(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】移動可能なバンドを備えた腕時計
(51)【国際特許分類】
G04B 37/16 20060101AFI20231101BHJP
G04B 19/28 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
G04B37/16 Z
G04B19/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526300
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2021069045
(87)【国際公開番号】W WO2022089794
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506059942
【氏名又は名称】カルティエ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モイーズ,ロメイン
(72)【発明者】
【氏名】キルピンスキ,マチュラン
(57)【要約】
本発明は、腕時計(100)であって、ベゼル(2)、クリスタル(3)、及びベースプレート(4)を含み、ムーブメント(60)を収容するように配置された容積を画定する時計ケース(1)と、時計ケース内に貫通装着され、当該容積の内部に部分的に位置し、かつベゼル(2)内を摺動するように移動可能に装着されたバンド(30)と、を備え、バンド(30)が、バンド(30)の第1の端部に連結された第1の取り付け部分(10)と、バンド(30)の第2の端部に連結され第2の取り付け部分(20)と、を備え、第1の取り付け部分(10)及び第2の取り付け部分(20)が、ベゼル(2)に対して移動可能に装着されており、かつ当該容積の内部に位置し、バンド(30)が、当該容積内に位置する連結部分(40)を備え、当該連結部分(40)が、第1の取り付け部分(10)及び第2の取り付け部分(20)に取り付けられている、腕時計(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計(100)であって、
ベゼル(2)、クリスタル(3)、及びベースプレート(4)を含み、ムーブメント(60)を収容するように配置された容積を画定する時計ケース(1)と、
前記時計ケース内に貫通装着され、前記容積の内部に部分的に位置し、かつ前記ベゼル(2)内を摺動するように移動可能に装着されたバンド(30)と、を備え、
前記バンド(30)が、前記バンド(30)の第1の端部に連結された第1の取り付け部分(10)と、前記バンド(30)の第2の端部に連結された第2の取り付け部分(20)と、を備え、
前記第1の取り付け部分(10)及び前記第2の取り付け部分(20)が、前記ベゼル(2)に対して移動可能に装着されており、
前記第1の取り付け部分(10)及び前記第2の取り付け部分(20)が、前記容積の内部に配置されており、
前記バンド(30)が、前記容積内に位置する連結部分(40)を備え、前記連結部分(40)は、一方では前記第1の取り付け部分(10)に取り付けられ、他方では前記第2の取り付け部分(20)に取り付けられている、腕時計(100)。
【請求項2】
前記ベゼル(2)が、前記バンド(30)の摺動を可能にするように配置され、かつ前記ベゼル(2)の両側に位置する2つの貫通スロットを備える、請求項1に記載の腕時計(100)。
【請求項3】
前記ベゼル(2)が、前記貫通スロットの各々の周りに少なくとも1つの当接面を備え、前記連結部分(40)が、前記当接面に対して当接するように配置された余剰厚さ、拡大部、及び/又は突起を画定する、請求項2に記載の腕時計(100)。
【請求項4】
前記ベゼルが、前記貫通スロットの各々の周りに少なくとも1つの当接面を備え、前記第1の取り付け部分(10)及び前記第2の取り付け部分(20)の各々が、前記当接面に対して当接するように配置された余剰厚さ、拡大部、及び/又は突起を備える、請求項1又は請求項2に記載の腕時計(100)。
【請求項5】
前記連結部分(40)が、前記第1の取り付け部分(10)と前記第2の取り付け部分(20)との間で少なくとも1つの自由度を可能にするように配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項6】
前記第1の取り付け部分(10)及び前記第2の取り付け部分(20)が各々、前記ベゼル(2)に対して並進移動可能及び/又は回転移動可能に装着されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項7】
前記第1の取り付け部分(10)を通過し、かつ前記第2の取り付け部分(20)を通過する軸(A)も備え、前記第1の取り付け部分(10)及び前記第2の取り付け部分(20)が、少なくともこの軸(A)に沿って並進移動可能であるように配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項8】
