(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】修飾可溶性T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231101BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231101BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231101BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231101BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231101BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231101BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231101BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231101BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20231101BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231101BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20231101BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231101BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20231101BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12N1/00 A
C12N15/13
A61K38/02
A61K39/395 N
C12P21/08
C12P21/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526385
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 CN2021127290
(87)【国際公開番号】W WO2022089569
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011180613.X
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イン,ハンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】シュ,マン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リーイン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ハンハン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】グ,ジジエ
(72)【発明者】
【氏名】ゴロロボブ,ゲンナジー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジーシェン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE08
4B064CE20
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AC14
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4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA41
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4C084NA14
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA15
(57)【要約】
本発明では、(i)抗体定常ドメインの全部または一部に融合したTCRα鎖の全部または一部、および(ii)抗体定常ドメインの全部または一部に融合したTCRβ鎖の全部または一部を含む、改変キメラ可溶性T細胞受容体(ETCR)を提供する。(i)および(ii)は、設計したリンカー、TCRと抗体ドメインとの間の設計した結合インターフェース、およびそのETCRを安定化するTCRドメインにおける1つまたは複数の変異原をそれぞれ含む。ETCRが、特異的ペプチド-MHC(pMHC)複合体を認識し、生物学的機能を示すことにより特徴づけられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRα鎖可変ドメイン(TCR Vα)とそれに動作可能に結合する第1の抗体定常ドメイン(C1)とを含む第1のポリペプチド、およびN末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRβ鎖可変ドメイン(TCR Vβ)とそれに動作可能に結合する第2の抗体定常ドメイン(C2)とを含む第2のポリペプチドを含む、ポリペプチド複合体であって、C1およびC2が、その天然の鎖間結合および相互作用を介して二量体を形成することが可能である、ポリペプチド複合体。
【請求項2】
a)C1が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEからなる群から選択される改変CH1ドメインを含み、
b)C2が、ヒト免疫グロブリン由来の改変λまたはκ軽鎖定常ドメイン(CλドメインまたはCκドメイン)を含み、前記Cλドメインは、Cλ1、Cλ2、Cλ3、Cλ6およびCλ7からなる群から選択され、前記Cκドメインは、Cκ1、Cκ2、Cκ3およびCκ4からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項3】
a)C1が、ヒト免疫グロブリン由来の改変λまたはκ軽鎖定常ドメイン(CλドメインまたはCκドメイン)を含み、前記Cλドメインは、Cλ1、Cλ2、Cλ3、Cλ6およびCλ7からなる群から選択され、前記Cκドメインは、Cκ1、Cκ2、Cκ3およびCκ4からなる群から選択され、
b)C2が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEからなる群から選択される改変CH1ドメインを含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記C1が、配列番号11、13、15および17のいずれか1つによる改変CH1を含み、ならびに/または前記C2が、配列番号1、3、5、7および9のいずれか1つによる改変Cλを含む、請求項2に記載のポリペプチド複合体。
【請求項5】
第1のVαが、第1のコンジャンクションドメインを介してC1に動作可能に結合し、第1のVβが、第2のコンジャンクションドメインを介してC2に動作可能に結合する、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記C1が、改変CH1を含み、前記C2が、改変Cλを含み、前記第1のコンジャンクションドメインが、配列番号19、21および23のいずれか1つを含み、ならびに/または前記第2のコンジャンクションドメインが、配列番号25、27、29、31、33および35のいずれか1つを含み、好ましくは、前記第2のコンジャンクションドメインが、EDLXNVXPを含み、前記Xが、任意のアミノ酸である、請求項5に記載のポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記改変Cλが、配列番号1,3、5、7および9のいずれか1つの30、31および33番目から選択される1つまたは複数の位置に変異原を含む、請求項2または3に記載のポリペプチド複合体。
【請求項8】
前記TCR Vβが、フレームワーク領域の10、13、19、24、48、54、77、90、91、123および125番目(IMGTナンバリング)から選択される1つまたは複数の位置に変異原を含み、好ましくは、前記TCR Vβが、13番目の位置に少なくとも1つの変異を含むか、または90および91番目の位置に少なくとも2つの変異を含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を含む第1の抗原結合部分、および第2の抗原結合部分を含む、多重特異性抗原結合複合体であって、前記第1の抗原結合部分が、第1の抗原特異性を有する、多重特異性抗原結合複合体。
【請求項10】
前記第2の抗原結合部分が、第1の抗原上の種々のエピトープに結合するか、または好ましくは、前記第1の抗原特異性とは異なる、第2の抗原特異性を有し、前記第1の抗原結合部分の第1のポリペプチドまたは前記第1の抗原結合部分の第2のポリペプチドのN末端またはC末端においてコンジュゲートする、請求項9に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項11】
前記第1および前記第2の抗原特異性の一方は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子に方向づけ、他方は、腫瘍関連抗原および/または腫瘍新生抗原に方向づける、請求項9に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項12】
前記第1の抗原結合部分が、TCR VαおよびTCR Vβを含み、前記Vαが、配列番号37、41および45から選択されるアミノ酸配列を含み、前記Vβが、配列番号39、43および47から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記第2の抗原結合部分が、配列番号49から選択されるscFvを含む、請求項9に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項13】
前記第1の抗原結合部分が、HLA*A*02:01-NY-ESO-1ペプチド(SLLMWITQC)またはHLA*A*02:01-GP100ペプチド(YLEPGPVTV)に結合し、前記第2の抗原結合部分が、分化抗原群3(CD3)に結合する、請求項9に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項14】
前記第2の抗原結合部分が、可動性リンカーを介して共有結合的にコンジュゲートする重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの両方を含む1本鎖可変断片(scFv)を含む、請求項9に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体、または請求項9~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含む、単離ベクター。
【請求項17】
請求項15に記載の単離ポリヌクレオチド、または請求項16に記載の単離ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体、または請求項9~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体を含む、コンジュゲート。
【請求項19】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項9~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体を発現させる方法であって、前記ポリペプチド複合体が発現する条件下で請求項17に記載の宿主細胞を培養する工程を含む。
【請求項20】
請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項9~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項21】
それを必要とする対象における症状を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項9~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項22】
前記第1の抗原および前記第2の抗原がともに調節される場合、前記症状を緩和、除去、治療または予防することができる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
疾患または症状の検出、診断、予後予測または治療のための、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項9~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、改変キメラ可溶性T細胞受容体およびこの組成物、ならびに疾患の治療における療法に一般に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Tリンパ球は、主要組織適合分子(MHC)と関連するペプチドとして提示される多種多様な外来抗原に対する応答を介して適応免疫において中心的役割を果たす。ペプチド-MHC(pMHC)複合体の特異的認識は、T細胞受容体(TCR)と呼ばれる、膜結合し多成分の細胞表面糖タンパク質により達成される。天然TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と結合する、免疫グロブリンスーパーファミリーのヘテロ二量体細胞表面タンパク質である。TCRは、αβおよびγδ型で存在し、これらは、構造的に類似するが、かなり異なる解剖学的位置と、おそらくは、機能とを有する。特には、αβ-TCRは、95%を超えるあらゆるTリンパ球に出現し、ほぼ無制限の多様なレパートリーで会合して、ヒトに外因性および内因性の両方の疾患からの防御を中枢的にもたらす。
【0003】
抗体およびTCRは、抗原を特異的に認識する、わずか2種類の分子であり、TCRは、MHCにより提示される特定のペプチド抗原に対する唯一の受容体であり、このMHCでは、異質なペプチドが細胞における異常の唯一のサインとなることが多い。抗体と同様に、細胞内エピトープの治療標的を拡大するための薬物候補としての可溶性抗原特異的TCRおよびこの誘導体の開発への関心も持ち上がった。また、特異的TCR:pMHC相互作用は、感染症、疾患マーカーおよび対応するpMHC複合体を発現する特異的細胞を検出する強力な診断ツールとして利用することができる。しかし、抗体とは異なって、TCRは一般に、可溶性分子として発現する場合、非常に不安定であり、低発現収率、凝集およびミスフォールディングのような問題に直面することが多い。潜在的な説明として、大規模なグリコシル化、不安定な定常ドメインおよび非効率的鎖対形成が挙げられる。
【0004】
多くの論文では、それぞれのサブユニットを接続するヒンジ領域において天然ジスルフィド架橋を利用するTCRヘテロ二量体の生成について記載された(Garbocziら、(1996)、Nature384巻(6605号):134~141;Garbocziら、(1996)、PNAS USA91巻:11408~11412;Davodeauら、(1993)、J.Biol.Chem.268巻(21号):15455~15460;Goldenら、(1997)、J.Imm.Meth.206巻:163~169)。しかし、このようなTCRはTCR特異的抗体により認識され得るが、ミスフォールドした相補性決定領域(CDR)を示す天然リガンドを認識することは、いずれも示されていなかった。最近、国際公開第2004/074322号では、その天然リガンドを認識することが可能であり、一定期間にわたって安定であるように正しくフォールドされ、合理的な量の生成が可能な、可溶性TCRについて記載されている。このTCRは、定常ドメイン残基CαS48-CβT57間の人工ジスルフィド結合により結合する、TCRβ鎖細胞外ドメインに二量体化するTCRα鎖細胞外ドメインを含む。このような可溶性TCR型式に基づいて、画期的な二重特異性TCR薬物であるテベンタフスプ(Tebentafusp)が開発され、転移性メラノーマを有する患者に対する利点を示した。同様に、米国特許出願公開第2018/021682号では、定常ドメイン残基(CαR53、P89、Y10ならびにCβS54、A19およびE20)および定常ドメイン/可変ドメイン残基(Vα46、47(IMGTナンバリング)およびCβ60、61)間の別のいくつかの人工ジスルフィド結合も記載された。非常に最近では、Karenらは、可溶性TCRの計算支援的設計について記載した。Rosettaによる算出法および実験的スクリーニングの両方を使用して、彼らは、CαおよびCβにおいて7つの変異を同定し、これらは、完全長TCRの会合および発現を著しく向上させた(Karenら、(2020)、Nat.Comm.、11巻:2330)。特には、人工ジスルフィド結合または特に、定常ドメインにおいて、通常、高度にグリコシル化される変異原(mutagenesis)のいずれかによる天然TCRの修飾に基づいて設計された、このような可溶性TCRでは、薬物候補としての不特定の能力が潜在的に引き起こされ得る。このような欠点を回避するために、一部の場合では、このような可溶性TCRを大腸菌(E.coli)において生成し、相対的に複雑な製造手順を生じるタンパク質リフォールディングプロセスにより会合させる。
