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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】徐放性製剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/14 20170101AFI20231101BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 31/445 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/28
A61P23/02
A61K31/5415
A61P25/04
A61P29/00
A61K9/06
A61K45/00
A61K31/445
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526286
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2022071928
(87)【国際公開番号】W WO2022152232
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202110051096.4
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520391907
【氏名又は名称】南京清普生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李玲
(72)【発明者】
【氏名】武曲
(72)【発明者】
【氏名】▲チー▼元欣
(72)【発明者】
【氏名】王青松
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD46P
4C076DD63Q
4C076DD70Q
4C076EE51
4C076FF35
4C076FF36
4C076FF63
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA27
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA12
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA211
4C084ZA212
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086BC89
4C086GA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA12
4C086ZA08
4C086ZA21
(57)【要約】
本発明は、液体油、薬学的に許容されるゲル化因子、薬学的に許容される安定剤及び薬学的活性成分を含む医薬組成物に関する。前記医薬組成物は、麻酔、鎮痛活性を有する薬物製剤の開発に特に適し、他の徐放性鎮痛薬系と比較して、例えば、鎮痛活性成分の放出が持続的で安定しており、注射投与できるだけでなく、安定した便利な局所投与にも適しており、患者の耐性が高く、副作用が少ないなどのより多くの利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
a.液体油と、
b.式Iの脂肪酸グリセリドの1つ又は複数から選ばれる、薬学的に許容されるゲル化因子と、
【化1】

そのうち、R’、R’’は相同又は相異であってもよく、互いに独立的にH又はRaCOから選ばれ、R’’’はRaCOから選ばれ、各Raは互いに独立的に飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基から選ばれ、
c.式II又は式IIIの化合物の1つ又は複数から選ばれる、薬学的に許容される安定剤と、
前記式IIの化合物は、
【化2】

であり、そのうち、Rsは、H、
【化3】

から選ばれ、各R1、R2は相同又は相異であり、互いに独立的に飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基から選ばれ、各R3、R4、R5は相同又は相異であり、互いに独立的にH又はアルキル基から選ばれ、Lはアルキレン基から選ばれ、
前記式IIIの化合物は
【化4】

であり、そのうち、Rはアルキル基から選ばれ、
d.少なくとも1つの薬学的活性成分と、
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記式Iにおいて、各Raは独立的にアルキル基から選ばれ、好ましくは、各Raは独立的にC1-40アルキル基から選ばれ、より好ましくは、各Raは独立的にC7-40アルキル基から選ばれ、
好ましくは、R’、R’’はHから選ばれ、R’’’は(C11-40アルキル基)C(=O)から選ばれ、又はR’はHから選ばれ、R’’はRaCOから選ばれ、且つR’’、R’’’においてそれぞれ独立的に選択されたRaアルキル基の炭素数の合計は18より大きく、又はR’、R’’、R’’’は何れもRaCOから選ばれ、且つR’、R’’、R’’’においてそれぞれ独立的に選択されたRaアルキル基の炭素数の合計は17より大きく、
好ましくは、前記式IIにおいて、各R1、R2は相同又は相異であり、互いに独立的にC13-21アルキル基などのC10-30飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基から選ばれ、各R3、R4、R5は相同又は相異であり、互いに独立的にH又はC1-10アルキル基から選ばれ、例えば互いに独立的にH、メチル基、エチル基から選ばれ、前記LはC1-10アルキレン基から選ばれ、好ましくは、Lはメチレン基、エチレン基などのC1-6アルキレン基から選ばれ、式IIIに示される化合物において、RはC8-10アルキル基などのC1-10アルキル基から選ばれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記b成分である薬学的に許容されるゲル化因子は、例えばモノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ビスベヘン酸グリセリル、モノパルミチンステアリン酸グリセリル、ジパルミチンステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、パルミチンステアリン酸グリセリルの1つ又は複数を含み、
前記c成分である薬学的に許容される安定剤は、HSPC(水素添加大豆レシチン)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)、DLPC(ジラウロイルホスファチジルコリン)、SPC大豆ホスファチジルコリン(大豆リン脂質)、EPC(卵黄リン脂質)、菜種リン脂質、ヒマワリリン脂質、DEPC(ジエチルピロカーボネート)、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、POPC(POホスファチジルコリン)、スフィンゴミエリン、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ミリストイルリゾホスファチジルコリン(M-lysoPC)、パルミトイルリゾホスファチジルコリン(P-lysoPC)、1-ステアロイル-リゾホスファチジルコリン(S-lysoPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、コレステロール(CHO)から選ばれる1つ又は複数である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
e.少なくとも1つの薬学的に許容される溶媒を更に含み、
及び/又は、g.薬学的に許容される放出調節剤を更に含むことができ、
及び/又は、f.薬学的に許容される酸を更に含むことができる、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記液体油は、ヒマシ油、ごま油、トウモロコシ油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、ピーナッツ油、魚油、茶油、アーモンド油、ババス油、ブラックカラント種子油、ボレージ油、カノーラ油、パーム油、パームカーネル油、ヒマワリ油、中鎖トリグリセリド、ジオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルから選ばれる1つ又は複数の組み合わせであり、前記少なくとも1つの薬学的活性成分は治療の種類に限定されず、抗炎症性薬、局所麻酔薬、鎮痛薬、抗精神障害薬、抗不安薬、鎮静催眠薬、抗うつ薬、抗高血圧薬、ステロイドホルモン、抗癲癇薬、殺菌剤、抗痙攣薬、抗パーキンソン病薬、中枢神経系刺激薬、抗精神病薬、抗不整脈薬、抗狭心症薬、抗甲状腺薬、解毒剤、鎮吐薬、血糖降下薬、抗結核薬、抗エイズ薬、抗B型肝炎薬、抗腫瘍薬、抗拒絶薬及びそれらの混合物であり得る、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容される放出調節剤は小分子エステルと界面活性剤から選ばれ、前記小分子エステルはトリアセチン、ステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジルであり、前記薬学的に許容される酸は、醋酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、リノール酸、ソルビン酸、カプリル酸、ノナン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、塩酸、フタル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘプタン酸、吉草酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、カフェイン酸、ビタミンEコハク酸から選ばれる、
