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特表2023-547203ジニトリルの水素化によりジアミンを製造するための触媒、その製造方法、およびその使用
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  • 特表-ジニトリルの水素化によりジアミンを製造するための触媒、その製造方法、およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ジニトリルの水素化によりジアミンを製造するための触媒、その製造方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/755 20060101AFI20231101BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20231101BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231101BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20231101BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20231101BHJP
   C07C 209/48 20060101ALI20231101BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
B01J23/755 Z
B01J37/03 A
B01J37/08
B01J37/03 B
B01J23/80 Z
B01J23/883 Z
C07C211/27
C07C209/48
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525992
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 CN2021126727
(87)【国際公開番号】W WO2022089487
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011164914.3
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】塗雲寶
(72)【発明者】
【氏名】宗弘元
(72)【発明者】
【氏名】劉仲能
(72)【発明者】
【氏名】徐曉清
(72)【発明者】
【氏名】白雪
(72)【発明者】
【氏名】劉旭
(72)【発明者】
【氏名】付偉
(72)【発明者】
【氏名】王艶紅
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA07A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB10C
4G169BB12C
4G169BB16C
4G169BB20C
4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD01C
4G169BD06C
4G169CB06
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB08
4G169FB09
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
4H006AA02
4H006AC52
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA30
4H006BA81
4H006BA85
4H006BE20
4H039CA71
4H039CB30
(57)【要約】
本発明は、ジニトリルの水素化によりジアミンを製造するための触媒を開示し、当該触媒は、以下の成分:a)活性成分であって、前記活性成分はNiおよび/またはその酸化物を含む、活性成分;b)補助剤であって、前記補助剤はMg、Cu、Co、Zn、Zr、Moおよび/またはそれらの酸化物のうちの1つ以上を含む、補助剤;およびC)担体;または、それらの反応生成物を含み、前記触媒中のα-NiOの相対含有量は、2.0a.u.未満である。本発明は、ジニトリルの水素化によりジアミンを製造するための方法も開示する。本発明の触媒および方法は、過剰な水素化副生成物の生成を大幅に低減し、目的生成物の全体的な選択性を改善する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒であって:
a)活性成分であって、前記活性成分はNiの酸化物を含む、活性成分;
b)補助剤であって、好ましくは、前記補助剤はMg、Cu、Co、Zn、ZrおよびMoの酸化物のうちの1つ以上を含み、より好ましくは、前記補助剤はCu、Co、ZrおよびMoの酸化物のうちの1つ以上を含む、補助剤;
c)担体;
を含み、
前記触媒中のα-NiOの相対含有量は、2.0a.u.未満、例えば1.5a.u.未満、さらに例えば0.2a.u.未満である、
触媒。
【請求項2】
重量部基準で、
前記活性成分の含有量は、10~60部、例えば15~55部であり;
前記補助剤の含有量は、0.1~120部、例えば0.2~90部であり;
前記担体の含有量は、0.1~45部、例えば1~35部である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記担体は、アルミナ、シリカおよびゼオライトのうちの少なくとも1つ、例えばアルミナであり;好ましくは、前記担体は、500℃以上の温度で処理された担体である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記担体はアルミナを含み、アルミナの重量基準で、α-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナの割合がそれぞれ0.1~99%、0.1~99%、0.1~99%、0.1~99%、0.1~99%、好ましくは10~95%、1~70%、2~90%、5~90%、3~80%である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒は、二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための触媒である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒中のα-NiOの相対含有量は、0.0001a.u.超、例えば0.001a.u.超、さらに例えば0.01a.u.超であり;または、前記触媒中のα-NiOの含有量は、0.0001重量%超、例えば0.001重量%超、さらに例えば0.01重量%超である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
先行する請求項のいずれか1項に記載の触媒を製造するための方法であって、
前記方法は、以下の工程:
1)改質担体を製造するために、補助塩の溶液、第1の沈殿剤の溶液、担体および水の第1の接触を実行する工程;
2)触媒を製造するために、ニッケル塩の溶液、第2の沈殿剤の溶液、工程1)から得られた前記改質担体、および水の第2の接触を実行し、濾過し、焼成する工程、
を含み、
