓の癌を含む種々の泌尿器科の悪性腫瘍において試験している[33~36]。
Kumarら[37]は、LDFを用いるIBSが、11名の試験した対象のうち8名において、脊椎腫瘍手術における回収血液から腫瘍細胞を効果的に排除できることを示した。LDFによる腫瘍細胞の捕獲の機構は、機械的ふるいと非特異的な生物学的接着プロセスとの組み合わせのようである[38]。しかし、臨床設定において腫瘍細胞が完全に濾過されるか、また、LDFが腫瘍細胞転移の危険性を排除するかは、まだわからないままである。よって、例えばドイツにおける規制ガイドライン(Querschnittsleitlinie der Bundesarztekammer 2020、www.baek.de)は、癌手術中に得られた術中血液からの自己ECの再輸血を禁止している。
【0149】
Wuら[39]は、メタ分析を行って、悪性疾患の手術における同種輸血に対する純粋なIBSの腫瘍学的安全性について評価した。LDFを用いるIBSは、費用対効果の比率又は腫瘍手術における有効性とは関係なく、腫瘍再発率に関して同種血液と同等であることが報告された。他の文献、例えばLinderら(European Urology 63(2013)、839~845頁)は、同種輸血を行った患者は、輸血なしの患者よりも高い腫瘍再発率を示すことを報告した(843頁を参照されたい)。しかし、報告されたデータは、腫瘍細胞を濾過するLDFの能力が、充填量により制限されることを示唆する。つまり、腫瘍細胞の数が多すぎる場合(≧2×103)、フィルターは、腫瘍細胞を完全に除去することができず、腫瘍の遠隔での広がりの危険性が残ることになる[38,40,41]。
【0150】
代案として、再注入前の血液の照射も提案されている。血液照射は、腫瘍細胞の数を10から12log確実に低減し、これは、全ての腫瘍細胞を排除するために十分であるとみなされる[42]。しかし、Spyratouら(Journal of Medical Physics、2019年4月~6月、第44巻、第2号、113~117頁)は、放射線が細胞とともに膜の細胞骨格の機械的特性に対して負の影響を示すので、赤血球の機能に負に影響することを示した。それに加え、照射は、悪性細胞のDNAを損傷し、増殖能力を低減する。照射処理は、特別な大規模照射装置を必要とするとともに、厳格な放射線防御管理も必要である。世界の医療施設のほとんどはそのような状態ではなく、照射処理は、手術室では通常完了できず、このことは、当然に、広く臨床的に照射を実行する制限となる。
【0151】
腫瘍手術中に収集された血液から転移能を有する[43,44]EpCAM陽性腫瘍細胞を除去するための効果的で実行容易な方法が、モノクローナル抗EpCAM抗体カツマキソマブの選択性に基づいて発明された。Walcherら(Frontiers in Immunology、2020年8月、第11巻、文献1280)も、EpCAMを治療バイオマーカーとして、そして癌幹細胞のマーカーとして評価し、結腸直腸癌及び乳癌において異なる抗体フォーマットを用いてEpCAMを標的にしたと記載している。EpCAMは、>90%の範囲で上皮固形癌のタイプの広いスペクトラムにより発現され(例えば卵巣、胃、結腸、膵臓、膀胱、前立腺、子宮内膜及び非小細胞肺癌)[26,27]、カツマキソマブは、その高い親和性及び細胞結合能[22]のおかげで非常に低いEpCAM発現レベルでさえ結合でき、このことにより、Catuvabを、広いスペクトラムの固形癌手術に適用することができる。
【0152】
ここで、我々は、Catuvab手順を逃れる可能性があるEpCAM陰性腫瘍細胞の役割について論じなければならない。この関係において、3つの条件を考慮すべきである。まず、>90%の症例においてEpCAMを発現する癌の徴候のみを考慮すべきである。第二に、EpCAM陰性腫瘍細胞も、三官能性抗体の結合及び架橋能力とは独立して、遠心分離及び濾過工程により90%まで低減される(フィルター特性)。第三に、いくつかの文献が、EpCAM陰性腫瘍細胞と比較して、EpCAM陽性癌細胞の転移能がより高いことを証明している[43,44]。これらをまとめると、残存EpCAM陰性腫瘍細胞の混入の可能性に関して、Catuvabを用いる危険性/利点の比率は許容範囲であるが、さらなる臨床評価が必要であるとみられる。
【0153】
本パイロット研究は、血液収集手順において容易にCatuvab手順を実行できることを示した。術中血液中の腫瘍細胞レベルが高い場合でさえ(例えば>2.6×105)、最終LDF濾過工程の後にこれらの細胞を排除できた。IL-6及びIL-8の量は、それぞれ平均で28倍及び52倍に著しく低減でき、このことは、手順のサイトカインの洗い流し効果を示す。最終生成物中のIL-6及びIL-8の全量の平均値は、対象の体内でおよそ2,000から3,000倍の希釈率になることに鑑みて、問題にならないと考えられる。この解釈は、患者の体の血液容量は、約2~3リットルの血漿を含んで平均5~7リットルの間であるという計算に基づく。IL-6の測定されたピーク値264ngでさえ、このシナリオにおいては問題となる値を導かない。よって、炎症誘発性サイトカインに関する安全性の点は、Catuvab手順について問題でない。
【0154】
検出された残存カツマキソマブ抗体は、16個の最終EC生成物のうち8つにおいて量が減少しており(平均で37ng)、このことは、マウスにおけるLD50>5.0mg/kgに関して問題ではなく[45]、カニクイザルにおいて300μg/kgまで非毒性サインとみなされ[46]、桁違いにEC中の残存薬物及び一般的な臨床経験を超える[28]7μgのMTDが臨床試験において静脈内で確認されている[47]。
【0155】
5.結論
自己輸血装置自体は腫瘍細胞を除去するのに十分でなく[30,31]、追加の施策、例えばLDFの使用は、腫瘍細胞の再導入の危険性を著しく低減するが、回収血液中の腫瘍の存在量が多い場合には失敗した[38]ので、混入の危険性は残ったままである。患者数が少ないにもかかわらず、このex vivo研究の結果は、EpCAM陽性腫瘍細胞の完全な除去を示し、このことは、臨床研究において実証されなければならない。
【0156】
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【0157】
6.略語
Ab:抗体
BLQ:定量限界未満
CCA:胆管細胞癌
EC:赤血球濃縮液
EpCAM:上皮細胞接着分子
Esoph.:食道癌
IBS:術中血液試料
IL:インターロイキン
LDF:白血球除去フィルター
ND:レザーバ中で抗体検出不可
Ovar.:卵巣癌;
Pancr.:膵癌;
pCCC:肺門周囲胆管細胞癌
Vol.:容量
【0158】
【0159】
【0160】
【国際調査報告】