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特表2023-547260患者リスクの階層化及び標的化療法のための個別化歯周炎スコアの開発
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  • 特表-患者リスクの階層化及び標的化療法のための個別化歯周炎スコアの開発 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】患者リスクの階層化及び標的化療法のための個別化歯周炎スコアの開発
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20231101BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20231101BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20231101BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20231101BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6851 Z
G01N33/50 G
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023547748
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2021078480
(87)【国際公開番号】W WO2022079184
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/078896
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523139412
【氏名又は名称】パロエックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ゲイガー
(72)【発明者】
【氏名】パブロ サンドロ カルヴァーリョ サントス
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ ガーベルト
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ ケブシュール
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB07
2G045DA13
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
(57)【要約】
本開示は、定義された治療段階にある特定の個体の歯周ポケット及び/又は唾液における個体レベルの微生物不均衡を、同様の全身及び局所医学的特徴を有する平均的患者並びに人口統計プロファイルについて予測された期待スコアと比較して評価するための、個別化歯周炎スコアの開発に関する。遺伝子/ゲノム情報から取得された微生物プロファイルを、混合効果モデルにおいて臨床及び人口統計情報と組み合わせて、所与の臨床パラメータのセットについての予測値及び標準誤差を取得する。この予測平均スコア及び個々の患者の個別化歯周炎スコアを比較することにより、この部位及び/又は患者における相対的な歯周病活動についての情報が得られ、かつそれにより局所部位及び又は患者をリスクカテゴリへと階層化し、かつ患者特異的標的化治療モダリティを勧めることが可能となる。
具体的には、本発明は、歯周炎における微生物不均衡を患者及び部位特異的に評価するための方法であって:
#歯周ポケット又は唾液から取得した試料における遺伝学的ワークフローを使用して細菌種を特定し、かつ定量化する工程;
#歯周炎に関連する1つ又はいくつかの細菌種の量又はこれらの細菌の量の比に基づいて、微生物プロファイルを計算する工程;
#参照データベースを使用して、該微生物プロファイルを関連する臨床及び人口統計パラメータの選択の関数としてモデル化する工程;
#患者から得た臨床及び人口統計パラメータのセットを使用し、上記モデルを介して該微生物プロファイルの予測値を計算する工程;
#予測値及び試験所において取得された患者値の間で該微生物プロファイルを比較して、局所ミクロビオームの相対的不均衡を評価し、かつこれに基づいて部位及び/又は患者特異的療法を勧める工程、を含む、前記方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床及び人口統計パラメータに基づいて歯周炎における微生物不均衡を患者及び部位特異的に評価するための方法であって:
・歯周ポケット又は唾液から取得した試料における遺伝学的ワークフローを使用して細菌種を特定し、かつ定量化する工程;
・歯周炎に関連する1つ又はいくつかの細菌種の量又はこれらの細菌の量の比に基づいて、微生物プロファイルを計算する工程;
・参照データベースを使用して、該微生物プロファイルを関連する臨床及び人口統計パラメータの選択の関数としてモデル化する工程;