【0005】
TCRの可変(V)および定常(C)ドメインと抗体との間の高度の配列同一性(30%~70%)は、抗体Fab断片の重(H)および軽(L)鎖と同様に対形成するβシートサンドウィッチ構造にTCRがフォールドされることを示唆する。TCRおよび抗体Fabの類似の全体構造およびヘテロ二量体結合を考慮して、可溶性TCRを得るための代替方法としてTCR抗体キメラタンパク質を生成する試みがなされている。これまでに記載のキメラTCR型式は、a)免疫グロブリン様会合物を生成するための結晶化可能断片(Fc)ドメインへのTCRの全部または一部の直接注入、およびb)fab様会合物を生成するための追加の安定化ドメイン(例えば、Fc領域、ロイシンジッパー)を有するかまたは有しない抗体fabCドメインへのTCR Vドメインの注入を主に含む(Jackら、(1994)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91巻:12654~12658、Markら、(1987)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA84巻:2936~2940、Gregら、(1988)J.Biol.Chem.264巻(13号):7310~7316、Bernardら、(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88巻:8077~8081、Jonathanら、(1997)J.Exp.Med.186巻(8号):1333~1345、Jonathanら、(1999)Cell.Immunol.192巻:175~184、AU729、406、US6,911,204)。しかし、このようなキメラタンパク質の正しい機能は、わずかな場合において認められたが、発現レベルが極度に低いことが(30ng/ml~1μg/ml)、このタンパク質製剤としてのさらなる適用の妨げとなった。実際、多くの差異が、TCRおよび抗体構造の注意深い調査により明らかとなり、これまでのTCR-抗体キメラの単純な注入の不満足な結果に対する説明がもたらされた。TCRは、すべてのβ鎖の一般的特徴であると思われるようにCβドメインのループから突出しているため、Fabよりも中央を越えて広範にわたる(約56Å対約46Å)。また、TCRは、βシートがCα/Cβインターフェースにさらに並行な角度で交差するため、Fabよりも非対称性かつ沈み込んでおり、Cα/Cβについて擬似2回対称位置の中心を外れておよそ5Å移動する。この非対称性は、Cβと比較した場合、より小さいサイズのCαドメインにより強調される。したがって、野生型TCRおよび抗体の単純な注入の代わりに、構造的特徴に基づく包括的設計が、互換性を増強し、これにより安定かつ機能的キメラを生成するのに必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可溶性TCRの重要性を考慮すると、天然の機能および大きな開発可能性を有するこのような分子を生成する代替方法を提供することが望ましい。本発明では、真核生物発現系において安定、可溶性かつ機能性のTCR(ETCR)およびTCR誘導体(二重特異性ETCR)を生成した。その上、本発明の二重特異性TCRを使用して、強力なin vitroでの抗腫瘍活性を観察した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の簡単な概要
一態様では、N末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRα鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第1の抗体定常ドメイン(C1)とを含む第1のポリペプチド、およびN末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRβ鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第2の抗体定常ドメイン(C2)とを含む第2のポリペプチドを含む、ポリペプチド複合体であって、C1およびC2が、その天然の鎖間結合および相互作用を介して二量体を形成することが可能である、ポリペプチド複合体を本開示において提供する。特定の実施形態では、第1のTCRは、第1の抗原特異性を有する。
【0008】
特定の実施形態では、C1およびC2は、IgG1(IMGT受託番号:J00228、Z17370、AL122127、MG920252、MG92025、MG920246、MG920247、MG920248、MG920249、MG920250、MG920251、MG920253)、IgG2(IMGT受託番号:J00230、AJ250170、AF449616、AF449618、AF928742、MH025828、MH025829、MH025830、MH025832、MH025833、MH025834、MH025835、MH025836)、IgG3(IMGT受託番号:X03604、K01313、X16110、X99549、AJ390236、AJ390237、AJ390238、AJ390241、AJ390242、AL122127、AJ390247、AJ390252、AJ390254、AJ390260、AJ390262、AJ390272、AJ390276、MG920256、MG920255、MG920254、MH025837、MG920257、MG920258、MG920259、MG920260、MG786813、MG920261)、IgG4(IMGT受託番号:K01316、AL928742)、IgM(IMGT受託番号:X14940、K01307、X57331、AC254827)、IgA1(IMGT受託番号:J00220、IMGT000035)、IgA2(IMGT受託番号:J00221、M60192、S71043)、IgD(IMGT受託番号:K02875、X57331)およびIgE(IMGT受託番号:J00222、L00022、IMGT000025、AL928742)からなる群から選択される抗体重鎖(CH1ドメイン)、またはCλ1(IMGT受託番号:J00252、X51755)、Cλ2(IMGT受託番号:J00253、X06875、AJ491317)、Cλ3(IMGT受託番号:J00254、K01326、X06876、D87017)、Cλ6(IMGT受託番号:J03011)、Cλ7(IMGT受託番号:X51755、M61771、X51755、M61771、KM455557)、Cκ1(IMGT受託番号:J00241)、Cκ2(IMGT受託番号:M11736)、Cκ3(IMGT受託番号:M11737)、Cκ4(IMGT受託番号:AF017732)およびCκ5(IMGT受託番号:AF113887)からなる群から選択される軽鎖定常ドメイン(CλドメインまたはCκドメイン)を含む。
【0009】
特定の実施形態では、C1は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEからなる群から選択される改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変λまたはκ軽鎖定常ドメイン(CλドメインまたはCκドメイン)を含み、このCλドメインは、Cλ1、Cλ2、Cλ3、Cλ6およびCλ7からなる群から選択される。
【0010】
特定の実施形態では、C1は、ヒト免疫グロブリン由来の改変λまたはκ軽鎖定常ドメイン(CλドメインまたはCκドメイン)を含み、このCλドメインは、Cλ1、Cλ2、Cλ3、Cλ6およびCλ7からなる群から選択され、C2は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEからなる群から選択される改変CH1ドメインを含む。
【0011】
特定の実施形態では、a)C1は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ1ドメインを含み、b)C1は、ヒト免疫グロブリンG2(IgG2)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ1ドメインを含み、c)C1は、ヒト免疫グロブリンG3(IgG3)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ1ドメインを含み、d)C1は、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ1ドメインを含み、e)C1は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ2ドメインを含み、f)C1は、ヒト免疫グロブリンG2(IgG2)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ2ドメインを含み、g)C1は、ヒト免疫グロブリンG3(IgG3)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ2ドメインを含み、h)C1は、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ2ドメインを含み、i)C1は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ1ドメインを含み、j)C1は、ヒト免疫グロブリンG2(IgG2)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ3ドメインを含み、k)C1は、ヒト免疫グロブリンG3(IgG3)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ3ドメインを含み、l)C1は、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ3ドメインを含み、m)C1は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ6ドメインを含み、n)C1は、ヒト免疫グロブリンG2(IgG2)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ6ドメインを含み、o)C1は、ヒト免疫グロブリンG3(IgG3)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ6ドメインを含み、p)C1は、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ6ドメインを含み、q)C1は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ7ドメインを含み、r)C1は、ヒト免疫グロブリンG2(IgG2)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ7ドメインを含み、s)C1は、ヒト免疫グロブリンG3(IgG3)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ7ドメインを含み、t)C1は、ヒト免疫グロブリンG4(IgG4)由来の改変CH1ドメインを含み、C2は、ヒト免疫グロブリン由来の改変Cλ7ドメインを含む。
【0012】
特定の実施形態では、C1は、配列番号11、13、15および17のいずれか1つによる改変CH1を含み、ならびに/またはC2は、配列番号1、3、5、7および9のいずれか1つによる改変Cλを含む。
【0013】
特定の実施形態では、第1のVαは、第1のコンジャンクションドメインを介してC1に動作可能に結合し、第1のVβは、第2のコンジャンクションドメインを介してC2に動作可能に結合する。
【0014】
特定の実施形態では、C1は、改変CH1を含み、C2は、改変Cλを含み、ここで、第1のコンジャンクションドメインは、配列番号19、21および23のいずれか1つを含み、ならびに/または第2のコンジャンクションドメインは、配列番号25、27、29、31、33および35のいずれか1つを含み、好ましくは、第2のコンジャンクションドメインは、EDLXNVXPを含み、Xは、任意のアミノ酸である。
【0015】
特定の実施形態では、TCR Vβは、フレームワーク領域の10、13、19、24、48、54、77、90、91、123および125番目(IMGTナンバリング)から選択される1つまたは複数の位置に変異原を含み、好ましくは、TCR Vβは、13番目の位置に少なくとも1つの変異を含むか、または90および91番目の位置に少なくとも2つの変異を含む。
【0016】
特定の実施形態では、CλまたはCH1は、30、31および33番目から選択される1つまたは複数の位置に変異原を含む。
【0017】
別の態様では、前述のポリペプチド複合体を含む第1の抗原結合部分、および第2の抗原結合部分を含む、多重特異性抗原結合複合体であって、第1の抗原結合部分が、第1の抗原特異性を有する、多重特異性抗原結合複合体を最近の開示において提供している。
【0018】
特定の実施形態では、第2の抗原結合部分は、第1の抗原上の種々のエピトープに結合するか、または好ましくは、第1の抗原特異性とは異なる、第2の抗原特異性を有し、第1の抗原結合部分の第1のポリペプチドまたは第1の抗原結合部分の第2のポリペプチドのN末端またはC末端においてコンジュゲートする。
【0019】
特定の実施形態では、第1の抗原特異性および第2の抗原特異性は、2つの異なる抗原に方向づけるか、または1つの抗原上の2つの異なるエピトープに方向づける。
【0020】
特定の実施形態では、多重特異性抗原結合複合体は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含み、ここで、第1の抗原結合部分が、N末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRα鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第1の抗体定常ドメイン(C1)とを含む第1のポリペプチド、およびN末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRβ鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第2の抗体定常ドメイン(C2)とを含む第2のポリペプチドを含み、C1およびC2が、その天然の鎖間結合および相互作用を介して二量体を形成することが可能である。第1のTCRは、第1の抗原特異性を有する。
【0021】
特定の実施形態では、第2の抗原結合部分は、第1の抗原上の種々のエピトープに対する特異性を有する。
【0022】
特定の実施形態では、第2の抗原結合部分は、第1の抗原特異性とは異なる第2の抗原特異性を有し、第1の抗原結合部分の第1のポリペプチドまたは第1の抗原結合部分の第2のポリペプチドのN末端またはC末端においてコンジュゲートする。
【0023】
特定の実施形態では、第1および第2の抗原特異性の一方は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子に方向づけ、他方は、腫瘍関連抗原および/または腫瘍新生抗原に方向づける。
【0024】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、TCR VαおよびTCR Vβを含み、Vαは、配列番号37、41および45から選択されるアミノ酸配列を含み、Vβは、配列番号39、43および47から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、第2の抗原結合部分は、配列番号49から選択されるscFvを含む。
【0025】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、HLA*A*02:01-NY-ESO-1ペプチド(SLLMWITQC)(配列番号37~40、45~48)に結合し、第2の抗原結合部分は、分化抗原群3(CD3)(配列番号49~50)に結合する。
【0026】
特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、HLA*A*02:01-GP100ペプチド(YLEPGPVTV)(配列番号41~44)に結合し、第2の抗原結合部分は、CD3(配列番号49~50)に結合する。
【0027】
特定の実施形態では、第2の抗原結合部分は、可動性リンカーを介して共有結合的にコンジュゲートする重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの両方を含む1本鎖可変断片(scFv)を含む。
【0028】
別の態様では、本明細書において提供するポリペプチド複合体、または本明細書において提供する多重特異性抗原結合複合体をコードする、単離ポリヌクレオチドを本開示において提供する。