前記連結部分(40)が、前記バンド(30)に取り付けられており、好ましくは少なくとも1つの可撓性及び/又は弾性アームを備える要素である、請求項1~7のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項9】
前記連結部分(40)が、前記バンド(30)を伴う単一部品で形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項10】
前記第1の取り付け部分(10)及び前記第2の取り付け部分(20)が、前記バンド(30)に取り付けられた要素である、請求項1~8のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項11】
前記バンド(30)、前記第1の取り付け部分(10)、前記第2の取り付け部分(20)、及び前記連結部分(40)が、単一部品で形成されており、好ましくは前記ムーブメント(60)に重ね合わせられるように配置された開口部を画定するアイレットを形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項12】
前記ベゼル(2)が、変形可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【請求項13】
前記時計ムーブメントを収めるように、かつ前記バンド(30)又は前記連結部分(40)によって少なくとも部分的に支持されるように配置された容器(60)を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の腕時計(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、時計製造の分野に関するものであり、より具体的には、時計ケースの分野に関するものである。
【0002】
現在、時計ケースは、バンドの一方の端部と一体で、ラグに提供された孔に係合されるばね棒によってバンドに連結される。これらのラグは、時計ケースと一体であり、概して、ベゼルにおいてケースに適用されるか、又はケースがプラスチックか、若しくは材料のブロックから押し出し加工若しくは機械加工が可能な材料で作製されている場合は、ケースと一体的に成形される。バンドの取り付けを可能にする、一対の又は中央にある、多数のラグ配置が存在する。例えば、欧州特許第0703512号は、ベゼルの両側に位置する二対のラグを一体化したベゼルを備える時計ケースを記載している。
【0003】
本出願人は、可撓性外側シェルを有する時計ケースの新しい概念を提案することを思いついた。この概念は、「Deformable Watch Case」と題する、本出願と同日に出願された特許出願の主題であり、その内容は、参照により本出願に組み込まれる。かかる時計ケースの生産は、バンドの配置及びそのケースへの連結に関して問題をもたらす。実際には、後者の外面は、固定された基線を画定しておらず、更には、バンドが引き起こし得る機械的応力、特に張力に耐えることを可能にする機械的構造を有しておらず、バンドのケース自体への取り付けにはあまり適していない。更に、フレームの剛性要素にラグを適用することは、結果として、バンドの連結点がケースの外周から遠く離れることになる。これは、特に人間工学及び快適さに関する他の問題をもたらす。
【0004】
本発明の目的は、新しいタイプの時計ケースにバンドを連結することを可能にする解決策を提案することである。加えて、この解決策はまた、より多くの従来の時計ケース、すなわち剛性シェルに適合させることもでき、その場合、先行技術の時計ケースにはない、かなりの快適さ及び適合性を有する。
【0005】
この目的のために、本発明の第1の態様は、腕時計であって、
・ベゼル、クリスタル、及びベースプレートを含み、ムーブメントがその内部に配置される容積を画定する時計ケースと、
・時計ケース内に貫通装着され、当該容積の内部に部分的に位置し、ベゼルの中で摺動するように移動可能にされた、バンドと、を備える。
【0006】
このタイプの腕時計は、例えば、バンドに沿って時計ケースを摺動させることによって、異なるタイプの手首に、及び異なる腕時計の着用方法に適合させることができる。また、時計ケースの突出部とそのユーザの手首とのあらゆる接触を回避することによって、快適さを高めることも可能にする。最後に、このタイプのバンド装着は、バンドと時計ケースとの間に外部ばね棒などの取り付け要素を必要としないので、特に堅牢である。
【0007】
バンドは、当該容積内に位置する連結部分を備える。連結部分は、手首を取り囲むように適合されたバンドの主要部分と異なり得、また、時計ケースのバンドへの装着、及び/又はバンドに対する時計ケースの動きを容易にすることができる。例えば、連結部分は、バンドの主要部分に対する当接手段及び/又は拡大部若しくは余剰厚さを備えることができる。この主要部分は、単一のストランド又は2つのストランドからなることができる。
