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特表2023-547415少なくとも1つの金属管の少なくとも一方の端部にねじ山を製作するための方法およびねじ切り設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】少なくとも1つの金属管の少なくとも一方の端部にねじ山を製作するための方法およびねじ切り設備
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/00 20060101AFI20231102BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20231102BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20231102BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20231102BHJP
   B23P 23/02 20060101ALI20231102BHJP
   B23G 1/00 20060101ALI20231102BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B23Q15/00 301C
G01B11/25 H
B23Q17/20 Z
B23B1/00 Z
B23P23/02 A
B23G1/00
G05B19/4155 V
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023524827
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021075267
(87)【国際公開番号】W WO2022083945
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】102020213347.6
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021202211.1
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ドホーン
(72)【発明者】
【氏名】ティム キュパース
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゲ デーンデル
【テーマコード(参考)】
2F065
3C029
3C045
3C269
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065CC04
2F065FF04
2F065FF09
2F065FF41
2F065HH05
2F065HH12
2F065PP22
3C029BB01
3C029BB10
3C045AA10
3C269AB02
3C269AB05
3C269AB06
3C269AB33
3C269BB03
3C269CC09
3C269EF02
3C269EF10
3C269EF15
3C269EF66
3C269JJ09
3C269JJ19
3C269JJ20
3C269MN09
3C269MN44
3C269MN46
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの金属管(3)の少なくとも一方の端部に、少なくとも1つのCNC制御式の工作機械(2)での金属管(3)の切削加工によって、ねじ山を製作するための方法であって、ねじ切り工程中にかつ/またはねじ切り工程に続いてねじ山を光学式に測定することと、ねじ山のねじ山形状および/またはシールリップ(6)の測定データを電子式に検出して評価することと、工作機械(2)に接続された少なくとも1つの閉ループ制御装置を使用して、測定データに基づき、工作機械(2)を制御するための制御命令を導出することと、を含む方法に関する。本発明は、さらに、ねじ切り設備に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属管(3)の少なくとも一方の端部に、少なくとも1つのCNC制御式の工作機械(2)での前記金属管(3)の切削加工によって、ねじ山を製作するための方法であって、
ねじ切り工程中にかつ/またはねじ切り工程に続いて前記ねじ山を光学式に測定することと、
