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特表2023-547425CD7を標的にするヒト化抗体及びその使用
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  • 特表-CD7を標的にするヒト化抗体及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】CD7を標的にするヒト化抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20231102BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231102BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231102BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231102BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231102BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20231102BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20231102BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K16/46
C07K19/00
C12N5/10
A61P35/02
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K47/62
A61K47/60
A61K51/10
A61K51/10 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524926
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 CN2021127570
(87)【国際公開番号】W WO2022095803
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】202011208669.1
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523087364
【氏名又は名称】バイオヘン セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOHENG THERAPEUTICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Suite #4-210, Governors Square, 23 Lime Tree Bay Avenue, PO Box 32311, Grand Cayman KY1-1209 (KY)
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】周 亜麗
(72)【発明者】
【氏名】姜 小燕
(72)【発明者】
【氏名】陳 功
(72)【発明者】
【氏名】任 江涛
(72)【発明者】
【氏名】賀 小宏
(72)【発明者】
【氏名】王 延賓
(72)【発明者】
【氏名】韓 露
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA94
4C076AA99
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF63
4C076FF70
4C084AA12
4C084NA14
4C084ZB27
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB01
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085EE01
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】
本発明は、CD7を標的にするヒト化抗体と、それを含む多重特異性抗体、キメラ抗原受容体、抗体複合体、医薬組成物及び検出キットと、CD7発現に関連する疾患の診断・治療・予防におけるそれらの使用とを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含むCD7を標的にするヒト化抗体であって、前記軽鎖可変領域が、配列番号1で示されるCDR-L1、配列番号2で示されるCDR-L2、配列番号3で示されるCDR-L3を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号4で示されるCDR-H1、配列番号5で示されるCDR-H2、配列番号6で示されるCDR-H3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8、11、14及び17から選択されるもので示されるアミノ酸配列に少なくとも90%の同一性を有し、前記重鎖可変領域が、配列番号9、12、15及び18から選択されるもので示されるアミノ酸配列に少なくとも90%の同一性を有するヒト化抗体。
【請求項2】
前記CD7ヒト化抗体は、配列番号8、11、14及び17から選択されるもので示される軽鎖可変領域と、配列番号9、12、15及び18から選択されるもので示される重鎖可変領域と、を含む請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項3】
前記CD7ヒト化抗体のアミノ酸配列は、配列番号10、13、16及び19から選択される請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体をコードする核酸分子。
【請求項5】
配列番号20~23から選択されるヌクレオチド配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有し、そのコードしたCD7ヒト化抗体が、CD7抗原に特異的に結合可能である請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、他の抗原に特異的に結合される1つ又は複数の第2抗体又はその抗原結合部分を含む多重特異性抗体。
【請求項7】
前記第2抗体又はその抗原結合部分は、全長抗体、Fab、Fab`、(Fab`)、Fv、scFv、scFv-scFv、マイクロ抗体、二重抗体又はsdAbから選択される請求項6に記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、又は請求項6又は7に記載の多重特異性抗体をコードする核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、又は請求項6又は7に記載の多重特異性抗体を発現する宿主細胞。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、又は請求項6又は7に記載の多重特異性抗体、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体。
【請求項11】
CD28又は4-1BBから選択される共刺激ドメインをさらに含む請求項10に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、又は請求項6又は7に記載の多重特異性抗体、CD8α膜貫通ドメイン、CD28又は4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む請求項11に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を含む改変免疫細胞。
【請求項14】
T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、樹状細胞から選択される請求項13に記載の改変免疫細胞。
【請求項15】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、又は請求項6又は7に記載の多重特異性抗体、及び第2機能的構造を含み、前記第2機能的構造がFc、放射性同位体、半減期を延長する構造部分、検出可能なマーカー及び薬剤から選択される抗体複合体。
【請求項16】
前記半減期を延長する構造部分は、アルブミンの結合構造、トランスフェリンの結合構造、ポリエチレングリコール分子、組換えポリエチレングリコール分子、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンの断片及びヒト血清アルブミンに結合されるホワイトポリペプチドから選択され、前記検出可能なマーカーは、フルオロフォア、化学発光化合物、生物発光化合物、酵素、抗生物質耐性遺伝子及び造影剤から選択され、前記薬剤は、細胞毒素及び免疫調節剤から選択される請求項15に記載の抗体複合体。
【請求項17】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、請求項6又は7に記載の多重特異性抗体、請求項10から12のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、又は請求項15又は16に記載の抗体複合体を含む検出キット。
