(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ACE2融合タンパク質及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231101BHJP
C12N 9/50 20060101ALI20231101BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20231101BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231101BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231101BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231101BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20231101BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231101BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231101BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231101BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231101BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231101BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20231101BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231101BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20231101BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231101BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231101BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231101BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231101BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231101BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N9/50 ZNA
C12N15/57
C12N15/13
C12N15/12
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61P31/14
A61P9/12
A61P9/10
A61P13/12
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P1/04
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 S
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526356
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021080130
(87)【国際公開番号】W WO2022090469
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516338305
【氏名又は名称】フォーマイコン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】FORMYCON AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ライター、アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ブロックマイヤー、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルシン、フロリアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045CA42
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ACE2とIgG Fcとの融合タンパク質、及びこれらの融合タンパク質の医療用途、特にSARS-CoV-2のようなコロナウイルスによる感染の予防又は治療に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するヒトACE2の断片又は前記断片のバリアントを備える第1の部分と、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質。
【請求項2】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
ヒトACE2の前記断片が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
ヒトACE2の前記断片が、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなるACE2の細胞外ドメインである、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
配列番号20又は21に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントである、請求項1から5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
ヒトACE2の前記酵素的に不活性なバリアントが、H374N及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
ヒトACE2の前記酵素的に不活性なバリアントが、配列番号91又は92に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項6又は7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号22又は23に記載のアミノ酸配列を有する、請求項6から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
ヒトACE2の前記酵素的に不活性なバリアントが、273位(番号付けは配列番号1を参照)に変異を備える、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
273位の前記変異がR273A変異である、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
ヒトACE2の前記酵素的に不活性なバリアントが、配列番号24又は25に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項10又は11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
配列番号26又は27に記載のアミノ酸配列を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、S645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項1から5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、配列番号28又は29に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
配列番号30又は31に記載のアミノ酸配列を有する、請求項14又は15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、H374N及びH378N変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、配列番号32又は33に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
配列番号34又は35に記載のアミノ酸配列を有する、請求項17又は18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、273位に変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
273位の前記変異がR273A変異である、請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、配列番号36又は37に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項20又は21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
配列番号38又は39に記載のアミノ酸配列を有する、請求項20から22に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
(a)ヒトACE2の断片のバリアントを備える第1の部分であって、前記ヒトACE2が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、前記ヒトACE2断片の前記バリアントがS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、前記第1の部分と、(b)ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGの前記Fc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質。
【請求項25】
ヒトACE2の断片の前記バリアントが、配列番号28又は29に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
ヒトACE2の断片の前記バリアントが、H374N及びH378N変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項24又は25に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
ヒトACE2の断片の前記バリアントが、配列番号32又は33に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
ヒトACE2の断片の前記バリアントが、273位に変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項24又は25に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
273位の前記変異がR273A変異である、請求項28に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
ヒトACE2の断片の前記バリアントが、配列番号36又は37に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項28又は29に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
前記第2の部分が、ヒトIgG1又はIgG4のFc部分又はヒトIgG1又はIgG4の前記Fc部分のバリアントを備える、請求項24から30のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記第2の部分が、配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を備える、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
配列番号40又は41に記載のアミノ酸配列を有する、請求項32又は33に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
前記第2の部分が、配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を備える、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
配列番号42又は43に記載のアミノ酸配列を有する、請求項35又は36に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
前記第2の部分が、配列番号44に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項38に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
配列番号45又は46に記載のアミノ酸配列を有する、請求項38又は39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
配列番号47又は48に記載のアミノ酸配列を有する、請求項26及び31から33のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
配列番号49又は50に記載のアミノ酸配列を有する、請求項28、29及び31から33のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
配列番号51又は52に記載のアミノ酸配列を有する、請求項26、31、35及び36のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
配列番号53又は54に記載のアミノ酸配列を有する、請求項28、29、35及び36のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
配列番号55又は56に記載のアミノ酸配列を有する、請求項26、31、38及び39のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
配列番号57又は58に記載のアミノ酸配列を有する、請求項28、29、38及び39のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項47】
前記第2の部分が、配列番号59に記載の配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアント、又は配列番号60に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える、請求項31に記載の融合タンパク質。
【請求項48】
前記第2の部分が、配列番号59に記載の配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアントを備え、前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項47に記載の融合タンパク質。
【請求項49】
配列番号61又は62に記載のアミノ酸配列を有する、請求項24、25、47及び48のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項50】
配列番号63又は64に記載のアミノ酸配列を有する、請求項26、47及び48のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項51】
配列番号65又は66に記載のアミノ酸配列を有する、請求項28、29、47及び48のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項52】
前記第2の部分が、配列番号60に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備え、前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項47に記載の融合タンパク質。
【請求項53】
配列番号67又は68に記載のアミノ酸配列を有する、請求項24、25、47及び50のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項54】
配列番号69又は70に記載のアミノ酸配列を有する、請求項26、47及び50のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項55】
配列番号71又は72に記載のアミノ酸配列を有する、請求項28、29、47及び50のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項56】
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するヒトACE2の断片又は前記断片のバリアントを備える第1の部分と、配列番号59に記載の配列を有する、ヒトIgG1のFc部分のバリアント、又は配列番号60に記載の配列を有する、ヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質。
【請求項57】
前記第2の部分が、配列番号59に記載の配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアントを備え、前記第1の部分及び前記第2の部分は、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項56に記載の融合タンパク質。
【請求項58】
前記第2の部分が、配列番号60に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備え、前記第1の部分及び前記第2の部分は、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される、請求項56に記載の融合タンパク質。
【請求項59】
ヒトACE2の前記断片が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項56から58のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項60】
ヒトACE2の前記断片が、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなるACE2の細胞外ドメインである、請求項56から58に記載の融合タンパク質。
【請求項61】
配列番号73又は74に記載のアミノ酸配列を有する、請求項56、57、59又は60のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項62】
配列番号75又は76に記載のアミノ酸配列を有する、請求項56又は58から60のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項63】
前記ヒトACE2断片の前記バリアントが、ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントである、請求項56から60のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項64】
ヒトACE2の前記酵素的に不活性なバリアントが、H374N及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項63に記載の融合タンパク質。
【請求項65】
ヒトACE2の前記酵素的に不活性なバリアントが、配列番号91又は92に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項63又は64に記載の融合タンパク質。
【請求項66】
配列番号77から80のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、請求項63から65のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項67】
ヒトACE2の前記酵素的に不活性なバリアントが、273位に変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、請求項63に記載の融合タンパク質。
【請求項68】
273位の前記変異がR273A変異である、請求項67に記載の融合タンパク質。
【請求項69】
配列番号81から84のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、請求項67又は68に記載の融合タンパク質。
【請求項70】
(a)ヒトACE2の断片のバリアントを備える第1の部分であって、前記ヒトACE2が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、前記ヒトACE2断片の前記バリアントがR273A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、前記第1の部分と、(b)ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGの前記Fc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質。
【請求項71】
ヒトACE2の断片の前記バリアントが、配列番号24又は25に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる、請求項70に記載の融合タンパク質。
【請求項72】
前記第2の部分が、ヒトIgG1又はIgG4のFc部分を備える、請求項70又は71に記載の融合タンパク質。
【請求項73】
前記第2の部分が、配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を備える、請求項72に記載の融合タンパク質。
【請求項74】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結されている、請求項73に記載の融合タンパク質。
【請求項75】
配列番号85又は86に記載のアミノ酸配列を有する、請求項70から74のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項76】
前記第2の部分が、配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を備える、請求項72に記載の融合タンパク質。
【請求項77】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結されている、請求項76に記載の融合タンパク質。
【請求項78】
配列番号87又は88に記載のアミノ酸配列を有する、請求項76又は77に記載の融合タンパク質。
【請求項79】
前記第2の部分が、配列番号44に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える、請求項72に記載の融合タンパク質。
【請求項80】
前記第1の部分及び前記第2の部分が、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結されている、請求項79に記載の融合タンパク質。
【請求項81】
配列番号89又は90に記載のアミノ酸配列を有する、請求項79又は80に記載の融合タンパク質。
【請求項82】
配列番号93又は94に記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質。
【請求項83】
請求項1から82のいずれか一項に記載の前記融合タンパク質をコードする核酸配列を備える核酸分子。
【請求項84】
請求項83に記載の前記核酸分子を備える発現ベクター。
【請求項85】
請求項83に記載の前記核酸分子又は請求項84に記載の前記発現ベクターを備える宿主細胞。
【請求項86】
請求項85に記載の前記宿主細胞を適切な培養培地中で培養することを備え、請求項1から82のいずれか一項に記載の前記融合タンパク質を産生するための方法。
【請求項87】
医療用である、請求項1から82のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項88】
ACE2に結合するコロナウイルスによる感染の予防及び/又は治療における使用のための、請求項1から82のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項89】
ACE2に結合する前記コロナウイルスは、SARS、SARS-CoV-2及びNL63からなる群(好適にはSARS-CoV-2である)から選択される、請求項88に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項90】
前記融合タンパク質が、抗ウイルス剤と組み合わせて投与されるものである、請求項88又は89に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項91】
前記抗ウイルス剤が、レムデシビル、アルビドールHCl、リトナビル、ロピナビル、ダルナビル、リバビリン、クロロキン及びその誘導体、ニタゾキサニド、カモスタットメシル酸塩、トシリズマブ、シルツキシマブ、サリルマブ及びバリシチニブリン酸塩からなる群から選択される、請求項90に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項92】
前記融合タンパク質が抗体と組み合わせて投与されるものである、請求項88又は89に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項93】
前記抗体が、バムラニビマブ、エテセビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、ソトロビマブ及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項92に記載の使用のための融合タンパク質。
【請求項94】
高血圧症(高い血圧を含む)、鬱血性心不全、慢性心不全、急性心不全、収縮性心不全、心筋梗塞、動脈硬化、腎機能障害、腎不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症、腎線維症、慢性腎不全、急性腎不全、急性腎障害、炎症性腸疾患及び多臓器障害の治療における使用のための、請求項1から82のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項95】
請求項1から82のいずれか一項に記載の有効量の前記融合タンパク質及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を備える医薬組成物。