ことを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記液体油は組成物の総量の約20%~約90%(w/w)を占め、前記ゲル化因子は組成物の総量の2%~50%(w/w)を占め、前記安定剤は組成物の総量の1%~40%(w/w)を占め、前記薬学的活性成分は組成物の総量の0.01%~50.0%(w/w)を占め、前記溶媒の総量は組成物の総量の0%~50%(w/w)を占める、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
(a1)液体油、薬学的に許容されるゲル化因子、薬学的に許容される安定剤を溶媒と混合し、加熱条件下で透明且つ均一な混合溶液になるまで撹拌するステップと、
(a2)少なくとも1つの薬学的活性成分を前記混合溶液に添加し、均一な混合物を形成するまで撹拌するステップと、
(a3)(a2)で形成された均一な混合物を室温に冷却するステップと、を含み、
本発明の実施形態によれば、前記ステップ(a1)の混合は少なくとも1つの放出調節剤の添加を更に含み、例えば、前記ステップ(a1)では液体油、ゲル化因子、薬学的に許容される安定剤、薬学的に許容される溶媒と放出調節剤を混合することができる、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載の医薬組成物を含む徐放性製剤であって、
前記製剤はデポ剤として投与され、好ましくは、前記製剤は注射可能であるか、又は前記製剤は局所投与できる、
ことを特徴とする徐放性製剤。
【請求項10】
前記製剤が充填された包材を更に含み、前記包材は、バイアル、プレフィルドシリンジ、カートリッジから選ばれる1つ又は複数である、
ことを特徴とする請求項9に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2021年1月14日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110051096.4で、発明名称が「徐放性製剤組成物」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願の全体は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、薬物製剤分野に属し、具体的には、徐放性製剤組成物及びその調製方法並びにその使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
術後の疼痛は、手術直後に発生する急性疼痛であり、通常3~7日以内に持続し、初期状態で適切に制御できない場合は慢性疼痛に発展する可能性がある。現在、一般的に使用されている臨床治療法は鎮痛ポンプを用いた治療法であるが、鎮痛ポンプに含まれる薬物の多くは、治療効果が比較的に良好であるが、呼吸抑制、吐き気や嘔吐、低血圧及び依存症の可能性などの一連の副作用も伴っているオピオイド鎮痛薬及びトラマドールなどのいくつかの鎮痛補助薬である。
【0004】
術後の疼痛を治療するために局所麻酔薬を使用すると、上記の副作用を回避することができるが、局所麻酔薬は通常、作用時間が短く、単回投与後に有効性が数時間しか持続せず、術後の疼痛の治療サイクルを満たすことができない。従って、長時間作用型の局所麻酔薬製剤の開発は、現在の研究の焦点となっている。
【0005】
現在、市販されている長時間作用型の局所麻酔薬製剤には、術後の疼痛や神経ブロックの治療に使用され、鎮痛効果が24時間持続し得るPACIRAにより開発されたExparel(登録商標)という商品名のピバカイン多小胞リポソーム懸濁注射剤がある。ブピバカインを多小胞リポソームに封入することは、良好な徐放効果を奏することができるが、多小胞リポソームは、調製プロセスが複雑であり、且つ高い貯蔵条件が要求されている。
【0006】
2020年8月28日に、成人の鼠径ヘルニア修復に使用され、投与部位で24時間まで持続的な鎮痛を提供し得るInnocoll社のXARACOLL(登録商標)塩酸ブピバカインインプラントは、FDAにより承認された。しかし、XARACOLL(登録商標)スポンジはサイズが大きいため、切開部位の腫脹を引き起こす可能性があり、なお、必要な外科的創傷が大きいため、後期適応症には拡張の余地が少なくなる。
【0007】
Heron Therapeutics Incが開発したZynrelef(登録商標)(HTX-011)複合ブピバカインメロキシカム溶液は、2020年9月24日にEMAによって承認され、世界で3番目の長時間作用型ブピバカイン製剤になる。Zynrelefは、徐放性担体としてポリマー材料であるポリオルトエステルを使用するため、投与部位での分解が遅すぎるリスクがある。
【0008】
なお、DURECT社は、徐放性担体として小分子エステルを使用する長時間作用型のブピバカイン製剤であるPOSIMIR(登録商標)を開発しており、関連特許CN101035562は、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)及びベンジルアルコールを含む医薬組成物を開示している。現在、POSIMIR(登録商標)は、第III相臨床試験に入っているが、臨床結果はブピバカイン溶液と比較して統計的差異が示されていない。Gilbert J. Grant博士は、ブピバカインの多層リポソーム(LMVV)を開発しており、Exparelリポソームと同じ構造であるが、粒径、調製プロセス及び安定性が異なり、4℃で保存する場合は、漏れのリスクがあり、現在、第I相臨床試験に入っている。合肥合源薬業有限公司は、パモ酸ブピバカイン共結晶HYR-PB21-LAを開発しており、溶解度はわずか0.076 mg/mLであるため、注射部位での長期放出が可能である。しかし、調製プロセスが複雑であるなどの欠点がある。
【0009】
特許CN111655236Aは、生体適合性と生体侵食性の半固体ゲルを含む放出制御医薬組成物を開示しており、前記半固体ゲルがヒマシ油、ゲル化剤、ブピバカイン及び任意選択でコルチコステロイド、鎮痛剤又は抗炎症剤を含む。そのうち、ヒマシ油とグリセリドとの比率は10:1~6:3(w/w)である。ヒマシ油には不飽和脂肪鎖が含まれているため、保存中に酸化するリスクがあり、また、ヒマシ油の比率が比較的高いため保存期間が長くなると、油が分離するリスクがある。
【0010】
従って、安定性、安全性、耐性及び/又は徐放性が改善された、薬物的使用に適した徐放性製剤系を開発することが急務となっている。
【0011】
〔発明の概要〕
従来技術に存在する問題を改善するために、本発明は、以下の成分、
a.液体油と、
b.式Iの脂肪酸グリセリドの1つ又は複数から選ばれる、薬学的に許容されるゲル化因子と、
【0012】
【化1】
【0013】
そのうち、R’、R’’は相同又は相異であってもよく、互いに独立的にH又はRaCOから選ばれ、R’’’はRaCOから選ばれ、各Raは互いに独立的に飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基から選ばれ、
c.式II又は式IIIの化合物の1つ又は複数から選ばれる、薬学的に許容される安定剤と、
前記式IIの化合物は、
【0014】
【化2】
【0015】
であり、そのうち、Rsは、H、
【0016】
【化3】
【0017】
から選ばれ、各R1、R2は相同又は相異であり、互いに独立的に飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基から選ばれ、各R3、R4、R5は相同又は相異であり、互いに独立的にH又はアルキル基から選ばれ、Lはアルキレン基から選ばれ、
前記式IIIの化合物は
【0018】
【化4】
【0019】
であり、そのうち、Rはアルキル基から選ばれ、
d.少なくとも1つの薬学的活性成分と、
を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記式Iにおいて、各Raは独立的にアルキル基から選ばれ、好ましくは、各Raは独立的にC1-40アルキル基から選ばれ、より好ましくは、各Raは独立的にC7-40アルキル基から選ばれ、
