(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】工作物加工プロセスの制御および/または監視方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20231101BHJP
B23B 25/06 20060101ALI20231101BHJP
B23B 29/12 20060101ALI20231101BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20231101BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
B23Q17/09 H
B23B25/06
B23B29/12 Z
B24B5/04
B24B49/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526293
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021079801
(87)【国際公開番号】W WO2022090304
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】102020128811.5
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519290507
【氏名又は名称】プロ-マイクロン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PRO-MICRON GMBH
【住所又は居所原語表記】Gottlieb-Daimler-Strasse 6 87600 Kaufbeuren Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】ヴンダーリヒ,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ディクス,マーチン
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C029CC07
3C034AA01
3C034BB92
3C034CA15
3C034CA17
3C034CA26
3C034CB02
3C034DD07
3C043AA06
3C043CC03
3C045HA05
3C046PP00
(57)【要約】
工作物加工プロセスを制御および/または監視する方法が開示される。工作物加工プロセスでは、工具が作用面でもって工作物の加工すべき表面に接触される。そのために、工具から工作物への相対的接近のために送出運動が実行される。加工プロセスでは、工具および/または工作物が、工具軸および/または工作物軸を中心に回転する。送出運動は、工具および/または工作物が回転する際に実行される。送出運動の実行中に、少なくとも工具の作用面と工作物の加工すべき表面との間の領域に、補助媒体が投入される。送出運動中に、工具軸に対して横方向、特に直交方向に、および/または工作物軸に対して横方向、特に直交方向に掛かる曲げモーメントおよび/または力の、および/または工具軸を中心にする工具の回転の際、および/または工作物軸を中心にする工作物の回転の際に発生するトルクの、時間的に分解した検出が実行される。検出された曲げモーメント、力および/またはトルクの値および/または時間経過から、接近プロセスの状態について推定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に工作物切削加工プロセスを制御および/または監視する方法であって、工作物加工プロセスにおいて、工具を作用面でもって工作物の加工すべき表面に接触させ、そのために工具を工作物に相対的に接近させるための送出運動が実行され、工具および/または工作物は、工具軸および/または工作物軸を中心に回転し、送出運動が、工具および/工作物の回転時に実行され、いずれにせよ送出運動の実行中に、少なくとも工具の作用面と工作物の加工すべき表面との間の領域に、補助媒体が投入される、方法において、送出運動中に、工具軸に対して横方向、特に直交方向に、および/または工作物軸に対して横方向、特に直交方向に掛かる曲げモーメントおよび/または力の、および/または工具軸を中心にする工具の回転の際、および/または工作物軸を中心にする工作物の回転の際に発生するトルクの、時間的に分解した検出が実行され、検出された曲げモーメントおよび/または力および/またはトルクの、値および/または時間経過から、接近プロセスの状態について推定される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記補助媒体の存在により工作物の加工すべき表面と工具の作用面との間の領域において送出運動の方向とは異なる方向に作用する反力に基づいて、トリガされる曲げモーメント、力および/またはトルクを識別し、このようにして識別された曲げモーメント、力および/またはトルクに基づいて、