(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】透明材料を含む三次元物体の積層造形
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20231102BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231102BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231102BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20231102BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20231102BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20231102BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08L101/02
B33Y70/00
B33Y10/00
B29C64/112
B33Y40/20
C08K5/36
C08F2/44 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524736
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 IL2021051252
(87)【国際公開番号】W WO2022085006
(87)【国際公開日】2022-04-28
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノ、レフ
(72)【発明者】
【氏名】ポクラス、マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】シュペイザー、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ペリ、ダニ
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AB04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4J002BG041
4J002EV006
4J002FD206
4J002GT00
4J011PA45
4J011QA03
4J011QA18
4J011QA25
4J011QA27
4J011QA45
4J011QA46
4J011QB19
4J011QB23
4J011QB24
4J011SA84
4J011WA07
(57)【要約】
透明材料を用いた三次元物体の積層造形に使用可能であり、LED硬化光源を利用する積層造形システムで有利に使用可能であり得る硬化性配合物が提供される。また、その硬化性配合物を用いた積層造形プロセス及びその積層造形プロセスによって製造される物体が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の硬化性材料と、少なくとも1つのチオエーテルと、任意に1つ以上の非硬化性材料と、を含む硬化性配合物。
【請求項2】
硬化性材料の総量が、前記硬化性配合物の総重量に対して85重量%~95重量%の範囲である、請求項1に記載の硬化性配合物。
【請求項3】
硬化時に、70%より高い又は75%より高い光透過率を有することを特徴とする材料をもたらす透明配合物である、請求項1又は請求項2に記載の硬化性配合物。
【請求項4】
光硬化性配合物であり、光開始剤をさらに含む、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項5】
紫外線硬化性配合物であり、紫外線を吸収すると活性化される光開始剤をさらに含む、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項6】
前記光開始剤が、380nmより長い波長の光を吸収すると活性化される、請求項5に記載の硬化性配合物。
【請求項7】
前記光開始剤の総量が、前記硬化性配合物の総重量に対して3重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2重量%以下である、請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項8】
前記光開始剤が、ホスフィンオキシド型光開始剤を含むか、又はホスフィンオキシド型光開始剤からなる、請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項9】
前記チオエーテルが、少なくとも8個、少なくとも10個の炭素原子の長さの少なくとも1つの炭化水素鎖を含み、好ましくは少なくとも2つの前記炭化水素鎖を含む、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項10】
前記チオエーテルが室温で液体である、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項11】
前記チオエーテルが、少なくとも1つのカルボキシレート基又はチオカルボキシレート基をさらに含む、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項12】
前記チオエーテルが、下記式Aで表され、
【化1】
上記式A中、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して0又は1であり、ただし、c及びfの少なくとも1つは1であり、
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、例えば、1~6個又は1~4個の炭素原子の長さのアルキレン鎖であり、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、a-Y
1-C(=Y
2)-基又は-C(=Y
2)-Y
1基であり、ここで、Y
1及びY
2のそれぞれは、独立して、O又はSであり、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、少なくとも8個の炭素を有する炭化水素鎖である、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項13】
前記チオエーテルが、少なくとも1つの硬化性基をさらに含む、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項14】
前記硬化性基が光硬化性基である、請求項13に記載の硬化性配合物。
【請求項15】
前記チオエーテルが、前記硬化性基によって置換又は停止された、少なくとも8個の炭素原子の長さである少なくとも1つの炭化水素鎖を含む、請求項13又は請求項14に記載の硬化性配合物。
【請求項16】
前記チオエーテルの量が、前記硬化性配合物の総重量に対して1重量%~7重量%の範囲、又は1重量%~5重量%の範囲である、請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項17】
前記1つ以上の硬化性材料が、1つ以上の単官能性硬化性材料及び1つ以上の多官能性硬化性材料を含む、請求項1から請求項16までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項18】
前記1つ以上の硬化性材料が、500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの脂肪族又は脂環式の単官能性(メタ)アクリレート材料を、前記硬化性配合物の総重量に対して10重量%~60重量%又は40重量%~60重量%の総量で含む、請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項19】
前記1つ以上の硬化性材料が、少なくとも1つの芳香族の単官能性(メタ)アクリレート材料を、前記硬化性配合物の総重量に対して5重量%~15重量%又は8重量%~15重量%の総量で含む、請求項1から請求項18までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項20】
少なくとも1種の多官能性(メタ)アクリレート材料を、前記硬化性配合物の総重量に対して30重量%~60重量%又は40重量%~60重量%の総量で含む、請求項1から請求項19までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項21】
前記硬化性材料が、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートを含む、請求項1から請求項20までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項22】
1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする前記少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートの総量が、前記硬化性配合物の総重量に対して15重量%~40重量%の範囲、又は15重量%~35重量%の範囲、又は15重量%~30重量%の範囲である、請求項21に記載の硬化性配合物。
【請求項23】
前記硬化性材料が、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料を含む、請求項1から請求項22までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項24】
前記硬化性材料が、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートを含む、請求項1から請求項23までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項25】
100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする前記多官能性(メタ)アクリレートの量が、前記硬化性配合物の総重量に対して3重量%~15重量%の範囲、又は5重量%~15重量%の範囲、又は5重量%~10重量%の範囲である、請求項24に記載の硬化性配合物。
【請求項26】
100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする前記多官能性(メタ)アクリレートが、イソシアヌレート含有材料である、請求項24又は請求項25に記載の硬化性配合物。
【請求項27】
100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする前記多官能性(メタ)アクリレートが、脂肪族又は脂環式材料である、請求項24又は請求項25に記載の硬化性配合物。
【請求項28】
100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする前記多官能性(メタ)アクリレートが、550グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする、請求項24又は請求項25に記載の硬化性配合物。
【請求項29】
界面活性剤をさらに含む、請求項1から請求項28までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項30】
前記界面活性剤の量が、前記硬化性配合物の総重量に対して0.05重量%未満である、請求項29に記載の硬化性配合物。
【請求項31】
青色染料又は青色顔料をさらに含む、請求項1から請求項30までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項32】
前記青色染料又は前記青色顔料の量が、前記硬化性配合物の総重量に対して1×10
-4重量%未満である、請求項31に記載の硬化性配合物。
【請求項33】
硫黄含有チオール化合物を含まない、請求項1から請求項32までのいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項34】
光硬化性配合物であって、
前記光硬化性配合物の総重量に対して3重量%以下又は2重量%以下の総量の少なくとも1つの光開始剤と、
前記光硬化性配合物の総重量に対して50重量%~70重量%の総量であり、500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレート材料と、
前記光硬化性配合物の総重量に対して30重量%~50重量%の総量の少なくとも2つの多官能性(メタ)アクリル材料であって、
前記多官能性(メタ)アクリル材料の少なくとも1つは、100℃より高い、又は140℃より高いTgを有することを特徴とし、15%より低い体積収縮及び/又は高い硬化速度を特徴とし、かつ/又はシアヌレート部分を含み、
前記多官能性(メタ)アクリル材料の別の少なくとも1つは、中粘度~高粘度であり、1000グラム/モルより大きい分子量を有し、かつ、20℃より低い、0℃より低い、又は-20℃より低いTgを有することを特徴とするエトキシル化多官能性(メタ)アクリレート材料である、多官能性(メタ)アクリル材料と、
を含む、光硬化性配合物。
【請求項35】
100℃より高い、140℃より高い、又は250℃より高いTgを特徴とする前記多官能性(メタ)アクリル材料の量が、前記光硬化性配合物の総重量に対して1重量%~5重量%の範囲である、請求項34に記載の光硬化性配合物。
【請求項36】
中粘度~高粘度であり、及び20℃より低い、0℃より低い、又は-20℃より低いTgを有することを特徴とする前記エトキシル化多官能性(メタ)アクリレート材料の量が、前記光硬化性配合物の総重量に対して3重量%~10重量%の範囲又は3重量%~8重量%の範囲である、請求項34又は請求項35に記載の光硬化性配合物。
【請求項37】
前記少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレート材料が、少なくとも1つの脂肪族又は脂環式(非芳香族)単官能性(メタ)アクリレート材料を、前記光硬化性配合物の総重量に対して50重量%~60重量%の量で含み、かつ少なくとも1つの芳香族単官能性(メタ)アクリレート材料を、前記光硬化性配合物の総重量に対して5重量%~10重量%の量で含む、請求項34から請求項36までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項38】
前記多官能性(メタ)アクリレート材料が、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートをさらに含む、請求項34から請求項37までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項39】
1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする前記少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートの総量が、前記光硬化性配合物の総重量に対して10重量%~20重量%の範囲である、請求項38に記載の光硬化性配合物。
【請求項40】
前記多官能性(メタ)アクリレート材料が、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料をさらに含む、請求項34から請求項39までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項41】
前記少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料が芳香族である、請求項40に記載の光硬化性配合物。
【請求項42】
前記少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料の量が、前記光硬化性配合物の総重量に対して10重量%~20重量%の範囲である、請求項40又は請求項41に記載の光硬化性配合物。
【請求項43】
前記少なくとも1つの光開始剤が、α-置換ケトン型光開始剤を含まない、請求項34から請求項42までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項44】
前記少なくとも1つの光開始剤が、ホスフィンオキシド型光開始剤を含むか、又はホスフィンオキシド型光開始剤からなる、請求項34から請求項42までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項45】
前記ホスフィンオキシド型光開始剤が、少なくとも380nmの波長の放射線によって活性化される、請求項34から請求項44までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項46】
界面活性剤をさらに含む、請求項34から請求項45までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項47】
前記界面活性剤の量が、前記光硬化性配合物の総重量に対して0.05重量%未満である、請求項46に記載の光硬化性配合物。
【請求項48】
青色染料又は青色顔料をさらに含む、請求項34から請求項47までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項49】
前記青色染料又は前記青色顔料の量が、前記光硬化性配合物の総重量に対して1×10
-4重量%未満である、請求項48に記載の光硬化性配合物。
【請求項50】
前記透明材料が、少なくとも70%の透過率、及び8未満又は6未満の黄色度指数の少なくとも一方を有することを特徴とする、請求項1から請求項49までのいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項51】
透明材料を少なくとも一部に含む三次元の物体を積層造形する方法であって、
前記物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を順次形成することによって前記物体を形成することを含み、
少なくとも数個の前記層の各々の前記形成が、少なくとも1つの配合物を吐出することと、前記吐出された配合物を硬化条件に曝露することによって硬化したモデリング材を形成することと、を含み、
前記少なくとも1つの配合物が、請求項1から請求項49までのいずれか一項にて定義される通りの硬化性配合物又は光硬化性配合物である、
方法。
【請求項52】
前記硬化条件が電磁波照射を含み、前記電磁波照射がLED光源からのものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記硬化条件が紫外線照射を含む、請求項51又は請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記紫外線照射の線量が層当たり0.1J/cm
2より高い、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも数個の前記層の前記形成が、20μm未満の層厚で行われ、前記配合物が、請求項1から請求項33までのいずれか一項に定義されたものである、請求項51から請求項54までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも数個の前記層の前記形成が、25μmより大きい又は30μmより大きい層厚で行われ、前記配合物が、請求項34から請求項45までのいずれか一項に定義されたものである、請求項51から請求項53までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記硬化条件に曝露することに続いて、前記光開始剤の残留量の分解を促進する条件(光退色)に前記物体を曝露することをさらに含む、請求項51から請求項56までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年10月21日に出願された米国仮特許出願第63/094,801号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願はまた、2020年10月21日に出願された米国仮特許出願第63/094,712号の優先権の利益を主張する、「METHOD AND SYSTEM FOR TREATING ADDITIVE MANUFACTURED OBJECT」(代理人整理番号第89346号)と題する、同時に出願、係属、及び譲渡されたPCT出願に関連し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、積層造形に関し、限定的ではないが、より具体的には、少なくとも一部に透明材料を含む三次元物体の積層造形に使用可能な配合物、及びそのような配合物を使用する三次元物体の積層造形に関する。
【背景技術】
【0004】
積層造形(Additive Manufacturing:AM)は、積層形成工程を介してコンピュータのデータから直接任意の形状の構造を製造することを可能にする技術である。任意のAMシステムの基本的な動作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスすることと、その結果を二次元位置データに変換することと、そのデータを三次元構造を層毎に製造する制御機器に供給することとからなる。
【0005】
積層造形は、3Dインクジェット印刷、電子ビーム溶融、ステレオリソグラフィ、選択的レーザ焼結、積層体製造、溶融堆積モデリングなどの三次元(3D)印刷を含む、製造方法に対する多くの異なるアプローチを伴う。
【0006】
一部の3D印刷プロセス、例えば3Dインクジェット印刷は、造形材の層ごとのインクジェット堆積によって実行されている。このように、造形材は、ノズルセットを有する吐出ヘッドから吐出され、支持構造上に層を堆積させる。次いで、造形材に応じて、層を硬化又は固化させることができる。硬化は、適切な条件下で曝露することによるものであってもよく、任意選択で、適切な装置を使用することによるものであってもよい。
【0007】
造形材は、所望の物体を製造するために選択的に吐出される未硬化モデル材(「未硬化モデリング材」又は「モデリング材配合物」とも呼ばれる)を含み、また、造形中に物体の特定の領域に一時的な支持を与え、後続の物体層の適切な垂直配置を確実にする未硬化支持材(「未硬化支持材」又は「支持材配合物」とも呼ばれる)を含んでもよい。支持構造は、物体が完成した後に除去されるように構成される。
【0008】
いくつかの公知のインクジェット印刷システムでは、未硬化モデル材は、噴射後に紫外線(UV)光に曝露されると硬化(cured、hardened)又は固化される光重合性又は光硬化性材料である。未硬化モデル材は、硬化後に、造形される三次元物体の造形及び取り扱いを可能にする機械的特性を有する固体材料を与える組成を有する光重合性材料配合物であり得る。材料配合物は、反応性(硬化性)成分及び光開始剤を含み得る。光開始剤は、モデル材を形成するために適用されるのと同じUV光で硬化することによって、未硬化の支持材の少なくとも部分的な固化(硬化)を可能にし得る。固化された材料は、剛性であってもよく、又は弾性特性を有してもよい。
【0009】
支持材は、その支持体から物体を迅速かつ容易に除去することを可能にするように配合される。支持材は、水溶性であり、及び/又は液体溶液、例えば、水、アルカリ性又は酸性の水溶液にさらされると膨潤及び/又は分解することができるポリマーであってもよい。支持材配合物はまた、モデル材配合物に使用されるものと同様の反応性(硬化性)成分及び光開始剤を含む場合がある。
【0010】
3Dインクジェット印刷システムで利用される市販の印刷ヘッドのほとんどに適合するために、未硬化の造形材は、以下の特性を特徴とすることが知られている。
・作動(例えば、噴射)温度での比較的低い粘度(例えば、最大50cps、又は最大35cps、好ましくは8~25cpsのブルックフィールド粘度)
・約25~約55ダイン/cm、好ましくは約25~約40ダイン/cmの表面張力
・硬化条件に曝露されたときに、1分以下、好ましくは20秒以下の噴射層の迅速な固化を可能にする、ニュートン液体挙動及び選択された硬化条件に対する高い反応性
【0011】
最終的な物体を形成する硬化したモデリング材は、通常、その使用性を保証するために、室温よりも高い熱変形温度(heat deflection temperature:HDT)を示す。望ましくは、硬化したモデリング材は、少なくとも35℃のHDTを示す。変化する環境下で物体が安定であるためには、より高いHDTが望ましいことが知られている。ほとんどの場合、物体は、例えば50J/mよりも高い、又は60J/mよりも高い、比較的高いノッチ付きアイゾット衝撃を示すことも望ましい。
【0012】
様々な三次元印刷技術が存在し、それらの三次元印刷技術は、例えば、すべて同じ譲受人による米国特許第6,259,962号明細書、第6,569,373号明細書、第6,658,314号明細書、第6,850,334号明細書、第6,863,859号明細書、第7,183,335号明細書、第7,209,797号明細書、第7,225,045号明細書、第7,300,619号明細書、第7,500,846号明細書、第7,991,498号明細書及び第9,031,680号明細書並びに米国特許出願公開第20160339643号明細書に開示されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
三次元インクジェット印刷を含むいくつかの積層造形プロセスでは、「マルチマテリアル」AMプロセスとも呼ばれる、2つ以上のモデリング材を使用した物体の積層形成が可能である。例えば、本譲受人の米国特許出願公開第2010/0191360号明細書は、複数の印刷ヘッドを有する固体自由造形(solid freeform fabrication)装置と、複数の造形材を製造装置に供給するように構成された造形材供給装置と、製造及び供給装置を制御するように構成された制御ユニットとを備えるシステムを開示している。このシステムはいくつかの動作モードを有する。1つのモードでは、すべての印刷ヘッドが、製造装置の単一の造形走査サイクル中に動作する。別のモードでは、印刷ヘッドの1つ又は複数は、単一の造形走査サイクル中又はその一部の間は動作しない。
【0014】
Polyjet(登録商標)(Stratasys(登録商標)Ltd、イスラエル)などの3Dインクジェット印刷プロセスでは、造形材は、1つ以上のインクジェットプリントヘッド及び/又はノズルから選択的に噴射され、ソフトウェアファイルによって定められた所定の構成に従って連続層で造形トレイの上に堆積される。
【0015】
本譲受人による米国特許第9,227,365号明細書は、複数の層と、コア領域を構成する層状コアと、エンベロープ領域を構成する層状シェルとから構築された、シェル状物体の固体自由造形のための方法及びシステムを開示している。これは、デジタルABS(登録商標)又はD-ABS(登録商標)とも呼ばれる。
【0016】
Polyjet(登録商標)技術は、各ボクセル(体積ピクセル)の位置及び構成の制御を可能にし、これにより、設計の汎用性が非常に高くなり、マルチマテリアル構造のデジタルプログラミングが可能になる。Polyjet(登録商標)技術のその他の利点は、最大14マイクロメートル(μm)の層の高さという非常に高い印刷解像度と、単一の物体に複数の材料を同時に印刷する能力である。このマルチマテリアル3D印刷プロセスは、異なる剛性、性能、色又は透明性を有する要素から構成される複雑な部品や構造物の製造に役立つことが多い。ボクセルレベルでプログラムされた新しい範囲の材料は、わずかな出発材料のみを使用して、PolyJet(登録商標)印刷プロセスによって作成することができる。
【0017】
本譲受人による国際特許出願公開第2013/128452号パンフレットは、マルチマテリアル手法を開示しており、印刷トレイで相互混合するカチオン重合可能な系及び/又はラジカル重合可能な系の2つの成分の別々の噴射を含み、噴射前に2つの成分を予備混合するのと同様の重合反応をもたらすが、インクジェットヘッドのノズルプレートでのそれらの早期重合を防止するものである。
【0018】
現在のPolyJet(登録商標)技術は、例えば、硬質及び硬い材料(例えば、Vero(登録商標)ファミリー材料として市販されている硬化性配合物)から軟質及び可撓性材料(例えば、Tango(登録商標)及びAgilus(登録商標)ファミリーとして市販されている硬化性配合物)まで、様々な特性を特徴とするポリマー材料をもたらす様々な硬化性(例えば、重合性)材料を使用する機能を提供し、また、2つの出発材料(例えば、RGD515(登録商標)及びRGD535/531(登録商標))から作られるマルチマテリアルを含むデジタルABSを使用して製造された物体を含み、エンジニアリングプラスチックの特性をシミュレートする機能を提供する。現在実用化されているPolyJet(登録商標)材料の大部分は、放射、主にUV放射及び/又は熱に曝露されると硬化又は固化する硬化性材料であり、最も実用化されている材料はアクリル系材料である。
【0019】
3Dインクジェット印刷で使用可能であるとして知られているいくつかの光硬化性(光重合性)モデリング材配合物は、硬化したときに透明材料をもたらすように設計されている。
【0020】
米国特許第6,242,149号明細書には、記録インク、画像記録用の光硬化性マイクロカプセル内に封入された材料、及び感光性コーティング組成物などに使用される速硬化性感光性組成物が記載されている。この組成物は、ラジカル重合性不飽和化合物、光重合開始剤、及びチオール含有化合物を含み、それにより、速硬化性感光性組成物は低曝露エネルギーで十分に硬化させることができる。
【0021】
米国特許出願公開第2010/0140850号明細書は、AMで使用可能な配合物を教示しているが、それは硬化又は固化前は無色であり、硬化すると、黄色の色相が低減した材料をもたらす。この特許出願は、UV硬化性アクリル系組成物が典型的には特徴的な黄色の色相を有することを教示し、黄色の色相の原因は完全には理解されていないが、光開始剤の種類及び濃度が、得られる材料の色に影響を及ぼすことが判明していることを教示している。この特許出願は、1つ以上の(メタ)アクリル材料及び光開始剤に加えて、β-メルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート及び/又はアルカンチオールなどの硫黄含有添加剤を含む配合物の使用を示唆している。