【請求項18】
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、請求項6又は7に記載の多重特異性抗体、請求項10から12のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、又は請求項15又は16に記載の抗体複合体、及び1つ以上の種類の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項19】
CD7発現に関連する疾患の治療・予防・診断用の薬剤の調製における、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗体、請求項6又は7に記載の多重特異性抗体、請求項10から12のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、請求項15又は16に記載の抗体複合体、又は請求項18に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫治療分野に属する。より具体的に、本発明は、CD7を標的にするヒト化抗体、及び疾患の予防・治療・診断におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD7は細胞表面糖タンパク質であり、分子量が約40kDaであり、免疫グロブリンスーパーファミリーの一つである。CD7は、ほとんどのT細胞、NK細胞、骨髄細胞、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、急性骨髄芽球性白血病及び慢性骨髄性白血病において発現される。報告によると、CD7分子は、そのリガンドK12/SECTM1との結合により、T細胞活性化期間において共刺激シグナルの作用を果たす。また、報告によると、マウスT前駆細胞中のCD7分子を破壊して、相変わらず正常のT細胞発生とホメオスタシスが生じるが、CD7は、T細胞の発生及び機能に重大な影響を与えることがないそうであるが、これによってT細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)を治療する非常に適当な治療標的となることが表明される。実際には、CD7は、白血病及びリンパ腫を治療する細胞毒性分子の標的として広く研究されている。
【0003】
本発明は、CD7を標的にするヒト化抗体、疾患の予防・治療・診断におけるその使用を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0004】
第1態様で、本発明は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含むCD7ヒト化抗体であって、前記軽鎖可変領域が、配列番号1で示されるCDR-L1、配列番号2で示されるCDR-L2、配列番号3で示されるCDR-L3を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号4で示されるCDR-H1、配列番号5で示されるCDR-H2、配列番号6で示されるCDR-H3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8、11、14及び17から選択されるもので示されるアミノ酸配列に少なくとも90%の同一性を有し、前記重鎖可変領域が、配列番号9、12、15及び18から選択されるもので示されるアミノ酸配列に少なくとも90%の同一性を有するCD7ヒト化抗体を提供する。
【0005】
一実施形態において、前記CD7ヒト化抗体は、配列番号8、11、14及び17から選択されるもので示される軽鎖可変領域と、配列番号9、12、15及び18から選択されるもので示される重鎖可変領域と、を含む。
【0006】
一実施形態において、前記CD7ヒト化抗体のアミノ酸配列は、配列番号10、13、16及び19から選択される。
【0007】
本発明は、上記CD7ヒト化抗体をコードする核酸分子をさらに提供する。故に、一実施形態において、前記CD7ヒト化抗体をコードする核酸分子は、配列番号20~23から選択されるヌクレオチド配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有し、そのコードしたCD7ヒト化抗体が、CD7抗原に特異的に結合可能である。好ましくは、前記CD7ヒト化抗体をコードする核酸分子は、配列番号20~23から選択される。
【0008】
他の一態様で、本発明は、上記したCD7ヒト化抗体、他の抗原に特異的に結合される1つ又は複数の第2抗体又はその抗原結合部分を含む多重特異性抗体(好ましくは二重特異性抗体又は三重特異性抗体)をさらに提供する。
【0009】
一実施形態において、第2抗体又はその抗原結合部分は、例えば全長抗体、Fab、Fab`、(Fab`)、Fv、scFv、scFv-scFv、マイクロ抗体、二重抗体又はsdAbのような任意抗体や抗体断片形式を有しても良い。
【0010】
本発明は、上記CD7ヒト化抗体又は多重特異性抗体をコードする核酸分子のベクター、及び前記CD7ヒト化抗体又は多重特異性抗体を発現する宿主細胞をさらに提供する。
【0011】
他の一態様で、本発明は、本発明に記載のCD7ヒト化抗体、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体をさらに提供する。好ましくは、前記キメラ抗原受容体は、1つ又は複数の共刺激ドメインを更に含む。より好ましくは、前記キメラ抗原受容体は、本明細書で提供されるCD7ヒト化抗体、又は前記CD7ヒト化抗体を含有する多重特異性抗体、CD8α膜貫通ドメイン、CD28又は4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0012】
本発明は、上記定義されたCD7を標的にするキメラ抗原受容体をコードする核酸分子、及び前記核酸分子を含むベクターを更に提供する。
【0013】
本発明は、上記定義されたCD7を標的にするキメラ抗原受容体を含む細胞、好ましくは免疫細胞、例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、樹状細胞をさらに提供する。
【0014】
他の一態様で、本発明は、本発明で定義されたCD7ヒト化抗体及び第2機能的構造を含む抗体複合体であって、前記第2機能的構造が、Fc、放射性同位体、半減期を延長する構造部分、検出可能なマーカー及び薬剤から選択される抗体複合体をさらに提供する。
【0015】
一実施形態において、前記半減期を延長する構造部分は、アルブミンの結合構造、トランスフェリンの結合構造、ポリエチレングリコール分子、組換えポリエチレングリコール分子、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンの断片、ヒト血清アルブミンに結合されるホワイトポリペプチド(抗体を含む)から選択される。一実施形態において、検出可能なマーカーは、フルオロフォア、化学発光化合物、生物発光化合物、酵素、抗生物質耐性遺伝子及び造影剤から選択される。一実施形態において、前記薬剤は、細胞毒素及び免疫調節剤から選択される。
【0016】
他の一態様において、本発明は、本発明に記載のヒト化抗体、多重特異性抗体、抗体複合体又はキメラ抗原受容体を含む検出キットを更に提供する。
【0017】
他の一態様において、本発明は、本発明に記載のヒト化抗体、キメラ抗原受容体、多重特異性抗体又は抗体複合体、及び1つ以上の種類の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0018】
他の一態様において、本発明は、上記したヒト化抗体、キメラ抗原受容体、多重特異性抗体、抗体複合体又は医薬組成物を被験者に投与することを含む、CD7発現に関連する疾患の治療・予防・診断の方法をさらに提供する。
【0019】
別段の指定がない限り、本明細書で使用されるすべての科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
CD7ヒト化抗体
【0020】
本明細書で使用されるように、「抗体」という用語は、当業者が理解する最も広い意味を有し、且つモノクローナル抗体(インタクト抗体が含まれる)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を示すことができる1つまたは複数のCDR配列を持つ抗体断片または合成ポリペプチドを含む。本発明に記載の抗体は、任意種類(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA等)又はサブクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG2a、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2等)であってもよい。
【0021】
