(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】低減されたVOC含有量を有する耐衝撃性ポリプロピレンポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20231102BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20231102BHJP
C08F 210/06 20060101ALI20231102BHJP
C08F 4/60 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/16
C08F210/06
C08F4/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524617
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021054981
(87)【国際公開番号】W WO2022086782
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン,ジーン
(72)【発明者】
【氏名】カールト,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リーズ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】モントヤ,アマイア
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J002BB11W
4J002BB12W
4J002BB15X
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA04
4J100DA42
4J100FA09
4J100FA35
4J100JA58
4J128AC01
4J128AC31
4J128AC41
4J128AC45
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC34B
4J128CB43C
4J128CB44A
4J128CB45A
4J128EA02
4J128EB04
4J128EC01
4J128ED01
4J128ED02
4J128ED09
4J128EF01
4J128FA04
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA21
(57)【要約】
異相ポリプロピレンポリマーを含有するポリマー組成物が開示される。ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマーを含み得る第1のポリマー相と、ゴム様プロピレン-エチレンランダムコポリマーを含み得る第2のポリマー相とを含む。ポリマー組成物は、劇的に低減されたVOC及びオリゴマー含有量をもたらすチーグラー・ナッタ触媒を使用して作製される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
ポリプロピレンポリマーを含む第1のポリマー相と、
前記第1のポリマー相と組み合わされた第2のポリマー相であって、前記第2のポリマー相は、プロピレン及びエチレンランダムコポリマーを含み、前記プロピレン及びエチレンランダムコポリマーは、約20重量%~約55重量%の量のエチレンを含有し、前記第2のポリマー相は、前記第1のポリマー相及び前記第2のポリマー相の総重量に基づいて約10重量%~約45重量%で構成される、第2のポリマー相と、を含み、
前記ポリマー組成物は、以下の式:
総オリゴマー<260
*MFR
0.32
によって表される総オリゴマー含有量を有する、ポリマー組成物。
【請求項2】
C12オリゴマー含有量が、最大300g/10分のメルトフローレートで約300ppm未満であり、最大150g/10分のメルトフローレートで約200ppm未満であり、最大25g/10分のメルトフローレートで約100ppm未満である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、80g/10分未満のメルトフローレートで1000ppm未満の総オリゴマー含有量を有する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記第1のポリマー相の前記ポリプロピレンポリマーがポリプロピレンホモポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記第1のポリマー相が、約6重量%未満、例えば約4重量%未満のキシレン可溶分含有量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記第1のポリマー相が、80g/10分未満のメルトフローレートで800ppm未満の総オリゴマー含有量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記第2のポリマー相が、0.85超、例えば0.86超、例えば0.87超のケーニヒB値を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマー組成物が、約10重量%~約50重量%、例えば約15重量%~約35重量%のキシレン可溶分含有量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、230℃の温度及び2.16kgの荷重で測定した場合に、約2g/10分~約150g/10分、例えば約5g/10分~約130g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、約70ppm未満、例えば約50ppm未満のVOC含有量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記ポリマー組成物が、15ppm未満、例えば約12ppm未満のC12VOC含有量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記第2のポリマー相が、前記第1のポリマー相内に分散したポリマー粒子の形態である、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記第1のポリマー相及び前記第2のポリマー相が、チーグラー・ナッタ触媒されており、前記チーグラー・ナッタ触媒は、
【化1】
[式中、R
1及びR
4は各々、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、水素であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、5~15個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、前記ヒドロカルビル基は、分岐状若しくは直鎖状構造を有するか、又は4~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、E
1及びE
2は、同じであるか、又は異なり、任意選択的にヘテロ原子を含有する、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有する不活性官能基からなる群から選択され、X
1及びX
2は各々、O、S、又はNR
5であり、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である]を含む内部電子供与体を含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記内部電子供与体のR
2及びR
3のうちの少なくとも1つが、3-ペンチル基、2-ペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、又はシクロオクチル基を含む、請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記内部電子供与体のR
1及びR
4が同一であり、メチル基などの直鎖状ヒドロカルビル基である、請求項13又は14に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記内部電子供与体のE
1及びE
2が両方ともフェニル基を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記第2のポリマー相が前記第1のポリマー相の存在下で形成される、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成された成形物品。
【請求項19】
前記成形物品が射出成形物品である、請求項18に記載の成形物品。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成された貯蔵容器。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成された自動車部品。
【請求項22】
ポリマー組成物を生成するためのプロセスであって、
第1の反応器中で第1のポリマー相を形成するステップであって、前記第1のポリマー相がポリプロピレンポリマーを含む、ステップと、
第2の反応器中で前記第1のポリマー相の存在下で第2のポリマー相を形成するステップであって、前記第2のポリマー相がプロピレン及びエチレンランダムコポリマーを含む、ステップとを含み、