【請求項96】
抗ウイルス剤をさらに備える、請求項95に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ACE2とIgG Fcとの融合タンパク質、及びこれらの融合タンパク質の医療用途、特にSARS-CoV-2のようなコロナウイルスによる感染の予防又は治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)は、中心に触媒亜鉛原子を有するレニン-アンジオテンシン系の重要な金属プロテアーゼである(非特許文献1)。全長ACE2は、N末端細胞外ペプチダーゼドメイン、コレクトリン様ドメイン、一回膜貫通型ヘリックス及び短い細胞内セグメントからなる。これは、アンジオテンシンIIを切断してアンジオテンシン(1-7)を生成し、かつアンジオテンシンIを切断してアンジオテンシン(1-9)を生成するように作用し、これは次に、他の酵素によって処理されアンジオテンシン(1-7)になる。ACE2は、Ras/MAS系においてバランスを維持するように血圧を低下させるように作用し、ACEの活性に対抗する。従って、それは心血管疾患の治療のための有望な標的である。
【0003】
最近、ACE2は、コロナウイルス、特に、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の受容体として多くの注目を集めている。SARS-CoV-2は、2019年12月に中国の武漢で最初に発見されたコロナウイルスであるが、世界中に急速に広がり、世界的なパンデミックを引き起こしている。2020年5月22日に、ジョンズ・ホプキンズ大学は、世界中で500万を超える感染を確認し、330,000人を超える人の死を引き起こしたことを数えた。パンデミックは、多くの国において、非常に重要な経済的及び社会的効果を伴うロックダウンをもたらした。
【0004】
ACE2がSARS-CoVの受容体として(非特許文献2、非特許文献3)及びSARS-CoV-2の受容体として(非特許文献4)機能することが示された。さらに、呼吸細胞へのSARS-CoV-2の侵入は、ACE2及びセリンプロテアーゼTMPRSS2に依存する(非特許文献5)。
【0005】
細胞へのウイルス侵入に対するACE2の重要な役割を考慮して、細胞へのSARS結合を遮断するために可溶性ACE2を使用することが提案された(特許文献1、特許文献2)。同じアプローチはまた、SARS-CoV-2による感染の治療のためにも示唆された(非特許文献6)。SARS-CoV-2による感染の治療におけるACE2の可溶性形態を用いた臨床試験がApeiron社(Pharmazeutische Zeitung、2020年4月10日)によって開始されており、一回目の結果は、SARS-CoV-2により引き起こされた重度のCovid-19を患う一人の患者が、可溶性ACE2を用いた治療により早期に回復したことを示した(非特許文献7参照)。
【0006】
しかし、単離された受容体ドメインは、一般的に、低い安定性及び血漿半減期を特徴とする。ACE2の可溶性形態については、10時間の用量依存的終末相半減期が示された(非特許文献8)。これらの結果を考慮して、後の研究では、可溶性形態のACE2を1日2回の注入として投与することが決定された(非特許文献9)。しかし、1日2回以上の投与は、患者及び医療従事者の両方にとって不便である。
【0007】
ヒトIgG1のFcドメインに連結された酵素的に活性なACE2又は酵素的に不活性なACE2のいずれかの細胞外ドメインからなるACE2の融合タンパク質を構築し、試験した。両方の構築物が、SARS-CoV及びSARS-CoV-2の両方を強力に中和し、S(スパイク)タンパク質媒介性融合を阻害することが示された(非特許文献10)。さらに、COVIDTRAP(商標)すなわちSTI-4398と呼ばれる融合タンパク質が、Sorrento Therapeutics社による臨床試験のために開発された(非特許文献11参照)。非特許文献12は、野生型ACE2及びACE2の触媒活性に影響を及ぼす9個のACE2変異体と、ヒトIgG1のFc領域との融合タンパク質を記載する。しかし、ヒトIgG1のFcドメインと免疫細胞上のFcγ受容体との相互作用は、ウイルス感染を増強し得る(非特許文献13、非特許文献14)。
【0008】
非特許文献15は触媒的不活性ACE2の細胞外ドメインが免疫グロブリン重鎖のFcドメイン3に融合される「ACE2マイクロボディ(ACE2 microbody)」を開示する。
【0009】
非特許文献16及びPCT/EP2021/063692は、IgG1及びIgG4のFcドメインを有するACE2融合タンパク質を記載する。
【0010】
欧州特許出願番号EP21188832.6は、IgM及びIgG2のFcドメインを有するACE2融合タンパク質を開示する。
【0011】
特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6もまた、ACE2と各種免疫グロブリンのFc部分との融合タンパク質を開示する。
【0012】
非特許文献17は、ACE2の細胞外ドメインとIgG1のFc部分との融合タンパク質が、ウイルス複製の減少、体重減少、組織学的変化及び肺における炎症によって決定されるように、マウスをSARS-CoV2感染から保護したことを記載する。さらに、SARS-CoV2の受容体結合ドメインを標的とする抗体とは異なり、融合タンパク質による処置は、エスケープ変異体の発生を誘導しないことが示される。
【0013】
従って、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2による感染の治療及び/又は予防に使用され得る薬剤が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2005/032487号
【特許文献2】国際公開第2006/122819号
【特許文献3】国際公開第2021/170113号
【特許文献4】国際公開第2021/183404号
【特許文献5】米国特許出願公開第2021/0284716号明細書
【特許文献6】国際公開第2021/189772号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Donoghue等(2002年)Circ.Res.87:e1-e9
【非特許文献2】Li等(2003年)Nature 426:450-454
【非特許文献3】Prakabaran等(2004年)Biochem.Biophys.Res.Comm.314:235-241
【非特許文献4】Yan等(2020年)Science 367:1444-1485
【非特許文献5】Hoffmann等(2020年)Cell 181:1-10
【非特許文献6】Kruse(2020年)F1000Res.9:72
【非特許文献7】Zoufaly等(2020年)The Lancet Respiratory Medicine 8:1154-1158、https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30418-5
【非特許文献8】Haschke等(2013年)Clin.Pharmacokinet.52:783-792
【非特許文献9】Khan等(2017年)Critical Care 21:234
【非特許文献10】Lei等(2020年)Nature Communications 11:2070
【非特許文献11】https://www.globenewswire.com/news-release/2020/03/20/2003957/0/en/SORRENTO-DEVELOPS-STI-4398-COVIDTRAP-PROTEIN-FOR-POTENTIAL-PREVENTION-AND-TREATMENT-OF-SARS-COV-2-CORONAVIRUS-DISEASE-COVID-19.html
【非特許文献12】Liu等(2020年)Int.J.Biol.Macromol.165:1626-1633、https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.08.13.248351v1.full.pdf
【非特許文献13】Perlman及びDandekar(2005年)Nat.Rev.Immunol.5(12):917-927
【非特許文献14】Chen等(2020年)Current Tropical Medicine Reports 3:1-4
【非特許文献15】Tada等(2020年)、https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.09.16.300319v1.full
【非特許文献16】Svilenov等(2020年)、https://www.researchsquare.com/article/rs-459941/v1
【非特許文献17】Zhang等(2021年)、Cell Discovery 7:65
【発明の概要】
【0016】
本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するヒトACE2の断片又は前記断片のバリアントを備える第1の部分と、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質を提供する。
【0017】
一実施形態では、第1の部分及び第2の部分は、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0018】
ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなってもよく、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなるACE2の細胞外ドメインであってもよい。
【0019】
一実施形態では、ヒトACE2断片のバリアントは、ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントである。
【0020】
ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントは、H374N及びH378N変異(番号付けは配列番号1を参照)、又は273位での変異、好適にはR273A変異(番号付けは配列番号1を参照)を備えてもよい。
【0021】
一実施形態では、ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントは、配列番号91又は92に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0022】
一実施形態では、ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントは、配列番号24又は25に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0023】
一実施形態では、ヒトACE2断片のバリアントは、S645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。特に、ヒトACE2断片のバリアントは、配列番号28又は29に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなってもよい。
【0024】
一実施形態では、ヒトACE2断片のバリアントは、H374N及びH378N変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)。特に、ヒトACE2断片のバリアントは、配列番号32又は33に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなってもよい。
【0025】
一実施形態では、ヒトACE2断片のバリアントは、273位での変異、好適にはR273A変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)。特に、ヒトACE2断片のバリアントは、配列番号36又は37に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなってもよい。
【0026】
本発明は、(a)ヒトACE2の断片のバリアントを備える第1の部分であって、前記ヒトACE2が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、前記ヒトACE2断片の前記バリアントがS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、前記第1の部分と、(b)ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGの前記Fc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質をさらに提供する。
【0027】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号28又は29に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0028】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、H374N及びH378N変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)。特に、ヒトACE2断片のバリアントは、配列番号32又は33に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなってもよい。
【0029】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、273位での変異、好適にはR273A変異をさらに備える(番号付けは配列番号1を参照)。特に、ヒトACE2断片のバリアントは、配列番号36又は37に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなってもよい。
【0030】
一実施形態では、第2の部分は、ヒトIgG1又はIgG4のFc部分又はヒトIgG1又はIgG4のFc部分のバリアントを備える。
【0031】
一実施形態では、第2の部分は、配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を備え、好適には、第1の部分及び第2の部分は、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0032】
別の実施形態では、第2の部分は、配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を備え、好適には、第1の部分及び第2の部分は、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0033】
別の実施形態では、第2の部分は、配列番号44に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備え、好適には、第1の部分及び第2の部分は、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0034】
別の実施形態では、第2の部分は、配列番号59に記載の配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアント又は配列番号60に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える。
【0035】
一実施形態では、第2の部分は、配列番号59に記載の配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアントを備え、第1の部分及び第2の部分は、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0036】
別の実施形態では、第2の部分は、配列番号60に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備え、第1の部分及び第2の部分は、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0037】
本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するヒトACE2の断片又は前記断片のバリアントを備える第1の部分と、配列番号59に記載の配列を有する、ヒトIgG1のFc部分のバリアント、又は配列番号60に記載の配列を有する、ヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質をさらに提供する。
【0038】
第2の部分は、配列番号59に記載の配列を有するヒトIgG1のFc部分のバリアントを備え、第1の部分及び第2の部分が、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結されてもよく、又は第2の部分は、配列番号60に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備え、第1の部分及び第2の部分が、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結されてもよい。
【0039】
ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなってもよく、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなるACE2の細胞外ドメインであってもよい。
【0040】
一実施形態では、ヒトACE2断片のバリアントは、ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントである。
【0041】
ヒトACE2の酵素的に不活性なバリアントは、H374N及びH378N変異(番号付けは配列番号1を参照)又は273位での変異、好適にはR273A変異(番号付けは配列番号1を参照)を備え得る。
【0042】
本発明は、(a)ヒトACE2の断片のバリアントを備える第1の部分であって、前記ヒトACE2が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、前記ヒトACE2断片の前記バリアントがR273A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)、前記第1の部分と、(b)ヒトIgGのFc部分又はヒトIgGの前記Fc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質をさらに提供する。
【0043】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号24又は25に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0044】
第2の部分は、ヒトIgG1又はIgG4のFc部分を備えてもよい。
【0045】
一実施形態では、第2の部分は、配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を備え、好適には、第1の部分及び第2の部分は、配列番号15に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0046】
別の実施形態では、第2の部分は、配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を備え、好適には、第1の部分及び第2の部分は、配列番号4に記載のアミノ酸配列によって連結される。
【0047】
別の実施形態では、第2の部分は、配列番号44に記載の配列を有するヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える。
【0048】
本発明の融合タンパク質は、配列番号20、21、22、23、26、27、30、31、34、35、38、39、40、41、42、43、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、93及び94に記載のアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。
【0049】
本発明はまた、前記融合タンパク質をコードする核酸配列を備える核酸分子、前記核酸分子を備える発現ベクター、及び前記核酸分子又は前記発現ベクターを備える宿主細胞にも関する。
【0050】
さらに、本発明は、適切な培養培地中において前記宿主細胞を培養することを備える、前記融合タンパク質を産生するための方法に関する。
【0051】
本発明はまた、医療用の、特にACE2に結合するコロナウイルスによる感染の予防及び/又は治療用の前記融合タンパク質にも関する。
【0052】
一実施形態では、ACE2に結合するコロナウイルスは、SARS、SARS-CoV-2及びNL-63(好適にはSARS-CoV-2である)からなる群から選択される。
【0053】
前記融合タンパク質は、レムデシビル、アルビドールHCl、リトナビル、ロピナビル、ダルナビル、リバビリン、クロロキン及びその誘導体、ニタゾキサニド、カモスタットメシル酸塩、トシリズマブ、シルツキシマブ、サリルマブ及びバリシチニブリン酸塩からなる群から選択され得る抗ウイルス剤と組み合わせて投与され得る。
【0054】
前記融合タンパク質はまた、バムラニビマブ、エテセビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ、ソトロビマブ及びそれらの混合物からなる群から選択され得る抗体と組み合わせて投与され得る。
【0055】
本発明はまた、高血圧症(高い血圧を含む)、鬱血性心不全、慢性心不全、急性心不全、収縮性心不全、心筋梗塞、動脈硬化、腎機能障害、腎不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症、腎線維症、慢性腎不全、急性腎不全、急性腎障害、炎症性腸疾患及び多臓器障害の治療用の前記融合タンパク質にも関する。
【0056】
本発明はまた、前記融合タンパク質及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を備える医薬組成物にも関する。医薬組成物は、抗ウイルス剤をさらに備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】勾配分光法(slope spectroscopy)により測定される、プロテインAクロマトグラフィ後の各種融合タンパク質のタンパク質収率。
【
図2】分析用サイズ排除クロマトグラフィによる各種融合タンパク質の高分子量種の分析。
【
図3】各種融合タンパク質のO-グリコシル化の分析。
【
図4】競合ELISAによって測定される、各種融合タンパク質によるACE2へのS1結合の阻害。 a)IgG4のFc部分を有する構築物1~4 b)IgG1のFc部分を有する構築物5~8
【
図5】構築物1、3、5及び7によるSARS-CoV-2(Victoria/1/2020株)の中和。
【
図6】構築物1から8及び二つの参照タンパク質(Ref1、Ref2)の酵素活性の分析。 a)6つの個々の実験からの標準偏差を有する酵素活性の平均値。 b)6つの個々の実験において得られた各構築物についての単一の値。
【
図7】構築物1から8による各種コロナウイルスの中和。 a)SARS-CoV(SARS-CoV-Fra-1(AY291315.1)株)の中和、3回の独立した実験からの平均IC50値、エラーバーは95%信頼区間を示す。 b)SARS-CoV-2(SARS-CoV-2-Munich-TUM-1(EPI_ISL_582134))の中和、3回の独立した実験からの平均IC50値、エラーバーは95%信頼区間を示す。 c)SARS-CoV-2(D614G)の中和、3回の独立した実験からの平均IC50値、エラーバーは95%信頼区間を示す。
【
図8】ELISAの結合により測定される、配列番号6に記載の融合タンパク質のACE2への結合。
【
図9】各種ウイルス分離株(A:SARS-CoV-2 Munich-TUM-1、B:SARS-CoV-2 D614G、C:SARS-CoV-2 B.1.1.7、D:SARS-CoV-2 B.1.351)の配列番号6(構築物1、左側)及び配列番号8(構築物3、右側)に記載の融合タンパク質による中和。点線は、IC50値の決定を示す。与えられたデータは、それぞれ3回の独立した実験の平均±SEMである。
【
図10】分析用サイズ排除クロマトグラフィによる、異なる期間の保存後の各種融合タンパク質の高分子量種の分析。 a)構築物1から4(配列番号6から9に記載)の分析。 b)構築物5から8(配列番号10から13に記載)の分析。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に例示的に記載する本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数又は複数)、限定(単数又は複数)の非存在下において適切に実施され得る。
【0059】
本発明は、特定の実施形態に関して記載されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0060】
用語「備える」が本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、それは他の要素を排除しない。本発明の目的のために、用語「からなる」は、用語「備える」の望ましい実施形態であることが考えられる。以下に、群が少なくとも特定の数の実施形態を備えることが定義される場合、これはまた、好適にはこれらの実施形態のみからなる群を開示することが理解されるべきである。
【0061】
本発明の目的のために、用語「得られる」は、用語「得ることができる」の望ましい実施形態であることが考えられる。以下に、例えば、細胞又は生物が特定の方法によって得ることができると定義される場合、これはまた、この方法によって得られる細胞又は生物を開示することは理解されるべきである。
【0062】
単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞、例えば「一つの(a)」、「一つの(an)」又は「その」が使用される場合、これは、他に具体的に述べられない限り、その名詞の複数形を含む。
【0063】