例えば、工程1)において、前記第1の接触を実行するために、前記担体を含む前記水に、前記補助塩の溶液および前記第1の沈殿剤の溶液を同時に添加し、および/または、工程2)において、前記第2の接触を実行するために、工程1)から得られた前記改質担体を含む前記水に、前記ニッケル塩の溶液および前記第2の沈殿剤の溶液を同時に添加する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項8】
工程1)において、使用される前記担体は、500℃以上の温度で処理された担体であり、好ましくは、使用される前記担体は、500℃超の温度で処理された担体である、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の接触で得られる溶液、および前記第2の接触で得られる溶液は、最終pH6.0~10.0、例えば6.0~8.0に制御され、
例えば、前記第1の接触および/または前記第2の接触の温度は50~90℃であり、および/または、前記第1の接触および/または前記第2の接触の時間は3~6時間である、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記補助塩は、Mg(NO、Cu(NO、Co(NO、Zn(NO、Zr(NO、(NHMoO、Mg(NO・6HO、Cu(NO・3HO、Co(NO・6HO、Zn(NO・6HOおよびZr(NO・5HOのうちの1つ以上から選択され、例えばCu(NO、Zr(NO、(NHMoOおよびCo(NOのうちの1つ以上から選択され;
および/または、前記第1の沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびアンモニア水のうちの1つ以上から選択され、好ましくは、前記第1の沈殿剤は炭素を含まず、より好ましくは、前記第1の沈殿剤は水酸化ナトリウムおよび/またはアンモニア水であり;
および/または、前記ニッケル塩は、硫酸ニッケルおよび/または硝酸ニッケル、例えば硝酸ニッケルであり;
および/または、前記第2の沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびアンモニア水のうちの1つ以上から選択され、好ましくは、前記第2の沈殿剤は炭素を含み、より好ましくは、前記第2の沈殿剤は炭酸ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウムである、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
工程1)において、前記補助塩の溶液は、0.1~1.5mol/L、例えば0.3~1.2mol/Lの濃度を有し;および/または、前記第1の沈殿剤の溶液は、0.4~2.0mol/L、例えば0.6~1.6mol/Lの濃度を有し;および/または、水中の前記担体の含有量は、5~100g/L、例えば20~80g/Lであるか、または5~20g/L、例えば8~15g/Lである、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
工程2)において、前記ニッケル塩の溶液は、0.2~1.5mol/L、例えば0.5~1.2mol/Lの濃度を有し;および/または、前記第2の沈殿剤の溶液は、0.4~2.0mol/L、例えば0.6~1.5mol/Lの濃度を有し、および/または、水中の前記担体の含有量は、10~100g/L、例えば20~85g/Lであるか、または10~30g/L、例えば12~25g/Lである、
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための方法であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒、または請求項7~12のいずれか1項に記載の方法で製造された触媒の存在下で、前記二塩基性ニトリルを水素ガスと接触させて、前記二塩基性アミンを生成し、例えば、水素ガスと二塩基性ニトリルとのモル比率は、3:1~70:1、例えば5:1~20:1であることを含み、
例えば、反応の温度は、50~120℃、例えば60~80℃であり;および/または、前記反応の圧力は、4.0~15.0MPa、例えば4.0~12.0MPa、さらに例えば6.0~10.0MPaであり;および/または、前記反応の液空間速度は、1~12時間-1、例えば2~10時間-1である、
方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒、または請求項7~12のいずれか1項に記載の方法で製造された触媒、または請求項13に記載の方法の、二塩基性ニトリルの水素化による二塩基性アミンの製造における、
特に、脂肪族C~C24二塩基性ニトリル(アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、ノナンジニトリル、デカンジニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、トリデカンジニトリル、テトラデカンジニトリル、ペンタデカンジニトリル、ヘキサデカンジニトリル、ヘプタデカンジニトリル、もしくはオクタデカンジニトリルなど)、または芳香族C~C18二塩基性ニトリル(フタロニトリル、イソフタロニトリル、もしくはテレフタロニトリルなど)の水素化による、脂肪族C~C24二塩基性アミン(ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、もしくはオクタデカンジアミンなど)、または芳香族C~C18二塩基性アミン(オルト-ベンゼンジメタンアミン、メタ-ベンゼンジメタンアミン、もしくはパラ-ベンゼンジメタンアミンなど)の製造における、
使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は二塩基性アミン製造の分野に属し、特に、二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための触媒およびその製造方法、二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための方法、ならびにその使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
エポキシ樹脂硬化剤の原料として、m-キシリレンジアミン(メタ-ベンゼンジメタンアミン)を用いることができる。m-キシリレンジアミンから製造される硬化剤は、芳香族脂肪族アミンを含むため、改質エポキシ樹脂硬化剤として使用することができる。その特性は、室温での硬化速度の加速;良好な耐熱性;耐水性および耐薬性;ならびに良好な湿潤硬化能および表面光沢を含む。m-キシリレンジアミンから製造される硬化剤は、コーティング、接着剤、およびエレクトロニクス用品に広く使用されている。
【0003】
m-キシリレンジアミンはまた、MXナイロンおよびその誘導体、特にMXD6(アジピン酸と共に製造される)を合成するための原料としても使用される。このナイロンは、高温域での高い強度および弾性、高い変形温度、低い熱膨張率(合金と同等)を特徴とする。このナイロンは、精密成形に適しており、高温での焼き付けおよびコーティングに使用できる。製造されたフィルムは、高い透明性および酸素不透過性を有し、食品包装に適している。製造された繊維は、高い強度を有する。
【0004】
