(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】低融点超合金と高融点超合金の粉末混合物を用いる超合金部品での所望の幾何形状の形成方法
(51)【国際特許分類】
C22C 1/04 20230101AFI20231102BHJP
C23C 24/04 20060101ALI20231102BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231102BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20231102BHJP
B22F 3/087 20060101ALI20231102BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20231102BHJP
B22F 5/04 20060101ALI20231102BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C22C1/04 B
C23C24/04
B22F1/00 M
B22F1/14 400
B22F3/087
B22F3/10 101
B22F5/04
B22F7/08 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023519316
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 US2021071966
(87)【国際公開番号】W WO2022094527
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ツイ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】レイロック、マシュー ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】トリソン、ブライアン リー
【テーマコード(参考)】
4K018
4K044
【Fターム(参考)】
4K018AA09
4K018BA04
4K018BC12
4K018CA41
4K018DA18
4K018KA12
4K044AA06
4K044BA06
4K044CA23
4K044CA27
4K044CA29
(57)【要約】
【課題】超合金部品(100)上の位置で所望の幾何形状を形成する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、低融点超合金粉末(112)及び高融点超合金粉末(112,114)を含む粉末混合物(110)の粒子を、超合金粉末(112,114)を変形せしめるとともに超合金部品(100)と金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度で超合金部品(100)上の位置(102)に誘導することを含む。粒子の誘導は、所望の幾何形状が形成されるまで続ける。修復位置(102)上の粉末混合物(110)に熱を加える。熱によって、低融点超合金粉末(112)が溶融して上記位置(102)に金属結合を生じさせる。別の方法は、同じ誘導手順を用いて、部品上の位置(102)を修復するためのプリフォームを形成する。低融点超合金粉末は1287℃未満の融点を有し、高融点超合金粉末は1287℃超の融点を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超合金部品(100)上の位置(102)で所望の幾何形状を形成する方法であって、当該方法が、
低融点超合金粉末(112)及び高融点超合金粉末(114)を含む粉末混合物(110)の粒子を、超合金粉末(112,114)を変形せしめるとともに超合金部品(100)と金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度で超合金部品(100)上の位置(102)に誘導するステップと、
所望の幾何形状が形成されるまで粒子の誘導を続けるステップと、
粉末混合物を含む超合金部品(100)に熱を加えるステップであって、熱によって低融点超合金粉末(112)が溶融して超合金部品(100)との金属結合を生じさせる、ステップと
を含んでおり、低融点超合金粉末(112)が1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末(114)が1287℃超の溶融温度を有する、方法。
【請求項2】
低融点超合金粉末(112)が、AMDRY 770(BNi-2)、AMDRY 100(BNi-5)、AMDRY 775(BNi-9)、AMDRY DF4B、AMDRY D-15及びAMDRY 915からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高融点超合金粉末(114)が、MarM 247、Rene 108、GTD 111、GTD 444、Inconel 738、Rene 80、Inconel 713及びInconel 778からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
加熱中に、高融点超合金粉末(114)が固体形態のままである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
