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特表2023-547401積層造形された物体を処理するための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】積層造形された物体を処理するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/379 20170101AFI20231102BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20231102BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231102BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20231102BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20231102BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20231102BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20231102BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20231102BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20231102BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20231102BHJP
【FI】
B29C64/379
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y40/20
B29C64/386
B33Y50/00
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y50/02
B29C64/393
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524741
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 IL2021051250
(87)【国際公開番号】W WO2022085005
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/094,712
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノ、レフ
(72)【発明者】
【氏名】ポクラス、マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィッチ、ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】シェレフ、ギル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AB04
4F213AR06
4F213WA25
4F213WA54
4F213WA86
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL55
4F213WW34
(57)【要約】
積層造形によってモデリング材から製造された物体を処理する方法であって、470nm未満のピーク波長を有する可視光と、モデリング材の熱変形温度(HDT)より低い温度とに物体を曝露することを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形によってモデリング材から製造された物体を処理する方法であって、470nm未満のピーク波長を有する可視光と、前記モデリング材の熱変形温度より低い温度とに、前記物体を曝露することを含む、方法。
【請求項2】
前記温度が、前記熱変形温度よりも最大で5℃低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物体が、複数のモデリング材配合物から製造され、前記熱変形温度が、前記複数のモデリング材配合物のそれぞれの複数の熱変形温度の値の中で最低の熱変形温度である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記曝露の持続時間が、前記モデリング材の黄色度指数をCIE XYZ色空間で少なくとも5単位減少させるように選択される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ピーク波長及び前記温度が、前記物体の少なくとも1つの着色領域について、前記曝露後の前記着色領域の色と前記曝露前の前記着色領域の色との間の色の差が、2ΔE単位未満となるように選択される、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記曝露が、前記可視光を生成するための複数の光源を有する処理チャンバ内で行われる、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記モデリング材が、前記ピーク波長で光退色を起こす光開始剤を含む光硬化性モデリング材配合物を硬化させて得られる、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光開始剤が、ホスフィンオキシド型光開始剤及びゲルマニウム系光開始剤から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲルマニウム系光開始剤が、アシルゲルマン型光開始剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モデリング材が、ホスフィンオキシド型光開始剤を含む光硬化性モデリング材配合物を硬化させて得られる、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光開始剤が、モノアシル化(MAPO)又はビスアシル化ホスフィンオキシド型(BAPO)光開始剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ホスフィンオキシド型光開始剤であるホスフィンは、約380nm~約450nmの波長範囲で照射された場合にフリーラジカルの開始が可能になる、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光開始剤が、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの重量比で25:75の混合物、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの重量比で1:1の混合物、並びにエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネートから選択される、請求項10から請求項12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光開始剤が、IRGACURE(登録商標)819であるか、又はそれを含む、請求項10から請求項12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記物体の少なくとも一部が透明なモデリング材を含む、請求項1から請求項14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記物体の製造に対応する製造パラメータのセットを積層造形システムから受信することと、前記製造パラメータに基づいて前記温度及び前記曝露の持続時間を自動的に選択することとを含む、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記製造パラメータのセットが、前記モデリング材、前記物体の形状、前記物体中の前記モデリング材の量、前記モデリング材中の光開始剤の種類、及び前記光開始剤の濃度のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
積層造形システムによってモデリング材から製造された物体を処理するためのシステムであって、
前記物体を受け入れるための処理チャンバと、
ピーク波長が470nm未満の可視光を発生させるための照明システムと、
前記処理チャンバを加熱するための加熱システムと、
前記物体の製造に対応する製造パラメータのセットを受信するための入力部と、
前記製造パラメータのセットに基づいて前記照明システム及び前記加熱システムを動作させるためのコンピュータ化されたコントローラと、
を含む、システム。
【請求項19】
前記製造パラメータのセットが前記モデリング材の種類を含み、
前記コンピュータ化されたコントローラが、熱変形温度のデータを含むコンピュータ可読媒体にアクセスし、前記モデリング材の前記種類に対応する熱変形温度の値を抽出し、前記加熱システムを制御して前記処理チャンバ内で前記熱変形温度の値より低い温度を維持するように構成される、
請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記製造パラメータのセットが、前記モデリング材の熱変形温度の値を含み、
前記コンピュータ化されたコントローラが、前記加熱システムを制御して前記処理チャンバ内で前記熱変形温度の値より低い温度を維持するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記物体が、複数のモデリング材配合物から製造され、前記熱変形温度の値が、前記複数のモデリング材配合物のそれぞれの複数の熱変形温度の値のうちの最低の熱変形温度の値である、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記製造パラメータのセットが、前記物体を記述する幾何学的パラメータを含み、
前記コンピュータ化されたコントローラは、前記幾何学的パラメータに基づいて前記曝露の持続時間を選択するように構成される、
請求項18から請求項21までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記幾何学的パラメータが、前記物体の形状を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記幾何学的パラメータが、前記物体の体積を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記製造パラメータのセットが、前記モデリング材の種類を含み、
前記コンピュータ化されたコントローラが、熱伝導率データを含むコンピュータ可読媒体にアクセスし、前記モデリング材の前記種類に対応する熱伝導率の値を抽出し、前記熱伝導率の値に基づいて前記曝露の持続時間を選択するように構成される、
請求項18から請求項24までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記製造パラメータのセットが、前記モデリング材の熱伝導率の値を含み、
前記コンピュータ化されたコントローラが、前記熱伝導率の値に基づいて前記曝露の持続時間を選択するように構成される、
請求項18から請求項24までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記入力部がユーザインターフェースを含む、請求項18から請求項24までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記入力部が、前記積層造形システムと通信して、前記積層造形システムから前記製造パラメータのセットを自動的に受信するように構成された通信システムを含む、請求項18から請求項24までのいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年10月21日に出願された米国仮特許出願第63/094,712号の優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願はまた、2020年10月21日に出願された米国仮特許出願第63/094,801号の優先権の利益を主張する、「ADDITIVE MANUFACTURING OF THREE-DIMENSIONAL OBJECTS CONTAINING A TRANSPARENT MATERIAL」(代理人整理番号第89343号)と題する、同時に出願、係属、及び譲渡されたPCT出願に関連し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、積層造形に関し、より具体的には、積層造形によって製造された物体を処理するための方法及びシステムに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0004】
