(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ポリ(オキシアルキレン)アクリルポリマーを高固形分及び低粘度で作製する方法
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20231102BHJP
C08F 265/02 20060101ALI20231102BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C04B24/26 E
C08F265/02
C08F220/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520265
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 US2021052489
(87)【国際公開番号】W WO2022076209
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】ペトル、マイケル ティ.
(72)【発明者】
【氏名】カランター、トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ラドラー、マイケル ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4G112
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4J026AA43
4J026AC23
4J026BA25
4J026BA30
4J026BB03
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4J100AJ02P
4J100AL08Q
4J100BA08Q
4J100CA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA15
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、水性組成物を作製する方法であって、1つ以上の開始剤の存在下、1~5のpHで、水性媒体と、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーとの水性モノマー混合物を、共重合性エチレン性不飽和カルボン酸、ポリマーポリカルボン酸及びそれらの混合物から選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体の存在下で重合させて、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を形成することであって、この重合が8~60重量%の範囲の固形分で行われる、形成することと、1つ以上の芳香族補因子を水性組成物と組み合わせることと、を含む、方法を提供する。加えて、本発明は、2つ以上の相ドメイン、及びはるかに少ないエネルギー入力又は水廃棄物で処理することを可能にするために、実質的に低減された粘度を有する、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の水性組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤及び保水助剤として使用するための水性組成物であって、水性媒体と;
オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーと、開始剤の重合残基とを重合又は共重合形態で含む、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基と;
1つ以上の芳香族補因子と;
前記ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の一部として共重合形態のエチレン性不飽和カルボン酸、ポリマーポリカルボン酸、又はそれらの混合物から選択される、1つ以上のカルボン酸基含有流体と、を含み、
前記水性媒体が、少なくとも90重量%の水であり、
更に、前記組成物が、1~5のpHを有し、かつ8~60重量%の範囲の固形分を有する、水性組成物。
【請求項2】
1~4.8のpHを有し、更に、前記組成物が、任意の1つ以上の開始剤又はその重合副生成物を除いて、実質的に塩を含有しないか、又は付加塩を含有しない、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
カルボン酸の総モル数(前記カルボン酸の総モル数は、前記1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの総モル数と、1つ以上のポリマーポリカルボン酸を作製するために使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの総モル数とを足したものとして決定され、任意のポリマーポリカルボン酸が付加ポリマーでない場合は、前記1つ以上のポリマーポリカルボン酸中のカルボン酸基の総モル数)の、
オキシアルキレンの総モル数(前記オキシアルキレンの総モル数は、前記1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるオキシアルキレン鎖基を含有する前記1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーの総モル数に、マクロモノマー製造業者によって報告される、オキシアルキレン鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマーの総量中のオキシアルキレン鎖基の平均数を掛けたものとして決定される)に対するモル比が、
0.1:1~10:1の範囲である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
カルボン酸の総モル数のオキシアルキレンの総モル数に対するモル比が、0.2:1~5:1の範囲である、請求項3に記載の水性組成物。
【請求項5】
10~40重量%の範囲の固形分を有する貯蔵安定性水性混合物又は添加剤濃縮物を含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項6】
水性組成物を作製する方法であって、
1つ以上の開始剤の存在下、1~5のpHで、水性媒体と、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーとの水性モノマー混合物を、共重合性エチレン性不飽和カルボン酸、ポリマーポリカルボン酸、又はそれらの混合物から選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体の存在下で重合させて、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を形成することを含み、
前記水性モノマー混合物の水性部分が、少なくとも90重量%の水を含み、更に、前記重合が、8~60重量%の範囲の固形分で行われる、方法。
【請求項7】
前記重合において、前記水性モノマー混合物が、1~4.8のpHを有し、
更に、前記水性モノマー混合物が、任意の1つ以上の開始剤を除いて、実質的に塩を含有しないか、又は付加塩を含有しない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水性モノマー混合物の前記重合において、
カルボン酸の総モル数(前記カルボン酸の総モル数は、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のマクロモノマーの重合において使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの総モル数と、1つ以上のポリマーポリカルボン酸を作製するために使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの総モル数とを足したものとして決定され、任意のポリマーポリカルボン酸が付加ポリマーではない場合は、前記1つ以上のポリマーポリカルボン酸中のカルボン酸基の総モル数)の、
オキシアルキレンの総モル数(前記オキシアルキレンの総モル数が、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるアクリル又はビニルマクロモノマーポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の総モル数に、マクロモノマー製造業者によって報告される、オキシアルキレン鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマーの総量中のオキシアルキレン鎖基の平均数を掛けたものとして決定される)に対するモル比が、
0.1:1~10:1の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