誘導された粒子が、前記位置(102)上に均一な厚さを有する層(150)を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
超合金部品(100)が積層造形される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
超合金部品(100)が鋳造されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記位置(102)を機械加工することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記位置(102)が、超合金部品(100)における開口(104)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
低融点超合金粉末(112)及び高融点超合金粉末(114)を含む粉末混合物(110)の粒子を、超合金粉末(112,114)を変形せしめるとともにビルドプレート(162)と金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度でビルドプレート(162)上に誘導することによって、プリフォーム(166、172)を作成するステップと、
ビルドプレート(162)から取り外し、超合金部品(100)の位置(102)の所望の幾何形状に賦形し、かつ超合金部品(100)の位置(102)に配置した後のプリフォーム(166,172)に熱を加えるステップであって、熱を加えることによって低融点超合金粉末(112)が溶融して超合金部品(100)との金属結合を生じさせる、ステップと
を含む方法であって、低融点超合金粉末(112)が1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末(114)が1287℃超の溶融温度を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して超合金部品に関し、さらに具体的には超合金部品で所望の幾何形状を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能工業部品は超合金で作られることが多々ある。タービンブレードのようなこれらの部品で損傷又は摩耗が起きてボイドが生じた場合、部品を製造当初の部品に合致する所望の幾何形状に修復するのが望ましい。現在、ろう付けが超合金部品の修復の主なアプローチである。ろう付けでは、溶融材料を修復位置に形成し、材料を冷却させる。ろう付けには多くの課題がある。ろう付けは、溶融材料の流れが修復位置から溢れないように制御できるように水平な修復位置で実施するのが理想的である。ただし、多くの修復位置は、垂直面又は曲面のように、完璧に水平な方向には配置できない。その結果、これらのタイプの修復に対処するため、時間がかかり複雑なマルチろう付けプロセスが実施されている。もう一つの課題は、多くの超合金部品が、例えばコンピュータ制御の積層造形技術を使用して、非常に正確な寸法で製造されていることである。ろう付け技術を用いて超合金部品を修復すると、製造当初と同レベルの精度が得られず、部品の原寸法仕様を満たさない部品になる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の態様は、超合金部品上の位置で所望の幾何形状を形成する方法であって、当該方法が、低融点超合金粉末及び高融点超合金粉末を含む粉末混合物の粒子を、超合金粉末を変形せしめるとともに超合金部品と金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度で、超合金部品上の位置に誘導するステップと、所望の幾何形状が形成されるまで粒子の誘導を続けるステップと、粉末混合物を含む超合金部品に熱を加えるステップであって、熱によって低融点超合金粉末が溶融して超合金部品との金属結合を生じさせる、ステップとを含んでおり、低融点超合金粉末が1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末が1287℃超の溶融温度を有する、方法を提供する。
【0004】
本開示の第2の態様は、低融点超合金粉末及び高融点超合金粉末を含む粉末混合物の粒子を、超合金粉末を変形せしめるとともにビルドプレートと金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度で、ビルドプレート上に誘導することによってプリフォームを作成するステップと、プリフォームをビルドプレートから取り外し、超合金部品の位置の所望の幾何形状に賦形し、かつ超合金部品の位置に配置した後のプリフォームに熱を加えるステップであって、熱を加えることによって低融点超合金粉末が溶融して超合金部品との金属結合を生じさせる、ステップであって、低融点超合金粉末が1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末が1287℃超の溶融温度を有する、ステップとを含む方法を提供する。
【0005】