工作物加工プロセスの状態について推定される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検出された曲げモーメント、力および/トルクの第1の上昇特性に基づいて、工具と工作物との閾値距離までの接近を識別する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工具と工作物との閾値距離までの接近を識別した場合、送出運動の送り速度を低減する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも工具と工作物とが接触するまで、低減された送り速度によりさらなる送出運動を実行する、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
検出された曲げモーメント、力および/トルクの第2の上昇特性に基づいて、工具の工作物における固定接触を識別する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
検出された曲げモーメント、力および/トルクの第3の上昇特性に基づいて、工具と工作物との間の領域に補助媒体が存在することを識別する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工具ホルダおよび/または工作物ホルダにある、力センサまたは歪みセンサを有するセンサアセンブリを用いて、および/または工作機械の、センサが装備されたスピンドル構成群において、曲げモーメント、力および/またはトルクを時間的に分解して検出する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記工作物加工プロセスは研削プロセスであり、工具は研削工具、特に回転研削ディスクまたは研削ピンである、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を備える、工作物加工プロセスの制御および/または監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作物加工、特に工作物の自動加工、特に例えばフライス加工、旋削、穴開け、および研削のような、材料切削工作物加工では、今日、一方では多数の工作物を加工するために高いスループット率が必要とされ、他方では通常、加工品質、例えば表面品質に対して、並びに形状公差および位置公差を遵守することに対して高い要求が存在する。これらの要求を満たすために、自動で行われる加工プロセスにおいて、工作物加工の過程を種々の特性量により、特に動的にも検出し、これら特性量からさらに、例えば加工の成功ないし失敗について、または加工工具、工作物、または工作機械、例えばフライス盤の状態について推定することが公知である。
【0003】
したがって、例えば出願人により開発された、一体的測定センサを備える工具ホルダが存在し、これは例えば特許文献1に記載されている。これを使用して、フライス加工プロセスにおける切削加工時に、工具の介入によって発生する反力と曲げモーメントを決定することができる。工具ホルダにあるこのようなセンサ系により記録された測定値を、次に例えば同様に出願人による特許文献2に記載のように評価し、さらに例えばフライス工具の個々の工具切断後に解消された工具摩耗、または刃の破損も識別することができる。
【0004】
加工プロセスを監視および評価するための、同様に市場に存在する他の方法は、電流消費、すなわち駆動モータがスピンドル、例えば工具スピンドルを駆動するのに消費する電流の電流強度を検出および評価することに基づくものであり、電流消費について測定されたデータから、例えばトルクの変化を推測することができる。
【0005】
工作物加工プロセスの検出および監視をさらに改善するために、工作物加工プロセスにおける付加的状態、パラメータ、および状況をさらに検出し、分析できるようにし、特に工作物切削加工プロセス時に、工作物加工プロセスの別の付加的な形態を、相応に監視および分析できるようにするためには、さらなる開発が必要である。有利には、対応して得られたデータおよび認識は、特にリアルタイムでプロセスを制御するために使用できるであろう。
【0006】
例えば、対象物の研削加工のためには、回転研削工具が送出過程中に、加工すべき工作物といつ接触するかを非常に正確に決定すべきである。この情報は、工具送り中に工作物に接触することなく、高められた走行速度から、研削時において通常の、非常に小さな送出送り速度に変更するのを実行するために重要である。未加工工作物には10分の1ミリメートルの範囲にあり得る許容公差があるため、プロセス開始を制御する接近制御がないと、小さな送出送り速度(送出速度または接近速度とも)による長い起動フェーズが必要である。まさに、研削工具を加工すべき工作物に接触されること、いわゆるスパークは、研削加工プロセスにおいて重要な瞬間である。なぜなら、効率的な生産のためには、最小限の必要時間を高い研削寸法公差に調和させる必要があるからである。