前記第1のポリマー相及び前記第2のポリマー相が、内部電子供与体を含むチーグラー・ナッタ触媒の存在下で形成され、前記内部電子供与体が、
【化2】
[式中、R
1及びR
4は各々、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、水素であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、5~15個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、前記ヒドロカルビル基は、分岐状若しくは直鎖状構造を有するか、又は4~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、E
1及びE
2は、同じであるか、又は異なり、任意選択的にヘテロ原子を含有する、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有する不活性官能基からなる群から選択され、X
1及びX
2は各々、O、S、又はNR
5であり、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である]を含み、
前記第1のポリマー相及び前記第2のポリマー相を含む前記ポリマー組成物が、約200ppm未満のC12オリゴマー含有量を有する、プロセス。
【請求項23】
前記内部電子供与体のR
2及びR
3のうちの少なくとも1つが、3-ペンチル基、2-ペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、又はシクロオクチル基を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記第1のポリマー相に含まれる前記ポリプロピレンポリマーがポリプロピレンホモポリマーであり、前記ポリプロピレンホモポリマーが約6%未満、例えば約4%未満のキシレン可溶分含有量を有し、前記第2のポリマー相が約20重量%~約55重量%のエチレンを含み、前記第2のポリマー相が前記第1のポリマー相及び前記第2のポリマー相の総重量に基づいて約10重量%~約45重量%で構成され、前記ポリマー組成物が約10重量%~約50重量%のキシレン可溶分含有量及び約2g/10分~約150g/10分のメルトフローレートを有し、前記ポリマー組成物が以下の式:
総オリゴマー<260
*MFR
0.32
によって表される総オリゴマー含有量を有する、請求項22又は23に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年10月23日に出願された米国仮特許出願第63/104,824号に基づき、その優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現代の消費者の日常生活におけるプラスチックの役割は広範に及んでいる。例えば、ポリプロピレンポリマーなどのポリオレフィンポリマーは、射出成形、ブロー成形、及び熱成形による様々な成形物品の製造において広範に使用されている。しかしながら、ポリプロピレンポリマーの生成のための1つの課題は、低分子量オリゴマー及び揮発性有機化合物(一般にVOCと呼ばれる)の存在である。揮発性有機化合物は、ポリマー製造プロセスの一部として生成される。揮発性有機化合物のレベルが高くなると、生成物の品質、ポリマーを下流で効率的に処理する能力に影響を及ぼす可能性があり、環境規制及び制御を満たすことを困難にする可能性がある。典型的には、これらの不純物は、ポリマーの初期生成後、最終生成物において従来の手段を用いて低減することが困難であるか又は高価である。
【0003】
ポリプロピレンポリマーの1つのタイプは、高い耐衝撃性を有する異相ポリマーである。これらのポリマーは、例えば、ゴム様プロピレン-α-オレフィンコポリマー相とブレンドされたポリプロピレンホモポリマーマトリックスを含み得る。コポリマー相は、耐衝撃性を増加させることを目的としている。プロピレン-α-オレフィンコポリマーは、大部分が非晶質であり得、したがって、ポリマー組成物内にゴム相を形成するエラストマー特性を有する。異相ポリマー内に含まれるオリゴマー及び揮発性有機化合物の存在は、特に問題である。
【0004】
従来、重合プロセス又は触媒を調節することによってポリプロピレンポリマー中のオリゴマー及び揮発性有機化合物を低減するために、様々な取り組みがなされてきた。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,106,138号明細書は、ランダムプロピレン-α-オレフィンコポリマー組成物を生成することに関し、触媒組成物中の1つ以上の外部電子供与体の提供が、VOCの増加をもたらし得る生成されたポリマーの低分子量部分であるオリゴマーレベルに影響を及ぼし得ることを示す。
【0005】
米国特許第8,106,138号明細書は当技術分野において大きな進歩をもたらしたが、更なる改善が依然として必要とされている。本開示は、特に、低減された揮発性有機物含有量及び/又は低減されたオリゴマーレベルを有する異相ポリプロピレンポリマーを生成することに関する。
【発明の概要】
【0006】
概して、本開示は、低減された揮発性有機化合物、例えば低減されたオリゴマー含有量で生成することができる耐衝撃性ポリマーに関する。一態様では、ポリマーは、1つ以上の外部電子供与体と組み合わせて固有の内部電子供与体を含むチーグラー・ナッタ触媒系を使用して生成することができる。より低いオリゴマー含有量に加えて、本開示に従って生成される異相ポリマーはまた、ゴム様ランダムポリプロピレンコポリマーにおいてより均一なコモノマー分布を有し得る。
【0007】
一実施形態では、例えば、本開示は、第2のポリマー相と組み合わされた又はブレンドされた第1のポリマー相を含むポリマー組成物に関する。第1のポリマー相(マトリックス相)は、ポリプロピレンホモポリマーポリマー又はポリプロピレンランダムコポリマーなどのポリプロピレンポリマーを含む。一方、第2のポリマー相(分散相)は、ゴム様特性を有するランダムプロピレンエチレンコポリマーを含む。プロピレンエチレンコポリマーは、一般に約20重量%~約55重量%の量、例えば約30重量%~約45重量%の量のエチレンを含有し得る。第2のポリマー相は、約10重量%~約45重量%の量で存在する。
【0008】
本開示によれば、上記のポリマー組成物は、以下の式によって表される総オリゴマー含有量を有する:
総オリゴマー<260*MFR0.32。
【0009】
本明細書で使用される総オリゴマー含有量は、C12オリゴマー、C15オリゴマー、C18オリゴマー、及びC21オリゴマーの合計を含む。ポリマー組成物の総オリゴマー含有量は、約1100ppm未満、例えば約1000ppm未満、例えば約800ppm未満であり得る。
【0010】
ポリマー組成物はまた、約70ppm未満、例えば約50ppm未満の揮発性有機化合物含有量を有し得る。本明細書で使用される場合、揮発性有機化合物の含有量は、異相ポリマーが生成されてから48時間以内に測定される。
【0011】
本開示のポリプロピレン組成物は、230℃の温度及び2.16kgの荷重で試験した場合、約2g/10分以上、例えば約5g/10分~約500g/10分のメルトフローレートを有し得る。ポリプロピレン組成物の第2の相はまた、約0.85以上、例えば約0.86~約1のケーニヒB(Koenig B value)値を有し得る。
【0012】
一態様では、C12オリゴマー含有量は、最大300g/10分のメルトフローレートで約300ppm未満であり、最大150g/10分のメルトフローレートで約200ppm未満であり、最大25g/10分のメルトフローレートで約100ppm未満である。ポリマー組成物は、80g/10分未満のメルトフローレートで1000ppm未満の総オリゴマー含有量を有し得る。ポリマー組成物は、15ppm未満、例えば12ppm未満のC12VOC含有量を有し得る。
【0013】
ポリマー組成物の第1のポリマー相及び第2のポリマー相中に含まれる総エチレン含有量は、一般に約10重量%~約45重量%、例えば、約15重量%~約35重量%であり得る。第1のポリマー相中のキシレン可溶分含有量は、一般に約6重量%未満、例えば約4重量%未満、例えば約2重量%未満であり得る。
【0014】
本開示のポリマー組成物は、チーグラー・ナッタ触媒の存在下で形成され得る。一態様では、第1のポリマー相は第1の反応器中で形成され得、第2のポリマー相は第1のポリマー相の存在下で第2の反応器中で形成され得る。このようにして、第2のポリマー相は、第1のポリマー相中に分散されたポリマー粒子の形態であり得る。一態様では、本開示に従って使用されるチーグラー・ナッタ触媒は、内部電子供与体を含み得る。残存量の内部電子供与体がポリマー組成物中に留まる可能性がある。内部電子供与体は、一般に、以下の化学構造:
【0015】
【化1】
を有し、式中、R
1及びR
4は各々、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、水素であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、5~15個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、ヒドロカルビル基は、分岐状若しくは直鎖状構造を有するか、又は4~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、E
1及びE
