(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】キャスト延伸フィルムでの使用に適したポリエチレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20231102BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20231102BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231102BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08L23/04
C08F10/02
C08J5/18 CES
B29C55/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521355
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 US2021053378
(87)【国際公開番号】W WO2022081371
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ、アカンクシャ
(72)【発明者】
【氏名】ホブソン、ジョン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、ホセ イー.
(72)【発明者】
【氏名】パテル、ラジェン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シムズ、ジェフリー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】テル ボルグ、フレーデリック
(72)【発明者】
【氏名】カルプ、タイラー
【テーマコード(参考)】
4F071
4F210
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AA19
4F071AA81
4F071AA88
4F071AF13Y
4F071AF16Y
4F071BA01
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4F071BB07
4F071BC01
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4F210AA04
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4F210AR17
4F210QC01
4F210QD21
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4J002BB05W
4J002BB05X
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4J100AA16Q
4J100CA04
4J100DA11
4J100DA42
4J100FA08
4J100FA19
4J100FA34
(57)【要約】
ポリエチレン組成物と、ポリエチレン組成物を含むキャスト延伸フィルムとを提供する。キャスト延伸フィルムは、他の特性を維持しながら、改善された引裂き強度及びパレット上の利点を示すことができる。キャスト延伸フィルムはまた、ポリエチレンリサイクル流に完全に適合性であり得、ポリプロピレンを含まなくてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン組成物であって、
(a)0.910~0.945g/cm
3の密度と、
(b)0.5~7.0g/10分のメルトインデックス(I
2)と、
(c)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて40℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分と、
(d)iCCD分析法による前記溶出プロファイルにおいて90℃~115℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、90℃~115℃の前記第2のポリエチレン画分の前記ピークの真下の前記溶出プロファイルの面積であり、前記第2のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%を構成し、前記第2のポリエチレン画分の前記ピークの50パーセントピーク高さにおける幅が、4.0℃未満である、第2のポリエチレン画分と、
(e)0未満の分子量コモノマー分布指数(MWCDI)値と、を有することを特徴とする、ポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記MWCDI値が-3未満である、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
前記第2のポリエチレン画分が、少なくとも95,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1又は2に記載のポリエチレン組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレン組成物が、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)として表される、2.0~8.0の範囲の分子量分布を有することを更に特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレン組成物が、3.0未満のゼロ剪断粘度比(ZSVR)を有することを更に特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項6】
前記ポリエチレン組成物の前記第1のポリエチレン画分が、第1の分子触媒の存在下で形成され、前記ポリエチレン組成物の前記第2のポリエチレン画分が、第2の分子触媒の存在下で形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項7】
キャスト延伸フィルムであって、
(a)0.910~0.945g/cm
3の密度と、
(b)0.5~7g/10分のメルトインデックス(I
2)と、
(c)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて40℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分と、
(d)iCCD分析法による前記溶出プロファイルにおいて90℃~115℃の温度範囲に少なくとも1つのピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、90℃~115℃の前記第2のポリエチレン画分の前記ピークの真下の前記溶出プロファイルの面積であり、前記第2のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%を構成する、第2のポリエチレン画分と、
(e)0未満のMWCDI値と、を有することを特徴とするポリエチレン組成物を含む、キャスト延伸フィルム。
【請求項8】
前記第2のポリエチレン画分の前記ピークの50パーセントピーク高さにおける幅が、4.0℃未満である、請求項7に記載のキャスト延伸フィルム。
【請求項9】
前記キャスト延伸フィルムが、厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチにおいて10.0~20.0ポンドのパレット上引裂きを有する、請求項7又は8に記載のキャスト延伸フィルム。
【請求項10】
前記キャスト延伸フィルムが、少なくとも5秒の平均破断時間を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載のキャスト延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、ポリエチレン組成物、より具体的には、キャスト延伸フィルムでの使用に適したポリエチレン組成物に関する。
【0002】
序論
キャスト延伸フィルムは、輸送及び保管のために製造物品又は品目を保護及び一体化するために利用される高透明度フィルムである。キャスト延伸フィルムは、パレットでのラッピング中に壊滅的な破損を最小限に抑えるために、高い横方向引裂き強度を有することが非常に望ましい。横方向引裂き強度を高めるために、キャスト延伸フィルムは、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物を含むポリオレフィンから形成されることが多く、ポリプロピレンは、一つには引裂き性能の改善のために添加される。このようなフィルムは、製造が困難であり、かつ非相溶性のリサイクル可能な材料(すなわち、ポリプロピレンとポリエチレン)の異なる混合物のために、一緒にリサイクルすることが不可能ではないにしても困難な場合がある。持続可能でリサイクル可能な材料に対する需要が高まり続けるにつれて、延伸性及び穿刺性などの他の特性を維持しながら改善された引裂き強度を有するキャスト延伸フィルムを形成し得るポリエチレン組成物が依然として強く求められている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、ポリエチレンリサイクル流において完全にリサイクル適合性であり得、かつ改善された引裂き強度特性を示すキャスト延伸フィルムを形成するために使用され得る、ポリエチレン組成物を提供することによって、前述の要求を満たす。本発明のフィルムの性能は、ポリエチレンを含むキャスト延伸フィルムなどの他のキャスト延伸フィルムよりも良好であり得、例えば、パレット上でより良い利点を提供することができる。
【0004】
本明細書では、ポリエチレン組成物を開示する。実施形態では、ポリエチレン組成物は、以下を有することを特徴とする。(a)0.910~0.945g/cm3の密度、(b)0.5~7.0g/10分のメルトインデックス(I2)、(c)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて40℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分、(d)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて90℃~115℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分は、90℃~115℃の第2のポリエチレン画分のピークの真下の溶出プロファイルの面積であり、第2のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%を構成し、第2のポリエチレン画分のピークの50パーセントピーク高さにおける幅は、4.0℃未満である、第2のポリエチレン画分、及び(e)0未満の分子量コモノマー分布指数(MWCDI)値。
【0005】
また、本明細書では、キャスト延伸フィルムも開示する。実施形態では、キャスト延伸フィルムは、以下を有することを特徴とするポリエチレン組成物を含む。(a)0.910~0.945g/cm3の密度、(b)0.5~7g/10分のメルトインデックス(I2)、(c)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて40℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分、(d)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて90℃~115℃の温度範囲に少なくとも1つのピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分は、90℃~115℃の第2のポリエチレン画分のピークの真下の溶出プロファイルの面積であり、第2のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%を構成する、第2のポリエチレン画分、及び(e)0未満のMWCDI値。
【0006】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】二重並列反応器データフロー図の図解である。
【
図3】二重直列反応器データフロー図の図解である。
【
図4】実施例のPoly.1のiCCD溶出プロファイルである。
【
図5】実施例のPoly.1のGPCオーバーレイである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本出願の特定の実施形態を説明する。しかしながら、本開示は、異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が、徹底的かつ完全なものとなり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるものとなるように提供される。
【0009】
延伸フィルムは、熱を加えることなく縦方向及び/又は横方向に冷延伸することができ、積み荷の周囲に延伸されると長期間にわたって張力を維持することができる、ポリオレフィンフィルムに与えられた名称である。キャスト延伸フィルムは、製造方法によってインフレーション延伸フィルムと区別することができる。キャストフィルムとインフレーションフィルムとの主な違いは、冷却方法、フィルム配向、ライン速度、及びゲージ制御に関連する。キャストフィルムは、典型的には、インフレーションフィルムと比較して、より良好な光学特性及び非常に高い機械方向配向度を示す。本明細書に記載の新たな特性を有するキャスト延伸フィルム及びフィルム構造体は、従来のキャストフィルム製造技術を使用して作製することができる。
【0010】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を意味する。したがって、「ポリマー」という総称は、(1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)ホモポリマーという用語、及びコポリマー又はインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に導入される場合がある。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であり得る。
【0011】
本明細書で使用する場合、「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」という用語は、過半量(>50mol%)のエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するであろう。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。