積層造形(Additive Manufacturing:AM)は、積層形成工程を介してコンピュータのデータから直接任意の形状の構造を製造することを可能にする技術である。任意のAMシステムの基本的な動作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスすることと、その結果を二次元位置データに変換することと、そのデータを三次元構造を層毎に製造する制御機器に供給することとからなる。
【0005】
積層造形は、3Dインクジェット印刷、電子ビーム溶融、ステレオリソグラフィ、選択的レーザ焼結、積層体製造、溶融堆積モデリングなどの三次元(3D)印刷を含む、製造方法に対する多くの異なるアプローチを伴う。
【0006】
一部の3D印刷プロセス、例えば3Dインクジェット印刷は、造形材の層ごとのインクジェット堆積によって実行されている。このように、造形材は、ノズルセットを有する吐出ヘッドから吐出され、支持構造上に層を堆積させる。次いで、造形材に応じて、適切な装置を使用して、層を硬化又は固化させることができる。
【0007】
様々な三次元印刷技術が存在し、それらの三次元印刷技術は、例えば、すべて同じ譲受人による米国特許第6,259,979号明細書、6,569,373号明細書、6,658,314号明細書、6,850,334号明細書、6,863,859号明細書、7,183,335号明細書、7,209,797号明細書、7,225,045号明細書、7,300,619号明細書、7,500,846号明細書、9,031,680号明細書、及び9,227,365号明細書、米国特許出願公開第20060054039号明細書、並びに国際公開第2016/009426号パンフレットに開示されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
いくつかの三次元印刷技術は、吐出される造形材を硬化させるために紫外線(UV)放射を使用する。これらの技術では、造形材組成物は、典型的には、反応性成分とは別に、光開始剤を含む。例えば、いくつかの三次元印刷技術は、以下でさらに詳細に説明するように、ホスフィンオキシド型光開始剤を使用する。一般的に使用される光開始剤には、(2,4,6トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキシド[(TPO)-CAS番号75980-60-8]及びビス(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド[(BAPO、例えばIrgacure 819)-CAS番号162881-26-7)]が含まれる。
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、積層造形によってモデリング材から製造された物体を処理する方法が提供される。本方法は、470nm未満のピーク波長を有する可視光と、モデリング材の熱変形温度(HDT)より低い温度とに物体を曝露することを含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、温度は、熱変形温度よりも最大で5℃低い。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、物体は、複数のモデリング材配合物から製造され、熱変形温度は、複数のモデリング材配合物のそれぞれの複数の熱変形温度の値のうちで最も低い熱変形温度である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、曝露の持続時間は、CIE XYZ色空間でモデリング材の黄色度指数を少なくとも5単位低下させるように選択される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ピーク波長及び温度は、物体の少なくとも1つの着色領域について、曝露後の着色領域の色と曝露前の着色領域の色との間の色の差が2ΔE単位未満であるように選択される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、曝露は、光を生成するための複数の光源を有する処理チャンバ内で行われる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、モデリング材は、ホスフィンオキシド型光開始剤を含む光硬化性モデリング材配合物を硬化させると得られる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光開始剤は、モノアシル化(MAPO)又はビスアシル化ホスフィンオキシド型(BAPO)光開始剤である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ホスフィンオキシド型光開始剤であるホスフィンは、約380nm~約450nmの波長範囲で照射されるとフリーラジカルの開始が可能になる。
【0018】
光開始剤は、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)1700として市販されている)の重量比で25:75の混合物、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR(登録商標)4265として市販されている)の重量比で1:1の混合物、並びにエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR 8893X)から選択される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光開始剤はIRGACURE(登録商標)819であるか、又はそれを含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、物体の少なくとも一部は、透明なモデリング材を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、物体の製造に対応する製造パラメータのセットを積層造形システムから受信することと、製造パラメータに基づいて温度及び曝露の持続時間を自動的に選択することとを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、製造パラメータのセットは、モデリング材、物体の形状、及び物体中のモデリング材の量のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、積層造形システムによってモデリング材から製造された物体を処理するシステムが提供される。システムは、物体を受け入れるための処理チャンバと、ピーク波長が470nm未満の可視光を発生させるための照明システムと、処理チャンバを加熱するための加熱システムと、物体の製造に対応する製造パラメータのセットを受信するための入力部と、製造パラメータのセットに基づいて照明システム及び加熱システムを動作させるためのコンピュータ化されたコントローラと、を含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、製造パラメータのセットは、モデリング材の種類を含み、コンピュータ化されたコントローラが、熱変形温度のデータを含むコンピュータ可読媒体にアクセスし、モデリング材の種類に対応する熱変形温度の値を抽出し、加熱システムを制御して処理チャンバ内で熱変形温度の値より低い温度を維持するように構成される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、製造パラメータのセットは、モデリング材の熱変形温度(HDT)の値を含み、コンピュータ化されたコントローラが、加熱システムを制御して処理チャンバ内で熱変形温度の値より低い温度を維持するように構成される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、物体は、複数のモデリング材配合物から製造され、熱変形温度の値が、複数のモデリング材配合物のそれぞれの複数の熱変形温度の値のうちの最低の熱変形温度の値である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、製造パラメータのセットが、物体を記述する幾何学的パラメータを含み、コンピュータ化されたコントローラは、幾何学的パラメータに基づいて曝露の持続時間を選択するように構成される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、幾何学的パラメータは、物体の形状を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、幾何学的パラメータは、物体の体積を含む。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、製造パラメータのセットが、モデリング材の種類を含み、コンピュータ化されたコントローラが、熱伝導率データを含むコンピュータ可読媒体にアクセスし、モデリング材の前記種類に対応する熱伝導率の値を抽出し、熱伝導率の値に基づいて曝露の持続時間を選択するように構成される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、製造パラメータのセットが、モデリング材の熱伝導率の値を含み、コンピュータ化されたコントローラが、熱伝導率の値に基づいて曝露の持続時間を選択するように構成される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、入力部はユーザインターフェースを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、入力部は、積層造形システムと通信して、積層造形システムからから製造パラメータのセットを自動的に受信するように構成された通信システムを含む。
【0034】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料が、本発明の実施形態の実施又は試験において使用され得るが、例示的な方法及び/又は材料が以下に記載される。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図していない。
【0035】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実装は、選択されたタスクを手動で、自動的に、又はそれらの組み合わせで実行又は完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装及び機器によれば、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを使用してハードウェア、ソフトウェア若しくはファームウェア、又はそれらの組み合わせによって実装され得る。
【0036】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法及び/又はシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブルメディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボード又はマウスなどのユーザ入力装置もまた、任意選択で提供される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面及び画像を参照して、単なる例として本明細書で説明されている。ここで詳細に図面を具体的に参照するが、示されている詳細は例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的な説明のためのものであることが強調される。この点に関して、図面を用いてなされた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
図1B】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
図1C】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
図1D】本発明のいくつかの実施形態による積層造形システムの概略図である。
図2A】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図2B】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図2C】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図3A】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