【0029】
一態様では、本明細書において提供するポリヌクレオチドを含む、単離ベクターを本開示において提供する。
【0030】
一態様では、本明細書において提供する単離ポリヌクレオチド、または本明細書において提供する単離ベクターを含む、宿主細胞を本開示において提供する。
【0031】
一態様では、本明細書において提供するポリペプチド複合体、または多重特異性抗原結合複合体を含む、コンジュゲートを本開示において提供する。
【0032】
一態様では、ポリペプチド複合体または多重特異性抗原結合複合体が発現する条件下で本明細書において提供する宿主細胞を培養する工程を含む、本明細書において提供するポリペプチド複合体または本明細書において提供する多重特異性抗原結合複合体を発現させる方法を本開示において提供する。
【0033】
一態様では、a)N末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRα鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第1の抗体定常ドメイン(C1)とを含む第1のポリペプチド、およびN末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRβ鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第2の抗体定常ドメイン(C2)とを含む第2のポリペプチドをコードする、第1のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する工程であって、C1およびC2が、その天然の鎖間結合および相互作用を介して二量体を形成することが可能であり、第1のTCRが、第1の抗原特異性を有する、工程と、b)宿主細胞がポリペプチド複合体を発現することが可能となる工程とを含む、本明細書において提供するポリペプチド複合体を生成する方法を本開示において提供する。
【0034】
一態様では、a)N末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRα鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第1の抗体定常ドメイン(C1)とを含む第1のポリペプチド、およびN末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRβ鎖可変ドメインとそれに動作可能に結合する第2の抗体定常ドメイン(C2)とを含む第2のポリペプチドをコードする、第1のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する工程であって、C1およびC2が、その天然の鎖間結合および相互作用を介して二量体を形成することが可能であり、第1のTCRが、第1の抗原特異性を有し、第2の抗原結合部分が、第1の抗原特異性とは異なる第2の抗原特異性を有し、第1の抗原結合部分の第1のポリペプチドまたは第1の抗原結合部分の第2のポリペプチドのN末端またはC末端においてコンジュゲートする、工程と、b)宿主細胞が多重特異性抗原結合複合体を発現することが可能となる工程とを含む、本明細書において提供する多重特異性抗原結合複合体を生成する方法を本開示において提供する。
【0035】
特定の実施形態では、本明細書において提供する多重特異性抗原結合複合体を生成する方法は、ポリペプチド複合体を単離する工程をさらに含む。
【0036】
一態様では、本明細書において提供するポリペプチド複合体または本明細書において提供する多重特異性抗原結合複合体を含む組成物を本開示において提供する。
【0037】
一態様では、本明細書において提供するポリペプチド複合体または本明細書において提供する多重特異性抗原結合複合体、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を本開示において提供する。
【0038】
一態様では、治療有効量の本明細書において提供するポリペプチド複合体または本明細書において提供する多重特異性抗原結合複合体を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における症状または疾患、例えば、がんを治療する方法を本開示において提供する。特定の実施形態では、第1の抗原および第2の抗原がともに調節される場合、症状は、緩和、除去、治療または予防することができる。
【0039】
別の態様では、疾患または症状の検出、診断、予後予測または治療のための、本明細書において提供するポリペプチド複合体を含むキットを本開示において提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施例1の工程1における抗体の定常領域における切断および変異アミノ酸位置を示す模式図である。
【
図2】実施例1の工程2におけるスクリーニングにより得たファージディスプレイ可能キメラTCR中間体の呈示および結合活性アッセイ結果を示す図である。
【
図3】dsTCRおよびscTCRを用いた実施例1の工程2におけるスクリーニングにより得たキメラTCR中間体の親和性比較の結果を示す図である。
【
図4】実施例1の工程3におけるVTCRC IgG1、IgG4、IgA1およびVTCRCκ、λリンカー間組入れ位置を示す模式図である。
【
図5】実施例1の工程4におけるキメラTCRファージリンカーの比較結果を示す図である。
【
図6】実施例1工程5の1G4親和性成熟におけるクローニングしたファージのファージディスプレイおよび結合活性アッセイの結果を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、代表的CTCRのモデル化構造を示す図である。人工ジスルフィド結合は、球として記載する。
【
図7B】
図7Bは、代表的ETCRのモデル化構造を示す図である。CTCRにおいてVβが安定化するように助ける長いFGループは、ETCRでは存在せず、より不安定なβ鎖構造が生じた。
【
図8】
図8aは、CTCRのコンジャンクションドメイン構造を示す図である。黒色の矢は、構造から解析したコンジャンクションドメインの末端を示し、赤色の破線の矢は、コンジャンクションドメインとFGループとの間に形成された潜在的極性接点を示した。
図8bは、ETCR(SSAS)のコンジャンクションドメイン構造を示す図である。黒色の矢は、CTCRおよびETCRの重複から解析したコンジャンクションドメインの末端を示した。
【
図9】代表的CTCRのモデル化構造を示す図である。可変ドメインおよび定常ドメイン結合インターフェースに含まれる残基は、灰色の網目に覆われている棒として示した。
【
図10A】
図10Aは、代表的CTCRのVβ-Cβ結合インターフェースの詳細な構造を示す図である。結合に含まれる残基は棒として示し、赤色の矢および黄色の破線は極性接点を示し、橙色の円は非極性接点を示した。
【
図10B】
図10Bは、代表的ETCRのVβ-Cλ結合インターフェースの詳細な構造を示す図である。結合に含まれる残基は棒として示し、赤色の矢は極性接点の非存在を示した。
【
図12A】
図12Aは、ETCR1(シアン)およびETCR2(マゼンタ)の重複結果を示す図である。FR1における残基は、棒として示した。
【
図12B】
図12Bは、代表的ETCR2変異体のSDS-PAGE結果を示す図である。
【
図13】
図13A~Eは、代表的ETCRおよびCTCRのSPR解析のセンサーグラムを示す図である。
【
図14】代表的ETCR1およびCTCR1のFACS結果を示す図である。
【
図15】試験した二重特異性ETCRを示す略図である。抗CD3scFvの遺伝子産物を増幅してTCR VβドメインのN末端、抗体CλドメインのC末端、TCR VαドメインのN末端、抗体CH1ドメインのC末端にそれぞれ挿入し、二重特異性ETCR1-E1.1、ETCR1-E1.2、ETCR1-E1.3およびETCR1-E1.4を生成した(
図15A~D)。CTCRでは、抗CD3scFvの遺伝子産物を増幅してTCR VβドメインのN末端に挿入し、CTCR1-E1.1を生成した(
図15E)。
【
図16】二重特異性ETCR1のSDS-PAGE結果を示す図である。レーン1~4:二重特異性ETCR1の上清、レーン5~8:対応する精製した二重特異性ETCR1。
【
図17A】
図17Aは、18hにおけるT2細胞に対するT細胞殺傷の再方向づけの用量依存的結果を示す図である。
【
図17B】
図17Bは、24hにおけるT2細胞に対するT細胞殺傷の再方向づけの用量依存的結果を示す図である。
【
図18】72hにおけるA375細胞に対するT細胞殺傷の再方向づけの用量依存的結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
本発明を以下に詳細に記載するが、本発明では、それらは異なり得るため、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコールおよび試薬に制限されないことが理解されるべきである。本明細書において使用する用語法は、特定の実施形態を説明する目的のみのためのものであり、本発明の範囲を制限することを意図せず、この本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることも理解されるべきである。他に定義しない限り、本明細書において使用するすべての技術的および科学的用語は、当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0042】
「単離」の用語は、本明細書において使用する場合、人工的手段により天然状態から得られる状態を指す。特定の「単離」物質または成分は、おそらくは、この天然環境が変化するか、物質が天然環境から単離されるか、またはこの両方のため、天然に存在し得る。例えば、特定の非単離ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、特定の生動物体に天然に存在し、このような天然状態から単離された高純度の同一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと呼ぶ。「単離」の用語は、混合した人工または合成物質も単離物質の活性には影響しない他の不純物質も除外しない。
【0043】
「ベクター」の用語は、本明細書において使用する場合、ポリヌクレオチドを挿入可能な核酸媒体を指す。挿入されたポリヌクレオチドによりコードされたタンパク質の発現がベクターによって可能となる場合、ベクターは、発現ベクターと呼ぶ。ベクターは、宿主細胞への形質転換、形質導入またはトランスフェクションにより宿主細胞内で発現する遺伝物質エレメントを保有し得る。ベクターは、当業者に周知であり、プラスミド、ファージ、コスミド、人工染色体、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)、ファージ、例えば、λファージまたはM13ファージおよび動物ウイルスを含むが、これらに限定されない。ベクターとして使用可能な動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えば、SV40)を含むが、これらに限定されない。ベクターは、発現を調節するための複数のエレメントを含んでもよく、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメントおよびレポーター遺伝子を含むが、これらに限定されない。加えて、ベクターは、複製起点を含み得る。
【0044】
「宿主細胞」の用語は、本明細書において使用する場合、タンパク質、タンパク質断片または目的のペプチドを生成するように改変可能な細胞系を指す。宿主細胞は、培養細胞、例えば、げっ歯類(ラット、マウス、モルモットまたはハムスター)に由来する哺乳動物培養細胞、例えば、CHO、BHK、NSO、SP2/0、YB2/0、もしくはヒト組織に由来する哺乳動物培養細胞、またはハイブリドーマ細胞、酵母細胞、および昆虫細胞、ならびに遺伝子導入動物または培養組織に含まれる細胞を含むが、これらに限定されない。この用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代をも包含する。変異または環境的影響のいずれかが原因で継代において特定の修飾が生じ得るため、このような後代は、親細胞と同一ではない可能性を有するが、「宿主細胞」の用語の範囲内に、なお含む。
【0045】
「SPR」または「表面プラズモン共鳴」の用語は、本明細書において使用する場合、例えば、BIAcoreシステム(PharmaciaBiosensorAB、Uppsala、スウェーデンおよびPiscataway、N.J.)を使用する、バイオセンサーマトリックス中のタンパク質濃度における変化の検出により、リアルタイムで生体分子特異的相互作用の解析が可能となる光学現象を指し、これを含む。さらなる記載については、実施例5ならびにJonsson、U.ら(1993)Ann.Biol.Clin.51巻:19~26;Jonsson、U.ら(1991)Biotechniques11巻:620~627;Johnsson、B.ら(1995)J.Mol.Recognit.8巻:125~131;およびJohnnson、B.ら(1991)Anal.Biochem.198巻:268~277を参照されたい。
【0046】
「がん」の用語は、本明細書において使用する場合、腫瘍または悪性細胞の成長、増殖または転移により媒介される固形腫瘍および非固形腫瘍、例えば、白血病のいずれか1つを指し、医学的症状を惹起する。
【0047】
「治療(treatment、treatingまたはtreated)」の用語は、症状を治療する状況で本明細書において使用する場合、ヒトまたは動物にかかわらず、一部の所望の治療作用、例えば、症状の増悪の阻害が達成される治療および療法に一般に関係し、増悪率の低下、増悪率の停止、症状の退縮、症状の改善および症状の治癒を含む。予防的手段(すなわち、予防法、防止策)としての治療をも含む。がんでは、「treating」は、腫瘍もしくは悪性細胞の成長、増殖もしくは転移の減衰もしくは遅延、またはこれらの一部の組合せを指し得る。腫瘍では、「treatment」は、腫瘍の全部もしくは一部の除去、腫瘍の成長および転移の阻害もしくは遅延、腫瘍発症の予防もしくは遅延、またはこれらの一部の組合せを含む。
【0048】
「有効量」または「治療有効量」の用語は、本明細書において使用する場合、活性化合物もしくは物質、組成物の量、または活性化合物を含むための投与量に関係し、これは、所望の治療レジメンに従って投与する場合、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、一部の所望の治療作用をもたらすのに有効である。例えば、「有効量」は、標的抗原関連疾患または症状の治療と関連して使用する場合、この疾患または症状を治療するのに有効な量または濃度の抗体またはこの抗原結合部分を指す。
【0049】
「薬学的に許容される」の用語は、本明細書において使用する場合、媒体、希釈剤、賦形剤および/またはこの塩が、製剤中の他の成分と化学的および/または理学的に適合し、レシピエントと生理学的に適合することを意味する。
【0050】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される担体および/または賦形剤」の用語は、対象および活性剤と薬理学的および/または生理学的に適合する担体および/または賦形剤を指し、これは、当技術分野において周知であり(例えば、Remington’sPharmaceuticalSciences.GennaroAR編、第19版Pennsylvania:MackPublishingCompany、1995を参照)、pH調整剤、界面活性剤、アジュバントおよびイオン強度増強剤を含むが、これらに限定されない。例えば、pH調整剤は、限定されないが、リン酸バッファーを含み、界面活性剤は、限定されないが、カチオン性、アニオン性、または非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-80を含み、イオン強度増強剤は、限定されないが、塩化ナトリウムを含む。
【0051】
本明細書において使用する場合、「対象」の用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」の用語は、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物、および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等を含む。他に述べる場合を除いて、「患者」または「対象」の用語は、互換的に使用される。
【0052】
次の実施例における実験方法は、他に特定しない限り、従来方法である。
【実施例】
【0053】
実施例1.TCR可変ドメインの遺伝子を抗体の定常領域の遺伝子とライゲートし、ファージのgIII遺伝子とさらに会合させて、ファージの表面上に呈示され得るTCRヘテロ二量体型式をスクリーニングする。
【0054】
工程1.2つの異なるTCR Vドメインの遺伝子:CTCR2およびCTCR2を抗体定常領域の遺伝子とライゲートする