2は、同じであるか、又は異なり、任意選択的にヘテロ原子を含有する、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有する不活性官能基からなる群から選択され、X
1及びX
2は各々、O、S、又はNR
5であり、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0016】
一態様では、上記の内部電子供与体のR2及びR3は、3-ペンチル基、2-ペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、又はシクロオクチル基を含む。
【0017】
一態様では、R1及びR4は同じであり、直鎖状ヒドロカルビル基であり得る。例えば、特定の一実施形態では、R1及びR4は、メチル基である。E1及びE2は、一態様では、両方ともフェニル基を含む。
【0018】
様々な異なるタイプの成形物品を、上記のポリプロピレン組成物から作製することができる。一実施形態では、成形物品は射出成形によって製造することができる。本開示に従って製造することができる成形物品としては、食品包装を含む貯蔵容器などの貯蔵容器が挙げられる。本開示に従って作製された成形物品はまた、家庭用品、自動車内装部品、及び消費財部品を含み得る。
【0019】
ポリマー組成物に加えて、本開示はまた、異相ポリプロピレンポリマーを生成する方法に関する。このプロセスは、第1の反応器中で上記のような第1のポリマー相を形成し、次いで第1のポリマー相の存在下で第2の反応器中で第2のポリマー相を形成することを含む。本開示によれば、異相ポリマーは、上記の内部電子供与体を組み込んだチーグラー・ナッタ触媒の存在下で生成される。加えて、1つ以上の外部電子供与体が存在してもよい。例えば、外部電子供与体は、n-プロピルトリメトキシシランなどのケイ素化合物を含み得る。
【0020】
本開示の他の特色及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【0021】
定義及び試験手順
メルトフローレート(Melt flow rate、MFR)は、本明細書で使用される場合、プロピレン系ポリマーについて2.16kgの重量で230℃にてASTM D 1238試験法に従って測定される。
【0022】
キシレン可溶分(Xylene solubles、XS)は、ポリプロピレンランダムコポリマー樹脂の試料を高温キシレンに溶解し、溶液を25℃に冷却した後に溶液中に残る樹脂の重量パーセントとして画定される。これは、60分又は90分の沈殿時間を使用するASTM D5492-06による重量XS法とも呼ばれ、本明細書では「湿式法」とも呼ばれる。
【0023】
上述のASTM D5492-06法は、キシレン可溶部分を決定するために使用され得る。一般に、手順は、2gの試料を秤量すること、及び24/40の継手を備えた400mLフラスコ中で200mLのo-キシレンに試料を溶解することからなる。フラスコを水冷冷却器に接続し、内容物を撹拌し、窒素(N2)下で加熱還流し、次いで、更に30分間還流を維持する。次いで、溶液を25℃の温度制御された水浴中で60分間冷却して、キシレン不溶性画分の結晶化を可能にする。溶液が冷却され、不溶性画分が溶液から沈殿すると、キシレン不溶部分(XI)からのキシレン可溶性部分(XS)の分離は、25ミクロン濾紙を通して濾過することによって達成される。100mLの濾液を予め秤量したアルミニウムパンに収集し、o-キシレンをこの100mLの濾液から窒素流下で蒸発させる。溶媒が蒸発したら、パン及び内容物を100℃の真空オーブンに30分間又は乾燥するまで入れる。次いで、パンを室温まで冷却し、秤量する。キシレン可溶性部分は、XS(重量%)=[(m3-m2)*2/m1]*100として計算され、式中、m1は使用される試料の元の重量であり、m2は空のアルミニウムパンの重量であり、m3はパン及び残留物の重量である(本明細書及び本開示の他の箇所のアスタリスク*は、識別された用語又は値が乗算されることを示す)。
【0024】
XSはまた、以下のように、フローインジェクションポリマー分析法とも呼ばれるViscotek法に従って測定することもできる:0.4gのポリマーを130℃で60分間撹拌しながら20mlのキシレンに溶解する。次いで、溶液を25℃に冷却し、60分後、不溶性ポリマー画分を濾別する。得られた濾液を、THF移動相を1.0mL/分で流すViscotek ViscoGEL H-100-3078カラムを使用するフローインジェクションポリマー分析によって分析する。カラムを、45℃で動作する光散乱の粘度計及び屈折計検出器を備えたViscotek Model 302 Triple Detector Arrayに結合する。機器較正を、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準で維持する。二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)グレードなどのポリプロピレン(PP)ホモポリマーを参照材料として使用して、Viscotek機器及び試料調製手順が一貫した結果を提供することを確実にする。参照ポリプロピレンホモポリマーの値は、最初に上記のASTM法を用いた試験から得られる。
【0025】
アイゾット衝撃強度は、ASTM D 4101により成形された試験片を用いてASTM D256に従って測定される。
【0026】
曲げ弾性率は、ASTM D790-10の方法Aに従って、ASTM D3641のタイプ1試験片を使用して1.3mm/分で決定され、ASTM D4101に従って成形される。
【0027】
Mw/Mn(「MWD」とも呼ばれる)及びMz/Mwは、以下に記載されるように、ポリプロピレンのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)分析方法に従ってGPCにより測定される。ポリマーは、屈折計検出器及び4つのPLgel Mixed A(20μm)カラム(Polymer Laboratory Inc.)を備えたPL-220シリーズ高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)ユニットで分析する。オーブン温度は150℃に設定され、オートサンプラの高温ゾーン及び温暖ゾーンの温度は、それぞれ135℃及び130℃である。溶媒は、約200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する窒素パージされた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)である。流速は1.0mL/分であり、注入量は200μlであった。2mg/mLの試料濃度は、試料を窒素(N2)パージ及び予熱したTCB(200ppmのBHTを含有)に、穏やかに撹拌しながら160℃で2.5時間溶解させることによって調製する。
【0028】
GPCカラムセットは、20種の狭い分子量分布のポリスチレン(PS)標準を実行することによって較正される。標準の分子量(molecular weight、MW)は580~8,400,000g/molの範囲であり、標準は6つの「カクテル」混合物に含有されていた。各標準混合物は、個々の分子量間に少なくとも10年間の分離を有する。ポリスチレン標準は、1,000,000g/mol以上の分子量については20mLの溶媒中0.005gで、1,000,000g/mol未満の分子量については20mLの溶媒中0.001gで調製される。ポリスチレン標準を撹拌しながら150℃で30分間溶解する。狭い標準混合物が最初に実行され、分解の影響を最小限に抑えるために、分子量が最も高い成分の順で実行する。対数分子量較正は、溶出体積の関数として4次多項式フィットを使用して生成される。同等のポリプロピレン(PP)分子量は、報告されているポリプロピレン(Th.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,and A.M.G.Brands,J.Appl.Polym.Sci.,29,3763-3782(1984))及びポリスチレン(E.P.Otocka,R.J.Roe,N.Y.Hellman,P.M.Muglia,Macromolecules,4,507(1971))のMark-Houwink係数を使用して次の式を使用して計算され、
【0029】
【数1】
式中、Mppは、PP相当のMWであり、MPSは、PS相当のMWであり、logK、並びにPP及びPSのMark-Houwink係数の値は、以下の表1に列挙する。
【0030】
【0031】
異相コポリマーの「コポリマーの部分」又は「ゴムの量」は、不連続相の重量パーセント(重量%)である(Ser Van Der Ven著「Polypropylene and Other Polyolefins」 Elsevier,1990,Chapter 13.2.2を参照)。これは「Fc」と表記する。ゴム相の組成又は「エチレン含有量」は、不連続相中のエチレンの重量パーセント(重量%)である。これは「Ec」と表記する。プロピレン耐衝撃性コポリマーの総重量に基づくエチレンの重量パーセントは、「Et」と表記する。耐衝撃性コポリマー組成物は、耐衝撃性コポリマー中のエチレンの総量(Et(重量%))及びゴム部分中のエチレンの量(Ec(重量%))を測定するフーリエ変換赤外分光(FTIR)法によって測定される。この方法は、第1の反応器成分として純粋なプロピレンホモポリマーを有し、第2の反応器成分として純粋なエチレン-プロピレンゴム(EPR)を有する耐衝撃性コポリマーに使用される。ゴム部分の量(Fc(重量%))は、以下の関係から得られる:
Et=Ec*Fc/100
【0032】
Et、Ec及びFcの当量値は、ゴム部分の量を総エチレン含有量と組み合わせることによって得ることができる。当技術分野で周知のように、ゴムの量は、反応器の物質収支から、又は周知の分析方法を用いて第1及び第2の反応器生成物からのチタン若しくはマグネシウム残留物の測定から得ることができる。耐衝撃性コポリマーの総エチレン含有量は、1.ASTM D 5576-00によるFTIR;2.S.Di Martino及びM.Kelchtermansによる13C-NMR、「Determination of the Composition of Ethylene-Propylene Rubbers Using.sup.13C NMR Spectroscopy」,Journal of Applied Polymer Science,Vol.56,1781-1787 (1995);3.J.C.Randall,「A Review of High Resolution Liquid 13C NMR Characterizations of Ethylene-Based Polymers」,Journal of Macromolecular Science--Reviews of Macromolecular Chemical Physics,Ch.29,201-317 (1989);及び4.参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0215404号明細書に詳述されている方法、又は参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0015316号明細書に詳述されている方法を含む様々な方法によって測定されることができる。
【0033】
ポリプロピレン組成物はまた、13C-NMRによって測定されることができる。試料は、0.025MのCr(AcAc)3を含有するテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約2.7gをNorell 1001-7の10mmのNMR管内の試料0.20gに添加することによって調製される。加熱ブロックを使用して管及びその内容物を150℃に加熱することによって、試料を溶解し、均質化する。各試料は、均質性を確実にするために目視検査される。データは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えたBruker 400MHz分光計を使用して収集する。データは、データファイルごとに500のトランジェント、6秒のパルス反復遅延、90度のフリップ角、及び120℃の試料温度での逆ゲート減結合を使用して取得される。全ての測定は、ロックモードで非スピン試料に対して行われる。試料を、データ取得の前に10分間熱平衡化させる。
【0034】
衝撃コポリマーのNMRデータを、Randallによって記載された方法と同様の方法を使用して、総エチレン(Et)、ゴム相のエチレン含有量(Ec)及び存在するゴムの重量パーセント(Fc)について分析した。この方法は、総PPPトライアッド面積をコポリマー部分について推定された面積と比較することによって、全スペクトルからホモポリマー部分寄与を差し引く。コポリマー部分からのPPP面積寄与は、PPP寄与のないデータに対する2つの一次マルコフモデルの統計的適合に基づいて決定される。ゴム重量分率(Fc)は、ホモポリマーPPPからの相対寄与と総スペクトル面積とを比較することによって決定される。Etの決定は簡単である。次いで、ゴム相のエチレン含有量(Ec)を、Et/Fc*100として決定する。
【0035】
エチレン含有量はトリアッド分布に基づいて計算した。トリアッドの化学シフトの割り当てを表1に示す。
PPP=(F+A-0.5D)/2
PPE=D
EPE=C
EEE=(E-0.5G)/2
PEE=G
PEP=H
エチレン含有量は以下の計算に基づく:
モルP=合計P中心トライアッド
モルE=合計E中心トライアッド
【0036】
【0037】
ケーニヒB(ゴム)値という用語は、ICP中のEPRゴムのポリマー鎖にわたるコモノマー分布の測定値である。B(ゴム)は、EPRポリマー鎖にわたるプロピレンとエチレンとのコポリマー(EPRゴム)のエチレン単位の分布を計算する。B(ゴム)値は0~2の範囲である。1はコモノマー単位の完全にランダムな分布を示す。B(ゴム)値が高いほど、EPRゴム相中のコモノマー分布がより交互になる。B(ゴム)値が低いほど、EPRゴム相中のコモノマー分布はよりクラスター化される。
【0038】
B(ゴム)値は、J.L.Koenigの方法(Spectroscopy of Polymers,2”d Edition,Elsevier,1999)に従って決定される。B(ゴム)は、次のように定義される
【0039】
【数2】
式中、f(PE)は、ゴム中のダイアッドPE部分とEP部分とのモル分の和を表し、これはf(PE+EP)=[PEE]+[EPE]+[EPP]+[PEP]のトリアッドデータから導き出すことができる。
f(E)及びf(F)は、それぞれゴム中のエチレン及びプロピレンのモル分率を表す。f(E)=[EEE]+[EEP]+[PEE]+[PEP]であり、f(P)=[EPE]+[EPP]+[PPE]+[PPP]である。
【0040】
揮発物含有量は、教科書:Pyrolysis and GC in Polymer Analysis,edited by S.A.Liebman and E.J.Levy,Marcel Dekker,Inc.,1985に記載されている静的ヘッドスペース分析によって測定される。ガスクロマトグラフィー/ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC-HS)分析は、自動車産業において広く使用されている。Volkswagen AG社は、プラスチック産業において一般に受け入れられ使用されている規格を開発している。これは、「VW規格PV3341」(又は「PV3341」であって、ドイツ自動車規格試験VDA-277としても知られている)として知られている。PV3341は、2グラムの試料をヘッドスペースバイアルに入れ、120℃で5時間コンディショニングし、次いでバイアルヘッドスペースからのガスをGCに直接注入する試験である。定量は、アセトン標準のピーク面積応答に基づく外部標準技術を用いて達成される。本明細書で使用される場合、VOC測定値は、空気パージなしで異相ポリマーの生成から5時間以内に新しい粉末について測定される。
【0041】
個々の揮発性化学物質は、ガスクロマトグラフィー/ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC-HS)分析によっても測定される。極性分析物及びC5を超える炭化水素を含有するクロロベンゼン中の液体標準を保持時間較正に使用する。BuOH中のアセトンを定量較正に使用する。C12sは、n-C9(含まれない)からn-C12までのピーク領域を合計したものである。
【0042】
オリゴマー含有量は、Shimadzu GC-2010装置を使用するガスクロマトグラフィーによって測定される。0.5gのポリプロピレン粉末を、66ppmのn-ヘキサデカンを含むクロロホルム溶媒である5gの内部標準溶液中に20時間抽出する。オリゴマー含有量は、n-ヘキサデカン当量として計算される。C12、C15、C18及びC21の物質を決定し、分析する。本明細書で使用される場合、総オリゴマー含有量は、C12オリゴマー、C15オリゴマー、C18オリゴマー、及びC21オリゴマーの量の組み合わせである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
当業者は、本考察が例示的な実施形態の説明のみであり、本開示のより広い態様を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0044】
一般に、本開示は、極めて低い含有量の揮発性有機化合物と組み合わせて優れた耐衝撃性を有するポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、一般に、ポリプロピレンマトリックスポリマー内に分散したα-オレフィン及びプロピレンランダムコポリマーを含有する異相ポリマーを含む。エチレン-プロピレンゴムであり得るポリプロピレンランダムコポリマーは、ポリマー組成物全体の耐衝撃性を大幅に向上させるゴム様特性を有する。
【0045】
揮発性有機化合物の含有量が低いポリマー組成物を生成するため、ポリマーは、フタレートを含まないチーグラー・ナッタ触媒の存在下で形成され得る。触媒系は、特定の置換フェニレン芳香族ジエステルを含む内部電子供与体を含み得る。触媒系はまた、一態様ではケイ素化合物を含む1つ以上の外部電子供与体を含み得る。本開示の触媒系は、より高い水素応答をもたらすことができる。加えて、触媒活性は、異相ポリマーの生成中に比較的一定かつ均一なままであり得る。例えば、異相ポリマーは、典型的には、第1のポリマー相が生成され、第2のポリマー相が第1のポリマー相の存在下で生成される2つの異なる相で形成される。異相ポリマーを生成するために複数の反応器を使用してもよい。本開示の触媒系は、各ポリマーの形成中に比較的均一な活性を有することが判明しており、これは、結果として生じるVOC又はポリマーオリゴマーの含有量を低下させると考えられる。
