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特表2023-547282ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを選択的に合成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(54)【発明の名称】ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを選択的に合成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20231101BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231101BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231101BHJP
【FI】
C07D401/04
A61K31/454
A61P35/00
A61P37/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549792
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 KR2021015129
(87)【国際公開番号】W WO2022092774
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0139372
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523155191
【氏名又は名称】アイヴィス バイオ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AEVIS BIO,INC.
【住所又は居所原語表記】315 ho,125,Gwahak-ro Yuseong-gu Daejeon 34141,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ヨン ジュン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC11
4C063DD07
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086BC21
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
(57)【要約】
ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを選択的に合成する方法に関する。3,6’-ジチオポマリドミドの合成過程で生成される副産物である1,6-ジチオポマリドミドの生成を減少させ、3,6-ジチオポマリドミドの合成割合を90%以上選択的に増加させることにより、以降、精製過程において、1,6-ジチオポマリドミドをHPLCなどで分離するために必要な時間とコストを節減することができ、これにより、3,6’-ジチオポマリドミド化合物の生産性及び経済性を向上させることができるという長所がある。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポマリドミドに溶媒を添加して溶解させる第1ステップと、
前記溶解されたポマリドミドに五硫化リン(Phosphorous pentasulfide、P)を添加して撹拌する第2ステップと、
前記撹拌した溶液から固形物を除去して精製する第3ステップと、を含む
ことを特徴とするポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法。
【請求項2】
前記第1ステップの溶媒は、ジオキサン(Dioxane)、トルエン(Toluene)、及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)から選ばれたいずれか一つの溶媒である
請求項1に記載のポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法。
【請求項3】
前記第1ステップの溶解は、ポマリドミドを溶媒に0.005g/mL乃至0.02g/mLの濃度で溶解させる
請求項1に記載のポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法。
【請求項4】
前記第2ステップの五硫化リンの添加は、ポマリドミドと五硫化リンを1:1乃至1:2.5のモル比で添加する
請求項1に記載のポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法。
【請求項5】
前記第2ステップの撹拌は、105℃乃至115℃で、20分乃至120分間行われる
請求項1に記載のポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを選択的に合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポマリドミド(pomalidomide;C1311)は、多発性骨髄腫治療剤であるサリドマイド(thalidomide)系列の薬剤であって、再発または難治性の多発性骨髄腫に用いられ、多くの種類の癌治療剤としても研究中の薬物である。ポマリドミドは、免疫体系を調整して癌細胞を殺す免疫調節剤の一種であり、癌成長に必要な血管形成を抑制する抗血管形成抑制剤の一種である。