【0012】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、工程、又は手順を除外する。
【0013】
ポリエチレン組成物
本明細書では、ポリエチレン組成物を開示する。実施形態では、ポリエチレン組成物は、0.910~0.945g/cm3の密度を有することを特徴とする。0.910~0.945g/cm3の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、ポリエチレン組成物は、0.910~0.940g/cm3、0.910~0.935g/cm3、0.910~0.930g/cm3、0.910~0.925g/cm3、0.915~0.945g/cm3、0.915~0.940g/cm3、0.915~0.935g/cm3、0.915~0.930g/cm3、0.915~0.925g/cm3、又は0.915~0.920g/cm3の密度を有することができる。
【0014】
実施形態では、ポリエチレン組成物はまた、0.5~7.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有することを特徴とする。0.5~7.0g/10分の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、ポリエチレン組成物は、0.5~6.0g/10分、0.5~4.0g/10分、0.5~2.0g/10分、0.8~6.0g/10分、0.8~4.0g/10分、0.8~2.0g/10分、0.8~1.8g/10分、1.0~7.0g/10分、1.0~6.0g/10分、1.0~4.0g/10分、又は1.0~2.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有することができる。
【0015】
実施形態では、ポリエチレン組成物はまた、第1のポリエチレン画分及び第2のポリエチレン画分を有することを特徴とする。本明細書に記載されるように、ポリエチレン「画分」とは、ポリエチレン組成物の組成全体の一部分を指す。本明細書に開示される実施形態は、少なくとも「第1のポリエチレン画分」及び「第2のポリエチレン画分」を含む。ポリエチレン組成物中に含まれる画分は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおけるその温度範囲によって定量され得る。特に明記されていない限り、本明細書で言及されるいずれの溶出プロファイルも、iCCDにより観察された溶出プロファイルである。そのような画分の例は、本明細書により提供される実施例を考慮してよりよく理解されるであろう。一般に、第1の画分は、第1の画分の温度範囲に単一ピークを含み得、第2の画分は、第2の画分の温度範囲に単一ピークを含み得る。本明細書に記載のポリエチレン組成物は、「マルチモーダル(多峰性)」と称することができ、これは、ポリエチレン組成物が、それらの溶出プロファイルに少なくとも2つのピークを含むことを意味する。いくつかの実施形態は「二峰性」であり得、2つの主要なピークが存在することを意味する。
【0016】
記載されるiCCD分布を参照すると、
図1は、試料のiCCD分布100を、累積重量分率曲線200とともに概略的に示している。
図1は、一般に、本明細書において詳細に論じる、第1の画分、第2の画分、半ピーク幅などの本明細書に記載のポリエチレン組成物のiCCDプロファイルのいくつかの特徴を示す。したがって、
図1は、本明細書で提供されるiCCDプロファイルに関連する開示に関して参照として使用され得る。具体的には、第1の画分102及び第2の画分106が図示される。第1の画分102はピーク104を有し、第2の画分106はピーク108を有する。各画分は、半ピーク幅(すなわち、ピークの50パーセントピーク高さにおける幅)110及び112を有する。
図1のプロファイルは、実験又は観察に由来するものではないが、代わりに、iCCD溶出プロファイルの特定の特徴を記載するという情報提供目的で提供されることを理解されたい。
【0017】
実施形態では、ポリエチレン組成物は、第1のポリエチレン画分を有することを特徴とする。第1のポリエチレン画分は、iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて40℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有し得る。本明細書で使用される場合、「単一ピーク」は、特定の画分が単一ピークのみを含むiCCDを指す。すなわち、いくつかの実施形態では、第1及び第2のポリエチレン画分のiCCDは、単一ピークを形成するために、上向きの傾斜領域に続く下向きの傾斜領域のみを含む。第1又は第2のポリエチレン画分におけるピークは、定義された温度境界でのそれぞれのポリエチレン画分における局所的最小値によって形成されない場合があることを理解されたい。つまり、ピークは、ポリエチレン画分のしきい値温度によって形成されたピークではなく、その範囲全体の観点でのピークでなければならない。例えば、単一の谷が後に続く単一のピークがポリエチレン画分に存在する場合(上向きの傾斜に続く下向きの傾斜に続く上向きの傾斜)、そのようなポリエチレン画分には単一のピークのみが存在することになる。
【0018】
実施形態では、ポリエチレン組成物は、第2のポリエチレン画分を有することを特徴とする。第2のポリエチレン画分は、iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて90℃~115℃の温度範囲に単一ピークを有し得る。実施形態では、第2のポリエチレン画分の単一ピークの50パーセントピーク高さにおける幅は、4.0℃未満、3.5℃未満、3.0℃未満、又は更には2.5℃未満であり得る。一般に、50パーセントのピーク高さで温度範囲がより小さいということは、「より鋭い」ピークに対応する。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、「より鋭い」又は「より狭い」ピークは、分子触媒によって生じる特徴であり、より高密度の画分での最小限のコモノマーの取り込みを示し、2つの画分間でより高密度の分割を可能にすると考えられている。
【0019】
実施形態では、第1のポリエチレン面積画分は、40℃~85℃の第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルの面積である。同様に、第2のポリエチレン面積画分は、90℃~115℃の第2のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルの面積である。第1のポリエチレン面積画分及び第2のポリエチレン画分はそれぞれ、ポリエチレン組成物中の各ポリマー画分の総相対質量に対応し得る。実施形態では、第2のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%を構成する。例えば、第2のポリエチレン面積画分は、iCCD溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、若しくは更には少なくとも60%を構成することができ、又は溶出プロファイルの総面積の30%~65%、30%~60%、30%~55%、30%~50%、35%~65%、35%~50%、40%~65%、若しくは40%~60%を構成することができる。
【0020】
実施形態では、ポリエチレン組成物の第2のポリエチレン画分は、少なくとも95,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。少なくとも95,000g/molの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、第2のポリエチレン画分は、少なくとも95,000g/mol、少なくとも100,000g/mol、少なくとも120,000g/mol、少なくとも160,000g/mol、若しくは少なくとも200,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができ、又は95,000g/mol~260,000g/mol、100,000g/mol~250,000g/mol、若しくは100,000g/mol~220,000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有することができる。ポリエチレン画分の分子量は、本明細書で後述するように、GPC結果に基づいて計算することができる。
【0021】
実施形態では、ポリエチレン組成物はまた、0未満の分子量コモノマー分布指数(MWCDI)を有することを特徴とする。0未満の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、組み込まれる。例えば、ポリエチレン組成物は、0未満、-1未満、-2未満、-3未満、-4未満、-5未満、若しくは-6未満のMWCDIを有することができ、又は0~-15、-1~-12、-2~-10、若しくは-3~-8の範囲のMWCDIを有することができ、MWCDIは、以下に記載の試験方法に従って測定することができる。
【0022】
実施形態では、ポリエチレン組成物は、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)として表される、2.0~8.0の範囲の分子量分布を有することを更に特徴とし得る。更なる実施形態では、分子量分布(Mw/Mn)は、2.0~7.0、2.0~6.0、2.0~5.0、2.5~7.0、2.5~6.0、又は2.5~5.0であってもよい。ポリエチレン組成物の分子量分布(Mw/Mn)は、本明細書で後述するように、GPCに基づいて計算することができる。
【0023】
実施形態では、ポリエチレン組成物は、3.0未満のゼロ剪断粘度比(ZSVR)を有することを更に特徴とし得る。例えば、ポリエチレン組成物は、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2.0未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、又は更には1.1未満のゼロ剪断粘度比を有し得る。1つ以上の実施形態では、ポリエチレン組成物は、少なくとも1.0のゼロ剪断粘度比を有し得る。ポリエチレン組成物のZSVRは、本明細書で後述する試験方法に従って測定することができる。
【0024】
ポリエチレン組成物と他のポリオレフィンとのブレンド又は混合物を形成してもよい。本発明のポリエチレン組成物とブレンドするのに好適なポリマーとしては、天然及び合成ポリマーを含む熱可塑性及び非熱可塑性ポリマーが挙げられる。例示的なブレンドするためのポリマーとしては、ポリプロピレン(衝撃改質ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、及びランダムエチレン/プロピレンコポリマーの両方)、様々な種類のポリエチレン(PE)、例えば、高圧フリーラジカル低密度ポリエチレン(LDPE)、チーグラナッタ直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、多重反応器PEを含むメタロセンPE(チーグラナッタPEとメタロセンPEとの「反応器内」ブレンド、例えば、米国特許第6,545,088号(Kolthammerら)、米国特許第6,538,070号(Cardwellら)、米国特許第6,566,446号(Parikhら)、米国特許第5,844,045号(Kolthammerら)、米国特許第5,869,575号(Kolthammerら)、及び米国特許第6,448,341号(Kolthammerら)に開示されている製品など、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝改質ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー及びそれらの水素化誘導体(スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)及びスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS))、並びに熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。均質なポリマー、例えば、オレフィンプラストマー及びエラストマー、エチレン及びプロピレン系コポリマー(例えば、VERSIFY(商標)Plastomers&Elastomers(The Dow Chemical Company)、SURPASS(商標)(Nova Chemicals)、及びVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)の商品名で入手可能なポリマー)もまた、本発明のポリエチレン組成物を含むブレンド中の成分として有用であり得る。本明細書に開示するポリエチレン組成物と混合するのに好適なポリマーとしては、実施形態では、例えば、AGILITY 1200(The Dow Chemical Company製)などのLDPE及びLLDPEが挙げられる。
【0025】
実施形態では、本開示のポリエチレン組成物は、1つ以上の添加剤などの追加の成分を更に含み得る。そのような添加剤としては、帯電防止剤、カラーエンハンサ、染料、潤滑剤、TiO2又はCaCO3などの充填剤、乳白剤、核剤、加工助剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、UV安定剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗真菌剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレン組成物は、そのような添加剤を含むポリエチレン組成物の重量に基づいて、そのような添加剤を総合重量で約0.1~約10重量パーセント含有し得る。
【0026】
実施形態では、ポリエチレン組成物の第1のポリエチレン画分は、第1の分子触媒の存在下で形成されてもよく、ポリエチレン組成物の第2のポリエチレン画分は、第2の分子触媒の存在下で形成されてもよい。第1の分子触媒及び第2の分子触媒は、同じ触媒であっても異なる触媒であってもよい。他の実施形態では、ポリエチレン組成物の第1のポリエチレン画分は、分子触媒の存在下で形成されてもよく、ポリエチレン組成物の第2のポリエチレン画分は、チーグラナッタ触媒の存在下で形成されてもよい。本明細書に開示する実施形態に従ってポリエチレン組成物を形成するための重合及び触媒系を、以下により詳細に記載する。一般に、分子触媒は、(a)遷移金属、(b)1つ以上の非置換又は置換シクロペンタジエニル配位子、及び/又は(c)酸素、窒素、リン、及び/又は硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含有する1つ以上の配位子を含む、均一系重合触媒である。分子触媒は、シリカ、アルミナ、又はMgCl2などの無機担体上に固定化することができる。