本開示の第3の態様は、低融点超合金粉末及び高融点超合金粉末を含む粉末混合物の粒子を、超合金粉末を変形せしめるとともにビルドプレートと金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度でビルドプレート上に誘導することによってプリフォームを作成するステップと、超合金部品上の位置の所望の幾何形状へと後で形成できるように、ビルドプレートからプリフォームを取り外すステップであって、低融点超合金粉末が1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末が1287℃超の溶融温度を有する、ステップとを含む方法を包含する。
【0006】
本開示の例示的な態様は、本明細書に記載の問題及び/又は記載されていない他の問題を解決するように設計される。
【0007】
本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る、超合金部品の修復方法のプロセスの概略図。
【
図2】本開示の実施形態に係る、超合金部品上の修復のための位置であって、内部に粉末混合物を有する位置の拡大断面図。
【
図3】本開示の実施形態に係る、超合金部品上の修復のための位置であって、内部の粉末混合物が加熱されている位置の拡大断面図。
【
図4】本開示の実施形態に係る、超合金部品上の位置の修復に使用されるプリフォームを粉末混合物で形成するためのビルドプレートの拡大断面図。
【
図5】本開示の実施形態に係る、
図4のビルドプレートからのプリフォームの除去及びプリフォームの賦形を示す拡大断面図。
【
図6】本開示の実施形態に係る、超合金部品上の修復位置へのプリフォームの配置を示す拡大断面図。
【
図7】本開示の実施形態に係る、位置の修復のためのプリフォーム及び超合金部品の加熱を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、本開示の図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は、本開示の典型的な態様を例示するものにすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。図面において、同様の符号は複数の図面間で同様の構成要素を表す。
【0010】
まず、本開示の主題を明確に説明するため、用語を選択する必要がある。できるだけ、当技術分野で一般的な用語を、その通常の意味と一致するように用いる。別途記載されていない限り、かかる用語は、本願の文脈及び添付の特許請求の範囲に則して広義に解釈すべきである。ある部品について幾つかの異なる又は重複する用語を用いて言及されることが多々あることは当業者には明らかであろう。本明細書において、単一の部材として記載したものであっても、別の文脈では複数の部品からなるものとして記載することもある。或いは、本明細書のある箇所で複数の部品を含むものとして記載したものであっても、別の箇所では単一の部材として記載することもある。
【0011】
さらに、本明細書では、以下に記載する通り、幾つかの記述的用語を繰返し用いる。「第1」、「第2」及び「第3」という用語は、ある部品を他の部品と区別するために互換的に用いられ、個々の部品の位置又は重要性を示すものではない。
【0012】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、開示内容を限定するものではない。本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書において、「備える」及び/又は「含む」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、構成要素及び/又は部品が存在することを示し、他の1以上の特徴、整数、ステップ、操作、構成要素、部品及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいこと或いはその用語に続いて記載された部品又は構成要素が存在しても存在しなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合並びにその部品又は構成要素が存在する場合と存在しない場合とを包含する。
【0013】
ある構成要素又は層が別の構成要素又は層に「配置」、「係合」、「接続」又は「結合」しているという場合、その別の構成要素又は層に直接、配置、係合、接続又は結合していてもよいし、或いは介在する構成要素又は層が存在していてもよい。対照的に、ある構成要素が別の構成要素又は層に「直接配置」、「直接係合」、「直接接続」又は「直接結合」しているという場合、介在する構成要素又は層は存在しない。構成要素間の関係について説明するために用いられる他の用語(例えば、「~の間」と「直接間」、「隣接」と「直接隣接」など)も同様に解釈される。本明細書で用いる「及び/又は」という用語は、記載されたものの1以上のあらゆるすべての組合せを包含する。
【0014】
