IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サニーベイ・バイオテック・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】HERV-K抗体治療薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231102BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231102BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231102BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231102BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/08
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61K39/395 T
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
G01N33/53 Y
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518033
(86)(22)【出願日】2021-09-18
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 US2021071505
(87)【国際公開番号】W WO2022061368
(87)【国際公開日】2022-03-24
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523097086
【氏名又は名称】サニーベイ・バイオテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SunnyBay BioTech, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ワン-ヨハニング,フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハニンング,ゲイリー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA45
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB36
4C085BB50
4C085CC07
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、治療用ヒト化抗HERV-K抗体、CARまたはCD3およびCDSに対する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、DNAコード化BiTE(DBiTE)または抗体-薬物コンジュゲート(ADC)からなるその融合物を提供する。本発明はまた、免疫治療法において使用するためのペプチド、タンパク質、核酸および細胞に関する。特に、本発明は、MHCの分子に結合したがんペプチドまたは抗体および他の結合性分子の標的でもあり得るようなペプチドの免疫療法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト内因性レトロウイルス-K(HERV-K)に結合する単離された抗体であって、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含む単離された抗体。
【請求項2】
ヒト化またはヒトフレームワーク領域を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
HERV-Kアンタゴニストである、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
腫瘍成長の低減において使用するための、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
肺、リンパ節または他の臓器への転移の低減において使用するための、請求項2に記載の抗体。
【請求項6】
請求項1に記載のHCVR、LCVRまたはそれらの組合せをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項9】
哺乳動物においてがんを処置する方法であって、請求項2に記載の抗体の有効量をそれを必要とする哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項10】
抗体が、リンカーを介して細胞傷害性薬物、アウリスタチンまたはその機能的ペプチド類似体または誘導体にコンジュゲートされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
がんが、黒色腫、慢性リンパ性白血病、乳がん、膵臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、精巣がん、胃がん、腎臓がん、子宮内膜がん、子宮がん、膀胱がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がんおよび非小細胞肺がんからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
抗体が、全長抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
抗体が、ヒトモノクローナルIgG1またはIgG4抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
CAR T、CAR NKまたはBiTEアッセイにおいて使用するためのヒト化抗体。
【請求項15】
アッセイが、CAR T、CAR NKまたはBiTEを開発するために使用される、CAR T、CAR NKまたはBiTEアッセイにおいて使用するためのヒト化抗体。
【請求項16】
本発明の抗HERV-Kヒト化抗体およびADCの標的として使用するための、HERV-Kを過剰発現するがん細胞。
【請求項17】
細菌(HUM1およびHUM2)または哺乳動物細胞から生成されたhu6H5クローン(FWJ1およびFWJ2)。
【請求項18】
T細胞CD3またはCD8および腫瘍関連抗原HERV-Kに対するヒト化scFvに対して向けられるBiTEであって、CD3またはCD8のいずれかおよびHERV-Kを標的とする抗体を含む、BiTE。
【請求項19】
ヒト化または完全ヒトHERV-K scFvを有するレンチウイルスCAR発現ベクターを発現するT細胞。
【請求項20】
組換えHERV-K Env表面融合タンパク質(KSU)から生成された抗原およびHERV-K Envタンパク質を発現したがん細胞からの溶解物に結合可能なヒト化単鎖可変断片(scFv)抗体。
【請求項21】
請求項19に記載のヒト化scFvから生成されたCAR。
【請求項22】
メモリーB細胞を有さないドナーのための、迅速拡大増殖およびB細胞活性化のための改善されたインビボ濃縮方法であって、
(a)1、7および14日目にサイトカインカクテルを用いてマウスを処置するステップ、および
(b)14および21日目に抗原によってマウスを追加免疫するステップ
を含む、方法。
【請求項23】
抗原に結合し、がん細胞を死滅させることもできる抗体を産生する細胞。
【請求項24】
HERV-Kの免疫チェックポイント阻害剤を用いて免疫抑制ドメイン(ISD)を遮断する方法。
【請求項25】
HERV-Kの免疫チェックポイント阻害剤が、HERV-KのISDを標的とするモノクローナル抗体および薬物からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項26】
チェックポイント遮断抗体処置有効性の増強において使用するための、HERV-Kを標的とするヒト化および完全ヒト抗体。
【請求項27】
がん患者によって産生されたHERV-K SUタンパク質から生成される5種の多抗原ペプチド(MAPS)を用いて免疫化されたマウスから抗体を生成する方法。
【請求項28】
HERV-K CAR A:VH-VLhu6H5-CD8-CD28-4-1BB-CD3ゼータを生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、がん抗原に関する。
【0002】
関連出願の参照
本特許事項は、2020年9月17日に出願された米国仮特許出願第63/080,009号に関連し、その優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
ヒト内因性レトロウイルス(HERV)は、ゲノム反復配列として周知であり、ゲノム中に多数のコピーを有し、その結果、ヒトゲノムのおよそ8%は、レトロウイルス起源のものである。以下の科学的参考文献1を参照されたい。HERVは、生殖系列細胞中にレトロウイルスDNAを組み込んだ数千もの古代の組込み事象から生じた、2。通常、レトロウイルスは、突然変異の蓄積のために感染力を失っている。したがって、これらの遺伝子は、がんなどの病的状態の際を除いて、正常成体ヒト組織では主に、サイレントであり、発現しない。ほとんどの生物学的に活性なHERVは、HERV-Kファミリーのメンバーである。HERV-Kは、複製能力のあるレトロウイルスに必要とされるすべての要素を発現可能な完全配列を有する(科学的参考文献3、4)が、正常細胞では依然としてサイレントのままであった。しかし、腫瘍においてなどの一部の状況において、発明者らは、いくつかの異なる種類の腫瘍において正常組織よりもかなり高いレベルで、HERV-Kの発現が活性化され、そのエンベロープ(Env)タンパク質が検出され得ることを報告した。科学的参考文献5~23を参照されたい。これは、腫瘍において発現され、正常組織には存在しないのでオフターゲット効果が最小となるために、優れた腫瘍関連抗原であり、がん免疫療法の理想的な標的である可能性があることを示す。
【0004】
がん治療薬の開発における重要な検討事項は、腫瘍関連抗原の発現プロファイルである。HERV-Kは、生殖細胞腫瘍(科学的参考文献24)、黒色腫(科学的参考文献25)、乳がん細胞株(T47D)(科学的参考文献26~28)、乳がん組織(科学的参考文献15、29)および卵巣がん(科学的参考文献13)において転写的に活性である。発明者らは、がん細胞株および患者腫瘍におけるHERVタンパク質および配列を具体的に同定した。発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍におけるHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。科学的参考文献11、12、16、17、20、30~34を参照されたい。彼らはまた、乳がんにおけるHERV-K env転写物の発現は、特に悪性度の高いサブタイプである基底乳がんと特異的に関連することも見出した、20。
【0005】
いくつかの診断薬を患者選択のためのコンパニオン診断薬として使用できる。1つの戦略は、がん細胞上でのみ見出され、正常組織上では見出されない内因性ウイルス抗原を標的とする。ウイルスRNAは、これらの腫瘍から放出され、HERV-K RNA(envまたはgag)と抗HERV-K抗体の両方が、本発明者らのグループによって、がん患者の循環中に現れるとによって発見された。科学的参考文献31~33、35を参照されたい。非ヒト起源のこれらのタンパク質は、がん療法の理想的な標的として、またHERV-Kを標的とする治療用抗体のコンパニオン診断薬として利用され得る。
【0006】
複数のがんの種類における免疫療法の著しく増大した数の臨床試験によって、乳がんの有効性の高い免疫療法の探索が促進された。乳がんの腫瘍微小環境の理解の改善は、合理的な、効率的な療法の設計にとって重大である。固形腫瘍に対する療法の成功を制限した1つの問題は、腫瘍細胞において高度に発現されるが、正常細胞では発現されない腫瘍抗原がないことである。
【0007】
本発明者らの以前の研究において、発明者らは、HERV-K Envタンパク質は、乳がん細胞の表面で一般に発現されることを示した、30。上皮間葉転換(EMT)は、いくつかの腫瘍においてCD4またはCD8T細胞の浸潤を低下させ、36、HERV-K発現は、EMTを誘導し、細胞運動の増大につながると実証され、37、その両方とも腫瘍播種に好都合である。科学的刊行物10、33、37は、HERV-Kの過剰発現が、がん発生につながり、がん進行に寄与するという強い証拠を提供する。HERV-K envタンパク質に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)(K-CAR)は、抗HERV-Kモノクローナル抗体(mAb)(6H5と呼ばれる)から生成され、K-CAR療法の抗転移性腫瘍効果が乳がんおよび黒色腫において実証された。科学的参考文献33、35。重要なことに、K-CART細胞またはshRNAenvのいずれかを用いて処置されたがん細胞において、HERV-KおよびRasの発現の下方制御が示された。科学的参考文献10、33、38を参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、血清および腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)におけるチェックポイント分子レベルは、特に、高悪性度乳がん患者(浸潤性乳管癌(IDC)または浸潤性乳癌(IMC)を有する患者)において、HERV-K抗体力価と高度に相関することを見出した。乳がんにおけるTILの表現型的および機能的特徴は、HERV-K状態と関連しており、チェックポイント阻害とHERV-K抗体療法の組合せは、より良好な死滅有効性をもたらす可能性がある。
【0009】
本発明は、治療用ヒト化抗HERV-K抗体またはCD3およびCD8に対する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、DNAコード化BiTE(DBiTE)または抗体-薬物コンジュゲート(ADC)からなるその融合物を提供する。
【0010】
第1の実施形態では、本発明は、HERV-Kを過剰発現するがん細胞を提供する。これらのがん細胞は、細胞あたりより多くの抗体が結合され得るので、本発明の抗HERV-Kヒト化抗体およびADCの特に良好な標的および良好なモデルであり得る。
【0011】
第2の実施形態では、本発明は、細菌から生成した2つのヒト化抗体クローン(HUM1およびHUM2)を、および哺乳動物細胞から生成したヒト化抗体(hu6H5)を提供する。両クローンは、組換えHERV-K Env表面融合タンパク質(KSU)から生成した抗原およびMDA-MB-231乳がん細胞からの溶解物に結合できる。哺乳動物細胞から生成したhu6H5を、本発明者らの抗HERV-K抗体の他の形態と比較した。hu6H5は、マウス抗体(m6H5)、キメラ抗体(cAb)またはヒト化抗体(HUM1)と同様である、HERV-K抗原に対する結合親和性を有する。hu6H5抗体は、がん細胞がアポトーシスを起こすように誘導し、がん細胞増殖を阻害し、HERV-K抗原を発現するがん細胞を死滅させる。重要なことに、hu6H5抗体は、マウスMDA-MB-231異種移植片において腫瘍生存率を低減すると実証され、特に、肺およびリンパ節へのがん細胞転移を低減することができた。これらのヒト化抗体を用いて処置されたヒト乳がん腫瘍を有するマウスは、抗体処置を受けなかった対照マウスと比較してより長期の生存を有していた。
【0012】
第3の実施形態では、本発明は、がん細胞増殖、腫瘍成長ならびに肺およびリンパ節への転移を誘導できるがん遺伝子として、乳がん患者から生成されるHERV-K env遺伝子を提供する。HERV-Kを発現する細胞は、カスパーゼ3および9、pRB、SIRT-1およびCIDEAを含む腫瘍抑制と関連する遺伝子の発現の低減ならびにRas、p-ERK、P-P-38およびベータカテニンを含む腫瘍形成と関連する遺伝子の発現の増大を示した。
【0013】
第4の実施形態では、本発明は、T細胞CD3またはCD8および腫瘍関連抗原HERV-Kに対して向けられたBiTEを提供する。本発明者らは、CD3またはCD8のいずれかと、HERV-Kを標的とする抗体からなるようなBiTE(VL-VH 6H5scFv---VH-VLhuCD3またはCD8+c-myc+FLAG)または(VL-VH hu6H5scFv---VH-VLhuCD3またはhuCD8+c-myc+FLAG)を生成した。抗体によって認識されるペプチドであるFLAG-タグ(DYKDDDDK)(配列番号39)および抗体によって認識される短いペプチドであるMyc-タグ(EQKLISEEDL)(配列番号40)。
【0014】
第5の実施形態では、本発明は、ヒト化または完全ヒトHERV-K scFvを有するレンチウイルスCAR発現ベクターを発現するT細胞を提供する。
【0015】
【化1】
【0016】
これらのT細胞は、いくつかの異なるがんからの腫瘍細胞を効果的に溶解し、死滅させる。レンチウイルスベクターから発現されたヒト化K-CARは、汎がんCAR-Tである。
【0017】
第6の実施形態では、本発明は、ヒト化単鎖可変断片(scFv)抗体を提供する。この抗体は、組換えHERV-K Env表面融合タンパク質(KSU)およびMDA-MB-231乳がん細胞からの溶解物から生成された抗原に結合できる。このヒト化scFvから生成されたCARを、レンチウイルスベクターにクローニングできる。この組換えベクターは、それだけには限らないが、K-CAR T細胞およびチェックポイント阻害剤、インターロイキン(IL)-12およびIL-18などの炎症促進性サイトカイン、腫瘍溶解性ウイルスおよびキナーゼ阻害剤を含む療法と組み合わせて使用できる。キナーゼ阻害剤には、それだけには限らないが、p-RSKおよびp-ERKが含まれる。
【0018】
第7の実施形態では、本発明は、多くの場合には、血清腫瘍マーカーCKの染色と重複するHERV-K染色を提供する。HERV-Kは、CTCマーカーならびにHERV-K抗体療法の標的であり得る。
【0019】
第8の実施形態では、本発明は、HERV-Kを幹細胞マーカーとして提供する。HERV-Kの標的化は、がん幹細胞の成長を減速するまたは妨げることによって腫瘍進行を遮断し得る。循環治療用抗体または他の療法を用いるHERV-Kの標的化はまた、CTCを死滅させ、これらの循環細胞の遠位部位への転移を妨げることができる。
【0020】
第9の実施形態では、本発明は、自然免疫応答(例えば、ポリI:C処置)またはLTR低メチル化(5-Azaなどによる)によるHERV-Kの発現を誘導する薬剤を用いるHERV-Kの強制的な過剰発現が、がん細胞を、標的化免疫療法を含む標的化療法に対してより感受性にするであろう標的の産生を増大するように誘発することを提供する。
【0021】
第10の実施形態では、本発明は、SCID/ベージュマウスにおけるインビボ(in vivo)濃縮技術(IVE:約20倍増強)を改善し、迅速な拡大増殖およびB細胞活性化を可能にする。この改善された技術は、多数の抗原特異的形質芽細胞を産生し得る。より高い力価の抗体を有するがんを有するドナーについて、改善された技術は、SCID/ベージュマウスの代わりにヒト化マウス(HM)またはヒト腫瘍マウス(HTM)を用いるプロトコールを使用する。がんを有さない、およびメモリーB細胞を有さない正常なドナーについては、改善された技術は、改変を有するプロトコールを使用する:マウスをサイトカインカクテル(1、7および14日目)を用いて処置し、14および21日目に抗原によってブーストする。血清をマウスから収集し、結合親和性をELISAによって試験する。抗体力価の増大が検出された後、脾臓を回収し、分析し、ハイブリドーマを作製するために使用する。IVEプロトコールを使用してマウスにおいてより高い抗体力価が検出された。
【0022】
第11の実施形態では、本発明は、抗体を産生するだけでなく、抗原に結合することもでき、がん細胞を死滅させる細胞を決定する方法を提供する。この方法は、CD40-B細胞を効率的に刺激し、高純度(>90%)で多数に拡大増殖させ、その抗体の分泌を誘導できる。
【0023】
第12の実施形態では、本発明は、処置されたB細胞のインキュベーション後の方法を提供する。ガラスカバースリップを洗浄し、蛍光抗ヒトIgG抗体を用いてタグ付けし、単一B細胞による抗原特異的抗体の分泌に対応する別個のスポットを示すマイクロエングレービング技術を使用して読み取る。
【0024】
第13の実施形態では、本発明は、マイクロウェルスラブ中のすべての細胞の結合動態および細胞対細胞相互作用を決定するためのプラットフォームの開発を提供する。
【0025】
第14の実施形態では、本発明は、際立ったことに、乳がん患者の血漿において6つの循環免疫チェックポイントタンパク質の有意に増強された発現を提供する。本発明はまた、手術前に対して、手術後6ヶ月または18ヶ月で免疫チェックポイントタンパク質レベルの著しい低下を提供する。重要なことに、可溶性免疫チェックポイントタンパク質分子レベルと、腫瘍におけるHERV-K発現によって誘導されるHERV-K抗体力価の間の正の関連が結果として生じる。HERV-K抗体力価は、乳がんにおいて免疫チェックポイントタンパク質レベルに影響を及ぼし得る。したがって、HERV-Kの発現は、乳がん患者の免疫応答を制御できる。
【0026】
別の態様では、これらの知見はまとめて、HERV-Kの免疫抑制ドメイン(ISD)は、PD-L1免疫チェックポイントと類似の、がん細胞上のまだ認識されていない免疫チェックポイントであるということを示す。第15の実施形態では、本発明は、それだけには限らないが、HERV-KのISDを標的とするモノクローナル抗体および薬物を含むHERV-Kの免疫チェックポイント阻害剤を用いるISDの遮断は、がん免疫調節物質療法であり、これは、T細胞が作動し続け、がんに対する免疫応答の制限を解き、ならびに既存の応答を増強し、がん細胞の排出を促進することを可能にするであろうことを提供する。
【0027】
第16の実施形態では、本発明は、HERV-Kを標的とするヒト化および完全ヒト(hTab)抗体を提供する。これらの抗体は、チェックポイント遮断抗体処置有効性を増強する。有効な組合せがん療法には、それだけには限らないが、(a)HERV-Kヒト化またはhTAb(1.5mg/kg)、(b)K-CAR、(c)K-BiTE、(d)HERV-K遺伝子発現をノックダウンするためのHERV-K shRNAもしくはCRISPR/Cas9ゲノム編集技術、または(e)全長および末端切断型HERV-K Envタンパク質およびHERV-K Envペプチドを含む防止的もしくは治療的HERV-Kワクチンの組合せが含まれる。有効な組合せがん療法には、それだけには限らないが、(a)抗ICP抗体、(b)がん化学療法、(c)5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジンもしくは他のエピジェネティックモジュレート剤、例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTi)およびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、(d)EMT阻害剤、(e)細胞移動または浸潤の阻害剤、(f)SもしくはG2期細胞周期停止の誘導、(g)PI3K/AKT/mTORもしくはMAPK/ERKシグナル伝達経路の阻害剤、または(f)HIF1αへのシグナル伝達を含む因子と組み合わされた、全長および末端切断型HERV-K Envタンパク質およびHERV-K Envペプチドが含まれる。
【0028】
第17の実施形態では、本発明は、薬物をがん細胞および腫瘍中に送達するADCのために使用できるHERV-Kを標的とするヒト化抗体を提供する。
【0029】