いくつかの実施形態において、R’、R’’はHから選ばれ、R’’’は(C11-40アルキル基)C(=O)から選ばれ、いくつかの実施形態において、R’はHから選ばれ、R’’はRaCOから選ばれ、且つR’’、R’’’においてそれぞれ独立的に選択されたRaアルキル基の炭素数の合計は18より大きく、いくつかの実施形態において、R’、R’’、R’’’は何れもRaCOから選ばれ、且つR’、R’’、R’’’においてそれぞれ独立的に選択されたRaアルキル基の炭素数の合計は17より大きい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記b成分である薬学的に許容されるゲル化因子は、ラウリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、C8-C18の混合脂肪酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、パルミチンステアリン酸グリセリル、ヤシ脂肪酸グリセリル、水素化ココグリセリド、水素化パーム油グリセリドの1つ又は複数を含み、
好ましくは、前記b成分である薬学的に許容されるゲル化因子は、例えばモノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、ビスベヘン酸グリセリル、モノパルミチンステアリン酸グリセリル、ジパルミチンステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、パルミチンステアリン酸グリセリルの1つ又は複数を含む。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記式IIにおいて、各R1、R2は相同又は相異であり、互いに独立的にC13-21アルキル基などのC10-30飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基から選ばれ、各R3、R4、R5は相同又は相異であり、互いに独立的にH又はC1-10アルキル基から選ばれ、例えば互いに独立的にH、メチル基、エチル基から選ばれ、前記LはC1-10アルキレン基から選ばれ、好ましくは、Lはメチレン基、エチレン基などのC1-6アルキレン基から選ばれる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、式IIIに示される化合物において、RはC8-10アルキル基などのC1-10アルキル基から選ばれる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記c成分である薬学的に許容される安定剤は、HSPC(水素添加大豆レシチン)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)、DLPC(ジラウロイルホスファチジルコリン)、SPC大豆ホスファチジルコリン(大豆リン脂質)、EPC(卵黄リン脂質)、菜種リン脂質、ヒマワリリン脂質、DEPC(ジエチルピロカーボネート)、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、POPC(POホスファチジルコリン)、スフィンゴミエリン、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ミリストイルリゾホスファチジルコリン(M-lysoPC)、パルミトイルリゾホスファチジルコリン(P-lysoPC)、1-ステアロイル-リゾホスファチジルコリン(S-lysoPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、コレステロール(CHO)から選ばれる1つ又は複数である。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、e.少なくとも1つの薬学的に許容される溶媒を更に含む。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、g.薬学的に許容される放出調節剤を更に含んでもよい。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記医薬組成物は、f.薬学的に許容される酸を更に含んでもよい。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記液体油は、ヒマシ油、ごま油、トウモロコシ油、大豆油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、ピーナッツ油、魚油、茶油、アーモンド油、ババス油、ブラックカラント種子油、ボレージ油、カノーラ油、パーム油、パームカーネル油、ヒマワリ油、中鎖トリグリセリド、ジオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記少なくとも1つの薬学的活性成分は治療の種類に限定されず、抗炎症性薬、局所麻酔薬、鎮痛薬、抗精神障害薬、抗不安薬、鎮静催眠薬、抗うつ薬、抗高血圧薬、ステロイドホルモン、抗癲癇薬、殺菌剤、抗痙攣薬、抗パーキンソン病薬、中枢神経系刺激薬、抗精神病薬、抗不整脈薬、抗狭心症薬、抗甲状腺薬、解毒剤、鎮吐薬、血糖降下薬、抗結核薬、抗エイズ薬、抗B型肝炎薬、抗腫瘍薬、抗拒絶薬及びそれらの混合物であり得る。
【0030】
本発明の実施形態によれば、適切な薬学的活性成分は、下記化合物から選ばれる1つ又は複数の組み合わせからでもよい:アスピリン、アセトアミノフェン、ベノリラート、インドメタシン、スリンダク、ジクロフェナク、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ロキソプロフェン、ナブメトン、ケトロラック、フェニルブタゾン、ブフェキサマク、フェノプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ポルマコキシブ、ニメスリド、メロキシカム、ロルノキシカム、ピロキシカム、エトドラク、バルデコキシブ、パレコキシブ、イムレコキシブ、ルミラコキシブ。ブピバカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、リドカイン、プロカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、ジクロニン。エンケファリン、ジノルフィン、β-エンドルフィン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、モルヒネ、ジメチルモルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ナルブフィン、フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、トラマドール、ノルトラマドール、タペンタドール、デゾシン、ペンタゾシン、メタドン、メペリジン、ケタミン、ジアゼパム、ロルメタゼパム、リスデキサンフェタミン、デキストロプロポキシフェン、ジフェリケファリン、オリセリジン。クロルプロマジン、トリフルプロマジン、メソリダジン、ピペラセタジン、チオリダジン、クロルプロチキセン。ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、オキサゼパム、イミプラミン、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、トラニルシプロミン、フェネルジン。プロカインアミド、亜硝酸イソアミル、ニトログリセリン、プロプラノロール、メトプロロール、プラゾシン、フェントラミン、トリメタファン、カプトプリル、エナラプリル。クロニジン、デクスメデトミジン、アドレナリン、ノルアドレナリン、チザニジン、α-メチルドパ、グリコピロレート。コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、デキサメタゾンエステル、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、クロベタゾール、プロゲステロン、テストステロン、エナント酸テストステロン、ウンデカン酸テストステロン、テストステロンシピオナート、プロゲステロン、フルベストラント、アロプレグネノロン、ガナキソロン、フェニトイン、エトトイン。塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、酢酸マフェニド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロクレゾール。フェノバルビタール、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール。カルビドパ、レボドパ、アニラセタム、オキシラセタム、ピラセタム、ドキサプラム、アリピプラゾール、オランザピン、ハロペリドール、ケチアピン、リスペリドン、クロザピン、パリペリドン、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール。アテノロール、アムロジピン、ニモジピン、一硝酸イソソルビド、エポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、ベラプロスト。メチマゾール、プロピルチオウラシル、プロプラノロール、ナロキソン、ロフェキシジン、フルマゼニル、アンフェタミン。グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、パロノセトロン、スコポラミン、ドンペリドン、グリピジド、グリベンクラミド、グリメピリド、グリベンクラミド、グリクラジド、トルブタミド、リラグルチド、エキセナチド、デュラグルチド、セマグルチド。