前記ねじ山のねじ山形状および/またはシールリップ(6)の測定データを電子式に検出して評価することと、
前記工作機械(2)に接続された少なくとも1つの閉ループ制御装置を使用して、前記測定データに基づき、前記工作機械(2)を制御するための制御命令を導出することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記閉ループ制御装置は、前記制御命令を導出するための少なくとも1つの自己学習アルゴリズムを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ねじ山として、別の金属管(3)の相補的な雌ねじ山と共に耐圧性のガス密なかつ/または液密な接続部を形成するようになっている円錐形の雄ねじ山(4)を切削することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ねじ山を光学式に測定することを、マニピュレータで案内される、少なくとも1つの光学式の測定区間(16)を有する少なくとも1つの測定ヘッド(10)を用いて実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記測定ヘッド(10)は、アンダカットされたねじ山フランク(5)を備えた円錐形のねじ山を測定するように構成されていることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ねじ山を光学式に測定することを、前記ねじ切り工程に続いて行い、好ましくは、複数の金属管(3)を連続加工するように構成された製造ラインにおいて、前記ねじ切り工程後に複数サイクル行うことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記制御命令を、誤った調整パラメータの際のまたは摩耗補償のための、加工すべき前記金属管に対する少なくとも1つの工具の位置補正、少なくとも1つの工具の摩耗に起因した交換、前記ねじ山形状に対する予め設定された幾何学的な要求を満たすための少なくとも1つの工具の選択、前記工作機械(2)の緊締チャックの回転数および/またはトルクの調整、前記工作機械(2)のサイクル時間の変更を含む制御命令の群から選択することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの方法ステップは、測定ステーション(7)に配置された少なくとも1つの基準構成部材を用いた前記測定ヘッド(10)の少なくとも1回の較正を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
切削すべきねじ山をソフトウェアにコンフィギュレーションし、コンフィギュレーションデータを前記測定データによって補償することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記測定データを、該当する前記金属管(3)の一義的な識別および対応付けを有する品質データベースに格納することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
測定ステーションの内部の規定の測定位置に、測定すべき前記金属管(3)を固定する方法ステップと、前記測定ヘッド(10)の位置認識のためのシステムを用いて、前記金属管(3)に対して前記測定ヘッド(10)を位置決めする方法ステップと、管軸線を基準として前記少なくとも1つの測定区間(16)をアライメントする方法ステップと、前記金属管(3)の前記ねじ山形状および/または前記シールリップ(6)を走査する方法ステップと、を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
特に請求項1から11までのいずれか1項記載の方法を実施するための、金属管の端部にねじ山を製作するためのねじ切り設備であって、
ねじ山を設けるべき前記金属管(3)を切削加工するための少なくとも1つのCNC工作機械(2)と、
前記工作機械(2)への制御命令を実現するための開ループ制御装置と、
切削された前記ねじ山を光学式に測定するための少なくとも1つの装置と、
ねじ山測定の測定データを電子式に検出して記憶するための手段と、
前記ねじ山測定の前記測定データから制御命令を導出するための少なくとも1つの閉ループ制御装置と、
を備え、
前記測定データを光学式に検出して記憶するための前記装置は、前記工作機械(2)の前記開ループ制御装置に接続されている、ねじ切り設備。
【請求項13】