通常、インタクト抗体は、ジスルフィド結合により結合された2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、各軽鎖は、ジスルフィド結合によってそれぞれの重鎖に結合され、「Y」字形構造を呈する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3等の3つの相補性決定領域(CDR)を含み、重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3等の3つの定数ドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域を含み、ここで、軽鎖可変領域は、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3等の3つのCDRを含み、軽鎖定常領域は1つの定数ドメインCLを含む。重鎖/軽鎖可変領域において、CDRは、より保存されたフレームワーク領域(FR)によって分離される。重鎖/軽鎖の可変領域は、抗原との識別及び結合を担当し、定常領域は、抗体と宿主組織又は因子との結合を仲介することができ、免疫システムの各種細胞(例えばエフェクター細胞)と古典的な補体システムの第1成分を含む。
【0022】
当分野で周知の多数の番号付けスキームを使用して所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列境界を容易に特定することができ、これらの番号付けスキームとして、Kabat等(1991),「Sequences ofProteins of Immunological Interest,」第5版Public Health Service,NationalInstitutes of Health,ベセスダ,メリーランド州(「Kabat」番号付けスキーム)と、Al-Lazikani等,(1997)JMB273,927-948(「Chothia」番号付けスキーム)と、MacCallum等,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),「Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding sitetopography,」J.Mol.Biol.262,732-745」(「Contact」番号付けスキーム)と、Lefranc MP等,「IMGTunique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains andIg superfamily V-like domains,」Dev Comp Immunol,2003年1月;27(1):55-77(「IMGT」番号付けスキーム)と、Honegger A及びPluckthun A,「Yet another numbering scheme forimmunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,」JMol Biol,2001年6月8日;309(3):657-70(「Aho」番号付けスキーム)と、Martin等,「Modelingantibody hypervariable loops:a combined algorithm,」PNAS,1989,86(23):9268-9272(「AbM」番号付けスキーム)とを含む。
【0023】
所定のCDR又はFRの境界は、鑑定用のプロトコルによって異なる可能性がある。例えば、Kabatスキームは、構造比較に基づくものである一方、Chothiaスキームは、構造情報に基づくものである。Kabat及びChothiaスキームの番号は、最も一般的な抗体領域の配列の長さに基づくものであり、レターを挿入することにより挿入が提供され(例えば「30a」)、一部の抗体で欠失が発生する。この2種類のスキームでは、ある插入及び欠失(「挿入欠失(indel)」)を異なる箇所に置くことによって、異なる番号を生成する。Contactスキームでは、複雑な結晶構造に対する分析に基づくものであり、且つ多くの点でChothia番号付けスキームと類似する。AbMスキームは、KabatとChothia定義間の妥協案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアに基づいて使用されるスキームである。
【0024】
故に、特に規定がない限り、所定の抗体又はその領域(例えばその可変領域)の「CDR」は、任意の上記スキール又は他の既知スキールによって定義されたCDRをカバーすることを理解すべきである。例えば、特定のCDR(例えばCDR3)が所定のアミノ酸配列を含むように指定する場合に、このようなCDRは、任意の上記スキール又は他の既知スキールによって定義された対応のCDR(例えばCDR3)の配列を有してもよいと理解すべきである。同様に、特に規定がない限り、所定の抗体又はその領域(例えばその可変領域)のFRは、任意の上記スキール又は他の既知スキールによって定義されたFRをカバーすることを理解すべきである。
【0025】
本明細書で使用されるように、「ヒト化」抗体とは、そのうちのすべて又は基本的にすべてのCDRアミノ酸残基が、非ヒトCDRに由来し、且つすべて又は基本的にすべてのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来するという意味である。非ヒト抗体の「ヒト化形式」とは、前記非ヒト抗体の変体という意味であり、ヒト化が経って通常人に対する免疫原性を低減させるとともに、親非ヒト抗体の特異性と親和性を保留する。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を復元、又は改善するように、非ヒト抗体(例えば、CDR残基由来の抗体)からの対応残基によって置き換えられる。
【0026】
ヒト化抗体及びその調製方法は、当業者によってよく知っているものであり、例えばAlmagro及びFransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照する。ヒト化に利用可能なヒトフレームワーク領域は、「ベストフィット」法を用いて選択したフレームワーク領域と、軽鎖又は重鎖可変領域に由来する特定の亜群のヒト抗体のコンセンサス配列のフレームワーク領域と、ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域やヒト生殖系列フレームワーク領域と、FRライブラリーからスクリーニングされたフレームワーク領域と、を含むが、それらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用されるように、「抗体断片」又は「抗原結合部分」という用語は、インタクト抗体の一部のみを含み、一般的にインタクト抗体の抗原結合部位を含み、これによって抗原に結合される能力を保留する。本発明における抗体断片の実例は、Fab、Fab`、F(ab`)2、Fd断片、Fd′、Fv断片、scFv、ジスルフィド結合によるFv(sdFv)、抗体の重鎖可変領域(VH)又は軽鎖可変領域(VL)、線形抗体、2つの抗原結合部位を有する「ダブルボディ」、単一ドメイン抗体、ナノ抗体、前記抗原の天然リガンド又はその機能的断片等を含むが、それらに限定されない。故に、本発明の「抗体」は、上記定義された抗体断片をカバーする。
【0028】
一実施形態において、本発明のCD7ヒト化抗体はscFvである。「シングルチェーン抗体」と「scFv」は本明細書で交互に使用可能で、抗体重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とがリンカーにより結合された抗体を指す。リンカーの最適長さ及び/又はアミノ酸組成を選択することができる。リンカーの長さは、scFvの可変領域の折り畳み及び相互作用の状況に明らかに影響をもたらす。実際に、短いリンカー(例えば5~10個のアミノ酸にある)を使用すると、鎖内折り畳みを防止することができる。リンカーの大きさ及び組成の選択について、例えば、Hollinger等,1993Proc Natl Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448、アメリカ専利出願公報番号2005/0100543、2005/0175606、2007/0014794、及びPCT公報番号WO2006/020258及びWO2007/024715を参照し、その全文が引用されて本明細書に合併する。scFvは、例えばVH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHのような、任意の順序で連結されるVH及びVLを含んでもよい。
【0029】
一実施形態において、本発明は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含むCD7ヒト化抗体であって、前記軽鎖可変領域が、配列番号1で示されるCDR-L1、配列番号2で示されるCDR-L2、配列番号3で示されるCDR-L3を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号4で示されるCDR-H1、配列番号5で示されるCDR-H2、配列番号6で示されるCDR-H3を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号8、11、14及び17から選択されるアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有し、前記重鎖可変領域が、配列番号9、12、15及び18で示されるアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有する。
【0030】