ダルナビル、ドルテグラビルナトリウム、エムトリシタビン、ラルテグラビル、リトナビル、スタブジン、ネビラピン、ジドブジン、スタブジン、エトラビリン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン、ラミブジン、テノホビルジソプロキシル、テノホビル・アラフェナミド、チオアセタゾン、ピラジナミド、プロチオナミド、シクロホスファミド、5-フルオロウラシル、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロラムブシル、メトトレキサート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、シクロスポリン、タクロリムス、エベロリムス、シロリムス及び前記化合物の薬学的に許容される塩、立体異性体、誘導体。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記薬学的活性成分は、アミド型局所麻酔薬から選ばれ、例えばブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、メピバカイン、リドカイン及びその塩から選ばれる。前記アミド型局所麻酔薬の塩はその脂肪酸塩と水溶性塩から選ばれてもよく、塩を形成する酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキジン酸、塩酸、スルホン酸、リン酸、醋酸、クエン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、コハク酸、乳酸などを含む。
【0032】
本発明の実施形態によれば、前記薬学的活性成分は、アミド型局所麻酔薬を含むことに加えて、第2の活性成分を更に含み、前記薬学的活性成分はCOX受容体阻害剤、アドレナリン受容体アゴニスト及びグルココルチコイドから選ばれる1つでもよい。前記COX受容体阻害剤は、非選択的COX阻害剤と選択的COX-2阻害剤を含む。これらのカテゴリの代表的な非ステロイド性抗炎症薬は、アスピリン、アセトアミノフェン、ベノリラート、インドメタシン、スリンダク、ジクロフェナク、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、ナブメタン、ピロキシカム、ケトロラック、フェニルブタゾン、ブフェキサマク、フェノプロフェンなどの非選択的COX阻害剤、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ニメスリド、メロキシカム、ロルノキシカム、エトドラク、バルデコキシブ、パレコキシブ、イムレコキシブ、ルミラコキシブなどの選択的COX-2阻害剤、及び前記化合物の薬学的に許容される塩、立体異性体、誘導体を含むが、これらに限定されない。前記アドレナリン受容体アゴニストは、主にα2-アドレナリン受容体アゴニストであり、クロニジン、デクスメデトミジン、アドレナリン、ノルアドレナリン、チザニジン、α-メチルドパを含むが、これらに限定されない。前記グルココルチコイドは、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、クロベタゾールを含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、前記薬学的活性成分は、ロピバカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、メロキシカム、セレコキシブ、ケトロラック、トリアムシノロンアセトニドから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記薬学的活性成分は、ロピバカインとメロキシカムの組成物、レボブピバカインとメロキシカムの組成物、ブピバカインとメロキシカムの組成物、ロピバカインとセレコキシブの組成物、レボブピバカインとセレコキシブの組成物、ブピバカインとセレコキシブの組成物など、アミド型局所麻酔薬と非ステロイド性抗炎症薬から選ばれる組み合わせである。
本発明の実施形態によれば、前記薬学的に許容される放出調節剤は、小分子エステルと界面活性剤から選ばれる。前記小分子エステルは、トリアセチン、ステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジルである。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記界面活性剤は、ステアリン酸ポリオキシル40、カプリル酸カプリン酸マクロゴールグリセリド、ラウロイルポリオキシエチレングリコール、ステアロイルポリオキシエチレングリコール、オレオイルポリオキシエチレングリコール、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート、卵黄レシチン、大豆リン脂質、水素添加大豆レシチン、ポロキサマー、ポリソルベート、ポリエチレングリコール-12-ヒドロキシステアレート、プロピレングリコールモノカプリレートなどを含む。前記ポロキサマーは、例えばポロキサマー407、ポロキサマー188から選ばれてもよく、前記ポリソルベートは、例えばポリソルベート80から選ばれてもよい。
【0035】
本発明の実施形態によれば、前記薬学的に許容される酸(f成分)は、醋酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、リノール酸、ソルビン酸、カプリル酸、ノナン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、塩酸、フタル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、プロピオン酸、酪酸、ヘプタン酸、吉草酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、カフェイン酸、ビタミンEコハク酸などから選ばれる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、前記組成物は、1つ又は複数の酸化防止剤を更に含むことができる。酸化防止剤は、本発明に記載の徐放性薬物送達系におけるリン脂質又は液体油の酸化を防止又は減少するために使用することができる。本発明が提供する酸化防止剤は、ビタミンC(アスコルビン酸)、システイン又はその塩酸塩、ビタミンE(トコフェロール)、パルミチン酸アスコルビル、グルタチオン、αリポ酸、チオグリセロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、エチレンジアミン四酢酸及びそのナトリウム塩、クエン酸、酒石酸を含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の実施形態によれば、前記組成物は、他の医薬分野での従来の賦形剤を更に含むことができ、適切な薬物賦形剤の例は、Excipients and their use in injectable products. PDA J Pharm Sci Technol. Vol.51、1997年7~8月、P166~171及びExcipient Selection In Parenteral Formulation Development、Pharma Times、Vol.45、第3号、2013年3月、P65~77に記載されており、これらは参照によりその全体として本発明に組み込まれる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前記液体油は、組成物の総量の約20%~約90%(w/w)、例えば約21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%を占める。いくつかの実施形態において、前記液体油の比率は、約30%~90%(w/w)である。いくつかの実施形態において、前記液体油の比率は、約40%~79%(w/w)である。
【0039】
本発明の実施形態によれば、前記ゲル化因子は、組成物の総量の2%~50%(w/w)、例えば2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%を占める。いくつかの実施形態において、前記ゲル化因子は、組成物の総量の2%~30%(w/w)を占める。
【0040】
本発明の実施形態によれば、前記安定剤は、組成物の総量の1%~40%(w/w)、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%を占める。いくつかの実施形態において、前記安定剤は、組成物の総量の5%~30%(w/w)を占める。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記薬学的活性成分は、組成物の総量の0.01%~50.0%(w/w)を占める。いくつかの実施形態によれば、薬学的活性成分は、組成物の総量の0.01%~15%(w/w)、例えば0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%、12.5%、13.0%、13.5%、14.0%、14.5%、15.0%を占める。いくつかの実施形態によれば、薬学的活性成分は、3%(w/w)~10%(w/w)の量で存在する。いくつかの実施形態によれば、薬学的活性成分が2つ以上から選ばれる場合、各薬学的活性成分は、組成物の総量の0.01%~10%(w/w)、例えば0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%を占めることができる。