【0027】
重合
本明細書に記載のポリエチレン組成物を生成するためには、任意の従来の重合プロセスを用いてもよい。そのような従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、撹拌槽反応器、並列式の、連続式のバッチ反応器、及び/又はそれらの任意の組み合わせを使用する、スラリー重合プロセス、溶液重合プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレン組成物は、例えば、1つ以上のループ反応器、等温反応器、及びこれらの組み合わせを使用する、溶液相重合プロセスを介して生成され得る。
【0028】
一般に、溶液相重合プロセスは、115~250℃の範囲の温度(例えば、115~210℃)、及び300~1,000psiの範囲の圧力(例えば、400~800psi)で、1つ以上の等温ループ反応器又は1つ以上の断熱反応器などの1つ以上のよく撹拌された反応器中で行われ得る。いくつかの実施形態において、二重反応器では、第1の反応器内の温度は、115~190℃(例えば、160~180℃)の範囲内にあり、第2の反応器の温度は、150~250℃(例えば、180~220℃)の範囲内にある。他の実施形態では、単一反応器において、反応器の温度は、115~250℃(例えば、115~225℃)の範囲内である。
【0029】
溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、2~30分(例えば5~25分)の範囲内にあり得る。エチレン、溶媒、水素、1つ以上の触媒系、任意選択的に1つ以上の助触媒、及び任意選択的に1つ以上のコモノマーが、1つ以上の反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、そのような溶媒は、ExxonMobil Chemical Co.(テキサス州ヒューストン)からISOPAR Eの名称で市販されている。次いで、ポリエチレン組成物と溶媒との得られた混合物が、反応器から取り出され、ポリエチレン組成物が単離される。溶媒は、典型的には、溶媒回収ユニット、例えば熱交換器及び気液分離器ドラムを介して回収され、次いで、重合系に再循環される。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、エチレンが1つ以上の触媒系の存在下で重合される溶液重合によって生成され得る。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。加えて、1つ以上の助触媒が存在し得る。別の実施形態において、ポリエチレン組成物は、単一の反応器系、例えば、単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、ここで、エチレンは、2つの触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。
【0031】
触媒系
ここで、本明細書に記載のポリエチレン組成物を生成するために1つ以上の実施形態で使用され得る触媒系の特定の実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で具現化されてよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0032】
「独立して選択される」という用語は、R1、R2、R3、R4、及びR5などのR基が、同一であっても異なってもよいこと(例えば、R1、R2、R3、R4、及びR5が、全て置換アルキルであるか、又はR1及びR2が、置換アルキルであり、R3が、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は複数のヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を、補足し例示することを意図するものであり、排除するものではない。
【0033】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「助触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的な用語である。
【0034】
特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(Cx~Cy)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態が、x及びyを含むx個の炭素原子~y個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C40)アルキルは、その非置換形態において、1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基のRS置換版は、任意の基RSがどのようなものであるかに応じて、y個を超える炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である、正確に1つの基RSで置換された(C1~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基が、1個以上の炭素原子含有置換基RSによって置換される場合、化学基の炭素原子の最小及び最大総数は、xとyとの両方に、全ての炭素原子含有置換基RS由来の炭素原子の総数を加えることによって、決定される。
【0035】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも1つの水素原子(-H)が、置換基(例えばRS)によって置換されることを意味する。「過置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した全ての水素原子(H)が置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物若しくは官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも2個の、ただし全部よりは少ない水素原子が、置換基によって置き換えられることを意味する。
【0036】
「-H」という用語は、別の原子に共有結合した水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は、互換性があり、明記されていない限り同じものを意味する。
【0037】
「(C1~C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、二環式を含む縮合及び非縮合多環式、3個以上の炭素原子)又は非環式であり、非置換であるか、若しくは1つ以上のRSによって置換されている。
【0038】
本開示において、(C1~C40)ヒドロカルビルは、非置換若しくは置換(C1~C40)アルキル、(C3~C40)シクロアルキル、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C6~C40)アリール、又は(C6~C20)アリール-(C1~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態では、前述の(C1~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子を有し(すなわち、(C1~C20)ヒドロカルビル)、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0039】
「(C1~C40)アルキル」及び「(C1~C18)アルキル」という用語は、それぞれ、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている1~40個の炭素原子又は1~18個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C1~C40)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C1~C40)アルキルの例は、置換(C1~C20)アルキル、置換(C1~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含めてラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C1~C5)アルキルである1つのRSによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C1~C5)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0040】
「(C6~C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換又は置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、又は三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子が芳香環炭素原子で、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ1、2又は3個の環を含み、式中、単環は芳香族であり、2個又は3個の環は独立して縮合又は非縮合であり、2個又は3個の環のうちの少なくとも1つは芳香族である。非置換(C6~C40)アリールの例は、非置換(C6~C20)アリール、非置換(C6~C18)アリール、2-(C1~C5)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C1~C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、及びフェナントレンが挙げられる。置換(C6~C40)アリールの例は、置換(C1~C20)アリール、置換(C6~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0041】
「(C3~C40)シクロアルキル」という用語は、非置換、又は1つ以上のRSで置換された、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば、(Cx~Cy)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されているかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3~C20)シクロアルキル、非置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、置換(C3~C20)シクロアルキル、置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0042】
(C1~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換又は置換の(C6~C40)アリーレン、(C3~C40)シクロアルキレン、及び(C1~C40)アルキレン(例えば、(C1~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、同じ炭素原子上にあるか(例えば、-CH2-)、又は隣接する炭素原子上にあるか(すなわち、1,2-ジラジカル)、又は1個、2個、又は3個以上の介在する炭素原子によって離間されている(例えば、それぞれの1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。一部のジラジカルは、α,ω-ジラジカルを含む。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CH2CH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6~C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、又はナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0043】
「(C1~C40)アルキレン」という用語は、非置換、又は1つ以上のRSによって置換された、1~40個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にはない)を意味する。非置換(C1~C50)アルキレンの例は、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、及び-(CH2)4C*(H)(CH3)を含む、非置換(C1~C20)アルキレンであり、式中、「C*」は、水素原子が除去されて、二級又は三級アルキルラジカルを形成している炭素原子を示す。置換(C1~C50)アルキレンの例は、置換(C1~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、及び-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。前述のように、2つのRSは、一緒になって、(C1~C18)アルキレンを形成し得るため、置換(C1~C50)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及び2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0044】
「(C3~C40)シクロアルキレン」という用語は、非置換、又は1つ以上のRSによって置換された3~40個の炭素原子の環状ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にある)を意味する。
【0045】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。ヘテロ原子の例としては、O、S、S(O)、S(O)2、Si(RC)2、P(RP)、N(RN)、-N=C(RC)2、-Ge(RC)2-、又は-Si(RC)-が挙げられ、各RC、各RN、及び各RPは、非置換(C1~C18)ヒドロカルビル又は-Hである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子又は分子骨格を指す。「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子又はヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1個又は2個の炭素原子、(2)1個又は2個のヘテロ原子、又は(3)1つの炭素原子及び1つのヘテロ原子上に存在し得る。各(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換又は(1つ以上のRSによって)置換され得るが、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であり得る。
