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特表2023-547278レーザ・アークハイブリッド溶接による溶接継手の製造のための方法
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  • 特表-レーザ・アークハイブリッド溶接による溶接継手の製造のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】レーザ・アークハイブリッド溶接による溶接継手の製造のための方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/362 20060101AFI20231101BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20231101BHJP
   B23K 9/16 20060101ALI20231101BHJP
   B23K 26/348 20140101ALI20231101BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20231101BHJP
【FI】
B23K35/362 A
B23K35/362 310Z
C22C38/06
B23K9/16 K
B23K26/348
C22C38/00 301A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549145
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 IB2020059874
(87)【国際公開番号】W WO2022084718
(87)【国際公開日】2022-04-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523150211
【氏名又は名称】ベルディシオ・ソリューションズ・ア・イ・エ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンホン・フェルナンデス,アルバロ
(72)【発明者】
【氏名】ボーム,シバサンブ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス・ロドリゲス,マルコス
【テーマコード(参考)】
4E001
4E084
4E168
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB05
4E001BB07
4E001BB08
4E001BB11
4E001CA01
4E001CC02
4E001DD02
4E001DD04
4E084AA02
4E084AA03
4E084AA04
4E084AA07
4E084AA15
4E084CA19
4E084CA21
4E084FA09
4E084GA02
4E168BA42
4E168BA83
4E168BA88
4E168DA24
4E168DA32
4E168DA40
(57)【要約】
本発明は、溶接継手の製造のための方法であって、以下の連続する工程:I.少なくとも2つの金属基板の提供であって、少なくとも1つの金属基板は、少なくとも8mmの厚さを有し、及び少なくとも1つのはす縁によって区切られている鋼基板であり、前記はす縁は、チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含むプレコーティングで少なくとも部分的にコーティングされている、少なくとも2つの金属基板の提供と、II.アーク先行の構成でのレーザ・アークハイブリッド溶接による、前記少なくとも部分的にコーティングされたはす縁に沿った前記少なくとも2つの金属基板の溶接と、を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接継手の製造のための方法であって、以下の連続する工程:
I.少なくとも2つの金属基板の提供であって、少なくとも1つの金属基板は、少なくとも8mmの厚さを有し、及び少なくとも1つのはす縁によって区切られている鋼基板であり、前記はす縁は、チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含むプレコーティングで少なくとも部分的にコーティングされている、少なくとも2つの金属基板の提供と、
II.アーク先行の構成でのレーザ・アークハイブリッド溶接による、少なくとも部分的にコーティングされたはす縁に沿った前記少なくとも2つの金属基板の溶接と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記チタネートが、NaTi、NaTiO、KTiO、KTi、MgTiO、SrTiO、BaTiO、CaTiO、FeTiO及びZnTiO並びにそれらの混合物の中から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記プレコーティングの厚さが10~140μmである、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記プレコーティング中の前記ナノ粒子状酸化物の百分率が80重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