また、ポリウレタン樹脂の原料として、m-キシリレンジアミンを用いることもできる。m-キシリレンジアミンはメタ-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンを製造するために使用することができ、これは、さらにポリウレタン樹脂を合成することができる。この樹脂は、ヘキサメチレンジイソシアネートに類似しており、後者よりも優れた黄変耐性を有する。この樹脂は、淡色コーティングにおいて使用することができ、高いコーティング硬度および低い毒性を有しており、合成皮革においても使用することができる。
【0005】
現在、m-キシリレンジアミンは、主にイソフタロニトリルの接触水素化によって製造される。
【0006】
特許出願CN200680036084.8は、固定床連続水素化法によってIPN(イソフタロニトリル)からMXDA(m-キシリレンジアミン)を製造するための処理の流れを開示している。170~200℃でIPNを溶融し、液体アンモニアおよびリサイクル材料と液体形態にて混合して、溶解(60℃)する。60~130℃および150~200バールの条件下で、Mnドープ非担持Co触媒の触媒作用下にある固定床反応器において、パス当たりの転換率は>99%であり、選択性は>92%である。
【0007】
特許出願CN200680035201.9は、製品MXDAリサイクル材料をIPN溶媒として使用し、55~70℃で溶解することを検討している。特許出願CN201010150757.0およびCN201010150725.0において提供される技術的処理は主に:改質ラネーNi触媒を撹拌反応器に予め添加し、次いで、イソフタロニトリルおよび三元混合溶媒(芳香族炭化水素、低炭素アルコール、脂肪族ハロゲン化誘導体)および阻害剤としての二級アミンを注入すること;を含む。溶解後、撹拌槽中、40~120℃、2~10MPaで反応を実行し、水素化によりMXDAを(断続的に)製造する。
【0008】
しかしながら、従来技術では、触媒消費量が多い、生成物選択性が不十分である、および、高圧オートクレーブの操作が断続的である、などの問題が依然として存在する。したがって、高い活性および高い選択性を有する新規な触媒を開発し、連続的な工業生産を実現することが求められている。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術におけるイソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造における低い選択性に対して、高い選択性でm-キシリレンジアミンを製造するための新規な触媒、およびその製造方法を提供することである。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための触媒であって、以下の成分またはその反応生成物を含む触媒を提供する:
a)活性成分であって、当該活性成分はNiおよび/またはその酸化物を含む、活性成分;
b)補助剤であって、当該補助剤はMg、Cu、Co、Zn、Zr、Moおよび/またはそれらの酸化物のうちの1つ以上を含む、補助剤;
c)担体;
ここで、触媒中のα-NiOの相対含有量は、2.0a.u.未満である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、触媒中のα-NiOの相対含有量は、1.5a.u.未満、好ましくは0.2a.u.未満である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、補助剤は、Cu、Co、Zr、Moおよび/またはそれらの酸化物のうちの1つ以上を含む。
【0013】
本発明の「相対含有量」における含有量とは、含有量の絶対概念ではなく、同じ座標系における同じグラフ中のピークの積分面積を比較することによって決定される、物質の相対含有量を指す。ここで、ピークの積分面積のサイズは、触媒中の物質の含有量を表す。具体的には、本発明のα-NiOの相対含有量(単位としてa.u.を用いる)について、同じ座標系における同じグラフとは、触媒のH-TPR図を指す。ここで、横軸は摂氏温度(℃)であり、縦軸はTCD(熱伝導度検出器)のシグナル値(これは定量的な値であり、例えば百分率または小数の形式で表される)である。本発明のα-NiOの相対含有量について、H-TPRを測定する場合には、完全酸化状態の触媒を使用し、触媒量は50mgである。
【0014】
本発明において、a.u.は任意単位(arbitrary unit)の略であり、相対値を指し、無次元である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、触媒の総重量は100重量%である。
【0016】
活性成分の含有量は、5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~50重量%であり;補助剤の含有量は、0.1~60重量%、好ましくは1~50重量%、より好ましくは5~45重量%であり;前記担体の含有量は、10~90重量%、好ましくは15~80重量%、より好ましくは20~70重量%である。
【0017】
本発明のいくつかの他の例によれば、重量部基準で、活性成分の含有量は、10~60部、好ましくは15~55部であり;補助剤の含有量は、0.1~120部、好ましくは0.2~90部であり;前記担体の含有量は、0.1~45部、好ましくは1~35部である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記担体は、アルミナ、シリカおよびゼオライトのうちの少なくとも1つ、好ましくはアルミナである。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記担体は、500℃以上の高温で処理された担体である。
【0020】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る触媒を製造するための方法を提供する。当該方法は、以下の工程:
1)改質担体を製造するために、担体を500℃以上の温度で処理した後、補助塩(すなわち、補助剤の塩)の溶液、第1の沈殿剤の溶液、担体および水の第1の接触を実行する工程;
2)触媒を製造するために、ニッケル塩の溶液、第2の沈殿剤の溶液、工程1)から得られた改質担体、および水の第2の接触を実行し、濾過し、焼成する工程、
を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程1)において、第1の接触を実行するために、担体を含む水に、補助塩の溶液および第1の沈殿剤の溶液を同時に添加する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、第2の接触を実行するために、工程1)から得られた改質担体を含む水に、補助塩の溶液および第2の沈殿剤の溶液を同時に添加する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程1)において、第1の接触で得られる溶液は、最終pH6.0~10.0、例えば6.0~8.0に制御される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、第2の接触で得られる溶液は、最終pH6.0~10.0、例えば6.0~8.0に制御される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記第1の接触の温度は50~90℃であり、いくつかの実施形態において、前記温度は70℃である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記第1の接触の時間は3~6時間である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