【0046】
(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換又は置換(C1~C40)ヘテロアルキル、(C1~C40)ヒドロカルビル-O-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1~C40)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(C1~C40)ヒドロカルビル-N(RN)-、(C1~C40)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2~C40)ヘテロシクロアルキル、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C19)ヘテロアルキレン、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)ヘテロアルキレン、(C1~C40)ヘテロアリール、(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)アルキレン、(C6~C20)アリール-(C1~C19)ヘテロアルキレン、又は(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)ヘテロアルキレンであり得る。
【0047】
「(C4~C40)ヘテロアリール」という用語は、4~40個の総炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の非置換又は置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ、1、2、又は3個の環を含み、2又は3個の環は、独立して、縮合又は非縮合であり、2又は3個の環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、(C4~C12)ヘテロアリールなどの(Cx~Cy)ヘテロアリール全般)は、x~y個の炭素原子(4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換であるか、又は1個又は2個以上のRSで置換されているものとして、同様の様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、又は3であってよく、各ヘテロ原子は、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1又は2であってよく、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、及びピラジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0048】
前述のヘテロアルキルは、(C1~C50)の炭素原子、又はより少ない炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ラジカルであり得る。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子及び1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されたようなヘテロ原子は、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、及びS(O)2を含んでもよく、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換される。
【0049】
非置換(C2~C40)ヘテロシクロアルキルの例は、非置換(C2~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、及び2-アザ-シクロデシルである。
【0050】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、又はヨウ化物(I-)といったハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0051】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSによって置換されている場合、1つ以上の二重及び/又は三重結合は、任意選択的に、置換基RS中に存在しても、しなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を含有すること、ただし、存在するとしたら置換基RS中に存在し得るか、又は存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得るような任意の二重結合は含まないことを意味する。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、ポリエチレン組成物を生成するための触媒系は、下式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【0053】
【0054】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムから選択される金属であり、金属は、+2、+3、又は+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、又は2であり、nが1である場合、Xは、単座配位子又は二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じであるか又は異なっており、金属-配位子錯体が、全体的に電荷中性であり、各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(RN)-、又は-P(RP)-から選択され、Lは、(C1~C40)ヒドロカルビレン又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、(C1~C40)ヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の炭素原子~10個の炭素原子のリンカー骨格を含む部分(これにLが結合している)を有するか、又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の原子~10個の原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1個の原子~10個の原子のリンカー骨格の1~10個の原子の各々は、独立して、炭素原子又はヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、S(O)、S(O)2、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RC)、又はN(RC)であり、独立して、各RCは、(C1~C30)ヒドロカルビル又は(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、R1及びR8は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RN)2NC(O)-、ハロゲン、及び式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0055】
【0056】
式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、又はR51~59の各々は、独立して、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、N=CHRC、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RN)2NC(O)-、ハロゲン、又は-Hから選択され、ただし、R1又はR8のうちの少なくとも一方が、式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルであることを条件とする。
【0057】
式(I)において、R2~4、R5~7、及びR9~16の各々は、独立して、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-N=CHRC、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RC)2NC(O)-、ハロゲン、及び-Hから選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、第1の反応器内で式(I)による第1の触媒、及び第2の反応器内で式(I)による異なる触媒を使用して形成される。
【0059】
二重ループ反応器が使用される1つの例示的な実施形態では、第1のループで使用されるプロ触媒は、ジルコニウム,[[2,2’ ’ ’-[[ビス[1-メチルエチル]ゲルミレン]ビス(メチレンオキシ-κO)]ビス[3’ ’,5,5’ ’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-オクチル[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-2’-オラト-κO]](2-)]ジメチル-であり、化学式C86H128F2GeO4Zr及び以下の構造(V)を有する:
【0060】
【0061】
このような実施形態では、第2のループで使用されるプロ触媒は、ジルコニウム,[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]]-5’-(ジメチルオクチルシリル)-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1]-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチルであり、化学式C107H154N2O4Si2Zr及び以下の構造(VI)を有する:
【0062】
【0063】
別の実施形態では、第2のループで使用されるプロ触媒は、ハフニウム,[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]]-5’-(ジメチルオクチルシリル)-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1]-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチルであり、化学式C107H154N2O4Si2Zr及び以下の構造(VII)を有する。
【0064】
【0065】
共触媒成分
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性化され得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含む系は、錯体を活性化助触媒と接触させるか、又は錯体を活性化助触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性化され得る。本明細書で使用するのに好適な活性化助触媒としては、アルキルアルミニウム、ポリマー又はオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られている)、中性ルイス酸、及び非ポリマー、非配位性、イオン形成化合物(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)が挙げられる。好適な活性化技法は、バルク電気分解である。前述の活性化助触媒及び技法のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリド若しくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリド若しくはジアルキルアルミニウムハライド、又はトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム変性メチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0066】
ルイス酸活性化剤(助触媒)としては、本明細書に記載されるような、1~3個の(C1~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物が挙げられる。一実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-置換-アルミニウム又はトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態では、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)-置換アルミニウム、トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C1~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、及びこれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。更なる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化助触媒は、トリス((C1~C20)ヒドロカルビルボレート(例えばトリチルテトラフルオロボレート)又はトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C1~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C1~C20)ヒドロカルビル)4N+、((C1~C20)ヒドロカルビル)3N(H)+、((C1~C20)ヒドロカルビル)2N(H)2
+、(C1~C20)ヒドロカルビルN(H)3
+、又はN(H)4
+である窒素カチオンを意味し、各(C1~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