図3B】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による、積層造形システムによってモデリング材から製造された物体を処理するためのシステムの概略図である。
図5】黄色度指数に対する貯蔵の影響を調査するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
図6】黄色度指数に対する異なる照明シナリオの影響を調査するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた別の実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
図7】黄色度指数に対する光スペクトルの影響を調査するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた別の実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
図8】黄色度指数に対する白色光と青色光の影響を比較するために、本発明のいくつかの実施形態に従って行われた追加の実験中に得られた、時間の関数としての黄色度指数を示す。
図9A】本実施形態に適した可視光のスペクトル成分を示す。
図9B】本実施形態に適した白色LEDのスペクトル成分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、積層造形に関し、より具体的には、積層造形によって製造された物体を処理するための方法及びシステムに関するが、これに限定されない。
【0040】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される、構造、構成要素の配置及び/又は方法の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能である、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0041】
本実施形態の方法及びシステムは、積層造形(AM)によって製造された物体を処理する。以下でさらに詳述する処理の前に、処理される物体は、典型的には、コンピュータ物体データに基づいて、物体の形状に対応する構成されたパターンで複数の層を形成することによって、層毎に製造される。本実施形態の方法及びシステムの自己完結型の説明を提供するために、本実施形態に適したいくつかの好ましい積層造形技術について説明する。
【0042】
物体を造形するために使用されるコンピュータ物体データは、限定はしないが、標準テッセレーション言語(STL)又はステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、OBJファイルフォーマット(OBJ)、3D造形フォーマット(3MF)、仮想現実モデリング言語(VRML)、積層造形ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットを含む、任意の既知のフォーマットとすることができる。
【0043】
本明細書全体を通して使用される「物体」という用語は、物体全体又はその一部を指す。
【0044】
各層は、二次元表面を走査してそれをパターン化する積層造形装置によって形成され得る。走査中、装置は、二次元層又は表面上の複数の目標位置に行き、各目標位置又は目標位置のグループについて、目標位置又は目標位置のグループが造形材配合物によって占められるべきかどうか、及びどのタイプの造形材配合物がそこに送達されるべきかを決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、三次元印刷、より好ましくは三次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、造形材は、1つ以上のノズルアレイを有する印刷ヘッドから吐出され、支持構造体上に層状に造形材を堆積させる。したがって、AM装置は、占有されるべき目標位置に造形材を吐出し、他の目標位置を空にする。装置は、典型的には、複数のノズルアレイを含み、各ノズルアレイは、異なる造形材を吐出するように構成することができる。これは、典型的には、互いに分離された複数の流体チャネルを印刷ヘッドに設けることによって達成され、各チャネルは、別々の入口を介して異なる造形材を受け取り、それを異なるノズルアレイに搬送する。
【0046】
したがって、異なる目標位置は、異なる造形材配合物によって占有され得る。造形材配合物のタイプは、モデリング材配合物と支持材配合物の、2つの主要なカテゴリーに分類することができる。支持材配合物は、製造プロセス及び/又は他の目的、例えば、中空又は多孔質の物体をもたらす際に、物体又は物体部分を支持するための支持マトリックス又は構造として機能する。支持構造は、例えば、さらなる支持強度のために、モデリング材配合物の要素をさらに含むことができる。
【0047】
モデリング材配合物は、一般に、積層造形に使用するために配合され、単独で、すなわち、任意の他の物質と混合又は組み合わせる必要なく、三次元物体を形成することができる組成物である。
【0048】
最終的な三次元物体は、モデリング材配合物、又はモデリング材配合物の組み合わせ、又はモデリング材配合物と支持材配合物との組み合わせ、又はそれらの修正(例えば、硬化後)で作られる。これらの操作はすべて、固体自由造形の当業者には周知である。
【0049】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、2つ以上の異なるモデリング材配合物を吐出することによって製造され、各材料配合物は、AM装置の(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)異なるノズルアレイからのものである。
【0050】
いくつかの実施形態では、異なるモデリング材配合物を吐出する2つ以上のそのようなノズルのアレイは、両方ともAM装置の同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、異なるモデリング材配合物を吐出するノズルアレイは、別個の印刷ヘッドに配置され、例えば、第1のモデリング材配合物を吐出する第1のノズルアレイは、第1の印刷ヘッドに配置され、第2のモデリング材配合物を吐出する第2のノズルアレイは、第2の印刷ヘッドに配置される。
【0051】
いくつかの実施形態において、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイ及び支持材配合物を吐出するノズルアレイは、両方とも同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイ及び支持材配合物を吐出するノズルアレイは、別々の印刷ヘッドに配置される。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態による物体112のAMに適したシステム110の代表的で非限定的な例を図1Aに示す。システム110は、複数の印刷ヘッドを備える吐出ユニット16を有する積層造形装置114を備える。各ヘッドは、好ましくは、後述の図2A図2Cに示すように、典型的にはオリフィスプレート121に取り付けられたノズル122の1つ以上のアレイを備え、それを通して液体造形材配合物124が吐出される。
【0053】
好ましくは、必須ではないが、装置114は三次元印刷装置であり、この場合、印刷ヘッドはプリントヘッドであり、造形材配合物はインクジェット技術を介して吐出される。一部の用途では、積層造形装置が三次元印刷技術を使用する必要がない場合があるため、これは必ずしもそうである必要はない。本発明の様々な例示的な実施形態に従って企図される積層造形装置の代表的な例には、溶融堆積モデリング装置及び溶融材料配合物堆積装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
各印刷ヘッドは、任意選択でかつ好ましくは、1つ以上の造形材配合物リザーバを介して配合物を供給され、造形材配合物リザーバは、温度制御ユニット(例えば、温度センサ及び/又は加熱装置)及び材料配合物レベルセンサを、任意選択で含み得る。造形材配合物を吐出するために、印刷ヘッドに電圧信号が印加され、例えば、圧電インクジェット印刷技術におけるように、印刷ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に堆積させる。別の例としては、サーマルインクジェット印刷ヘッドがある。このタイプのヘッドには、造形材配合物と熱接触するヒータ要素があり、電圧信号によるヒータ要素の作動により、造形材配合物を加熱してその中に気泡を形成する。この気泡は、造形材配合物中に圧力を発生させ、造形材配合物の液滴をノズルから吐出させる。圧電式及び感熱式の印刷ヘッドは、固体自由造形の当業者には知られている。任意のタイプのインクジェット印刷ヘッドについて、ヘッドの吐出速度は、ノズルの数、ノズルのタイプ、及び印加電圧信号速度(周波数)に依存する。
【0055】
任意選択で、吐出ノズル又はノズルアレイの全体の数は、吐出ノズルの半分が、支持材配合物を吐出するために指定され、吐出ノズルの半分が、モデリング材配合物を吐出するために指定されるように選択される、すなわち、モデリング材配合物を噴射するノズルの数は、支持材配合物を噴射するノズルの数と同じである。図1Aの代表例では、4つの印刷ヘッド16a、16b、16c、16dが図示されている。各ヘッド16a、16b、16c、16dは、ノズルアレイを有している。この例において、ヘッド16a及び16bは、モデリング材配合物用に指定することができ、ヘッド16c及び16dは、支持材配合物用に指定することができる。したがって、ヘッド16aは、1つのモデリング材配合物を吐出することができ、ヘッド16bは、別のモデリング材配合物を吐出することができ、ヘッド16c及び16dの両方は、支持材配合物を吐出することができる。別の実施形態において、ヘッド16c及び16dは、例えば、支持材配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドにおいて組み合わされてもよい。さらなる代替の実施形態において、印刷ヘッドのいずれか1つ以上は、複数の材料配合物を堆積させるための複数のノズルアレイ、例えば、2つの異なるモデリング材配合物、又はモデリング材配合物と支持材配合物とを堆積させるための2つのノズルアレイを有することができ、各配合物は、異なるアレイ又は異なる数のノズルを介している。
【0056】
しかし、本発明の範囲を限定する意図はなく、モデリング材用配合物用の印刷ヘッド(造形用ヘッド)の数と、支持材用配合物用の印刷ヘッド(支持ヘッド)の数とは、異なっていてもよいことが理解されよう。一般に、モデリング材配合物を吐出するノズルアレイの数、支持材配合物を吐出するノズルアレイの数、及びそれぞれのアレイにおけるノズルの数は、支持材配合物の最大吐出速度とモデリング材配合物の最大吐出速度との間の所定の比aをもたらすように選択される。所定の比aの値は、好ましくは、形成された各層において、モデリング材配合物の高さが支持材配合物の高さと確実に等しくなるように選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0058】
例えば、a=1の場合、支持材配合物の全体的な吐出速度は、すべてのノズルアレイが動作するときのモデリング材配合物の全体的な吐出速度と概ね同じである。
【0059】
装置114は、例えば、各々がp個のノズルのm個のノズルアレイを有するM個のモデリングヘッドと、各々がq個のノズルのs個のノズルアレイを有するS個の支持ヘッドとを備え、M×m×p=S×s×qとなるようにすることができる。(M×m)個のモデリングアレイ及び(S×s)個の支持アレイの各々は、アレイのグループから組み立てられ、分解され得る別個の物理的ユニットとして製造され得る。この実施形態では、そのような各アレイは、任意選択でかつ好ましくは、それ自体の温度制御ユニット及び材料配合物レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0060】
装置114は、固化装置324をさらに含むことができ、固化装置324は、堆積された材料配合物を硬化させることができる光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば、固化装置324は、1つ以上の放射線源を含むことができ、放射線源は、例えば、使用されるモデリング材配合物に応じて、紫外線ランプ、可視光ランプ若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、固化装置324は、モデリング材配合物を硬化又は固化させるのに役立つ。
