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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】フィラメント階層を含む不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20231101BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
D04H3/147
D04H3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526295
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 CZ2021050121
(87)【国際公開番号】W WO2022089676
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】PV2020-591
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】522342086
【氏名又は名称】ピーエフノンウーヴンズ ホールディング スポレチノスト エス ルチェニム オメゼニム
(71)【出願人】
【識別番号】307036487
【氏名又は名称】ピーエフノンウーヴンズ チェク スポレチノスト エス ルチェニム オメゼニム
(71)【出願人】
【識別番号】521221205
【氏名又は名称】ピーエフエヌ-ジーアイシー アクチオヴァ スポレチノスト
(71)【出願人】
【識別番号】505313830
【氏名又は名称】ライフェンホイザー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト・マシイネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カウシュケ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】メチル,ズデニェク
(72)【発明者】
【氏名】ポラスコヴァ,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ボール,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ノアック,クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー,トビアス
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA22
4L047AA27
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB09
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB02
4L047BB06
4L047BB09
4L047CB02
4L047CC03
4L047EA05
(57)【要約】
不織布であって,複数のフィラメント階層:
‐不織布の外表面を形成し,成分から成る連続多成分フィラメントを含む第1階層(A)であって,前記成分は,
‐ フィラメント表面の少なくとも20%を形成し,
‐ 第1階層(A)内で接着し,
‐ 第1階層(A)のフィラメントの他の成分の融点より少なくとも5℃低い融点を有する成分である,第1階層(A);
‐成分から成る連続多成分フィラメントを含む第2階層(B)であって,前記成分は,
‐ フィラメント表面の少なくとも20%を形成し,
‐ 第2階層(B)内で接着し,
‐ 第2階層(B)のフィラメントの他の成分の融点より少なくとも5℃低い融点を有する成分である,第2階層(B);
を含み,
‐ 布地の嵩密度は60kg/m3未満である
ことを特徴とする不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布であって,複数のフィラメント階層:
‐前記不織布の第1外表面を形成し,第1の成分から成る連続多成分フィラメントを含む第1階層(A)であって,前記第1の成分は,
‐ 前記フィラメントの長手方向に沿って延在し,
‐ 前記フィラメントの表面の面積の少なくとも20%を形成し,
‐ 前記第1階層(A)内でフィラメント間接着を形成し,
‐ 前記第1階層(A)の前記フィラメントの前記の成分の融点より少なくとも5℃低い融点を有する成分である,第1階層(A);
‐第1の成分から成る連続多成分フィラメントを含む第2階層(B)であって,前記第1の成分は,
‐ 前記フィラメントの長手方向に沿って延在し,
‐ 前記フィラメントの表面の面積の少なくとも20%を形成し,
‐ 前記第2階層(B)内でフィラメント間接着を形成し,
‐ 前記第2階層(B)の前記フィラメントの他の成分の融点より少なくとも5℃低い融点を有する成分である,
第2階層(B);を含み,
‐ 繊維の嵩密度は60kg/m3未満である
ことを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記不織布は第3階層(C)を含み,前記第3階層(C)は,第1外表面を形成する前記第1階層(A)と不織布の前記第2外表面を形成する前記第3階層(C)との間に前記第2階層(B)が配置されるように不織布の前記第2外表面を形成し,第1の成分から成る連続多成分フィラメントを含み,前記第1の成分は,
‐ 前記フィラメントの長手方向に沿って延在し,
‐ 前記フィラメントの表面の少なくとも20%を形成し,
‐ 前記第3階層(C)内でフィラメント間接着を形成し,
‐ 前記第3階層(C)の前記フィラメントの他の成分の融点より少なくとも5℃低い融点を有する
ことを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記第2階層(B)のフィラメント密度に対する前記第1階層(A)のフィラメント密度の比は少なくとも1.5;より好ましくは少なくとも2.0;より好ましくは少なくとも2.5;より好ましくは少なくとも3,更に好ましくは少なくとも5であることを特徴とする請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
前記第2階層(B)のフィラメント密度に対する第3階層(C)の前記フィラメント密度の比は少なくとも1.5;より好ましくは少なくとも2.0;より好ましくは少なくとも2.5;より好ましくは少なくとも3,更に好ましくは少なくとも5であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の不織布。
【請求項5】
前記第2階層(B)のフィラメント間結合密度に対する前記第1階層(A)のフィラメント間結合密度の比は少なくとも2;より好ましくは少なくとも3.0;より好ましくは少なくとも4;より好ましくは少なくとも5,更に好ましくは少なくとも7であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の不織布。
【請求項6】
前記第2階層(B)のフィラメント間結合密度に対する前記第3階層(C)のフィラメント間結合密度の比は少なくとも2;より好ましくは少なくとも3.0;より好ましくは少なくとも4;より好ましくは少なくとも5,更に好ましくは少なくとも7であることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の不織布。
【請求項7】
前記第2階層(B)は空洞を含み,前記空洞は,機械方向及び幅方向に画定される平面に沿って延在する長さ,並びに前記平面に垂直に延在する高さを有し,前記空洞の少なくとも一部における長さと高さとの比は少なくとも3:1,好ましくは5:1,最も好ましくは10:1であることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の不織布。
【請求項8】
前記空洞の高さが,前記不織布の厚さの少なくとも15%,より好ましくは不織布の厚さの少なくとも20%を形成することを特徴とする請求項7記載の不織布。
【請求項9】
前記第2階層(B)は空洞を含み,前記空洞は機械方向及び幅方向に画定される前記平面に沿って延在する長さを有し,前記不織布は前記平面に垂直に延在する厚さを有し,― 前記空洞の少なくとも一部では ― 前記空洞の長さと前記不織布の厚さとの比は少なくとも3:1,好ましくは少なくとも5:1,最も好ましくは少なくとも10:1であることを特徴とする請求項1~8いずれか1項記載の不織布。
【請求項10】
前記繊維は,捲縮性断面を有するフィラメントを含むことを特徴とする請求項1~9いずれか1項記載の不織布。
【請求項11】
収縮性ポリマーから成る非捲縮性断面を有するフィラメントを含むことを特徴とする請求項1~9いずれか1項記載の不織布。
【請求項12】
前記第1階層(A)の前記第1の成分及び/又は前記第2階層(B)の前記第1の成分は,ポリオレフィン,脂肪族ポリエステル,芳香族ポリエステル,又はこれらのコポリマーから成る群より選択される接着ポリマーを含むことを特徴とする請求項1~11いずれか1項記載の不織布。
【請求項13】
前記第1階層(A)の前記第1の成分及び/又は前記第2階層(B)の前記第1の成分は,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリ乳酸(PLA),ポリエチレンテレフタレート(PET),又はこれらのコポリマー(coPLA,coPET,coPP,coPE)から成る群より選択される接着ポリマーを含むことを特徴とする請求項1~12いずれか1項記載の不織布。
【請求項14】
前記第1階層(A)の他の成分及び/又は前記第2階層(B)の他の成分は,ポリオレフィン,脂肪族ポリエステル,芳香族ポリエステル,又はこれらのコポリマーから成る群より選択されるポリマーを含むことを特徴とする請求項1~13いずれか1項記載の不織布。
【請求項15】
前記第1階層(A)の他の成分及び/又は前記第2階層(B)の他の成分は,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリ乳酸(PLA),ポリエチレンテレフタレート(PET),又はこれらのコポリマー(coPLA,coPET)から成る群より選択されるポリマーを含むことを特徴とする請求項1~14いずれか1項記載の不織布。
【請求項16】
前記第1階層(A)及び/又は前記第2階層(B)の前記フィラメントの少なくとも65重量%は1種以上のポリオレフィンポリマーから成ることを特徴とする請求項1~15いずれか1項記載の不織布。
【請求項17】
前記フィラメント成分の少なくとも1つは少なくとも65重量%のポリエステルポリマーを含むことを特徴とする請求項1~15いずれか1項記載の不織布。
【請求項18】
不織布であって,以下:
a.前記連続フィラメントは二成分であること;
b.前記第1の成分はポリオレフィン,好ましくはポリエチレンを含むこと;及び
c.前記他の成分はポリオレフィン,好ましくはポリプロピレンを含む
ことを特徴とする請求項1~17いずれか1項記載の不織布。
【請求項19】
不織布であって,以下:
a.前記連続フィラメントは二成分であること;
b.前記第1の成分はポリオレフィン,好ましくはポリエチレンを含むこと;及び
c.前記他の成分はポリエステル,好ましくはポリ乳酸(PLA),ポリエチレンテレフタレート(PET),又はこれらのコポリマー(coPLA,coPET)を含むこと
を特徴とする請求項1~15いずれか1項記載の不織布。
【請求項20】
不織布であって,以下:
a.前記連続フィラメントは二成分であること;
b.前記第1の成分はポリエステル,好ましくはポリ乳酸(PLA),ポリエチレンテレフタレート(PET),又はこれらのコポリマー(coPLA,coPET)を含むこと;及び
c.前記他の成分はポリエステル,好ましくはポリ乳酸(PLA),ポリエチレンテレフタレート(PET),又はこれらのコポリマー(coPLA,coPET)を含むこと
を特徴とする請求項1~15いずれか1項記載の不織布。
【請求項21】
前記布地層剥離強度は0.5N以上,好ましくは0.6N超,より好ましくは0.7N超,最も好ましくは0.8N超であることを特徴とする請求項1~20いずれか1項記載の不織布。
【請求項22】
布地層剥離強度は10.0N以下,好ましくは8.0N以下,より好ましくは6.0N以下,有利には4.0N以下であることを特徴とする請求項1~21いずれか1項記載の不織布。
【請求項23】
前記不織布はフィラメントの少なくとも第1層(i)及び第2層(ii)を含むことを特徴とする請求項1~22いずれか1項記載の不織布。
【請求項24】
前記不織布における少なくとも1つの層は少なくとも2つの階層を含むことを特徴とする請求項23記載の不織布。
【請求項25】
前記第1層(i)は少なくとも前記第1階層(A)を含むことを特徴とする請求項23又は24記載の不織布。
【請求項26】
1つの層における全階層中のフィラメントはフィラメント断面に渡って同じように配置された同じ成分を含むことを特徴とする請求項23~25いずれか1項記載の不織布。
【請求項27】
前記第1層中の前記フィラメントは,以下:成分のうち少なくとも1つ,前記断面にわたる成分の配置,繊維径中央値のうち少なくとも1つにおいて前記第2層のフィラメントとは異なることを特徴とする請求項23~26いずれか1項記載の不織布。
【請求項28】
前記第1層(i)は同心芯/鞘構造又は偏心芯/鞘構造を有する二成分フィラメントを含むことを特徴とする請求項23~27いずれか1項記載の不織布。
【請求項29】
前記第2層(ii)は並列構造又は偏心芯/鞘構造を有する二成分フィラメントを含むことを特徴とする請求項23~28いずれか1項記載の不織布。
【請求項30】
前記第1層(i)の前記二成分フィラメントの芯はポリプロピレン又はポリプロピレンブレンドを含み,及び/又は前記第2層(ii)の前記二成分フィラメントの芯成分又は一方の並列部成分はポリプロピレン又はポリプロピレンブレンドを含むことを特徴とする請求項28又は29記載の不織布。
【請求項31】
前記第1層(i)の前記二成分フィラメントの鞘はポリエチレン又はポリエチレンブレンドを含み,前記第2層(ii)の前記二成分フィラメントの鞘成分又は一方の並列部成分はポリエチレン又はポリエチレンブレンドを含むことを特徴とする請求項30記載の不織布。
【請求項32】
前記第1層(i)の前記二成分フィラメントの前記鞘における前記ポリエチレン又は前記ポリエチレンブレンドのメルトフローレートは,前記第2層(ii)の前記二成分フィラメントの前記ポリエチレン又は前記ポリエチレンブレンドのメルトフローレートより高いことを特徴とする請求項31記載の不織布。
【請求項33】
前記第1層(i)の前記二成分フィラメントの前記鞘は前記フィラメントの30~45重量%を形成し,前記第2層(ii)の前記二成分フィラメントの前記ポリエチレン又は前記ポリエチレンブレンドは前記フィラメントの30~55重量%を形成することを特徴とする請求項31記載の不織布。
【請求項34】
不織布であって,以下:
‐ 前記第1層(i)の前記フィラメントの繊維径中央値は10~17ミクロン,より好ましくは13~14ミクロンの範囲内であること,及び/又は
‐ 前記第2層(ii)の前記フィラメントの繊維径中央値は15~22ミクロン,より好ましくは18~19ミクロンの範囲内であること,及び/又は
‐ 前記第1層(i)の前記フィラメントの繊維径中央値は前記第2層(ii)のフィラメントより小さいこと
を特徴とする請求項23~33いずれか1項記載の不織布。
【請求項35】
請求項1~34いずれか1項記載の不織布を含む吸収性衛生用品。
【請求項36】
不織布製造方法であって,以下の工程:
a)以下を溶融させる工程
a.第1の成分を形成する少なくとも第1ポリマー材料,
b.少なくとも1つの他の成分を形成し,その融点は前記第1ポリマー材料(A)より低い第2ポリマー材料;
b)溶融ポリマー材料を紡糸ビームのノズルに供給し,ノズルを介して前記溶融ポリマー材料を押し出す工程であって,以下を含む工程
a.前記ノズルから出た前記溶融ポリマー材料からエンドレスなフィラメントを形成すること,
b.前記第1ポリマー材料を前記フィラメントの長手方向に延伸させ,前記フィラメントの表面の少なくとも一部を形成すること;
c)形成した前記フィラメントを,温度10~90℃の流体媒体により冷却し,200~1300のドローダウン比で前記フィラメントを延伸し,少なくとも前記第2ポリマー材料の半安定結晶状態を達成する工程;
d)前記フィラメントを形成ベルト上にランダムに敷設し,不織布フィラメントバットを形成する工程;
e)前記不織布フィラメントバットを熱流により1~10000ms間予備圧密する工程;
f)前記第1ポリマー材料の融点より5~20℃低い温度,好ましくは前記第1ポリマー材料の融点より5~15℃低い温度,より好ましくは前記第1ポリマー材料の融点より5~10℃低い温度の熱流により前記フィラメントバットを予熱する工程;並びに
g)前記第1ポリマー材料の融点より最大で5℃低く,前記第1ポリマー材料の融点より最大で3℃高い温度の熱流により前記フィラメントバットを圧密し,このように圧密した前記フィラメントバットを10~40℃,好ましくは20~30℃の温度の空気流により冷却する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
予備圧密工程e)と予備加熱工程f)との間で,中間冷却を行うことを特徴とする請求項36記載の不織布製造方法。
【請求項38】
予備圧密した前記バットを空気に晒すことにより前記中間冷却を行うことを特徴とする請求項37記載の不織布製造方法。
【請求項39】
70℃以下,好ましくは60℃以下,最も好ましくは55℃以下の温度の空気により前記中間冷却を行うことを特徴とする請求項37又は38記載の不織布製造方法。
【請求項40】
予備圧密した前記バットを周囲空気に晒すことにより前記中間冷却を行うことを特徴とする請求項37~39いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項41】
前記工程g)における前記バットの圧密中に,前記熱流が前記バットの一方の面から,次に前記バットの他方の面から入るように方向を交互に変えて前記熱流を付与することを特徴とする請求項36~40いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項42】
前記工程e)及び/又は前記工程f)及び/又は前記工程g)における前記熱流は熱風により提供することを特徴とする請求項36~41いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項43】
前記工程f)における予備加熱中に,前記バットに追加の張力を付与しないことを特徴とする請求項36~42いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項44】
前記工程f)における予備加熱中に,前記フィラメントバットは10~40℃,好ましくは20~30℃の温度に達することを特徴とする請求項36~43いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項45】
前記工程f)及び/又は工程h)の少なくとも一部は,前記バットをエアスルー圧密装置のドラムに沿わせることにより行うことを特徴とする請求項36~44いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項46】
前記工程f)及び/又は工程h)の少なくとも一部は,前記バットをフラットオーブン圧密装置に通すことにより行うことを特徴とする請求項36~45いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項47】
前記予備圧密工程e)中に予備圧密風速を0.1~10m/sの範囲内,好ましくは0.8~4m/sの範囲内に設定することを特徴とする請求項36~46いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項48】