プレコーティング中の前記ナノ粒子状酸化物の百分率が10重量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、5~60nmに含まれるサイズを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プレコーティング中のチタネートの百分率が45重量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記チタネートの直径が1~40μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プレコーティングが結合剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プレコーティング中の結合剤の百分率が1~20重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザ・アークハイブリッド溶接の前記アークが、サブマージアーク、ガスメタルアーク、ガスタングステンアーク及びプラズマアークの中から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
プレコーティングされた鋼基板の製造のための方法であって、連続する以下の工程:
A.少なくとも8mmの厚さを有し、及び1~10°に含まれるベベル角度を有する少なくとも1つのはす縁によって区切られている鋼基板の提供と、
B.チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含むプレコーティング溶液の前記はす縁上への少なくとも部分的な堆積と、
を含む、方法。
【請求項13】
工程B)において、前記プレコーティング溶液の堆積が、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング又はブラシコーティングによって行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程B)において、前記プレコーティング溶液が溶剤をさらに含む、請求項12又は13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程B)において、前記プレコーティング溶液が1~200g/Lのナノ粒子状酸化物を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程B)において、前記プレコーティング溶液が100~500g/Lのチタネートを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程B)において、前記プレコーティング溶液が結合剤前駆体をさらに含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程B)において得られたプレコーティングされた鋼基板の乾燥工程をさらに含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも8mmの厚さを有し、及び1~10°に含まれるベベル角度を有する少なくとも1つのはす縁によって区切られている鋼基板であって、前記はす縁は、チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含むプレコーティングで少なくとも部分的にコーティングされている、鋼基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、金属基板の少なくとも1つが、溶接の品質を改善するために溶接フラックスで局所的にコーティングされた鋼基板である場合における、レーザ・アークハイブリッド溶接による金属基板の溶接に関する。本発明はまた、対応する鋼基板及び鋼基板の製造のための方法に関する。本発明は、建設、造船、輸送産業(鉄道及び自動車)、エネルギー関連構造物、石油及びガス並びにオフショア産業に特によく適している。
【背景技術】
【0002】
レーザ・アークハイブリッド溶接によって鋼基板を溶接することは公知である。この溶接技術は、レーザビーム溶接とアーク溶接の原理を組み合わせたものである。使用される設定に応じて、ガスタングステンアーク(GTA)としても知られるタングステン不活性ガス(TIG)、そのサブタイプであるミグ(MIG)又はマグ(MAG)によって呼ばれることがあるガスメタルアーク(GMA)、プラズマアーク及びサブマージアーク(SA)というレーザ・アークハイブリッド溶接プロセスの4つの主要な種類が存在する。
【0003】
レーザプロセスとアークプロセスとの組み合わせは、(各プロセス単独と比較して)溶接溶込み深さ及び溶接速度の両方の向上をもたらす。しかしながら、これらの改善にもかかわらず、溶接部における割れの発生を制限し、プロセスの安定性、その結果として、溶接溶込みを改善する余地が残されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、レーザ・アークハイブリッド溶接によって行われる溶接の品質、したがって溶接された鋼基板の機械的特性を改善することが必要とされている。レーザ・アークハイブリッド溶接の堆積速度及び生産性を向上させる必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明は、溶接継手の製造のための方法であって、以下の連続する工程:
I.少なくとも2つの金属基板の提供であって、少なくとも1つの金属基板は、少なくとも8mmの厚さを有し、及び少なくとも1つのはす縁によって区切られている鋼基板であり、前記はす縁は、チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含むプレコーティングで少なくとも部分的にコーティングされている、少なくとも2つの金属基板の提供と、
II.アーク先行の構成でのレーザ・アークハイブリッド溶接による、前記少なくとも部分的にコーティングされたはす縁に沿った前記少なくとも2つの金属基板の溶接と、
を含む、方法に関する。
【0006】
本発明による方法は、個別に又は組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意の特徴も有し得る。
【0007】
・チタネートは、NaTi、NaTiO、KTiO、KTi、MgTiO、SrTiO、BaTiO、CaTiO、FeTiO及びZnTiO並びにそれらの混合物の中から選択される、
・プレコーティングの厚さは、10~140μmである、
・プレコーティング中のナノ粒子状酸化物の百分率は、80重量%以下である、
・プレコーティング中のナノ粒子状酸化物の百分率は、10重量%以上である、
・ナノ粒子は、5~60nmに含まれるサイズを有する、
・プレコーティング中のチタネートの百分率は、45重量%以上である、
・チタネートの直径は、1~40μmである、
・プレコーティングは、結合剤をさらに含む、
・プレコーティング中の結合剤の百分率は、1~20重量%である、
・レーザ・アークハイブリッド溶接のアークは、サブマージアーク、ガスメタルアーク、ガスタングステンアーク及びプラズマアークの中から選択される、
・プレコーティングは、微粒子状酸化物及び/又は微粒子状フッ化物の中から選択される微粒子状化合物をさらに含む、
・プレコーティングは、CeO、NaO、Na、NaBiO、NaF、CaF、氷晶石(NaAlF)及びそれらの混合物からなるリストから選択される微粒子状化合物をさらに含む。
【0008】
本発明は、プレコーティングされた鋼基板の製造のための方法であって、連続する以下の工程:
A.少なくとも8mmの厚さを有し、及び1~10°に含まれるベベル角度を有する少なくとも1つのはす縁によって区切られている鋼基板の提供と、
B.チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含むプレコーティング溶液の前記はす縁上への少なくとも部分的な堆積と、
を含む、方法にも関する。
【0009】
本発明によるプレコーティングされた鋼基板の製造のための方法は、個別に又は組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意の特徴も有し得る。
【0010】
・プレコーティング溶液の堆積は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング又はブラシコーティングによって行われる、
・工程B)において、プレコーティング溶液は溶剤をさらに含む、
・工程B)において、プレコーティング溶液は1~200g/Lのナノ粒子状酸化物を含む、
・工程B)において、プレコーティング溶液は100~500g/Lのチタネートを含む、
・工程B)において、プレコーティング溶液は結合剤前駆体をさらに含む、
・方法は、工程B)において得られたプレコーティングされた鋼基板の乾燥工程をさらに含む。
【0011】
本発明は、少なくとも8mmの厚さを有し、及び1~10°に含まれるベベル角度を有する少なくとも1つのはす縁によって区切られている鋼基板であって、前記はす縁は、チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含むプレコーティングで少なくとも部分的にコーティングされている、鋼基板にも関する。
【0012】
以下の用語が定義される。
【0013】
・ナノ粒子は、サイズが1~100ナノメートル(nm)の粒子である。
【0014】
・チタネートは、チタン、酸素及びアルカリ金属元素、アルカリ土類元素、遷移金属元素又は金属元素などの少なくとも1つの追加の元素を含有する無機化合物を指す。それらはそれらの塩の形態であり得る。
【0015】
・「コーティングされた」とは、鋼基板が少なくとも局所的にプレコーティングで覆われていることを意味する。被覆は、例えば、鋼基板が溶接される領域に限定することができる。「コーティングされた」は、「直接的に上に」(それらの間に中間材料、要素又は空間が配置されていない)及び「間接的に上に」(それらの間に中間材料、要素又は空間が配置されている)を包括的に含む。例えば、鋼基板をコーティングすることは、中間材料/要素を間に有さずに基板上にプレコーティングを直接適用すること、及び(防食コーティングなどの)1つ以上の中間材料/要素を間に有して基板上にプレコーティングを間接的に適用することを含むことができる。
【0016】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、プレコーティングは、溶接中に、主に溶融プールの物理学を改変すると考えられる。本発明では、化合物の性質だけでなく、酸化物粒子のサイズが100nm以下であることが、アーク及び溶融プールの物理を改変すると思われる。
