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特表2023-547261COVID-19の処置のためのEOM613
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】COVID-19の処置のためのEOM613
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/01 20060101AFI20231101BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231101BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
A61K38/01
A61P31/14
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548547
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 US2021055811
(87)【国際公開番号】W WO2022087109
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/094,168
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/094,172
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523143800
【氏名又は名称】イーオーエム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーガー, イーライ
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュマン, シャローム ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】タラポールワラ, イラッチ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA03
4C084BA43
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA55
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA55
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染を有する被験体をEOM613で処置する方法が開示される。いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2感染の重症症状を発生させるリスクのある被験体が、処置のために選択される。EOM613の投与が、サイトカインストーム症候群または多系統炎症症候群の症状を含め、SARS-CoV-2感染の症状を低減させる方法がまた、開示される。いくつかの実施形態において、上記被験体を上記治療上有効な量のEOM613で処置する工程は、SARS-CoV-2感染の以下の症状: 呼吸窮迫、肺炎症、低酸素症、心筋炎、腎疾患、血液凝固、脳炎、肺炎、顕著な衰弱、サイトカインストーム症候群、および多系統炎症症候群のうちの少なくとも1つを低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染を有する被験体を処置する方法であって、前記方法は、治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
処置のために前記SARS-CoV-2感染を有する被験体を選択する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)を有するかまたはそのリスクにある、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体を処置する工程は、前記SARS-CoV-2感染の以下の症状:呼吸窮迫、肺炎症、低酸素症、心筋炎、腎疾患、血液凝固、脳炎、肺炎、顕著な衰弱、リンパ球減少症、サイトカインストーム症候群、および多系統炎症症候群のうちの少なくとも1つを低減する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
SARS-CoV-2誘導性多系統炎症症候群を阻害するために有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程を包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記SARS-CoV-2誘導性多系統炎症症候群を阻害する工程は、心臓、腎臓、および/または肺に対する臓器損傷を低減する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記被験体は小児である、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体は、以下の根底にある医学的状態:心臓疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患、2型糖尿病、1型糖尿病、肥満症、慢性腎臓疾患、鎌状赤血球症、喘息、肝臓疾患、慢性肺疾患、高血圧症、もしくは医学的処置に起因して抑制された免疫系、SARS-CoV-2以外の病原体による感染、または自己免疫障害のうちの1またはこれより多くのものを有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記被験体はヒトである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記被験体は、少なくとも75歳である、請求項1~6および8~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体は、SARS-CoV2感染に起因するリンパ球減少症を有し、前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、前記被験体におけるリンパ球数を、白血球数の20~40%の範囲へと増大させる、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体は、D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインのうちの1またはこれより多くのものの上昇したレベルを有し、前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、前記上昇したレベルを検出不能なレベルまたは正常なレベルへと減少させる、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体は、D-ダイマー、トロポニン-I、C反応性タンパク質、またはプロカルシトニンのうちの1またはこれより多くのものの上昇したレベルを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、約0.5マイクロリットル~約100マイクロリットルのEOM613/キログラム体重/日を前記被験体に投与する工程を包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、約2.5マイクロリットル~約40マイクロリットルのEOM613/キログラム体重/日を前記被験体に投与する工程を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、約10マイクロリットル~約25マイクロリットルのEOM613/キログラム体重/日を前記被験体に投与する工程を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、約1~約2mlのEOM613を1日に2回前記被験体に投与する工程を包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、約2mlのEOM613を1日に2回、2~5日間前記被験体に投与する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
約2mlのEOM613を1日に2回、2~5日間前記被験体に前記投与する工程の後に、約1~約2mlのEOM613を1日に1回、さらに2~5日間前記被験体に投与する工程が続く、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、約2mlのEOM613を1日に2回、3日間前記被験体に投与する工程、および次いで、約1mlのEOM613を1日に2回、7日間前記被験体に投与する工程を包含する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記治療上有効な量のEOM613を前記被験体に投与する工程は、約2mlのEOM613を1日に1回、約10日間前記被験体に投与する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記治療上有効な量のEOM613は、非経口的に、局所的に、吸入によって、または全身的に投与される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記治療上有効な量のEOM613は、ネブライザーまたは吸入器を使用する吸入によって投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記治療上有効な量のEOM613は、皮下注射によって非経口投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のさらなる抗COVID-19薬剤を前記被験体に投与する工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗COVID-19薬剤は抗ウイルス剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体は、処置を開始する前に、世界保健機関(WHO)臨床改善順序スケールで5またはこれより高いスコアを有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体は、処置を開始する前に、WHO臨床改善順序スケールで6またはこれより高いスコアを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗COVID-19薬剤は、レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、デキサメタゾン、リン酸クロロキン、イベルメクチン、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、リトナビルまたはアラビノ-ルのうちの1またはこれより多くのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
リンパ球減少症を有する被験体を処置する方法であって、前記方法は、前記リンパ球減少症を処置するために有効な量のEOM613を、前記被験体に投与する工程を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、2020年10月20日出願の米国仮特許出願第63/094,168号および2020年10月20日出願の米国仮特許出願第63/094,172号(これらはともに、それらの全体において本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