前記工作機械(2)は、旋盤、旋削・フライス加工センタ、ねじ切り機械または油井管継手加工機械として形成されていることを特徴とする、請求項12記載のねじ切り設備。
【請求項14】
前記工作機械(2)は、前記金属管(3)を緊締するための少なくとも1つの回転可能な緊締チャックと、少なくとも1つの工具を備えた、前記緊締チャックに対して固定可能かつ位置決め可能な少なくとも1つの工具ホルダとを有することを特徴とする、請求項11または12記載のねじ切り設備。
【請求項15】
1つのプロセスラインに相前後して配置された加工ステーションと測定ステーション(7)とを備え、前記加工ステーションは、前記工作機械(2)を備え、前記測定ステーション(7)は、切削された前記ねじ山を光学式に測定するための少なくとも1つの装置を備えることを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載のねじ切り設備。
【請求項16】
光学式に測定するための装置として、少なくとも1つの光学式の測定区間(16)を有する少なくとも1つの測定ヘッド(10)が設けられており、前記測定ヘッド(10)は、マニピュレータに取り付けられていて、前記ねじ山のねじ山形状および/またはシールリップ(6)の測定を目的として前記測定ヘッド(10)を前記金属管(3)に対して運動させるように構成されていることを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項記載のねじ切り設備。
【請求項17】
前記測定ヘッド(10)は、測定すべき前記ねじ山を洗浄するための手段を備えることを特徴とする、請求項16記載のねじ切り設備。
【請求項18】
前記測定すべきねじ山を洗浄するための手段として、機械式にかつ/または洗浄流体と共に作用する少なくとも1つの洗浄装置が設けられていることを特徴とする、請求項17記載のねじ切り設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの金属管の少なくとも一方の端部に、少なくとも1つのCNC制御式の工作機械での金属管の切削加工によって、ねじ山を製作するための方法であって、ねじ切り工程中にかつ/またはねじ切り工程に続いてねじ山を光学式に測定することを含む、方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、特に方法を実施するための、金属管の端部にねじ山を製作するためのねじ切り設備に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば天然ガスまたは原油のような、圧力下にある流体を搬送する働きをし、耐圧性にガス密にかつ液密に互いに螺合される管のねじ山には、シール性に高い要求を課す必要がある。原油探査孔または天然ガス探査孔または天然ガス搬送管路または原油搬送管路用のケーシングまたはライザとしてのこのようなOCTG管(OCTG=Oil Country Tubular Goodes)では、一般的に、アンダカットされたねじ山フランクを備えた円錐形のねじ山が使用される。ねじ山には、通常、管の端面側にシールリップが続いている。ねじ山およびシールリップは、極めて高い精度要求を満たす必要がある。従来技術では、基本的に、管の品質管理のためにねじ山を光学式に測定することが公知である。
【0004】
管の雄ねじ山形状を光学式に測定するための方法および装置は、例えば国際公開第2019/09371号に基づいて公知である。この公知の装置は、測定すべき管用の支台と、少なくとも1つの測定装置を備えた光学式の測定ユニットとを備えており、測定装置は、光源と、雄ねじ山形状の影を撮影するために光源のビーム路に配置されたカメラとを備えている。また、光学式の測定ユニットは、3つの空間軸を中心として旋回可能に保持された支持要素に不動に配置されており、さらに、光学式の測定ユニットは、少なくとも2つの測定装置を有していて、これらの測定装置のビーム路は互いに交差している。方法は、支台への測定すべき管の配置を含んでいるので、空間軸は、測定ユニットの測定平面に対して横方向に延びており、雄ねじ山は、光源と、対応配置されたカメラとの間のビーム路に配置されている。方法は、さらに、測定平面が空間軸と直角を成すような測定ユニットのアライメントと、少なくとも1つの測定装置のカメラを用いた雄ねじ山の影の撮影と、影の評価とを含んでいる。
【0005】