オキシアルキレン鎖基を含有する前記アクリル又はビニルマクロモノマーの総量が、前記ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、20~100重量%の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記重合が、10~45重量%の固形分で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記水性モノマー混合物が、前記1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーとして、C
1~C
4アルコキシポリ(C
2~C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレートを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合可能なエチレン性不飽和カルボン酸、ポリマーポリカルボン酸又はそれらの混合物から選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体の存在下で、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のマクロモノマーの水性モノマー混合物を重合して、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を形成することを含む水性組成物の作製方法であって、重合が1~5のpHで行われる、方法、並びにブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基、セメントで使用するための添加剤濃縮物など、1つ以上の芳香族補因子を含む水性組成物に関する。より具体的には、本発明は、共重合可能なエチレン性不飽和カルボン酸、ポリマーポリカルボン酸又はそれらの混合物から選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体の存在下で、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーの水性モノマー混合物を重合することを含む方法であって、重合が1~5のpH、又は好ましくは1~4.8のpHで行われる、方法に関し、より詳細には、本発明は、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基、1つ以上の芳香族補因子、及びブラシポリマーを含有するオキシアルキレン側鎖基の一部として共重合形態のエチレン性不飽和カルボン酸、ポリマーポリカルボン酸、又はそれらの混合物から選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体を含む水性組成物に関する。本発明の組成物は、増粘剤及び保水組成物、例えば、好ましくは、セメント含有組成物において使用するための水性添加剤濃縮物又は粉末組成物としての使用を見出す。
【0002】
セルロースエーテルを含むセルロース系材料は、それらへの水の導入後のそれらの増粘及び保水性のために、粘度調整剤(viscosity modifying agent、VMA)添加剤として周知である。それらは、例えば、石油及びガス生産において使用される坑井ケーシングをセメント接合するためのコンクリート混合物において、及びセメント系タイル接着剤(cement based tile adhesive、CBTA)などの乾燥混合物からのモルタルにおいて使用され得る。それらの保水性は、例えば、石、石構造物、コンクリート、コンクリートレンガ又は粘土レンガ壁などの吸収性基材へのモルタルの湿式適用を可能にし、モルタルが乾燥する前に適切な凝結を可能にする。更に、セルロースエーテルによって提供される増粘及び保水は、投与量に依存し、これは、ずり減粘を可能にし、したがって、使用中のセルロースエーテルを含有する組成物の高度に制御可能な粘度を可能にする。しかしながら、セルロースエーテルは、セメント硬化反応を遅延させ、セメント製品においてより低い強度特性をもたらすことが知られている。セメント硬化を遅らせることなくセメント製品中の保水性を高める方法として合成ポリマーの提供を可能にすることが望ましいであろう。
【0003】
β-ナフタレンスルホネート(β-naphthalene sulfonate、BNS)と組み合わせたメトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート(methoxypoly(ethylene glycol)methacrylate、MPEGMA)ポリマーが、セメント組成物における使用のための保水助剤を含有するセルロースエーテルの代替物として提案されている。しかしながら、MPEGMAポリマーの合成中に著しい粘度上昇が起こり、例えば、わずか10重量%の固形分で1×104cPを超えるような水中での高粘度をもたらし、商業的に生産することができない。合成固形分を5重量%まで劇的に減少させることは、望ましくないことに、低い反応器生産量及び組成物から任意の追加量の水を除去するために必要とされる高いエネルギー需要をもたらす。
【0004】
Baumannらの米国特許出願公開第2017/0240476(A1)号は、ペンダント又は側鎖ポリエーテル基を有する1つ以上の非イオン性又は実質的に非イオン性のビニル又はアクリルブラシポリマーと、1つ以上のフェノール基又は少なくとも1つの硫黄酸基を有する1つ以上の芳香族基を組み合わせて含有する1つ以上の芳香族補因子と、更に1つ以上のポリカルボキシラートエーテルコポリマー減水剤とを含む水溶液又は粉末の組成物を開示している。この組成物はセメントに使用される。しかしながら、加工不可能なほど高い粘度は、許容できないほど低い固形分であっても、ブラシポリマー及びそれらの組成物の作製をもたらす。
【0005】
本発明者らは、セメント混和剤中の粘度調整剤として使用した場合に、許容可能な固形分で、組成物の作製において制御されない粘度上昇なしに、セルロースエーテルの増粘及び保水性能を与える水性ポリマー組成物及びそのような水性組成物を作製する方法を提供するという問題を解決しようとした。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、増粘剤及び保水組成物として使用するための水性組成物は、水性媒体、好ましくは有機溶媒を実質的に含まない水性媒体と;オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーと、開始剤の重合残基とを重合又は共重合形態で含む、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基と;
1つ以上の芳香族補因子と;
ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の一部として共重合形態のエチレン性不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸若しくはメタクリル酸、ポリマーポリカルボン酸、好ましくはポリアクリル酸若しくはポリメタクリル酸、又はより好ましくはポリアクリル酸、あるいはそれらの混合物から選択される、1つ以上のカルボン酸基含有流体と、を含み、
組成物は、1~5、又は好ましくは1~4.8のpHを有し、更に、組成物は、任意の1つ以上の開始剤又はその重合副生成物を除いて、実質的に塩を含有しないか、又は付加塩を含有しない。更に、本発明による水性組成物において、水性媒体は少なくとも90重量%、又は好ましくは少なくとも98重量%、又はより好ましくは少なくとも99重量%が水である。本発明の水性組成物は、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の全固形分を基準にして1重量%までの量などで、熱若しくはレドックス開始剤などの1つ以上の開始剤、又は好ましくは1つ以上の熱開始剤の重合残留物を含むことができる。
【0007】
本発明によれば、水性組成物は、
カルボン酸の総モル数(カルボン酸の総モル数は、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの総モル数と、1つ以上のポリマーポリカルボン酸を作製するために使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの総モル数とを足したものとして定義され、任意のポリマーポリカルボン酸が付加ポリマーでない場合は、1つ以上のポリマーポリカルボン酸の総量中のカルボン酸基の総モル数)の
オキシアルキレンの総モル数(オキシアルキレンの総モル数は、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるオキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーの総モル数に、マクロモノマー製造業者によって報告される、オキシアルキレン鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマーの総量中のオキシアルキレン鎖基の平均数を掛けたものとして決定される)に対するモル比を有し、
これは、0.1:1~10:1、又は好ましくは0.2:1~5:1の範囲である。
【0008】