【0017】
実際に、最初に進行するアークは、溶解された種の形態の溶融金属中及びイオン化された種の形態のアーク中にプレコーティングを融解し、組み込む。アーク中にチタネート及びナノ粒子が存在することにより、アークが収束し、溶融金属プールの温度が上昇する。その結果、キーホール、すなわち、その蒸発によって引き起こされる鋼基板中の文字通りの穴は、溶融金属プールに衝突するレーザによってより容易に形成される。これは、プロセスの効率を改善する。
【0018】
さらに、溶融金属中に溶解されたプレコーティングは、表面張力勾配に起因する液体-気体界面での物質移動であるマランゴニ流を改変する。特に、プレコーティングの成分は、界面に沿った表面張力の勾配を改変する。表面張力のこの変更は、溶接プールの中心方向への、流体の流れの反転をもたらす。いかなる理論にも束縛されるものではないが、ナノ粒子は微粒子よりも低温で溶解し、したがってより多くの酸素が溶融プール中に溶解し、逆マランゴニ流を活性化すると考えられる。後者は、適切なキーホール形状の保持に寄与し、次にガス巻き込み、ひいては溶接部における気孔の発生を防止する。
【0019】
さらに、ナノ粒子状酸化物と混合されたチタネートは、レーザビームとのプラズマプルーム相互作用を修飾する。特に、プレコーティングの溶解による酸素の増加は、レーザビームの散乱を低下させる。その結果、レーザスポット径が縮小される一方で、キーホール効果が増強される。これにより、エネルギービームはさらに深く浸透し、接合部に極めて効率的に送達されることが可能になる。これは、溶接溶込みを増加させ、熱影響域を最小化し、次いで、これは部分の歪みを制限する。
【0020】
さらに、プレコーティングの成分が温度と共に表面張力を増加させるにつれて、溶融プールの中心よりも冷たいベベルに沿って溶接材料の濡れ性が増加し、これはスラグの巻き込みを防止する。
【0021】
さらに、ナノ粒子は、微粒子間の隙間を埋め、微粒子の表面を覆うことによって、適用されたプレコーティングの均一性を改善することが観察された。これは、溶接アークを安定化するのに役立ち、したがって溶接溶込み及び品質を改善する。
【0022】
二重のYではす縁を有する基板を例示する図1を参照しながら、純粋に説明の目的で提供されており、決して限定することを意図するものではない以下の記述を読むことによって、本発明はよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】二重のYではす縁を有する基板を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
プレコーティングは、チタネートと、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択されるナノ粒子状酸化物とを含む。換言すれば、プレコーティングは、チタネートと、少なくとも1種のナノ粒子状酸化物を含み、少なくとも1種のナノ粒子状酸化物は、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物からなる群から選択される。これは、プレコーティングが列挙されたもの以外の他のナノ粒子状酸化物を含まないことを意味する。
【0025】
チタネートは、チタン酸アルカリ金属塩、チタン酸アルカリ土類金属塩、チタン酸遷移金属塩、チタン酸金属塩及びそれらの混合物からなるチタネートの群から選択される。チタネートは、より好ましくは、NaTi、NaTiO、KTiO、KTi、MgTiO、SrTiO、BaTiO、CaTiO、FeTiO及びZnTiO並びにそれらの混合物の中から選択される。これらのチタネートは、逆マランゴニ流の効果に基づいて溶込み深さをさらに増加させると考えられる。すべてのチタネートが、ある程度同様に挙動し、溶込み深さを増加させることが本発明者らの理解である。したがって、すべてのチタネートが本発明の一部である。当業者は、具体的な事例に応じてどのチタネートを選択しなければならないかを知っているであろう。そうするために、当業者は、チタネートがどれだけ容易に溶融及び溶解するか、チタネートがどれだけ溶解酸素含有量を増加させるか、チタネートの追加の元素が溶融プールの物理及び最終的な溶接の微細構造にどのように影響するかを考慮に入れるであろう。例えば、NaTiOは、スラグ形成及び脱離を改善するNaの存在のために好ましい。
【0026】
好ましくは、チタネートは、1~40μm、より好ましくは1~20μm、有利には1~10μmの直径を有する。このチタネートの直径は、アーク収束及び逆マランゴニ効果をさらに改善すると考えられる。さらに、小さなマイクロメートルのチタネート粒子を有することは、ナノ粒子状酸化物との混合に利用可能な比表面積を増加させ、ナノ粒子状酸化物をチタネート粒子にさらに付着させる。また、小さなマイクロメートルのチタネート粒子を有することは、粒子をより噴霧しやすくする。
【0027】
好ましくは、プレコーティングの乾燥重量におけるチタネートの重量百分率は、45%以上、より好ましくは45%~90%、さらにより好ましくは45%~75%である。
【0028】