ねじ山を測定するための他の装置は、例えば欧州特許第3465079号明細書に基づいて公知である。この装置は、管を解離可能に保持するためのホルダを備えていて、ねじ山は管の一方の端部に形成されており、装置は、さらに、第1の光学センサを備えた第1の光学式の測定区間を有しており、第1の光学式の測定区間は、装置のマニピュレータに取り付けられていて、マニピュレータは、第1の測定区間を管に対して運動させるように構成されており、第1の光学式の測定区間は、第1の調整軸線を中心としてねじ山のねじ山軸線に対して調整可能であり、マニピュレータには、第2の光学センサを備えた装置の第2の光学式の測定区間が配置されており、光学式の測定区間は、全体として、ねじ山の、互いに反対に位置している側を同時に測定するための測定通路を形成している。この公知の装置は、特に、測定通路がマニピュレータを用いて少なくとも1つの第2の調整軸線を中心としてねじ山軸線に対して傾倒可能であり、これによって、測定通路が空間角度インターバル内で自由にアライメント可能である点で優れている。
【0006】
公知の装置および方法によって得られた測定データは、通常、ねじ山を切削する、つまり、ねじ切りするための工具の摩耗に関する認識を測定データから導出するために、サンプリング形式で検出される。測定結果は、また、品質保証データを記録するためにも使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある課題は、品質検査に基づく測定データのフィードバックに関して改善された、金属管にねじ山を製作するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項12の特徴を有するねじ切り設備とによって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項から明らかである。
【0009】
本発明の1つの態様は、少なくとも1つの金属管の少なくとも一方の端部に、少なくとも1つのCNC制御式の工作機械での金属管の切削加工によって、ねじ山を製作するための方法であって、ねじ切り工程中にかつ/またはねじ切り工程に続いてねじ山を光学式に測定することと、ねじ山のねじ山形状および/またはシールリップの測定データを電子式に検出して評価することと、工作機械に接続された少なくとも1つの閉ループ制御装置を使用して、測定データに基づき、工作機械を制御するための制御命令を導出することと、を含む方法に関する。
【0010】
本発明に係る方法は、好ましくは、金属管の加工とねじ山測定との間の、好ましくは閉じた制御ループを使用し、有利には、ねじ山を切削するかまたは切削した工作機械に対する直接的な評価と制御命令の導出とが行われる。
【0011】
例えば機械制御装置に設けられた、評価と制御命令の導出とのための閉ループ制御装置は、制御命令を導出するための少なくとも1つの自己学習アルゴリズムを含んでいてよい。
【0012】
好ましくは、ねじ山として、別の金属管の相補的な雌ねじ山と共に圧力密なかつ/または液密な接続部を形成するようになっている円錐形の雄ねじ山が切削される。
【0013】
ねじ山を光学式に測定することは、マニピュレータで案内される、少なくとも1つの光学式の測定区間を有する少なくとも1つの測定ヘッドを用いて実施されてよい。
【0014】
マニピュレータは、例えば複数の自由度を有する関節アームを備えた産業用ロボットとして形成されていてよい。マニピュレータの自由端部には測定ヘッドが配置されており、この測定ヘッドは、少なくとも3つの空間軸において空間内で自由にアライメント可能である。測定ヘッドは支持体に配置されていてよく、支持体において、この支持体に対して複数の自由度で調整可能に案内されていてよい。測定ヘッドは、例えば支持体に対して直線的に移動可能であり、かつ/または少なくとも1つの空間軸を中心として傾倒可能に構成されていてよい。
【0015】
本発明の意味における光学式の測定区間は、光学センサを備えた光学式の検出システムであってよく、この検出システムを用いて対象物を光学式に測定することができる。光学式の測定区間は、少なくとも1つの光源と、カメラおよび/または光切断センサとを備えていてよい。光学式の測定区間は、例えば、対象物側で平行なビーム路が光学センサ上に結像されるテレセントリック光学系を備えていてよい。方法の好適な変化形態では、アンダカットされたねじ山フランクを備えた円錐形のねじ山を測定するように構成された少なくとも1つの測定ヘッドが使用される。このような測定ヘッドは、例えば第1の光学式の測定区間と第2の光学式の測定区間とを有していてよく、両測定区間は、全体として、ねじ山の互いに反対に位置している側を同時に測定するための測定通路を形成している。このような測定ヘッドは、例えば欧州特許第3465079号明細書に記載されている。