第18の実施形態では、本発明は、腫瘍イメージングのために使用できるHERV-Kを標的とする抗体を提供する。
【0030】
第19の実施形態では、本発明は、hu6H5 scFvを使用する新規CARを提供する。
【0031】
第20の実施形態では、本発明は、CD3およびCD8 BiTEを含むhu6H5 scFvを使用する新規BITEを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、還元条件下のSDS-PAGEゲルにおいてヒト化抗HERV-K抗体のVH鎖およびVL鎖を検出するために使用されたウエスタンブロットである。VH鎖について49KDaの分子量およびVL鎖について23KDaの分子量が検出された。
【0033】
図2図2では、サイズおよび/または分子量によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分離をさらに使用して、タンパク質発現を決定した。2つのピークのみが検出され、ピーク2の濃度は、ピーク1および2の組み合わされた総サイズの99%よりも大きかった。
【0034】
図3図3では、キメラ6H5、HUM1(細菌から生成された)および新規hu6H5(哺乳動物細胞から生成された新規ヒト化抗HERV-K抗体)のHERV-K env標的への結合を比較するためにELISAを使用した。1000、1:1000希釈;2000、1:2000希釈;4000、1:4000希釈;8000、1:8000希釈。
【0035】
図4図4では、アポトーシスアッセイを使用して、がん細胞に向けられたマウスおよびヒト化抗HERV-K抗体の細胞毒性を決定した。MDA-MB-231-pLVXK(231K)(HERV-K envタンパク質を発現するpLVXベクターを用いて形質導入された乳がん細胞株)またはMDA-MB-231-pLVXC(231C)(pLVX空ベクターを用いて形質導入された同一乳がん細胞株)を含むがん細胞を、m6H5またはhu6H5(1mlあたり1または10μg)のいずれかを用いて4時間または16時間処置した。アネキシンVおよび7AADを使用して、アポトーシス細胞のパーセンテージを決定した。4時間の抗体処置後の結果がここで示されている。
【0036】
図5図5では、生/死細胞生存率アッセイを使用して、抗HERV-K抗体処置後の細胞死の誘導を評価した。MDA-MB-231細胞を、24ウェルプレートにおいて一晩播種した。細胞を種々の抗体(10μg/ml)を用いて処置し、細胞培養インキュベーター中37℃で16時間インキュベートした。次いで、カルセインAm(4μl/10ml培地)およびEth-D1(20μl/10ml培地)、ウェルあたり200μlを添加し、細胞を室温で30分間インキュベートした。EthD-1は、膜損傷を有する細胞に浸透し、死細胞において核酸に結合して、赤色蛍光を生成する。同時染色された生/死生存率アッセイを使用して、生細胞(緑色;カルセインAm)および推定死細胞(赤色;EthD-1)を同定した。ヒトIgGまたはマウスIgGを対照として使用した。赤色蛍光がない細胞が、対照ヒトまたはマウスIgGを用いる処置後に観察された。しかし、赤色蛍光細胞がヒト化またはマウス6H5抗HERV-K抗体を用いて処置された細胞において観察された。
【0037】
図6図6では、MTSアッセイを使用して、hu6H5を用いて処置された細胞の増殖の阻害を決定した。6H5抗体(ヒトまたはマウス)のいずれかを用いて処置された細胞において有意に低減された細胞増殖が観察された。阻害は、より高いHERV-Kレベルを発現しなかった231C細胞よりも高いレベルのHERV-Kを発現する231K細胞においてより顕著であった。
【0038】
図7図7では、ADCCを使用して、抗体誘導性細胞死滅の機序を決定した。m6H5を用いた場合よりも、hu6H5を用いて処置された細胞において、PBMCのパーセンテージが増大するにつれて、がん細胞のより大きなADCC溶解が観察された。
【0039】
図8-1】図8では、231Kまたは231C細胞(皮下注射による200万個)をマウスに接種した。次いで、マウスをhu6H5抗体(n=3;4mg/kg、週に2回)を用いて処置した。腫瘍成長をモニタリングし、週に3回測定し、マウス生存を調べた。hu6H5を用いるマウスの処置は、対照抗体を用いるマウスの別のコホート(n=4)の処置よりも長い生存につながった。231C細胞を接種されたマウスにおいてよりも231K細胞を接種されたマウスにおいて、より短い生存が観察され、これは、乳がん細胞におけるHERV-Kの過剰発現が腫瘍関連生存を短縮することを示す。
図8-2】同上。
【0040】
図9-1】図9では、hu6H5および抗体処置なし群から得た組織を、H&Eを用いて染色し、染色結果は、ここで、2X、4Xおよび10Xで示されている。腫瘍生存率の低減が、抗体処置なし(60%;B14;図9A)の同一細胞と比較して、hu6H5を用いて処置された231C細胞が接種されたマウス(20%;B4)において実証された。また、腫瘍生存率の低減が、抗体処置なしの同一細胞と比較して、hu6H5を用いて処置された231K細胞を接種されたマウス(45%;B1;図9B)において実証された(抗Ki67および抗HERV-K mAb(6H5)を使用した(図9C)。腫瘍生存率の低減が、対照(60%;上部のパネル)と比較して、hu6H5を用いて処置された231Cとともにインキュベートされたマウスにおいて(20%;下部パネル)実証された。
図9-2】同上。
図9-3】同上。
図9-4】同上。
【0041】
図10-1】図10では、肺およびリンパ節への転移が、231K細胞が接種されたマウスにおいて観察された。肺(図10Aおよび10B)またはリンパ節(図10C)への転移は、231K細胞を接種されたマウスにおいてのみ観察された。腫瘍生存率の低減および腫瘍壊死の増大が、231K細胞を接種され、hu6H5を用いて処置されたマウスの肺において検出された(図10B)。231Kを接種されたマウスにおいてリンパ節の眼に見える拡大が見られたが、231C細胞を接種されたマウスでは見られなかった。腫瘍生存率の低減および腫瘍壊死の増大が、抗体を添加されなかった231K細胞(KCON;上部のパネル)(B26>95%)に対して、231K細胞を接種され、hu6H5(KAB)を用いて処置されたマウスから得たリンパ節において検出された(図10C;B18;40%、下部のパネル)。これらの結果は、HERV-K発現が、腫瘍発生の、特に、遠位器官部位への転移の原因因子であることを示す。重要なことに、本発明者らのヒト化抗HERV-K抗体は、腫瘍生存率を低減し、腫瘍壊死を増大し、肺およびリンパ節への転移を減少させることができる。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
【0042】
図11図11では、MDA-MB-231 luc細胞の存在下での正常ドナーPBMCからのIFNガンマのCD3BiTE媒介性分泌を示す。96ウェルプレートに5×10-3個細胞/ウェルを播種した。ND番号230341(陽性対照)および4人の正常ドナーから得たPBMCを、エフェクター細胞として使用した。エフェクター/腫瘍細胞の比は、10/1とした。140μg/mlのCD3BiTEを使用した。プレートセットアップの72時間後、IFNガンマアッセイのために上清を回収した。
【0043】
図12図12Aは、PBMCおよびK3Bi(0ng/ml;上部のパネル)または(100ng/ml;下部のパネル)で72時間処置されたMCF-7細胞の生存(緑色)または死(赤色)のイメージを示す。図12Bでは、0ng/mlまたは100ng/mlのK3Bi+PBMCで72時間処置されたエフェクター:腫瘍細胞(10:1)の上清において、LDH放出アッセイによってがん細胞の有意に増大した死滅が実証された。図12Cでは、K3Bi(100ng/ml)で72時間処置された3つの乳がん細胞株においてIFN-γ分泌が有意に増大された。未処置細胞、PBMCのみまたはBiTEのみを対照として使用した。
【0044】
図13図13では、ゼロ日目にNOD/SCID/IL-2Rγnull(NSG)マウスに、MDA-MB-231 HERV-K陽性乳がん細胞を接種し、示された日にPBMC(赤色矢印)またはBiTE(黒色矢印)を投与した。腫瘍体積は、ノギスを使用して腫瘍体積を測定することによって研究を通じて算出した。
【0045】
図14図14では、K10標識されたAF488タンパク質を用いて染色されたCAR-A/CAR-Bが形質導入されたCD4陽性PBMCのパーセンテージは、K10標識されたAF488タンパク質を用いて染色されたナイーブT細胞のパーセンテージよりも高い。
【0046】
図15図15は、マイクロエングレービングプロセスを示す。図15Aでは、濃縮されたB細胞を腫瘍細胞と混合し、免疫アッセイのためにHERV-K抗原でコーティングされたガラススライドで覆われたウェル中で2時間~16時間同時培養した(上部右)。抗体を産生し、腫瘍細胞を死滅させることができるB細胞は、RT-PCRのためにCellCelectorによって回収可能であり(下部右)、抗体を生成するために再クローニングした(下部左)。図15Bでは、腫瘍組織から生成されたマンモスフェア(7および14日目)を標的細胞として使用した。抗体産生性B細胞を濃縮するために自己PBMCをカクテルを用いて4日間刺激した。次いで、B細胞を腫瘍標的細胞と同時培養した。HERV-K Envタンパク質でコーティングされたカバースライドを、同時培養された細胞とともにインキュベートした。同時染色された生/死生存率アッセイを使用して推定死細胞(赤色)を同定した。EthD-1は、膜損傷を有する細胞に浸透し、死細胞において核酸に結合して、赤色蛍光を生成する。同一ウェルの同一位置におけるカバースライドでのELISAアッセイを使用して、HERV-K Envタンパク質に結合できる抗体を産生するB細胞を検出した(赤色四角)。図15Cでは、CellCelectorによってHERV-K+(緑)およびIgG+(赤)であったB細胞(赤色丸;左)を選びとった。細胞を選び取る前(上部右)および後(下部右)の細胞が示されている。
【0047】
図16図16A)では、HERV-K膜貫通(TM)タンパク質(マウスM1~M4)またはPBS(M5~M6)を用いて免疫化したマウスにおいて、ELISPOTを使用して、IFN-γ分泌性脾臓細胞を検出した。図16Bおよび図16Cを参照されたい。ELISAを使用して、マウスにおいて抗HERV-K抗体力価を検出した。CpG(図16B)またはCDN(図16C)状態に関わらず、KSU Envタンパク質を用いて処置されたマウスにおいてより高い抗体力価が検出された。図16Dでは、抗ヒトIgG mAbを使用して、MDA-MB-231(HTM1)またはMDA-MB-468(HTM2)が接種されたHTMモデルにおいて、およびHERV-K SU Envタンパク質を用いて免疫化されたHM(1-2)を用いてELISAによって抗HERV-K抗体力価を検出した。
【0048】
図17図17では、ヒト-SCIDキメラにおけるインビボHERV-K駆動形質芽細胞分化のスキームを示す。0日目に、インビトロ(in vitro)でHERV-Kタンパク質(100μg)と事前に混合した対象から得た5000万個のPBMCを、ヒト化マウスに脾臓内注射する。サイトカインカクテル(BAFF:50μg、IL-2:50ng、IL-6:50ngおよびIL-21:50ng)を、1、4および7日目に腹膜内に注射する。HERV-K Envタンパク質(100μg)を2日目に腹膜内にブーストする。IgG+、CD38+およびHERV-K+を、その後の分析のためにフローサイトメトリーまたはマイクロエングレービングプラットフォームによって選別する。脾細胞の半量を使用して、MFP-2融合パートナーとハイブリドーマを生成する。ELISAアッセイを使用して、ハイブリドーマクローンから抗ZIKV Env抗体を検出した。各ハイブリドーマクローンからの上清(100μl)を添加し、1時間インキュベートした。次いで、ヤギ抗ヒトIgG/A/M-HRP抗体を添加し(1:4,000希釈)、続いて、さらに1時間インキュベートした。いくつかのハイブリドーマクローンにおいて、ドナー322336から抗体の高力価が実証された。抗フラビウイルス4G2 mAbから得られた上清を、陽性対照(D1-4G2-4-15;ATCC HB-112)として使用した。
【0049】
図18図18Aでは、TNBC PDX細胞の接種後4週間で得られたhuCD45+細胞において、およびCD34+造血幹細胞を同時移植した、接種後7週間でのMDA-MB-231 HTMモデルにおいてCD33、CD3およびCD19+細胞のパーセンテージを定量化した。図18Bでは、MDA-MB-231細胞の接種後7週間での脾臓細胞からのフローデータが示されている。図18Cでは、免疫蛍光染色を使用して、HTMから得たMDA-MB-231腫瘍において抗HERV-K mAb 6H5(緑)を使用してHERV-Kの発現を検出した。F-アクチン(赤)を対照として使用した(2つの左のパネル)。腫瘍組織においてhuCD3+細胞(緑色)も検出された(2つの右のパネル)。図18Dでは、抗ヒトIgG mAbを使用して、MDA-MB-231(HTM1)またはMDA-MB-468(HTM2)を接種されたHTMモデルにおいて、およびHERV-K SU Envタンパク質を用いて免疫化されたHM1およびHM2を用いてELISAによって抗HERV-K抗体力価を検出した。
【0050】
図19図19は、乳がん患者におけるHERV-K状態と関連するベースライン免疫状態を例示する:組み合わされたHERV-Kおよび免疫チェックポイントアッセイ。正常ドナーに対してDCISおよび高悪性度乳がんを含む乳がん患者において、Luminexアッセイによって可溶性免疫チェックポイントタンパク質の発現を調べた。図19Aは、DCIS、高悪性度乳がん(aBC)および正常女性ドナーにおける6つのICPの発現の比較を示す。顕著な知見は、乳がん患者の血漿における6つの循環ICPの発現の有意な増強であった、図19A図19B(a~c):さらなる知見は、術前(時点1)に対する、術後6ヶ月(B;時点2)または18ヶ月(示されていないデータ)での患者における免疫チェックポイントタンパク質レベルの著しい低下であった。重要なことに、腫瘍における可溶性ICP分子レベルとHERV-K発現によって誘発されるHERV-K抗体力価の間の正の関連が観察され(図19C)、これは、HERV-K抗体力価が、乳がんにおいてICPレベルに影響を及ぼすであろうということを示唆する。したがって、HERV-Kの発現は、乳がん患者の免疫応答を制御できる。
【0051】
図20-1】図20Aでは、免疫ブロットアッセイを使用して、r-Gelとの6H5コンジュゲーションを実証した。図20Bでは、抗HERV-K 6H5-rGel ADCを使用してHERV-K陽性がん細胞において組換えゲロニン毒素(r-Gel)のデリバリーが観察された。抗HERV-K 6H5 mAbを使用してDOV13卵巣がん細胞におけるHERV-Kの表面および細胞質発現を検出した。さらに、処置の4時間後に抗rGel抗体を使用してDOV13細胞においてr-Gel発現を検出した。図20Cでは、内部移行の1時間後にSKBr3、MCF-7およびMDA-MB-231乳がん細胞において、HERV-K envタンパク質(6H5;赤)またはrGelシグナル(緑)を検出した。黄色-橙色は、標的細胞質におけるHERV-K envタンパク質とrGel毒素の共局在を示す(右パネル)。対照IgGを用いて処置されたマウスと比較した、6H5(p=0.0052)および6H5-r-Gel(p<0.0001)を用いて処置されたMDA-MB-231細胞を接種されたマウスにおいて、抗腫瘍効果を比較した(図20D)。
図20-2】同上。
【0052】
図21-1】図21では、種々のHERV-K陽性乳がん細胞株においてインビトロおよびインビボで、金ナノ粒子(GNP)のデリバリーが実証された。裸のGNP(図21A)または6H5-GNP(図21B)とともに2時間インキュベートした後にTEMを使用して、GNP(暗い点)がMDAMB231細胞においてインビトロで検出された。GNPは、銀増強アッセイを使用して、マウスの尾静脈における6H5-GNPまたは6H5scFv-GNPを用いた静脈内注射の24時間後にMDAMB231腫瘍(図21C)またはSKBr3腫瘍(図21D)において検出された。(E/F)GNP(白色矢印)は、6H5-GNPを用いた静脈内注射の24時間後にTEMによってマウスから単離された腫瘍のMDAMB231細胞において検出された。腫瘍細胞に隣接してHERVウイルス粒子(緑色矢印)が観察された。
図21-2】同上。
【0053】
図22図22では、Nuanceシステムを使用するインビボイメージングによって、6H5-Alexa647を用いた静脈内注射の24時間後により高い密度の6H5 mAbが、マウスから得た腫瘍結節において検出された(赤色)。
【0054】
図23図23では、マウスを、BC患者血清試料から同定された5種のMAPSを用いて免疫化し、HERV-K SUエンベロープタンパク質(K10G15)、ERV3(E3G4)、Rec、Np9およびHERV-K TMエンベロープタンパク質を含む種々のHERVウイルスタンパク質に対する、3匹のマウスにおいて生成された抗体の親和性を調べた。マウスの血清において抗HERV-KSU抗体が実証され、抗体配列は、マウス番号2から生成されたハイブリドーマ細胞から生成された。
【発明を実施するための形態】
【0055】
有用性
本明細書は、ヒト化抗HERV-K抗体を生成する方法を提供する。hu6H5の抗腫瘍効果が、インビトロおよびインビボで実証された。
【0056】
本発明は、がんを患っている患者を処置する方法を提供する。第20の実施形態では、本発明は、がんを処置する方法であって、適宜、1つまたは複数の免疫チェックポイント遮断剤と組み合わされてもよい、治療用ヒト化抗HERV-K抗体またはCAR、BiTEもしくはADC、がんワクチンからなるその融合物を投与することを含む方法を提供する。これらの治療薬の各々は、免疫系を個々に標的とする。第21の実施形態では、本発明の方法は、転移を阻害する。第22の実施形態では、本発明の方法は、腫瘍サイズを低減する。第23の実施形態では、本発明の方法は、腫瘍細胞の成長を阻害する。第24の実施形態では、本発明の方法は、がんおよびがん転移を検出する。
【0057】
定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用される一部の用語および語句の意味を以下に列挙する。別に記載しない限り、または文脈から暗示されている場合を除き、これらの用語および語句は、以下の意味を有する。これらの定義は、特定の実施形態の説明を補助するためであって、特許請求される本発明を制限するよう意図するものではない。別に定義されない限り、すべての技術用語および科学用語は、分子生物学の技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。用語の意味と、本明細書において提供される定義の間のいずれかの明らかな矛盾については、本明細書において提供される意味が優先されるべきである。
【0058】
「5-アザ」は、5-アザシチジンのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0059】
「6H5」は、本発明者らの研究室において開発されたマウス抗HERV-Kモノクローナル抗体のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0060】
「約」は、分子生物学の技術分野の当業者によって理解され、使用される状況に応じてある程度変わる。使用される状況を考慮して分子生物学の技術分野の当業者にとって明確ではない用語の使用がある場合には、「約」は、値の最大プラスまたはマイナス10%を意味する。
【0061】
「抗体-薬物コンジュゲート(ADC)」は、永久または不安定リンカーのいずれかを用いて小分子抗がん薬または別の治療薬を抗体に付着することによって構築された高度に強力な生物学的薬物のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。抗体は、標的細胞上でのみ見出される特異的抗原を標的とする。
【0062】
「B7ファミリー」は、未定義の受容体を有する阻害性リガンドのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。B7ファミリーは、B7-H3およびB7-H4を包含し、両方とも腫瘍細胞および腫瘍浸潤性細胞で上方制御される。完全hB7-H3およびhB7-H4配列は、それぞれGenBank受託番号Q5ZPR3およびAAZ17406の下で見出すことができる。
【0063】
「BiTE」は、二重特異性T細胞エンゲージャーのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。BiTEは、1つは、T細胞上の細胞表面分子(例えば、CD3ε)を標的とし、もう一方は、悪性細胞の表面上の抗原を標的とする、2種の異なる抗体に由来する2つの連結されたscFvを有する組換え二重特異性タンパク質を意味する。2つのscFvは、短い可動性リンカーによって一緒に連結される。term DNAコード化BiTE(DBiTE)という用語は、インビボで発現され得る、任意のBiTEをコードするDNAプラスミドを含む。
【0064】
「がん抗原」または「腫瘍抗原」は、(i)腫瘍特異的抗原、(ii)腫瘍関連抗原、(iii)腫瘍特異的抗原を発現する細胞、(iv)腫瘍関連抗原を発現する細胞、(v)腫瘍上の胚性抗原、(vi)自己腫瘍細胞、(vii)腫瘍特異的膜抗原、(viii)腫瘍関連膜抗原、(ix)増殖因子受容体、(x)増殖因子リガンドおよび(xi)がんと関連する任意の他の種類の抗原または抗原提示細胞または材料のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0065】
「併用療法」は、組合せの有益な効果を提供するレジメンで逐次法での各薬剤または療法の投与、および実質的に同時法での、例えば、固定比のこれらの活性薬剤を有する単一カプセル剤での、もしくは各薬剤の複数の、別個のカプセルでのこれらの薬剤または療法の同時投与を包含する。併用療法はまた、個々のエレメントを別個の時間で、および/または異なる経路によって投与できるが、組み合わせて、併用療法の各薬剤もしくは腫瘍処置アプローチの同時作用または薬物動態および薬動力学効果によって有益な効果を提供するように作用する組合せを含む。
【0066】
「CTL」は、細胞溶解性T細胞または細胞傷害性T細胞のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0067】
「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)」は、T細胞表面分子であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。このタンパク質は、CD80およびCD86への結合によって免疫系を下方制御する。「CTLA-4」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4のバリアント、アイソフォームおよび種相同体およびhCTLA-4との少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全hCTLA-4配列は、GenBank受託番号P16410の下で見出すことができる。
【0068】