【0022】
本譲受人による国際公開第2020/065654号パンフレットは、積層造形プロセスを通して部分的に固化した状態又は固化していない状態に維持される少なくとも1つのモデル材を用いて物体を製造するためのシステム及び方法を記載している。このシステム及び方法は、物体が二段階硬化プロセスで固化するようなものであり、これは、未焼結体の物体(green body object)を製造するためのAMプロセス中の部分的な固化と、それに続く固化プロセスを完了するためのAMプロセスの終了時の後処理(例えば、熱処理)を含み得る。この仮特許出願は、外層を形成するための配合物、及び内側コアを形成するための低減された量の光開始剤を含む同様の配合物を使用して、透明材料をもたらすためにこのプロセスを利用した実施形態を記載している。
【0023】
2020年4月1日に出願されたPCT/IL2020/050396は、3Dインクジェット印刷などの積層造形に使用可能であり、硬化すると、黄色の色相が低減又は無効化され、透過率が改善された透明で無色の材料をもたらすモデリング材配合物を記載している。開示された配合物は、光硬化性配合物であり、単官能性芳香族硬化性材料、及びAMプロセスの作業温度より高い、例えば80℃より高いTgを特徴とする多官能性材料を欠いており、配合物の総重量の1重量%以下の総量の光開始剤を含む。開示された配合物のいくつかは、β-メルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート、及びアルカンチオールなどの硫黄含有化合物を含み得る。
【0024】
電磁波照射のための光源としての発光ダイオード(LED)の使用は、近年、UV硬化性材料を利用するような積層造形プロセスを含む多くの分野においてますます一般的かつ望ましいものとなってきている。市販のUV LED光源の多くは、365nm/395nm/405nmのより高い波長でUVA放射を放出する。このような光源の使用は、より短い波長を吸収する光開始剤、例えば250nm~300nmで吸収するα-ヒドロキシケトン系の光開始剤を効率的に使用することができないため、大きな制約を受ける。これらの光開始剤は、典型的には、表面硬化のために使用され、その不在はプロセスの質に悪影響を及ぼす。
【0025】
照射源としてUV LEDを使用することによる制約に対する現在の解決策には、第三級アミン、チオール及びポリエチレングリコール含有材料などの表面硬化を促進する水素供与体の使用が含まれる。しかしながら、これらの材料の使用は、UV LEDを使用するAMを容易化するが、いくつかの欠点を伴う。例えば、第三級アミンは、硬化した材料に増大した黄色の色相を付与する。チオールは、典型的には、AMにおいて一般的に使用されるUV硬化性材料、例えばアクリル材料などに対して反応性であり、したがって、これを含有する配合物の貯蔵寿命を制限する。また、ポリエチレングリコール材料は、可塑剤又はエラストマーとしても作用する両親媒性材料であり、したがって機械的安定性を低下させ、得られた物体の吸水を増加させる。
【0026】
さらなる背景技術は、国際公開第2009/013751号パンフレット;国際公開第2016/063282号;国際公開第2016/125170号;国際公開第2017/134672号;国際公開第2017/134673号;国際公開第2017/134674号;国際公開第2017/134676号;国際公開第2017/068590号;国際公開第2017/187434号;国際公開第2018/055521号;及び国際公開第2018/055522号パンフレットを含み、これらはすべて本譲受人によるものである。
【発明の概要】
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、本明細書で第1の配合物態様と称される、1つ以上の硬化性材料と、少なくとも1つのチオエーテルと、任意に1つ以上の非硬化性材料と、を含む硬化性配合物が提供される。
【0028】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化性材料の総量は、硬化性配合物の総重量に対して85重量%~95重量%の範囲である。
【0029】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、硬化時に、70%より高い又は75%より高い光透過率を有することを特徴とする材料をもたらす透明配合物である。
【0030】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、光硬化性配合物であり、光開始剤をさらに含む。
【0031】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、紫外線硬化性配合物であり、紫外線を吸収すると活性化される光開始剤をさらに含む。
【0032】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤は、380nmより長い波長の光を吸収すると活性化される。
【0033】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤の総量は、配合物の総重量に対して3重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2重量%以下である。
【0034】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤は、ホスフィンオキシド型光開始剤を含むか、又はホスフィンオキシド型光開始剤からなる。
【0035】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、少なくとも8個、少なくとも10個の炭素原子の長さの少なくとも1つの炭化水素鎖を含み、好ましくは少なくとも2つの前記炭化水素鎖を含む。
【0036】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの炭化水素鎖は飽和炭化水素鎖である。
【0037】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの炭化水素鎖は直鎖の炭化水素鎖である。
【0038】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは室温で液体である。
【0039】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、少なくとも1つのカルボキシレート基又はチオカルボキシレート基をさらに含む。
【0040】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、下記式Aで表され、
【0041】
【0042】
上記式A中、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して0又は1であり、ただし、c及びfの少なくとも1つは1であり、
A1及びA2は、それぞれ独立して、例えば、1~6個又は1~4個の炭素原子の長さのアルキレン鎖であり、
X1及びX2は、それぞれ独立して、-Y1-C(=Y2)-基又は-C(=Y2)-Y1基であり、Y1及びY2のそれぞれは、独立して、O又はSであり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、少なくとも8個の炭素の炭化水素鎖である。
【0043】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ1である。
【0044】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、少なくとも1つの硬化性基をさらに含む。
【0045】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化性基は、光硬化性基、例えば、紫外線硬化性基である。
【0046】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、硬化性基によって置換又は停止(terminated)された、少なくとも8個の炭素原子の長さである少なくとも1つの炭化水素鎖を含む。
【0047】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルの量は、配合物の総重量に対して1重量%~7重量%の範囲、又は1重量%~5重量%の範囲である。
【0048】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の硬化性材料は、1つ以上の単官能性硬化性材料及び1つ以上の多官能性硬化性材料を含む。
【0049】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の硬化性材料は、500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの脂肪族又は脂環式の単官能性(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量に対して10重量%~60重量%、又は40重量%~60重量%の総量で含む。
【0050】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の硬化性材料は、少なくとも1つの芳香族の単官能性(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量に対して5重量%~15重量%、又は8重量%~15重量%の総量で含む。
【0051】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、少なくとも1種の多官能性(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量に対して30重量%~60重量%、又は40重量%~60重量%の総量で含む。
【0052】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化性材料は、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0053】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートは、硬化時に35℃未満又は20℃未満のTgを有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0054】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートの総量は、配合物の総重量に対して15重量%~40重量%の範囲、又は15重量%~35重量%の範囲、又は15重量%~30重量%の範囲である。
【0055】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化性材料は、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料を含む。
【0056】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化性材料は、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートを含む。
【0057】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートの量は、配合物の総重量に対して3重量%~15重量%の範囲、又は5重量%~15重量%の範囲、又は5重量%~10重量%の範囲である。
【0058】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートは、イソシアヌレート含有材料である。
【0059】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートは、脂肪族又は脂環式材料である。
【0060】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートは、15%未満の体積収縮を有することを特徴とする。
【0061】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有することを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートは、550グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする。
【0062】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、界面活性剤をさらに含む。
【0063】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、界面活性剤の量は、配合物の総重量に対して0.05重量%未満である。
【0064】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、界面活性剤はシリコーン系界面活性剤である。
【0065】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、界面活性剤はポリアクリル材料を含む。
【0066】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、青色染料又は青色顔料をさらに含む。
【0067】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、青色染料又は青色顔料の量は、配合物の総重量に対して1×10-4重量%未満である。
【0068】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、硫黄含有チオール化合物を含まない。
【0069】
第1の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硫黄含有チオール化合物は、β-メルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート、及びアルカンチオールから選択される。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、光硬化性配合物であって、
配合物の総重量に対して3重量%以下又は2重量%以下の総量の少なくとも1つの光開始剤と、
配合物の総重量に対して50重量%~70重量%の総量であり、500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレート材料と、
配合物の総重量に対して30重量%~50重量%の総量の少なくとも2つの多官能性(メタ)アクリル材料であって、
多官能(メタ)アクリル材料の少なくとも1つは、100℃より高い、又は140℃より高いTgを有することを特徴とし、15%より低い体積収縮及び/又は高い硬化速度を特徴とし、かつ/又はシアヌレート部分を含み、
多官能性(メタ)アクリル材料の別の少なくとも1つは、中粘度~高粘度であり、1000グラム/モルより大きい分子量を有し、かつ、20℃より低い、0℃より低い、又は-20℃より低いTgを有することを特徴とするエトキシル化多官能性(メタ)アクリレート材料である、多官能性(メタ)アクリル材料と、
を含む、光硬化性配合物が提供される。
【0071】
この態様は、本明細書では第2の配合物態様とも呼ばれる。
【0072】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、硬化時に、70%より高い又は75%より高い光透過率を有することを特徴とする材料をもたらす透明配合物である。
【0073】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は光硬化性配合物であり、光開始剤をさらに含む。
【0074】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、紫外線硬化性配合物であり、紫外線を吸収すると活性化される光開始剤をさらに含む。
【0075】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、100℃より高い、140℃より高い、又は250℃より高いTgを特徴とする多官能性(メタ)アクリル材料の量は、配合物の総重量に対して1重量%~5重量%の範囲である。
【0076】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、中粘度~高粘度であり、及び20℃より低い、0℃より低い、又は-20℃より低いTgを有することを特徴とするエトキシル化多官能性(メタ)アクリレート材料の量は、配合物の総重量に対して3重量%~10重量%の範囲、又は3重量%~8重量%の範囲である。
【0077】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレート材料は、少なくとも1つの脂肪族又は脂環式(非芳香族)単官能性(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量に対して50重量%~60重量%の量で含み、かつ少なくとも1つの芳香族単官能性(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量に対して5重量%~10重量%の量で含む。
【0078】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性(メタ)アクリレート材料は、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートをさらに含む。
【0079】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートは、硬化時に20℃未満のTgを有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0080】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートの総量は、配合物の総重量に対して10重量%~20重量%の範囲である。
【0081】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性(メタ)アクリレート材料は、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料をさらに含む。
【0082】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料が芳香族である。
【0083】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料の量は、配合物の総重量に対して10重量%~20重量%の範囲である。
【0084】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤は、α-置換ケトン型光開始剤を含まない。
【0085】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤は、ホスフィンオキシド型光開始剤を含むか、又はホスフィンオキシド型光開始剤からなる。
【0086】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、ホスフィンオキシド型光開始剤は、少なくとも380nmの波長の放射線によって活性化される。
【0087】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、界面活性剤をさらに含む。
【0088】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、界面活性剤の量は、配合物の総重量に対して0.05重量%未満である。
【0089】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、青色染料又は青色顔料をさらに含む。
【0090】
第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、青色染料又は青色顔料の量は、配合物の総重量に対して1×10-4重量%未満である。
【0091】
第1及び第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、少なくともその一部に透明材料を含む三次元物体の積層造形において使用可能である。
【0092】
第1及び第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、積層造形は、三次元インクジェット印刷である。
【0093】
第1及び第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、積層造形は、LED光源からの紫外線照射への曝露を含む。
【0094】
第1及び第2の配合物態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、LED光源から放出される相対UV線量は、例えば、本明細書に記載されるように、層当たり0.1J/cm2より高い。
【0095】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、積層造形は、構成されたパターンで複数の層を吐出することを含み、層の少なくとも一部について、各層の厚さは20μm未満であり、硬化性配合物は、第1の配合物態様の実施形態のいずれかについて定義された通りである。
【0096】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、積層造形は、構成されたパターンで複数の層を吐出することを含み、層の少なくとも一部について、各層の厚さは25μmより厚いか又は30μmより厚く、光硬化性配合物は、第2の配合物態様の実施形態のいずれかについて定義された通りである。
【0097】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、透明材料は、少なくとも70%の透過率、及び8未満又は6未満の黄色度指数の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、少なくともその一部に透明材料を含む三次元物体を積層造形する方法であって、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を順次形成することによって物体を形成することを含み、少なくとも数個の層の各々の形成が、少なくとも1つの配合物を吐出することと、吐出された配合物を硬化条件に曝露することによって硬化したモデリング材を形成することと、を含み、少なくとも1つの配合物が、第1又は第2の配合物態様について本明細書に記載されている実施形態のいずれかで定義されているような硬化性配合物又は光硬化性配合物である、方法が提供される。
【0099】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化条件は電磁波照射を含み、電磁波照射はLED光源からのものである。
【0100】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化条件は紫外線照射を含む。
【0101】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、紫外線照射の線量は、例えば、本明細書に記載されるように、層当たり0.1J/cm2より高い。
【0102】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも数個の層の形成は、20μm未満の層厚で行われ、配合物は、第1の配合物態様の実施形態のいずれかで定義される通りである。
【0103】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも数個の層の形成は、25μmより大きい又は30μmより大きい層厚で行われ、配合物は、第2の配合物態様の実施形態のいずれかで定義される通りである。
【0104】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、方法は、硬化条件に曝露することに続いて、光開始剤の残留量の分解を促進する条件(光退色)に物体を曝露することをさらに含む。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載の方法によって得ることができる、透明材料をその少なくとも一部に含む物体が提供される。
【0106】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、透明材料は、少なくとも70%の光透過率、及び8未満又は6未満の黄色度指数の少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0107】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料が、本発明の実施形態の実施又は試験において使用され得るが、例示的な方法及び/又は材料が以下に記載される。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図していない。
【0108】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実装は、選択されたタスクを手動で、自動的に、又はそれらの組み合わせで実行又は完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装及び機器によれば、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを使用してハードウェア、ソフトウェア若しくはファームウェア、又はそれらの組み合わせによって実装され得る。
【0109】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法及び/又はシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブルメディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボード又はマウスなどのユーザ入力装置もまた、任意選択で提供される。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書で説明されている。ここで詳細に図面を具体的に参照するが、示されている詳細は例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な説明のためのものであることが強調される。この点に関して、図面を用いてなされた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
【
図1D】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、積層造形システムによってモデリング材から製造された物体を処理するためのシステムの概略図である。
【
図5】黄色度指数に対する貯蔵の影響を調査するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
【
図6】黄色度指数に対する異なる照明シナリオの影響を調査するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた別の実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
【
図7】黄色度指数に対する光スペクトルの影響を調査するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた別の実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
【
図8】黄色度指数に対する白色光と青色光の影響を比較するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた追加の実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
【
図9A】本実施形態に適した可視光のスペクトル成分を示す。
【
図9B】本実施形態に適した白色LEDのスペクトル成分を示す。
【
図10】
図1Aに記載のシステムにおいて、参考例配合物I(左)、参考例配合物III(右)、及び実施例配合物II(中央)を使用して形成された物体の写真を示す。
【
図11】
図1B~
図1Dに記載のシステムにおいて、参考例配合物I(下)及び実施例配合物III(上)を使用して形成された物体の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、積層造形に関し、限定的ではないがより具体的には、少なくとも一部に透明材料を含む三次元物体の積層造形に使用可能な配合物、及びそのような配合物を使用した三次元物体の積層造形に関する。
【0113】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される、構造、構成要素の配置及び/又は方法の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能である、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0114】
したがって、本発明の実施形態は、本明細書で定義される透明材料を少なくともその一部に使用して三次元物体を製造するために使用可能な、新規な配合物及びそれを使用する積層造形方法に関する。
【0115】
本明細書全体を通して、「物体」という用語は、積層造形の最終生成物を表す。この用語は、支持材が未硬化の造形材の一部として使用されている場合には、その支持材の除去後、及び/又は後処理(例えば、本明細書に記載されるような光退色(photobleaching))後に、本明細書に記載の方法によって得られる生成物を指す。
【0116】
本明細書全体を通して使用される「物体」という用語は、物体全体又はその一部を指す。
【0117】