【0003】
本発明者は、ポマリドミドを母胎にした多様な化合物を製造して、その薬理学的活性についての研究を行う過程で、3,6’-ジチオポマリドミドが広範囲な癌疾患の治療に適用が可能であり、ポマリドミドと比較して、副作用はさらに少ないのに対して、効果はさらに優れたことが確認され、3,6’-ジチオポマリドミドの優れた抗癌効果についての研究を続けている。
【0004】
一方、この研究陣は、ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを製造する過程で、従来、通常的にローソン試薬(Lawesson’s reagent)(IUPAC名称:2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジチオン)を用いているが、ローソン試薬は、1968年、有機化学において変換に導入されてから、アミド及びケトンのような無数に多くの反応物と一緒に用いられ、チオ化反応を行うのに活用されている。
【0005】
しかしながら、チオ化剤としてのローソン試薬は、多くの問題点を有している。例えば、ローソン試薬の熱的安定性はあまり良くなく、110℃以上で分解される。また、ローソン試薬は、一般に溶解度が低く、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)を溶媒として使用することがたびたびある。HMPAは、ヒトへの発癌性が疑われ、その使用が多くの国で禁止されている。ローソン試薬が有する付加的な問題点は、化合物そのものの強くて不快な匂いと、所望の反応産物から分離し難い酷い匂いの副産物が反応過程で形成される傾向がある。
【0006】
また、ローソン試薬を用いてポマリドミドからジチオポマリドミドを製造する場合、収率が低く、多くの副産物と異性体である1,6-ジチオポマリドミドが主要産物として存在するので、これを精製する過程が複雑になるという短所が存在する。特に、この過程で、3,6’-ジチオポマリドミドと一緒に、多くは90%程度の1,6’-ジチオポマリドミドが生成され、高純度で3,6’-ジチオポマリドミドを合成し難く、1,6’-ジチオポマリドミドを分離するために多くの時間とコストがかかるという短所があった。
【0007】
したがって、従来に使われるローソン試薬を用いて、ポマリドミドからチオ化反応を進行する合成方法は、1,6’-ジチオポマリドミドの高い割合の生成による非効率的な工程であって、商業的用途で使用できないほど低い収率と、受け容れられないほど高い製造コストを招くという問題点がある。よって、当業界において、ポマリドミドから高純度の3,6’-ジチオポマリドミドを選択的に合成する方法を新たに開発しなければならない必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここに、本発明の主な目的は、商業的用途で使用できるほど高い収率と低い製造コストを有するポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを選択的に合成する方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、3,6’-ジチオポマリドミドの生成収率を高めて、1,6-ジチオポマリドミドを分離するために多くの時間及びコストがかかるという短所を解決することができる、ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的及び利点は、後述する発明の詳細な説明、請求の範囲、及び図面によってさらに明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一様態によれば、本発明は、ポマリドミドに溶媒を添加して溶解させる第1ステップと、前記溶解されたポマリドミドに五硫化リン(Phosphorous pentasulfide、P)を添加して撹拌する第2ステップと、前記撹拌した溶液から固形物を除去して精製する第3ステップと、を含むポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法を提供する。
【0012】
本発明による3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法において、前記第1ステップの溶媒は、ジオキサン(Dioxane)、トルエン(Toluene)、及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)から選ばれたいずれか一つの溶媒を使用してもよい。
【0013】
本発明による3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法において、前記第1ステップの溶解は、ポマリドミドを溶媒に0.005g/mL乃至0.02g/mLの濃度で溶解させてもよい。
【0014】
本発明による3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法において、前記第2ステップの五硫化リンの添加は、ポマリドミドと五硫化リンを1:1乃至1:2.5のモル比で添加してもよい。
