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特表2023-547302ガソリンエンジン排気ガス処理のための改善されたTWC触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ガソリンエンジン排気ガス処理のための改善されたTWC触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20231102BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20231102BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231102BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231102BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/04 301Z
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503497
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 GB2021052699
(87)【国際公開番号】W WO2022090688
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/107,479
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ミリントン、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヴラコウ、マリア
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AB03
3G091AB08
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4G169FB14
4G169FB15
4G169FB19
4G169FB30
4G169FC08
(57)【要約】
三元触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が開示される。排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1のPGM担体材料上に担持された第1の白金族金属(PGM)成分を含む、第1の触媒領域と、を含み、第1のPGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒物品。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PGM担体材料上に担持された白金族金属(PGM)成分を含む、触媒組成物であって、前記PGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒組成物。
【請求項2】
前記PGM担体材料が、酸素吸蔵能(OSC)材料、ZrO、又は希土類金属ドープZrOである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記OSC材料が、セリウム酸化物、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記セリア-ジルコニア混合酸化物が、少なくとも35重量%のCeOを含む、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
無機酸化物を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
Rh及びPtが、前記無機酸化物上に担持されていない、請求項5又は6に記載の触媒組成物。
【請求項8】
パラジウム(Pd)を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
Pdが、前記無機酸化物上に担持されている、請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
Pdが、前記PGM担体材料上に担持されていない、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、
第1のPGM担体材料上に担持された第1の白金族金属(PGM)成分を含む、第1の触媒領域と、を含み、
前記第1のPGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、
Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒物品。
【請求項12】
前記第1のPGM担体材料が、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、ZrO、又は希土類金属ドープZrOである、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第1のOSC材料が、セリウム酸化物、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第1の触媒領域が、第1の無機酸化物を更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記第1の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項14に記載の触媒物品。
【請求項16】
Rh及びPtが、前記第1の無機酸化物上に担持されていない、請求項14又は15に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記第1の触媒領域が、パラジウム(Pd)を更に含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項18】
Pdが、前記第1の無機酸化物上に担持されている、請求項16に記載の触媒物品。
【請求項19】
Pdが、前記第1のPGM担体材料上に担持されていない、請求項18に記載の触媒物品。
【請求項20】
第2の触媒領域を更に含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項21】
前記第2の触媒領域が、第2のPGM成分を含む、請求項20に記載の触媒物品。
【請求項22】
前記第2のPGM成分が、Pdを含む、請求項21に記載の触媒物品。
【請求項23】
前記第1の触媒領域が、実質的にPdを含まない、請求項20~22のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項24】