本明細書全体を通して、本明細書で「硬化した」又は「固化した」モデリング材とも呼ばれる「硬化したモデリング材(cured modeling material)」という語句は、本明細書で説明されるように、吐出される造形材を硬化条件(及び任意選択で後処理)に曝すことにより、任意選択で、支持材が適用されている場合には硬化した支持材を取り除くことにより、本明細書で定義される物体を形成する造形材の一部分を示す。硬化したモデリング材は、本明細書に記載されるように、本方法で使用されるモデリング材配合物に応じて、単一の硬化材料又は2つ以上の硬化材料の混合物とすることができる。
【0118】
「硬化したモデリング材(cured modeling material、hardened modeling material)」、「固化したモデリング材」又は「硬化/固化したモデリング材配合物(cured/hardened/solidified modeling material formulation)」という語句は、造形材がモデリング材配合物のみからなる(支持材配合物ではない)硬化した造形材と見なすことができる。すなわち、この語句は、最終的な物体をもたらすために使用される造形材の一部分を指す。
【0119】
本明細書全体を通して、「モデリング材配合物」という語句は、本明細書において互換的に「モデリング配合物」、「モデリング材」、「モデル材」又は単に「配合物」とも呼ばれ、本明細書に記載されるように、物体を形成するように吐出される未硬化の造形材の一部又は全部を表す。モデリング材配合物は、(特に明記しない限り)未硬化のモデル材配合物であり、硬化をもたらす条件に曝露されると、物体又はその一部を形成し得る。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態では、モデリング材配合物は、三次元インクジェット印刷で使用するために配合され、それ自体で、すなわち、任意の他の物質と混合又は組み合わせる必要なく、三次元物体を形成することができる。
【0121】
未硬化の造形材は、1つ以上のモデリング材配合物を含むことができ、硬化されると、物体の異なる部分が異なる硬化モデリング配合物で作られ、したがって、異なる硬化モデリング材又は異なる硬化モデリング材の混合物で作られるように吐出することができる。
【0122】
最終的な三次元物体は、モデリング材、又はモデリング材の組み合わせ、又はモデリング材と支持材の組み合わせ、又はそれらの修正(例えば、硬化後)から作られる。これらの操作はすべて、固体自由造形の当業者には周知である。
【0123】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、2つ以上の異なるモデリング材配合物を含む造形材を吐出することによって製造され、各モデリング材配合物は、インクジェット印刷装置の異なる吐出ヘッド及び/又はノズルから吐出される。モデリング材配合物は、任意選択でかつ好ましくは、印刷ヘッドの同じパスの間に層状に堆積される。層内のモデリング材配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の所望の特性及び本明細書に記載の方法パラメータに従って選択される。
【0124】
未硬化の造形材は、1つ以上のモデリング配合物を含むことができ、モデル物体の異なる部分が、異なるモデリング配合物を硬化させたときに作られるように、したがって、モデル物体の異なる部分が、異なる硬化したモデリング材、硬化したモデリング材の異なる混合物、又は硬化したモデリング材と支持材の混合物から作られるように、吐出することができる。
【0125】
本明細書全体を通して、「硬化した支持材」という語句は、本明細書では互換的に「硬化した支持材」又は単に「支持材」とも呼ばれ、製造プロセス中に製造された最終的な物体を支持することを意図し、プロセスが完了して硬化したモデリング材が得られると除去される造形材の部分を表す。
【0126】
本明細書全体を通して、「支持材配合物」という語句は、本明細書において互換的に「支持配合物」又は単に「配合物」とも呼ばれ、本明細書に記載されるように、支持材を形成するように吐出される未硬化の造形材の一部を表す。支持材配合物は、未硬化配合物である。支持材配合物が硬化性配合物である場合、それは、硬化条件に曝露されると、硬化した支持材を形成する。
【0127】
支持材は、液体材料又は硬化した、典型的にはゲル材料のいずれかであり得るが、本明細書では犠牲材とも呼ばれ、層が吐出され、硬化エネルギーに曝露された後に除去可能であり、それによって最終的な物体の形状を露出させる。
【0128】
現在実用化されている支持材は、典型的には、硬化性材料と非硬化性材料との混合物を含み、本明細書ではゲル支持材とも呼ばれる。
【0129】
現在実用化されている支持材は、典型的には、水混和性、又は水分散性若しくは水溶性である。
【0130】
本明細書全体を通して、「水混和性」という用語は、水に少なくとも部分的に溶解可能又は分散可能である材料、すなわち、例えば、室温で等体積又は等重量の水と混合した場合に、分子の少なくとも50%が水中に移動する材料を表す。この用語は、「水溶性」及び「水分散性」という用語を包含する。
【0131】
本明細書全体を通して、「水溶性」という用語は、室温で等しい体積又は重量で水と混合した場合に、均一な溶液が形成される材料を表す。
【0132】
本明細書全体を通して、「水分散性」という用語は、室温で等量又は重量の水と混合した場合に、均一な分散液を形成する材料を表す。
【0133】
本明細書全体を通して、「溶解速度」という語句は、物質が液体の媒体に溶解する速度を表す。溶解速度は、本実施形態の文脈において、一定量の支持材を溶解するのに必要な時間によって決定することができる。測定された時間は、本明細書では「溶解時間」と呼ばれる。特に断らない限り、「溶解時間」は室温でのものである。
【0134】
本実施形態の方法及びシステムは、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を形成することによって、コンピュータ物体データに基づいて三次元物体を層毎に製造する。コンピュータ物体データは、限定はしないが、標準テッセレーション言語(STL)又はステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、積層造形ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットを含む、任意の既知のフォーマットとすることができる。
【0135】
各層は、二次元表面を走査してそれをパターン化する積層造形装置によって形成される。走査中、装置は、二次元層又は表面上の複数の目標位置に行き、各目標位置又は目標位置のグループについて、目標位置又は目標位置のグループが造形材配合物によって占められるべきかどうか、及びどのタイプの造形材配合物がそこに送達されるべきかを決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0136】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、三次元印刷、より好ましくは三次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、造形材配合物は、ノズルセットを有する吐出ヘッドから吐出され、支持構造体上に層状に造形材配合物を堆積させる。したがって、AM装置は、占有されるべき目標位置に造形材配合物を吐出し、他の目標位置を空にする。装置は、典型的には、複数の吐出ヘッドを含み、各吐出ヘッドは、異なる造形材配合物を吐出するように構成することができる。したがって、異なる目標位置は、異なる造形材配合物によって占有され得る。造形材配合物のタイプは、モデリング材配合物と支持材配合物の、2つの主要なカテゴリーに分類することができる。支持材配合物は、製造プロセス及び/又は他の目的、例えば、中空又は多孔質の物体をもたらす際に、物体又は物体部分を支持するための支持マトリックス又は構造として機能する。支持構造は、例えば、さらなる支持強度のために、モデリング材配合物の要素をさらに含むことができる。
【0137】
最終的な三次元物体は、モデリング材、又はモデリング材の組み合わせ、又はモデリング材と支持材との組み合わせ、又はそれらの修正(例えば、硬化後)で作られる。これらの操作はすべて、固体自由造形の当業者には周知である。
【0138】
本発明のいくつかの例示的な実施形態において、物体は、1つ以上の異なるモデリング材配合物を吐出することによって製造される。2つ以上のモデリング材配合物が使用される場合、各モデリング材配合物は、任意選択でかつ好ましくは、AM装置のノズルの異なるアレイ(同じ又は別個の吐出ヘッドに属する)から吐出される。
【0139】
いくつかの実施形態では、AM装置の吐出ヘッドはマルチチャネル吐出ヘッドであり、その場合、同じマルチチャネル吐出ヘッドに配置されているノズルの2つ以上のアレイから、異なるモデリング材配合物を吐出することができる。いくつかの実施形態では、異なるモデリング材配合物を吐出するノズルアレイは、別個の吐出ヘッドに配置され、例えば、第1のモデリング材配合物を吐出する第1のノズルアレイは、第1の吐出ヘッドに配置され、第2のモデリング材配合物を吐出する第2のノズルアレイは、第2の吐出ヘッドに配置される。
【0140】
いくつかの実施形態において、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイ及び支持材配合物を吐出するノズルアレイは、両方とも同じマルチチャネル吐出ヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイ及び支持材配合物を吐出するノズルアレイは、別々の吐出ヘッドに配置される。
【0141】
材料配合物は、任意選択でかつ好ましくは、印刷ヘッドの同じパスの間に層状に堆積される。層内の材料配合物及び材料配合物の組み合わせは、物体の所望の特性に従って選択される。
【0142】
<システム>
本発明のいくつかの実施形態による物体112のAMに適したシステム110の代表的で非限定的な例を
図1Aに示す。システム110は、複数の印刷ヘッドを備える吐出ユニット16を有する積層造形装置114を備える。各ヘッドは、好ましくは、後述の
図2A~
図2Cに示すように、典型的にはオリフィスプレート121に取り付けられたノズル122の1つ以上のアレイを備え、それを通して液体造形材配合物124が吐出される。
【0143】
好ましくは、必須ではないが、装置114は三次元印刷装置であり、この場合、印刷ヘッドはプリントヘッドであり、造形材配合物はインクジェット技術を介して吐出される。一部の用途では、積層造形装置が三次元印刷技術を使用する必要がない場合があるため、これは必ずしもそうである必要はない。本発明の様々な例示的な実施形態に従って企図される積層造形装置の代表的な例には、溶融堆積モデリング装置及び溶融材料配合物堆積装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
各印刷ヘッドは、任意選択でかつ好ましくは、1つ以上の造形材配合物リザーバを介して配合物を供給され、造形材配合物リザーバは、温度制御ユニット(例えば、温度センサ及び/又は加熱装置)及び材料配合物レベルセンサを、任意選択で含み得る。造形材配合物を吐出するために、印刷ヘッドに電圧信号が印加され、例えば、圧電インクジェット印刷技術におけるように、印刷ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に堆積させる。別の例としては、サーマルインクジェット印刷ヘッドがある。このタイプのヘッドには、造形材配合物と熱接触するヒータ要素があり、電圧信号によるヒータ要素の作動により、造形材配合物を加熱してその中に気泡を形成する。この気泡は、造形材配合物中に圧力を発生させ、造形材配合物の液滴をノズルから吐出させる。圧電式及び感熱式の印刷ヘッドは、固体自由造形の当業者には知られている。任意のタイプのインクジェット印刷ヘッドについて、ヘッドの吐出速度は、ノズルの数、ノズルのタイプ、及び印加電圧信号速度(周波数)に依存する。
【0145】
任意選択で、吐出ノズル又はノズルアレイの全体の数は、吐出ノズルの半分が、支持材配合物を吐出するために指定され、吐出ノズルの半分が、モデリング材配合物を吐出するために指定されるように選択される、すなわち、モデリング材配合物を噴射するノズルの数は、支持材配合物を噴射するノズルの数と同じである。
図1Aの代表例では、4つの印刷ヘッド16a、16b、16c、16dが図示されている。各ヘッド16a、16b、16c、16dは、ノズルアレイを有している。この例において、ヘッド16a及び16bは、モデリング材配合物用に指定することができ、ヘッド16c及び16dは、支持材配合物用に指定することができる。したがって、ヘッド16aは、1つのモデリング材配合物を吐出することができ、ヘッド16bは、別のモデリング材配合物を吐出することができ、ヘッド16c及び16dの両方は、支持材配合物を吐出することができる。別の実施形態において、ヘッド16c及び16dは、例えば、支持材配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドにおいて組み合わされてもよい。さらなる代替の実施形態において、印刷ヘッドのいずれか1つ以上は、複数の材料配合物を堆積させるための複数のノズルアレイ、例えば、2つの異なるモデリング材配合物、又はモデリング材配合物と支持材配合物とを堆積させるための2つのノズルアレイを有することができ、各配合物は、異なるアレイ又は異なる数のノズルを介している。
【0146】
しかし、本発明の範囲を限定する意図はなく、モデリング材用配合物用の印刷ヘッド(造形用ヘッド)の数と、支持材用配合物用の印刷ヘッド(支持ヘッド)の数とは、異なっていてもよいことが理解されよう。一般に、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイの数、支持材配合物を吐出するノズルアレイの数、及びそれぞれのアレイにおけるノズルの数は、支持材配合物の最大吐出速度とモデリング材配合物の最大吐出速度との間の所定の比aをもたらすように選択される。所定の比aの値は、好ましくは、形成された各層において、モデリング材配合物の高さが支持材配合物の高さと確実に等しくなるように選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0147】
本明細書で使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0148】
例えば、a=1の場合、支持材配合物の全体的な吐出速度は、すべてのノズルアレイが動作するときのモデリング材配合物の全体的な吐出速度と概ね同じである。
【0149】
装置114は、例えば、各々がp個のノズルのm個のノズルアレイを有するM個のモデリングヘッドと、各々がq個のノズルのs個のノズルアレイを有するS個の支持ヘッドとを備え、M×m×p=S×s×qとなるようにすることができる。(M×m)個のモデリングアレイ及び(S×s)個の支持アレイの各々は、アレイのグループから組み立てられ、分解され得る別個の物理的ユニットとして製造され得る。この実施形態では、そのような各アレイは、任意選択でかつ好ましくは、それ自体の温度制御ユニット及び材料配合物レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0150】
装置114は、固化装置324をさらに含むことができ、固化装置324は、堆積された材料配合物を硬化させることができる光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば、固化装置324は、1つ以上の放射線源を含むことができ、放射線源は、例えば、使用されるモデリング材配合物に応じて、紫外線ランプ、可視光ランプ若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、固化装置324は、モデリング材配合物を硬化又は固化させるのに役立つ。
【0151】
固化装置324に加えて、装置114は、任意選択でかつ好ましくは、溶媒蒸発のための追加の放射線源328を含む。放射線源328は、任意選択でかつ好ましくは赤外線を発生させる。本発明の様々な例示的な実施形態では、固化装置324は、紫外線を発生する放射線源を備え、放射線源328は赤外線を発生させる。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態では、装置114は、1つ以上のファンなどの冷却システム134を備える。
【0153】
印刷ヘッド(複数可)及び放射線源は、好ましくは、作業面として機能するトレイ360上を往復移動するように好ましくは動作可能なフレーム又はブロック128に搭載される。本発明のいくつかの実施形態では、放射線源は、印刷ヘッドの後に続いて、印刷ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化又は固化させるように、ブロックに搭載される。トレイ360は水平に配置されている。一般的な慣例によれば、X-Y平面がトレイ360に平行となるように、X-Y-Z直交座標系が選択される。トレイ360は、好ましくは、垂直方向に(Z方向に沿って)、典型的には下方に移動するように構成される。本発明の様々な例示的な実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326などをさらに備える。レベリング装置326は、その上に連続層を形成する前に、新たに形成された層の厚さを真っ直ぐにし、平らにし、及び/又は確立するのに役立つ。レベリング装置326は、好ましくは、レベリング中に発生した余分な材料配合物を回収するための廃棄物回収装置136を備える。廃棄物回収装置136は、材料配合物を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに送達する任意の機構を含むことができる。
【0154】
使用中、ユニット16の印刷ヘッドは、本明細書ではX方向と呼ばれる走査方向に移動し、トレイ360上を通過する過程で所定の構成で造形材配合物を選択的に吐出する。造形材配合物は、典型的には、1種類以上の支持材配合物と1種類以上のモデリング材配合物とを含む。ユニット16の印刷ヘッドの通過に続いて、放射線源126によるモデリング材配合物(複数可)の硬化が行われる。堆積したばかりの層の出発点に戻るヘッドの逆方向の通過(passage)において、所定の構成に従って、造形材配合物の追加の吐出が実行され得る。印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の通過において、このように形成された層は、好ましくは印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動の経路(path)をたどるレベリング装置326によって直線化されてもよい。印刷ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、印刷ヘッドは、本明細書ではY方向と呼ばれるインデックス方向(indexing direction)に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復移動によって同じ層の造形を継続することができる。あるいは、印刷ヘッドは、順方向への移動と逆方向への移動との間に、又は2回以上の順方向及び逆方向への移動の後に、Y方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために印刷ヘッドによって行われる一連の走査は、本明細書では単一の走査サイクルと呼ばれる。
【0155】
層が完成すると、トレイ360は、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、所定のZレベルまでZ軸方向に下降される。この手順を繰り返すことにより、三次元物体112を層状に形成する。
【0156】
別の実施形態では、トレイ360は、ユニット16の印刷ヘッドの順方向への通過と逆方向への通過との間で、層内でZ方向に変位されてもよい。このようなZ変位は、レベリング装置と表面との接触を一方向において引き起こし、他方向において防止するために行われる。
【0157】
システム110は、任意選択でかつ好ましくは、造形材配合物の容器又はカートリッジを備え、複数の造形材配合物を積層造形装置114に供給する造形材配合物供給システム330を備える。
【0158】
制御ユニット152は、積層造形装置114を制御し、任意選択でかつ好ましくは、供給システム330も制御する。制御ユニット152は、典型的には、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット152は、好ましくは、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形態でコンピュータ可読媒体上に表されるCAD構成などの、コンピュータ物体データに基づいて、製造命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。典型的には、制御ユニット152は、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイに印加される電圧と、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイにおける造形材配合物の温度とを制御する。
【0159】
製造データが制御ユニット152にロードされると、ユーザの介入なしに動作することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット152は、例えばデータプロセッサ154を使用して、又はユニット152と通信するユーザインターフェース116を使用して、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインターフェース116は、これらに限定されないが、キーボード、タッチスクリーンなど、当技術分野で知られている任意の種類のものとすることができる。例えば、制御ユニット152は、追加の入力として、色、特性の歪み及び/又は転移温度、粘度、電気的特性、磁気的特性などであるがこれらに限定されない、1つ以上の造形材配合物の種類及び/又は属性を受信することができる。他の属性及び属性群も想定されている。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態による物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的な例が、
図1B~
図1Dに示されている。
図1B~
図1Dは、システム10の上面図(
図1B)、側面図(
図1C)、及び等角図(
図1D)を示す。
【0161】
本実施形態において、システム10は、トレイ12と複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備え、複数の印刷ヘッド16の各々は、それぞれが1つ以上の複数の分離されたノズルを有する1つ以上のノズルアレイを有する。三次元印刷に使用される材料は、造形材供給システム42によって印刷ヘッド16に供給される。トレイ12は、ディスクの形状を有することができ、又は環状であってもよい。垂直軸を中心に回転させることができる限り、非円形形状も考えられる。
【0162】
トレイ12及びヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的な回転運動を可能にするように取り付けられる。これは、(i)トレイ12をヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するように構成すること、(ii)ヘッド16をトレイ12に対して垂直軸14を中心に回転するように構成すること、又は(iii)トレイ12及びヘッド16の両方を、垂直軸14を中心に、しかし異なる回転速度(例えば、反対方向の回転)で回転するように構成することによって達成され得る。システム10のいくつかの実施形態は、トレイ12がヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するように構成された回転トレイである、構成(i)に特に重点を置いて以下で説明されるが、本願は、システム10の構成(ii)及び(iii)も企図していることを理解されたい。本明細書に記載のシステム10の実施形態のいずれか1つは、構成(ii)及び(iii)のいずれにも適用可能であるように調整することができ、本明細書に記載の詳細を提示される当業者は、そのような調整を行う方法を知っているであろう。
【0163】
以下の説明では、トレイ12に平行で垂直軸14から外側を向く方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向を本明細書では方位角方向φと呼び、トレイ12に垂直な方向を本明細書では垂直方向zと呼ぶ。
【0164】
システム10における半径方向rは、システム110におけるインデックス方向yを規定し、方位角方向φは、システム110における走査方向xを規定する。したがって、半径方向は、本明細書ではインデックス方向と互換的に呼ばれ、方位角方向は、本明細書では走査方向と互換的に呼ばれる。
【0165】
本明細書で使用される「半径方向位置」という用語は、垂直軸14から特定の距離にあるトレイ12の上又は上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、垂直軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、その半径が垂直軸14からの特定の距離であり、その中心が垂直軸14にある円である点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0166】
本明細書で使用される「方位角位置」という用語は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12の上又は上方の位置を指す。したがって、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線である点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0167】
本明細書で使用される「垂直位置」という用語は、特定の点で垂直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0168】
トレイ12は、三次元印刷の造形プラットフォームとして機能する。1つ以上の物体が印刷される作業領域は、必ずしもそうである必要はないが、典型的には、トレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は符号26で示されている。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中に、同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中に、少なくとも1回(例えば、振動して)回転方向を逆転させる。トレイ12は、任意選択でかつ好ましくは、取り外し可能である。トレイ12を取り外すことは、システム10のメンテナンスのためであり、又は必要に応じて、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するためであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、1つ以上の異なる交換トレイ(例えば、交換トレイのキット)を備え、異なる種類の物体(例えば、異なる重さ)や異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などに対して、2つ以上のトレイが指定される。トレイ12の交換は、必要に応じて手動又は自動で行うことができる。自動交換が使用される場合、システム10は、ヘッド16の下方のその位置からトレイ12を取り外し、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を備える。
図1Bの代表的な図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を有する駆動装置38として示されているが、他のタイプのトレイ交換装置も考えられる。
【0169】
印刷ヘッド16の例示的な実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含むがこれらに限定されない、上述のAMシステムのいずれかに使用することができる。
【0170】
図2A~
図2Bは、1つのノズルアレイ122を有する印刷ヘッド16(
図2A)と、2つのノズルアレイ122を有する印刷ヘッド16(
図2B)とを示す。アレイ内のノズルは、好ましくは直線に沿って直線的に整列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の直線状のノズルアレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意選択でかつ好ましくは、互いに平行であり得る。印刷ヘッドが2つ以上のノズルアレイを有する場合(例えば、
図2B)、ヘッドのすべてのアレイに同じ造形材配合物を供給することができ、又は同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる造形材配合物を供給することができる。
【0171】
システム110と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、走査方向に沿った位置が互いにオフセットされた状態でインデックス方向に沿って配向される。
【0172】
システム10と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにオフセットされた状態で、半径方向(半径方向に平行)に配向される。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いに対してある角度を成しており、その角度は、それぞれのヘッド間の方位角オフセットに概ね等しい。例えば、1つのヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φ1に配置することができ、別のヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φ2に配置することができる。この例では、2つのヘッド間の方位角オフセットはφ1-φ2であり、2つのヘッドの直線状のノズルアレイ間の角度もφ1-φ2である。