【0061】
固化装置324に加えて、装置114は、任意選択でかつ好ましくは、溶媒蒸発のための追加の放射線源328を含む。放射線源328は、任意選択でかつ好ましくは赤外線を発生させる。本発明の様々な例示的な実施形態では、固化装置324は、紫外線を発生する放射線源を備え、放射線源328は赤外線を発生させる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、装置114は、1つ以上のファンなどの冷却システム134を備える。
【0063】
印刷ヘッド(複数可)及び放射線源は、好ましくは、作業面として機能するトレイ360上を往復移動するように好ましくは動作可能なフレーム又はブロック128に搭載される。本発明のいくつかの実施形態では、放射線源は、印刷ヘッドの後に続いて、印刷ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化又は固化させるように、ブロックに搭載される。トレイ360は水平に配置されている。一般的な慣例によれば、X-Y平面がトレイ360に平行となるように、X-Y-Z直交座標系が選択される。トレイ360は、好ましくは、垂直方向に(Z方向に沿って)、典型的には下方に移動するように構成される。本発明の様々な例示的な実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326などをさらに備える。レベリング装置326は、その上に連続層を形成する前に、新たに形成された層の厚さを真っ直ぐにし、平らにし、及び/又は確立するのに役立つ。レベリング装置326は、好ましくは、レベリング中に発生した余分な材料配合物を回収するための廃棄物回収装置136を備える。廃棄物回収装置136は、材料配合物を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに送達する任意の機構を含むことができる。
【0064】
使用中、ユニット16の印刷ヘッドは、本明細書ではX方向と呼ばれる走査方向に移動し、トレイ360上を通過する過程で所定の構成で造形材配合物を選択的に吐出する。造形材配合物は、典型的には、1種類以上の支持材配合物と1種類以上のモデリング材配合物とを含む。ユニット16の印刷ヘッドの通過に続いて、放射線源126によるモデリング材配合物(複数可)の硬化が行われる。堆積したばかりの層の出発点に戻るヘッドの逆方向の通過(passage)において、所定の構成に従って、造形材配合物の追加の吐出が実行され得る。印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の通過において、このように形成された層は、好ましくは印刷ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動の経路(path)をたどるレベリング装置326によって直線化されてもよい。印刷ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、印刷ヘッドは、本明細書ではY方向と呼ばれるインデックス方向(indexing direction)に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復移動によって同じ層の造形を継続することができる。あるいは、印刷ヘッドは、順方向への移動と逆方向への移動との間に、又は2回以上の順方向及び逆方向への移動の後に、Y方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために印刷ヘッドによって行われる一連の走査は、本明細書では単一の走査サイクルと呼ばれる。
【0065】
層が完成すると、トレイ360は、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、所定のZレベルまでZ軸方向に下降される。この手順を繰り返すことにより、三次元物体112を層状に形成する。
【0066】
別の実施形態では、トレイ360は、ユニット16の印刷ヘッドの順方向への通過と逆方向への通過との間で、層内でZ方向に変位されてもよい。このようなZ変位は、レベリング装置と表面との接触を一方向において引き起こし、他方向において防止するために行われる。
【0067】
システム110は、任意選択でかつ好ましくは、造形材配合物の容器又はカートリッジを備え、複数の造形材配合物を積層造形装置114に供給する造形材配合物供給システム330を備える。
【0068】
制御ユニット152は、積層造形装置114を制御し、任意選択でかつ好ましくは、供給システム330も制御する。制御ユニット152は、典型的には、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット152は、好ましくは、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形態でコンピュータ可読媒体上に表されるCAD構成などの、コンピュータ物体データに基づいて、製造命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。典型的には、制御ユニット152は、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイに印加される電圧と、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイにおける造形材配合物の温度とを制御する。
【0069】
製造データが制御ユニット152にロードされると、ユーザの介入なしに動作することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット152は、例えばデータプロセッサ154を使用して、又はユニット152と通信するユーザインターフェース116を使用して、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインターフェース116は、これらに限定されないが、キーボード、タッチスクリーンなど、当技術分野で知られている任意の種類のものとすることができる。例えば、制御ユニット152は、追加の入力として、色、特性の歪み及び/又は転移温度、粘度、電気的特性、磁気的特性などであるがこれらに限定されない、1つ以上の造形材配合物の種類及び/又は属性を受信することができる。他の属性及び属性群も想定されている。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態による物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的な例が、図1B図1Dに示されている。図1B図1Dは、システム10の上面図(図1B)、側面図(図1C)、及び等角図(図1D)を示す。
【0071】
本実施形態において、システム10は、トレイ12と複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備え、複数の印刷ヘッド16の各々は、それぞれが1つ以上の複数の分離されたノズルを有する1つ以上のノズルアレイを有する。三次元印刷に使用される材料は、造形材供給システム42によって印刷ヘッド16に供給される。トレイ12は、ディスクの形状を有することができ、又は環状であってもよい。垂直軸を中心に回転させることができる限り、非円形形状も考えられる。
【0072】
トレイ12及びヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的な回転運動を可能にするように取り付けられる。これは、(i)トレイ12をヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するように構成すること、(ii)ヘッド16をトレイ12に対して垂直軸14を中心に回転するように構成すること、又は(iii)トレイ12及びヘッド16の両方を、垂直軸14を中心に、しかし異なる回転速度(例えば、反対方向の回転)で回転するように構成することによって達成され得る。システム10のいくつかの実施形態は、トレイ12がヘッド16に対して垂直軸14を中心に回転するように構成された回転トレイである、構成(i)に特に重点を置いて以下で説明されるが、本願は、システム10の構成(ii)及び(iii)も企図していることを理解されたい。本明細書に記載のシステム10の実施形態のいずれか1つは、構成(ii)及び(iii)のいずれにも適用可能であるように調整することができ、本明細書に記載の詳細を提示される当業者は、そのような調整を行う方法を知っているであろう。
【0073】
以下の説明では、トレイ12に平行で垂直軸14から外側を向く方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向を本明細書では方位角方向φと呼び、トレイ12に垂直な方向を本明細書では垂直方向zと呼ぶ。
【0074】
システム10における半径方向rは、システム110におけるインデックス方向yを規定し、方位角方向φは、システム110における走査方向xを規定する。したがって、半径方向は、本明細書ではインデックス方向と互換的に呼ばれ、方位角方向は、本明細書では走査方向と互換的に呼ばれる。
【0075】
本明細書で使用される「半径方向位置」という用語は、垂直軸14から特定の距離にあるトレイ12の上又は上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、垂直軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、その半径が垂直軸14からの特定の距離であり、その中心が垂直軸14にある円である点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0076】
本明細書で使用される「方位角位置」という用語は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12の上又は上方の位置を指す。したがって、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線である点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0077】
本明細書で使用される「垂直位置」という用語は、特定の点で垂直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0078】
トレイ12は、三次元印刷の造形プラットフォームとして機能する。1つ以上の物体が印刷される作業領域は、必ずしもそうである必要はないが、典型的には、トレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は符号26で示されている。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中に、同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中に、少なくとも1回(例えば、振動して)回転方向を逆転させる。トレイ12は、任意選択でかつ好ましくは、取り外し可能である。トレイ12を取り外すことは、システム10のメンテナンスのためであり、又は必要に応じて、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するためであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、1つ以上の異なる交換トレイ(例えば、交換トレイのキット)を備え、異なる種類の物体(例えば、異なる重さ)や異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などに対して、2つ以上のトレイが指定される。トレイ12の交換は、必要に応じて手動又は自動で行うことができる。自動交換が使用される場合、システム10は、ヘッド16の下方のその位置からトレイ12を取り外し、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を備える。図1Bの代表的な図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を有する駆動装置38として示されているが、他のタイプのトレイ交換装置も考えられる。
【0079】