ここで、研削工具と工作物とが互いに接近させられる送出運動は、研削工具が加工すべき工作物の表面に突然かつ衝撃的に衝突しないようにするため、接触の瞬間において過度に高い速度により実行すべきではない。このような衝撃的な衝突は、研削工具に微視的および巨視的な変化を引き起こすことがあり、このような変化はさらに、溝または他の不所望の製造欠陥を工作物表面に引き起こし、並びに形状公差および位置公差に負の影響を及ぼす。研削加工は、通常、最終的な工作物加工プロセスであるから、この種の溝または表面の他の損傷は、規定された幾何学的目標寸法に違反せずに、継続される研削プロセスで再び除去できないことがしばしばである。対応して、このような表面欠陥を有する不合格品が多数になる。送出運動の枠内で工作物および研削工具が急激に互いに衝突する場合のさらなる危険性は、損傷の可能性、例えば研削工具の破損である。他方で可及的に高い工作物スループットのためには、迅速に実行される送出運動が求められる。対応して、研削プロセス時に、迅速に実行される、例えば早送り速度により克服される第1の部分から始まって、速度が作業速度に低減される第2の部分での送出運動がすでに提案されている。しかしながらこれは、多くの場合、工作物に接触した場合に初めて生じる。例えば研削電気モータ出力の測定に依拠する、対応の制御の可能性が、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2103379号明細書
【特許文献2】欧州特許第2924526号明細書
【特許文献3】旧東ドイツ国特許第141000号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明により、曲げモーメントおよび/または力を時間的に分解して検出するためのセンサ系を使用し、このセンサ系により検出された特性値に基づいて、どのように工作物加工プロセスを監視および/または制御できるかという、さらなる改善された可能性がここに提示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴を備える、特に材料を切削する工作物加工プロセスの制御および/または監視のための方法によって解決される。このような発明方法の有利な発展形態は、従属請求項2から9に記載されている。
【0010】
したがって本発明は、まずその一般的な形態において、特に材料を切削する工作物加工プロセスの制御および/または監視のための方法を意図し、この工作物加工プロセスでは、工具が作用面でもって工作物の加工すべき表面に接触され、このために、工具を工作物に相対的に接近されるための送出運動が実行され、この工作物加工プロセスでは、さらに、工具および/または工作物が、工具軸および/または工作物軸を中心に回転し、送出運動が、工具の回転時および/または工作物の回転時に実行され、この工作物加工プロセスでは、さらに、いずれにせよ送出運動の実行中に、少なくとも工具の作用面と工作物の加工すべき表面との間の領域において、補助媒体が投入される。投入された補助媒体は、特に、例えば液体、例えば冷却液、冷却液体のような流体、または材料除去工作物加工プロセスで工作物から遊離した、例えば切り屑または研削粉のような材料粒子を排出するための流体とすることができる。
【0011】
本発明によれば、次に送出運動中に、工具軸に対して横方向、特に直交方向に掛かる、および/または工作物軸に対して横方向、特に直交方向に掛かる曲げモーメントおよび/または力の時間分解的な検出が実行され、および/または工具が工具軸を中心に回転する際、および/または工作物が工作物を中心に回転する際に発生するトルクが検出される。検出された曲げモーメント、力および/またはトルクの値および/または時間経過から、次に、工具の作用面が工作物本体に接近する状況が推定される。
【0012】
したがって本発明の枠内で、工作物に対する工具の送出運動がすでに観察され、この送出運動中に、工具および/または工作物を負荷する、工具ないし工作物のそれぞれの軸に対して横方向、特に直交方向に掛かる力および/または曲げモーメントが、および/または工具軸を中心にする工具の回転の際、および/または工作物軸を中心にする工作物の回転の際に発生するトルクが測定学的に検出される。検出された特性量(曲げモーメント、力および/またはトルク)の絶対値に基づいて、またはこれら特性量の時間経過にも基づいて、次に工具と工作物との間の接近の状況が推定される。
【0013】
したがって例えば、工具軸を中心に回転する工具を、静止したあるいは送り速度で移動する工作物に案内することができ、工具を負荷する、工具軸に対して横方向、特に直交方向に掛かる力および/または曲げモーメントを検出し、前記のようにして評価することができる。したがって同様に、工具軸を中心に回転する工具の、工作物軸を中心に回転する工作物への接近を実行することができ、工具軸に対して横方向、特に直交方向に工具に掛かる力および/または曲げモーメントを検出し、前記のようにして評価することができる。同様に接近を決定するために、代替的にまたは追加的に、前記のトルクを検出し、評価することもできる。