本発明の水性組成物は、8重量%以上、又は好ましくは10重量%以上、又は好ましくは60重量%まで、又はより好ましくは45重量%以下、又はより好ましくは12重量%以上、又は更により好ましくは30重量%以上、又は8~60重量%、又は好ましくは10~60重量%、又はより好ましくは12~45重量%の範囲の固形分を有する貯蔵安定性水性混合物又は添加剤濃縮物を含むことができる。更に、水性組成物は、添加剤として使用するためなどの貯蔵安定性乾燥粉末組成物を含んでもよい。本発明による乾燥粉末組成物は、水硬性セメント粉末を更に含んでもよい。
【0009】
好ましくは、本発明によるブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基は、C1~C4アルコキシポリ(C2~C4アルキレングリコール)(メタ)アクリレートポリマー、又は1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸との共重合形態のコポリマー、又はより好ましくは、アルコキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートポリマー、又は1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸との共重合形態のコポリマー、又は更により好ましくは、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(MPEGMA)ポリマー又はそのアクリル酸若しくはメタクリル酸とのコポリマーを含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、水性組成物の作製方法は、水性媒体、好ましくは有機溶媒を実質的に含まない水性媒体と、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーとの水性モノマー混合物を、共重合性エチレン性不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸若しくはメタクリル酸、ポリマーポリカルボン酸、好ましくはポリアクリル酸若しくはポリメタクリル酸、又はより好ましくはポリアクリル酸、又はそれらの混合物から選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体の存在下で重合して、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を形成することを含む。重合は、熱開始剤又はレドックス開始剤などの1つ以上の開始剤、好ましくは1つ以上の熱開始剤の存在下で、1~5、又は好ましくは1~4.8のpHで行われ得る。本発明の重合は、8重量%以上、又は好ましくは10重量%以上、又は好ましくは60重量%まで、又はより好ましくは45重量%以下、又はより好ましくは12重量%以上、又は更により好ましくは30重量%以上、又は好ましくは10~60重量%、又はより好ましくは12~45重量%の範囲の固形分で行われる。本発明の重合は、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、1重量%まで、又は0.01~0.6重量%の1つ以上の開始剤の存在下で行われる。更に、本発明の重合において、水性モノマー混合物の水性媒体は、少なくとも90重量%、又は好ましくは少なくとも98重量%、又はより好ましくは少なくとも99重量%が水である。本発明による方法は、水性ブラシコポリマー組成物を乾燥させて乾燥粉末を形成することを更に含んでもよく、又は1つ以上の芳香族補因子を水性組成物と組み合わせることを更に含んでもよい。
【0011】
更に、本発明の水性モノマー混合物の重合によれば、
カルボン酸の総モル数(カルボン酸の総モル数は、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーの重合において使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーの総モル数と、1つ以上のポリマーポリカルボン酸を作製するために使用されるカルボン酸基の総モル数とを足したものとして決定され、任意のポリマーポリカルボン酸が付加ポリマーではない場合、1つ以上のポリマーポリカルボン酸中のカルボン酸基の総モル数)の
オキシアルキレン鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマーの1つ以上のブラシポリマーを作製するために使用されるオキシアルキレンの総モルとして決定される、オキシアルキレンの総モル数、又はマクロモノマー製造業者によって報告される、オキシアルキレン鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマーの総量中のオキシアルキレン鎖基の平均数を掛けたアクリル又はビニルマクロモノマーの総モル数に対するモル比は、
0.1:1~10:1、又は好ましくは0.2:1~5:1の範囲である。
【0012】
本発明の水性モノマー混合物の重合によれば、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の総重量に基づく、オキシアルキレン側鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマーの総量は、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、20~100重量%、又は好ましくは30~98重量%、又は好ましくは97重量%以下、又はより好ましくは50重量%以上、又は更により好ましくは65重量%以上の範囲である。
【0013】
本発明の水性モノマー混合物の重合によれば、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の総重量に基づいて、固体としての1つ以上のカルボン酸基含有流体に加え、1つ以上のポリマーポリカルボン酸の総量は、2~80重量%、又は好ましくは2~70重量%、又は好ましくは50重量%以下、又はより好ましくは35重量%以下、又は更により好ましくは3重量%以上の範囲である。好ましくは、水性モノマー混合物を重合する際に、任意の1つ以上の開始剤又はその重合副生成物を除いて、実質的に塩を含まないか、又は付加塩を含有しない。
【0014】
好ましくは、本発明の重合において、水性モノマー混合物は、1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーとして、C1~C4アルコキシポリ(C2~C4アルキレングリコール)(メタ)アクリレートポリマー、又はそれと1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸との混合物を含むか、又はより好ましくは、アルコキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートポリマー又はそれと1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸との混合物を含むか、又は更により好ましくは、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(MPEGMA)ポリマー又はそれとアクリル酸若しくはメタクリル酸との混合物を含む。
【0015】
本発明の方法によれば、本方法は、重合後に、1つ以上のブラシポリマー及び1つ以上の芳香族補因子の各々を別個の粉末として乾燥又は取得し、次いでそれらを混合して乾燥粉末ブレンドを形成することを更に含んでもよい。代替的に、本発明による方法は、重合後に、水性組成物に、1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基、1つ以上の芳香族補因子、又はそれらの混合物を任意の順序で添加して、安定な水性組成物を形成する湿式法を含んでもよい。湿式法は、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基又は1つ以上の芳香族補因子とのそれらの混合物の水性組成物に、1つ以上のポリカルボキシラートエーテルコポリマー減水剤を添加することを更に含んでもよい。
【0016】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈により明白に別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含む。特に規定しない限り、本明細書で使用する用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0017】
特に指定のない限り、括弧を含む用語は、代替的に、括弧が存在しないかのような用語全体、及び括弧に含まれない場合の同じ用語、並びに各代替物の組み合わせを指す。したがって、「(メタ)アクリレート」という用語は、代替として、メタクリレート、若しくはアクリレート、又はそれらの混合物を包含する。
【0018】