・患者から得た臨床及び人口統計パラメータのセットを使用し、上記モデルを介して該微生物プロファイルの予測値を計算する工程;
・予測値及び試験所において取得された患者値の間で該微生物プロファイルを比較して、局所ミクロビオームの相対的不均衡を評価し、かつこれに基づいて部位及び/又は患者特異的療法を勧める工程、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記微生物プロファイルが歯周炎の重要なマーカーとして特定された1つ又はいくつかの細菌種の量として定義され、ここでいくつかの細菌種とは、ヒト口内の公知の一般的系統型の数となる、2~700の細菌種から選択されたものを意味する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記微生物プロファイルが微生物不均衡の生態学的尺度、例えば微生物ディスバイオシスを定量化する指数、具体的には微生物ディスバイオシス指数又は歯肉下微生物ディスバイオシス指数から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
線形混合効果モデルが参照データベースから得た分子及び臨床データに基づいており、ここで該モデルは反応変数としての前記微生物プロファイル及び説明変数としてのポケットの深さを含む臨床パラメータを含み、かつ該モデルを使用して、該微生物プロファイル並びに該モデルにおいて使用されるパラメータの任意の組合わせについての標準誤差を予測することができる、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
臨床パラメータが定義された追加の患者の前記微生物プロファイルを、同一の臨床パラメータに基づく予測値及び標準誤差と比較することができる、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
微生物不均衡段階を、以下:
個別化歯周炎スコアが予測値から-1 SEの値未満である、健常段階;
個別化歯周炎スコアが予測値から-1 SE~+1 SEの値である、初期ディスバイオシス段階;
個別化歯周炎スコアが予測値から+1 SEの値を超える、進行ディスバイオシス段階、として定義される、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記細菌種が、定量PCR、16SリボソームRNA配列決定法、ショットガン配列決定法又は任意の他の分子的技術によって特定される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
歯周炎の重症度を決定するための、請求項1~7のいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項9】
歯周炎におけるディスバイオシスの発達を経時的にモニタリングするための、請求項1~8のいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項10】
歯周炎治療の有効性をモニタリングするための、請求項1~8のいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項11】
歯周炎の治療戦略を勧め、かつ選択するための、請求項1~8のいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項記載の方法を含む、歯周炎におけるディスバイオシスの発達をモニタリングするための方法であって、所定の時間間隔で、例えば1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、1週間ごと、2週間ごと若しくは3週間ごと、又は1か月ごと~最大5か月ごと歯周ポケットから採取された試料を分析する、前記方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項記載の方法を含む、歯周炎治療の有効性をモニタリングするための方法であって、所定の時間間隔で、例えば1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、1週間ごと、2週間ごと若しくは3週間ごと、又は1か月ごと~最大5か月ごと歯周ポケットから採取された該治療の後又はその間の試料を分析する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本開示は、定義された治療段階にある特定の個体の歯周ポケット及び/又は唾液における個体レベルの微生物不均衡を、同様の全身及び局所医学的特徴を有する平均的患者並びに人口統計プロファイルについて予測された期待スコアと比較して評価するための、個別化歯周炎スコアの開発に関する。遺伝子/ゲノム情報から取得された微生物プロファイルを、混合効果モデルにおいて臨床及び人口統計情報と組み合わせて、所与の臨床パラメータのセットについての予測値及び標準誤差を取得する。この予測平均スコア及び個々の患者の個別化歯周炎スコアを比較することにより、この部位及び/又は患者における相対的な歯周病活動についての情報が得られ、かつそれにより局所部位及び又は患者をリスクカテゴリへと階層化し、かつ患者特異的標的化治療モダリティを勧めることが可能となる。