【0046】
加えて、本開示のポリマー組成物はまた、エチレンがプロピレン及びエチレンゴム内に均一に分布している状態で形成され得る。本開示に従って生成されるポリマーはまた、他のチーグラー・ナッタ触媒を用いて生成されるポリマーと比較して、比較的狭い分子量分布を有し得る。
【0047】
異相ポリマー組成物中に含まれる揮発性有機化合物の含有量は、例えば、一般に約100ppm未満、例えば約80ppm未満、例えば約70ppm未満、例えば約60ppm未満、例えば約50ppm未満であり得る。揮発性有機化合物の含有量は、一般に約1ppm超である。揮発性有機化合物の含有量は、ポリマーが生成された後、経時的に変化し得る。
【0048】
揮発性有機化合物の減少は、ポリマー組成物中のオリゴマーの存在にも類似している。特に有利には、本開示のポリマー組成物は、劇的に低減されたレベルのオリゴマー、特にC12オリゴマー、C15オリゴマー、C18オリゴマー、及びC21オリゴマーを含有し得る。例えば、本開示のポリマー組成物は、約300ppm未満の量、例えば約200ppm未満の量、例えば約180ppm未満の量、例えば約160ppm未満の量、例えば約150ppm未満の量、例えば約120ppm未満の量、例えば約110ppm未満の量、例えば約100ppm未満の量、例えば約90ppm未満の量、例えば約80ppm未満の量、例えば約70ppm未満の量、例えば約60ppm未満の量、例えば約50ppm未満の量、例えば約40ppm未満の量の濃度のC12オリゴマーを含有し得る。ポリマー組成物中に存在するC12オリゴマーの量は、一般に約10ppm超であり得る。最終オリゴマー濃度は、例えば、ポリマーの所望の分子量、ポリマーのメルトフローレート及び/又はポリマー組成物のエチレン含有量を含む様々な要因に依存し得る。
【0049】
ポリマー組成物は、一般に約225ppm未満の量、例えば約220ppm未満の量、例えば約200ppm未満の量、例えば約150ppm未満の量、例えば約125ppm未満の量、例えば更には約100ppm未満の量のC15オリゴマーを含有し得る。ポリマー組成物は、一般に約275ppm未満、例えば約250ppm未満、例えば約200ppm未満、例えば約150ppm未満の量のC18オリゴマーを含有し得る。ポリマー組成物は、一般に約280ppm未満、例えば約260ppm未満、例えば約240ppm未満、例えば約220ppm未満、例えば約200ppm未満、例えば約150ppm未満の量のC21オリゴマーを含有し得る。
【0050】
本開示のポリマー組成物は、以下の式によって表される総オリゴマー含有量を有し得る:
総オリゴマー<260*MFR0.32。
【0051】
一実施形態では、総オリゴマー含有量は、以下の式によって表される:
総オリゴマー<240*MFR0.32。
【0052】
一態様では、本開示のポリマー組成物は、一般に約1000ppm未満の総オリゴマー含有量を有し得る。例えば、総オリゴマー含有量は、約950ppm未満、例えば約900ppm未満、例えば約800ppm未満、例えば約700ppm未満、例えば約600ppm未満、例えば約500ppm未満であり得る。総オリゴマー含有量は、一般に約10ppm超、例えば、約100ppm超である。特に有利には、ポリマー組成物は、本開示に従って、低減されたオリゴマー含有量を有する一方で、フタレートを含まないように作製することができる。
【0053】
本開示に従って作製されたポリマー組成物はまた、優れた耐衝撃特性を依然として有しながら、上記の低減されたオリゴマー含有量を有し得る。耐衝撃性は、分子量及びメルトフローレートを変えることによって特定の用途に合わせることができる。その結果、ポリマー組成物は、全ての異なるタイプの成形物品を形成するのによく適している。成形物品は、射出成形、ブロー成形によって製造することができるか、又は熱成形することができる。一実施形態では、例えば、ポリマー組成物を使用して、容器、特に貯蔵容器を形成することができる。容器及び包装に加えて、本開示のポリマー組成物を使用して、多数の多様な成形製品を製造することもできる。例えば、ポリマー組成物は、自動車内装部品などの車両部品を製造するのに特によく適している。ポリマー組成物を使用して、様々な異なるタイプの消費財部品を形成することもできる。
【0054】
一般に、本開示のポリマー組成物は、異相組成物を含む。特に、ポリプロピレン組成物は、第2のポリマー相とブレンドされた第1のポリマー相を含む。少なくとも第2のポリマー相は、制御された量のα-オレフィン、例えばエチレンを含有するポリプロピレンポリマーから形成される。一態様では、第1のポリマー相はポリプロピレンホモポリマーを含む。あるいは、第1のポリマー相は、エチレンを含有するポリプロピレンランダムコポリマーを含んでもよく、エチレンは、ポリマー中に少量、例えば約5重量%未満、例えば約2重量%未満、例えば約1重量%未満で含有される。第1のポリマー相は、一般に、第2のポリマー相よりも多い量でポリマー組成物中に存在し、したがってマトリックスポリマーを形成する。一方、第2のポリマー相は、エラストマー特性又はゴム様特性を有するポリプロピレンコポリマーを含む。
【0055】
第1のポリマー相は、一般に低いキシレン可溶分含有量を有する。例えば、第1のポリマー相は、約6重量%未満、例えば約4重量%未満のキシレン可溶分含有量を有し得る。特に、第1のポリマー相がホモポリマーである場合、第1のポリマー相は、約2.8重量%未満、例えば約2.2重量%未満、例えば約1.8重量%未満、例えば約1.2重量%未満のキシレン可溶分含有量を有し得る。キシレン可溶分含有量は、一般に約0.01重量%超である。
【0056】
上記のように、第2のポリマー相は、プロピレン及びエチレンゴムを含有する。第2のポリマー相は、例えば、プロピレンよりも少ない量でエチレンを含有し得る。一態様では、第2のポリマー相は、約10重量%超の量、例えば約20重量%超の量、例えば約25重量%超の量、例えば約30重量%超の量、例えば約35重量%超の量のエチレンを含有する。第2のポリマー相のエチレン含有量は、一般に約55重量%未満、例えば約50重量%未満、例えば約45重量%未満、例えば約40重量%未満である。
【0057】
本開示によるポリマー組成物は、特にゴム様の第2の相ポリマーのポリマー鎖にわたるコモノマー分布の増加したランダム性を有し得る。例えば、ケーニヒB値は、コモノマー分布の測定値であり、プロピレン-エチレンゴム鎖にわたるポリプロピレン及びエチレンのコポリマーのエチレンユニットの分布を計算する。ポリマー組成物の第2の相ポリマーのケーニヒB値は、一般に約0.85超、例えば約0.86超、例えば約0.87超である。第2の相ポリマーのケーニヒB値は、一般に約1未満、例えば約0.95未満、例えば約0.9未満である。
【0058】
第1の相ポリマーと第2の相ポリマーとの両方に含まれるエチレンの総量は、制御することができる。例えば、本開示のポリマー組成物は、一般に約20重量%未満、例えば約15重量%未満の量、例えば約13重量%未満の量の総エチレン含有量を有し得る。ポリマー組成物中の総エチレン含有量は、一般に約1重量%超、例えば約2重量%超、例えば約3重量%超、例えば約5重量%超である。
【0059】
第1の相ポリマーは、一般にマトリックスを形成し、第2の相ポリマーはマトリックス内で粒子を形成する。本開示のポリマー組成物において、第2の相ポリマー粒子は、比較的小さいサイズを有する。例えば、第2の相ポリマー粒子は、約5ミクロン未満、例えば約3ミクロン未満、例えば約1ミクロン未満の平均粒径(D50)を有し得る。平均粒径は、約0.01ミクロン超、例えば約0.25ミクロン超であり得る。
【0060】
ポリマー組成物中に含有される異なる相の相対量は、様々な要因及び所望の結果に応じて変化し得る。一般に、第2のポリマー相は、ポリプロピレン組成物中に約10重量%超の量、例えば約15重量%超の量、例えば約17重量%超の量、例えば約20重量%超の量、例えば約45重量%超の量、例えば約35重量%超の量で含有され得る。例えば、第2のポリマー相は、約5重量%超の量及び約45重量%未満の量で組成物中に存在することができ、それらの間の1重量%の全ての増分を含む。
【0061】
上記の量は、第1のポリマー相及び第2のポリマー相の総重量に基づく。例えば、第1のポリマー相は、一般に、第1のポリマー相と第2のポリマー相との総重量に基づいて、約55重量%~約90重量%(それらの間の1重量%の全ての増分を含む)の量でポリマー組成物中に含有される。
【0062】
第1の相ポリマー及び第2の相ポリマーは、様々な異なる重合方法及び手順を用いて生成することができる。一実施形態では、チーグラー・ナッタ触媒を使用してポリマー組成物を生成する。例えば、オレフィン重合は、触媒、内部電子供与体、共触媒、及び任意に外部電子供与体を含む触媒系の存在下で生じさせることができる。式CH2=CHRであり、式中、Rは水素又は1~12個の原子を有する炭化水素基である、オレフィンは、ポリマー生成物を形成するのに好適な条件下で触媒系と接触させることができる。共重合は、本開示の異相組成物を生成するために、方法-ステッププロセスで行われてもよい。重合プロセスは、流動床若しくは撹拌床反応器を用いて気相中で、又は不活性炭化水素溶媒若しくは希釈剤若しくは液体モノマーを用いてスラリー相中で、公知の技術を用いて行うことができる。
【0063】