上述の通り、本開示は、超合金部品上の位置で所望の幾何形状を形成する方法を提供する。本方法は、低融点超合金粉末及び高融点超合金粉末を含む粉末混合物の粒子を、超合金粉末を変形せしめるとともに超合金部品への機械的結合を形成するが金属結合を形成するのに十分な速度で超合金部品上の位置に誘導することを含んでいてもよい。低融点超合金粉末は1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末は1287℃超の溶融温度を有する。粒子の誘導は、超合金部品で所望の幾何形状が形成されるまで継続できる。本方法は、超合金部品及び修復位置の粉末混合物に熱を加えることを含んでいてもよい。熱は、低融点超合金粉末を溶融させて、その位置で金属結合を生成するのに十分である。本方法は、粒子誘導を用いてビルドプレート上でプリフォームを形成することを含んでいてもよい。プリフォームを、ビルドプレートから取り外し、所望の幾何形状に賦形し、超合金部品上の位置に配置することができる。次いで熱を加えると、低融点超合金粉末(ろう材)が超合金部品上の所定の位置で溶融して金属結合を形成する。しかる後、修復された超合金部品を所望の寸法仕様に合わせるのに必要とされる軽微な機械加工を行うことができる。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に係る超合金部品100の修復方法の概略図を示す。超合金部品100は、タービンノズルの形態で示してあるが、いかなる形態の超合金部品であってもよい。本明細書で用いる「超合金」という用語は、Rene 108、CM247、Haynes合金、Incalloy、MP98T、TMS合金、CMSX単結晶合金のように、通常の合金に比べて数多くの優れた物理的特性(例えば、限定されるものではないが、高い機械的強度、高い熱クリープ変形耐性など)を有する合金をいう。一実施形態では、本開示の教示が特に有益となり得る超合金は、高いガンマプライム(γ’)値を有する超合金である。「ガンマプライム」(γ’)は、ニッケル基合金における主要な強化相である。高ガンマプライム超合金の例としては、限定されるものではないが、Rene 108、N5、GTD 444、MarM 247及びIN 738が挙げられる。
【0016】
超合金部品100は、修復が望まれる修復位置102を含む。一例では、超合金部品100は、元々、例えばコンピュータ制御積層造形技術を用いて製造されたものであってもよい。別の例では、超合金部品100は鋳造によって製造されたものであってもよい。
図2に、超合金部品100上の例示的な修復位置102の拡大断面図を示す。修復を必要とする位置102は、多種多様な形態を取り得るが、多くの場合、超合金材料で充填する必要がある開口104又は摩損領域を含む。多くの用途では、修復は、超合金部品100及び修復位置102を、元の部品の寸法仕様によって決まる所望の幾何形状にできるだけ近づけるべきである。上述の通り、ろう付け技術を用いて超合金部品を修復すると、製造当初と同レベルの精度が得られず、部品の原寸法仕様を満たさない部品になる。
【0017】
図1~
図2に示すように、本開示の実施形態では、粉末混合物110を超合金部品100上の位置102に誘導して所望の幾何形状を形成する。
図1に示すように、粉末混合物110は、低融点超合金粉末112と高融点超合金粉末114を含む。低融点超合金粉末112は1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末114は1287℃超の溶融温度を有する。ある非限定的な例では、各粉末112,114は、直径1~200μmの範囲内の粒子を有し得る。低融点超合金粉末は、任意の形態の超合金ろう付け粉末を含むことができ、限定されるものではないが、AMDRY 770(BNi-2)、AMDRY 100(BNi-5)、AMDRY 775(BNi-9)、AMDRY DF4B、AMDRY D-15及びAMDRY 915などが挙げられる。高融点超合金粉末114には、限定されるものではないが、MarM 247、Rene 108、GTD 111、GTD 444、Inconel 738、Rene 80、Inconel 713及びInconel 778が挙げられる。特に、
図2に示すように、超合金部品100上の位置102に誘導すると、超合金粉末112,114は変形して超合金部品100と金属結合ではなく機械的結合を形成する。一実施形態では、粉末混合物110は、低融点超合金粉末112と高融点超合金粉末114を1:1の比率で含有し得る。ただし、他の実施形態では、比率は、15~80%の高融点粉末114及び85~20%の低融点粉末112の範囲内で変更し得る。
【0018】
図1に示すように、粉末混合物110は、コールドスプレーシステム120を用いて位置102に誘導される。コールドスプレー(ガスダイナミックコールドスプレーとも呼ばれる)は、皮膜堆積法である。コールドスプレーシステム120には、現在公知の又は将来開発されるあらゆるコールドスプレー装置が挙げられる。一般に、コールドスプレーシステム120は粉末供給装置122を備えており、そこに粉末混合物110を所望の比率で投入し得る。ノズル124は、粉末供給ライン126を介して粉末供給装置122と流体連結し、ガス流ライン130を介してガス流源128と流体連結している。ガス加熱器132は、ガス流ライン128内のガス流を加熱する。コールドスプレーシステム120は、適宜必要とされるバルブ136,138及び/又はセンサ140と動作可能に結合したコントローラ134を備えていてもよい。コントローラ134は、コールドスプレーシステム120の動作を公知の様式で制御する。動作時には、
図1に示すように、固体粉末混合物110は、超音速ガスジェット142中で、例えば約1200m/秒の速度まで加速される。