【0173】
いくつかの実施形態では、複数の印刷ヘッドを印刷ヘッドのブロックに組み立てることができ、この場合、ブロックの複数の印刷ヘッドは、典型的には互いに平行である。複数のインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックは、
図2Cに示されている。
【0174】
いくつかの実施形態では、システム10は、トレイ12が安定化構造体30とヘッド16との間にあるように、ヘッド16の下方に配置された安定化構造体30を備える。安定化構造体30は、インクジェット印刷ヘッド16が動作している間に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減するのに役立ち得る。印刷ヘッド16が垂直軸14を中心に回転する構成では、好ましくは、安定化構造体30が常にヘッド16の真下にある(ヘッド16とトレイ12との間にトレイ12がある)ように、安定化構造体30も回転する。
【0175】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変化させるように、垂直軸14に平行な垂直方向zに沿って移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離を変化させる構成では、安定化構造体30もトレイ12と一緒に垂直方向に移動することが好ましい。トレイ12の垂直位置を固定したままで、ヘッド16によって垂直方向に沿った垂直距離を変化させる構成では、安定化構造体30も固定された垂直位置に維持される。
【0176】
垂直運動は、垂直駆動装置28によって確立することができる。1つの層が完成すると、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を所定の垂直ステップだけ増加させる(例えば、トレイ12はヘッド16に対して降下される)ことができる。この手順を繰り返すことにより、層毎に三次元物体を形成する。
【0177】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、及び任意選択でかつ好ましくはシステム10の1つ以上の他の構成要素の動作(例えばトレイ12の動作)は、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路と、回路によって読み取り可能な不揮発性記憶媒体とを有することができ、記憶媒体は、回路によって読み取られると、以下でさらに詳細に説明するように、回路に制御動作を実行させるプログラム命令を記憶する。
【0178】
コントローラ20はまた、例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、積層造形ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットの形態で、コンピュータ物体データに基づいて製造命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することができる。物体データのフォーマットは、通常、デカルト座標系に従って構造化される。これらの場合、コンピュータ24は、好ましくは、コンピュータ物体データの各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、任意選択でかつ好ましくは、変換された座標系に関して製造命令を送信する。あるいは、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提示される元の座標系に関して製造命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0179】
座標の変換により、回転トレイ上での三次元印刷が可能になる。印刷ヘッドと静止トレイとを有する非回転システムでは、印刷ヘッドは、通常、固定トレイの上方を直線に沿って往復移動する。そのようなシステムでは、ヘッドの吐出速度が均一であれば、印刷の解像度はトレイ上のどの点でも同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッドポイントのすべてのノズルが同時にトレイ12上で同じ距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意選択でかつ好ましくは、異なる半径方向位置における等量の過剰な材料配合物を保証するように、実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表的な例を
図3A~
図3Bに提示する。
図3A~
図3Bは、物体の3つのスライス(各スライスは、物体の異なる層の製造命令に対応する)を示し、
図3Aは、デカルト座標系におけるスライスを示し、
図3Bは、それぞれのスライスへの座標変換手順の適用後の同じスライスを示す。
【0180】
典型的には、コントローラ20は、製造命令に基づいて、かつ以下に説明するように記憶されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0181】
一般に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上に三次元物体を印刷するなどのために、層毎に造形材配合物の液滴を吐出するように印刷ヘッド16を制御する。
【0182】
システム10は、任意選択でかつ好ましくは、1つ以上の放射線源18を含むことができる。放射線源18は、使用されるモデリング材配合物に応じて、例えば紫外線ランプ、可視光ランプ、若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る。放射線源は、発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプなどを含むがこれらに限定されない、任意の種類の放射線放出装置を含むことができる。放射線源18は、モデリング材配合物を硬化又は固化するのに役立つ。本発明の様々な例示的な実施形態では、放射線源18の動作はコントローラ20によって制御され、コントローラ20は、放射線源18を作動及び停止させることができ、また、任意選択で放射線源18によって生成される放射線の量も、制御することができる。
【0183】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラ又はブレードとして製造することができる1つ以上のレベリング装置32をさらに備える。レベリング装置32は、その上に連続層を形成する前に、新たに形成された層を真っ直ぐにする役割を果たす。いくつかの実施形態では、レベリング装置32は、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面がトレイの表面に平行になるように配置された円錐形ローラの形状を有する。この実施形態は、システム10の側面図に示されている(
図1C)。
【0184】
円錐形ローラは、円錐又は円錐台の形状を有することができる。
【0185】
円錐形ローラの開口角度(opening angle)は、好ましくは、その対称軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と対称軸14との間の距離との間に一定の比が存在するように選択される。ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pが、点pの垂直方向下方にある点におけるトレイの線速度に比例する(例えば、同じ)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に水平にすることを可能にする。いくつかの実施形態では、ローラは、高さh、垂直軸14からのその最も近い距離における半径R1、及び垂直軸14からのその最も遠い距離における半径R2を有する円錐台の形状を有し、パラメータh、R1及びR2は、R1/R2=(R-h)/hという関係を満たし、Rは、垂直軸14からのローラの最も遠い距離である(例えば、Rはトレイ12の半径とすることができる)。
【0186】
レベリング装置32の動作は、任意選択でかつ好ましくは、コントローラ20によって制御され、コントローラ20は、レベリング装置32を作動及び停止させることができ、また、任意選択で、垂直方向(垂直軸14に平行)及び/又は半径方向(トレイ12に平行で、垂直軸14に向かって又は垂直軸14から離れる方向)に沿って、レベリング装置32の位置を制御することもできる。
【0187】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復移動するように構成されている。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さが、トレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。半径方向の方向に沿ったヘッド16の動きは、任意選択でかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0188】
<方法>
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、本明細書に記載される、三次元物体の積層造形方法が提供される。本実施形態の方法は、本明細書で定義されるように、その少なくとも一部に透明材料を有する物体を製造するために使用可能である。
【0189】
本方法は、一般に、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を順次形成することによって行われ、その結果、複数の層の少なくとも一部の層の各々、又は複数の層の各々の形成は、1つ以上のモデリング材配合物(複数可)を含む造形材(未硬化)を吐出することと、吐出されたモデリング材を硬化条件、好ましくは硬化エネルギー(例えば、放射線の照射)に曝し、それにより、以下にさらに詳細に記載されるように、硬化したモデリング材を形成することとを含むようになる。
【0190】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、例えば、以下に記載されるように、2つ以上の異なるモデリング材配合物を含む造形材(未硬化)を吐出することによって製造される。これらの実施形態のいくつかにおいて、各モデリング材配合物は、本明細書に記載されるように、インクジェット印刷装置の同じ又は異なる吐出ヘッドに属する異なるノズルアレイから吐出される。
【0191】
いくつかの実施形態では、異なるモデリング材配合物を吐出する2つ以上のそのようなノズルアレイは、両方ともAM装置の同じ印刷ヘッド(すなわち、マルチチャネル印刷ヘッド)に配置される。いくつかの実施形態では、異なるモデリング材配合物を吐出するノズルアレイは、別個の印刷ヘッドに配置され、例えば、第1のモデリング材配合物を吐出する第1のノズルアレイは、第1の印刷ヘッドに配置され、第2のモデリング材配合物を吐出する第2のノズルアレイは、第2の印刷ヘッドに配置される。
【0192】
いくつかの実施形態において、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイ及び支持材配合物を吐出するノズルアレイは、両方とも同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイ及び支持材配合物を吐出するノズルアレイは、別々の印刷ヘッドに配置される。
【0193】
モデリング材配合物は、任意選択でかつ好ましくは、印刷ヘッドの同じパスの間に層状に堆積される。層内のモデリング材配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の所望の特性に従って選択され、以下にさらに詳細に記載される。そのような動作モードは、本明細書では「マルチマテリアル」とも呼ばれる。
【0194】
本明細書及び当技術分野で使用される「デジタル材(digital materials)」という語句は、特定の材料の印刷されたゾーンが数ボクセルのレベル又はボクセルブロックのレベルにあるような、顕微鏡スケール又はボクセルレベルでの2つ以上の材料の組み合わせを表す。そのようなデジタル材は、材料の種類の選択によって、及び/又は2つ以上の材料の比及び相対的な空間分布によって影響を受ける新しい特性を示すことができる。
【0195】
例示的なデジタル材では、硬化時に得られる各ボクセル又はボクセルブロックのモデリング材は、硬化時に得られる隣接するボクセル又はボクセルブロックのモデリング材から独立している。その結果、各ボクセル又はボクセルブロックは、異なるモデリング材をもたらすことができ、部品全体の新しい特性は、ボクセルレベルで、複数の異なるモデリング材の空間的組み合わせの結果となる。
【0196】
「デジタル材配合物」という語句は、本明細書及び当技術分野で使用される場合、異なる材料配合物の画素又はボクセルが領域にわたって互いに混在(interlace)するように、画素レベル又はボクセルレベルでの2つ以上の材料配合物の組み合わせを表す。そのようなデジタル材配合物は、材料配合物の種類の選択によって、及び/又は2つ以上の材料配合物の比及び相対的な空間分布によって影響を受ける新しい特性を示すことができる。
【0197】
本明細書で使用される場合、層の「ボクセル」は、層を記述するビットマップの単一のピクセルに対応する、層内の物理的な三次元の体積要素を指す。ボクセルのサイズは、造形材がそれぞれの画素に対応する位置に吐出され、水平にされ、固化されると、造形材によって形成される領域のサイズに概ね等しい。
【0198】
本明細書全体を通して、「ボクセルレベルで」という表現が異なる材料及び/又は特性の文脈で使用される場合は常に、ボクセルブロック間の差だけではなく、ボクセル又は少数ボクセルのグループ間の差も含むことを意味する。好ましい実施形態では、部品全体の特性は、複数の異なるモデル材のボクセルブロックレベルでの空間的な組み合わせの結果である。
【0199】
本発明の実施形態のいずれかのいくつかでは、本明細書に記載されるように層が吐出されると、本明細書に記載されるような硬化条件(例えば、硬化エネルギー)への曝露が行われる。いくつかの実施形態では、硬化性材料は、光硬化性材料、好ましくはUV硬化性材料であり、硬化条件は、放射線源がUV放射線を放出するようなものである。
【0200】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、紫外線照射は、本明細書に記載されるようなLED光源からのものである。
【0201】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、硬化条件は電磁波照射を含み、前記電磁波照射はLED光源からのものである。
【0202】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化条件は紫外線照射を含む。
【0203】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、UV照射の線量(dose)は、例えば、本明細書に記載されるように、層あたり0.1J/cm2より高い。
【0204】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、前記複数の層の少なくとも数個の形成は、20μm未満の層厚であり、配合物は、実施例配合物I、II及びIIIを包含するものとして本明細書で定義される通りである。これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、
図1B~
図1Dに記載のシステム、及び硬化のためのLED光源を使用して実行される。
【0205】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、前記複数の層の少なくとも数個の形成は、25μmより大きい又は30μmより大きい層厚であり、配合物は、実施例配合物IVを包含するものとして本明細書で定義される通りである。これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、
図1Aに記載のシステムと、硬化のためのLED光源とを使用して実行される。
【0206】
造形材が支持材配合物(複数可)を含むいくつかの実施形態では、方法は、硬化した支持材を除去すること(例えば、それによって、隣接する硬化したモデリング材を露出させること)に進む。これは、当業者によって認識されるように、機械的手段及び/又は化学的手段によって行うことができる。支持材の一部は、任意選択で、本明細書に記載されるように、除去時に、例えば、硬化した混合層の内部に残っていてもよい。
【0207】
いくつかの実施形態において、硬化した支持材を除去すると、支持材とモデリング材配合物との硬化した混合物を含む硬化した混合層が現れる。物体の表面におけるそのような硬化した混合物は、任意選択で、本明細書では「つや消し(matte)」とも呼ばれる比較的非反射の外観を有してもよいが、一方、そのような硬化した混合物を欠く表面(例えば、支持材配合物がその上に吐出されなかった)は、比較して「光沢がある(glossy)」と記載される。
【0208】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、方法は、支持材が造形材に含まれている場合、支持材の除去の前又は後のどちらか(好ましくは後)で、硬化したモデリング材を後処理条件に曝露することをさらに含む。
【0209】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、後処理は、(例えば、加熱及び/又は照射に加えて)光開始剤の残留量の分解を促進する条件(本明細書及び当技術分野では光退色とも呼ばれる)に物体を曝露することであるか、又はそれを含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、光退色は、以下の実施例4に記載される通りである。
【0211】
<配合物>
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、本明細書に記載されるようなモデリング材配合物は、1つ以上の硬化性材料を含み、また、本明細書では硬化性配合物とも称される。硬化性配合物は、その粘度(例えば、室温における)が、本明細書に記載されるような硬化条件に曝露されると、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも1桁増加することを特徴とする。
【0212】
本明細書全体を通して、本明細書で「固化可能な材料」とも呼ばれる「硬化性材料」は、本明細書に記載の硬化条件(例えば、硬化エネルギー)にさらされると、固化又は硬化して、本明細書で定義される硬化したモデリング材を形成する化合物(例えば、モノマー化合物、オリゴマー化合物、又はポリマー化合物)である。硬化性材料は、典型的には、適切な硬化条件、典型的には適切なエネルギー源にさらされると、重合及び/又は架橋を受ける重合性材料である。硬化性材料又は固化可能な材料は、典型的には、硬化条件にさらされたときに粘度が少なくとも1桁増加するようなものである。
【0213】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、硬化性材料は、モノマー、オリゴマー又は短鎖ポリマーであり得、各々は、本明細書に記載されるように重合性及び/又は架橋性である。
【0214】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、硬化条件(例えば、放射線などの硬化エネルギー)にさらされると、鎖延長及び架橋のいずれか1つ又は組み合わせによって重合する。
【0215】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件にさらされたときに、重合反応の際にポリマー型のモデリング材を形成することができるモノマー又はモノマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書ではモノマー硬化性材料とも呼ばれる。
【0216】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件にさらされたとき、重合反応の際にポリマー型のモデリング材を形成することができるオリゴマー又はオリゴマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書ではオリゴマー硬化性材料とも呼ばれる。
【0217】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、モノマーかオリゴマーかに拘わらず、単官能性硬化性材料又は多官能性硬化性材料であり得る。
【0218】
本明細書において、単官能性硬化性材料は、硬化条件(例えば、硬化エネルギー)にさらされたときに重合を受けることができる1つの官能基を含む。
【0219】
多官能性硬化性材料は、硬化条件に曝露されたときに重合を受けることができる2つ以上、例えば2つの、3つの、4つの又はそれより多い官能基を含む。多官能性硬化性材料は、例えば、それぞれ重合を受けることができる2つ、3つ又は4つの官能基を含む二官能性、三官能性又は四官能性の硬化性材料であり得る。多官能性硬化性材料中の2つ以上の官能基は、典型的には、本明細書で定義されるように、連結部分によって互いに連結される。連結部分がオリゴマー部分である場合、多官能基はオリゴマー多官能性硬化性材料である。
【0220】
積層造形に一般的に使用され、本実施形態のいくつかで使用される例示的な硬化性材料は、アクリル材料である。
【0221】
本明細書全体を通して、「アクリル材料」という用語は、1つ以上のアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド基(複数可)を有する材料を集合的に包含する。
【0222】
「(メタ)アクリレート((meth)acrylate)」という用語及びその文法上の転用は、1つ以上のアクリレート及び/又はメタクリレート基(複数可)を有する材料を包含する。
【0223】
本明細書に記載される配合物に含まれる硬化性材料は、必要に応じて、硬化前の材料の特性によって定義され得る。そのような特性としては、例えば、分子量(MW)、官能価(例えば、単官能性又は多官能性)及び粘度が挙げられる。
【0224】
本明細書に記載される配合物に含まれる硬化性材料は、それ以外の場合、硬化時に各材料によって提供される特性によって定義される。すなわち、材料は、適切な場合には、硬化条件への曝露時(例えば、重合時)に形成される材料の特性によって定義され得る。これらの特性(例えば、Tg、HDT)は、記載された硬化性材料のいずれかを単独で硬化させたときに形成されるポリマー材料のものである。
【0225】
本明細書で使用される場合、「硬化(curing又はhardening)」という用語は、配合物が硬化されるプロセスを表す。この用語は、モノマー(複数可)及び/又はオリゴマー(複数可)の重合、及び/又はポリマー鎖の架橋を包含する。ここで、ポリマー鎖は、硬化前に存在するポリマーのポリマー鎖、又はモノマー若しくはオリゴマーの重合で形成されたポリマー材料のポリマー鎖のいずれかである。したがって、硬化反応又は硬化の生成物は、典型的にはポリマー材料であり、場合によっては架橋されたポリマー材料である。
【0226】
本明細書で使用される「硬化速度」は、硬化が行われる速度、すなわち、硬化性材料が所与の時間内(例えば、1分)に重合及び/又は架橋を受けた度合いを表す。硬化性材料が重合性材料である場合、この語句は、硬化条件に曝露されたときに、所与の時間内に重合及び/又は架橋を受けた配合物中の硬化性材料のモル%、及び/又は、所与の時間内に重合及び/又は架橋が行われた度合い(例えば、所与の時間内における鎖延長及び/又は架橋の度合い)の両方を包含する。重合速度の決定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。
【0227】
あるいは、「硬化速度」は、所与の時間内に配合物の粘度が上昇する度合い、すなわち、硬化条件に曝露されると配合物の粘度が増加する速度によって表すことができる。
【0228】
本明細書において、「硬化に影響を及ぼす条件」又は「硬化を誘導する条件」という語句は、本明細書において互換的に「硬化条件」又は「硬化誘導条件」とも呼ばれ、硬化性材料を含有する配合物に適用された場合に、モノマー(複数可)及び/又はオリゴマー(複数可)の少なくとも部分的な重合、及び/又はポリマー鎖の架橋を誘導する条件を表す。そのような条件としては、例えば、硬化性材料(複数可)に後述するような硬化エネルギーを印加すること、及び/又は、硬化性材料(複数可)を触媒、共触媒、及び活性化剤などの化学反応性成分と接触させることを含むことができる。
【0229】
硬化を誘導する条件が硬化エネルギーの印加を含む場合、「硬化条件に曝露する」という語句は、吐出された層、好ましくは吐出された層の各々が硬化エネルギーに曝露されることを意味し、曝露は、典型的には、吐出された層(例えば、その各々)に硬化エネルギーを印加することによって行われる。
【0230】
「硬化エネルギー」は、典型的には、放射線の印加又は熱の印加を含む。
【0231】
放射線は、硬化される材料に応じて、電磁放射線(例えば、紫外線又は可視光線)、又は電子ビーム放射、又は超音波放射、又はマイクロ波放射であり得る。放射線の印加(又は照射)は、適切な放射線源によって行われる。例えば、本明細書に記載されるように、紫外線ランプ、可視光ランプ、赤外線ランプ、又はキセノンランプを使用することができる。
【0232】
放射線への曝露時に硬化を受ける硬化性材料、配合物又は系は、本明細書では互換的に「光重合性」又は「光活性化性」又は「光硬化性」と呼ばれる。
【0233】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかでは、硬化性材料は、本明細書に記載されるように、放射線への曝露時に重合又は架橋を受ける光重合性材料であり、いくつかの実施形態では、硬化性材料は、本明細書に記載されるように、紫外可視(UV-vis)放射線への曝露時に重合又は架橋を受けるUV硬化性材料である。
【0234】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の硬化性材料は、光誘起ラジカル重合を介して重合する重合性材料を含む。
【0235】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、透明な硬化性配合物が提供される。
【0236】
「透明な硬化性配合物」とは、硬化したときに透明材料をもたらす、本明細書で定義される硬化性配合物を意味する。
【0237】
「透明」という用語は、それを通る光の透過率を反射する材料の特性を表す。透明材料は、典型的には、それを通過する光の少なくとも70%を透過することができること、又は少なくとも70%の透過率を有することを特徴とする。材料の透過率は、当技術分野で周知の方法を使用して決定することができる。例示的な方法は、以下の実施例の項に記載されている。
【0238】
本明細書に記載の透明な硬化性配合物は、硬化する前にも透明であり得る。
【0239】
本明細書に記載の透明な硬化性配合物は、硬化した材料について以下に記載するように、無色として、及び/又はL*a*b*スケールによって決定される色の特性によって特徴付けることができる。
【0240】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載されるような硬化性配合物は、本明細書で定義されるような光硬化性配合物である。
【0241】
本発明のいくつかの実施形態によれば、透明配合物は、本明細書に記載されるように、硬化性材料と1つ以上の光開始剤(photoinitiator:PI)(複数可)との混合物を含む。
【0242】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤(複数可)は、ホスフィンオキシド型(例えば、モノアシル化(MAPO)又はビスアシル化ホスフィンオキシド型(BAPO)光開始剤を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0243】
例示的なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシドとしては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。約380nmより長く、約450nm以下の波長範囲で照射されたときにフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2、4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)1700として市販されている)との25:75の混合物(重量比)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR(登録商標)4265として市販されている)との1:1の混合物(重量比)、及びエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR 8893X)が挙げられる。
【0244】
例示的な実施形態では、光開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPOとして市販されている)及び/又はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販されている)であるか、又はそれを含む。
【0245】
本発明者らは、以下の実施例の項で説明するように、LED光源からの照射(例えば、UV照射)を硬化条件として利用する3Dインクジェット印刷などの積層造形での使用に適した透明な硬化性配合物を模索してきた。そのような配合物は、実施例の項に記載され、また以下にも記載される。
【0246】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、1つ以上の硬化性材料、少なくとも1つのチオエーテル、及び任意選択で1つ以上の非硬化性材料を含む硬化性配合物が提供される。この配合物は、本明細書では第1の配合物の態様として、又は実施例配合物I、II及びIIIを包含するものとしても言及される。
【0247】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物中の硬化性材料の総量は、配合物の総重量の85重量%~95重量%の範囲である。