指定されたポリペプチドまたはタンパク質「に由来する」は、ポリペプチドの起源のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。好ましくは、特定の配列に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、その配列またはその部分に対して本質的に同一であるアミノ酸配列を有し、部分は、少なくとも10~20個のアミノ酸、好ましくは、少なくとも20~30個のアミノ酸、より好ましくは、少なくとも30~50個のアミノ酸からなるか、またはそうでなければ分子生物学の技術分野の当業者が配列中にその起源を有すると同定可能である。別のペプチドに由来するポリペプチドは、出発ポリペプチドに対して1つまたは複数の突然変異を有する場合がある、例えば、別のアミノ酸残基と置換された、または1つもしくは複数のアミノ酸残基挿入もしくは欠失を有する1つまたは複数のアミノ酸残基。ポリペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を含み得る。このようなバリアントは、出発分子と100%未満の配列同一性または類似性を必ず有する。一部の実施形態では、ペプチドはヌクレオチド配列によってコードされる。本発明のヌクレオチド配列は、クローニング、遺伝子療法、タンパク質発現および精製、突然変異導入、それを必要とする宿主のDNAワクチン接種、例えば、受動免疫のための抗体生成、PCR、プライマーおよびプローブ生成などを含むいくつかの適用にとって有用であり得る。
【0069】
「エフェクター細胞」は、免疫応答の認知および活性化局面とは対照的に免疫応答のエフェクター局面に関与する免疫細胞のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。例示的免疫細胞には、骨髄系またはリンパ系起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、細胞溶解性T細胞(CTL)を含むB細胞およびT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば、好中球、顆粒球、肥満細胞および好塩基球が含まれる。一部のエフェクター細胞は、特異的Fc受容体(FcR)を発現し、特異的免疫機能を実施する。
【0070】
「エピトープ」とは、抗体へ特異的結合可能なタンパク質決定基を意味する。エピトープは普通、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからなり、普通、特異的三次元構造特徴ならびに特異的電荷特徴を有する。立体配座および非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われるが、後者へのものは失われない点で区別される。エピトープは、結合に直接的に関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)および結合に直接的に関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的抗原結合性ペプチドによって効果的に遮断されるアミノ酸残基(言い換えれば、アミノ酸残基は、特異的抗原結合性ペプチドのフットプリント内にある)を含み得る。
【0071】
「FACS」は、蛍光活性化セルソーターを指す。
【0072】
「HERV」は、ヒト内因性レトロウイルスのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有し、「HERV-K」は、内因性レトロウイルスのHERV-Kファミリーのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「ヒト内因性レトロウイルス」(HERV)は、すべての正常細胞のゲノム中に組み込まれたプロウイルスDNAの形態で存在し、メンデル遺伝パターンによって伝達されるレトロウイルスである。「HERV-X」(ここで、「X」は英語の文字である)は、HERVの他のファミリーのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「Env」は、ウイルスエンベロープタンパク質のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「KSU」は、HERV-Kエンベロープ表面融合タンパク質のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有し、「KTM」は、HERV-K Env膜貫通タンパク質のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「env」は、ウイルスエンベロープRNAのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。pLVXKは、HERV-K発現ベクターのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。MDA-MB-231 pLVXKまたは231-Kという用語は、 pLVXKで形質導入されたMDA-MB-231細胞を指す。pLVXCは、対照発現ベクターのみのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。MDA-MB-231 pLVXCまたは231-Cという用語は、pLVXCで形質導入されたMDA-MB-231細胞を指す。HERV-Kは、それだけには限らないが、黒色腫(Muster et ah, 2003; Buscher et al., 2005; Li et al, 2010; Reiche et ah、2010; Serafino et al, 2009)、乳がん(Patience et al, 1996; Wang-Johanning et al, 2003; Seifarth et al, 1995)、卵巣がん(Wang-Johanning et al., 2007)、リンパ腫(Contreras-Galindo et al., 2008)および奇形がん腫(Bieda et al., 2001 ; Lower et al., 1993)を含む多数の腫瘍の種類で発現される。さらに、HIVによって感染したもの(Jones et al., 2012)を含む感染細胞も、HERV-Kを発現する。これは、HERV-Kを標的とする1つのCAR設計を使用して、さまざまながんおよび感染症を処置できるという魅力的な機会を提供する。
【0073】
「HM」は、ヒト化マウスのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有し、「HTM」は、ヒト腫瘍マウスのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0074】
「hTAb」は、完全ヒト腫瘍抗体のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0075】
「ヒト内因性レトロウイルス-K」、「HERV-K」、「HERV」、「ヒト内因性レトロウイルス」、「内因性レトロウイルス」および「ERV」は、細胞によって天然に発現される、または内因性レトロウイルスの遺伝子でトランスフェクトされた細胞で発現される内因性レトロウイルスの任意のバリアント、アイソフォームおよび種相同体を含む。
【0076】
「ICP」は、免疫チェックポイントのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0077】
「IHC」は、免疫組織化学のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0078】
「ILC」は、浸潤性小葉癌のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「DCIS」は、非浸潤性乳管がんのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「IDC」は、浸潤性乳管癌のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0079】
「免疫細胞」は、造血起源であり、免疫応答における役割を果たす細胞である。免疫細胞には、リンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)、ナチュラルキラー細胞および骨髄細胞(例えば、単球、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球および顆粒球)が含まれる。
【0080】
「免疫チェックポイント遮断薬」は、1つまたは複数のチェックポイントタンパク質を完全にまたは部分的に低減する、阻害する、干渉する、またはモジュレートする分子のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイント遮断薬は、免疫チェックポイントと関連する阻害性シグナルを妨げる。一部の実施形態では、免疫チェックポイント遮断薬は、免疫チェックポイントと関連する阻害性シグナル伝達を撹乱する抗体またはその断片である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント遮断薬は、阻害性シグナル伝達を撹乱する小分子である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント遮断薬は、チェックポイント遮断薬タンパク質間の相互作用を妨げる抗体、その断片または抗体模倣物、例えば、PD-1とPD-L1の間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント遮断薬は、CTLA-4とCD80またはCD86の間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント遮断薬は、LAG3とそのリガンドの間またはTIM-3とそのリガンドの間の相互作用を妨げる抗体またはその断片である。チェックポイント遮断薬はまた、分子(またはそのバリアント)自体の可溶性形態の形態、例えば、可溶性PD-L1またはPD-L1融合物であり得る。
【0081】
「免疫チェックポイント」は、抗原のT細胞受容体認識の振幅および質を調節する同時刺激性および阻害性シグナルのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。一部の実施形態では、免疫チェックポイントは、阻害性シグナルである。一部の実施形態では、阻害性シグナルは、PD-1とPD-L1の間の相互作用である。一部の実施形態では、阻害性シグナルは、CD28結合に置き換わる、CTLA-4とCD80またはCD86の間の相互作用である。一部の実施形態では、阻害性シグナルは、LAG3とMHCクラスII分子の間の相互作用である。一部の実施形態では、阻害性シグナルは、TIM3とガレクチン9の間の相互作用である。
【0082】
「インビボ」は、生存している生物において生じるプロセスのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「哺乳動物」または「対象」または「患者」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトと非ヒトの両方を含み、それだけには限らないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウシ、ウマおよびブタを含む。
【0083】
「成長を阻害する」(例えば、腫瘍細胞などの細胞へ言及して)とは、HERV-K特異的治療薬と接触した場合の、HERV-K特異的治療薬と接触していない同一細胞の成長と比較した、細胞成長における任意の測定可能な減少、例えば、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%または100%の細胞培養物の成長の阻害を含むものとする。細胞成長のこのような減少は、抗HERV-K剤によって個別に、または組合せ、例えば、アポトーシスのいずれかで発揮されるさまざまな機序によって生じ得る。
【0084】
「ISD」は、免疫抑制ドメインのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0085】
「K-CAR」または「HERV-Kenv CAR」は、HERV-Kエンベロープ遺伝子(表面または膜貫通)キメラ抗原受容体(CAR)遺伝的コンストラクトのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。「HERV-Kenv CAR-T細胞」または「K-CAR-T細胞」という用語は、K-CARまたはHERV-Kenv CARレンチウイルスまたはSleeping Beauty発現系で形質導入されたT細胞のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0086】
「KD」は、普通はshRNAによるノックダウンのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0087】
「連結された」、「融合された」または「融合」は、同義的に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含むいかなる手段によってであれ、2つまたはそれより多い要素または成分またはドメインを一緒に接合することを指す。化学的コンジュゲーション(例えば、ヘテロ二機能的架橋剤を使用する)の方法は、当技術分野で公知である。
【0088】
「リンカー」または「リンカードメイン」は、直線的な配列で2つまたはそれより多いドメイン(例えば、HERV-Kを標的とするヒト化抗体およびT細胞タンパク質を標的とする抗体)を接続する配列のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。本明細書において開示される方法において使用するのに好適なコンストラクトは、1つまたは複数の「リンカードメイン」、例えば、ポリペプチドリンカーを使用できる。「ポリペプチドリンカー」は、直線的なポリペプチド鎖のアミノ酸配列で2つまたはそれより多いドメインを接続するペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。このようなポリペプチドリンカーは、ポリペプチド分子に可動性を提供できる。ポリペプチドリンカーは、1つまたは複数のFcドメインおよび/または薬物を接続する(例えば、遺伝子的に融合する)ために使用できる。
【0089】
「リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)」は、MHCクラスII分子への結合によるリンパ球活性の阻害と関連する阻害性受容体である。この受容体は、Treg細胞の機能を増強し、CD8+エフェクターT細胞機能を阻害する。「LAG3」は、本明細書で使用される場合、ヒトLAG3(hLAG3)、hLAG3のバリアント、アイソフォームおよび種相同体および少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全hLAG3配列は、GenBank受託番号P18627の下で見出すことができる。
【0090】
「マンモスフェア」は、細胞の別個のクラスターを形成する非付着性非分化条件下で培養された乳房または乳腺細胞のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0091】
「核酸」は、一本鎖または二本鎖いずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。具体的に制限されない限り、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。特に断りのない限り、特定の核酸配列は、その保存的に改変されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)および相補配列ならびに明確に示された配列も暗黙に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を作成することによって達成できる。Batzer et al., Nucleic Acid Res., 19, 5081 (1991); Ohtsuka et al., Biol. Chem., 260, 2605-2608 (1985);およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes, 8, 91-98 (1994)を参照されたい。アルギニンおよびロイシンについては、第2の塩基での改変も保存的であり得る。核酸という用語は、遺伝子、cDNAおよび遺伝子によってコードされるmRNAと同義的に使用される。
【0092】
「PBMC」は、末梢血単核細胞のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0093】
「PDX」は、患者由来の異種移植片のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。PDXは通常、ヒトがんの免疫不全マウスモデル中にヒト腫瘍細胞または腫瘍組織を移植することによって生成される。
【0094】
2つまたはそれより多い核酸またはポリペプチド配列に関連して「同一性パーセント」とは、以下に記載される配列比較アルゴリズムの1つ(例えば、BLASTPおよびBLASTNまたは当業者に利用可能な他のアルゴリズム)を使用して、または目視検査によって測定されるような、最大対応のために比較され、アラインされた場合に同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の指定のパーセンテージを有する2つまたはそれより多い配列または部分配列を指す。適用に応じて、「同一性パーセント」は、比較されている配列の領域にわたって、例えば、機能的ドメインにわたって存在し得る、あるいは、比較されるべき2つの配列の全長にわたって存在し得る。配列比較のために、通常、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合には、試験および参照配列がコンピュータ中にインプットされ、部分配列座標が指定され、必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムによって、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math., 2, 482 (1981)のローカル相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol., 48, 443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 85, 2444 (1988)の類似性の探索の方法によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、米国、ウィスコンシン州、マディソン中のGAP、BESHERV-KIT、FASTAおよびHERV-KASTA)のコンピュータによって計算された実行によって、または目視検査によって実施できる。配列同一性および配列類似性パーセントを決定するのに適しているアルゴリズムの一例として、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215, 403-410 (1990)に記載されるBLASTアルゴリズムがある。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターウェブサイトを介して公的に入手可能である。
【0095】
「薬学的に許容される」とは、一般に、合理的な利益/リスク比に釣り合った、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴わない、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織、臓器および/または体液と接触した使用に適している化合物、材料および組成物および/または投与形を意味する。
【0096】
「プログラム死リガンド-1(PD-L1)」は、PD-1への結合の際にT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドのうちの1つである(もう一方は、PD-L2である)。「PD-L1」は、本明細書で使用される場合、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1のバリアント、アイソフォームおよび種相同体およびhPD-L1との少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全hPD-L1配列は、GenBank受託番号Q9NZQ7の下で見出すことができる。
【0097】
「プログラム死-1(PD-1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。PD-1は、インビボでは以前に活性化されたT細胞で主に発現され、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合する。「PD-1」は、本明細書で使用される場合、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォームおよび種相同体およびhPD-1との少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全hPD-1配列は、GenBank受託番号AAC51773の下で見出すことができる。
【0098】
「組換え宿主細胞」(または簡単に「宿主細胞」)は、発現ベクターが導入された細胞のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も指す。突然変異または環境の影響のいずれかのために、一部の改変が後に続く世代において生じる場合があるので、このような後代は、実際、親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用される場合に、依然として「宿主細胞」の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ、例えば、CHO細胞、HEK293細胞、NS/0細胞およびリンパ性細胞が含まれる。
【0099】
「scFv」は、単鎖可変断片のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0100】
「SU」は、HERV-K表面タンパク質のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0101】
「十分な量」または「に十分な量」とは、所望の効果をもたらすのに十分な量、例えば、腫瘍のサイズを低減するのに十分な量を意味する。
【0102】
2つまたはそれより多い個々の成分によってもたらされる効果に関して「相乗作用」または「相乗作用の」は、これらの成分によってもたらされた総効果が、組合せで利用された場合に、単独で作用する各成分の個々の作用の合計よりも大きい現象のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0103】
「T細胞膜タンパク質-3(TIM3)」は、TH1細胞応答の阻害によるリンパ球活性の阻害に関与する阻害性受容体である。そのリガンドは、ガレクチン9であり、がんの種々の種類において上方制御される。「TIM3」は、本明細書で使用される場合、ヒトTIM3(hTIM3)、hTIM3のバリアント、アイソフォームおよび種相同体および少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全hTIM3配列は、GenBank受託番号Q8TDQoの下で見出すことができる。
【0104】
「T細胞」は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。T細胞という用語は、TH1細胞、TH2細胞およびTH17細胞を包含する。
【0105】