ナノ粒子状酸化物は、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物から選択される。これらのナノ粒子は溶融プール中に容易に溶解し、溶融プールに酸素を供給し、その結果として、溶込み深さを増加させ、不良を防止するキーホールを安定化させる。CaO、MgO、B、Co又はCrなどの他の酸化物とは対照的に、それらは脆性相を形成する傾向がなく、熱が鋼を正確に溶融するのを妨げる高い耐火効果を有さず、それらの金属イオンは溶融プール中の酸素と再結合する傾向がない。
【0029】
好ましくは、ナノ粒子はSiO及び/又はTiO、より好ましくはSiOとTiOの混合物である。SiOは主に溶込み深さを増加させ、スラグ除去を容易にするが、TiOは主に溶込み深さを増加させ、機械的特性を改善するTi系介在物を形成すると考えられる。
【0030】
ナノ粒子状酸化物の混合物の他の例は、
・酸化イットリウム(Y)の添加により二酸化ジルコニウム(ZrO)の立方晶構造を室温で安定化させたセラミックスであるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、
・耐火効果を調整するのに役立ち、介在物の形成を促進するLa、ZrO及びYの1:1:1組み合わせ、である。
【0031】
好ましくは、ナノ粒子は、5~60nmに含まれるサイズを有する。このナノ粒子直径は、コーティングの均一な分布をさらに改善すると考えられる。
【0032】
好ましくは、プレコーティングの乾燥重量におけるナノ粒子状酸化物の重量百分率は、80%以下、好ましくは10%以上、より好ましくは10~60%、さらにより好ましくは20~55%である。いくつかの事例では、ナノ粒子の百分率は、高すぎる耐火効果を回避するために制限されなければならない場合があり得る。ナノ粒子の各種類の耐火効果を知っている当業者は、事例ごとに百分率を適合させるであろう。
【0033】
本発明の一変形によれば、プレコーティングが鋼基板上に適用され、乾燥されると、プレコーティングはチタネート及びナノ粒子状酸化物からなる。
【0034】
本発明の別の変形例によれば、プレコーティングは、チタネート及びナノ粒子状酸化物を埋め込み、鋼基板上のプレコーティングの接着を改善する少なくとも1つの結合剤をさらに含む。この改善された接着は、シールドガスが使用される場合に、シールドガスの流れによってプレコーティングの粒子が吹き飛ばされることをさらに防止する。好ましくは、結合剤は、特に溶接中に有機結合剤が発生する可能性があり得る有毒ガスを回避するために、純粋に無機性である。無機結合剤の例は、有機官能性シラン又はシロキサンのゾル-ゲルである。有機官能性シランの例は、特にアミン、ジアミン、アルキル、アミノ-アルキル、アリール、エポキシ、メタクリル、フルオロアルキル、アルコキシ、ビニル、メルカプト及びアリールのファミリーの基で官能化されたシランである。アミノアルキルシランは、接着を大幅に促進し、長い貯蔵寿命を有するので特に好ましい。好ましくは、結合剤は、乾燥したプレコーティングの1~20重量%の量で添加される。
【0035】
本発明の別の変形によれば、プレコーティングは、例えばCeO、NaO、Na、NaBiO、NaF、CaF、氷晶石(NaAlF)などの微粒子状酸化物及び/又は微粒子状フッ化物などの微粒子状化合物をさらに含む。上に列記されたナノ粒子状酸化物のいくつかについて、ナノ粒子から微粒子への移行は、これらの酸化物のいくつかの使用に関連する健康及び安全上の懸念を軽減する。スラグの巻き込みがさらに防止されるように、スラグ形成を改善するために、NaO、Na、NaBiO、NaF、CaF、氷晶石を添加することができる。それらはまた、容易に分離可能なスラグを形成するのに役立つ。プレコーティングは、プレコーティングの乾燥重量で0.1~5重量%のNaO、Na、NaBiO、NaF、CaF、氷晶石又はそれらの混合物を含むことができる。
【0036】
好ましくは、プレコーティングの厚さは、10~140μmの間、より好ましくは30~100μmの間である。
【0037】
プレコーティングは、鋼基板の1つのはす縁を少なくとも部分的に覆う。鋼基板は、レーザ・アークハイブリッド溶接に適合する任意の形状を有することができる。本発明において、鋼基板は、鋼基板がレーザ・アークハイブリッド溶接に適合するように少なくとも8mmの厚さによって、及び別の金属基板に少なくとも部分的に溶接されるべきはす縁によって単純に定義される。ベベルは、サンプルの厚さに応じて、単一のY又は二重のYの形状を有することができる。ベベル角度は、好ましくは1~10°に含まれる。より低い角度は、縁部の融合不良を促進し得、より高い角度は、材料を充填するためにより多くの溶接パスを必要とする。ベベルが二重のYの形状を有する場合、ベベル角度は各Yの角度を指す。
【0038】
好ましくは、はす縁は、粗さRzが4μmよりも高く、より好ましくは4~16μmに含まれるようにギザギザが付けられる。このような粗さは、はす縁上のプレコーティングの接着性を改善する。
【0039】
好ましくは、鋼基板は炭素鋼である。
【0040】
鋼基板は、任意に、その面の1つの少なくとも一部を防食コーティングによって被覆することができる。好ましくは、防食コーティングは、亜鉛、アルミニウム、銅、ケイ素、鉄、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロム、マンガン及びそれらの合金からなる群から選択される金属を含む。
【0041】