【0016】
本発明に係る方法のさらに好適な変化形態では、ねじ山を光学式に測定することを、ねじ切り工程に続いて行い、好ましくは、複数の金属管を連続加工するように構成された製造ラインにおいて、好ましくはねじ切り工程後に複数サイクル行うことが特定されている。測定は、例えば測定のために設けられた測定ステーションで実施することができ、この測定ステーションは、1つのプロセスラインにおいて工作機械の背後に配置されている。例えば、第2の金属管または第3の金属管における測定を、プロセスラインにおいて工作機械の背後で開始することが特定されていてよく、これにより、相応の制御命令によってトリガされる、工作機械において場合によって生じ得る補正によって、生じる廃棄管の数が比較的僅かになる。
【0017】
測定ステーションは、測定すべき金属管を測定ステーションの規定の位置に固定することができるように構成されていてよい。これは、例えば支台における相応のストッパまたは収容部によって実現することができる。
【0018】
本発明に係る方法では、代替的に、ねじ山を光学式に測定することを、ねじ切り工程の実施時に直接(現場で)実施することが特定されていてもよいが、このような態様は、ねじ山の品質欠陥の検出時に、タイミング制御された製造工程を中断する必要があるという欠点を伴う。
【0019】
本発明に係る方法の有利かつ好適な変化形態では、制御命令を、誤った調整パラメータの際のまたは摩耗補償のための、加工すべき金属管に対する少なくとも1つの工具の位置補正、少なくとも1つの工具の摩耗に起因した交換、ねじ山形状に対する予め設定された幾何学的な要求を満たすための少なくとも1つの工具の選択、工作機械の緊締チャックの回転数および/またはトルクの調整、および工作機械のサイクル時間の変更を含む制御命令の群から選択することが特定されている。
【0020】
制御命令は、特に、
-例えば工具交換後に1つの段差が認識された際の工具の切削インサートの幾何学的な配置に基づく工具の補正、
-例えば工具の切削インサートが潰れ始めた際の摩耗に基づく工具の補正、
-例えば周囲温度の変化時の他の外的な影響に基づく工具の補正、
-加工すべき管の肉厚の変化または他の材料もしくは他の材料組成物の使用に基づく工具の補正
といった制御命令であってよい。
【0021】
制御命令は、特に、測定データに基づいて導出された下記の情報、すなわち、
-工具の摩耗認識、およびそれに基づいて導出された工具交換の要求、
-例えば切削速度、切削幾何学形状および工具送りの調整のような、耐用寿命最適化のための工具の摩耗認識、
-耐用寿命診断を作成するための工具の摩耗認識
に基づいて発生させるかまたは導出することができる。
【0022】
測定データの相応の評価によって、加工工程またはねじ切り工程の生産性を、サイクル時間最適化と材料フローの改善とによって高めることができる。本発明に係る方法は、早期の問題認識を可能にする。集められたデータは、さらに、品質評価および品質文書化ならびに後続のプロセスのために使用することができ、工作機械のデータと、例えば相応の制御アルゴリズムまたは人工知能を用いて相関させることができる。後続のプロセスおよび相関としては、
-金属管の汚れの認識および加工欠陥に対する識別、
-例えば、ねじ切り工程後における金属管の非真円性を生じさせる金属管における緊張が何に起因しているのかを検出するための、測定データと、予め集められたデータとの相関であって、これによって、例えば焼入れストラテジーの改善を導出することができる相関、
-測定結果と、工具緊締部で発生するトルクとの比較による品質の向上、
-測定結果または測定データと矯正機械で発生する矯正力との比較による品質の向上
を挙げることができる。
【0023】
ねじ切り工程は、好ましくは、工作機械の回転する緊締チャックに緊締された金属管において、金属管に対して位置固定に配置された少なくとも1つの工具を用いて実施される。
【0024】
方法は、好ましくは少なくとも1つの方法ステップであって、この方法ステップ中に、測定ステーションに配置された少なくとも1つの基準構成部材を用いた測定ヘッドの較正を行う、方法ステップを含んでいる。基準構成部材は、例えば金属管の管直径用の較正器として設けられていてよい。
【0025】