「治療上有効量」とは、疾患の症状を改善するのに有効である量である。治療上有効な量は、予防が考慮される療法であり得るので「予防上有効量」であり得る。
【0106】
「TM」は、HERV-K膜貫通タンパク質のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0107】
「TNBC」は、トリプルネガティブ乳がんのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。
【0108】
「トランスジェニック非ヒト動物」は、1つまたは複数のヒト重および/または軽鎖導入遺伝子またはトランスクロモソーム(動物の天然ゲノムDNA中に組み込まれた、または組み込まれていない)を含み、完全ヒト抗体を発現できるゲノムを有する非ヒト動物のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。例えば、トランスジェニックマウスは、ヒト軽鎖導入遺伝子と、ヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖トランスクロモソームのいずれかを有する場合があり、その結果、マウスは、HERV-K抗原および/またはHERV-Kを発現する細胞で免疫化されると、ヒト抗HERV-K抗体を生成する。ヒト重鎖導入遺伝子は、トランスジェニックマウス、例えば、HuMAbマウスの場合のようにマウスの染色体DNA中に組み込まれる場合がある、またはヒト重鎖導入遺伝子は、WO02/43478に記載されるようなトランスクロモソームKMマウスの場合のように染色体外で維持される場合がある。このようなトランスジェニックおよびトランスクロモソームマウス(まとめて、本明細書において「トランスジェニックマウス」と呼ばれる)は、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチングを起こすことによって、所与の抗原に対してヒトmAbの複数のアイソタイプIgG、IgA、IgM、IgDまたはIgEなど)を生成できる。トランスジェニック非ヒト動物はまた、特定の抗原に対する抗体の生成のために、このような特定の抗体をコードする遺伝子を導入することによって、例えば、動物の乳において発現される遺伝子に作動可能に連結することによって使用できる。
【0109】
「処置」とは、症状または疾患状態を和らげる、寛解させる、停止する、または根絶する(治癒する)ことを目的とした本発明の治療上活性な化合物の有効量の投与を意味する。
【0110】
「ベクター」は、連結された別の核酸を輸送可能な核酸分子のバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。ベクターの1つの種類として、「プラスミド」があり、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループのバイオテクノロジーの技術分野で認識される意味を有する。別の種類のベクターとして、ウイルスベクターがあり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノム中にライゲートされ得る。一部のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。宿主細胞中への導入の際に、他のベクター(非エピソーム哺乳動物ベクターなど)を宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、一部のベクターは、作動可能に連結された遺伝子の発現を指示できる。このようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または簡単に、「発現ベクター」)と呼ばれる。組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは、ベクターの最も一般的な形態であるので、本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」という用語は同義的に使用される。しかし、本発明は、同等の機能を果たす、発現ベクターのこのような他の形態、例えば、ウイルスベクター(複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなど)を含むように意図される。
【0111】
過去15年にわたって、がん治療用抗体、例えば、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)、アービタックス(登録商標)(セツキシマブ)および他のものの開発によって、世界中で何万もの命が救われた。特に、トラスツズマブを使用するHER2陽性転移性乳がんまたは卵巣がんの処置は、患者転帰を劇的に変更した40。抗体治療薬は、小分子薬に対して別個の進歩、すなわち、(i)定義された作用の機序、(ii)より高い特異性およびより少ないオフターゲット効果および(iii)予測可能な安全性および毒性学的プロファイルを提供する41、42。現在>200の抗体治療薬が、米国において臨床試験中である。抗Her2および抗EGFRモノクローナルを用いる広範な研究が証明するように、高親和性でその分子標的に結合するその能力に基づいて同定された数千のうち数個の抗体のみが、臨床上有効ながん細胞死滅に必要な特性を示す41。治療用抗体の有効性は、標的細胞におけるアポトーシスの直接誘導によって、または抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性(CDC)のようなエフェクター媒介性機能を介して強力な腫瘍細胞毒性を誘発するその能力に主に起因する41、42。
【0112】
抗体単離のための主要な方法論は、(i)ファージまたは微生物ディスプレイを使用する、免疫化動物からの、または合成ライブラリーからのライブラリーのインビトロスクリーニング43~45、および(ii)B細胞不死化またはクローニング後の抗体の単離46~48。これらの方法論は、以下の欠点のいずれかまたは両方を抱えており、単離できる独特の抗体の数を厳しく制限する:(i)少数の高親和性抗体を単離するためでさえ広範なスクリーニングを必要とすることおよび(ii)ヒトに注射されたこれらの抗体に対する免疫応答。したがって、治療用モノクローナル抗体(mAb)のスクリーニング/単離のために使用される方法論に関わらず、発見から臨床までの移行速度は非効率的であり、骨の折れるものである47、49。
【0113】
治療用mAbの承認を加速した1つの進歩は、相補性決定領域(CDR)グラフト技術によるヒト化抗体の生成であった。科学的参考文献10を参照されたい。CDRグラフトでは、非ヒト抗体CDR配列は、標的特異性を維持するためにヒトフレームワーク配列に翻訳される。
【0114】
ヒト化抗体および抗体薬物コンジュゲート(ADC)医薬組成物
HERV-Kを過剰発現するがん細胞は、細胞あたりより多くの抗体が結合される可能性があるので本発明の抗HERV-Kヒト化抗体およびADCの特に良好な標的であり得る。したがって、第25の実施形態では、本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCを用いて処置されるべきがん患者は、その腫瘍細胞においてHERV-Kの過剰発現を有すると診断された患者、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、肺がんまたは結腸直腸がん患者である。
【0115】
抗HERV-Kヒト化抗体またはADCの精製の際、それらを周知の医薬品担体または賦形剤を使用して医薬組成物に製剤化できる。
【0116】
医薬組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed. (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1995)に開示されるものなどの従来技術に従って、薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤を用いて製剤化できる。
【0117】
薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤は、本発明のヒト化抗体またはADCおよび選択された投与様式に適していなくてはならない。医薬組成物の担体および他の成分の適合性は、抗原結合の際に選択された本発明の化合物または医薬組成物の所望の生物学的特性に対する著しい負の影響がないことに基づいて決定される(例えば、実質的未満の影響(10%以下の相対阻害、5%以下の相対阻害など))。
【0118】
本発明の医薬組成物はまた、希釈剤、増量剤、塩、バッファー、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-20またはTween-80)、安定化剤(例えば、糖またはタンパク質不含アミノ酸)、保存料、組織固定剤、可溶化剤および/または医薬組成物中に含めるのに好適な他の材料も含み得る。
【0119】
本発明の医薬組成物中のヒト化抗体またはADCの実際の投与量レベルは、患者にとって毒性ではない、特定の患者、組成物および投与様式の所望の治療的応答を達成するのに有効であるヒト化抗体またはADCの量を得るために変わり得る。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、使用されている特定の化合物の投与経路、投与時間、排出速度、処置の持続期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および以前の病歴および医学の技術分野において周知の同様の因子を含むさまざまな薬物動態因子に応じて変わる。
【0120】
医薬組成物は、任意の好適な経路および様式によって投与され得る。本発明のヒト化抗体またはADCを投与する好適な経路は、当技術分野で周知であり、分子生物学の技術分野における当業者によって選択され得る。
【0121】
第26の実施形態では、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。
【0122】
「非経口投与」および「非経口的に投与された」という語句は、本明細書で使用される場合、経腸および局所投与以外の、普通、注射による投与様式を意味し、上皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入を含む。
【0123】
第27の実施形態では、医薬組成物は、静脈内または皮下注射または注入によって投与される。
【0124】
薬学的に許容される担体は、本発明のヒト化抗体またはADCと生理学的に適合する、ありとあらゆる好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、抗酸化物質および吸収遅延剤などを含む。
【0125】
本発明の医薬組成物において使用できる好適な水性および非水性担体の例として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油およびゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルおよび/または種々の緩衝液が挙げられる。他の担体は、医薬品の技術分野において周知である。
【0126】
薬学的に許容される担体として、滅菌水溶液または分散物および滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。任意の従来媒体または薬剤が、本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCと不適合である場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0127】
例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用して、分散物の必要な粒子サイズの維持および界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持できる。
【0128】
本発明の医薬組成物はまた、医薬上許容される抗酸化物質、例えば、(1)水溶性抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性抗酸化物質、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどおよび(3)金属キレート化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸なども含み得る。
【0129】
本発明の医薬組成物はまた、組成物中に等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリセロールまたは塩化ナトリウムを含み得る。
【0130】
本発明の医薬組成物はまた、医薬組成物の有効期間または有効性を増強し得る、選択された投与経路にとって適当な1つまたは複数のアジュバント、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存料または緩衝液を含有し得る。本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCは、化合物を迅速な放出から保護するであろう担体を用いて調製できる、例えば、留置剤、経皮パッチおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む徐放製剤。このような担体は、単独でまたはワックスまたは分子生物学の技術分野において周知の他の材料とともに、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を含み得る。このような製剤を調製する方法は、分子生物学の技術分野における当業者に一般に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed. (Marcel Dekker, Inc., New York, 1978)を参照されたい。
【0131】
第28の実施形態では、本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCは、インビボでの適切な分布を確実にするように製剤化され得る。非経口投与のための薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散物および滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。任意の従来媒体または薬剤が、活性化合物と不適合である場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物も組成物中に組み込むことができる。
【0132】
注射のための医薬組成物は、通常、無菌であり、製造および保存の条件下で安定していなくてはならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高い薬物濃度に好適な他の秩序の構造として製剤化できる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油および注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルを含有する水性または非水性溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングを使用して、分散物の必要な粒子サイズの維持および界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持できる。多くの場合には、組成物中に等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含むことによって引き起こされ得る。滅菌注射用溶液は、必要な量の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCを、例えば、上記で列挙されるような成分の1つまたは組合せとともに適当な溶媒中に組み込むこと、それに続く滅菌微量濾過によって調製できる。一般に、分散物は、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCを、基本分散媒および例えば、上記で列挙されたものから必要な他の成分を含有する滅菌媒体中に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末のための、調製法の例として、事前に滅菌濾過されたその溶液から有効成分および任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結-乾燥(凍結乾燥)がある。
【0133】
滅菌注射用溶液は、必要な量の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCを、上記で列挙されるような成分の1つまたは組合せとともに適当な溶媒中に組み込むこと、必要に応じて、それに続く滅菌微量濾過によって調製できる。一般に、分散物は、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCを、基本分散媒および上記で列挙されたものから必要な他の成分を含有する滅菌媒体中に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末のための、調製法の例として、事前に滅菌濾過されたその溶液から抗HERV-Kヒト化抗体またはADCおよび任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結-乾燥(凍結乾燥)がある。
【0134】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗HERV-Kヒト化抗体もしくはADCまたは本発明の抗HERV-Kヒト化抗体もしくはADCの組合せを含有し得る。
【0135】
抗HERV-Kヒト化抗体またはADCの効率的な投与量および投与計画は、処置されるべき疾患または状態に応じて変わり、分子生物学の技術分野の当業者によって決定できる。本発明の化合物の治療上有効な量の例示的な限定されない範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば、約0.1~50mg/kg、例えば、約0.1~20mg/kg、例えば、約0.1~10mg/kg、例えば、約0.5~5mg/kg、例えば、約5mg/kg、例えば、約4mg/kgまたは約3mg/kgまたは約2mg/kgまたは約1mg/kgまたは約0.5mg/kgまたは約0.3mg/kgである。本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCの治療上有効な量の例示的な限定されない範囲は、特に、本明細書において開示されるような抗体011、098、114または111の、約0.02~30mg/kg、例えば、約0.1~20mg/kgまたは約0.5~10mg/kgまたは約0.5~5mg/kg、例えば、約1~2mg/kgである。
【0136】
分子生物学の技術分野における通常の技術を有する医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方できる。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するために必要なものよりも低いレベルで、医薬組成物において使用される抗HERV-Kヒト化抗体またはADCの用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を段階的に増大できる。本発明の組成物の好適な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量となる。このような有効な用量は、一般に、上記の因子に応じて変わるであろう。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下であり得る、例えば、標的の部位の近位に投与され得る。必要に応じて、医薬組成物の有効な1日用量は、適宜、単位投与形で1日を通じて適当な間隔で別個に投与される2、3、4、5、6またはそれより多い部分用量として投与され得る。本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCにとって、単独で投与されることが可能であるが、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCを上記のような医薬組成物として投与することが好ましい。
【0137】
第29の実施形態では、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCは、10~1500mg/m2、例えば、30~1500mg/m2または例えば、50~1000mg/m2、または例えば、10~500mg/m2、または例えば、100~300mg/m2の毎週の投与量で注入によって投与され得る。このような投与は、例えば、1回~8回、例えば、3回~5回反復され得る。投与は、2時間~24時間、例えば、2時間~12時間の期間にわたる連続注入によって実施され得る。
【0138】
第30の実施形態では、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCは、30~1500mg/m2、例えば、50~1000mg/m2または100~300mg/m2の投与量で3週間毎の注入によって投与され得る。このような投与は、例えば、1回~8回、例えば、3回~5回反復され得る。投与は、2時間~24時間、例えば、2時間~12時間の一定期間にわたる連続注入によって実施され得る。
【0139】
第31の実施形態では、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCは、毒性副作用を低減するために、長期間、例えば、24時間より長い期間にわたる遅い連続に注入によって投与され得る。
【0140】
第32の実施形態では、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCは、50mg~2000mg、例えば、50mg、100mg、200mg、300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mgまたは2000mgなどの毎週の投与量で最大16回、例えば、4~10回、例えば、4~6回投与され得る。投与は、2~24時間、例えば、2~12時間の期間にわたる連続注入によって実施され得る。このようなレジメンは、例えば、6ヶ月または12ヶ月後に必要に応じて1回または複数回反復され得る。投与量は、例えば、生体試料を採取することおよび本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCの抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することによって、投与の際の血液中の本発明の抗HERV-Kヒト化抗体またはADCの量を測定することによって決定または調整され得る。
【0141】
第33の実施形態では、抗HERV-Kヒト化抗体またはADCは、維持療法、例えば、週に1回、6ヶ月以上の期間などによって投与され得る。
【0142】
第34の実施形態では、ADCは、本発明のADCの1回の注入と、それに続く本発明の抗HERV-K抗体、例えば、抗体6H5humの注入を含むレジメンによって投与され得る。
【0143】
二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)
第35の実施形態では、それを必要とする対象においてHERV-K陽性がんを処置する方法であって、対象に、2つの異なる抗原結合領域、CD3またはCD8に対する結合特異性を有するものと、HERV-Kに対する結合特異性を有するものとを含む二重特異性抗体の治療上有効な量を投与することを含む方法が本明細書において提供される。