【0042】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒の総量は、組成物の総量の0%~50%(w/w)を占め、いくつかの実施形態において、溶媒を含めなくてもよい。いくつかの実施形態において、前記溶媒の総量は、組成物の総量の0.01%~50%を占めることができ、好ましくは2~50%であり、例えば2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%である。いくつかの実施形態において、前記溶媒の総量は、組成物の総量の5%~50%(w/w)を占め、いくつかの実施形態において、前記溶媒の総量は、組成物の総量の5%~30%(w/w)を占める。溶媒が2つ以上から選ばれる組み合わせである場合、各溶媒は、組成物の総量の0%~30%(w/w)を占めることができ、好ましくは、0.01%~30%であり、例えば1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%である。
【0043】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒は、アルコール類、N-メチルピロリドン、安息香酸ベンジル、ジメチルスルホキシドから選ばれる1つ又は複数の組み合わせの非水溶媒である。前記アルコール類は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ポリエチレングリコールから選ばれる。
【0044】
好ましくは、前記非水溶媒は、ベンジルアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、無水エタノールから選ばれる1つ又は複数の組み合わせである。
【0045】
本発明の実施形態によれば、前記放出調節剤は、組成物の総量の0%~40%(w/w)を占め、好ましくは、0.1%~40%(w/w)である。いくつかの実施形態において、前記放出調節剤は、組成物の総量の0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%を占めることができる。いくつかの実施形態において、前記放出調節剤が小分子エステルから選ばれる場合、前記放出調節剤の用量は1%~35%である。いくつかの実施形態において、前記放出調節剤が界面活性剤から選ばれる場合、前記放出調節剤の用量は0.1%~5%(w/w)である。
【0046】
本発明の実施形態によれば、前記薬学的に許容される酸(f成分)は、組成物の総量の0%~20%(w/w)を占め、いくつかの実施形態において、酸を含めなくてもよい。いくつかの実施形態において、前記酸は、組成物の総量の0.01%~20%を占め、好ましくは0.05%~20%であり、例えば0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%である。いくつかの実施形態において、前記酸は、組成物の総量の4%~20%を占める。
【0047】
本発明が提供する医薬組成物は半固体製剤である。本発明の医薬組成物において、前記薬学的に許容される溶媒と放出調節剤は、粘度調節剤として使用することができ、前記組成物を注射に適したものにする。いくつかの実施形態において、30℃の場合、前記組成物の粘度は20000 cPより小さい。いくつかの実施形態において、30℃の場合、前記組成物の粘度は5000~10000 cPの範囲内である。いくつかの実施形態において、30℃の場合、前記組成物の粘度は3000~5000 cPの範囲内である。いくつかの実施形態において、30℃の場合、前記組成物の粘度は1000~3000 cPの範囲内である。
【0048】
本発明は、
(a1)液体油、薬学的に許容されるゲル化因子、薬学的に許容される安定剤を溶媒と混合し、加熱条件下で透明且つ均一な混合溶液になるまで撹拌するステップと、
(a2)少なくとも1つの薬学的活性成分を前記混合溶液に添加し、均一な混合物を形成するまで撹拌するステップと、
(a3)(a2)で形成された均一な混合物を室温に冷却するステップと、を含む医薬組成物の調製方法を提供する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、前記ステップ(a1)の混合は少なくとも1つの放出調節剤の添加を更に含み、例えば、前記ステップ(a1)では液体油、ゲル化因子、薬学的に許容される安定剤、薬学的に許容される溶媒と放出調節剤を混合することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記方法は以下を含む:
1. 50℃~70℃で、透明な溶液を得るまで、液体油、ゲル化因子、安定剤、薬学的活性分子と薬学的に許容される溶媒を混合する。
【0051】
2. 0.22 μmの濾膜で高温溶液を滅菌する。
【0052】
3. 前記濾過後の混合溶液を室温に冷却する。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記方法は以下を含む:
1. 50℃~70℃で、透明な溶液を得るまで、液体油、ゲル化因子、薬学的に許容される安定剤、薬学的活性分子、薬学的に許容される溶媒と放出調節剤を混合する。
【0054】
2. 0.22 μmの濾膜で高温溶液を滅菌する。
【0055】
3. 前記濾過後の混合溶液を室温に冷却する。
【0056】
いくつかの実施形態において、様々な薬学的活性分子の特性に従って、溶解しにくい活性分子を先に一部の溶媒に溶解し、更に液体油、ゲル化因子、残りの溶媒を加熱及び混合することによって形成された溶液に加えて、必要な医薬組成物を調製する。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記方法は以下を含む:
1. 50℃~70℃で、透明な溶液を得るまで、液体油、ゲル化因子及び安定剤と一部の溶媒を混合する。
【0058】
2. 完全に溶解するまで、薬学的活性分子を一部の溶媒に加える。
【0059】
3. 薬物溶液を1の溶液と均一に混合する。
【0060】
4. 0.22 μmの濾膜で高温溶液を滅菌する。
【0061】
5. 前記濾過後の混合溶液を室温に冷却する。
【0062】
いくつかの実施形態において、様々な薬学的活性分子の特性に従って、溶解しにくい活性分子を先に一部の溶媒に溶解し、更に液体油、ゲル化因子、一部の溶媒、放出調節剤を加熱及び混合することによって形成された溶液に加えて、必要な医薬組成物を調製する。
いくつかの実施形態において、前記方法は以下を含む:
1. 50℃~70℃で、透明な溶液を得るまで、液体油、ゲル化因子、安定剤、一部の溶媒と放出調節剤を混合する。
【0063】
2. 完全に溶解するまで、薬学的活性分子を一部の溶媒に加える。
【0064】
3. 薬物溶液を1の溶液と均一に混合する。
【0065】
4. 0.22 μmの濾膜で高温溶液を滅菌する。
【0066】
5. 前記濾過後の混合溶液を室温に冷却する。
【0067】
本発明に記載の医薬組成物の調製方法は、いくつかの実施形態において、混合溶液を室温に自然冷却し、いくつかの実施形態において、混合溶液を急速に冷却凝固させた後に室温に放置し、いくつかの実施形態において、混合液を急速に冷却凝固させた後に特定の温度で一定時間保温した後、室温に放置し、いくつかの実施形態において、混合溶液を系溶融温度で保温して凝固させた後に室温に放置し、いくつかの実施形態において、混合溶液を系溶融温度で保温して凝固させた後に特定の温度で一定時間保温した後、室温に放置する。
【0068】
本発明は、デポ剤として投与され、前記医薬組成物を含む徐放性製剤を提供する。一方では、前記製剤は注射可能である。また一方では、前記製剤は局所投与されてもよい。
【0069】
また一方では、前記製剤は、皮下注射、末梢神経注射、筋肉内注射又は創傷への直接投与であってもよい。
【0070】
また一方では、前記製剤は、皮膚又は粘膜への投与に適する。
【0071】
本発明が提供する製剤は、単回用量で投与され、含まれている薬物の量は、鎮痛、神経ブロックの効果を達成することができ、局所的疼痛を防止又は軽減することができる。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、本発明が提供する製剤は、投与部位で形態学的に安定したデポを形成することができ、薬物をゆっくりと持続的に放出し、局所麻酔薬の放出時間を延長し、治療効果を高めることができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記製剤は投与後、少なくとも24時間持続的且つ効果的に治療することができる。いくつかの実施形態において、前記製剤は投与後、少なくとも24~48時間持続的且つ効果的に治療することができる。いくつかの実施形態において、前記製剤は投与後、少なくとも48~72時間持続的且つ効果的に治療することができる。いくつかの実施形態において、前記製剤は投与後、少なくとも72時間持続的且つ効果的に治療することができる。本発明の実施形態によれば、前記製剤は、前記製剤が充填された包材を更に含み、前記包材は、バイアル、プレフィルドシリンジ、カートリッジから選ばれる1つ又は複数である。