【0015】
本発明による3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法において、前記第2ステップの撹拌は、105℃乃至115℃で、20分乃至120分間行われてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明は、商業的用途で使用できるほど高い収率と低い製造コストを有する3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法を提供することができる。
【0017】
本発明の方法によれば、3,6’-ジチオポマリドミドの合成過程で生成される副産物である1,6-ジチオポマリドミドの生成を減少させ、3,6-ジチオポマリドミドの合成割合を90%以上選択的に増加させることにより、以降、精製過程において、1,6-ジチオポマリドミドをHPLCなどで分離するために必要な時間とコストを節減することができ、これにより、3,6’-ジチオポマリドミド化合物の生産性及び経済性を向上させることができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する過程で進行される化学反応を説明する模式図である。
図2】3-ニトロフタル酸無水物(3-nitrophthalic anhydride)及び(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)アミントリフルオロ酢酸((2,6-dioxopiperidine-3-yl)amine trifluoroacetate)からポマリドミドを合成する過程を説明する模式図である。
図3】本発明のポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法によって生成された反応物の成分をHPLC分析で分析したグラフである。
図4】従来、ローソン試薬を用いて、ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法によって生成された反応物の成分をHPLC分析で分析したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一様態によれば、本発明は、ポマリドミドに溶媒を添加して溶解させる第1ステップと、前記溶解されたポマリドミドに五硫化リン(Phosphorous pentasulfide、P)を添加して撹拌する第2ステップと、前記撹拌した溶液から固形物を除去して精製する第3ステップと、を含むポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法を提供する。
【0020】
本発明の方法によって合成される3,6’-ジチオポマリドミド[3,6’-ジチオポマリドミド;4-アミノ-2-(2-オキソ-6-スルファニリデンピペリジン-3-イル)-3-スルファニリデン-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン]は、下記式1の化学式を有する化合物であって、下記式2のポマリドミドから合成されてもよく、この過程で、異性体である下記式3の1,6’-ジチオポマリドミド(1,6’-ジチオポマリドミド;7-アミノ-2-(2-オキソ-6-スルファニリデンピペリジン-3-イル)-3-スルファニリデン-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン)が副産物として一緒に合成される。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
本発明者らは、ローソン試薬を用いて、ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法を試みた。しかしながら、ローソン試薬を用いて、3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法は、収率が低く、多くの副産物と1,6’-ジチオポマリドミド異性体が主要化合物として合成されるので、少量で合成される3,6’-ジチオポマリドミドのみを別途に分離及び精製し難いという短所があった。これは、PREP-HPLCなどの分離装置を用いて、1,6’-ジチオポマリドミドが主要合成化合物である場合には、1,6’-ジチオポマリドミドと3,6’-ジチオポマリドミドが同時に溶出される区間の不純物が含まれた3,6’-ジチオポマリドミドを使用することができず、収率がさらに減少するからである。
【0025】
また、ローソン試薬を用いたポマリドミドのチオ化反応において直面する主な問題は、ローソン試薬が一般に最も接近しやすい位置で反応するということである。すなわち、3,6’-ジチオポマリドミドで合成される2つのチオ化の反応位置のうち、6’位のカルボニル基は、チオ化反応が起こりやすい。これとは異なり、フタルイミド-イミドカルボニル基(phthalimide-imide carbonyl)に位置するアニリンアミン(aniline amine)に近接した残りの一つである3’位のカルボニル基は、立体的妨害(steric encumbrance)があり、チオ化剤の接近が難しいことから、相対的に1’位のカルボニル基に対するチオ化反応が優先的に進行され、これにより、ローソン試薬を用いてチオ化反応を進行させる場合には、3,6’-ジチオポマリドミドに比べて、1,6’-ジチオポマリドミドの合成が顕著に増加(少なくとも90%以上)してしまう。