一実施形態において、前記CD7ヒト化抗体は、配列番号8、11、14及び17から選択されるもので示される軽鎖可変領域と、配列番号9、12、15及び18から選択されるもので示される重鎖可変領域と、を含む。
【0031】
一実施形態において、前記CD7ヒト化抗体のアミノ酸配列は、配列番号10、13、16及び19に示す。
【0032】
本明細書で使用されるように、「配列同一性」という用語は、2つの(ヌクレオチド又はアミノ酸)配列が比較において同一位置で同じ残基を有する度合を表し、且つ一般的にパーセンテージとして表される。好ましくは、同一性は、比較される配列の全体長さで決められる。従って、完全に同じ配列を有する2つのコピーは、100%の同一性を有する。当業者は、いくつかのアルゴリズム、例えばBlast(Altschul等(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402)、Blast2(Altschul等(1990)J.Mol.Biol.215:403-410)、Smith-Waterman(Smith等(1981)J.Mol.Biol.147:195-197)及びClustalWを用いて配列同一性を特定することができると認識している。
【0033】
一態様で、本発明は、上記したCD7ヒト化抗体を含み、他の抗原に特異的に結合される1つまたは複数の第2抗体をさらに含む多重特異性抗体(好ましくは二重特異性抗体又は三重特異性抗体)をさらに提供する。
【0034】
本明細書で使用されるように、「多重特異性」という用語とは、抗原結合タンパク質がポリトープ特異性を有するという意味である(即ち、1つの生体分子における2つ、3つ又はそれ以上の異なるエピトープに特異的に結合可能で、又は2つ、3つ又はそれ以上の異なる生体分子におけるエピトープに特異的に結合可能である)。本明細書で使用されるように、「二重特異性」という用語は、抗原結合タンパク質が2種類の異なる抗原結合特異性を有すると表す。
【0035】
一実施形態において、第2抗体は、例えば全長抗体、Fab、Fab`、(Fab`)、Fv、scFv、scFv-scFv、マイクロ抗体、二重抗体或sdAbのような任意抗体や抗体断片形式を有してもよい。
【0036】
故に、一実施形態において、前記第2抗体は、BCMA、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、CD138、B7、MUC-1、Ia、HM1.24、HLA-DR、テネイシン、血管新生因子、VEGF、PIGF、ED-Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物、CD66a-d、壊死抗原、Ii、IL-2、T101、TAC、IL-6、ROR1、TRAIL-R1(DR4)、TRAIL-R2(DR5)、tEGFR、Her2、L1-CAM、メソテリン、CEA、HBs抗原、抗葉酸受容体、CD24、CD30、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、EPHa2、ErbB2、ErbB3、ErbB4、ErbBダイマー、EGFR vIII、FBP、FCRL5、FCRH5、胎児アセチルコリン受容体、GD2、GD3、Gタンパク質共役受容体C型ファミリー5D(GPRC5D)、HMW-MAA、IL-22R-α、IL-13R-α2、kdr、κ軽鎖、Lewis Y、L1-細胞接着分子(L1-CAM)、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、サバイビン、EGP2、EGP40、TAG72、B7-H6、IL-13受容体a2(IL-13Ra2)、CA9、CD171、G250/CAIX、HLA-A1、HLA-A2、NY-ESO-1、PSCA、葉酸受容体-a、CD44v6、CD44v7/8、avb6インテグリン、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、双抗原、共通標識に関連する抗原、癌-精巣抗原、MUC1、MUC16、NY-ESO-1、MART-1、gp100、癌胎児性抗原、VEGF-R2、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、c-Met、GD-2、O-アセチル化GD2(OGD2)、CE7、Wilms腫瘍1(WT-1)、細胞サイクリン、細胞サイクリンA2、CCL-1、hTERT、MDM2、CYP1B、WT1、バイオス、AFP、p53、細胞サイクリン(D1)、CS-1、BAFF-R、TACI、CD56、TIM-3、CD123、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、MAGEA3、細胞サイクリン(例えば細胞サイクリンA1(CCNA1))及び/又は病原体特異抗原、ビオチン化分子、HIV、HCV、HBV及び/又はほかの病原体によって発現される分子、及び/又はネオエピトープ又はネオ抗原、から選択される抗原を標的にする。
核酸、ベクター、宿主細胞
【0037】
他の一態様で、本発明は、本発明のCD7ヒト化抗体又は多重特異性抗体をコードする核酸分子に関する。本発明の核酸は、RNA、DNA又はcDNAであってもよい。本発明の一実施形態によれば、本発明の核酸は基本的に離れる核酸である。
【0038】
一実施形態において、前記CD7ヒト化抗体をコードする核酸分子は、配列番号20~23から選択されるヌクレオチド配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列同一性を有し、そのコードしたCD7ヒト化抗体が、CD7抗原に特異的に結合可能である。好ましくは、前記CD7ヒト化抗体をコードする核酸分子は、配列番号20~23で示される。
【0039】
本発明の核酸は、ベクター形式で呈されてもよいし、ベクター中に存在し、かつ/又はベクターの一部としてもよいし、このベクターは、例えばプラスミド、粘着末端プラスミド又はYACである。ベクターは、特に発現ベクターであり、即ちインビトロ及び/又はインビボ(即ち適当な宿主細胞、宿主有機体及び/又は発現システム)でCD7ヒト化抗体が発現されるベクターである。この発現ベクターは、通常、少なくとも1種類の本発明の核酸分子を含み、1つ又は複数の適当な発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)に作動可能に連結される。特定の宿主で発現するように、前記制御エレメント及びその配列を選択するのは、当業者にとってよく知っている。本発明のCD7ヒト化抗体の発現に有用し、又は必要な制御エレメント及びその他のエレメントについての具体的な実例は、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、インテグレータ、選択マーカー、リーダー配列、レポーター遺伝子を含むが、それらに限定されない。
【0040】
他の一態様で、本発明は、本発明のCD7ヒト化抗体、多重特異性抗体を発現し、かつ/又は本発明の核酸又はベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。本発明の好ましい宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞又は哺乳動物細胞である。
【0041】
適当な細菌細胞は、グラム陰性菌株(例えば大腸菌(Escherichia coli)菌株、プロテウス属(Proteus)菌株、及びシュードモナス属(Pseudomonas)菌株)、及びグラム陽性細菌株(例えばバチルス属(Bacillus)菌株、ストレプトマイセス属(Streptomyces)菌株、ブドウ球菌属(Staphylococcus)菌株及びラクトコッカス属(Lactococcus)菌株)の細胞を含む。
【0042】
適当な真菌細胞は、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポラ属(Neurospora)及びアスペルギルス属(Aspergillus)の種の細胞を含み、或いは、サッカロミセス属(Saccharomyces)(例えばサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)(例えばシゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)(例えばピキアパストリス(Pichiapastoris)及びピキアメタノロフィラス(Pichia methanolica))及びハンセヌラ属(Hansenula)の種の細胞を含む。
【0043】
適当な哺乳動物細胞は、例えばHEK293細胞、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞等を含む。
【0044】
しかしながら、本発明は、両生類細胞、虫細胞、植物細胞及び当分野での異種タンパク質を発現するための任意の他の細胞を用いてもよい。
キメラ抗原受容体
【0045】
他の一態様で、本発明は、上記したCD7ヒト化抗体を含む組換え受容体、例えば組換えTCR受容体又はキメラ抗原受容体をさらに提供する。好ましくは、本発明は、上記したCD7ヒト化抗体を含むキメラ抗原受容体をさらに提供する。
【0046】