中性ルイス酸活性化材(助触媒)の組み合わせとしては、トリ((C1~C4)アルキル)アルミニウムと、ハロゲン化トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物と、ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンとの組み合わせ、及び単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランと、ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンとの組み合わせである。
【0068】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系を活性化して、1つ以上の助触媒、例えば、カチオン形成性助触媒、強ルイス酸、又はこれらの組み合わせを組み合わせることによって、活性触媒組成物を形成し得る。好適な活性化助触媒としては、ポリマー又はオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、並びに不活性、相溶性、非配位性、イオン形成性の化合物が挙げられる。好適な助触媒の例としては、変性メチルアルミノキサン(modified methyl aluminoxane、MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態では、前述の活性化共触媒のうちの1つ以上は、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C1~C4)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C1~C4)ヒドロカルビル)ボラン、又はホウ酸アンモニウムと、オリゴマー又はポリマーのアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と、1つ以上の活性化助触媒の総モル数との比は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、いくつかの他の実施形態では、少なくとも1:1000及び10:1以下であり、いくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサンを単独で活性化助触媒として使用する場合、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍であることが好ましい。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化助触媒として使用するとき、いくつかの他の実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数は、0.5:1~10:1、1:1~6:1、又は1:1~5:1である。残りの活性化助触媒は、一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0070】
キャスト延伸フィルム
以下を有することを特徴とするポリエチレン組成物を含む、キャスト延伸フィルムも開示する。(a)0.910~0.945g/cm3の密度、(b)0.5~7g/10分のメルトインデックス(I2)、(c)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて40℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分、(d)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて90℃~115℃の温度範囲に少なくとも1つのピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分は、90℃~115℃の第2のポリエチレン画分のピークの真下の溶出プロファイルの面積であり、第2のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%を構成する、第2のポリエチレン画分、及び(e)0未満のMWCDI値。キャスト延伸フィルムは、実施形態では、上記及び本明細書に記載の同じ又は類似のポリエチレン組成物から形成され得る(例えば、キャスト延伸フィルムのポリエチレン組成物は、上記のポリエチレン組成物と同じ特性を有してもよく、又はそのように限定されなくてもよく、例えば、必ずしも第2のポリエチレン画分に「単一ピーク」のみを有するわけではなく、又は必ずしも4.0℃未満の第2のポリエチレン画分のピークの50パーセントピーク高さにおける幅を有するわけではない)。
【0071】
本明細書に開示する実施形態によるキャスト延伸フィルムは、当該技術分野で既知の任意の従来のプロセスによって形成することができる。一般に、キャスト延伸フィルムは、キャストフィルム押出プロセスによって形成することができ、この場合、ポリエチレン組成物は、スロット又はフラットダイを通って溶融して、薄い溶融シート又はフィルムを形成する。次に、このフィルムは、エアナイフ又は真空ボックスからの送風によって、冷却ロール(典型的には、水冷及びクロムめっきされている)の表面に固定され得る。フィルムはすぐに急冷し、次いで、巻き取る前に端部にスリットを有し得る。フィルムは、熱を加えることなく縦方向及び/又は横方向に冷延伸することができ、積み荷の周囲に延伸されると長期間にわたって張力を維持することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、キャスト延伸フィルムは単層フィルムである。他の実施形態では、キャスト延伸フィルムは多層フィルムである。本開示のポリエチレン組成物を含む多層フィルムのいくつかの実施形態では、多層フィルムは、本開示のポリエチレン組成物を内層及び/又は表面層にも含むことができる。本実施形態のキャスト延伸フィルムに使用するポリエチレン組成物の量は、例えば、フィルムが単層フィルムであるか多層フィルムであるか、多層フィルムである場合はフィルム中の他の層、フィルムの最終用途などを含むいくつかの要因に依存し得る。
【0073】
本開示のキャスト延伸フィルムは、様々な厚さを有し得る。キャスト延伸フィルムの厚さは、例えば、フィルムが単層フィルムであるか多層フィルムであるか、多層フィルムである場合はフィルム中の他の層、フィルムの所望の特性、フィルムの最終用途、フィルムの製造に利用可能な機器などを含むいくつかの要因に依存し得る。いくつかの実施形態では、本開示のキャスト延伸フィルムは、最大10ミルの厚さを有する。例えば、キャスト延伸フィルムは、0.2ミル、0.5ミル、0.7ミル、1.0ミル、1.75ミル、又は2.0ミルの下限~4.0ミル、6.0ミル、8.0ミル、又は10ミルの上限の厚さを有することができる。
【0074】
キャスト延伸フィルムが多層フィルムである実施形態では、フィルムの層の数は、例えば、フィルムの所望の特性、フィルムの所望の厚さ、フィルムの他の層の含量、フィルムの最終用途、フィルムの製造に利用可能な機器などを含むいくつかの要因に依存し得る。キャスト延伸フィルムは、様々な実施形態において、最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11の層を含み得る。
【0075】
キャスト延伸フィルムが多層フィルムである実施形態では、キャスト延伸フィルムは、表面薄層、密着層、及び/又は剥離層などの他の層を含むことができる。例えば、本明細書に開示する実施形態によるキャスト延伸フィルムは、キャスト延伸フィルム構造体に典型的に含まれる他の層を用途に応じて更に含むことができ、これには例えば、他の表面薄層、密着層、剥離層、バリア層、シーラント層、タイ層、ポリエチレン層、及び/又はポリプロピレン層が挙げられる。更なる実施形態では、製品の詳細及び他の包装情報を様々な色で示すためのインク層であり得る印刷層を含むことができる。
【0076】
本開示のポリエチレン組成物は、いくつかの実施形態に従って、より容易にリサイクル可能なフィルム及び物品を提供するために、実質的に又は完全にではないにしても主にポリエチレンから構成されるキャスト延伸フィルム及び物品に組み込まれ得る。例えば、フィルムが主にポリエチレンから構成されるキャスト延伸フィルムは、そのようなポリマーの使用が提供し得る他の利点に加えて、改善されたリサイクル可能性プロファイルを有する。いくつかの実施形態では、キャスト延伸フィルムは、フィルムの総重量に基づいて、95重量%以上のポリエチレンを含む。他の実施形態において、フィルムは、フィルムの総重量に基づいて、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、又は99重量%以上のポリエチレンを含む。更なる実施形態では、キャスト延伸フィルムはポリプロピレンを含まない。
【0077】
ここで、本明細書に開示及び記載する実施形態に従って生成されたポリエチレン組成物を含むキャスト延伸フィルムの例示的な特性を提供する。ポリエチレン組成物の分子構成は、キャスト延伸フィルムの特性に影響を及ぼし得る。本明細書に開示するキャストフィルムの特性は、本開示の範囲内で任意に組み合わせることができる。以下のフィルム特性は、上記に開示したようにポリエチレン組成物を別のポリマーと混合することなく製造した、約0.6ミルの厚さを有するキャスト延伸フィルムで測定された。
【0078】
実施形態では、キャスト延伸フィルムは、0.6ミル及びフィルム幅20インチにおいて200%~500%の範囲の平均極限延伸を有する。200%~500%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、キャスト延伸フィルムは、200%~500%、200%~475%、200%~450%、250%~500%、250%~475%、250%~450%、300%~500%、300%~475%、300%~450%、325%~500%、325%~475%、又は325%~450%の平均極限延伸を有することができ、平均極限延伸は、以下に記載の試験方法に従って測定することができる。
【0079】
実施形態では、キャスト延伸フィルムは、厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチにおいて少なくとも5秒の平均破断時間を有する。少なくとも5秒(s)の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、キャスト延伸フィルムは、厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチで測定された、少なくとも5秒、少なくとも6秒、少なくとも7秒、少なくとも8秒、少なくとも9秒、若しくは少なくとも10秒の平均破断時間(ESTL引裂き)を有することができ、又は厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチで測定された、5秒~30秒、7秒~30秒、8秒~30秒、9秒~30秒、5秒~25秒、6秒~25秒、7秒~25秒、8秒~25秒、9秒~25秒、若しくは10秒~25秒の範囲の平均破断時間(ESTL引裂き)を有することができる。破断時間(ESTL引裂き)は、以下に記載の試験方法に従って測定することができる。
【0080】
実施形態では、キャスト延伸フィルムは、厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチで測定された10.0~20.0ポンドの平均パレット上引裂き(OPT)を有する。10.0ポンド~20ポンドの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、キャスト延伸フィルムは、厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチで測定された、10.0ポンド~18ポンド、10.0ポンド~16ポンド、10ポンド~14ポンド、11ポンド~20ポンド、11ポンド~18ポンド、11ポンド~16ポンド、11ポンド~14ポンド、12ポンド~20ポンド、12ポンド~18ポンド、又は12ポンド~16ポンドの平均パレット上引裂き(OPT)を有することができる。パレット上引裂き(OPT)は、本明細書で以下に記載する試験方法に従って測定することができる。
【0081】
実施形態のキャスト延伸フィルムは、タイプA負荷試験を使用して厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチで測定された、10.0ポンド~15.0ポンド、例えば、10.5ポンド~15.0ポンド、11.0ポンド~14.0ポンド、10.5ポンド~13.0ポンド、11.0ポンド~15.0ポンド、11.0ポンド~14.0ポンド、又は11.0ポンド~13.0ポンドの平均パレット上穿刺(OPP)を有する。タイプA負荷試験を使用するパレット上穿刺は、以下に記載の試験方法に従って測定することができる。
【0082】
試験方法
密度
密度は、ASTM D792によって測定し、グラム/cm3(g/cm3)で表す。
【0083】
メルトインデックス(I2)
メルトインデックス(I2)を2.16kgで190℃でのASTM D-1238に従って測定する。値を10分当たりに溶出されたグラムに対応するg/10分で報告する。
【0084】
従来のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
クロマトグラフィシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備するPolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)の高温GPCクロマトグラフから構成された。オートサンプラのオーブン区画を160℃に設定し、カラム区画を150℃に設定した。使用したカラムは、4本のAgilent「Mixed A」30cm、20マイクロメートルの線形混床式カラムであった。使用されたクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。使用した注入体積は、200マイクロリットルであり、流量は、1.0ミリリットル/分であった。
【0085】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/molの範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に標準物質を配置した。標準物質を、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準物質は、1,000,000g/mol以上の分子量の場合は溶媒50ミリリットル中に0.025グラムで、1,000,000g/mol未満の分子量の場合は溶媒50ミリリットル中に0.05グラムで調製した。ポリスチレン標準物質を、80℃で30分間穏やかに撹拌しながら溶解した。ポリスチレン標準物質のピーク分子量は、式5を用いてエチレン系ポリマー分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)。