抗体の重鎖定常領域は、CH1ドメインまたは完全長のIgG1、IgG2、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよび抗体の軽鎖定常領域Cκ、Cλを含む。特には、抗体定常ドメインにおける2つの追加の変異を設計、検査し、野生型と比較した。1)鎖間ジスルフィド結合変異:システインをセリンに(抗体の定常領域における鎖間ジスルフィド結合位置のCをSに変異させる場合、定常領域CH1は、κG1s、κG1s-逆と明示する)、2)Nグリコシル化変異:アスパラギンをグルタミンに。切断および変異位置は、
図1に示す。ライゲーションにより、V
TCRC
IgG1、IgG2、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、IgEおよびV
TCRC
κ、λ遺伝子産物(V
TCRは、VαおよびVβを含む)が生じた。このような遺伝子産物をファージミドベクターpcom3XX-DTに挿入し、ここでV
TCRC
IgG1、IgG2、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、IgE V
TCRC
κ、λを、c-Myc.6Hisタグを発現するgIII遺伝子とコンジュゲートさせ、V
TCRC
κ、λは、Flagタグを発現する。ファージは自己会合可能であるため、2つの発現したポリペプチドは、自然発生的に複合体形成し、機能性ヘテロ二量体としてファージ上に呈示される。対応するCTCRも同一のファージミドベクターに挿入し、ここでVβCβを、c-Myc.6Hisタグを発現するgIII遺伝子とコンジュゲートさせ、VαCαは、Flagタグを発現する。対応する1本鎖TCRは、Vα-(G4S)-Vβとして会合させ、6His.c-Mycタグを発現するgIII遺伝子と融合したプラスミドベクターpFL249に挿入する。
【0055】
工程2.ファージ培養条件の最適化
種々のTCRヘテロ二量体型式を呈示するファージをスクリーニングするために、クローンを2YT培地(10g/Lの酵母抽出物、16g/Lのトリプシン、5g/ml、0.1mg/mlのアンピシリンおよび2%のグルコースを含む、pH7.0)600μlに播種した。株を37℃の振盪機においてOD600=0.3~0.5に成長させ、7.5E9pfuのヘルパーファージM13KO7(Invitrogen社)を加え、37℃のインキュベーターにおいて45分間さらにインキュベートした。細胞を4,000gで10分の遠心分離により沈殿させ、0.1mg/mlのアンピシリンおよび0.05のカナマイシン、5mMのMgSO4を含む2YT培地600μlに再懸濁して、25℃の振盪機において36時間培養した。TCRヘテロ二量体を呈示するファージ上清を、遠心分離により得ることができる。
【0056】
工程3.ファージELISAによりTCRヘテロ二量体のファージディスプレイおよび結合活性を検出する
ファージ上でのTCRヘテロ二量体の呈示レベルをサンドウィッチELISA方法により検出した。ELISAプレートは、抗Flag(2μg/ml)でコーティングしてETCRまたはCTCRヘテロ二量体ファージを捕捉し、抗c-myc(1μg/ml)でコーティングしてscTCRを捕捉した。ブロッキング溶液(3%のBSA)で1時間、プレートをブロッキングした。1:1で希釈したファージ上清を加え、室温で(20~25℃)2時間インキュベートした。1×PBSTで6回洗浄し、次いで、抗ファージM13アルカリホスファターゼコンジュゲート抗体を使用して、ファージ表面上でのTCRの呈示レベルを検出した。ファージ上でのTCRヘテロ二量体の結合能をELISA方法により検出した。ELISAプレートは、4μg/mlのSAで一晩コーティングし、ブロッキング溶液(3%のBSA)で1時間ブロッキングした。2μg/mlのビオチン化pMHCI単量体を加え、RTで1時間インキュベートした。1×PBSTで6回洗浄し、次いで、1:1で希釈したファージ上清を加えてRTで1時間インキュベートし、次いで、抗ファージM13アルカリホスファターゼコンジュゲート抗体を使用してTCR呈示ファージの結合活性を検出した。最終的に、64種のETCR型式をスクリーニングし、6種の最適型式:λG1、λG1s、κG1s、λG1s-逆、λG4s-逆、λA1s-逆が得られ、これらにより、
図2に示すように、さらに良好な呈示レベルおよび結合能が明らかとなった。
【0057】
図2Aおよび
図2Bは、異なるTCR型式におけるTCR1およびTCR2の呈示レベルをそれぞれ示す。4つのクローンをランダムに選択して、呈示された各TCRを試験した。結果は、すべてのETCR、CTCRおよびscTCRがファージにより良好に呈示可能であることを示唆した。
【0058】
図2Cおよび
図2Dは、異なるTCR型式におけるTCR1およびTCR2の結合能をそれぞれ示す。特異的pMHCIへの異なる結合が、異なるTCR型式により観察され、ここで、pMHCIへの非特異的結合は、観察されなかった。
【0059】
最適ETCR型式の呈示レベルおよび結合活性をさらに決定し、ファージ相対定量ELISAによりCTCRおよびscTCRと比較した。初期ウェル内のファージの数は、1:3希釈で5E10pfuであった。結果は、最適ETCR型式の呈示レベルが、scTCRおよびdsTCRよりも良好であることを示す。また、
図3に示すように、発明者らのTCR λG4s-逆の結合親和性は、dsTCRのそれよりも2~6倍良好である。ETCR型式をさらに最適化するために、その後、リンカードメインを設計した。
【0060】
工程4.キメラTCR構造のリンカー最適化
ETCRの呈示レベルおよび結合活性を向上させるために、TCR VαまたはVβのFR4部分を切断し、次いで、抗体の定常ドメインに直接接続した。結果は、TCRの安定性が影響し、結合活性が低下したことを示した。
【0061】
その一方で、SS、SSA、SSAS、SSASS、SSASSSを含む種々の長さのリンカーをETCR可変ドメインのC末端と抗体定常ドメインのN末端との間に挿入し、特定の位置は、
図4に示す。4つのクローンをランダムに選択して、ファージの呈示レベルおよび結合活性を検出する。すべてのリンカーの中でも、SSASリンカーは、他のリンカーよりも優れた能力を示した(
図5)。したがって、λG4s-逆-SSASを、TCR親和性成熟のための最終ETCR型式として選択した。
【0062】
工程5.TCR親和性成熟ライブラリーの構築およびスクリーニング
天然TCR 1G4を、概念実証試験として親和性成熟のために選択した。1G4のVαおよびVβ遺伝子を合成し、λG4s-逆-SSAS ETCR骨格を含む発明者らのファージミドベクターにクローニングし、1G4 ETCR(親和性成熟のための鋳型、野生型、WT)を得た。天然TCRの親和性は、ELISAを使用しても結合シグナルが検出不可能であるほど極めて低い。その後、発明者らは、参考文献に従って1G4 ETCRのCDR2およびCDR3上に部位特異的変異を作製し、
図6に示すように、ETCRヘテロ二量体型式を使用して、結合活性を検出し、TCR親和性成熟の実現可能性を証明した。
【0063】
実施例2:TCR可変ドメインを抗体定常ドメインと組み換えてTCR抗体キメラタンパク質(ETCR)を生成する
1.TCR配列
CTCR1と名付けられた、CαS48-CβT57間に非天然ジスルフィド結合を有するHLA*A*02:01NY-ESO-1(SLLMWITQC)特異的TCR(配列番号37~40および63~66、Vαのアミノ酸配列は、配列番号37として示し、Vβのアミノ酸配列は、配列番号39として示し、Cαのアミノ酸配列は、配列番号63として示し、Vβのアミノ酸配列は、配列番号65として示す)、およびCTCR2と名付けられた、CαS48-CβT57間に非天然ジスルフィド結合を有するHLA*A*02:01GP100(YLEPGPVTV)特異的TCR(配列番号41~44および63~66、Vαのアミノ酸配列は、配列番号41として示し、Vβのアミノ酸配列は、配列番号43として示し、Cαのアミノ酸配列は、配列番号63として示し、Vβのアミノ酸配列は、配列番号65として示す)を選択して、概念実証試験を行った。IMGTナンバリング規定を、すべてのTCR可変ドメインに使用した。
【0064】
CTCR3と名付けられた、CαS48-CβT57間に非天然ジスルフィド結合を有する別のHLA*A*02:01NY-ESO-1(SLLMWITQC)特異的TCR(配列番号45~48および63~66、Vαのアミノ酸配列は、配列番号45として示し、Vβのアミノ酸配列は、配列番号47として示し、Cαのアミノ酸配列は、配列番号63として示し、Vβのアミノ酸配列は、配列番号65として示す)をも選択して、さらなる試験を行った。IMGTナンバリング規定を、すべてのTCR可変ドメインに使用した。
【0065】
配列番号37、CAb1-NY-ESO-1_VαAA:
AQSVAQPEDQVNVAEGNPLTVKCTYSVSGNPYLFWYVQYPNRGLQFLLKYLGDSALVKGSYGFEAEFNKSQTSFHLKKPSALVSDSALYFCAVRDIRSGAGSYQLTFGKGTKLSVIP
配列番号38、CAb1-NY-ESO-1_VαDNA:
gcccagtccgtggctcagcccgaggaccaagtgaacgtggccgagggcaaccctctgaccgtgaagtgcacctattccgtgagcggcaacccctatctgttttggtacgtgcagtaccccaacagaggactgcagtttctgctgaagtatctgggagacagcgctctggtgaagggaagctacggcttcgaagccgagttcaacaagagccagacctccttccatctgaagaagcctagcgctctggtgagcgactccgctctgtacttctgcgccgtcagagacatcagaagcggcgccggaagctaccagctgaccttcggcaagggcaccaagctgagcgtgatccct
配列番号39、CAb1-NY-ESO-1_VβAA:
SAVISQKPSRDIKQRGTSLTIQCQVDKRLALMFWYRQQPGQSPTLIATAWTGGEATYESGFVIDKFPISRPNLTFSTLTVSNMSPEDSSIYLCSVGGSGAADTQYFGPGTRLTVL
配列番号40、CAb1-NY-ESO-1_VβDNA:
agcgccgtgatcagccagaagcctagcagagacatcaaacagaggggcacatctctgaccatccagtgccaagtggacaagagactcgctctgatgttctggtatagacagcagcccggacagtcccccacactgatcgccaccgcttggaccggcggagaagccacctacgagtccggcttcgtgatcgacaagttccccatctctagacccaatctgaccttttccacactgaccgtgtccaacatgagccccgaggactccagcatttatctgtgtagcgtgggaggcagcggagctgccgatacccagtacttcggccccggaaccagactgaccgtgctg
配列番号41、CAb2-GP100_VαAA:
AQQGEEDPQALSIQEGENATMNCSYKTSINNLQWYRQNSGRGLVHLILIRSNEREKHSGRLRVTLDTSKKSSSLLITASRAADTASYFCATDGSTPMQFGKGTRLSVIA
配列番号42、CAb2-GP100_VαDNA:
gctcagcaaggcgaagaggatccccaagctctgagcattcaagagggcgagaacgccaccatgaactgctcctacaagaccagcatcaacaacctccagtggtatagacagaacagcggcagaggactggtgcatctgattctgattagaagcaacgagagagagaagcactccggaaggctgagggtgacactggatacaagcaagaagagcagctctctgctgatcaccgcttccagagccgctgacaccgccagctacttctgcgccaccgacggcagcacccctatgcagttcggcaagggcacaagactcagcgtgatcgcc
配列番号43、CAb2-GP100_VβAA:
DGGITQSPKYLFRKEGQNVTLSCEQNLNHDAMYWYRQDPGQGLRLIYYSWAQGDFQKGDIAEGYSVSREKKESFPLTVTSAQKNPTAFYLCASSWGAPYEQYFGPGTRLTVT
配列番号44、CAb2-GP100_VβDNA:
gacggcggcatcacccagtcccccaagtatctgtttagaaaggagggccagaatgtgacactgagctgcgagcagaatctgaaccacgacgccatgtactggtacagacaagaccccggccaaggactgaggctgatctattacagctgggcacaaggagacttccagaagggcgacatcgccgagggatacagcgtgtctagagagaagaaggagagctttcctctgaccgtgaccagcgcccagaagaatcccaccgccttctatctgtgtgccagcagctggggagctccctacgagcagtatttcggacccggcacaagactgaccgtgaca
配列番号45、CAb3-NY-ESO-1_VαAA:
QEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTDSAIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLITPWQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPLLDGTYIPTFGRGTSLIVHP
配列番号46、CAb3-NY-ESO-1_VαDNA:
caagaagtgacacagatccctgccgctctgtctgtgcctgagggcgaaaacctggtgctgaactgcagcttcaccgacagcgccatctacaacctgcagtggttcagacaggaccccggcaagggactgacaagcctgctgctgattaccccttggcagagagagcagaccagcggcagactgaatgccagcctggataagtcctccggcagaagcaccctgtatatcgccgcttctcagcctggcgatagcgccacatatctgtgtgccgtcagacccctgctggacggcacatatatccccacctttggcagaggcaccagcctgatcgtgcaccct
配列番号47、CAb3-NY-ESO-1_VβAA:
GVTQTPKFQVLKTGQSMTLQCAQDMNHEYMSWYRQDPGMGLRLIHYSVAIQTTDRGEVPNGYNVSRSTIEDFPLRLLSAAPSQTSVYFCASSYLGNTGELFFGEGSRLTVL
配列番号48、CAb3-NY-ESO-1_VβDNA:
ggagttacacagacccctaagttccaggtgctgaaaaccggccagagcatgaccctgcagtgcgcccaggatatgaaccacgagtacatgagctggtacaggcaggatccaggcatgggcctgagactgatccactactctgtggccatccagaccaccgacagaggcgaagtgcccaacggctacaacgtgtccagatccaccatcgaggacttcccactgagactgctgtctgctgcccctagccagacctccgtgtacttttgtgccagcagctacctgggcaacaccggcgagctgttttttggcgagggctccagactgaccgtgctg
配列番号49、抗CD3-scFvAA:
AIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIRNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLESGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPWTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSFTGYTMNWVRQAPGKGLEWVALINPYKGVSTYNQKFKDRFTISVDKSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGQGTLVTVSS
配列番号50、抗CD3-scFvDNA:
gccatccagatgacgcaaagtccatcaagtctgagcgccagcgtgggcgacagagtgaccatcacctgcagagccagccaggacatcagaaattacctgaattggtaccagcagaagcctggcaaggctccaaagctcctcatatattatacatcgagattagaatctggtgttccaagcagattcagcggcagcggcagcggcaccgactacaccctgaccatcagcagcctgcagcctgaggacttcgccacctactactgccagcagggcaataccctgccttggacatttggacagggtaccaaggtggaaattaaaggcggcggcggaagcggaggcggagggtcgggtggcggaggttcaggtggaggagggtctggtggaggctcagaggtacaacttgtggagtcaggcggtggactagtccaaccaggaggatctttacgcttatcttgtgccgccagcggctacagcttcaccggctacaccatgaattgggtgagacaggctcccggtaagggcctggagtgggtggccctgatcaatccttacaagggcgtgagcacctacaatcagaagttcaaggacagattcaccatcagcgtggacaagagcaagaataccgcctacctgcagatgaatagcctgagagccgaggacaccgccgtgtactactgcgccagaagcggctactacggcgacagcgactggtactttgatgtttgggggcaaggtacacttgtcactgtaagctcc
配列番号51、CAb1-NY-ESO-1_αFL AA:
AQSVAQPEDQVNVAEGNPLTVKCTYSVSGNPYLFWYVQYPNRGLQFLLKYLGDSALVKGSYGFEAEFNKSQTSFHLKKPSALVSDSALYFCAVRDIRSGAGSYQLTFGKGTKLSVIPNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKCVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDT
配列番号52、CAb1-NY-ESO-1_αFL DNA:
gcccagtccgtggctcagcccgaggaccaagtgaacgtggccgagggcaaccctctgaccgtgaagtgcacctattccgtgagcggcaacccctatctgttttggtacgtgcagtaccccaacagaggactgcagtttctgctgaagtatctgggagacagcgctctggtgaagggaagctacggcttcgaagccgagttcaacaagagccagacctccttccatctgaagaagcctagcgctctggtgagcgactccgctctgtacttctgcgccgtcagagacatcagaagcggcgccggaagctaccagctgaccttcggcaagggcaccaagctgagcgtgatccctaacatccagaaccccgatcccgccgtgtaccagctgagggacagcaagtccagcgacaagtccgtgtgtctgttcaccgacttcgactcccagaccaacgtgtcccagagcaaggatagcgacgtgtacatcaccgacaagtgcgtcctcgacatgaggtccatggacttcaagagcaacagcgccgtggcttggagcaacaagagcgacttcgcttgcgccaacgccttcaacaacagcatcatccccgaggacacc
配列番号53、CAb1-NY-ESO-1_βFL AA:
SAVISQKPSRDIKQRGTSLTIQCQVDKRLALMFWYRQQPGQSPTLIATAWTGGEATYESGFVIDKFPISRPNLTFSTLTVSNMSPEDSSIYLCSVGGSGAADTQYFGPGTRLTVLEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQPLKEQPALNDSRYALSSRLRVSATFWQDPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRAD
配列番号54、CAb1-NY-ESO-1_βFL DNA:
agcgccgtgatcagccagaagcctagcagagacatcaaacagaggggcacatctctgaccatccagtgccaagtggacaagagactcgctctgatgttctggtatagacagcagcccggacagtcccccacactgatcgccaccgcttggaccggcggagaagccacctacgagtccggcttcgtgatcgacaagttccccatctctagacccaatctgaccttttccacactgaccgtgtccaacatgagccccgaggactccagcatttatctgtgtagcgtgggaggcagcggagctgccgatacccagtacttcggccccggaaccagactgaccgtgctggaggatctgaagaacgtgtttccccccgaggtggccgtgtttgagcccagcgaggccgagattagccacacccagaaggccacactggtgtgtctggccaccggcttttaccccgaccacgtggaactgagctggtgggtgaacggcaaggaggtgcactccggcgtgtgtaccgatccccagcctctgaaggagcagcccgccctcaacgatagcagatacgctctgtcctccagactgagagtgagcgccacattctggcaagaccccagaaaccactttagatgccaagtgcagttctacggactgagcgaaaacgacgagtggacacaagatagagccaagcccgtgacccagatcgtgagcgccgaggcttggggcagagccgat
配列番号55、CAb2-GP100_αFL AA:
AQQGEEDPQALSIQEGENATMNCSYKTSINNLQWYRQNSGRGLVHLILIRSNEREKHSGRLRVTLDTSKKSSSLLITASRAADTASYFCATDGSTPMQFGKGTRLSVIANIQKPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKCVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDT
配列番号56、CAb2-GP100_αFL DNA:
gctcagcaaggcgaagaggatccccaagctctgagcattcaagagggcgagaacgccaccatgaactgctcctacaagaccagcatcaacaacctccagtggtatagacagaacagcggcagaggactggtgcatctgattctgattagaagcaacgagagagagaagcactccggaaggctgagggtgacactggatacaagcaagaagagcagctctctgctgatcaccgcttccagagccgctgacaccgccagctacttctgcgccaccgacggcagcacccctatgcagttcggcaagggcacaagactcagcgtgatcgccaacatccagaagcccgaccccgccgtgtaccagctgagagactccaagagcagcgacaagagcgtgtgtctgttcaccgacttcgactcccagaccaacgtgagccagtccaaggacagcgacgtgtacatcaccgacaagtgcgtgctggacatgaggagcatggacttcaagtccaacagcgccgtggcttggtccaacaaatccgatttcgcttgcgccaatgccttcaacaactccatcatccccgaggacaca
配列番号57、CAb2-GP100_βFL AA:
DGGITQSPKYLFRKEGQNVTLSCEQNLNHDAMYWYRQDPGQGLRLIYYSWAQGDFQKGDIAEGYSVSREKKESFPLTVTSAQKNPTAFYLCASSWGAPYEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQPLKEQPALNDSRYALSSRLRVSATFWQDPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRAD
配列番号58、CAb2-GP100_βFL DNA:
gacggcggcatcacccagtcccccaagtatctgtttagaaaggagggccagaatgtgacactgagctgcgagcagaatctgaaccacgacgccatgtactggtacagacaagaccccggccaaggactgaggctgatctattacagctgggcAcaaggagacttccagaagggcgacatcgccgagggatacagcgtgtctagagagaagaaggagagctttcctctgaccgtgaccagcgcccagaagaatcccaccgccttctatctgtgtgccagcagctggggagctccctacgagcagtatttcggacccggcacaagactgaccgtgacagaggatctgaagaacgtcttccctcccgaggtggctgtgttcgagccctccgaggccgagatctcccacacccagaaggccaccctcgtgtgtctggctaccggcttctaccccgaccacgtggagctgagctggtgggtgaacggcaaagaggtgcatagcggcgtgtgtaccgacccccagcctctgaaagagcaacccgctctgaacgactccagatacgctctgtcctccagactgagggtctccgccacattttggcaagaccctagaaaccactttagatgtcaagtgcagttctacggactgagcgagaatgatgagtggacacaagacagagccaagcccgtgacacagattgtcagcgccgaggcttggggaagagctgat
配列番号59、CAb3-NY-ESO-1_VαAA:
QEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTDSAIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLITPWQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAVRPLLDGTYIPTFGRGTSLIVHP
配列番号60、CAb3-NY-ESO-1_VαDNA:
caagaagtgacacagatccctgccgctctgtctgtgcctgagggcgaaaacctggtgctgaactgcagcttcaccgacagcgccatctacaacctgcagtggttcagacaggaccccggcaagggactgacaagcctgctgctgattaccccttggcagagagagcagaccagcggcagactgaatgccagcctggataagtcctccggcagaagcaccctgtatatcgccgcttctcagcctggcgatagcgccacatatctgtgtgccgtcagacccctgctggacggcacatatatccccacctttggcagaggcaccagcctgatcgtgcaccct
配列番号61、CAb3-NY-ESO-1_VβAA:
GVTQTPKFQVLKTGQSMTLQCAQDMNHEYMSWYRQDPGMGLRLIHYSVAIQTTDRGEVPNGYNVSRSTIEDFPLRLLSAAPSQTSVYFCASSYLGNTGELFFGEGSRLTVL
配列番号62、CAb3-NY-ESO-1_VβDNA:
ggagttacacagacccctaagttccaggtgctgaaaaccggccagagcatgaccctgcagtgcgcccaggatatgaaccacgagtacatgagctggtacaggcaggatccaggcatgggcctgagactgatccactactctgtggccatccagaccaccgacagaggcgaagtgcccaacggctacaacgtgtccagatccaccatcgaggacttcccactgagactgctgtctgctgcccctagccagacctccgtgtacttttgtgccagcagctacctgggcaacaccggcgagctgttttttggcgagggctccagactgaccgtgctg
配列番号63、CαAA:
NIQKPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKCVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDT
配列番号64、CαDNA:
aacatccagaagcccgaccccgccgtgtaccagctgagagactccaagagcagcgacaagagcgtgtgtctgttcaccgacttcgactcccagaccaacgtgagccagtccaaggacagcgacgtgtacatcaccgacaagtgcgtgctggacatgaggagcatggacttcaagtccaacagcgccgtggcttggtccaacaaatccgatttcgcttgcgccaatgccttcaacaactccatcatccccgaggacaca
配列番号65、CβAA:
EDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQPLKEQPALNDSRYALSSRLRVSATFWQDPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRAD
配列番号66、CβDNA:
gaggatctgaagaacgtcttccctcccgaggtggctgtgttcgagccctccgaggccgagatctcccacacccagaaggccaccctcgtgtgtctggctaccggcttctaccccgaccacgtggagctgagctggtgggtgaacggcaaagaggtgcatagcggcgtgtgtaccgacccccagcctctgaaagagcaacccgctctgaacgactccagatacgctctgtcctccagactgagggtctccgccacattttggcaagaccctagaaaccactttagatgtcaagtgcagttctacggactgagcgagaatgatgagtggacacaagacagagccaagcccgtgacacagattgtcagcgccgaggcttggggaagagctgat
2.TCR抗体キメラタンパク質(ETCR)の生成
CTCR1およびCTCR2の定常ドメインCαおよびCβを、Fcドメインと融合させたかまたは融合させないIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体の定常ドメインCH1およびCλ/Cκにより置換して、さらなる解析のために多数のETCRを生成した。
【0066】
配列番号1、改変Cλ1AA:
PTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
配列番号2、改変Cλ1DNA:
cccacggtcactctgttcccgccctcctctgaggagctccaagccaacaaggccacactagtgtgtctgatcagtgacttctacccgggagctgtgacagtggcttggaaggcagatggcagccccgtcaaggcgggagtggagacgaccaaaccctccaaacagagcaacaacaagtacgcggccagcagctacctgagcctgacgcccgagcagtggaagtcccacagaagctacagctgccaggtcacgcatgaagggagcaccgtggagaagacagtggcccctacagaatgttca
配列番号3、改変Cλ2AA:
PTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
配列番号4、改変Cλ2DNA:
ccctcggtcactctgttcccgccctcctctgaggagcttcaagccaacaaggccacactggtgtgtctcataagtgacttctacccgggagccgtgacagtggcttggaaagcagatagcagccccgtcaaggcgggagtggagaccaccacaccctccaaacaaagcaacaacaagtacgcggccagcagctatctgagcctgacgcctgagcagtggaagtcccacagaagctacagctgccaggtcacgcatgaagggagcaccgtggagaagacagtggcccctacagaatgttca
配列番号5、改変Cλ3AA:
PSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
配列番号6、改変Cλ3DNA:
ccctcggtcactctgttcccaccctcctctgaggagcttcaagccaacaaggccacactggtgtgtctcataagtgacttctacccgggagccgtgacagttgcctggaaggcagatagcagccccgtcaaggcgggggtggagaccaccacaccctccaaacaaagcaacaacaagtacgcggccagcagctacctgagcctgacgcctgagcagtggaagtcccacaaaagctacagctgccaggtcacgcatgaagggagcaccgtggagaagacagttgcccctacggaatgttca