【0026】
これを解決するために、本発明者らは、ポマリドミドの3’位のカルボニル基に対する優先的なチオ化反応が起こるようにする多様なチオ化反応を研究し、この過程で、ポマリドミドにチオ化剤として五硫化リン(Phosphorous pentasulfide、P)を適用する場合、3’位のカルボニル基に対する立体的妨害(steric encumbrance)を克服し、チオ化反応を3’位で優先的に進行させることができることを見い出し、これにより、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドの2種の異性体のうち、3,6’-ジチオポマリドミドを選択的に生成させることができることが分かった。
【0027】
図1を参照すると、本発明のポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドを合成する方法は、溶媒に溶解されたポマリドミドに五硫化リン(Phosphorous pentasulfide、P)を滴下し、撹拌して、3,6’-ジチオポマリドミドを合成し、この過程で、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドの2種の異性体のうち、3,6’-ジチオポマリドミドの生成割合は90%以上である。
【0028】
一方、本発明で用いられるポマリドミドは、商業的に販売される化合物を使用してもよいが、直接合成する方法で生産されるポマリドミドを使用してもよい。直接合成する場合、酢酸(60.0mL)を溶媒として、3-ニトロフタル酸無水物(3-nitrophthalic anhydride)(1.5g、7.8mmol)及び(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)アミントリフルオロ酢酸((2,6-dioxopiperidine-3-yl)amine trifluoroacetate)(1.9g、7.8mmol)を、窒素雰囲気で、4.5時間の間撹拌して反応させ、2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-ニトロフタルイミド化合物を生成させた後、メタノール(80.0mL)を溶媒として、2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-ニトロフタルイミド(66.0mg、0.2mmol)と活性炭(activated carbon)上のパラジウム(palladium)(10wt%、45.0mg)を、水素雰囲気(44lbs)下の常温で、7時間の間反応して、直接合成して使用してもよい(図2参照)。
【0029】
前記第1ステップにおいて、チオ化剤である五硫化リン、及びチオ化される化合物であるポマリドミドは、チオ化剤用の液体溶媒媒質で反応してもよい。すなわち、前記チオ化剤である五硫化リンとチオ化される化合物であるポマリドミドは、液体溶媒媒質で溶解されて使用されてもよく、前記溶媒は、ジオキサン(Dioxane)、トルエン(Toluene)、及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)から選ばれたいずれか一つの溶媒を使用してもよい。本発明の好適な実施例では、ジオキサン(Dioxane)を溶媒として用いてチオ化反応を行った。ジオキサン(Dioxane)、トルエン(Toluene)、及びテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などの溶媒を用いて反応を行った後、五硫化リンの分解で生成された残余の塩は、反応温度を室温に下げた後、フィルターを使ってチオ化された化合物から容易に分離することができる。反応産物をさらに精製することは、例えば、再結晶化によって選択的に行われてもよい。
【0030】
本発明の3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法において、前記第1ステップの溶解は、ポマリドミドを溶媒に0.005g/mL乃至0.02g/mLの濃度で溶解させてもよい。チオ化剤である五硫化リン、及びチオ化される化合物であるポマリドミドは、チオ化剤用の液体溶媒媒質で反応が行われるが、溶媒媒質で十分に溶解されるように、ポマリドミドの濃度を調節することが好ましい。本発明の好適な実施例では、ポマリドミド1g(3.66mmol)に溶媒のジオキサン(dioxane)100mLを用いて十分に溶解させた後、チオ化剤である五硫化リンを添加して反応を進行させ、前記濃度で溶媒を使用する場合、3,6’-ジチオポマリドミドへの転換が90%以上で行われることが確認された。
【0031】