上記のように、本発明は、ヒトACE2の断片の特定のバリアントを備える第1の部分と、ヒトIgG又はIgG1のFc部分又はヒトIgG又はIgG1のFc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質を提供する。本発明はまた、ヒトACE2の特定の断片又は前記断片のバリアントを備える第1の部分と、ヒトIgG1又はヒトIgG4のFc部分のバリアントを備える第2の部分とを備える融合タンパク質を提供する。アミノ酸18から732を備えるヒトACE2の断片は、アミノ酸18から740を備えるヒトACE2の断片よりも高い収率及び低い量の高分子量種を提供し、並びにセリン740が欠損しているので非天然O-グリコシル化を提供しないことが示された。さらに、アミノ酸18から732を備えるヒトACE2の断片は、アミノ酸18から740を備えるヒトACE2の断片よりも高い保存後安定性を示した。それにもかかわらず、アミノ酸18から732を備えるヒトACE2の断片を有する融合タンパク質は、アミノ酸18から740を備えるヒトACE2の断片を有する融合タンパク質と同様の効率で各種SARS-CoV2バリアントを中和した。対照的に、ACE2のアミノ酸18から615のみを備える融合タンパク質は、ACE2のアミノ酸18から740を備える融合タンパク質よりも低い効率でSARS-CoV2による感染を遮断することが他者によって見出されている(Li(2020)J.Virol.94(22):e01283-20)。文献(例えば、多田等(2020)、https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.09.16.300319v1.full参照)を考慮すると、ヒトIgGのFc部分を有する融合タンパク質は、Fc部分を有しない可溶性ACE2二量体よりもSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対して高い親和性を有すると想定される。Fc部分間のジスルフィド架橋は、融合タンパク質のそれらの標的(SARS-CoV-2のスパイクタンパク質等)に対する結合を安定化させることも想定される。本発明の融合タンパク質はFcRnに結合することで、可溶性ACE2二量体よりも半減期が長くなる。
【0064】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性貪食(ADP)等のFc媒介性抗体機能が、インフルエンザウイルス及び他のウイルス病原体から保護することが示された(Vanderven及びKent(2020)Immunology&Cell Biology 98:253-263)。SARS-CoV2処置に関連して、抗体カシリビマブ及びイムデビマブの混合物に関するEMA評価レポートは、これらの抗体がADCC及びADPを媒介することができることを論じている。さらに、抗体依存性増強の証拠は、いずれの処置動物においても観察されなかった。
【0065】
「融合タンパク質」は、自然には互いに連結していない少なくとも二つのポリペプチド部分により形成されるタンパク質である。二つのポリペプチド部分はペプチド結合によって連結され、任意で、リンカー分子が二つのポリペプチド部分の間に挿入される。二つのポリペプチド部分は、単一分子として転写及び翻訳される。融合タンパク質は、一般的に、両方のポリペプチド部分に由来する機能性を有する。本発明に関して、融合タンパク質は、ACE2の結合特性、特にコロナウイルスなどのウイルスの結合、及びヒトIgGのFc部分によって付与される半減期及びFc受容体結合の増加を保持する。
【0066】
用語「ヒトACE2」は、ヒト対象由来のアンジオテンシン変換酵素2を示す。ヒトACE2の全長配列は、805個のアミノ酸を有する。それは、シグナルペプチド、N末端細胞外ペプチダーゼドメイン、それに続くコレクトリン様ドメイン、一回膜貫通型ヘリックス及び短い細胞内セグメントを備える。ヒトACE2の全長配列を配列番号1に示す。別段の指示がない限り、本明細書で使用されるアミノ酸の番号付けは、配列番号1に記載のヒトACE2の全長配列の番号付けを示す。ヒトACE2の細胞外ドメインは、配列番号1のアミノ酸18から740からなり、配列番号3に示されている。
【0067】
用語「ヒトACE2の断片」は、配列番号1に記載のヒトACE2の全長配列と比較して一つ以上のアミノ酸を欠損するポリペプチドを示す。ヒトACE2の断片は、少なくとも一つのコロナウイルスのSタンパク質、特にSARS-CoV-2のSタンパク質に結合可能である。少なくとも一つのコロナウイルスのSタンパク質へのヒトACE2の断片の結合は、Sタンパク質を基質上に固定し、ヒトACE2の断片に接触させ、Sタンパク質とヒトACE2の断片との間の相互作用を検出するELISAアッセイにおいて測定され得る。代わりに、少なくとも一つのコロナウイルスのSタンパク質へのヒトACE2の断片の結合は、表面プラズモン共鳴により測定されてもよく、例えば、Shang等(2020年)Nature doi:10.1038/s41586-020-2179-y、Wrapp等(2020年)Science 367(6483):1260-1263、Lei等(2020年)Nature Communications 11(1):2070において記載される。さらなる代わりとして、少なくとも一つのコロナウイルスのSタンパク質へのヒトACE2の断片の結合はバイオレイヤー干渉法により測定されてもよく、例えば、Seydoux等(2020)https://doi.org/10.1101/2020.05.12.091298において記載される。Sタンパク質への結合を測定するための適切な方法はまた、本明細書中の実施例の部分に記載される。
【0068】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸からなる。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸からなる。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸からなる。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸からなる。
【0069】
一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基Q24、D30、E35、及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0070】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0071】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0072】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸からなり、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0073】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から380まで、18から400まで、18から420まで、18から440まで、18から460まで、18から480まで又は18から500までのアミノ酸からなる。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から520まで、18から540まで、18から560まで、18から580まで又は18から600までのアミノ酸からなる。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から605まで、18から615まで、18から620まで、18から640まで、18から660まで、18から680まで又は18から700までのアミノ酸からなる。さらにより好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から710まで、18から720まで又は18から730までのアミノ酸からなる。
【0074】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる。配列番号2に記載のアミノ酸配列は、配列番号1に記載の配列中のアミノ酸Q18から始まり、アミノ酸G732において終わる。この断片のC末端におけるアミノ酸グリシンは、二つのタンパク質部分の融合に有利に働く高い回転自由度を提供することで、融合タンパク質の安定性を増加する。さらに、驚くべきことに、配列番号1に記載の配列中のアミノ酸Q18から始まり、アミノ酸G732において終わるアミノ酸配列を備えるACE2断片の使用が、より長いACE2断片よりも良好な収率並びに良好な安定性を提供することが見出された。さらに、それは非天然O-グリコシル化を欠き、より長いACE2断片と同様の効率で各種SARS-CoV2バリアントを中和する。これは、ACE2の18から615までのアミノ酸のみを備えるより短いACE2断片が、ACE2の18から740までのアミノ酸を備えるより長いACE2断片よりも低い効率でSARS-CoV2による感染を防止するという結果と対照的である。
【0075】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するヒトACE2の完全な細胞外ドメインからなる。
【0076】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる。配列番号14に記載のアミノ酸配列は、配列番号1に記載の配列中のアミノ酸Q18から始まり、アミノ酸G605において終わる。
【0077】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基N53、N90及びN322においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。
【0078】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなり、N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90及びN322においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。
【0079】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなり、N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90及びN322においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなり、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。
【0080】
本発明に関して、用語「配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる/からなっているヒトACE2の断片」は、断片が、配列表中の対応する配列によって定義される長さを正確に有し、いかなるアミノ酸の付加及び/又は欠損を備えないことを意味することが意図される。しかし、この用語は、定義された断片の配列内のアミノ酸置換(複数)の存在を除外しない。
【0081】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。
【0082】
一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基Q24、D30、E35、及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0083】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基K31及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0084】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、E35及びQ42を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0085】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の360から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の380から723まで、400から723まで、420から723まで、440から723まで、460から723まで、480から723まで又は500から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の520から723まで、540から723まで、560から723まで、580から723まで又は600から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列内の620から723まで、640から723まで、660から723まで、680から723まで、700から723まで又は720から723までの連続するアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基Q24、D30、K31、E35、Q42及びK353を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0086】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から380まで、18から400まで、18から420まで、18から440まで、18から460まで、18から480まで又は18から500までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から520まで、18から540まで、18から560まで、18から580まで又は18から600までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から605まで、18から615まで、18から620まで、18から640まで、18から660まで、18から680まで又は18から700までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。さらにより好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から710まで、18から720まで又は18から730までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定される。
【0087】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定される。配列番号2に記載のアミノ酸配列は、配列番号1に記載の配列中のアミノ酸Q18から始まり、アミノ酸G732において終わる。この断片のC末端におけるアミノ酸グリシンは、二つのタンパク質部分の融合に有利に働く高い回転自由度を提供することで、融合タンパク質の安定性を増加する。加えて、配列番号1に記載の配列中のアミノ酸Q18から始まりアミノ酸G732において終わるアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定されるACE2断片の使用は、より長いACE2断片よりも良好な収率を提供する。
【0088】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するヒトACE2の完全な細胞外ドメインを備え、又はそれによって同定される。
【0089】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定される。配列番号14に記載のアミノ酸配列は、配列番号1に記載の配列中のアミノ酸Q18から始まり、アミノ酸G605において終わる。
【0090】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基N53、N90及びN322においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片はアミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。
【0091】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定され、N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基N53、N90及びN322においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。
【0092】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定され、N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基N53、N90及びN322においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸残基N53、N90、N103、N322、N432、N546及びN690においてN-グリコシル化される(番号付けは配列番号1を参照)。
【0093】
用語「N-グリコシル化される」又は「N-グリコシル化」は、グリカン構造がタンパク質のアスパラギン残基のアミドの窒素原子に結合することを意味する。グリカンは、分岐した柔軟な糖鎖であり、タンパク質のアスパラギン残基に結合したグリカンの正確な構造は、糖タンパク質産生に使用される発現系に依存する。
【0094】
ヒトACE2の断片の「バリアント」は、配列番号1に記載の野生型の全長ヒトACE2のアミノ酸配列中の対応する配列と比較して、少なくとも1個のアミノ酸残基が異なる、又は少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個又は少なくとも13個のアミノ酸が異なる、上記で定義されるような断片を示す。ヒトACE2の断片の「バリアント」は、ヒトACE2の断片の配列中に一つ以上のアミノ酸置換を備える。ヒトACE2の断片の「バリアント」は、バリアントが由来する配列と比較して、いかなるアミノ酸の付加又は欠損を備えない。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号2又は配列番号3に記載のヒトACE2の断片のバリアントであり、配列番号2又は配列番号3に記載の配列と比較すると、いかなるアミノ酸の付加又は欠損を備えない、すなわち配列番号2又は配列番号3に記載の配列と同じ長さを有する。本発明の範囲内で、ヒトACE2の断片のバリアントは、少なくとも一つのコロナウイルスのSタンパク質、特にSARS-CoV-2のSタンパク質に結合可能である。少なくとも一つのコロナウイルスのSタンパク質、特にSARS-CoV-2のSタンパク質へのヒトACE2の断片のバリアントの結合は、ヒトACE2の断片について上述したように測定され得る。
【0095】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と一個のアミノ酸だけ異なる。別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と二個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と三個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と四個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と五個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と六個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と七個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と八個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と九個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と十個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と十一個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と十二個のアミノ酸だけ異なる。さらに別の実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号1に記載の配列中の対応するアミノ酸配列と十三個のアミノ酸だけ異なる。
【0096】
ヒトACE2の断片の一つのバリアントは、酵素的に不活性なバリアントであり得る。「ヒトACE2の断片の酵素的に不活性なバリアント」は、アンジオテンシンIIをAng1-7に切断する能力を欠く。ヒトACE2の酵素活性は、当業者に既知の方法によって測定され得る。ヒトACE2の酵素活性を測定するための適切なキットは、例えばBioVision社又はAnaspec社から市販されている。酵素的に不活性なACE2バリアントを使用することによって、心血管系又は血圧の調節に対する効果のようなACE2の酵素活性に関連する任意の副作用が排除される。さらに、RAS-MASの均衡を崩すリスクが低減される。
【0097】
ヒトACE2の断片の酵素的に不活性なバリアントは、ACE2の触媒中心内のアミノ酸の一つ以上の変異を備え得る。特に、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性なバリアントは、配列番号1に記載の配列の残基374での野生型ヒスチジンの変異及び/又は配列番号1に記載の配列の残基378での野生型ヒスチジンの変異を備える。野生型ヒスチジンは、ヒスチジン以外の任意のアミノ酸に変異されてもよく、特に、野生型ヒスチジンはアスパラギンに変異される。好適には、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性なバリアントは、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0098】
別の実施形態では、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性なバリアントは、以下のアミノ酸残基(残基345(野生型のヒスチジン)、273(野生型のアルギニン)、402(野生型のグルタミン酸)及び505(野生型のヒスチジン))のうちの一つ以上における変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性なバリアントは、残基345におけるヒスチジンのアラニン又はロイシンへの変異、残基273におけるアルギニンのアラニン、グルタミン又はリシンへの変異、残基402におけるグルタミン酸のアラニンへの変異、及び/又は残基505におけるヒスチジンのアラニン又はロイシンへの変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。特定の実施形態では、ヒトACE2の断片の酵素的に不活性なバリアントは、残基273におけるアルギニンのアラニンへの変異(R273A変異とも呼ばれる)を備える。アルギニン273が基質結合に重要であり、その置換が酵素活性を消失させることが見出された(Guy等(2005年)FEBS J.272(14):3512-3520)。
【0099】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から380まで、18から400まで、18から420まで、18から440まで、18から460まで、18から480まで又は18から500までのアミノ酸からなり、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から520まで、18から540まで、18から560まで、18から580まで又は18から600までのアミノ酸からなり、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から615まで、18から620まで、18から640まで、18から660まで、18から680まで又は18から700までのアミノ酸からなり、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。さらにより好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から710まで、18から720まで又は18から730までのアミノ酸からなり、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0100】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、H374N変異及びH378N変異を備える。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号91に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0101】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、H374N変異及びH378N変異を備える。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号92に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0102】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から380まで、18から400まで、18から420まで、18から440まで、18から460まで、18から480まで又は18から500までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から520まで、18から540まで、18から560まで、18から580まで又は18から600までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から615まで、18から620まで、18から640まで、18から660まで、18から680まで又は18から700までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。さらにより好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から710まで、18から720まで又は18から730までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、H374N変異及びH378N変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0103】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異及びH378N変異を備える。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異及びH378N変異を備える。