図2に示すように、位置102と衝突する際に、超合金粉末112,114粒子は塑性変形して、位置102の表面144に付着する。粒子は、超合金粉末112,114が変形して超合金部品100との金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度で、超合金部品100上の位置102に誘導される。したがって、ガス流の膨張によって供給される粉末混合物110の運動エネルギーは、接合の際に塑性変形エネルギーへと変換される。溶射技術(例えばアーク溶射、プラズマ溶射、フレーム溶射又は高速酸素燃料(HVOF)溶射)のような他の皮膜形成技術とは対照的に、粉末112,114は、スプレープロセスが起きても溶融しない。コールドスプレーシステム120は、所望の幾何形状を達成するため、任意の様式、例えば、粉末供給速度、スプレーノズル移動速度、走査ステップ、スプレー角度などで制御し得る。例えば、均一な厚さを達成するため、コールドスプレーシステム120の上記パラメータのいずれかを変更することができる。粒子の誘導の際に、位置102上に均一な厚さの層150(
図2)を形成することができる。所望に応じて、不均一な厚さを形成することもできる。
【0019】
粉末混合物110の粒子の誘導は、
図2に示すように所望の幾何形状が形成されるまで或いはほぼ形成されるまで継続することができる。コールドスプレーは、所望の幾何形状を生じるように制御することができる。ろう付け技術とは対照的に、本開示の実施形態は、粉末混合物110を非常に正確かつ均一に適用することができ、必要とされるあらゆる配向、例えば傾斜又は垂直表面或いは曲率を有する表面(図示)に施工することができる。
【0020】
図3は、粉末混合物110(
図2)を施工した超合金部品100上の例示的な修復位置102の拡大断面図を示す。
図3は、修復位置102上の超合金部品100及び粉末混合物110に熱を加える、すなわち粉末混合物110をろう付けするところを示す。図に示すように、熱によって低融点超合金粉末112が溶融して、金属結合を生成する。加熱は、例えば真空炉内で行うことができる。加熱の際に、高融点超合金粉末114は固体の形態のままであるが、低融点超合金粉末112は溶融・流動して粉末114間の空隙を埋め、それらの間に固体の金属又は化学結合160を生じる。表面に(コールドスプレーによる機械的結合で)接着した変形高融点超合金粒子は、ろう付けプロセス中は移動せず、低融点超合金液体が望ましくない位置にオーバーフローするのを防ぐためのバリアとして機能し、所望の幾何形状を保持する。好適には、粒子誘導ステップは複数の修復位置に(例えば平坦、垂直、オーバーヘッド、湾曲など様々な配置で)適用することができ、かねつ(ろう付け)はすべての位置に対して1回行うことができる。この方法は、あらゆる形状又は寸法の修復に適用することができ、例えば均一又は不均一な幾何形状、曲面などを作成することができる。
【0021】
硬化したら、位置102の軽微な加工、例えば研磨などを実施してもよい。当技術分野では自明であろうが、次いで様々な追加の保護皮膜、例えばボンドコート、遮熱コーティングなどを施工してもよい。
【0022】
図1、
図4~
図7を参照すると、本開示に係る方法の別の実施形態が示してある。この実施形態では、粉末混合物110の粒子を、超合金粉末112,114を変形させてビルドプレート162と金属結合ではなく機械的結合を形成するのに十分な速度で、ビルドプレート162上に誘導することによって、プリフォーム166を形成する。上述の通り、粉末混合物110は低融点超合金粉末112と高融点超合金粉末114を含む。低融点超合金粉末112は1287℃未満の溶融温度を有し、高融点超合金粉末114は1287℃超の溶融温度を有する。他の点では、粉末112,114は、本明細書に記載の通りである。本実施形態では、ビルドプレート162は、粉末112,114を受けて保持するのに十分な強度を有する任意の形態の硬質プレート(例えば、金属、硬質プラスチックなど)とすることができる。平板として示してあるが、ビルドプレート162は、その上で形成されるプリフォーム166の部分を賦形するために望まれる任意の所望の形状、すなわち、湾曲、角度などとすることができる。この場合の修復位置102は、ビルドプレート162によって賦形されたプリフォーム166の部分の形状と少なくとも部分的に一致させるか或いは既に有するようにしてもよい。粉末混合物110は、本明細書で既に説明した通り、誘導することができる。
【0023】
図5は、ビルドプレート162からプリフォーム166を取り外すところを示す。この取り外しはどのように行ってもよく、例えば、プリフォーム166をビルドプレート162から押し出す又は切断することによって行うことができる。場合によっては、プリフォーム166はビルドプレート162上で、修復位置102(
図6)での超合金部品100の修復に使用できる所望の幾何形状(例えば形状及び寸法)に形成してもよく、そのまま使用できるプリフォーム172を与える。他の場合も、
図5に示すように、プリフォーム166は、超合金部品100の修復位置102(
図6)のための所望の幾何形状に適宜(想像線)賦形してもよく、すぐに使用できるプリフォーム172が得られる。プリフォーム166は、所望の幾何形状とするため、限定されるものではないが、機械加工、ウォータージェット、レーザ切断又は放電加工(EDM)を始めとして、どのように賦形してもよい。したがって、プリフォーム172の賦形は、プリフォームから不要な材料を除去することも包含する。所望の幾何形状は、部品100上の位置を修復するためのあらゆる形状及び/又は寸法でよい。こうして、本実施形態は、コールドスプレーにアクセスできない位置の修復に用いることができる。
【0024】