同じ構成成分又は特性を対象とする全ての範囲のエンドポイントは、エンドポイントを含み、独立して組み合わせ可能である。したがって、例えば、8重量%以上、又は好ましくは10重量%以上、又はより好ましくは12重量%以上、又は好ましくは60重量%まで、又は更により好ましくは30重量%以上、又は好ましくは60重量%まで、又はより好ましくは45重量%以下、又は更により好ましくは30重量%以上、又は好ましくは10~60重量%、又はより好ましくは12~45重量%、又は更により好ましくは30~45重量%の範囲の固形分の開示された範囲は、8重量%~60重量%、又は8~10重量%、又は8~12重量%、又は8~30重量%、又は8~45重量%、又は好ましくは10~60重量%、又はより好ましくは12~60重量%、又はより好ましくは12~45重量%、又は更により好ましくは30~45重量%、又は好ましくは10~12重量%、又は好ましくは10~30重量%、又は好ましくは10~45重量%、又はより好ましくは12~45重量%、又はより好ましくは12~30重量%、又は更により好ましくは30~45重量%、又はより好ましくは30~60重量%、又は好ましくは45~60重量%の範囲の固形分のいずれか又は全てを意味する。
【0019】
別段の指示がない限り、温度及び圧力の条件は、室温(23℃)及び標準圧力(101.3kPa)であり、「周囲条件」とも称される。加えて、特に明記しない限り、全ての条件には50%の相対湿度(relative humidity、RH)が含まれる。
【0020】
引用された全ての範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、0.25~0.5重量%、又は好ましくは0.35~0.45重量%の開示は、0.25~0.5重量%、又は好ましくは0.35~0.45重量%、又は0.25~0.35重量%、又は0.25~0.45重量%、又は0.35~0.5重量%、又は0.45~0.5重量%の全てを含む。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「アクリル又はビニル」は、α,β-エチレン性不飽和モノマーの付加重合性モノマー又は付加ポリマー、例えば、アルキル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、エチレン性不飽和カルボン酸、アルキル(メタ)アクリルアミド、又はオキシアルキレン鎖基含有モノマー、例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(methoxy poly(ethylene glycol)(meth)acrylate、mPEG(M)A)又はポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(poly(ethylene glycol)(meth)acrylate、PEG(M)A)及びアリルポリ(エチレングリコール)(allyl poly(ethylene glycol)、APEG)などを指す。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「水性」は、連続相又は媒体が、水及び媒体の重量に基づいて0~10重量%の水混和性化合物であることを意味する。好ましくは、「水性」は水を意味する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、他に示されない限り、用語「オキシアルキレン鎖基の平均数」は、所定のマクロモノマーについて製造業者の文献に示されるような、オキシアルキレン鎖基を有する任意の所定のアクリルマクロモノマー又はビニルマクロモノマー中のオキシアルキレン基の数を指す。これは平均数であるので、オキシアルキレン鎖基の実際の数は、各材料バッチ内の分布を表し、2つ以上のそのようなマクロモノマーの混合物中のオキシアルキレン鎖基の平均数は、モノマー混合物中のマクロモノマーの総量に対するオキシアルキレン鎖を有する選択されたマクロモノマーの各々の相対量に依存する。例えば、各オキシアルキレン鎖に10個のエチレングリコール基を有するアルコキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートと各オキシアルキレン鎖に6個のプロピレングリコール基を有するアルコキシポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレートとの50:50(mol/mol)混合物において、オキシアルキレン基の平均数は側鎖当たり8個である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「モノマーの総重量に基づく」という用語は、例えば、アクリルモノマーなどのポリマーを作製するために使用される付加モノマーの総重量と比較したポリマー又はその一部分の量を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「乾燥混合物」又は「乾燥粉末」は、セメント、セルロースエーテル、任意の他のポリマー添加剤、並びに任意の充填剤及び乾燥添加剤を含有する貯蔵安定性粉末を意味する。乾燥混合物中に水が存在しない。したがって、それは貯蔵安定性である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「流体」又は「複数の流体」という用語は、物質又は相の状態にかかわらず、流れる物質の組成物を指す。流体は、懸濁液、分散液、溶液、流動固体又は非晶質材料、エアロゾル、又は気体を含み得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「側鎖」基は、ポリマーの側鎖、又はポリマーの骨格に共有結合し、末端基ではない基を指す。
【0028】
本明細書中で使用される場合、他に示されない限り、「ポリマー」という語句は、ホモポリマー及び2つ以上の異なるモノマーからのコポリマーの両方、並びにセグメント化コポリマー及びブロックコポリマーを含む。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「貯蔵安定性」は、所与の粉末添加剤組成物について、室温条件及び標準圧力下で棚上に放置したとき、5日後、又は好ましくは10日後に、粉末がブロックせず、所与の水性添加剤組成物について、液体組成物が濁り、分離し、又は沈殿しないことを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有機溶媒を実質的に含まない」という用語は、組成物が、組成物の総重量に基づいて0.5重量%未満の任意の1つ以上の有機溶媒を含むか、又は好ましくは添加された有機溶媒を含有しないか、又はより好ましくは1000ppm以下の任意の1つ以上の有機溶媒を含有することを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、語句「カルボン酸基の総モル数」は、組成物をpH 7.0に中和するためのKOHに対する所与のポリマーの水滴定によって決定される、所与のポリマーを作製するために使用されるエチレン性不飽和カルボン酸モノマーのモル数、又は付加ポリマーではない場合、1つ以上のポリマーポリカルボン酸中のカルボン酸基の総モル数を意味する。
【0032】
本明細書で使用するとき、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基についての「重量平均分子量」という用語は、所与のポリマーの分子量を分析するのに必要なポリ(アクリル酸)標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)によって決定された重量分布から得られた重量平均値を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、「重量%」という用語は、示された分母に基づく重量パーセントを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「全固形分」、「固体」又は「固体として」という語句は、合成ポリマー、モノマー、天然ポリマー、酸、消泡剤、水硬性セメント、充填剤、無機材料、並びに他の不揮発性材料及び開始剤などの添加剤を含む、所与の組成物中に存在する不揮発性成分又は材料のいずれか又は全ての総量を指す。水、アンモニア及び揮発性溶媒は固体とはみなされない。
【0035】
本発明によれば、水性媒体中での重合方法は、水中で溶液を形成するモノマーを重合することを含む。しかしながら、本発明の方法の重合生成物は、安定な懸濁重合又は乳化重合などの2相重合のような様式で挙動し、更に、本方法によって作製されるものなどのブラシコポリマーを含有する水性組成物は、乳濁液又は安定な懸濁物のように挙動する。本発明の水性モノマー混合物又はブラシポリマー組成物中のエチレン性不飽和カルボン酸のpKaを下回るpHでは、プロトン化カルボン酸基とブラシポリマーのオキシアルキレン側鎖のオキシアルキレン基との間に会合性錯体が形成される。したがって、本発明は、プロセスにおけるエネルギー及び水の使用を最小限に抑えながら、許容可能な高固形分でオキシアルキレン鎖基を含有する高水溶性アクリル又はビニルマクロモノマーの重合を可能にする。適切なマクロモノマーの例は、メトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート(MPEGMA)を含む。
【0036】