分野
本件は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染、ならびにサイトカインストーム症候群、多系統炎症症候群および川崎病のようなさらなる状態を有する被験体を処置する方法の実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
2019年に、新型コロナウイルス(世界保健機関によってSARS-CoV-2と名付けられた)は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の原因因子として同定された。2020年3月に、世界保健機関(WHO)は、COVID-19の発生がパンデミックであると宣言した。全世界的に、SARS-CoV-2は、2020年10月6日時点で3590万を超えるCOVID-19症例および100万人を超える死者を出した。
【0004】
レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、デキサメタゾンおよびインターロイキン-6インヒビターのような薬剤での治療を使用して、COVID-19を有する患者を処置していたが、ウイルス感染部位でのサイトカイン放出によって引き起こされる肺および心臓の合併症は、COVID-19患者の死亡原因第1位のままである。その高い致死率、漠然と定義される疫学、および予防手段または治療手段がないことから、特に、SARS-CoV-2感染に続発するサイトカインストーム症候群または多系統炎症症候群を経験しているかまたは発生させるリスクにある患者のために、有効な処置の開発のニーズが切迫して生じている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染を有する被験体を処置する方法であって、上記方法は、治療上有効な量のEOM613を上記被験体に投与する工程を包含する方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、上記被験体を上記治療上有効な量のEOM613で処置する工程は、SARS-CoV-2感染の以下の症状: 呼吸窮迫、肺炎症、低酸素症、心筋炎、腎疾患、血液凝固、脳炎、肺炎、顕著な衰弱、サイトカインストーム症候群、および多系統炎症症候群のうちの少なくとも1つを低減する。
【0006】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、処置の前に、例えば、SARS-CoV-2感染の徴候もしくは症状または陽性診断を有する被験体、あるいはSARS-CoV-2感染のリスクにある被験体(例えば、SARS-CoV-2感染への曝露が既知の被験体)を選択することによって選択される。いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2感染を有する被験体は、COVID-19を有するかまたはそのリスクにある。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記治療上有効な量のEOM613を上記被験体に投与する工程は、約0.5マイクロリットル~約100マイクロリットルのEOM613/キログラム体重/日を上記被験体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記治療上有効な量のEOM613を上記被験体に投与する工程は、約1~約2mlのEOM613を1日に2回、2~3日間上記被験体に投与する工程、続いて、約1mlのEOM613を1日に1回、6~12日間上記被験体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記治療上有効な量のEOM613を上記被験体に投与する工程は、約2mlのEOM613を皮下に1日に2回、3日間、続いて、1mlのEOM613を皮下に1日に2回、7日間投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記治療上有効な量のEOM613を上記被験体に投与する工程は、約2mlのEOM613を皮下に、1日に2回、2~5日間、続いて、2mlのEOM613を皮下に、1日に1回、3~5日間投与する工程を包含する。
【0008】
本開示の前述および他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら進められる、いくつかの実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1: EOM613で処置したCOVID19患者における血漿IL-6濃度
【0010】
図2図2: EOM613で処置したCOVID19患者におけるリンパ球数(%)。
【0011】
図3図3: EOM613で処置したCOVID19患者におけるC反応性タンパク質(CRP)濃度。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
I.用語のまとめ
別段注記されなければ、技術用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes X, published by Jones & Bartlett Publishers, 2009;およびMeyersら(編), The Encyclopedia of Cell Biology and Molecular Medicine, 発行: Wiley-VCH in 16 volumes, 2008;および他の類似の参考文献に見出され得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」とは、文脈が別段明らかに示さなければ、単数形および複数形の両方に言及する。例えば、用語「1つの抗原(an antigen)」とは、単一のまたは複数の抗原を包含し、語句「少なくとも1つの抗原(at least one antigen)」に等しいと見做され得る。本明細書で使用される場合、用語「含む、包含する(comprises)」とは、「含む、包含する、が挙げられる(includes)」を意味する。任意のおよび全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、ならびに全ての分子量または分子質量値は、核酸またはポリペプチドに関して与えられる場合、別段示されなければ、近似であり、記述目的で提供されることがさらに理解されるべきである。本明細書で記載されるものに類似または等価な多くの方法および材料が使用され得るが、特定の適切な方法および材料が、本明細書で記載される。矛盾する場合、本明細書が、用語の説明を含めて優先する。さらに、材料、方法および例は、例証に過ぎず、限定することは意図されない。種々の実施形態の検討を容易にするために、以下の用語説明が提供される:
【0014】
約: 文脈が別段示さなければ、「約」は、参照値の±5%に言及する。例えば、「約」100とは、95~105に言及する。
【0015】
投与: 選択された経路による被験体への薬剤(例えば、EOM613)の導入。投与は、局所的または全身的であり得る。例示的な投与経路としては、経口、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内)、舌下、直腸、経皮(例えば、局所)、鼻内、膣、および吸入経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
コントロール: 参照標準。いくつかの実施形態において、コントロールは、健常患者から得られた陰性コントロールサンプルである。他の実施形態において、上記コントロールは、SARS-CoV-2感染のような疾患または状態と診断された患者から得られた陽性コントロールサンプルである。さらに他の実施形態において、上記コントロールは、過去のコントロール(historical control)または標準参照値もしくは値の範囲(例えば、既知の予後もしくは転帰を有する、疾患もしくは状態(例えば、SARS-CoV-2感染)と診断された患者群のような以前に検査したコントロールサンプル、またはベースラインもしくは正常値を表すサンプル群)である。
【0017】
試験サンプルとコントロールとの間の差異は、増大または逆に減少であり得る。上記差異は、定性的な差異または定量的な差異、例えば、統計的有意差であり得る。いくつかの例では、差異は、コントロールに対して、少なくとも約5%(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または500%超)の増大または減少である。
【0018】
コロナウイルス: 重篤な呼吸器病を引き起こすことが公知であるプラスセンス鎖の1本鎖RNAウイルスの科。コロナウイルス科に由来するヒトに感染することが現在公知のウイルスは、アルファコロナウイルス属およびベータコロナウイルス属に由来する。
【0019】
ベータコロナウイルスの非限定的な例としては、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、ヒトコロナウイルスHKU1(HKU1-CoV)、ヒトコロナウイルスOC43(OC43-CoV)、マウス肝炎ウイルス(MHV-CoV)、コウモリSARS様コロナウイルスWIV1(WIV1-CoV)、およびヒトコロナウイルスHKU9(HKU9-CoV)が挙げられる。アルファコロナウイルスの非限定的な例としては、ヒトコロナウイルス229E(229E-CoV)、ヒトコロナウイルスNL63(NL63-CoV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、および伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)が挙げられる。
【0020】
ウイルスゲノムは、キャップされ、ポリアデニル化され、ヌクレオキャプシドタンパク質で覆われている。コロナウイルスビリオンは、スパイク(S)タンパク質といわれるI型融合糖タンパク質を含むウイルスエンベロープを含む。大部分のコロナウイルスは、ゲノムの5’部分に含まれるレプリカーゼ遺伝子およびゲノムの3’部分に含まれる構造遺伝子を含む共通のゲノム構成を有する。
【0021】
コロナウイルス疾患2019(Coronavirus Disease 2019)(COVID-19): SARS-CoV-2感染によって引き起こされる疾患。一般的症状としては、発熱、咳嗽、疲労、息切れまたは呼吸困難、ならびに嗅覚および味覚の喪失が挙げられる。潜伏期間は、1~14日間の範囲に及び得る。大部分の患者は、軽度の症状を有するが、一部は、おそらくはサイトカインストームによって突然引き起こされる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、多臓器不全、敗血性ショック、および血餅を発生させる。
【0022】
根底にある医学的状態の宿主は、COVID-19の増大したリスク、およびSARS-CoV-2の感染後にCOVID-19の重症症状をもたらすことが公知である。非限定的な例としては、心疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患、2型糖尿病、1型糖尿病、肥満症、慢性腎臓疾患、鎌状赤血球症、喘息、肝臓疾患、慢性肺疾患、高血圧症、または医学的処置に起因して抑制された免疫系、SARS-CoV-2以外の病原体による感染、または自己免疫障害が挙げられる。
【0023】