【0104】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から380まで、18から400まで、18から420まで、18から440まで、18から460まで、18から480まで又は18から500までのアミノ酸からなり、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から520まで、18から540まで、18から560まで、18から580まで又は18から600までのアミノ酸からなり、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から615まで、18から620まで、18から640まで、18から660まで、18から680まで又は18から700までのアミノ酸からなり、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。さらにより好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から710まで、18から720まで又は18から730までのアミノ酸からなり、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0105】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異を備える。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異を備える。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号25に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0106】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から380まで、18から400まで、18から420まで、18から440まで、18から460まで、18から480まで又は18から500までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から520まで、18から540まで、18から560まで、18から580まで又は18から600までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から615まで、18から620まで、18から640まで、18から660まで、18から680まで又は18から700までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。さらにより好適には、ヒトACE2の断片は、配列番号1に記載の配列の18から710まで、18から720まで又は18から730までのアミノ酸を備え、又はそれによって同定され、R273A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0107】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異を備える。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異を備える。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号24又は配列番号25に記載の配列を備え、又はそれによって同定される。
【0108】
ヒトACE2の断片の別のバリアントは、ACE2の脱落を抑制するバリアントであり得る。ACE2が、ACE2細胞外ドメインの切断によってヒト気道上皮から脱落すること、及びADAM17がACE2切断を調節することが示された。さらに、ACE2の細胞外ドメインに位置する全長ACE2のロイシン584における点変異は、脱落を無効にした(Jia等(2009年)Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.297(1):L84-96)。従って、一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、ロイシン584における変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。一実施形態では、ロイシン584における変異はL584A変異である。
【0109】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、L584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0110】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、L584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0111】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、L584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0112】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、L584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0113】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、H374N変異、H378N変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0114】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0115】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0116】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0117】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0118】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、R273A変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0119】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0120】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0121】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0122】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異及びL584A変異を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0123】
ヒトACE2の断片の別のバリアントは、プロテアーゼTMPRSS2によるACE2の切断を抑制するバリアントであり得る。TMPRSS2によるACE2タンパク質分解が、SARS-CoVの侵入を増大させることが示された(Heurich等(2014年)J.Virol.88(2):1293-1307)。TMPRSS2はまた、SARS-CoV-2の細胞内への侵入において役割を果たす(Hoffmann等(2020年)Cell 181:1-10)。TMPRSS2によるACE2の切断を無効にするために、切断に必須のアミノ酸残基は変異され得る。ACE2のアミノ酸697から716までに及ぶアミノ酸領域内のアルギニン残基及びリジン残基が、TMPRSS2によるACE2切断に必須であることが示された(Heurich等(2014年)J.Virol.88(2):1293-1307)。従って、一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、アミノ酸697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片のバリアントは、アミノ酸697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも二つ又は三つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片のバリアントは、アミノ酸697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも四つ又は五つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。最も好適には、ヒトACE2の断片のバリアントは、残基697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。これらの残基のいずれかにおける野生型アミノ酸残基は、任意の他のアミノ酸に変異されてもよく、特に、野生型アミノ酸残基は、アラニンに変異される。
【0124】
一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。好適には、ヒトACE2の断片のバリアントは、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも二つ又は三つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。より好適には、ヒトACE2の断片のバリアントは、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも四つ又は五つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。最も好適には、ヒトACE2の断片のバリアントは、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0125】
ヒトACE2の断片のバリアントは、残基619、621及び/又は625における変異をさらに備え得る(番号付けは配列番号1を参照)。特に、ヒトACE2の断片のバリアントは、以下の変異(K619A、R621A及び/又はK625A)をさらに備え得る(番号付けは配列番号1を参照)。
【0126】
従って、一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0127】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、アミノ酸697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、残基697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0128】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、アミノ酸697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、残基697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0129】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0130】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0131】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0132】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0133】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、アミノ酸619、621、625、697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、残基619、621、625、697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0134】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、アミノ酸619、621、625、697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、残基619、621、625、697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0135】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0136】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0137】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0138】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0139】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、残基697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0140】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、残基697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0141】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0142】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0143】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0144】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0145】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸619、621、625、697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、残基619、621、625、697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)のうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0146】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、アミノ酸619、621、625、697、702、705、708、710及び716から選択される少なくとも一つの残基における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、残基619、621、625、697、702、705、708、710及び716における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716Aのうちの少なくとも一つを備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0147】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0148】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0149】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0150】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異並びに、以下の変異(K619A、R621A、K625A、R697A、K702A、R705A、R708A、R710A及びR716A)を備える(番号付けは配列番号1に記載の配列を参照)。
【0151】
ヒトACE2の断片の別のバリアントは、二つのACE2分子間のジスルフィド架橋の形成のための追加のシステインを提供するバリアントであり得る。ジスルフィド架橋は、融合タンパク質の固有の安定性を増加させ、融合タンパク質のその標的への結合にも影響を及ぼし得る。追加のシステインは、配列番号1の番号付けにおけるセリン645のシステインによる置換によって提供され得る。
【0152】
従って、一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、S645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0153】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、S645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0154】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、S645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号29に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0155】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、H374N変異、H378N変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号32に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0156】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、H374N変異、H378N変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号33に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0157】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0158】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0159】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号36に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0160】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、配列番号37に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなる。
【0161】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0162】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0163】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、S645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0164】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、S645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0165】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0166】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0167】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0168】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0169】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0170】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0171】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0172】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異及びS645C変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0173】
ヒトACE2の断片の別のバリアントは、二量化を抑制するバリアントであり得る。従って、一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、アミノ酸Q139における変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。一実施形態では、ヒトACE2の断片のバリアントは、Q139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0174】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、Q139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0175】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、Q139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0176】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、H374N変異、H378N変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0177】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、H374N変異、H378N変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0178】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0179】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0180】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0181】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0182】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0183】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0184】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載の配列からなり、Q139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0185】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載の配列からなり、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0186】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質からなり、R273A変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0187】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、Q139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0188】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、Q139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0189】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0190】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0191】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0192】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0193】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0194】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0195】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号2に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0196】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号3に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0197】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、Q139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0198】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0199】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、H374N変異、H378N変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0200】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0201】
一実施形態では、ヒトACE2の断片は、配列番号14に記載の配列を備え、又はそれによって同定され、R273A変異、L584A変異及びQ139A変異を備える(番号付けは配列番号1を参照)。
【0202】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgGのFc部分を備える。ヒトIgGのFc部分は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc部分であり得る。