本明細書で使用されるように、「キメラ抗原受容体」又は「CAR」という用語とは、人工的に構築されたハイブリッドペプチドを指し、このハイブリッドペプチドは一般的にリガンド結合ドメイン(例えば抗体の抗原結合部分)、膜貫通ドメイン、任意の共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、各ドメインの間にリンカーにより連結される。CARは、抗体の抗原結合特性を用いてMHC制限なしにT細胞と他の免疫細胞の特異性及び反応性を選択されたターゲットに新たにリダイレクトすることができる。
【0047】
一実施形態において、本発明は、上記したCD7ヒト化抗体、或いは前記CD7ヒト化抗体を含有する多重特異性抗体、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供する。
【0048】
本明細書で使用されるように、「膜貫通ドメイン」という用語とは、キメラ抗原受容体を免疫細胞(例えばリンパ球、NK細胞又はNKT細胞)表面で発現させ、且つ免疫細胞の標的細胞に対する細胞応答をガイドするペプチド構造を指す。膜貫通ドメインは、天然又は合成のものであってもよいし、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来してもよい。キメラ抗原受容体と標的抗原とが結合される場合に、膜貫通ドメインはシグナル伝達を行うことができる。特に本発明に適用される膜貫通ドメインは、例えばTCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ζサブユニット、CD3εサブユニット、CD3γサブユニット、CD3δサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154及びその機能的断片に由来してもよい。或いは、膜貫通ドメインは合成したものであってもよく、且つ主に疎水性残基、例えばロイシンとバリンを含んでもよい。好ましくは、前記膜貫通ドメインは、CD8α鎖又はCD28に由来し、配列番号24又は26で示されるアミノ酸配列に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、又はそのコード配列が配列番号25又は27で示される核酸分子に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0049】
本明細書で使用されるように、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語とは、エフェクター機能シグナルを形質導入し、細胞が所定機能を行うように指導するタンパク質部分を指す。一実施形態において、本発明のキメラ抗原受容体に含まれる細胞内シグナル伝達ドメインは、抗原受容体結合後に一緒に機能してシグナル伝達を誘導するT細胞受容体及び共受容体の細胞内ドメイン配列と、これらの配列の任意のデリバティブ又はバリアントと、同一又は類似の機能を有する任意の合成配列であってもよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、沢山の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motifs,ITAM)を含んでもよい。本発明の細胞内シグナル伝達ドメインの非限定的な例は、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dなどの細胞内ドメインを含むが、それらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明のCARのシグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメインを含んでもよく、配列番号32又は34で示されるアミノ酸配列に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、又はそのコード配列は、配列番号33又は35で示される核酸分子に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0050】
一実施形態において、本発明のキメラ抗原受容体は、抗体と膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジ領域を含んでもよい。本明細書で使用されるように、「ヒンジ領域」という用語は、一般的に膜貫通ドメインを抗体に連結するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。具体的には、ヒンジ領域は、抗体へより大きい柔軟性とアクセス性を提供するためのものである。ヒンジ領域は、最大300個のアミノ酸、好ましくは10~100個のアミノ酸、最も好ましくは25~50個のアミノ酸を含んでもよい。ヒンジ領域は、全部又は一部が天然分子に由来し、例えば全部又は一部がCD8、CD4又はCD28の細胞外領域に由来し、又は全部又は一部が抗体定常領域に由来してもよい。或いは、ヒンジ領域は、自然に発生するヒンジ配列に対応する合成配列であってもよいし、又は完全に合成したヒンジ配列であってもよい。好ましい実施形態において、前記ヒンジ領域は、CD8α、CD28、FcγRIIIα受容体、IgG4又はIgG1のヒンジ領域部分を含み、より好ましくはCD8α、CD28又はIgG4のヒンジであり、配列番号40、42又は44で示されるアミノ酸配列に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、或いは、そのコード配列が配列番号41、43又は45で示されるヌクレオチド配列に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0051】
一実施形態において、キメラ抗原受容体は、1つ又は複数の共刺激ドメインを含んでもよい。共刺激ドメインは、共刺激分子からの細胞内機能的シグナル伝達ドメインであってもよく、前記共刺激分子の全体細胞内部分、又はその機能的断片を含む。「共刺激分子」とは、T細胞において共刺激リガンドに特異的に結合されることによって、T細胞の共刺激反応(例えば増殖)を仲介する同源結合配偶体を指す。共刺激分子は、MHCクライス1分子、BTLA及びTollリガンド受容体を含むが、それらに限定されない。本発明の共刺激ドメインの非限定的な例は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD8、CD18(LFA-1)、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD278(ICOS)、CD357(GITR)、DAP10、LAT、NKG2C、SLP76、PD-1、LIGHT、TRIM及びZAP70等のタンパク質に由来する共刺激シグナル伝達ドメインを含むが、それらに限定されない。好ましくは、本発明のCARの共刺激ドメインは、4-1BB、CD28又は4-1BB+CD28に由来する。一実施形態において、4-1BB共刺激ドメインは、配列番号30で示されるアミノ酸配列に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、又はそのコード配列が配列番号31で示される核酸分子に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。一実施形態において、CD28共刺激ドメインは、配列番号28で示されるアミノ酸配列に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、又はそのコード配列は、配列番号29で示される核酸分子に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0052】
一実施形態において、本発明のCARは、細胞、例えばT細胞で発現される場合に、新生タンパク質が小胞体まで導入されてから細胞表面まで導入されるように、シグナルペプチドを含んでもよい。シグナルペプチドのコアは、長い疎水性アミノ酸セグメントを含んでもよく、単一のα-螺旋を形成する傾向がある。シグナルペプチドの末端には、一般的にシグナルペプチダーゼによって認識、カットされたアミノ酸セグメントがある。シグナルペプチダーゼは、移行中又は完成後にカットされ、遊離シグナルペプチド及び成熟タンパク質が生成する。その後、遊離シグナルペプチドは特定のプロテアーゼに消化される。本発明に適用可能なシグナルペプチドは、当業者によって周知されるものであり、例えばB2M、CD8α、IgG1、GM-CSFRα等から派生されるシグナルペプチドである。一実施形態において、本発明に適用可能なシグナルペプチドは、B2M又はCD8αに由来し、配列番号36又は38で示されるアミノ酸配列に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有し、又はそのコード配列は、配列番号37又は39で示される核酸分子に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%又は100%の配列同一性を有する。
【0053】
一実施形態において、前記CARは、本明細書で提供されるCD7ヒト化抗体、又は前記CD7ヒト化抗体を含む多重特異性抗体、CD8α膜貫通ドメイン、CD28又は4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。この実施形態において、前記CARは、B2M、CD8α、IgG1又はGM-CSFRαに由来するシグナルペプチドをさらに含んでもよい。