一実施形態では、第1の相ポリマー及び第2の相ポリマーは、連続ポリマー相のプロピレンポリマーが調製される第1の段階と、プロピレンコポリマーが生成される第2段階とを含む2段階プロセスで生成することができる。第1段階の重合は、1つ以上のバルク反応器又は1つ以上の気相反応器で行うことができる。第2段階の重合は、1つ以上の気相反応器で行うことができる。第2段階重合は、典型的には、第1段階重合の直後に行われる。例えば、第1重合段階から回収された重合生成物は、第2重合段階に直接搬送することができる。この点、重合は、逐次重合プロセスに従って行われてもよい。異相のコポリマー組成物が生成される。
【0064】
本開示の一実施形態では、重合は、立体規則性オレフィン重合触媒の存在下で行われる。例えば、触媒はチーグラー・ナッタ触媒であり得る。一態様では、異相ポリマーを生成するために使用される触媒系は、例えば、触媒前駆体と組み合わされる特定のタイプの内部電子供与体を含み得る。次いで、結果生じる塩基触媒成分は、助触媒及び1つ以上の外部電子供与体と組み合わされる。内部電子供与体は、以下の化学式:
【0065】
【化2】
を有し得、式中、R
1及びR
4は各々、1~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和のヒドロカルビル基であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、水素であり、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、6~15個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基を含み、該ヒドロカルビル基は、分岐状若しくは直鎖状構造を有するか、又は4~15個の炭素原子、例えば5~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基を含み、E
1及びE
2は、同じであるか、又は異なり、任意選択的にヘテロ原子を含有する、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有する不活性官能基からなる群から選択され、X
1及びX
2は各々、O、S、アルキル基又はNR
5であり、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐状若しくは非分岐状、飽和若しくは不飽和の、環式、多環式、縮合、又は非環式種、並びにそれらの組み合わせを含む、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基により置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、定期的なヘテロ原子の表の非限定的な例の13、14、15、16、又は17族からの非炭素原子であり得る。ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiを含む。置換ヒドロカルビル基はまた、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基を含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子により置換されたヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用される場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子により置換されたヒドロカルビル基である。ケイ素原子は、炭素鎖中にあってもよく、又はなくてもよい。
【0068】
一実施形態では、上記の内部電子供与体は、触媒組成物を生成する際にマグネシウム部分及びチタン部分と組み合わせることができる。
【0069】
式Iに関して上に示されるような内部電子供与体は、本開示の触媒組成物に関連する利点の多くを提供するR1~R4基を含む。一実施形態では、R1及びR4は、同一又は非常に類似している。一実施形態では、例えば、R1及びR4は、直鎖状ヒドロカルビル基である。例えば、R1及びR4は、C1~C8アルキル基、C2~C8アルケニル基、又はそれらの混合物を含み得る。例えば、一実施形態では、R1及びR4は、両方とも、同じ炭素鎖長を有するか、又は炭素鎖長が約3個以下の炭素原子、例えば約2個以下の炭素原子によって変化するアルキル基を含み得る。
【0070】
一実施形態では、R4はメチル基であり、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、若しくはブチル基であり、又はその逆もある。別の代替的実施形態では、R1及びR4の両方がメチル基であり、R1及びR4の両方がエチル基であり、R1及びR4の両方がプロピル基であり、又はR1及びR4の両方がブチル基である。
【0071】
上記のR1及びR4基と併せて、R2又はR3のうちの少なくとも1つは、R1基及びR4基よりも大きいか又は嵩高い置換基である。R2又はR3の他方は、水素であり得る。R2又はR3に位置する、より大きいか又は嵩高い基は、例えば、分岐状若しくは直鎖状構造を有するヒドロカルビル基であり得るか、又は4~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み得る。シクロアルキル基は、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基又はシクロオクチル基であり得る。R2又はR3のいずれかが、分岐状又は直鎖状構造を有する場合、他方で、R2又はR3は、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などであり得る。例えば、R2又はR3は、3-ペンチル基又は2-ペンチル基であり得る。
【0072】
本開示に従って作製される内部電子供与体の更なる例を以下に示す。以下の構造のそれぞれにおいて、R1~R4は、上記の組み合わせのいずれかの基のいずれかにより置換され得る。
【0073】
【化3】
式中、R6~R15は、同じであっても異なっていてもよい。R6~R15のそれぞれは、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、及び1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシル基、ヘテロ原子、並びにそれらの組み合わせから選択される。
【0074】
本開示に従って作製された内部電子供与体は、触媒前駆体と組み合わせられる。触媒前駆体は、(i)マグネシウム、(ii)周期表4~8族の元素の遷移金属化合物、(iii)ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、並びに/又は(i)及び/若しくは(ii)のアルコキシド、並びに(iv)(i)、(ii)、及び(iii)の組み合わせを含み得る。好適な触媒前駆体の非限定的な例としては、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、及びマグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、及びそれらの組み合わせのアルコキシドが挙げられる。
【0075】
一実施形態では、触媒前駆体の調製は、混合マグネシウム及びチタンアルコキシドのハロゲン化を含む。
【0076】
一実施形態では、触媒前駆体は、マグネシウム部分化合物(MagMo)、混合マグネシウムチタン化合物(MagTi)、又は安息香酸含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)である。一実施形態では、触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。好適なマグネシウム部分の非限定的な例としては、無水塩化マグネシウム及び/又はそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド若しくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、及び/又はカルボキシル化マグネシウムジアルコキシド又はアリールオキシドが挙げられる。一実施形態では、MagMo前駆体は、マグネシウムジ(C1~4)アルコキシドである。更なる実施形態では、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0077】
一実施形態では、触媒前駆体は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MAGTI」)である。「MagTi前駆体」は、式MgdTi(ORe)fXgを有し、式中、Reは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、又はR’が、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、各ORe基は、同じであるか、又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116、又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。前駆体は、その調製に使用される反応混合物からアルコールを除去する制御された沈殿によって調製される。一実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、最も特にクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、四塩化チタン又は三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用される溶液からアルカノールを除去すると固体の前駆体が沈殿し、これは特に望ましい形状及び表面積を有する。更に、得られた前駆体は、粒子サイズが特に均一である。