本発明は、水性モノマー混合物、それらの重合、及び水性ブラシポリマー組成物含有オキシアルキレン側鎖基における実質的な粘度低下を可能にする。比較のために、マクロモノマーを単独で含むか、又は23℃及び101.3kPa圧力で脱イオン(deionized、DI)水中で1重量%未満の水溶性を有する1つ以上のモノマー、例えばアルキル(メタ)アクリレート、スチレン又はビニルエステルモノマー、例えばメチルメタクリレート(methyl methacrylate、MMA)と混合して含む、同じモノマー混合物又はそのブラシポリマーの水性組成物を使用した。本発明の方法による重合は、10重量%MPEGMA全ポリマー固形分で、104cP超~102cP未満までのインプロセス粘度低下を可能にした。更に、本発明の方法の別の例では、モノマーの総重量に基づいて15重量%のメタクリル酸(methacrylic acid、MAA)を含む水性モノマー混合物は、10重量%のMPEGMA全モノマー/ポリマー固形分での重合前、重合中及び重合後に、104cP超~102cP未満までのインプロセス粘度低下を可能にした。上記実施例の両方における比較MPEGMA水性モノマー混合物/ブラシポリマーにおいて、15重量%メチルメタクリレート(MMA)を使用した。
【0037】
特に、本発明者らは、オキシアルキレン鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマーの重合性水性モノマー混合物と、乳濁液又は懸濁液に類似した、2つ以上の相ドメインを有する(共)重合形態の同じマクロモノマーのブラシポリマーの水性組成物とを発見した。本発明の水性モノマー混合物から作製されるブラシポリマーの水性組成物は、それらが作製される水性モノマー混合物と同様に挙動する。本発明による水性ブラシポリマー組成物は、ポリアクリル酸又はポリ(メタクリル酸)(poly(methacrylic acid)、pMAA)などのポリマーポリカルボン酸、又はそれらの混合物、共重合形態のメタクリル酸(MAA)などの共重合形態のエチレン性不飽和カルボン酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体を含む。加えて、本発明は、1つ以上のポリマーポリカルボン酸若しくは共重合性エチレン性不飽和カルボン酸、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のカルボン酸基含有流体の存在下で、オキシアルキレン鎖基を含有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーを重合することを含む、水性ブラシポリマー組成物を作製する方法を提供する。
【0038】
本発明による1つ以上のアクリル又はビニルブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基は、オキシアルキレン鎖基を有するアクリル又はビニルマクロモノマーのホモポリマー又は1つ以上のマクロモノマーと1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとのコポリマーから選択することができる。本発明の水性組成物は、1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸を共重合形態で含有するブラシコポリマーを含む場合、ポリマーポリカルボン酸を有していなくてもよい。
【0039】
本発明のアクリル又はビニルブラシポリマーは、オキシアルキレン側鎖基、好ましくはポリ(エチレングリコール)基又はアルコキシポリ(エチレングリコール)基を有する任意のそのようなポリマーを含むことができる。オキシアルキレン側鎖基は、例えば、ヒドロキシル、メチル、エチル、又は組成物のpHで電荷を有さない任意の他の非イオン性基で終端されたポリ(アルキレングリコール)側鎖であり得る。側鎖は、アルキレングリコール(EO、PO、BOなど)又はそれらの混合物であり得る。好適なオキシアルキレン側鎖基は、ポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ブチレングリコール)又はそれらの2つ以上のコポリエーテル、アルコキシポリ(アルキレングリコール)、例えばメトキシポリ(アルキレングリコール)、エトキシポリ(アルキレングリコール)及びそれらの組み合わせから選択することができる。好ましくは、本発明のビニル又はアクリルブラシポリマー中のオキシアルキレン側鎖基は、5~25個、又はより好ましくは7~15個のエーテル基又はアルキレングリコール基を有する。より好ましくは、エーテル基は、エトキシ(-CH2CH2O-)又は(EO)基である。
【0040】
本発明のビニル又はアクリルブラシポリマーの主鎖は、アクリル酸又はメタクリル酸などの1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸の繰り返し単位を含んでもよく、ただし、繰り返し単位は、これらに限定されるものではない。本発明のビニル又はアクリルブラシポリマーは、ビニル-、アリル-、又はイソプレニル-基などの任意の他の不飽和モノマーをモノマー固形分の10重量%までの量で使用して合成することもできる。
【0041】
本発明のオキシアルキレン鎖基を含有するアクリル又はビニルマクロモノマー、及びアクリル又はビニルブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基において、1つ以上のマクロモノマー又はブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基中のオキシアルキレン側鎖基の平均数は、1.5~100エーテル基、例えば、2以上、又は3以上、又は1.5~50エーテル基、又は好ましくは2~40、又はより好ましくは3~40、又はより好ましくは5~25エーテル基、又は更により好ましくは7~15エーテル基の範囲である。好ましくは、本発明のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製するために使用されるマクロモノマーは、オキシアルキレン基中に、合計5~25個のアルキレングリコール又はエーテル単位、例えば7個以上のアルキレングリコール又はエーテル単位、又は15個までのアルキレングリコール又はエーテル単位を有する。
【0042】
好適なアクリル又はビニルブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基は、ポリマーを作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、20~100重量%、又は好ましくは30~100重量%、又は好ましくは40~70重量%、又は好ましくは50重量%以上、又は好ましくは98重量%まで、又はより好ましくは65~100重量%、例えば65~98重量%の、オキシアルキレン鎖基を有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーの重合生成物であり得る。好ましくは、ポリマーを作製するために使用されるモノマーの残りは、1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸である。
【0043】
本発明のブラシポリマーの重合又は作製に使用するのに好適なアクリル又はビニルマクロモノマーは、所望の数のエーテル又はアルキレングリコール単位を有するポリ(アルキレングリコール)鎖を有する任意のマクロモノマーであってもよい。好ましくは、本発明のビニル又はアクリルブラシポリマーを作製するために使用されるアクリル又はビニルマクロモノマーは、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートなどのオキシアルキレン鎖基を有するメタクリレートモノマー、アルコキシポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、例えば、C1~C4アルコキシポリ(C2~C4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、疎水性C12~C25アルコキシポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、又はそれらの混合物である。より好ましくは、オキシアルキレン鎖基を有する1つ以上のアクリル又はビニルマクロモノマーは、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート又はそれらの混合物を含む。
【0044】