印刷ヘッド16の例示的な実施形態を図2A図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含むがこれらに限定されない、上述のAMシステムのいずれかに使用することができる。
【0080】
図2A図2Bは、1つのノズルアレイ122を有する印刷ヘッド16(図2A)と、2つのノズルアレイ122を有する印刷ヘッド16(図2B)とを示す。アレイ内のノズルは、好ましくは直線に沿って直線的に整列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の直線状のノズルアレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意選択でかつ好ましくは、互いに平行であり得る。印刷ヘッドが2つ以上のノズルアレイを有する場合(例えば、図2B)、ヘッドのすべてのアレイに同じ造形材配合物を供給することができ、又は同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる造形材配合物を供給することができる。
【0081】
システム110と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、走査方向に沿った位置が互いにオフセットされた状態でインデックス方向に沿って配向される。
【0082】
システム10と同様のシステムが使用される場合、すべての印刷ヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにオフセットされた状態で、半径方向(半径方向に平行)に配向される。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いに対してある角度を成しており、その角度は、それぞれのヘッド間の方位角オフセットに概ね等しい。例えば、1つのヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φに配置することができ、別のヘッドを半径方向に配向し、方位角位置φに配置することができる。この例では、2つのヘッド間の方位角オフセットはφ-φであり、2つのヘッドの直線状のノズルアレイ間の角度もφ-φである。
【0083】
いくつかの実施形態では、複数の印刷ヘッドを印刷ヘッドのブロックに組み立てることができ、この場合、ブロックの複数の印刷ヘッドは、典型的には互いに平行である。複数のインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックは、図2Cに示されている。
【0084】
いくつかの実施形態では、システム10は、トレイ12が安定化構造体30とヘッド16との間にあるように、ヘッド16の下方に配置された安定化構造体30を備える。安定化構造体30は、インクジェット印刷ヘッド16が動作している間に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減するのに役立ち得る。印刷ヘッド16が垂直軸14を中心に回転する構成では、好ましくは、安定化構造体30が常にヘッド16の真下にある(ヘッド16とトレイ12との間にトレイ12がある)ように、安定化構造体30も回転する。
【0085】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、任意選択でかつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変化させるように、垂直軸14に平行な垂直方向zに沿って移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離を変化させる構成では、安定化構造体30もトレイ12と一緒に垂直方向に移動することが好ましい。トレイ12の垂直位置を固定したままで、ヘッド16によって垂直方向に沿った垂直距離を変化させる構成では、安定化構造体30も固定された垂直位置に維持される。
【0086】
垂直運動は、垂直駆動装置28によって確立することができる。1つの層が完成すると、その後に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を所定の垂直ステップだけ増加させる(例えば、トレイ12はヘッド16に対して降下される)ことができる。この手順を繰り返すことにより、層毎に三次元物体を形成する。
【0087】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、及び任意選択でかつ好ましくはシステム10の1つ以上の他の構成要素の動作(例えばトレイ12の動作)は、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路と、回路によって読み取り可能な不揮発性記憶媒体とを有することができ、記憶媒体は、回路によって読み取られると、以下でさらに詳細に説明するように、回路に制御動作を実行させるプログラム命令を記憶する。
【0088】
コントローラ20はまた、例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、積層造形ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットの形態で、コンピュータ物体データに基づいて製造命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することができる。物体データのフォーマットは、通常、デカルト座標系に従って構造化される。これらの場合、コンピュータ24は、好ましくは、コンピュータ物体データの各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、任意選択でかつ好ましくは、変換された座標系に関して製造命令を送信する。あるいは、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提示される元の座標系に関して製造命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0089】
座標の変換により、回転トレイ上での三次元印刷が可能になる。印刷ヘッドと静止トレイとを有する非回転システムでは、印刷ヘッドは、通常、固定トレイの上方を直線に沿って往復移動する。そのようなシステムでは、ヘッドの吐出速度が均一であれば、印刷の解像度はトレイ上のどの点でも同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッドポイントのすべてのノズルが同時にトレイ12上で同じ距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意選択でかつ好ましくは、異なる半径方向位置における等量の過剰な材料配合物を保証するように、実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表的な例を図3A図3Bに提示する。図3A図3Bは、物体の3つのスライス(各スライスは、物体の異なる層の製造命令に対応する)を示し、図3Aは、デカルト座標系におけるスライスを示し、図3Bは、それぞれのスライスへの座標変換手順の適用後の同じスライスを示す。
【0090】
典型的には、コントローラ20は、製造命令に基づいて、かつ以下に説明するように記憶されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0091】
一般に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上に三次元物体を印刷するなどのために、層毎に造形材配合物の液滴を吐出するように印刷ヘッド16を制御する。
【0092】
システム10は、任意選択でかつ好ましくは、1つ以上の放射線源18を含むことができる。放射線源18は、使用されるモデリング材配合物に応じて、例えば紫外線ランプ、可視光ランプ、若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であり得る。放射線源は、発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプなどを含むがこれらに限定されない、任意の種類の放射線放出装置を含むことができる。放射線源18は、モデリング材配合物を硬化又は固化するのに役立つ。本発明の様々な例示的な実施形態では、放射線源18の動作はコントローラ20によって制御され、コントローラ20は、放射線源18を作動及び停止させることができ、また、任意選択で放射線源18によって生成される放射線の量も、制御することができる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラ又はブレードとして製造することができる1つ以上のレベリング装置32をさらに備える。レベリング装置32は、その上に連続層を形成する前に、新たに形成された層を真っ直ぐにする役割を果たす。いくつかの実施形態では、レベリング装置32は、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面がトレイの表面に平行になるように配置された円錐形ローラの形状を有する。この実施形態は、システム10の側面図に示されている(図1C)。
【0094】
円錐形ローラは、円錐又は円錐台の形状を有することができる。
【0095】
円錐形ローラの開口角度(opening angle)は、好ましくは、その対称軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と対称軸14との間の距離との間に一定の比が存在するように選択される。ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pが、点pの垂直方向下方にある点におけるトレイの線速度に比例する(例えば、同じ)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に水平にすることを可能にする。いくつかの実施形態では、ローラは、高さh、垂直軸14からのその最も近い距離における半径R、及び垂直軸14からのその最も遠い距離における半径Rを有する円錐台の形状を有し、パラメータh、R及びRは、R/R=(R-h)/hという関係を満たし、Rは、垂直軸14からのローラの最も遠い距離である(例えば、Rはトレイ12の半径とすることができる)。
【0096】
レベリング装置32の動作は、任意選択でかつ好ましくは、コントローラ20によって制御され、コントローラ20は、レベリング装置32を作動及び停止させることができ、また、任意選択で、垂直方向(垂直軸14に平行)及び/又は半径方向(トレイ12に平行で、垂直軸14に向かって又は垂直軸14から離れる方向)に沿って、レベリング装置32の位置を制御することもできる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復移動するように構成されている。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さが、トレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。半径方向の方向に沿ったヘッド16の動きは、任意選択でかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0098】
いくつかの実施形態は、(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)異なるノズルアレイから異なる材料配合物を吐出することによって、物体を製造することを企図する。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料配合物から材料配合物を選択し、選択された材料配合物及びそれらの特性の所望の組み合わせを定義できることをもたらす。本実施形態によれば、層を有する各材料配合物の堆積の空間位置は、異なる材料配合物による異なる三次元空間位置の占有を達成するために定義されるか、又は2つ以上の異なる材料配合物による実質的に同じ三次元位置又は隣接する三次元位置の占有を達成するために定義され、層内の材料配合物の堆積後の空間的組み合わせを可能にし、それによってそれぞれの位置又は複数の位置で複合材料配合物を形成するようにする。
【0099】
モデリング材配合物の任意の堆積後の組み合わせ又は混合が企図される。例えば、特定の材料配合物が吐出されると、それはその元の特性を保つことができる。しかし、同じ又は近くの場所に吐出される別のモデルリング材配合物又は他の吐出された材料配合物と同時に吐出される場合、吐出された材料配合物とは異なる特性(複数可)有する複合材料配合物が形成され得る。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態では、システムは、層の少なくとも1つのためのデジタル材料配合物を吐出する。