【0008】
有利には、ベゼルは、バンドの摺動を可能にするように配置され、かつ時計ケースの両側、すなわちベゼルの両側に位置する、2つの貫通スロットを備える。これらの貫通スロットは、好ましくは、平らに置いたときに、互いに平行であり、及び/又はバンドの長手方向軸に垂直である。
【0009】
有利には、ベゼルは、当該貫通スロットの各々の周りに少なくとも1つの当接面を備え、連結部分は、当該当接面に当接するように配置された余剰厚さ及び/又は拡大部を備える。このタイプの一実施形態は、単にバンドに対する時計ケースの動きを制限することを可能にするだけである。
【0010】
バンドは、バンドの第1の端部に連結された第1の取り付け部分と、バンドの第2の端部に連結された第2の取り付け部分と、を備え、第1及び第2の部分は、ベゼルに対して移動可能に装着され、第1及び第2の取り付け部分は、当該容積の内部に位置し、連結部分は、一方が第1の取り付け部分に取り付けられ、他方が第2の取り付け部分に取り付けられる。
【0011】
好ましくは、第1の取り付け部分及び第2の取り付け部分は、バンドの連結部分及び/又は主要部分と、例えば、形状、寸法、又は材料が異なる。
【0012】
有利には、ベゼルは、当該貫通スロットの各々の周りに少なくとも1つの当接面を備え、第1及び第2の取り付け部分の各々は、当該当接面に当接するように配置された余剰厚さ、拡大部、及び/又は突起を備えるか、又は画定する。その場合、バンドは、主要部分と、2つの取り付け部分と、1つ以上のアームなどの1つ以上の要素から構成された連結部分と、を備えることができる。このタイプの一実施形態は、単にバンドに対する時計ケースの動きを制限することを可能にするだけである。
【0013】
有利には、連結部分は、第1の取り付け部分と第2の取り付け部分との間で少なくとも1つの自由度を可能にするように配置される。好ましくは、連結部分は、2つの自由度又は3つの自由度を可能にする。したがって、第1の取り付け部分は、第2の取り付け部分に対して移動可能とすることができ、これは、特に、手首の突出骨に印加され得る力又は摩擦を制限し、それにより、更に高い快適さ及び適合性を有する腕時計を提供することを可能にすることができる。
【0014】
有利には、第1の取り付け部分及び第2の取り付け部分の各々は、ベゼルに対して並進移動可能に、かつ回転移動可能に装着される。このタイプの腕時計は、あらゆるタイプの手首の形状に対する適合による快適な着用、並びに第1及び第2の取り付け部分の可動性によるこの手首の動きを可能にする。具体的には、手首又は手首の骨に対するラグの摩擦及び/又は力を制限又は相殺することができる。
【0015】
有利には、本発明による腕時計は、第1の取り付け部分を通過し、かつ第2の取り付け部分を通過する軸を備え、第1の取り付け部分及び第2の取り付け部分は、少なくともこの軸に沿って並進移動可能であるように配置される。好ましくは、軸は、第1の取り付け部分及び第2の取り付け部分の中心を通過する。この軸は、平らに置いたときに、バンドの長手方向軸と平行であり得るか、又は一致し得る。例えば、第1の取り付け部分及び/又は第2の取り付け部分はまた、この長手方向軸に垂直な別の軸に沿って並進移動可能でもあり得る。
【0016】
有利には、連結部分は、バンドに取り付けられた、好ましくは少なくとも1つの可撓性及び/又は弾性アームを備える要素である。この取り付けられた連結部分は、任意のタイプの時計ケースに適合された連結部分の幅広い選択範囲を可能にする。例えば、連結部分は、ケーブル若しくはケーブルの一部分及び/又は可撓性若しくは弾性アームを備えることができる。このタイプの連結部分は、ベゼルに対する第1及び第2の取り付け部分のより大きい動きの自由度を可能にし、それにより、異なる手首の形態に対する適合を可能にすることができる。
【0017】
代替的に、連結部分は、バンドを伴う単一部品で形成され、これは、より単純かつより堅牢なバンドを提供することを可能にする。例えば、連結部分は、成形又はオーバーモールドによってバンドとともに製造することができる。最後に、バンドの連結部分は、同じ形状又は異なる形状の1つの要素、2つの要素、又はより多くの要素を備えることができる。
【0018】
有利には、第1及び第2の取り付け部分は、バンドに取り付けられた要素である。その場合、連結部分は、第1の取り付け部分を第2の取り付け部分に取り付ける、又は連結するように配置される。したがって、この実施形態は、バンドの、特にその材料の選択範囲の幅広い柔軟性を残す。2つの要素から構成された連結部分、第1の取り付け部分、及び第2の取り付け部分は、開口部を画定するアイレットを形成することができる。
【0019】