好適なアクリル又はビニルマクロモノマーは、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個のエチレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個のプロピレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、C12~C25アルコキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個のエチレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、C12~C25アルコキシポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個のプロピレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)-(ポリプロピレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール繰り返し単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個、又は好ましくは5~25個のエチレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個、又は好ましくは5~25個のプロピレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(ブチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個、又は好ましくは5~25個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(エチレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(プロピレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、メトキシポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、エトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート又は2~50個、又は好ましくは5~25個のエチレングリコール単位を有するその対応する(メタ)アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アリルエーテル又は2~50個のエチレングリコール単位を有するモノビニルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アリルエーテル又は2~50個のプロピレングリコール単位を有するモノビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アリルエーテル又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するモノビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アリルエーテル又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するモノビニルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(ブチレングリコール)(メタ)アリルエーテル又は2~50個の総アルキレングリコール単位を有するモノビニルエーテル、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アリルエーテル又は2~50個のエチレングリコール単位を有するモノビニルエーテル、メトキシポリ(プロピレングリコール)(メタ)アリルエーテル又は2~50個のプロピレングリコール単位を有するモノビニルエーテル、並びにイタコン酸若しくはマレイン酸の対応するモノエステル、モノアミド、ジエステル及びジアミド、又は前述のもののいずれかの混合物を含み得る。
【0045】
より詳細には、オキシアルキレン鎖基を有する好適なアクリル又はビニルマクロモノマーは、ポリ(エチレングリコール)4-40(メタ)アクリレート、例えば、ポリ(エチレングリコール)4-40(メタ)アクリレート、アルコキシポリ(アルキレングリコール)4-40(メタ)アクリレート、例えば、C1~C4アルコキシポリ(C2~C4アルキレングリコール)4-40(メタ)アクリレート、C1~C4アルコキシポリ(C2~C4アルキレングリコール)4-40(メタ)アクリレートアルコキシポリ(エチレングリコール)4-40(メタ)アクリレート;又は疎水性C12~C25アルコキシポリ(アルキレングリコール)4-40(メタ)アクリレートのいずれかの1つ以上を含み得る。アクリル又はビニルマクロモノマーは、好ましくは、C1~C4アルコキシポリ(C2~C4アルキレングリコール)4-40(メタ)アクリレート及びポリ(エチレングリコール)1.5-100(メタ)アクリレートを含み、より好ましくは、ポリ(エチレングリコール)4-40(メタ)アクリレート及びC1~C4アルコキシポリ(エチレングリコール)4-40(メタ)アクリレート、又は更により好ましくはメトキシポリ(C2~C4アルキレングリコール)4-40(メタ)アクリレート及びポリ(エチレングリコール)4-40(メタ)アクリレートを含む。
【0046】
本発明の好適なアクリル又はビニルブラシポリマーの例は、ポリ(エチレングリコール)などのオキシアルキレン鎖基を有するアクリレート又はアクリルアミドマクロモノマーと、1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとの(コ)ポリマーである。
【0047】
ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基及びカルボン酸基を含有する本発明の水性ブラシポリマーの作製に使用するのに好適なエチレン性不飽和カルボン酸は、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、2-メチルイタコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、α,β-メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、及びフマル酸モノアルキルなどのカルボン酸を有する任意の1つ以上のモノマー、エチレン性不飽和無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水アクリル酸及び無水メタクリル酸を含み得る。
【0048】
更に、本発明による水性ブラシポリマー組成物は、共重合形態で、23℃及び101.3kPa圧力で脱イオン(DI)水中で1重量%未満の水溶性を有する1つ以上のコモノマーを含み得る。好適なコモノマーは、C1~C12アルキル(メタ)アクリレートのいずれか、例えば低級アルキル(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート(ethyl acrylate、EA)、及び2-エチルヘキシルメタクリレート(2-ethylhexyl methacrylate、2-EHA)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、アリーレン、例えばスチレン、ビニルエステルモノマー、及びこれらの混合物を含み得る。そのようなコモノマーは、ブラシポリマーを作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、最大10重量%の固体、又は好ましくは最大5重量%の固体を含むことができる。水性組成物が、1つ以上のカルボン酸として1つ以上のポリマーポリカルボン酸を含む場合、そのようなコモノマーの量は、より多くてもよく、例えば、ブラシポリマーを作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、最大80重量%、又は例えば、最大40重量%であってもよい。
【0049】
本発明の水性ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基は架橋されていてもよいが、好ましくは架橋されていない。架橋は、水性モノマー混合物中に、0.01~1重量%、又は好ましくは最大0.1重量%の1つ以上のジエチレン性不飽和架橋剤モノマー、例えば、(ポリ)エチレングリコールジメタクリラート又は(ポリ)エチレングリコールジアクリラートのような(ポリ)グリコールジ(メタ)アクリラート、アリルアクリレート又はアリルメタクリレート、又はそれらの組み合わせを、ポリマーを作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、含めることによってなどの方法から生じ得る。
【0050】
好ましくは、本発明の1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の水性組成物が保水性を示し、減水性を示さないことを確実にするために、そのようなポリマーは、ブラシポリマーを作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて、0.1重量%未満、又は好ましくは0.05重量%未満のエチレン性不飽和カルボン酸塩モノマーなどの任意の塩含有モノマーの重合生成物を含む。
【0051】
本発明の水性組成物によれば、好適なブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基は、100,000~50,000,000g/mol、又は好ましくは250,000以上、又はより好ましくは300,000以上、又は好ましくは20,000,000以下、又はより好ましくは10,000,000以下の重量平均分子量(相対molecular weight、Mw)を有し得る。
【0052】
