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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ポリマー化アルキルシリケート
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/02 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
C08G77/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023524211
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020079521
(87)【国際公開番号】W WO2022083852
(87)【国際公開日】2022-04-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】エルケ、フリッツ-ラングハルス
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA02
4J246AA19
4J246AB11
4J246BA220
4J246BA22X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB040
4J246BB042
4J246BB04X
4J246BB260
4J246BB261
4J246BB262
4J246BB26X
4J246CA050
4J246CA059
4J246CA05E
4J246CA05X
4J246CA130
4J246CA139
4J246CA13E
4J246CA13X
4J246CA560
4J246CA569
4J246CA56X
4J246FA081
4J246FA151
4J246FA161
4J246FA321
4J246FA451
4J246FB231
4J246FE22
4J246FE26
4J246FE33
4J246FE34
4J246GA01
4J246GA02
4J246GA04
4J246GB02
4J246GC06
4J246HA34
4J246HA43
4J246HA53
4J246HA56
(57)【要約】
式(I)で示されるポリマー化アルキルシリケート(ここで、Zは、式-Si(ORで示される基、又は式-CR で示される基を表し、Rは、置換されていないか若しくは置換されている二価の炭素結合基、又は二価のケイ素結合基を表し、Rは、4~40個の炭素原子を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基であって、α炭素原子において分岐鎖状であるか又はβ炭素原子において二重分岐鎖状である、炭化水素基を表し、Rは、1~50個の炭素原子を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子、置換されていないか若しくは置換されている酸素結合のC~C40炭化水素基であって、個々の炭素原子が酸素原子によって置き換えられていてもよい、C~C40炭化水素基、式-O-Si(ORで示される基、又は式-OSiR で示される基を表し、Rは、置換されていないか又は置換されている一価のC~C40炭化水素基を表し、mは、少なくとも2かつ最大でも1000の整数を表す)が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
Zは、式-Si(ORで示される基、又は式-CR で示される基を表し、
は、各出現において独立して、置換されていないか若しくは置換されている二価の炭素結合基、又は二価のケイ素結合基を表し、
は、各出現において独立して、4~40個の炭素原子を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基であって、α炭素原子において分岐鎖状であるか又はβ炭素原子において二重分岐鎖状である、炭化水素基を表し、
は、各出現において独立して、1~50個の炭素原子を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、置換されていないか若しくは置換されている酸素結合のC~C40炭化水素基であって、個々の炭素原子が酸素原子によって置き換えられていてもよい、C~C40炭化水素基、式-O-Si(ORで示される基、又は式-OSiR で示される基を表し、
は、各出現において独立して、置換されていないか又は置換されている一価のC~C40炭化水素基を表し、
mは、少なくとも2かつ最大でも1000の整数を表す)
で示されるポリマー化アルキルシリケート。
【請求項2】
mが、少なくとも5かつ最大でも100の整数であることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項3】
が、各出現において独立して、3~200個の炭素原子を有する(好ましくは、3~50個の炭素原子を有する)二価の炭化水素基であって、前記炭素原子が酸素原子によって又は式-(R SiO)-SiR -で示されるシロキサニル基によって置き換えられていてもよい、炭化水素基(式中、