記第2の接触の温度は50~90℃である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記第2の接触の時間は3~6時間である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記補助塩は、Mg(NO、Cu(NO、Co(NO、Zn(NO、Zr(NOおよび(NHMoOのうちの1つ以上から選択され、好ましくはCu(NO、Zr(NO、(NHMoOおよびCo(NOのうちの1つ以上から選択される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、補助塩は、塩の水和物、例えば、Mg(NO・6HO、Cu(NO・3HO、Co(NO・6HO、Zn(NO・6HOおよびZr(NO・5HOのうちの1つ以上であってもよい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記第1の沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびアンモニア水のうちの1つ以上から選択され、好ましくは水酸化ナトリウムおよび/またはアンモニア水である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記ニッケル塩は、硫酸ニッケルおよび/または硝酸ニッケル、好ましくは硝酸ニッケルである。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記第2の沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびアンモニア水のうちの1つ以上から選択され、好ましくは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムのうちの1つ以上から選択される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程1)において、前記補助塩の溶液は、0.1~1.5mol/L、好ましくは0.3~1.2mol/Lの濃度を有する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程1)において、前記第1の沈殿剤の溶液は、0.4~2.0mol/L、好ましくは0.6~1.6mol/Lの濃度を有する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程1)において、水中の前記担体の含有量は、5~100g/L、例えば20~80g/Lであるか、または5~20g/L、例えば8~15g/Lである。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、前記ニッケル塩の溶液は、0.2~1.5mol/L、好ましくは0.5~1.2mol/Lの濃度を有する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、前記第2の沈殿剤の溶液は、0.4~2.0mol/L、好ましくは0.6~1.5mol/Lの濃度を有する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、水中の前記改質担体の含有量は、10~100g/L、例えば20~85g/Lであるか、または10~30g/L、例えば12~25g/Lである。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、焼成は空気雰囲気中で実行される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、焼成温度は300~600℃である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、工程2)において、改質担体を含む水に、50~90℃の条件下で、ニッケル塩の溶液および第2の沈殿剤の溶液を同時に添加し、混合し、混合溶液を最終pH6.0~10.0、例えば6.0~8.0に制御し、3~6時間撹拌し、濾過し、洗浄し、乾燥し、酸素含有雰囲気(空気雰囲気または純粋な酸素など)中で300~600℃で焼成して、触媒を製造する。
【0043】
本発明の第3の態様は、二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための方法を提供する。当該方法は、二塩基性アミンを製造するために、本発明の第1の態様に係る触媒、または本発明の第2の態様に係る方法で製造された触媒の存在下で、二塩基性ニトリルを水素ガスと接触させ、反応させることを含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、反応の温度は、50~120℃、好ましくは60~80℃である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記反応の圧力は、4.0~15.0MPa、例えば4.0~12.0MPa、または6.0~10.0MPaである。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記反応の液空間速度は、1~12時間-1、好ましくは2~10時間-1である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記反応の水素ガスと二塩基性ニトリルとのモル比率は、3:1~70:1、好ましくは5:1~20:1である。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記イソフタロニトリルは液体アンモニアに溶解される。いくつかの実施形態において、イソフタロニトリルの質量分率は10%である。いくつかの実施形態において、前記液体アンモニアの質量分率は90%である。
【0049】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様に係る触媒、または本発明の第2の態様に係る方法で製造された触媒、または本発明の第3の態様に係る方法の、二塩基性ニトリルの水素化による二塩基性アミンの製造における、特に、イソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造における、使用を提供する。
【0050】
概括して言えば、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。
【0051】
1.触媒であって:
a)活性成分であって、当該活性成分はNiの酸化物を含む、活性成分;
b)補助剤であって、好ましくは、当該補助剤はMg、Cu、Co、Zn、ZrおよびMoの酸化物のうちの1つ以上を含み、より好ましくは、当該補助剤はCu、Co、ZrおよびMoの酸化物のうちの1つ以上を含む、補助剤;
c)担体;
を含み、
触媒中のα-NiOの相対含有量は、2.0a.u.未満、例えば1.5a.u.以下、さらに例えば0.2a.u.以下である、
触媒。
【0052】
2.完全酸化状態にある触媒であって:
a)活性成分であって、当該活性成分はNiの酸化物を含む、活性成分;
b)補助剤であって、好ましくは、当該補助剤はMg、Cu、Co、Zn、ZrおよびMoの酸化物のうちの1つ以上を含み、より好ましくは、当該補助剤はCu、Co、ZrおよびMoの酸化物のうちの1つ以上を含む、補助剤;
c)担体;
を含み、
触媒中のα-NiOの含有量は、55重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、例えば5重量%未満である、