世界保健機関(WHO)は、COVID-19診断の検査ガイドラインを発表した(例えば、Laboratory Guidelines for the Detection and Diagnosis of COVID-19 virus infection, July 2020を参照のこと)。SARS-CoV-2感染を検査するための標準的方法は、鼻咽頭スワブによって得られた呼吸器サンプルに対するリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR)である。COVID-19の症状の検出の標準的診断方法がまた、利用される(例えば、肺炎症、息切れ、低酸素飽和度など)。
【0024】
サイトカインストーム症候群: 自然免疫系が血液へのサイトカインの制御されないかつ過剰な放出を引き起こす重篤な免疫反応。炎症促進性サイトカインの過剰な生成は、現在ある呼吸窮迫をさらに増悪させ得、圧倒的な全身性の炎症、血液動態の不安定性、多臓器機能障害、潜在的には死亡をも引き起こし得る。サイトカインストーム症候群は、高サイトカイン血症とも称される。患者におけるサイトカインストーム症候群の検出は、標準的な診断法(血漿C反応性タンパク質(CRP)レベルの上昇、インターロイキン-6(IL-6)レベルの上昇、血液凝固のマーカー(例えば、D-ダイマーまたはフィブリノゲン)の異常、および上昇したフェリチンレベルが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して達成され得る。COVID-19患者においてサイトカインストームを検出するためのプロトコールは、公知であり、例えば、Soyら, Clin Rheumatol., 39(7):2085-2094, 2020に記載される。サイトカインストーム症候群に関するさらなる情報は、例えば、Yeら, Journal of Infection, 80(6):607-613, 2020に見出され得る。
【0025】
検出すること: 何かの実在、存在、または事実を同定すること。
【0026】
疾患または状態を阻害することまたは処置すること: 例えば、ウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)の二次的合併症を発生させるリスクにある被験体において、サイトカインストーム症候群または多系統炎症症候群のような状態のリスクを有するかまたはそのリスクにある被験体において疾患または状態の完全な発生を阻害すること。「処置」とは、ある状態の徴候または症状を、その状態が発生し始めた後に改善する治療的介入に言及する。用語「改善すること」とは、疾患、症候群、または病的な状態に関連して、上記処置の任意の観察可能な有益な効果に言及する。その有益な効果は、例えば、感受性の被験体における臨床症状の遅延した発生、いくつかのもしくは全ての臨床症状の重篤度の低減、より遅い進行、ウイルス負荷の低減、被験体の全身的な健康状態もしくは幸福の改善によって、またはその特定の疾患、症候群、もしくは他の病的な状態に特異的な他のパラメーターによって証明され得る。疾患または状態の阻害は、上記疾患または状態のリスクの防止または低減(例えば、SARS-CoV-2感染のようなウイルス感染に起因する重症症状(例えば、サイトカインストーム症候群または多系統炎症症候群)のリスクの防止または低減)を含み得る。「予防的(prophylactic)」処置は、疾患の徴候を示さないか、または病理を発生させるリスクを減少させる目的で早期の徴候しか示さない被験体に投与される処置である。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、治療的であり、予防的ではない。
【0027】
川崎病: 発熱を生じ、主に5歳未満の小児に罹患し、小児における心疾患の原因第1位である原因不明の炎症性疾患。罹患した患者では、血管が身体全体で炎症状態になる。その発熱は、代表的には、5日を超えて続き、標準的な薬物療法では処置されない。他の一般的な症状としては、頸部のリンパ節肥大(large lymph node)、生殖器領域の発疹、および充血した眼、口唇、手掌、または足底が挙げられる。一部の小児では、冠動脈動脈瘤が心臓に形成され、心臓疾患をもたらす。
【0028】
具体的な原因は未知であるが、遺伝的に素因のある小児において感染に対する過剰な免疫系応答から生じると考えられる。診断は通常、個人の徴候および症状に基づく。他の検査(例えば、心臓および血管の超音波検査)は、診断を支援し得る。患者における多系統炎症症候群の検出は、確立された診断法(解熱剤を使用しているにもかかわらず発熱が持続する、頻脈および低血圧、リンパ球減少症を伴う白血球増多症、上昇したC反応性タンパク質、上昇したD-ダイマーおよびB型ナトリウム利尿ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して達成され得る。川崎病に関するさらなる情報は、例えば、Hamdenら, British Medical Journal, 338:b1514, 1133-1138, 2009において見出され得る。
【0029】
肺炎症: 炎症性因子を隔離するように働く肺組織への傷害によって誘発される局所的な防御応答。肺炎症は、正常な(健常)環境下にある組織のこのような領域内で見出される任意のクラスの白血球の数を超える数のそのような白血球の肺における出現または肺への移動によって特徴づけられる。被験体における肺炎症の検出および評価は、任意の適切な手段(X線によるX線評価が挙げられる)によって達成され得る。
【0030】
肺炎症は、急性または慢性のいずれかとして分類され得る。急性肺炎症は、有害な刺激に対する身体の最初の応答であり、血液から傷害された肺組織への血漿および白血球の移動の増大によって達成される。生化学的事象のカスケードは、局所血管系、免疫応答、および傷害された肺組織内の種々の細胞が関わる炎症応答を拡げ、成熟させる。
【0031】
リンパ球減少症(lymphocytopenia): 血液中の異常に低いリンパ球数によって定義される状態。その状態は、リンパ球性白血球減少症(lymphocytic leukopenia)およびリンパ球減少症(lymphopenia)ともいわれる。COVID19の文脈におけるリンパ球減少症に関するさらなる情報は、例えば、Wagnerら, Int. J Lab Hematol. 10.1111/ijlh.13288. 10 Jul. 2020, doi:10.1111/ijlh.13288, 338:b1514, 1133-1138, 2009に見出され得る。
【0032】
多系統炎症症候群: SARS-CoV-2のようなウイルス性因子による感染に応答して、持続した発熱および多数の身体システムにわたる重篤な炎症を伴う全身性の障害。多系統炎症症候群は、最も頻繁には、5歳未満の小児において観察されるが、成人にも罹患することが公知である。持続した発熱とともに、第1の症状はしばしば、急性の腹痛と下痢または嘔吐とを含む。筋肉痛および全身性の疲労は頻繁であり、低血圧もまた一般的である。他の症状としては、ときおり、結膜炎(pink eye)、発疹、リンパ節肥大、手および足の腫脹、ならびに「いちご舌」(茸状乳頭肥大(enlarged fungiform papillae)とともに現れる舌炎)が挙げられる。患者は、サイトカインストーム症候群を発生させ得る。心不全は一般的であり、心筋の炎症が報告されている。臨床上の合併症としては、心筋への損傷、呼吸窮迫、急性腎傷害、および血液凝固の増大が挙げられ得る。冠動脈異常が発生し得る(拡張から動脈瘤の範囲に及ぶ)。患者における多系統炎症症候群の検出は、標準的な診断法を使用して達成され得る。小児および成人における多系統炎症症候群のさらなる説明は、例えば、Godfred-Catoら, COVID-19-associated multisystem inflammatory syndrome in children-United States, March-July 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020;69:1074-80;およびMorrisら, Case Series of Multisystem Inflammatory Syndrome in Adults Associated with SARS-CoV-2 Infection - United Kingdom and United States, MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2020;69:1450-1456に見出され得る。
【0033】
ヌクレオチド: ヌクレオシドおよびホスフェートからなる有機分子。ヌクレオチドとは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチドまたはヌクレオチドのいずれかのタイプの改変された形態をいう。それらは、核酸ポリマーであるデオキシリボ核酸およびリボ核酸のモノマーユニットとして働く。
【0034】
核酸分子: ヌクレオチドのポリマー形態であって、RNA、cDNA、ゲノムDNA、ならびに上記のものの合成形態および混合ポリマーのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含みうるもの。用語「核酸分子」とは、本明細書で使用される場合、「核酸」および「ポリヌクレオチド」と同義である。核酸分子は通常、別段特定されなければ、少なくとも10塩基の長さである。その用語は、DNAの1本鎖および2本鎖の形態を含む。ポリヌクレオチドは、天然に存在するおよび/または天然に存在しないヌクレオチド連結によって一緒に連結された、天然に存在するヌクレオチドおよび改変ヌクレオチドのいずれかまたは両方を含み得る。「cDNA」とは、1本鎖または2本鎖のいずれかの形態にある、mRNAに相補的であるかまたは同一のDNAをいう。「コードする」とは、ヌクレオチドの規定された配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の規定された配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおいて他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして作用するポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNA)中のヌクレオチドの具体的配列の本質的な特性、ならびにこれらから生じる生物学的特性に言及する。
【0035】
正常レベル: 医学的検査(例えば、血液サンプル検査)を解釈するために医療従事者によって使用される集団の「正常な」参照範囲(「正常範囲」)に入る値。いくつかの実施形態において、被験体は、D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインのうちの1またはこれより多くのものの上昇したレベルを有し、上記治療上有効な量のEOM613を上記被験体に投与する工程は、その上昇したレベルを正常レベルへと減少させる。
【0036】
薬学的に受容可能なキャリア: 有用な薬学的に受容可能なキャリアは、従来どおりである。Remington’s Pharmaceutical Sciences(E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 第19版, 1995)は、開示される免疫原の薬学的送達に適した組成物および製剤を記載する。
【0037】