前記第2の触媒領域が、第2のOSC材料、第2の無機酸化物、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項11~24のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項26】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項20~24のいずれか一項に記載の触媒物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するのに有用な触媒物品に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(hydrocarbon、HC)、一酸化炭素(carbon monoxide、CO)、及び窒素酸化物(nitrogen oxide、「NO」)を含む様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒転化用触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジンの排気処理に通常使用される触媒は、TWC(three way catalyst)(三元触媒)である。TWCにより、次の3つの主な役割、すなわち、(1)COの酸化、(2)未燃HCの酸化、及び(3)NOの還元を行う。
【0003】
パラジウム(Palladium、Pd)及びロジウム(rhodium、Rh)は、ガソリン車両における有害な排出物を低減するために、TWC配合物において広く使用されている。Rhは、金属状態にある場合、TWC反応に対して最も活性であり、触媒動作中のRh失活を制限することは、良好な活性を維持するのに不可欠である。Rhは、ガソリンエンジンの希薄状態の間、燃料カット事象の間、及びエンジンが停止された場合(及び触媒が空気中で冷却された場合)に、特に(大抵は可逆的な)失活を受けやすい。これらの事象からの触媒の回復中に、著しい反応物スリップが起こり得る。
【0004】
加えて、近年、市場における需要の高まりに起因して、貴金属価格(例えば、Pd及びRh)が上昇して更により貴重になっている。TWCが手頃な価格でありながら、将来の排出規制を満たすように装備されることを確実にするためには、Rh充填量の低減及びRh性能の改善が必要である。一方、世界的にますます厳しくなる環境規制によって、自動車産業は、更により多くの貴金属を触媒コンバータに入れることを余儀なくされている。
【0005】
差し当たって、白金(platinum、Pt)が、その比較的安価な価格に起因して、ガソリン用途でのより魅力的な候補になっている。過去12ヶ月の間(http://www.platinum.matthey.comによれば2020年9月から)、Pt及びRhの平均価格は、それぞれ約$888及び$8468ドル/Ozであった。したがって、同等な触媒性能を維持することが望まれながら、Rhを少なくとも部分的に置き換えるために、どのようにPtを触媒配合物に導入するかについて、巨大な経済的な刺激策が存在する。
【0006】
本発明では、集中的な研究を通じて、本発明者らは、費用効果の高い新規の触媒設計の開発及び試験に成功しただけでなく、驚くべきことに、有益なRh-Pt相互作用が、希薄事象中のRhの失活を制限し、点火性能及び過渡性能を改善することを実証した。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、PGM担体材料上に担持された白金族金属(platinum group metal、PGM)成分を含む、触媒組成物であって、PGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒組成物を対象とする。
【0008】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1のPGM担体材料上に担持された第1の白金族金属(PGM)成分を含む、第1の触媒領域と、を含み、第1のPGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒物品を対象とする。
【0009】
本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【0010】
本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】基材の軸方向長さLに対して100%の長さを有する第1の触媒領域(単一層)を含む、本発明による一実施形態を示す。
図2A】第1の触媒領域が、底部層として、軸方向長さLの100%に延在し、第2の触媒領域が、上部層として、軸方向長さLの100%に延在する、本発明による一実施形態を示す。
図2B図2aの変形例を図示する。
図3A】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL以下である。
図3B図3aの変形例を図示する。
図3C】第1の触媒領域が、入口端部から軸方向長さLの100%未満に延在し、第2の触媒領域が、出口端部から軸方向長さLの100%未満に延在する、本発明による一実施形態を示す。第2及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLよりも大きい。
図3D図3cの変形例を図示する。
図4】触媒1~8のSCAT点火結果を示す。
図5】比較触媒1及び触媒8のSCAT DFSO実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ガソリンエンジン及び他のエンジンによって生成されるものなどの燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒組成物、触媒物品、及びシステムを対象とする。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNO、CO、及びHCの同時処理に関する。より具体的には、本発明は、従来のPd/Rh TWC触媒と比較して最適化されたPt及びRh比、範囲、及び位置制御を通じた新規のTWC設計、並びに車両排気システムにおけるNO、CO、及びHCの同時処理における、費用効率の高いアプローチに関する。
【0013】
本開示の一態様は、PGM担体材料上に担持された白金族金属(PGM)成分を含む、触媒組成物であって、PGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒組成物を対象とする。
【0014】
集中的な研究を通して、本発明者らは、Rh及びPtの両方をPGM担体材料に組み込むことによって、これらの新規の組成物が、優れた触媒特性を実証することを見出した。
【0015】