前記予備圧密工程e)中に予備圧密空気温度を80℃~200℃の範囲内,好ましくは100℃~180℃の範囲内にすることを特徴とする請求項36~47いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項49】
前記予備圧密工程e)中に予備圧密空気温度を90℃~150℃の範囲内,好ましくは110℃~140℃の範囲内にすることを特徴とする請求項36~48いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項50】
前記工程e)での予備圧密中,2~1000ms,最も好ましくは4~200msの時間内に,空気を用いて前記フィラメントバットを前記熱流に晒すことを特徴とする請求項36~49いずれか1項記載の不織布製造方法。
【請求項51】
前記工程g),工程h),及び工程i)を異なるセクションで,好ましくは1つのユニット内に組み合わせて行うことを特徴とする請求項36~50いずれか1項記載の不織布製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィラメント階層を含む不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野で使用する不織布は,目的の使用分野に応じて様々な要件を満たさなければならない。例えば,使い捨ての衛生用品,使い捨ての清掃用品,医療用途等の分野においては,柔らかさ,毛足の長い点 (high loft),及び良好な復元性が重要な特性である。
【0003】
多数のこのような用途には,カード処理材料が従来から,また現在も使用されている。しかし,カード処理繊維から不織製品を製造することは複雑であり,このような不織布中の繊維同士の接着は,毛足の長さや柔らかさが著しく低いか,又は繊維同士の接着が不十分であり,不織布の品質が劣り,即ち耐摩耗性が不十分となる。
【0004】
エアスルー接着スパンレイ技術は,業界が求める要件を満たす実行可能な解決策であり,この技術は,第一に繊維の長さが長いためカード処理材料のいくつかの欠点を克服している。業界では様々なアプローチが公知である。
【0005】
例えば,所望の嵩高及び柔らかさは,いわゆる捲縮性断面(例えば偏心芯/鞘)を有する捲縮フィラメントの利用を記載している特許出願WO2018059610に開示されているように,又は,例えば,非捲縮性断面(例えば同心芯‐鞘)のフィラメントの利用を記載しているピーエフノンウーヴンズの特許出願WO2020103964に開示されているように達成することが可能である。
【0006】
マーチンデール摩耗試験により表した耐摩耗性が良好な不織布は,例えばWO2020112705に記載されている。
【0007】
WO2020107421は,ソフトロフト型布地を製造することを目的とした不織布のエアスルー接着法を開示している。連続繊維の布帛を多孔質回転部材と多孔質ベルトの間に案内し,加熱した空気を最初に一方の面から,次に他方の面から布帛中に流す。しかし,この方法の説明は非常に曖昧で,得られた製品に関するデータも提供していない。
【0008】
両方の要件,即ち柔らかい嵩高性(圧縮性,ドレープ性,屈曲性,非剛性,心地よい肌触り等)及び3次元安定性(耐摩耗性,毛羽立ち耐性等)を両立させた不織布が業界の理想的な布地とされている。柔らかさや3次元安定性は,容易に測定・定量・及び比較できるような単純な値ではなく,代わりに,様々な布地特性を網羅する,実際,1つの用語で様々な布地も網羅する複雑な特徴であることは明らかである。柔らかさ,嵩高さ(低い坪数坪量での大きい厚さ),及び数種の耐性を有する布地を主張する多くの特許や出願が見られる。これらの特許又は出願の多くが,「柔らかさ」又は「耐性」という用語を非常に異なるものとして理解していることは当業者であれば容易に認識できる。例えば,上述の出願WO2020103964は,柔らかさを「ソフトロフト」と理解し,特別な係数に基づいて布地の柔らかさを定義している。逆に,前述のWO2020112705も,柔らかさを圧縮反発力試験に基づいて定義している。両者の布地を柔らかいと定義しても,その挙動やエンドユーザーの感触は大幅に異なっている可能性があり,互いに比較することは容易でない。
【0009】
本発明の目的は,柔らかく嵩高でありながら,使用時に毛羽立ちにくい不織布を提供することである。
【0010】
本発明の目的は,不織布によって達成され,前記不織布は請求項1において定義される複数のフィラメント階層を含み:
‐前記不織布の第1外表面を形成し,成分から成る連続多成分フィラメントを含む第1階層(A)であって,前記成分は,
‐ 前記フィラメントの長手方向に沿って延在し,
‐ 前記フィラメントの表面の少なくとも20%を形成し,
‐ 前記第1階層(A)内でフィラメント間接着を形成し,
‐ 前記第1階層(A)の前記フィラメントの前記他の成分の融点より少なくとも5℃低い融点を有する成分である,第1階層(A);
‐成分から成る連続多成分フィラメントを含む第2階層(B)であって,前記成分は,
‐ 前記フィラメントの長手方向に沿って延在し,
‐ 前記フィラメントの表面の少なくとも20%を形成し,
‐ 前記第2階層(B)内でフィラメント間接着を形成し,
‐ 前記第2階層(B)の前記フィラメントの他の成分の融点より少なくとも5℃低い融点を有する成分である,第2階層(B);
を含み,
‐ 繊維の嵩密度は60kg/m3未満である
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の更なる実施形態は従属項において定義している。
【0012】
定義
用語「フィラメント」とは,本明細書では基本的にエンドレスフィラメントとして定義しており,一方,用語「ステープル繊維」とは,定義した長さに切断した繊維を指す。用語「繊維」と「フィラメント」とは,本明細書では同じ意味を付与するために使用する。切断した繊維の場合,用語「ステープル繊維」のみを使用する。
【0013】
用語「フィラメント間結合」とは,個々のフィラメント間,又はフィラメントの個々の部分間で可能な全ての相互作用,即ち接着,部分接着,又は非接着接触,交差,相互接続,平行接触等を指す。フィラメント間結合はフィラメント間の接着を形成し得るが,2つの独立したフィラメントを,フィラメントの相互運動に対する制限なしに互いに接触させる可能性もある。
【0014】
用語「フィラメント間接着」又は「接着点」とは通常,これらのフィラメントが互いに交差する場所,接触する場所,あるいは互いに隣接する場所で2つのフィラメントを接続する接着を指す。接続点/圧密接着により,2本を超えるフィラメントを接続するか,同じフィラメントの2箇所を接続することが可能である。従って,本明細書でいう用語「接着点」とは,低融点の成分の相互接続による接触点での2本以上の繊維/フィラメントの接続を指す。接着点では,フィラメントにおける形成された高融点の成分は一般に,フィラメントにおける形成された低融点の成分より衝撃が少なく,即ち,鞘はわずかに融解するが,芯は基本的に変化しない。逆に,用語「接着圧痕」とは,カレンダローラの隆起が働いた表面を指す。接着圧痕は,接着ローラ上の隆起の大きさで定義する領域を持ち,通常,隣接する領域と比較して厚さは小さい。接着プロセス中,接着圧痕の領域は通常,高い機械的圧力を受け,この圧力は温度と共に接着圧痕の領域内のフィラメント成分全ての形状に影響を与える場合もある。
【0015】
用語「一成分フィラメント」又は「一成分繊維」とは,単一ポリマー又は単一ポリマーブレンドから形成したフィラメントを指し,従って,二成分フィラメント又は多成分フィラメントと区別される。
【0016】
用語「多成分繊維」又は「多成分フィラメント」とは,断面に2つ以上の個々の部分的成分を組み込んだ繊維又はフィラメントを指し,断面におけるこれらの個々の成分は各々,異なるポリマー化合物又は,ポリマー化合物の異なるブレンドから成る。従って,用語「多成分繊維/多成分フィラメント」は,限定するものではないが「二成分繊維/二成分フィラメント」を含む上位の用語である。多成分フィラメントの様々な成分は基本的に,フィラメントの断面に沿って配された明確に画定した領域に配置し,フィラメントの長さに沿って連続的に延在する。多成分フィラメントの断面は,任意の形状又は配列の様々な成分から成るいくつかの部分的断面に分けてもよく,例えば断面の部分的成分の同軸配置,芯/鞘,放射状,又はいわゆる海島状(lands-in-the-sea)等の形態の断面の部分的成分の任意の相互配置が挙げられる。
【0017】
フィラメントを説明するために使用する用語「2種成分」及び「二成分」は,本明細書では互換的に使用する。
【0018】
多成分フィラメントの設計は,これらのフィラメントの捲縮性に決定的な影響を与える。多成分フィラメントの設計を認識するために良い方法は,フィラメントの異なる成分の位置を可視化する断面を確認し,評価することである。多くの場合,異なる成分は,例えば,紡糸,焼き入れ,延伸,及び最後の繊維圧密後に異なる溶点及び/又は異なる収縮特性により選択して特徴付けた異なるポリマー調合物から形成する。通常,フィラメント成分の断面における回転対称位置(例えば同心芯/鞘)は非捲縮フィラメントをもたらし,一方,フィラメント成分の非対称位置(例えば並列,又は偏心芯/鞘)は自己捲縮及び/又は熱活性化捲縮フィラメントのいずれかを達成するための示差的潜在捲縮力となる。本出願の語句を簡略化するために,用語「捲縮に対応している断面を持つフィラメント」及び「捲縮に対応していない断面を持つフィラメント」の代わりに,用語「捲縮性断面」及び「非捲縮性断面」を使用する。本明細書において用語「捲縮性断面」とは,収縮特性の異なる成分らが断面に配置された多成分繊維を指し,それにより,これらのフィラメントはフィラメントの延伸及び圧密中に自己捲縮するか,又は活性化温度以上に加熱した後に徐冷すると繊維が捲縮し,繊維は収縮力のベクトルに従うようになる。従って,繊維を解いたとき,いわゆる螺旋捲縮が形成されるが,繊維が繊維層内にあるときは,繊維同士の相互付着により理想的な螺旋は形成できない。多成分繊維の場合,繊維断面における個々の成分それぞれの質量中心を決定できる(断面における各成分の面積/位置を考慮)。理論に縛られることなく,回転対称の同心芯/鞘として説明したように,各成分の全領域の重心がほぼ同じ点にある場合,その繊維は「非捲縮性」であると考えられる。例えば,対称又は中心芯鞘断面構造を有する丸型二成分繊維の場合,質量中心は断面の中心にある(図1参照)。
【0019】
測定値「フィラメント径」は,μmの単位で表す。用語「9000m当たりのフィラメントのグラム数」(デニール又はdenともいう)又は「10000m当たりのフィラメントのグラム数」(dTexともいう)は,フィラメント径(円形フィラメントの断面を想定)に使用の材料(単数又は複数)の密度を掛けた数値と相関するので,フィラメントの繊度又は粗度の度合いを表すために使用する。
【0020】
「機械方向」(MD) ― 不織繊維材料及び実際の不織繊維材料自体の製造に関し,用語「機械方向」(MD)は,基本的にこの材料を製造する製造ライン上の不織繊維材料の前進移動方向に対応する方向を表わす。
【0021】
「直交方向」(CD) ― 不織繊維材料及び実際の不織繊維材料自体の製造に関し,用語「直交方向」(CD)は,基本的に不織繊維材料の平面上に位置しながら,この材料が製造される製造ライン上の不織繊維材料の前進移動方向に対して横方向である方向を表す。
【0022】
「z方向」は ― 不織布繊維材料の製造に関連して,平面的機械方向×幅方向(MD×CD)に対して垂直方向である。z方向の伸長方向は不織布材料の厚さを表す。
【0023】
「不織布材料」又は「不織布」とは,方向性をもって,又は無作為に配向したフィラメントから製造したベルト状又は繊維状の形成物であって,このフィラメントは初めフィラメント層の形成中に形成し,次に摩擦,又は結束力もしくは接着力の誘発によりまとめて一体化し,最後に相互接着の形成により一体化する。この一体化は,熱的に(例えば,通風効果,カレンダ,超音波効果等により),化学的に(例えば,接着剤の使用等),機械的に(例えば,水流交絡等),あるいは,これらの方法の組み合わせにより達成される。この用語は,織物又は編み物により形成した生地,又は接着縫合を形成するために撚糸又は繊維を使用した布地を指すものではない。繊維は天然由来でも合成由来でもよく,ステープル撚糸,連続繊維,又は加工場所で直接製造した繊維であってもよい。市販の繊維の直径は約0.001mm未満から約0.2mmを超える範囲であり,様々な形態:短繊維(ステープル繊維又はカット繊維として公知),連続した個々の繊維(フィラメント又はモノフィラメント繊維),フィラメントの無撚り束(コームファイバー),及びフィラメントの撚り束(撚糸)で提供する。不織布は,ステープル繊維を用いたメルトブロー,スパンボンド,スパンメルト,溶剤を使用した紡糸,静電紡糸,カーディング,フィルム細繊維化(film fibrillation),細繊維化(fibrillation),エアレイ処理,ドライレイ処理,ウェットレイ処理及び,当技術分野で公知のこれらのプロセスの様々な組み合わせなどの技術を含む多くの方法を利用して製造できる。不織布の坪量は通常,1平方メートル当たりのグラム数(g/m2)で表す。
【0024】
「スパンボンド」又は「スパンレイド」プロセスとは,ポリマーを直接フィラメントに変換し,直後にこのように形成したフィラメントを堆積させることにより,無作為に配列したフィラメントを有する不織フィラメントの層を形成する不織布製造プロセスである。このフィラメントの不織層はその後,フィラメント間の接着部を形成することにより,不織布を包むように一体化する。一体化プロセスは,例えば,通風効果,カレンダ効果等,様々な方法を用いて実施できる。
【0025】
用語「バット」とは,様々な方法,例えば,エアスルー接着,カレンダ処理等で実施することが可能なプロセスである接着を行う前の状態で見られるフィラメント形態の材料を指す。「バット」は,たとえフィラメントが特定の方法で予備結合/予備圧密されていても,相互結合は通常まだ固定されていない個々のフィラメントから成る。ここでは,この予備圧密はスパンレイプロセスでのフィラメント積層中又は積層直後に起こる場合がある。しかし,この予備圧密では,多くのフィラメントがまだ自由に動くことが可能であり,フィラメントを再配置できる。上述の「バット」は,スパンレイプロセスにおいて数本の紡糸ビームからフィラメントが集積することにより形成された数枚の層から構成してもよい。
【0026】
本明細書で使用される意味において,用語「層」とは,生地の部分的な成分又は要素を指す。「層」は,単一の紡糸ビーム上で又は,基本的に同じフィラメントを形成する連続配置した2本以上の紡糸ビーム上で製造した複数のフィラメントの形態であってもよい。例えば,スパンボンド法を実施するために意図した2本の連続配置紡糸ビームは,基本的に同じように設定し,基本的に同じ組成のポリマーを処理することで,組み合わせて単一の層を製造することが可能である。逆に,2本のスパンボンド型紡糸ビームのうち,一方が例えば単一成分フィラメントを製造し,他方が例えば二成分フィラメントを製造する場合,2つの異なる層が形成される。層の組成は,層の形成に使用する樹脂(ポリマー)組成を決定する個々の設定及び成分の知見に基づいて,又は不織布自体の分析,例えば電子顕微鏡を使用した分析により,あるいはDSC又はNMR法による層に含まれるフィラメントの製造に使用する組成物の分析により,把握できる。フィラメントの互いに隣接する層は必ずしも厳密に区分する必要はなく,先に堆積した層のフィラメント間の隙間に後から堆積した層のフィラメントが落ち込む結果として,境界領域の層が混ざり合う場合もある。不織布中で,層は階層構造から独立した典型的な構造(例えば,スパンボンド+メルトブロー+スパンボンド(SMS))を形成してもよい。1つの層は,1つ,2つ,又はそれ以上の階層を含むことが可能である。
【0027】
本明細書で使用する用語「階層(stratum)」(複数形(strata))は,不織布のMD及びCD方向の平面にほぼ沿って延在し,布地のz方向に特定の厚さを有し,フィラメントの密度(即ち体積当たりのフィラメントの質量)がほぼ均一なフィラメント領域を指す。不織布内の階層のフィラメント密度は正確には測定できないが,不織布の断面で視認して評価してもよい。階層はまた,フィラメント間接着の密度がほぼ均一であること,及び/又は強いフィラメント間接着と弱いフィラメント間接着の含量がほぼ均一であること(ただし,外側階層の外表面から中間領域に向かって密度の値がわずかに勾配している場合もある)を特徴とすることもある。このように不織布内のフィラメント階層は決して完全には均一ではないこと;不織布のフィラメントはランダムに配置及び配向されているため,ある階層から別の層にフィラメントが入り込み,更に,ある階層の特定の領域は,その階層の大部分が存在する平面から局所的に膨張又は伸長し,その階層のフィラメントの一部は隣接する階層内に入り,又は不織布の表面から外に出る場合もあることは理解されているものとする。階層構造は,不織布自体の分析,例えば,電子顕微鏡(特に断面図から)の使用,例えば,断層撮影又はマイクロCT測定により観察できる。
【0028】
本明細書における用語「圧縮性」とは,「弾性」の測定中に定義された負荷の影響により不織布が圧縮されるミリメートル単位の距離を指す。
【0029】
本明細書における用語「復元」とは,圧縮後にその初期形状を復元する生地の能力を指す。これは主に,作用負荷の解放後の生地の厚さとこの生地の初期の厚さとの比に基づく嵩高性の再生(復元)能力に関連する。
【0030】
本明細書における用語「ドローダウン比」又は「ドロー比」とは,毛細管断面積をフィラメント断面積で除して計算した数値を指す。フィラメント断面積を計算するために,見かけの直径に基づいて測定した繊維の繊度を用いる。他の真円でない断面はこの方法では計算できないことから,その場合は実際の断面を示すSEM画像の分析が必要となる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態を更に,添付の概略図,写真,及び3次元モデルを参照し,より詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】捲縮性断面の例である。
図2】本発明の1実施形態の断面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真である。
図3】本発明の1実施形態の断面を示す概略図である。
図4】本発明の別の実施形態の断面を示す概略図である。
図5A】非接着タイプのフィラメント間結合部を示す概略平面図である。
図5B図5Aのフィラメント間結合部を示す概略断面図である。
図6A】弱接着タイプのフィラメント間結合部を示す概略平面図である。
図6B図6Aのフィラメント間結合部を示す概略断面図である。
図7A】完全接着タイプのフィラメント間結合部を示す概略平面図である。
図7B図7Aのフィラメント間結合部を示す概略断面図である。
図8A】木幹タイプのフィラメント間結合部を示す概略平面図である。
図8B図8Aのフィラメント間結合部を示す概略断面図である。
図9】樹脂に固定した場合の,本発明の1実施形態の断面を示す写真である。
図10】本発明の1実施形態の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図11】フィラメント間相互結合密度レベルが非常に低く,空隙体積が比較的大きい布地の断面を示す概略図である。
図12】フィラメント間相互結合密度が均一に低い布地の断面を示す概略図である。
図13】フィラメント間相互結合密度レベルが均一に高く,空隙体積が比較的小さい布地の断面を示す概略図である。
図14】フィラメント間相互結合密度レベルが非常に高く,空隙体積が小さい布地の断面を示す概略図である。
図15】層間剥離後の本発明に従った不織布を示すSEM顕微鏡写真であり,接着が破断した痕跡が確認できる。