【背景技術】
【0002】
(背景)
歯周炎はヒトにおける最も一般的な非伝染性の疾患であり、ディスバイオシスバイオフィルム及び宿主免疫炎症反応の調節不全の間の破壊的相互作用によって引き起こされる。歯周炎は歯を失うことにつながり、独立して早発死亡率と関連付けられている。口腔の疾患(多くは歯周炎)は世界的に、ほかのいかなるヒトの疾患よりも長い障害による損失年数(years lost to disability)の原因となっている。重要なことは、―口腔内及び全身の両方における―有害な影響は、この疾患の急速に進行する変種を有する患者において特に重大であるということである。
【0003】
歯周炎それ自体は、比較的治療することが容易であり、かつ予測可能である。しかしながら、真の困難は急速に進行する疾患を有する患者を、永続的な損傷が生じる前に検出し/予測することであり、従ってより集中的な療法から恩恵を受ける患者を特定することである。このことは、歯周炎及び/又は歯周病のリスク因子に関連する病的状態の併発を患う個体において特に重大である。現在、これらの困難に対処するために利用可能な診断ツールは存在しない。
【0004】
具体的には、疾患対健常のマーカーとして、及び/又は存在する疾患の重症度のマーカーとして、単一の歯周細菌、細菌の群/コンプレックス、又は微生物均衡/不均衡の生態学的尺度(例えば、表1を参照されたい)を示すかなりの数の公開された証拠(及び一部は商業製品)が存在するものの、これらの診断尺度のいずれも、病的状態の併発、局所及び全身のリスク因子、又は人口統計情報を考慮することにより、相対的リスクに関連する部位又は患者を階層化することを可能にするものではない。要約すると、過去に記述された歯周炎の分子的微生物尺度は疾患状態についての情報を与え得るものの、―所与の臨床状況について―微生物不均衡のレベルが同様の特性を有する平均的患者と同程度であるか、又は実質的にそれより不良であるか、若しくは良好であるかを明らかにはしない。高額かつ有害な過剰治療を減少させる個々の患者及び/又は部位への個別化標的化治療アプローチを可能にするのはこの情報のみであり、同時に罹患した個体は確実にその必要とする治療処置を得ることとなる。
【発明の概要】
【0005】
(発明の説明)
本発明の課題は、請求項1記載の方法、すなわち決定的な臨床及び人口統計パラメータを説明して歯周炎における微生物不均衡を患者及び部位特異的に評価するための方法であって:
・歯周ポケット又は唾液から取得した試料における遺伝学的ワークフローを使用して細菌種を特定し、かつ定量化する工程;
・歯周炎に関連する1つ又はいくつかの細菌種の量又はこれらの細菌の量の比に基づいて、微生物プロファイルを計算する工程;
・参照データベースを使用して、該微生物プロファイルを関連する臨床及び人口統計パラメータの選択の関数としてモデル化する工程;
・患者から得た臨床及び人口統計パラメータのセットを使用し、上記モデルを介して該微生物プロファイルの予測値を計算する工程;
・予測値及び試験所において取得された患者値の間で該微生物プロファイルを比較して、局所ミクロビオームの相対的不均衡を評価し、かつこれに基づいて部位及び/又は患者特異的療法を勧める工程、を含む、前記方法により解決される。
【0006】
本発明は、未治療の若しくは治療を受けた歯周炎を患う患者、又は歯周炎を発症するリスクにあり得る患者の革新的な階層化及び個別化標的化療法を可能にするいくつかの重要な項目の統合的な解析に基づく。
【0007】
個別化歯周炎スコアは、例えば:
―微生物プロファイルを測定するための遺伝学的/ゲノム方法;
―微生物プロファイルにおいて評価される細菌種の選択;
―患者又は部位についての局所的及び全身臨床パラメータ並びに人口統計パラメータ(例えば、喫煙をしない、全身とも健康な(全身臨床因子)51歳の白人コーカソイド男性(人口統計因子)の歯周の支持療法における臼歯の8 mmのポケット(局所臨床因子)から得た試料);及び
―参照データベースにおいて利用可能なデータ、から選択される多くのパラメータに応じて決定される。
【0008】
この方法において使用する生体試料は、歯周ポケット又は唾液から得た試料である。全ての種類の歯周ポケットから試料を採取することができる。これをするには、歯科医療従事者がいなくてはならない。唾液試料の採取は極めて確実であり、土台となる基本的設備又は専門技術を有する人員を要さない。性別、年齢及び出自、又は治療の段階に制限はない。
【0009】
臨床情報とは、各試料/患者に関連付けられる全ての関連する医学的情報を意味する。本開示の関連する臨床パラメータには:
・局所的因子:試料採取部位のポケットの深さ(連続的、mmで表す)、プロービングに際する出血(二項対立)、歯の種類(カテゴリ:前歯、小臼歯、臼歯)、治療段階(カテゴリ:未治療、治療進行中、支持療法中);
・全身因子:喫煙の状態(カテゴリ:現在、過去、経験なし)並びに糖尿病の状態(カテゴリ:あり/管理されている、あり/管理されていない、なし)がある。