代替的に、バンド、第1の取り付け部分、第2の取り付け部分、及び連結部分は、単一の部品に形成される。単一部品として形成された第1の取り付け部分、第2の取り付け部分、及び2つの要素から構成された連結部分は、好ましくはムーブメントに重ね合わせられるように配置された、開口部を画定するアイレットを形成することができる。加えて、アイレットは、当接面と当接するように配置された拡大部を画定することができる。
【0020】
有利には、ベゼルは、変形可能であるか、又は可撓性である。したがって、第1及び第2の取り付け部分並びに連結部分によって形成された組立体がベゼルに対して移動することができるだけでなく、ベゼル自体が変形して、その着用者に最大限の快適さ及び適合性を提供することもできる。上述したようなケースに取り付けられていないバンドを装着するためのシステムは、ケースの変形を制限しないか、又はわずかに制限する。ベゼル又はケースに対するバンドの取り付けは、実際には、後者の変形の可撓性に悪影響を及ぼす。
【0021】
有利には、時計ケースは、時計ムーブメントを収めるように配置され、容器とベースプレートとの間に連結部分が配置される容器を備える。ベゼル、クリスタル、及びベースプレートによって画定された容積が、特に、干渉することなく連結部分及びムーブメントを収容するように適合させることができることに留意されたい。
【0022】
有利には、容器は、連結部分によって少なくとも部分的に支持するように配置され、これは、腕時計の快適さ、並びにその可視性を更に高めることを可能にすることができる。
【0023】
別の特許請求されない本発明の態様は、腕時計であって、
・ムーブメントが配置される容積を画定するベゼル、クリスタル、及びベースプレートを含む時計ケースと、
・時計ケース内に貫通装着され、当該容積の内部に部分的に位置し、かつベゼル内を摺動するように移動可能に装着されたバンドと、を備える、腕時計に関するものである。
【0024】
加えて、このタイプの腕時計は、以前に本発明の第1の態様を参照しながら説明した1つ以上の追加的な特徴を備えることができる。
【0025】
他の本発明の特性及び利点は、決して限定するものではない例として与えられ、添付図面によって例示される本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態による腕時計ケースの簡略化された概略図を示す。
【
図2】本発明の第2の実施形態による腕時計ケースの簡略化された概略図を示す。
【
図3】本発明の第3の実施形態による腕時計ケースの簡略化された概略図を示す。
【
図4】本発明の第4の実施態様による、及び
図2による時計ケースを備える腕時計の斜視図を示す。
【
図5】本発明の第5の実施形態による腕時計の前額面に沿った斜視断面図を示す。
【
図6】
図5の第5の実施形態による腕時計の矢状面に沿った断面図を示す。
【
図7】本発明の第6の実施形態による腕時計のプロファイル断面図を示す。
【0027】
上述したように、本発明は、特に可撓性シェルを備える時計ケースに適しているが、剛性の時計ケースに適合させることができる。以下で理解されるように、本発明は、容器によって任意のタイプの機械的、電気機械的、又は完全に電子的なムーブメントを収納することを可能にするが、満たされなければならない密封基準に応じて、ケースリングを介して装着することを想到することもできる。
【0028】
本発明の1つの態様によれば、バンドは、時計ケースに対して移動可能であり、及び/又は摺動し、時計ケースを通して導入される連結部分と、手首を取り囲むように配置された主要部分と、を備える。本発明の別の態様では、バンドの取り付け部分は、移動可能とすること、及び/又は連結部分によって取り付けることができ、少なくとも時計ケースのベゼルに対する、及び/又は他方に対する一方のそれらの可動性を保つ。
【0029】
図1は、時計ケース1を通過するバンド30を備え、また、連結部分によって連結され、かつベゼル及び時計ケースに対して移動可能に装着された取り付け部分を備える、時計ケース1の第1の実施形態を示す。
【0030】
時計ケース1は、時計ケース1の内部を示すように切り欠きを伴う透視図で示されている。時計ケース1は、ケース1とも呼ばれ、
図1に示されないクリスタル及びベースプレートによって閉じられたベゼル2を備える。クリスタル及びベースプレートは、慣習的にケース1の対向面に設置され、クリスタルは、ケース1の上面に装着され、ベースプレートは、ケース1の下面に装着される。
【0031】
少なくとも1つの第1のラグ及び、例えば、
図1の2つの第1のラグ11を備える第1の取り付け部分10は、ベゼル2、クリスタル、及びベースプレートによって画定される容積内に位置する。加えて、第2の取り付け部分20もまた、容積の内部に位置し、少なくとも1つの第2のラグ、例えば、2つの第2のラグ21を備える。
【0032】