一般に、上記キャリアの性質は、使用されている特定の投与様式に依存する。例えば、非経口的製剤は通常、薬学的におよび生理学的に受容可能な流体(例えば、水、生理食塩水、平衡化塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなど)をビヒクルとして含む注射用流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)に関しては、従来の非毒性固体キャリアは、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与されるべき薬学的組成物(例えば、免疫原性組成物)は、微量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝化剤など(例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート))を含み得る。特定の実施形態において、被験体への投与に適したキャリアは、無菌であり得、および/または懸濁されていてもよいし、別の方法で所望の免疫応答を誘導するために適切な組成物の1またはこれより多くの測定された用量を含む単位投与形態において含まれていてもよい。それはまた、処置目的のためのその使用に関しては、薬物療法によって達成され得る。上記単位投与形態は、例えば、無菌内容物を含む密封されたバイアル、被験体への注射のためのシリンジ中にあってもよいし、後の可溶化および投与のために凍結乾燥されていても、固体もしくは制御放出投与形態、または経口のロゼンジ形態にあってもよい。
【0038】
ポリペプチド: 長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、アミノ酸の任意の鎖。「ポリペプチド」は、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーを含み、ならびに1もしくはこれより多くのアミノ酸残基が非天然アミノ酸である(例えば、相当する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物)のアミノ酸ポリマーに該当する。「残基」とは、アミド結合またはアミド結合摸倣物によってポリペプチドに組み込まれたアミノ酸またはアミノ酸模倣物に言及する。ポリペプチドは、アミノ末端(N末端)およびカルボキシ末端(C末端)を有する。「ポリペプチド」は、ペプチドまたはタンパク質と交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーをいうために本明細書で使用される。
【0039】
肺機能(pulmonary function): 呼吸器系の機能(これは、種々の検査を通じて測定され得、気流(例えば、肺活量測定)または動脈血ガス(例えば、酸素飽和レベル(例えば、SpO2))の測定が挙げられるが、これらに限定されない)。気流の測定は、空気流量(airflow rate)、最大呼気流量(peak expiratory flow rate)(PEFR)、一秒間の努力呼気量(forced expiratory volume in the first second)(FEV)、および最大呼気中間流量(maximal midexpiratory rate)(MMEFR)を含んだ。
【0040】
SARS-CoV-2: 重症急性呼吸器感染の非常に致命的な原因として出現したベータコロナウイルス属の武漢コロナウイルスまたは2019新型コロナウイルス、SARS-CoV-2プラス鎖の1本鎖RNAウイルスとしても公知。ウイルスゲノムは、キャップを有し、ポリアデニル化され、ヌクレオキャプシドタンパク質で覆われている。SARS-CoV-2ビリオンは、大きなスパイク糖タンパク質を有するウイルスエンベロープを含む。SARS-CoV-2ゲノムは、大部分のコロナウイルスと同様に、ゲノムの5側の2/3にレプリカーゼ遺伝子が含まれ、ゲノムの3’側の1/3に構造遺伝子が含まれる一般的なゲノム構成を有する。SARS-CoV-2ゲノムは、順に、5’ - スパイク(S) - エンベロープ(E) - 膜(M) およびヌクレオキャプシド(N) - 3’の構造タンパク質の基準セットをコードする。SARS-CoV-2感染の症状としては、発熱および呼吸器の病気(例えば、乾性咳嗽および息切れ)が挙げられる。感染の重篤な症例は、重篤な肺炎、多臓器不全、および死亡へと進み得る。曝露から症状の発生までの時間は、およそ2~14日間である。SARS-CoV-2感染から生じる疾患は、COVID-19と称される。
【0041】
ウイルス感染を検出するための標準的な方法は、SARS-CoV-2感染を検出するために使用され得、患者の症状およびバックグラウンドの評価、ならびに遺伝子検査(例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(rRT-PCR))が挙げられるがこれらに限定されない。検査は、患者サンプル(例えば、呼吸器または血液サンプル)に対して行われ得る。
【0042】
被験体: ヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、ブタ、ラクダ、コウモリ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、齧歯類など)を含むカテゴリーの、生きている多細胞脊椎生物。一例では、被験体はヒトである。さらなる例では、SARS-CoV-2感染を阻害する必要性のある被験体が選択される。例えば、上記被験体は、感染しておらずかつSARS-CoV-2感染のリスクにあるか、または感染しかつ処置の必要性のあるかのいずれかである。
【0043】
治療上有効な量: 疾患、症候群、または他の病的な状態の症状および/または根底にある原因を防止(予防を含む)、処置、低減、および/または改善するために、例えば、SARS-CoV-2感染および/もしくは疾患(例えば、COVID-19)またはそこから生じる続発性症候群(例えば、サイトカインストーム症候群)を防止、阻害および/または処置するために十分な、薬剤(例えば、薬学的組成物)の量。いくつかの実施形態において、治療上有効な量は、疾患の症状を低減または排除するために十分である。例えば、これは、病原体の複製を阻害もしくは防止するために、または病原体感染の表面上の症状を測定可能に変化させるために必要な量であり得る。
【0044】
世界保健機関(WHO)臨床改善順序スケール(World Health Organization (WHO) Ordinal Scale for Clinical Improvement): COVID-19疾患の重篤度を8個の順序付けられたスコアへとカテゴリー分けするために、参照として使用される世界保健機関によって開発されたスケール(表2を参照のこと)。WHO臨床改善順序スケールはまた、「WHO COVID-19症状重篤度スケール(WHO COVID-19 Symptom Severity Scale)」ともいわれる。「WHOスコア」は、本出願で使用される場合、WHO臨床改善順序スケールのスコアをいう。WHO臨床改善順序スケールのさらなる説明および適用は、例えば、WHO R&D Blueprint, Novel Coronavirus, COVID-19 Therapeutic Trial Synopsis, World Health Organization, February 18, 2020(その全体において本明細書に参考として援用される)に見出され得る。
【0045】
治療上有効な量が、以前のまたは後の投与との組み合わせにおいて、所望の応答の獲得に寄与する部分的用量を含むことは理解される。例えば、薬剤の治療上有効な量は、単一用量において、またはいくつかの用量において、例えば、処置の過程の間に毎日投与され得る。しかし、治療上有効な量および投与のタイミングは、処置されている被験体、処置されている状態の重篤度およびタイプ、ならびに投与様式に依存し得る。治療上有効な量は、投与量を変動させ、その得られる応答(例えば、病原体力価の低減のような)を測定することによって決定され得る。有効量はまた、種々のインビトロ、インビボまたはインサイチュアッセイを通じて決定され得る。薬剤の単位投与形態は、治療的な量において、または複数の治療的な量において、例えば、バイアル(例えば、穿刺可能な蓋とともに)または無菌の構成要素を有するシリンジ中にパッケージされ得る。
【0046】
II. EOM613
EOM613は、Product RまたはAVR118としても公知であり、14KDa以下、主に8KDa以下の分子量を有するヌクレオチドおよびペプチドを含む組成物である。上記ヌクレオチドおよびペプチドは、カゼイン、ペプトン、RNAおよび血清アルブミンの分解生成物である。EOM613およびその生成は、例えば、米国特許第6,528,098号、同第6,921,542号、同第7,074,767号、同第7,524,661号、および同第8,084,239号(これらは、それらの全体において本明細書に参考として援用される)に記載される。これらの特許文書において、EOM613は、Product Rとして言及される。EOM613およびその生成の簡潔な説明が、本明細書に提供される。
【0047】
16の構成化合物が、EOM613において同定および特徴付けされた: 3種のヌクレオシド、2種のヌクレオシド二リン酸、および8種のヌクレオシド一リン酸、これらとともに2種のペプチド(そのうちの1種は、ペプチド-核酸結合体)および塩化ナトリウム(製造プロセスの間に水酸化ナトリウムを塩酸で中和することから生じる)。
【0048】
より長いペプチド(「ペプチドA」といわれる)は、3536.24Daの分子量を有するウシβカゼインに由来する31アミノ酸ペプチドである。より短いペプチド(「ペプチドB」といわれる)は、18位のセリン残基においてジアデニン(3’-5’)ジリボヌクレオチドに、3’位におけるジホスホジエステル結合を通じて結合される21アミノ酸の長さのペプチドを含むペプチド-オリゴヌクレオチド結合体である。このヌクレオペプチド結合体は、740MWの非ペプチド付加物に結合されたMW 2215のペプチド部分を有し、2955の総MWを与える。ペプチドAおよびペプチドBは、ほぼ等しい量(重量)でEOM613中に存在する。EOM613中のペプチドAおよびペプチドBの量は、Lowryタンパク質アッセイによって決定される場合、約4.4~7.0mg/mL、好ましくは4.8~5.3mg/mLである。
【0049】
概して、EOM613は、以下の様式に従って調製される: カゼイン、牛肉ペプトン、RNA、BSA、および水酸化ナトリウムを、適切な容積の蒸留水中に、重量で約35~50% カゼイン、約15~40% 牛肉ペプトン、約10~25% RNA、約1~10% BSA、および約5~25% 水酸化ナトリウムの割合で懸濁する。任意のRNA供給源が使用され得る(例えば、植物RNAまたは酵母RNA)。いくつかの実施形態において、酵母RNAが、EOM613組成物を生成するためのRNA供給源として使用される。全タンパク質 対 蒸留水容積の比は、重量で約1.5~2.5 対 約100、好ましくは重量で約2.2 対 約100である。従って、全タンパク質の1.5~2.5グラムごとに、約100ミリリットルの蒸留水で懸濁される。任意の適切な供給源が、出発材料を得るために使用され得る。上記出発材料は、市販されているか、または当業者によって容易に調製され得る。
【0050】