【0203】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgG4のFc部分を備える。ヒトIgG4のFc部分は、共に連結されてFc部分を形成するヒトIgG4のCH2及びCH3ドメインを備える。全長ヒトIgG4抗体では、Fc部分はヒンジ領域を介してFab断片に結合される。Fab断片は、重鎖可変領域及びCH1ドメインを備える。好適には、本発明の融合タンパク質において使用されるヒトIgG4のFc部分は、配列番号5に記載の配列を有する。
【0204】
抗体のIgG4サブクラスは、Fcγ受容体に対して部分的な親和性しか有さず、補体を活性化しないので(Muhammed(2020年)Immunome Res.16(1):173参照)、それは、抗体のIgG1サブクラスと同程度まで免疫系を活性化しない。その結果、サイトカインの発現はより低い程度に刺激され、サイトカインストームのリスクが低減される。抗体のIgG4サブクラスは、FcRnに結合可能である。
【0205】
「ヒトIgG4のFc部分のバリアント」は、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して、一つ以上のアミノ酸置換を有するヒトIgG4のFc部分を示す。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して、1個から12個、1個から11個、1個から10個、1個から9個、1個から8個、1個から7個、1個から6個、1個から5個、1個から4個、1個から3個、1個又は2個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個又は12個のアミノ酸置換を有する。一実施形態では、一つ以上のアミノ酸置換は、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して、エフェクター機能の低下をもたらす。一実施形態では、一つ以上のアミノ酸置換は、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して、半減期の増加をもたらす。一実施形態では、一つ以上のアミノ酸置換は、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分と比較してエフェクター機能の低下をもたらし、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分と比較して半減期の増加をもたらす。
【0206】
一実施形態では、一つ以上のアミノ酸置換は、配列番号16に記載のIgG1の野生型Fc部分を産生しない。一実施形態では、一つ以上のアミノ酸置換は、変化したIgG4のFc部分に野生型IgG1のエフェクター機能を付与しない。
【0207】
好適には、エフェクター機能の低下は、補体依存性細胞傷害(CDC)の低下を備える。より好適には、CDCは、配列番号5に記載のヒトIgG4の野生型Fc部分のCDCと比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍低下している。CDCを測定及び定量する方法は、当業者に既知である。一般に、CDCは、抗原結合部分に融合されたFc部分を適切な標的細胞及び補体と共にインキュベートし、標的細胞の細胞死を検出することによって測定することができる。補体の動員は、ELISAプレートを使用するC1q結合アッセイにより分析することができる(例えば、Schlothauer等(2016年)Protein Eng.Des.Sel.29(10):457-466参照)。
【0208】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、配列番号5に記載の配列のF3、L4、G6、P7、F12、V33、N66及びP98から選択されるアミノ酸残基において少なくとも一つのアミノ酸置換を備える。これらのアミノ酸残基は、全長ヒトIgG4のアミノ酸残基F234、L235、G237、P238、F243、V264、N297及びP329に対応する。これらの残基におけるアミノ酸置換が、エフェクター機能の低下をもたらすことが示された(国際公開第94/28027号、国際公開第94/29351号、国際公開第95/26403号、国際公開第2011/066501号、国際公開第2011/149999号、国際公開第2012/130831号、Wang等(2018年)ProteinCell.9(1):63-73)。
【0209】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235E/Aに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換L4E/Aを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0210】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換F234A及びL235Aに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換F3A及びL4Aを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0211】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換F234A、L235E、G237A及びP238Sに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換F3A、L4E、G6A及びP7Sを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0212】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換F243A及びV264Aに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換F12A及びV33Aを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0213】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235E及びP329Gに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換L4E及びP98Gを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0214】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換N297A/Q/Gに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換N66A/Q/Gを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0215】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のT250、M252、S254、T256、E258、K288、T307、V308、Q311、V427、M428、H433、N434及びH435から選択されるアミノ酸残基において少なくとも一つのアミノ酸置換を備える。これらのアミノ酸残基は配列番号5に記載の配列のアミノ酸残基T19、M21、S23、T25、E27、K57、T76、V77、Q80、V196、M197、H202、N203及びH204に対応する。これらのアミノ酸置換はFc含有タンパク質の半減期の増加をもたらすことが示された(国際公開第00/42072号、国際公開第02/060919号、国際公開第2004/035752号、国際公開第2006/053301号、国際公開第2009/058492号、国際公開第2009/086320号、米国特許出願公開第2010/0204454号、英国特許出願公開第2013/02878号、国際公開第2013/163630号、米国特許出願公開第2019/0010243号)。抗体又はFc融合タンパク質の半減期は、抗体又はFc融合タンパク質の投与後の異なる時点における血清中の抗体又はFc融合タンパク質の濃度を測定し、そこから半減期を計算することにより測定することができる。
【0216】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M252Y、S254T及びT256Eに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換M21Y、S23T及びT25Eを備える。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、配列番号44に記載のアミノ酸配列を有する。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0217】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T256D及びT307Qに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換T25D及びT76Qを備える。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、配列番号60に記載のアミノ酸配列を有する。このバリアントは、増加した半減期及びFcRnへの増強された結合を有する(Mackness等(2019年)MABS 11(7):1276-1288)。
【0218】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T250Q/E及びM428L/Fに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換T19Q/E及びM197L/Fを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0219】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換N434S及びV308W/Y/Fに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換N203S及びV77W/Y/Fを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0220】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M252Y及びM428Lに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換M21Y及びM197Lを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0221】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T307Q及びN434Sに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換T76Q及びN203Sを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0222】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M428L及びV308Fに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換M197L及びV77Fを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0223】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換Q311V及びN434Sに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換Q80V及びN203Sを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0224】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換H433K及びN434Fに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換H202K及びN203Fを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0225】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換E258F及びV427Tに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換E27F及びV196Tを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0226】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換K288E及びH435Kに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換K57E及びH204Kを備える。このバリアントは増加した半減期を有する。
【0227】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG4のアミノ酸配列中のアミノ酸置換R409Kに対応する配列番号5に記載の配列中のアミノ酸置換R178Kを備える。このバリアントはヒトIgG4の酸性誘導性凝集を防止する(Namisaki等(2020年)PloS ONE 15(3):e0229027参照)。
【0228】
一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、配列番号5に記載の配列中の37位、43位、65位、96位、99位、100位、124位、125位、127位、187位及び214位のうちの一つ以上におけるアミノ酸置換を備えない。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、アミノ酸置換Q37H、Q43K、F65Y、G96A、S99A、S100P、Q124R、E125D、M127L、R178K、E187Q及びL214Pのうちの一つ以上を備えない。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、配列番号5に記載の配列中の37位、43位、65位、96位、99位、100位、124位、125位、127位、187位及び214位のうちのいずれかにおけるいかなるアミノ酸置換も備えない。一実施形態では、ヒトIgG4のFc部分のバリアントは、アミノ酸置換Q37H、Q43K、F65Y、G96A、S99A、S100P、Q124R、E125D、M127L、R178K、E187Q及びL214Pのうちのいずれも備えない。
【0229】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgG1のFc部分又はそのバリアントを備える。ヒトIgG1のFc部分は、共に連結されてFc部分を形成するヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを備える。全長ヒトIgG1抗体では、Fc部分はヒンジ領域を介してFab断片に結合される。Fab断片は、重鎖可変領域及びCH1ドメインを備える。好適には、本発明の融合タンパク質において使用されるヒトIgG1のFc部分は、配列番号16に記載の配列を有する。
【0230】
「ヒトIgG1のFc部分のバリアント」は、配列番号16に記載のヒトIgG1の野生型Fc部分と比較して、一つ以上のアミノ酸置換を有するヒトIgG1のFc部分を示す。一実施形態では、一つ以上のアミノ酸置換は、配列番号16に記載のヒトIgG1の野生型Fc部分と比較して、エフェクター機能の低下をもたらす。
【0231】
好適には、エフェクター機能の低下は、補体依存性細胞傷害(CDC)の低下を備える。より好適には、CDCは、配列番号16に記載のヒトIgG1の野生型Fc部分のCDCと比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍低下している。CDCを測定及び定量する方法は、当業者に既知であり、上述されている。
【0232】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、配列番号16に記載の配列のL3、L4及びP98から選択されるアミノ酸残基において少なくとも一つのアミノ酸置換を備える。これらのアミノ酸残基は、全長ヒトIgG1のアミノ酸残基L234、L235及びP329に対応する。
【0233】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235E/Aに対応する配列番号16に記載の配列中のアミノ酸置換L4E/Aを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0234】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L234A及びL235Aに対応する配列番号16に記載の配列中のアミノ酸置換L3A及びL4Aを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0235】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gに対応する配列番号16に記載の配列中のアミノ酸置換L3A、L4A、P98Gを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0236】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換L235A及びP329Gに対応する配列番号16に記載の配列中のアミノ酸置換L4A及びP98Gを備える。このバリアントは、低下したエフェクター機能、特に低下したCDCを有する。
【0237】
一実施態様では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換M252Y、S254T及びT256Eに対応する配列番号16に記載の配列中のアミノ酸置換M21Y、S23T及びT25Eを備える。一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有する。このバリアントは、増加した半減期及びFcRnへの増強された結合を有する。
【0238】
一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、全長ヒトIgG1のアミノ酸配列中のアミノ酸置換T256D及びT307Qに対応する配列番号16に記載の配列中のアミノ酸置換T25D及びT76Qを備える。一実施形態では、ヒトIgG1のFc部分のバリアントは、配列番号59に記載のアミノ酸配列を有する。このバリアントは、増加した半減期及びFcRnへの増強された結合を有する(Mackness等(2019年)MABS 11(7):1276-1288)。
【0239】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgG2又はIgG3のFc部分又はヒトIgG1、IgG2又はIgG3のFc部分のバリアントを備え、同じ第1の部分及び野生型ヒトIgG1のFc部分を備える第2の部分を備える融合タンパク質と比較して、FcγRIIIaへの結合が低下している。FcγRIIIaへの結合は、同じ第1の部分及び配列番号16に記載の野生型ヒトIgG1のFc部分を備える第2の部分を備える融合タンパク質の結合と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍又は少なくとも10倍まで低下する。
【0240】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の第2の部分は、ヒトIgG2又はIgG3のFc部分又はヒトIgG1、IgG2又はIgG3のFc部分のバリアントを備え、同じ第1の部分及び野生型ヒトIgG1のFc部分を備える第2の部分を備える融合タンパク質と比較して、FcγRIIIaへの結合は低下し、FcRnへの結合は本質的に同じである。用語「FcRnへの結合は本質的に同じ」は、ヒトIgG2又はIgG3のFc部分又はヒトIgG1、IgG2又はIgG3のFc部分のバリアントを備える融合タンパク質のFcRnへの結合が、同じ第1の部分及び配列番号16に記載の野生型ヒトIgG1のFc部分を備える第2の部分を備える融合タンパク質の結合と、20%以下又は15%以下、好適には10%以下又は5%以下、より好適には3%以下又は2%以下、最も好適には1%以下だけ異なることを意味する。
【0241】
融合タンパク質のFcγRIIIa又はFcRnへの結合は、本明細書中の例に記載されるような表面プラズモン共鳴によって測定され得る。
【0242】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質の第1及び第2の部分は、連結配列によって連結される。連結配列は、それ自体では機能を有さず、融合タンパク質の折り畳みに影響を及ぼさない短いアミノ酸配列である。一実施形態では、連結配列は、8個から20個のアミノ酸、好適には10個から18個のアミノ酸、より好適には11個から17個のアミノ酸又は12個から16個のアミノ酸、最も好適には13個のアミノ酸を備える。
【0243】
一実施形態では、連結配列は、グリシン及びセリンから選択される小さなアミノ酸からなる。連結配列の概要は、Chen等(2013年)Adv.Drug Deliv.Rev.65(10):1357-1369において提供される。
【0244】
一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分がヒトIgG4のFc部分又はそのバリアントである場合、連結配列はヒトIgG4のヒンジ領域からなる。一実施形態では、連結配列は、配列番号4に記載の配列からなる。配列番号4に記載の配列では、(全長IgG4のセリン228に対応する)IgG4の野生型ヒンジ領域の残基10におけるセリンがプロリンに置換されており、半分子IgGの交換の低下をもたらしている。IgG4抗体は、Fabアームの交換を受けることができ、二つの異なるFabアームの組み合わせをもたらし、新たな二重特異性抗体分子を作製することが知られている(例えば、Aalberse等(2009年)Clin.Exp.Allergy 39(4):469-477参照)。このFabアームの交換は、IgG4のヒンジ領域に位置する、Fc領域のセリン228のプロリンへの変異によって防止され得る(S228P、Silva等(2015年)J.Biol.Chem.290:5462-5469参照)。さらに、短いリンカー配列の使用は、融合タンパク質の安定性を増加させ、融合タンパク質のプロテアーゼへの接近を低下させる。
【0245】
一実施形態では、融合タンパク質の第2の部分がヒトIgG1のFc部分又はそのバリアントである場合、連結配列はヒトIgG1のヒンジ領域からなる。一実施形態では、連結配列は、配列番号15に記載の配列からなる。