【0144】
第36の実施形態では、本発明は、T細胞活性化リガンドCD3またはCD8に結合する第2の単鎖ヒト可変領域と直列に、HERV-Kに結合する第1の単鎖ヒト可変領域を含む二重特異性抗体に関する。第1および第2の単鎖ヒト可変領域は、アミノからカルボキシの順序にあり、リンカー配列が、前記セグメントの各々の間に介在し、スペーサーポリペプチドは、第1および第2の単鎖可変領域を連結する。
【0145】
本方法の第37の実施形態では、投与することは、静脈内または腹腔内である。
【0146】
本方法の第38の実施形態では、二重特異性結合分子は、前記投与ステップの際にT細胞に結合されない。
【0147】
本明細書において記載される方法の第39の実施形態では、方法は、対象にT細胞を投与することをさらに含む。特定の実施形態では、T細胞は、前記二重特異性結合分子と同一の分子に結合されない。
【0148】
第40の実施形態では、治療上有効な量の二重特異性結合分子、薬学的に許容される担体およびT細胞を含む医薬組成物が本明細書において提供される。第41の実施形態では、T細胞は、二重特異性結合分子に結合される。第42の実施形態では、二重特異性結合分子へのT細胞の結合は、非共有結合的である。第43の実施形態では、投与することは、HERV-K陽性がんの処置のための対象へのT細胞注入と組み合わせて実施される。第44の実施形態では、投与することは、T細胞注入を用いる患者の処置の後に実施される。第45の実施形態では、T細胞は、それが投与される対象に対して自己である。第46の実施形態では、T細胞は、それが投与される対象に対して同種異系である。第47の実施形態では、T細胞は、ヒトT細胞である。
【0149】
本明細書に記載される方法の第48の実施形態では、対象はヒトである。
【0150】
本方法の第49の実施形態では、二重特異性結合分子が、医薬組成物中に含有され、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0151】
二重特異性結合分子の第50の実施形態では、二重特異性結合分子は、その可溶性または細胞結合型形態Fc受容体に結合しない。二重特異性結合分子の一部の実施形態では、重鎖は、N結合型グリコシル化部位を破壊するように突然変異された。二重特異性結合分子の第51の実施形態では、重鎖は、N結合型グリコシル化部位であるアスパラギンをグリコシル化部位として機能しないアミノ酸と置き換えるアミノ酸置換を有する。二重特異性結合分子の第52の実施形態では、重鎖は、C1q結合部位を破壊するように突然変異された。第53の実施形態では、二重特異性結合分子は、補体を活性化しない。
【0152】
二重特異性結合分子の第54の実施形態では、HERV-K陽性がんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、黒色腫、結腸直腸がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がんまたはHERV-Kを発現する任意の他の新生物組織である。第55の実施形態では、HERV-K陽性がんは、原発腫瘍または転移性腫瘍、例えば、脳、骨または肺転移である。
【0153】
DNAコード化二重特異性T細胞エンゲージャー(DBiTE)
mAbおよび二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含む特定の抗体療法は、がん免疫療法の重要なツールである。BiTEは、がんの免疫療法の展望を変化させる可能性を有する人工二重特異性モノクローナル抗体のクラスである。BiTEは、がん細胞に対する宿主の免疫系、より詳しくはT細胞の細胞傷害性活性を指示する。BiTEは、2つの結合ドメインを有する。一方のドメインは、標的化される腫瘍(HERV-Kを発現する細胞のような)に結合し、もう一方は、T細胞上の分子への直接的な結合によって免疫系に関与する。この二重結合性活性が、腫瘍で直接的にT細胞活性化を駆動し、その結果、死滅化機能および腫瘍破壊をもたらす。DBiTEは、二重特異性モノクローナル抗体の多数の利点を共有する。両者は、2つの抗体断片をコードする操作されたDNA配列から構成される。患者自身の細胞が、送達されたDBiTE配列によってコードされる機能的BiTESを製造する工場からなる。耐性がんを処置するための多方面アプローチとして、BiTEのデリバリーおよびDBiTEの組合せが一度に投与されることを可能にすること。BiTE様分子の合成DNA設計は、最適化合成プラスミドDNAカセット中にそれらを操作することおよびコードすることを含む。次いで、DBiTEを筋肉中に局所注射し、筋肉細胞が遺伝子指令をタンパク質に変換し、分子をインビボで血流中に直接送り出して、腫瘍を探し、破壊することを可能にする。Perales-Puchalt et al., DNA-encoded bispecific T cell engagers and antibodies present long-term antitumor activity, JCI Insight, 4(8), e126086 (April 18, 2019)を参照されたい。前臨床研究では、DBiTEは、従来のBiTEと比較して独特のプロファイルを実証し、生成と関連する技術的課題の一部を克服した。さらなる情報については、PCT特許公開WO2016/054153(The Wistar Institute of Anatomy and Biology)およびWO2018/041827(PsioxusTherapeutics Limited)も参照されたい。
【0154】
HERV-K CAR-T療法
標的抗原に特異的なCARの多数の製剤が開発されている。例えば、国際特許公開WO2014/186469(理事会、テキサスシステム大学)を参照されたい。本明細書は、例えば、微小残存病変(MRD)を示す白血病患者を処置する目的で、インビボで長寿命の可能性を有するキメラ抗原受容体(CAR)媒介性T細胞を生成する方法を提供する。全体として、この方法は、可溶性分子、例えば、サイトカインを治療的可能性を増強するために細胞表面に融合させることができる方法を説明している。この方法の核心は、CART細胞を、以降mIL15と呼ばれるインターロイキン-15(IL-15)のヒトサイトカイン変異タンパク質を用いて同時改変することに依存している。mIL15融合タンパク質は、可動性セリン-グリシンリンカーを介して全長IL15受容体アルファに融合されたIL-15のコドン最適化cDNA配列から構成される。このIL-15変異タンパク質は、(i)外因性可溶性サイトカイン投与が毒性につながったので、mIL15発現をCAR+T細胞の表面に限定して、非標的インビボ環境へのサイトカインの核酸を制限し、それによって、その安全性プロファイルを潜在的に改善する、および(ii)IL-15Raとの関連でIL-15を提示して、生理学的に関連する定性的シグナル伝達を模倣する、ならびにより長いサイトカイン半減期のためのIL15/IL15Ra複合体の安定化および再利用のためにこのような様式で設計された。mIL15を発現するT細胞は、注入後のその生存にとって重要である、支持的サイトカインシグナル伝達を継続可能である。非ウイルスSleeping Beauty系遺伝子改変および臨床的に適用可能なプラットフォームでのその後の生体外拡大増殖によって生成されたmIL15+CAR+T細胞は、高い、低い腫瘍負荷を有する、または腫瘍負荷のないマウスモデルにおいて注入後の残留性が増強されたT細胞注入生成物をもたらした。さらに、mIL15 CAR+T細胞はまた、高および低腫瘍負荷モデルの両方において抗腫瘍効力の改善を実証した。レンチウイルスベクターにおいて、hu6H5 scFvを使用して、K-CARを生成した。
【0155】
併用療法
本明細書の療法は、インサイツでHERV-K+がん細胞の表面抗原へ抗体または断片が結合し、そこで免疫攻撃を刺激することに依存し、改変を用いずに使用できる。あるいは、前記の方法は、細胞傷害性薬剤が結合している抗体または結合断片を使用して実施できる。腫瘍細胞への細胞傷害性抗体または抗体結合断片の結合が、細胞の成長を阻害する、または細胞を死滅させる。
【0156】
HERV-K envタンパク質に特異的な抗体を、他の発現されたHERV抗原とともに使用できる。これは、いくつかの異なるHERVが発現される疾患の免疫療法および抗体処置にとって特に有用であり得る。例えば、前立腺におけるHERV-E、卵巣がんにおけるERV3、HERV-EおよびHERV-Kならびに他のがんにおけるERV3、HERV-HおよびHERV-W。
【0157】
共通ガンマ鎖受容体ファミリー(γC)中のサイトカインは、リンパ系機能、生存および増殖にとって重要であるT細胞の重要な共刺激分子である。IL-15は、養子療法にとって望ましいいくつかの特質を有する。IL-15は、長寿命メモリー細胞傷害性T細胞の生存を支持し、腫瘍常在性細胞の機能抑制の軽減を介して定着腫瘍の根絶を促進し、活性化誘導性細胞死(AICD)を阻害する恒常性サイトカインである。IL-15は、組織に限定され、病的状態下でのみであり、血清中または全身で任意のレベルで観察される。周囲の環境中に分泌される他のγCサイトカインとは異なり、IL-15は、IL-15受容体アルファ(IL-15Ra)の関連で産生細胞によってT細胞にトランス提示される。このサイトカインのT細胞および他の応答性細胞への独特のデリバリー機序は、(i)高度に標的化され、局在化され、(ii)IL-15の安定性および半減期を増大し、(iii)可溶性IL-15によって達成されるものとは質的に異なるシグナル伝達をもたらす。
【0158】
医薬組成物
本明細書はまた、HERV-K envタンパク質に特異的に結合する療法を、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と一緒に含む医薬組成物を対象とする。このような医薬組成物は、非経口、局所、経口または局所(エアゾールまたは経皮など)またはそれらの任意の組合せを含む任意の好適な方法で投与できる。好適なレジメンはまた、静脈内ボーラス注射による最初の投与と、それに続く1つまたは複数の間隔での反復用量を含む。
【0159】
本開示の化合物の医薬組成物は、所望の程度の純度を有する化合物を含有するペプチドリガンドを、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 18th ed., 1990)と混合することによって保存のために調製される。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントにとって非毒性である。
【0160】
本明細書における組成物はまた、処置されている特定の適応症に対して必要に応じて1種よりも多い活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的活性を有するものも含有し得る。あるいは、またはさらに、組成物は、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、成長阻害性薬剤および/または心臓保護薬を含み得る。このような分子は、意図される目的にとって有効である組合せで、量で適宜存在する。
【0161】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示するが、決して、本発明の範囲または内容を制限するように意図するものではない。
【実施例
【0162】
[実施例1]
【化2】
【0163】
VH
CAGGTGAAGCTGCAGCAGTCAGGACCTGACCTGGTGAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGATATCCTGCAAGGCGTCTGGTTACTCATTCACTGGCTACTACATGCACTGGGTGAAGCAGAGCCATGGAAAGAGCCTTGAGTGGATTGGACGTGTTAATCCTAACAGTGGTGGTACAAGCTACAACCAGAAGTTCAAGGACAAGGCCATATTAACTGTAGACAAGTCATCCAGCACAGCCTACATGGAGCTCCGCAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTACTGTGCAAGATCGAAAGGTAACTACTTCTATGCTATGGACTACTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAA(配列番号2)
【0164】
>FWJ_VH
QVKLQQSGPDLVKPGASVKISCKASGYSFTGYYMHWVKQSHGKSLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDKAILTVDKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号3)
【化3】
【表1】
【0165】
VL
GACATCGAGCTCACTCAGTCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGGGCCACCATATCCTGCAGAGCCAGTGAAAGTGTTGATAGTCATGGCACTAGTTTTATGCACTGGTACCAGCAGAAACCAGGACAGCCACCCAAATTCCTCATCTATCGTGCATCCAACCTAGAATCTGGGATCCCTGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTAGGACAGACTTCACCCTCACCATTAATCCTGTGGAGACAGATGATGTTGCAATCTATTACTGTCAGCAAAGTAATGAGGATCCTCCGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAAC(配列番号4)
【0166】
>FWJ_VL
DIELTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGQPPKFLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVETDDVAIYYCQQSNEDPPTFGGGTKLEIK(配列番号5)
【表2】
【化4】
【0167】
ヒト化単鎖可変断片(scFv)抗体の設計
抗体番号付けスキームおよびCDR定義:抗体番号付けサーバーは、KabatManデータベースの一部であり(http://www.bioinf.org.uk/)、これを使用し、増強Chothiaスキームに従ってこの研究のすべての抗体配列を番号付けした。このヒト化研究では、本発明者らは、拡張Chothia番号付けを抗体配列の接触CDR定義と組み合わせて、抗体軽鎖および重鎖のCDRを以下の位置に配置した:H-CDR1 30~35、H-CDR2 47~58 H-CDR3 93~101、L-CDR1 30~36、L-CDR2 46~55およびL-CDR3 89~96。
【0168】
ヒト鋳型の選択:ヒト化scFv遺伝子を生成するために、マウスVHおよびVLの6つの相補性決定領域(CDR)を、選択されたヒトフレームワーク(FR)にグラフトし、所与の抗体のヒト化に対して最高のアミノ酸配列同一性を示した。マウスFWJ抗体クローンの選択されたヒトFRとして、ヒト免疫グロブリン生殖系列配列を使用した(図1)。ヒトとマウスFWJ VHおよびVLの間でFRにおいて最高のアミノ酸配列類似性を示すヒト免疫グロブリン生殖系列配列を、V-questサーバー(http://www.imgt.org/IMGT_vquest)およびIg-BLASTサーバー(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast)を使用して独立に同定した。選択された重鎖VHIIIおよび軽KI鎖は保存された生殖系列に基づく。FWJのCDR残基をグラフトするために選択された生殖系列遺伝子の間でコンセンサスヒトFRを設計した。バーニアゾーン(Vernier zone)残基および鎖パッキング残基(packing residues)として知られる位置にマウス残基を保存しながら、コンセンサスヒトFRとは異なっていたマウスVHおよびVLのFR中のアミノ酸配列をヒト残基と置換した。
【0169】
>HUM1-FWJVH
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCKASGYSFTGYYMHWVRQAPGKGLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDRATLSVDNSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号6)。クエリー配列のZ-スコアは、0.7である。
【0170】
>Hum2 FWJVH VH
EVQLVESGGGLVQPGGSLKVSCKASGYSFTGYYMHWVRQASGKGLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDRFTISRDKSISTLYLQMSSLRSEDTAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)。クエリー配列のZ-スコアは、0.5である。
【0171】
>FWJ_VH
QVKLQQSGPDLVKPGASVKISCKASGYSFTGYYMHWVKQSHGKSLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDKAILTVDKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号8)。クエリー配列のZ-スコアは、-1.7である。
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
>HUM1FWJVL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGKAPKFLIYRASNLESGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSVQPEDFAVYYCQQSNEDPPTFGGGTKVEIK(配列番号9)。クエリー配列のZ-スコアは、0.1である。
【0176】
>HUM2FWJVL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGKSPKFLIYRASNLESGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAIYYCQQSNEDPPTFGGGTKVEIK(配列番号10)。クエリー配列のZ-スコアは、0.0である。
【0177】
>FWJ_VL
DIELTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGQPPKFLIYRASNLESGIPARFSGSGSRTDFTLTINPVETDDVAIYYCQQSNEDPPTFGGGTKLEIK(配列番号11)。クエリー配列のZ-スコアは、-1.0である。
【0178】
scFv遺伝子の最終ヒト化バージョン
ヒト化scFv-1
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCKASGYSFTGYYMHWVRQAPGKGLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDRATLSVDNSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGKAPKFLIYRASNLESGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSVQPEDFAVYYCQQSNEDPPTFGGGTKVEIK(配列番号12)
【0179】
ヒト化scFv-2
EVQLVESGGGLVQPGGSLKVSCKASGYSFTGYYMHWVRQASGKGLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDRFTISRDKSISTLYLQMSSLRSEDTAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGKSPKFLIYRASNLESGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAIYYCQQSNEDPPTFGGGTKVEIK(配列番号13)
【0180】
scFvの構築およびヒトKVおよび231抗原に対する生物活性の試験。FWJ_1およびFWJ_2抗体遺伝子の、可変の重鎖および軽鎖のクローンを増幅し、合成した。scFvをコードする遺伝子は、標準の20個のアミノ酸のリンカー(Gly4Ser)3GGGAR(配列番号14)を有するVH-リンカー-VLである。増幅された遺伝子を、BssHIIおよびNheI制限酵素を用いて消化し、周辺質タンパク質発現を制御するためのpelBプロモーターを含有するpETベースのベクター(PAB-myc)(Novagen、米国、ウィスコンシン州、マディソン)中に、金属アフィニティークロマトグラフィーによる精製のためのC末端の6×ヒスチジンタグとともに挿入し、DH5α細菌株中に形質転換した。形質転換されたクローンをアンピシリンブロスを有するLB中で一晩増幅させた。プラスミドDNAを調製し、DNAシーケンシングのために送った。scFvプラスミドの正しい配列をT7シャトル細菌株中に形質転換し、形質転換された細菌を、周辺質コンパートメントにおける可溶性タンパク質生成のために使用した。
【0181】
FWJ_1およびFWJ_2_scFv_遺伝子および翻訳されたタンパク質配列:以下の図は、FWJ_1およびFWJ_2_scFvの重鎖および軽鎖およびリンカーアームを描写する。FWJ_1およびFWJ_2_scFv遺伝子の操作では、2つのエピトープタグをC末端上に操作した:1)ニッケルアフィニティークロマトグラフィーによるコードされたscFvの精製を促進するための6つのhisタグ;および2)発現されたscFvの迅速な免疫化学認識を促進するためのmycタグ。
【0182】
scFv遺伝子の最終ヒト化バージョン
ヒト化scFv-1 FWJ_humscFv-1
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCKASGYSFTGYYMHWVRQAPGKGLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDRATLSVDNSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGKAPKFLIYRASNLESGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSVQPEDFAVYYCQQSNEDPPTFGGGTKVEIK(配列番号15)
【0183】
【化5】
【化6】
【0184】
ヒト化FWJ_humscFv-2
EVQLVESGGGLVQPGGSLKVSCKASGYSFTGYYMHWVRQASGKGLEWIGRVNPNSGGTSYNQKFKDRFTISRDKSISTLYLQMSSLRSEDTAVYYCARSKGNYFYAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASESVDSHGTSFMHWYQQKPGKSPKFLIYRASNLESGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFAIYYCQQSNEDPPTFGGGTKVEIK(配列番号18)
【0185】
【化7】
【化8】
【0186】