いくつかの実施形態では、Pt及びRhは、少なくとも1:8、1:6、又は1:5の重量比を有し得る。代替的に、他の実施形態では、Pt及びRhは、10:1~1:10、8:1~1:8、6:1~1:6、又は5:1~1:5の重量比を有し得る。ある特定の実施形態では、Pt及びRhは、8:1~1:10、6:1~1:10、5:1~1:10、又は1:1~1:10の重量比を有し得る。
【0016】
PGM担体材料は、酸素吸蔵能(oxygen storage capacity、OSC)材料、ZrO、又は希土類金属ドープZrOであり得る。
【0017】
ドープZrOに好適な希土類金属は、La、Pr、Nd、Y、Ce、又はこれらの組み合わせであり得る。希土類金属でドープされる場合、希土類金属含有量は、希土類金属酸化物に基づいて20重量%以下であり得る。ある特定の実施形態では、希土類金属含有量は、希土類金属酸化物に基づいて、15重量%以下又は10重量%以下であり得る。
【0018】
OSC材料は、セリウム酸化物、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物などのドーパントを更に含み得る。加えて、OSC材料は、PGM成分のための担体材料として機能し得る。いくつかの実施形態では、OSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも35重量%のCeO、好ましくは、少なくとも40重量%のCeO、より好ましくは、少なくとも45重量%のCeOを含み得る。代替的に、ある特定の実施形態では、セリア-ジルコニア混合酸化物は、35重量%~75重量%のCeO、好ましくは、40重量%~60重量%のCeO、より好ましくは、45重量%~55重量%のCeOを含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、無機酸化物を更に含み得る。無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0021】
OSC材料及び無機酸化物は、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有し得る。
【0022】
代替的に、OSC材料及び無機酸化物は、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、2:1以下の重量比を有し得る。更なる実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、10:1以下の重量比を有し得る。別の更なる実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有し得る。なお別の更なる実施形態では、OSC材料及び無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有し得る。
【0024】
触媒組成物は、アルカリ又はアルカリ性土類金属を更に含み得る。
【0025】
アルカリ又はアルカリ性土類金属は、好ましくはバリウム、又はストロンチウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、触媒組成物の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量で充填されている。
【0026】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、Rh及びPtは、無機酸化物上に担持されていない。
【0028】
ある特定の実施形態では、触媒組成物は、パラジウム(Pd)を更に含み得る。更なる実施形態では、Pdは、無機酸化物上に担持され得る。なお他の実施形態では、Pdは、PGM担体材料上に担持されていない。
【0029】
以下の実施例に明示されるように、この態様における触媒組成物は、ガソリンエンジンによって生成された排気ガスを処理するためのTWC触媒として適用することができる。
【0030】
本開示の別の態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、第1のPGM担体材料上に担持された第1の白金族金属(PGM)成分を含む、第1の触媒領域と、を含み、第1のPGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒物品を対象とする。
【0031】
第1の触媒領域
いくつかの実施形態では、Pt及びRhは、少なくとも1:8、1:6、又は1:5の重量比を有し得る。代替的に、他の実施形態では、Pt及びRhは、10:1~1:10、8:1~1:8、6:1~1:6、又は5:1~1:5の重量比を有し得る。ある特定の実施形態では、Pt及びRhは、8:1~1:10、6:1~1:10、5:1~1:10、又は1:1~1:10の重量比を有し得る。
【0032】
第1のPGM担体材料は、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、ZrO、又は希土類金属ドープZrOであり得る。
【0033】
ドープZrOに好適な希土類金属は、La、Pr、Nd、Y、Ce、又はこれらの組み合わせであり得る。希土類金属でドープされる場合、希土類金属含有量は、希土類金属酸化物に基づいて20重量%以下であり得る。ある特定の実施形態では、希土類金属含有量は、希土類金属酸化物に基づいて、15重量%以下又は10重量%以下であり得る。
【0034】
第1のOSC材料は、セリウム酸化物、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。セリア-ジルコニア混合酸化物は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物などのドーパントを更に含み得る。加えて、第1のOSC材料は、第1のPGM成分のための担体材料として機能し得る。いくつかの実施形態では、第1のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも35重量%のCeO、好ましくは、少なくとも40重量%のCeO、より好ましくは、少なくとも45重量%のCeOを含み得る。代替的に、ある特定の実施形態では、セリア-ジルコニア混合酸化物は、35重量%~75重量%のCeO、好ましくは、40重量%~60重量%のCeO、より好ましくは、45重量%~55重量%のCeOを含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、第1の無機酸化物を更に含み得る。第1の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第1の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第1の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第1の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0037】