【0086】
【数1】
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0087】
5次多項式を使用して、それぞれのエチレン系ポリマー等価較正点に適合させた。120,000g/molの分子量を有するホモポリマーポリエチレン標準物質を使用してカラム分解能及びバンド広がり効果を補正するために、Aに対するわずかな調整(約0.375~0.440)を行った。
【0088】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、デカン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製し、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(式2)及び対称性(式3)を、200マイクロリットル注入で以下の式に従って測定した。
【0089】
【数2】
式中、RVはミリリットル単位の保持体積であり、ピーク幅はミリリットル単位であり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【0090】
【数3】
式中、RVはミリリットル単位の保持体積であり、ピーク幅はミリリットル単位であり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10高さはピーク最大値の1/10の高さであり、後方ピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークはピーク最大値よりも前の保持体積でのピーク前部を指す。クロマトグラフィシステムのプレートカウントは22,000超であるべきであり、対称性は0.98~1.22であるべきである。
【0091】
試料をPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製し、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付きバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有していた)を添加した。160℃で3時間「低速」振盪しながら試料を溶解した。
【0092】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、及びMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点i(IRi)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び式1からの点iの狭い標準較正曲線から得られたエチレン系ポリマー当量分子量(g/mol単位のMポリエチレン,i)を使用して、式3~6に従ってPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内蔵型IR5検出器(測定チャネル)を使用するGPCの結果に基づいた。
【0093】
数平均分子量Mn(GPC)、重量平均分子量Mw(GPC)及びz平均分子量Mz(GPC)は、次式のように計算することができる。
【0094】
【0095】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料(RV(FM試料))内のそれぞれのデカンピークのRVを、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのRVと一致させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を直線的に補正するために使用した。その後、デカンマーカーピークの時間におけるあらゆる変化は、実験全体における流量(流量(実効))の線形シフトに関連すると仮定した。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭標準較正に関して)実効流量を式7のように算出する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容可能な流量を、実効流量が公称流量の0.5%以内になるように補正する。
【0096】
【0097】
改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法
改善されたコモノマー含有量分析法(iCCD)は、2015年に開発された(Cong and Parrottら、国際公開第2017040127(A1)号)。iCCD試験を、IR-5検出器(PolymerChar,Spain)及び二角光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在はAgilent Technologies)を備えた結晶化溶出分画機器(Crystallization Elution Fractionation、CEF)(PolymerChar,Spain)を用いて実施した。検出器オーブン中のIR-5検出器の直前に、5cm又は10cm(長さ)×1/4インチ(ID)のステンレスに20~27ミクロンのガラス(MoSCi Corporation,USA)を充填したガードカラムを設置した。オルトジクロロベンゼン(ortho-dichlorobenzene、ODCB、99%無水グレード又はテクニカルグレード)を使用した。EMD Chemicalsからシリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3)を入手した(先にODCB溶媒を乾燥させるために使用され得る)。乾燥シリカを3本の空のHT-GPCカラムに充填して、溶離液としてODCBを更に精製した。CEF機器に、N2パージ能力を備えたオートサンプラを装備している。使用前に、ODCBを乾燥窒素(N2)で1時間スパージする。試料の調製は、160℃で1時間振盪しながら、オートサンプラを用いて(特に指定のない限り)4mg/mLで行った。注入量は300μLであった。iCCDの温度プロファイルは、105℃から30℃まで3℃/分での結晶化、30℃で2分間の熱平衡(可溶性画分溶出時間を2分に設定することを含む)、30℃から140℃まで3℃/分での溶出であった。結晶化中の流量は、0.0mL/分である。溶出中の流量は0.50mL/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0098】
iCCDカラムには、15cm(長さ)×1/4インチ(ID)のステンレス管に金被覆ニッケル粒子(Bright 7GNM8-NiS,Nippon Chemical Industrial Co.)を充填した。カラム充填及び調整は、参考文献(Cong,R.;Parrott,A.;Hollis,C.;Cheatham,M.国際公開第2017040127(A1)号)によるスラリー法で行った。TCBスラリー充填を用いた最終圧力は、150バールであった。
【0099】
カラム温度較正を、ODCB中の参照物質の直鎖状ホモポリマーポリエチレン(コモノマー含有量がゼロ、メルトインデックス(I2)が1.0、多分散度Mw/Mnが従来のゲル浸透クロマトグラフィで約2.6、1.0mg/mL)とエイコサン(2mg/mL)との混合物を使用して実行した。iCCD温度較正は、以下の4つの工程からなった:(1)エイコサンの測定されたピーク溶出温度間の温度オフセットから30.00℃を引いたものとして定義される遅延体積を計算する工程、(2)iCCD生温度データから、溶出温度の温度オフセットを差し引く工程。この温度オフセットは、溶出温度、溶出流量などの実験条件の関数であることに留意されたい、(3)直鎖状ホモポリマーポリエチレン参照物質が101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃~140.00℃の範囲にわたって溶出温度を変換する線形較正線を作成する工程、(4)30℃で等温で測定される可溶性画分について、30.0℃未満の溶出温度を、参考文献(Cerk及びCongら、米国特許第9,688,795号)に従って3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に外挿する工程。
【0100】
コモノマー含有量対iCCDの溶出温度は、12個の参照物質(エチレンホモポリマー及びシングルサイトメタロセン触媒で作製されたエチレン-オクテンランダムコポリマー、35,000~128,000の範囲のエチレン等価重量平均分子量を有する)を使用することで構築した。これらの参照物質は全て、4mg/mLで以前に指定したのと同じ方法で分析した。報告された溶出ピーク温度は、0.9842のR2において、以下のiCCDの溶出温度に対するオクテンのモル%のグラフ(グラフ1)に従った。
【0101】
【0102】
ポリマーの分子量及びポリマー画分の分子量は、フォームファクタを1及び全てのビリアル係数をゼロと仮定することによって、Rayleigh-Gans-Debys近似(Striegel及びYau、「Modern Size Exclusion Liquid Chromatogram」、242ページ及び263ページ)に従って、LS検出器(90度の角度)及び濃度検出器(IR-5)から直接決定した。23.0~120 ℃の範囲の溶出温度(温度較正は上記で指定)で、全てのクロマトグラムを積分するために積分ウィンドウを設定する。
【0103】
iCCDからの分子量(Mw)の計算には、次の4つの工程が含まれる:
1)検出器間オフセットを測定する。オフセットは、濃度検出器に対するLS検出器間の幾何学的体積オフセットとして定義される。これは、濃度検出器とLSクロマトグラムとのポリマーピークの溶出量(mL)の差として計算される。これが、溶出熱速度及び溶出流量を使用することによって、温度オフセットに変換される。線状高密度ポリエチレン(コモノマー含有量がゼロ、メルトインデックス(I2)が1.0、多分散度Mw/Mnが従来のゲル浸透クロマトグラフィでおよそ2.6)を使用する。以下のパラメータを除いて、上記の通常のiCCD法と同じ実験条件を使用する:140℃から137℃まで10℃/分での結晶化、可溶性画分溶出時間として137℃で1分間の熱平衡、7分間の可溶性画分(SF)時間、137℃から142℃まで3℃/分での溶出。結晶化中の流量は、0.0mL/分である。溶出中の流量は、0.80mL/分である。試料濃度は、1.0mg/mLである。2)LSクロマトグラムの各LSデータポイントをシフトして、積分前に検出器間オフセットを補正する。3)ベースラインを差し引いたLS及び濃度クロマトグラムを、工程1)の溶出温度範囲全体について積分する。MW検出器定数を、100,000~140,000Mwの範囲内の既知のMWのHDPE試料、及びLSと濃度積分信号との面積比を使用して計算する。4)ポリマーのMwを、統合光散乱検出器(90度の角度)と濃度検出器との比を使用し、MW検出器定数を使用することによって計算した。
【0104】
第2の画分のピークの50パーセントピーク高さにおける幅(半値全幅としても知られる)を、iCCDによる35.0℃~119.0℃の第2の溶出ピークについて計算する。第2の画分のピークの50パーセントピーク高さにおける幅は、第2の溶出ピークのピーク温度溶出最大値の半分をとり、第2の溶出ピークの全高の1/2における前方温度と後方温度との温度差を計算することによって決定される。
【0105】
分子量コモノマー分布指数(MWCDI)
PolymerChar(Valencia、Spain)のGPC-IR高温クロマトグラフィシステムには、精密検出器(Amherst、MA)、2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、IR5赤外線検出器(GPC-IR)及び4細管粘度計(いずれもPolymerChar)が備わっていた。光散乱検出器の「15度の角度」を計算目的に使用した。データ収集は、PolymerChAR Instrument Controlソフトウェア及びデータ収集インターフェースを使用して行った。このシステムには、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)からのオンラインの溶媒脱気デバイス及びポンプシステムが備わっていた。
【0106】
注入温度を摂氏150℃に制御した。使用したカラムは、Agilent Technologiesの4本の20マイクロメートル「PLGel Mixed-A」光散乱カラムであった。溶媒は1,2,4-トリクロロベンゼンであった。試料は、本報告の従来のGPCの項に記載したように調製した。クロマトグラフィ溶媒及び試料調製溶媒は、各々、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」を含有していた。両方の溶媒源を窒素スパージした。エチレン系ポリマー試料を摂氏160度で3時間穏やかに撹拌した。注入量は「200マイクロリットル」であり、流量は「1ミリリットル/分」であった。
【0107】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/モルの範囲の分子量を有する、21の「狭い分子量分布」のポリスチレン標準物質を用いて行った。これらの標準物質は、個々の分子量間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準はPolymer Laboratories(Shropshire UK)から購入した。1,000,000g/モル以上の分子量については「50ミリリットルの溶媒中に0.025グラム」で、また、1,000,000g/モル未満の分子量については「50ミリリットルの溶媒中に0.050グラム」でポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準物質を、摂氏80度で30分間穏やかに撹拌しながら溶解した。狭い標準物質混合物を最初に、「最高分子量成分」が次第に減少する順序で実行して、分解を最小限に抑える。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式8を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)。
Mポリエチレン=A×(Mポリスチレン)B (式8)、
式中、Mは分子量であり、Aはおよそ0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。直鎖状ポリエチレンの重量平均分子量が以下の式10によって計算して120,000g/モルに相当するように、A値を0.375~0.444で調整した(特定のカラムセット効率に依存する):