図16】層間剥離後の本発明に従った不織布を示すSEM顕微鏡写真であり,接着が破断した痕跡が確認できる。
図17】層間剥離後の本発明に従った不織布を示すSEM顕微鏡写真であり,接着が破断した痕跡が確認できる。
図18】層間剥離後の本発明に従った不織布を示すSEM顕微鏡写真であり,接着が破断した痕跡が確認できる。
図20A】非捲縮フィラメントを含む本発明の1実施形態の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図20B】非捲縮フィラメントを含む本発明の1実施形態の断面を示すSEM顕微鏡写真である,
図21】本発明の更に別の実施形態の断面を示す概略図である。
図22】本発明の1実施形態の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図23】本発明の不織布を製造するプロセスラインを示す概略図である。
図24】実施例1の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図25】実施例2の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図26】樹脂中に固定した実施例2の断面を示す写真である。
図27】実施例1のX線断層撮影を示す3次元モデルである。
図28図27の3次元モデルのデジタル切断面である。
図29】実施例3の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図30】実施例4の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図31】実施例5の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図32】実施例6の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図33】実施例7の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図34】実施例8の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図35】実施例9の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図36】なし
図37】実施例11の断面を示すSEM顕微鏡写真である。
図38】マーチンデール平均耐摩耗性等級試験用の装置を示す斜視図である。
図39】マーチンデール平均耐摩耗性等級試験における毛羽立ち評価用の等級指標である。
図40】層間剥離試験を示す概略図である。
図41】層間剥離試験を示す概略図である。
図42A】SEM顕微鏡観察用試料のためのホルダーを示す写真である。
図42B】SEM顕微鏡観察用試料のためのホルダーを示す写真である。
図43A】3次元断層撮影を行うためのホルダーを示す写真である。
図43B】3次元断層撮影を行うためのホルダーを示す写真である。
図43C】3次元断層撮影を行うためのホルダーを示す写真である。
図44】本発明に従った試料のマイクロCT分析の3次元モデルである。
図45】本発明に従った試料のマイクロCT分析の3次元モデルである。
図46】本発明に従った試料のマイクロCT分析の3次元モデルである。
【0033】
詳細な説明
スパンボンド及び/又はスパンメルト不織布は業界で周知である。紡糸ビームを使用して製造したエンドレスなフィラメントを製造ベルトに敷設してバットを形成し,次いで予備圧密し,接着して布地を形成する。接着工程は,いくつかの公知の選択肢,例えば:
‐ 例えば針や水流により実施する機械的もつれ;
‐ 接着剤,又は接着を目的として添加した他の添加剤を使用して実施する化学的接着;
‐ バットを熱に晒し,ポリマー組成物の少なくとも一部の溶融及び圧密を経て接着点を形成することにより実施する熱接着
から選択してもよい。熱は,例えば,一対のカレンダロール,輻射熱,又はバットを通過する高温の流体により提供できる。
【0034】
列挙した各方法は特定の利点及び欠点を有し,それぞれの布地に典型的な外観及び特性を与え,その外観及び特性は所与の範囲内でプロセスを設定することにより制御できる。上記に列挙した例は説明することのみを目的としており,布地の所望の特性を達成するために他の接着方法又はその様々な組み合わせを使用できることは当業者であれば理解しているものとする。
【0035】
熱流体流により圧密した布地は業界で公知であり,特に,柔らかい熱接着布地を製造するために短繊維を利用したカード処理技術は公知である。熱流体接着の主な利点は,接着が布地全体に渡り,個々の繊維間交点それぞれが接着部を形成し得ることである。各接着部は小さく,互いに接触している2本以上の繊維の間に形成される。短繊維技術は,複数の繊維を均質な繊維ブレンドになるように混合し,融点の低いポリマー(接着ポリマー)を含む繊維の量を正確に制御する利点を利用している。例えば,非常にソフトロフトな布地を所望する場合,接着ポリマーを含む繊維は繊維プレミックス中に少量しか含まれていなくてもよく,その逆もまた同様である。
【0036】
逆に,スパンメルト不織布は通常,1種類のフィラメントから製造し,接着ポリマーの量は各繊維中の接着ポリマーの含有量(二成分フィラメント中のポリマー比)でしか制御できない。スパンメルト製造ラインには多数の紡糸ビームを備え,各ビームを様々な比率で組み合わせることにより,異なる接着ポリマーを有する層状布地を製造できる。異なる接着ポリマー比の複数の層は異なる特性をもたらし,布地は強く接着した層と適度に接着した層との相乗効果を利用できる。フィラメント組成物中の接着ポリマーの比率は本明細書では例示であり,より技術的な特徴を,例えば,2018年からのReifenhauser社の出願EP19189238.9(未公開)に記載されているように組み合わせることが可能である。この出願では,少なくとも2層から成る布地を記述しており,一方の層は高い耐磨耗性をもたらし,他方の層は柔らかさ及び嵩高さをもたらす。
【0037】
上述の解決策は,特性を望ましく組み合わせた布地を提供しているが,プロセスの観点からは,布地製造者にとって不利な点が1つ隠されている。最高の耐摩耗性及び柔らかさ(柔軟性又はドレープ性の意味で)は,第1層が第2層の上に薄い表皮を形成するときのみ得られる。このことは,第1層の坪量が低く,従って2ビーム製造ラインでは,その処理量を最適にするために第1ビームは利用できないことを意味する。
【0038】
本発明の解決策は,「柔らかく嵩高な」部分の「表皮」は高温流体流接着プロセスを設定することで形成でき,「表皮」の厚さは布地の所望の最終特性に応じて制御できるスパンメルト材料を提供する。
【0039】
本発明に従った布地は,その表面の少なくとも一部に融点の低い接着ポリマーを含有する多成分フィラメントを含むバットから製造できる。移動ベルト上のバットは熱処理に供する。熱は,高温流体,例えば熱風によりバットに伝達できる。一般に,熱は製造プロセスの異なる段階,例えば,フィラメントをベルト上に敷設して構造体を予備圧密させた直後,熱活性化プロセス中,接着プロセス中等に,バットに伝達できる。
【0040】
高温流体はフィラメントバットの表面を貫通し,フィラメントの周囲を流れ,高温流体が運ぶ熱の一部は,より低温のフィラメントに伝達される。一部の熱がバットの表面のフィラメントに伝達されると,高温流体の温度は,フィラメントと高温流体との温度差と同様に,いくらか低下する。表面のフィラメントがこの熱を獲得すると,フィラメントの温度は上昇し,一方,高温流体とフィラメントとの温度差は減少することは,当業者であれば認識している。時間及び熱が十分であれば,布地内の全てのフィラメントを均一な温度まで加熱することが可能であり,布地の厚さ全体に渡って繊維間の接着を均質にできる。従って,布地は均一に,完全に,あるいは十分に接着していると言える。
【0041】
驚くべきことに,接着点密度がその厚さ全体に渡って不均一な布地は非常に優れた利点を提供できることが分かった。本発明に従った布地は ― 断面から見たときに ― フィラメント間結合が強い領域(より多くのフィラメントが互いに接触するので,例えば,より多くのフィラメント間接着を形成でき,及び/又はより強い接着を形成できる)及びフィラメント間結合が弱い領域を含む;ここでは,結合とは,個々のフィラメント間の全ての可能な相互作用,即ち接着,部分接着,又は非接着での接触,交差,相互接続,平行接触等として定義する(以下,より詳細に定義する)。これらの領域のこのような区別は,1種類のフィラメントでは(繊維表面特性に基づく),フィラメント密度(所与の領域内のフィラメント数)と相関している。接着の程度がより高い領域は通常,フィラメントバットの外表面に形成され,ここで高温流体が布地に流入する。高フィラメント密度領域及び低フィラメント密度領域(階層)は一般に,十分に視認可能ではあるが,通常はそれら領域の間に厳密な境界はない。本発明に従った布地は,その厚さ方向に少なくとも2つの異なるフィラメント階層を含む。階層は一般的に,フィラメント間接着レベル及び/又はフィラメント密度が通常均一な平面的MD‐CD方向に配向した3次元領域であると定義される。このような階層の形成は様々な要因に影響を受け,階層はいくつかの方法により認識し得る。
【0042】
例えば,フィラメント間結合レベルが高い階層は,フィラメント密度又は繊維密度も高い。フィラメント同士は互いに,同じバットから形成されてはいるが繊維結合度は低い階層でのフィラメント同士より接近している。繊維密度レベルは例えば,図2に示すようにSEM顕微鏡断面を見て推定することが可能であり,あるいは,例えば断層撮影又はマイクロCT測定から分析及び計算することが可能である。この場合,2次元デジタル断面切断面を作成し,フィラメント密度の正確な判定に使用できる。
【0043】
例えば(図3参照),本発明に従った布地は,その厚さ方向に渡って,異なるフィラメント密度を有する少なくとも2種の異なるフィラメント階層(A,B)を含んでもよい。好ましくは,階層Bのフィラメント密度に対する階層Aのフィラメント密度の比は,少なくとも1.5;より好ましくは少なくとも2.0;より好ましくは少なくとも2.5;より好ましくは少なくとも3,更に好ましくは少なくとも5である。
【0044】
例えば,本発明に従った布地は少なくとも2種の異なるフィラメント階層を含んでもよい。この場合,フィラメント密度が高い第1階層(A)は不織布の1表面を形成し,フィラメント密度が低い第2層(B)は不織布の中間領域又は第2表面を形成する。
【0045】
例えば(図4参照),本発明に従った布地は,少なくとも3種の異なる階層を含んでもよい。この場合,布地の第1外表面を形成する第1階層(A),第2階層(B),及び布地の第2外表面を形成する第3階層(C)が存在する。ここでは,第2階層(B)は第1階層(A)と第3階層(C)との間に配置する。中間領域を形成する第2階層(B)のフィラメント密度は,第1階層(A)及び第3階層(C)のフィラメント密度より低い。外側の階層(A,C)は同じ特性を有していてもよいが,(内側の)第2階層(B)よりフィラメント密度が高ければ,同じである必要もないことに留意されたい。好ましくは,第2階層(B)のフィラメント密度に対する第1階層(A)のフィラメント密度の比は少なくとも1.5;より好ましくは少なくとも2.0;より好ましくは少なくとも2.5;より好ましくは少なくとも3,更に好ましくは少なくとも5である。また好ましくは,第2階層(B)のフィラメント密度に対する第3階層(C)のフィラメント密度の比は少なくとも1.5;より好ましくは少なくとも2.0;より好ましくは少なくとも2.5;より好ましくは少なくとも3,更に好ましくは少なくとも5である。
【0046】
例えば,フィラメント間結合密度は直接測定することが可能であり,例えば,光学顕微鏡又はSEM顕微鏡を用いて推定できる。いずれの方法も布地試料表面の分析にのみ使用できる。完璧な試料分析としては,「不織布の繊維形状統計数値を決定する方法」が業界で公知であり,ここでは3次元マイクロCT画像を布地のモデルに変換する。この方法では,機械学習プローチにより試料中の個々の繊維を識別し,次いでこれらの繊維の形状分析を行い,材料の特徴付けに適した統計数値を得る。その結果,繊維の配向及び密度分布が分かる。この分析のワークフローはMath2Market社が開発したものであり,GeoDict The Digital Material Laboratoryの一部である。
【0047】
例えば,本発明に従った布地は,その厚さ方向において,異なるフィラメント間結合密度を有する少なくとも2種の異なるフィラメント階層(A,B)を含んでもよい。好ましくは,第2階層(B)のフィラメント間結合密度に対する第1階層(A)のフィラメント間結合密度の比は,少なくとも2;より好ましくは少なくとも3;より好ましくは少なくとも4;より好ましくは少なくとも5;更に好ましくは少なくとも7である。
【0048】
例えば,本発明に従った布地は,少なくとも3種の異なる階層:不織布の第1外表面を形成する第1階層(A);第2階層(B),及び布地の第2外表面を形成する第3階層(C)を含んでもよく,第2階層(B)は第1階層(A)と第3階層(C)との間に配置する。第1階層(A)及び第3階層(C)のフィラメント間結合密度は,布地の中間領域を形成する階層(B)のフィラメント間結合密度より高い。外側の階層(A,C)の両方は同じ特性を有していてもよいが,フィラメント間結合密度が最も低い(内側の)第2階層(B)よりフィラメント間結合密度が高ければ,同じである必要もないことに留意されたい。好ましくは,階層(B)のフィラメント間結合密度に対する階層(A)(又は第3階層(C))のフィラメント間結合密度の比は,少なくとも2;より好ましくは少なくとも3.0;より好ましくは少なくとも4;より好ましくは少なくとも5;更に好ましくは少なくとも7である。
【0049】
フィラメント間結合
フィラメント間結合密度は布地中の接着密度と,言い換えれば,接着点間のフィラメントの一部の長さと相関する。ここでは,全てのフィラメント間結合が接着を形成するわけではなく,もしそうであれば,フィラメントの組成及び周囲条件に応じて異なるタイプの接着が現れるということに留意されたい。理論に縛られることなく,4つの典型的な事例が挙げられると本発明者らは考えている:
1) 接着なし ‐ 2つのフィラメントが接触しても,接着は生じない(図5A図5B参照)。例えば,フィラメント表面の一部でしかポリマーが接着しない並列繊維タイプの場合,接着ポリマーが利用できない部分でフィラメント同士が向かい合う場合もある。従って,フィラメント同士は互いに接触できるが,接続又は接着していない。また,例えば,布地を接着し,その後,接着ポリマーの融点まで熱しない手技でフィラメント捲縮を再開した場合,フィラメントが絡み合い,フィラメント間接触点をより多く形成できるが,新規の/追加のフィラメント間接着は形成されない。
2) 弱接着又は接線接着 ‐ 2本のフィラメントが互いに「接線で」接触し,接着ポリマーがそれらフィラメント間に「ネック」を形成する場合がある(図6A,6B参照)。これは,例えば,繊維同士がわずかにしか接触していない場合,例えば利用可能な接着ポリマーの量が少ない場合に起こる可能性がある。
3) 完全接着 ‐ 2本のフィラメントが互いに接触し,接着ポリマーがフィラメントを接合鞘で覆う(図7A,7Bを参照)。これは,例えば,繊維がわずかに互いに押し付けられる場合,又は,例えば,被膜を形成するために利用可能な接着ポリマーの量が多い場合に起こる可能性がある。
4) 「木幹」 ‐ 2本のフィラメントが長手方向に互いに接触し,接着ポリマーが,特定の長さに沿って,例えば,2本の接着したフィラメントの直径の合計よりも大きい長さに沿って,両繊維にネック又は接合被膜を形成する(図8A,8B参照)。
【0050】
2本を超える繊維が接着点を形成し,異なる接着点タイプを組み合わせることが可能であることに留意されたい。例えば,弱接着/接線接着を有する木幹を3つ目の繊維等に接着できる。上記に提示した分類は説明することを目的とした典型的な例であり,実際は,様々なタイプの接着が布地に見られ,特に弱い接着と完全な接着との間の一過性型接着や,木幹は非常に短い接着から非常に長い接着まで形成できることにも留意されたい。
【0051】
例えば,フィラメント間結合の数が多い階層は,フィラメント間結合の数が少ない階層より接着3(完全接着)及び4(木幹)の密度が高い可能性がある。
【0052】
例えば,本発明に従った布地は,完全接着及び木幹型接着密度のレベルが異なる少なくとも2種の異なるフィラメント階層(A,B)を,その厚さに沿って含んでもよい。好ましくは,第1階層(A)及び第2階層(B)における木幹型接着密度に対する完全接着密度の比は,少なくとも1.5;より好ましくは少なくとも2.0;より好ましくは少なくとも3.0;より好ましくは少なくとも4.0,更に好ましくは少なくとも5である。
【0053】
例えば,本発明に従った布地は,少なくとも3種の異なる階層,不織布の第1外表面を形成する第1階層(A);第2階層(B),及び布地の第2外表面を形成する第3階層(C)を含んでもよく,ここでは,第2階層(B)は第1階層(A)と第3階層(C)との間に配置する。第1階層(A)における完全接着と木幹型接着との合計密度,及び第3階層(C)における完全接着と木幹型接着との合計密度は,第2階層(B)における完全接着と木幹型接着との合計密度より高い。外側の階層(A,C)は同じ特性を有していてもよいが,(内側の)第2階層(B)より完全接着と木幹型接着との合計密度が高ければ,同じである必要もないことに留意されたい。好ましくは,第2階層(B)に対する,第1の階層(A)(又は第3の階層(C))の完全接着と木幹型接着との合計密度の比は,少なくとも1.5;より好ましくは少なくとも2.0;より好ましくは少なくとも3.0;より好ましくは少なくとも4.0,更に好ましくは少なくとも5.0である。
【0054】
1つの布地試料に4種類の接着が全て見られる場合もある。接着の強度は,最初の選択肢(接着なし)から,弱接着/接線接着を経て,完全接着,及び木幹接着へと大きくなる。布地に含まれる様々な種類の接着の数及び比率は最終的な布地特性に影響を及ぼす可能性がある。例えば,強度の高い接着の数が多いほど,布地の耐性及び引張強度が促進できるが,布地が硬くなる可能性もある。特に,空隙体積が大きい木幹接着の数が多いほど,例えば,粗いか着用に不快であると否定的に評価し得る望ましからざる内側の硬い部分を形成する可能性がある。
【0055】
例えば,断面を見ると,不織布に複数の空隙体積が見られる。「空洞」と呼ばれる大きな空隙体積は,不織布帛の断面で見えることもあり,3次元である。通常,フィラメント間結合レベルが高い領域はフィラメント間で空隙体積は小さく,また,領域全体の総空隙体積は一般に小さい。逆に,フィラメント間結合が少ない領域は空隙体積は大きく,また,所定の領域の総空隙体積も大きい。空洞と呼ばれる大きな空隙も布地の断面で観察できる。不織布の長軸(MD)に沿った断面では,空洞の長さは空洞の高さよりかなり大きい。
【0056】
例えば,本発明に従った不織布は,空洞を含む階層Bを含んでもよく,空洞の長さと高さとの比,L:Hは,少なくとも3:1,好ましくは5:1,最も好ましくは10:1である。例えば図9及び図10を参照されたい。
【0057】
不織布自体は,その繊維構造の違いを説明するために異なる種類の顕微鏡又は他の可視化技術を使用して分析できるが,エンドユーザーの観点からは,布地特性は重要な利点である。理論に縛られることなく,また,不織布を同じフィラメントから成る均一なフィラメントバットから製造すればフィラメント間結合のレベルが接着密度に比例すると仮定すると,フィラメント間結合密度レベルに基づいて最終特性を予測することが可能となる。
【0058】
例えば,スパンボンドエアスルー接着プロセスに供する単層バットをベルト上で予備圧密する。ここでは,高温流体が上部から布地に流入し,その後,バットをエアスルー接着ユニットに移し,ベルト又はドラム上で接着する。ここでは高温流体は予備圧密空気と同じ面からバットに流入する。正しい技術やプロセス条件に基づいて,様々な特性を有する様々な構造体を形成できる。