配列番号7、改変Cλ6AA:
PSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVKVAWKADGSPVNTGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPAECS
配列番号8、改変Cλ6DNA:
ccatcggtcactctgttcccgccctcctctgaggagcttcaagccaacaaggccacactggtgtgcctgatcagtgacttctacccgggagctgtgaaagtggcctggaaggcagatggcagccccgtcaacacgggagtggagaccaccacaccctccaaacagagcaacaacaagtacgcggccagcagctacctgagcctgacgcctgagcagtggaagtcccacagaagctacagctgccaggtcacgcatgaagggagcaccgtggagaagacagtggcccctgcagaatgttca
配列番号9、改変Cλ7AA:
PSVTLFPPSSEELQANKATLVCLVSDFYPGAVTVAWKADGSPVKVGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCRVTHEGSTVEKTVAPAECS
配列番号10、改変Cλ7DNA:
ccctcggtcactctgttcccaccctcctctgaggagcttcaagccaacaaggccacactggtgtgtctcgtaagtgacttctacccgggagccgtgacagtggcctggaaggcagatggcagccccgtcaaggtgggagtggagaccaccaaaccctccaaacaaagcaacaacaagtatgcggccagcagctacctgagcctgacgcccgagcagtggaagtcccacagaagctacagctgccgggtcacgcatgaagggagcaccgtggagaagacagtggcccctgcagaatgctct
配列番号11、改変IgG1CH1AA:
TKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKV
配列番号12、改変IgG1CH1DNA:
accaagggcccatcggtcttccccctggcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagaaagttg
配列番号13、改変IgG2CH1AA:
TKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTV
配列番号14、改変IgG2CH1:
accaagggcccatcggtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgctctgaccagcggcgtgcacaccttcccagctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcaacttcggcacccagacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagacagtt
配列番号15、改変IgG3CH1AA:
TKGPSVFPLAPCSRSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYTCNVNHKPSNTKVDKRV
配列番号16、改変IgG3CH1DNA:
accaagggcccatcggtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctctgggggcacagcggccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacacctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagtt
配列番号17、改変IgG4CH1AA:
TKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRV
配列番号18、改変IgG4CH1DNA:
accaagggcccatccgtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaagacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagtt
3.材料および方法
3.1 抗体およびTCR相同性のモデル化
抗体およびTCR構造モデルを、MODELLERを使用してアミノ酸配列に基づいて構築した。次いで、すべてのモデル化セグメントを会合させてαキメラ鎖およびβキメラ鎖構造モデルを構築した。全配列が最も類似するTCR構造の角度を採ることにより2つのモデル化鎖間の相対配向を予想した。すべての分子の可視化および解析作業は、PyMOLソフトウェア(Schrodinger社)を使用して行った。
【0067】
3.2 DNA操作
CTCR1およびCTCR2遺伝子は、GenewizInc.により合成された。CH1およびCλ/Cκ遺伝子は、既存の社内DNA鋳型からPCRにより増幅した。Fcドメインキメラと融合したETCR(IgG様ETCR)では、軽鎖組換えの遺伝子産物は、CMVプロモーター、カッパシグナルペプチドおよびWPRE制御因子を含む線状化ベクターに挿入し、一方、重鎖組換えの遺伝子産物は、ヒト対応定常領域CH2-CH3、CMVプロモーターおよびヒト抗体重鎖シグナルペプチドを含む線状化ベクターに挿入した。Fcドメインキメラと融合していないETCR(Fab様ETCR)では、軽鎖組換えおよび重鎖組換えのそれぞれをCMVプロモーター、カッパシグナルペプチドおよびWPRE制御因子を含む線状化ベクターにそれぞれ挿入した。プラスミドライゲーション、形質転換、DNA調製は、標準的分子生物学プロトコールを使用して実施した。
【0068】
3.3 タンパク質発現
重鎖および軽鎖の構築したベクターは、Expi293細胞(ThermofisherScientific社)に同時トランスフェクトした。同時トランスフェクションのための種々のベクターの比率は、予想したETCR構造ならびにSDS-PAGEおよびウエスタンブロットにおいて示された初期発現結果に従って最適化した。トランスフェクション手順は、供給者により提供されたマニュアルに従った。簡潔には、プラスミド各2.5μgおよび13.6Expifectamineを使用して、5ml容量の2.94×106個の細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後20時間にエンハンサー1およびエンハンサー2を加えた。トランスフェクトした細胞は、オービタルシェーカー上で8%CO2、湿度85%により37℃で培養し、120rpm(フラスコ)または200rpm(50mlチューブ)のいずれかで回転させた。トランスフェクション後5日に、上清を遠心分離により回収し、細胞断片を0.22μmの濾過により除去した。さらなる検査の前に、必要に応じて、処理した上清を濃縮する。
【0069】
3.4 ELISAによるETCR濃度の測定
IgG様ETCRでは、ELISAプレートをコーティングバッファー(200mMのNa2CO3/NaHCO3、pH9.2)中1μg/mlの抗ヒトFC抗体でコーティングした。4℃で一晩のインキュベーション後、深型ウェル洗浄機(BiotekELx405)を使用してPBST洗浄バッファーによりプレートを1回洗浄した。次いで、プレートを1%のカゼインでブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄して、100μlの陽性対照(存在する場合)、陰性対照(存在する場合)および希釈した試料を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄して、100μlのHRPコンジュゲート抗ラムダ抗体または抗カッパ抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで6回洗浄し、TMB100μlを加えて、10分間インキュベートし、次いで、停止溶液(2MのHCl、100μl/ウェル)100μlを加えて、プレートリーダー(MolecularDevice社SpectraMaxMV5e)を使用して450nmで吸光度を読み取った。
【0070】
Fab様ETCRでは、ELISAプレートをコーティングバッファー(200mMのNa2CO3/NaHCO3、pH9.2)中0.5μg/mlの抗His抗体でコーティングした。4℃で一晩のインキュベーション後、深型ウェル洗浄機(BiotekELx405)を使用してPBST洗浄バッファーによりプレートを1回洗浄した。次いで、プレートを1%のカゼインでブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄して、100μlの陽性対照(存在する場合)、陰性対照(存在する場合)および希釈した試料を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄して、100μlのHRPコンジュゲート抗ラムダ抗体または抗カッパ抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで6回洗浄し、TMB100μlを加えて、10分間インキュベートし、次いで、停止溶液(2MのHCl、100μl/ウェル)100μlを加えて、プレートリーダー(MolecularDevice社SpectraMaxMV5e)を使用して450nmで吸光度を読み取った。
【0071】
3.5 ELISAによる標的結合の測定
ELISAプレートをコーティングバッファー(200mMのNa2CO3/NaHCO3、pH9.2)中2μg/mlのストレプトアビジン(SA)でコーティングした。4℃で一晩のインキュベーション後、深型ウェル洗浄機(BiotekELx405)を使用してPBST洗浄バッファーによりプレートを1回洗浄した。次いで、プレートを1%のカゼインでブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄して、2.5μg/mlの抗原HLA*A*02:01NY-ESO-1(SLLMWITQC)、HLA*A*02:01GP100(YLEPGPVTV)(pHLA、Kactus bio社により提供)を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄して、陽性対照(存在する場合)、陰性対照(存在する場合)および希釈した試料を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄して、100μlのHRPコンジュゲート抗cmyc抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーで6回洗浄し、TMB100μlを加えて、10分間インキュベートし、次いで、停止溶液(2MのHCl、100μl/ウェル)100μlを加えて、プレートリーダー(MolecularDevice社SpectraMaxMV5e)を使用して450nmで吸光度を読み取った。
【0072】
4.結果
TCRが天然の膜タンパク質であるため、これらの可溶性型式への転移により、好ましい薬物様特性が常に生じるとは限らない。しかし、数十年前に報告されているように、人工ジスルフィド結合CαS48-CβT57を天然TCR非共有結合Cα-Cβに導入することにより、可溶性TCR型式の安定な増強が生じた(
図7A、米国特許第7666604号B2)。天然TCRとは対照的に、天然ジスルフィド結合は、抗体定常ドメインに存在した(
図7B)。これは、キメラの安定性に寄与し得る。
【0073】
発明者らは第1に、CαおよびCβを置換するCH1およびCλ/Cκの能力を評価した。CTCR1およびCTCR2可変ドメインのいずれかを、IgG抗体由来の定常ドメインと組み換え、Fcドメインに融合させて、IgG様ETCRを生成した。このようなETCRの発現および結合を、ELISAによりさらに決定した。表1および表2では、IgG様ETCRの構築、発現および結合結果を列挙し、回収した上清は、10倍濃縮してELISA解析を行った。概して、構築物のほとんどが良好に発現したが、結合シグナルは相対的に低く、キメラIgG様ETCRのETCR部分が、正しくフォールドまたは会合していない可能性を示す。キメラTCRの能力がさらに増強されることが予想されるFcドメインによって、ETCR部分を安定化することが不可能であるように思われる。それにもかかわらず、結果を解析することにより、発明者らは、「逆」融合パターンが、「正」融合パターンよりも良好であり、ほとんどすべての検査試料では、CH1と融合したVαおよびCLと融合したVβによって、他よりも良好な結合能が生じることを見出した。
【0074】
【0075】
【0076】
さらに、IgA、IgD、IgEおよびIgM由来のさらなる定常ドメインも、CTCR1およびCTCR2可変ドメインと組み換えて、大規模なスクリーニングのためにFab様ETCRを生成した(これまでの結果に基づいて、さらなるスクリーニングおよび改変において、Fcドメインは、ETCRと融合させない)。このようなETCRの発現および結合を、ELISAによりさらに決定した。表3および表4では、Fab様ETCRの構築、発現および結合結果を列挙し、回収した上清は、10倍濃縮してELISA解析を行った。概して、TCR可変ドメインをIgA、IgD、IgEおよびIgM由来の定常ドメインと融合させた場合、低い発現レベルならびに結合能が観察された。
【0077】
このような結果に基づいて、さらなる改変では、「逆」パターンで融合したIgG CH1およびCλ/Cκを含む定常ドメインを有するFab様ETCRに焦点を当てる。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例3:ETCRのコンジャンクションドメインの設計および改変
一般には、TCRおよび抗体の両方における可変ドメインと定常ドメインとの間のコンジャンクションドメインは、これらの安定化および機能のために重要である。しかし、IgGおよびTCRのリンカーは、いくらか異なる。したがって、種々の型および長さを有するリンカーは、各鎖の可変ドメインと定常ドメインとの間に挿入した。種々のETCRを生成して、これらの発現レベルおよび結合能について検査した。
【0081】
結果
第一に、種々の長さのセリンおよびアラニンを含む従来の可動性リンカーを、TCR可変ドメインと抗体定常ドメインとの間にリンカーとして挿入した(TCR Vα-CH1の融合は、配列番号19~24およびTCR Vβ-Cλ/Cκの融合は、配列番号25~30)。
【0082】
表5では、可変および定常ドメイン間に可動性リンカーを挿入したFab様ETCRの例となる構築、発現および結合結果を列挙し、回収した上清は、10倍濃縮してELISA解析を行った。SSASをリンカーとして含むコンジャンクションドメイン(α鎖は、配列番号19およびβ鎖は、配列番号25)は、検査したすべてのキメラ会合物において最高の発現レベルおよび結合シグナルを示し(表5)、これにより、わずかな可動性がドメイン間に導入されたが、可変ドメインおよび定常ドメインの立体障害は除去されず、本来のTCR機能は、完全には回復しなかったことを示す。
【0083】
配列番号19、コンジャンクションドメイン1AA:SSAS
配列番号20、コンジャンクションドメイン1DNA:tcgtcggcttca
配列番号21、コンジャンクションドメイン2AA:SSASS
配列番号22、コンジャンクションドメイン2DNA:tcgtcggcttcatcg
配列番号23、コンジャンクションドメイン3AA:SSASSS
配列番号24、コンジャンクションドメイン3DNA:tcgtcggcttcatcgtca
配列番号25、コンジャンクションドメイン4AA:SSASKAA
配列番号26、コンジャンクションドメイン4DNA:agttcggcctcaaaggctgcc
配列番号27、コンジャンクションドメイン5AA:SSASSKAA
配列番号28、コンジャンクションドメイン5DNA:tcgtcggcttcatcgaaggctgcc
配列番号29、コンジャンクションドメイン6AA:SSASSSKAA
配列番号30、コンジャンクションドメイン6DNA:tcgtcggcttcatcgtcaaaggctgcc
【0084】
【0085】
次いで、発明者らは、構造アラインメントに基づいて、抗体およびTCRの配列を注意深くアラインメントし、生殖系列配列において定義されたコンジャンクションが、ドメインと常に一致するとは限らないことを見出した。発明者らは、抗体およびTCRコンジャンクションの重複構造上でのオーバーラップの仕方を確認し、TCRコンジャンクションから抗体定常ドメインのN末端(
図8、黒色の矢として指示)を使用して潜在的置換を推定した。特には、抗体のそれとのTCR定常ドメインの構造のアラインメントによって、TCRベータ鎖のFGおよびDEループが、抗体定常ドメインの対応する領域よりも著しく長く、TCRコンジャンクションドメインとの強力な相互作用を形成していることが明らかとなった(