【0246】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号20に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列、及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0247】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号21に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列、及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0248】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号22に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0249】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号23に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0250】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号26に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0251】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号27に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0252】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号30に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0253】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号31に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0254】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号34に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0255】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号35に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0256】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号38に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0257】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号39に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号19に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0258】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号40に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0259】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号41に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0260】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号42に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0261】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号43に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0262】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号45に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0263】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号46に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0264】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号47に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0265】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号48に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0266】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号49に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0267】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号50に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0268】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号51に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0269】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号52に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0270】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号53に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0271】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号54に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0272】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号55に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0273】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号56に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0274】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号57に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0275】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号58に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0276】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号61に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0277】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号62に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0278】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号63に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0279】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号64に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0280】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号65に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0281】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号66に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0282】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号67に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0283】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号68に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0284】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号69に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0285】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号70に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0286】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号71に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0287】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、S645C変異及びR273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号72に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0288】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号73に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0289】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号74に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0290】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号75に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0291】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号76に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0292】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号77に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0293】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号78に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0294】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号79に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0295】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、H374N変異及びH378N変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号80に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0296】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号81に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0297】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号82に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号59に記載のヒトIgG1のFc部分のバリアントを有する。
【0298】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号83に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0299】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号84に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号60に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0300】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号85に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0301】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号86に記載のアミノ酸配列、配列番号15に記載の連結配列及び配列番号16に記載のヒトIgG1のFc部分を有する。
【0302】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号87に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0303】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号88に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号5に記載のヒトIgG4のFc部分を有する。
【0304】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号89に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0305】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、R273A変異を有する(番号付けは配列番号1を参照)ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号90に記載のアミノ酸配列、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0306】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号2)のアミノ酸18から732を備える配列番号93に記載のアミノ酸配列(番号付けは配列番号1を参照)、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0307】
特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ヒトACE2(配列番号3)のアミノ酸18から740を備える配列番号94に記載のアミノ酸配列(番号付けは配列番号1を参照)、配列番号4に記載の連結配列及び配列番号44に記載のヒトIgG4のFc部分のバリアントを有する。
【0308】
本発明は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸配列を備える核酸分子にも関する。当業者は、タンパク質のアミノ酸配列が既知であるときに核酸分子を構築する方法を知っている。特に、核酸分子の構築は、三文字の遺伝コードを使用してタンパク質のアミノ酸配列を核酸配列に逆翻訳し、任意で、核酸分子を使用してタンパク質が発現される宿主細胞のコドンの使用を考慮することを含む。
【0309】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質をコードする核酸配列を備える核酸分子は、単離された核酸分子である。用語「単離された核酸分子」は、それが産生された環境において通常関連している少なくとも一つの混入核酸分子から同定及び分離された核酸分子を示す。好適には、単離された核酸は、産生環境に関連する全ての成分と関連していない。
【0310】
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を増殖可能である核酸分子を示す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター及びそのベクターが導入される宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、そのベクターが動作可能に連結されている核酸の発現を誘導可能である。そのようなベクターを本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。
【0311】
発現ベクターは、適切なプロモーター及びポリアデニル化シグナルのような核酸の発現のための要素を含有する。さらに、発現ベクターは、一般に、発現ベクターを含有しない細胞から発現ベクターを含有する細胞の区別を可能にするために、適切なプロモーターの制御下にある選択マーカー遺伝子を含有する。本発明の融合タンパク質のようなリコンビナントタンパク質を発現させるために適した発現ベクターを構築するために必要な要素及び方法は、当業者に既知であり、例えば、Makrides等(1999年)Protein Expr.Purif.17:183-202及びKaufman(2000年)Mol.Biotechnol.16:151-161において記載される。
【0312】
発現ベクターは、適切な宿主細胞を形質転換する、すなわち遺伝的に改変するために使用される。
【0313】
当業者は、発現ベクターを哺乳類細胞に導入するための方法を認識している。これらの方法は、ThermoFisherのLipofectamine(登録商標)、Polyplus SciencesのPEImax)、293-Free transfection reagent(Millipore)又はInvitrogenのFreestyle Maxのような市販のトランスフェクションキットの使用を含む。さらなる適切な方法は、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション及びDEAE-デキストラントランスフェクションを含む。トランスフェクション後、細胞は、発現ベクター(複数)によってコードされる選択マーカー(複数)に基づく適切な薬剤を用いた処置により選択され、リコンビナント核酸分子を含有する安定したトランスフェクト細胞を同定する。
【0314】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は、同義的に使用され、外因性の核酸又は発現ベクターが導入されている細胞及びそのような細胞の子孫を示す。宿主細胞は、初代形質転換細胞及び継代数に関係なくそれから由来する子孫を含む、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含む。
【0315】
本発明の融合タンパク質は、好適には哺乳類宿主細胞において産生される。本発明の融合タンパク質を発現するための適切な哺乳類宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFR選択マーカーと共に使用されるdhfr陰性CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞、サル腎臓CV1、ヒト胎児腎臓株293、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(TM4)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDC)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3 A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞、MRC 5細胞及びFS4細胞を含む。より好適には、宿主細胞は齧歯類に由来する。最も好適には、哺乳類細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0316】
本発明の融合タンパク質を産生するために、宿主細胞は、適切な培養培地において培養される。
【0317】
用語「培地」、「細胞培養培地」及び「培養培地」は、本明細書において同義的に使用され、哺乳類細胞を成長させるために必要とされる栄養素を含有する溶液を示す。一般的に、細胞培養培地は、最小限の成長及び/又は生存のために細胞によって必要とされる必須及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、及び微量元素を提供する。細胞培養培地はまた、成長因子を備え得る。好適には、培地は、全てのその成分及びそれらの濃度が既知であるという点において化学的に定義される。また好適には、培地は無血清かつ無加水分解物であり、いかなる動物由来の成分も含有しない。より好適な実施形態では、培地は無血清かつ無加水分解物であり、いかなる動物由来の成分又はインスリンも含有しない。
【0318】
一実施形態では、本発明の方法に使用される培地は、FreeStyle 293 expression medium(Life Technologies)、PolCHO P Powder Base CD、ActiPro(両方GEから入手)、PowerCHO-2、ProCHO-5(両方Lonzaから入手)又はEX-CELL(登録商標)Advanced CHO fed batch medium(Sigmaから入手)のような市販の培地である。
【0319】
哺乳類細胞を培養するために、バッチ培養、灌流培養、連続培養及び流加培養を含む様々な戦略が利用可能である。好適には、流加培養プロセスが使用される。流加培養では、培養プロセスは、特定の量の基礎培地で開始され、一つ以上の栄養素を備える一つ以上のフィード培地が、培養プロセスの後の時点(複数)において供給され、産物が細胞培養液から除去されない間の栄養素の枯渇を防止する。従って、用語「フィーディング」は、少なくとも一つの成分が既存の細胞培養物に添加されることを意味する。
【0320】
用語「基礎培地」は、細胞培養プロセスの始めから使用される培地を示すことが意図される。哺乳類細胞を基礎培地に植え付け、フィーディングが開始されるまで一定期間この培地において成長させる。基礎培地は、上述の培養培地の定義を満たす。市販の培地が使用される場合、さらなる成分が基礎培地に添加され得る。
【0321】
フィード培地は、細胞を一定期間基礎培地において培養した後に細胞培養物に添加される。フィード培地は、栄養枯渇を防止する役割を果たし、従って、基礎培地と同じ組成を有しなくてもよい。特に、一つ以上の栄養素の濃度は、基礎培地中よりもフィード培地中において高くてもよい。一実施形態では、フィード培地は、基礎培地と同じ組成を有する。別の実施形態では、フィード培地は、基礎培地と別の組成を有する。フィード培地は、連続的に、又は規定の時点においてボーラス投与として添加され得る。
【0322】
適切なフィード培地は当業者に既知であり、PolCHO Feed-A Powder Base CD、PolCHO Feed-B Powder Base CD、Cell Boost 7a及びCell Boost 7b(全てGEから入手)、BalanCD(登録商標)CHO Feed 3 Medium(Irvine Scientificから入手)及びEX-CELL(登録商標)Advanced CHO feed 1(Sigmaから入手)を含む。
【0323】
宿主細胞の培養は、一定温度、例えば37℃±0.2℃の温度において実行され得る。代わりに、培養温度は第1の温度から第2の温度まで低下されてもよく、すなわち、温度は能動的に下方調節される。従って、第2の温度は、第1の温度よりも低い。第1の温度は、37℃±0.2℃であってもよい。第2の温度は、30℃から36℃までの範囲であってもよい。
【0324】
本発明の融合タンパク質が、適切な培養培地における宿主細胞の培養により産生された後、融合タンパク質は、細胞培養物から回収される。哺乳類細胞から発現されたFc融合タンパク質は、一般的に、培養プロセスの間に細胞培養液中に分泌されるので、培養プロセスの終了時の産生物回収は、融合タンパク質を備える細胞培養液を細胞から分離することによって行われる。細胞分離法は、細胞破壊を最小限にして、細胞破片の増加並びにプロテアーゼ及び融合タンパク質産物の質に影響を及ぼし得る他の分子の放出を避けるために穏やかであるべきである。通常、融合タンパク質を備える細胞培養液の回収は、遠心分離及び/又は濾過を必要とし、それによって融合タンパク質は、上清及び濾液中にそれぞれ存在する。拡張ベッド吸着クロマトグラフィは、遠心分離/濾過法を避けるための代替法である。
【0325】
融合タンパク質を備える細胞培養液を回収した後、融合タンパク質は細胞培養液から精製されなければならない。Fc融合タンパク質の精製は、通常、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、特にプロテインAアフィニティークロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィのようなクロマトグラフィステップを含み得る一連の標準的な技術によって達成される。さらに、精製プロセスは、一つ以上の限外濾過、ナノ濾過又は透析濾過並びに接線流濾過及び/又はクロスフロー濾過ステップを備え得る。
【0326】
融合タンパク質を精製した後、それは医薬組成物を調製するために使用され得る。医薬組成物は、疾患又は病気を治療又は予防するために患者に送達されることが意図される組成物である。活性薬剤、すなわち本発明の融合タンパク質に加えて、医薬組成物は、一般的に、少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤を含有する。薬学的に許容される賦形剤は、融合タンパク質の生理的活性を妨害せず、医薬組成物を安定化させ、及び/又は医薬組成物の溶解度を増強し、又は粘性を低下させる物質である。リコンビナントタンパク質のための一般的な薬学的に許容される賦形剤は、緩衝剤、塩、糖又は糖アルコール、アミノ酸及び界面活性剤を含む。
【0327】
医薬組成物は、治療有効量の本発明の融合タンパク質を備える。用語「治療有効量」は、特定の障害、病気又は疾患を処置する(例えば、その症状の一つ以上を改善する、緩和する、軽減する、及び/又は遅延させる)のに十分な本発明の融合タンパク質の量を示す。コロナウイルス、特にSARS-CoV-2による感染に関して、治療有効量の本発明の融合タンパク質は、咳、息切れ、呼吸困難、発熱、寒気、疲労感、筋肉痛、咽頭痛、頭痛、胸痛、並びに嗅覚及び/又は味覚の喪失から選択される一つ以上の症状を改善、緩和、軽減、及び/又は遅延させる。治療有効量は、一回以上の投与において投与され得る。
【0328】
本発明の融合タンパク質は、医療用であり、すなわち、疾患を予防及び/又は治療するために使用されることが意図される。
【0329】
本明細書で使用される「治療」又は「治療している」は、有益な又は所望の結果(臨床的結果を含む)を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果は、限定されないが、以下(疾患に起因する一つ以上の症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の予防又は遅延)、疾患の拡大の予防又は遅延、疾患の再発の予防又は遅延、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善、疾患の(部分的又は全体の)寛解の提供、疾患の治療に必要な一つ以上の他の薬剤の用量の減少、及び/又は生存の延長)の一つ以上を含む。本発明の使用は、治療のこれらの態様の内のいずれか一つ以上を考慮する。
【0330】
用語「予防する」、及び「予防された」、「予防している」等のような類似の用語は、疾患又は病気の再発の可能性を予防、抑制、又は低減するためのアプローチを示す。それはまた、疾患又は病気の再発を遅延させること、又は疾患又は病気の症状の再発を遅延させることを示す。本明細書で使用されるように、「予防」及び類似の用語はまた、疾患又は病気の再発の前に、疾患又は病気の強度、効果、症状及び/又は負荷を低下させることを含む。
【0331】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染を予防及び/又は治療するために使用される。コロナウイルスは、プラスセンスの一本鎖RNAゲノム及び二十面体タンパク質シェルを有するエンベロープウイルスである。S1及びS2サブユニットからなるスパイクタンパク質は、エンベロープから突出し、ACE2に結合することによる標的細胞との相互作用を媒介するホモ三量体を形成する。コロナウイルスはしばしば、ヒト及び他の哺乳類並びに鳥類種において呼吸器疾患を引き起こす。ヒトでは、七つのコロナウイルス株(HCoV-OC43、HCoV-HKU1、HCoV-229E、HCoV-NL63、MERS-CoV、SARS-CoV及びSARS-CoV-2)が知られている。最初の四つのコロナウイルス株(HCoV-OC43、HCoV-HKU1、HCoV-229E、HCoV-NL63)は、軽い症状のみを引き起こすが、MERS-CoV、SARS-CoV及びSARS-CoV-2による感染は、重度の、生命を脅かす可能性のある疾患をもたらし得る。