は、各出現において独立して、C~C20炭化水素基(好ましくは、C~C炭化水素基)を表し、
oは、0~100の整数(好ましくは、0~20の整数)である)
を表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項4】
基Rが、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,2-シクロヘキシリデン基、1,3-シクロヘキシリデン基、1,4-シクロヘキシリデン基、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、並びに式:
-CHR-CHR-(OCHR-CHR-、
-(MeSiO)-MeSi-、
-CH-CH-CH-(MeSiO)-MeSi-CH-CH-CH-、及び
-CH-(MeSiO)-MeSi-CH
(式中、
Meは、メチル基であり、
は、水素原子又はC~C18炭化水素基(好ましくは、水素原子又はメチル基)を表し、
oは、請求項3に定義されるとおりであり、
pは、0~100の整数(好ましくは、0~20の整数)である)
で示される基からなる群より選択される基であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項5】
基Rが、2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、1-フェニルエチル基、1-フェニル-1-プロピル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチルエチル基及び1,1-ジメチルプロピル基からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項6】
が、各出現において独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の非環式炭化水素基を表すことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項7】
Zが、式(2-BuO)SiO-又はCH-CH-C(CHO-で示される基であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケートを製造するための方法であって、式:
[(RO)SiO]SiCl、又は
(R CO)SiCl
で示されるクロロシラン(1)を、式:
HO-R-OH
で示されるジヒドロキシ化合物(2)又はこれらの塩と反応させ、
ここで、ジヒドロキシ化合物(2)は、1molのクロロシラン(1)あたり0.1~10mol(好ましくは、0.5~1.5mol)のジヒドロキシ化合物(2)の量で使用され、
、R及びRは、請求項1に定義されるとおりである、
ことを特徴とする、方法。
【請求項9】
使用されるクロロシラン(1)が、式:
[(2-BuO)SiO]SiCl、又は
[CH-CH-C(CHO]SiCl
(式中、2-Buは、2-ブチル基である)
で示されるものであることを特徴とする、請求項8に記載のポリマー化アルキルシリケートを製造するための方法。
【請求項10】
使用されるジヒドロキシ化合物(2)が、1,4-シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール又はポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応が、塩基(3)(好ましくは、窒素塩基)の存在下で行われることを特徴とする、請求項8、9又は10に記載の方法。
【請求項12】
使用される塩基(3)が、ピリジン、アンモニア、尿素、エチレンジアミン、トリエチルアミン又はトリブチルアミンであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~4のいずれかに記載の式(I)で示されるポリマー化アルキルシリケート(但し、Zは、式-CR で示される基である)を製造するための方法であって、
テトラクロロシランを、式:
HO-CR
で示されるモノヒドロキシ化合物(4)及び式:
HO-R-OH
で示されるジヒドロキシ化合物(2)又はこれらの塩と、1ステップで同時に反応させるか又は2ステップで逐次的に反応させ、
ここで、モノヒドロキシ化合物(4)は、1molのテトラクロロシランあたり1.5~3.0mol(好ましくは、1.8~2.2mol)の量で使用され、ジヒドロキシ化合物(2)は、1molのテトラクロロシランあたり1.5~3.0mol(好ましくは、1.8~2.2mol)の量で使用され、
及びRは、請求項1に定義されるとおりである、
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