【0014】
本発明の措置により、特に本来の材料切削の開始前にすでに、すなわち工具と加工すべき工作物との固体接触の前に、特に送出運動中に、すなわち工具と工作物との相対接近中の特定の状態を検出し、決定することが可能である。これにより、予期された状態からの逸脱が確定される場合には、早期の介入が可能になる。さらに、状態のこのような認識により、工具と工作物との干渉の前に、例えば、工作物と工具が、センサ系により検出された曲げモーメントおよび/または力の変化に基づき認識された所定の限界間隔に接近している場合には、例えば送出運動をその送出速度に適合することによって、加工プロセスの制御を行うことができる。
【0015】
特に、本発明の方法のために、補助媒体が工作物の加工すべき表面と工具の作用面との間の領域内に存在することを利用することができる。なぜなら送出運動の枠内で、この補助媒体、例えば冷却液は、工具と工作物との間の隙間に補助媒体が存在するので、送出運動の方向とは異なる方向に作用する反力が形成され、工作物並びに工具に伝達ないし作用するようにする。例えば、工作物と工具との間に形成された隙間にあるそのような補助媒体は、工具および/工作物の回転によって共に流され、対応の力ないし対応の圧力を再び形成し、工作物と工具との間に存在する隙間が十分に小さい場合には、該当する要素が回転する工作物および/または工具の軸に対して横方向の力が、工具ないし工作物のそれぞれ他方の要素に作用する。同様にそれぞれの要素、すなわち工具ないし工作物の回転を制動するトルクが形成される。したがって、工作物または工具を負荷する、それぞれの軸に対して横方向の力または対応の曲げモーメントが、および/または上に説明したようなトルクが、使用されるセンサ系によって識別されると、この力、曲げモーメントおよび/またはトルクの開始から、または上記のパラメータの値の対応する上昇から、工具と工作物が閾値距離に近づいていると推定することができる。これは、請求項3における本方法の発展形態にしたがって記載されている。次に閾値距離のこの識別は、例えば早送りから作業送り速度まで送出運動の速度を低減するために、工具と工作物との最初の接触時に負荷ピークを排除するために利用することができる。この低減された送り速度は、次に、工具と工作物との実際の接触が確定されるまで特に維持することができる。
【0016】
このような実際の接触は、センサ系により検出された、該当する軸、工具軸または工作物軸に対して横方向に負荷する曲げモーメントおよび/または力の変化において、あるいは工具ないし工作物のそれぞれの回転運動を制動するトルクの上昇において再び現れる。補助媒体が連行される前記の作用に基づき伝達される力と比較して、対応の力(複数可)ないし対応の曲げモーメントないし対応のトルクのより明確でより有意な上昇が確定され、したがって本発明の方法により対応して、工作物における工具の実際の接触および干渉を識別することができる。
【0017】
さらに、工具と工作物との間の間隔が、補助媒体によりトリガされて例えば工具への力および/曲げモーメントの伝達が行われるように、あるいは例えば工具の回転を制動するトルクが発生するほどに、低減されていれば、力、曲げモーメントおよび/またはトルクを時間的に分解して高周波数で検出することにより、工具の同心度または同心度からの偏差を推定することができる。すなわち、工具の周囲の外輪郭における幾何形状、例えば研削ディスクの円形に適合しない偏差が、時間的に分解して測定された力、曲げモーメント、および/またはトルクのパターンに生じる場合、努めるべき同心度から偏差していることを推定することができる。同じことが、工作物の同心度の検査にも、これが回転している場合でも当てはまる。
【0018】
前記の作用に基づき、すなわち工作物ないし工具の該当する軸に対して横方向の力ないしそれぞれの軸に対して横方向、特に直交方向に存在する曲げモーメント、あるいは工具および/工作物のそれぞれの回転を制動するトルクの、接近の際にこの力を仲介する補助媒体による伝達に基づき、そこから結果として生じるパターンが、検出された力、曲げモーメントないしトルクの時間経過に発生しない場合、そこから、補助媒体が存在しないか、または例えば媒体圧が小さすぎるため、十分な量で存在しておらず、したがって加工プロセスに相応のエラーが存在することを推定できる。
【0019】