さらに、切削すべきねじ山をソフトウェアにコンフィギュレーションし、目標データとしてのソフトウェアデータを測定データによって補償することが特定されていてよい。そのために、例えば、CADシステムのデータを、制御命令を導出するために追加的に使用することが特定されていてよい。
【0026】
本発明に係る方法の好適な変化形態では、測定データを、該当する金属管の一義的な識別および対応付けを有する品質データベースに格納することが特定されており、これによって、相応に識別された金属管の品質データをいつでも呼び出すことができる。
【0027】
方法の好適な変化形態は、測定ステーションの内部の規定の測定位置に、測定すべき金属管を固定する方法ステップと、測定ヘッドの位置認識のためのシステムを用いて、金属管に対して測定ヘッドを位置決めする方法ステップと、管軸線を基準として少なくとも1つの測定区間をアライメントする方法ステップと、金属管のねじ山形状および/またはシールリップを走査する方法ステップと、を含む点で優れている。ねじ山形状の走査は、例えば測定ヘッドの直線運動および/または回転運動によって行うことができる。
【0028】
本発明の別の態様によれば、特に前述した方法を実施するために規定されていると共に適している、金属管の端部にねじ山を製作するためのねじ切り設備が提案される。本発明に係るねじ切り設備は、ねじ山を設けるべき金属管を切削加工するための少なくとも1つのCNC工作機械と、工作機械への制御命令を実現するための開ループ制御装置と、切削されたねじ山を光学式に測定するための少なくとも1つの装置と、ねじ山測定の測定データを電子式に検出して記憶するための手段と、ねじ山測定の測定データから制御命令を導出するための少なくとも1つの閉ループ制御装置と、を備え、測定データを光学式に検出して記憶するための装置は、工作機械の開ループ制御装置に接続されている。
【0029】
工作機械は、旋盤、旋削・フライス加工センタ、ねじ切り機械または油井管継手加工機械(Muffenschneidmaschine)として形成されていてよい。
【0030】
好ましくは、材料機械は、金属管を緊締するための少なくとも1つの回転可能な緊締チャックと、少なくとも1つの工具を備えた、緊締チャックに対して固定可能かつ位置決め可能な少なくとも1つの工具ホルダとを備えている。例えば、工作機械は、異なる複数の工具を備えたリボルバヘッドとして形成された少なくとも1つの、好ましくは複数の工具ホルダを備えていてよい。
【0031】
本発明に係るねじ切り設備は、1つのプロセスラインに相前後して配置された少なくとも1つの加工ステーションと少なくとも1つの測定ステーションとを備え、加工ステーションは、工作機械を備え、測定ステーションは、切削されたねじ山を光学式に測定するための少なくとも1つの装置を備えている。
【0032】
ねじ切り設備は、光学式に測定するための装置として、少なくとも1つの光学式の測定区間を有する少なくとも1つの測定ヘッドを備えていてよく、この測定ヘッドは、マニピュレータに取り付けられていて、ねじ山のねじ山形状および/またはシールリップの測定を目的として測定ヘッドを金属管に対して運動させるように構成されている。
【0033】
測定ヘッドは、例えば少なくとも1つのブラシ、ブラシシステム、または少なくとも1つの空圧式の洗浄装置または液圧式の洗浄装置として形成された、測定すべきねじ山を洗浄するための手段を備えていてよい。このように構成されていると、場合により測定前に、場合によりねじ山に存在する汚れ、例えばねじ山になお付着しているチップが除去されることが保証される。
【0034】
空圧式の洗浄装置は、例えば、ねじ山を1つの洗浄段階において取り囲む少なくとも1つの圧縮空気リングを含んでいてよい。互いに間隔を置いて配置された複数の圧縮空気リングまたは代替的に圧縮空気ベンドは、異なる直径を備えていてよく、これによって、円錐形のねじ山を洗浄するかまたは様々なねじ山直径に適合させることができる。
【0035】
洗浄装置は、洗浄すべきねじ山を洗浄装置に対して回転させるように、または洗浄装置が洗浄すべきねじ山を中心として回転しかつ/または洗浄すべきねじ山に対し直線的に運動するように構成されていてよい。
【0036】
洗浄装置は例えば、内側に向けられた複数の圧縮空気ノズルを有する半円形のベンドを備えていてよく、これらの圧縮空気ノズルのうちの複数の圧縮空気ノズルは、相前後してかつ/またはねじ山または金属管の長手方向軸線を基準として等しい高さに配置されており、これらの圧縮空気ノズルの間でねじ山は長手方向軸線に沿って運動させられ、場合によっては同時に回転させられる。