【0248】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、硬化したときに、70%より高いか、又は75%より高い光透過率を有することを特徴とする材料を提供する透明配合物である。
【0249】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は光硬化性配合物であり、本明細書に記載されるように、光開始剤をさらに含む。
【0250】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、UV硬化性配合物であり、UV放射を吸収すると活性化される光開始剤をさらに含む。
【0251】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤は、380nmより長い波長、例えば380nm~440nmの範囲の波長の光を吸収すると活性化される。上記の波長の光を吸収すると活性化される任意の光開始剤が考えられる。
【0252】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、380nm~440nmの範囲の波長の光を吸収すると活性化され、470nm未満のピーク波長を有する可視光と、これを含有するモデリング材の熱変形温度(HDT)未満の温度に曝露されると、本明細書で定義されるように分解されるか、又は光退色を受ける。
【0253】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤の総量は、配合物の総重量に対して、3重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2重量%以下である。例示的な実施形態では、光開始剤の総量は、配合物の総重量に対して、0.1重量%~3重量%、又は0.1重量%~2.5重量%、又は0.1重量%~2重量%、又は0.5重量%~3重量%、又は0.5重量%~2.5重量%、又は0.5重量%~2重量%、又は0.8重量%~2重量%、又は1重量%~3重量%、又は1重量%~2重量%の範囲であり、各範囲の間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0254】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤は、本明細書に記載されるホスフィンオキシド型の光開始剤を含むか、又はそれからなる。
【0255】
他の適切な光開始剤としては、ゲルマニウム系光開始剤、例えば、アシルゲルマン型の光開始剤、例えば、モノアシル、ジアシル、トリアシル及びテトラシルゲルマン型の光開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0256】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの炭化水素鎖(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、炭化水素鎖の少なくとも1つは、少なくとも8個、少なくとも10個の炭素原子の長さである。
【0257】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの炭化水素鎖は、飽和炭化水素鎖である。
【0258】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの炭化水素鎖は、直鎖炭化水素鎖である。
【0259】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの炭化水素鎖は、アルキレン鎖、例えば、少なくとも8個、少なくとも10個の炭素原子の長さのアルキレン鎖であるか、又はそのアルキレン鎖を含む。
【0260】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは室温で液体である。
【0261】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、少なくとも1つのカルボキシレート基(複数可)又はチオカルボキシレート基(複数可)をさらに含む。
【0262】
「チオエーテル」とは、少なくとも1つのRa-S-Rb部分を含む材料(化合物)を意味し、Ra及びRbは、本明細書に置換基として記載され、H以外の任意の部分であり得る。
【0263】
いくつかの実施形態では、チオエーテルはRa-S-Rbであり、少なくとも1つのRa及びRbは、本明細書に記載される炭化水素鎖であるか又はそれを含み、さらにカルボキシレート基又はチオカルボキシレート基も含み得る。
【0264】
いくつかの実施形態では、Ra及びRbの1つ以上は、本明細書に記載される硬化性基を含む。
【0265】
いくつかの実施形態では、チオエーテルは、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される2つ以上のRa-S-Rb基を含み、これらは本明細書に記載される分岐ユニットを介して互いに連結されている。
【0266】
例示的な実施形態では、チオエーテルは、下記式Aであるか又は下記式Aで表される。
【0267】
【0268】
上記式A中、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して0又は1であり、但し、c及びfの少なくとも一方は1である。
【0269】
上記式A中、A1及びA2は、それぞれ独立して、例えば、1~6個又は1~4個の炭素原子の長さのアルキレン鎖である。
【0270】
上記式A中、X1及びX2は、それぞれ独立して、-Y1-C(=Y2)-基、又は-C(=Y2)-Y1基であり、Y1及びY2のそれぞれは、独立して、O又はSである。
【0271】
上記式A中、L1及びL2は、それぞれ独立して、少なくとも8個の炭素の炭化水素鎖である。
【0272】
これらの実施形態のいくつかにおいて、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ1である。
【0273】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、少なくとも1つの硬化性基をさらに含む。
【0274】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化性基は、光硬化性基、例えば、UV硬化性基である。
【0275】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルは、硬化性基によって置換又は停止された少なくとも8個の炭素原子の長さである少なくとも1つの炭化水素鎖を含む。
【0276】
チオエーテルのさらなる実施形態は、以下の実施例の項に記載される。
【0277】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、チオエーテルの量は、配合物の総重量に対して、1重量%~7重量%、又は1重量%~5重量%の範囲であり、各範囲の間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0278】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の硬化性材料は、1つ以上の単官能性硬化性材料及び1つ以上の多官能性硬化性材料を含む。
【0279】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の硬化性材料は、500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの脂肪族又は脂環式の単官能性(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量に対して総量で、10重量%~60重量%、又は20重量%~60重量%、又は30重量%~60重量%、又は40重量%~60重量%含み、各範囲の間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0280】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の硬化性材料は、少なくとも1つの芳香族単官能性(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量に対して総量で、5重量%~15重量%、又は8重量%~15重量%含む。
【0281】
本明細書では、脂肪族硬化性材料は、本明細書で定義される機能性(例えば、重合性及び/又は架橋性)部分(複数可)が、脂肪族部分に共有結合している硬化性材料を表す。
【0282】
本明細書では、脂環式硬化性材料は、本明細書で定義される機能性(例えば、重合性及び/又は架橋性)部分(複数可)が、脂環式(シクロアルキル又はヘテロ脂環式)部分に共有結合している硬化性材料を表す。
【0283】
本明細書では、芳香族硬化性材料は、本明細書で定義される機能性(例えば、重合性及び/又は架橋性)部分(複数可)が、1つ以上のアリール又はヘテロアリール部分(複数可)を含む芳香族部分に共有結合している硬化性材料を表す。
【0284】
500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする脂肪族及び/又は脂環式単官能性(メタ)アクリレート材料は、本明細書では成分A1とも呼ばれる。
【0285】
500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする芳香族単官能性(メタ)アクリレート材料は、本明細書では成分A2とも呼ばれる。
【0286】
本実施形態によるモノマー単官能性(メタ)アクリレート材料は、下記式Iにより集合的に表すことができる。
【0287】
【0288】
式中、R1はカルボキシレート、-C(=O)-O-Raであり、R2は水素(アクリレートの場合)又はメチル(メタクリレートの場合)であり、Raは脂肪族、脂環式又は芳香族部分であり、化合物の分子量は500グラム/モル以下である、
【0289】
材料が脂環式モノマー単官能性(メタ)アクリレート材料(複数可)である場合、Raは、これに限定されないが、例えば、イソボルニル又は本明細書に記載の任意の他の置換若しくは非置換のシクロアルキルなどの脂環式部分であるか、又はモルホリン、テトラヒドロフラン、オキサリジンなどの本明細書に記載のヘテロ脂環式部分であるか、又は本明細書に記載の任意の他の置換若しくは非置換のヘテロ脂環式部分であり得る。ここで、置換基(複数可)は、シクロアルキル又はヘテロ脂環式基のためにそれが存在する場合、本明細書に定義されるアリール又はヘテロアリールを含まない。例示的な脂環式モノマー単官能性アクリレートとしては、イソボルニルアクリレート(IBOA)、アクリロイルモルホリン(ACMO)、及びSR218として市販されている材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0290】
材料が脂肪族モノマー単官能性(メタ)アクリレート材料(複数可)である場合、Raは、例えば、置換若しくは非置換のアルキル若しくはアルキレン、又は本明細書で定義される任意の他の短鎖の炭化水素であり得る。ここで、置換基(複数可)は、それが存在する場合、本明細書で定義されるアリール又はヘテロアリールを含まない。
【0291】
材料が芳香族モノマー単官能性(メタ)アクリレート材料(複数可)である場合、Raは、例えば、本明細書で定義されるアリール又はヘテロアリール、例えば、置換又は非置換のフェニル、置換又は非置換のナフタレニルなどであり得るか、又はこれらを含み得る。ここで、置換されている場合、各々が同じか又は異なる1つ、2つ、3つ、又はそれより多い置換基が存在するか、又は本明細書に記載の1つ以上置換又は非置換のアリール若しくは置換又は非置換のヘテロアリールで置換されたアルキル若しくはシクロアルキル(例えば、置換又は非置換のベンジル)が存在し得る。例示的な芳香族モノマー単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、CN131Bとして市販されている材料が挙げられる。
【0292】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、配合物の総重量に対して総量で、30重量%~60重量%、又は40重量%~60重量%で、1つ以上の多官能性(メタ)アクリレート材料を含む。
【0293】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の多官能性(メタ)アクリレート材料(複数可)は、1つ以上の多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、例えば、ウレタンジ(メタ)アクリレート及び/又はウレタントリ(メタ)アクリレートを含む。本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1つ以上の多官能性アクリレート材料(複数可)は、1つ以上の多官能性ウレタンアクリレート、例えば、ウレタンジアクリレート及び/又はウレタントリアクリレートを含む。これらの実施形態のいずれか1つのいくつかによれば、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)の各々は、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする。このような材料は、以下の実施例の項では、成分Cとも呼ばれる。
【0294】
多官能性ウレタン(メタ)アクリレートの実施形態のいくつかによれば、多官能性ウレタン(メタ)アクリレートの総量は、配合物の総重量に対して、15重量%~40重量%、又は15重量%~30重量%、又は15重量%~25重量%の範囲である。
【0295】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートは、硬化時に35℃未満又は20℃未満のTgを有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートを含み、これは本明細書で成分C1とも称される。
【0296】
多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)は、硬化時のTgが20℃以下、例えば、-20℃~20℃、又は0℃~20℃、又は5℃~20℃、又は10℃~20℃、又は15℃~20℃であることを特徴とする1つ以上のオリゴマー多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、以下の実施例の項の成分C1)と、硬化時のTgが20℃より高い、例えば、20℃~70℃、又は20℃~60℃、又は30℃~60℃、又は40℃~60℃であることを特徴とする1つ以上の多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、以下の実施例の項の成分C2)と、を含む。
【0297】
これらの実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化時のTgが20℃以下であることを特徴とする1つ以上のオリゴマー多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)は、1つ以上の二官能性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)を含む。例示的なそのような材料としては、CN991、CN9200、CN996、CN9002、及びCN996H90などの商品名で販売されている材料などの脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートオリゴマー、及び同様の材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0298】
これらの実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化時のTgが20℃より高いことを特徴とする1つ以上のオリゴマー多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(複数可)は、上記Tgを備える、1つ以上の三官能性ウレタン(メタ)アクリレートか、又はそれ以外の多官能性ウレタン(メタ)アクリレート若しくはそれらの混合物を含む。例示的なそのような材料としては、脂肪族ウレタンジアクリレート及びトリアクリレートオリゴマー、例えば、Photomer 6010、Photomer 6019、Photomer 6210、Photomer 6891、Photomer 6893-20 R、Photomer 6008、Photomer 6184として市販されているもの、及び同様の材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0299】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、成分Eについて本明細書で例示されるような少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料を含む。
【0300】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化性材料は、本明細書で成分Bとして例示されるような、Tgが100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いことを特徴とする少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレートを含む。
【0301】
これらの実施形態のいくつかによれば、Tgが100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いことを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートの量は、配合物の総重量に対して、3重量%~15重量%、又は5重量%~15重量%、又は5重量%~10重量%の範囲である。
【0302】
いくつかの実施形態によれば、多官能性(メタ)アクリレートは、Tgが100℃より高い、又は150℃より高いことを特徴とし、成分B1について本明細書に例示されるような脂肪族又は脂環式の材料である。
【0303】
いくつかの他の実施形態によれば、多官能性(メタ)アクリレートは、Tgが100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いことを特徴とし、任意選択で、高い硬化速度(スピード)及び/又は低い体積収縮(例えば、16%未満又は15%未満)を有することさらに特徴とする。代替的又は追加的に、Tgが100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いことを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートは、成分B2について本明細書に例示されるように、(例えば、アクリル基が結合しているコアとして)1つ以上のシアヌレート部分又はイソシアヌレート部分を含むシアヌレート系材料である。
【0304】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、Tgが100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いことを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートは、550グラム/モルより小さい分子量を有することを特徴とする。これらの実施形態のいくつかにおいて、そのような材料は、成分B2(例えば、シアヌレート若しくはイソシアヌレート含有材料か、及び/又は、本明細書に記載されるような高い硬化速度及び/又は低い体積収縮を有することを特徴とする材料)について本明細書に記載される通りである。
【0305】
これらの実施形態のいずれかのいくつかによれば、Tgが100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いことを特徴とする多官能性(メタ)アクリレートは、15%未満の体積収縮率を有することを特徴とする。
【0306】
例示的な実施形態では、この(第1の)態様の実施形態のいずれかに記載される硬化性配合物は、実施例配合物I、II又はIIIを包含し、本明細書に例示される。
【0307】
本明細書に記載されるような配合物は、本明細書では添加剤とも称される1つ以上の非硬化性材料を含む場合がある。
【0308】
そのような材料としては、例えば、界面活性剤(surfactants)、阻害剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料、及び/又は分散剤が挙げられる。
【0309】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、界面活性剤をさらに含む。
【0310】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、界面活性剤の量は、配合物の総重量の0.05重量%よりも低い。
【0311】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤である。
【0312】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、界面活性剤はポリアクリル系材料を含む。
【0313】
界面活性剤を使用して、配合物の表面張力を、典型的には約30ダイン/cm(約0.03N/m)である噴射又は印刷プロセスに必要な値まで低下させることができる。そのような薬剤としては、シリコーン材料、例えば、PDMSなどの有機ポリシロキサンと、BYKタイプの界面活性剤として市販されている有機ポリシロキサン誘導体とが挙げられる。
【0314】
本発明の実施形態のいずれかのいくつかによれば、本明細書に記載される配合物は、例えば、本明細書に記載されるような1つ以上の界面活性剤を含む。
【0315】
いくつかの実施形態によれば、界面活性剤の量は、配合物の総重量の0.05重量%未満であり、例えば、0.001重量%~0.045重量%の範囲であり得る。
【0316】
適切な安定剤(安定化剤)としては、例えば、高温で配合物を安定化する熱安定剤が挙げられる。
【0317】
「充填剤」という用語は、ポリマー材料の特性を変更し、及び/又は最終生成物の品質を調整する不活性材料を表す。充填剤は、例えば炭酸カルシウム、シリカ、及び粘土などの無機粒子であってもよい。
【0318】
重合中又は冷却中の収縮を低減するために、例えば、熱膨張係数を低下させ、強度を高め、熱安定性を高め、コストを低減し、及び/又はレオロジー特性を採用するために、モデリング配合物に充填剤を添加してもよい。ナノ粒子充填剤は、典型的には、インクジェット用途などの低粘度を必要とする用途に有用である。
【0319】
いくつかの実施形態では、分散剤及び/又は安定剤及び/又は充填剤の各々の濃度は、それらが存在する場合、それぞれの配合物の総重量に対して0.01重量%~2重量%、又は0.01重量%~1重量%の範囲である。分散剤は、典型的には、それぞれの配合物の総重量に対して0.01重量%~0.1重量%、又は0.01重量%~0.05重量%の範囲の濃度で使用される。
【0320】
いくつかの実施形態において、配合物は、阻害剤をさらに含む。阻害剤は、硬化条件に曝露される前の硬化を防止又は低減するために含まれる。好適な阻害剤には、例えば、Genoradタイプとして、又はMEHQとして市販されているものが含まれる。任意の他の適切な阻害剤が企図される。
【0321】
顔料は、有機顔料及び/又は無機顔料及び/又は金属顔料であり得、いくつかの実施形態では、顔料はナノ粒子を含むナノスケール顔料である。
【0322】
例示的な無機顔料としては、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛及び/又はシリカのナノ粒子が挙げられる。例示的な有機顔料としては、ナノサイズのカーボンブラックが挙げられる。
【0323】
いくつかの実施形態では、白色顔料と染料の組み合わせを使用して、着色硬化材料を調製する。
【0324】
染料は、広範な種類の溶媒可溶性染料のいずれであってもよい。いくつかの非限定的な例は、黄色、オレンジ色、茶色及び赤色であるアゾ染料、緑色及び青色であるアントラキノン染料及びトリアリールメタン染料、及び黒色であるアジン染料である。
【0325】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、青色染料又は青色顔料をさらに含み、これは、得られた硬化した材料に生じ得る黄色をマスキングすることを目的とするものである。
【0326】
これらの実施形態のいくつかによれば、青色染料又は青色顔料の量は、配合物の総重量に対して、5×10-4重量%未満、又は2×10-4重量%未満、又は1×10-4重量%未満であり、例えば、1×10-6重量%~1×10-4重量%、1×10-5重量%~1×10-4重量%、又は1×10-5重量%~8×10-5重量%の範囲であり得る。
【0327】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は、硫黄含有チオール化合物を含まない。
【0328】
上記の実施形態のいずれかとの関連で使用される「硫黄含有チオール材料」という用語は、本明細書で定義される1つ以上のSH(チオール)末端基を含む化合物を包含する。この用語は、例えば、本明細書で定義されるように、1つ以上のチオール基、チオアルコキシ基、及び/又はチオアリールオキシ基を含む化合物を包含する。
【0329】
例示的な硫黄含有化合物には、β-メルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート、及び/又はアルカンチオールが含まれる。
【0330】
β-メルカプトプロピオネートのいくつかの例としては、グリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、及びトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられるが、これらには限定されない。
【0331】
本発明のいくつかの実施形態によれば、硫黄含有化合物は、グリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、及び/又はトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)である。
【0332】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、実施例配合物IVを包含し、本明細書で実施例配合物IVとして例示される別の光硬化性配合物が提供される。この配合物は、本明細書では第2の配合物の態様とも呼ばれる。この配合物はまた、いくつかの実施形態では、第1の配合物の態様について本明細書に記載されるような透明な硬化性配合物である。
【0333】
この態様の実施形態によれば、配合物は、
少なくとも1つの光開始剤であって、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、配合物の総重量に対して3重量%以下又は2重量%以下の総量である少なくとも1つの光開始剤と、
少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレート材料であって、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、例えば、成分A、A1及びA2について本明細書に記載されるように、配合物の総重量に対して50重量%~70重量%の総量であり、500グラム/モル未満の分子量を有することを特徴とする、少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレート材料と、
少なくとも2つの多官能性(メタ)アクリル材料であって、配合物の総重量に対して30重量%~50重量%の総量であり、多官能性(メタ)アクリル材料の少なくとも1つは、100℃より高い、150℃より高い、又は250℃より高いTgを有し、15%より低い体積収縮及び/又は高い硬化速度を有することを特徴とし、及び/又は、例えば成分B2について本明細書に記載されるようなシアヌレート部分若しくはイソシアヌレート部分を含む、少なくとも2つの多官能性(メタ)アクリル材料と、
少なくとも1つの多官能(メタ)アクリル材料であって、成分D3について本明細書に記載されるように、中~高粘度で、かつ20℃より低い、0℃より低い、又は-20℃より低いTgを有することを特徴とするエトキシル化多官能性(メタ)アクリレート材料である、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリル材料と、を含む。
【0334】
この態様のいくつかの実施形態では、少なくとも2つの多官能性(メタ)アクリレート材料の平均Tgは、硬化した場合、60℃以下、又は50℃以下、又は40℃以下である。
【0335】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、Tgが100℃より高い、又は150℃より高いことを特徴とする多官能性(メタ)アクリル材料の量は、配合物の総重量の1重量%~5重量%の範囲である。
【0336】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、中~高粘度で、かつ20℃未満又は0℃未満のTgを有することを特徴とするエトキシル化多官能性(メタ)アクリレート材料の量は、配合物の総重量の3~10℃又は3~8℃(重量%)の範囲である。
【0337】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの単官能性(メタ)アクリレート材料は、(例えば、成分A1について)本明細書に記載されるように、少なくとも1つの脂肪族又は脂環式(非芳香族)単官能性(メタ)アクリレート材料を配合物の総重量の50重量%~60重量%の量で含み、かつ、(例えば、成分A2について)本明細書に記載されるように、少なくとも1つの芳香族単官能性(メタ)アクリレート材料を配合物の総重量の5重量%~10%の量で含む。