本発明の方法を実施するためには、特にこれら特性量の時間経過において非常に微細な変化を識別し、確実に決定すべき場合には、決定すべき力、曲げモーメントおよび/トルクを高感度かつ高精度に検出することが非常に重要である。この感度および測定精度を得るために、曲げモーメント、力および/トルクの時間的に分解した検出を、工具ホルダおよび/または工作物ホルダにある、力センサまたは歪みセンサを有するセンサアセンブリを用いて、および/またはセンサの装備されたスピンドルによって実行することが提案される。ここでは例えば、本出願人による欧州特許第2103379号明細書に記載されているようにホルダを使用することができる。例えば工具ホルダまたはスピンドルノーズ内に配置することのできる対応のセンサ系により、それに保持された要素、例えば工具を負荷する力ないし曲げモーメントであって、特に要素、例えば工具が回転する軸に対して横方向に向けられた力ないし曲げモーメントを、特に良好に高精度に検出することができる。特に、このようなツールによる力および/または曲げモーメントの検出は、例えばモータ電流の評価または他の間接的なセンサ手段による検出よりも格段に正確であり、時間的により高精度に分解可能である。負荷する力および/または曲げモーメントおよび/またはトルクに対する値を直接的かつ高分解能に検出することにより、特にこれら特性値の時間経過の非常に正確な分析が可能であり、対応してすでに送出フェーズにおいて、前に説明したような現象を識別し、加工プロセスの対応の状態を推定することができる。
【0020】
基本的に本発明の方法は、全く別の工作物加工プロセスにも使用することができるが、研削プロセスとの関連における使用、ここでは特に幾何学的に剛性の研削工具、好適には回転研削ディスクまたはそのような研削ピンによる研削プロセスに特に適する。そのような研削プロセスでは、特に、研削工具と工作物との間にもたらされる補助媒体によって例えば工作物から研削工具に伝達される力、ないしそこから生じる曲げモーメント、または伝達される制動トルクに基づき、本発明の方法により識別される、研削工具と工作物との間隔についての閾値に到達することを、いわゆるスパークプロセス、すなわち送出および研削工具を工作物に接触させることをよりよく、かつより確実に制御するために利用することができる。この閾値は、例えば、研削工具と工作物表面との間隔の場合、10~50μmの範囲とすることができる。
【0021】
このようにしてそのようなプロセスにおいて、研削工具、例えば外周で研削する回転研削ディスクを、まず高速の送出運動で、例えば60mm/分超のオーダーの速度による送出運動で、工作物ないし加工される工作物表面に、前述の共に流される補助媒体により引き起こされる、横方向に向けられた力ないし対応の曲げモーメントないしトルクの伝達の作用が発生し識別されるまで接近させることができ、次にそれに基づいて、送出速度を低減し、相応に減速された作業速度、例えば6mm/分未満のオーダーの作業速度により、工具を工作物に向かって、工作物表面においてソフトな侵襲が達成されるまでさらなる送出運動を行う。このようにして、加工プロセスの開始に必要な送出運動の持続時間を短縮することができ、その際に、研削工具が工作物の加工すべき表面に強く急激に侵襲し、固体接触するリスクを冒すことがない。これにより、加工品質が低下するリスクを伴うことなく、むしろ品質を保証しつつ、非生産的な付随時間を削減することで、加工された工作物のスループットを向上させることが可能である。
【0022】
しかし本方法はまた、回転フライスまたはボアの内面研削用の研削工具などの加工工具を、送出運動においてセンタリングするために使用することもできる。そのために、送出運動の際に発生する、特に前に説明した補助媒体との交互作用によって接近時に引き起こされる反力の検出に基づいて、曲げモーメントまたはトルクを評価することができ、そして送出運動をセンタリングのために、反力または曲げモーメントが例えば最少化されるように、特にゼロに低減されるように、または反力、曲げモーメントおよび/またはトルクの値および/または経過が特定のパターンに対応するように、調整することができる。
【0023】
特に本発明の方法では、力、力の成分および/または曲げモーメント、曲げモーメントの成分を、多次元に記録することができ、加工プロセスの状況について推定するために、多次元、例えば2次元に検出された値および経過を相応に評価することができる。
【0024】
本発明のさらなる利点および特徴は、添付図面に基づく可能な実施形態の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】工具接近プロセスにおける工作物と加工工具の配置を示す概略図である。
【
図2】時間軸にわたり、送出のための接近速度を、従来技術から公知の措置での研削プロセスの場合と、本発明の方法の実施した場合とで示し、さらに接近速度の本発明により制御のために利用される測定量の測定値の経過を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
図面において、純粋に概略的なものであり、本発明を説明するための縮尺は一切ない。
【0028】
図1には、工作物1と工具2とが互いに接近する際に存在する加工装置内の関係が概略的に示されている。工具2は、特に研削ディスクとすることができる。
【0029】
特に切削加工を起動しスタートするために、工作物1および/または工具2が回転され、これらは隙間Sを形成し、間隔を互いに有する。図示の場合、回転速度vf,tで工作物1も、回転速度vcで工具2も回転する。隙間Sには入口3から補助媒体4、例えば液体が取り込まれる。
【0030】