【0059】
バットフィラメントに入る熱量が不十分であると,接着ポリマーは十分に軟化又は溶融せず,形成した接着は一般に弱い。形成した布地は通常,フィラメント間接着密度レベルが非常に低く,空隙体積は比較的大きい。このような布地は「接着が弱い(underbonded)」と呼ぶこともある。通常,フィラメントを崩すか,フィラメントから一部を取り出すことは容易であり,(表面及び層間剥離/崩壊の両方に対する)耐性は非常に低い。この布地は不安定であるとも言える。一方,このような布地は,圧縮性,柔軟性,ドレープ性等の意味で,非常に柔らかいと考えられる。図11を参照されたい。
【0060】
熱(できれば好適な熱範囲の下限レベル)がバットフィラメントに流入するとき,特に,熱が可能な限り均質にバット全体に偏在してフィラメントに流入するために必要な時間が十分あるとき,又は例えば,全ての位置で同じ温度勾配で通過するように熱流をバットが通しやすいとき(当業者であれば好適なプロセス設定を容易に決定できる),接着ポリマーは(好適な接着温度範囲の下限で)十分に軟化又は溶融し,フィラメント間接着が形成される。形成した布地は通常,均質な低フィラメント間結合密度レベルを示し,空隙体積は依然として比較的大きい。このような布地は「低接着」と呼ぶこともある。通常,その布地は嵩高(毛足が長く)で,圧縮性,柔軟性,ドレープ性等の意味で柔らかいが,特定の(低い)レベルの表面耐性及び剥離耐性は維持している。図12を参照されたい。
【0061】
熱がバットフィラメントに流入し,不均一に分布して(熱流入方向から見て)外側領域の繊維に多く,布地内部の繊維に少なく受け入れられると,階層構造が形成される場合もある。
【0062】
階層構造は,外表面でフィラメント間結合密度レベルを高く,布地内部でフィラメント間結合密度レベルを低くする必要がある。図3を参照されたい。
【0063】
熱は,フィラメントバットの片面から,又は両面から同時に(例えば,片面,及び高温表面,例えばベルト,机,ドラム等からの熱風流;他の面からの熱風流),又は両面から別々の工程で(片面から,次に他の面から),フィラメントバットに流入できる。このような状況下では,フィラメント間結合密度レベルの高い第1階層(A)は第1外表面に形成し,フィラメント間結合密度レベルの高い第3階層(C)は第2外表面に形成し,フィラメント間結合密度レベルの最も低い第2階層(B)は中間領域を構成してもよい。図4を参照されたい。
【0064】
理論に縛られることなく,本発明者らは,共働するプロセス要素やパラメータが多ければ階層構造を形成できると考えている。例えば,熱の下のわずかな圧縮力(例えば,ドラム又はロールの円筒状表面での布地の張力)は,フィラメント間結合密度レベルがより高い外側階層の形成を促進する可能性がある。例えば,フィラメント内に流入する熱はポリマー組成物中の非接着性ポリマーを軟化又は部分的に軟化させ,熱源に最も近いフィラメントの部分的な軟化は外側階層形成に役立つ可能性がある。例えば,捲縮性断面を有するか,又は収縮性ポリマーを含むフィラメントは,熱の下で半安定状態からより安定した状態に移行しようとする場合もある。プロセスが捲縮を形成するほど強くはない場合でも,内側のフィラメントの力が階層形成を促進できる。特許出願WO2020103964には,内側収縮力及び繊維/フィラメント耐性閾値の理論を記載しており,非捲縮性断面を有する嵩高な構造体の形成を説明している。理論に縛られることなく,フィラメントの一部をz方向に移動させて階層構造を形成する力を説明するために,オーブンで同様の原理を利用できる可能性があると本発明者らは考えている。例えば,オーブンから出した直後の冷却は,階層構造を形成するか,又は形成した階層構造を少なくとも固定することに役立つ。
【0065】
フィラメント間結合密度レベルの高い階層と低い階層を構造内に組み合わせた,本発明に従って形成した布地は,特性が非常に良好に組み合わされている。ここでは,良好な耐性(フィラメント間結合密度レベルの高い階層の表面耐性と,フィラメント間接着密度レベルの低い最も弱い階層Bの接着強度で起こる層間剥離に対して必要な強い力との両方)が,フィラメント間結合密度レベルの低い嵩高階層に促進される良好な嵩高性及び柔らかさ(圧縮性,柔軟性,及びドレープ性等の意味での)と組み合わされている。
【0066】
理論に縛られることなく,柔らかさ/嵩高さと耐性/引張強度特性とのバランスは,隣接する階層間の境界が明確でないことによりもたらされる相乗効果も利用できると本発明者らは考えている。例えば,特定のフィラメントは,その一部がフィラメント間結合密度レベルの高い第1又は第3階層(A,C)内に延在し,他の部分がフィラメント間結合密度レベルの低い第2階層(B)内に延在することが可能である。例えば,フィラメントバットの1つの層内に形成された階層構造は,異なる繊維層から形成された同様の構造と比較して,内部の複雑さを向上させる。熱(できれば好適な熱範囲の中間レベル~高レベル)がバットフィラメントに流入するとき,特に,布地の全ての位置で可能な限り均質に熱がフィラメントに流入するために必要な時間が十分あるとき,又は例えば,全ての位置で同じ熱勾配で通過するように熱流をバットが通しやすいとき(当業者であれば好適なプロセス設定を容易に決定できる),接着ポリマーは(好適な接着温度範囲の上限で)十分に軟化又は溶融し,フィラメント間接着が形成される。形成した布地は通常,均質な高フィラメント間結合密度レベルを示し,空隙体積は比較的小さい。このような布地は「完全接着」と呼ぶこともある。通常,その布地は嵩高性が低く,剛性が高く,高レベルの表面耐性,特に層間剥離耐性を維持している。図13を参照されたい。
【0067】
バットフィラメントに熱が流入しすぎると,接着ポリマーが完全に溶融し,主に完全接着及び木幹型接着が形成される。また,フィラメント組成物から他のポリマーが影響を受け,例えば屈曲しやすくなり,フィラメントバットが崩壊してフィラメント組成物自体になる可能性がある。通常,形成された布地のフィラメント間結合密度レベルは非常に高く,空隙体積は小さい。このような布地は「過接着」と呼ぶこともある。通常,その布地は剛性が高く,耐性がある。また,嵩高性が低く,柔らかい感触は不十分である可能性がある。図14を参照されたい。
【0068】
なお,熱吸収増加に伴って布地の厚さが減少するという上述の仮説は,その接着中にフィラメントの形状を変える内力(例えば,捲縮活性化,制御収縮等)を誘発する大きな変化をフィラメントが受けていないことを根拠とする。このような状況下では,布地の熱吸収に対する厚さ曲線が異なる可能性があり,即ち最適な捲縮/収縮値では単数又は複数のピークがあり,また接着が弱い布地及び過接着の布地では厚さが減少する。接着の原理は一般的に同じであり,全ての利点を備えた階層構造を形成できる。
【0069】
当業界では,いわゆる捲縮性断面に配置した収縮レベルの異なる複数のポリマーの特定の組み合わせにより,いわゆる捲縮がもたらされることは周知である。この捲縮は,即時的な自己捲縮か,又は捲縮を発現するために繊維を活性化しなければならない(例えば,熱活性化によって)潜在的捲縮のいずれかにできる。繊維が捲縮性断面を有すると,いわゆる螺旋捲縮を形成する規則的な捲縮がもたらされる。非常に簡単に言えば,捲縮性断面を有する繊維は,収縮率の高い成分に向かう方向へと屈曲する傾向があり,これにより螺旋捲縮がほぼ均一になると言える。換言すれば,捲縮性断面により,第1の成分及び第2の成分の内力ベクトルは互いに向かって規則的にシフトする。理論に縛られることなく,このシフトの規則性が自由単繊維の捲縮を規則的にする主な理由であると本発明者らは考える。対照的に,本発明によれば,また理論に縛られることなく,非捲縮性断面を有する繊維では,第1の成分及び第2の成分の内側収縮力ベクトルの間のシフトは規則的ではなく,従って繊維は任意の方向に不規則な弓又は波を形成すると本発明者らは考えている。非常に簡単に言えば,繊維はその断面又は周囲の特定部分に向かって屈曲する一様な傾向はなく,その結果,不規則な最終形状になると言える。活性化後,繊維断面はほぼ捲縮していないままである。
【0070】
例えば,本発明に従った布地は,その表面の少なくとも一部に接着ポリマーを有する多成分フィラメントを含んでもよい。接着ポリマーは,ポリオレフィン(即ちポリプロピレン又はポリエチレン),低融点ポリエステルグレードを含む低融点ポリマー(即ちポリ乳酸などの脂肪族,又はポリエチレンテレフタレートなどの芳香族),コポリマー又は好適なポリマーのブレンドの群から選択できる。接着ポリマーが,ポリエステルコポリマー(coPET)又はポリ乳酸コポリマー(COPLA)などのポリエステルの群のプラスチックから成るか,又は基本的に成ることは,本発明の範囲内である。
【0071】
例えば,本発明に従った布地は,接着ポリマーの融点より高い融点を有する第1ポリマーを含む多成分フィラメントを含む可能性もあり,融点差は少なくとも5℃であることが好ましい。第1ポリマーは,ポリオレフィン(即ち,ポリプロピレン又はポリエチレン),ポリエステル(即ち,ポリ乳酸などの脂肪族,又はポリエチレンテレフタレートなどの芳香族),コポリマー,又は好適なポリマーのブレンドの群から選択できる。第1ポリマーが,ポリエステルコポリマー(coPET)又はポリ乳酸コポリマー(COPLA)などのポリエステルの群のプラスチックから成るか,又は基本的に成ることは,本発明の範囲内である。
【0072】
本発明に従った二成分フィラメントの成分の好ましい組み合わせとしては,ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE),ポリエチレンテレフタレート(PET)/PE,PET/PP,PET/コポリエチレンテレフタレート(CoPET),ポリ乳酸(PLA)/コポリ乳酸(COPLA),PLA/PE,及びPLA/PPが挙げられる。
【0073】
例えば,本発明に従った布地は,多成分フィラメント,好ましくは二成分フィラメントを含んでもよい。
【0074】
本発明に従った布地は嵩高なバットから,好ましくは,捲縮フィラメントや,適切な活性化の下で自己捲縮可能な潜在的捲縮を有するフィラメントを含むバットからも形成する。
【0075】
例えば,本発明に従った布地は,捲縮性断面を有する多成分フィラメント,好ましくは捲縮性断面を有する二成分フィラメント,より好ましくは偏心芯/鞘(eC/S)又は鞘/鞘(S/S)断面を有するフィラメントを含んでもよい。例えば,eC/S断面のいくつかの好ましい組み合わせとして:PP/PE,PET/PE,PLA/PE,PET/PP,PLA/PP,PP/coPP,PET/coPET,PLA/coPLAが挙げられ,ここで,指定したポリマーはフィラメント成分の少なくとも75%を形成する。
【0076】
例えば,本発明に従った布地は,収縮性ポリマーを含む非捲縮性断面を有する多成分フィラメント,好ましくはポリエステルを含む芯/鞘(C/S)断面を有する二成分フィラメントを,その組成において,好ましくは芯において含んでもよい。例えば,C/S断面のいくつかの好ましい組み合わせとして:PET/PE,PET/PP,PET/coPET,PLA/PE,PLA/PP,PLA/coPLAが挙げられ,ここで,指定したポリマーはフィラメント成分の少なくとも75%を形成する。
【0077】
理論に縛られることなく,特定の場合,階層構造が形成できるが,フィラメントの表面で利用可能な接着ポリマーの量が少ないと,形成された接着は,定位置で保持して所望の構造を得るには弱すぎると本発明者らは考える。一方,接着プロセス中に溶融する接着ポリマーをフィラメントが多く含みすぎると,溶融しないフィラメントの残った固体部分は,熱流に供したとき,構造を保持して再び所望の構造を得るには弱くなりすぎる。
【0078】
例えば,本発明に従った布地は,少なくとも15重量%の接着ポリマー,好ましくは少なくとも18重量%の接着ポリマーを含んでもよい。
【0079】
例えば,本発明に従った布地は,最大75重量%の接着ポリマー,好ましくは最大80重量%の接着ポリマーを含んでもよい。
【0080】
様々なポリマーの組み合わせには様々な量を使用できる。例えば,PP/PEフィラメントを有する本発明に従った布地は,少なくとも25重量%の接着ポリマー,好ましくは少なくとも30重量%の接着ポリマー,より好ましくは少なくとも35重量%の接着ポリマーを含んでもよい。例えば,PP/PEフィラメントを含む本発明に従った布地は,最大75重量%の接着ポリマー,好ましくは最大70重量%の接着ポリマー,より好ましくは最大65重量%の接着ポリマーを含んでもよい。
【0081】
また,接着ポリマーはフィラメント表面に存在する必要があることに留意されたい。芯‐鞘,又は偏心芯‐鞘の場合,接着ポリマーは鞘の一部であるか,又は好ましくは鞘を形成していることが必要である。
【0082】
例えば,本発明に従った布地は,フィラメント表面の面積の少なくとも20%,好ましくはフィラメント表面の面積の少なくとも35%,更に好ましくはフィラメント表面の面積の少なくとも50%を形成する接着ポリマーを含んでもよい。本発明に従った階層構造により,布地耐性と柔らかさ/嵩高特性とはバランスが取れている。
【0083】
例えば,布地耐性は常に必要である。布地は,損傷を受けることなく最終製品への変換プロセスを経るように,更に最終製品の使用に耐えられるように十分な耐性を必要とする。耐性に関して非常に重要な2点は,布地の表面安定性(表面から繊維が解けることへの耐性),及び布地の層間剥離安定性(布地の上部が下部から裂けることへの耐性)である。これら2種の耐性は,耐摩耗性などの他の耐性と共に評価することが多く,決められた回数のマーチンデール試験法で評価し,次いで結果を1~5段階で人間が評価する。この試験は,ある特定の製品について合格/不合格の二値評価で閾値を設定するためには非常に適しているが,その尺度がおおまかであること,また試験に合格した試料と最良の結果とを比較するための追加情報がないことにより,本発明の利点の説明に必要な,十分詳細に区別するための最良の選択肢ではない。
【0084】
換言すれば,布地のz方向の引張強度は,フィラメント間結合レベルが低い階層ほど低いと言える。布地のz方向の引張強度は,例えば層間剥離強度試験で測定できる。布地は最も弱い階層で裂ける。層間剥離強度が低すぎると,布地の安定性が不十分になり,変換又は通常操作の負荷で布地は層間剥離して層状に裂けたり,層間剥離した部分が部分的につながっている特定の領域でのみ層間剥離し,望ましからざる毛玉が形成される傾向にある。同様に,布地表面の耐摩耗性が非常に高い場合でも,層間剥離があると,マーチンデール摩耗試験中に毛玉又はいわゆるクモの巣効果が現れて結果を損なう可能性がある。
【0085】
理論に縛られることなく,階層構造を形成した布地では,耐性を表す重要な数値は剥離強度であると本発明者らは考えている。階層構造が無いか又は低いレベルである完全接着布地は,表面安定性が良好で,層間剥離強度も高い。十分に形成された階層構造は表面安定性が良好で,層間剥離強度が中程度であることを特徴とする。階層構造が弱いか又は存在しない接着が弱い布地は,表面崩壊しやすく,層間剥離/崩壊強度が低いことを特徴とする。
【0086】
例えば,本発明に従った布地は少なくとも2つの異なる階層を含み得てもよい。この場合,層間剥離強度は0.5N以上,好ましくは0.6N超,好ましくは0.7N超,好ましくは0.8N超である。
【0087】
例えば,本発明に従った布地は少なくとも2つの異なる階層を含んでもよく,この場合,層間剥離強度は2.0N以下である。
【0088】
層間剥離力は,不織布内の最も弱い領域に沿って不織布の外側部分/外側階層を引き離すために必要な力である。布地が階層形成構造を有する場合,層間結合密度レベルが最も低い階層で層間剥離が起こるとされている。なお,本明細書において,典型的な不織布組成物では,接着ポリマーの引張強度は他のポリマーより低く,このことは,最も弱い箇所が通常,フィラメント自体ではなく,接着部であることを意味する。この特性は,繊維断面に影響されることも非常に多い。例えば,接着ポリマーとしてのポリエチレンの引張強度は,ポリプロピレン又はポリエステルより低い。例えば,鞘は通常,内側芯の比較的薄い被膜であることから,鞘にポリエチレンを使用した芯/鞘構造フィラメント間の接着は比較的弱い。結果として,一般的に,フィラメント同士の接着の切断は,フィラメント自体の切断より容易である。図15図19を参照されたい。
【0089】
例えば,嵩高性は重要な特徴の1つである。上述したように,フィラメントバットは,接着中,例えばエアスルー接着プロセス中に,高温流体を適切に流すために十分に嵩高であるべきである。嵩高さは人間の知覚にとって非常に重要であり,布地が嵩高であるほど柔らかいと感じることが多いため,最終的な布地も嵩高であるべきである。階層構造により嵩高さがもたらされ,例えば,階層Bは典型的に非常に嵩高であり,構造全体の嵩高さを高める。一方,単数又は複数の階層のフィラメント間結合密度レベルが高くなるほど,構造全体の嵩高さが低下し,極めて嵩高な構造では,外側の単数又は複数の階層が全く形成されない場合がある。
【0090】
例えば,本発明に従った布地の嵩密度は60kg/m3未満,好ましくは58kg/m3未満,より好ましくは56kg/m3未満,より好ましくは54kg/m3未満であってもよい。
【0091】
例えば,本発明に従った布地の嵩密度は15kg/m3超,好ましくは20kg/m3超,より好ましくは25kg/m3超,最も好ましくは30kg/m3超であってもよい。
【0092】
嵩/嵩高性は,1立方メートル当たりのキログラム数を表すので,値が小さいほど材料は嵩高である;同時に,1キログラムの布地の体積をリットルで表すためにdm3/kg又はl/kgの「坪量に対する厚さ比」を用いることが可能であり,この値が高いほど,嵩/嵩高性は高くなる。
【0093】
例えば,本発明に従った布地の坪量に対する厚さ比は少なくとも16.5l/kg,好ましくは少なくとも17.0l/kg,好ましくは少なくとも18.0l/kg,より好ましくは少なくとも18.5l/kgであってよい。
【0094】
例えば,本発明に従った布地の嵩密度は最大66l/kg,好ましくは50l/kg以下,好ましくは40l/kg以下,より好ましくは33l/kg以下であってよい。
【0095】
例えば,本発明に従った布地の坪量は少なくとも5グラム/平方メートル(gsm),好ましくは少なくとも10gsm,より好ましくは少なくとも15gsmであってよい。
【0096】
例えば,本発明に従った布地の坪量は200gsm以下,好ましくは150gsm以下,より好ましくは100gsm以下であってよい。
【0097】
例えば,本発明に従った布地の復元率は少なくとも0.5(これは元の厚さの50%復元率に相当する),好ましくは少なくとも0.6,より好ましくは少なくとも0.7,より好ましくは少なくとも0.8,最も好ましくは少なくとも0.9であってよい。
【0098】
例えば,本発明に従った布地の反発力は少なくとも5%,好ましくは少なくとも10%,より好ましくは少なくとも13%,より好ましくは少なくとも15%,より好ましくは少なくとも18%であってよい。
【0099】
特に図示しているような階層構造の上記の説明は,バット内のフィラメントが全て3次元で均一に敷設されていることを前提としている。このような均一性はほとんどの不織布用途にとって好ましい。不均一性は通常,人間が直接目視できる。布地は,ある箇所では密度が高く/厚く,他の箇所では密度が低く/薄く/弱く見える。極端な例では,布地は,高密度な島が互いに離れて位置し,フィラメントのまばらな布帛で繋がっているように見える場合もある。しかし,人間の観察者が均一であると判断した布地でさえ,布地の全3次元構造において高密度や低密度の不均一な領域が少し存在する場合もある。
【0100】