図6は、超合金部品100の位置102にプリフォーム172を配置するところを示す。部品へのプリフォーム172の配置は、どのように行ってもよく、例えば手作業で配置してもよい。このステップにおいて、任意の数のプリフォーム172を任意の数の修復位置102に配置することができる。
【0025】
図7に示すように、所定の位置に配置したら、部品及びプリフォーム172に公知のようにして(例えば真空炉で)熱を加えて、プリフォーム172を超合金部品100に固定する(すなわち熱サイクルろう付けする)。熱を加えることによって、本明細書に記載した通り、低融点超合金粉末112が溶融して、超合金部品100と金属結合を形成する。プリフォーム172が配置された任意の数の修復位置102を同時に加熱することができる。硬化したら、位置102の軽微な加工、例えば研磨などを実施してもよい。当技術分野では自明であろうが、次いで様々な追加の保護皮膜、例えばボンドコート、遮熱コーティングなどを施工してもよい。
【0026】
プリフォーム166の形成、プリフォーム166のビルドプレート162からの取り外し、プリフォーム166のプリフォーム172への賦形、及びプリフォーム172の配置の各ステップは、複数の異なる位置で、複数の異なる動作主体によって実施し得る。したがって、方法のこの実施形態は、修復における融通性をもたらす。例えば、本プロセスでは、委託者ブランド名製造(OEM)業者が、超合金部品100のサービス拠点にプリフォーム166(ビルドプレート162と共に又は無しで)を供給し、OEM又は別の役務提供業者のいずれかが、ビルドプレート162(依然として設けられている場合)を取り外し、必要に応じてプリフォーム172を賦形し、次いでプリフォーム172を配置してプリフォーム172及び超合金部品100に熱を加えることによって実際の修復を行うことができる。プリフォーム172は、部品が修復される場所で、例えば形状又は寸法について、さらにカスタマイズすることができる。したがって、本開示の実施形態に係る方法の別の実施形態は、プリフォーム166を作成し、超合金部品100上の位置102の所望の幾何形状へと後で賦形できるようにビルドプレート162からプリフォーム166を取り外すことしか含んでいなくてもよい。OEM業者が、使用のため既に賦形されたプリフォーム172を供給し得ることも自明であろう。
【0027】
本開示の実施形態は、コールドスプレー及びろう付けプロセスを介して、精密な寸法の積層造形部品などの超合金部品を修復する方法を提供する。粉末混合物は、低融点超合金粉末と高融点超合金粉末で構成される。粉末混合物は、コールドスプレーシステムを用いて、被塗面に均一に堆積するように自動制御することができる。或いは、本プロセスは、修復位置のプリフォームを作成するのに用いることもできる。本明細書に記載した実施形態は、超合金積層造形部品のような難溶接性の超合金部品を修復するための有効な方法を提供する。ただし、本明細書に記載した方法は、鋳造、鍛造及び/又は溶接部品の修復にも使用できる。修復位置は、ろう付け後にニアネット形状を有し、所望の又はそれに近い幾何形状にある。さらに、修復は、コールドスプレー堆積及びろう付け熱サイクル後に均一な厚さを有することができる。この方法では、1回のろう付けサイクルで複数の位置(平坦又は垂直或いはオーバーヘッド)をろう付けできる。このプロセスは実施が簡単で、人為的エラーをなくすように制御できる。得られる修復は、例えば最大99%の稠密材料を含むことができる。
【0028】
添付の図面は、本開示の幾つかの実施形態に関する処理の幾つかを示す。これに関して、各図面は、記載された方法の実施形態に関連するステップを表す。幾つかの別の実施態様では、図面に記載された行為は、関与する行為によっては、図に記された順序通りに起こらなくてもよいし、或いは例えば実質的に同時に又は逆の順序で実施してもよい。また、処理を表す追加のステップを追加し得ることも当業者には自明であろう。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲は、前後関係などから明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。範囲の特定の値に用いられる「約」は、上下限に適用され、その値を測定する機器の精度に依存する場合を除いて、記載された数値の±10%を示すことがある。
【0030】
以下の特許請求の範囲において機能的記載によって特定された構成要素の対応する構造、材料、行為及び均等物は、特許請求の範囲に具体的に記載された他の構成要素と組合せて機能を発揮するあらゆる構造、材料又は行為を包含する。本開示の記載は、例示及び説明を目的としたものであり、網羅的なものでもなければ、開示された形態に限定するものでもない。本開示の技術的範囲及び技術的思想から逸脱せずに、数多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本開示の実施形態は、本開示の原理及び実用的用途の説明として最も適しかつ当業者が様々な実施形態に関する開示内容及び特定の用途に適した様々な修正について理解できるように、選択して記載したものである。
【符号の説明】
【0031】
100 超合金部品
102 修復位置
110 粉末混合物
112 低融点超合金粉末
114 高融点超合金粉末
120 コールドスプレーシステム
162 ビルドプレート
166 プリフォーム
172 賦形プリフォーム
【国際調査報告】