また、本発明の3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法において、前記第2ステップの五硫化リンの添加は、ポマリドミドと五硫化リンを1:1乃至1:2.5のモル比で添加してもよい。チオ化剤である五硫化リンとチオ化される化合物であるポマリドミドの添加割合は、反応産物の収率に影響を及ぼすが、ポマリドミドから3,6’-ジチオポマリドミドにチオ化されるカルボニル基の数が2つであるので、ポマリドミドと五硫化リンを1:2の割合で添加して反応を進行させることが理想的である。しかしながら、反応過程で、多くの副産物が一部生成されることを考慮して、チオ化される化合物であるポマリドミドのモル量を超過するチオ化剤を添加することが好ましい。したがって、1:1乃至1:2.5のモル比でポマリドミドと五硫化リンを添加することが好ましく、ポマリドミドと五硫化リンを1:1未満の割合で添加する場合、チオ化剤である五硫化リンの添加量が十分ではなく、チオ化反応が十分に行われず、ポマリドミドと五硫化リンを1:2.5超過の割合で添加する場合、添加された五硫化リンがチオ化反応を過度に起こして、副産物の生成量が増加するようになり、結果的に3,6’-ジチオポマリドミド化合物の収率が低くなるようになる。
【0032】
また、本発明の3,6’-ジチオポマリドミドの合成方法において、前記ポマリドミドに五硫化リンを添加して撹拌する第2ステップは、105℃乃至115℃で、20分乃至120分間行われてもよい。前記撹拌ステップにおいて、反応温度が105℃未満である場合には、反応が起こるために必要かつ十分な熱エネルギーが供給されず、3,6’-ジチオポマリドミド化合物の収率が低くなるという短所があり、反応温度が115℃超過である場合には、副産物の生成量が増加するようになり、結果的に3,6’-ジチオポマリドミド化合物の収率が低くなるようになる。また、反応時間が20分未満である場合には、十分なチオ化反応が起こらず、3,6’-ジチオポマリドミド化合物の収率が低くなるという短所があり、120分を超過して反応が行われる場合も、もう十分な反応が進行されて、経済的ではないという短所がある。
【0033】
以下、実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであるので、本発明の範囲が、これらの実施例に制限されない。
【0034】
[実験材料及び分析方法]
実験に使用された材料は、下記表1の材料を使用した。
【0035】
【表1】
【0036】
NMRスペクトルは、室温で、Bruker BioSpin 400MHz(AVANCE III 400)に記録された。分析サンプルは、DMSO-dに溶解させ、NMRチューブ(5-mm o.d.、Wilmad、WG-1000-7)を使用して分析した。また、質量分析は、ESI(+)イオン化モードをオペレートするWaters SQ Detector 2装備を用いて測定された。
【0037】
HPLC分析は、Agilent 1100シリーズ装備を用いて行われた。
【0038】
実施例1.ポマリドミド:五硫化リン=1:2(mol);20分反応
ポマリドミド(1g、3.66mmol)にジオキサン(100mL、100v/g)を入れて溶解させた後、五硫化リン(P)(1.63g、7.32mmol)を滴下し、110℃で、20分間撹拌した。直ちに反応温度を室温に下げた後、フィルターを用いて固体を除去し、溶媒を減圧濃縮して反応物を得た。
【0039】
前記反応物0.5mg/mLを試料として使用して、HPLC及びNMR分析を行った結果、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドを合わせた化合物の生成収率は41%と測定され、これらの割合は、98:2の割合で測定された(図3参照)。
【0040】
H-NMR(DMSO-d6)d12.61(s,1H,NH),7.63(s,br,2H,NH),7.47(t,J=7.6Hz,1H,C-H),7.16(d,J=8.6Hz,1H,C-H),7.01(s,br,1H,C-H),5.76(s,br,1H,C3’-H),3.20-2.80(m,3H)、及び2.05-1.99(m,1H)ppm;13C NMR(DMSO-d6)d210.7, 194.4, 170.0, 167.5, 148.5, 135.3, 128.1, 124.2, 114.6, 112.2, 50.5, 41.5,及び24.0ppm;GCMS(CI/CH)、m/z 305(M+)
【0041】
また、前記反応条件で、同じ反応を行って得た反応物の全体を、シリカゲルを利用した管クロマトグラフィ(CHCl:アセトン=100:5)で精製した。この過程で、1,6’-ジチオポマリドミドの検出領域と重なる3,6’-ジチオポマリドミドの検出領域を排除し、純粋な3,6’-ジチオポマリドミドの検出領域のみを回収して、純度100%の3,6’-ジチオポマリドミドを精製した。分離された3,6’-ジチオポマリドミドをDCM(20v/g)で固体化して、濃いオレンジ色の固体の3,6’-ジチオポマリドミド(325mg、T0027-05)を収率29.1%で得た。
【0042】
実施例2.ポマリドミド:五硫化リン=1:2(mol);60分反応
ポマリドミド(1g、3.66mmol)にジオキサン(100mL、100v/g)を入れて溶解させた後、五硫化リン(P)(1.63g、7.32mmol)を滴下し、110℃で60分間撹拌した。直ちに反応温度を室温に下げた後、フィルターを用いて固体を除去し、溶媒を減圧濃縮して反応物を得た。
【0043】