好ましい実施形態において、防食コーティングは、15重量%未満のSi、5.0重量%未満のFe、任意に0.1~8.0重量%のMg及び任意に0.1~30.0重量%のZnを含み、残りはAl及び製造プロセスから生じる避けられない不純物であるアルミニウム系コーティングである。別の好ましい実施形態において、防食コーティングは、0.01~8.0重量%のAl、任意に0.2~8.0重量%のMg、残りはZn及び製造プロセスから生じる避けられない不純物である亜鉛系コーティングである。
【0042】
防食コーティングは、好ましくは鋼基板の両面に施される。
【0043】
プロセスに関して、鋼基板が提供されると、プレコーティングを形成するために、プレコーティング溶液が基板はす縁上に少なくとも部分的に適用される。
【0044】
プレコーティング溶液は、プレコーティングについて上述したように、チタネート及びナノ粒子状酸化物を含む。特に、プレコーティング溶液は100~500g/L、より好ましくは175~250g.L-1のチタネートを含む。特に、プレコーティング溶液は1~200g.L-1、より好ましくは5~80g.L-1のナノ粒子状酸化物を含む。チタネート及びナノ粒子状酸化物中のこれらの濃度のおかげで、対応するプレコーティングの助けを借りて得られる溶接の品質がさらに改善される。
【0045】
有利には、プレコーティング溶液は溶剤をさらに含む。これは、十分に分散されたプレコーティングを可能にする。好ましくは、溶剤は周囲温度で揮発性である。例えば、溶剤は、水、アセトン、メタノール、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテルなどの揮発性有機溶剤及びエチレングリコールなどの不揮発性有機溶剤の中から選択される。
【0046】
本発明の一変形によれば、プレコーティング溶液は、チタネート及びナノ粒子状酸化物を埋め込みために、並びに鋼基板上のプレコーティングの接着性を改善するために、結合剤前駆体をさらに含む。好ましくは、結合剤前駆体は、少なくとも1つの有機官能性シランのゾルである。有機官能性シランの例は、特にアミン、ジアミン、アルキル、アミノ-アルキル、アリール、エポキシ、メタクリル、フルオロアルキル、アルコキシ、ビニル、メルカプト及びアリールのファミリーの基で官能化されたシランである。好ましくは、結合剤前駆体は、プレコーティング溶液の40~400g.L-1の量で添加される。
【0047】
プレコーティング溶液は、最初にチタネートとナノ粒子状酸化物とを混合することによって得ることができる。これは、アセトンなどの溶剤を用いた湿潤条件又は乾燥条件、例えば3D粉末シェーカーミキサー中のいずれかで行うことができる。混合は、チタネート粒子上のナノ粒子の強凝集を促進し、これは、健康及び安全上の問題である空気中へのナノ粒子の意図しない放出を防止する。
【0048】
プレコーティング溶液の堆積は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング又はブラシコーティングによって特に行うことができる。
【0049】
好ましくは、プレコーティング溶液は局所的にのみ堆積される。特に、プレコーティング溶液は、鋼基板がそこで溶接されるはす縁の領域に適用される。
【0050】
プレコーティング溶液が鋼基板上に適用されたら、任意にプレコーティング溶液は乾燥させることができる。乾燥は、空気又は不活性ガスを周囲温度又は高温で吹き付けることによって行うことができる。プレコーティングが結合剤を含む場合、乾燥工程は、好ましくは、その間に結合剤が硬化される硬化工程でもある。硬化は、赤外線(IR)、近赤外線(NIR)、従来のオーブンによって行うことができる。
【0051】
好ましくは、有機溶剤が周囲温度で揮発性である場合には、乾燥工程は行われない。その場合には、有機溶剤が蒸発し、金属基板上に乾燥したプレコーティングがもたらされる。
【0052】
プレコーティングが鋼基板のはす縁の一部に形成されると、この部分は、レーザ・アークハイブリッド溶接によって別の金属基板に溶接することができる。
【0053】
レーザ・アークハイブリッド溶接のアークは、サブマージアーク、ガスメタルアーク、ガスタングステンアーク及びプラズマアークの中から選択することができる。これらのアークはすべて、本発明から利益を得ることができる。
【0054】
平均電流は、好ましくは40~1000Aである。電圧は、好ましくは1~40Vである。
【0055】
レーザ・アークハイブリッド溶接のレーザは、Nd:YAG、Nd:ガラス、ルビー、Nd:YLF、Yb:YAG、Yb:ファイバ、Ti:サファイアなどの固体レーザから選択することができる。好ましくは、レーザ・アークハイブリッド溶接のレーザは、その最も一般的な発光波長が1064nmであるNd:YAGレーザ又はYb:YAGレーザ(1030nmで)である。
【0056】
プレコーティングは異なるアーク及び異なるレーザに対して類似の効果を有するので、アークとレーザの任意の組み合わせが本発明から利益を得ることができる。
【0057】
溶接は、アーク先行の構成で操作される。これは、アークがレーザビームの前方にあることを意味する。アークは、まず鋼基板に当たり、鋼基板を溶融して溶融プールを形成する。次いで、レーザが溶融プールに衝突する。
【0058】