【0037】
以下に、本発明を一実施例に基づき添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係るねじ切り設備のレイアウトを概略的に示す図である。
図2】本発明に係るねじ切り設備の測定ステーションを概略的に示す斜視図である。
図3】ねじ山測定時における本発明に係る測定ヘッドを示す斜視図である。
図4a】金属管の長手方向軸線の方向で見て、本発明に係る光学式の測定原理を示す図である。
図4b】アンダカットされたねじ山フランクを測定するための追加的な光切断センサによる光学式の測定原理を示す側面図である。
図4c】アンダカットされたねじ山フランクの測定時における測定原理を概略的に示す図である。
図5】金属管の雄ねじ山形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1には、本発明に係るねじ切り設備1のレイアウトが示してある。ねじ切り設備1は、金属管3の端部を切削加工するための工作機械2を備えており、金属管3は、例えば天然ガスまたは原油の生産井用のケーシングまたはライザとして形成されていてよい。このような金属管3は、耐圧性で液密かつガス密な接続部を形成するために互いに螺合され、雄ねじ山4を有する雄側端部と、雌ねじ山を有する雌側端部との間で接続部が形成される。本発明に係る方法は、好ましくは、このような金属管の雄ねじ山4の製作に関する。金属管3には、工作機械2で円錐形の雄ねじ山4が設けられ、この雄ねじ山4は、場合によりアンダカットされたねじ山フランク5と、端面側のシールリップ6とを有している。図5には、アンダカットされたねじ山フランク5と、端面側のシールリップ6とを備えた円錐形の雄ねじ山4の雄ねじ山形状が示してある。
【0040】
加工すべき金属管3は、まず、工作機械2の回転可能な緊締チャックに緊締される。工作機械2は、ねじ山を製作するために好ましくは工具が装着された2つの工具リボルバを備えており、これらの工具リボルバはそれぞれ、緊締チャックと共に回転するかまたは加工速度で回転させられる金属管に対して配置され、工具はそれぞれ、切削加工するように金属管の端部に係合して案内される。図示のねじ山形状は、工作機械2の制御装置に格納されている目標形状である。本発明に係る方法は、まず、1つのプロセスラインでの金属管3の切削加工と、プロセスラインで行われる、金属管3の雄ねじ山4の光学式の測定とを含んでいる。図1に示した設備レイアウトから認めることができるように、プロセスラインでは、CNC制御式の工作機械2として形成されている工作機械の下流側に測定ステーション7が配置されている。
【0041】
測定ステーション7は、図2に概略的に示してある。この測定ステーション7は、好ましくは5自由度を有する回転可能かつ旋回可能なロボットアーム9を有するロボット8を備えており、ロボットアーム9の自由端部には、測定ヘッド10が配置されている。測定ヘッド10は支持体11を備えており、この支持体11には、雄ねじ山4を光学式に測定するための光学式の測定手段が設けられている。金属管3は、ねじ切り工程の後でローラテーブル12を介して測定ステーション7に供給され、規定の測定位置に固定される。測定位置は、例えば、図3に概略的に示すように、中央で窄められた位置決めローラ(ディアボロローラ)13によって規定することができ、この位置決めローラの狭窄部が金属管3の位置を決定する。代替的に、測定すべき金属管3の位置固定のために側方のストッパが設けられていてよい。金属管3の測定位置で測定ヘッド10の支持体11は、場合により金属管3の直径較正後に、測定ヘッド10が金属管3に対してアライメントされる測定位置に移動する。
【0042】
測定ヘッド10の直径較正は、金属管3が測定手段の間に配置され、測定ヘッド10が予備アライメント時に金属管3に衝突しないように、測定ヘッド10の測定手段を支持体11に対して位置決めする働きをする。そのために、測定ステーション7には、基準構成部材としての較正器18が配置されており、この較正器18によって、測定ヘッド10を測定工程の実施前に較正することができる。測定ヘッド10の位置決めまたは予備アライメントのために、例えばレーザ切断センサである位置決めセンサが設けられていてよく、この位置決めセンサを用いて、測定位置が決定された金属管3に対する測定ヘッド10の位置を検査し、場合によっては補正することができる。この方法は、ロボットアーム9の相応の制御による測定ヘッド10の予備アライメントと、支持体11に対する測定ヘッド10の移動による測定ヘッド10の精密アライメントとを含んでいてよい。精密アライメントは、金属管3の管軸線を基準とした少なくとも1つの測定区間16のアライメントを含んでいる。