【0010】
人口統計情報は、人々の群についての情報である。本開示の関連する人口統計パラメータには:
・年齢(連続的、歳で表す);
・性別(カテゴリ:男性、女性、トランスジェンダー);及び
・(任意に)人種及び民族、がある。
【0011】
遺伝学的/ゲノムワークフローは、核酸抽出からDNA-DNAハイブリダイゼーション、定量PCR及び様々な次世代配列決定法を含む様々な遺伝学的方法に基づく試料の定量化までの全ての工程を含む。
【0012】
微生物プロファイルとは、歯周炎若しくは歯周の健常状態の重要なマーカーとして特定された1つの細菌種又はいくつかの細菌種の集合の量、又は拡張形としての選択された種の集合間の比である。微生物プロファイルは、歯周炎又は歯周の健常状態の重要なマーカーとして特定された任意の細菌種の数に基づいて計算され得る。いくつかの細菌種とは、2~700の細菌種(すなわち、ヒト口内の公知の一般的系統型の数)から選択されたものを意味する。重要なマーカーとして特定された細菌種の数は少なくとも1、好ましくは2~700、より好ましくは2~600、2~500、2~400、2~300、2~200又は2~100である。最も好ましくは、重要なマーカーとして特定された細菌種の数は、2~90、2~80、2~70、2~60、2~50、2~40、2~30、2~20又は2~10である。特に好ましい実施態様において、重要なマーカーとして特定された細菌種の数は、1、2、3又は4であり、細菌種は表1に列記されたものである。微生物プロファイルの単位は、使用した遺伝学的/ゲノム方法に基づく。例として、次世代配列決定法(NGS)による微生物プロファイルの単位は、NGSリードである。
【0013】
参照データベースは、様々な部位及び患者から得た複数の試料についての、以下の情報:
・上記概要を述べた局所的及び全身臨床情報;
・上記概要を述べた人口統計情報;並びに
・所与の遺伝学的/ゲノム方法及び細菌種の選択についての微生物プロファイル、を蓄積する。
【0014】
この参照データベースは、個別化歯周炎スコアの計算に不可欠かつ必須の構成である。
【0015】
臨床及び人口統計情報の所与の組合わせを使用して、参照データべースから得た部位及び/又は患者を階層化することができる。特定の階層においては、患者が年齢及び喫煙の状態のようなこの疾患の十分に確立されたリスク因子である1つ又はいくつかのリスク因子を提示するために個別化歯周炎スコアの値がより高くなる―微生物不均衡のレベルがより高く、従って疾患の活動が増加していることを示す―と期待される。参照データベースについての典型的な階層は、50~59歳の喫煙する男性であり得る。
【0016】
定義された臨床及び診断パラメータのセットは所与の遺伝学的/ゲノム方法及び微生物プロファイルの選択についての平均期待スコア及び個別化歯周炎スコアを計算するのに必要となる。本開示の例として、本発明者らは3つの微生物プロファイルについて喫煙をしない51歳の男性のスコアを計算した。この参照データベースのパラメータの選択についての線形混合効果モデルを使用して、平均期待スコア並びにこの平均値に関連する標準誤差を計算する。本発明の方法において使用する線形混合効果モデルは当業者には公知であり、その開示が完全に本明細書に組み込まれているBrownの文献、2021に、特に第1~19頁の線形混合効果モデルの説明に関して記述されている。試料採取部位から得た個別化歯周炎スコアは選択された遺伝学的方法(1つ又はいくつかの細菌種の量)を直接用いて計算し、モデル化及び参照データベースを用いて取得した平均期待スコア及び関連する標準誤差と比較する。
【0017】
予測平均期待スコアから-1 SE以内及び1 SE以内の個別化歯周炎スコアは、もっとも典型的な値の範囲を表す。好ましい実施態様において、減少したスコアは、予測値から-1 SEの値未満の個別化歯周炎スコアを有する。さらに好ましい実施態様において、増加したスコアは、予測値から-1 SEの値未満の個別化歯周炎スコアを有する。
【0018】
上記に基づいて、細菌の量は「チェッカーボード」DNA-DNAハイブリダイゼーション、定量PCR、16Sアンプリコン配列決定法、DNA全ゲノム配列決定法/メタゲノミクス及び/又はRNAメタトランスクリプトーム配列決定法を含む多様な分子的方法を使用して検出することができる。本発明は、歯周炎又は歯周の健常状態に関連する1つ又はいくつかのマーカー細菌の絶対量又は相対的量の尺度である微生物プロファイルの検出に基づく(表1)。全ての種類の微生物プロファイルを、本発明のために使用することができる。場合により、微生物ディスバイオシス指数又は歯肉下微生物ディスバイオシス指数を本発明の方法における微生物プロファイルとして使用する。好適な微生物ディスバイオシス指数は、例えば完全に本明細書に組み込まれているGevers、Kugathasanらの文献、2014に記載されている。好適な歯肉下微生物ディスバイオシス指数は、例えば完全に本明細書に組み込まれているChen、Marshらの文献、2021に記載されている。この文書のその他の部分で使用する微生物プロファイルという用語は、互換的に表1の分子的指数のうちの1つ又は任意の他の考え得る微生物プロファイルを指す。