【0101】
「デジタル材配合物」という語句は、本明細書及び当技術分野で使用される場合、異なる材料配合物の画素又はボクセルが領域にわたって互いに混在(interlace)するように、画素レベル又はボクセルレベルでの2つ以上の材料配合物の組み合わせを表す。そのようなデジタル材配合物は、材料配合物の種類の選択によって、及び/又は2つ以上の材料配合物の比及び相対的な空間分布によって影響を受ける新しい特性を示すことができる。
【0102】
本明細書で使用される場合、層の「ボクセル」は、層を記述するビットマップの単一のピクセルに対応する、層内の物理的な三次元の体積要素を指す。ボクセルのサイズは、造形材がそれぞれの画素に対応する位置に吐出され、水平にされ、固化されると、造形材によって形成される領域のサイズに概ね等しい。
【0103】
したがって、本実施形態は、物体の異なる部分において、物体の各部分を特徴付けるために所望される特性に従って、広範囲の材料配合物の組み合わせの堆積と、材料配合物の複数の異なる組み合わせからなり得る物体の製造とを可能にする。
【0104】
本実施形態に適したAMシステムの原理及び動作のさらなる詳細は、米国特許第9,031,680号に見出され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
本発明者らは、場合によっては、モデリング材が一旦硬化されると黄色がかった色相を呈し、したがって黄色化された材料の領域を生成することを見出した。これは、必ずしもそうであるとは限らないが、特に、1つ以上の領域が概して透明及び無色であることが意図されている製造物体にとっては望ましくない。
【0106】
「透明」という用語は、それを通る光の透過率を反射する材料の特性を表す。透明材料は、典型的には、それを通過する光の少なくとも70%を透過することができること、又は少なくとも70%の透過率を有することを特徴とする。材料の透過率は、当技術分野で周知の方法を使用して決定することができる。
【0107】
そのような材料の代表例には、イスラエルのStratasys Ltd社から市販されている、RGD720、MED610(登録商標)、MED625FLX(登録商標)、Vero Clear(登録商標)、及びVero Ultra(登録商標)Clearの商品名を有する材料が含まれるが、これらには限定されない。追加の透明配合物は、「ADDITIVE MANUFACTURING OF THREE-DIMENSIONAL OBJECTS CONTAINING A TRANSPARENT MATERIAL」(代理人整理番号第89343号)と題する同時出願されたPCT出願に記載されており、これは、国際公開第2020/065654号パンフレット、及び国際出願第PCT/IL2020/050396号において、米国仮特許出願第63/094,801号の優先権を主張している。
【0108】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、物体が製造されるモデリング材配合物の少なくとも1つは、光開始剤を含有する。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態によれば、モデリング材は、470nm未満、より好ましくは460nm未満、例えば450nm未満のピーク波長を有する可視光に曝露されたときに光退色を起こす光開始剤を含む光硬化性モデリング材配合物を硬化させると得られる。
【0110】
本明細書で使用する場合、「光退色を起こす(undergoes photobleaching)」とは、光開始剤の残留量が分解され、その結果、一旦硬化すると、材料の透過率が、少なくともYnmの幅を特徴とするスペクトル帯域の光に対して少なくともX%増加するような変化を意味し、ここで、Xは5、又は10、又は20、又は30であり、Yは10、又は20、又は30、又は40、又は50である。透過率が低下するスペクトル帯域の代表例は、黄色光(例えば、約565nm~約590nmの波長)である。なお、スペクトル帯域外の光に対する材料の透過率は、好ましくは変化しない。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態では、光退色は、CIE XYZ色空間でモデリング材の黄色度指数の少なくとも5単位の減少をもたらす。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光開始剤は、ホスフィンオキシド型光開始剤及びゲルマニウム系光開始剤から選択される。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ゲルマニウム系光開始剤は、モノアシル、ジアシル、トリアシル及びテトラアシルゲルマン型を含むアシルゲルマン型の光開始剤である。
【0114】
本明細書に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、光開始剤(複数可)は、ホスフィンオキシド型(例えば、モノアシル化(MAPO)又はビスアシル化ホスフィンオキシド型(BAPO)光開始剤)を含むか、又は本質的にホスフィンオキシド型からなる。
【0115】
例示的なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシドとしては、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
約380nmを超えて最大約450nmまでの波長範囲で照射されたときにフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)1700として市販されている)の25:75の混合物(重量比)、ビス(2,4,6トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR(登録商標)4265として市販されている)の1:1の混合物(重量比)、並びにエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR 8893X)が挙げられる。
【0117】
約380nmを超えて最大約450nmまでの波長範囲で照射されたときにフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403として市販されている)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)1700として市販されている)の25:75の混合物(重量比)、ビス(2,4,6トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR(登録商標)4265として市販されている)の1:1の混合物(重量比)、並びにエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR 8893X)が挙げられる。
【0118】
例示的な実施形態において、ホスフィンオキシド型光開始剤は、380nmより長い波長、例えば約390~約440nmの波長で活性化される。
【0119】
例示的な実施形態では、ホスフィンオキシド型光開始剤は、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、及び/又はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販されており、本明細書及び当該技術分野ではI-819とも呼ばれる)であるか又はそれを含む。
【0120】
本発明者らは、本明細書において光退色と呼ばれるプロセスにおいて、光及び熱による物体の製造後の処理によって黄色がかった色合いの少なくとも一部を除去できることを見出した。本発明者らは、予期せぬことに、可視光範囲内の波長の特定の部分範囲について、光退色が他の波長と比較して著しく速く、より効率的であることを発見した。特に、本発明者らは、470nm未満、より好ましくは460nm未満、例えば450nm未満のピーク波長を有する可視光が、他のピーク波長を有する光、又は実質的に白色光よりも黄色味を速く低減することを見出した。
【0121】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、積層造形によってモデリング材から製造された物体は、470nm未満のピーク波長を有する可視光にそれを曝露することによって処理される。ピーク波長は、好ましくは少なくとも350nm、より好ましくは少なくとも370nm、より好ましくは少なくとも390nm、例えば400nm以上である。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態では、物体の可視光への曝露の任意の時間間隔において、可視光のスペクトルエネルギーのX%は、約430nm~約470nm、又は約440nm~約460nmに及ぶスペクトル範囲内であり、Xは、少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも95である。
【0123】
本実施形態に適した可視光のスペクトル成分の代表例を図9Aに示す。白色LEDのスペクトル成分を図9Bに示す。図に示すように、図9Aでは、スペクトルエネルギーの大部分が約430nm~約470nmに及ぶスペクトル範囲内にあるが、図9Bでは、スペクトルエネルギーのかなりの部分がより長い波長(500nm以上)で供給される。
【0124】
また、予想外にも、光退色プロセスが過度に高い温度で実行される場合、又は光退色プロセス自体がモデリング材の温度を上昇させる場合に、モデリング材中のいくつかの染料が、分解又は他の方法で化学的に修飾され得ることが発見された。特に、本発明者らは、マゼンタ染料が光退色プロセスに対して実質的に脆弱であり、特に光退色プロセスが、マゼンタ染料(例えば、黒色などのマゼンタを含むモデリング材)を含むモデリング材の熱変形温度(HDT)を超える温度で行われる場合において、マゼンタ染料が光退色プロセスに対して脆弱であることを見出した。
【0125】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、物体は、本明細書でさらに詳述するように可視光線と、モデリング材のHDT未満の温度、より好ましくはモデリング材のHDTより最大5℃又は最大10℃低い温度に物体を曝露することによって処理される。好ましくは、物体がさらされる温度は、TMINよりも高く、TMINは、室温(例えば、25℃)及びHDTよりも20℃低い温度のうちの、より大きい方である所定のパラメータである。物体が2つ以上のモデリング材から製造される場合、光退色は、最も低いHDT値を有するモデリング材のHDTよりも低い(例えば、少なくとも5℃低い)温度、又は前記物体を製造するために使用されるモデリング材の加重平均HTDよりも低い温度で行う。
【0126】
可視光線及び温度への曝露の持続時間は、好ましくは、所望の効果の程度に基づいて選択される。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、曝露の持続時間は、式YI=100-青色/[(青色+赤色+緑色)/3]*100を用いて計算されるモデリング材の黄色度指数(YI)を低下させるように選択される。
【0127】
代替的に、YIは、ASTM規格E313に従って分光光度計を使用して測定することができる。
【0128】
本発明の様々な例示的な実施形態では、曝露の持続時間は、YIを少なくとも5単位、より好ましくは少なくとも6単位、より好ましくは少なくとも7単位、より好ましくは少なくとも8単位、より好ましくは少なくとも9単位、より好ましくは少なくとも10単位減少させるように選択される。
【0129】
さらに代替的に、YIは、式YI=100×(CX-CZ)/Yを使用して計算することができ、式中、C及びCは定数であり、X、Y、ZはCIE XYZ色空間における三刺激値である。モデリング材の色が他の色空間(例えば、CMYK)で表現される場合、色変換によりそれぞれの色空間をCIE XYZ色空間に変換することができる。そのような色変換は、印刷の技術分野の当業者には周知である。係数C及びCの値は、YIを定義するために使用されるASTM規格に従っている。ASTM規格D-1925が使用される場合、Cは約1.28であり、Cは約1.06である。
【0130】
一般に、モデリング材の黄色度指数を低下させることが望まれているが、特に、一般に透明で無色のモデリング材で作られた物体の部分については、物体の着色部分の色を維持することが好ましい。すなわち、曝露後の着色部分の色と曝露前の着色部分の色との色差が小さいことが好ましい。
【0131】