上記のように調製した懸濁物は、次いで、およそ5~15ポンド/平方インチ(例えば、8~10ポンド/平方インチ)の圧力において、例えば、約150°~300°F(例えば、約200°~230°F)の範囲の高温下で、およそ2~10時間の期間にわたって、代表的には、3時間より長くオートクレーブにかけられる。当業者に公知であるように、このような条件下では、RNAは、ヌクレオチドへと完全に加水分解され得る。オートクレーブにかけた後、その溶液を室温へと冷却し、次いで、3℃~8℃の温度において少なくとも12時間静置させて、不溶性の要素を沈殿させる。あるいは、その冷却した溶液を、8℃未満の温度において遠心分離して、不溶性の要素を除去し得る。
【0051】
次いで、その得られた溶液を、不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)下で、約1~6psiの圧力において、2ミクロンおよび0.45ミクロンのフィルターを通して濾過する。類似の様式で、その溶液を、発熱物質保持フィルター(例えば、約0.2ミクロンの発熱物質保持フィルター)を通して再び濾過する。濾過後、その溶液を、必要に応じて、3~8℃において再び、少なくとも約12時間にわたって冷却し得、上記で記載されるものと同じ方法で再び濾過し得る。
【0052】
次いで、その得られた濾液を、任意の適切な方法(例えば、Kjeldahl法(Kjeldahl, Z. Anal. Chem., Vol. 22, p366, 1883を参照のこと)、およびKjeldahl法に基づく関連方法)を使用して全窒素含有量に関してアッセイする。上記アッセイに基づいて、次いで、その濾液を、冷却した蒸留水で、約165~約210mg/mlの範囲に及ぶ好ましい全窒素含有量を有する適切な容積へと希釈する。次いで、その希釈した溶液のpHを、HClで生理学的pH 約7.3~約7.6へと調節し、その後、その希釈した溶液を、上記で記載されるとおりの不活性ガス下で、0.2ミクロンフィルターを通して再び濾過する。最終的な濾液は、260nm/280nmにおいて2.0(±10%)および260nm/230nmにおいて1.4(±10%)の代表的な吸収率を有する光吸収スペクトルを有する。
【0053】
上記で考察した濾過の使用は、細菌、または細菌と類似のサイズもしくは細菌より大きいサイズを有する他の粒子を除去するためである。その製造業者またはこの目的のために適しているそのフィルターが作製される材料にかかわらず、任意のフィルターが、EOM613の生成において使用され得る。
【0054】
次いで、最終的な濾液を、不活性ガス下で適切なバイアル(例えば、2mlまたは10ml ガラスバイアル)の中に満たし、密封する。その満たしたバイアルを、最終的な滅菌のためにオートクレーブにかけると、その後、それらは使用できる準備ができている。別段特定されなければ、その最終的な濾液は、被験体への投与に適したEOM613の濃度にある。従って、進んでいく工程をたどった後には、EOM613組成物は、被験体への投与の準備ができている。
【0055】
III. EOM613を使用する処置方法
必要性のある被験体に治療上有効な量のEOM613を投与することによって、ある特定の疾患および状態を処置する方法が、本明細書で提供される。
【0056】
いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613は、被験体においてSARS-CoV-2感染を阻害または処置するために被験体に投与される。被験体への治療上有効な量のEOM613の投与は、被験体においてSARS-CoV-2感染の1またはこれより多くの症状を低減および/または排除する。
【0057】
いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2感染を有するかまたはそのリスクにある被験体は、EOM613での処置のために選択される。いくつかの実施形態において、処置のために選択される被験体は、COVID-19を有する。いくつかの実施形態において、処置のために選択される被験体は、SARS-CoV-2感染および同様に以下の根底にある医学的状態のうちの1またはこれより多くのものを有する: 心疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患、2型糖尿病、1型糖尿病、肥満症、慢性腎臓疾患、鎌状赤血球症、喘息、肝臓疾患、慢性肺疾患、高血圧症、または医学的処置に起因して抑制された免疫系、SARS-CoV-2以外の病原体による感染、または自己免疫障害。上記被験体は、任意の年齢(例えば、少なくとも75歳)であり得る。
【0058】
SARS-CoV-2に感染した被験体は、軽度から重度までの症状の範囲を示してもよいし、全く症状を有しなくてもよい。1つの例では、その選択された被験体は、SARS-CoV-2感染の明らかな症状を有さず、EOM613での処置は、疾患または症状のさらなる発生を阻害するために予防的である。他の例では、その選択された被験体は、SARS-CoV-2感染の1またはこれより多くの症状を有し、EOM613での処置は、治療的処置である。SARS-CoV-2感染の症状としては、発熱、咳嗽、疲労、呼吸窮迫、味覚もしくは嗅覚の喪失、筋肉痛、悪寒、咽喉痛、鼻水、頭痛、胸痛、結膜炎、低酸素症、心筋炎、腎疾患、血液凝固、脳炎、肺炎、顕著な衰弱、サイトカインストーム症候群、および多系統炎症症候群が挙げられるが、これらに限定されない。具体例では、その選択された被験体は、SARS-CoV-2感染の以下の症状: 呼吸窮迫、低酸素症、心筋炎、腎疾患、血液凝固、脳炎、肺炎、顕著な衰弱、サイトカインストーム症候群、および多系統炎症症候群のうちの1またはこれより多くのものを有する。好ましい実施形態において、その選択された被験体は、サイトカインストーム症候群または多系統炎症症候群を有する。
【0059】
EOM613での処置は、SARS-CoV-2感染の症状のうちの1またはこれより多くのものを低減する。SARS-CoV-2感染の症状は、上記方法が有効であることのために、排除される必要はない。例えば、上記方法は、SARS-CoV-2感染の1またはこれより多くの症状を、適切なコントロールと比較した場合に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%(症状の排除)低減し得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記被験体において肺炎症の低減を生じる。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記被験体におけるIL-6レベルを、正常範囲へと低減することを生じる。いくつかの実施形態において、上記方法は、被験体における肺機能の増大(例えば、空気流量、最大呼気流量(PEFR)、一秒間の努力呼気量(FEV)、および最大呼気中間流量(MMEFR)の増大)を生じる。いくつかの実施形態において、上記方法は、被験体において血中酸素飽和レベルの増大を生じる。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、D-ダイマー、トロポニン(例えば、トロポニン-I、トロポニン-T、およびトロポニン-C)、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、およびサイトカイン(例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(INF-γ))のうちの1またはこれより多くのものの上昇したレベルを有する。いくつかの例では、上記トロポニンは、トロポニン-Iである。いくつかの例では、上記サイトカインは、インターロイキン(例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-10(IL-10)、およびインターロイキン-2(IL-2)のうちの1またはこれより多くのもの)である。いくつかの実施形態において、上記方法は、上昇したD-ダイマー、トロポニン(例えば、トロポニン-I)、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、およびサイトカイン(例えば、IL-6)レベルのうちの1またはこれより多くのものの低減を生じる。D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインは、患者から得られるサンプル(例えば、組織または体液)から測定される。いくつかの例では、D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインは、上記被験体に由来する血液サンプルから測定される。上記血液サンプルは、全血、または血液派生物(例えば、血漿または血清)であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、EOM613の投与は、上記被験体において、D-ダイマー、トロポニン(例えば、トロポニン-I、トロポニン-T、およびトロポニン-C)、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカイン(例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(INF-γ))のレベルのうちの1またはこれより多くのレベルを減少させる。例えば、上記方法は、適切なコントロールと比較した場合(例えば、処置前のレベルに対して)、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%、上記レベルを減少させ得る。いくつかの例では、上記トロポニンは、トロポニン-Iである。いくつかの例では、上記サイトカインは、インターロイキン、例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-10(IL-10)、またはインターロイキン-2(IL-2)のうちの1またはこれより多くのものである。いくつかの例では、上記治療上有効な量のEOM613を上記被験体に投与する工程は、検出不能なレベルまたは正常レベルまで、D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインレベルのうちの1またはこれより多くのもののレベルを減少させる。
【0063】