細菌宿主におけるScFvタンパク質の誘導:FWJ_1およびFWJ_2scFvクローンをT7シャトル細菌株中に形質転換した。T7シャトル細胞を1.4Lの2xYTおよびアンピシリン培地中、37℃で対数期(log-phage)(OD600=0.5)まで増殖させ、0.3mMのIPTGを用いて誘導し、30℃でさらに16時間増殖させた。誘導後、細菌を8000gで15分間4℃での遠心分離によって回収し、ペレットを-20℃で少なくとも2時間保存した。凍結ペレットを短時間解凍し、40mlの溶解緩衝液(PBS中、1mg/mlのリゾチームおよびEDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific、米国、マサチューセッツ州、ウォルサム)に懸濁した。溶解混合物を氷上で1時間インキュベートし、次いで、10mMのMgCL2および1μg/mlのDNアーゼIを添加し、混合物を25℃で20分間インキュベートした。最終溶解混合物を12000gで20分間遠心分離し、上清を収集した。この上清を周辺質抽出物と呼び、ニッケルカラムアフィニティークロマトグラフィーに使用した。
【0187】
FWJ_1およびFWJ_2_scFvタンパク質を使用するウエスタンブロット解析:溶解物AgおよびKSUタンパク質をドットブロット解析における抗原標的として使用した。非還元条件のものとして2~5μgのAgタンパク質および陰性対照として1μgの精製タンパク質を、ニトロセルロースメンブレンン上にロードした。PBS中、3%の脱脂乳を使用し、室温で3時間メンブレンをブロッキングした。その後、メンブレンをFWJ_1およびFWJ_2 scFvタンパク質の周辺質抽出物とともに4℃で一晩インキュベートした。メンブレンを、0.05% tween 20緩衝液を有するリン酸ナトリウム緩衝生理食塩水(PBST)で3回洗浄した。洗浄したメンブレンを、scFv上のc-Mycタグを認識するために抗c MycマウスIgGとともに室温で1時間インキュベートして、scFvによって結合された抗原の位置を同定した。PBSTで洗浄した後、メンブレンを、PBSで希釈した(1:3000 v/v)ヤギ抗マウスIgG(H+L)HRPコンジュゲートとともに室温で1時間インキュベートし、TMB基質の混合物を用いて特異的免疫反応のバンドを可視化した。
【0188】
本発明者らは、抗HERV-K mAb 6H5重鎖CDR(H-CDR1 30~35、H-CDR2 47~58、H-CDR3 93~101)および軽鎖CDR(L-CDR1 30~36、L-CDR2 46~55およびL-CDR3 89~96)を同定し、それらを選択されたヒトフレームワーク(FR)上にグラフトし、最高のアミノ酸配列同一性を示し、所与の抗体のヒト化を最適化した。ヒトとマウスVHおよびVLの間でFRにおいて最高アミノ酸配列類似性を示すヒト免疫グロブリン生殖系列配列を、V-quest(http://www.imgt.org/IMGT_vquest)およびIg-BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast)サーバーから独立に同定した。バーニアゾーン(Vernier zone)残基および鎖パッキング残基(packing residues)として知られる位置にマウス残基を保存しながら、コンセンサスヒトFRとは異なるマウスVHおよびVLのFR中のアミノ酸配列を、ヒト残基と置換した。候補ヒト化抗体遺伝子のVHおよびVL鎖のクローンを増幅し、合成した。scFvをコードし、標準の20個のアミノ酸のリンカー(Gly4Ser)3GGGARを有するVH-リンカー-VLを含む遺伝子を、周辺質タンパク質発現を制御するためのpelBプロモーターを含有するpETベースのベクター(PAB-myc)(Novagen、米国、ウィスコンシン州、マディソン)中に、金属アフィニティークロマトグラフィーによる精製のためのC末端の6×ヒスチジンタグおよび発現されたscFvの迅速な免疫化学認識を促進するためのmycタグとともに挿入した。scFvプラスミドの正しい配列を、周辺質コンパートメントにおける可溶性タンパク質生成のために使用した。2つのhu6H5クローン(FWJ1およびFWJ2)を選択し、抗原に対する結合親和性を決定した。両クローンとも、組換えHERV-K Env表面融合タンパク質(KSU)から生成された抗原およびMDA-MB-231乳がん細胞からの溶解物に結合できた。
【0189】
ヒトIgG1を有するHuVHまたはHuVLを、pcDNA3.4ベクター中にクローニングして、VH-CH(ヒトIgG1)またはVL-CL(ヒトカッパ)を生成した。哺乳動物発現のためにプラスミドをExpi293細胞中に一過性にトランスフェクトした。H鎖対L鎖プラスミドの比は、2:3とする。ウエスタンブロットを使用して、発現を決定し、還元条件下で49/23kDa(H鎖/L鎖)の予測されたMWが検出された(図1)。
【0190】
サイズおよび/または分子量によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分離をさらに使用して、タンパク質発現を決定した(図2)。最後に、エンドトキシンレベル<1EU/mgを有するヒト化6H5抗体(純度>95%)を使用して、インビトロおよびインビボで抗腫瘍効果を決定した。
【0191】
ELISAアッセイを使用して、hu6H5対m6H5の抗原結合感受性および特異性を比較した(図3)。これら2つのパラメータ間に有意差は検出されなかった。
【0192】
アポトーシスアッセイを使用して、がん細胞を死滅させることにおいてhu6H5およびm6H5の有効性を比較した。それぞれの抗体(1mlあたり1または10μg)を使用して、MDA-MB-231乳がん細胞を4時間および24時間処置した(図4)。抗体なしまたはmIgGもしくはヒトIgGを用いて処置した細胞を対照として使用した。結果は、hu6H5は、これらの乳がん細胞を死滅させることにおいてm6H5と同様の効果を有していることを示した。細胞死滅における有効性をさらに評価するために、MDA-MB-231細胞を種々の抗体(10μg/ml)を用いて16時間処置した。同時染色生/死生存率アッセイを使用して生細胞(緑色;カルセインAm)および推定死細胞(赤色;EthD-1)を同定し(図5)、結果は、hu6H5が乳がん細胞の死滅においてm6H5と同様である有効性を有することを示した。さらに、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを使用して、hu6H5ががん細胞成長を阻害できることを確認した(図6)。ADCCを使用して、BC細胞死滅の機序を決定し、本発明者らの結果は、抗体によって覆われた標的細胞を溶解する細胞傷害性分子のエフェクター細胞媒介性分泌を支持した(図7)。
【0193】
フローサイトメトリーを使用して、hu6H5がp-ERK、RasおよびSIRT-1の発現を下方制御できるか否かを決定した。231Cまたは231K細胞を、1mlあたり10μgのhu6H5を用いて16時間処置した。許容下(under perm)および非許容(non-perm)の両細胞におけるHERV-K、SIRT-1(図8A)、p-ERKおよびRas(図8B)の発現。hu6H5を用いて処置された231Kまたは231Cにおいて、HERV-K、p-ERK、RasおよびSIRT-1の下方制御された発現が実証された。
【0194】
【化9】
【0195】
【化10】
【0196】
【化11】
【0197】
【化12】
【0198】
pLVXKは、HERV-K発現ベクターであり、MDA-MB-231 pLVXKは、pLVXKで形質導入されたMDA-MB-231細胞である。同様に、pLVXCは、対照発現ベクターのみであり、MDA-MB-231 pLVXKは、pLVXCで形質導入されたMDA-MB-231細胞である。NSG雌マウス(8週齢)にMDA-MB-231 pLVXC(231-C;皮下、200万個の細胞)対MDA_MB-231 pLVXK(231-K;皮下、200万個の細胞)を接種した。6日目に、マウスをhu6H5(4mg/kg腹腔内、週に2回、3週間)を用いて処置した。腫瘍成長をモニタリングし、隔日で測定した。種々の時間間隔で生存しているマウスのパーセンテージが図9Aに示されている。231-Cおよび抗体を用いて処置された231-K細胞を有するマウスにおいて、より高い生存が実証された。各マウスから腫瘍および肺組織を収集した。231-K細胞を有する一部のマウスにおいてより大きなリンパ節が検出されたが、231-C細胞を有するマウスでは検出されなかった。
【0199】
ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色をさらに使用して、腫瘍組織(図9)および他の器官に由来する組織(肺およびリンパ節;図10)の形態学的特徴を評価した。H&E染色によって腫瘍面積を測定することによって、病理学者によって腫瘍生存率および腫瘍壊死を定量化した。ヒト化抗体処置は、より小さい腫瘍体積、より少ない腫瘍限局性(focality)および数、より少ない浸潤性境界ならびに有糸分裂活性の減少をもたらした。231-C細胞(図9B)を有するマウスにおいて、または抗体を用いて処置された231-K細胞(図10B)において、腫瘍生存率のパーセンテージの低減が観察された。231C(図9B)またはhu6H5を用いて処置された231K細胞(図9C)において、その対照と比較して腫瘍可変性の低減が実証された。抗Ki67および抗HERV-K mAbを使用した(図9D)。対照(60%;上部パネル;図9B)と比較して、hu6H5を用いて処置されたマウス(20%;下部パネル)において、腫瘍生存率の低減が実証された。抗体処置群は、外観においてより均一であり、より少ない多形核およびより小さい核小体を有し、腫瘍浸潤性リンパ球は数が有意に増大した。
【0200】
231-K細胞を有するマウスから得られた肺組織では、転移性腫瘍細胞も見出されたが、231-C細胞を有するマウスでは見出されなかった(図10A)。腫瘍生存率のパーセンテージの低減が、抗体を用いて処置されていないものと比較して抗体を用いて処置された231-Kを有するマウスの肺において観察された(図10B)。転移性リンパ節が、231K細胞を接種されたマウスにおいてのみ検出された(図10C)。231-K細胞を有するマウスのリンパ節において95%より大きな腫瘍生存率が検出され(図10C;>95%;上部パネル)、抗体を用いて処置されたマウスのリンパ節において(図10C;40%;下部パネル)、抗体を用いて処置されていないマウス(図10D)と比較して、腫瘍生存率のパーセンテージの低減が観察された。腹水は、抗体処置を用いない231Kまたは231C腫瘍細胞を保持したマウスにおいて実証された。
【0201】
[実施例2]
HERV-Kを標的とする二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の有効性
CD3またはCD8のいずれかおよびHERV-Kを標的とする抗体からなる、T細胞CD3またはCD8および腫瘍関連抗原HERV-Kに向けられたBiTEを生成した。このBiTEは、HERV-Kエピトープが負荷された腫瘍組織適合性クラス(MHC)分子を発現するMDA-MB-231乳がん細胞に対するインターフェロン-ガンマ(IFNガンマ)細胞傷害性活性を誘発すると示され、BiTEを用いる処置後にIFNガンマ発現が20~30倍増大した(図11)。
【0202】
BiTEは、T細胞を腫瘍細胞にリダイレクトし、抗原提示細胞による内因性T細胞の拡大増殖を必要としない単鎖抗体コンストラクトとして構築された組換えタンパク質構築物である。科学的参考文献50を参照されたい。BiTE分子は、患者に直接的に投与でき、BiTE媒介性T細胞活性化は、CARがそうであるようにはMHCクラスI分子の存在に依存しない。腫瘍関連抗原(TAA)としてHERV-K Envを標的化することの成功およびほぼすべての乳がん細胞株がKenvタンパク質を発現することを考慮して、本発明者らは、KenvおよびCD3(K3Bi)に特異的なBiTEは、K-CARがそうであったように転移性疾患を有効に処置すると仮定する。本発明者らは、KenvおよびCD3に対して二重特異性を有するK3Biを設計し、合成した。したがって、T細胞は、HERV-K+腫瘍細胞を標的とするように指示される。本発明者らは、K3BiおよびCD8 BiTE(K8Bi)を生成し、精製し、検証した。これは、CARコンストラクトにおいても使用された(科学的参考文献33)mAb 6H5と、他のBiTEにおいてこれまでに使用されたヒトCD3に対する抗体であるOKT3とを使用して行われ、ヒト化され、可動性リンカーならびに精製および染色のための2つのC末端エピトープタグ(MYCおよびFLAG)と接続された。本発明者らの研究室においてOKT8ハイブリドーマ細胞から得られたCD8単鎖抗体(scFv)を生成し、これを使用して、K8Bi(VL-VH6H5リンカーVH-VLCD8-MYCおよびFLAG)を生成した。K3BiおよびK8Biを組換えタンパク質発現のためにpLJM1-EGFPレンチまたはpGEX-6P-1ベクター中にクローニングした。K3BiまたはK8BiのT細胞およびHERV-K+乳がん細胞株に結合する能力をいくつかの免疫アッセイによって決定した。本発明者らは、BiTE濃度が増加すると、BiTEに結合した標的細胞の数が増大することを見出した。
【0203】
本発明者らはまた、K3Biの、T細胞活性化、増殖、サイトカインの産生および標的腫瘍細胞の溶解を誘導する能力を調べた。科学的参考文献51に記載されるように、健常な対照から得たバルクPBMC(ウェルあたり50,000個)を、10:1のエフェクター細胞:標的細胞比を達成するようにK3Bi(0、1、10、100および1,000ng/ml)および腫瘍細胞(ウェルあたり5,000個)と同時培養した。1つの結果が図12に示されている。PBMC+MCF-7+K3Biは、PBMC+MCF-7 K3Biなしと比較してがん細胞死滅の増大を示した(図12B)。本発明者らが以前に行ったように、細胞生存率および細胞毒性の検出のためにLDH放出アッセイを使用した。科学的参考文献33を参照されたい。ELISAによってアッセイされたIFN-γ産生の増強(図12C)が、K3Biを用いて処置されたMDA-MB-231、MDA-MB-468およびMCF-7細胞において観察された。未処置細胞、PBMCのみまたはBiTEのみを対照として使用し、これらの対照群ではIFN-γ産生は観察されなかった。
【0204】
さらに、PBMCおよびCD3 HERV-K BiTEおよびIL-2またはCD8 HERV-K BiTEおよびPBMCおよびIL-2を用いるHERV-K陽性MDA-MB-231乳がん細胞を有する免疫不全NSGマウスの処置は、腫瘍成長のより大きな減少をもたらした(図13)。
【0205】
[実施例3]
CAR-AおよびCAR-Bレンチウイルスベクターで形質導入された正常ドナーPBMCの染色結果
正常ドナーからのPBMCを、2つのCAR-TレンチウイルスベクターコンストラクトであるK-CAR-A(CAR-A)またはK-CAR B(CAR-B)で形質導入した。psPAX2およびpMD2gを有するpWPT-GFP。VH-VLhu6H5-CD8-CD28-4-1BB-CD3ゼータ。Sleeping Beauty形質導入プロセスの代替物、すなわち、レンチウイルス形質導入によってHERV-Kenv CAR-T細胞を生成するためのプロトコールは以下のとおりである:
1.PBMC(2×107)を解凍し、プラスチック接着(37℃、5% CO2での1時間のインキュベーション)によって単球を枯渇させる。
2.10% FBS、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンを補給したRPMI 1640(完全培地)中で単球が枯渇したPBMCを培養する。T細胞を、抗CD3/CD28ビーズを3:1のビーズ:細胞比で用い、40IU/mLのIL-2を用いて24時間刺激する。
3.活性化されたT細胞を、CAR-AまたはCAR-Bレンチウイルス粒子(対照としてCD19 CAR)で形質導入する。
4.形質導入の24時間後、T細胞を、300IU/mLのIL-2および2:1のaAPC/T細胞比でγ照射された(100Gy)MDA-MB-231-Kenv(Kenvは、HERV-Kのエンベロープタンパク質である)aAPCを含有する完全培地で培養して、CAR-T細胞増殖を刺激する。対照aAPCとしてγ照射されたK562-CD19を使用する。
5.5日目に抗CD3/CD28ビーズを除去する。2~3日毎にCAR-T細胞にIL-2を含有する新鮮培地を補充する。
6.CAR-T細胞を使用して、増殖が対数期からの減少を示す場合にはさらなる実験を実施する。
【0206】
CAR-AまたはCAR-Bが形質導入された細胞を、γ照射された(100Gy)MDA MB 231抗原提示細胞と同時培養した。可溶性IL-2サイトカイン(50U/ml)を隔日で添加した。14日目に、染色のために細胞を回収した。それらを、まず、1:1000希釈のBV450生および死染色を用いて4℃で20分間染色した。20分後、細胞を洗浄し、K10-AF 488タンパク質(1μg/ml)、CD4 Amcyan、CD3 Pe cy7およびヤギ抗ヒトIgG Fc AF 594抗体を用い、製造業者の推奨に従って4℃で30分間染色し、PBSで洗浄した。細胞を4% PFAを用いて15~30分間固定し、洗浄し、その後、フローサイトメーターで分析した。試料は、それらはGFP+CAR-A/CAR-Bでトランスフェクトされたので、GFPに対して陽性であった。
【0207】
CD4+細胞のパーセンテージを、BV450について陰性であり、それぞれの色について陽性である集団のゲーティングによって決定した。CD4陰性(CD8陽性細胞と呼ばれる)のパーセンテージを、BV450について陰性であり、CD4 Amcyan色について陰性である集団を選択することによってゲーティングした。結果は、K10標識されたAF488タンパク質で染色された、CAR-A/CAR-Bで形質導入されたCD4陽性PBMCのパーセンテージが、K10標識されたAF488タンパク質で染色されたナイーブT細胞のパーセンテージよりも高いことを示す(図14)。これは、CAR-AまたはCAR-Bで形質導入されたT細胞がHERV-K10タンパク質で染色されることを示す。
【0208】
ヒト化または完全ヒトHERV-K scFvを有するレンチウイルスCAR発現ベクターを発現するT細胞は、いくつかの異なるがん由来の腫瘍細胞を効果的に溶解し、死滅させる。レンチウイルスベクターから発現されたヒト化K-CARは、汎がんCAR-Tである。
【0209】
[実施例4]
HERV-K特異的ヒト化キメラ抗原受容体(K-CAR)療法
本発明者らは、ヒト化単鎖可変断片(scFv)抗体を生成し(実施例1)、これは、組換えHERV-K Env表面融合タンパク質(KSU)から生成された抗原(直前の実施例3)およびMDA-MB-231乳がん細胞からの溶解物に結合できた。このヒト化scFvから生成されたCARを、レンチウイルスベクター中にクローニングし、それだけには限らないが、K-CART細胞およびチェックポイント阻害剤、炎症促進性サイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)-12およびIL-18、腫瘍溶解性ウイルスならびにキナーゼ阻害剤(それだけには限らないが、p-RSK、p-ERKを含む)を含む療法と組み合わせて使用する。
【0210】
[実施例5]
強力な標的特異性および高い感受性を示す極めて稀なB細胞由来のヒト治療用抗体(hTAb)の同定
ヒト適応免疫系からの完全ヒト治療用抗体の生成:高親和性抗体の供給源として乳がん患者由来のB細胞を直接使用するために、本発明者らは、HERV-K Env組換え融合タンパク質を用いて関節ELISAまたは免疫ブロットを実施し、本発明者らはこれを使用して、いくつかの異なる乳がん患者から抗HERV-K Env特異的応答を検出した。抗HERV-K抗体のより高い力価を有する患者を、単一B細胞実験のために選択した。乳がん患者から得たPBMCをポリクローナルに活性化した:1)2週間の期間照射された3T3-CD40L線維芽細胞を使用して。この方法は、CD40-B細胞を効率的に刺激し、高純度(>90%)で多数に拡大増殖させ、その抗体の分泌を誘導できる;および2)エキソビボで組換えヒトIL-21、IL-2、可溶性CD40リガンドおよび抗APO1を用いて4日間。この第2の方法は、最小の培養時間を使用して最高パーセンテージのB細胞からの分泌を可能にできる。IL-21は、抗体分泌細胞への分化を促進すると知られている。科学的参考文献53、54を参照されたい。インビトロでのIL-2刺激は、誘導閾値に到達するために適当なT細胞の補助を必要とする、ヒト血漿細胞分化を引き起こすことができる。科学的参考文献55を参照されたい。sCD40Lは、B細胞の細胞表面で発現されるCD40と会合して、T細胞媒介性活性化を模倣する。科学的参考文献56を参照されたい。活性化はまた、細胞死を誘導するので、抗APO1を使用して、Fas誘導性アポトーシスからB細胞を救出する。科学的参考文献57を参照されたい。細胞傷害性B細胞はほとんど検出されなかった。
【0211】
マイクロウェルスラブ中のすべての細胞の結合動態および細胞対細胞相互作用を決定するためのプラットフォームの開発。抗体産生性B細胞の単一細胞クローニングを経時的に可能にする、B細胞相互作用のスクリーニングおよびモニタリングを可能にするマイクロエングレービングプロセスの詳細が、図15Aに示されている。ポリジメチルシロキサン(PDMS)でナノウェルのアレイを製作し、本発明者らの研究室で生成され、培養された患者乳房腫瘍組織由来のマンモスフェアから得た細胞(図15B;左パネル)を、乳がん細胞死滅の有効性を決定するための標的として使用した。同一ドナーからのB細胞およびマンモスフェア細胞(1:1比)を、ナノウェルアレイにロードし(ウェルあたり1個の細胞)、細胞を重力によって沈降させた(図15B中央パネル)。死腫瘍細胞(赤色)およびB細胞が同一ウェルにおいて示されている(図15B)。このB細胞によって生成された抗HERV-K抗体が、ガラスカバースライドの同一位置で検出された(右パネル、赤色の四角)。次いで、RT-PCRのために単一B細胞をCellCelectorによって選び取った(図15C)。本発明者らの結果は、HERV-K特異的メモリーB細胞が抗HERV-K抗体発現ならびにその自己マンモスフェア細胞に対する細胞毒性を示したことを示す。
【0212】
インビボ濃縮(IVE)適応を使用する治療用抗体発見:本発明者らのプラットフォームによって、標的がん細胞に結合するだけでなく、細胞を死滅もさせることができる抗体の単離を可能にする。hTAbを生成するために乳がん患者ドナーの代わりに、メモリーB細胞を有さない正常なドナーの使用が可能となる。B細胞は、生体外濃縮後でさえ極めて稀である処置のための治療用抗体を産生できるので、本発明者らは、極めて稀なhTAbを同定するために以下のプラットフォームを開発した:
【0213】
野生型Balb/cマウス(雌、6週齢)の群(N=10/群)を、1日目に免疫化し、3週目および5週目に追加免疫する。ELISPOTを使用して、免疫化マウスから得られたCD8+T細胞によるIFN-γ分泌を決定する(図16A)。ELISAアッセイ(図16B、16Cおよび16D)を使用して、免疫化マウス血清における抗HERV-K IgGの力価を検出する。
【0214】
[実施例5.1]
多数の抗原特異的形質芽細胞が生成することを目的として、SCID/ベージュマウスにおいてインビボ濃縮技術(IVE:約20倍増強)を適応させ、迅速な拡大増殖およびB細胞活性化を可能にする。図11Aを参照されたい。このプラットフォームは、8日ほどの短い時間でB細胞から完全ヒト抗体を生成する。原理の証明として、本発明者らは、MFP-2パートナー細胞との融合の8日目に脾細胞から生成されたハイブリドーマ細胞において完全ヒト抗ジカ抗体を生成するIVE技術を開発した(図17Aおよび図17B)。