色差は、本明細書では、CIE(L、a、b)色空間における数学的演算を使用して計算することができる量によって好都合に表される。オブジェクトの着色領域の色を他の色空間(例えば、CMYK又はCIE XYZ)で表現する場合、色差はそれらの色空間で表現することができ、あるいは、色変換によってそれぞれの色空間をCIE(L、a、b)色空間に変換して、この空間の色差を計算することができる。CIE(L、a、b)色空間は、一般に「均一な」色空間と呼ばれ、色空間内のある色点から別の色点までのステップのサイズが等しいと、略等しい色の違いとして知覚される。すべての色は、色空間内の点として扱われ、3成分(L、a、b)によって表される。これは、例えば、限定はしないが、米国ミシガン州のX-Rite社から市販されている商品名Ci7860を有する分光計などの分光計によって測定することができる。
【0132】
2色間の差は、色空間における対応する点の間でユークリッド距離を用いて定量化することができる。正式には、2つの色の座標を(L 、a 、b )及び(L 、a 、b )で示すと、2つの色の差は下記式によって与えられる。
【0133】
【数1】
【0134】
上記のΔEの式を用いることにより、曝露後の着色領域の色と、曝露前の同じ着色領域の色との色差を、いわゆる「ΔE単位」で表すことができる。したがって、例えば、ΔEについての上記式の右辺が1である場合、2色間の色差は1ΔE単位であると言われる。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態では、物体の少なくとも1つの着色領域、より好ましくは物体の各着色領域について、曝露後の着色領域の色と曝露前の着色領域の色との間の色差が2ΔE単位未満となるように、光退色プロセス(例えば、ピーク波長、温度、持続時間)のパラメータの1つ以上が選択される。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態では、光退色プロセスの持続時間は、処理後に、物体が製造される透明なモデリング材が、少なくとも90のCIE明度値Lと、少なくとも-0.35のCIEa値と、2未満又は1.5未満のCIEb値とによって特徴付けられるように選択される。
【0137】
上記の実施形態のいずれかでは、光退色プロセスのパラメータの1つ以上は、オペレータによって手動で選択され、及び/又は自動的に選択され、及び/又はオペレータによって選択できないように予め決定され得る。例えば、光のピーク波長は、予め決定され、オペレータによって選択できないようにすることができ(例えば、400nm~500nmの間、又は420nm~480nmの間の値に設定される)、温度及び曝露の持続時間の少なくとも一方は手動又は自動で選択することができる。
【0138】
パラメータの選択は、物体固有であることが好ましく、その結果、物体の製造パラメータの1つ以上が、光退色プロセスのためのそれぞれのパラメータを選択するための入力として使用される。入力として使用することができる製造パラメータの代表的な例には、物体が製造されたモデリング材の種類、物体が製造されたモデリング材のHDT、物体が製造されたモデリング材の熱伝導率、物体の幾何学的形状(例えば、ある方向に沿った厚さ又は厚さのセット、或いは、2つ若しくは3つの方向の各々に沿った厚さ又は厚さのセット)、物体を製造するために使用された各モデリング材の量(例えば、体積、重量)、硬化放射線(使用される場合)への物体の曝露の持続時間などが含まれるが、これに限定するものではない。いくつかの製造パラメータは、他の製造パラメータに関する情報から得ることができることが理解される。例えば、モデリング材の種類に関する入力を受け取ることにより、例えばルックアップテーブルを使用して、この材料のHDT及び/又は熱伝導率を得ることができる。
【0139】
製造パラメータが受信されると、製造パラメータを光退色のパラメータと関連付けるルックアップテーブル、又はより好ましくは製造パラメータのセットを光退色のパラメータのセットと関連付けるルックアップテーブルを使用して、光退色プロセスのパラメータを選択することができる。実際の製造パラメータがルックアップテーブルのエントリと正確に一致する場合でも、ルックアップテーブルを使用することができる。この場合、実際の製造パラメータに最もよく一致するエントリが選択され、選択されたエントリに対応する光退色のためのパラメータがルックアップテーブルから抽出される。抽出されたパラメータは、光退色プロセスで使用することができる。あるいは、光退色に使用されるパラメータは、例えば補間及び/又はスケーリングを適用することによって、抽出されたパラメータに基づいて計算することができる。
【0140】
光退色のためのパラメータの選択が自動的に行われる場合、それは好ましくは、AMシステム(例えば、システム10又は110)から製造パラメータを受信し、製造パラメータを光退色のためのパラメータと関連付けるルックアップテーブルを含むコンピュータ可読媒体にアクセスし、AMシステムから受信した製造パラメータと一致する製造パラメータについてルックアップテーブルを検索し、ルックアップテーブルから光退色プロセスのためのそれぞれのパラメータを抽出することによって実行される。
【0141】
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、AMシステムによってモデリング材から製造された物体112を処理するためのシステム200の概略図である。AMシステムは、積層造形によって三次元物体を製造する任意のシステムとすることができ、例えば、上述のシステム10又は110などが挙げられるが、これに限定されない。システム200は、物体112を受け入れるための処理チャンバ202を備える。典型的には、チャンバ202には、物体112がチャンバ202に導入された後にチャンバを閉じるためのドア204が設けられる。システム200は、物体112を照明するための光208を生成するための照明システム206をさらに備える。典型的には、照明システム206は、光208を生成するための1つ以上の光源210を備える。光源210は、これらに限定されないが、LED、OLED、水銀ランプなどの、当技術分野で公知の任意のタイプのものとすることができる。本発明のいくつかの実施形態では、照明システムは、本明細書でさらに詳述するように、470nm未満のピーク波長を有する可視光を生成する。所望のピーク波長を有する発光スペクトルを有する光源を選択することによって、又は所望のピーク波長を有する透過スペクトルを有するフィルタを用いてより広いスペクトルを有する光をフィルタリングすることによって、所望のピーク波長を有する光208のスペクトルを確保することができる。チャンバ202内の光源210の位置は変化してもよいが、それらは好ましくはチャンバ202の上部内面及び/又は角部に配置される。いくつかの実施形態では、1つ以上のLEDのストリップが使用される(例えば、白色LED及び/又は青色LEDのストリップ)。
【0142】
システム200は、任意選択でかつ好ましくは、物体112及び/又はチャンバ202の内部を加熱するための加熱システム212をさらに備える。図4は、加熱システム212がチャンバ202の底部にあり、物体112を下方から加熱するように配置されている実施形態を示す。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態は、加熱システム212をチャンバ202の他の部分(例えば、1つ以上の側壁、及び/又は上部)に配置することを企図しているので、これは必ずそうである必要はない。さらに、本実施形態は、複数の加熱要素を有する加熱システムを想定しており、その場合、加熱要素は、チャンバ202内の1つの位置に配置されるか、又は(例えば、その壁、底部及び/又は上部に)分散して配置され得る。いくつかの実施形態では、システム200は、冷却システム230(例えば、1つ以上のファン)、及び/又は物体112及び/又はチャンバ202の閉ループ温度監視用の1つ以上の温度センサ232(例えば、IRセンサ)を含む。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態では、システム200は、AMシステムによる物体の製造に対応する製造パラメータのセットを受け取るように構成された回路を有する入力214を備える。入力214は、例えば、キーボード又はタッチスクリーンなどであるがこれらに限定されないユーザインターフェースを含むことができる。あるいは、入力214は、遠隔ユーザインターフェース(図示せず)と通信するように構成された通信システムを含むことができ、製造パラメータのセットに関する信号を遠隔ユーザインターフェースから受信することができる。遠隔ユーザインターフェースは、当技術分野で知られている任意のタイプのものとすることができる。例えば、遠隔ユーザインターフェースは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータなどからなる群から選択することができる。入力214は、本発明のいくつかの実施形態では、AMシステム10/110と直接通信するように構成された通信システムを含むことができ、その場合、AMシステムはまた、入力214と通信するように構成された通信システム17(図1A及び図1Bも参照されたい)を含む。これらの実施形態では、AMシステムのコントローラ又はデータプロセッサは、入力214への送信のために製造パラメータのセットを通信システム17に供給する。
【0144】
入力214と、AMシステムの遠隔インターフェース及び/又は通信システム17との間の通信は、ケーブル218を介した有線通信、又は例えば近距離無線通信技術(例えば、Bluetooth(登録商標)、WiFiなど)を介した無線通信とすることができる。
【0145】
システム200は、好ましくは、入力214から製造パラメータのセットを受信するように構成された回路を有するコンピュータ化されたコントローラ216を備える(入力214がユーザインターフェースであっても、又は遠隔ユーザインターフェースから(又はAMシステムから直接)製造パラメータを受信する通信システムであってもよい)。任意選択でかつ好ましくは、コントローラ216の回路はまた、製造パラメータのセットに基づいて照明システム210及び加熱システム212を動作させるように構成される。典型的には、必須ではないが、コントローラ216は、コントローラ216が入力214を介して受信した製造パラメータのセットに基づいて光退色プロセスのパラメータを決定するのに十分な情報を記憶するコンピュータ可読媒体220にアクセスする。次いで、コントローラ216は、光退色プロセスの決定されたパラメータに従って、照明システム210及び加熱システム212を動作させる。
【0146】
また、本実施形態では、媒体220に記憶させる多くの種類の情報を企図している。好ましくは、情報は、本明細書でさらに詳述するように、製造パラメータを光退色のためのパラメータと関連付けるルックアップテーブルの形態である。例えば、製造パラメータのセットがモデリング材の種類を含む場合、媒体220は、例えば、それぞれがモデリング材の種類とエントリのモデリング材の種類に対応するHDTの値とを含む、複数のエントリを有するルックアップテーブルの形態のHDTデータを含むことができる。この場合、モデリング材の種類は製造パラメータであり、HDTの値は光退色のパラメータである。次いで、コントローラ216は、HDTデータを検索し、入力214を介して受け取ったモデリング材の種類に対応するHDTの値を抽出し、加熱システム212を制御して、本明細書でさらに詳述するように、HDTの値より低い温度をチャンバにおいて維持することができる。あるいは、入力214を介して受信した製造パラメータのセットは、HDTの値を予め含むことができ、この場合、コンピュータ化されたコントローラ216は、媒体220を検索することなく、HDTの値より低い温度を維持するように加熱システム212を制御することができる。
【0147】
製造パラメータのセットがモデリング材の種類を含む場合、媒体220はまた、例えば、それぞれがモデリング材の種類とエントリのモデリング材の種類に対応する熱伝導率の値とを含む、複数のエントリを有するルックアップテーブルの形態で、熱伝導率データを含むことができる。次いで、コントローラ216は、熱伝導率データを検索し、入力214を介して受け取ったモデリング材の種類に対応する熱伝導率の値を抽出し、熱伝導率の値に基づいてシステム210及び212が動作する持続時間を制御することができる。媒体220は、熱伝導率を持続時間と関連付ける別のルックアップテーブルを含むことができ、コントローラ216は、このルックアップテーブルを検索することによって適切な持続時間を選択することができる。あるいは、媒体220は、モデリング材の種類と持続時間とを関連付けるルックアップテーブルを含むことができ、この場合、コントローラ216は、熱伝導率を決定することなくモデリング材の種類に基づいて持続時間を選択することができる。さらに代替的に、入力214を介して受信した製造パラメータのセットは、熱伝導率の値を予め含んでおくことができ、この場合、コンピュータ化されたコントローラ216は、熱伝導率を持続時間と関連付けるルックアップテーブルを使用して、モデリング材の種類を決定することなく、適切な持続時間を決定することができる。