図8A、赤色の矢として指示)。本発明のキメラETCRにおいて長いFGおよびDEループが存在しないため、不飽和の荷電アミノ酸を有すると思われる本来のTCRコンジャンクションドメインにおける鍵となる位置は、合理的に変異させて安定性を増強させる必要を有する。
【0086】
このような概念に基づき、λG4-逆定常ドメインを例となる骨格として使用して、β鎖の2つのコンジャンクションドメイン(L1およびL2)(TCR VβドメインとCλとの間)を第一に設計して検査した(配列番号33~36、L1のアミノ酸配列は、配列番号33として示し、L2のアミノ酸配列は、配列番号35として示し、α鎖のコンジャンクションドメインは、やはり可動性リンカーであり、可動性リンカーのアミノ酸配列は、配列番号19に示す)。表6では、可変および定常ドメイン間に設計したリンカーを挿入したFab様ETCRの例となる構築、発現および結合結果を列挙し、回収した上清は、10倍濃縮してELISA解析を行った。設計したリンカーを挿入したβ鎖のクローンでは、CTCR1およびCTCR2可変ドメインの両方を使用するλG4-逆骨格と比較して、発現は同等に維持されたが、良好な結合シグナルを示し、β鎖における設計したリンカーL1およびL2の、コンジャンクションドメインとしての使用により、さらに良好な構造的互換が可能となり、さらなる天然TCR様の会合が生じることを示した。したがって、可動性リンカーおよび設計したリンカーをα鎖およびβ鎖にそれぞれ挿入したλG4-逆を、さらなる改変のための例となる骨格として使用した。
【0087】
配列番号31、コンジャンクションドメイン7AA:EDLNKVFP
配列番号32、コンジャンクションドメイン7DNA:gaggacctgaacaaggtgttccca
配列番号33、コンジャンクションドメイン9AA:EDLSNVSP
配列番号34、コンジャンクションドメイン9DNA:gaggacctgtccaatgtcagtccc
配列番号35、コンジャンクションドメイン8AA:EDLKNVFP
配列番号36、コンジャンクションドメイン8DNA:gaggacctgaaaaacgtgttccca
【0088】
【0089】
実施例4:ETCRのVβ-CL結合インターフェースの設計および改変
天然TCR構造を注意深く解析することにより、発明者らは、天然TCRの可変ドメインおよび定常ドメインの結合が通常、3つの別々の領域Vα-Cα、Vβ-CβおよびVα-Cβ(
図9)によりもたらされることを見出した。それらの中でも、Vβ-Cβにおける最も大型の結合領域は、高度に組織化されていて、いくつかのH結合および塩橋ならびに疎水性コアからなることが見出され、非常に強力な結合親和性を示した(
図10A、極性接点は、赤色の矢および黄色の破線により示し、非極性接点は、橙色の円により示す)。次いで、発明者らは、キメラETCR構造を天然TCRに重ね、天然TCRの高度に組織化された相互作用が、Cβを抗体定常ドメインCλに置換することにより完全に破壊されていることをさらに認めた(
図10B)。重複モデルを解析することにより、VβとCλとの間の結合に寄与し得る、Cλにおける鍵となる位置を決定し、変異原をさらに設計して検査した。例となる設計および変異を以下に列挙する。IMGTナンバリング規定を、すべてのTCR可変ドメインに使用した。
【0090】
【0091】
材料および方法
タンパク質精製
6×Hisタグ化タンパク質を、NiSepharose(商標)Excelクロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare社)をカラムに備えたAKTApureM25により精製した。洗浄バッファーA:50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.2。洗浄バッファーB:50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、500mMのイミダゾール、pH7.2。精製プロセスは、概して次のように記載する。カラムを洗浄バッファーAにより1ml/分で平衡化する。試料を、試料入口を使用して1ml/分で適用する。カラムを洗浄バッファーAにより1ml/分で洗浄する。カラムを2%、4%、10%、100%の洗浄バッファーBで洗浄する。洗浄プロセス中に画分を1.0ml/バイアルで採取する。
【0092】
精製前タンパク質は、Superdex(商標)75/200increaseクロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare社)をカラムに備えたAKTApureM25により、さらに精製することができる。洗浄バッファー:137mMのリン酸ナトリウム、2.68mMのNaCl、1.76mMのKCl、10mMのKH2PO4、10mMのNa2HPO4、pH7.4。精製プロセスは、概して次のように記載する。タンパク質を適切な充填容量に限外濾過して濃縮する。カラムを蒸留水で洗浄する。カラムを洗浄バッファーで平衡化する。試料をカラム上に適用する。0.5ml/分で流出物中に物質が出現しなくなるまでカラムを洗浄バッファーで溶出する。精製したタンパク質は、後の使用のために-80℃で保存する。
【0093】
精製タンパク質の定量
A280を使用して、精製タンパク質の予備的特性決定を行った。280nmにおけるタンパク質溶液の吸収値をNanodrop2000により、50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.2をブランクバッファーとして使用して測定した。タンパク質濃度(mg/ml)=A280/消衰係数。
【0094】
また、SDS-PAGEを特性決定に使用した。ランニング電圧は、35分間200Vで一定とし、電気泳動後にクーマシーブルーを使用して染色した。
【0095】
試料の純度は、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィーを使用して最終的に決定した。TSK GEL G3000SWXLカラムを備えたAgilent1200HPLCシステムを使用した。洗浄バッファー:50mMのリン酸ナトリウム。簡潔なプロセスは、概して次のように記載する。カラムを50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH7.0で平衡化する。試料をカラム上に適用し、280nmのUV吸光度を監視した。純度は、クロマトグラムを統合することにより推定した。
【0096】
結果
可動性リンカーSSAS(配列番号19)および設計したリンカーL1(配列番号33)をα鎖およびβ鎖にそれぞれ挿入したλG4-逆を、さらなる改変のための例となる骨格として使用した。構造解析に基づいて、抗体CλにおけるG30、A31およびT33を含む鍵となる位置を同定してG30D、A31HおよびT33Eにそれぞれ変異させ、TCR様相互作用を生成可能とした。
【0097】
単一の変異だけでなく組合せ的変異を生成、発現、精製および特性決定した。
図11Aは、例となる変異原の上清の電気泳動結果を示し、SDS-PAGEによって明瞭なバンドを見ることができ、このような変異によりキメラETCR1の発現が著しく増強されたことを示唆した。また、さらなる結合ELISA検査によって天然TCR CTCR1に匹敵する結合能が明らかとなり(
図11B、異なる検出タグによって僅差が生じ得る)、G30D-Vβ123R、A31H-Vβ125TおよびT33E-Vβ10Rの間で合理的変異原を介して再構築された相互作用により、全ETCR1構造が強力に安定化されることを示唆した。このような変異によりETCR1は良好に発現および機能したが、同一の変異原を有するETCR2では、可変性が観察された。
【0098】
β鎖の互換性をさらに向上させるために、ETCR1およびETCR2の両結合インターフェースを再び重ねて注意深く解析した。構造解析により、V-C結合インターフェースに位置するTCR可変ドメインのフレームワーク1領域(FR1)が、ETCR1とETCR2とでは著しく異なることが明らかとなり、上述の可変性に対する(
図12A、この差異は赤色の矢により示す)説明がもたらされた。可動性リンカーSSAS(配列番号19)および設計したリンカーL1(配列番号33)をα鎖およびβ鎖型式に挿入したλG4-逆ならびにbM1設計に基づいて、CTCR2FR1の構造解析に従って選択された位置を、ETCR1FR1の対応するアミノ酸に個別に置換してETCR2の互換性をさらに向上させ、結果として、ETCR2可変βドメイン(Vβ)のR13の1つの位置を同定した。
図12Bでは、R13変異原の上清の例となる電気泳動結果を示し、SDS-PAGEによって明瞭なバンドを見ることができ、FR1変異体によって、キメラETCR2の発現がbM1と比較して著しく増強されることを示唆した。また、さらなるQ-ELISA検査によって、R13K/T変異を有するETCR2-bM1の発現レベルの向上が、親ETCR2-bM1と比較して明らかとなり(957/755nM対208nM)、VβにおけるR13変異とともにCλにおける変異とにより、全ETCR2構造が強力に安定化されることを示唆した。
【0099】
実施例5:ETCRのSPR解析
次いで、ETCRの詳細な結合能を、SPR技術を使用して決定した。
【0100】
方法
ETCRおよびMHC-ペプチド(pMHC)抗原の結合親和性をBiacoreT200(またはBiocore8K)を使用して検出した。一般的プロセスは、次のように記載する。pMHC抗原をCM5センサーチップ(GE社)上に固定化した。段階濃度の解析物およびランニングバッファー(50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、0.05%のTween20、pH7.4)を120秒の結合相および2400秒の解離相の間、流量30μL/分でチップに整然と注射した。各サイクル後、センサーチップ表面を10mMのグリシン(pH1.5)により完全に再生した。捕捉リガンドを有しない表面チャネルFc1を、参照サブトラクションのための対照表面として使用した。各相互作用の最終データは、参照Fc1およびバッファーチャネルデータから差し引いた。分子量50.5kDaを使用して解析物のモル濃度を算出し、実験データをBiacore8Kによる評価によって適合させた。
【0101】
結果
図13では、ETCRおよびCTCRのセンサーグラムを示し、概して、このセンサーグラムにより、非常に類似する結合特性が観察された。詳細には、表13および表8~9では、例となるETCR1およびETCR2のSPR結果を列挙した。キメラETCRおよびCTCRは、定性的に類似の結合能を有した。特には、ETCRは、CTCRよりもさらに良好なK
onを示し、これは、CTCRと比較して安定で互換性の抗体定常ドメインから利益を得得るものである。
【0102】
【0103】
【0104】
実施例6:ETCRのFACS解析
次いで、ETCRの結合能を腫瘍細胞株に対してFACS技術を使用して評価した。
【0105】
方法
設計したETCRの結合能を、A375腫瘍細胞株を使用して評価した(A375は、HLA*A*02:01およびNY-ESO-1二重陽性細胞株である)。細胞株を米国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手し、10%のウシ胎仔血清(FBS)を添加したDMEM培地中に維持した。
【0106】
1ウェルあたり105個の細胞の一定分量を採取し、1%のウシ血清アルブミン(BSA)で洗浄した後、96ウェルの丸底プレート内の段階希釈したETCRにより4℃で1時間インキュベートした。1%のBSAで3回洗浄後、プレートをPEコンジュゲートヤギ抗ヒトc-myc抗体により4℃で30分間さらにインキュベートした。プレートを再び3回洗浄後、細胞をフローサイトメトリーによりFACSCantoIIサイトメーター(BD Biosciences社)を使用して解析し、関連する蛍光強度を、FlowJoソフトウェアを使用して定量した。4パラメーター非線形回帰分析を使用して、Prismソフトウェア(GraphPadSoftware,Inc)によりEC50値を得た。
【0107】
結果
図14では、例となるETCR1のFACS結果を示す。キメラETCR1-bM1およびCTCR1は、定性的に類似の結合特性を有した。それにもかかわらず、ETCR1-bM2は、CTCR1およびETCR1-bM1よりも著しく良好な結合特性を有し、これは、ELISAまたはSPRでは示されなかった。発明者らは、G30D-Vβ123R、A31H-Vβ125TおよびT33E-Vβ10Rの包括的相互作用の微妙な構造的差異が、T33E-Vβ10Rの単一相互作用と比較して、低抗原密度(A375細胞1細胞あたり抗原10~50コピー)の条件下で際立ち得ると仮定する。
【0108】
実施例7:ETCRのVβフレームワークドメインの設計および改変
本発明のキメラ型式の互換性をさらに検査するために、発明者らは、本発明の改変抗体定常ドメインおよびTCR可変ドメインのFR1に導入した変異を、異なるTCR生殖系列に融合させたが、これまでに1G4として報告された一生殖系列対に関しては、安定なETCRを生成することができなかった。発明者らは、定常ドメインならびに結合インターフェースを除いて、TCRの可変ドメインも、ETCRの安定性に対する影響を有し得ると仮定する。したがって、次いで、さらに良好な安定性のために、VβのFR領域を包括的に設計した。
【0109】
TCR配列
CTCR3と名付けられた、CαS48-CβT57間に非天然ジスルフィド結合を有する別のHLA*A*02:01NY-ESO-1(SLLMWITQC)特異的TCR(配列番号45~48)を選択して試験を行った。IMGTナンバリング規定を、すべてのTCR可変ドメインに使用した。
【0110】
材料および方法
抗体およびTCR相同性モデル化
抗体およびTCR構造モデルを、MODELLERを使用してアミノ酸配列に基づいて構築した。次いで、すべてのモデル化セグメントを組み合わせてαキメラ鎖およびβキメラ鎖構造モデルを構築した。全配列が最も類似するTCR構造の角度を採ることにより2つのモデル化鎖間の相対配向を予想した。すべての分子の可視化および解析作業は、PyMOLソフトウェア(Schrodinger社)を使用して行った。
【0111】
結果
第一に、CTCR3の可変ドメインを増幅して、bM2設計を含む改変抗体定常ドメインに融合させた(可動性リンカーSSAS(配列番号19)および設計したリンカーL1(配列番号35)をα鎖およびβ鎖に挿入したλG4-逆)。しかし、生じたETCR-bM2は、およそ50nMしか発現せず、精製不可能であった。TCRのVβドメインのさらなる安定化によって、哺乳動物細胞において可溶性TCRを発現させる場合のTCR発現、安定性および会合に利益をもたらすかどうかを調べるために、発明者らは、分子モデル化シミュレーションを使用して、Vβドメインが安定化する変異を同定した。発明者らは、VβドメインのFR領域のすべての残基の位置にわたってスキャンし、FoldXを使用して、すべての潜在的点変異(システインを除く)をモデル化し、このような変異のエネルギーを算出した。このようなエネルギーデータを解析して順位付けすることにより、理論上1500種の変異から180種の変異を、さらなる実験的確認のために選択した。最終的には、それぞれに発現レベルを著しく向上させることが可能な変異、M19Y(bM41)、A24K(bM42)、A24R(bM43)、M48F(bM39)、H54Y(bM44)、H54W(bM45)、H54A(bM40)、N77E(bM46)、R90T(bM37)、R90V(bM47)、L91I(bM38)が確認された。次いで、安定化する変異を、2~4つの変異を内包する種々のバリアントに組み合わせた。すべての組合せの中でも、R90T-L91I(bM37-bM38)では、発現レベルが最も高くなり、1612nMに達した。表10では、例となるETCR3のSPR結果を列挙した。キメラETCRおよびCTCRは、定性的に類似の結合能を有し、TCR可変ドメインにおける変異もETCRの安定化に寄与することを示した。
【0112】
【0113】
実施例8:二重特異性ETCRの設計および改変
安定に発現するETCRを良好に生成し、キメラ型式が天然リガンドに結合可能であることを確認した後、発明者らは続けて、二重特異性型式を構築し、in vitroでの機能を検査した。可動性リンカーSSAS(配列番号19)および設計したリンカーL1(配列番号33)をα鎖およびβ鎖にそれぞれ挿入したλG4-逆ならびにbM1設計をETCR1型式として使用した。
【0114】
方法
DNA操作およびプラスミド構築
抗CD3scFv抗体(配列番号49~50)遺伝子は、GenewizInc.により合成された。抗CD3scFvの遺伝子産物を増幅してTCR VβドメインのN末端、抗体CλドメインのC末端、TCR VαドメインのN末端、抗体CH1ドメインのC末端にそれぞれ挿入し、二重特異性ETCR1-E1.1、ETCR1-E1.2、ETCR1-E1.3およびETCR1-E1.4を生成した(
図15A~D)。CTCRでは、抗CD3scFvの遺伝子産物を増幅してTCR VβドメインのN末端に挿入し、CTCR1-E1.1を生成した(
図15E、報告された型式)。プラスミドライゲーション、形質転換、DNA調製は、標準的分子生物学プロトコールを使用して実施した。
【0115】