【0215】
最近、ヒト化マウス(HM)およびヒト腫瘍マウス(HTM)を、HM生成のためのCD34+細胞(1~2×105個/マウス)の静脈内注射およびHERV-K SUまたはPD-L1組換え融合タンパク質を用いる免疫化によって成功裏に生成した。本発明者らはまた、CD34+造血幹細胞を、HTM生成のために乳腺脂肪パッドに、5×104~3×106個の乳がん細胞トリプルネガティブ乳がん患者由来異種移植片(TNBC PDX細胞またはMDA-MB-231またはMDA-MB-468 TNBC細胞)とともに同時移植した。hCD19またはhCD45細胞のパーセンテージは、CD34細胞を用いる接種後、より長い期間を経たマウスにおいてより高い(図18Aおよび図18B)。抗原に対する曝露は、腫瘍におけるHERV-K発現と関連しており、より高い抗体力価が検出された(HTM 2:40日対HTM 1:30日;図18Cおよび図18D)。重要なことに、これは、乳がん細胞を接種されたマウスにおいてHTMが抗HERV-K抗体を産生できることを示す。この知見は、完全hTAbを生成するためにHMまたは/およびHTMを使用することを探索するように、特に、抗原に対して以前に曝露したことのない正常ドナーを使用するように本発明者らを促した。T-、B-、およびNK細胞活性を欠くNSGマウスが、HMを確立するための理想的な候補として企図される。初期研究において見られたものよりも、ヒトCD45+細胞のより高い移植率を有する、何らかの著しい毒性を伴わないマウス(図18B)を最近開発した。
【0216】
プロトコール1。より高い力価の抗体を有するがんを有するドナーについては、本発明者らは、SCID/ベージュマウスの代わりにHMを使用する図17Aにおけるようなプロトコールを使用する。乳がん患者から得たPBMC(50×106個)をIL-21、IL-2、可溶性CD40リガンドおよび抗APO1によってポリクローナルに活性化し、抗原(HERV-KまたはPD-L1;100μg)と事前に混合する。EasySep(商標)ヒトB細胞濃縮キット(Stemcell Technologies)を使用して陰性選択によって上記のPBMCから単離したB細胞を、0日目にブスルファン、科学的参考文献61を参照されたい、(Fisher:30mg/kg腹膜内)を用いて処置したマウスにおいてCD34細胞と同時注射する。マウスをサイトカインカクテル(1、4および7日目)を用いて処置し、2日目に抗原によって追加免疫する。このプロトコールは相対的に迅速に完了できる(8日)。
【0217】
プロトコール2。がんを有さず、メモリーB細胞を有さない正常ドナーについては、本発明者らは、改変を加えたプロトコール1を使用する:マウスをサイトカインカクテル(1、7および14日目)を用いて処置し、14日目および21日目に抗原によって追加免疫する。マウスから血清を収集し、結合親和性をELISAによって試験する。抗体力価の増大が検出された後、脾臓を回収し、分析し、ハイブリドーマを作製するために使用する。2週目にIVEプロトコール2を使用してマウスにおいてより高い抗体力価が検出された。
【0218】
[実施例5.2]
IVE後、脾臓の半分を回収し、フローサイトメトリー分析、マイクロエングレービングおよび他の分析のために使用する。B細胞表面および 細胞内マーカーおよびCFSE標識のフローサイトメトリー分析(Invitrogen CellTrace CFSEキット)を以下を使用して実施する:抗CD19 PECy5、抗CD27アロフィコシアニン、抗CD38 PECy7、抗IgG FITCまたはFITC、PE、PECy5、PECy7、Alexa 700もしくはアロフィコシアニンにコンジュゲートされたマウスIgG1kの抗IgM PEアイソタイプコントロール(すべてBD Bioscience製)。負の磁気免疫親和性ビーズ分離(Miltenyi Biotec)を使用して、脾臓由来の総CD19+B細胞を単離し、組換えヒトB細胞活性化因子(BAFF;75ng/ml;GenScript)、IL-2(20IU/ml)、IL-10(50ng/ml)およびIL-15(10ng/ml) (すべてBD Biosciences製)の存在下でCpG2006(10ng/ml;Oligos、Inc.)を用いて72時間刺激する。本発明者らのマルチウェルマイクロエングレービングプラットフォーム(最大400,000ウェル:図15)を、標的細胞としてのその自己腫瘍細胞またはHERV-K+TNBC細胞とともに使用して、プロトコール1または2から直接得た腫瘍死滅性B細胞を決定する。図15におけるように、抗体を産生するだけでなく、抗原に結合し、がん細胞を死滅させることができる細胞を決定する。
【0219】
[実施例5.3]
次いで、本発明者らは、長期間の抗体利用可能性を確実にするヒトハイブリドーマ細胞を開発する。完全ヒトハイブリドーマを開発するために、ClonaCell(商標)-HY(Stemcell Technologies Inc.,)をそのプロトコールに従って使用し、脾臓の残りの半分とともに、MFP-2細胞をハイブリドーマを生成するためのパートナーとして使用する。ヒトリンパ球をMFP-2細胞と融合するために、ポリエチレングリコール(PEG)を使用し、ハイブリドーマ細胞のクローニングおよび選択のためには、このキット中のメチルセルロースベースの半固形培地を使用する。選択後に増殖するクローンをピペットで96ウェルプレート中に入れ、ELISAによってHERV-K Envタンパク質に対する反応性についてスクリーニングする。Thermo Fisher Scientific製のヒトIgG抗体アイソタイピングキットを使用して陽性クローンのアイソタイプを決定する。次いで、クローンを血清不含培地条件に適応させ、拡大増殖する。ハイブリドーマ上清を回収し、ヒト抗体のアイソタイプに応じてHi-TrapプロテインAまたはプロテインGカラムを使用して抗体を精製する。プロテインAカラムは、アイソタイプ-IgG1、2および4の抗体に対して高親和性を有し、アイソタイプIgMの抗体に対して可変結合を有すると知られており、プロテインGカラムは、アイソタイプ-IgG1、2、3および4の抗体に対して高結合を示すが、IgM抗体には結合しないと知られている。
【0220】
[実施例5.4]
本発明者らは、本発明者らが日常的に本発明者らの研究室において行うように、インビトロで上記のプロトコールから得られた候補B細胞の、細胞成長、増殖およびアポトーシスに対する効果を含む抗腫瘍有効性を評価する。乳がん細胞株および原発腫瘍細胞を使用して、免疫不全マウスモデルにおいてhTAbの有効性を評価するためのインビボ研究も行って、有効性を評価し、対応する未関与の対照乳房細胞と比較する。
【0221】
[実施例6]
併用療法
本発明者らの乳がんデータは、HERV-Kを含む併用療法アプローチの可能性を強力に支持する。したがって、HERV-Kを標的とするヒト化および完全ヒト抗体は、チェックポイント遮断抗体治療有効性を増強する。有効な併用がん療法は、それだけには限らないが、(a)HERV-K hTAb(1.5mg/kg)、(b)K-CAR、(c)K-BiTE、(d)HERV-K shRNAまたはHERV-K遺伝子発現をノックダウンするためのCRISPR/Cas9ゲノム編集技術、(e)または全長および末端切断型HERV-K Envタンパク質およびHERV-K Envペプチドを含む予防的もしくは治療的HERV-Kワクチンならびに(a)抗ICP抗体(図19)、(b)がん化学療法、(c)5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジンまたは他のエピジェネティックモジュレート剤、例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTi)およびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、(d)EMT阻害剤、(e)細胞移動もしくは浸潤の阻害剤、(f)SもしくはG2期細胞周期停止の誘導、(g)PI3K/AKT/mTORもしくはMAPK/ERKシグナル伝達経路の阻害剤または(h)HIF1αへのシグナル伝達の組合せを含む。
【0222】
[実施例7]
【化13】
【0223】
【化14】
【0224】
【化15】
【0225】
【化16】
【0226】
【化17】
【0227】
【化18】
【0228】
【化19】
【0229】
【化20】
【0230】
【化21】
【0231】
IgGドメインの順序:
VL-VH6H5---VH-VLhuCD3またはCD8+c-mycタグ+FLAGまたはVL-VHhu6H5---VH-VLhuCD3またはhuCD8+c-mycタグ+FLAG
【0232】
【化22】
【0233】
【化23】
【0234】
マウスを5種のMapsを用いて免疫化し、血清を収集し、種々のHERV融合タンパク質を使用し、ELISAによって試験した(図23)。HERV-K SUタンパク質のみが陽性であった。5種のMapsを用いて免疫化したマウスからハイブリドーマ細胞を生成し、以下の配列を有するscFvを選択した。
【0235】
【化24】
【0236】
[実施例8]
がん細胞および腫瘍中に薬物を送達するためのADCに使用できるHERV-Kを標的とするヒト化抗体
組換えゲロニン(r-Gel)毒素を6H5(図20A)とコンジュゲートした。r-Gelを、抗r-Gel抗体を使用して1時間の内部移行後にOVCAR3(図20B)、SKBr3、MCF-7およびMDA-MB-231細胞(図20C)において検出した。さらに、金ナノ粒子(GNP)を、裸のGNP(図21A)または6H5-GNP(図21B)とともの2時間のインキュベーション後に、MDA-MB-231細胞において透過型電子顕微鏡(TEM)によって検出した。GNPを、6H5-GNP(図21C、21Eおよび21F)または6H5scFV-GNP(図21D)を用いた静脈内注射の24時間後にマウスから単離したMDA-MB-231(図21C、21Eおよび21F)またはSKBr3(図21D)の腫瘍において銀増強アッセイを使用して検出した。GNPは、高周波磁場に配置された場合に、標的化された腫瘍細胞を死滅させる熱を生成する
【0237】
[実施例9]
マウスの腫瘍結節における抗HERV-K抗体のインビボイメージング
Nuanceシステムを使用するインビボイメージングによって、抗HERV-K-Alexa647コンジュゲート6H5-Alexa647(赤色)を用いる静脈内注射の24時間後のマウスからの腫瘍結節において6H5のより高い密度が検出された(図22)。
【0238】
実施形態のリスト
HERV-K抗体治療薬の特定の組成物および方法。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。生物医学の技術分野の当業者は、開示の文脈および精神と一致する可能な限り広い方法で、すべての特許請求の範囲の用語を解釈するであろう。本明細書における詳細な説明は、例示的であり、限定的または網羅的なものではない。本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコールおよび試薬に制限されず、実際には変わる場合がある。明細書または特許請求の範囲が順序付けられたステップまたは機能を列挙する場合には、代替実施形態が異なる順序で、または実質的に同時にその機能を発揮する可能性がある。生物医学の技術分野の当業者が認識するように、すでに記載されたものに加えて、他の等価物および改変が、本明細書に記載される発明の概念から逸脱することなくあり得る。
【0239】
本明細書を通じて引用されるすべての特許および刊行物は、参照により本開示に組み込まれ、本明細書に記載される技術を用いて使用される材料および方法を説明する。特許および刊行物は、単に本明細書の出願日の前のその開示のために提供される。特許および刊行物の開示および刊行日に関するすべての記述は、本発明者らの情報および信念による。本発明者らは、これらの文書の内容または日付の正確性について認めていない。本明細書において提供される日付と実際の刊行日の間に矛盾がある場合には、実際の刊行日が優先されるべきである。本発明者らは、先行発明または別の理由のためにこのような開示に先行する場合がある。前の特許または刊行物の科学的または技術的教示と本明細書の間に矛盾がある場合には、本明細書およびこれらの特許請求の範囲の教示が優先される。
【0240】
本明細書が値の範囲を提供する場合には、その範囲の上限と下限の間に介在する値は各々、別に指示されない限り値の範囲内にある。
【0241】
本明細書において提供される実施形態の中には以下がある:
【0242】
1.ヒト内因性レトロウイルス-K(HERV-K)に結合する単離された抗体であって、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含む単離された抗体。ヒト化抗HERV-K抗体は、腫瘍成長を低減できる、特に、肺、リンパ節および他の臓器への転移を低減できる。
【0243】
2.ヒト化またはヒトフレームワーク領域を含む、実施形態1に従う抗体。
【0244】
3.HERV-Kアンタゴニストである、実施形態1に従う抗体。
【0245】
4.実施形態1のHCVR、LCVRまたはそれらの組合せをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【0246】
5.実施形態4の核酸を含む発現ベクター。
【0247】
6.実施形態5の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【0248】
7.HCVR、LCVRまたはそれらの組合せを含む抗体を生成する方法であって、実施形態1の宿主細胞を、宿主細胞がHCVR、LCVRまたはそれらの組合せを含む抗体を発現するような条件下で成長させること、およびHCVR、LCVRまたはそれらの組合せを含む抗体を単離することを含む、方法。
【0249】
10.哺乳動物においてがんを処置する方法であって、実施形態1に従う抗体の有効量をそれを必要とする哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0250】
11.がんを処置する方法であって、それを必要とする個体に、有効量の、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗体を含むADCを投与することを含み、VH領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、VL領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、抗体は、リンカーを介して細胞傷害性薬物、アウリスタチンまたはその機能的ペプチド類似体または誘導体にコンジュゲートされる、方法。
【0251】
12.ADCが、1つまたは複数の追加の治療薬と組み合わせて投与される、実施形態11の方法。
【0252】
13.1つまたは複数の追加の治療薬が化学療法薬を含む、実施形態11の方法。
【0253】
14.がんが、黒色腫、慢性リンパ性白血病、乳がん、膵臓がん、頭頸部がん、卵巣がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、精巣がん、胃がん、腎臓がん、子宮内膜がん、子宮がん、膀胱がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がんおよび非小細胞肺がんからなる群から選択される、実施形態11の方法。
【0254】
CAR T、CAR NKおよびBiTE研究のために開発されたヒト化抗体。
【0255】
15.抗体が全長抗体である、実施形態11の方法。
【0256】
16.抗体が、ヒトモノクローナルIgG1またはIgG4抗体である、実施形態11の方法。
【0257】
17.アウリスタチンが、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、実施形態11の方法。
【0258】
18.アウリスタチンが、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)である、実施形態11の方法。
【0259】
19.細胞傷害性薬物がエムタンシン(DM1)である、実施形態11の方法。
【0260】
20.細胞傷害性薬物がオザガマイシン(ozagamicin)(カリケアマイシン)である、実施形態11の方法。
【0261】
21.細胞傷害性薬物がデルクステカン(deruxtecan)(DXd)である、実施形態11の方法。
【0262】
22.細胞傷害性薬物がゴビテカン(govitecan)(SN-38)である、実施形態11の方法。
【0263】
23.細胞傷害性薬物がマホドチン(MMAF)である、実施形態11の方法。
【0264】
24.細胞傷害性薬物がデュオカルマジン(デュオカルマイシン)である、実施形態11の方法。
【0265】
25.細胞傷害性薬物がBAT8001(マイタンシノイド)ソラブタンシン(DM4)である実施形態11の方法。
【0266】
26.細胞傷害性薬物がテシリン(PBD)である、実施形態11の方法。
【0267】
27.リンカーが、抗体の部分還元によって得られた抗体のスルフィドリル残基と結合している、実施形態11の方法。
【0268】
28.リンカー-アウリスタチンがvcMMAFまたはvcMMAEである、実施形態11の方法。
【0269】
29.早期検出、転移または実質的に本明細書に記載されるようなHERV-Kおよび免疫チェックポイントバイオマーカー。
【0270】
30.実質的に本明細書に記載されるような、抗体ベースの治療薬。
【0271】
32.本発明の抗HERV-Kヒト化抗体およびADCの標的としての、HERV-Kを過剰発現するがん細胞。
【0272】
33.細菌(HUM1およびHUM2)または哺乳動物細胞から生成されたhu6H5クローン(FWJ1およびFWJ2)。
【0273】
34.T細胞CD3またはCD8および腫瘍関連抗原HERV-Kに対するヒト化scFvに対して向けられるBiTEであって、CD3またはCD8のいずれかおよびHERV-Kを標的とする抗体を含む、BiTE。
【0274】
35.ヒト化または完全ヒトHERV-K scFvを有するレンチウイルスCAR発現ベクターを発現するT細胞。
【0275】
36.組換えHERV-K Env表面融合タンパク質(KSU)から生成された抗原およびHERV-K Envタンパク質を発現したがん細胞からの溶解物に結合可能なヒト化単鎖可変断片(scFv)抗体。
【0276】
37.実施形態28のヒト化scFvから生成されたCAR。
【0277】
38.レンチウイルスベクター中にクローニングされる、実施形態28のヒト化scFvから生成されたCAR。
【0278】
39.併用療法において使用するための、レンチウイルスベクター中にクローニングされる、実施形態28のヒト化scFvから生成されたCAR。
【0279】
44.メモリーB細胞を有さないドナーのための、迅速拡大増殖およびB細胞活性化のための改善されたインビボ濃縮方法であって、1、7および14日目にサイトカインカクテルを用いてマウスを処置するステップおよび14および21日目に抗原によってマウスを追加免疫するステップを含む、方法。
【0280】
45.抗体を産生するだけでなく、抗体は、抗原に結合し、がん細胞を死滅させることができ、抗原を発現する細胞が、抗体によって死滅させられ得る、細胞。
【0281】
47.乳がん患者の血漿中の6種の循環免疫チェックポイントタンパク質の有意に増強された発現。
【0282】
50.HERV-Kの免疫チェックポイント阻害剤を用いて免疫抑制ドメイン(ISD)を遮断する方法。
【0283】
51.HERV-Kの免疫チェックポイント阻害剤が、HERV-KのISDを標的とするモノクローナル抗体および薬物からなる群から選択される、実施形態42の方法。
【0284】
52.チェックポイント遮断抗体治療有効性の増強において使用するための、HERV-Kを標的とするヒト化および完全ヒト抗体。
【0285】
53.がん患者によって産生されたHERV-K SUタンパク質から生成される5種の多抗原ペプチド(MAPS)を用いて免疫化されたマウスから新規抗体を生成する方法。
【0286】
54.HERV-K CAR A:VH-VLhu6H5-CD8-CD28-4-1BB-CD3ゼータを生成する方法。
【0287】
参考文献
分子生物学の技術分野の当業者は、本発明を作製および使用した際の予測可能な結果のガイダンスとして以下の特許、特許出願および科学的参考文献を使用できる:
【0288】
特許参考文献:
米国特許第9,243,055号(Wang-Johanning)。この特許は、がん診断薬および療法を開示し、特許請求する。HERV-K+がんを検出、予防および処置するための方法および組成物が提供される。1つの方法は、対象に、HERV-K envタンパク質結合抗体のがん細胞増殖遮断または低減量を投与することによってがん細胞増殖を妨げるまたは阻害するためである。
【0289】
国際特許公開WO2014/186469(理事会、テキサスシステム大学)。この特許公開は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変T細胞を使用する免疫療法のための方法および組成物に関する。CARを発現するT細胞が、最小の生体外拡大増殖を必要とする、またはがん処置のために患者に直接投与できる、CARを発現する細胞の集団を生成するために、トランスポゾンベースの組込みシステムと併用したエレクトロポレーションを使用して生成される。
【0290】
科学的参考文献:
1.Lander ES, Linton LM, Birren B, et al. Initial sequencing and analysis of the human genome. Nature. 2001;409: 860-921.HERVは、ゲノム中に多数のコピーを有するゲノム反復配列として周知であり、その結果、ヒトゲノムのおよそ8%が、レトロウイルス起源のものである。
【0291】
2.Hughes JF, Coffin JM. Evidence for genomic rearrangements mediated by human endogenous retroviruses during primate evolution. Nat Genet. 2001;29: 487-489.HERVは、生殖系列細胞中にレトロウイルスDNAを組み込んだ数千もの古代の組込み事象から生じた。
【0292】
3.Larsson E, Kato N, Cohen M. Human endogenous proviruses. Curr Top Microbiol Immunol. 1989;148: 115-132.ほとんどの生物学的に活性なHERVは、HERV-Kファミリーのメンバーである。HERV-Kは、複製能力のあるレトロウイルスに必要とされるすべての要素を発現可能な完全配列を有する。
【0293】
4.Ono M, Yasunaga T, Miyata T, Ushikubo H. Nucleotide sequence of human endogenous retrovirus genome related to the mouse mammary tumor virus genome. J Virol. 1986;60: 589-598.ほとんどの生物学的に活性なHERVは、HERV-Kファミリーのメンバーである。HERV-Kは、複製能力のあるレトロウイルスに必要とされるすべての要素を発現可能な完全配列を有する。
【0294】
5.Kraus B, Fischer K, Buchner SM, et al. Vaccination directed against the human endogenous retrovirus-K envelope protein inhibits tumor growth in a murine model system. PLoS One. 2013;8: e72756.