が、各出現において独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の非環式炭化水素基を表すことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応が、塩基(3)(好ましくは、窒素塩基、好ましくは、ピリジン、アンモニア、尿素、エチレンジアミン、トリエチルアミン又はトリブチルアミンの群から選択される塩基)の存在下で行われることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ポリマー化アルキルシリケートに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンは、多くの技術分野で使用されている、産業上非常に重要な物質のクラスである。シリコーンの産業上重要な特性は、例えば、結晶化する傾向が低いことであり、これが、シリコーンと炭素ベースのポリマーとを区別する。シリコーンは、広い温度範囲で液状を保ち、ガラス転移温度が非常に低い。
しかしながら、Si結合のアルキル部分が存在することに起因して、シリコーンは、環境中で全く容易に分解されない。この特性が、シリコーンに対する潜在的な適用を益々限定している。そのため、原理的には加水分解を受け得るにもかかわらず実用上十分な加水分解安定性を有する、従来のシリコーンに置き換わることが可能な代替となる材料に対する需要が着実に増大している。
【0003】
特許文献1及び2は、式[(RO)SiO]Si-O-KW-O-Si[OSi(OR(式中、KWは、炭化水素基を表す)のケイ酸化合物を開示する。しかしながら、これらの系は、低分子量である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3992429号明細書
【特許文献2】米国特許第4132664号明細書
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、多くの技術用途において、低分子化合物は、揮発性及び移行性を有するため望ましくない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を解消し、シリコーンと同様の特性を有し、そのため、シリコーンを代替し得るポリマー化アルキルシリケートを提供することである。
【0007】
本発明により、上記目的が達成される。
【0008】
本発明は、式(I):
【化1】
(式中、
Zは、式-Si(ORで示される基、又は式-CR で示される基を表し、
は、各出現において独立して、置換されていないか若しくは置換されている二価の炭素結合基、又は二価のケイ素結合基を表し、
は、各出現において独立して、4~40個の炭素原子を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基であって、α炭素原子において分岐鎖状であるか又はβ炭素原子において二重分岐鎖状である、炭化水素基を表し、
は、各出現において独立して、1~50個の炭素原子(好ましくは、1~10個の炭素原子、好ましくは、1~5個の炭素原子)を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、置換されていないか若しくは置換されている酸素結合のC~C40炭化水素基であって、個々の炭素原子が酸素原子によって置き換えられていてもよい、C~C40炭化水素基、式-O-Si(ORで示される基、又は式-OSiR で示される基を表し、
は、各出現において独立して、置換されていないか又は置換されている一価のC~C40炭化水素基を表し、
mは、少なくとも2(好ましくは、少なくとも5)かつ最大でも1000(好ましくは、最大でも500、好ましくは、最大でも100)の整数を表す)
で示されるポリマー化アルキルシリケートを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語「分岐鎖状」は、1つの炭素原子上に2つの炭素基が存在することを意味する。
用語「二重分岐鎖状」は、1つの炭素原子上に3つの炭素基が存在することを意味する。
【0010】
基R、R、R及びR並びに基X(Xがハロゲン原子ではない場合)は、非環式、環式、飽和、又は一価若しくは多価不飽和、或いは芳香族であってもよく、以下の置換基:
-OR、-NR 、-SH、-SR、エポキシ基、-COOR、-CHO、-CN、-OCOOR、-NR-COOR、-NR-CO-NR、-SiR 及び-OSiR
(式中、
は、水素原子又は一価のC~C18炭化水素基を表し、
は、一価のC~C18炭化水素基を表す)
を有していてもよい。
【0011】
は、各出現において独立して、好ましくは、1~200個の炭素原子を有する(好ましくは、3~50個の炭素原子を有する)二価の炭化水素基であって、炭素原子が酸素原子によって又は式-(R SiO)-SiR -で示されるシロキサニル基によって置き換えられていてもよい、炭化水素基(式中、
は、各出現において独立して、C~C20炭化水素基(好ましくは、C~C炭化水素基)を表し、
oは、0~100の整数(好ましくは、0~20の整数)である)
を表す。
【0012】
基Rの例は、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,2-シクロヘキシリデン基、1,3-シクロヘキシリデン基、1,4-シクロヘキシリデン基、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基及び1,4-フェニレン基である。
基Rの更なる例は、式:
-CHR-CHR-(OCHR-CHR
(式中、
は、水素原子又はC~C18炭化水素基(好ましくは、水素原子又はメチル基)を表し、