【0338】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性(メタ)アクリレート材料は、成分Cについて本明細書に記載されるように、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートをさらに含む。
【0339】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートは、成分C1について本明細書に記載されるように、硬化時のTgが35℃未満又は20℃未満であることを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートを含む。
【0340】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする少なくとも1つの多官能性ウレタンアクリレートの総量は、配合物の総重量の10重量%~20重量%の範囲である。
【0341】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、多官能性(メタ)アクリレート材料は、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料(成分E)をさらに含む。
【0342】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料は、芳香族である。
【0343】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの多官能性エポキシ(メタ)アクリレート材料の量は、配合物の総重量の10重量%~20重量%の範囲である。
【0344】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤は、α-置換ケトン型の光開始剤、例えば、α-アミンケトン型の光開始剤及び/又はα-ヒドロキシケトン型の光開始剤を含まない。
【0345】
例示的な実施形態では、α-置換ケトン型の光開始剤は、芳香族α-置換ケトン、例えば芳香族α-アミンケトン及び/又は芳香族α-ヒドロキシケトンである。UV硬化性配合物のPIとして一般的に実用化される任意のそのような光開始剤は、これらの実施形態に包含される。
【0346】
例示的なα-ヒドロキシケトンPIには、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標)184,I-184として市販)、2-ヒドロキシ-1-{1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェニル]-1,3,3トリメチル-インダン-5-イル}-2-メチル-プロパン-1-オン(ESACURE ONE(登録商標)として市販)、及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959、I-2959として市販)が含まれるが、これらに限定されない。
【0347】
この態様について本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤は、本明細書に記載されるように、ホスフィンオキシド型光開始剤を含むか、又はそれからなる。
【0348】
この態様についての本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、ホスフィンオキシド型の光開始剤は、少なくとも380nmの波長(例えば、380nm~440nm)の放射線によって活性化される。
【0349】
この態様による配合物は、本明細書で上述したように、追加の非反応性成分をさらに含み得る。
【0350】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、透明配合物のいずれかは、粘度、表面張力及び/又は吐出性などの特性を特徴とし、それにより三次元インクジェット印刷などの積層造形に使用可能になる。
【0351】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、透明配合物は、硬化されると、透明材料をもたらす。
【0352】
いくつかの実施形態によれば、透明材料は、本明細書に記載のX-riteデバイスを使用して測定した場合に、70%以上の透過率を有することを特徴とする。
【0353】
いくつかの実施形態によれば、積層造形は、LED光源からのUV照射への曝露を含む。
【0354】
いくつかの実施形態によれば、LED光源から放出される相対的なUV線量は、5ミクロン~60ミクロン、10ミクロン~50ミクロン、又は15ミクロン~30ミクロンの層厚に対して、層当たり0.1J/cm2より高い。
【0355】
いくつかの実施形態によれば、積層造形法は、構成されたパターンで複数の層を吐出することを含み、層の少なくとも一部について各層の厚さは20μm未満であり、光硬化性配合物は、実施例配合物I、II及びIIIを包含するものとして本明細書で定義される通りである。
【0356】
いくつかの実施形態によれば、積層造形法は、構成されたパターンで複数の層を吐出することを含み、層の少なくとも一部について、各層の厚さは25μmより厚いか、又は30μmより厚く、光硬化性配合物は、実施例配合物IVを包含するものとして本明細書で記載される通りである。
【0357】
いくつかの実施形態によれば、透明材料は、少なくとも70%の透過率、及び実施例の項に記載のように測定した場合、8未満、又は6未満の黄色度指数のうちの少なくとも一方を有することを特徴とする。
【0358】
<物体>
本実施形態の方法は、本明細書に記載されるように、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を形成することによって、層毎に三次元物体を製造する。
【0359】
本明細書に記載の方法によって得ることができる最終的な三次元物体は、モデリング材、又はモデリング材の組み合わせ、又はモデリング材(複数可)と支持材(複数可)の組み合わせ、又はそれらの修正(例えば、硬化後)で作られる。これらの操作はすべて、固体自由造形の当業者には周知である。
【0360】
いくつかの実施形態では、物体は、その1つ以上の部分に透明材料を含む。
【0361】
いくつかの実施形態では、物体は、以下の実施例の項で説明するように決定される場合、その少なくとも一部において、少なくとも70%の透過率、及び黄色度指数が8未満又は6未満、という特性のうちの1つ以上を有することを特徴とする。
【0362】
いくつかの実施形態では、物体は、その少なくとも一部において、表6に示される特性のうちの1つ以上を有することを特徴とする。
【0363】
本明細書で使用される場合、「耐衝撃性」という語句は、本明細書及び当技術分野では互換的に「衝撃強度」又は単に「衝撃」とも呼ばれ、機械的衝撃による破壊に対する材料の耐性を表し、完全に破壊する前に材料によって吸収されるエネルギー量で表される。耐衝撃性は、例えば、ASTM D256-06規格のアイゾット衝撃試験(「ノッチ付きアイゾット衝撃」又は「アイゾット衝撃」としても知られている)を使用して、及び/又は以下に記載されるように測定することができ、J/mで表される。
【0364】
本明細書で使用される場合、HDTは、それぞれの配合物又は配合物の組み合わせが、ある特定の温度で所定の荷重下で変形する温度を表す。配合物又は配合物の組み合わせのHDTを決定するための適切な試験手順は、ASTM D-648シリーズ、特にASTM D-648-06及びASTM D-648-07の方法である。本発明の様々な例示的な実施形態では、構造体のコア及びシェルは、ASTM D-648-06の方法によって測定されるそれらのHDTだけでなく、ASTM D-648-07の方法によって測定されるそれらのHDTでも異なる。本発明のいくつかの実施形態では、構造体のコア及びシェルは、ASTM D-648シリーズの任意の方法によって測定されるHDTが異なる。本明細書の実施例の大部分では、0.45MPaの圧力でのHDTを使用した。
【0365】
本明細書において、材料の「Tg」は、E”曲線の極大の位置として定義されるガラス転移温度を表し、E”は材料の損失弾性率を温度の関数として表したものである。
【0366】
大まかに言えば、Tg温度を含む温度範囲内で昇温すると、材料、特に高分子材料の状態は、ガラスの状態からゴムの状態に徐々に変化する。
【0367】
ここで、「Tg範囲」は、上で定義したTg温度において、E”の値がその値(例えば、その値までであり得る)の少なくとも半分である温度範囲である。
【0368】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ポリマー材料の状態は、上記で定義したTg範囲内でガラスの状態からゴムの状態に徐々に変化すると仮定される。Tg範囲の最低温度は、本明細書ではTg(低)と呼ばれ、Tg範囲の最高温度は、本明細書ではTg(高)と呼ばれる。
【0369】
本明細書全体を通して、硬化性材料がそれから得られる硬化した材料の特性によって定義されるときはいつでも、この特性は、この硬化性材料自体から得られる硬化した材料に対するものであることを理解されたい。
【0370】
「引張強度」とは、材料が破断する前に伸張又は引張されている間に耐えることができる最大応力を意味する。引張強度は、例えば、ASTM D-638-03に従って決定することができる。
【0371】
「引張弾性率」とは、材料の剛性を意味し、一軸変形の線形弾性領域における材料の応力(単位面積当たりの力)と歪み(比例変形)との間の関係として定義される。引張弾性率は、例えば、ASTM D-638-04に従って決定することができる。
【0372】
「曲げ強度」又は「曲げ応力」とは、曲げ試験で降伏する直前の材料の応力を意味する。曲げ強度は、例えば、ASTM D-790-03に従って決定することができる。
【0373】
「曲げ弾性率」又は「曲げY弾性率」とは、曲げ変形における応力と歪みの比を意味し、ASTM D790などの曲げ試験によって得られる応力-歪み曲線の勾配から決定される。曲げ弾性率は、例えば、ASTM D-790-04に従って決定することができる。
【0374】
本明細書全体を通して、特に断らない限り、粘度の値は、ブルックフィールド粘度計において25℃で測定した場合の材料又は配合物の粘度について提供される。
【0375】
本出願から得られる特許の存続期間中に、多くの関連する硬化性材料及び/又は硬化性材料の重合を促進するためのそれぞれの薬剤が開発されることが予想され、第1の硬化性材料、第2の硬化性材料及びそれらの重合を促進する薬剤という用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に含むことが意図されている。
【0376】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%又は±5%を指す。
【0377】
用語「comprises、comprising(備える、含む)」「includes、including(含む)」「having(有する)」及びそれらの活用形は、「を含むが、これに限定されない」ということを意味する。
【0378】
用語「からなる(consisting of)」は、「を含み、これに限定される」ということを意味する。
【0379】
「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得るが、追加の成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0380】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0381】
本願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲の形式で提示され得る。範囲の形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲と、その範囲内の個々の数値とを具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲と、その範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6と、を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0382】
本明細書において数値範囲が示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲」及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1指示数及び第2の指示数と、第1指示数及び第2の指示数の間のすべての分数及び整数とを含むことを意味する。
【0383】
本明細書では、「方法」及び「プロセス」という用語は互換的に使用され、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に知られているか、又は既知の様式、手段、技術及び手順から容易に開発される、様式、手段、技術及び手順を含むがこれらには限定されない。
【0384】
本明細書全体を通して、配合物(例えば、モデリング配合物)の実施形態の文脈において、「重量による%」又は「重量%」又は「wt%」という語句が示されるときはいつでも、それぞれの未硬化配合物の総重量に対する重量%を意味する。
【0385】
本明細書全体を通して、アクリル材料は、1つ以上のアクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基及び/又はメタクリルアミド基を有することを特徴とする材料を総称するために使用される。
【0386】
同様に、アクリル基は、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基及び/又はメタクリルアミド基、好ましくはアクリレート基又はメタクリレート基(本明細書では(メタ)アクリレート基とも呼ばれる)である硬化性基を総称するために使用される。
【0387】
本明細書全体を通して、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル材料及びメタクリル材料を包含する。
【0388】
本明細書全体を通して、「連結部分」又は「連結基」という語句は、化合物中の2つ以上の部分又は基を連結する基を表す。連結部分は、典型的には、二官能性又は三官能性の化合物に由来し、2個又は3個のラジカル部分とみなすことができ、これらはそれぞれ2個又は3個の原子を介して2個又は3個の他の部分に連結されている。
【0389】
例示的な連結部分としては、本明細書で定義されるように、1個以上のヘテロ原子によって任意に中断される炭化水素部分又は鎖、及び/又は連結基として定義される場合、以下に列挙される化学基のいずれかが挙げられる。
【0390】
化学基が本明細書で「末端基」と呼ばれる場合、それは、その1つの原子を介して別の基に結合している置換基として解釈されるべきである。
【0391】
本明細書全体を通して、「炭化水素」という用語は、主に炭素原子及び水素原子で構成される化学的な基を総称する。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール及び/又はシクロアルキルから構成され得、それぞれが置換又は非置換であり得、1つ以上のヘテロ原子によって中断され得る。炭素原子の数は、2~30の範囲とすることができ、好ましくはより少なく、例えば1~10、又は1~6、又は1~4の範囲である。炭化水素は、連結基又は末端基であり得る。
【0392】
ビスフェノールAは、2つのアリール基及び1つのアルキル基から構成される炭化水素の一例である。ジメチレンシクロヘキサンは、2つのアルキル基及び1つのシクロアルキル基から構成される炭化水素の一例である。
【0393】
本明細書で使用される場合、「アミン」という用語は、-NR’R”基と-NR’-基の両方を表し、R’及びR”はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は以下に定義される通りである。
【0394】
したがって、アミン基は、R’及びR”の両方が水素である第1級アミン、R’が水素であり、R”がアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである第2級アミン、又はR’及びR”のそれぞれが独立してアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである第三級アミンであり得る。
【0395】
あるいは、R’及びR”は、それぞれ独立して、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。
【0396】
「アミン」という用語は、アミンが本明細書で以下に定義される末端基である場合には、-NR’R”基を表すために本明細書で使用され、アミンが連結基であるか、又は連結部分であるか、又はその一部である場合には、-NR’-基を表すために本明細書で使用される。
【0397】
「アルキル」という用語は、直鎖及び分岐鎖の基を含む飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は、1~30個、又は1~20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1~20」が本明細書に記載されている場合、それは常に、基、この場合アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個以下の炭素原子を含み得ることを意味する。アルキル基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換アルキルは、1つ以上の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物(halide)、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。
【0398】
アルキル基は、この語句が本明細書で定義されているように、単一の隣接原子に結合している末端基、又はこの語句が本明細書で定義されているように、その鎖中にある少なくとも2つの炭素を介して2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。アルキルが連結基である場合、それは本明細書では「アルキレン」又は「アルキレン鎖」とも呼ばれる。
【0399】
本明細書で使用されるアルケン及びアルキンは、それぞれ1つ以上の二重結合又は三重結合を含む、本明細書で定義されるアルキルである。
【0400】
「シクロアルキル」という用語は、1つ以上の環が完全に共役したπ電子系を有さない、全炭素の単環式又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を表す。例としては、シクロヘキサン、アダマンチン、ノルボルニル、イソボルニルなどが挙げられるが、これには限定されない。シクロアルキル基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換シクロアルキルは、1つ以上の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。シクロアルキル基は、この語句が本明細書で定義されているように、単一の隣接原子に結合している末端基であるか、又はこの語句が本明細書で定義されているように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0401】
「ヘテロ脂環式(heteroalicyclic)」という用語は、窒素、酸素及び硫黄などの1つ以上の原子を環内に有する単環式又は縮合環の基を表す。環はまた、1つ以上の二重結合を有し得る。しかしながら、環は完全に共役したπ電子系を有さない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ、オキサリジンなどである。
【0402】
ヘテロ脂環式は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換ヘテロ脂環式基は、1つ以上の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。ヘテロ脂環式基は、この語句が本明細書で定義されているように、単一の隣接原子に結合している末端基であるか、又はこの語句が本明細書で定義されているように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0403】
「アリール」という用語は、完全に共役したπ電子系を有する全炭素の単環式又は縮合環多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。アリール基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。置換アリールは、1つ以上の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。アリール基は、この用語が本明細書で定義されているように、単一の隣接原子に結合している末端基であるか、又はこの用語が本明細書で定義されているように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0404】
「ヘテロアリール」という用語は、1つ以上の原子、例えば窒素、酸素及び硫黄を環内に有し、さらに完全に共役したπ電子系を有する単環式又は縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)の基を表す。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン及びプリンが挙げられるが、これに限定されない。ヘテロアリール基は、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。置換ヘテロアリールは、1つ以上の置換基を有してもよく、各置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、ウレア、チオウレア、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。置換ヘテロアリール基は、この語句が本明細書で定義されているように、単一の隣接原子に結合している末端基であるか、又はこの語句が本明細書で定義されているように、その2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0405】
「ハロゲン化物(halide)」及び「ハロ(halo)」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。
【0406】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン化物でさらに置換された、上で定義したアルキル基を表す。
【0407】
「硫酸塩」という用語は、この用語が本明細書で定義されているような、-O-S(=O)2-OR’末端基を表すか、又はこれらの語句が本明細書で定義されているような、-O-S(=O)2-O-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0408】
「チオ硫酸塩」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基を表すか、又は-O-S(=S)(=O)-O-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0409】
「亜硫酸塩」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-O-S(=O)-O-R’末端基を表すか、又は-O-S(=O)-O-基である連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0410】
「チオ亜硫酸塩」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-O-S(=S)-O-R’末端基を表すか、又は-O-S(=S)-O-基である連結基を表し、R’は本明細書で定義された通りである。
【0411】
「スルフィン酸塩」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-S(=O)-OR’末端基を表すか、又は-S(=O)-O-基である連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0412】
「スルホキシド」又は「スルフィニル」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-S(=O)R’末端基を表すか、又は-S(=O)-連結基を表し、R’は本明細書で定義される通りである。
【0413】
用語「スルホネート」は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-S(=O)2-R’末端基を表すか、又は-S(=O)2-連結基を表し、R’は本明細書で定義される通りである。
【0414】
「S-スルホンアミド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-S(=O)2-NR’R”末端基を表すか、又は-S(=O)2-NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義される通りである。
【0415】
「N-スルホンアミド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、R’S(=O)2-NR”-末端基を表すか、又は-S(=O)2-NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義される通りである。
【0416】
「ジスルフィド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-S-SR’末端基を表すか、又は-S-S-連結基を表し、R’は本明細書で定義される通りである。
【0417】
「ホスホネート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-P(=O)(OR’)(OR”)末端基を表すか、又は-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義される通りである。
【0418】
「チオホスホネート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-P(=S)(OR’)(OR”)末端基を表すか、又は-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義される通りである。
【0419】
「ホスフィニル」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-PR’R”末端基を表すか、又は-PR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0420】
「ホスフィンオキシド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-P(=O)(R’)(R”)末端基を表すか、又は-P(=O)(R’)-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0421】
「ホスフィンスルフィド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-P(=S)(R’)(R”)末端基を表すか、又は-P(=S)(R’)-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0422】
「ホスファイト」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-O-PR’(=O)(OR”)末端基を表すか、又は-O-PH(=O)(O)-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0423】
本明細書で使用される「カルボニル」又は「カーボネート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-C(=O)-R’末端基を表すか、又は-C(=O)-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0424】
本明細書で使用される「チオカルボニル」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-C(=S)-R’末端基を表すか、又は-C(=S)-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0425】
本明細書で使用される「オキソ」という用語は、(=O)基を表し、酸素原子は、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結されている。
【0426】
本明細書で使用される「チオオキソ」という用語は、(=S)基を表し、硫黄原子は、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結されている。
【0427】
「オキシム」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、=N-OH末端基を表すか、又は=N-O-連結基を表す。
【0428】
「ヒドロキシル」という用語は-OH基を表す。
【0429】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-O-アルキル基及び-O-シクロアルキル基の両方を表す。アルコキシドという用語は-R’O-基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0430】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-O-アリール基及び-O-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0431】