触媒。
【0053】
本明細書に記載の完全酸化状態とは、酸素含有雰囲気(空気雰囲気または純粋な酸素など)中で、ある焼成温度(例えば、300~600℃)で、十分に長い時間(例えば、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、96時間、1週間、2週間、4週間、またはそれ以上)、対応する触媒を焼成することにより得られる触媒を指す。完全酸化状態は、他の方法によっても達成することができ、上記の焼成方法に限定されるものではない。
【0054】
3.触媒であって:
a)活性成分であって、当該活性成分はNiおよび/またはその酸化物である、活性成分;
b)補助剤であって、好ましくは、当該補助剤はMg、Cu、Co、Zn、Zr、Moおよび/またはそれらの酸化物のうちの1つ以上を含み、より好ましくは、当該補助剤はCu、Co、Zr、Moおよび/またはそれらの酸化物のうちの1つ以上を含む、補助剤;
c)担体;
を含み、
前記触媒がその完全酸化状態にあるとき、触媒中のα-NiOの含有量は、55重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、例えば5重量%未満である、
触媒。
【0055】
4.触媒であって:
a)活性成分であって、当該活性成分はNiおよび/またはその酸化物である、活性成分;
b)補助剤であって、好ましくは、当該補助剤はMg、Cu、Co、Zn、Zr、Moおよび/またはそれらの酸化物のうちの1つ以上を含み、より好ましくは、当該補助剤はCu、Co、Zr、Moおよび/またはそれらの酸化物のうちの1つ以上を含む、補助剤;
c)担体;
を含み、
前記触媒がその完全酸化状態にあるとき、触媒中のα-NiOの相対含有量は、2.0a.u.未満、例えば1.5a.u.以下、さらに例えば0.2a.u.以下である、
触媒。
【0056】
5.重量部基準で、
活性成分の含有量は、10~60重量部、例えば15~55重量部であり;
補助剤の含有量は、0.1~120重量部、例えば0.2~90重量部であり;
前記担体の含有量は、0.1~45重量部、例えば1~35重量部であるか;
または、
触媒の総重量を100重量%として、
活性成分の含有量は、5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~50重量%であり;
補助剤の含有量は、0.1~60重量%、好ましくは1~50重量%、より好ましくは5~45重量%であり;
前記担体の含有量は、10~90重量%、好ましくは15~80重量%、より好ましくは20~70重量%であるか;
または、
触媒の総重量を100重量%として、
活性成分の含有量は、30~35重量%であり;
補助剤の含有量は、15~50重量%であり;
前記担体の含有量は、15~60重量%であり;
好ましくは、補助剤は、Co、MoまたはZrであり、より好ましくは、補助剤はCoである、
ことを特徴とする、上述の技術的解決手段のいずれかに記載の触媒。
【0057】
6.前記担体は、アルミナ、シリカおよびゼオライトのうちの少なくとも1つ、例えばアルミナであり;好ましくは、前記担体は、500℃以上の温度で処理された担体である、
ことを特徴とする、上述の技術的解決手段のいずれかに記載の触媒。
【0058】
7.前記担体はアルミナを含み、アルミナの重量基準で、α-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナの割合がそれぞれ0.1~99%、0.1~99%、0.1~99%、0.1~99%、0.1~99%、好ましくは10~95%、1~70%、2~90%、5~90%、3~80%である、
ことを特徴とする、上述の技術的解決手段のいずれかに記載の触媒。
【0059】
8.触媒は、二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための触媒である、
ことを特徴とする、上述の技術的解決手段のいずれかに記載の触媒。
【0060】
9.触媒中のα-NiOの相対含有量は、0.0001a.u.超、例えば0.001a.u.超、さらに例えば0.01a.u.超であり;または、触媒中のα-NiOの含有量は、0.0001重量%超、例えば0.001重量%超、さらに例えば0.01重量%超である、
ことを特徴とする、上述の技術的解決手段のいずれかに記載の触媒。
【0061】
10.上述の技術的解決手段のいずれか1つに記載の触媒を製造するための方法であって、
前記方法は、以下の工程:
1)改質担体を製造するために、補助塩の溶液、第1の沈殿剤の溶液、担体および水の第1の接触を実行する工程;
2)触媒を製造するために、ニッケル塩の溶液、第2の沈殿剤の溶液、工程1)から得られた改質担体、および水の第2の接触を実行し、濾過し、焼成する工程、
を含み、
例えば、工程1)において、第1の接触を実行するために、担体を含む水に、補助塩の溶液および第1の沈殿剤の溶液を同時に添加し、および/または、工程2)において、第2の接触を実行するために、工程1)から得られた改質担体を含む水に、ニッケル塩の溶液および第2の沈殿剤の溶液を同時に添加する、
ことを特徴とする、方法。
【0062】
11.工程1)において、使用される担体は、500℃以上の温度で処理された担体であり、好ましくは、使用される担体は、500℃超の温度で処理された担体である、
ことを特徴とする、技術的解決手段10に記載の方法。
【0063】
12.第1の接触で得られる溶液、および第2の接触で得られる溶液は、最終pH6.0~10.0、例えば6.0~8.0に制御され、
例えば、前記第1の接触および/または前記第2の接触の温度は50~90℃であり、および/または、前記第1の接触および/または前記第2の接触の時間は3~6時間である、
ことを特徴とする、技術的解決手段10~11のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
13.前記補助塩は、Mg(NO、Cu(NO、Co(NO、Zn(NO、Zr(NO、(NHMoO、Mg(NO・6HO、Cu(NO・3HO、Co(NO・6HO、Zn(NO・6HOおよびZr(NO・5HOのうちの1つ以上から選択され、例えば、Cu(NO、Zr(NO、(NHMoOおよびCo(NOのうちの1つ以上から選択され;
および/または、前記第1の沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびアンモニア水のうちの1つ以上から選択され、好ましくは、第1の沈殿剤は炭素を含まず、より好ましくは、第1の沈殿剤は水酸化ナトリウムおよび/またはアンモニア水であり;
および/または、ニッケル塩は、硫酸ニッケルおよび/または硝酸ニッケル、例えば硝酸ニッケルであり;
および/または、前記第2の沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよびアンモニア水のうちの1つ以上から選択され、好ましくは、前記第2の沈殿剤は炭素を含み、より好ましくは、前記第2の沈殿剤は炭酸ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウムである、
ことを特徴とする、技術的解決手段10~12のいずれかに記載の方法。
【0065】