pは、0~100の整数(好ましくは、0~20の整数)である)
で示される基、並びに式:
-(MeSiO)-MeSi-
-CH-CH-CH-(MeSiO)-MeSi-CH-CH-CH-、及び
-CH-(MeSiO)-MeSi-CH
(式中、
Meは、メチル基であり、
oは、上に定義されるとおりである)
で示される基である。
【0013】
の好ましい例は、2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、1-フェニルエチル基、1-フェニル-1-プロピル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチルエチル基、1,1-ジメチルプロピル基である。
【0014】
は、各出現において独立して、好ましくは、1~50個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分岐鎖状の非環式炭化水素基、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の非環式炭化水素基、特に好ましくは、1~5個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の非環式炭化水素基を表す。
【0015】
の例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、ビニル基及びアリル基である。
【0016】
Xは、好ましくは、塩素原子、置換されていないか若しくは置換されている酸素結合のC~C40炭化水素基であって、個々の炭素原子が酸素原子によって置き換えられていてもよい、C~C40炭化水素基、又は式-O-Si(OR若しくは式-OSiR (式中、Rは、各出現において独立して、好ましくは、C~C10炭化水素基を表す)で示される基を表す。
【0017】
基Xの例は、塩素原子、4-ヒドロキシシクロヘキシルオキシ基、並びに、以下の式:
-O-(CH-CH-OH及び-O-(CH-CH-OCH(式中、r=1~20)
-O-Si(CH
-O-Si(2-BuO)
-O-SiH(CH
-O-Si(CH-CH-CH-CH-NH
-O-Si(CH-CH-CH-CH-NH-CH-CH-NH
-O-Si(CH-CH=CH、並びに
-O-Si(CH-CH-CH-CH-O-CH-エポキシ
で示される基である。
【0018】
基Zの好ましい例は、式(2-BuO)SiO-及びCH-CH-C(CHO-(式中、2-Buは、2-ブチル基)で示される基である。
基Zの更なる例は、式:
[CH-CH(CH)-CH(CH)O]SiO-、
[CH-C(CH-CHO]SiO-、
[(CH-CH-CHO]SiO-、
[CH-(CH-CH(CH)O]SiO-、
[CH-(CH-CH(C)O]SiO-、
(CHCO-、
(CCO-、
(n-CCO-、
(n-CCO-、
(n-C11CO-、及び
CH-CH-C(CHO-
で示される基である。
【0019】
一般式(I)で示される化合物は、例えば、[(RO)SiO]SiCl又は(R CO)SiClと、ジヒドロキシ化合物HO-R-OH(式中、R、R及びRは上に定義されるとおりである)との反応により、簡単な様式で調製され得る。過剰の[(RO)SiO]SiCl又は(R CO)SiClが存在する場合、X=Clを有する式Iで示されるシリケートが優先的に形成され、過剰のジヒドロキシ化合物が存在する場合、X=OR-OHを有する式Iで示されるシリケートが優先的に形成される。
【0020】
更なる選択肢は、反応後に存在するSi-Cl末端基をアルコール又はシラノールと反応させることである。
【0021】
したがって、本発明は、本発明によるポリマー化アルキルシリケートを製造するための方法であって、式:
[(RO)SiO]SiCl、又は
(R CO)SiCl
で示されるクロロシラン(1)を、式:
HO-R-OH
で示されるジヒドロキシ化合物(2)又はこれらの塩と反応させ、
ここで、ジヒドロキシ化合物(2)は、1molのクロロシラン(1)あたり0.1~10mol(好ましくは、0.5~1.5mol)のジヒドロキシ化合物(2)の量で使用され、
、R及びRは、各々上に定義されるとおりである、
ことを特徴とする、方法を提供する。
【0022】
クロロシラン(1)の例は、
[(2-BuO)SiO]SiCl
{[CH-CH(CH)-CH(CH)O]SiO}SiCl
{[CH-CH-CH(CH)-CH(CH)O}SiO]SiCl
{[(CH-CHCHO]SiO}SiCl
{[CH-(CH-CH(CH)O]SiO]SiCl
{[CH-(CH-CH(C)O]SiO]SiCl
{[PhCH(CH)O]SiO]SiCl
{[PhCH(C)O]SiO]SiCl
{[CH-CH(CH-CHO]SiO}SiCl
{[CH-CH(CHO]SiO}SiCl
{[CH-CH-CH(CHO]SiO}SiCl
[(CHCO]SiCl
[(CCO]SiCl
[(n-CCO]SiCl
[(n-CCO]SiCl
[(n-C11CO]SiCl、及び
[CH-CH-C(CHO]SiCl
(式中、2-Buは、2-ブチル基であり、Phは、フェニル基である)
である。
【0023】
クロロシラン(1)の好ましい例は、式:
[(2-BuO)SiO]SiCl、及び