第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有し得る。
【0038】
代替的に、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、2:1以下の重量比を有し得る。更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、10:1以下の重量比を有し得る。別の更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有し得る。なお別の更なる実施形態では、第1のOSC材料及び第1の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有し得る。
【0040】
第1の触媒領域は、第1のアルカリ又はアルカリ性土類金属を更に含んでもよい。
【0041】
第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム、又はストロンチウム、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第1の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量で充填されている。
【0042】
好ましくはバリウム又はストロンチウムは、BaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、Rh及びPtは、第1の無機酸化物上に担持されていない。
【0044】
ある特定の実施形態では、第1の触媒領域は、パラジウム(Pd)を更に含み得る。更なる実施形態では、Pdは、第1の無機酸化物上に担持され得る。なお他の実施形態では、Pdは、第1のPGM担体材料上に担持されていない。
【0045】
以下の実施例に明示されるように、この態様における触媒物品は、ガソリンエンジンによって生成された排気ガスを処理するためのTWC触媒として適用することができる。
【0046】
第1の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在し得る。(例えば、図1図2a、及び図2bを参照されたい)。いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、軸方向長さLの20~99%、30~90%、又は40~80%にわたって延在し得る。代替的に、第1の触媒領域は、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在し得る。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセント(例えば、図3a~図3dを参照されたい)。
【0047】
第1の触媒領域の総ウォッシュコート充填量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in又は2.5g/in未満であり得る。代替的に、第1の触媒領域の総ウォッシュコート充填量は、0.5~3.5g/in、好ましくは、0.6~3g/in又は0.7~2.5g/inであり得る。
【0048】
第2の触媒領域
触媒物品は、第2の触媒領域を更に含み得る。
【0049】
第2の触媒領域は、第2のPGM成分、第2の酸素吸蔵能(OSC)材料、第2のアルカリ若しくはアルカリ性土類金属成分、及び/又は第2の無機酸化物を更に含み得る。
【0050】
第2のPGM成分は、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、第2のPGM成分は、Pd、Rh、又はこれらの混合物であり得る。他の実施形態では、第2のPGM成分は、Pd、Pt、又はこれらの混合物であり得る。更なる実施形態では、第2のPGM成分は、Pdであり得る。ある特定の実施形態では、第1の触媒領域は、Pdを実質的に含まない場合がある。更なる実施形態では、第1の触媒領域は、Pdを本質的に含まない場合も、Pdを含まない場合もある。「実質的に含まない」という表現は、PGM(例えば、Pd)に言及して本明細書で使用される場合、第1の触媒領域における総PGM量の≦5重量%、好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1重量%などの少量のPGM(例えば、Pd)を意味する。「本質的に含まない」という表現は、PGM(例えば、Pd)に言及して本明細書で使用される場合、第1の触媒領域における総PGM量の≦1重量%、好ましくは≦0.5重量%、より好ましくは≦0.1重量%などの微量のPGM(例えば、Pd)を意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0051】
第2のOSC材料は、セリウム酸化物、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせであり得る。より好ましくは、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせを含む。加えて、第2のOSC材料は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムなどのようなドーパントのうちの1つ以上を更に含み得る。更に、第2のOSC材料は、第2のPGM成分に対する担体材料としての機能を有し得る。いくつかの実施形態では、第2のOSC材料は、セリア-ジルコニア混合酸化物及びアルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物を含む。
【0052】
セリア-ジルコニア混合酸化物は、少なくとも50:50、好ましくは、60:40超、より好ましくは、70:30超のジルコニア対セリアの重量比を有し得る。代替的に、セリア-ジルコニア混合酸化物はまた、50:50未満、好ましくは、40:60未満、より好ましくは、30:70未満のセリア対ジルコニアの重量比を有し得る。
【0053】
第2のOSC材料(例えば、セリア-ジルコニア混合酸化物)は、第2の触媒領域の総ウォッシュコート充填量に基づいて、10~90重量%、好ましくは、25~75重量%、より好ましくは、30~60重量%であり得る。
【0054】
第2の触媒領域における第2のOSC材料充填量は、2g/in未満であり得る。いくつかの実施形態では、第2の触媒領域における第2のOSC材料充填量は、1.5g/in、1.2g/in、1g/in、0.8g/in、又は0.7g/in以下である。