【0295】
6.Denne M, Sauter M, Armbruester V, Licht JD, Roemer K, Mueller-Lantzsch N. Physical and functional interactions of human endogenous retrovirus proteins Np9 and rec with the promyelocytic leukemia zinc finger protein. J Virol. 2007;81: 5607-5616.
【0296】
7.Fischer S, Echeverria N, Moratorio G, et al. Human endogenous retrovirus np9 gene is over expressed in chronic lymphocytic leukemia patients. Leuk Res Rep. 2014;3: 70-72.
【0297】
8.Li M RR, Yin B, Li J, Chivukula R, Lin K, Lu Y, Shen J, Chang DZ, Li D, Johanning GL, Wang-Johanning F. Down-regulation of human endogenous retrovirus type K (HERV-K) viral env RNA in pancreatic cancer cells decreases cell proliferation and tumor growth. Clinical Cancer Research. 2017;印刷中.
【0298】
9.Feng Wang-Johanning JL, Gary Johanning, Ming Li, Raghu Chivukula, Guoqing Wu. Tumor microenvironment predicts aggressive breast cancer: Combination of HERV-K, immune checkpoint and activation status of CD8+ T cells. Cancer Res. 2017;77: Abstract nr LB-221.
【0299】
10.Zhou F, Li M, Wei Y, et al. Activation of HERV-K Env protein is essential for tumorigenesis and metastasis of breast cancer cells. Oncotarget. 2016;7: 84093-84117.
【0300】
11.Wang-Johanning F, Radvanyi L, Rycaj K, et al. Human endogenous retrovirus K triggers an antigen-specific immune response in breast cancer patients. Cancer Res. 2008;68: 5869-5877.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0301】
12.Zhao J, Rycaj K, Geng S, et al. Expression of Human Endogenous Retrovirus Type K Envelope Protein is a Novel Candidate Prognostic Marker for Human Breast Cancer. Genes Cancer. 2011;2: 914-922.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0302】
13.Wang-Johanning F, Liu J, Rycaj K, et al. Expression of multiple human endogenous retrovirus surface envelope proteins in ovarian cancer. Int J Cancer. 2007;120: 81-90.
【0303】
14.Wang-Johanning F, Li M, Esteva FJ, et al. Human endogenous retrovirus type K antibodies and mRNA as serum biomarkers of early-stage breast cancer. Int J Cancer. 2014;134: 587-595.
【0304】
15.Wang-Johanning F, Frost AR, Johanning GL, et al. Expression of human endogenous retrovirus k envelope transcripts in human breast cancer. Clin Cancer Res. 2001;7: 1553-1560.
【0305】
16.Wang-Johanning F, Frost AR, Jian B, Epp L, Lu DW, Johanning GL. Quantitation of HERV-K env gene expression and splicing in human breast cancer. Oncogene. 2003;22: 1528-1535.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0306】
17.Wang-Johanning F, Frost AR, Jian B, et al. Detecting the expression of human endogenous retrovirus E envelope transcripts in human prostate adenocarcinoma. Cancer. 2003;98: 187-197.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0307】
18.Wallace TA, Downey RF, Seufert CJ, et al. Elevated HERV-K mRNA expression in PBMC is associated with a prostate cancer diagnosis particularly in older men and smokers. Carcinogenesis. 2014;35: 2074-2083.
【0308】
19.Downey RF, Sullivan FJ, Wang-Johanning F, Ambs S, Giles FJ, Glynn SA. Human endogenous retrovirus K and cancer: Innocent bystander or tumorigenic accomplice? Int J Cancer. 2015;137: 1249-1257.
【0309】
20.Johanning GL, Malouf GG, Zheng X, et al. Expression of human endogenous retrovirus-K is strongly associated with the basal-like breast cancer phenotype. Sci Rep. 2017;7: 41960.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。彼らはまた、乳がんにおけるHERV-K env転写物の発現は、特に悪性度の高いサブタイプである基底乳がんと特異的に関連することも見出した。
【0310】
21.Serafino A, Balestrieri E, Pierimarchi P, et al. The activation of human endogenous retrovirus K (HERV-K) is implicated in melanoma cell malignant transformation. Exp Cell Res. 2009;315: 849-862.
【0311】
22.Oricchio E, Sciamanna I, Beraldi R, Tolstonog GV, Schumann GG, Spadafora C. Distinct roles for LINE-1 and HERV-K retroelements in cell proliferation, differentiation and tumor progression. Oncogene. 2007;26: 4226-4233.
【0312】
23.Gonzalez-Cao M, Iduma P, Karachaliou N, Santarpia M, Blanco J, Rosell R. Human endogenous retroviruses and cancer. Cancer Biol Med. 2016;13: 483-488.
【0313】
24.Kleiman A, Senyuta N, Tryakin A, et al. HERV-K(HML-2) GAG/ENV antibodies as indicator for therapy effect in patients with germ cell tumors. Int J Cancer. 2004;110: 459-461.
【0314】
25.Buscher K, Trefzer U, Hofmann M, Sterry W, Kurth R, Denner J. Expression of human endogenous retrovirus K in melanomas and melanoma cell lines. Cancer Res. 2005;65: 4172-4180.
【0315】
26.Seifarth W, Skladny H, Krieg-Schneider F, Reichert A, Hehlmann R, Leib-Mosch C. Retrovirus-like particles released from the human breast cancer cell line T47-D display type B- and C-related endogenous retroviral sequences. J Virol. 1995;69: 6408-6416.
【0316】
27.Etkind PR, Lumb K, Du J, Racevskis J. Type 1 HERV-K genome is spliced into subgenomic transcripts in the human breast tumor cell line T47D. Virology. 1997;234: 304-308.
【0317】
28.Ono M, Kawakami M, Ushikubo H. Stimulation of expression of the human endogenous retrovirus genome by female steroid hormones in human breast cancer cell line T47D. J Virol. 1987;61: 2059-2062.
【0318】
29.Ejthadi HD, Martin JH, Junying J, et al. A novel multiplex RT-PCR system detects human endogenous retrovirus-K in breast cancer. Arch Virol. 2005;150: 177-184.
【0319】
30.Wang-Johanning F, Rycaj K, Plummer JB, et al. Immunotherapeutic potential of anti-human endogenous retrovirus-K envelope protein antibodies in targeting breast tumors. J Natl Cancer Inst. 2012;104: 189-210.発明者らは、HERV-K Envタンパク質は、乳がん細胞の表面で一般に発現されることを示した。発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。30~34。
【0320】
31.Li M, Radvanyi L, Yin B, et al. Downregulation of Human Endogenous Retrovirus Type K (HERV-K) Viral env RNA in Pancreatic Cancer Cells Decreases Cell Proliferation and Tumor Growth. Clin Cancer Res. 2017;23: 5892-5911.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0321】
32.Rycaj K, Plummer JB, Yin B, et al. Cytotoxicity of human endogenous retrovirus K-specific T cells toward autologous ovarian cancer cells. Clin Cancer Res. 2015;21: 471-483.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0322】
33.Zhou F, Krishnamurthy J, Wei Y, et al. Chimeric antigen receptor T cells targeting HERV-K inhibit breast cancer and its metastasis through downregulation of Ras. Oncoimmunology. 2015;4: e1047582.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0323】
34.Zhou F, Li M, Wei Y, et al. Activation of HERV-K Env protein is essential for tumorigenesis and metastasis of breast cancer cells. Oncotarget. 2016.
【0324】
35.Krishnamurthy J, Rabinovich BA, Mi T, et al. Genetic Engineering of T Cells to Target HERV-K, an Ancient Retrovirus on Melanoma. Clin Cancer Res. 2015;21: 3241-3251.発明者らは、乳房、肺、前立腺、卵巣、結腸、膵臓および他の固形腫瘍においてHERV、特に、HERV-K配列の発現を観察した。
【0325】
36.Chae YK, Chang S, Ko T, et al. Epithelial-mesenchymal transition (EMT) signature is inversely associated with T-cell infiltration in non-small cell lung cancer (NSCLC). Sci Rep. 2018;8: 2918.
【0326】
37.Lemaitre C, Tsang J, Bireau C, Heidmann T, Dewannieux M. A human endogenous retrovirus-derived gene that can contribute to oncogenesis by activating the ERK pathway and inducing migration and invasion. PLoS Pathog. 2017;13: e1006451.
【0327】
38.Li M, Radvanyi LG, Yin B, et al. Down-regulation of human endogenous retrovirus type K (HERV-K) viral env RNA in pancreatic cancer cells decreases cell proliferation and tumor growth. Clin Cancer Res. 2017.
【0328】
39.Helsen CW, Hammill JA, Lau VWC, et al. The chimeric TAC receptor co-opts the T cell receptor yielding robust anti-tumor activity without toxicity. Nat Commun. 2018;9: 3049.
【0329】
40.Burstein HJ, Winer EP. Refining therapy for human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer: T stands for trastuzumab, tumor size, and treatment strategy. J Clin Oncol. 2009;27: 5671-5673.
【0330】
41.Natsume A, Niwa R, Satoh M. Improving effector functions of antibodies for cancer treatment: Enhancing ADCC and CDC. Drug Des Devel Ther. 2009;3: 7-16.
【0331】
42.Spector NL, Blackwell KL. Understanding the mechanisms behind trastuzumab therapy for human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer. J Clin Oncol. 2009;27: 5838-5847.
【0332】
43.Feldhaus MJ, Siegel RW, Opresko LK, et al. Flow-cytometric isolation of human antibodies from a nonimmune Saccharomyces cerevisiae surface display library. Nat Biotechnol. 2003;21: 163-170.
【0333】
44.Mazor Y, Van Blarcom T, Mabry R, Iverson BL, Georgiou G. Isolation of engineered, full-length antibodies from libraries expressed in Escherichia coli. Nat Biotechnol. 2007;25: 563-565.
【0334】
45.Zhou Y, Zou H, Zhang S, Marks JD. Internalizing cancer antibodies from phage libraries selected on tumor cells and yeast-displayed tumor antigens. J Mol Biol. 2010;404: 88-99.
【0335】
46.Lanzavecchia A, Corti D, Sallusto F. Human monoclonal antibodies by immortalization of memory B cells. Curr Opin Biotechnol. 2007;18: 523-528.
【0336】
47.Smith K, Garman L, Wrammert J, et al. Rapid generation of fully human monoclonal antibodies specific to a vaccinating antigen. Nat Protoc. 2009;4: 372-384.
【0337】
48.Scheid JF, Mouquet H, Feldhahn N, et al. Broad diversity of neutralizing antibodies isolated from memory B cells in HIV-infected individuals. Nature. 2009;458: 636-640.
【0338】
49.Meijer PJ, Andersen PS, Haahr Hansen M, et al. Isolation of human antibody repertoires with preservation of the natural heavy and light chain pairing. J Mol Biol. 2006;358: 764-772.
【0339】
50.Kontermann RE, Brinkmann U. Bispecific antibodies. Drug Discov Today. 2015.
【0340】
51.Zhang P, Shi B, Gao H, et al. An EpCAM/CD3 bispecific antibody efficiently eliminates hepatocellular carcinoma cells with limited galectin-1 expression. Cancer Immunol Immunother. 2014;63: 121-132.
【0341】
52.Seitz S, Schneider CK, Malotka J, et al. Reconstitution of paired T cell receptor alpha- and beta-chains from microdissected single cells of human inflammatory tissues. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006;103: 12057-12062.
【0342】
53.Ettinger R, Sims GP, Fairhurst AM, et al. IL-21 induces differentiation of human naive and memory B cells into antibody-secreting plasma cells. J Immunol. 2005;175: 7867-7879.
【0343】
54.Good KL, Bryant VL, Tangye SG. Kinetics of human B cell behavior and amplification of proliferative responses following stimulation with IL-21. J Immunol. 2006;177: 5236-5247.
【0344】
55.Hipp N, Symington H, Pastoret C, et al. IL-2 imprints human naive B cell fate towards plasma cell through ERK/ELK1-mediated BACH2 repression. Nat Commun. 2017;8: 1443.
【0345】
56.Elgueta R, Benson MJ, de Vries VC, Wasiuk A, Guo Y, Noelle RJ. Molecular mechanism and function of CD40/CD40L engagement in the immune system. Immunol Rev. 2009;229: 152-172.
【0346】
57.Koncz G, Hueber AO. The Fas/CD95 Receptor Regulates the Death of Autoreactive B Cells and the Selection of Antigen-Specific B Cells. Front Immunol. 2012;3: 207.
【0347】
59.Song YC, Liu SJ. A TLR9 agonist enhances the anti-tumor immunity of peptide and lipopeptide vaccines via different mechanisms. Sci Rep. 2015;5: 12578.
【0348】
60.Chiappinelli KB, Strissel PL, Desrichard A, et al. Inhibiting DNA Methylation Causes an Interferon Response in Cancer via dsRNA Including Endogenous Retroviruses. Cell. 2015;162: 974-986.
【0349】
61.Choi B, Chun E, Kim M, et al. Human B cell development and antibody production in humanized NOD/SCID/IL-2Rgamma(null) (NSG) mice conditioned by busulfan. J Clin Immunol. 2011;31: 253-264.
【0350】
62.Morozov VA, Dao Thi VL, Denner J. The transmembrane protein of the human endogenous retrovirus--K (HERV-K) modulates cytokine release and gene expression. PLoS One. 2013;8: e70399.
【0351】
63.Liu H, Moynihan KD, Zheng Y, et al. Structure-based programming of lymph-node targeting in molecular vaccines. Nature. 2014;507: 519-522.
【0352】
64.Kontsekova E, Zilka N, Kovacech B, Novak P, Novak M. First-in-man tau vaccine targeting structural determinants essential for pathological tau-tau interaction reduces tau oligomerisation and neurofibrillary degeneration in an Alzheimer’s disease model. Alzheimers Res Ther. 2014;6: 44.
【0353】
65.Novak P, Schmidt R, Kontsekova E, et al. Safety and immunogenicity of the tau vaccine AADvac1 in patients with Alzheimer’s disease: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 1 trial. Lancet Neurol. 2017;16: 123-134.
【0354】
66.Robinson-McCarthy LR, McCarthy KR, Raaben M, et al. Reconstruction of the cell entry pathway of an extinct virus. PLoS Pathog. 2018;14: e1007123.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21-1】
図21-2】
図22
図23
【配列表】
2023547313000001.app
【国際調査報告】