【0054】
本発明は、上記定義されたCD7を標的にするキメラ抗原受容体をコードする核酸分子、及び前記核酸分子を含むベクターを更に提供する。
【0055】
本明細書で使用されるように、「ベクター」という用語は、(外因性)の遺伝子材料を宿主細胞に転移するためのメディエーター核酸分子であり、この宿主細胞において前記核酸分子は、例えばコピーされ、且つ/又は発現されてもよい。ベクターは一般的にターゲティングベクターと発現ベクターを含む。「ターゲティングベクター」は、例えば同源リコンビナントにより又は特異的標的部位での配列のハイブリッドリコンビナーゼを用いて分離した核酸を細胞内部まで送達する媒体である。「発現ベクター」は、異種核酸配列(例えば、本発明のキメラ抗原受容体ペプチドをコードするそれらの配列)の適合な宿主細胞での転写及びそれらのmRNAの翻訳に用いられるベクターである。本発明に適用できる適当なベクターは当分野で既知されるものであり、たくさん購買され取得されることができる。一実施形態において、本発明のベクターは、プラスミド、ウィルス(例えばレトロウィルス、レンチウィルス、アデノウィルス、ワクシニアウィルス、ラウス肉腫ウィルス(RSV、ポリオーマウィルス及びアデノ随伴ウィルス(AAV)等)、ファージ、ファージミド、コスミド及び人工染色体(BACとYACを含む)を含むが、それらに限定されない。ベクター自身は一般的に核酸分子であり、一般的に挿入物(遺伝子導入)を含むDNA配列と、ベクターの「スケルトン」である大きい配列である。改変ベクターには、一般的に宿主細胞での自己複製の起源(ポリヌクレオチドの安定的発現の必要があれば)、選択マーカー及び制限酵素切断部位(例えばマルチクローニングサイト,MCS)も含む。ベクターは、プロモーター、ポリAテール(polyA)、3’UTR、エンハンサー、ターミネーター、インシュレーター、オペレーター、選択マーカー、レポーター遺伝子、ターゲティング配列及び/又はタンパク質精製タグ等のエレメントをさらに含んでもよい。具体的な一実施形態で、前記ベクターは、インビトロ転写のベクターである。
改変免疫細胞
【0056】
一態様で、本発明は、本発明に記載のCARを発現する改変免疫細胞をさらに提供する。
【0057】
本明細書で使用されるように、「免疫細胞」という用語とは、1つ以上の種類のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞の活性への殺傷、サイトカインの分泌、ADCC及び/又はCDCの誘導)を有する免疫システムの任意の細胞を指す。例えば、免疫細胞は、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、単核細胞、NK細胞及び/又はNKT細胞である。一実施形態において、免疫細胞は、例えば成体幹細胞、胚性幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞、または造血幹細胞等の幹細胞から派生される。好ましくは、免疫細胞はT細胞である。T細胞は、任意のT細胞であってもよく、例えば原代T細胞のような体外培養のT細胞、或いはJurkat、SupT1等のようなT細胞インビトロで培養されたT細胞株からのもの、又は被験者から取得されたT細胞である。被験者の実例は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット及びそれらの遺伝子組み換え種を含む。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、腫瘍の複数のソースから取得されてもよい。T細胞は、濃縮され又は精製されてもよい。T細胞は、任意の発育段階にあってもよく、CD4+/CD8+T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えばTh1及びTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、γδ-T細胞、αβ-T細胞等を含むが、それらに限定されない。好ましい一実施形態において、免疫細胞は、ヒトT細胞である。当業者に既知される多種技術、例えばFicoll分離を用いて被験者の血液からT細胞を取得することができる。
【0058】
当分野での既知の一般的な方法(例えば形質導入、トランスフェクション、形質転換等)を採用して、キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を免疫細胞に導入する。「トランスフェクション」は、核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)を標的細胞に導入するプロセスである。一例としては、RNAトランスフェクションであり、即ち、RNA(例えばインビトロ転写のRNA,ivtRNA)を宿主細胞に導入するプロセスである。この用語は、主に真核細胞での非ウイルスアプローチに用いられる。「形質導入」という用語は一般的にウィルス仲介による核酸分子又はポリヌクレオチドの転移を説明するためのものである。動物細胞のトランスフェクションは、材料摂取を許容するように、一般的に細胞膜の一時的に開かれる孔または「穴」に係わる。リン酸カルシウムを用い、エレクトロポレーション、細胞押し出しにより、又カチオン性脂質と材料とを混合させて細胞膜に融合してそれらのキャリアを内部に沈着する脂質体が生成し、トランスフェクションを行うことができる。真核宿主細胞のトランスフェクションに用いる例示的技術は、脂質ベシクル仲介による取り込み、ヒートショック仲介による取り込み、リン酸カルシウム仲介によるトランスフェクション(リン酸カルシウム/DNA共沈)、マイクロインジェクション及びエレクトロポレーションを含む。「形質転換」という用語は、核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)が細菌中、非動物真核細胞(植物細胞を含む)中の非ウィルスへも転移することを説明するためのものである。従って、形質転換は、細菌又は非動物真核細胞の遺伝子変更であり、細胞膜によりその周囲から直接的に取り込んでから外因性の遺伝子材料(核酸分子)に組み込んで生成される。形質転換は、人工手段により実現されてもよい。形質転換の発生のために、細胞又は細菌は有能な状態であればならない。原核形質転換について、技術は、ヒートショック仲介による取り込み、完全細胞の細菌プロトプラストとの融合、マイクロインジェクション及びエレクトロポレーションを含む。核酸又はベクターを免疫細胞に導入すると、当業者は、一般的な技術により取得した免疫細胞を増幅、活性化することができる。
【0059】
一実施形態において、移植片対宿主病のリスクを軽減するために、前記改変免疫細胞は、CD52、GR、dCK、TCR/CD3遺伝子(例えばTRAC、TRBC、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ)と、MHC関連遺伝子(HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、HLA-DPA、HLA-DQ、HLA-DRA、TAP1、TAP2、LMP2、LMP7、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA)と、例えばPD1、LAG3、TIM3、CTLA4、PPP2CA、PPP2CB、PTPN6、PTPN22、PDCD1、HAVCR2、BTLA、CD160、TIGIT、CD96、CRTAM、TNFRSF10B、TNFRSF10A、CASP8、CASP10、CASP3、CASP6、CASP7、FADD、FAS、TGFBRII、TGFRBRI、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD10、SKI、SKIL、TGIF1、IL10RA、IL10RB、HMOX2、IL6R、IL6ST、EIF2AK4、CSK、PAG1、SIT、FOXP3、PRDM1、BATF、GUCY1A2、GUCY1A3、GUCY1B2及びGUCY1B3等の免疫チェックポイント遺伝子と、から選択される少なくとも1種類を含む遺伝子の発現が抑制され又はサイレンシングする。好ましくは、前記改変免疫細胞は、TRAC、TRBC、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITA、PD1、LAG3、TIM3、CTLA4、好ましくはTRAC、TRBC、HLA-A、HLA-B、HLA-C、B2M、RFX5、RFXAP、RFXANK、CIITAから選択される少なくとも1種類を含む遺伝子の発現が抑制され又はサイレンシングする。
【0060】
遺伝子発現を抑制し又は遺伝子をサイレンシングさせる方法は、当業者に周知される。例えば、アンチセンスRNA、RNAデコイ、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナントネガティブタンパク質(TNP)、キメラ/抗体複合体、ケモカインリガンド、抗感染細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド及び化学剤)及びプロテアーゼ阻害剤を用いて遺伝子の発現を抑制することができる。また、例えば大範囲のヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ又はCRISPRシステムにおけるCas酵素によりDNAブレークを仲介して、遺伝子をサイレンシングさせることもできる。