各取り付け部分10、20は、バンド30の一方の端部の取り付けを可能にするように配置される。例えば、当業者に知られているように、ピンは、バンドの各端部の中へ通して、第1のラグ又は第2のラグに係合させることができる。代替的に、バンド30を第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20に取り付けるための任意の他のタイプのシステムが考えられ得る。ベゼル2は、互いに対向して、ベゼル2の内部への、すなわち容積の内部への、バンド30の端部の導入を可能にするように配置された貫通スロットを備えることができる。
【0033】
第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20は、容積の内部に移動可能に装着され、すなわち、それらは、少なくとも1つの自由度に沿ってベゼル2に対して移動することができる。例えば、バンドは、(
図1の軸yに沿って)第1及び第2の取り付け部分を通過する、又は第1及び第2のラグを通過する軸Aを画定し、第1の取り付け部分10及び/又は第2の取り付け部分20は、例えば、並進運動によって、少なくともこの軸Aに沿って移動させることができる。
【0034】
好ましくは、取り付け部分10、20は、ベゼル2に対する他の自由度、例えば、(
図1の軸zに沿った)高さ及び/又は(
図1の軸×に沿った)横方向の変位を有することができる。加えて、取り付け部分10、20は、ケース1に対して、並びに互いに対して枢軸点Bの周りを回転移動可能とすることができる。
【0035】
第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20は、取り付けられた連結部分によって、好ましくは、
図1の実施形態の2つの要素を備える連結部分によって、互いに連結される。
図1の連結部分40は、2つの可撓性アーム、例えば、ケーブル又はチェーン部分を備える。連結部分40、第1の取り付け部分10、及び第2の取り付け部分は、時計ムーブメント(図示せず)を収容することができる開口部35を画定する。
【0036】
連結部分の要素は、任意の好適な材料、例えば、チタン、具体的にはグレード5チタンで作製され、これは、特に外側シェルが可撓性である時計ケースの場合にケース1及びベゼル2に損傷を与えないために、張力がバンド30に印加されたときに組立体の伸長を制限することを可能にすることができる。
【0037】
代替的に、又は組み合わせて、連結部分の要素は、弾性とすることができ、すなわち、当該要素は、弾性材料で作製すること、又はばね(図示せず)のような弾性部分を備えることができる。連結部分40の要素は、例えば、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20の本体のループ又は足場によって、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20の各々に恒久的又は取り外し可能に取り付けることができる。
【0038】
バンド30の連結部分40のため、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20は、互いに関節接合され、すなわち、それらは、少なくとも1つの自由度で一方が他方に連結される。したがって、第1の取り付け部分10の動きは、第2の取り付け部分20に対して起こり得るが、この動きは、連結部分40の特徴、例えば、その長さ、その可撓性、又はその弾性によって制限される。
【0039】
したがって、(
図1の軸zに沿った)第1及び第2の取り付け部分の伸長、枢動、又は高さオフセットの動きを許容することができるが、連結部分40によって、例えば、2、3ミリメートル~1cmの長さに制限することができる。
【0040】
第1及び第2の取り付け部分の動きはまた、当接部分によって制限することもできる。例えば、ベゼル2が十分に剛性である場合、その内面は、ベゼル2の外部に向かう第1の取り付け部分10及び/又は第2の取り付け部分20の動きを制限するように配置された当接部分を備えることができる。当接部分は、バンドの貫通スロット(図示せず)に近接して、又はその周りに位置し得る。
【0041】
図2は、連結部分40が、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20の各々で摺動するように装着された単一のケーブル又は可撓性アームを備えることを除いて、
図1による第1の実施形態と同一の本発明の別の実施形態を示す。したがって、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20の相対的な動きは、例えば、連結部分40の長さに、容易に制限することができるが、それでも、いくつかの自由度における動きを可能にする。加えて、連結部分40は、開口部35を取り囲むか、又は境界付ける。
【0042】