【0074】
〔用語と略語〕
特に明記しない限り、本願の明細書及び特許請求の範囲に記載される基と用語の定義には、例としての定義、例示的な定義、好ましい定義、表に記載される定義、実施例における具体的な化合物の定義などが含まれており、互いに任意に組み合わせたり、結合したりすることができる。このように組み合わせた後又は結合した後の基の定義及び化合物の構造は、本願の明細書に記載される範囲に含まれるべきである。
【0075】
本願の明細書及び特許請求の範囲に記載される数値範囲は、この数値範囲が「整数」として定義されるか、又は「整数」のみであり得る場合、その範囲の2つの端点及びその範囲内の各整数が記載されていると理解すべきである。例えば、「0~10の整数」は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10の各整数が記載されていると理解すべきである。
【0076】
この数値範囲が「数」として定義されるか、又は「整数」或いは「非整数」を含み得る場合、その範囲の2つの端点、その範囲内の各整数及びその範囲内の各小数が記載されていると理解すべきである。例えば、「0~10の数」は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10の各整数が記載されているだけでなく、更に少なくとも各整数と0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9との和が記載されていると理解すべきである。
【0077】
「脂肪族炭化水素基」という用語は、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖を有する鎖状炭化水素基を含み、前記脂肪族炭化水素基の種類は、アルキル基(飽和脂肪族炭化水素基)、アルケニル基、アルキニル基などから選ばれてもよく、前記脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~40、更に好ましくは1~30(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、C30、C31、C32、C33、C34、C35、C36、C37、C38、C30、C40)であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルビニル基、1-ブテニル基、1-エチルビニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基及び1-ヘキシニル基を含んでもよいが、これらに限定されず、その他の基に含まれる「脂肪族炭化水素基」の一部は上記の定義と同じである。
【0078】
「アルキル基」という用語は、脂肪族炭化水素基について上記で定義された飽和脂肪族炭化水素基であるり、例えば、前記アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~40、更に好ましくは1~30、又は1~10(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29、C30、C31、C32、C33、C34、C35、C36、C37、C38、C30、C40)である。また、当業者は、「アルキレン基」が上記の脂肪族炭化水素基の関連する定義を参照することもできると理解すべきであり、例えば前記アルキレン基の炭素原子数はC1、C2、C3、C4、C5、C6、C6、C7、C8、C9、C10であり得る。
【0079】
「生体適合性」という用語は、組成物の成分と体との間の相互作用を指す。
【0080】
「活性成分」という用語は、疾患の治療に使用される薬物を指す。従って、活性成分、薬物は互換的に使用できる。ここで使用される「活性成分」又は「薬物」という用語は、局所投与又は皮下、皮内、筋肉内及び関節内注射などの注射によって投与できる、局部又は全身作用を有する薬物活性物質を含むが、これらに限定されない。本発明の徐放性薬物送達系には、少なくとも1つの活性成分が存在する。
【0081】
「油ゲル」という用語は、液体油にゲル化因子を添加することによって得られる、熱可逆性で、半固体状で、且つ一定の粘弾性を有する分散系を指す。
【0082】
「ゲル化因子」という用語は、分子内に親油性構造と相互作用可能な部位を有すると共に、一定の表面活性及び熱可逆性を有する物質を指す。
【0083】
「半固体」という用語は、一定の圧力下で流動可能な形態を指す。より具体的には、半固体は通常、30℃で100~50000 cPの粘度であり、特に30℃で100~20000 cPの粘度である。
【0084】
「小分子エステル」という用語は、室温で液体である分子量が500未満のエステルを指す。
【0085】
本発明で使用される「アミド型」という用語は、ブピバカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、リドカインなどのアミド又はカイン型局所麻酔薬を指す。アミド型局所麻酔薬は一般的に、親油性部分と親水性部分で構成され、親油性部分は芳香族炭化水素又は芳香族複素環であってもよく、ベンゼン環の作用が最も強い。ベンゼン環にアミノ基などの電子供与基を導入することで、活性を高めることができる。親水性部分は一般的に、第二級アミン、第三級アミン又はピロリジン、ピペリジン、モルホリンなどであり、第三級アミンが最も一般的である。pKaは一般的に、7.5~7.9の間であり、生理条件下でイオン型である。
【0086】
本発明で使用される略語は以下の通り定義されている。SPCは大豆ホスファチジルコリン(大豆リン脂質)、EPCは卵黄ホスファチジルコリン(卵黄リン脂質)、HSPCは水素添加大豆ホスファチジルコリン、DLPCはジラウロイルホスファチジルコリン、DMPCはジミリストイルホスファチジルコリン、DPPCはジパルミトイルホスファチジルコリン、DSPCはジステアロイルホスファチジルコリン、DEPCはジエチルピロカーボネート、DOPCはジオレオイルホスファチジルコリン(ジオレオイルホスファチジルコリン)、POPCはPOホスファチジルコリン、DEPCはジエチルピロカーボネート、DOPCはジオレオイルホスファチジルコリン、POPCはPOホスファチジルコリン、DSPAはジステアロイルホスファチジン酸、DOPEはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、DPPAはジパルミトイルホスファチジン酸、M-lysoPCはミリストイルリゾホスファチジルコリン、P-lysoPCはパルミトイルリゾホスファチジルコリン、S-lysoPCは1-ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、DPPEはジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、DSPEはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、DOPGはジオレオイルホスファチジルグリセロール、DMPEはジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、DMPGはジミリストイルホスファチジルグリセロール、DPPGはジパルミトイルホスファチジルグリセロール、POPGは1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、DSPGはジステアロイルホスファチジルグリセロール、DPPSはジパルミトイルホスファチジルセリン、PIはホスファチジルイノシトール、BAはベンジルアルコール、NMPはN-メチルピロリドン、DMSOはジメチルスルホキシド、BHAはブチルヒドロキシアニソールを表し、BHTはジブチルヒドロキシトルエンを表し、BUPはブピバカイン、ROPはロピバカイン、MLXはメロキシカム、CHOはコレステロールを表し、PRXはピロキシカム、LBUPはレボブピバカイン、TACはトリアムシノロンアセトニド、KTLはケトロラック、VEはビタミンEを表し、VESはビタミンEコハク酸を表す。
【0087】
〔有益な効果〕
1)本発明は、常温で半固体であり、投与部位での薬物デポとして直接使用できる徐放性製剤組成物を提供する。本発明で選択されたゲル化因子は、製剤の他の成分との良好な生体適合性を有し、液体油を固化させ、薬物の徐放性放出の要件を満たすことができる。
【0088】
2)本発明はまた、驚くべきことに、製剤系に適切な安定剤を加えることによって、長期放置中の組成物の変色問題を改善し、組成物の油保持性を向上させ、組成物のゲル特性を高め、組成物の粘度を低減するなどができることを見出した。
【0089】
3)本発明の徐放性薬物送達液体組成物は、適切な粘度を有し、投与が容易である。本発明の徐放性薬物送達半固体組成物は、投与部位に直接投与することができ、臨床投与を容易にする。
【0090】
4)本発明の組成物は刺激性が小さく、良好な投与安全性及び耐性を有する。