【0019】
微生物ディスバイオシス指数は、患者試料中の疾患関連微生物の存在量に関し、全ての試料についての(歯周炎において減少する微生物の総存在量)に対する(歯周炎において増加する微生物の総存在量)の対数として定義される。微生物ディスバイオシス指数は臨床疾患重症度との強い正の相関及び種の豊富さとの負の相関を示し、重度の疾患状態がより極端なディスバイオシスに有利となる強い種の多様性の減少を明示することが実証される。
【0020】
歯肉下微生物ディスバイオシス指数は、歯周炎関連種/属の平均中心化対数比存在量から、健常状態関連種/属の平均中心化対数比存在量を差分したものとして定義され、以下の方法/式:
ディスバイオシスDS/DGの平均CLR存在量-ノルモバイオシスDS/DGの平均CLR存在量
に従い計算することができる。歯肉下微生物ディスバイオシス指数は、高い再現性、臨床疾患重症度との強い正の相関を示し、かつ歯周炎及び健常状態を高い精度で識別する。
【0021】
(表1: 微生物プロファイルの例)
微生物プロファイルは歯周炎若しくは歯周の健常状態の重要なマーカーとして特定された1つ若しくはいくつかの細菌種の量又は選択された種の比の尺度である。これらの微生物プロファイルは全てパブリックドメインにあり、本開示はこれらのいずれのプロファイルについても権利を請求することを何ら意図するものではない。これらの尺度は単に本発明の使用を例示することを意図するものであり、上記分子的技術を使用して特定の患者試料から取得した任意の微生物プロファイルを同様の特性を有する患者の期待平均スコアと比較する個別化歯周炎スコアは、この平均から有意に逸脱する試料を特定して、治療法を変更することを目的とする。
【表1】
【0022】
上記記載をベースとし、本発明は微生物プロファイル、例えば表1に与えるプロファイルのうちの1つの、部位及び/又は患者についての局所的及び全身臨床並びに人口統計パラメータとの組合わせに基づく。上記概要を述べたように、臨床情報は、各試料/患者に関連付けられる全ての関連する医学的情報を意味する。本開示の関連する臨床パラメータには:
・局所的因子:試料採取部位のポケットの深さ(連続的、mmで表す)、プロービングに際する出血(二項対立)、歯の種類(カテゴリ:前歯、小臼歯、臼歯)、治療段階(カテゴリ:未治療、治療進行中、支持療法中);
・全身因子:喫煙の状態(カテゴリ:現在、過去、経験なし)並びに糖尿病の状態(カテゴリ:あり/管理されている、あり/管理されていない、なし)、がある。
【0023】
人口統計情報は、人々の群についての情報である。本開示の関連する人口統計パラメータには:
・年齢(連続的、歳で表す);
・性別(カテゴリ:男性、女性、トランスジェンダー);及び
・(任意に)人種及び民族、がある。
【0024】
続いて、線形混合効果モデルを使用して、上記臨床及び人口統計特性並びに場合により患者当たり複数の試料を考慮に入れながら個々の微生物プロファイルについての個別化歯周炎スコアを計算する。線形混合効果モデルは、単純線形モデルの拡張法であり、固定効果(例えば、範囲の定義されたポケットの深さ)及びランダム効果(例えば、対象当たり複数の試料)の両方を可能とする。単純線形モデルには、依存変数Yが依存変数Xによりモデル化され得る単純線形回帰がある。混合モデルにおける反応変数は、個々の患者又は部位についての個別化歯周炎スコアである。臨床及び人口統計パラメータは、このモデルにおける説明変数を表す。ポケットの深さ、性別、年齢、喫煙の状態及び糖尿病の状態は固定効果であり、患者の同一性はランダム効果である。詳細には、線形混合効果モデルの等式は、以下:
個別化歯周炎スコア~局所的臨床因子+全身臨床因子+人口統計因子+(1|患者)
のように表すことができる。
【0025】
この等式から得るパラメータは、以下の単位を有する:
・局所的臨床因子:試料採取部位のポケットの深さ(連続的、mmで表す)、プロービングに際する出血(二項対立)、歯の種類(カテゴリ:前歯、小臼歯、臼歯)、治療段階(カテゴリ:未治療、治療進行中、支持療法中);
・全身臨床因子:喫煙の状態(カテゴリ:現在、過去、経験なし)並びに糖尿病の状態(カテゴリ:あり/管理されている、あり/管理されていない、なし)。
・人口統計情報は、人々の群についての情報である。本開示の関連する人口統計パラメータには:年齢(連続的、歳で表す)、性別(カテゴリ:男性、女性、トランスジェンダー)、及び(任意に)人種及び民族、がある。
・患者―臨床データベースにおける数字識別子(例えば、保険番号)。
【0026】
上記に基づき、試験所で患者から取得した部位又は患者関連個別化歯周炎スコアは、全ての過去の患者試料の同じ臨床及び人口統計パラメータを用いた平均期待スコアと比較することができる。例として、臨床パラメータのセットは例えば以下:
ポケットの深さ=5 mm、性別=男性、年齢=51歳、喫煙の状況=喫煙しない、及び糖尿病の状態=あり、
のように定義することができる。決定された臨床パラメータに基づくモデルの予測値は、多くの考え得る交絡因子から補正された値を表す。また、このモデルを使用して、不確定性の尺度としての予測値付近の+/-1標準誤差(SE)を計算する。予測値並びに標準誤差は、理論上モデルに組み込まれる臨床パラメータの全ての組合わせについて計算することができる。