【0108】
【0109】
式9及び10において、RVは、「1秒当たり1点」で収集されたカラム保持体積(直線的に離間される)である。IRは、GPC機器の測定チャネルからのベースライン減算IR検出器信号(ボルト単位)であり、LogMPEは、式8から決定されたポリエチレン当量MWである。データ計算は、PolymerCharからの「GPC Oneソフトウェア」を使用して実施した。
【0110】
IR5検出器の定量の較正は、ホモポリマー(0SCB/総炭素数1000個)~約50SCB/総炭素数1000個(式中、総炭素数=主鎖中の炭素+分岐中の炭素)の範囲の既知の短鎖分岐(SCB)頻度(13C NMR法で測定した)の少なくとも10個のエチレン系ポリマー標準物質(ポリエチレンホモポリマー及びエチレン/オクテンコポリマー)を使用して実施した。各標準物質は、上記のGPC.LALS処理法によって決定された36,000g/モル~126,000g/モルの重量平均分子量を有していた。各標準は、上記のGPC-LALS処理法によって決定された2.0~2.5の分子量分布(Mw/Mn)を有していた。
【0111】
「IR5メチルチャネルセンサのベースライン減算領域応答」の「IR5測定チャネルセンサのベースライン減算領域応答」に対する「IR5領域比(又は「IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域」)」(PolymerCharによって供給された標準フィルタ及びフィルタホイール:Part Number IR5_FWM01は、GPC-IR機器の一部として含まれていた)を、「SCB」標準の各々について計算した。SCB頻度対「IR5面積比」の直線近似は、以下の式11の形態で構築された。
SCB/総炭素数1000個=A0+[A1×(IR5メチルチャネル面積/IR5測定チャネル面積)](式11)、式中、A0は、ゼロの「IR5面積比」における「SCB/総炭素数1000個」の切片であり、A1は、「SCB/総炭素数1000個」対「IR5面積比」の傾きであり、「IR5面積比」の関数としての「SCB/総炭素数1000個」の増加を表す。
【0112】
「IR5メチルチャネルセンサ」によって生成されたクロマトグラムの一連の「線形ベースライン減算クロマトグラフ高さ」を、カラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)を生成した。「IR5測定チャネル」によって生成されたクロマトグラムの一連の「線形ベースライン減算クロマトグラフ高さ」を、カラム溶出体積の関数として確立して、ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)を生成した。
【0113】
「ベースライン補正クロマトグラム(メチルチャネル)」の「ベースライン補正クロマトグラム(測定チャネル)」に対する「IR5高さ比」を、サンプル統合境界にわたって各カラム溶出体積指数(1mL/分の溶出で秒当たり1データポイントを表す各等間隔の指数)で計算した。「IR5高さ比」に係数A1を乗算し、係数A0をこの結果に加算して、試料の予測されたSCB頻度を生成した。結果を、以下の式12のとおり、モルパーセントコモノマーに変換した。
モルパーセントコモノマー={SCBf/[SCBf+((1000-SCBf
*コモノマーの長さ)/2)]}*100(式12)、式中、「SCBf」は、「総炭素数1000個当たりのSBC」であり、「コモノマーの長さ」=オクテンの場合8、ヘキセンの場合6などである。
【0114】
Williams and Wardの方法(上述した、EQ8)を使用して、各溶出体積指数を分子量値(Mwi)に変換した。「モルパーセントコモノマー(y軸)」は、Log(Mwi)の関数としてプロットされ、傾きは、50,000g/モルのMwi~750,000g/モルのMwiで計算された(鎖末端に対する末端基の補正はこの計算のために省略された)。EXCEL直線回帰を使用して、50,000~750,000g/モルの間(境界値を含む)のMwiの傾きを計算した。この傾きは、分子量コモノマー分布指数(MWCDI=Molecular Weighted Comonomer Distribution Index)として定義される。
【0115】
組成物のMWCDIの代表的な測定は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10138362(B2)号に提供されている。
【0116】
ゼロ剪断粘度比(Zero-Shear Viscosity Ratio、ZSVR)
ZSVRは、以下の式13及び14による、当量重量平均分子量(Mw-gpc)における分岐状ポリエチレン材料のゼロ剪断粘度(ZSV)と直鎖状ポリエチレン材料のZSVとの比として定義される。
【0117】
【0118】
【0119】
ZSV値は、上述した方法により190℃でのクリープ試験から得た。Mw-gpc値は、コンベンショナルGPC法(コンベンショナルGPC法の説明における式5)によって決定される。線状ポリエチレンのZSVとそのMw-gpcとの間の相関を、一連の線状ポリエチレン参照物質に基づいて確立した。ZSV-Mwの関係についての説明は、ANTECの要旨:Karjala,Teresa P.,Sammler,Robert L.,Mangnus,Marc A.,Hazlitt,Lonnie G.,Johnson,Mark S.,Hagen,Charles M.Jr.,Huang,Joe W.L.,Reichek,Kenneth N.,”Detection of low levels of long-chain branching in polyolefins”,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th 887-891において見出し得る。
【0120】
延伸フィルム試験
延伸技術は、フィールドでの性能を予測するために、用途固有の試験を使用することを特徴とする。用途試験の重要な構成要素は、フィルムを延伸状態で試験することに関し、これにより、延伸ラッピング中の性能がシミュレーションされる。全てのフィルム試験について、厚さ0.6ミル及びフィルム幅20インチの試料を試験する。延伸ラボにおいて、生成されたフィルムに対して2タイプの延伸試験が実施される。1つは、代表的な条件での延伸フィルム試験を提供するために開発されたESTLフィルム性能試験機の使用を伴う。ESTLフィルム性能試験機を使用して、パレットのラッピング中に適用され得る延伸の最大レベルを示す極限延伸を測定する。また、試験機を使用して、延伸状態にあるフィルムの引裂き性能を分析するために引裂き伝播試験を行う。
【0121】
2番目の試験セットは、44インチ×35インチ×60インチの金属フレームをハウジング内に装備したLantech延伸ラッパーを使用して、パレットのラッピングをシミュレーションする。この設定で実施される試験は、フィルムの機械的特性又は乱用特性、並びに負荷をユニット化するフィルムの能力、及びフィルムの密着値を取得する。
【0122】
極限延伸(US)
極限延伸は、ESTLフィルム性能試験機(ESTL,Deerlijk,Belgium)-FPT-750 Film Property Testerを使用して測定される。極限延伸試験を試験メニューから選択し、次いでWラップ法を選択する。表Aは、この方法で使用される機器の設定を示す。巻き出し力、巻き取り力、剥離力、延伸力、剥離角度、及び騒音レベルを、予備延伸の関数として測定する。予備延伸は、破断点まで増加される。試験中の巻き取り速度は、360フィート/分で一定である。試験を3回繰り返し、平均極限延伸(US)を極限延伸の百分率(%)として報告する。
【0123】
【0124】
パレット上穿刺-タイプA負荷(OPP-A)
この試験は、ブルセトン階段法(Bruceton staircase method)を用いて、フィルムが3回巻き付け用の試験プローブ上を破損することなく通過することができる最大負荷力を決定する。試験プローブを所望の突出距離で試験台に挿入する。タイプA負荷は、3インチプローブで試験する。タイプB負荷は、6インチプローブで試験し、タイプC負荷は、12インチプローブで試験する。試験プローブがフィルムの中心と整列するようにフィルムを配置する。フィルムを試験台に取り付け、ラッパーを始動する。ラッパーが250%の予備延伸に達すると、フィルムは、最大3回巻き付け用のプローブを通過することが可能になる。7ポンドの低いF2力から開始して、フィルムを3回巻き付ける。フィルムがプローブによって穿刺されなければ、破損するまで0.5ポンドの増分で増加させたF2力で試験を繰り返す。0.5ポンドの増分ごとに、フィルムを手動でプローブに押し付け、新しいフィルムのセットを試験する。巻き付けのいずれかの間にフィルムが破損した場合、その力での負荷設定が失敗であると見なされる。負荷設定でのフィルムの性能(すなわち通過又は破損)に応じて、負荷力を上下に調整し、新しい負荷設定で試験を繰り返す。破損が50%を超える最大力を見出すまで、この試験を続行する。破損したF2力は、フィルムのパレット上穿刺値を表し、一般に、試験が7ポンドから開始して2回を超えて繰り返されない限り、標準偏差を報告しない。データの有意性は+/-1ポンドであると見なされ、最も高い通過したF2力を報告する。タイプA負荷試験は、パレットパッキングにおいて一般的に使用され、当業者は、本明細書で使用される場合、その意味を認識することを理解されたい。表Bは、この方法で使用される設備及び設定を示す。
【0125】
【0126】
パレット上穿刺-タイプB負荷(OPP-B)
ユニット化されたパレットが、形状において均一でなく、不規則性が限られている場合、タイプ「B-負荷」として定義される。この試験は、ブルセトン階段法(Bruceton staircase method)を使用して、フィルムが3回重ね巻き付け用の試験プローブ上を破損することなく通過することができる最大負荷力を決定する。試験プローブを所望の突出距離で試験台に挿入する。全てのフィルムを、6インチ外側に延在する2インチ×2インチの尖っていない金属プローブによって試験した。試験プローブがフィルムの中心と整列するようにフィルムを配置する。フィルムを試験台に取り付け、ラッパーを始動する。ラッパーが250%の予備延伸に達すると、フィルムは、最大3回巻き付け用のプローブを通過することが可能になる。7ポンドの延伸後フィルム張力/負荷力(F2)から開始して、フィルムを3回巻き付ける。フィルムがプローブによって穿刺されなければ、破損するまで0.5ポンドの増分で増加させたF2力で試験を繰り返す。巻き付けのいずれかの間にフィルムが破損した場合、その力での負荷設定が失敗であると見なされる。F2力が破損が発生し始める点に達すると、1つの力設定で6回試験が繰り返される。フィルムが6回の試験のうち4回に合格する場合、フィルムのF2力が増加する。フィルムが6回の試験のうち4回に破損する場合、試験は停止され、これがフィルムの破損点と見なされる。負荷設定でのフィルムの性能(すなわち通過又は破損)に応じて、負荷力を増加/減少させ、新しい負荷設定で試験を繰り返す。破損が50%を超える最大力を見出すまで、この試験を続行する。最も高い合格F2力が、パレット上穿刺(OPP)値として報告される。この試験の標準的な変動は、+/-1ポンドであることが観察される。タイプB負荷試験は、パレットパッキングにおいて一般的に使用され、当業者は、本明細書で使用される場合、その意味を認識することを理解されたい。以下の表Cは、この方法で使用される設備及び設定を示す。
【0127】
【0128】
パレット上引裂き(OPT)
この試験は、ブルセトン階段法を用いて、フィルムが、穿刺を開始するためにブレードに固定された試験プローブを通過することができる最大負荷力を決定する。試験プローブを所望の突出距離で試験台に挿入する。試験プローブがフィルムの中心と整列するようにフィルムを配置する。フィルムを試験台に取り付け、ラッパーを始動する。ラッパーが250%の予備延伸に達すると、フィルムをプローブに通過させ、この試験ではフィルムの単一層が試験される。フィルム張力(F2力)は、フィルムが、クロス方向(CD)又は横断方向(TD)全体で完全に引き裂かれるまで、0.5ポンドの増分で約7ポンドの初期の低い値から増加する。パレット上引裂き値は、最初の穿刺がフィルムの幅全体に伝播して破損をもたらさない最大のF2力として記録される。表Dは、この方法で使用された設備及び設定を示す。
【0129】
【0130】
引裂き伝播/破断時間(ESTL引裂き)
引裂き伝播/破断時間は、ESTLフィルム性能試験機(ESTL,Deerlijk,Belgium)-FPT-750 Film Property Testerを使用して測定される。「引裂き伝播」を試験メニューから選択し、次いでWラップ法を選択する。表Eは、破断時間(ESTL引裂き)を測定するために機器で選択されるパラメータを示す。キャスト延伸フィルム試料を予備延伸した伸張状態にし、続いてフィルムをクランプする。小型の「槍状ナイフ」を使用して、フィルムに小さな垂直切断部を作製する。この切断部の作製後、キャンバスがフィルムのクランプを外す。1秒後に巻き取りスピンドルが一定速度でフィルムを引っ張り始める。他のシャフトはブロックされる。これにより、最初の切断後にフィルムに引張力が生じる。FPT-750 Film Property Testerは、フィルム高さ全体を切り開くのにかかる時間及び力を監視する。試験を3回繰り返し、平均破断時間を秒(s)で報告する。
【0131】
【実施例】
【0132】
本発明のポリエチレン組成物の調製(Poly.1及びPoly.2)
本発明のポリエチレン組成物(「Poly.1」及び「Poly.2」)を以下のプロセス及び表に従って調製する。
【0133】
反応環境に導入する前に、全ての原材料(モノマー及びコモノマー)並びにプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、Isopar-E)を分子篩で精製する。高純度水素を共有パイプラインによって供給し、分子ふるいで乾燥させる。反応器へのモノマー供給流を、機械的圧縮機によって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。溶媒供給物を、ポンプによって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。コモノマー供給物を、ポンプを介して反応圧力を超えるまで加圧する。個々の触媒成分は、精製された溶媒で、手動でバッチ希釈され、反応圧力超まで加圧される。全ての反応供給流を、質量流量計を用いて測定し、コンピュータにより自動化された定量ポンプによって独立して制御する。
【0134】
反応器構成は、表Gに指定されるような二重並列反応器操作又は二重直列反応器操作のいずれかである。
【0135】