D-ダイマー、トロポニン(例えば、トロポニン-I、トロポニン-T、およびトロポニン-C)、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカイン(例えば、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-2(IL-2)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、またはインターフェロンγ(INF-γ))レベルは、処置の過程全体を通じて周期的に、例えば、毎日、2日に1回、3日ごとに1回、1週間に1回、または1ヶ月に1回、測定および/または比較され得る。いくつかの例では、D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインレベルは、処置の前に、および/または処置の約1日目、処置の約2日目、処置の約3日目、処置の約4日目、処置の約5日目、処置の約6日目、処置の約7日目、処置の約8日目、処置の約9日目、処置の約10日目、処置の約11日目、処置の約12日目、処置の約13日目、処置の約14日目、処置の約15日目、処置の約16日目、処置の約17日目、処置の約18日目、処置の約19日目、処置の約20日目、処置の約24日目、処置の約26日目、処置の約28日目、処置の約30日目、処置の約35日目、処置の約40日目、処置の約45日目、処置の約50日目、処置の約55日目、処置の約60日目、もしくはこれらの任意の組み合わせで測定される。いくつかの例では、D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインレベルは、処置前に(または処置の早期に(例えば、約1日目に)測定され、EOM613処置の1日またはそれより後に、例えば、処置の約1日、処置の約2日、処置の約3日、処置の約4日、処置の約5日、処置の約6日、処置の約7日、処置の約8日、処置の約9日、処置の約10日、処置の約12日、処置の約14日、処置の約16日、処置の約18日、処置の約20日、処置の約24日、処置の約28日、処置の約30日、処置の約35日、処置の約40日、処置の約45日、処置の約50日、処置の約55日、処置の約60日またはこれより後に、それぞれのレベルに対して比較される。いくつかの例では、D-ダイマー、トロポニン、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、またはサイトカインレベルは、EOM613処置前に(または処置の早期に、例えば、約1日目に)被験体において測定され、EOM613での処置の完了後に、それぞれのレベルに対して比較される。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記方法は、治療上有効な量のEOM613で処置する前と比較して、上昇したD-ダイマーレベル、トロポニン(例えば、トロポニン-I、トロポニン-T、またはトロポニン-C)レベル、C反応性タンパク質レベル、プロカルシトニン、およびIL-6レベルのうちの1またはこれより多くのものの低減、ならびに酸素化レベルの増大(例えば、増大したSpO2測定値)を生じる。いくつかの実施形態において、上記方法は、治療上有効な量のEOM613で処置する前と比較して、上昇したD-ダイマーレベル、トロポニンレベル、C反応性タンパク質レベル、およびIL-6レベルの低減、ならびに酸素化レベルの増大(例えば、増大したSpO2測定値)を生じる。いくつかの実施形態において、上記方法は、治療上有効な量のEOM613で処置する前と比較して、被験体の増大したリンパ球数を生じる。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、COVID-19を有すると診断されるかまたは推定される。COVID-19の重篤度は、世界保健機関(WHO)臨床改善順序スケールを使用してカテゴリー分けされ得る。いくつかの例では、上記被験体は、EOM613で処置を開始する前に、WHO臨床改善順序スケールで少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7のスコアを有する。いくつかの例では、上記被験体は、EOM613で処置を開始する前に、約1~約7、約1~約6、約1~約5、約1~約4、約1~約3、約1~約2、約2~約7、約3~約7、約4~約7、約5~約7、約6~約7、約2~約6、約2~約5、約2~約4、約2~約3、約3~約6、約3~約5、約3~約4、約4~約6、約4~約5、または約5~約6のスコアを有する。いくつかの例では、上記被験体は、処置を開始する前に、WHO臨床改善順序スケールで4またはこれより高いスコアを有する。いくつかの例では、上記被験体は、処置を開始する前に、WHO臨床改善順序スケールで5またはこれより高いスコアを有する。いくつかの例では、上記被験体は、処置を開始する前に、WHO臨床改善順序スケールで6またはこれより高いスコアを有する。いくつかの例では、EOM613処置は、WHO臨床改善順序スケールで被験体のスコアを低減する、例えば、上記スコアを、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7、低減する。いくつかの例では、EOM613処置は、WHO臨床改善順序スケールで被験体のスコアを、4未満へと低減する、例えば、上記スコアを、少なくとも0、1、2、または3へと低減する。
【0066】
いくつかの実施形態において、EOM613の投与は、SARS-CoV-2誘導性サイトカインストーム症候群を阻害するために有効である。いくつかの実施形態において、上記処置は、上記被験体におけるサイトカイン生成または蓄積を、例えば、正常レベルへと低減するかまたは維持する。いくつかの実施形態において、EOM613は、SARS-CoV-2感染によって誘発されたサイトカインストーム症候群の発生を阻害するために有効な量において予防的手段として投与される。上記被験体においてサイトカインストーム症候群の発生を阻害することは、完全な阻害を要求しないが、代わりに、サイトカインストーム症候群と関連する症状の部分的阻害または低減であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、EOM613の投与は、SARS-CoV-2誘導性多系統炎症症候群を阻害するために有効である。いくつかのこのような実施形態において、上記被験体に投与されるEOM613の量は、多系統炎症症候群に起因する、上記被験体における臓器の炎症または損傷を低減するために有効である。具体的な非限定的例では、上記低減した臓器損傷は、心臓、腎臓、および/または肺への低減した損傷である。いくつかの実施形態において、SARS-CoV-2誘導性多系統炎症症候群を阻害するために、または臓器損傷もしくは炎症を低減するために有効な量でEOM613を投与される上記被験体は、小児(例えば、5歳もしくはこれより若い小児)である。
【0068】
いくつかの実施形態において、EOM613の投与は、SARS-CoV-2誘導性川崎病を阻害するために有効である。いくつかのこのような実施形態において、上記被験体に投与されるEOM613の量は、川崎病に起因する、上記被験体における心臓損傷を低減するために有効である。いくつかの実施形態において、EOM613は、SARS-CoV-2感染によって誘発される川崎病の発生を阻害するために有効な量で予防的手段として投与される。
【0069】
いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613は、上記被験体においてサイトカインストーム症候群を阻害または処置するために被験体に投与される。上記被験体への治療上有効な量のEOM613の投与は、上記被験体におけるサイトカインストーム症候群の1またはこれより多くの症状を低減および/または排除する。いくつかの実施形態において、サイトカインストーム症候群を有するかまたはそのリスクにある被験体は、EOM613での処置のために選択される。
【0070】
EOM613での処置は、サイトカインストーム症候群の症状のうちの1またはこれより多くのものを低減する。サイトカインストーム症候群の症状は、上記方法が有効であることのために、排除される必要はない。例えば、上記方法は、サイトカインストーム症候群の1またはこれより多くの症状を、適切なコントロールと比較した場合に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%(症状の排除)低減し得る。いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613でのサイトカインストーム症候群を有する被験体の処置は、治療上有効な量のEOM613で処置する前と比較して、上昇したD-ダイマーレベル、トロポニン(例えば、トロポニン-I、トロポニン-T、およびトロポニン-C)レベル、C反応性タンパク質レベルおよびIL-6レベルのうちの1またはこれより多くのものの低減、ならびに酸素化レベルの増大(例えば、増大したSpO2測定値)を生じる。
【0071】
いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613は、上記被験体において多系統炎症症候群を阻害または処置するために、被験体に投与される。上記被験体への治療上有効な量のEOM613の投与は、上記被験体における多系統炎症症候群の1またはこれより多くの症状を低減および/または排除する。いくつかの実施形態において、多系統炎症症候群を有するかまたはそのリスクにある被験体は、EOM613での処置のために選択される。
【0072】
EOM613での処置は、多系統炎症症候群の症状のうちの1またはこれより多くのものを低減する。多系統炎症症候群の症状は、上記方法が有効であることのために、排除される必要はない。例えば、上記方法は、多系統炎症症候群の1またはこれより多くの症状を、適切なコントロールと比較した場合に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%(症状の排除)低減し得る。いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613での多系統炎症症候群を有する被験体の処置は、白血球増多症またはリンパ球減少症の解消、増大したバンド好中球(increased band neutrophil)、以下: 肝酵素(例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT))、赤血球沈降速度(ESR)、フェリチン、C反応性タンパク質(CRP)、および/またはインターロイキン-6(IL-6)の上昇した血漿レベルの低減を生じる。いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613での多系統炎症症候群を有する被験体の処置は、治療上有効な量のEOM613で処置する前と比較して、上記被験体の増大したリンパ球数を生じる。
【0073】
いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613は、上記被験体において川崎病を阻害または処置するために被験体に投与される。上記被験体への治療上有効な量のEOM613の投与は、上記被験体における川崎病の1またはこれより多くの症状を低減および/または排除する。いくつかの実施形態において、多系統炎症症候群を有するかまたはそのリスクにある被験体は、EOM613での処置のために選択される。
【0074】
EOM613での処置は、川崎病の症状のうちの1またはこれより多くのものを低減する。川崎病の症状は、上記方法が有効であることのために、排除される必要はない。例えば、上記方法は、川崎病の1またはこれより多くの症状を、適切なコントロールと比較した場合に、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%(症状の排除)低減し得る。いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613での川崎病を有する被験体の処置は、発疹、紅斑、および口唇の腫脹の低減、白血球増多症もしくはリンパ球減少症の解消、増大したバンド好中球、以下: 肝酵素(例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT))、赤血球沈降速度(ESR)、フェリチン、C反応性タンパク質(CRP)、および/またはインターロイキン-6(IL-6)の増大した血漿レベルの低減を生じる。いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613での川崎病を有する被験体の処置は、治療上有効な量のEOM613で処置する前と比較して、上記被験体の増大したリンパ球数を生じる。いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613での川崎病を有する被験体の処置は、リンパ球減少症の解消を生じる。
【0075】
いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613は、上記被験体においてリンパ球減少症を阻害または処置するために被験体に投与される。上記被験体への治療上有効な量のEOM613の投与は、正常レベルに向かってリンパ球数の増大を生じる。リンパ球数はしばしば、被験体における白血球のパーセンテージとして測定される。リンパ球の正常範囲は、白血球の20~40%である。いくつかの実施形態において、リンパ球減少症を有する被験体(例えば、10%未満のリンパ球パーセンテージを有する被験体)の処置は、20~40%の正常リンパ球パーセンテージ範囲へのリンパ球パーセンテージの増大を生じる。いくつかの実施形態において、リンパ球減少症を有するかまたはそのリスクにある被験体は、EOM613での処置のために選択される。
【0076】
本明細書で提供される方法において上記被験体へと投与されるEOM613の用量は、投与の量およびタイミング、処置されている上記被験体、処置されている状態の重篤度およびタイプ、ならびに投与様式を含む多数の要因に応じて変動し得る。概して、所望されない副作用を引き起こすことなく、疾患の症状を緩和するために十分な、適切な投与量が使用される。いくつかの実施形態において、約0.5マイクロリットル~約100マイクロリットル(例えば、約2.5マイクロリットル~約40マイクロリットル、または約10マイクロリットル~約25マイクロリットル) EOM613/キログラム体重/日が、上記被験体に投与される。いくつかの実施形態において、約1~2mL(例えば、1mLまたは2mL) EOM613が、1日あたり上記被験体に投与される。所望の用量は、1日に1回、または適切な間隔(1日全体に時間単位で概して等しく分散している)において、2、3もしくはこれより多くの部分用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、EOM613は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約14日、約16日、約18日、約20日、約22日、約24日、約28日、またはより長い期間にわたり投与される。いくつかの実施形態において、約1~約2ml(例えば、1または2ml) EOM613が、上記被験体に1日に2回投与される。いくつかの実施形態において、約2mlのEOM613が、上記被験体に1日に2回、2日間投与され、次いで、約1mlのEOM613が、上記被験体に1日に2回、8日間投与される。いくつかの実施形態において、約2mlのEOM613が、上記被験体に1日に2回、3日間投与され、次いで、約1mlのEOM613が、上記被験体に1日に2回、7日間投与される。いくつかの実施形態において、約2mLのEOM613が、上記被験体に1日に2回、2日間投与され、次いで、約2mLのEOM613が1日に1回、3日間投与される。いくつかの例では、約1~約2mlのEOM613が、2~5日間投与され、その後、続いて、約1~約2mlのEOM613が1日に1回、さらに2~5日間投与される。具体的な非限定的な例では、2mLのEOM613が、1日に2回、5日間投与され、続いて、1日に1回、さらに5日間投与される。別の非限定的な例では、2mLのEOM613が1日に1回、10日間投与される。
【0077】
いくつかの実施形態において、治療上有効な量のEOM613は、経口的に、非経口的に、局所的に、鼻内に、吸入によって、または全身的に投与される。非経口投与としては、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、胸膜内注射、胸骨内注射(intrasternal injection)、または注入の技術が挙げられる。非限定的な例では、治療上有効な量のEOM613は、皮下注射によって非経口的に投与される。いくつかの実施形態において、EOM613は、肺に直接的に、例えば、吸入によってまたは気管内チューブによって投与される。例示によれば、肺への投与の1つの方法は、ネブライザーまたは吸入器の使用を介する吸入によるものである。例えば、EOM613は、エアロゾルまたは微粒子として製剤化され、標準的なネブライザーを使用して肺へと引き入れられる。好ましい投与経路は、例えば、レシピエントの状態および年齢にともなって変動し得る。
【0078】
吸入による投与を含むいくつかの実施形態において、EOM613は、適切な噴霧体(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用する加圧されたパックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー提示の形態で好都合に送達される。加圧されたエアロゾルの場合には、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または注入器(insufflator)における使用のためのカプセルおよびカートリッジは、EOM613および必要な場合に任意の適切な添加剤を含めて製剤化され得る。
【0079】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1種のさらなる治療剤が、上記被験体に投与される(例えば、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗寄生生物剤、または抗炎症剤)。非限定的な例では、上記さらなる薬剤は、レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、デキサメタゾン、リン酸クロロキン(chloroquine phospate)、イベルメクチン、α-インターフェロン(例えば、インターフェロンα2b)、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、λ-インターフェロン、リトナビル、アラビノ-ル、または抗腫瘍壊死因子(TNF)-α抗体(例えば、アダリムマブ)である。
【0080】
いくつかの実施形態において、EOM613に加えて、酸素が、少量の持続陽圧気道圧(「CPAP」)を用いて上記被験体に投与される。さらに、静脈内流体が、血糖、血液の塩分、および血圧を安定させるために投与され得る。
【0081】
IV. EOM613を含む薬学的製剤
EOM613は、単独で投与されてもよいし、薬学的製剤の一部として投与されてもよい。それはまた、上記被験体に独立して投与される1種またはこれより多くの他の医薬品とほぼ同時に投与されてもよい。EOM613が薬学的製剤の一部として投与される場合、本発明の製剤は、少なくとも1種の投与される成分(すなわち、EOM613)を、1種またはこれより多くの薬学的に受容可能なキャリア、および必要に応じて1種またはこれより多くのさらなる医薬と一緒に含む。上記キャリアは、上記製剤の他の成分と適合性でありかつレシピエントに有害でない(例えば、インビボでの、上記被験体における使用に適している)という意味において薬学的に受容可能でなければならない。
【0082】
薬学的製剤中のEOM613は、無菌である。薬学的製剤は、単位用量または複数用量容器(例えば、密封されたアンプルおよびバイアル)の状態で提示され得る。好ましい単位投与製剤は、1日用量もしくは単位、1日部分用量、または投与される成分の適切な割合を含むものである。
【0083】
EOM613薬学的製剤は、生理食塩溶液、液体またはガス(エアロゾル)中での再構成のために凍結乾燥された固体の形態にあり得る。EOM613を含む薬学的製剤は、EOM613または他の化合物を、薬学的組成物を被験体に投与した際に生体利用可能になることを可能にするために製剤化され得る。薬学的製剤は、1またはこれより多くの投与単位の形態をとり得る。例えば、エアロゾル形態にあるEOM613の容器は、複数の投与単位を保持し得る。EOM613の単位用量を含むシリンジがまた、提供される。
【0084】
経口投与に関しては、上記薬学的製剤は、液体形態、例えば、液剤、シロップ剤もしくは懸濁剤の形態にあり得るか、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで再構成するための薬物製品として提示され得る。このような液体調製物は、薬学的に受容可能な添加剤(例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、または分画した植物油);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)とともに従来の手段によって調製され得る。上記薬学的製剤は、薬学的に受容可能な添加物(excipient)(例えば、結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填材(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム))とともに従来の手段によって調製される、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態をとり得る。上記錠剤は、当該分野で周知の方法によってコーティングされ得る。
【0085】
経口投与のための調製物は、活性化合物の制御された放出を与えるために適切に製剤化され得る。口内投与に関しては、上記組成物は、従来の様式において製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。
【0086】
吸入による投与に関しては、薬学的製剤は、適切な噴霧体(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用する加圧されたパックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー提示の形態で送達される。加圧されたエアロゾルの場合には、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または注入器における使用のためのカプセルおよびカートリッジは、EOM613および適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)の粉末混合物を含めて製剤化され得る。
【0087】
薬学的製剤は、注射による、例えば、ボーラス注射もしくは連続注入による非経口的投与のために製剤化され得る。注射用の製剤は、単位投与形態において、例えば、アンプルにおいてまたは複数用量容器において(保存剤が添加されている)提示され得る。上記製剤は、油性または水性のビヒクル中の懸濁剤、液剤またはエマルジョンのような形態をとり得、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤用の作用物質(formulatory agent)を含み得る。あるいは、上記活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、滅菌発熱物質非含有水)での構成するために粉末形態にあり得る。
【0088】
上記薬学的製剤は、クリーム剤、ローション剤、ゲル、点眼剤、軟膏剤、液剤、懸濁剤、シャンプー、または当業者に公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton Pa. (1980 & 1990)、ならびにIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 第4版, Lea & Febiger, Philadelphia (1985)に記載される他の形態のような組成物において製剤化され得る。薬学的組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton Pa. (1980 & 1990)に詳細に記載される。