他の金属基板は、プレコーティングされた鋼基板と同じ組成又は異なる組成の鋼基板であり得る。他の金属基板は、例えばアルミニウムなどの別の金属で作ることもできる。より好ましくは、他の金属基板は、本発明によるプレコーティングされた鋼基板である。他の金属基板は、鋼基板のプレコーティングされたはす縁に沿って配置される。次いで、2つの基板はレーザ・アークハイブリッド溶接によって溶接される。
【0059】
溶接技術に応じて、ワイヤ(SAW、GMAW)の形態の消耗電極が存在することができ、又は電極が消耗可能でなければ、継手を充填する材料をワイヤ(GTAW、プラズマ)の形態で側方から供給することができる。両方の場合において、ワイヤは、例えば、Fe、Si、C、Mn、Mo及び/又はNiで作られる。
【0060】
溶接技術に応じて、はす縁は、遮蔽フラックスによって少なくとも局所的に覆われ得る。遮蔽フラックスは、溶接されたゾーンを溶接中の酸化から保護する。
【0061】
本発明による方法を用いると、少なくとも、鋼基板の形態の第1の金属基板及び第2の金属基板の溶接継手を得ることが可能であり、第1及び第2の金属基板は、レーザ・アークハイブリッド溶接によって少なくとも部分的に一緒に溶接され、溶接されたゾーンは、チタネートとナノ粒子状酸化物とを含む溶解した及び/又は析出したプレコーティングを含む。
【0062】
チタネートは、チタン酸アルカリ金属塩、チタン酸アルカリ土類金属塩、チタン酸遷移金属塩、チタン酸金属塩及びそれらの混合物からなるチタネートの群から選択される。チタネートは、より好ましくは、NaTi、NaTiO、KTiO、KTi、MgTiO、SrTiO、BaTiO、CaTiO、FeTiO及びZnTiO並びにそれらの混合物の中から選択される。
【0063】
ナノ粒子状酸化物は、TiO、SiO、ZrO、Y、Al、MoO、CrO、CeO、La及びそれらの混合物から選択される。
【0064】
「溶解及び/又は析出したプレコーティング」とは、逆マランゴニ流のためにプレコーティングの成分が溶融プールの液体-気体界面の中心に向かって引き込まれることができ、溶融金属内にさえ引き込まれることができることを意味する。いくつかの成分は溶融プール中に溶解し、溶接部における対応する元素の濃縮をもたらす。その他の成分は析出し、溶接部において析出物を形成する複合酸化物の一部である。
【0065】
特に、鋼基板のAl量が50ppmを超える場合、溶接されたゾーンは、添加されたナノ粒子の性質に応じて、特にAl-Ti酸化物又はSi-Al-Ti酸化物又は他の酸化物を含む介在物を含む。混合元素のこれらの析出物は5μmより小さい。その結果、混合元素のこれらの析出物は溶接されたゾーンの靭性を損なわない。介在物は、電子プローブマイクロ分析(EPMA)によって観察することができる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、ナノ粒子状酸化物は、溶接されたゾーンの靭性が損なわれないように、限定されたサイズの介在物の形成を促進すると考えられる。
【0066】
最後に、本発明は、石油及びガス並びにオフショア産業、造船、建設及び輸送(鉄道及び自動車)用の部品の製造のための、本発明による溶接継手の使用に関する。
【実施例
【0067】
表1に開示された重量パーセントで化学組成を有する鋼基板を選択した:
【0068】
【表1】
【0069】
鋼基板は25mmの厚さであった。鋼基板は、485~620MPaの引張強度及び260MPaの降伏強度を有していた。
【0070】
[実施例1]
図1に示されるように、100×150mmのサンプル1は、二重Yではす縁を有して調製され、各ベベルは4°の角度αで傾斜し、上方及び下方のベベルは5mmの間隙2によって分離されている。はす縁には、ベベルが5~8μmの粗さRzを有し、5mmの間隙が6~15μmの粗さRzを有するようにギザギザを付けた。溶接すべきはす縁をアセトンで油及び汚れを除去した。
【0071】
サンプル1はプレコーティングでコーティングされなかった。
【0072】
サンプル2については、アセトンを下記元素と混合することによって、MgTiO(直径:2μm)、SiO(直径:10nm)及びTiO(直径:50nm)を含むアセトン溶液を調製した。アセトン溶液において、MgTiOの濃度は175g.L-1であった。SiOの濃度は25g.L-1であった。TiOの濃度は50g.L-1であった。次いで、サンプル2の洗浄された側壁をスプレーによりアセトン溶液でコーティングした。アセトンを蒸発させた。乾燥したプレコーティング中のMgTiOの百分率は70重量%であり、SiOの百分率は10重量%であり、TiOの百分率は20重量%であった。プレコーティングは50μmの厚さであった。
【0073】
0.3mmの間隙によって隔てられた選択した鋼基板の剥き出しのサンプルと並べてサンプル1及び2をそれぞれ配置し、ベベルが充填され、継手が完成するまで溶接パスを実施することにより、予熱なしでアーク先行の構成でのレーザ・アークハイブリッド溶接によって溶接した。レーザは、0.3mmのスポットを有する16kWのYb:YAGレーザであった。アーク装置は、アルゴン/CO80/20シールドガスを用いるガスメタルアーク溶接トーチであった。供給ワイヤは、最大0.06重量%のC、0.8重量%のSi及び1.5重量%のMnを含んでいた。溶接パラメータは、以下の表2に記載されている。
【0074】
【表2】
【0075】