【0027】
所与の臨床パラメータのセットについて、予測期待平均スコア及び標準誤差は、試験所で取得した患者又は部位の個別化歯周炎スコアと比較するための参照として使用することができる。
【0028】
個別化歯周炎スコアは、一次及び二次予防を含むすべての治療段階の間に疾患の段階を決定し、かつモニタリングするために同じ試料採取部位/患者に対し反復して測定することができる、単一の値である。言い換えれば、同じ部位ではあるが異なる時に採取された異なる試料についてのスコアの値を比較することができる。
【0029】
個別化歯周炎スコアには、様々な分子的方法に基づいて患者の歯周ポケット又は唾液について体系的に計算することができるという利点がある。言い換えれば、同じ分子的方法についての個別歯周炎スコアを計算し、かつ比較することが可能である。
【0030】
モデルは確立されているのに対し、臨床パラメータのセットに基づく個別化歯周炎スコアの予測値及び標準誤差は動的である。これらの値は、利用する参照データベースに新たな登録を追加すると、変化する。データ点の増加は分散の低下と関連付けられることに鑑みれば、予測の確実性は時間とともに高まる。
【0031】
患者及び部位特異的特性評価(歯又は口腔)は、特定の歯周ポケット又は口腔についての(複数の試料及び/又は唾液試料採取を介した)個別化歯周炎スコアを線形混合効果モデルを使用した特定の臨床パラメータのセットについての予測スコアと比較することにより行う。個別化歯周炎スコアの減少又は増加を示す試料を有する患者は、微生物不均衡を示し、平均予測スコアと同程度の個別化歯周炎スコアを有する患者について推奨される治療スケジュールとは異なる標的化治療を受けることとなる。
【0032】
標的化治療には定期的治療及び管理を含み、ここで追加の抗微生物手段、消毒薬の使用並びに局所的又は疾患が全身に及ぶ場合は全身抗生物質の標的化使用を含む集中的治療/管理を勧めることはない。
【0033】
具体的には、所与の臨床及び人口統計状況についての予測期待平均スコアに対し個別化歯周炎スコアが1標準誤差超増加していることを特徴とする試料は、微生物不均衡の増加を示すと考えられる。
【0034】
反対に、所与の臨床及び人口統計パラメータのセットについて、予測平均期待スコアに対し個別化歯周炎スコアが1 SE超減少していることは、集団の一部が平均より低い微生物不均衡を有すること、言い換えれば、歯周ポケットが試料採取された集団の残りの部分より相利共生の達成されたプロファイルを示すことを表す。
【0035】
最後に、所与の臨床及び人口統計パラメータのセットについて、個別化歯周炎スコアが予測平均期待スコアから-1 SE及び1 SE以内にあることは、最も典型的な値の範囲、言い換えれば、平均的微生物均衡を有する集団のプロファイルを示す状況にあること、言い換えれば歯周ポケットが試料採取された集団におけるディスバイオシスの平均プロファイルを示すことを表す。
【0036】
このアプローチは部位及び患者特異的微生物均衡のレベルについての代表的かつ一般化可能な洞察を与え、かつ指導下の局所的又は全身補助消毒薬又は抗生物質を含む個別化集中的アプローチを含む、標的化治療を勧めることを可能とする。
【0037】
微生物不均衡は、以下のようにカテゴリ分けすることができる:
平均期待スコアから-1 SEの値未満の個別化歯周炎スコア: 追加の抗微生物手段を勧めることのない定期的治療及び管理;
-1 SE~+1 SEの個別化歯周炎スコア:軽度の微生物不均衡(初期ディスバイオシス段階に相当)、消毒薬の使用を含む集中的治療/管理を要する;
+1 SE超の個別化歯周炎スコア:重度の微生物不均衡(進行ディスバイオシス段階に相当)、局所的又は疾患が全身に及ぶ場合は全身抗生物質の標的化使用を含む非常に集中された治療/厳しくスケジューリングされた管理を要する。
【0038】
相利共生/ディスバイオシスのレベルの絶対的尺度に加え、上記詳述したように、患者及び部位特異的特性評価は、回帰を使用した上記交絡因子(局所的及び全身臨床因子、人口統計因子)を考慮に入れながら、特定の歯周ポケット又は口腔についての個別化歯周炎スコアを、参照データベースのデータに基づくこの臨床重症度についての平均期待スコアと比較することにより、実施する。具体的には、所与の疾患重症度についての平均期待スコアよりも1標準誤差だけ高い又は低い個別化歯周炎スコアを特徴とする試料は、それぞれ増加した又は大きく増加したディスバイオシス又は相利共生を示すと考えられる。このアプローチは部位及び患者特異的ディスバイオシスのレベルについての代表的かつ一般化可能な洞察を与え、かつ指導下の局所的又は全身補助消毒薬又は抗生物質を含む個別化集中的アプローチを含む、標的化治療を勧めることを可能とする。
【0039】
本発明の方法、特に個別化歯周炎スコアは、それを使用して個体レベルの歯周ポケット及び/又は口腔における微生物不均衡を決定し、かつ標的化された個別化治療介入処置のために個体及び/又は部位を適切に階層化することができるという利点を有する。これらには歯科医又は歯科チームによる様々な抗感染症及び/又は歯周維持介入処置があり、存在する場合は微生物不均衡に影響を与え、それにより過剰治療を回避しながら、同時に歯周組織を不必要かつ不可逆的に失うことを避けることができる。