【0089】
以前に記載された薬学的製剤に加えて、EOM613はまた、デポー調製物として製剤化され得る。このような長時間作用製剤は、移植によって(例えば、皮下にまたは筋肉内に)または筋肉内注射によって投与され得る。このような例では、上記化合物は、適切なポリマー物質または疎水性物質(例えば、受容可能な油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂とともに、あるいはわずかに可溶性の(sparingly soluble)誘導体として、例えば、わずかに可溶性の塩として製剤化され得る。リポソームおよびエマルジョンは、送達ビヒクルまたは親水性薬物用のキャリアの周知の例である。
【実施例
【0090】
実施例
以下の実施例は、ある特定の実施形態の特定の特徴を例証するために提供されるが、特許請求の範囲は、それらの例示される特徴に限定されるべきではない。
【0091】
実施例1
EOM613の生成
本実施例は、EOM613を作製するプロセスの一実施形態を例証する。
【0092】
約2.5リットルの注射用水(USP)中に、約35.0gのカゼイン、約17.1gの牛肉ペプトン、約22.0gの核酸(酵母RNA)、約3.25g ウシ血清アルブミンを、約3~7℃において適切な容器中で懸濁し、全ての成分が適切に濡れるまで穏やかに撹拌する。約16.5gの水酸化ナトリウム(試薬グレードACS)を撹拌しながら注意深く添加し、水酸化ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌を継続する。約9lbs圧力および200~230°Fにおいて、RNAが完全に消化されるまで、例えば、約4時間の期間にわたってオートクレーブにかける。その期間の最後に、オートクレーブを停止し、その反応フラスコおよび内容物を、周囲温度へとゆっくりと冷却させる。次いで、少なくとも6時間、約3~8℃において冷却する。
【0093】
得られた溶液を、2ミクロンおよび0.45ミクロンのフィルターを通して、不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)を使用して低圧(1~6psi)において濾過する。類似の様式で、その溶液を、0.2ミクロン発熱物質保持フィルターを通して再び濾過する。その得られた濾液をサンプリングし、全窒素に関してアッセイする。次いで、計算を行って、約165~210mg/100mlの間の窒素含有量を有する希釈した濾液を得るために、上記濾液に添加されるべき冷却注射用水の量を決定する、最終容積は、およそ5リットルである。次いで、pHを、濃HCl(試薬グレードACS)または1.0規定 NaOHのいずれかで約7.3~7.6の範囲へと調節する。次いで、その希釈した溶液を、0.2ミクロンフィルターを通して、不活性ガスを用いて低圧において再び濾過する。次いで、その最終的な濾液を、不活性ガス雰囲気の中にある間に2ml ガラスアンプルへと満たし、密封する。そのアンプルを集め、最終的な滅菌のために240°Fおよび14~16ポンド圧力において、約30分間、オートクレーブにかける。滅菌サイクル後、EOM613を有するアンプルを、冷却し洗浄する。
【0094】
全ての量は、pH、容積、および分析用調節に関して±15%変動の対象である。
【0095】
実施例2
EOM613でのSARS-CoV-2感染の処置
本実施例は、実施例1に記載されるEOM613組成物を使用するSARS-CoV-2感染を有する患者の処置プロトコールを提供する。
【0096】
SARS-CoV-2感染を有する患者を、処置のために選択する。上記患者は、重症症状(例えば、心筋疾患、腎機能障害、凝固疾患、脳炎、重度の疲労または多系統炎症症候群)を含め、症状なしの(重症症状の発生に対する予防的処置として)または症状ありの、活発なSARS-CoV-2感染を有し得る。上記患者は、2mlのEOM613を皮下に1日に2回、3日間、続いて、1mlのEOM613を皮下に1日に2回、7日間投与される。
【0097】
代表的には、患者は、処置期間の前およびその間に評価される。身体検査は、意識、時間および場所に対する見当識、体温、脈拍、血圧、心拍数、EKG、呼吸数、胸部X線検査を含む。集められるべき臨床検査データとしては、CBC、CRP、ESR、プロカルシトニン、SMA-18、トロポニン、ナトリウム利尿ペプチド、血液ガス、尿検査が挙げられる。患者が最初の10日間の処置プロトコールに応答しない場合、処置は反復されてもよい。
【0098】
実施例3
EOM613での重篤なSARS-CoV-2感染の処置
貧血を有する91歳の男性被験体は、RT-PCRによれば、SARS-CoV-2感染について検査陽性であった。上記被験体は、発熱、全身倦怠感および衰弱、ならびに肺の不快感および肺うっ血の明らかな臨床徴候を呈した。上記被験体は、完全に寝たきりで、衰弱し、動けず、ベッドの中で自分で身動きすることすらできず、他者の介助を必要とした。上記被験体は、80パーセント台の酸素化SpO2パーセンテージレベルを有し、酸素補給を必要とした。彼の症状が最初に出現して10日後に、肺超音波検査を行ったところ、極度の肺うっ血を示した。最初の徴候の提示の12日後、最初の血液検査データを得、これを、EOM処置後のさらなる分析のための出発点として使用した。最初の血液検査データに続いて2日後、EOM613での治療を開始し、治療開始に引き続いてさらに24日間、患者の進行の経過を追跡した。
【0099】
処置に関しては、上記被験体は、最初の2日間は1日2回、皮下注射によって投与される2mL用量を受容し、次いで、さらに3日間は1日1回、皮下注射によって2mL用量を受容した。上記被験体は、抗ウイルス剤も、免疫調節剤も、コルチコステロイド処置も同時に受けなかった;店頭で購入できる解熱剤のみを服用して、彼の発熱を低減した。
【0100】
EOM613処置の開始翌日、その患者は初めて目を開けた。2日目までには、彼は介助なしで自分で寝返りをうてるようになった。上記被験体の肺うっ血はまた、解消していると注記された。EOM613処置の開始後4日目までには、上記被験体は、彼の肺の症状が解消し、歩行可能であり、発熱が軽くなったか、または発熱がなくなった。15日目までには、上記患者は、自力でベッドから出て歩き、介助なしで自分でトイレに行くのに十分よくなった。
【0101】
処置の開始後2日目当時に216.1ng/Lへと上昇した上記被験体の血漿IL-6レベルは、処置の開始後4日目までには110.3ng/Lへと低減し、次いで、処置の開始後7日目までには71.3ng/Lへと下がり、次いで、12日目には25.7ng/Lへ、処置後24日目には11ng/Lへとさらに減少した(図1)。EOM613処置で観察された血漿IL-6レベルの減少は、COVID-19感染の観察された炎症および肺症状の解消と一致しかつ同時であった。
【0102】
上記被験体のCOVID-19関連のリンパ球減少症の改善はまた、EOM613処置でも認められた(図2)。処置開始後2日目に、上記被験体は、彼の分画白血球数(differential blood cell count)において7.5%という非常に低いリンパ球数を示した;処置開始後7日で、数が13.1%へと上昇した。12日目までには、上記被験体のリンパ球パーセンテージ数は、17.1%へと上昇し、24日目までは、それは、23.7%という値へとさらに反跳した。血漿C反応性タンパク質(CRP)レベルはまた、処置開始後12日で260.1ng/Lという高さから73.3ng/Lへと減少し、次いで、EOM613処置開始後24日で13ng/Lへとさらに減少した(図3)。上記被験体は、酸素補給を必要とする1日目の80%台のSpO2パーセンテージ酸素化レベルから、24日目までには自分自身で呼吸して95%超のSpO2レベルへと向かった。
【0103】
実施例4
肥満症患者における重篤なSARS-CoV-2感染の、EOM613での処置
肥満症の共存症がある31歳の男性患者は、RT-PCR検査によって確認されたCOVID-19感染の重症症状で入院した。その患者は、発熱、呼吸困難、呼吸窮迫、身体痛、ならびに味覚および嗅覚の最近の喪失を呈した。彼は、ICU状況で入院し、機械換気を要する状態へと急速に進行し、WHO臨床改善順序スケールで6のスコアを有した。参照のために、8ポイントのWHO臨床改善順序スケールを、以下の表2に提供する。このポイントで、患者は、10日の期間にわたってEOM613での処置を開始し、2mLを最初の5日間に1日2回受容し、残りの5日間に2mLを1日1回受容した。表1は、その患者の改善記録を示す。
【表1】
【表2】
【0104】
2日目までには、その患者は、機械換気が外れ、WHOスコアが高流量酸素を必要とする5へと改善した。その患者は、評価の際に、5日目には、WHOスコアが4へとさらなる改善を示し、11日目までには、スコア3への改善を示した(なお入院中であったが、酸素補給の必要性はなかった)。その患者は、16日目に退院した。28日目に、追跡を行ったところ、完全に無病であり、WHOスコア0が割り当てられて通常の活動を取り戻した。
【0105】
1日目、2日目、5日目、8日目および11日目に、EOM613処置の進捗に伴って検査した生化学的パラメーターは、C反応性タンパク質(CRP)が2日目に155mg/mLという高値へと一過性に上昇したが、その後、処置期間の経過にわたって安定して減少し、11日目までには16.8mg/mLへと低下したことを示した。上昇したトロポニン-Iレベルは同時に、1日目の71ng/mLの高さから、処置が進行するにつれて8日目の5ng/mLおよび11日目の6.5ng/mLという値へと低下した。プロカルシトニン血中レベルは、0.110ng/mLという値から8日目および以降、0.05ng/mLへと低下し、これは、正常範囲内であった。EOM613はまた、この患者における最初の一過性の上昇後に、処置の過程にわたって炎症促進性CRPの低下を生じた。それはまた、プロカルシトニンおよびトロポニン-I(これらの上昇は、COVID-19患者における疾患進行および悪化する予後転帰の予後生体マーカーとみなされる)の治療上肯定的な安定した低下を生じた。
【0106】
実施例5
喘息患者におけるSARS-CoV-2感染の、EOM613での処置
過去に重篤な気管支喘息の病歴のある31歳の女性患者は、咳嗽、発熱および悪寒、息切れ、ならびに嗅覚および味覚の最近の喪失を含むCOVID-19の症状を呈した。その患者は、酸素補給の使用を必要とし、入院の際にWHO臨床改善順序スケール4を割り当てられた(表2を参照のこと)。彼女は、正常なトロポニン-Iレベルを呈したが、4.5mg/mLという上昇したD-ダイマーレベル(正常は<0.5mg/mL)を示した。彼女は、10日間にわたって、1日1回皮下に与えられる2mLの用量のEOM613での処置を開始した。2日目に、彼女のWHOスコアは、3へと改善し、5日目までにはスコアが1へと改善した。その患者は、無病転帰で病院から退院し、4日目までには活動の制限はなくなった。
【0107】
その患者は、入院時には上昇したD-ダイマーレベルを有したことから、血液検査においてこの生体マーカーをモニターした。2日目に、彼女のD-ダイマーレベルは、1.81mg/mLの読み取り値であったが、5日目までには、それは、1.35mg/mLへとさらに低下した。
【0108】
記載される方法または組成物の正確な詳細は、記載される実施形態の趣旨から逸脱することなく変動または改変され得ることは明らかである。本発明者らは、以下の特許請求の範囲の範囲および趣旨内に入る全てのこのような改変およびバリエーションを特許請求する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】