14.工程(1)において、前記補助塩の溶液は、0.1~1.5mol/L、例えば0.3~1.2mol/Lの濃度を有し;および/または、前記第1の沈殿剤の溶液は、0.4~2.0mol/L、例えば0.6~1.6mol/Lの濃度を有し;および/または、水中の前記担体の含有量は、5~100g/L、例えば20~80g/Lであるか、または5~20g/L、例えば8~15g/Lである、
ことを特徴とする、技術的解決手段10~13のいずれかに記載の方法。
【0066】
15.工程2)において、前記ニッケル塩の溶液は、0.2~1.5mol/L、例えば0.5~1.2mol/Lの濃度を有し;および/または、前記第2の沈殿剤の溶液は、0.4~2.0mol/L、例えば0.6~1.5mol/Lの濃度を有し、および/または、水中の前記担体の含有量は、10~100g/L、例えば20~85g/Lであるか、または10~30g/L、例えば12~25g/Lである、
ことを特徴とする、技術的解決手段10~14のいずれかに記載の方法。
【0067】
16.二塩基性ニトリルの水素化により二塩基性アミンを製造するための方法であって、二塩基性アミンを製造するために、技術的解決手段1~9のいずれかに記載の触媒、または技術的解決手段10~15のいずれかに記載の方法で製造された触媒の存在下で、二塩基ニトリルを水素ガスと接触させ、反応させる工程を含み、例えば、前記水素ガスと二塩基性ニトリルとのモル比率は、3:1~70:1、例えば5:1~20:1である、
方法。
【0068】
例えば、反応の温度は、50~120℃、例えば60~80℃であり;および/または、前記反応の圧力は、4.0~15.0MPa、例えば4.0~12.0MPa、さらに例えば6.0~10.0MPaであり;および/または、前記反応の液空間速度は、1~12時間-1、例えば2~10時間-1である。
【0069】
本発明において、二塩基性アミンおよび二塩基性ニトリルは、特に限定されない。二塩基性ニトリルは、脂肪族C~C24二塩基性ニトリル、例えば、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、ノナンジニトリル、デカンジニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、トリデカンジニトリル、テトラデカンジニトリル、ペンタデカンジニトリル、ヘキサデカンジニトリル、ヘプタデカンジニトリル、もしくはオクタデカンジニトリル、または芳香族C~C18二塩基性ニトリル、例えば、フタロニトリル、イソフタロニトリル、もしくはテレフタロニトリルであってもよい;
二塩基性アミンは、脂肪族C~C24二塩基性アミン、例えば、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、もしくはオクタデカンジアミン、または芳香族C~C18二塩基性アミン、例えば、オルト-ベンゼンジメタンアミン、メタ-ベンゼンジメタンアミン、もしくはパラ-ベンゼンジメタンアミンであってもよい。
【0070】
17.技術的解決手段1~9のいずれかに記載の触媒、または技術的解決手段10~15のいずれか1つに記載の方法で製造された触媒、または技術的解決手段13に記載の方法の、二塩基性ニトリルの水素化による二塩基性アミンの製造における、
特に、脂肪族C~C24二塩基性ニトリル(アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、ノナンジニトリル、デカンジニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、トリデカンジニトリル、テトラデカンジニトリル、ペンタデカンジニトリル、ヘキサデカンジニトリル、ヘプタデカンジニトリル、もしくはオクタデカンジニトリルなど)、または芳香族C~C18二塩基性ニトリル(フタロニトリル、イソフタロニトリル、もしくはテレフタロニトリルなど)の水素化による、脂肪族C~C24二塩基性アミン(ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、もしくはオクタデカンジアミンなど)、または芳香族C~C18二塩基性アミン(オルト-ベンゼンジメタンアミン、メタ-ベンゼンジメタンアミン、もしくはパラ-ベンゼンジメタンアミンなど)の製造における、
使用。
【0071】
担持ニッケル系触媒については、通常、NiO:遊離アモルファスα-NiO、担体と弱く相互作用するβ1-NiO、および担体と強く相互作用するβ2-NiO、という3つの形態が存在する。触媒中の遊離アモルファスα-NiOが多すぎると、より過剰な水素化副反応が生じ、3-メチルベンジルアミンおよびm-キシレンなどの水素化分解副生成物を生成する。
【0072】
ここで、α-NiOの含有量とは、触媒が完全酸化状態に変換されたときの、触媒中のNiOとしてのニッケル種の総量に対するα-NiOの重量百分率または相対含有量を意味する。
【0073】
本発明は、目的生成物の選択性に及ぼす種々のNiOタイプのニッケル系触媒の影響に着目し、二塩基性ニトリルの水素化によるジアミンの製造のための、特にイソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造のための、触媒および方法を提供する。本発明の触媒および方法は、過剰な水素化副生成物の生成を大幅に低減し、目的生成物の全体的な選択性を改善する。
【0074】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例1および2、ならびに比較例1で製造されたH-TPR図を示す。
【0075】
ここで、(1)α-NiO(300~400℃):表面上の遊離アモルファスNiO種に起因する;(2)β1-NiO(400~500℃):担体と弱く相互作用するNiO種に起因する;(3)β2-NiO(500~600℃):担体と強く相互作用するNiO種に起因する。
【0076】
〔詳細な説明〕
本発明をより理解しやすくするために、以下、実施形態および添付の図面と併せて本発明を詳細に説明する。これらの実施形態は、本発明を例示するためにのみ使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。実施例において具体的な条件を示さないものは、従来の条件または製造者が推奨する条件に従って実施される。使用される試薬または機器は、本明細書において製造業者が示されていないが、市販されているか、または従来の方法によって得られる。
【0077】
本明細書に開示される範囲の端点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されず、これらの範囲または値は、これらの範囲または値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲について、範囲の端点同士、範囲の端点および個々の点値、ならびに個々の点値同士は、互いに組み合わせて、1つ以上の新しい数値範囲をもたらすことができ、これらの新しい数値範囲は、本明細書に具体的に開示されていると解釈されるべきである。
【0078】
本発明に用いられる概念において、イソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造についての転化率および選択性は、下記式により算出される。
【0079】
【数1】
【0080】
式中、n:物質の量(モル単位);;IPN:イソフタロニトリル;MXDA:m-キシリレンジアミン;1:原料;2:生成物、である。
【0081】
試験方法:
1.NiOの種類別の相対含有量についての試験方法:H-TPR曲線(縦軸は%TCD、横軸は温度)の面積積分を行い、試料の水素消費量に基づいてNiOの種類別の相対含有量を算出した。単位はa.u.(任意単位)である。ピーク面積の大きさは、実際には種類別のNiOの相対含有量を表し、異なる試料間のNiOの相互比較のために使用される。