【0148】
製造パラメータのセットが物体を記述する幾何学的パラメータを含む場合、コントローラ216は、幾何学的パラメータに基づいて曝露の持続時間を選択する。任意選択でかつ好ましくは、これは、媒体216内の情報を使用して行われる。例えば、媒体220は、それぞれが幾何学的情報及びエントリの幾何学的情報に対応する持続時間の値を含む、複数のエントリを有するルックアップテーブルを含むことができる。ルックアップテーブルは、エントリ毎に異なる幾何学的パラメータ、又はエントリ毎に異なる幾何学的パラメータのセットを含むことができる。例えば、ルックアップテーブルは、異なる形状に関係する第1の複数のエントリ、異なる体積に関係する第2の複数のエントリ、異なる厚さに関係する第3の複数のエントリなどを含むことができる。あるいは、ルックアップテーブルは、それぞれが形状、体積、及び厚さの異なる組み合わせに関連する、複数のエントリを含むことができる。
【0149】
製造パラメータのセットはまた、製造に使用される光開始剤の種類及び/又は濃度を含むことができる。この場合、コントローラ216は、光開始剤の種類及び/又は濃度に基づいて、システム210及び212が動作する持続時間を制御することができる。媒体220は、光開始剤の種類及び/又は濃度を持続時間と関連付けるルックアップテーブルを含むことができ、コントローラ216は、このルックアップテーブルを検索することによって適切な持続時間を選択することができる。
【0150】
上記のタイプの情報の任意の組み合わせが考えられる。例えば、好ましい実施形態では、各エントリが1つの製造シナリオに対応し、この製造シナリオを光退色プロセスのパラメータのセットに関連付けるように、可能な製造シナリオの先験的な集合(a priori collection)が媒体220のルックアップテーブルを定義するために使用される。例えば、ルックアップテーブルのエントリは、モデリング材の種類、幾何学的形状、HDT、熱伝導率、及び光退色プロセスの対応するパラメータのセット(例えば、温度、持続時間)からなる群から選択される製造パラメータのセットを含むことができる。
【0151】
用語「comprises、comprising(備える、含む)」「includes、including(含む)」「having(有する)」及びそれらの活用形は、「を含むが、これに限定されない」ということを意味する。
【0152】
用語「からなる(consisting of)」は、「を含み、これに限定される」ということを意味する。
【0153】
「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得るが、追加の成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0154】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0155】
本願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲の形式で提示され得る。範囲の形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲と、その範囲内の個々の数値とを具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲と、その範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6と、を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0156】
本明細書において数値範囲が示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲」及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1指示数及び第2の指示数と、第1指示数及び第2の指示数の間のすべての分数及び整数とを含むことを意味する。
【0157】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の適切な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の説明された実施形態で適切であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0158】
本明細書で説明され、以下の特許請求の範囲の項で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例
【0159】
ここで、上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示する、以下の実施例を参照する。
【0160】
本実施形態の光退色プロセスが、積層造形(AM)によって製造された物体を漂白する能力を調べるために、比較研究を行った。すべての実験において、物体は、「ADDITIVE MANUFACTURING OF THREE-DIMENSIONAL OBJECTS CONTAINING A TRANSPARENT MATERIAL」(代理人整理番号第89343号)と題する同時出願されたPCT出願(それは本譲受人による米国仮特許出願第63/094801号の優先権の利益を主張するものである)に記載されているように、チオエーテル材料を含む新たに設計された透明配合物から製造され、その透明配合物は、例えば0.8%の濃度で光開始剤としてTPOを含み、45℃~48℃で推定されるHDTを特徴とする。
【0161】
ある実験では、横寸法40mm×40mm、高さ5mmの物体を3Dインクジェット印刷によって製造し、少なくとも24時間、様々な貯蔵条件下に置いた。物体は、(15mmの物体が完成するまで)高さ5mmの物体を過剰な量のUV光に曝すように、高さ15mmの他の物体(この実験では使用されなかった)と共に製造された。以下の4つの貯蔵条件を試験した。(i)白色光(白色ランプ45W、光温度6500K)と室温(約25℃)、(ii)青色光と温度45℃、(iii)暗い条件での温度45℃、及び(iv)室温条件と白色蛍光灯。各貯蔵条件について、貯蔵時間の関数としてYIを計算した。YIは以下のようにして算出した。
【0162】
デジタルカメラ(Canon、PowerShot A650 IS)を用いて、一対の印刷部品の画像を撮影した。次いで、画像をImageJを使用して分析し、RGBの値を抽出した。黄色度指数は、以下の式に従って計算した。
【0163】
黄色度指数=100-青色/[(青色+赤色+緑色)/3]*100
【0164】
式中、青色、赤色、及び緑色は、画像処理によって得られたそれぞれの色の強度である。
【0165】
結果を図5に示す。図示されるように、YIの最も速い減少は、貯蔵条件(ii)に対するものであった。
【0166】
別の実験では、高さ10mm及び横寸法40mm×40mmの物体を3Dインクジェット印刷によって製造し、異なる照明シナリオで光に曝露した。以下の3つの照明シナリオを試験した。(i)実験室での蛍光白色光、(ii)40℃に維持された照明室での白色光照明、及び(iii)40℃の温度に維持されたテーブル上での45W及び光温度6500Kの白色ランプを用いた照明。各シナリオについて、YIは、前の実験について行われたように、照明時間の関数として計算された。結果を図6に示す。示されるように、YIが最も速く減少したのは、照明シナリオ(ii)であった。
【0167】
追加の実験では、光スペクトルの影響を調査した。高さ10mm、横寸法40mm×40mmの物体を、3Dインクジェット印刷によって製造し、異なるスペクトルで光に曝露した。以下の4つの照明シナリオを試験した。(i)室温(25℃)で460nmのピーク波長を有する光、(ii)室温(25℃)で440nmのピーク波長を有する光、(iii)室温(25℃)の白色投光ランプ(100W、光温度-6500K)、及び(iv)温度40℃で白色投光ランプ(100W、光温度-6500K)。各シナリオについて、ASTM E-313に従い、ベンチトップ分光光度計(CI76600)を使用して、照明時間の関数としてYIを測定した。結果を図7に示す。図示されるように、YIが最も速く減少したのは、照明シナリオ(ii)であった。照明シナリオ(iv)では実験の最後に1回の測定が行われたため、図7は傾向線を含んでいない。
【0168】
以下の表1は、3Dインクジェット印刷によって製造された高さ1mm及び横寸法40mm×40mmの10個の物体を、室温と、投光ランプの100W、LED6500Kシステムによって生成された白色光とで、光退色処理を施した実験の結果をまとめたものである。表1には、処理前、光への曝露の1時間後、及び光への曝露の6時間後の各物体の色が示されている。色はCIE(L、a、b)色空間で表されている。処理前の色に対する色差ΔEも示されている。表1は、光退色に白色光を使用すると、多くのサンプルについて6時間の処理後に色の著しい変化をもたらすことを実証している。
【0169】
【表1】
【0170】
以下の表2は、より高い線量の460nmのLED光(この実験では100W)を使用したことを除いて、表1に要約した実験と同様の実験の結果をまとめている。
【0171】
【表2】
【0172】
表2は、高い線量の460nmのLED光はまた、6時間の処理後に色の有意な変化をもたらすことを実証している。
【0173】
図8は、(i)室温及び投光ランプの100Wの白色光での光退色、(ii)温度40℃及び4つの9W、6500KのLEDを使用した白色LED光での光退色、並びに(iii)温度40℃及び450nm~500nmの間のピーク波長を有する光を放出する4つの9WのLEDを使用した青色LED光での光退色、についてのYIの減少を示す。図示されるように、YIの最も大きな変化は、光退色プロセス(iii)に対するものであった。以下の表3及び表4は、3Dインクジェット印刷によって製造された高さ1mm及び横寸法40mm×40mmの10個の物体について、それぞれ光退色プロセス(iii)及び(i)の色の変化をまとめたものである。
【0174】
表3及び表4と図8とは、光退色プロセス(iii)が、物体の色の変化を小さく維持しながら、YIの大幅な低減を首尾よく達成することを実証している(表3)。これに対して、光退色プロセス(i)は、物体の色の変化を小さく維持するが(表4)、YIを低減するのに十分ではないことが分かる。
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
物体の機械的特性に対する光退色プロセスの効果も研究した。24時間の曝露の持続時間の結果を以下の表5にまとめ、図8に記載の光退色プロセス(i)~(iii)を適用した後の改善された機械的特性を示す。
【0178】
「曲げ強度」又は「曲げ応力(flexural stress or Flex., Stress)」とは、曲げ試験で降伏する直前の材料の応力を意味する。曲げ応力は、例えば、ASTM D-790-03に従って判定することができる。
【0179】
「曲げ弾性率」、又は「曲げY弾性率(flex. Y. Modulus)」とは、曲げ変形における応力と歪みの比を意味し、ASTM D790などの曲げ試験によって生成された応力-歪み曲線の勾配から判定される。曲げ弾性率は、例えば、ASTM D-790-04に従って判定することができる。
【0180】
【表5】
【0181】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、修正及び変形が、当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲に含まれるすべてのそのような代替、修正及び変形を包含することが意図されている。
【0182】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の各刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれることが本出願人の意図である。さらに、本願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。項目の見出しが使用される場合、それらが必ず限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】