[CH-CH-C(CHO]SiCl
(式中、2-Buは、2-ブチル基である)
で示されるものである。
【0024】
ジヒドロキシ化合物(2)の例は、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,4-ジヒドロキシベンゼン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、
HO-SiMe-(O-SiMe-OH、及び
HO-CH-CH-CH-SiMe-(O-SiMe-CH-CH-CH-OH
(式中、xは、1~50の整数であり、Meは、メチル基である。)
である。
【0025】
ジヒドロキシ化合物(2)の好ましい例は、1,4-シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール及びポリエチレングリコールである。
【0026】
反応中に形成される塩化水素は、蒸留若しくは抽出によって反応混合物から直接除去されてもよいし、塩化水素許容型の塩基若しくは塩の形態におけるジヒドロキシ化合物が使用される。窒素塩基が好ましい。
【0027】
塩基の例は、ピリジン、アンモニア、尿素、ジエチル尿素、エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、ピリミジン、ピリダジン、イミダゾール及びジエチレントリアミンである。
【0028】
塩基(3)の好ましい例は、ピリジン、アンモニア、尿素、エチレンジアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミンである。
【0029】
本発明による方法は、1つ以上の溶媒の存在下で実施されてもよい。溶媒の例は、トルエン若しくはイソヘキサン等の炭化水素、メチルtert-ブチルエーテル等のエーテル、又はヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン若しくは(MeSiO)Si(式中、Me=メチル基)等のシロキサンである。該溶媒は、いずれの場合も成分(1)及び(2)の総重量に基づいて、重量割合で、少なくとも1%~多くとも100倍の重量(特に好ましくは、少なくとも10%~多くとも10倍の重量)で好ましくは使用される。
【0030】
上記方法は、バッチ式の方法、セミバッチ式の方法、又は連続的な方法として実施されてもよい。セミバッチ式の方法においては、成分(2)が好ましくは(場合により塩基と共に)最初に投入され、そして、成分(1)が加えられる。
【0031】
更なる実施態様において、一般式(I)で示されるポリマー化アルキルシリケート(式中、Zは、式-CR で示される基である)の製造は、
テトラクロロシランを、式:
HO-CR
で示されるモノヒドロキシ化合物(4)及び式:
HO-R-OH
で示されるジヒドロキシ化合物(2)又はこれらの塩と、1ステップで同時に反応させるか又は2ステップで逐次的に反応させ、
ここで、モノヒドロキシ化合物(4)は、1molのテトラクロロシランあたり1.5~3.0mol(好ましくは、1.8~2.2mol)の量で使用され、ジヒドロキシ化合物(2)は、1molのテトラクロロシランあたり1.5~3.0mol(好ましくは、1.8~2.2mol)の量で使用され、
及びRは、上に定義されるとおりである、
により果たされる。
この目的のために、例えば、1molのテトラクロロシランを、2molのHO-CR 及び2molのジヒドロキシ化合物(2)と反応させてもよい。HO-CR を最初に加え、ジヒドロキシ化合物(2)をその後に加える場合が好ましい。
【0032】
本発明による方法は、好ましくは、-20℃~+250℃、好ましくは、+20℃~+150℃の温度で実施される。周囲大気の圧力(約1020hPa)、又はそれ以上若しくはそれ以下の圧力で実施されてもよい。好ましくは、周囲大気の圧力で実施され得る。
【0033】
本発明によるポリマー化アルキルシリケートは、好ましくは、モル重量Mn(数平均)が5000~50000で、Mw(重量平均)が10000~100000である。
【0034】
分子量は、Agilent MesoPore及びOligoPoreカラム(長さ 300mm、内径 7.5mm、粒子径 3/6mm(35℃))、溶離液 トルエン、流速 0.3ml/min、RI-検出器、並びにポリジメチルシロキサンキャリブレーションを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(排除クロマトグラフィー)により測定される。
【0035】
本発明による式(I)で示されるアルキルシリケートは、ポリマーであるため不揮発性であり、したがって、材料中に移行しない、という先行技術と比較した際の利点を有する。更に、これらは、液体であり、高分子量にもかかわらず非常に低いガラス転移温度を有し、したがって、シリコーンの置き換えに好適である。本発明による式(I)で示されるアルキルシリケートの更なる利点は、それらがモジュラー構造を有し、したがって、それらの分子量を所望により変更可能なことである。更に、本発明によるアルキルシリケートの鎖末端は、多数の更なる任意の官能化部位を結合させ得る反応性基(例えば、塩素又はヒドロキシ基)を有する。これにより、本発明によるアルキルシリケートの適用範囲を広げることが可能になる。