【0078】
一実施形態では、触媒前駆体は、安息香酸含有塩化マグネシウム材料(「BenMag」)である。本明細書で使用される場合、「安息香酸含有塩化マグネシウム」(「ベンマグ」)は、安息香酸内部電子供与体を含有する触媒(すなわち、ハロゲン化触媒前駆体)であり得る。BenMag材料は、ハロゲン化チタンなどのチタン部分も含み得る。安息香酸内部供与体は不安定であり、触媒及び/又は触媒合成中に他の電子供与体によって置き換えられることができる。好適な安息香酸基の非限定的な例としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸メチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-クロロベンゾエートが挙げられる。一実施形態では、ベンゾエート基はエチルベンゾエートである。一実施形態では、ベンゾグラム触媒前駆体は、安息香酸化合物の存在下で、任意の触媒前駆体(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であり得る。
【0079】
一実施形態では、実質的に球状のMgCl2-nEtOH付加物は、噴霧結晶化プロセスによって形成され得る。このプロセスでは、MgCl2-nROH溶融物(nが1~6である)は、20~80oCの温度で容器の上部に不活性ガスを実施しながら容器内に噴霧される。溶融液滴を、50~20oCの温度で不活性ガスが導入される結晶化領域に移し、溶融液滴を、球形の非凝集固体粒子に結晶化する。球状のMgCl2粒子は、次いで、所望のサイズに分類される。望ましくないサイズの粒子は、リサイクルすることができる。触媒合成のための好ましい実施形態では、球状のMgCl2前駆体は、約15~150マイクロメートル、好ましくは20~100マイクロメートル、最も好ましくは35~85マイクロメートルの間の平均粒径(Malvern d50)である。
【0080】
上記の球状のプロ触媒前駆体は、「噴霧結晶化」触媒前駆体と呼ばれる。一実施形態では、噴霧結晶化された前駆体は、脱アルコール化され得る。例えば、噴霧結晶化処理は、エタノールを除去するために、後処理プロセスを経ることができる。例えば、エタノール/塩化マグネシウム重量比は、約3.5:1未満、例えば約3.1:1~約1.75:1、例えば約2:1~約2.5:1であり得る。
【0081】
一実施形態では、触媒前駆体は、ハロゲン化によって固体触媒に変換される。ハロゲン化は、内部電子供与体の存在下で触媒前駆体をハロゲン化剤と接触させることを含む。ハロゲン化は、触媒前駆体中に存在するマグネシウム部分を、チタン部分(チタンハロゲン化物など)が堆積されているハロゲン化マグネシウム担体へと変換する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ハロゲン化中、内部電子供与体は、(1)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、(2)マグネシウム及びチタン部分の、それぞれのハロゲン化物への変換を促進し、(3)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の微結晶サイズを調節すると考えられる。したがって、内部電子供与体の提供は、立体選択性が向上した触媒組成物をもたらす。
【0082】
一実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(ORe)fXhを有するハロゲン化チタンであり、式中、Re及びXが、上記のように定義され、fは、0~3の整数であり、hは、1~4の整数であり、f+hは、4である。一実施形態では、ハロゲン化剤は、TiCl4である。更なる実施形態では、ハロゲン化は、塩素化又は非塩素化芳香族液体、例えばジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレン、又はそれらの混合物の存在下で行われる。
【0083】
上記のように、触媒組成物は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体の組み合わせを含み得る。触媒組成物は、触媒前駆体及び内部電子供与体を内部電子供与体が組み込まれたマグネシウム部分とチタン部分との組み合わせに変換する前述のハロゲン化手順によって、生成される。触媒組成物が形成される触媒前駆体は、マグネシウム部分前駆体、混合マグネシウム/チタン前駆体、安息香酸含有塩化マグネシウム前駆体、又は球状前駆体であり得る。
【0084】
本開示はまた、様々な他の触媒成分と組み合わせた上記の触媒組成物を含む触媒系を対象とする。例えば、一実施形態では、触媒組成物は、助触媒を含む。本明細書で使用される場合、「助触媒」とは、プロ触媒を活性重合触媒に変換することができる物質である。共触媒は、塩化物、アルキル、又はアルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム、及びそれらの組み合わせのアリールなどのハロゲン化物を含み得る。一実施形態では、助触媒は、式R3Alで表されるヒドロカルビルアルミニウム助触媒であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリド基であり、少なくとも1つのRは、ヒドロカルビル基であり、2つ又は3つのR基は、環式基に接合され、ヘテロ環式構造を形成することができ、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビル基である各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり得、そのようなヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであり得、すなわち、ラジカルは、アルキル、アリール、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適なラジカルの非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-デシルである。
【0085】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、次のとおりである:トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジ-n-ヘキシルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、二塩化n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウム。一実施形態では、助触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、及び塩化ジ-n-ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0086】
一実施形態では、共触媒は、式RnAlX3-nで表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中、n=1又は2であり、Rはアルキルであり、Xはハロゲン化物又はアルコキシドである。
【0087】
一実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウム対チタンのモル比は、約5:1~約1000:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1である。別の実施形態では、アルミニウム対チタンのモル比は、約45:1である。
【0088】
触媒系は、1つ以上の外部電子供与体を含み得る。外部電子供与体は、例えば、1つ以上の選択性制御剤及び/又は1つ以上の活性制限剤であり得る。
【0089】
一実施形態では、触媒組成物は、選択性制御剤を含む。本明細書で使用される場合、「選択性制御剤」は、プロ触媒形成とは独立して添加され、電子を金属原子に供与することができる少なくとも1つの官能基を含有する化合物である。一実施形態では、選択性制御剤供与体は、次のうちの1つ以上から選択され得る:アルコキシシラン、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホネート、スルホン、及び/又はスルホキシド。
【0090】
一実施形態では、触媒組成物は、活性制限剤(activity limiting agent、ALA)を含む。本明細書で使用される場合、「活性制限剤」(「ALA」)とは、高温(すなわち、約85℃超の温度)で触媒活性を低下させる材料である。ALAは、重合反応器の不具合を抑制又はそうでなければ防止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器温度が上昇するにつれて増加する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点温度近くで高い活性を維持する。発熱重合反応によって発生した熱は、凝集物を形成するポリマー粒子を生じさせる可能性があり、最終的にポリマー生成プロセスの継続を中断することにつながる場合がある。ALAは、高温で触媒活性を低下させ、それによって、反応器の不具合を防止し、粒子の凝集を低減(又は防止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0091】