単一の反応器系、並列構成の2つの反応器系、又は直列構成の2つの反応器系のいずれかが使用される。各反応器は、液体が充填された断熱性の連続撹拌タンク反応器(CSTR)からなる連続溶液重合反応器である。全ての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー(存在する場合)、水素、及び触媒成分供給物の独立した制御が可能である。各反応器(溶媒、モノマー、コモノマー[存在する場合]、及び水素)への全新鮮供給流は、供給流を熱交換器に通過させることによって単一溶液相を維持するように、通常15~50℃で温度制御する。各重合反応器への全新鮮供給物を、一箇所で反応器に注入する。新鮮供給物は、各注入器が、全新鮮供給物質量流量の半分を受容して制御される。触媒構成成分は、他の供給物とは別々に重合反応器に注入する。一次触媒成分の供給は、特定の値で反応器モノマー変換を維持するようにコンピュータ制御される。助触媒成分(単数又は複数)は、計算された特定のモル比に基づいて、主触媒成分に供給される。反応器内の撹拌機は、反応物の連続混合を担う。油浴は、反応器温度制御のいくらかの微調整を提供する。
【0136】
二重並列反応器構成では、第1及び第2の重合反応器からの流出物流を、任意の追加の処理の前に合わせる。
【0137】
二重直列反応器構成では、第1の重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、コモノマー[存在する場合]、水素、触媒成分、及びポリマーを含有する)は、第1の反応器ループから流出し、第2の反応器への他の供給物とは別々に第2の反応器に添加される。
【0138】
全ての反応器構成において、最終反応器流出物(二重直列の場合は第2の反応器流出物、二重並列の場合は合わせた流出物、又は単一反応器流出物)は、好適な試薬(通常、水)の添加及びそれとの反応によって非活性化されるゾーンに入る。この同じ反応器の出口の場所では、ポリマー安定化のために他の添加剤が添加される(オクタデシル3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン、及びトリス(2,4-ジ-Tert-ブチル-フェニル)ホスファイトのような押出及び製作中の安定化に好適な典型的な酸化防止剤、並びに必要に応じてステアリン酸カルシウムのような酸捕捉剤)。
【0139】
触媒の非活性化及び添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発系に入る。単離されたポリマー溶融物をペレット化して回収する。非ポリマー流を、システムから除去する。
【0140】
ポリエチレン組成物(Poly.1及びPoly.2)を生成するために使用される表F及び表Gの値及び情報に対応する反応器流供給データフローを、
図2及び
図3に図式的に示す。
【0141】
【0142】
【0143】
市販のポリエチレン組成物
Poly.3は、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている直鎖状低密度ポリエチレン組成物である、INNATE(商標)XUS.59910.08である。
【0144】
Poly.4は、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている直鎖状低密度ポリエチレン組成物である、DOWLEX(商標)2045である。
【0145】
Poly.5は、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されているポリエチレン組成物である、INNATE(商標)ST50である。
【0146】
開発ポリエチレン組成物の調製(Poly.6、Poly.7、Poly.8、及びPoly.9)
開発ポリエチレン組成物(「Poly.6」、「Poly.7」、「Poly.8」、及び「Poly.9」)を以下のプロセス及び表に従って調製する。
【0147】
反応環境に導入する前に、全ての原材料(モノマー及びコモノマー)並びにプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、Isopar-E)を分子篩で精製する。高純度水素を共有パイプラインによって供給し、分子ふるいで乾燥させる。反応器へのモノマー供給流を、機械的圧縮機によって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。溶媒供給物を、ポンプによって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。コモノマー供給物を、ポンプを介して反応圧力を超えるまで加圧する。個々の触媒成分は、精製された溶媒で、手動でバッチ希釈され、反応圧力超まで加圧される。全ての反応供給流を、質量流量計を用いて測定し、コンピュータにより自動化された定量ポンプによって独立して制御する。
【0148】
2つの反応器系を直列構成で使用する。各連続溶液重合反応器は、熱を除去する連続撹拌タンク反応器(CSTR)を再現した、液体が充填された非断熱性の等温循環ループ反応器からなる。全ての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー(存在する場合)、水素、及び触媒成分供給物の独立した制御が可能である。各反応器(溶媒、モノマー、コモノマー[存在する場合]、及び水素)への全新鮮供給流は、供給流を熱交換器に通過させることによって単一溶液相を維持するように、通常15~50℃で温度制御する。各重合反応器への全新鮮供給物は、各注入場所の間でほぼ等しい反応器体積で、2つの場所で反応器に注入する。新鮮供給物は、各注入器が、全新鮮供給物質量流量の半分を受容して制御される。触媒成分を、特別に設計された注入針を通って重合反応器に注入される。一次触媒成分の供給は、特定の値で反応器モノマー変換を維持するようにコンピュータ制御される。助触媒成分(単数又は複数)は、計算された特定のモル比に基づいて、主触媒成分に供給される。各反応器供給物の注入場所の直後に、供給流が、静的混合要素を有する循環重合反応器の内容物と混合される。各反応器の内容物を反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器に通し、冷却剤側の温度が、特定温度での等温反応環境を維持する役割を果たして、連続的に循環させる。各反応器ループの周りの循環は、ポンプによって提供する。
【0149】
第1の重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、コモノマー[存在する場合]、水素、触媒成分、及びポリマーを含有する)は、第1の反応器ループから流出し、第2の反応器への他の供給物とは別々に第2の反応器に添加される。
【0150】
最終的な反応器流出物(二重直列構成の場合の第2の反応器流出物)は、適切な試薬(水)の添加及び反応により失活させるゾーンに入る。この同じ反応器の出口の場所では、ポリマー安定化のために他の添加剤が添加される(オクタデシル3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン、及びトリス(2,4-ジ-Tert-ブチル-フェニル)ホスファイトのような押出及び製作中の安定化に好適な典型的な酸化防止剤、並びに必要に応じてステアリン酸カルシウムのような酸捕捉剤)。
【0151】
触媒の非活性化及び添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発系に入る。単離されたポリマー溶融物をペレット化して回収する。非ポリマー流は、システムから除去されるエチレンの大部分を分離する様々な機器を通過する。溶媒及び未反応コモノマーの大部分は、精製系を通過した後、反応器に再循環される。少量の溶媒及びコモノマーを、プロセスからパージする。
【0152】
表H及び表Iの値及び情報に対応する反応器流供給データフローは、ポリエチレン組成物(Poly.6、Poly.7、Poly.8、及びPoly.9)を生成するために使用され、
図3に図式的に示される。データは、溶媒再循環系の複雑さが考慮され、かつ反応システムが貫流フローダイアグラムとしてより簡単に処理できるように表示される。
【0153】
【0154】
【0155】
ポリエチレン試料の分析
Poly.1~Poly.9をiCCD及びGPCによって分析する。組成物の密度、メルトインデックス(I
2)、MWCDI、及びゼロ剪断粘度比(ZSVR)も測定する。分析及び試験から得られたデータを表1及び表1Aに報告する。一例として、Poly.1のiCCD溶出プロファイル及びGPCオーバーレイを、それぞれ
図4及び
図5に示す。
【0156】
【0157】
【0158】
3層及び5層のキャスト延伸フィルムを、5層Egan Davis Standard共押出キャストフィルムラインで製造する。キャストラインは、空冷された3つの2-1/2インチ及び2つの2インチの30:1L/D Egan Davis Standard MAC押出機で構成される。全ての押出機は、適度な作業用のDSB(Davis Standard Barrier)型スクリューを有する。マイクロプロセッサは操作を監視及び制御する。押出プロセスは、ブレーカープレートの前後に位置する圧力トランスデューサ、並びに各バレル上の4つの加熱器ゾーン、アダプター及びブロックに各々1つ、及びダイ上の2つのゾーンによって監視される。マイクロプロセッサはまた、押出機のRPM、%FLA、HP、率、ライン速度、延伸%、一次及び二次冷却ロール温度、ゲージ偏差、層比、率/RPM、並びに各押出機の溶融温度も追跡する。
【0159】
機器の仕様には、Cloeren 5層デュアルプレーンフィードブロック及びCloeren 36インチEpoch III自動ゲージ5.1ダイが含まれる。一次冷却ロールはつや消し仕上げで、外径40インチ×長さ40インチであり、改善された剥離特性のために30~40RMSの表面仕上げを有する。二次冷却ロールは、外径20インチ×長さ40インチであり、改善されたウェブトラッキングのために2~4RMSの表面を有する。一次冷却ロール及び二次冷却ロールの両方に冷却水が循環し、急冷する。ScantechからのX線ゲージセンサがあり、ゲージ厚及び必要に応じて自動ゲージ制御が行われる。速度は、重量制御のために各ホッパーにロードセルを備える5つのBarron計量ホッパーによって測定される。試料は、中央ワインド自動ロールチェンジオーバー及びスリッタステーションを備える3インチIDコア上の2ポジション単一タレットHorizonワインダーで終了する。ラインの最大スループット速度は毎時600ポンドであり、最大ライン速度は毎分1200フィートである。
【0160】
試料調製の条件は、表2に示すとおりである。
【0161】
【0162】
Poly.1~Poly.9に加えて、以下の材料も本発明のフィルム及び比較フィルムの配合に使用する。
【0163】
DR376_01(「PP」)、Braskem(Sao Paulo,Brazil)から市販されているポリプロピレン。
【0164】
ATTANE(商標)4404G、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている超低密度ポリエチレンコポリマー。
【0165】
ELITE(商標)5230G、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている改良ポリエチレン樹脂。
【0166】
3層及び5層のキャスト延伸フィルムを形成し、本発明のフィルム及び比較フィルムと呼ぶ。各3層フィルムでは、ATTANE(商標)4404Gを外層(層1)に使用し、ELITE(商標)5230Gをもう一方の外層(層3)に使用し、PP又はPoly.1~Poly.5を内層(層2)に使用する。以下の表3、表4、及び表5は、3層の比較例及び本発明の実施例の配合を示す。比較フィルム2~4及び本発明のフィルム1では、PP又はPoly.3~5が全フィルム配合の20%を構成する。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
各5層フィルムでは、ATTANE(商標)4404Gを外層(層1)に使用し、ELITE(商標)5230Gをもう一方の外層(層5)並びにコア層(層3)に使用し、Poly.1~Poly.9をサブ内層(層2及び4)に使用する。以下の表6、表7、及び表7Aは、5層の比較例及び本発明の実施例の配合を示す。比較フィルム5~6及び本発明のフィルム2~4では、Poly.1~9が全フィルム配合の30%を構成する(すなわち、層2に15%及び層4に15%)。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
本発明のフィルム及び比較フィルムの特性を、本明細書に開示する試験方法に従って測定し、表8、表9、及び表9Aに示す。結果から分かるように、本発明のフィルム1は、比較フィルム3及び4と比較して、驚くほど高いパレット上引裂き及び破断時間(ESTL引裂き)を有する。同様に、本発明のフィルム2~8は、比較フィルム5及び6と比較して、驚くほど高いパレット上引裂き及び破断時間(ESTL引裂き)を有する。
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
存在する場合、あらゆる相互参照されるか又は関連する特許又は出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張するあらゆる特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文献は、明示的に除外されるか、又は別段限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。あらゆる文献の引用は、それが本明細書に開示若しくは特許請求されたあらゆる発明に関する先行技術であること、又はそれ単独で、若しくはあらゆる他の参考文献とのあらゆる組み合わせで、そのような発明を教示、示唆、若しくは開示することを認めるものではない。更に、本文書における任意の用語の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書における同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合は、本文書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0179】
本発明の特定の実施形態を例示し、説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行い得ることは当業者には明らかであろう。そのため、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるそのような変更及び修正を全て網羅することが意図されている。
【国際調査報告】