捲縮を有する繊維は通常,自己捲縮,活性化した捲縮,又は完全に制御した収縮から生じ,高密度領域と低密度領域が特徴的な構造を形成する傾向にある。即ち,特定の領域では微小集塊物(micro-aglomerates)を形成し,一方,他の領域では比較的空洞の微小空間が残る。布地の断面をマイクロスケールで点検すると,密度の高い領域がフィラメント間結合の少ない階層を部分的に覆い隠すことができ,逆もまた同様である。図20A及び図20Bを参照されたい。
【0101】
本発明の目的は,階層構造,及び層形成アプローチと比較した階層構造の利点を説明することである。上述のように,階層構造は不織布の1つの層で形成することが可能であり,換言すれば,階層構造は,布地層から独立して形成できる。
【0102】
階層構造は有利にも,層形成と組み合わせることが可能である。例えば,本発明に従った布地は2つ以上のフィラメント層から成り,フィラメント層では,フィラメントの少なくとも1つの外側層を,高いフィラメント間結合密度レベルを有する少なくとも1つの外側階層と,低いフィラメント間結合密度レベルを有する少なくとも1つの他の階層へと構築できる。
【0103】
上記で詳述したように,単一層は1つ,2つ,又はそれ以上の階層を含むことが可能である。一般に,1つの階層は1つの層の一部を形成し,又は1つの層に等しく,又は仮に,それ以上の層を含むことが可能である。本発明の範囲内では,少なくとも2つの階層が形成された少なくとも1つの層を含む層状布地が考えられる。
【0104】
例えば,本発明に従った布地は,少なくとも2つの階層が形成されたエンドレスなフィラメントの少なくとも1つの層を含む。
【0105】
例えば,フィラメントの太さ及び接着ポリマーの量が異なる複数の層を組み合わせて,(より細い繊維及びより多い接着ポリマー量の層によりもたらされた)非常に優れた耐摩耗性,及び(より粗い繊維及びより少ない接着ポリマー量の層によりもたらされた)全体的な嵩高さを持つ表面を1つ有する布地を達成できる。このことは例えば,Reifenhauser社の特許出願,欧州特許出願第19189238.9(未公開)の例に記載されている。
【0106】
例えば,フィラメント表面の接着ポリマー量が異なる複数の層を組み合わせると,例えばS/SフィラメントとC/S又はeC/Sフィラメントとを組み合わせると,例えば,接着ポリマーの量が少ないフィラメントの層によりもたらされるソフトロフト特性が向上し,接着ポリマーの量が多いフィラメントの表面の耐摩耗性が非常に優れた布地を製造できる。
【0107】
当業者は,その一部又は全体に形成された階層構造の利点を利用した様々な層の組合せを認識しているかもしれない。階層構造フィラメント層は有利にも,単数又は複数の短繊維層,フィルム等と組み合わせることも可能である。
【0108】
層形成はまた,バットを様々な熱流源に晒すことにより生じる特定の階層構造を達成できる。例えば,2つの紡糸ビームを用いて製造し,熱風で予備圧密し,次いで熱風オーブン内で接着した2つの層から形成した嵩高な布地は,フィラメント間結合密度レベルが高い階層と低い階層とで交互に配置した5つの階層が目視できる構造を形成し得る。図21及び図22を参照されたい。
【0109】
理論に縛られることなく,フィラメント間結合密度レベルが低い2つの階層間に位置し,特定のフィラメント間結合密度レベルを有する内部階層は,特定の例では,バットの予備圧密により支持し得ると本発明者らは考えている。ここでは例えば,1つの,いくつかの,又は各々の製造ビームの後方にある高温流体源(ホットエアナイフのような)及び/又は(製造ニーズに応じて)第2又は任意の更なる高温流体源をベルトの下に設置した真空部と共に設置し,高フィラメント間接着密度の核を形成することを促進し,これにより布地において高フィラメント間結合密度レベルの内側階層構造が形成される確率を高める。
【0110】
同様の構造は,例えば,特定の層を組み合わせて製造することも可能である。例えば,内側フィラメント捲縮力が異なるレベルの(例えば,異なるフィラメント断面,異なる成分比,異なる潜在捲縮レベルを生じさせる異なるプロセス設定等)捲縮性繊維から両層を形成した2層布地は,両層で独立してフィラメントを移動させ,層の表面,即ち両布地表面で,層間の境界領域において,フィラメント間結合密度レベルの高い階層を形成できる。
【0111】
本発明に従った布地は,その表面の少なくとも一部に融点の低い接着ポリマーを含む多成分フィラメントを含むバットから製造できる。移動ベルト上のバットは熱処理に供する。熱は,高温流体,例えば熱風によりバットに伝達できる。一般に,熱は,製造プロセス中の異なる段階,例えば,フィラメントをベルト上に敷設し構造体を予備圧密した直後,熱活性化プロセス中,接着プロセス中等でバット内に伝達できる。
【0112】
高温流体はフィラメントバット表面に入り,フィラメントの周囲を流れ,高温流体が運ぶ熱の一部は,より低温のフィラメントに伝達される。一部の熱はバット表面のフィラメントに伝達されることから,高温流体の温度はわずかに低下し,フィラメントと高温流体との温度差も減少する。当業者であれば,表面のフィラメントが熱を獲得すると,フィラメントの温度が上昇し,高温流体とフィラメントとの温度差が減少することを認めるであろう。十分な時間と熱があれば,布地内の全てのフィラメントを均一な温度に加熱でき,布地の全厚さに渡って繊維同士の接着を均質にできる。布地は,均一に,完全に,又は良好に接着したと言える。
【0113】
フィラメント間の接着形成は,局所的な流体抵抗圧力強度にも依存しており,即ち,フィラメント同士は互いに接触しているか,互いに交差していてもよく,またフィラメント同士は接着を形成しないか,又は弱い接着しか形成しないが,より強く接触したフィラメント同士は,溶融した低融点ポリマーにより接着がより強くなることに留意されたい。布地を通る高温流体の主に垂直な経路に沿って布地の動的流体抵抗により高温の空気が布地を流れるときに生じる圧力により,その後の流体の温度及びエネルギーを伝達する能力は低下し,露出した布地の表面への最初の衝突点から布地の反対側に向かって徐々に低下する。ここでは,流体が布地から流出するときに,温度及び流体流速が低下し,布地の断面で接着密度に差が生じ,その差は布地層内の階層形成において顕在化する。
【0114】
本発明に従った製品は,フィラメント間結合密度接着がその厚さ全体に渡って不均一になることを請求する。フィラメント不織布バットからこのような製品を作成するために使用するプロセス設定及び機械装置は,CDのみならずMDの両方で流速及び温度により必要な熱風を一定に供給できることが必要であり,このことは,流速及び温度が経時的に一定であることも意味する。この要件は,ホットエアナイフ,ホットエアフィールド,ドラム付き熱接着オーブン,フラットベルトオーブン,又はドラム接着とフラットベルト接着との組み合わせなど,全ての熱風供給装置に適用される。
【0115】
本発明に従った構成の推奨形態は,紡績機での紡糸又は紡糸口金の使用により製造し,その後好ましくは冷却器に通す多成分フィラメント又は好ましくは二成分フィラメントである。この冷却器の内部では,フィラメントは通常,流体流,主に冷風により冷却する。紡糸したフィラメントをその後,延伸機構にも通し,そこで延伸により加工することは本発明の範囲内である。次いで,延伸した(伸長させた)フィラメントを移動ベルト上に集積し,そこでフィラメントのバットを形成する。有利な1構成では,ドロー比を決定する特定のパラメータを調整することにより,潜在的な収縮の程度を制御したバットの形態でフィラメントを作成することが可能である。他の有利な組み合わせでは,捲縮性フィラメント断面を設定し,ドロー比及び冷却を決定する特定のパラメータを調整することにより,その後に,自己捲縮するか,又は所望のレベルの潜在的捲縮を有するバット形態のフィラメントを作成することが可能である。
【0116】
本発明の機械装置及びプロセス構成の好ましい形態によれば,マガジン機構として内蔵型散布装置を使用する。これはフィラメントの集積を制御し,延伸機構とフィラメント集積位置との間に設置する。少なくとも1つの散布装置を使用し,その装置の対向する側壁同士がフィラメントの通過方向に対して互いに分岐していることは本発明の範囲内である。本発明の構成の非常に推奨される形態は,冷却機構及び延伸機構の駆動ユニットが密閉システムとして設計されていることを特徴とする。この密閉システムの内部では,冷却機構への外部冷却媒体又は冷風の供給を補うような空気源は追加していない。このような密閉システムは,特に不織布の製造に適していることが判明している。
【0117】
収縮を利用して本発明に従った不織布を製造する例では,フィラメントの収縮に伴う問題を解消する本発明に従った技術的解決策は,前述のユニットを利用すれば,特に,特段好ましい形態の構成とは別に,延伸機構とフィラメント集積位置との間に配置した散布装置も使用すれば,機能的に信頼でき,効果的に実施可能になることが見出された。既に述べた通り,スパンボンド法で製造した不織布バットの収縮は,ドロー比,冷却空気/ポリマー比,及びフィラメント速度のパラメータにより非常に明確に適合又は調節することが可能である。
【0118】
自己捲縮フィラメントを利用して本発明に従った不織布を製造する例では,これらのフィラメントは,延伸チャンバの端部に位置する拡散装置から離れると,空気力学的延伸力から解放され,続いて真空支持された布帛形成領域に敷設される。ここで,真空が吸引領域の端部で ― MDに ― 最も低い力になると直ちにフィラメントは捲縮し,このような捲縮フィラメントにより,結果として得られる布地の厚さを増すことができる。
【0119】
フィラメント配向及び3次元構造を圧密して布地バットに厚さ/嵩を持たせるために,一方向に熱風をバットに通す後続工程を実行する。高温流体/熱風温度,浸透速度,及び体積のパラメータの設定は,主に以下:
‐ スパンメルトビームの総処理量;
‐ 繊維寸法及びポリマーの組み合わせ
‐ ライン速度
‐ バット厚
‐ 布地坪量g/m2
に依存し,最終的な接着布地のパラメータ設定に影響を与えることなく,所望の厚さを維持する。
【0120】
上記のプロセス工程は,ポリマーの組み合わせ,繊維寸法,及び坪量が類似しているか,又は異なる更なるスパンメルトビームを追加することにより複数回利用できるため,最終的な接合工程に先立って予備製品特性を得るために,共通コンベアベルト上の高温流体援用圧密工程も利用することが好ましい。
【0121】
すでに述べた定義から,スパンボンド法を利用した製造は,フィラメントへのポリマーの直接変換から成ることは明らかであり,フィラメントはその後,これらのフィラメントを含む不織布バットを作成する目的で集積位置でランダムに広げられる。スパンボンドプロセスは,個々のフィラメントと最終的な不織布との両方の特性を決定する。最終的に製造した不織布は,例えばこの不織布の個々の製造工程で生じるレオロジー特性,ポリマーの構造特性,活性化捲縮,自己捲縮レベル,及び収縮などの個々のフィラメントの様々な特性及び状態を決定するために必ずしも使用できる訳ではない。不織布の潜在的な捲縮又は収縮は一般に,嵩高な不織布を作成する能力を決定する。この能力は,フィラメントバットの厚さを増加させるために個々のフィラメントの捲縮又は収縮を利用することにより達成するが,それにも関わらず,捲縮又は収縮は,布地の構造が崩壊することなく,並びに/又はフィラメントバットの長さ及び幅が大きく変化することなく生じる。フィラメントの捲縮/収縮は,フィラメントの組成中に様々な原料を使用することにより,及び/又は不織布用のフィラメントの製造中に異なる材料処理条件を設定することにより,及び/又は異なるフィラメント断面形状/配置を利用することにより,及び/又は種々の投入材料間の質量比を調整することにより,及び/又は異なるフィラメント配向を設定することにより画定することは本発明の範囲内である。
【0122】
本発明の構成の推奨形態は,捲縮に対応する断面を有するフィラメントと,捲縮に対応しない断面を有するフィラメントとを区別しない。どちらのタイプも,特定の用途に有利に使用できる。同様に,捲縮フィラメント層と非捲縮フィラメント層とを使用することにより,好適な組み合わせを作成できる。嵩高で柔らかく曲がりやすい材料を実現する上で,捲縮フィラメントとは対照的に,捲縮に対応しない断面を有するフィラメントによる技術的利点が存在することは,技術分野の専門的な資格を有する者には明らかであろう。
【0123】
本発明に従ったプロセスは1つ以上の異なる接着工程を含んでもよい。図23を参照されたい。例えば,フィラメントの1つのバットは,移動ベルト上に敷設し,紡糸ビームからフィラメント敷設の直ぐ後方に配置した接着ユニットにおいて片面又は両面から接着することが可能である。
【0124】
様々な理由から,フィラメント紡糸ビームと接着ユニットとの間の距離を大きくすることは有利になる可能性がある。層構造を形成するために,又はフィラメントバットが移動ベルトと接着ユニットとの間の間隙を通過する必要があるプロセス上の理由から,複数の紡糸ビームを使用することが非常に多い。スパンメルト製造ラインに共通しているこのような状況下では,接着に先立って製造プロセスに耐えられるようにバットの安定性を高めるため,バットを予備圧密する必要がある。また,例えば,接着前に潜在捲縮の熱活性化が必要な場合もある。予備圧密及び/又は活性化は,ロール(例えば圧縮ロール),熱風(例えばホットエアナイフ(HAK),ホットエアフィールド(HAF)ユニット),熱放射(例えば赤外線予備圧密)等を用いて実施できる。更に説明するために,3つの異なる接着工程を含む例を選択してプロセスを説明する。本発明の階層構造は,予備圧密/活性化と接着ユニットとの組み合わせが異なる製造プロセスによっても形成できることに留意されたい。
【0125】
例えば,本発明の1構成は,フィラメントバットを熱的に予備圧密すること,即ち,フィラメントバットを予備圧密し,熱的に形成した接着を含んでもよいことも包含する。本発明の有利な構成の1つは,少なくとも1つの層におけるフィラメントの収縮及び/又は捲縮を制御する目的で,得られた不織布を熱的に活性化するということでもある。好ましくは(例えば,熱風又は赤外線照射による)高温媒体流と接触させる効果,及び/又は高温表面と接触させる効果のうちの少なくとも1つにより,圧密化,及び場合によっては熱活性化を行う。このような高温表面の例としては,主にローラーの一部が挙げられる。熱活性化は,作用が繊維層の表面全体に渡って均一に起こる条件下で行うことが好ましい。
【0126】
熱活性化は,熱風が供給されるチャンバ内で,又はフィラメントの層がオーブンを通過することにより実施可能である。また,赤外線,紫外線,透過型マイクロ波,及び/又はレーザー照射による熱活性化及び圧密化も実施可能である。「製造ライン上で」実施するこの説明した手順の範囲内で,熱圧密は,製造手順の先行する工程,又は,即ち製造手順の先行する工程とは別に「製造ライン外で」行われることもある熱活性化及び圧密の両手順工程の完了直後に行ってもよいという事実を強調しておく必要がある。従って,熱活性化は,基本的に「製造ライン外で」,つまり,異なる時間及び場所で実行可能である。
【0127】
本発明に従った解決策では,高温媒体流が布地を通過し,その結果,不織布の全体積に渡って熱が伝達されると有利である。
【0128】
フィラメントの繊維バットの必要な予備圧密は,製造プロセスの条件にかなりの程度,依存する。重要な前提要件は,フィラメントバット内のフィラメント同士の相互結束レベルを正しく設定することでもあり,従って,製造プロセスの後続工程の要件に基づいてフィラメント同士の相互結束レベルを制御できるようにすることでもある。製造プロセスを製造ライン上で行い,活性化をベルト自体で行う場合,所望の結束は,活性化プロセス中の非常に望ましくない動きにより起こる崩壊又は薄れを防止するためにのみ必要であるため,比較的低い。特定の場合,例えば,フィラメント同士がそれら自体で,互いの接触時又は基材との接触時に非常に良好に結束し,その結束が,例えば断面の形状/配置,絡み合いの速度,又は材料組成により可能になるとき,フィラメントバットの結束特性は,熱的予備圧密がない場合でさえ十分に良好になり得る。他の例では,例えば製造プロセスが2段階に分かれている場合,又はフィラメントバットを完全に活性化する前に予備圧密し,例えばロールの形態で移送する場合には,かなり高い結束が必要となり,その結果,かなり高い予備圧密レベルも要求される。当技術分野で専門的資格を有し,製造プロセス条件を熟知している者であれば,特定の例で必要な予備圧密のレベルを容易に特定できるであろう。
【0129】
例えば,収縮を制御する場合,活性化温度は,単数又は複数種の成分Aのガラス転移点と軟化点(国際標準化機構(ISO)DIN306に準拠したビカット軟化温度)との間の範囲にすべきである。当技術分野の専門的資格を有する者であれば,所与の成分組成に最適な活性化温度を特定できるであろう。
【0130】
対流冷却装置の内部では,通常,流動する流体,主に冷風によりフィラメントを冷却する。上記のように,フィラメントの潜在的な収縮又は捲縮は,収縮を示すバットの長さ,幅,及び厚さの全範囲に渡って均一に分布することが必要である。フィラメントに関連する特性は,ドロー比,冷却空気/ポリマー比,及びフィラメント速度を適合させることにより変更可能であるが,一方,本発明によれば,これらのパラメータは,個々のフィラメント各々でほぼ同一である。
【0131】
作成した不織布は,好ましくは紡糸ビーム上でスパンボンド法により作成されるということは本発明の範囲である。同時に,複数の層は重ね合わせて集積してもよく,その後,これらの層を一緒に,少なくとも1つの成形ベルト上で最終的な圧密のための機構へと移送することは明らかである。
【0132】
紡糸口金における紡糸によりフィラメントを作成する。フィラメントの配置は交互に配置することで最適化してもよく,これにより,個々のフィラメント各々の重量が非常に類似し,温度が非常に類似した冷風が供給される状態を達成できる。紡糸口金は,様々な数の毛細管を有し,同様に,これらの毛細管の直径(d)及び長さ(l)も様々である。長さ(l)は原則として,毛細管の直径の倍数として計算し,この用途領域では,l/dが2~10の範囲になるように長さ(l)を選択する。毛細管の数は,フィラメントの所望の最終直径,及び所望の又は計画したポリマーの総加工量,並びにフィラメントの所望の紡糸速度に基づいて選択する必要がある。毛細管の数は,1メートル当たり800~7000本の範囲で変更してもよく,この数で,8~45μmの範囲の直径を持つフィラメントが得られる。毛細管直径及びフィラメント速度は,最終的なフィラメントの潜在的収縮が正しいレベルになるように選択する。フィラメント速度は1000~10000m/minの範囲にすべきであり,捲縮に対応せず収縮を示さない断面を有するフィラメントについては,3000~5500m/minの範囲にすべきである。毛細管の直径は200~1000μmの範囲で選択すべきであり,これにより,円形毛細管の場合,200~1300の範囲の好適なプロセスドロー比(process draw ratio)が得られ,一方,製造ラインの生産性を所望のレベルにするには,これらの円形毛細管の場合,ドロー比が300~800の範囲であることが最も有利である。非円形毛細管は原則としてドロー比の値が高く,これは毛細管の形状や表面と体積との相対比に大きく依存している。
【0133】
冷風の体積及び温度は,ドロー比及び冷却条件が正しくなるような方法で設定する。本発明に関しては,冷風体積と紡糸ポリマーの比率が20:1~45:1の範囲にある場合が有用であると判明した。冷風の体積及び温度は,冷却器(6)中で制御する。この温度は,10℃~90℃の範囲に,好ましくは15℃~80℃の範囲に,従って収縮の経過を制御するために特定の場合に前記冷却条件を使用するような方法で,設定可能である。冷却条件は,紡糸プロセス中のフィラメントが融点からガラス転移点までどの程度早く冷却されるかを決定する。例えば,冷風温度を高く設定すると,フィラメントの冷却が遅くなる。実際,本発明の目的では,必要かつ使用可能な冷風温度範囲を達成することは,温度範囲を別々に制御できる2つの領域に冷却器を分割することで容易になる。紡糸口金の近傍に位置する第1領域6aでは,温度は10℃~90℃の範囲,好ましくは15℃~80℃の範囲,最も好ましくは15℃~70℃の範囲に設定できる。第1領域の直近に位置する第2領域(6b)では,温度は10℃~80℃の範囲,好ましくは15℃~70℃の範囲,最も好ましくは15℃~45℃の範囲に設定できる。