前記反応物の0.5mg/mLを試料として使用して、HPLC分析を行った結果、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドを合わせた化合物の生成収率は、19%と測定され、これらの割合は、99:1の割合で測定された。
【0044】
実施例3.ポマリドミド:五硫化リン=1:2(mol);960分反応
ポマリドミド(1g、3.66mmol)にジオキサン(100mL、100v/g)を入れて溶解させた後、五硫化リン(P)(1.63g、7.32mmol)を滴下し、110℃で960分間撹拌した。直ちに反応温度を室温に下げた後、フィルターを用いて固体を除去し、溶媒を減圧濃縮して反応物を得た。
【0045】
前記反応物0.5mg/mLを試料として使用して、HPLC分析を行った結果、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドを合わせた化合物の生成収率は、10%と測定され、これらの割合は、99:1の割合で測定された。
【0046】
実施例4.ポマリドミド:五硫化リン=1:1(mol);30分反応
ポマリドミド(1g、3.66mmol)にジオキサン(100mL、100v/g)を入れて溶解させた後、五硫化リン(P)(0.815g、3.66mmol)を滴下し、110℃で30分間撹拌した。直ちに反応温度を室温に下げた後、フィルターを用いて固体を除去し、溶媒を減圧濃縮して反応物を得た。
【0047】
前記反応物0.5mg/mLを試料として使用して、HPLC分析を行った結果、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドを合わせた化合物の生成収率は、18%と測定され、これらの割合は、91:9の割合で測定された。
【0048】
実施例5.ポマリドミド:五硫化リン=1:1(mol);60分反応
ポマリドミド(1g、3.66mmol)にジオキサン(100mL、100v/g)を入れて溶解させた後、五硫化リン(P)(0.815g、3.66mmol)を滴下し、110℃で60分間撹拌した。直ちに反応温度を室温に下げた後、フィルターを用いて固体を除去し、溶媒を減圧濃縮して反応物を得た。
【0049】
前記反応物0.5mg/mLを試料として使用して、HPLC分析を行った結果、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドを合わせた化合物の生成収率は、28%と測定され、これらの割合は、93:7の割合で測定された。
【0050】
実施例6.ポマリドミド:五硫化リン=1:1(mol);120分反応
ポマリドミド(1g、3.66mmol)にジオキサン(100mL、100v/g)を入れて溶解させた後、五硫化リン(P)(0.815g、3.66mmol)を滴下し、110℃で120分間撹拌した。直ちに反応温度を室温に下げた後、フィルターを用いて固体を除去し、溶媒を減圧濃縮して反応物を得た。
【0051】
前記反応物0.5mg/mLを試料として使用して、HPLC分析を行った結果、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドを合わせた化合物の生成収率は、38%と測定され、これらの割合は、94:6の割合で測定された。
【0052】
比較例.ローソン試薬を用いた3,6’-ジチオポマリドミドの合成
従来の方式のローソン試薬を用いた合成法を適用して、3,6’-ジチオポマリドミドを合成した。
【0053】
ポマリドミド(100mg、0.366mmol)及び無水トルエン(75mL)に溶かしたローソン(Lawesson)試薬(81.3mg、0.201mmol)を6時間の間、窒素雰囲気下で還流した。以降、さらにローソン試薬(162.6mg、0.402mmol)を添加し、反応混合物を追加して16時間の間還流させた。
【0054】
前記反応物0.5mg/mLを試料として使用して、HPLC分析を行った結果、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドを合わせた化合物の生成収率は、16.1%と測定され、これらの割合は、10:90の割合で測定された(図4参照)。
【0055】
前記実施例及び比較例の実験結果を、下記の表2にまとめた。
【0056】
【表2】
【0057】
上記の表2を参照すると、ローソン試薬を使用せず、ポマリドミドと五硫化リンを混合して反応させたとき、3,6’-ジチオポマリドミドと1,6’-ジチオポマリドミドの生成割合が、3,6’-ジチオポマリドミドが90%以上の割合で優勢に形成され、これにより、追っての精製過程において最終に得られる3,6’-ジチオポマリドミドの量を画期的に高めることが確認された。
【0058】
上述した詳細な説明と例示的な実施例をさらに参照して、当該技術の分野における当業者は、例えば、チオ化されるポマリドミドに存在する4つのカルボニル基のうち、3,6’-位に選択的にチオ化反応を進行するために、一般の実験を用いて、請求項の全範囲において本発明を行うことができる。例えば、反応は、正常な周辺圧力またはアルゴンや窒素のような不活性雰囲気で行われてもよい。最適化されるか変化可能な他のパラメーターは、例えば、溶媒媒質、反応温度、及び反応時間であり、全てのこれらの変形及び変化は、本発明の範囲に存在する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】