【0043】
既に前述したように、測定ヘッド10は支持体に対して直線的に移動可能であり、好ましくは少なくとも1つの軸線を中心として旋回可能である。直線移動は、例えば少なくとも1つの駆動されるボール循環スピンドルを用いて、または少なくとも1つのピン歯車を用いて実現することができる。測定手段は、それぞれ測定ヘッド10の脚19に配置されている。測定ヘッド10の脚19の間隔は、互いに直線的に調整可能である。測定ヘッド10の脚19は、金属管3を取り囲むU字形の囲いを形成している。脚19は、どちらも互いに独立してかつ互いに対して移動可能であるように形成されていてよい。記載した実施例では、測定ヘッド10の一方の脚19は、位置固定に配置されており、これに対して、測定ヘッド10の他方の脚19は、測定ヘッド10の、向かい合って位置している脚19に対して移動可能であることが特定されている。
【0044】
測定ヘッド10の脚19の各々には、測定手段として、テレセントリック光学系を備えたカメラ14と、このカメラに向かい合って位置決めされた光源15とが設けられており、これは例えば図4aに示してある。カメラ14と光源15とは、それぞれ互いに間隔を置いて向かい合って配置されて測定区間16を形成しており、測定区間16は、直線の測定区間16として形成されていてよい。カメラ14と光源15との間のビーム路は、代替的にミラーを介して変向させられていてもよい。
【0045】
測定原理について、図4a、図4bおよび図4cを参照しながら以下に説明する。各々の測定区間16は、金属管3の片側における雄ねじ山形状の一部を検出し、雄ねじ山4の一部の、光源15から生じた投影が、それぞれ1つのテレセントリック光学系によって、カメラ14に配置された感光センサ、例えばCMOSまたはCCDセンサに現れる。カメラ14にテレセントリック対物レンズを使用することによって、各々のセンサによって検出された投影を歪みなく寸法通りに記録できることが保証される。このようにして検出された雄ねじ山4の測定データは、記録され、雄ねじ山4の目標形状と比較される。両方の測定区間16は、ただ1つの測定通路を形成することができる。
【0046】
本発明に係る測定ヘッド10の変化形態では、測定ヘッド10は、レーザ切断センサとして形成された少なくとも1つの光切断センサ17を備えており、この光切断センサ17は、雄ねじ山4のねじ山フランク5にアライメントされていることが特定されている。ねじ山フランク5の測定については、図4cに示してある。
【0047】
図示しない閉ループ制御装置において、雄ねじ山形状および/またはシールリップ6の測定データが評価され、特に目標形状と、測定データによって得られた実際形状との間に差異があった場合には、工作機械2の制御のための制御命令が導出される。各々の目標形状は、例えばヒューマンマシンインタフェース(HMI)において、種々異なるタイプのねじ山のカタログから自由に選択可能であってよい。測定ヘッド10と工作機械2の制御装置とは、好ましくは閉じた制御ループを形成している。制御命令は、例えば工具位置の再調整、工具の選択、工作機械2の緊締チャックおよび金属管3の回転速度およびその際に加えられるトルク、工具交換の実施、工作機械2のサイクル時間の変更などであってよい。既に前述したように、閉ループ制御は自己学習制御(KI)として形成されていてよく、そのために、少なくとも1つの制御アルゴリズムを含んでいてよい。1つの管に関して求められた測定データは、本発明によれば、工作機械2へのフィードバックおよび工作機械2の制御のためのみならず、品質データの保証および追従のためにも使用される。
【0048】
本発明に係る方法では、好ましくは、プロセスラインでの雄ねじ山4の光学式の測定を、ねじ切り工程後に約3~4サイクル実施することが特定されている。
【符号の説明】
【0049】
1 ねじ切り設備
2 工作機械
3 金属管
4 雄ねじ山
5 ねじ山フランク
6 シールリップ
7 測定ステーション
8 ロボット
9 ロボットアーム
10 測定ヘッド
11 支持体
12 ローラテーブル
13 位置決めローラ
14 カメラ
15 光源
16 測定区間
17 光切断センサ
18 較正器
19 脚
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
【国際調査報告】