【0061】
一実施形態において、複数種類の免疫細胞を提供し、各種類の免疫細胞は、1つ以上の種類のキメラ抗原受容体を発現するように改変される。例えば、いくつかの実施形態において、1種類の免疫細胞を、CD7に結合されかつ/又はCD7を標的にするキメラ抗原受容体(例えば本発明に記載のCD7ヒト化抗体のCARが含まれる)を発現するように改変するとともに、他種類の細胞を、他の抗原に結合されかつ/又は他の抗原を標的にするキメラ抗原受容体を発現するように改変する。一実施形態において、免疫細胞は、CD7が含まれる1つ以上の種類の抗原を標的にする多重特異性キメラ抗原受容体を発現してもよい。例えば、このような多重特異性キメラ抗原受容体は、CD7を標的にする多重特異性抗体を含んでもよいし、或いは、本発明に記載のCD7ヒト化抗体、および他の抗原を標的にする抗体を同時に含んでもよい。このような実施形態において、前記多種改変免疫細胞は、一緒に又は単独に投与されてもよい。一実施形態において、前記複数種類の免疫細胞は、同一組成物にあってもよいし、異なる組成物にあってもよい。細胞の例示的な組成物は、本出願の下記章節で説明される組成物を含む。
抗体複合体
【0062】
一態様で、本発明は、本発明で定義されたCD7ヒト化抗体及び第2機能的構造を含む抗体複合体であって、前記第2機能的構造が、Fc、放射性同位体、半減期を延長する構造部分、検出可能なマーカー及び薬剤から選択される抗体複合体を提供する。
【0063】
一実施形態において、本発明は、本発明で定義されたCD7ヒト化抗体及びFcを含む抗体複合体を提供する。本明細書で使用されるように、「Fc」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するためのもので、ネイティブFcとバリアントFcを含む。「ネイティブFc」とは、無傷の抗体の消化によって生成され、モノマーまたはポリマーの形でもよい非抗原結合断片を含む分子又は配列を指す。ネイティブFcを生成した免疫グロブリンのソースは、ヒトに由来することが好ましい。ネイティブFc断片は、共有結合(例えばジスルフィド結合)及び非共有結合によってダイマー又はポリマーとして結合されるモノマーポリペプチドから構成されてもよい。カテゴリ(例えばIgG、IgA、IgE、IgD、IgM)又はサブタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)によって、ネイティブFc分子のモノマーサブユニット間に1~4個の分子間ジスルフィド結合がある。ネイティブFcの一実例として、パパインを用いてIgGから生成されたジスルフィド結合によるダイマーを消化する(Ellison等(1982),Nucleic Acids Res.10:4071-9参照)。本明細書で使用される「ネイティブFc」は、一般的にモノマー、ダイマー及びポリマーの形である。「バリアントFc」とは、少なくとも1つの文書で定義された「アミノ酸修飾」によって「ネイティブ」又は「ワイルドタイプ」Fcのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を指し、「Fcバリアント」とも称される。故に、「Fc」には、シングルチェーンFc(scFc)も含まれ、すなわちポリペプチドリンカーによって結合された2つのFcモノマーからなるシングルチェーンFcであり、機能的なダイマーFcドメインに自然に折りたたまれることができる。一実施形態において、前記Fcは、ヒト免疫グロブリンのFcが好ましく、ヒトIgG1のFcがより好ましい。
【0064】
一実施形態において、本発明は、本発明で定義されたCD7ヒト化抗体及び放射性同位体を含む抗体複合体を提供する。本発明に適用可能な放射性同位体の実例は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb21299mTc、123I、18F及び68Gaを含むが、それらに限定されない。
【0065】
一実施形態において、本発明は、本発明で定義されたCD7ヒト化抗体と、半減期を延長する構造部分とを含む抗体複合体であって、前記半減期を延長する構造部分が、アルブミンの結合構造、トランスフェリンの結合構造、ポリエチレングリコール分子、組換えポリエチレングリコール分子、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンの断片及びヒト血清アルブミンに結合されるホワイトポリペプチド(抗体が含まれる)から選択される抗体複合体を提供する。
【0066】
一実施形態において、本発明は、本発明で定義されたCD7ヒト化抗体及び検出可能なマーカーを含む抗体複合体を提供する。「検出可能なマーカー」という用語は、本明細書で検出可能なシグナルを発生する化合物を指す。例えば、検出可能なマーカーは、MRI造影剤、シンチグラフィー造影剤、X線イメージング造影剤、超音波造影剤、光イメージング造影剤であってもよい。検出可能なマーカーの実施例は、フルオロフォア(例えばフルオレセイン、Alexa又はシアニン)、化学発光化合物(例えばルミノール)、生物発光化合物(例えばルシフェラーゼ又はアルカリホスファターゼ)、酵素(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコース-6-ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ)、抗生物質(例えばカナマイシン、アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン等)、耐性遺伝子及び造影剤(例えばナノ粒子またはガドリニウム)を含む。当業者は、使用される検出システムに基づいて適当な検出可能なマーカーを選択することができる。
【0067】
一実施形態において、本発明は、本発明で定義されたCD7ヒト化抗体と、例えば細胞毒素又は免疫調節剤のような前記CD7ヒト化抗体に結合される薬剤を含む抗体複合体(即ち、抗体薬剤複合体)を提供する。通常、薬剤は、共有によって抗体に結合され、且つ一般的にリンカーに依存する。一実施形態において、前記薬剤は細胞毒素である。他の一実施形態において、前記薬剤は免疫調節剤である。細胞毒素の実例としては、メトトレキサート、アミノプテリン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン、窒素マスタード、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、1-メチルニトロソ尿素、シクロホスファミド、窒素マスタード、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシン、マイトマイシン、cis-ジクロロジアンミン白金(II)(DDP)、シスプラチン、カルボプラチン、ゾルビシン、ドキソルビシン、デトルビシン、カミノマイシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、カリケアミシン、ミスロマイシン、アントラマイシン(AMC)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、リシン、シュードモナス外毒素、ゲムシタビン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、エトポシド、テニポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、プロカルバジン、ヒドロキシカルバミド、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P`-(DDD))、インターフェロン、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。免疫調節剤の実例としては、ガンシクロビル、エタネルセプト、タクロリムス、シロリムス、ボクロスポリン、シクロスポリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、グルココルチコイド及びその類似物、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、造血因子、インターロイキン(例えばIL-1、IL-2、IL-3、IL-6、IL-10、IL-12、IL-18及びIL-21)、コロニー刺激因子(例えばG-CSF及び(GM-CSF)、インターフェロン(例えばインターフェロン-α、インターフェロン-β及びインターフェロン-γ)、「S1因子」と命名される幹細胞増殖因子、エリスロポエチン及びトロンボポエチン、又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
キット及び医薬組成物
【0068】
他の一態様で、本発明は、本発明に記載のヒト化抗体、多重特異性抗体、抗体複合体又はキメラ抗原受容体を含む検出キットを更に提供する。
【0069】