任意選択的に、連結部分40は、連結部分40が摺動するように装着することができる1つ以上の足場50によって、ベゼル又はベースプレートに取り付けることができる。代替として、又は組み合わせて、足場は、ワインダ(図示せず)の形態とすることができ、バンドへの負荷が生じて、ベゼル2の外部に向かう第1の取り付け部分10の及び/又は第2の取り付け部分20の動きをもたらす場合に、連結部分40の長さを増加させることを可能にする。ワインダは、負荷がなくなったときに連結部分40の長さを減少させることを可能にする、戻り手段を備えることができる。このタイプの連結部分は、単一のループの形態の、すなわち単一のストランドを有するバンドとともに使用することができる。
【0043】
図3は、ここでは連結部分40が剛性アームであることを除いて、2つの前述の実施形態と同一の第3の実施形態を示す。例えば、連結部分40は、第1及び第2の取り付け部分にピボット又はボールジョイントタイプの機械的接続によって取り付けることができる単一の剛性セグメントから形成することができる。
図3では、連結部分40は、ピボット又はボールジョイント43によって連結された、異なる長さを有する2つの剛性セグメント41及び42とともに示されている。代替的に、剛性セグメントは、同じ長さを有することができ、及び/又は3つ若しくはそれ以上の剛性セグメントなどの2つを超えるセグメントを想到することができる。
【0044】
加えて、剛性アームは、入れ子式とすること、すなわち一方が他方の中へ摺動する2つのセグメントから作製することができ、又は少なくとも1つ、好ましくは両方が入れ子式である互いに関節接合された2つのセグメントを備えることができる。剛性アーム又は連結部分のセグメントは、ベゼル2内の嵩を低減するように、平坦な断面、好ましくは薄い厚さを有することができる。
【0045】
図4は、本発明によるケース1の第4の実施態様、並びに腕時計100の立断面図を示す。
【0046】
腕時計100は、ベゼル2、クリスタル3、及びベースプレート4、並びに時計ムーブメントを収める容器60を備える第1の実施形態によるケース1を備える。この第4の実施態様は、上で述べたように、可撓性シェルを備える時計ケースに適用される。ベゼル2は、可撓性の、すなわち変形可能な外壁2Aを備えるか、又はそれで作製される。したがって、バンドは、快適さを最高にするために、ユーザの手首の形状をとることができる。
【0047】
例えば、壁2Aは、好ましくは金属の編地などの関節接合された要素のネットワーク、又は一組のメッシュで作製することができ、より密に又は疎に交差させることで、グリッド、格子、又はレチクルを形成する。代替的に、壁2Aは、エラストマーなどの可撓性材料で作製することができる。好ましくは、ベースプレートは、剛性を維持することができる。
【0048】
この可撓性壁2Aは、例えば、
図1の第1の実施形態に従って連結部分40によって連結された取り付け部分10、20によって、当該取り付け部分自体を全ての手首形状に適合させることによって、及び元のケース及びベゼル形状を許容することによって提供される快適さ及び適合性に貢献することを可能にすることができる。
【0049】
腕時計100は、取り付け部分10、20によってケース2に取り付けられ、スロット2Bによって時計ケース1の中へ導入される、バンド30を備えることができる。バンド30は、革又は任意の他の好適な材料で作製することができ、また、ピンバックル又は折り畳みバックル用の開口部を備えることができる。一実施形態では、バンドは、壁2Aのものと同様に、関節接合した要素のネットワークで作製することができる。代替的に、又は組み合わせて、バンドは、弾性材料の単一のストランドで作製して、開口部を備えないことができる。
【0050】
腕時計100及びバンド30は、本説明に記載されたケース1の全ての実施形態に適合させることができることに留意されたい。
【0051】
加えて、連結部分40の要素は、容器60とベースプレート4との間に位置決めされるが、容器60は、連結部分によって少なくとも部分的に支持することができる。例えば、容器60の外面又は容器60を支持する構造体を連結部分40に載置するように配置することができる。
【0052】
容器60は、先に説明した足場50を備えることができ、又は連結部分は、例えば、摺動様式で、容器60を支持する構造体の中へ導入することができる。連結部分40による容器60の支持は、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20の動きに応じた、すなわち手首の動きに応じた、容器60の動きを可能にすることができる。
【0053】
図5及び
図6は、本発明による腕時計100の第5の実施形態の立断面図を示す。この第5の実施形態では、時計ケース2は、前述の実施形態の時計ケース1と等価又は同様である。
【0054】
この第5の実施形態では、バンド30は、一体的に形成され、すなわち、第1の取り付け部分10、第2の取り付け部分20、及び2つのアームから構成された連結部分40は、単一の要素で、すなわちバンド30と一体的に形成される。その場合、バンド30は、着用者の手首を取り囲むのに適した主要部分31を画定し、典型的には、可撓性材料、革、ゴム、又は別のポリマーで作製される。したがって、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20は、主要部分31に対するバンド30の拡大部分である。