【0040】
さらにまた、本発明の方法、特に個別化歯周炎スコアを使用して宿主反応を推定することができる。それは、たとえ個別化歯周炎スコアにより微生物プロファイルの相対的量が測定されたとしても、これら微生物プロファイルは不均衡な宿主反応によって直接影響を受けることが示されているためである。
【0041】
本発明の方法、特に個別化歯周炎スコアは、それを使用して経時的に所与の歯周ポケット又は口腔全体についての段階の進展及び微生物均衡の発達をモニタリングすることができるという利点を有する。複数の歯周ポケットのうちの1つから得た生体試料又は唾液試料を所与の時間間隔で採取し、歯周ポケット又は口腔内の微生物均衡の進展をモニタリングすることができる。試料を採取するのに好適かつ好ましい時間間隔は、例えば1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、1週間ごと、2週間ごと若しくは3週間ごと、又は1か月ごと~最大5か月ごとである。
【0042】
本発明の方法、特に個別化歯周炎スコアは、それを使用して所与の患者に対する治療の有効性を確認し、かつモニタリングすることができるという利点を有する。所与の治療の後、微生物均衡の改善の結果として、個別化歯周炎スコアは減少するはずである。個別化歯周炎スコアが同程度であるか、又はより高い値となる場合、別の適合する抗生物質に切り換えることが、治療の成功を向上させるために勧められる戦略となる。歯周炎治療の有効性のモニタリングは、好ましくは所定の時間間隔、例えば1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、1週間ごと、2週間ごと若しくは3週間ごと、又は1か月ごと~最大5か月ごと歯周ポケットから採取された、治療の後又は間の試料を分析することを含む。
【0043】
本発明の方法、特に個別化歯周炎スコアは、それを使用して異なる出所、例えば歯科医院又は研究チームからの結果を比較することができるという利点を有する。歯周ポケットにおける微生物コミュニティの複雑性は、所与の方法について単一の数値(予測値)及び範囲(-1 SE~+1 SE)に要約され、当該方法は自明であり、他の試料又はデータベースを参照しない。
【0044】
本発明の方法、特に個別化歯周炎スコアは、それを他の疾患をモニタリングするための数値尺度(proxy)として使用することができるという利点を有する。実に、歯周炎は糖尿病、冠動脈性心疾患及び卒中のような心血管疾患、慢性呼吸器疾患及びリウマチ性関節炎を含む極めて多数の疾患に関連する。歯周ポケット又は口腔における相対的微生物不均衡を特徴づける個別化歯周炎スコアが高い値を示す患者は、上記の疾患の全てに対して示すリスクがより高くなり得る。
【0045】
歯周ポケット中の細菌を検出するための分子的方法は、公知である。これらの方法は、とりわけ「チェッカーボード」DNA-DNAハイブリダイゼーション、定量PCR、16SリボソームRNA配列決定法を含む次世代配列決定法、メタゲノミクス及びメタトランスクリプトミクスからなる。
【0046】
本発明はさらに、歯周炎及び/又は歯周の健常状態の重要なマーカーとなる1以上の細菌種から構成される微生物プロファイルの組合わせに関する。本発明は、微生物不均衡の生態学的尺度、例えば微生物ディスバイオシスを定量化する指数を含む、歯周炎とポジティブに、又はネガティブに関連する1つ又はいくつかの重要な細菌から生じる全ての他の微生物プロファイルに及ぶ。
【0047】
ここで、本発明を、1)ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、2)レッドコンプレックス(ポルフィロモナス・ジンジバリス+タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)+トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola))及び3)病因細菌コンプレックス(アグリゲイティバクター・アクチノマイセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)+ポルフィロモナス・ジンジバリス+タネレラ・フォーサイシア+トレポネーマ・デンティコラ)を含む微生物プロファイルに関する3つの図によって例証される、3つの実施例においてさらに例証する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
(図面の簡潔な説明)
図1】喫煙をしない51歳の男性についてのポルフィロモナス・ジンジバリスの予測値(四角で表す)を示し、これは上記モデル及び臨床データに関連する定量PCRデータセットに基づく計算に基づく。例として、予測値及び架空の患者値(三角で表す)に基づく標準誤差をポケットの深さ4 mmに対して表す。架空の患者値が平均期待スコアから+1 SEの値を上回る場合、患者は非常に集中された治療/厳しくスケジューリングされた管理を要する。