【0332】
SARS-CoV、SARS-CoV-2及びHCoV-NL63はACE2に結合し、この結合を使用して標的細胞に侵入することが示されている(Li等(2003年)Nature 426(6965):450-4、Hoffmann等(2020年)Cell 181:1-10、Hofmann等(2005年)Proc Natl Acad Sci U S A.102(22):7988-93)。従って、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染、特にSARS-CoV、SARS-CoV-2又はHCoV-NL63による感染を治療及び/又は予防するために使用され得る。ACE2に結合する更なるコロナウイルスは、ACE2を発現する細胞にコロナウイルススパイクタンパク質及びレポータータンパク質を発現するシュードタイプVSV(水疱性口内炎ウイルス)を一時的又は構成的に植え付け、植え付け期間後にレポータータンパク質の活性を検出することにより同定され得る(Hoffmann等(2020年)Cell 181:1-10のプロトコル参照)。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスはSARS-CoVではない。
【0333】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、SARS-CoV-2又はアミノ酸置換D614G及び/又はアミノ酸置換N439Kを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。アミノ酸置換D614Gを備えるSARS-CoV-2のバリアントは、Korber等(2020等)Cell 182(4):812-827に記載され、アミノ酸置換N439Kは、https://doi.org/10.1101/2020.11.04.355842において利用可能であるThomson等(2021年)Cell 184(5):1171,1187.e20において記載される。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614Gを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。アミノ酸置換D614Gは武漢参考株における位置23,403においてAからGへのヌクレオチド変異により引き起こされる。バリアントにおけるアミノ酸の番号付けは、配列番号18に記載のSARS-CoV-2のスパイクタンパク質における番号付けを示す。従って、配列番号18に記載のスパイクタンパク質を有するSARS-CoV-2ウイルスは、任意のバリアントが由来する野生型SARS-CoV-2であることが定義される。
【0334】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G及び少なくとも一つの追加のアミノ酸置換を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、N501Y、A570D、P681H、T716I、S982A及びD1118Hを備え、アミノ酸69、70及び145の欠損を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、Y453F、I692V及びM1229Iを備え、アミノ酸69及び70の欠損を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、S13I、W152C及びL452Rを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、E484K及びV1176Fを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、H655Y、T1027I及びV1176Fを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、D80A、D215G、K417N、E484K、N501Y及びA701Vを備え、アミノ酸242、243及び244の欠損を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、L18F、D80A、D215G、K417N、E484K、N501Y及びA701Vを備え、アミノ酸242、243及び244の欠損を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換D614G、D80A、R246I、K417N、E484K、N501Y及びA701Vを備え、アミノ酸242、243及び244の欠損を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換E484Q及びL452Rを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換E484K及びD614Gを備え、アミノ酸145及び146の欠損を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。
【0335】
バリアントにおけるアミノ酸の番号付けは、配列番号18に記載のSARS-CoV-2のスパイクタンパク質における番号付けを示す。バリアントを定義付けることの目的として、配列番号18に記載のアミノ酸配列はSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の野生型配列であると見なされる。
【0336】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインにおいて一つ以上のアミノ酸置換を備えるSARS-CoV-2のバリアントである。SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインは配列番号18のアミノ酸331から524までを備える(Tai等(2020年)Cell.Mol.Immunol.17:613-620参照)。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換N501Yを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換E484Kを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、アミノ酸置換K417T/Nを備えるSARS-CoV-2のバリアントである。
【0337】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質はACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、配列番号18に記載の野生型スパイクタンパク質を備えるSARS-CoV-2と比較して、ACE2に対してより高い結合親和性を有するSARS-CoV-2のバリアントである。ACE2に対するSARS-CoV-2のバリアントの親和性は、例えば、シュードウイルスアッセイを用いて測定され得る。シュードウイルスアッセイは、野生型SARS-CoV-2又はそのバリアントのSタンパク質によりシュードタイプ化され、ルシフェラーゼ遺伝子のようなレポーター遺伝子を含有するレンチウイルスを使用する。そのようなレンチウイルスは、例えば、BPS Bioscienceから得ることができる。シュードタイプレンチウイルスをACE2発現細胞と共にインキュベートし、ウイルスを細胞に侵入させ、レポーター遺伝子を発現させる。バリアントSARS-CoV-2のSタンパク質によりシュードタイプ化されたレンチウイルスからのレポーター遺伝子の発現が、野生型SARS-CoV-2のSタンパク質によりシュードタイプ化されたレンチウイルスからのレポーター遺伝子の発現よりも高い場合、バリアントは、ACE2に対してより高い結合親和性を有する。本発明の文脈において、本発明の融合タンパク質は、バリアントB.1.1.7のようなACE2に対してより高い結合親和性を有するバリアントに対してより高い親和性を有することが見出された。
【0338】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、ACE2に結合するコロナウイルスによる感染を治療及び/又は予防するために使用され、ACE2に結合するコロナウイルスは、配列番号18に記載の野生型スパイクタンパク質を備えるSARS-CoV-2と比較して、より高い感染性を有するSARS-CoV-2のバリアントである。ウイルス感染性は、一人の接触感染者から疾患に感染する人の平均数である基本再生産数R0を使用して測定され得る。
【0339】
投与経路は、既知の許容された方法、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内又は関節内経路による注射又は注入に従う。別の実施形態では、本発明の融合タンパク質は鼻腔内、例えば、鼻スプレー、鼻軟膏又は点鼻薬によって投与されるものである。別の実施形態では、本発明の融合タンパク質は、局所投与又は吸入によって投与される。好適には、本発明の融合タンパク質は静脈内注射又は注入によって投与される。
【0340】
本発明の医薬組成物の投薬量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の使用に応じて変動し得る。適切な投与量又は投与経路の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。動物実験は、ヒト治療に対する有効用量の決定のための信頼できる指針を提供する。有効用量の種間スケーリングは、Mordenti,J.及びChappell,W.“The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics,”In Toxicokinetics and New Drug Development、Yacobi等,Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42-46によって規定された原理に従って実行され得る。
【0341】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、0.1mg/kg体重から4mg/kg体重の投与量、例えば、0.1mg/kg体重、0.2mg/kg体重、0.3mg/kg体重、0.4mg/kg体重、0.5mg/kg体重、0.6mg/kg体重、0.7mg/kg体重、0.8mg/kg体重、0.9mg/kg体重、1.0mg/kg体重、1.1mg/kg体重、1.2mg/kg体重、1.3mg/kg体重、1.4mg/kg体重、1.5mg/kg体重、1.6mg/kg体重、1.7mg/kg体重、1.8mg/kg体重、1.9mg/kg体重、2.0mg/kg体重、2.1mg/kg体重、2.2mg/kg体重、2.3mg/kg体重、2.4mg/kg体重、2.5mg/kg体重、2.6mg/kg体重、2.7mg/kg体重、2.8mg/kg体重、2.9mg/kg体重、3.0mg/kg体重、3.1mg/kg体重、3.2mg/kg体重、3.3mg/kg体重、3.4mg/kg体重、3.5mg/kg体重、3.6mg/kg体重、3.7mg/kg体重、3.8mg/kg体重、3.9mg/kg体重又は4.0mg/kg体重の投与量において静脈内投与される。
【0342】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、10mg/kg体重から150mg/kg体重の投与量、例えば、10mg/kg体重、15mg/kg体重、20mg/kg体重、25mg/kg体重、30mg/kg体重、35mg/kg体重、40mg/kg体重、45mg/kg体重、50mg/kg体重、55mg/kg体重、60mg/kg体重、65mg/kg体重、70mg/kg体重、75mg/kg体重、80mg/kg体重、85mg/kg体重、90mg/kg体重、95mg/kg体重、100mg/kg体重、105mg/kg体重、110mg/kg体重、115mg/kg体重、120mg/kg体重、125mg/kg体重、130mg/kg体重、135mg/kg体重、140mg/kg体重、145mg/kg体重又は150mg/kg体重の投与量において静脈内投与される。
【0343】
融合タンパク質は、1日1回、1日2回、1日3回、1日おき、1週間に1回又は2週間に1回投与され得る。
【0344】
融合タンパク質は、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間又は10日間の期間にわたって投与され得る。
【0345】
本発明の融合タンパク質を投与することによって、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2による感染が治療される、すなわち、SARS-CoV-2による感染の症状の少なくとも一つが軽減又は消失する。SARS-CoV-2による感染の症状は、咳、息切れ、呼吸困難、発熱、寒気、疲労、筋肉痛、咽頭痛、頭痛、胸痛、並びに嗅覚及び/又は味覚の喪失を含む。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の投与によって、SARS-CoV-2による感染によって引き起こされる発熱が軽減される。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の対象への投与は、対象がSARS-CoV-2による重度の感染過程を経験するリスクを低減する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の対象への投与は、対象が多臓器不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)又は肺炎を経験するリスクを低減する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の対象への投与は、対象がSARS-CoV-2による感染の長期的影響、例えば肺損傷、神経障害、皮膚障害及び心血管疾患を経験するリスクを低減する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の対象への投与は、血液中のサイトカインIL6及び/又はIL8の濃度を低下させる。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の対象への投与は、血液中のSARS-CoV-2ウイルス粒子の濃度を低下させる。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の対象への投与は、抗ウイルス抗体の産生を刺激する。一実施形態では、本発明の融合タンパク質の対象への投与は、抗ウイルスIgA及び/又はIgG抗体の産生を刺激する。
【0346】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、SARS-CoV-2による重症感染症に罹患している対象に投与される。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、SARS-CoV-2に感染し、人工呼吸を必要とする対象に投与される。一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、SARS-CoV-2に感染し、体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする対象に投与される。
【0347】
本発明の融合タンパク質を投与することにより、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2による感染が予防される、すなわち、処置された対象はSARS-CoV-2による感染の症状を発症しない。
【0348】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、SARS-CoV-2に感染した対象に接触している対象に投与される。SARS-CoV-2に感染した対象に接触している対象は、スマートフォンにインストールされた「コロナ警告アプリ」の使用により同定され得る。
【0349】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、上述の対象の咽喉又は鼻スワブを用いた試験が、SARS-CoV-2に感染していることを示すが、SARS-CoV-2による感染のいかなる症状も発症していない対象に投与される。
【0350】
ACE2、特にSARS-CoV-2に結合するコロナウイルスによる感染の治療又は予防では、本発明の融合タンパク質は、既知の抗ウイルス剤と組み合わせられ得る。抗ウイルス剤は、ウイルス感染を治療するために使用される薬剤であり、特異的抗ウイルス剤及び広域スペクトルウイルス剤の両方を含む。適切な抗ウイルス剤は、ヌクレオシド類似体、ウイルスプロテアーゼの阻害剤、ウイルスポリメラーゼの阻害剤、細胞内へのウイルス侵入の遮断薬、ヤヌスキナーゼ阻害剤に限定されず、炎症メディエータの阻害剤も含む。
【0351】
特定の実施形態では、抗ウイルス剤は、レムデシビル、アルビドールHCl、リトナビル、ロピナビル、ダルナビル、リバビリン、クロロキン及びヒドロキシクロロキンのようなその誘導体、ニタゾキサニド、カモスタットメシル酸塩、抗IL 6及び抗IL 6受容体抗体(例えば、トシリズマブ、シルツキシマブ及びサリルマブ)及びバリシチニブリン酸塩からなる群から選択される。
【0352】
SARS-CoV-2による感染の治療又は予防において、本発明の融合タンパク質は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体と組み合わせられ得る。抗SARS-CoV 2モノクローナル抗体は、限定されないが、Eli Lilly and Companyによって開発されたバムラニビマブ(LY-CoV555 20、LY3819253)、エテセビマブ(LY-3832479、LY-COV016、JS-016、NP-005)、REGN10933(カシリビマブ)及びREGN10987(イムデビマブ)の混合物であり、Regeneronによって開発されたREGN-COV2、Vir Biotechnology及びGlaxoSmithKlineによって開発されたソトロビマブ(VIR-7831、GSK4182136)、Celltrionによって開発されたCT-P59、抗体AZD8895及びAZD1061の組合せであり、Astra Zenecaによって開発されたAZD 7442、Junshi Biosciencesによって開発されたJS016、Tychan Pte Ltdによって開発されたTY027、Brii Biosciencesによって開発されたBRII-96及びBRII-98、Sinocelltech Ltdによって開発されたSCTA01、Ology Bioservicesによって開発されたADM03820、Boehringer Ingelheimなどによって開発されたBI767551及びCorat Therapeuticsによって開発されたCOR-101を含む。
【0353】
コロナウイルスに結合する機能は別として、ACE2はまた、高血圧症(高い血圧を含む)、鬱血性心不全、慢性心不全、急性心不全、収縮性心不全、心筋梗塞、動脈硬化、腎機能障害、腎不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺高血圧症、腎線維症、慢性腎不全、急性腎不全、急性腎障害、炎症性腸疾患及び多臓器障害にも関与している。従って、本発明の融合タンパク質は、これらの障害及び疾患の治療にも使用され得る。
【0354】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び記載されているが、そのような図示及び説明は、具体的又は例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形が、図面、開示、及び従属項の検討から、請求された発明を実施する当業者によって理解されかつ行われ得る。
【0355】
詳細な説明は、実際はただの例示であり、用途及び使用を限定する意図はない。以下の実施例は本発明をさらに説明するが、本発明の範囲をそれに限定するものではない。様々な変更及び修正が、本発明の説明に基づいて当業者によって行われることが可能であり、そのような変更及び修正は本発明にも含まれる。
【0356】
「実施例」
A.材料及び方法
1.融合タンパク質の構築
本発明の四つの融合タンパク質を構築した。さらに、ヒトIgG4のFc部分の代わりにヒトIgG1のFc部分を備える4つの融合タンパク質を、比較例として構築した。以下の表1は、融合タンパク質の部分を示す。
【表1】
【0357】
構築物をコードする核酸配列を、HindIII/XhoI制限酵素を使用して発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen V860-20)のバリアントに挿入した。配列番号17に記載のアルブミンシグナル配列を構築物のN末端に結合させた。次に、FreeStyle発現システム(ThermoFisherから利用可能)を使用して293細胞を一過性にトランスフェクトするために発現ベクターを使用した。6日目に、サンプルを細胞生存率及び細胞密度について分析し、上清を二段階遠心分離によって回収し、滅菌濾過した。物質をプールし、その半分を精製まで-80℃で保存した。残りの半分をプロテインA精製に用いた。さらに、少量のサンプル(0.5mLまで)をプールから取り出し、バイオレイヤー干渉法(BLI)によって発現を測定した。
【0358】
2.タンパク質精製
一過性物質の精製を、プロテインAカラムクロマトグラフィ、続いて分取SECにより実行した。プロテインA精製のために、サンプルを装填した後、カラムを洗浄し、40mM NaAc(pH=3.0)を使用してACE2-Fc融合タンパク質を溶出した。溶出後、まず1M Tris(pH=9.0)を用いてサンプルをpH=7.5に中和し、続いて50mM Tris(pH=7.5)、300mM NaClを用いて1:1に希釈し、スピンフィルタを用いて10mg/mLに濃縮した。濃縮したタンパク質を、50mM Tris(pH=7.5)、150NaClを用いて平衡化したSuperdex 200 increase(GE Healthcare)カラムを用いてさらに精製した。メインピークをプールし、タンパク質濃度を1mg/mLに調整し、滅菌フィルターに通し、さらなる使用まで4℃で保存した。
【0359】
3.勾配分光法(slope spectrometry)によるタンパク質濃度(A280)の測定
各種ACE2-Fc融合タンパク質の精製物質を勾配分光法により分析し、タンパク質含有量を測定した。緩衝剤の干渉がないことを確認し、可変の光路長を使用することによって、精製プロセス中のサンプルの前希釈を前提条件とすることなく正確にタンパク質濃度を測定した。
【0360】
4.分析用サイズ排除クロマトグラフィによる高分子量種の測定
各種精製タンパク質構築物を、分析用サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により分析した。簡潔に、Acquity UPLC Protein BEH SEC カラム(4.6mm×150mm、200Å(20nm)、1.7μm)を使用して、Waters H-Class bio UPLCシステムでサンプルを分析した。検出は280nmにおけるUV吸光度に基づいた。20μgのサンプルを装填し、移動相は20mMリン酸ナトリウム(pH=7.0)、150mM NaClからなり、タンパク質を0.3mL/分の流速において均一濃度で溶出した。
【0361】
5.安定性試験
8個全ての精製されたFc融合タンパク質について、安定性試験は、密閉バイアルにおいて1mg/mLの濃度の740μL(300μLバックアップ)アリコートを用いて実行した。各Fc融合タンパク質の一つのバイアルを最初に37℃で3週間インキュベートした。続いて、Fc融合タンパク質ごとに2番目のバイアルを加えてインキュベートした。加えて、さらに2週間後、Fc融合タンパク質ごとに3番目のバイアルを加えてインキュベートした。インキュベートをさらに1週間続けて、1番目の組のバイアルを6週間、2番目の組のバイアルを3週間及び3番目の組のバイアルを1週間インキュベートした。最後に、安定性試験の最後の週に並行して、4番目の組のバイアルに、-80℃で3回の凍結融解(F/T)サイクルを行った。6週間、3週間及び1週間の試験間隔の全てのサンプルを、F/Tサンプルと一緒に、上述した方法を用いて分析用SECで分析した。T=0については、精製後の試験からのデータを用いた。
【0362】
6.PepmapによるO-グリコシル化の測定
精製されたACE2-Fc融合タンパク質を、UPLC-RP/MSを使用するペプチドマッピングによって分析した。タンパク質を塩酸グアニジン中で変性させ、次に、DTTを用いて4℃で1時間還元し、室温、暗所において30分間、ヨードアセトアミドを用いてアルキル化した。サンプルに対してトリプシン及びLys-C酵素の混合によるタンパク質分解消化を4時間行った。タンパク質分解ペプチドを、C18逆相UPLC(例えば、Peptide BEH C18、2.1×300mm、300Å(30nm)、1.7μm)カラム上で、移動相としてMilli-Q中0.1%ギ酸及びアセトニトリルを用いて、初期保持時間4.5分で60分のペプチドマッピンググラジエントにおいて分離した。糖ペプチドのカバレッジを改善するために、2つの異なる衝突エネルギーを適用した(15から30eVまでの低衝突エネルギー及び60から100eVまでの高衝突エネルギー)。ペプチドの検出は、214nmのUVによって、及びWaters製のXevo G2-XS QToF質量分析計を用いた質量分析によって行った。分析をMSEモードで実行して、MSによる質量検証(mass verification)に加えて断片化(MS/MS)によるペプチド検証(peptide verification)を得た。デコンボリューションのためのWaters MaxEnt3を含む、Waters UNIFI 1.9ソフトウェアを使用して、MSEスペクトルを処理した。Glu1-フィブリノペプチドBを、別の参照プローブを用いて実行中に注入し、ロックマス補正のために使用した。デコンボリュートされた質量を、前駆体イオン質量に対して10ppmのイオン許容差、及び断片イオン質量に対して20ppmのイオン許容差を有する理論的配列(theoretical sequence)に一致させた。グリコシル化ペプチドの同定のために、C-、N-及びO-グリカンの限定されたライブラリーを検索に含めた。作業の信頼性を高めるために、グリコシル化ペプチドの断片スペクトルをマーカーイオン(例えば、m/z 292及び204)の存在について調べた。加えて、シーケンスカバレッジマップについては、3つの断片イオンを有しないペプチドを除外した。
【0363】
7.SARS-CoV-2のスパイクタンパク質への融合タンパク質の結合の測定
a)SARS-CoV-2(野生型)のスパイクタンパク質を用いた表面プラズモン共鳴。