【0036】
本発明によるポリマー化アルキルシリケートは、例えば、更なる処理(例えば、架橋によってエラストマーを得る)に供され、シリコーンが使用される場面(例えば、疎水化、消泡、繊維、化粧品、建物の保存剤、及び家庭用ケアの分野)で使用され得る。
【実施例
【0037】
実施例において使用された化合物である[(2-BuO)SiO]SiClは、例えば、Abe, Bull. Soc. Chim. Jpn. 1969, 42, 111-1123に記載されるとおり、(2-BuO)SiOH及びSiClから調製される。
【0038】
実施例において使用された化合物である[CH-CH-C(CHO]SiClは、例えば、Docherty et al., Helv. Chim. Acta 2018, 101, e1700298に記載されるとおり、CH-CH-C(CHOH及びSiClから調製される。
【0039】
実施例1:
式(I)で示されるポリマー(式中、R=1,4-シクロヘキシリデン、Z=Si(OR(ここで、R=2-ブチル)、X=Cl、O-C10-OH、m=14)。
トルエン(0.5ml)中の[(2-BuO)SiO]SiCl 1.54g(2.44mmol)を、1,4-シクロヘキサンジオール 284mg(2.44mmol)及びピリジン 430mg(5.43mmol)のトルエン(1ml)中混合物に滴下する。ピリジニウム塩酸塩の白色沈殿物が形成される。次に、該混合物を4時間、100℃まで加熱する。該溶液は、Mn=10000Da/Mw=21000を有するポリマー化生成物を含んでなる。これは、m=14を与える。形成された塩酸ピリジニウムの沈殿物を濾別し、トルエンを真空下での回転エバポレーションにより除去する。これにより、25℃における動的粘度n=1.13Pa・sを有する無色のオイルを得る。ガラス転移温度Tg=-107.6℃。
29Si-NMR(CDCl):δ=-92.5及び-98.6ppm(2:1の比率)。
【0040】
実施例2:
式(I)で示されるポリマー(式中、R=-CH-CH-(O-CH-CH-、Z=Si(OR(ここで、R=2-ブチル)、X=-CH-CH-(O-CH-CH-OH、m=13)。
[(2-BuO)SiO]SiCl 3.07g(93%、4.56mmol)を1mlのトルエンと混合する。トリエチレングリコール 737mg(4.91mmol)、ピリジン 856mg(10.8mmol)及びトルエン0.5mlの混合物をゆっくりと該溶液に添加する。ピリジニウム塩酸塩の白色沈殿物が直ちに形成される。次に、該混合物を4時間、100℃まで加熱する。該溶液は、Mn=9700Da/Mw=22000を有するポリマー化生成物を含んでなる。
これは、m=13を与える。
29Si-NMR(CDCl):δ=-92.3及び-96.8ppm(2:1の比率)。
【0041】
実施例3:
式(I)で示されるポリマー(式中、R=-CH-CH-(O-CH-CH-、Z=Si(OR(ここで、R=2-ブチル)、X=-CH-CH-(O-CH-CH-OH、m=13)。
室温において実施例2の手順を繰り返す。3時間後、M=12000Da/M=24000Daを有するポリマーが形成される。
これは、m=13を与える。
【0042】
実施例4:
式(I)で示されるポリマー(式中、R=-CH-CH-(O-CH-CH-、Z=-C(CH-CH-CH、X=CH-CH-(O-CH-CH-OH、Cl)
[(2-BuO)SiO]SiClに替えて式[CH-CH-C(CHO]SiClで示される化合物を使用すること、モル比が[CH-CH-C(CHO]SiCl:トリエチレングリコール=1.0であること、及び上記反応を80℃で行うこと、を除き実施例2の手順を繰り返す。80℃で4時間後、Mn=15500Da/Mw=38300Daを有するポリマーが形成され、80℃で更に5時間後、該混合物を実施例1に記載のとおり操作する。ポリマー化生成物 6.2gを無色のオイルとして得る。
=16900Da/M=42400Da。これは、m=48を与える。29Si-NMR(CDCl):δ=-89.72ppm。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
Zは、式-Si(ORで示される基、又は式-CR で示される基を表し、
は、各出現において独立して、3~200個の炭素原子を有する二価の炭化水素であって、前記炭素原子が酸素原子によって又は式-(R SiO) -SiR -で示されるシロキサニル基によって置き換えられていてもよい、炭化水素基(式中、
は、各出現において独立して、C ~C 20 炭化水素基を表し、
oは、0~100の整数である)
を表し、
は、各出現において独立して、4~40個の炭素原子を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基であって、α炭素原子において分岐鎖状であるか又はβ炭素原子において二重分岐鎖状である、炭化水素基を表し、
は、各出現において独立して、1~50個の炭素原子を有する置換されていないか又は置換されている一価の炭化水素基を表し、