そして工作物1と工具2は、半径方向の送出速度vf,rで互いに接近され、間隔、すなわち工作物1と工具2との間の隙間Sの幅が、研削加工の場合はすなわち研削空隙が、低減される。このことは、ここでプロセス時間を節約するために、まず高い送出速度vf,rにより行われる。この半径方向の送出速度を得るために、工作物1および/または工具2を動的に移動させることができる。唯一重要なことは、工作物1と工具2との間で半径方向の相対運動が開始されることである。
【0031】
すでに工作物1と工具2とが固体接触する前に、隙間S内に存在する媒体、特にここでは補助媒体4を介して、工作物1と工具2との間に結合が得られ、この結合が次に半径方向力F
r、特に制動トルクMおよび曲げモーメントB
m(
図2も参照)の発生を工具2において引き起こす。対応する反力と反モーメントが、工作物1で観察される。
【0032】
いずれにせよ、この種のパラメータ、すなわち工作物1および/または工具2における力Fr、トルクMまたは曲げモーメントBmを測定し、これらの値および/またはこれらの値の時間経過から、工作物1と工具2との接近の程度を推定することが本発明のアプローチである。この測定は、基本的に工作物1および/または工具2において行うことができる。現在のところ、発明者は工具2での測定を優先する。
【0033】
前述の測定量の値または値の経過が得られると、工作物1と工具2とが、半径方向送出速度vf,rの低減が必要になる距離まで接近され、これは機械制御により行われる。
【0034】
この基本経過が、
図2に研削プロセスに対して例示的に示されており、従来技術から公知の措置との比較で示されている。しかし、
図2のグラフは、動作原理に関して他の切削プロセスに転用することもできる。
【0035】
図2には、極めて概略的に、プロセスセスパラメータの経過が時間tにわたり、それぞれ相関してプロットされている。
【0036】
グラフの上部の記号説明においてvf,St,d,Tにより示された点線は、従来技術による措置の際の半径方向送出速度vf,rの時間経過を概略的に表す。そこでは、工具と工作物との隙間Sがまだ大きい場合(ここではS>>0により示される)、半径方向接近速度または送出速度は、まず比較的に早い、例えば60mm/分の早送り速度vEで、工具と工作物が所定の小さな、典型的には先行の製造段階から得られた公差寸法をやや上回る間隔(この間隔において隙間Sは相応に低減されており、ここではS>0により示される)に接近するまで実施される。これは、時点t1における場合である。制御において設定されたこの間隔に達すると、すなわち時点t1から、さらなる送出運動が、時点t3のスパークまで行われ、ここで隙間幅が0に達する。これは、例えば5mm/分とすることのできる格段に低減された作業速度によってのみ実施される。図から理解されるように、制動時には速度ランプを維持することができる。
【0037】
これと比較して、
図2のグラフの上部の記号説明においてv
f,r,Erfにより示した破線は、本発明の措置における半径方向送出速度v
f,rの経過を示す。ここでは、半径方向送出速度v
f,rの調整が、従来技術から公知のように点線で示された措置、すなわち公差寸法に基づき決定された所定の間隔制御によっては行われず、送出中に検出された、工具および/または工作物に、工具軸ないし工作物軸に対して横方向に負荷する曲げモーメントB
m、あるいは工具軸ないし工作物軸に対して横方向に負荷する力F
rに基づき、または検出されたトルクMに基づき、各加工すべき工作物に対してそれぞれ自立的に行われる。そのような測定値の時間経過が、図には実線により概略的に示されている。測定値は、最初は小さいままであり、ここでは時点t
1の後の時点から上昇することが分かる。時点t
2でこの経過は、前もって設定された閾値を上回り、次に、新たにランプで早送り速度v
Eから作業速度v
Aへの低減が行われ、隙間幅が0である時点t
3で、スパークが作業速度v
Aにより行われる。
【0038】
図2から特に、本発明の方法では、従来技術から公知の方法と比較して送出運動が時間的により長く、したがって狭い隙間Sまで比較的に高速の早送り速度v
Eにより実施できることが理解される。このことはまさに、送出速度の低減の設定を、しばしば安全マージンが付される、加工すべき工作物の寸法の公差値に立脚する間隔値に基づき比較的早期の時点t
1で行う必要がなく、前に説明した実際の接近の確定に基づき、各工作物に対して個別に行うことができ、したがってより小さな隙間幅で、すなわち比較的後の時点t
2で規則的に行うことができるから、可能である。ここで早送り速度v
Eは、作業速度v
Aよりも格段に大きく、典型的には10倍、またはそれ以上であるから、本発明の措置については、スパークに至るまでの送出時間の全体的な短縮が得られる。特に大量生産プロセスにおいては、これにより最終的に、スループットが上昇し、ひいては生産コストが削減される。
【符号の説明】
【0039】
1 工作物
2 工具
3 入口
4 補助媒体
Bm 曲げモーメント
Fr 半径方向力
M トルク
S 隙間
t1,t2,t3 時点
vA 作業速度
vE 早送り速度
vf,t 工作物の回転速度
vf,r 半径方向送出速度
vC 工具の回転速度
【国際調査報告】