本発明による重合方法及び水性組成物による1つ以上のポリマーポリカルボン酸は、1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸の任意のポリマー、又は付加ポリマーでない場合、ポリ(アスパラギン酸)などのカルボン酸官能性ポリマーを含んでもよい。ポリマーは、共重合形態で、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、2-メチルイタコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、α,β-メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、及びフマル酸モノアルキルなどのカルボン酸を有する1つ以上のモノマー、エチレン性不飽和無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水アクリル酸及び無水メタクリル酸を含む。このようなモノマーは、ポリマーを作製するために使用される全てのモノマーの重量に基づいて、50~100重量%、又は好ましくは80重量%以上の量の酸共重合単位を提供する量で使用されるべきである。ポリマーポリカルボン酸の残りは、共重合酸基含有単位とは別に、ヒドロキシル基含有共重合単位、及び任意選択で、追加のエチレン性不飽和モノマーの共重合単位を含んでもよい。したがって、コポリマー及びコポリマーポリ酸は、共重合単位として、ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和モノマー、及び任意選択で、共重合単位として、追加のエチレン性不飽和モノマーを含むことができる。
【0053】
本発明によるブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の水性組成物を作製する方法において、重合は従来の水性付加重合を含む。重合は、熱開始剤若しくはレドックス開始剤、又は好ましくは、熱開始剤の存在下での従来のフリーラジカル付加重合、例えば、1つ以上の過硫酸塩若しくは過酸の存在下での水性乳化重合によって進行し得る。重合は、一緒に若しくは別々に添加される水性モノマー混合物のショットとして行われてもよく、又は1つ以上の段階で一緒に若しくは別々に添加される水性モノマー混合物中の1つ以上のモノマーの段階的添加を含んでもよい。重合は、40~80℃、又はより好ましくは、71℃以下での温度で水性媒体中で行うことができる。好ましくは、本発明によるブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を作製する方法は、従来のフリーラジカル付加水性重合、例えば、水性モノマー混合物が全て一度に反応容器に添加されるショット重合を含む。
【0054】
最も好ましくは、本発明のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を形成するための重合は、水性媒体中で熱開始剤を用いて40~75℃、又は最も好ましくは、71℃以下の温度で行われる。最も好ましくは、本発明のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基を形成するための重合は、ポリマーを作製するために使用されるモノマー(モノマー固形分)の総重量に基づいて、0.05重量%~1重量%、又は更により好ましくは0.2重量%以下の濃度の熱開始剤を用いて、水性媒体中で行われる。
【0055】
1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の水性組成物は、5以下、例えば1~5、又は好ましくは4.8以下、又は例えば1~4.8のpHを有する。
【0056】
1つ以上のブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の水性組成物は、組成物の全固形分重量に基づいて1重量%未満の塩を含むか、又は好ましくは、重合開始剤又はその重合副生成物の一部としての塩を除いて付加塩を含まない。塩が使用される場合、それは好ましくは一価の金属塩、例えばナトリウム塩又はアンモニウム塩である。
【0057】
本発明の水性重合方法によれば、1つ以上のポリマーポリカルボン酸は、共重合形態の1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸のポリマー又はコポリマーを含む。好適なエチレン性不飽和カルボン酸は、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、2-メチルイタコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、α,β-メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、及びフマル酸モノアルキル、エチレン性不飽和無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水アクリル酸及び無水メタクリル酸を含み得る。好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸又はメタクリル酸である。このようなモノマーは、ポリマーポリカルボン酸を作製するために使用されるモノマーの重量に基づいて、65~100重量%、好ましくは80~100重量%の量の酸共重合単位を提供する量で、コポリマー又はコポリマーポリ酸において使用されるべきである。1つ以上のポリマーポリカルボン酸の残り(共重合酸基含有単位は別として)は、共重合形態でヒドロキシル基含有エチレン性不飽和モノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、及びアミド基含有モノマー、例えば(メタ)アクリルアミドを含有するヒドロキシル又はアミド基を含んでもよい。ポリマーポリカルボン酸は、1つ以上の開始剤の存在下などで、従来の水性付加重合によって作製することができる。
【0058】
本発明の方法及び水性組成物によれば、ポリマーポリカルボン酸は、ポリマーポリカルボン酸を作製するために使用されるモノマーの総重量に基づいて1重量%未満のカルボン酸塩を含有するか、又は好ましくは塩を含有しない。
【0059】
本発明の1つ以上の芳香族補因子は、1つ以上及び1,000,000まで、又は100,000まで、又は好ましくは2つ以上、又はより好ましくは3つ以上の芳香族基又はフェノール基(例えば、フェノール基又はナフトール基)を有する任意の化合物、ポリマー又はオリゴマーであり得、ここで、芳香族補因子がフェノール基以外の芳香族基を有する場合、少なくとも1つの硫黄酸基を更に含む。好ましくは、本発明の芳香族補因子は、1つ以上の芳香族基及び少なくとも1つの硫黄酸基、又はより好ましくは、2つ以上のこのような組み合わせを有する。補因子は、ベータナフタレンスルホネート(beta naphthalene sulfonate、BNS)樹脂、スチレンスルホネート(コ)ポリマー、及びリグニンスルホネート、並びにフェノール樹脂、及びタンニンを含むことができる。芳香族補因子は、例えば、ポリ(ナフタレンスルホネート)ホルムアルデヒド縮合物樹脂又はポリマー、例えば、β-ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物ポリマー又はβ-ナフタレンスルホネート樹脂(BNS)、ポリ(スチレン-co-スチレンスルホネート)コポリマー、カテコールタンニン、フェノール樹脂、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリフェノール、ナフトール、例えば、2-ナフトール、及びこれらの混合物を含み得る。好ましくは、芳香族補因子は分岐しており、より好ましくはBNSである。
【0060】
本発明の芳香族補因子は、オリゴマー又はポリマーの繰り返し単位の10~100%、又は好ましくは30~100%、又はより好ましくは50~100%又は60~100%に1つ以上の芳香族基又はフェノール基を有する。例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂又はナフタレンスルホン酸アルデヒド樹脂の各々は、それぞれ、その繰り返し単位の100%にフェノール基又は芳香族基を有するホモポリマー又はオリゴマーと考えられる。好ましくは、芳香族及び硫黄酸基を組み合わせて有するオリゴマー又はポリマーにおいて、芳香族基の30重量%超、又は好ましくは50重量%超が硫黄酸基を伴い、例えば、コポリマーを作製するために使用されるビニルモノマーの総モル数に基づいて、30mol%超のスチレンスルホネートの共重合生成物であるポリ(スチレン-co-スチレンスルホネート)コポリマーなどである。
【0061】
芳香族補因子は、スチレンスルホネート含有ポリマーにおけるように直鎖状であってもよく、好ましくは、ナフタレンスルホン酸アルデヒド若しくはフェノールアルデヒド縮合物、タンニン又はリグニンスルホネートなどの任意の縮合樹脂におけるように分岐状である。補因子が直鎖状である場合、好ましくは600,000~10,000,000の分子量を有する。
【0062】
芳香族補因子の好適な例は市販されており、MELCRETE(商標)500粉末(BASF,Ludwigshafen,DE)及びその液体バージョンであるMELCRETE(商標)500L液体(BASF)が挙げられる。両方ともBNSポリマー又はオリゴマーである。MELCRETE(商標)500ポリマーは、スルホン化ナフタレンとホルムアルデヒドとの縮合物である。