図2】喫煙をしない51歳の男性についてのレッドコンプレックスの予測値(四角で表す)を示し、これは上記モデル及び臨床データに関連する定量PCRデータセットに基づく計算に基づく。例として、予測値及び架空の患者値(三角で表す)に基づく標準誤差をポケットの深さ4 mmに対して表す。架空の患者値が平均期待スコアから+1 SEの値を上回る場合、患者は非常に集中された治療/厳しくスケジューリングされた管理を要する。
図3】喫煙をしない51歳の男性についての病因細菌コンプレックスの予測値(四角で表す)を示し、これは上記モデル及び臨床データに関連する定量PCRデータセットに基づく計算に基づく。例として、予測値及び架空の患者値(三角で表す)に基づく標準誤差をポケットの深さ4 mmに対して表す。架空の患者値が平均期待スコアから+1 SEの値を上回る場合、患者は非常に集中された治療/厳しくスケジューリングされた管理を要する。
【0049】
(実施例1: 定量PCRデータに対する分子的個別化歯周炎スコアの予測的モデル化)
(微生物プロファイルの計算及びモデル化のための材料及び方法)
データセットは、科学論文:
Tomas I, Regueira-Iglesias A, Lopez M, Arias-Bujanda N, Novoa L, Balsa-Castro C及びTomas Mの文献(2017) Quantification by qPCR of Pathobionts in Chronic Periodontitis: Development of Predictive Models of Disease Severity at Site-Specific Level. Front. Microbiol. 8:1443. doi:10.3389/fmicb.2017.01443
の補充資料「DATA SHEET S1|データフレーム及び一変量分析」から得た。
【0050】
データセットは、歯周炎に関連する様々な細菌の定量PCR(qPCR)情報からなる(「qPCRデータ」タブ中の「濃度pg」カラム)。また、データセットには患者の同一性、年齢、性別、喫煙状態(4つの第1のカラム)並びにポケットの深さ(対照部位についての「PPD_対照」カラム、歯周炎部位についての「PPD_Perio」カラムの両方において)を含む臨床情報(「臨床データ」タブ)を含む。このデータセットでは糖尿病状態についての情報は利用可能ではなく、従ってこれを分析に含めることはできなかった。
【0051】
(統計)
全ての分析は、スクリプトをカスタムデザインしたソフトウェアRを使用して行った。臨床及びqPCR情報は患者IDを活用して適合させた。表1から得た以下の微生物プロファイルを計算して本発明を例証する:
・プロファイル#1は、pgで表した細菌ポルフィロモナス・ジンジバリスの濃度とした。
・プロファイル#2―レッドコンプレックスは、細菌ポルフィロモナス・ジンジバリス、タネレラ・フォーサイシア及びトレポネーマ・デンティコラについての「濃度pg」カラムの和として計算した。
・プロファイル#3―生態学的細菌負荷は、細菌アグリゲイティバクター・アクチノマイセテムコミタンス+ポルフィロモナス・ジンジバリス+タネレラ・フォーサイシア+トレポネーマ・デンティコラについての「濃度pg」カラムの和として計算した。
【0052】
Rのlme4パッケージを使用して、以下の線形混合効果モデルを作成し、所与のカテゴリのパラメータ:
lmer(微生物プロファイル~ポケットの深さ+性別+年齢+喫煙状態+(1|患者ID))
について平均期待並びにこの平均個別化歯周炎スコアに関連する標準誤差を取得した。
【0053】
続いてこのモデルを使用して、定義されたパラメータのセット:ポケットの深さ4~10 mm、性別として男性、年齢として51歳及び喫煙状態として喫煙をしない、についてこの例証のために使用した様々な分子的プロファイルの平均予測値並びに標準誤差を取得した。4~10 mmのポケットの深さの値の選択は、軽度、中程度及び重度の事例を表し、様々な病理生理学的特徴を有する歯周-歯内療法学的欠損を原因とするリスクを有する事例は含めない。この臨床パラメータのセットについての微生物プロファイルの予測値は、期待した通り、全ての使用した微生物指数についてポケットの深さとの正の相関を示した。
【0054】
続いて図表を使用して、3つの異なる微生物プロファイルに対する値を比較することができる。この事例において、本発明者らはプロファイル#1について400 pg/μl、プロファイル#2について1000 pg/μl及びプロファイル#について1250 pg/μlとし、ポケットの深さを4 mmとし、かつ他の臨床パラメータを同等とした例を挙げる。3つの微生物プロファイルについて、値は明らかに平均期待スコアから+1 SEの値を上回っていた。これらの状況において、ポケットは高度のディスバイオシスプロファイルを有し、おそらくは抗生物質を用いた非常に集中された治療並びに厳しくスケジューリングされた管理が必要となる。
【0055】
(参考文献)
【表2】
図1
図2
図3
【国際調査報告】