【0134】
その後,フィラメントを延伸領域に案内する。ここでは,冷風速度効果で生じる延伸力によりフィラメントを延伸する。冷風体積,及び延伸領域の調整可能な形状により,特定の風速が得られ,この速度がフィラメント速度に伝達される。その後,このフィラメント速度は,ポリマーの加工量と共にフィラメント直径を決定する。潜在的収縮/縮小は,フィラメント速度,ドロー比,冷却空気/ポリマー比により調節する。
【0135】
次の工程では,フィラメントを拡散装置に送る。拡散装置の対向する壁同士は,フィラメントの移動方向に対して互いに分岐している。これらの壁の位置は,個々の集積フィラメントがMD/CD面で全方向に配置されている均一な組成の不織布を得ることを可能にする方法で調整できる。
【0136】
同時に,集積フィラメントバットが,これらのフィラメントを拡散装置に送る効果により,空気の影響を受けることは明らかである。空気流は,明らかにジグザグなフィラメント集積から,真円のループ,更に同様に,CD方向に配向した楕円構造まで,様々な配置を形成するような方法で適合させ得る。フィラメントは形成ベルト上に集積し,予備圧密のための少なくとも1つの機構に搬送する。冷風は,集積フィラメントバットを流れ,形成ベルトを流れ,その後,加工領域から遠ざかるように運ばれる。吸引空気の体積は,フィラメントの集積を容易にし,同様に,フィラメントバットと形成ベルトとの効果的な接触を確実にする方法で調整できる。予備圧密機構は,拡散装置の近傍に配置する。拡散装置と予備圧密機構との間の経路における全範囲で吸引された空気によりフィラメントバットの形成を制御する。フィラメントバットの予備圧密は熱風により行う。
【0137】
フィラメントバットに伝達されるエネルギー量は,フィラメントをある程度までしか軟化又は予備溶融させないプロセスパラメータにより制御する。これにより個々のフィラメント間の良好な結束を確保できる。フィラメント間の必要な結束が達成された後,繊維バットは,補助機構を追加することなく,またこの搬送中に発生する力の影響による破壊/損傷の影響やリスクがなく,形成ベルト上で搬送できる。この予備圧密手順は同様に,複数の紡糸ビームから成る製造ライン上の異なる集積領域にフィラメントバットを移動させるためには十分である。フィラメントに伝達されるエネルギーは,これらフィラメントの収縮の活性化には十分でない可能性がある。
【0138】
本発明に従った方法は,予備圧密パラメータ:予備圧密温度,予備圧密風速,及び予備圧密時間の間でのバランスを決定することを含む。予備圧密時間とは,フィラメントバットを予備圧密空気により改質する時間であるということは理解されているものとする。
【0139】
フィラメントバットの予備圧密時間は,1~10000msの範囲,好ましくは2~1000msの範囲,最も好ましくは4~200msの範囲にあることが推奨される。
【0140】
この予備圧密ユニットで使用する予備圧密空気の速度は,0.1~10m/sの範囲,好ましくは0.8~4m/sの範囲に設定する。予備圧密中の圧密温度は80℃~200℃の範囲,好ましくは100℃~180℃の範囲にすることが推奨される。構成の1形態では,この予備圧密温度は90℃~150℃の範囲,主に110℃~140℃の範囲である。
【0141】
拡散装置に続いて配置される製造ラインの領域における有利な1構成では,フィラメントバットを少なくとも1つの活性化ユニット10に搬送する。フィラメントは,熱風により活性化する。同時に,フィラメントの収縮性成分の実際の捲縮又は収縮は温度の関数であり,同様に,温度の影響を受ける持続時間の関数でもあることは理解されているものとする。更に,捲縮/収縮プロセスの速度も温度に依存することは明らかである。プロセスのこの制御により達成できる結果として,フィラメント構造の密度が低下した不織布の結束した均一な構造が達成され,これは同様に,この不織布の厚さの増加につながる。
【0142】
本発明の構成の1形態によれば,予備圧密及び活性化方法の工程の実行,その工程中の予備圧密及び/又は活性化の時間,予備圧密及び/又は活性化に必要な風速,並びに予備圧密及び活性化の温度は,予備圧密及び活性化のために組み合わせた機構において組み合わせた方法により制御する。
【0143】
本発明に従った有利な方法の1つは,活性化パラメータ:活性化温度,活性化空気の速度,及び活性化時間の間でのバランスを決定することを含む。活性化時間とは,フィラメントバットを活性化空気により改質する時間であるということは理解されているものとする。これらのパラメータは,フィラメントの潜在的な収縮レベルに応じて,また同様に,活性化時間,活性化温度,活性化風速の理想的な組み合わせを設定する目的で,特定範囲内で変更してもよいことは明らかである。
【0144】
フィラメントバットの活性化時間は,20~5000msの範囲,好ましくは30~3000msの範囲,最も好ましくは50~1000msの範囲にすることが推奨される。
【0145】
この活性化ユニットで使用する活性化空気の速度は,0.1~2.5m/sの範囲,好ましくは0.3~1.5m/sの範囲に設定する。熱活性化中の活性化温度は,80℃~200℃の範囲,好ましくは100℃~160℃の範囲にすることが推奨される。構成の1形態では,この活性化温度は90℃~140℃の範囲,主に110℃~130℃の範囲である。
【0146】
本発明に従った1実施形態は,複数の製造ユニット間又は複数の加工ユニット間の単数又は複数の間隙を含んでもよい。MD布帛経路に沿ってコンベアベルトから予備布地又はバットを放出するとき,全体的な形状寸法,特に元の厚さ,並びに元の触覚特性,例えば布地又はバットの柔らかい表面を変えることなく維持するために,コンベアベルトと下流の第1摩擦点との可能な予備速度差を最小にしてこの放出を実行することは有利である。
【0147】
最終的に得られる製品の特徴は,コンベアベルトから,並びに摩擦点とも呼ばれる機械方向の各アクティブ移動面から,予備圧密バットを放出するために適用する必要のある張力にも依存する場合がある。
【0148】
特に,コンベアベルトからのバットの放出張力は重要である場合もある。
【0149】
制御された張力は,通常,直線的な布地寸法,及びその幅方向の伸長度当たりの力として説明しているが,パラメータ設定を定義及び制御するためのプロセスの観点から,下流に隣接する2つの摩擦点間の速度差により張力を「解釈」する方法が受け入れられている。
【0150】
これは主に布地重量,ライン速度,布地と支持面との表面摩擦に依存するため,速度差設定はアクティブ駆動面速度を調整する直接的な方法である。
【0151】
例えば,本発明に従ったプロセスでは,コンベアベルトとエアスルー接着ユニットの吸引ドラムとの間の速度差は1.0%未満;より好ましくは0.5%未満,更に好ましくは0.3%未満にしてもよい。速度差が1.0%未満であるということは,第2装置の速度が+1.0%~-1.0%の範囲にある可能性を意味する。
【0152】
本発明に従った1実施形態はコンベアベルト(2)を含み,この実施形態は,予備圧密工程から圧密ユニット(3)へ不織布バットを移送する前では不織布バットの機械方向(MD)における布地強度は0.5~5N/5cm,好ましくは0.7~3.5N/5cm,より好ましくは0.8~3.5N/5cmである条件下で実施する。
【0153】
本発明に従った1実施形態はコンベアベルト(2)を含み,この実施形態は,予備圧密工程から圧密ユニット(3)へ不織布バットを移送する前では不織布バットの機械方向(MD)における布強度は6N/5cm超,好ましくは8N/5cm超,より好ましくは10N/5cm超である条件下で実施する。
【0154】
本発明に従った1実施形態は予備圧密工程と最終圧密工程との間に中間冷却を含む。例えば,その工程間の途中にある不織布バットは,冷却媒体,好ましくは,70℃以下,好ましくは60℃以下,最も好ましくは55℃以下の温度の空気に晒すことが可能である。例えば,中間冷却は,予備圧密したバットを周囲空気に晒すことで実施してもよい。理論に縛られることなく,特に不織布の少なくとも1つの表面を予備圧密中に加熱し,低温に晒し,次いで圧密工程中に加熱する中間冷却は,より緻密な外側階層形成に有利であると本発明者らは考える。
【0155】
本発明に従った有利な構成は最終圧密手順を含み,この手順は,圧密機構(3)において熱風を用いてフィラメントバットを改質することから成る。この圧密機構の中で,フィラメントバットを,フィラメント間接着が形成された布へと圧密する。この圧密は,例えば釣り鐘状のドラムを備える圧密機構,フラットベルトを備える圧密機構,又は複数ドラムを備える圧密機構などの複数の様々な装置により達成できる。なお,熱可塑性ポリマー及びそのブレンドは,熱に晒すと,ガラス転移点(全ての非晶質部分が軟化し始める)を超え,融点(全ての結晶部分が溶融する)未満で,塑性軟化(粘度低下)が徐々に増加する状態を示すという現象が特徴的である。融点は通常,非常に狭い温度範囲(最大2.0℃)にあり,使用するホモポリマー又はコポリマーにより定義される。ポリマーブレンドの場合,狭い温度範囲は,ポリマーブレンドが粘着性になり,フィラメント間接着を形成できるようになったときに判定できる。
【0156】
本発明に従った有利な構成は,少なくとも3つの異なる圧密部を用いて実行する最終的な圧密手順を含む。基本的に,空気流は布地に対してほぼ垂直であり,均一で温度及び体積変動の少ない流れを維持する。
【0157】
第1圧密部は,接着ポリマーの融点に満たないがそれに近い温度まで布地を予熱する。好ましくは,温度は接着ポリマーの融点より5~20℃低い温度に設定する。より好ましくは,温度は接着ポリマーの融点より5~15℃低い温度に設定する,有利には,温度は接着ポリマーの融点より5~10℃低い温度に設定する。有利には,第1圧密部では,布地の第1外表面及び第2外表面から交互に熱流が流入する方向を変える。
【0158】
第2圧密部では,融着の形成を可能にするために,低温溶融ポリマー組成物の融点範囲を狭くするように設定する。一方,布地の坪量,繊維寸法,構成ポリマー間の断面比を考慮して設定した温度は,接着ポリマーの融点より最大で5.0℃低く,最大で3.0℃高い範囲である。例えば融点が130℃の場合,設定温度は125℃(130-5)~133℃(130+3)の範囲にあることが好ましい。好ましくは,温度は,接着ポリマーの融点より5℃低い温度~接着ポリマーの融点と等しい温度の範囲に設定する。より好ましくは,温度は,接着ポリマー融点より4℃~1℃低い温度の範囲に設定する。有利には,第2圧密部では,交互に布地の第1及び第2外表面の方向から熱流が流入する。
【0159】
第3圧密部は冷却部であり,好ましくは10~40℃,より好ましくは20~30℃の温度に空気を大幅に冷却する。周囲空気を使用することも可能である。冷却部は,フィラメント又は少なくとも布地表面上のフィラメントを凝固させ,布地の形成された階層構造を固定することに役立つ。冷却プロセスの直前及び冷却プロセス中に過剰な張力は掛けないことが有利である。圧密ユニットの後方で別の冷却工程を行えることが有利である。この更なる冷却は,追加の空気流,冷却ロール等により行うことが可能である。第3圧密部を出た布地の温度がまだ周囲温度に達していないときに,更なる冷却を行うことが有利である。布地が周囲温度,好ましくは40~10℃の温度,更に好ましくは20~30℃の温度に達することが有利である。記載したプロセスは,経済的な利点の理由から,高処理量及び高製造速度で,嵩高で柔らかく,毛羽立ちの少ない不織布を製造する。
【0160】
例えば,本発明に従った1実施形態では,4ドラムを備えた高熱エアスルー圧密装置を使用できる。この装置により,高速でも滞留時間が短いだけでなく,定義した狭いパラメータ範囲で融着を形成するために必要な低粘度の溶融流を達成するため,最大布帛経路に沿って所望の熱風流及び熱風体積に布地を十分に晒すプロセスが可能になる。機械方向のドラムにより,接触角は少なくとも100°,好ましくは少なくとも130°,より好ましくは少なくとも150°,有利には少なくとも160°になる。
【0161】
選択した装置の正確なパラメータ設定範囲は,選択した接着ポリマー,フィラメント寸法,フィラメント断面,及びポリマー成分調合物間の質量比に依存する。
【0162】
前記4ドラム装置により,交互のほぼ垂直な強い熱風を短時間で基材に流すことも可能になる。ドラムの第1の対は,低融点ポリマー組成物の軟化点及び融点の直ぐ下の温度で布地構造体を予熱するように設置する。ドラムの第2の対は,低融点ポリマー組成物の融点範囲が融着の形成を可能にするように設置する。布地の構造を維持し,融着をそのまま維持するために,最終ドラムは,機械方向の円周に沿って高温部と冷却部を備える。布地を圧密装置から放出させる前に,布地構造体,又は布地構造体の少なくとも表面を凝固させることが有利である。布地を通る高流量冷風を備えた別個の追加冷却ロールを,エアスルー接着圧密装置の最後のロールから出来る限り最短距離に配置する。このエアスルー接着圧密装置は即時冷却で布地の凝固を終わらせる。
【0163】
圧密した不織布は最終段階で糸巻き(11)に巻き取る。不織布の表面特性を改質する必要がある場合,例えば,流体の透過性を向上させるか,又は流体を排出する能力を向上させる目的で,噴霧機構又はディップロールを,移動ベルトと最終圧密機構との間,又は最終圧密機構と糸巻きとの間のいずれかに配置する。
【0164】
本発明の構成の1形態は,活性化及び圧密の工程を組み合わせることから成り,ここでは,圧密機構内で,活性化時間及び/又は圧密時間,活性化及び/又は圧密に必要な風速,並びに活性化及び/又は圧密温度を制御する。
【0165】
圧密パラメータ:圧密温度,圧密空気の速度,圧密時間の間でのバランスを決定することは重要な要素である。圧密時間とは,フィラメントバットが圧密空気により改質される時間を意味すると理解される。これらのパラメータは,フィラメントのバットの潜在的な圧密レベルに関連させて,同様に,圧密時間,圧密温度,及び圧密風速を理想的に組み合わせる目的で,指定の範囲内で変更してもよいことは明らかである。
【0166】
フィラメントバットの圧密時間は200~20000msの範囲,好ましくは200~15000msの範囲,最も好ましくは200~10000msの範囲であることが推奨される。
【0167】
この圧密ユニットで使用する圧密空気の速度は0.2~4.0m/sの範囲,好ましくは0.4~1.8m/sの範囲に設定する。熱圧密中の圧密温度は100℃~250℃の範囲,好ましくは120℃~220℃の範囲であることが推奨される。構成の1形態では,この圧密温度は90℃~140℃の範囲,主に110℃~130℃の範囲である。
【0168】
実施例
以下,実施例に基づいて本発明の更なる詳細及び具体的な特徴を説明する。実施例は,本発明の実践を説明するものであるが,限定するものと見なすことを意図したものではない。追加の実施形態及び変更が請求した本発明の範囲内にあることは当業者であれば明らかである。従って,本発明の範囲は,添付の特許請求の範囲により定義しているものとする。
【0169】
実施例は,Reifenhauser Reicofil GmbH & Co. KG製R5型スパンメルト製造ラインを使用して製造している。この製造ラインには,2本のスパンボンドビーム(A,D)を備え,その各々は二成分フィラメントを製造するように適合させている。実施例1では,そのスパンボンドビームのうち1つのみ使用したが,実施例2~13では,両ビームを使用した。第1ビームからのフィラメントを移動ベルト上に敷設して第1層を形成し,第2ビームからのフィラメントをその上に敷設してバットの第2層を形成した。各ビームの後方ではバットを熱風で予備圧密する。従って第1ビームの後方では1つの層を予備圧密し,第2ビームの後方では両方の層を一緒に予備圧密した。得られた2層バットは,4つのドラムを備えるエアスルー接着ユニットに移した。バットは,第1ドラムにより第1面から,次いで第2ドラムにより第2面から,次いで第3ドラムにより再度第1面から,第4ドラムにより再度第2面からエアスルー接着した。最初の2つのドラムは第1圧密部であり,第3ドラム及び第4ドラムの一部は第2圧密部である。不織布の冷却は第4ドラム(第3圧密部)で開始し,ここでは,その接触面の大部分を熱風によるエアスルー接着の最終段階(第2圧密部)に使用し,最終部分 ― ドラムの30°の接触面に相当 ― は,布地冷却の第1段階,即ちエアスルー冷却段階として使用した(即ち,不織布がエアスルー接着ユニットを出る直前に,不織布と接触している最後の表面を布地の初期冷却に使用した)。得られた不織布は更に,エアスルー接着ユニットを出た直後に空気により更に冷却した。製造例の特定の特徴は以下に定義し,製造例の得られた特徴は以下の表に規定する。
【0170】
実施例1‐発明
第1ビームはフィラメントバットを製造し,このバット内では各フィラメントは芯/鞘構造(非捲縮断面)を有し,芯はフィラメントの70重量%を形成し,ポリエチレンテレフタレート(5520タイプ,Invista社製)を含み,鞘はフィラメントの30重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0171】
第2ビームは電源をオフにしていた。
【0172】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり220kg/hであった。
【0173】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで121℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで127℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定した。
【0174】
得られた不織布は75gsmで,その断面では階層構造がよく視認できる(図に示す)。密度の高い階層A及びCは布の外側表面を形成し,空洞のある中間の非常に嵩高いB層は布に嵩高さを付与する。なお,階層は均等に形成してもしなくてもよい。例えば,本明細書では,階層Aは階層Cよりはるかに厚い。図24を参照されたい。
【0175】
【0176】
実施例2‐発明
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの40重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの60重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0177】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層ではそれぞれの並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。一方の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0178】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり160kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0179】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで125℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで129℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却ユニットを配置した。
【0180】
得られた不織布は25gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0181】
階層構造は3つの異なる方法で判定した:
1)断面のSEM顕微鏡観察を行った。外側階層A及びC,並びに内側階層Bを認識することは容易である。SEM顕微鏡は布地の「中」を見るものであるため,フィラメント間相互結合や接着を判定し,空洞を測定することは非常に複雑である場合もある。(図25)。
2)不織布を樹脂中に固定し,断面を調製した。ここで断面だけを見ると,フィラメントは(このマイクロスケールではランダムに配向しているため)黒い点として視認される。階層A及びCではフィラメント(点)がかなり密集しており,内側の階層Bでは空洞が形成されていることは明らかである(図26)。
3)不織布をX線断層撮影で分析し,X線画像上の布地/フィラメントの空間解像度を向上させた。SEM顕微鏡と同じ方法で試料を金属化した。コンピュータ上で布地の3次元モデルを作成し(図27),2次元の布地断面へとデジタル上で切断した(図28)。金属化したフィラメントを白い点で示す(白い領域の大きさは,フィラメント表面の金属量に影響される場合がある)。また,フィラメントが互いに接近している領域(高密度領域)も白い領域で表してもよい。ここでは,階層A及びC,並びに内側の階層Bが非常によく視認できる。
【0182】
上記3つの方法全てで,試料中に階層構造が明確に形成されていることが分かった。また,布地試料の異なる部分での異なる様子から,内側階層Bは1つの布地表面の近傍,又は中央,又は別の布地表面の近傍に形成されている場合もあることも分かった。(特にSEM写真では)内側階層は必ずしも層/層境界で形成されていないことは明らかである。また,表に示した布地特性は試料の耐性と柔らかさとの良好な組み合わせを示している。
【0183】
実施例3~5‐進歩性
実施例3,4,及び5は実施例2とほぼ同じである。実施例3,4,及び5は,坪量とフィラメントの太さが異なっている(フィラメント敷設前の設定が異なるため)。接着プロセスの設定も実施例2と同じであった。階層構造は良好に視認できた(図に示す布地断面図)。布地特性を表に示す。
【0184】
【0185】
実施例6‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの40重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの60重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0186】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層ではそれぞれの並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。一方の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,及び白色着色剤TiO)を含み,第2の並列部はポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0187】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり120kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0188】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで124℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで128℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却ユニットを配置した。
【0189】
得られた不織布は25gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0190】
実施例7‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの40重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの60重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0191】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの75重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの25重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0192】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり220kg/時間であり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/時間であった。
【0193】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで117℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで123℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却ユニットを配置した。
【0194】
得られた不織布は55gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0195】
実施例8‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの40重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの60重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0196】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0197】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり120kg/時間であり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/時間であった。
【0198】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで125℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで129℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却ユニットを配置した。
【0199】
得られた不織布は25gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0200】
実施例9‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの50重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0201】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0202】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり160kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0203】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで124℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで129℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却ユニットを配置した。
【0204】
得られた不織布は22gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0205】
実施例10‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの50重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0206】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0207】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり200kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0208】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで124℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで131℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定したと共に,MDにおいて圧密ユニットの隣に冷却ユニットを配置した。
【0209】
得られた不織布は65gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0210】
【0211】
実施例9及び10は引張強度及び接着強度が低いため,多くの用途で接着が弱いと見なす場合もあることに留意されたい。しかし,この場合でさえ,外側布地表面で耐性の高い階層構造が形成される。
【0212】
上記の多層の例では,eC/SとS/Sとのフィラメントの組み合わせを使用しているが,この組み合わせが利点をもたらす可能性があるとしても,この組み合わせは本発明にとって重要ではないことに留意されたい。以下の実施例11は,両層がeC/S断面を有するフィラメントから形成されている2層布地を示している。
【0213】
実施例11‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの60重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの40重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0214】
第2ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では芯はフィラメントの50重量%を形成していた。芯はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG475FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0215】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり120kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0216】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで124℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで129℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却ユニットを配置した。
【0217】
得られた不織布は25gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0218】
【0219】
実施例12‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの50重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0220】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0221】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり160kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0222】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで120℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで128℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して24℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却領域を配置した。
【0223】
得られた不織布は35gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0224】
実施例13‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの40重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの60重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0225】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0226】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり120kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0227】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで123℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで128℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して19℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却領域を配置した。
【0228】
得られた不織布は25gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0229】
実施例14‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの50重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0230】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0231】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり140kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0232】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで124℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで129℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して21℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却領域を配置した。
【0233】
得られた不織布は20gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0234】
実施例15‐進歩性
第1ビームは偏心芯/鞘構造を有するフィラメントの第1層を製造し,この第1層内では芯はフィラメントの50重量%を形成し,ポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,鞘はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6850,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0235】
第2ビームは並列構造を有するフィラメントの第2層を製造し,この第2層では第1の並列部はフィラメントの50重量%を形成していた。第1の並列部はポリプロピレンブレンド(Exxonmobil社製3155タイプ,Borealis社製HG712FBタイプ,白色着色剤TiO,及びエルカミド)を含み,第2の並列部はフィラメントの50重量%を形成し,ポリエチレン(Aspun6834,Dow Chemicals社製)を含んでいた。
【0236】
第1ビームの処理量は,第1ビームの幅1メートル当たり140kg/hであり,第2ビームの処理量は,第2ビームの幅1メートル当たり240kg/hであった。
【0237】
エアスルー接着ユニットは,第1及び第2ドラムで124℃に,第3ドラム及び大部分の第4ドラムで129℃に設定し,第4ドラムの残りの部分(ドラムの30°の接触面に相当する残りの部分)は周囲空気を使用して18℃の温度に設定すると共に,MDにおいて圧密ユニットの後方に冷却領域を配置した。
【0238】
得られた不織布は18gsmであり,階層構造がよく視認できた。
【0239】
【0240】
I.試験方法
不織布の「坪量」は,欧州規格(EN ISO)9073‐1:1989に準拠した試験方法(Worldwide Strategic Partners(WSP)130.1の方法に対応)を用いて測定する。測定には10層の不織布を使用する。試料寸法は10×10cm2である。
【0241】
不織布の「引張強度」及び「伸長率」は,WSP110.4.R4 (12)規格に準拠した試験方法を用いて測定する。
【0242】
不織布の「厚さ」又は「測定した高さ」は,欧州規格であるEN ISO9073‐2:1995(WSP120.6の方法に対応)に従った試験測定方法により測定し,以下の方式で修正する:
1.材料は,高い変形力を受けることなく,又は1日以上圧力の影響を受けることなく(例えば,製造装置のローラーによる圧力),製造から取り出した試料を使用して測定することになっているが,それ以外では,何らかの表面上に少なくとも24時間自由に放置しなければならない。
2.測定機の上部アームの総重量は,追加のバラストを含めて130gである。
【0243】
不織布の「嵩」,「嵩高さ」,又は「嵩密度」はkg/m3で表し,g/m2単位の「坪量」をmm単位の「厚さ」で除算することにより計算する。
【0244】
不織布の「坪量に対する厚さ比」はdm3/kg又はl(リットル)/kgで表し,mm単位の「厚さ」×1000をg/m2単位の「坪量」で除算して計算する。
【0245】
不織布の「剛性」は「ハンドルオメーター(HOM)」測定値で表し,国際規格WSP90.3に準拠して判定する。測定値について特段の記述がない限り,試料の寸法は100×100mmである。HOMはMD方向とCD方向で別々に測定する。MD又はCD方向が指定されていない限り,これら2つの値の算術平均を取る。
【0246】
本明細書における嵩高さの用語「再生率」又は「復元率」とは,作用負荷を開放した後の布地の厚さとこの布地の初期の厚さとの比率を指す。布地の厚さは,0.5kPaの圧力に相当する予備負荷力により規格EN ISO 9073‐2:1995に従って測定する。再生の測定手順は以下の工程から成る:
1.寸法10×10cmの布地試料を調製する;
2.1枚の布地の厚さを測定する;
3.0.5kPaの圧力に相当する予備負荷力により,重ね合わせた5枚の布地の厚さ(Ts)を測定する;
4.厚さ測定装置において,重ね合わせた5枚の布地へ5分間,負荷(2.5kPaの圧力)を掛ける;