タンパク質の発現、精製および他の特性決定方法は、上述の説明に従った。
結果
すべての抗CD3scFv抗体(配列番号50)ETCR融合物は、Expi293細胞において良好に発現し、精製された。
図16は、上清中および精製後の生成した二重特異性ETCRタンパク質のSDS-PAGEデータを示す。非還元ゲル中の正しい分子量、すなわち、およそ78Kdのバンドは、すべて明瞭に観察された。精製した試料をSEC-HPLCによってさらに調査すると、この純度は99%超を達成した。データは、ETCR二重特異性タンパク質が良好に発現し、会合することを示した。
【0116】
次いで、すべての二重特異性ETCRの結合特性をSPRにより検査した。表11では、例となる二重特異性ETCR1のSPR結果を示す。異なる位置における抗CD3scFvの融合は、二重特異性ETCR1の結合親和性に著しくは影響せず、二重特異性CTCR1と比較して良好なKonによってわずかに良好な類似の結合特性が、再び観察された。それにもかかわらず、抗CD3scFvの結合特性に関しては、可変の結果が観察された。抗CD3scFvがTCR VαおよびVβドメインのN末端にコンジュゲートするETCR1-E1.1およびETCR-E1.3の結合親和性は、抗CD3scFvが抗体CH1およびCλドメインのC末端にコンジュゲートするETCR-E1.2およびETCR-E1.4よりもほぼ10倍高く、抗体定常ドメインの立体障害がTCR可変ドメインよりも強力であると思われることを示した。
【0117】
【0118】
実施例9:二重特異性ETCRのin vitroでのT2細胞殺傷アッセイ
in vitroでの機能アッセイを実施して、特定のペプチドを充填した抗原提示細胞T2のT細胞関与による殺傷における、設計した二重特異性ETCRの活性を確認した。T2細胞は、HLA*A*02:01陽性であり、特には、抗原プロセシング(TAP)に関与するペプチド輸送体が欠損しており、このため、内因性(プロセシングした)ペプチドを、小胞体であるゴルジ体に充填するMHCの部位に正しく転位置させることができない。したがって、ペプチドをパルス適用したT2細胞を使用して、非競合的環境下で目的の外因性抗原に対する細胞傷害性T細胞応答を監視することができる。腫瘍細胞株と比較して、特定のペプチドを充填したT2細胞により、高い抗原密度が正常にもたらされ、良好な殺傷特性が生じた。
【0119】
方法
健常ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll-PaquePLUS(GE Healthcare-17-1440-03)による密度遠心分離によって、ヘパリン処理した静脈血から新鮮に単離した。10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン溶液、1mlあたり50単位のヒトIL-2リガンドタンパク質および10ng/mlのOKT3抗体を添加したRPMI1640培地中での6日間の培養後、PBMCにEasySepカラムを通過させてCD8+T細胞を濃縮した。負の選択カラムのCD8+T細胞をエフェクター細胞として使用した。
【0120】
T2細胞(174 9CEM.T2、ATCC CRL-1992(商標))をATCCから入手し、20%のFBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したIMDM培地中に37℃、5%CO2で維持した。使用前に、計数して1×106/mlまで培地中に再懸濁し、ペプチドを20μg/mlのペプチド濃度で37℃、5%CO2のインキュベーターにおいて90分間パルス適用した。次いで、パルス適用したT2細胞を、DPBS中20nMのFar-Redで30分間標識し、次いで2回洗浄して、設計した細胞密度に再懸濁した。
【0121】
次いで、細胞および二重特異性ETCRを混合し、設計した時間インキュベートした。解析では、PI(PBS中1:500希釈)100μlを各ウェルに加え、FACSを実行した。
【0122】
結果
in vitroでの機能アッセイを実施して、特定のペプチドを充填した抗原提示細胞T2のT細胞関与による殺傷における、設計した二重特異性ETCRの活性を確認した。無関係なペプチドならびに無関係なETCR2を充填したT2細胞を、陰性対照として使用した。
図17は、18hおよび24hにおける例となる二重特異性ETCRの用量依存的細胞殺傷機能を示す。いずれの陰性対照を使用しても、非特異的殺傷は観察されなかった。その上、ETCR-E1.1(2.3pM)は、ETCR-E1.3(39pM)よりもおよそ20倍強力であり(表12)、TCRのVαの代わりにVβドメインのN末端にコンジュゲートした抗CD3scFvにより、最良の殺傷機能の再方向づけが生じることを示した(いずれの抗体定常ドメインのC末端にコンジュゲートした抗CD3scFvを有する二重特異性ETCRを使用しても、同一条件下において殺傷作用は観察されなかった、データ非提示)。特には、同一の抗CD3scFvおよびコンジュゲーション位置を使用すると、ETCR-E1.1は(2.3pM)、CTCR1-E1.1よりも(25pM)10倍著しく強力な殺傷を示し、改変抗体定常ドメインならびにTCR可変ドメインによって、キメラETCRの全体的安定性が、CTCRよりも良好であることを示唆した。
【0123】
【0124】
実施例10:二重特異性ETCRのin vitroでの腫瘍細胞株殺傷アッセイ
in vitroでの機能アッセイも実施して、腫瘍細胞株A375のT細胞関与による殺傷における設計した二重特異性ETCRの活性を確認した。A375腫瘍細胞は、HLA*A*02:01およびNY-ESO-1二重陽性であって1細胞あたり10~50コピーの抗原密度を有し、NY-ESO-1特異的二重特異性TCRの殺傷を検査するのに適する。
【0125】
方法
CD8+T細胞の単離のための方法を実施例9に記載する。
【0126】
A375細胞は、ATCC(ATCC CRL1619(商標))から入手し、10%のFBSを添加したDMEM中に維持した。殺傷アッセイでは、50μl/ウェルの希釈した二重特異性ETCRを黒色の96ウェル平底プレートに加えた。50μl/ウェルの単離したCD8+T細胞を、104/ウェルのA375細胞に対する指示比率で加え、設計した時間インキュベートした。解析では、プレートをDPBSで1回洗浄し、解剖の可変性をCellTiter-Glo(CTG)アッセイキット(Promega社、Cat.No.G755B)により検出した。
【0127】
結果
in vitroでの機能アッセイを実施して、腫瘍細胞株A375のT細胞関与による殺傷における設計した二重特異性ETCRの活性を確認した。無関係なETCR2を陰性対照として使用した。
図18は、例となるETCRの用量依存的細胞殺傷機能を示す。いずれの陰性対照を使用しても、非特異的殺傷は観察されなかった。概して、T2細胞株と比較したA375腫瘍細胞株の抗原密度の急激な低下により、すべての二重特異性ETCRの殺傷能力は低下し、特に、ETCR-E1.3の殺傷機能は、ほぼ完全に失われた。さらに、ETCR-E1.1(3.6nM)は、CTCR-E1.1(264nM)よりも著しく70倍強力な殺傷を示した(表13)。このようなデータはやはり、キメラETCRの全体的安定性が、改変抗体定常ドメインおよびTCR可変ドメインによって、CTCRよりも良好となることを示唆し、このような利点は、実際の腫瘍微小環境において頻繁に出現する低抗原密度条件下で拡大する。
【0128】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRα鎖可変ドメイン(TCR Vα)とそれに動作可能に結合する第1の抗体定常ドメイン(C1)とを含む第1のポリペプチド、およびN末端からC末端に、第1のTCRの第1のTCRβ鎖可変ドメイン(TCR Vβ)とそれに動作可能に結合する第2の抗体定常ドメイン(C2)とを含む第2のポリペプチドを含む、ポリペプチド複合体であって、C1およびC2が、その天然の鎖間結合および相互作用を介して二量体を形成することが可能である、ポリペプチド複合体。
【請求項2】
a)C1が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEからなる群から選択される改変CH1ドメインを含み、
b)C2が、ヒト免疫グロブリン由来の改変λまたはκ軽鎖定常ドメイン(CλドメインまたはCκドメイン)を含み、前記Cλドメインは、Cλ1、Cλ2、Cλ3、Cλ6およびCλ7からなる群から選択され、前記Cκドメインは、Cκ1、Cκ2、Cκ3およびCκ4からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項3】
a)C1が、ヒト免疫グロブリン由来の改変λまたはκ軽鎖定常ドメイン(CλドメインまたはCκドメイン)を含み、前記Cλドメインは、Cλ1、Cλ2、Cλ3、Cλ6およびCλ7からなる群から選択され、前記Cκドメインは、Cκ1、Cκ2、Cκ3およびCκ4からなる群から選択され、
b)C2が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEからなる群から選択される改変CH1ドメインを含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記C1が、配列番号11、13、15および17のいずれか1つ
のアミノ酸配列を含む改変CH1を含み、ならびに/または前記C2が、配列番号1、3、5、7および9
のいずれか1つのアミノ酸配列を含む改変Cλを含む、請求項2に記載のポリペプチド複合体。
【請求項5】
第1の
TCR Vαが、第1のコンジャンクションドメインを介してC1に動作可能に結合し、第1の
TCR Vβが、第2のコンジャンクションドメインを介してC2に動作可能に結合する、
請求項2~4のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記C1が、改変CH1を含み、前記C2が、改変Cλを含み、前記第1のコンジャンクションドメインが、配列番号19、21および23のいずれか1つ
のアミノ酸配列を含み、ならびに/または前記第2のコンジャンクションドメインが、配列番号25、27、29、31、33および35のいずれか1つ
のアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記第2のコンジャンクションドメインが、EDLXNVXPを含み、
ここにおいて前記Xが、任意のアミノ酸である、請求項5に記載のポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記改変Cλが、配列番号1,3、5、7および9のいずれか1つの30、31および33番目から選択される1つまたは複数の位置に変異原を含む、請求項2または3に記載のポリペプチド複合体。
【請求項8】
前記改変Cλが、30番目の位置のアミノ酸D、31番目の位置のアミノ酸H、および33番目の位置のアミノ酸Eの1つ以上を含む、請求項7に記載のポリペプチド複合体。
【請求項9】
前記TCR Vβが、フレームワーク領域の10、13、19、24、48、54、77、90、91、123および125番目(IMGTナンバリング)から選択される1つまたは複数の位置に変異原を含
む、請求項1
~8のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項10】
前記TCR Vβが、10番目の位置のアミノ酸R、13番目の位置のアミノ酸K、13番目の位置のアミノ酸T、19番目の位置のアミノ酸Y、24番目の位置のアミノ酸K、24番目の位置のアミノ酸R、48番目の位置のアミノ酸F、54番目の位置のアミノ酸Y、54番目の位置のアミノ酸W、54番目の位置のアミノ酸A、77番目の位置のアミノ酸E、90番目の位置のアミノ酸T、90番目の位置のアミノ酸V、91番目の位置のアミノ酸I、123番目のアミノ酸R、および125番目の位置のアミノ酸Tの1つ以上を含む、請求項9に記載のポリペプチド複合体。
【請求項11】
前記TCR Vβが、13番目の位置に少なくとも1つの変異を含むか、または90および91番目の位置に少なくとも2つの変異を含む、請求項9または10に記載のポリペプチド複合体。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を含む第1の抗原結合部分、および第2の抗原結合部分を含む、多重特異性抗原結合複合体であって、前記第1の抗原結合部分が、第1の抗原特異性を有する、多重特異性抗原結合複合体。
【請求項13】
前記第2の抗原結合部分が、第1の抗原上の種々のエピトープに結合するか、または好ましくは、前記第1の抗原特異性とは異なる、第2の抗原特異性を有し、前記第1の抗原結合部分の第1のポリペプチドまたは前記第1の抗原結合部分の第2のポリペプチドのN末端またはC末端においてコンジュゲートする、請求項
12に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項14】
前記第1および前記第2の抗原特異性の一方は、T細胞特異的受容体分子および/またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)特異的受容体分子に方向づけ、他方は、腫瘍関連抗原および/または腫瘍新生抗原に方向づける、請求項
12に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項15】
前記第1の抗原結合部分が、TCR VαおよびTCR Vβを含み、前記Vαが、配列番号37、41および45から選択されるアミノ酸配列を含み、前記Vβが、配列番号39、43および47から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記第2の抗原結合部分が、配列番号49から選択されるscFvを含む、請求項
12に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項16】
前記第1の抗原結合部分が、HLA*A*02:01-NY-ESO-1ペプチド(SLLMWITQC)またはHLA*A*02:01-GP100ペプチド(YLEPGPVTV)に結合し、前記第2の抗原結合部分が、分化抗原群3(CD3)に結合する、請求項
12に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項17】
前記第2の抗原結合部分が、可動性リンカーを介して共有結合的にコンジュゲートする重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの両方を含む1本鎖可変断片(scFv)を含む、請求項
12に記載の多重特異性抗原結合複合体。
【請求項18】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体、または請求項
12~
17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項
18に記載のポリヌクレオチドを含む、単離ベクター。
【請求項20】
請求項
18に記載の単離ポリヌクレオチド、または請求項
19に記載の単離ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項21】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体、または請求項
12~
17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体を含む、コンジュゲート。
【請求項22】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項
12~
17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体を発現させる方法であって、前記ポリペプチド複合体が発現する条件下で請求項
20に記載の宿主細胞を培養する工程を含む。
【請求項23】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項
12~
17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項24】
それを必要とする対象における症状の治療のための請求項1~11のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項12~17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体であって、任意に、前記第1の抗原および前記第2の抗原がともに調節される場合、前記症状を緩和、除去、治療または予防することができる、ポリペプチド複合体または多重特異性抗原結合複合体。
【請求項25】
前記症状ががんである、請求項24に記載のポリペプチド複合体または多重特異性抗原結合複合体。
【請求項26】
請求項
1~
11のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体または請求項
12~
17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合複合体を含む、キット。
【国際調査報告】