活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、ポリ(アルケングリコール)エステル、ジオールエステル、及びそれらの組み合わせであり得る。カルボン酸エステルは、脂肪族又は芳香族、モノ又はポリカルボン酸エステルであり得る。好適なモノカルボン酸エステルの非限定的な例としては、エチル及びメチルベンゾエート、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸メチル、p-エトキシ安息香酸エチル、アクリル酸エチル、メチルメタクリレート、酢酸エチル、p-クロロ安息香酸エチル、ヘキシルp-アミノベンゾエート、イソプロピルナフテネート、n-アミルトルエート、シクロヘキサノ酸エチル、プロピルピバレート、及び吉草酸ペンチルが挙げられる。
【0092】
一実施形態では、触媒システムは、混合外部電子供与体を含む。混合外部電子供与体は、次の成分のうちの少なくとも2つを含む:(1)第1の選択性制御剤、(2)第2の選択性制御剤、及び(3)活性制限剤。
【0093】
一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、別々に反応器内に添加され得る。別の実施形態では、選択性制御剤及び活性制限剤は、事前に一緒に混合され、次いで混合物として反応器内に添加され得る。混合物では、2つ以上の選択性制御剤又は2つ以上の活性制限剤を使用することができる。一実施形態では、混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びポリ(エチレングリコール)ラウレート、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル及びポリ(エチレングリコール)ジオレエート、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、n-プロピルトリメトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、ジメチルジメトキシシラン及びメチルシクロヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジシクロペンチルジメトキシシラン及びn-プロピルトリエトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、並びにジシクロペンチルジメトキシシラン及びテトラエトキシシラン及びミリスチン酸イソプロピル、並びにそれらの組み合わせである。
【0094】
一実施形態では、触媒組成物は、前述の活性制限剤のいずれかと組み合わせて、前述の外部電子供与体のいずれかを含む。
【0095】
上記の触媒系は、本開示の異相ポリマー組成物を生成するのに特によく適していることが分かった。
【0096】
第1の相ポリマー及び第2の相ポリマーに加えて、本開示のポリプロピレン組成物は、様々な他の添加剤及び成分を含有し得る。例えば、ポリプロピレン組成物は、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロック、UV安定剤、熱安定剤(例えばDSTDP)、着色剤/着色料などを含有し得る。一実施形態では、ポリマー組成物は、立体障害フェノール系酸化防止剤及びホスファイト酸化防止剤などの1つ又は2つの酸化防止剤を含有し得る。ポリマー組成物はまた、ステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト、又は酸化亜鉛などの酸捕捉剤を含有し得る。添加剤の各々は、一般に約3重量%未満の量、例えば約2重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.5重量%未満の量、一般に約0.001重量%超の量でポリマー組成物中に存在してもよい。
【0097】
一実施形態では、ポリマー組成物は、α核形成剤などの核形成剤を含有し得る。核形成剤は、一般に約0.001重量%超の量、一般に約1重量%未満の量、例えば約0.5重量%未満の量、例えば約0.3重量%未満の量で存在してもよい。
【0098】
本開示に従って生成されたポリマー組成物は、優れた耐衝撃特性を有する。しかしながら、ポリマーの耐衝撃性は種々の要因に依存する。例えば、約100g/10分~約150g/10分のメルトフローレートを有するポリマー組成物の場合、ポリマー組成物は、23℃で約30J/m超、例えば約35J/m超、一般に約100J/m未満のアイゾット衝撃強度を有し得る。約40g/10分~約90g/10分のメルトフローレートを有するポリマー組成物の場合、ポリマー組成物は、約40J/m超、例えば約50J/m超、例えば約60J/m超、一般に約1000J/m未満のアイゾット耐衝撃性を有し得る。約2g/10分~約30g/10分のメルトフローレートを有するポリマー組成物の場合、ポリマー組成物は、約100J/m超、例えば約130J/m超、例えば約160J/m超、例えば約200J/m超のアイゾット耐衝撃性を有し得る。一態様では、ポリマー組成物は、約25g/10分未満のメルトフローレートを有し得、約300J/m超、例えば約35J/m超、例えば約400J/m超、例えば約450J/m超のアイゾット耐衝撃性を有し得る。
【0099】
本開示に従って生成されたポリマー組成物は、約800MPa超~約2000MPa(それらの間の1MPaの全ての増分を含む)の曲げ弾性率を有し得る。例えば、曲げ弾性率は、約1000MPa超、一般に約1500MPa未満であり得る。
【0100】
本開示のポリプロピレン組成物の物理的特性のために、組成物は、成形物品を製造するのによく適している。ポリプロピレン組成物は、例えば、射出成形、押出成形、及び圧縮成形用途に使用することができる。
【0101】
ポリマー組成物は、貯蔵容器を製造するのに特によく適している。貯蔵容器は、例えば、食品包装であってもよい。
【0102】
食品容器に加えて、様々な他の貯蔵容器を本開示に従って作製することができる。例えば、本開示のポリマー組成物を使用して、より大きな貯蔵容器を作製することができる。
【0103】
様々な容器に加えて、優れた特性のバランスから利益を得る任意の適切な成形物品を本開示に従って作製することができる。例えば、一実施形態では、本開示のポリマー組成物を使用して、自動車内装部品などの車両部品を製造することができる。加えて、本開示のポリマー組成物を使用して、消費財部品又は家庭用品を製造することができる。
【0104】
本開示は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。
【0105】
実施例
異相ポリプロピレンコポリマー試料を本開示に従って生成し、様々な特性について試験した。異相コポリマーは、一般に、上記の触媒と共に上記のプロセスを使用して作製した。触媒系は、R1及びR4がメチル基であり、R3が水素であり、R2がシクロアルキル基である上記式IIによる内部電子供与体を含んでいた。触媒系はまた、助触媒としてのトリエチルアルミニウムと、吉草酸ペンチルとNPTMSとの組み合わせを含む外部供与体とを含んでいた。触媒はフタレート不含であった。試料は、マトリックスポリマーを第1の気相反応器で作製し、次いで第1の反応器の内容物を第2の気相反応器に通す二重反応器構成で作製した。エチレンをコモノマーとして使用した。第1のポリマー相はポリプロピレンホモポリマーを含有していた。
【0106】
試料番号1~4を、本開示に従って作製した。試料番号5~8は、W.R.Grace社によって商品名CONSISTA D7600触媒で販売されている市販の触媒を使用して作製した。
【0107】
全ての試料は、UNIPOL(登録商標)PPプロセスを使用して作製した。
【0108】
試験片に射出成形されるポリマーペレット試料を製造した。500ppmのペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)及び1000ppm又は750ppmのトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトを含む添加剤パッケージを試料に添加した。酸捕捉剤も試料に添加した。試験片をASTM試験D4101に従って射出成形して、flex-mod及びアイゾット試験用の試験片を製造した。
【0109】
以下の表では、MFRは、安定剤パッケージを反応器粉末試料に添加することによって試験した;例えば、0.5%のCyanox 2246、Irgafos 168、及びZnOの2:2:1混合物。
【0110】
以下の結果を得た。
【0111】
【0112】
上記のように、本開示に従って作製されたポリマー組成物は、VOC含有量の劇的な減少を示した。本発明に対するこれら及び他の修正並びに変形は、添付の特許請求の範囲により詳細に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全部又は一部において相互に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が単なる例示によるものであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【国際調査報告】