5.装置から出し,5分間待機する;
6.0.5kPaの圧力に相当する予備負荷力により,重ね合わせた5枚の布地の厚さ(Tr)を測定する;
7.次式に従って再生率を計算する:
再生率=Tr/Ts(単位なし)
Ts=新規試料の厚さ
Tr=再生試料の厚さ
【0247】
本明細書における用語「圧縮性」とは,「柔軟性」の測定時に定義した負荷の影響により不織布が圧縮されるミリメートル単位の距離を指す。圧縮性は反発力(単位なし)×厚さ(mm)の積としても計算できる。不織布の「弾性」又は「反発力」は,規格EN ISO 964‐1に従った試験方法を用いて測定し,以下の方式で修正する:
1.1枚の布地層の厚さを測定する;
2.数枚の布地試料を調製し,重ね合わせた後の合計厚さが少なくとも4mm,理想的には5mmになるようにする。重ね合わせた布地群は少なくとも1枚の布地を含む;
3.これらの重ねた布地試料の厚さを測定する;
4.この積層した布地試料群に5mm/minの負荷速度で5Nの力を作用させる;
5.クランプ要素が移動した距離を測定する;
6.下記式に従って反発力を計算する:
R(単位なし)=T1(mm)/T0(mm)
又は,
R(%)=T1(mm)/T0(mm)×100%
T1=5Nの負荷におけるクランプ要素の移動距離[mm]=積層した布地の圧縮程度
T0=厚さ(予備負荷力1.06Nを掛ける規格EN ISO 9073‐2:1995に準拠)[mm]。
【0248】
「マーチンデール平均耐摩耗性等級試験」又は「マーチンデール」
図38は,マーチンデール平均耐摩耗性等級試験用装置の斜視図である。図39は,Procter & Gamble社出願の米国公開特許出願第20200170853A1に記載されている,本明細書のマーチンデール平均耐摩耗性等級試験における毛羽立ち評価用等級指標である。
【0249】
マーチンデール摩耗試験機により不織布のマーチンデール平均耐摩耗性等級を測定する。試験は乾燥状態で行う。
‐ 不織布試料を温度23±2℃,相対湿度50±2%で24時間調節する。
‐ 各不織布試料から,直径162mm(6.375インチ)の円形試料を10枚切り出す。基準フェルトを1枚,直径140mmの円形に切り出す。
‐ 初めに,切り出したフェルト,次に切り出した不織布を置き,マーチンデール摩耗性試験台の各位置に各試料を固定する。次に,不織布試料にシワが寄らないようにクランプリングを固定する。
‐ 研磨器ホルダーを組み立てる。研磨器は,米国食品医薬品局(FDA)準拠の直径38mm,厚さ1/32インチのシリコンゴム(品番86045K21‐50A,McMaster-Carr社製)である。試料に9kPaの圧力が掛かるように,所望の分銅を研磨器ホルダーに置く。操作者ガイドでの指示通りに,研磨器がNW試料に接触するように,組み立てた研磨器ホルダーをモデル#864に設置する。
‐ 以下の条件でマーチンデール摩耗を行う:
・ モード:摩耗試験
・ 速度:47.5サイクル/分
・ サイクル:16サイクル
‐ 試験終了後,研磨した不織布を滑らかで光沢のない黒色の面に置き,図に示した指標で毛羽立ちのレベルを等級評価する。上方から欠陥の寸法及び数を,側方から欠陥の突兀の高さを判定するためにその両方を観察することにより,各試料を評価する。この等級指標に最も合致するものを基準として1~5の数字を割り当てる。次に,マーチンデール平均耐摩耗性等級を全試料の平均評価として計算し,10段階評価で最も近い等級で報告する。
【0250】
「層間剥離強度」又は「接着」は以下の方法で判定できる(図40及び41参照):
1) 長さが120mm(MD方向),幅が少なくとも30mmの試験片を切り出す。
2) 長さ145mmのテープの条片を2本切り出し,片側で各テープ条片の端の25mmを折る。試料を25.4mm幅のテープで補強し,7kgのハンドローラーで一方向に1回転がすようにして接着する。試料をテープに沿ってCDでの幅25mmになるように切断する。テープ条片の自由端を離す。
3) 引張強度試験機は以下:応力を掛ける運動方向と平行な同一平面上にクランプ面を持つ2つの顎:を特徴とする。この2つの顎は,試験全体で,滑ることなく,また試料を損傷することなく,試験片をその平面上に保持するように整列していなければならない。顎の4つの面には,滑りや試験片への損傷を防止するための柔らかいガスケットゴムの薄い条片で当て物をする必要がある。米国材料試験協会(ASTM)D76‐99に従い,Twing Albert社試験機,Instron社試験機,Zwick社試験機,又は同等品を,一定速度の横移動引張試験機に使用できる。
4) パラメータを以下のように設定する:
a)ゲージ長 ......................50mm
b)クロスヘッド速度 ..............305mm/min
c)予備引張長さ ..................10mm
d)測定長さ ......................152mm
e)試料走査周波数 .................50Hz
5) 上側のグリップに適切に配置しているテープの自由端をクランプすることにより試験片を試験機に設置する(図41)。テープの自由端を折り返して,下側のグリップで固定する。試験片の自由端をグリップの中で左右対称に整列させ,張力が均一に渡るようにする。必要に応じて負荷範囲を調整し,示度が全負荷範囲の30%~80%の間になるようにする。
6) 引張試験機を始動する。
7) 10個の試料を測定し,平均値を計算する。
8) 平均剥離力を0.01N刻みで報告する。
【0251】
「繊維断面のタイプ」は,繊維成形用ダイに定義されるプロセス条件から分かる。プロセス条件が不明な場合は,以下の推定法を利用できる:
布地試料を採取し,少なくとも20本の繊維の断面の写真を撮影する。断面は繊維の自由部分で測定し,変形が予想できる結合点や他の繊維との接触箇所では測定しない。各断面では,各成分について別々に,画像上で成分表面に印を付ける。平面物体の重心又は形状中心の決定に基づいて各成分について質量中心を決定し,その位置を,繊維断面の形状中心に中心[0;0]があるデカルト座標システムを用いて記録する。各繊維断面における各成分の質量中心の偏向(D)を下記式に従って計算する:
D=積(x×y)の絶対値,式中,x及びyは質量中心の座標である。数値x,yの一方が0であり,他方の数値に等しくない場合,その試料は評価から除外する。
【0252】
それぞれの成分について平均値及び標準偏差を計算する。
【0253】
総繊維断面に対する((平均偏向)+(標準偏差))の比が5%未満である場合,繊維は非捲縮であると考える。
【0254】
総繊維断面に対する((平均偏向)-(標準偏差))の比が10%未満の場合,繊維は非捲縮であると推測する。
【0255】
「フィラメント間結合密度」,「フィラメント密度」,「空洞の長さ及び高さ」,並びに「不織布の厚さに占める空洞の%」は,布地断面から判定できる。
【0256】
MDで少なくとも10枚の試料,及びCDで少なくとも10枚の試料を採取する。少なくとも50%の試料で階層構造が認められる場合に,布地は階層構造を有すると判断する。
【0257】
材料は,高い変形力を受けることなく,又は1日以上圧力の影響を受けることなく(例えば,製造装置のローラーによる圧力),製造から取り出した試料を使用して測定することになっているが,それ以外では,何らかの表面上に自由に敷設して少なくとも24時間放置しなければならない。
【0258】
断面は,いくつかの方法で作成し,分析できる:
布地断面の作成方法
1) 単純断面:
布地を適当な台の上に置き,鋭利なカミソリの刃で切断する。切り口は布地とほぼ同じ厚さであることを確認する(例えば,フィラメントが圧縮又は「切断接着」されていないこと)。
2) 樹脂断面:
布地試料を容器に入れ,液状樹脂を流し込んで凝固させる。樹脂は,液状では布地の全空隙体積を容易に満たし,固体状では布地ポリマーと容易に見分けられるようなものを選択する必要がある。
固体状樹脂の塊を半分にカットして布地試料の断面を作成する。
3) デジタル断面:
試料をスキャン(例えば断層撮影,マイクロCT)し,コンピュータ上でデジタル断面を作成する。
【0259】
試料断面分析方法:
1) SEM顕微鏡観察
a)必要に応じて,フィラメント試料を適当なホルダーに設置し(例えば図42A及び42Bを参照),分析する。
b)試料を金で金属化する(例えば,Au/Pd金属化装置SC 7640 Sputter Coaterを使用)。
c)電子顕微鏡(例えばTescan社製後方散乱電子(BSE)検出器を使用)を用い,30kVで,適切な倍率(30倍~1000倍)で試料を分析する。
2) 3次元断層撮影
a)必要に応じて,試料に造影物質の薄い層を塗布する。例えば,3次元X線断層撮影(Skyscan)を使用する場合,ポリオレフィンは十分に可視化しない。例えば,試料は金で金属化できる(例えば,Au/Pd金属化装置SC 7640 Sputter Coaterを使用)。
b)試料を分析チャンバに設置し,スキャンする。
3) 3次元μCT ― 「不織布の形状繊維統計数値を決定する方法」を参照。
【0260】
上記の方法及び分析(3次元μCTを除く)は,例えばTomas Bata in Zlin大学(チェコ共和国)の工学部で実施できる可能性がある。
【0261】
次いで,得られた断面写真を分析する:
1) 「フィラメント間結合密度」,「フィラメント密度」
a)布地断面を規則的なセグメントへと分割する。各セグメントは最大0.05mmの厚さを有する(例えば,0.45mm厚の布地を0.05mm厚の9つの区分に分割する)。
b)各セグメントの長さは少なくとも0.5mmであり,この長さは断面写真で視認できることが好ましい。
c)密度を設定する。
i)セグメントごとにフィラメント間結合の数を計算し,フィラメント間結合の密度(結合数/セグメント面積)として表す;又は
ii)各セグメントにおいてフィラメントが占める面積を計算し,フィラメント密度(フィラメントが占める面積/セグメント面積)として表す。
d)同一であるか非常に類似した密度を持つ互いに隣接するセグメント同士を接合して階層を形成してもよい。
e)階層A,B,場合によってはCに名称を付け,それらの平均値を計算する。
f)比率値を計算する。
2) 「空洞の長さ及び高さ」並びに「不織布の厚さ方向の空洞%」
a)上記で決定した階層構造を採用し,階層Bの領域を更に調べる。
b)空隙体積領域を強調表示する。
c)空洞に印を付ける(その領域が布地厚さ内で(布地のz方向)フィラメントの平均太さの3倍以上大きく,長さ(布地のMD×CD平面方向)がフィラメントの平均太さの5倍以上長い場合,その領域を空洞と見なす)
d)全空洞の面積を計算し,階層Bの面積に対する%で表す。
e)各空洞の高さ=布地厚さ方向を測定し,その長さ=布地のMD×CD平面方向を測定し,それらの最大値を用いてL:H比を計算する。
【0262】
「不織布の形状繊維統計数値を決定する方法」
以下では,不織布材料の試料を分析し,不織布材料の形状特性を特徴付けるためのソフトウェアをベースとする方法について説明する。この方法は,試料に含まれる個々の繊維を識別するための機械学習アプローチを利用し,次いで,材料の特徴付けに適した統計数値を得る目的でこれら繊維の形状分析を行う。結果には,繊維の配向分布及び密度分布が含まれる。この分析ワークフローはMath2Market社が開発し,デジタル材料実験室用ソフトウェアGeoDictの一部である。
【0263】
工程1:試料の3次元μCT画像の取得
初めに,μCTスキャナを使用して不織布試料をデジタル化することにより,3次元画像を得る。この3次元画像は均一なデカルト格子から成り,格子の各セル(体積要素:ボクセル)に,対応する位置にある試料のX線照射減衰値を記憶させる。孔空間は通常,減衰値が最も低く(グレースケールの値が最も低い),一方,材料相は高い減衰値を示し,減衰値は材料及びμCT装置の構成に依存している。
【0264】
工程2:孔空間から材料を分離するためのμCT画像画像の分割
更なる分析のために,グレースケール画像を,非局所的手段アプローチを用いたノイズフィルタリングに供する[1]。次いで,大津アルゴリズムにより導出したグローバル閾値を用い,画像を二値化する[2]。この2値化により,画像の各ボクセルを,孔空間又は繊維材料のどちらを含むかで分類する。グレー値が閾値を下回るボクセルは孔空間として分類する。それ以外のボクセルは全て繊維材料として分類する。ノイズフィルタリング及び閾値設定の両方の操作で,GeoDictソフトウェアのImportGeoモジュールを使用する。
【0265】
工程3:材料密度分布の分析
更に,Z方向の材料密度分布を電子計算する。各画像切断面(所与の深さ方向Z)において,材料密度を,白い材料のボクセル数を切断面のボクセル総数で除算した数値として電子計算する。この分析はGeoDictプログラムのMatDictモジュールを用いて行う。
【0266】
工程4:繊維中心線を識別するためのニューラルネットワークの使用
μCT画像において個々の繊維を識別する際の主な課題は,二値化後に繊維同士を接触点で空間分離させないことである。このことにより,アンダーセグメンテーションが発生し,複数の物体(繊維)が誤って1本の繊維として分類されることになる。
【0267】
繊維同士を分離するために,Math2Market社は,繊維の中心曲線を特定するアプローチを開発した。これらの中心線を,元の画像と同じ寸法の二値ボクセル画像に表示する。この画像では,繊維の中心から約1~2ボクセルの距離内にあるボクセルに印を付ける。
【0268】
この目的のために,ニューラルネットワークを利用した意味論的分割アプローチを利用した[3]。画像は,この画像上を移動するスライド式の3次元入力ウインドウを考慮して分析する。各入力ウインドウに対して,入力ウインドウの中心に小さな出力ウインドウを画定する。ニューラルネットワークは入力ウインドウの二値ボクセル値を分析し,出力ウインドウの各ボクセルを予測する。予測値により,出力ウインドウ内のボクセルが中心線の一部であるか否かを判定する。これら全ての出力ウインドウの結果を組み合わせることで,元の画像に含まれる材料の各ボクセルが分類された二値画像が得られる。この画像の変換は,Tensorflowソフトウェアライブラリを使用したGeoDictプログラム内のFiberFind-AIモジュールにより行う[4]。
【0269】
工程5:ニューラルネットワーク用の学習データの作成
前述の変換を行うためのニューラルネットワーク学習を目的として,Math2Market社は,GeoDictソフトウェアプログラムの確率的FiberGeo構造生成モジュールを利用し,不織布材料の人工3次元画像をいくつか作成した。このモジュールにより,一連の線セグメントとして繊維の分析的形状が描写される。同時に,このモジュールは繊維構造の二値画像を出力し,これを工程2の二値化の結果と比較する。
【0270】
分析描写内で繊維直径を約2~3ボクセル変更することで,人工繊維構造に対応する中心線の画像が同様に得られる。
【0271】
次いで,これらの画像のペア(繊維と中心線)を,繊維画像を中心線画像に変換するニューラルネットワーク学習のために使用する。このネットワークは,繊維を中心曲線へと「収縮させる」ことを効果的に学習する。
【0272】
工程6:繊維を形状描写するための,繊維中心線のトレース
繊維を繊維中心線へと収縮させた後,中心線同士は接触していないと想定する。その後,中心線画像の接続した成分を分析することにより個々の中心線を分離する。この際,各成分が1本の繊維の中心線に対応していると想定する。接続した成分は材料ボクセルのサブセットであると定義し,全ボクセルは色が同じであり,互いに接触している同じ色のボクセルを加えることにより拡大することはできない。
【0273】
各中心線では,ボクセルのセットを通る曲線をトレースし,一連の接続された線分(ポリライン)の形態で,対応する繊維の形状を描写する。この工程もGeoDictプログラムのFiberFind-AIの一部である。
【0274】
結果として布地のデジタル3次元モデルが得られ,階層構造を含む布地の例は図44~46に見られる。
【0275】
工程7:試料のコンピュータ分析
「フィラメント間結合密度」,「フィラメント密度」,「空洞の長さ及び高さ」,並びに「不織布の厚さに占める空洞%」を求めるために,各断面のフィラメント線分を平面に投影し,サブセグメント(各厚さは最大0.05mm)に分割して分析した。値をセグメント間で比較し,可能であれば,同一又は類似の結果を持つ互いに隣接したセグメントのいくつかを同じ階層へと接合してもよい。階層A,B,場合によってはCに名称を付け,各階層の値をセグメントデータから平均化する。
【0276】
[1] Buades,Antoni,Bartomeu Coll, 及びJ-M.Morel.「A non-local algorithm for image denoising」,Computer Vision and Pattern Recognition,2005年,CVPR 2005,IEEE Computer Society Conference,第2巻,IEEE,2005年
[2] 大津信行 ,「グレーレベルヒストグラムからのしきい値選択方法」,IEEE transactions on systems, man, and cybernetics 9.1(1979年): pp.62~66
[3] Noh,Hyeonwoo,Seunghoon Hong,及びBohyung Han,「Learning deconvolution network for semantic segmentation」,コンピュータビジョンについてのIEEE国際会議の会報,2015年
[4] Martin Abadi,Ashish Agarwal,Paul Barham,Eugene Brevdo,Zhifeng Chen,Craig Citro,Greg S.Corrado,Andy Davis,Jeffrey Dean,Matthieu Devin,Sanjay Ghemawat,Ian Goodfellow,Andrew Harp,Geoffrey Irving,Michael Isard,Rafal Jozefowicz,Yangqing Jia,Lukasz Kaiser,Manjunath Kudlur,Josh Levenberg,Dan Mane,Mike Schuster,Rajat Monga,Sherry Moore,Derek Murray,Chris Olah,Jonathon Shlens,Benoit Steiner,Ilya Sutskever,Kunal Talwar,Paul Tucker,Vincent Vanhoucke,Vijay Vasudevan,Fernanda Viegas,Oriol Vinyals,Pete Warden,Martin Wattenberg,Martin Wicke,Yuan Yu,及びXiaoqiang Zheng,「TensorFlow:Large-scale machine learning on heterogeneous systems」,2015年,ソフトウェアは,ウェブサイト:tensorflow.orgでアクセス可能。
【0277】
産業上の利用可能性
本発明は,柔らかさ/耐性のバランスがとれた嵩高な不織布を必要とするとき ― 例えば,衛生産業製造業において吸収性衛生製品(例えば,ベビー用おむつ,失禁製品,女性衛生製品,交換パッド等)の様々な構成要素として,又はヘルスケア分野において,例えば,創傷スポンジ及び/又は保護衣,外科用カバーシート,下敷き,及び他のバリア材料製品の一部として,利用可能である。更に,工業用途,例えば,保護衣の一部,ろ過,断熱,包装,吸音,履物産業,自動車,家具等での使用も可能である。本発明は特に,布地の嵩高性,圧縮性,及び復元性を向上させる要件と,エンドレスな繊維の要件とを組み合わせた用途において,有利に使用可能である。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42A
図42B
図43A
図43B
図43C
図44
図45
図46
【国際調査報告】