【0055】
バンド30は、ケース1に対して移動可能に装着され、後者の内部を通過する。したがって、バンド30は、第1の取り付け部分10、第2の取り付け部分20、及び連結部分40によって画定され、開口部35を画定する、アイレットを含む。この開口部35は、好ましくは、その通路を残すために、及び/又は剛性若しくは弾性の支持体(図示せず)がベースプレート4とムーブメント60との間に位置することを可能にする空間を解放するために、ムーブメント60に実質的に重ね合わされている。
【0056】
したがって、バンド30は、例えば、製織、切断、打ち抜き、又は成形によって、単一の部品に製造することができ、すなわち、バンドは、単一の要素として形成することができる。特に、連結部分及び/又は取り付け部分については、オーバーモールドによって、異なる材料を使用することができる。
【0057】
バンド30は、先に説明したように、ベゼル2に提供された貫通スロット2Bによって時計ケースを通して導入することができる(
図6を参照されたい)。したがって、貫通スロット2Bの周りに位置するベゼル2の内壁部分は、バンド30によって形成された当該アイレットのための、特に、主要部分31よりも大きい第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20のための当接部を画定することができる。この場合、これらの当接部は、バンド30と時計ケース1との間の相対的な動きを制限することを可能にする。
【0058】
換言すれば、バンド30に対する時計ケース1の相対的な動き、例えば、並進運動を可能にするように、第1及び第2の取り付け部分20とそれらに面するベゼルのそれぞれの部分との間には、特定の隙間が存在する。
【0059】
ケースの内部に位置する他の要素もまた、当接部、特に連結部分40又は容器60としての役割を果たすことができる。代替的に、又は組み合わせて、1つ以上の足場(
図5及び
図6には図示せず)もまた、例えば、開口部35、第1の取り付け部分10及び第2の取り付け部分20、並びに/又は連結部分40の縁部に干渉することよって、バンド30に対する時計ケース2の相対的な動きを制限することができる。
【0060】
図7は、本発明による腕時計100の第6の実施形態のプロファイル断面図を示す。この実施形態では、バンド30は、時計ケース1内に貫通装着され、また、図示されていないスロットを介して時計ケース1に通される。したがって、バンド30は、手首を取り囲むための単一の主要部分を備え、また、取り付け部分又は連結部分を備えていない。バンド30は、ムーブメント60とベースプレート4との間で時計ケース1の内部容積内に配置することができる。
【0061】
したがって、第6の実施形態によるバンド30は、他の実施形態と比較して簡略化することができ、また、連結部分及び/又は取り付け部分を備えないことができる。時計ケース1は、バンド30に対して並進移動可能とすることができ、及び/又はバンド30に沿って自由に摺動することができる。代替的に、バンドは、バンド30に沿った時計ケース1の動きを制限するように、時計ケース内に位置し、当接部、拡大部、又は余剰厚さを画定する、連結部分(図示せず)を備えることができる。
【0062】
代替的に、又は組み合わせて、連結部分は、フィンガを収容し、ベースプレート4、ベゼル2、又はムーブメント60に取り付けられたアパーチャ(図示せず)を備えることができ、フィンガは、アパーチャの端部に当接して、バンド30の動きを制限する。代替的に、又は組み合わせて、バンドは、時計ケースの外側に当接部分を備えることができる。
【0063】
当業者に明らかな様々な修正及び/又は改善を、本説明に記載された本発明の異なる実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0064】
具体的には、上記の実施形態は、完全に又は部分的に組み合わせることができる。例えば、連結部分は、ケーブルを剛性アームと組み合わせることができる。連結部分は、異なる長さ及び/又は異なる形状の、1つ、2つ、3つ、若しくは4つ、又はそれ以上の、取り付け部分の異なる動きを可能にすることができる、取り付けられた又は単一部品の要素を備えることができる。
【0065】
本発明は、ベゼル2の内部に位置する第1及び第2の取り付け部分に限定されるものではなく、ベゼル2の外側に完全に又は部分的に位置する第1及び第2の取り付け部分を備えることもできる。
【0066】
第1の及び第2の取り付け部分は、2つのラグに制限されず、各々が、単一のラグ、3つのラグ、4つのラグ、又はそれ以上のラグを備えることができる。最後に、ベゼル2は、直線状の又は丸みのある縁部及び鋭利なコーナー部又は湾曲部を伴う、楕円形、正方形、長方形、円形、三角形などの任意のタイプの形状を想定することができる。
【国際調査報告】