【0055】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、好ましくはバリウム、ストロンチウム、これらの混合酸化物又は複合酸化物である。好ましくは、バリウム又はストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%のバリウム又はストロンチウムの量である。
【0056】
第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属はストロンチウムであることが更により好ましい。ストロンチウムは、存在する場合、第2の触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。
【0057】
また、第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物であることが好ましい。好ましくは、バリウム及びストロンチウムの混合酸化物又は複合酸化物は、第2の触媒領域の総重量に基づいて、0.1~15重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する。第2のアルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム及びストロンチウムの複合酸化物であることがより好ましい。
【0058】
好ましくは、バリウム又はストロンチウムはBaCO又はSrCOとして存在する。このような材料は、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、初期湿潤含浸又は噴霧乾燥によって実施することができる。
【0059】
第2の無機酸化物は、好ましくは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、及び第14族の元素の酸化物である。第2の無機酸化物は、好ましくは、アルミナ、マグネシア、シリカ、ジルコニア、バリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。特に好ましくは、第2の無機酸化物は、アルミナ、ランタン-アルミナ、ジルコニア、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。1つの特に好ましい第2の無機酸化物は、アルミナ又はランタン-アルミナである。
【0060】
第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、10:1以下、好ましくは、8:1又は5:1以下、より好ましくは、4:1又は3:1以下、最も好ましくは、2:1以下の重量比を有し得る。
【0061】
代替的に、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、10:1~1:10、好ましくは、8:1~1:8又は5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4又は3:1~1:3、最も好ましくは2:1~1:2の重量比を有し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、2:1以上の重量比を有し得る。更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、10:1以上の重量比を有し得る。別の更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、20:1以上又は30:1以上の重量比を有し得る。なお別の更なる実施形態では、第2のOSC材料及び第2の無機酸化物は、40:1以上又は50:1以上の重量比を有し得る。
【0063】
第2の触媒領域の総ウォッシュコート充填量は、3.5g/in未満、好ましくは、3.0g/in又は2.5g/in未満であり得る。代替的に、第1の触媒領域の総ウォッシュコート充填量は、0.5~3.5g/in、好ましくは、0.6~3g/in又は0.7~2.5g/inであり得る。
【0064】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの100パーセントにわたって延在し得る。(例えば、図2a及び図2bを参照されたい)
【0065】
第2の触媒領域は、軸方向長さLの30~70パーセントにわたって延在し得る。好ましくは、軸方向長さLの40~60パーセント、より好ましくは、45~55パーセント、最も好ましくは、第2の領域及び第1の領域の全長は、軸方向長さL以上である(例えば、図3a~図3dを参照されたい)。
【0066】
第2の触媒領域は、第1の触媒領域と、軸方向長さLの0.1~99パーセントにわたって重複し得る(例えば、図3c及び図3dを参照されたい。第1の触媒領域は、第2の触媒領域を被覆し得、又は第2の触媒領域は、第1の触媒領域を被覆し得る)。代替的に、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さLに等しくてもよい(例えば、図3a及び図3bを参照されたい)。なお別の代替例では、第2の触媒領域及び第1の触媒領域の全長は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、又は70%以下であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、第1の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。ある特定の実施形態では、第2の触媒領域は、基材上に直接担持/堆積され得る。
【0068】
第3の触媒領域
触媒物品は、第3の触媒領域を更に含み得る。
【0069】
第3の触媒領域は、第3のPGM成分、第3の酸素吸蔵能(OSC)材料、第3のアルカリ若しくはアルカリ性土類金属成分、及び/又は第3の無機酸化物を更に含み得る。
【0070】
第3の触媒領域は、第2の触媒領域と同じか又は同様の組成を有し得る。
【0071】
第3の触媒領域は、軸方向長さL未満、例えば、軸方向長さLの95%、90%、80%、70%、60%、又は50%以下であり得る。
【0072】
基材
好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。代替的に、基材は、ウォールフローフィルタであり得る。
【0073】
フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面と、を有し、それらの間に長手方向を画定する。フロースルーモノリス基材は、第1の面と第2の面との間に延在する、複数のチャネルを有する。複数のチャネルは、長手方向に延在し、複数の内側表面(例えば、各チャネルを画定するウォールの表面)を提供する。複数のチャネルの各々は、第1の面にある開口部と、第2の面にある開口部と、を有する。誤解を回避するために、フロースルーモノリス基材はウォールフローフィルタではない。