【0091】
5)本発明が提供する徐放性製剤系により、活性薬物成分は良好な放出性能を達成し、バースト放出の可能性を低減することができる。
【0092】
6)本発明の組成物は、麻酔、鎮痛活性を有する薬物製剤の開発に特に適し、他の徐放性鎮痛薬系と比較して、例えば、鎮痛活性成分の放出が持続的で安定しており、注射投与できるだけでなく、安定した便利な局所投与にも適しており、患者の耐性が高く、副作用が少ないなどのより多くの利点を有する。
【0093】
〔図面の簡単な説明〕
図1-1〕と〔図1-2〕2~8℃と25℃での組成物1010のレオロジー結果である。
図1-3〕と〔図1-4〕2~8℃と25℃での組成物1013のレオロジー結果である。
図1-5〕~〔図1-7〕組成物1051、1052、1030、1031のレオロジー結果である。
図1-8〕組成物1010と1013の粘度-温度変化グラフである。
図1-9〕組成物1051と1052の粘度-温度変化グラフである。
図1-10〕組成物1053と1054の粘度-回転速度変化グラフである。
図2-1〕と〔図2-2〕組成物1047のブピバカインとメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図2-3〕と〔図2-4〕組成物1048のブピバカインとメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図3-1〕ラットCFA炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏に対する組成物1076、1077と1078の影響である。Preは、モデル作製前の基本的な機械的疼痛閾値を示し、黒い中実点は、モデル群と比較した結果、統計的差異を有することを示す(p<0.05)。
図4-1〕と〔図4-2〕組成物1079のロピバカインとメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図5-1〕と〔図5-2〕組成物1080のロピバカインとメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図5-3〕と〔図5-4〕組成物1081のロピバカインとメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
【0094】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明により請求される請求範囲内に含まれる。
【0095】
特に明記しない限り、下記の実施例で使用される原材料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって調製することができる。
【0096】
実験材料:
ヒマシ油:CO
モノステアリン酸グリセリル:IMWITOR(登録商標)900K、Cithrol GMS 40、Geleol
混合脂肪酸グリセリル(ステアリル):ステアリル36型、ステアリル38型、SUPPOCIRE AM、SUPPOCIRE CM、GELUCIRE 43/01、SOFTISAN 378
ジステアリン酸グリセリル:Precirol ATO5
ベヘン酸グリセリル:COMPRITOL 888 ATO
リン脂質:SPC、HSPC、DMPC、DPPC、DSPC、DEPC、EPC、DOPC
実施例1
組成物の外観に対する安定剤の影響
表1-1~表1-3に示すように、異なるゲル化因子を含む組成物を調製し、室温で20か月長期間放置し、組成物を標準比色溶液Y(黄色)の番号1~10と比較して、組成物の外観の色の変化を観察した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
本発明において、ゲル化因子として脂肪酸グリセリルのみを含む油ゲル製剤の色は、サンプルの長期間保持中に様々な程度で暗くなり、安定剤(例えばSPC、HSPC)を加えた組成物は、20か月長期間放置した後、外観の色番号がY7~8号の間であり、色の変化が他の油ゲル組成物よりも明らかに小さく、油ゲル組成物の外観安定性を明らかに向上させることができることが予想外に発見された。
【0101】
実施例2
組成物の油保持性に関する研究
下記表2-1~2-9に示される各成分に従って、異なる比率のゲル化因子を含む医薬組成物を調製した。0.5 gの医薬組成物を秤量し、遠心分離管に入れ、様々な速度で遠心分離し、遠心分離後に遠心分離管を逆転させ、組成物の油分離状況を観察した。
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
【表8】
【0107】
【表9】
【0108】
【表10】
【0109】
【表11】
【0110】
【表12】
【0111】
油保持性は、油ゲル構造の安定性を評価するための指標の1つである。液体油に対するゲル化因子の硬化能力を保証し、長期放置中の液体油分離の現象を防止するために、製剤の油保持性を研究し、油ゲル中の最大油担持能力を調査する必要がある。本発明において、安定剤を含む組成物は、油保持性を顕著に向上させ、物理的安定性を向上させ、貯蔵中の油分離のリスクを効果的に低減させることができることが予想外に発見された。
【0112】
実施例3
油ゲル組成物の粘度の測定
表3-1~3-3に従って異なる安定剤と異なる使用量の有機溶媒を含む医薬組成物を調製した。70℃で表中の原材料と補助材料を混合し、透明で均一な溶液を形成するるまで加熱しながら撹拌し、室温に冷却して固体ゲル状物質を形成した。続いて、14号ローターを備えた粘度計を用いて、スピンドル法により医薬組成物の粘度を測定し、検出温度は30℃であり、回転速度は10 rpmであり、粘度検出結果は表3-1~3-3に示された。
【0113】
【表13】
【0114】
【表14】
【0115】
【表15】
【0116】
本発明は、安定剤(SPC、DEPC、CHO、DOPCなど)を添加した後、医薬組成物の粘度を顕著に低減させることができ、同時に有機溶媒の使用量も系全体の粘度に影響を与えることを予想外に発見した。従って、安定剤と有機溶媒との比率を調整することにより、医薬組成物の粘度を最適化し、臨床投与をより容易にすることができる。
【0117】
実施例4
注射針透過性の調査
表4-1~4-4に従って異なる有機溶媒と異なる安定剤を含む油ゲル組成物を調製し、表中の組成物の注射針透過性を検出し、最大推力を調査した。検出結果は下記表4-1~4-4に示された。
【0118】
【表16】
【0119】
【表17】
【0120】
【表18】
【0121】
【表19】
【0122】
通常、医師が投与しやすくするために、臨床投与の注射針透過性については最大推力が2 kg以下であることが求められた。
【0123】
本発明は、有機溶媒の使用量による注射針透過性への影響を調査した結果、有機溶媒の使用量を高めることにより、推力を減少させることができ、臨床投与をより容易にすることを示した。同時に、油ゲル組成物に他の安定剤を加えることによって、推力を低減させる役割を果たすことができる。
【0124】
実施例5
組成物のレオロジーに関する研究
表5-1~5-4に従って油ゲル組成物を調製し、レオロジーに関する研究が行われた。レオメータ型式:TA DHR-1 サンプル量:1 mL。測定モード:振動モード:時間スキャン、固定Strain 0.5%、周波数1 Hz;振動モード:周波数スキャン、固定Strain 0.5%、周波数スキャン範囲0.1~100 rad/s;流動モード:粘度スキャン、せん断速度範囲0.01~100 1/s;流動モード:粘度温度変化スキャン、温度変化範囲20℃~60℃、固定せん断速度0.1 1/s
【0125】
【表20】
【0126】
【表21】
【0127】
【表22】
【0128】
【表23】
【0129】
ゲル特性を評価するために、レオロジーの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’パラメータを使用することができる。理論上、グリセリルの貯蔵弾性率G’が大きいほど、ゲル強度が高くなり、ゲルネットワーク構造がより安定した。貯蔵弾性率(G’)が損失弾性率(G’’)より大きい場合、サンプルにゲル特性が示された。図1-1~1-7は、それぞれ表5-1~5-3の油ゲル組成物のレオロジー特性結果であった。本発明は、SPCを含む組成物(1013)のG’がG’’より大きく、明らかなゲル特性を有し、SPCを含まない組成物(1010、1030、1031)がゲル特性を示さなかったことを予想外に発見した。同時に、安定剤の使用量(1051と1052)を増加することによって、製剤のゲル強度を高めることができる。
【0130】
図1-8と図1-9は、温度の変化に伴う組成物1010、1013、1051及び1052の粘度の傾向であり、変化の傾向に基づいて組成物のゲル化温度を推定することができ、結果は表5-5に示された。表5-5から分かるように、SPC添加後、組成物のゲル化温度を低減することができ、生産拡大及び充填により有利であった。
【0131】
【表24】
【0132】
図1-10は、回転速度の変化に伴う組成物1053と1054の粘度の傾向であり、変化の傾向に基づいて、本発明の油ゲル組成物にせん断減粘特性があり、臨床投与により有利であることが分かった。同時に、安定剤SPCの使用量が増加すると、組成物の粘度は一定の程度低減した。