【0063】
本発明の組成物は、湿潤(水性)又は乾燥粉末形態で使用することができる。湿潤水性組成物は湿潤セメントと共に使用され、乾燥粉末は乾燥セメントと共に使用される。本発明の芳香族補因子は、湿潤又は乾燥形態で使用することができ、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基と湿潤又は乾燥で組み合わせて、添加剤組成物を作製することができる。乾燥粉末組成物を形成するための乾燥は、任意のポリマー若しくは補因子又はその両方の水性組成物を噴霧乾燥することによって、又は好ましくは真空オーブン中で加熱することによって、又はセメント粉末と組み合わせる前に先行技術に記載されているような共沸法によって行うことができる。
【0064】
本発明の組成物において、ブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基、及び1つ以上の芳香族補因子は、使用時に、固体としてのセメント混和剤の総重量に対するブラシポリマーの総重量が0.05~2重量%、又は好ましくは0.1~1重量%の範囲であるように組み合わされてもよい。
【0065】
本発明の水性組成物は、それらを水硬結合剤又はセメント及び水と混合してコンクリート又はセメント混合物を作製することによって、又はそれらを乾燥させ、使用時に水と合わせる前に乾燥セメントと混合することによって使用することができる。本発明の組成物は、湿潤セメントへのブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基の添加の前に、芳香族補因子及び、使用される場合、任意のポリカルボキシラートエーテルコポリマー減水剤が湿潤セメントに添加されない限り、任意の様式で水硬性セメントと組み合わせることができる。好ましくは、本発明の組成物は、湿ったコンクリート又はセメントに添加される単一の水性組成物を含む。
【0066】
本発明の組成物が水硬性又は水分硬化性無機セメントを更に含む場合、1つ以上のブラシポリマーの総量は、固体として、総セメント固体に基づいて、0.05~2重量%、又は好ましくは0.1~1重量%、又はより好ましくは0.2~0.5重量%の範囲である。更に、組成物は、1つ以上の芳香族補因子を、固体として、全セメント固体に基づいて、0.1~10重量%、又は好ましくは0.2~5重量%、又はより好ましくは0.2~2重量%の範囲で含み得る。
【0067】
本発明の水性組成物又は乾燥粉末は、HPMC及び/又はHEMC(hydroxyethyl methyl cellulose)などのセルロースエーテル、又はポリカルボキシレートエーテルなどの減水剤を更に含んでもよい。組成物中の任意のポリカルボキシラートエーテルコポリマー減水剤の総量は、セメント混和剤の総セメント固形分の0.1~10重量%、又は好ましくは0.2~5重量%の範囲であり得る。
【0068】
本発明の組成物は、加えて、例えば、セメント硬化促進剤及び遅延剤、空気連行剤又は脱泡剤、収縮剤及び湿潤剤などの湿潤又は乾燥形態の従来の添加剤、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤、展着剤、鉱油粉塵抑制剤、殺生物剤、可塑剤、オルガノシラン、ポリ(ジメチルポリシロキサン)(poly(dimethylpolysiloxanes)、PDMS)及び乳化PDMS、シリコーン油及びエトキシル化非イオン性物質などの消泡剤;並びにエポキシシラン、ビニルシラン及び疎水性シランなどのカップリング剤を含有することができる。
【実施例】
【0069】
以下の実施例により、本発明を例示する。別段の指示がない限り、全ての部及び百分率は重量によるものであり、全ての温度は℃であり、全ての調製及び試験手順は、室温23℃及び圧力(1atm)の周囲条件で実施される。以下の実施例並びに表1、表2及び表3において、以下の略語を使用した。RDP:Redispersible Polymer Powder、再分散性ポリマーパウダー、MPEGMA:メトキシポリ(エチレングリコール)メタクリレート、MAA:メタクリル酸、AA:アクリル酸、MMA:メチルメタクリレート、EO:エチレンオキシド。
【0070】
AA、MMA及びMAA以外の全ての化学物質は、Sigma-Aldrichから購入し、更に精製することなく使用した。
【0071】
合成例1:ポリマーポリカルボン酸固形分50重量%のポリ(アクリル酸)添加剤を1L丸底フラスコ中で合成した。窒素ガス流下で103.5gの水を添加し、170rpmで撹拌し、73℃まで加熱した。次いで、5.94gの水に溶解した1.25gの0.15重量%硫酸鉄(II)溶液及び2.83gのメタ重亜硫酸ナトリウムを添加した。次に、63.31gの水に溶解した40.76gのメタ重亜硫酸ナトリウム、3.5gの水ですすいだ150gのAA、及び8.5gの水に溶解した0.57gの過硫酸ナトリウムの供給を同時に開始し、それぞれ70分、90分、及び95分かけて供給した。温度を徐々に75℃まで上昇させ、過硫酸ナトリウム溶液供給の終了後、温度を75℃で更に15分間保持した。この保持に続いて、10.0gの水に溶解した0.21gの過硫酸ナトリウムを10分間かけて添加し、次いで反応器を75℃で更に20分間保持した。60℃まで冷却した後4.8gの35重量%過酸化水素を2分間かけて添加し、次いで反応器を60℃で更に10分間保持した。続いて、反応器を室温まで冷却した。
【0072】
合成例2:オキシアルキレン側鎖基及び別個のポリマーポリカルボン酸を含有するブラシポリマー組成物比較例1並びに本発明の実施例1、2、及び3のブラシポリマーを、300mLの平底フラスコ内で合成し、インペラを用いて120rpmで撹拌した。12.8gのMPEGMA-500(平均9個のEOユニット及び500gの分子量を有する)、2.2gのMMA、並びに水及び上記の合成実施例1からの50重量%ポリアクリル酸溶液を反応器に添加した。溶液を窒素下で70℃まで1時間加熱した。次に、1.875gの水中の0.030gの過硫酸アンモニウムの溶液を添加し、追加の1.875gの水ですすいだ。温度を2時間、70℃に維持し、次いで1.875gの水中の0.030gの過硫酸アンモニウムの追加溶液を添加し、追加の1.875gの水ですすいだ。温度を再び2時間、70℃に維持し、次いで室温まで冷却した。この合成例2の組成物及びポリマーポリカルボン酸を以下の表1に示す。
【0073】
合成例3:共重合形態でオキシアルキレン側鎖基及びカルボン酸を含有するブラシポリマー組成物本発明の実施例4のブラシポリマーを、1L丸底フラスコ中で合成した。451.1gの水、21.3gのMPEGMA-500、及び3.7gのMAAを反応器に添加し、各モノマーを追加の6.2gの水ですすいだ。溶液を窒素下で70℃まで1時間加熱した。次に、3.124gの水中の0.050gの過硫酸アンモニウムの溶液を添加し、追加の3.124gの水ですすいだ。温度を70℃に2時間維持し、次いで、3.124gの水中の0.050gの過硫酸アンモニウムの追加溶液を添加し、追加の3.124gの水ですすいだ。温度を再び2時間、70℃に維持し、次いで室温まで冷却した。この合成例3によって作製された組成物を以下の表3に示す。
【0074】
本発明の実施例5のブラシポリマーを1L丸底フラスコ中で合成した。401.6gの水、42.5gのMPEGMA-500、及び7.5gのMAAを反応器に添加し、各モノマーを各々追加の12.5gの水ですすいだ。溶液を窒素下で70℃まで1時間加熱した。次に、6.249gの水中の0.100gの過硫酸アンモニウムの溶液を添加し、追加の6.249gの水ですすいだ。温度を70℃に2時間維持し、次いで、6.249gの水中の0.100gの過硫酸アンモニウムの追加溶液を添加し、追加の6.249gの水ですすいだ。温度を再び2時間、70℃に維持し、次いで室温まで冷却した。この合成例3によって作製された組成物を以下の表3に示す。
【0075】
【0076】
試験方法:以下の試験方法を使用した:
固形分:固形分は、示された量の所与の組成物を秤量し、次いで60℃オーブンで水分を蒸発させることによって測定した。示された実施例についての固形分を以下の表2及び3に示す。
溶液粘度:溶液粘度は、示されるように、10及び30rpmの周波数で示されるスピンドルを有するブルックフィールド粘度計で測定した。示された実施例についての溶液粘度の結果を以下の表2及び3に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
上記の表2に列挙されたデータに示されるように、ポリアクリル酸の存在下で作製された本発明の実施例は、10重量%のMPEGMAコポリマー固形分を含有するが、比較例の粘度よりもはるかに低い粘度をもたらす。この粘度の低下は、添加されたポリ(アクリル酸)の量に比例する。全ての実施例及び比較例が同じMPEGMAコポリマー含有量を有することに留意することが重要である。しかしながら、全固形分はポリ(アクリル酸)の添加量と共に増加した。それにもかかわらず、測定された粘度は、ポリ(アクリル酸)の添加量と共に減少した。最後に、上記の表3は、本発明の実施例4及び5の粘度を列挙しており、これらは、アクリルブラシポリマー含有オキシアルキレン側鎖基、及び共重合形態でコモノマーとしてのMAAを含む。実施例4及び5の組成物は、比較例1と同じ固形分であっても、劇的に低下した粘度を示した。
【国際調査報告】