表2から明らかなように、サンプル1は完全に溶接されるために2つの溶接パスを必要としたのに対して、サンプル2は同じ溶接パラメータで1つの溶接パスのみを必要とした。この第1の結果は、本発明によるプレコーティングが、アーク先行の構成でのレーザ・アークハイブリッド溶接の溶込み深さ及び生産性を増加させることを既に示している。
【0076】
溶接後、両方の溶接された集合体の溶接を目視及びX線画像化によって検査し、断面を顕微鏡写真で分析した。
【0077】
以下の表3は、各溶接の顕微鏡写真分析を詳述している。
【0078】
【表3】
【0079】
プレコーティングは、アーク溶込みを10%、レーザ溶込みを50%改善した。
【0080】
X線画像化解析は、サンプル1の溶接部に沿った割れを明らかにし、断面解析は、サンプル1中の割れを明らかにした。これらの結果は、プレコーティングが濡れ性を改善することを示している。
【0081】
引張試験、シャルピーV試験及び硬度特性評価も、鋼基板のはす縁上のプレコーティングが、継手の機械的特性を低下させることなく、アーク先行の構成でのレーザ・アークハイブリッド溶接を改善することを確認した。
【0082】
[実施例2]
サンプル3をサンプル2(プレコーティングあり)のように調製した。
【0083】
次いで、溶接前にサンプルを320℃で予熱して及び予熱せずに、増加した移動速度(25mm/秒、すなわち56%の増加)及び縮小した間隙(0.2mm)で溶接したが、他の条件はすべて実施例1と同じであった。
【0084】
得られた結果は、プレコーティングのおかげで、レーザ・アークハイブリッド溶接の移動速度、ひいては生産性を向上させることが可能であることを確認した。さらに、予熱されたサンプル3を用いて得られた結果を予熱されたサンプル1(実施例1に詳述されている)を用いて得られた結果と比較する表4に示されるように、この生産性の改善は、継手の機械的特性の低下を伴わず、継手のいくつかの機械的特性の改善さえも伴う。
【0085】
【表4】
【0086】
シャルピーV試験は、T=-20℃でISO 9016:2012に従って行った。
【0087】
「母材中の破砕」の欄の「良好」は、引張試験の終了時におけるサンプルの破砕が母材金属上にあったことを意味し、サンプルの破砕は溶接後のサンプルに対して探索される。
【0088】
「硬度」欄の「良好」は、試験されたサンプルの硬度がISO 15614-1:2017規格に準拠していることを意味する。
【0089】
[実施例3]
鋼基板の溶接に対する異なるプレコーティングの効果を、有限要素法(FEM)シミュレーションによって評価した。シミュレーションでは、プレコーティングは、10~50nmの直径を有するナノ粒子状酸化物と、任意にMgTiO(直径:2μm)とを含む。コーティングの厚さは40μmであった。各プレコーティングを用いてアーク溶接をシミュレートし、結果を以下の表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
結果は、本発明によるプレコーティングが、比較例と比較して溶接部の溶込み及び品質を改善することを示している。
【0092】
[実施例4]
サンプル17については、以下の成分を含む水溶液を調製した:363g.L-1のMgTiO(直径:2μm)、77.8g.L-1のSiO(直径範囲:12~23nm)、77.8g.L-1のTiO(直径範囲:36~55nm)及び238g.L-1の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(Evonik(R)によって製造されたDynasylan(R)AMEO)。溶液を鋼基板のはす縁上に適用し、1)IR及び2)NIRによって乾燥させた。乾燥したプレコーティングは40μmの厚さであり、62重量%のMgTiO、13重量%のSiO、13重量%のTiO及び3-アミノプロピルトリエトキシシランから得られた12重量%の結合剤を含有した。
【0093】
サンプル18については、以下の成分を含む水溶液を調製した:330g.L-1のMgTiO(直径:2μm)、70.8g.L-1のSiO(直径範囲:12~23nm)、70.8g.L-1のTiO(直径範囲:36~55nm)、216g.L-1の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(Evonik(R)によって製造されたDynasylan(R)AMEO)及び104.5g.L-1の、有機官能性シランと官能化されたナノスケールのSiO粒子との組成物(Evonikによって製造されたDynasylan(R)Sivo 110)。溶液を鋼基板のはす縁上に適用し、1)IR及び2)NIRによって乾燥させた。乾燥したプレコーティングは40μmの厚さであり、59.5重量%のMgTiO、13.46重量%のSiO、12.8重量%のTiO並びに3-アミノプロピルトリエトキシシラン及び有機官能性シランから得られた14.24重量%の結合剤を含有した。
【0094】
すべての事例で、はす縁上のプレコーティングの接着が大幅に改善された。
【0095】
本発明の良い結果をもたらす効果は、MAGアーク及びYb:YAGレーザを用いたアーク先行の構成におけるレーザ・アークハイブリッド溶接の場合に示された。これらの技術はすべて、アーク及び溶融プールの物理学が修正されるようにプレコーティングとコーティング可能なはす縁を使用するので、それにもかかわらず、本発明の良い結果をもたらす効果は、他のアーク及びレーザに拡張可能である。
図1
【国際調査報告】