【0133】
実施例6
凝固温度に関する研究
表6-1~6-3に従って油ゲル組成物を調製し、顕微鏡下で溶解後、冷却時の組成物の凝固温度を観察し、有機溶媒と安定剤による凝固温度への影響を調査した。検出結果は下記表6-1~6-3に示された。
【0134】
【表25】
【0135】
【表26】
【0136】
【表27】
【0137】
本発明は、有機溶媒と安定剤を加えることによって、組成物の凝固温度を低減することができ、生産と充填により有利であることを予想外に発見した。
【0138】
実施例7
異なる活性成分を含む油ゲル組成物
下記表7-1に示される各成分に従って、異なる主活性成分を含む油ゲル組成物を調製した。70℃で表中の原材料と補助材料を混合し、透明で均一な溶液を形成するまで加熱しながら撹拌し、室温に冷却して何れも固体ゲル状物質を形成できた。
【0139】
【表28】
【0140】
【表29】
【0141】
実施例8
異なる濃度の活性成分と酸化防止剤を含む医薬組成物
下記表8に示される各成分に従って、異なる濃度の活性成分と酸化防止剤を含む油ゲル組成物を調製した。70℃で表中の原材料と補助材料を混合し、透明で均一な溶液を形成するまで加熱しながら撹拌し、室温に冷却して何れも固体ゲル状物質を形成できた。
【0142】
【表30】
【0143】
実施例9 有機溶媒を含まない又は異なる有機溶媒を含む医薬組成物
下記表9に示される各成分に従って、異なる有機溶媒を含む油ゲル組成物を調製した。70℃で表中の原材料と補助材料を混合し、透明で均一な溶液を形成するまで加熱しながら撹拌し、室温に冷却して何れも固体ゲル状物質を形成できた。
【0144】
【表31】
【0145】
実施例10
油ゲル組成物のインビボ投与。
【0146】
イヌのインビボにおける薬物動態に関する研究は以下の通りであった。体重約10 kgのビーグルイヌは、実験前に12時間以上絶食させ(給餌ボックスを取り外し)、水を自由に摂取させ、投与後の4時間に給餌した。各群は、皮下注射6 mg/kgで投与し、サンプル情報は表10に示された。各群の動物について、投与前の0時間に、投与後の0.5、1、2、3、6、8、12、24、36、48、60、72及び96時間にEDTA-2K+抗凝固採血チューブに血液サンプルをそれぞれ約0.5 mLを採取し、全血を8000 rpmで5 min遠心分離した後、血漿を収集し、その後LC-MS/MSにより血漿サンプル中の薬物濃度を検出した。
【0147】
【表32】
【0148】
組成物の投与後の96時間以内のBUPとMLXの血中薬物濃度-時間曲線は図2-1~図2-4を参照する。
【0149】
実施例11
油ゲル組成物のインビボ投与
ラットを用いた有効性研究は以下の通りであった。実験の3日前にラットのPWT値を1日1回測定し、4日目のモデル作製前にモデル作製前の基礎値としてPWTを1回測定し、続いて全てのラットの右後足にそれぞれ100 μLのCFAを投与し、炎症モデルを作製した後の24 hにモデル作製後の基礎値としてPWT値を再度測定し、足底に皮下注射によって組成物を投与し、サンプル情報は表11に示された。モデル群は投与処理を行わず、投与後の様々な時点でVon Freyモノフィラメントでラットの後肢の足底中部を刺激し、疼痛閾値としてその機械的足引っ込め閾値(paw withdrawal threshold,PWT)を測定した。検出時間は、それぞれ投与後30 min、1 h、4 h、8 h、12 h、24 h、48 h、72 h、92 hであった。
【0150】
【表33】
【0151】
結果は図3-1に示すように、モデル作製前、各群ラットの機械的疼痛閾値(PWT)は何れも、21~24 g程度に維持され、モデル作製後24h、機械的疼痛閾値(PWT)は4~6 gに低下し、CFAモデル作製後にラットの機械的痛覚過敏が非常に明らかであることが分かった。組成物1076は、投与後の30 minにラットのPWT値を顕著に増加させ(p<0.05)、効果は96 h持続可能であり、その差は統計的に有意であった(p<0.05)。組成物1078は、投与後の4 hに鎮痛効果が現れ(p<0.05)、鎮痛効果は12 hまで持続した後に消失し(p>0.05)、その効果維持時間が12 h~24 hであることが示された。組成物1077は、8 hから鎮痛効果が現れ(p<0.05)、12 hまで持続した後に変動し、48 hに再び鎮痛効果が示された(p<0.05)。
【0152】
実施例12
油ゲル組成物のインビボ投与。
【0153】
イヌのインビボにおける薬物動態に関する研究は以下の通りであった。体重約10 kgのビーグルイヌは、実験前に12時間以上絶食させ(給餌ボックスを取り外し)、水を自由に摂取させ、投与後の4時間に給餌した。各群は、皮下注射6 mg/kgで投与し、サンプル情報は表12に示された。各群の動物について、投与前の0時間に、投与後の0.5、1、2、3、6、8、12、24、36、48、60、72及び96時間にEDTA-2K+抗凝固採血チューブに血液サンプルをそれぞれ約0.5 mLを採取し、全血を8000 rpmで5 min遠心分離した後、血漿を収集し、その後LC-MS/MSにより血漿サンプル中の薬物濃度を検出した。
【0154】
【表34】
【0155】
組成物の投与後の96時間以内のROPとMLXの血中薬物濃度-時間曲線は図4-1~図4-2を参照する。
【0156】
実施例13
油ゲル組成物のインビボ投与。
【0157】
イヌのインビボにおける薬物動態に関する研究は以下の通りであった。体重約10 kgのビーグルイヌは、実験前に12時間以上絶食させ(給餌ボックスを取り外し)、水を自由に摂取させ、投与後の4時間に給餌した。各群は、皮下注射6 mg/kgで投与し、サンプル情報は表13に示された。各群の動物について、投与前の0時間に、投与後の0.5、1、2、3、6、8、12、24、36、48、60、72及び96時間にEDTA-2K+抗凝固採血チューブに血液サンプルをそれぞれ約0.5 mLを採取し、全血を8000 rpmで5 min遠心分離した後、血漿を収集し、その後LC-MS/MSにより血漿サンプル中の薬物濃度を検出した。
【0158】
【表35】
【0159】
組成物の投与後の96時間以内のROPとMLXの血中薬物濃度-時間曲線は図5-1~図5-4を参照する。
【0160】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。しかし、本発明の請求範囲は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神と原則内で行われた全ての修正、等価置換、改良などは、何れも本発明の請求範囲に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0161】
図1-1】2~8℃での組成物1010のレオロジー結果である。
図1-2】25℃での組成物1010のレオロジー結果である。
図1-3】2~8℃での組成物1013のレオロジー結果である。
図1-4】25℃での組成物1013のレオロジー結果である。
図1-5】組成物1051、1052のレオロジー結果である。
図1-6】1030のレオロジー結果である。
図1-7】1031のレオロジー結果である。
図1-8】組成物1010と1013の粘度-温度変化グラフである。
図1-9】組成物1051と1052の粘度-温度変化グラフである。
図1-10】組成物1053と1054の粘度-回転速度変化グラフである。
図2-1】組成物1047のブピバカインの血中薬物濃度時間曲線である。
図2-2】組成物1047のメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図2-3】組成物1048のブピバカインの血中薬物濃度時間曲線である。
図2-4】組成物1048のメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図3-1】ラットCFA炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏に対する組成物1076、1077と1078の影響である。Preは、モデル作製前の基本的な機械的疼痛閾値を示し、黒い中実点は、モデル群と比較した結果、統計的差異を有することを示す(p<0.05)。
図4-1】組成物1079のロピバカインの血中薬物濃度時間曲線である。
図4-2】組成物1079のメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図5-1】組成物1080のロピバカインの血中薬物濃度時間曲線である。
図5-2】組成物1080のメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図5-3】組成物1081のロピバカインの血中薬物濃度時間曲線である。
図5-4】組成物1081のメロキシカムの血中薬物濃度時間曲線である。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
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図2-1】
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【国際調査報告】