【0082】
以下の実施例において、使用されるイソフタロニトリルは工業用グレードのものであり、液体アンモニアに溶解しており、イソフタロニトリルの質量分率は10%であり、液体アンモニアの質量分率は90%である;使用される水素ガスの体積分率は99.9%である。
【0083】
触媒の構造は、蛍光X線法により、測定される("Petrochemical Analysis Method (RIPP Test Method)"、Yang Cuiding et al.編、Science Press、1990年出版)。
【0084】
実施例1
(1)触媒の製造
改質担体の製造:補助塩Co(NOを濃度0.8mol/Lの溶液Iとし、水酸化ナトリウムを濃度1.0mol/Lの溶液IIとし、水酸化アルミニウム担体の前駆体(擬ベーマイト)を500℃の高温で前処理し、1Lの水に入れた。70℃で、溶液Iおよび溶液IIを並流沈殿(co-currently precipate)させ、最終pHを7.0に制御した。撹拌しながら3~6時間熟成を行い、改質アルミナ担体を製造した。
【0085】
触媒の製造:硝酸ニッケルを濃度0.8mol/Lの溶液IIIとし、炭酸ナトリウムを濃度1.2mol/Lの溶液IVとし、得られた改質アルミナ担体(50g)を水1Lに入れた。70℃で、溶液IIIおよび溶液IVを並流沈殿させ、最終pHを7.5に制御した。撹拌しながら4時間熟成を行い、次いで濾過、洗浄、乾燥、500℃の空気雰囲気中での6時間焼成を行い、触媒を製造した。得られた触媒において、CoOの重量は0.75gであり、ニッケル酸化物としての活性成分の重量は5.25gであり、アルミナ担体の重量は9.0gであった。H-TPR図を図1に示し、結果を表1に示した。
【0086】
(2)触媒の還元
得られた触媒15gを採取した。当該触媒は、触媒成分中にCoO(0.75g)を含有した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0087】
(3)イソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造
イソフタロニトリルの液体アンモニア溶液(3000mL、イソフタロニトリルの質量分率10%、液体アンモニアの質量分率90%)、および純粋な水素ガス(水素ガスの体積分率99.9%)を原料として用い、還元触媒の使用量を15gとし、反応温度80℃、反応圧力8.0MPa、水素ガス/イソフタロニトリルのモル比率5:1、および液空間速度10hr-1の条件で、水素化試験を行った。反応結果を表1に示す。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は97.1%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.32%(液体クロマトグラフィーにより測定)であった。
【0088】
実施例2
本実施例の触媒は、異なる含有量のCoを触媒に使用したことを除いて、実施例1の触媒の製造方法によって製造した:触媒中のCoOの重量は2.25gであった。H-TPR図を図1に示し、結果を表1に示した。
【0089】
(1)触媒の還元:
触媒15gを採取した。当該触媒は、触媒中にCoO(2.25g)を含有した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0090】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は98.3%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.13%であった。
【0091】
実施例3
本実施例の触媒は、異なる含有量のCoを触媒に使用したことを除いて、実施例1の触媒の製造方法によって製造した:触媒中のCoOの重量は0.5gであった。α-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0092】
(1)触媒の還元:
触媒15gを採取した。当該触媒は、触媒中にCoO(0.5g)を含有した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0093】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は96.4%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.42%であった。
【0094】
実施例4
本実施例の触媒は、異なる含有量のCoを触媒に使用したことを除いて、実施例1の触媒の製造方法によって製造した:触媒中のCoOの重量は4.5gであった。α-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0095】
(1)触媒還元:
触媒15gを採取した。当該触媒は、触媒中にCoO(4.5g)を含有した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0096】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は98.4%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.11%であった。
【0097】
実施例5
本実施例の触媒は、異なる含有量のCoを触媒に使用したことを除いて、実施例1の触媒の製造方法によって製造した:触媒中のCoOの重量は7.5gであった。α-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0098】
(1)触媒還元:
触媒15gを採取した。当該触媒は、触媒中にCoO(7.5g)を含有した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0099】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は98.5%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.09%であった。
【0100】
実施例6
本実施例の触媒は、異なる補助塩を使用したことを除いて、実施例2の触媒の製造方法によって製造した:補助塩はZr(NOであった。触媒中のα-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0101】
(1)触媒の還元:
触媒15gを採取した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0102】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は98.0%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.17%であった。
【0103】
実施例7
本実施例の触媒は、異なる補助塩を使用したことを除いて、実施例2の触媒の製造方法によって製造した:補助塩はMg(NOであった。触媒中のα-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0104】
(1)触媒還元:
触媒15gを採取した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0105】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は97.8%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.23%であった。
【0106】
実施例8
本実施例の触媒は、異なる補助塩を使用したことを除いて、実施例2の触媒の製造方法によって製造した:補助塩はCu(NOであった。触媒中のα-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0107】
(1)触媒の還元:
触媒15gを採取した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0108】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.7%であり、MXDA選択性は96.9%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.36%であった。
【0109】
実施例9
本実施例の触媒は、異なる補助塩を使用したことを除いて、実施例2の触媒の製造方法によって製造した:補助塩はZn(NOであった。触媒中のα-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0110】
(1)触媒の還元:
触媒15gを採取した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0111】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.8%であり、MXDA選択性は96.4%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.41%であった。
【0112】
実施例10
本実施例の触媒は、異なる補助塩を使用したことを除いて、実施例2の触媒の製造方法によって製造した:補助塩は(NHMoOであった。触媒中のα-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0113】
(1)触媒の還元:
触媒15gを採取した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0114】
(2)触媒の触媒的水素化
本方法は実施例1と同一であり、反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は98.1%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.19%であった。
【0115】
実施例11
(1)触媒の製造
500℃の高温で処理した水酸化アルミニウム担体を含む水に、実施例1の、補助塩Co(NOの溶液、硝酸ニッケルの溶液IIIおよび沈殿剤の溶液を一緒に加え、溶液の最終pHを7.0に制御し、ニッケル塩、補助塩および沈殿剤を担体アルミナ上に一緒に沈殿させた。触媒中のα-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0116】
(2)触媒の還元
得られた触媒15gを採取した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0117】
(3)イソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造
イソフタロニトリルの液体アンモニア溶液(3000mL、イソフタロニトリルの質量分率10%、液体アンモニアの質量分率90%)、および純粋な水素ガス(水素ガスの体積分率99.9%)を原料として用い、触媒の使用量を15gとし、反応温度80℃、反応圧力8.0MPa、水素ガス/イソフタロニトリルのモル比率5:1、および液空間速度10hr-1の条件で、水素化試験を行った。反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は95.2%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.49%であった。
【0118】
比較例1
(1)触媒の製造
本処理は、触媒の製造中に補助塩Co(NOの溶液を添加しなかったことを除いて、実施例1と同一であった。H-TPR図を図1に示し、結果を表1に示した。
【0119】
(2)触媒の還元
得られた触媒15gを採取した。当該触媒は、触媒成分中にCoOを含有しなかった。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元した。
【0120】
(3)イソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造
イソフタロニトリルの液体アンモニア溶液(3000mL、イソフタロニトリルの質量分率10%、液体アンモニアの質量分率90%)、および純粋な水素ガス(水素ガスの体積分率99.9%)を原料として用い、還元触媒の使用量を15gとし、反応温度80℃、反応圧力8.0MPa、水素ガス/イソフタロニトリルのモル比率5:1、および液空間速度10hr-1の条件で、水素化試験を行った。反応結果を表1に示す。IPN転化率は99.9%であり、MXDA選択性は95.6%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.58%であった。
【0121】
比較例2
(1)触媒の製造
本処理は、アルミナ担体が500℃の高温で処理されていないことを除いて、実施例1と同一であった。触媒中のα-NiOの相対含有量の結果を表1に示した。
【0122】
(2)触媒還元
得られた触媒15gを採取した。触媒を15mLに充填し、500℃の純粋な水素ガスで24時間還元し、還元触媒を製造した。
【0123】
(3)イソフタロニトリルの水素化によるm-キシリレンジアミンの製造
イソフタロニトリルの液体アンモニア溶液(3000mL、イソフタロニトリルの質量分率10%、液体アンモニアの質量分率90%)、および純粋な水素ガス(水素ガスの体積分率99.9%)を原料として用い、触媒の使用量を15gとし、反応温度80℃、反応圧力8.0MPa、水素ガス/イソフタロニトリルのモル比率5:1、および液空間速度10hr-1の条件で、水素化試験を行った。反応結果を表1に示した。IPN転化率は99.8%であり、MXDA選択性は94.9%であった。3-メチルベンジルアミンの含有量は0.45%であった。
【0124】
なお、上述の実施形態は、本発明を説明するためのみに使用され、本発明を限定するものではない。本発明は、例示的な実施形態を参照して記載されてきたが、その中で使用される用語は、限定する用語ではなく、説明および記載する単語であることを理解されたい。本発明は、本発明の特許請求の範囲に記載された範囲内で変更することができ、本発明の範囲および精神を逸脱しない範囲で変更することができる。本明細書に記載される本発明は、特定の方法、材料および実施形態に言及するものであるが、本明細書に開示される具体的な例に限定されることは意図されず、むしろ、本発明は同じ機能を有する他のすべての方法および用途にまで及ぶ。
【0125】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1図1は、実施例1および2、ならびに比較例1で製造されたH-TPR図を示す。
図1
【国際調査報告】