「チオヒドロキシ」又は「チオール」という用語は-SH基を表す。「チオラート」という用語は-S-基を表す。
【0432】
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-S-アルキル基及び-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0433】
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-S-アリール基及び-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0434】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書では「アルコール」とも呼ばれ、ヒドロキシ基で置換された、本明細書で定義されるアルキルを表す。
【0435】
「シアノ」という用語は、-C≡N基を表す。
【0436】
「イソシアネート」という用語は、-N=C=O基を表す。
【0437】
「イソチオシアネート」という用語は、-N=C=S基を表す。
【0438】
「ニトロ」という用語は-NO2基を表す。
【0439】
用語「ハロゲン化アシル」は、-(C=O)R””基を表し、R””は、本明細書で定義されるように、ハロゲン化物である。
【0440】
「アゾ」又は「ジアゾ」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-N=NR’末端基を表すか、又は-N=N-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0441】
「ペルオキソ」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-O-OR’末端基を表すか、又は-O-O-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0442】
本明細書で使用される「カルボキシレート」という用語は、C-カルボキシレート及びO-カルボキシレートを包含する。
【0443】
「C-カルボキシレート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-C(=O)-OR’末端基を表すか、又は-C(=O)-O-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0444】
「O-カルボキシレート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-OC(=O)R’末端基を表すか、又は-OC(=O)-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0445】
カルボキシレートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-カルボキシレートにおいて、R’と炭素原子とが一緒に結合して環を形成し、この基はラクトンとも呼ばれる。あるいは、R’とOとが一緒に結合してO-カルボキシレート中に環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0446】
本明細書で使用される「チオカルボキシレート」という用語は、C-チオカルボキシレート及びO-チオカルボキシレートを包含する。
【0447】
「C-チオカルボキシレート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-C(=S)-OR’末端基を表すか、又は-C(=S)-O-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0448】
「O-チオカルボキシレート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-OC(=S)R’末端基を表すか、又は-OC(=S)-連結基を表し、R’は本明細書で定義されている通りである。
【0449】
チオカルボキシレートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-チオカルボキシレートにおいて、R’と炭素原子とが一緒に結合して環を形成し、この基はチオラクトンとも呼ばれる。あるいは、R’とOとが一緒に結合してO-チオカルボキシレート中に環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0450】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0451】
「N-カルバメート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、R”OC(=O)-NR’-末端基を表すか、又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0452】
「O-カルバメート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-OC(=O)-NR’R”-末端基を表すか、又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0453】
カルバメートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、O-カルバメートにおいてR’と炭素原子とが一緒に結合して環を形成する。あるいは、R’とOとが一緒に結合してN-カルバメート中に環を形成する。環状カルバメートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0454】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0455】
本明細書で使用される「チオカルバメート」という用語は、N-チオカルバメート及びO-チオカルバメートを包含する。
【0456】
「O-チオカルバメート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-OC(=S)-NR’R”末端基を表すか、又は-OC(=S)-NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0457】
「N-チオカルバメート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、R”OC(=S)NR’-末端基を表すか、又は-OC(=S)NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0458】
チオカルバメートは、カルバメートについて本明細書に記載されるように、直鎖状又は環状であり得る。
【0459】
本明細書で使用される「ジチオカルバメート」という用語は、S-ジチオカルバメート及びN-ジチオカルバメートを包含する。
【0460】
「S-ジチオカルバメート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-SC(=S)-NR’R”末端基を表すか、又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0461】
「N-ジチオカルバメート」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、R「SC(=S)NR’-末端基を表すか、又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0462】
本明細書で「ウレイド(ureido)」とも呼ばれる「ウレア」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-NR’C(=O)-NR”R”’末端基を表すか、又は-NR’C(=O)-NR”-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りであり、R’及びR”についてR”’は本明細書で定義されている通りである。
【0463】
本明細書で「チオウレイド(thioureido)」とも呼ばれる「チオウレア」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-NR’-C(=S)-NR”R”’末端基を表すか、又は-NR’-C(=S)-NR”-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書で定義されている通りである。
【0464】
本明細書で使用される「アミド」という用語は、C-アミド及びN-アミドを包含する。
【0465】
「C-アミド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-C(=O)-NR’R”末端基を表すか、又は-C(=O)-NR’-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0466】
「N-アミド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、R’C(=O)-NR”-末端基を表すか、又はR’C(=O)-N-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0467】
アミドは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-アミドにおいて、R’と炭素原子が一緒に結合して環を形成し、この基はラクタムとも呼ばれる。環状アミドは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能することができる。
【0468】
「グアニル」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、R’R”NC(=N)-末端基を表すか、又は-R’NC(=N)-連結基を表し、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0469】
「グアニジン」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-R’NC(=N)-NR”「R”’」末端基を表すか、又は-R’NC(=N)-NR”」-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書で定義されている通りである。
【0470】
「ヒドラジン」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-NR’-NR”R”’末端基を表すか、又は-NR’-NR”-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書で定義されている通りである。
【0471】
本明細書で使用される場合、「ヒドラジド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-C(=O)-NR’-NR”R”’末端基を表すか、又は-C(=O)-NR’-NR”-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書で定義されている通りである。
【0472】
本明細書で使用される場合、「チオヒドラジド」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-C(=S)-NR’-NR”R”’末端基を表すか、又は-C(=S)-NR’-NR”-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書で定義されている通りである。
【0473】
「シアヌラート」という用語は、
【0474】
【0475】
【0476】
ここで、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0477】
「イソシアヌレート」という用語は、
【0478】
【0479】
【0480】
ここで、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0481】
「チオシアヌレート」という用語は、
【0482】
【0483】
【0484】
ここで、R’及びR”は本明細書で定義されている通りである。
【0485】
本明細書で使用される場合、「アルキレングリコール」という用語は、これらの語句が本明細書で定義されているように、-O-[(CR’R”)z-O]y-R”’末端基を表すか、又は-O-[(CR’R”)z-O]y-連結基を表し、R’、R”及びR”’は本明細書で定義されている通りであり、zは1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2又は3の整数であり、yは1以上の整数である。好ましくは、R’及びR”は両方とも水素である。zが2であり、yが1である場合、この基はエチレングリコールである。zが3であり、yが1である場合、この基はプロピレングリコールである。yが2~4である場合、アルキレングリコールは、本明細書ではオリゴ(アルキレングリコール)と呼ばれる。
【0486】
本明細書では、「エトキシル化(ethoxylated)」材料は、本明細書で定義されるように、1つ以上のアルキレングリコール基、又は好ましくは1つ以上アルキレングリコール鎖を含むアクリル又はメタクリル化合物を表す。エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、単官能性、又は好ましくは多官能性、すなわち、二官能性、三官能性、四官能性などであり得る。
【0487】
多官能性材料では、典型的には、(メタ)アクリレート基の各々は、アルキレングリコール基又は鎖に連結され、アルキレングリコール基又は鎖は、例えば、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール(例えば、ビスフェノールA)などの分岐ユニットを介して互いに連結される。
【0488】
いくつかの実施形態において、エトキシル化材料は、少なくとも1つ又は少なくとも2つのエトキシル化基、すなわち、少なくとも1つ又は少なくとも2つのアルキレングリコール部分又はアルキレングリコール基を含む。アルキレングリコール基の一部又は全部は、互いに連結してアルキレングリコール鎖を形成することができる。例えば、30個のエトキシル化基を含むエトキシル化材料は、互いに連結された30個のアルキレングリコール基の1本の鎖、例えば各々が互いに連結された15個のアルキレングリコール部分である2本の鎖であって、分岐部分を介して互いに連結された2本の鎖、又は、例えば各々が互いに連結された10個のアルキレングリコール基の3本の鎖であって、分岐部分を介して互いに連結された3本の鎖を含むことができる。より短い鎖及びより長い鎖も考えられる。
【0489】
エトキシル化材料は、任意の長さの1つ、2つ又はそれを超える数のアルキレングリコール鎖を含むことができる。
【0490】
本明細書で使用される「分岐ユニット」という用語は、マルチラジカルを表し、好ましくは脂肪族又は脂環式基を表す。「マルチラジカル(multi-radical)」とは、そのユニットが2つ以上の原子及び/又は基又は部分間を連結するように2つ以上の結合点を有することを意味する。
【0491】
いくつかの実施形態では、分岐ユニットは、2つ、3つ又はそれを超える数の官能基を有する化学的な部分から誘導される。いくつかの実施形態では、分岐ユニットは、本明細書で定義される分岐アルキル又はシクロアルキル(脂環式)又はアリール(例えば、フェニル)である。
【0492】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の適切な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の説明された実施形態で適切であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0493】
本明細書で説明され、以下の特許請求の範囲の項で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0494】
ここで、上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示する、以下の実施例を参照する。
【0495】
[実施例1]
-透明なモデリング材配合物の化学組成-
参考例配合物(reference formulations)I及びIIと、硬化時に透明材料をもたらす本実施形態のいくつかによる実施例配合物(exemplary formulations)と、を構成する例示的な化学成分を、以下の表1に示す。実施例配合物は、本明細書では「透明なモデリング材配合物」又は「透明なモデリング配合物」又は「透明なモデリング配合物」とも総称される。
【0496】
【0497】
[実施例2]
-例示的な利用可能な透明なモデリング材配合物-
以下の表2Aは、硬化したときに透明材料をもたらす参考例配合物、例えば参考例配合物Iの化学組成を示す。
【0498】
【0499】
例示的な参考例配合物Iの平均Tgは、60℃~70℃の範囲である。
【0500】
以下の表2Bは、硬化したときに透明材料をもたらす他の例示的な参考例配合物、例えば参考例配合物IIの化学組成を示す。
【0501】
【0502】
例示的な参考例配合物IIの平均Tgは、60℃~70℃の範囲である。
【0503】
参考例配合物I及びIIにより形成された硬化した材料は、典型的には、以下の特性によって特徴付けられる。
【0504】
・30MPaより大きい引張強度(本明細書で定義)
・50MPaより大きい曲げ強度(本明細書で定義)
・1800MPaより大きい曲げ弾性率(本明細書で定義)
・15J/モルより大きい、典型的には20J/モルより大きいアイゾット衝撃(本明細書で定義)
・40℃より高いHDT
・少なくとも7%の破断伸び率(例えば、7%~30%)
【0505】
以下の表2Cは、本実施形態のいくつかによる例示的な透明配合物の化学組成を示し、これは、本明細書では参考例配合物IIIとも呼ばれる。そのような配合物は、PCT/IL2020/050396に開示されている通りであり、配合物系(例えば、二成分系)の一部である部分反応性配合物である。
【0506】
【0507】
[実施例3]
-新規に設計された透明なモデリング材配合物-
PCT/IL2020/050396に記載されているように、本譲受人は、完全反応性配合物と組み合わされた部分反応性配合物として、二成分系で上手く実施される透明配合物を設計した。例示的なそのような配合物は、上記表2Cに示されている。
【0508】
完全反応性配合物と組み合わせることなく単一の配合物として使用することができ、本明細書で上述したように、UV LED放射線源を使用する場合に課される制約をさらに克服することができる、独立した透明配合物の探索において、本発明者らは、新しい配合物を設計し、首尾よく実用化した。
【0509】
本発明者らは、短波長で吸収する光開始剤は、UV LEDと共に使用すると非効率的であるため、そのような配合物には、酸素捕捉剤及び水素供与体などの表面硬化の促進剤として作用する材料を添加すべきであることを認識している。しかしながら、現在実用化されているそのような材料には限界があることから、本発明者らは代替材料を模索してきた。
【0510】
本発明者らは、このような配合物にチオエーテルを含めることを検討した。チオエーテルは、酸素捕捉剤として活性が著しく低く、光開始剤により促進されるフリーラジカル重合の促進剤として当技術分野で認識されている。広範で困難な研究の結果、本発明者らは、表面硬化を劇的に増加させるだけでなく、例えば、配合物をUV LEDでの使用に適したものにするだけでなく、例えば、配合物の安定性、硬化した材料の黄色度、及び硬化した材料の機械的特性に関して、配合物の性能に悪影響を及ぼさないチオエーテルを特定した。これらのチオエーテル(上記表1の成分H2)は、長さが少なくとも8個、少なくとも10個の炭素原子の少なくとも1つの炭化水素鎖、好ましくは少なくとも2つの炭化水素鎖を特徴とすべきである。例えば、炭化水素鎖は、8~30個、又は10~30個、又は8~25個、又は10~25個、又は8~20個、又は10~20個の長さの炭素原子を有する。
【0511】
必須ではないが、任意選択で、炭化水素鎖は、直鎖飽和鎖、好ましくは非分岐直鎖である。
【0512】
炭化水素鎖は、任意選択で、1つ以上の硬化性基、好ましくはUV硬化性基(例えば、アクリレート基又はメタクリレート基)によって置換及び/又は停止(terminated)されていてもよい。
【0513】
必須ではないが、任意選択で、チオエーテルは、1つ以上のエステル基を有することを特徴とする。
【0514】
必須ではないが、任意選択で、チオエーテルは室温で液体である。液体チオエーテルは、貯蔵中及び/又は使用中に固化し得る固体材料が使用される場合に生じ得る安定性の問題を回避することができ、また、層がUV LED放射に曝されたときに層の表面に向かってより良好に移動し、したがってより効率的に作用することを保証することができる。
【0515】
例示的な好ましいチオエーテルは、下記式Aで一般的に表すことができる。
【0516】
【0517】
式A中、a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して0又は1であり、
A1及びA2は、それぞれ独立して、例えば、1~6個又は1~4個の炭素原子の長さのアルキレン鎖であり、
X1及びX2は、それぞれ独立して、a-Y1-C(=Y2)-基又は-C(=Y2)-Y1基であり、Y1及びY2のそれぞれは、独立して、O又はSであり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される通りの少なくとも8個の炭素原子の炭化水素鎖である。
【0518】
例示的な実施形態では、a、b、c、d、e及びfはそれぞれ1である。
【0519】
例示的な実施形態では、X1及びX2はそれぞれ-C(=O)-O-基である(Y1及びY2がそれぞれOであるようにする)。
【0520】
例示的な実施形態では、a、b、c、d、e及びfはそれぞれ1であり、X1及びX2はそれぞれa-C(=O)-O-基である。
【0521】
式Aの例示的な市販のチオエーテルは、EvenstaB13(CAS番号10595-72-9)として市販されている。
【0522】
他のチオエーテルも企図されることに留意されたい。いくつかの例示的な非限定的な例には、ADK STAB AO-412 S(CAS番号29598-76-3)、Evabochem 994(CAS番号14338-82-0)、及びEvabochem 696(CAS番号24293-43-4)として市販されている材料が含まれる。
【0523】
本発明の実施形態の文脈で使用可能な追加のチオエーテルは、本明細書に記載されている。いくつかの好ましい例示的なチオエーテルは、1つ以上の硬化性基(例えば、(メタ)アクリレート基などの末端硬化性基)を含む。
【0524】
以下の表3A、表3B及び表3Cは、本明細書において実施例配合物I、II及びIIIとそれぞれ呼ばれる実施例配合物を示す。
【0525】
【0526】
*選択されたチオエーテルは室温で固体である
【0527】
【0528】
【0529】
実施例配合物はすべて、本明細書に記載のチオエーテルを含み、噴射温度での望ましい粘度、反応性、及び硬化した材料の機械的特性を維持するために、例えば参考例配合物Iに対して追加の修正を加えたものである。
【0530】
数十の追加の配合物が調製され、試験されたこと、及び実施例配合物I、II及びIIIは、望ましい性能を示した配合物の代表であることに留意されたい。
【0531】
より短い炭化水素鎖を有することを特徴とするチオエーテルを含む配合物は、あまり満足のいく性能をもたらさなかったことにさらに留意すべきである。これらには、例えば、Evabochem 994(CAS番号14338-82-0)及びEvabochem 696(CAS番号24293-43-4)として市販されているようなチオエーテル材料が含まれる。
【0532】
試験された配合物は、例えば
図1Aに記載されるようなStratasys J-826システム(UV LED放射線源を備える)、又は例えば
図1B~
図1Dに記載されるようなStratasys J-55(UV LED放射線源を備える)を使用して、透明物体を印刷するために使用された。
【0533】
Stratasys J-55システムは、Stratasys J-826システムと比較してより高いUV線量(約2~3倍高い)で動作し、吐出された層の厚さはより薄くなる(約2倍薄い)。より高いUV線量とより薄い層とのこの組み合わせは、酸素の拡散を増加させる結果として悪影響の増加をもたらす。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、この組み合わせは、ポリマー鎖の光分解と、酸素ラジカルの結果としての有害反応のアンサンブル(例えば、光開始剤の不活性化、形成されたフリーラジカルの不活性化、フリーラジカル重合の早期終了などを含む)との両方をもたらすと推測される。
【0534】
本発明者らは、実施例配合物I及びIIが、Stratasys J-826のようなシステムで効率的に機能する一方で、より低いPI含有量(P1)及びより高いチオエーテル含有量(H2)を有する実施例配合物IIIが、Stratasys J-55のようなシステムでも効率的に機能することを確認した。
【0535】
本発明者らはまた、成分B1の少なくとも一部を成分B2で置換することにより黄色度が低下することを見出した。
【0536】
B2成分を良好に配合するものをさらに試験して、追加の実施例の透明配合物を設計した。
【0537】
さらなる困難な研究の間に、追加の実施例の透明配合物が特定されており、本明細書では実施例配合物IVと呼ばれている。以下の表4は、実施例配合物IVの化学組成を示す。
【0538】
この配合物は、吐出された層の厚さが20μm(ミクロン)よりも大きいシステムで、任意にUV LED放射でも良好な性能を発揮することが示された。
【0539】
【0540】
本発明者らは、B2及びD3などの多官能性成分の使用が、例えば成分B1によって引き起こされる悪影響(例えば、黄色度)を克服することを確認した。少なくともD3は低いTgの値及び高い粘度を有することを特徴とするので、他の成分の量の操作は、望ましい粘度を有する配合物を提供するために行われ、望ましいTg及び機械的特性を有する硬化した材料をもたらす。
【0541】
本明細書全体を通して、「低粘度」という語句は、硬化前の25℃における粘度が500センチポアズ以下であることを特徴とする材料を表す。
【0542】
本明細書全体を通して、「中粘度」という語句は、硬化前の25℃における粘度が500センチポアズ~2000センチポアズであることを特徴とする材料を表す。
【0543】
本明細書全体を通して、「高粘度」という語句は、硬化前に、25℃で測定した場合に、2000センチポアズより大きい、好ましくは2000センチポアズ~1万センチポアズの範囲の粘度を有することを特徴とする材料を表す。
【0544】
本明細書全体を通して、「低MW」という語句は、硬化前に、500グラム/モル以下、さらには400グラム/モル以下の分子量を有することを特徴とする材料を表す。
【0545】
本明細書全体を通して、「中MW」という語句は、硬化前に、500グラム/モル~約1000グラム/モルの分子量を有することを特徴とする材料を表す。
【0546】
本明細書全体を通して、「高MW」という語句は、硬化前に1000グラム/モルより大きい分子量を有することを特徴とする材料を表す。
【0547】
中MW及び高MWの材料は、本明細書ではオリゴマー材料又はオリゴマーとも呼ばれる。
【0548】
本明細書において、低MW(又は高MW、又は中MW)/低粘度(又は高粘度、又は中粘度)が示されるときはいつでも、示されたMW特徴及び/又は示された粘度特徴を意味する。
【0549】
本明細書全体を通して、平均Tgとは、各成分のTgにその相対重量部を乗じたものの合計を、各重量部の合計で割ったものを意味する。
【0550】
例えば、材料AがX重量%の量で含まれかつTg1を有することを特徴とし、材料BがY重量%の量で含まれかつTg2を有することを特徴する場合、材料A及び材料Bの平均Tgは、本明細書では以下のように計算される。
【0551】
平均Tg=(X×Tg1+Y×Tg2)/(X+Y)
【0552】
本明細書に記載される特定の材料群に対して1つの材料のみが存在する場合、この材料の平均Tgはその1つの材料のTgである。
【0553】
新たに設計された透明配合物のいくつかは、本明細書で定義されるように、3重量%以下又は2重量%以下の総量で1つ以上の光開始剤(PI)を含むが、完全に反応性の硬化性配合物と見なされる。
【0554】
新たに設計された配合物は、本明細書に記載の成分H2に加えて、1つ以上の非反応性(非硬化性)材料(例えば、成分G及び成分Iについて本明細書に記載される添加剤)をさらに含むことができる。例えば、阻害剤、界面活性剤を1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の量でさらに含んでもよく、及び/又は青色の色合いを提供する着色剤(例えば、成分J)を5×10-4未満、好ましくは0~1×10-4の範囲の量でさらに含んでもよい。
【0555】
[実施例4]
-印刷後処理-
本明細書に記載の透明配合物を使用して製造された物体は、印刷された物体をLED照射に曝露することによって光退色処理が施された。
【0556】
典型的な光退色処理(後処理)は、100ワット、6500KのLEDランプを使用し、任意選択で、例えば35℃~55℃の熱にさらに曝露して実施することができる。照射及び加熱は、例えば、1時間、2時間、又はそれ以上、例えば、1時間~24時間、又は2時間~24時間の時間内に行うことができる。
【0557】
最終的な物体の所望の光学特性を達成するために印刷された物体を光退色にさらすのに必要な時間は、物体又はその透明部分のサイズ、形状、特に幅又は深さ、及び所望の光学特性に応じて決まる。
【0558】
特定の物体に対する光退色の時間を決定するために、L*a*b*、透過率、及び黄色度指数などのパラメータのモニタリングを、光退色プロセス中に実行することができる。
【0559】
本譲受人は、光退色の成功に必要な条件を研究し、それに応じて、本明細書で説明されるような透明配合物に特に有用な光退色処理(後処理)の手順を設計した。
【0560】