【0074】
第1の面は、典型的には基材の入口端部にあり、第2の面は基材の出口端部にある。
【0075】
チャネルは、一定の幅のものであってもよく、各複数のチャネルは、均一なチャネル幅を有してもよい。
【0076】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、モノリス基材は、1平方インチ当たり300~900のチャネル、好ましくは400~800のチャネルを有する。例えば、第1の面上において、開いている第1のチャネルと閉じている第2のチャネルとの密度は、1平方インチ当たり600~700チャネルである。チャネルは、矩形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状である断面を有し得る。
【0077】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウムなどのセラミック様材料、又は多孔質の耐火金属が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0078】
本明細書に記載のフロースルーモノリス基材は、単一構成要素(すなわち、単一のれんが状塊)であることに留意されたい。それにもかかわらず、排出物処理システムを形成する場合、使用される基材は、複数のチャネルを一緒に接着することによって、又は本明細書に記載のように複数のより小さい基材を一緒に接着することによって、形成され得る。このような技術は、排出物処理システムの好適なケーシング及び構成とともに、当該技術分野において周知である。
【0079】
本発明の触媒物品がセラミック基材を含む実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(コージライト及びスポジュメンなど)、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物で作製されていてもよい。コーディエライト、マグネシウムアルミノケイ酸塩、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0080】
本発明の触媒物品が金属基材を含む実施形態では、金属基材は、任意の好適な金属、特にチタン及びステンレス鋼などの耐熱性金属及び金属合金、並びに鉄、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムを他の微量金属に加えて含有するフェライト合金で作製されていてもよい。
【0081】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用する、NO、CO、及びHCを含有する、車両排気ガスの処理方法を対象とする。この方法に従って作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、(同じPGM充填量を有する)従来のTWCと比較して、改善された触媒特性を示し、また冷間始動段階で特に改善された性能、及びより良好なTHC点火性能を示す(例えば、実施例2~4及び6~7、並びに表3~5及び7~9を参照されたい)。
【0082】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管とともに本明細書に記載される触媒物品を含む、車両排気ガス処理用システムを対象とする。
【0083】
定義
本明細書で使用される場合、「領域」という用語は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は焼成することによって得られる基材上のエリアを指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上のエリア又は配置は、概して、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、明確な境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0084】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を超えて逸脱(例えば、最大長と最小長との差)しない長さ、好ましくはその平均値から5%を超えて逸脱しない長さ、より好ましくはその平均値から1%を超えて逸脱しない長さを指す。
【0085】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域のある部分とその領域の別の部分とを比較する場合、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成物とは、領域のある部分を領域の別の部分と比較する場合に、組成の差が、5%以下、通常は2.5%以下、最も一般的には1%以下である材料(例えば、領域)を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「ゾーン」という用語は、基材の全長の75%以下の長さなど、基材の全長未満の長さを有する領域を指す。「ゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば、5%以上)の長さ(すなわち、実質的に均一な長さ)を有する。
【0087】
基材の全長は、その入口端部とその出口端部と(例えば、基材の両端部)の間の距離である。
【0088】
本明細書で使用される「基材の入口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の入口端部までの方が、基材の出口端部までよりも近い。同様に、本明細書で使用される「基材の出口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、基材の出口端部までの方が、基材の入口端部までよりも近い、ゾーンを指す。したがって、ゾーンの中点(すなわち、その長さの半分での点)は、基材の出口端部までの方が、基材の入口端部までよりも近い。
【0089】
基材がウォールフローフィルタである場合、概して、「基材の入口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までの方が、入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までの方が、出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0090】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の入口チャネルの入口端部までの方が、入口チャネルの閉じた端部までよりも近く、及び/又は(b)基材の出口チャネルの閉じた端部までの方が、出口チャネルの出口端部までよりも近い。