Xは、ハロゲン原子、置換されていないか若しくは置換されている酸素結合のC~C40炭化水素基であって、個々の炭素原子が酸素原子によって置き換えられていてもよい、C~C40炭化水素基、式-O-Si(ORで示される基、又は式-OSiR で示される基を表し、
は、各出現において独立して、置換されていないか又は置換されている一価のC~C40炭化水素基を表し、
mは、少なくとも2かつ最大でも1000の整数を表す)
で示されるポリマー化アルキルシリケート。
【請求項2】
mが、少なくとも5かつ最大でも100の整数である、請求項1に記載のポリマー化アルキルシリケート
【請求項3】
が、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,2-シクロヘキシリデン基、1,3-シクロヘキシリデン基、1,4-シクロヘキシリデン基、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、並びに式:
-CHR-CHR-(OCHR-CHR-、
-(MeSiO)-MeSi-、
-CH-CH-CH-(MeSiO)-MeSi-CH-CH-CH-、及び
-CH-(MeSiO)-MeSi-CH
(式中、
Meは、メチル基であり、
は、水素原子又はC~C18炭化水素基を表し、
oは、請求項に定義されるとおりであり、
pは、0~100の整数である)
で示される基からなる群より選択される基である、請求項1又に記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項4】
基Rが、2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-ヘプチル基、2-オクチル基、1-フェニルエチル基、1-フェニル-1-プロピル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1,1-ジメチルエチル基及び1,1-ジメチルプロピル基からなる群より選択される、請求項1~のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項5】
が、各出現において独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の非環式炭化水素基を表す、請求項1~のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項6】
Zが、式(2-BuO)SiO-又はCH-CH-C(CHO-で示される基である、請求項1~のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケート。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のポリマー化アルキルシリケートを製造するための方法であって、式:
[(RO)SiO]SiCl、又は
(R CO)SiCl
で示されるクロロシラン(1)を、式:
HO-R-OH
で示されるジヒドロキシ化合物(2)又はこれらの塩と反応させ、
ここで、ジヒドロキシ化合物(2)は、1molのクロロシラン(1)あたり0.1~10molの量で使用され、
、R及びRは、請求項1に定義されるとおりである
法。
【請求項8】
使用されるクロロシラン(1)が、式:
[(2-BuO)SiO]SiCl、又は
[CH-CH-C(CHO]SiCl
(式中、2-Buは、2-ブチル基である)
で示されるものである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
使用されるジヒドロキシ化合物(2)が、1,4-シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール又はポリエチレングリコールである、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記反応が、塩基(3)の存在下で行われる、請求項又はに記載の方法。
【請求項11】
使用される塩基(3)が、ピリジン、アンモニア、尿素、エチレンジアミン、トリエチルアミン又はトリブチルアミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれかに記載の式(I)で示されるポリマー化アルキルシリケート(但し、Zは、式-CR で示される基である)を製造するための方法であって、
テトラクロロシランを、式:
HO-CR
で示されるモノヒドロキシ化合物(4)及び式:
HO-R-OH
で示されるジヒドロキシ化合物(2)又はこれらの塩と、1ステップで同時に反応させるか又は2ステップで逐次的に反応させ、
ここで、モノヒドロキシ化合物(4)は、1molのテトラクロロシランあたり1.5~3.0molの量で使用され、ジヒドロキシ化合物(2)は、1molのテトラクロロシランあたり1.5~3.0molの量で使用され、
及びRは、請求項1に定義されるとおりである
法。
【請求項13】
が、各出現において独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の非環式炭化水素基を表す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応が、塩基(3)の存在下で行われる、請求項12又は13に記載の方法。
【国際調査報告】