【0364】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質への融合タンパク質の結合を、市販のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(ACROBiosystems、ニューアーク、米国)を用いて表面プラズモン共鳴(Biacore)により分析した。
【0365】
材料
hisタグ及びAviTagを有するSARS-CoV-2 RBDは、Acrobiosystems(カタログ番号SPD-C82E9、ロット番号BV3541b-2043F1-RD)からである。タンパク質を製造業者の推奨に従って再構成し、等分し、液体窒素中で急速凍結し、使用するまで-80℃で保存した。未使用のアリコートを各測定に使用した。
【0366】
ランニングバッファは、10×HBS-EP+(Cytiva)をMilliQ水で1:10に希釈して調製した1×HBS-EP+であった。希釈した緩衝液を0.1μmフィルターで濾過した。
【0367】
Biotin CAPtureキット(Cytiva)及びBiacore X-100システムを測定に使用した。
【0368】
方法
ACE2-Fcsを1X HBS-EP+緩衝液を用いて200nMに希釈した。濃度は、A280、0.1%の1.84を使用して、10mm石英キュベット中でUV分光法によって確認した。200nM ACE2-Fcを1X HBS-EP+を用いて40、8、1.6及び0.32nMに希釈した。解凍したSARS-CoV-2 RBDドメインを1X HBS-EP+を用いて1:100に希釈して2μg/mLの濃度にした。
【0369】
シングルサイクルキネティック法を使用した。流量は30μL/分であった。各測定の前に、再生溶液(regeneration solution)の3回の注入を用いてチップを調整した。AviTag(Acrobiosystems)によるSARS-CoV-2の固定化時間は30秒であった。リガンド固定化後、各種濃度のACE2-Fc(0.32、1.6、8、40及び200nM)を、低い方から高い方へと開始するシングルサイクルキネティックモードにおいて、固定化リガンド上に注入した。ベースラインは、緩衝液注入のみによる2つのサイクルから得た。
【0370】
KDを生じる1:1結合モデルを用いて、データをBiacoreソフトウェアにおいて評価した。
【0371】
b)SARS-CoV-2のデルタバリアントのスパイクタンパク質との表面プラズモン共鳴。
【0372】
ACE2-Fc構築物を1×HBS-EP+緩衝液を用いて1nMに希釈した。解凍したSARS COV-2スパイク三量体バリアント(AcroBiosystemsから入手、カタログ番号SPN-C82E7)を1×HBS-EP+緩衝液を用いて200nMに前希釈し、続いて1×HBS-EP+緩衝液を用いて20.00nM、6.67nM、2.22nM、0.74nM及び0.25nMの最終アッセイ濃度に希釈した。実験の前に、Amine coupling kit(NHS/EDC)を用いて1000RUの捕捉レベルまで抗ヒトIgG Fc抗体によってチップを固定化した。各実験の前に、チップを調整するために、リガンドACE2-FC構築物及び分析物スパイク三量体を用いて6回の開始サイクルを行った。各サンプル注入の前に、その後のブランク減算のためにブランク緩衝液サンプルを注入した。分析にはシングルサイクル法を用いた。流速を20μL/minに設定し、ランニングバッファとして1×HBS-EP+を使用した。ACE2-Fc構築物についての固定化時間は80秒であったが、サンプル接触時間は会合時間については600秒、解離時間については900秒であった。スパイク三量体サンプルを、シングルサイクル動態アッセイにおいて、固定化されたACE2-Fc構築物上に注入し、三重測定において低サンプル濃度から高サンプル濃度へと開始した。各サンプルサイクルの後、チップ表面をMgCl2の3M溶液で再生した。動態値は、Biacore T200評価ソフトウェアによるセンサーグラムの二重参照(リファレンスフローセル及びブランク緩衝液を参照)動態スクリーニングによって得た。各サンプルサイクルのベースラインプロット及び捕捉レベルプロットを、アッセイ検証のために生成した。
【0373】
c)ELISA1
【0374】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質への融合タンパク質の結合を定量化するために、ELISAアッセイを行った。ELISAプレートを、コーティング緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NAHCO3、7.7mM NaN3、pH9.6)中の市販のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(ACROBiosystems、ニューアーク、米国)0.2μg/ウェルを用いてコーティングした。ウェル当たり300μlの洗浄緩衝液(TBS中0.05%Tween-20、pH7.4)を用いてウェルを4回洗浄した。ウェルを300μlのブロッキング緩衝液(洗浄緩衝液中2%BSA、pH7.4)を用いて37℃で90分間ブロッキングした後、ウェルあたり300μlの洗浄緩衝液(TBS中0.05%Tween-20、pH7.4)を用いてウェルを4回洗浄した。次に、100μlの連続希釈した融合タンパク質を各ウェルに添加し、ウェルを37℃で1時間インキュベートした。融合タンパク質をサンプル希釈緩衝液(洗浄緩衝液中0.5%BSA、pH7.4)において希釈した。インキュベーション後、ウェル当たり300μlの洗浄緩衝液(TBS中0.05%Tween-20、pH7.4)を用いてウェルを4回洗浄した。次に、100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ヒトFc抗体(洗浄緩衝液中0.5%BSA(pH7.4)において希釈)を各ウェルに添加し、ウェルを37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ウェル当たり300μlの洗浄緩衝液(TBS中0.05%Tween-20、pH7.4)を用いてウェルを4回洗浄した後、10ml基質溶液A(50mM Na2HPO4×12H2O、25mMクエン酸、pH5.5)中200μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ基質(8μl H2O2及び100μl 10mg/ml TMBを添加し、ウェルを暗所において37℃で20分間インキュベートした。50μlの1M硫酸を各ウェルに添加することによって反応を停止させた。プレートをELISAリーダーにおいてOD450nmで読み取った。
【0375】
ACE2へのSARS-CoV-2スパイクS1タンパク質の結合の阻害を、製造者の指示に従って、適合された中和手順を用いてACE2:SARS-CoV-2スパイクS1阻害剤スクリーニングアッセイキット(BPS Bioscience、カタログ番号#79945)を使用することにより試験した。簡潔に、ビオチン化SARS-CoV-2スパイクS1タンパク質(25nM)を、96ウェル中和プレート中においてACE2-Fc融合タンパク質の連続希釈物と共にゆっくり振盪しながら室温で1時間インキュベートした(=中和混合物)。
【0376】
ACE2タンパク質を、1μg/mLの濃度でニッケルコーティング96ウェルプレートに付着させ、ゆっくり振盪しながら室温で1時間インキュベートした。未結合ACE2を洗浄ステップにより除去した。続いて、中和混合物をACE2コーティングプレートに移し、プレートをゆっくり振盪しながら室温で1時間インキュベートした。10分間のブロッキングステップの後、プレートをストレプトアビジン-HRPと共にゆっくり振盪しながら室温で1時間インキュベートした。洗浄及び10分間のブロッキングの後、HRP基質を添加し、プレートを化学発光リーダーで分析した。
【0377】
d)ELISA2
【0378】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質への融合タンパク質の結合を定量化するために、ELISAアッセイを行った。ELISAプレート(NUNC)を、コーティング緩衝液(PBS)中100μL/ウェルを使用して、1.0μg/mLの市販のSARS-CoV-2スパイクタンパク質(SPN-C52H9、ACROBiosystems)を用いてコーティングした。ウェルを4℃で一晩インキュベートした。翌日、コーティングを除去し、ウェル当たり300μlの洗浄緩衝液(10mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、0.05%Tween-20、pH=7.5)を用いてウェルを3回洗浄した。150rpmで振盪しながら、200μlのブロッキング緩衝液(1%BSAを加えた洗浄緩衝液)を用いて室温で1時間ウェルをブロッキングした。その後、ブロッキング緩衝液を除去し、100μlの連続希釈した融合タンパク質を各ウェルに添加し、ウェルを室温で1時間、150rpmでインキュベートした。融合タンパク質をサンプル希釈緩衝液(洗浄緩衝液中1%BSA)において希釈した。インキュベーション後、ウェル当たり300μlの洗浄緩衝液を用いてウェルを3回洗浄した。次に、100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgG4Fc抗体(Southern Biotech、9200-05、ブロッキング緩衝液中1:4000希釈)を各ウェルに添加し、ウェルを振盪しながら室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ウェル当たり300μlの洗浄緩衝液を用いてウェルを3回洗浄した後、100μlのTMB溶液(Invitrogen、SB02)を添加し、ウェルを室温で2分間インキュベートした。ウェル当たり100μlの1M HClを用いて反応を停止させ、遮光条件下において振盪しながら室温で30秒間インキュベートした。暗所において室温で15分間さらにインキュベートした後、プレートをマイクロプレートリーダー(Synergy HTX、BioTek)においてOD655を参照してOD450nmで読み取った。濃度(μg/mL)を、4パラメータロジスティック曲線フィットモデルを使用してOD450(バックグラウンド減算後)に対してプロットした。
【0379】
8.融合タンパク質の存在下におけるSARS-CoV-2 Victoria/1/2020株による感染の分析。
SARS-CoV-2による感染の分析を、融合タンパク質の非存在下又は存在下においてVero細胞を用いて行った。SARS-CoV-2による感染を、イムノプラークの数を測定することにより検出した。
【0380】
VeroE6細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートした。ACE2-Fc融合タンパク質サンプルの6個の2倍連続希釈物を96ウェルトランスファープレート(複数)中に調製した。Victoria/1/2020 SARS-CoV-2野生型ウイルスを、およそ100プラーク形成単位[PFU]/ウェルの標的作用濃度において希釈物に連続的に添加し、37℃で60分から90分間インキュベートした。インキュベーション期間後、VeroE6細胞を有するアッセイプレートに中和混合物を移し、続いて37℃かつ5%CO2においてインキュベートした。60分から90分のインキュベーション期間後、カルボキシメチルセルロース(CMC)オーバーレイ培地をウェルに添加し、プレートをさらに24時間インキュベートした。次に、細胞を固定し、SARS-CoV-2 RBD Sタンパク質に対して特異的な抗体ペアを使用して染色した。TrueBlueTM基質を用いてイムノプラークを可視化し、Immunospot Analyzer(CTL)を用いて計数した。イムノプラーク数をSoftMax Pro(Molecular Devices)に出力し、血清サンプルの中和力価を、その特定のサンプルに対する50%中和力価(ID50)に対応する希釈の逆数として計算した。
【0381】
9.ACE2活性アッセイ
AbcamのACE2活性アッセイキット(ab273297)を使用して、構築物の酵素活性を測定した。アッセイは、製造業者のマニュアルに従って行った。2つの市販のACE2-Fc融合タンパク質(Genscript(カタログ番号Z03484-1)及びAcrobiosystems(カタログ番号AC2-H5257)を参照タンパク質(Ref1及びRef2)として使用した。このアッセイは、合成ペプチジル-MCA誘導体の切断に基づく。この基質は、活性ACE2によって切断され、ペプチジル-MCAと比較して420nm(320nmで励起)で増加した蛍光強度を有する遊離MCAフルオロフォアを放出する。ACE2からの切断により放出されたMCAの量を、蛍光強度の増加の傾き及び既知のMCA濃度を用いた検量線から計算した。
【0382】
10.ウイルス中和アッセイ
【0383】
ウイルス株
SARS-CoV-2-Munich-TUM-1(EPI_ISL_582134)を、ミュンヘン(2020年1月)のCOVID-19陽性患者の鼻咽頭スワブから単離し、DMEM培地(5%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、200mmol/L L-グルタミン、1%MEM-非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム(全てGibco)中のVeroE6細胞で成長及び増殖させた。
【0384】
SARS-CoV-2 D614Gを、ドイツ、ミュンヘン(2020年4月)の患者材料から単離し、Caco-2細胞で成長させ、VeroE6細胞で増殖させた。
【0385】
フランクフルト由来のSARS-CoV-Fra-1(AY291315.1)を、DMEM培地(10%ウシ胎児血清(FCS)、100μg/mlストレプトマイシン、100IU/mlペニシリン)(全てGibco)中のVeroE6細胞で成長させ、増殖させた。
【0386】
ウイルス中和アッセイ、続いてインセルELISA
VeroE6細胞を、5%FCS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、200mmol/L L-グルタミン、1%MEM-非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム(全てGibco)を加えたDMEM培地(Gibco)中、1.6E04細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、37℃かつ5%CO2において一晩インキュベートした。ACE2-Fc融合タンパク質の連続希釈物を未使用培地中においてウイルスと混合し、37℃で1時間プレインキュベートした。中和したウイルス溶液を用いてVeroE6細胞を37℃で1時間、0.3のMOIにおいて感染させた。次に、中和混合物を除去し、培養培地を添加し、細胞を37℃で24時間インキュベートした。モック細胞は、培養培地と共にインキュベートした非感染VeroE6細胞を示す。24時間後、PBSを用いて細胞を1回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(ChemCruz)を用いて室温で10分間固定した。PBSを用いた洗浄ステップに続いて、固定したVeroE6細胞をPBS中の0.5%サポニン(Roth)を用いて室温で10分間透過処置をした。次に、透過処置溶液を除去し、細胞をPBS中の0.1%サポニン及び10%ヤギ血清(Sigma)の混合物を用いて室温で1時間穏やかに振盪しながらブロッキングした。続いて、VeroE6細胞を、1%FCSを加えたPBS中の抗dsRNA J2抗体(Jena Bioscience)の1:500希釈物を用いて、振盪しながら4℃で一晩インキュベートし、続いて洗浄緩衝液(0.05%Tween-20(Roth)を加えた1×PBS)を用いて4回の洗浄ステップを行った。次に、プレートを、1%FCSを加えたPBS中のヤギ抗マウスIgG2a-HRP抗体(Southern Biotech)の1:2000希釈物を用いてインキュベートし、穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートした。4回の洗浄ステップの後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Invitrogen)をウェルに添加し、暗所において10分間インキュベートした。2N H2SO4(Roth)の添加によって呈色反応を停止させた後、450nm及び560nmでのTecan infinite F200プロプレートリーダーでの比色検出を行った。非感染VeroE6細胞により得られた値に対して正規化した後、光学密度を中和パーセント値に変換し、50%阻害濃度(IC50値)を計算した(Graphpad Prism)。
【0387】
11.表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた、Fc受容体に対するACE2融合タンパク質の結合親和性の測定
Biacore T200をFc受容体結合試験に使用した。FcγRI及びFcγRIIIa実験のために、1.5nMの濃度を有するHisタグ付きFcγRI及びFcγRIIIaを、CM5チップ上の共有結合的に固定化された抗hisタグ抗体上に5μL/分の流速で90秒間溶液を注入することによって捕捉した。ランニングバッファはHBS-EP+(pH7.4)(Cytiva)であった。5つの異なる濃度のACE2-Fc構築物をシングルサイクルキネティックモードにおいて注入した(FcγRIを用いた実験については3.7から300nM及びFcγRIIIaについては25から2000nM)。FcγRI結合データを不均一リガンドモデルに当てはめ、第1の結合定数を報告した。FcγRIIIa結合データを二状態反応モデルに当てはめ、結合定数を導出した。FcRn実験のために、FcRnをCM5チップ上に約50RU(レスポンスユニット)まで共有結合的に固定化した。サンプル緩衝液はHBS-EP+(pH6.0)(Cytiva)であった。ACE2-Fc構築物を、シングルサイクルキネティックモードにおいて、205から8000nMの5つの異なる濃度において注入した。FcRn結合を、定常状態親和性フィットを用いて評価した。
【0388】
12.細胞生存率アッセイによるウイルス中和の測定
【0389】
ウイルス株
SARS-CoV-2-Munich-TUM-1(EPI_ISL_582134)を、ミュンヘン(2020年1月)のCOVID-19陽性患者の鼻咽頭スワブから単離し、DMEM培地(5%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、200mmol/L L-グルタミン、1%MEM-非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム(全てGibco)中のVeroE6細胞で成長及び増殖させた。
【0390】
SARS-CoV-2 D614Gを、ドイツ、ミュンヘン(2020年4月)の患者材料から単離し、Caco-2細胞で成長させ、VeroE6細胞で増殖させた。
【0391】
SARS-CoV-2 B.1.1.7を、Institute for Microbiology of the Bundeswehr(GISAID:EPI_ISL_755639)のDr.Bugertから入手し、VeroE6細胞で増殖させた。
【0392】
SARS-CoV-2 B.1.351を、LGL(オーバーシュライスハイム、ドイツ)から入手した。これはドイツの患者から単離され、これをCaco-2細胞で成長させ、VeroE6細胞で増殖させた。バリアントの同一性を配列決定により確認した。
【0393】
感染の24時間前に、ヒトアンジオテンシン変換酵素2受容体、ACE2(A549-hACE2)を過剰発現するように設計されたヒト肺上皮A549細胞(ATCC-CCL-185)を、2%ウシ胎児血清、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び1%NEAAを含有するDMEM中において、透明底を備える96ウェル白色ウェルハーフエリアプレート(Corning)に、ウェル当たり15,000細胞で播種した。
【0394】
SARS-CoV-2-Munich-TUM-1及びSARS-CoV-2バリアントD614G、B1.1.7及びB.1.351を、VeroE6細胞で成長させた。このために、感染の一日前に15×106個のVeroE6細胞を各T150フラスコに播種した。感染は、37℃、5%CO2において0.01のMOIでウイルスを添加することによって行った。ウイルスの添加一時間後、培地を、10%ウシ胎児血清、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン及び1%NEAA、200mmol/l L-グルタミン及び1%ピルビン酸ナトリウム(全てGibco)を含有するDMEMに交換した。
【0395】
感染を、ウイルス誘導性細胞傷害性の発光測定読み出しを使用して測定した。簡単に説明すると、感染72時間後、細胞を製造業者の指示に従って処置した。15μlのCellTiter-Glo 2.0試薬(Promega、ウィスコンシン州、米国)を各ウェルに添加し、暗所、室温で10分間インキュベートし、Infinite F200マイクロプレートリーダー(Tecan)を使用して発光を記録した(積分時間0.5秒、フィルター無し)。細胞の生存率及び各ウイルス分離株への対応する感染力価は、感染細胞を未処置の対照細胞(100%に設定)に正規化させることにより計算した。構築物の連続希釈を実行し、指定された量のSARS-CoV-2臨床分離株のウイルスストックを用いて混合すると、80%の細胞毒性をもたらした。1時間のプレインキュベーション後、構築物及びそれぞれのSARS-CoV-2分離株の混合物をA549-hACE2細胞に添加した。感染の72時間後、ウイルス誘導性細胞傷害性を上述のように測定した。
【0396】
13.プラークアッセイによるウイルス力価(virus titer)の測定
ウイルス力価を、いくつかの修正を加えてBaer等(2014年)J Vis Exp,e52065に記載のように測定した。簡潔に、HepG2又はVeroE6細胞を、5% FCS、1% P/S、200mmol/L L-グルタミン、1% MEM-NEAA、1% ピルビン酸ナトリウム(全てGibco)を加えたDMEM培地(Gibco)中に5E05細胞/ウェルで12ウェルプレートにおいて播種し、37℃かつ5%CO2で一晩インキュベートした。細胞を、細胞培養培地中のウイルスサンプルの連続希釈物を用いて37℃で一時間感染させた。上清を捨てた後、最小必須培地(Gibco)で希釈した1mLの5%カルボキシメチルセルロース(Sigma)をウェルごとに添加し、明らかなプラークが出現するまでプレートを37℃でインキュベートした。上清を除去した後、細胞を室温で30分間、10%パラホルムアルデヒド(ChemCruz)を用いて固定した。次に、PBSによる洗浄ステップを実施し、続いて1%クリスタルバイオレット(Sigma、20%メタノール及び水で希釈)を添加した。室温で15分間インキュベートした後、PBSを用いて溶液を洗い流し、プレートを乾燥させた。サンプルのウイルス力価(PFU/mL)を、希釈についてのプラークの平均数及び総希釈倍率の逆数を計数することによって測定した。
【0397】
B.結果
図1は、アミノ酸18から732を備える短いACE2断片を有する融合タンパク質(構築物1、3、5及び7)が、ACE2のアミノ酸18から740を備える融合タンパク質(構築物2、4、6及び8)と比較してより高い収率を得られたことを示す。
【0398】
さらに、アミノ酸18から732を備える短いACE2断片を有する融合タンパク質(構築物1、3、5及び7)は、ACE2のアミノ酸18から740を備える融合タンパク質(構築物2、4、6及び8)よりも、タンパク質凝集体を示す高分子量種のパーセンテージが低かった(
図2参照)。同じことを3週間又は6週間の保存後に観察した(
図10参照)。
【0399】
表面プラズモン共鳴において、全ての構築物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対して同等の結合を示した(表2参照)。
【表2】
【0400】
同等の結果が、SARS-CoV2のデルタバリアントのスパイクタンパク質で得られた(表3参照)。
【表3】
【0401】
図3では、構築物1、3、5及び7は本質的にO-グリコシル化を有さないが、一方、構築物2、4、6及び8が様々な量の単一及び二重O-グリカンを有することを示す。
【0402】
図4は、全ての構築物1から8が、ELISA1によって測定されるように、ACE2へのSARS-CoV-2スパイクS1タンパク質の結合を阻害したことを示す。
【0403】
構築物1、3、5及び7は、SARS-CoV-2 Victoria/1/2020株によるVeroE6細胞の感染をほぼ完全に阻害した(
図5参照)。全ての構築物は、0.5nMの範囲のIC50値を用いてSARS-CoV-2 Victoria/1/2020株を中和した。
【0404】
構築物1、2、5及び6は、30分間のインキュベーション後に同量の合成ペプチジル-MCA誘導体を切断するが、活性ACE2部位に変異を有する構築物は、酵素活性を完全に喪失した(
図6a及び
図6b参照)。
【0405】
全ての構築物1から8は、150nMの範囲のIC50値でSARS-CoVを中和し(
図7a参照)、10nMの範囲のIC50値でSARS-CoV-2を中和し(
図7b参照)、1nMの範囲のIC50値でSARS-CoV-2 D614Gを中和した(
図7c参照)。
【0406】
ACE2-IgG4-Fc融合タンパク質は、IgG1対応タンパク質と比較して、FcγRIに対してわずかに低い親和性を示した(表4参照)。ACE2-IgG4-FcはFcγRIIIaへの結合を示さなかったが、これはACE2-IgG1-Fc分子と対照的である(表4参照)。4つ全ての構築物は、FcRnに対して同様の親和性を有した(表4参照)。
【表4】
【0407】
構築物1は、野生型SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に、ELISA2によって測定される25.9ng/mlのEC50値で結合する(
図8参照)。
【0408】
図9は、配列番号6及び8に記載のACE2-Fc融合タンパク質(構築物1及び3)が、試験したSARS-CoV-2の全ての臨床分離株を中和することを示す。より低いIC50(50%阻害濃度)値によって証明されるように、SARS-CoV-2バリアントの感染性がより高いほど、融合タンパク質はそれをより良好に中和する。特に、融合タンパク質は、スパイクタンパク質のN末端ドメインに対するほとんどのモノクローナル抗体及び受容体結合モチーフに対するモノクローナル抗体による中和への抵抗を示すSARS-CoV-2バリアントB.1.1.7及びB.1.351に対して最も効果的である(Wang等(2021年)Nature)。さらに、B.1.351バリアントは、ワクチン接種された個体からの回復期血漿及び血清による中和からの回避を示す。
【0409】
各種構築物及び臨床分離株についてのIC50値を表5に示す。
【表5】
【配列表】
【国際調査報告】