【0091】
同様に、基材がウォールフローフィルタである場合、「基材の出口端部に配置されているゾーン」へのいかなる言及も、基材上に配置又は担持されているゾーンであって、
(a)基材の出口チャネルの出口端部(例えば、開いている端部)までの方が、出口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までよりも近い、ゾーン、及び/又は
(b)基材の入口チャネルの閉じた端部(例えば、遮断された端部若しくは塞がれた端部)までの方が、入口チャネルの入口端部(例えば、開いている端部)までよりも近い、ゾーンを指す。
【0092】
したがって、ゾーンの中点(すなわちその半分の長さでの点)は、(a)基材の出口チャネルの出口端部までの方が、出口チャネルの閉じた端部までよりも近い、及び/又は(b)基材の入口チャネルの閉じた端部までの方が、入口チャネルの入口端部までよりも近い。
【0093】
ウォッシュコートがウォールフローフィルタのウォールに存在する(すなわち、ゾーンがウォール内のものである)場合、ゾーンは、(a)と(b)との両方を満たし得る。
【0094】
「ウォッシュコート」という用語は、当該技術分野において周知であり、通常、触媒の製造中の基材に適用される接着性コーティングを指す。
【0095】
本明細書で使用される場合、頭字語「PGM(platinum group metal)」は、「白金族金属」を指す。「白金族金属」という用語は、概して、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群から選択される金属を指す。概して、「PGM」という用語は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「混合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、単相における酸化物の混合物を指す。本明細書で使用される場合、「複合酸化物」という用語は、概して、当該技術分野において従来的に既知であるように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「本質的になる」という表現は、特定の材料又は工程、及び、例えば、微量不純物などの、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない、任意の他の材料又は工程を含むように、特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0098】
材料に関して本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容物との関連において、材料が少量、例えば、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0099】
材料に関して本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、材料が微量、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1%重量%以下であることを意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0100】
本明細書で使用される場合、重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対するいかなる言及も、担体材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0101】
本明細書で使用する場合、「充填量」という用語は、金属重量基準でのg/ftの単位の測定値を指す。
【0102】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【実施例
【0103】
触媒1~8
触媒1~8(表1)を、初期湿潤含浸法によって調製した。粉末形態のOSC材料(44.9%のセリア、48.3%のジルコニア、1.5%のLa、5.3%のNd)に、硝酸Rh溶液、硝酸Pt溶液、又はこれら2つの組み合わせを含浸させ、次いで100℃で乾燥させ、650℃で2時間焼成した。次いで、表2に提供されたガス濃度を有する摂動ガス混合物中120Lh-1の流量で、全ての触媒を950℃で16時間水熱エージングした。触媒1~8を、点火試験の前に950℃から希薄状態下で停止した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
実施例1:合成触媒活性試験における点火性能
合成触媒活性試験(Synthetic Catalyst Activity Test、SCAT)デバイスで、触媒1~8を別個に試験した。10℃/分の速度及び1500Lg-1-1の空間速度で110℃~500℃まで、表3に列挙されたガス濃度を有する撹乱ガス流中で、点火性能を試験した。
【0107】
【表3】
【0108】
(表2の条件に従ってエージングした)触媒6~8及び比較触媒1~5のNO T40点火温度を、図4に示す(T40は、変換率が40%に達するときの温度である)。供給ガスの濃度と触媒の出口でのガスの濃度とを比較することから、THC、CO、及びNOの変換率を計算した。本発明の触媒6~8(Rh-Pt二元金属触媒)により、比較触媒2~4(Rhのみの比較触媒)と比較した場合、著しく改善された点火性能が得られ、T40値は45~150℃低かった。比較触媒5は、一元金属Ptの高温の点火を実証しており、二元金属系では、PtがRh触媒を促進すること、すなわち、触媒6~8へのPtの少量の添加が、酸素中での950℃の冷却後に、より活性なRh状態を維持することを示唆している。更に、触媒6~8は、比較触媒1と比較してT40を少し改善し、すなわち、最大50%のPt置換は、0.2%のRhのみの性能を改善する。
【0109】
実施例2:シミュレートしたDFSO事象下での反応物スリップ性能
比較触媒1及び触媒8を第2のSCATデバイスで別々に試験した。触媒を30秒間の希薄ガス混合物に曝露し、その後500℃及び1500Lg-1-1の空間速度でリッチ反応物条件に迅速に切り替えることによって、いわゆる減速時燃料遮断(deceleration fuel shut off、DFSO)タイプの事象中の触媒活性を評価した(表4を参照されたい)。図5は、触媒上にリッチ反応物ガス混合物を導入した後の最初の3秒間を示す。触媒8では、比較触媒1と比較して、CO、プロパン、及びNOのスリップがppm単位で低減している。実施例1と同様に、Ptは、長期間の希薄ガス処理後にRhをより活性な状態に維持する。
【0110】
【表4】
【0111】
比較触媒A
第2の触媒領域:
第2の触媒領域は、CeZr混合酸化物、La-安定化アルミナ、及び炭酸バリウムのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第2の触媒領域のウォッシュコート充填量は、約2.1g/inであり、Pd充填量は、74g/ftであった。
【0112】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材長さの50%を目標とするコーティングの深さで、セラミック基材の入口面から、このウォッシュコートをコーティングし(600cpsi、壁厚2.5ミル)、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0113】
第3の触媒領域:
第3の触媒領域は、CeZr混合酸化物、La-安定化アルミナ、及び炭酸バリウムのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。第3の触媒領域のウォッシュコート充填量は、約2.1g/inであり、Pd充填量は、24g/ftであった。
【0114】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材長さの50%を目標とするコーティングの全深さで、上からの第2の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、ウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0115】
第1の触媒領域:
第1の触媒領域は、CeZr混合酸化物上に担持されたLa-安定化アルミナ及びRhからなる。第1の触媒領域のウォッシュコート充填量は、約1.3g/inであり、Rh充填量は、6g/ftであった。
【0116】
次いで、標準的なコーティング手順を使用して、基材長さの100%を目標とするコーティングの全深さで、上からの第2及び第3の触媒領域を含むセラミック基材の出口面から、ウォッシュコートをコーティングし、100℃で乾燥させ、500℃で45分間焼成した。
【0117】
比較触媒Aのコーティング順序は、第2の触媒領域、第3の触媒領域、次いで第1の触媒領域である。
【0118】
触媒B
触媒Bは、第1の触媒領域のウォッシュコート充填量が約1.3g/inであり、Rh充填量が5g/ftであり、Pt充填量が1g/ftであったことを除いて、比較触媒Aと同様の手順に従って調製した。そして、第1の触媒領域におけるRh及びPtの両方が、CeZr混合酸化物上に担持されていた。
【0119】
【表5】
【0120】
表5に示されるように、触媒BにおけるPGM充填量を、比較触媒Aに基づいて修正した。触媒Bにおいて、比較触媒Aの第1の触媒領域における1g/ftのRhを、第1の触媒領域における1g/ftのPtで置き換えた。これらの触媒設計は、現在のPGM価格設定及び傾向に基づいて費用効果の高い配合物を提供する。
【0121】
実施例3:車両試験の手順及び結果
1.5リットルエンジンの車両に対して、比較触媒A及び触媒Bのベンチエージングした試料を、WLTPを用いて試験した。ベンチエージングは、触媒のピークベッド温度が約980℃、4モードのエージングサイクルで、同じ200時間の運転で、6.1Lのエンジンで行われる。ベンチエージングした部品に対する車両排気希釈バッグデータ(vehicle exhaust diluted bag data)の結果を、表6に示す。
【0122】
本発明者らの触媒配合物設計に起因するコスト削減に加えて、本発明の触媒Bは、比較触媒Aと比較して、依然として、全ての排出物について同等の性能を示した。
【0123】
【表6】
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
軸方向長さLを有する入口端部及び出口端部を含む、基材と、
第1のPGM担体材料上に担持された第1の白金族金属(PGM)成分を含む、第1の触媒領域と、を含み、
前記第1のPGM成分が、ロジウム(Rh)及び白金(Pt)を含み、
Pt及びRhが、少なくとも1:10の重量比を有する、触媒物品。
【請求項2】
前記第1のPGM担体材料が、第1の酸素吸蔵能(OSC)材料、ZrO、又は希土類金属ドープZrOである、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記第1のOSC材料が、セリウム酸化物、セリア-ジルコニア混合酸化物、アルミナ-セリア-ジルコニア混合酸化物、又はこれらの組み合わせである、請求項2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記第1の触媒領域が、第1の無機酸化物を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記第1の無機酸化物が、アルミナ、マグネシア、シリカ、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウム酸化物、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項4に記載の触媒物品。
【請求項6】
Rh及びPtが、前記第1の無機酸化物上に担持されていない、請求項4又は5に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記第1の触媒領域が、パラジウム(Pd)を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
Pdが、前記第1の無機酸化物上に担持されている、請求項7に記載の触媒物品。
【請求項9】
Pdが、前記第1のPGM担体材料上に担持されていない、請求項8に記載の触媒物品。
【請求項10】
第2の触媒領域を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記第2の触媒領域が、第2のPGM成分を含む、請求項10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記第2のPGM成分が、Pdを含む、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第1の触媒領域が、実質的にPdを含まない、請求項10~12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第2の触媒領域が、第2のOSC材料、第2の無機酸化物、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記第1の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記第2の触媒領域が、前記基材上に直接担持/堆積されている、請求項10~14のいずれか一項に記載の触媒物品。

【国際調査報告】