予期せぬことに、可視光範囲内の波長の特定の部分範囲について、光退色が他の波長と比較して著しく速く、より効率的であることが発見された。特に、本発明者らは、470nm未満、より好ましくは460nm未満、例えば450nm未満のピーク波長を有する可視光が、他のピーク波長を有する光、又は実質的に白色光よりも黄色味を速く低減することを見出した。
【0561】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、積層造形によってモデリング材から製造された物体は、470nm未満のピーク波長を有する可視光にそれを曝露することによって処理される。ピーク波長は、好ましくは少なくとも350nm、より好ましくは少なくとも370nm、より好ましくは少なくとも390nm、例えば400nm以上である。
【0562】
本発明のいくつかの実施形態では、物体の可視光への曝露の任意の時間間隔において、可視光のスペクトルエネルギーのX%は、約430nm~約470nm、又は約440nm~約460nmに及ぶスペクトル範囲内であり、Xは、少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも95である。
【0563】
本実施形態に適した可視光のスペクトル成分の代表例を
図9Aに示す。白色LEDのスペクトル成分を
図9Bに示す。図に示すように、
図9Aでは、スペクトルエネルギーの大部分が約430nm~約470nmに及ぶスペクトル範囲内にあるが、
図9Bでは、スペクトルエネルギーのかなりの部分がより長い波長(500nm以上)で供給される。
【0564】
また、予想外にも、光退色プロセスが過度に高い温度で実行される場合、又は光退色プロセス自体がモデリング材の温度を上昇させる場合に、モデリング材中のいくつかの染料が、分解又は他の方法で化学的に修飾され得ることが発見された。特に、本発明者らは、マゼンタ染料が光退色プロセスに対して実質的に脆弱であり、特に光退色プロセスが、マゼンタ染料(例えば、黒色などのマゼンタを含むモデリング材)を含むモデリング材の熱変形温度(HDT)を超える温度で行われる場合において、マゼンタ染料が光退色プロセスに対して脆弱であることを見出した。
【0565】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、物体は、本明細書でさらに詳述するように可視光線と、モデリング材のHDT未満の温度、より好ましくはモデリング材のHDTより最大5℃又は最大10℃低い温度に物体を曝露することによって処理される。好ましくは、物体がさらされる温度は、TMINよりも高く、TMINは、室温(例えば、25℃)及びHDTよりも20℃低い温度のうちの、より大きい方である所定のパラメータである。物体が2つ以上のモデリング材から製造される場合、光退色は、最も低いHDT値を有するモデリング材のHDTよりも低い(例えば、少なくとも5℃低い)温度、又は前記物体を製造するために使用されるモデリング材の加重平均HTDよりも低い温度で行う。
【0566】
可視光線及び温度への曝露の持続時間は、好ましくは、所望の効果の程度に基づいて選択される。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、曝露の持続時間は、式YI=100-青色/[(青色+赤色+緑色)/3]*100を用いて計算されるモデリング材の黄色度指数(YI)を低下させるように選択される。
【0567】
代替的に、YIは、ASTM規格E313に従って分光光度計を使用して測定することができる。
【0568】
本発明の様々な例示的な実施形態では、曝露の持続時間は、YIを少なくとも5単位、より好ましくは少なくとも6単位、より好ましくは少なくとも7単位、より好ましくは少なくとも8単位、より好ましくは少なくとも9単位、より好ましくは少なくとも10単位減少させるように選択される。
【0569】
さらに代替的に、YIは、式YI=100×(CXX-CZZ)/Yを使用して計算することができ、式中、CX及びCZは定数であり、X、Y、ZはCIE XYZ色空間における三刺激値である。モデリング材の色が他の色空間(例えば、CMYK)で表現される場合、色変換によりそれぞれの色空間をCIE XYZ色空間に変換することができる。そのような色変換は、印刷の技術分野の当業者には周知である。係数CX及びCZの値は、YIを定義するために使用されるASTM規格に従っている。ASTM規格D-1925が使用される場合、CXは約1.28であり、CZは約1.06である。
【0570】
一般に、モデリング材の黄色度指数を低下させることが望まれているが、特に、一般に透明で無色のモデリング材で作られた物体の部分については、物体の着色部分の色を維持することが好ましい。すなわち、曝露後の着色部分の色と曝露前の着色部分の色との色差が小さいことが好ましい。
【0571】
色差は、本明細書では、CIE(L*、a*、b*)色空間における数学的演算を使用して計算することができる量によって好都合に表される。オブジェクトの着色領域の色を他の色空間(例えば、CMYK又はCIE XYZ)で表現する場合、色差はそれらの色空間で表現することができ、あるいは、色変換によってそれぞれの色空間をCIE(L*、a*、b*)色空間に変換して、この空間の色差を計算することができる。CIE(L*、a*、b*)色空間は、一般に「均一な」色空間と呼ばれ、色空間内のある色点から別の色点までのステップのサイズが等しいと、略等しい色の違いとして知覚される。すべての色は、色空間内の点として扱われ、3成分(L*、a*、b*)によって表される。これは、例えば、限定はしないが、米国ミシガン州のX-Rite社から市販されている商品名Ci7860を有する分光計などの分光計によって測定することができる。
【0572】
2色間の差は、色空間における対応する点の間でユークリッド距離を用いて定量化することができる。正式には、2つの色の座標を(L1
*、a1
*、b2
*)及び(L2
*、a2
*、b3
*)で示すと、2つの色の差は下記式によって与えられる。
【0573】
【0574】
上記のΔE*の式を用いることにより、曝露後の着色領域の色と、曝露前の同じ着色領域の色との色差を、いわゆる「ΔE*単位」で表すことができる。したがって、例えば、ΔE*についての上記式の右辺が1である場合、2色間の色差は1ΔE*単位であると言われる。
【0575】
本発明のいくつかの実施形態では、物体の少なくとも1つの着色領域、より好ましくは物体の各着色領域について、曝露後の着色領域の色と曝露前の着色領域の色との間の色差が2ΔE*単位未満となるように、光退色プロセス(例えば、ピーク波長、温度、持続時間)のパラメータの1つ以上が選択される。
【0576】
本発明のいくつかの実施形態では、光退色プロセスの持続時間は、処理後に、物体が製造される透明なモデリング材が、少なくとも90のCIE明度値L*と、少なくとも-0.35のCIEa*値と、2未満又は1.5未満のCIEb*値とによって特徴付けられるように選択される。
【0577】
上記の実施形態のいずれかでは、光退色プロセスのパラメータの1つ以上は、オペレータによって手動で選択され、及び/又は自動的に選択され、及び/又はオペレータによって選択できないように予め決定され得る。例えば、光のピーク波長は、予め決定され、オペレータによって選択できないようにすることができ(例えば、400nm~500nmの間、又は420nm~480nmの間の値に設定される)、温度及び曝露の持続時間の少なくとも一方は手動又は自動で選択することができる。
【0578】
パラメータの選択は、物体固有であることが好ましく、その結果、物体の製造パラメータの1つ以上が、光退色プロセスのためのそれぞれのパラメータを選択するための入力として使用される。入力として使用することができる製造パラメータの代表的な例には、物体が製造されたモデリング材の種類、物体が製造されたモデリング材のHDT、物体が製造されたモデリング材の熱伝導率、物体の幾何学的形状(例えば、ある方向に沿った厚さ又は厚さのセット、或いは、2つ若しくは3つの方向の各々に沿った厚さ又は厚さのセット)、物体を製造するために使用された各モデリング材の量(例えば、体積、重量)、硬化放射線(使用される場合)への物体の曝露の持続時間などが含まれるが、これに限定するものではない。いくつかの製造パラメータは、他の製造パラメータに関する情報から得ることができることが理解される。例えば、モデリング材の種類に関する入力を受け取ることにより、例えばルックアップテーブルを使用して、この材料のHDT及び/又は熱伝導率を得ることができる。
【0579】
製造パラメータが受信されると、製造パラメータを光退色のパラメータと関連付けるルックアップテーブル、又はより好ましくは製造パラメータのセットを光退色のパラメータのセットと関連付けるルックアップテーブルを使用して、光退色プロセスのパラメータを選択することができる。実際の製造パラメータがルックアップテーブルのエントリと正確に一致する場合でも、ルックアップテーブルを使用することができる。この場合、実際の製造パラメータに最もよく一致するエントリが選択され、選択されたエントリに対応する光退色のためのパラメータがルックアップテーブルから抽出される。抽出されたパラメータは、光退色プロセスで使用することができる。あるいは、光退色に使用されるパラメータは、例えば補間及び/又はスケーリングを適用することによって、抽出されたパラメータに基づいて計算することができる。
【0580】
光退色のためのパラメータの選択が自動的に行われる場合、それは好ましくは、AMシステム(例えば、システム10又は110)から製造パラメータを受信し、製造パラメータを光退色のためのパラメータと関連付けるルックアップテーブルを含むコンピュータ可読媒体にアクセスし、AMシステムから受信した製造パラメータと一致する製造パラメータについてルックアップテーブルを検索し、ルックアップテーブルから光退色プロセスのためのそれぞれのパラメータを抽出することによって実行される。
【0581】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、AMシステムによってモデリング材から製造された物体112を処理するためのシステム200の概略図である。AMシステムは、積層造形によって三次元物体を製造する任意のシステムとすることができ、例えば、上述のシステム10又は110などが挙げられるが、これに限定されない。システム200は、物体112を受け入れるための処理チャンバ202を備える。典型的には、チャンバ202には、物体112がチャンバ202に導入された後にチャンバを閉じるためのドア204が設けられる。システム200は、物体112を照明するための光208を生成するための照明システム206をさらに備える。典型的には、照明システム206は、光208を生成するための1つ以上の光源210を備える。光源210は、これらに限定されないが、LED、OLED、水銀ランプなどの、当技術分野で公知の任意のタイプのものとすることができる。本発明のいくつかの実施形態では、照明システムは、本明細書でさらに詳述するように、470nm未満のピーク波長を有する可視光を生成する。所望のピーク波長を有する発光スペクトルを有する光源を選択することによって、又は所望のピーク波長を有する透過スペクトルを有するフィルタを用いてより広いスペクトルを有する光をフィルタリングすることによって、所望のピーク波長を有する光208のスペクトルを確保することができる。チャンバ202内の光源210の位置は変化してもよいが、それらは好ましくはチャンバ202の上部内面及び/又は角部に配置される。いくつかの実施形態では、1つ以上のLEDのストリップが使用される(例えば、白色LED及び/又は青色LEDのストリップ)。
【0582】
システム200は、任意選択でかつ好ましくは、物体112及び/又はチャンバ202の内部を加熱するための加熱システム212をさらに備える。
図4は、加熱システム212がチャンバ202の底部にあり、物体112を下方から加熱するように配置されている実施形態を示す。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態は、加熱システム212をチャンバ202の他の部分(例えば、1つ以上の側壁、及び/又は上部)に配置することを企図しているので、これは必ずそうである必要はない。さらに、本実施形態は、複数の加熱要素を有する加熱システムを想定しており、その場合、加熱要素は、チャンバ202内の1つの位置に配置されるか、又は(例えば、その壁、底部及び/又は上部に)分散して配置され得る。いくつかの実施形態では、システム200は、冷却システム230(例えば、1つ以上のファン)、及び/又は物体112及び/又はチャンバ202の閉ループ温度監視用の1つ以上の温度センサ232(例えば、IRセンサ)を含む。
【0583】
本発明のいくつかの実施形態では、システム200は、AMシステムによる物体の製造に対応する製造パラメータのセットを受け取るように構成された回路を有する入力214を備える。入力214は、例えば、キーボード又はタッチスクリーンなどであるがこれらに限定されないユーザインターフェースを含むことができる。あるいは、入力214は、遠隔ユーザインターフェース(図示せず)と通信するように構成された通信システムを含むことができ、製造パラメータのセットに関する信号を遠隔ユーザインターフェースから受信することができる。遠隔ユーザインターフェースは、当技術分野で知られている任意のタイプのものとすることができる。例えば、遠隔ユーザインターフェースは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータなどからなる群から選択することができる。入力214は、本発明のいくつかの実施形態では、AMシステム10/110と直接通信するように構成された通信システムを含むことができ、その場合、AMシステムはまた、入力214と通信するように構成された通信システム17(
図1A及び
図1Bも参照されたい)を含む。これらの実施形態では、AMシステムのコントローラ又はデータプロセッサは、入力214への送信のために製造パラメータのセットを通信システム17に供給する。
【0584】
入力214と、AMシステムの遠隔インターフェース及び/又は通信システム17との間の通信は、ケーブル218を介した有線通信、又は例えば近距離無線通信技術(例えば、Bluetooth(登録商標)、WiFiなど)を介した無線通信とすることができる。
【0585】
システム200は、好ましくは、入力214から製造パラメータのセットを受信するように構成された回路を有するコンピュータ化されたコントローラ216を備える(入力214がユーザインターフェースであっても、又は遠隔ユーザインターフェースから(又はAMシステムから直接)製造パラメータを受信する通信システムであってもよい)。任意選択でかつ好ましくは、コントローラ216の回路はまた、製造パラメータのセットに基づいて照明システム210及び加熱システム212を動作させるように構成される。典型的には、必須ではないが、コントローラ216は、コントローラ216が入力214を介して受信した製造パラメータのセットに基づいて光退色プロセスのパラメータを決定するのに十分な情報を記憶するコンピュータ可読媒体220にアクセスする。次いで、コントローラ216は、光退色プロセスの決定されたパラメータに従って、照明システム210及び加熱システム212を動作させる。
【0586】
また、本実施形態では、媒体220に記憶させる多くの種類の情報を企図している。好ましくは、情報は、本明細書でさらに詳述するように、製造パラメータを光退色のためのパラメータと関連付けるルックアップテーブルの形態である。例えば、製造パラメータのセットがモデリング材の種類を含む場合、媒体220は、例えば、それぞれがモデリング材の種類とエントリのモデリング材の種類に対応するHDTの値とを含む、複数のエントリを有するルックアップテーブルの形態のHDTデータを含むことができる。この場合、モデリング材の種類は製造パラメータであり、HDTの値は光退色のパラメータである。次いで、コントローラ216は、HDTデータを検索し、入力214を介して受け取ったモデリング材の種類に対応するHDTの値を抽出し、加熱システム212を制御して、本明細書でさらに詳述するように、HDTの値より低い温度をチャンバにおいて維持することができる。あるいは、入力214を介して受信した製造パラメータのセットは、HDTの値を予め含むことができ、この場合、コンピュータ化されたコントローラ216は、媒体220を検索することなく、HDTの値より低い温度を維持するように加熱システム212を制御することができる。
【0587】
製造パラメータのセットがモデリング材の種類を含む場合、媒体220はまた、例えば、それぞれがモデリング材の種類とエントリのモデリング材の種類に対応する熱伝導率の値とを含む、複数のエントリを有するルックアップテーブルの形態で、熱伝導率データを含むことができる。次いで、コントローラ216は、熱伝導率データを検索し、入力214を介して受け取ったモデリング材の種類に対応する熱伝導率の値を抽出し、熱伝導率の値に基づいてシステム210及び212が動作する持続時間を制御することができる。媒体220は、熱伝導率を持続時間と関連付ける別のルックアップテーブルを含むことができ、コントローラ216は、このルックアップテーブルを検索することによって適切な持続時間を選択することができる。あるいは、媒体220は、モデリング材の種類と持続時間とを関連付けるルックアップテーブルを含むことができ、この場合、コントローラ216は、熱伝導率を決定することなくモデリング材の種類に基づいて持続時間を選択することができる。さらに代替的に、入力214を介して受信した製造パラメータのセットは、熱伝導率の値を予め含んでおくことができ、この場合、コンピュータ化されたコントローラ216は、熱伝導率を持続時間と関連付けるルックアップテーブルを使用して、モデリング材の種類を決定することなく、適切な持続時間を決定することができる。
【0588】
製造パラメータのセットが物体を記述する幾何学的パラメータを含む場合、コントローラ216は、幾何学的パラメータに基づいて曝露の持続時間を選択する。任意選択でかつ好ましくは、これは、媒体216内の情報を使用して行われる。例えば、媒体220は、それぞれが幾何学的情報及びエントリの幾何学的情報に対応する持続時間の値を含む、複数のエントリを有するルックアップテーブルを含むことができる。ルックアップテーブルは、エントリ毎に異なる幾何学的パラメータ、又はエントリ毎に異なる幾何学的パラメータのセットを含むことができる。例えば、ルックアップテーブルは、異なる形状に関係する第1の複数のエントリ、異なる体積に関係する第2の複数のエントリ、異なる厚さに関係する第3の複数のエントリなどを含むことができる。あるいは、ルックアップテーブルは、それぞれが形状、体積、及び厚さの異なる組み合わせに関連する、複数のエントリを含むことができる。
【0589】
製造パラメータのセットはまた、製造に使用される光開始剤の種類及び/又は濃度を含むことができる。この場合、コントローラ216は、光開始剤の種類及び/又は濃度に基づいて、システム210及び212が動作する持続時間を制御することができる。媒体220は、光開始剤の種類及び/又は濃度を持続時間と関連付けるルックアップテーブルを含むことができ、コントローラ216は、このルックアップテーブルを検索することによって適切な持続時間を選択することができる。
【0590】
上記のタイプの情報の任意の組み合わせが考えられる。例えば、好ましい実施形態では、各エントリが1つの製造シナリオに対応し、この製造シナリオを光退色プロセスのパラメータのセットに関連付けるように、可能な製造シナリオの先験的な集合(a priori collection)が媒体220のルックアップテーブルを定義するために使用される。例えば、ルックアップテーブルのエントリは、モデリング材の種類、幾何学的形状、HDT、熱伝導率、及び光退色プロセスの対応するパラメータのセット(例えば、温度、持続時間)からなる群から選択される製造パラメータのセットを含むことができる。
【0591】
比較研究を行って、0.8%の濃度でTPOを光開始剤として含み、45℃~48℃で推定されるHDTを有することを特徴とする本明細書に記載されている実施例配合物I、II及びIIIのように、チオエーテル材料を含む透明配合物から、積層造形(AM)によって製造された物体を漂白する、いずれも本願の譲受人による、米国仮特許出願第63/094,712号、及び「METHOD AND SYSTEM FOR TREATING ADDITIVE MANUFACTURED OBJECT」(代理人整理番号第89346号)と題する同時出願のPCT国際特許出願に記載されているような光退色プロセスの能力を調べた。
【0592】
ある実験では、横寸法40×40、高さ5mmの物体を3Dインクジェット印刷によって製造し、少なくとも24時間、様々な貯蔵条件下に置いた。物体は、(15mmの物体が完成するまで)高さ5mmの物体を過剰な量のUV光に曝すように、高さ15mmの他の物体(この実験では使用されなかった)と共に製造された。以下の4つの貯蔵条件を試験した。(i)白色光(白色ランプ45W、光温度6500K)と室温(約25℃)、(ii)青色光と温度45℃、(iii)暗い条件での温度45℃、及び(iv)室温条件と白色蛍光灯。各貯蔵条件について、貯蔵時間の関数としてYIを計算した。YIは以下のようにして算出した。
【0593】
デジタルカメラ(Canon、PowerShot A650 IS)を用いて、一対の印刷部品の画像を撮影した。次いで、画像をImageJを使用して分析し、RGBの値を抽出した。黄色度指数は、以下の式に従って計算した。
【0594】
黄色度指数=100-青色/[(青色+赤色+緑色)/3]*100、
【0595】
式中、青色、赤色、及び緑色は、画像処理によって得られたそれぞれの色の強度である。
【0596】
結果を
図5に示す。図示されるように、YIの最も速い減少は、貯蔵条件(ii)に対するものであった。
【0597】
別の実験では、高さ10mm及び横寸法40mm×40mmの物体を3Dインクジェット印刷によって製造し、異なる照明シナリオで光に曝露した。以下の3つの照明シナリオを試験した。(i)実験室での蛍光白色光、(ii)40℃に維持された照明室での白色光照明、及び(iii)40℃の温度に維持されたテーブル上での45W及び光温度6500Kの白色ランプを用いた照明。各シナリオについて、YIは、前の実験について行われたように、照明時間の関数として計算された。結果を
図6に示す。示されるように、YIが最も速く減少したのは、照明シナリオ(ii)であった。
【0598】
追加の実験では、光スペクトルの影響を調査した。高さ10mm、横寸法40mm×40mmの物体を、3Dインクジェット印刷によって製造し、異なるスペクトルで光に曝露した。以下の4つの照明シナリオを試験した。(i)室温(25℃)で460nmのピーク波長を有する光、(ii)室温(25℃)で440nmのピーク波長を有する光、(iii)室温(25℃)の白色投光ランプ(100W、光温度-6500K)、及び(iv)温度40℃で白色投光ランプ(100W、光温度-6500K)。各シナリオについて、ASTM E-313に従い、ベンチトップ分光光度計(CI76600)を使用して、照明時間の関数としてYIを測定した。結果を
図7に示す。図示されるように、YIが最も速く減少したのは、照明シナリオ(ii)であった。照明シナリオ(iv)では実験の最後に1回の測定が行われたため、
図7は傾向線を含んでいない。
【0599】
以下の表Aは、3Dインクジェット印刷によって製造された高さ1mm及び横寸法40mm×40mmの10個の物体を、室温と、投光ランプの100W、LED6500Kシステムによって生成された白色光とで、光退色処理を施した実験の結果をまとめたものである。表Aには、処理前、光への曝露の1時間後、及び光への曝露の6時間後の各物体の色が示されている。色はCIE(L*、a*、b*)色空間で表されている。処理前の色に対する色差ΔEも示されている。表Aは、光退色に白色光を使用すると、多くのサンプルについて6時間の処理後に色の著しい変化をもたらすことを実証している。
【0600】
【0601】
以下の表Bは、より高い線量の460nmのLED光(この実験では100W)を使用したことを除いて、表Bに要約した実験と同様の実験の結果をまとめている。
【0602】
【0603】
表Bは、高い線量の460nmのLED光はまた、6時間の処理後に色の有意な変化をもたらすことを実証している。
【0604】
図8は、(i)室温及び投光ランプの100Wの白色光での光退色、(ii)温度40℃及び4つの9W、6500KのLEDを使用した白色LED光での光退色、並びに(iii)温度40℃及び450nm~500nmの間のピーク波長を有する光を放出する4つの9WのLEDを使用した青色LED光での光退色、についてのYIの減少を示す。図示されるように、YIの最も大きな変化は、光退色プロセス(iii)に対するものであった。以下の表C及び表Dは、3Dインクジェット印刷によって製造された高さ1mm及び横寸法40mm×40mmの10個の物体について、それぞれ光退色プロセス(iii)及び(i)の色の変化をまとめたものである。
【0605】
表C及び表Dと
図8とは、光退色プロセス(iii)が、物体の色の変化を小さく維持しながら、YIの大幅な低減を首尾よく達成することを実証している(表C)。
【0606】
これに対して、光退色プロセス(i)は、物体の色の変化を小さく維持するが(表D)、YIを低減するのに十分ではないことが分かる。
【0607】
【0608】
【0609】
物体の機械的特性に対する光退色プロセスの効果も研究した。24時間の曝露の持続時間の結果を以下の表Eにまとめ、
図8に記載の光退色プロセス(i)~(iii)を適用した後の改善された機械的特性を示す。
【0610】
「曲げ強度」又は「曲げ応力」とは、曲げ試験で降伏する直前の材料の応力を意味する。曲げ応力は、例えば、ASTM D-790-03に従って判定することができる。
【0611】
「曲げ弾性率」、又は「曲げY弾性率」とは、曲げ変形における応力と歪みの比を意味し、ASTM D790などの曲げ試験によって生成された応力-歪み曲線の勾配から判定される。曲げ弾性率は、例えば、ASTM D-790-04に従って判定することができる。
【0612】
【0613】
[実施例5]
-印刷された物体の機械的、物理的及び光学的特性-
【0614】
(光学的特性)
本明細書に記載の透明配合物を使用し、LED-UV硬化(例えば、Stratasys J55システムと呼ばれるシステム)を備えたシステムを使用して製造された物体の透過率、黄色度指数(YI)及びL*a*b*の値を測定した。
【0615】
実施例配合物I、II、III及びIVを使用して、40mm×40mm×6mmの三次元物体(Cubic objects)を本明細書に記載のように印刷し、参考例配合物I及びPerspex(PMMA)と比較した。
【0616】
透過率は、物体を通過する光の割合(%)として、X-Rite社のCi7860デバイスを使用して測定した。
【0617】
黄色度指数は、ASTM D1925に従って決定した。
【0618】
定量的色測定のために、CIEカラーシステム(CIEのL*a*b*カラースケールに基づき、L*は明度を定義し、a*は赤色/緑色の値を示し、b*は黄色/青色の値を示す)を使用したX-Rite社の測定技術を使用した。色の測定のために適用された標準光源は昼光であった。
【0619】
上記の実施例4に記載の後処理を行った後、上記のこれらの測定で得られたデータを、以下の表5に示す。値は、6mmの面のものを示す。
【0620】
【0621】
表5から分かるように、本実施形態の透明配合物で作製された物体は、例えば市販の参考例配合物Iと比較して、Perspex(PMMA)により近い光学的特徴を示し、特に、実質的に低いYI及び実質的に高い透過率を示す。
【0622】
図10は、参考例配合物Iを使用して作成された例示的な物体(左)、参考例配合物IIIを使用して作成された例示的な物体(本明細書に記載の二成分の物体;右)、及び実施例配合物IIを使用して作製された同じ例示的な物体の写真を示す。物体はStratasys J826-LEDシステムで印刷され、単一成分配合システムとして本実施形態による透明配合物を使用して得られる有利な透明性及び無効化された色相を実証した。
【0623】
図11は、参考例配合物I(下)及び実施例配合物III(上)を使用して作成された例示的な物体の写真を提示しており、Stratasys J55システムで印刷した場合、本実施形態による配合物の改善された性能を示す。
【0624】
(物理的及び機械的特性)
以下の表6は、Stratasys J 55システムを使用して表3A、表3B、表3C及び表4に示される実施例配合物から作製された物体の、実施例4において本明細書に記載されるように印刷された物体を光退色処理に供した後の特性を、参考例配合物Iと比較して示す。
【0625】
表6に示すように、本明細書に記載の透明配合物を使用して製造された物体は、参考例配合物と比較してそれらの特性の実質的な変化を示さず、最大の変化は(引張強度について)35%未満である。
【0626】
【0627】
全体として、これらのデータは、本実施形態の透明配合物を使用して光学特性の実質的な変化が達成されるが、他の特性の実質的な変化は観察されないことを示す。
【0628】
さらに、すべての配合物は、吐出性の要件を満たすことが示され、低い又は妥当な粘着性(経験的に判定した)を示した。ここで、吐出性の要件は、例えば、高速カメラ及び分析重量を使用して噴射パターンを記録することによって、及び、例えば、印刷プロセスに関連する噴射パラメータを試験する噴射ステーションを使用し、噴射が高速カメラ及び分析重量を使用して記録されることによって、決定される。
【0629】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、修正及び変形が、当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲に含まれるすべてのそのような代替、修正及び変形を包含することが意図されている。
【0630】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の各刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれることが本出願人の意図である。さらに、本願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。項目の見出しが使用される場合、それらが必ず限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】