他の一態様で、本発明は、本発明に記載のヒト化抗体、キメラ抗原受容体、多重特異性抗体又は抗体複合体、及び1つ以上の種類の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0070】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される賦形剤」という用語とは、被験者および有効成分と薬理学的および/または生理学的に適合する(即ち、何らかの希望しない局部又は全身の作用を果たすことがなく、所要の治療効果を果たす)ベクター及び/又は賦形剤を指し、本分野で周知される(例えばRemington`s Pharmaceutical Sciences.Edited by Gennaro AR,19th ed.Pennsylvania:Mack Publishing Company,1995参照)。薬学的に許容される賦形剤の実例は、充填剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、吸着剤、粘着防止剤、流動促進剤、酸化防止剤、香料、着色剤、甘味料、溶媒、共溶媒、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、希釈剤、湿潤剤、防腐剤、乳化剤、コーティング剤、等張剤、吸収遅延剤、安定剤および等張化剤を含むが、それらに限定されない。当業者は、適当な賦形剤を選択して本発明の所望の医薬組成物を調製することを知っている。本発明に用いる医薬組成物における例示的な賦形剤は、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、及び水である。通常、適当な賦形剤の選択は、特に使用される活性剤、治療対象の疾患及び医薬組成物の所望の剤型によって決められる。
【0071】
本発明に係る医薬組成物は、複数の経路での投与に適用する。一般的に、非経口で投与を完了する。非経口投与法は、局所、動脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、心室内、静脈内、腹腔内、子宮内、膣内、舌下、または鼻腔内で投与することを含む。
【0072】
本発明に係る医薬組成物は、例えば固体、液体、気体、凍結乾燥形態等の各種形式で調製されることができ、特に軟膏、クリーム、経皮パッチ、ゲル、粉末、錠剤、溶液、エアゾール、顆粒、丸剤、懸濁液、乳液、カプセル、シロップ、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、液体エキス剤抽出物の形態であってもよく、或いは、特に所要の投与方法に適用する形態である。本発明で既知の薬を製造するプロセスは、例えば、ルーチンの混合、溶解、造粒、糖衣製造、製粉、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥のプロセスを含んでもよい。例えば本明細書に記載の免疫細胞を含む医薬組成物は一般的に溶液の形態で提供され、且つ好ましくは薬学的に許容される緩衝剤を含む。
【0073】
本発明に係る医薬組成物は、治療及び/又は治療対象の疾患の予防に適用する1つ以上の種類の他の薬剤と組み合わせて投与されることもできる。組み合わせに適用する薬剤の好ましい実例は、例えばシスプラチン、メイタンシン誘導体、ラチェルマイシン(rachelmycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、メルファラン、ミトキサントロン、ソルフィマーポルフィリンナトリウムII(sorfimer sodiumphotofrin II)、テモゾロミド、トポテカン、グルクロン酸トリメトレキサート(trimetreate glucuronate)、アウリスタチンE(auristatin E)、ビンクリスチン及びアドリアマイシン等の既知の抗癌薬と、例えばリシン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A、DNA酵素及びRNA酵素等のペプチド細胞毒素と、例えばヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イリジウム90、ビスマス210及び213、アクチニウム225及びアスタチン213等の放射性核種と、例えば抗体指向性酵素プロドラッグのプロドラッグと、例えば血小板因子4、黒色腫増殖刺激タンパク質等の免疫刺激剤と、例えば抗CD3抗体又はその断片のような抗体又はその断片と、補体活化剤と、ヘテロタンパク質ドメインと、ホモタンパク質ドメインと、ウイルス/細菌タンパク質ドメインと、ウィルス/細菌ペプチドと、を含む。また、本発明の医薬組成物は、例えば化学療法、放射線療法等の他の1つ以上の種類の治療方法と組み合わせて使用されてもよい。
治療/予防/診断の使用
【0074】
他の一態様で、本発明は、上記したヒト化抗体、キメラ抗原受容体、多重特異性抗体、抗体複合体又は医薬組成物を被験者に投与することを含む、CD7発現に関連する疾患の治療・予防・診断の方法をさらに提供する。
【0075】
一実施形態において、CD7発現に関連する疾患は、非固形腫瘍(例えば白血病及びリンパ腫のような血液腫瘍)と固形腫瘍を含む。血液腫瘍は、血液又は骨髄の癌であり、急性白血病(例えば急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病及び骨髄芽球性、前骨髄性、顆粒単球型、単球性及び赤白血病)、慢性白血病(例えば慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ芽球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(痛くないハイグレードなフォルム)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL/LBL)、早期プロTリンパ芽球性白血病(ETP-ALL)、節外NK/T細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)及び骨髄形成異常を含むが、それらに限定されない。固形腫瘍は、通常、嚢胞または流体領域の組織を含まない異常な腫瘤であり、良性または悪性であってもよい。異なるタイプの固形腫瘍は、それらを形成した細胞タイプによって命名される(例えば肉腫、癌及びリンパ腫)。固形腫瘍の実例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫中皮腫、膵臓癌、卵巣癌、腹膜、大網、及び腸間膜の癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、皮膚癌、小腸癌、黒色腫、腎臓癌、咽喉癌、軟部組織癌、胃癌、精巣癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、胞巣状横紋筋肉腫、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、肛門癌、眼癌、肝内胆管癌、関節癌、頸部癌、胆のう癌、胸膜癌、鼻癌、中耳癌、口腔癌、外陰癌、甲状腺癌及び尿管癌を含むが、それらに限定されない。
【0076】
一実施形態において、CD7発現に関連する疾患としては、好ましくは急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、Tリンパ芽球性リンパ腫(T-LBL)、早期プロTリンパ芽球性白血病(ETP-ALL)及び節外NK/T細胞リンパ腫から選択される。
【0077】
以下、図面を参照しながら実例を合わせて本発明を詳細に説明する。説明すべきこととして、当業者は、本発明の図面及びその実施例が例示なものに過ぎず、本発明に対する任意の制限を構成しないと理解するはずである。矛盾しない場合、本出願における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】CD7ヒト化抗体を含むCAR-T細胞のscFv発現レベルを示す。
図2】CD7ヒト化抗体を含むCAR-T細胞による標的細胞への殺傷効果を示す。
図3】CD7ヒト化抗体を含むCAR-T細胞と標的細胞の共培養後のサイトカイン放出レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
実施例1.CD7ヒト化抗体の調製
マウスCD7scFv(クローンm189)に基づいてヒト化抗体を調製する。クローンm189は、配列番号1で示されるCDR-L1、配列番号2で示されるCDR-L2、配列番号3で示されるCDR-L3、配列番号4で示されるCDR-H1、配列番号5で示されるCDR-H2、配列番号6で示されるCDR-H3を含み、そのアミノ酸配列が配列番号7で示される。ヒト化抗体を調製する具体的な方法は下記の通りである。まず、Ig BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)及びIMGT(免疫遺伝子データベースIMGT:http://www.imgt.org)によりそれぞれ配列類似検索を行い、検索した結果のうち、軽鎖及び重鎖にいずれも高い配列類似性を有する抗体をヒト化抗体テンプレートとする。そして、マウスCD7scFv中の重鎖CDR及び軽鎖CDRを、配列類似性が高いヒト化抗体テンプレートのフレームワーク中に移植させてから、ヒト化抗体の親和性と特異性を保証するように、復帰突然変異を行う。最終的に取得したCD7ヒト化シングルチェーン抗体(scFv)アミノ酸配列を下記の表1に示す。
【0080】
表1.ヒト化CD7scFvの配列
実施例2.CD7ヒト化抗体を含むCAR-T細胞の調製
【0081】
CD8αシグナルペプチド(配列番号38)、CD7ヒト化scFv(配列番号10、13、16、19から選択される)、CD8αヒンジ領域(配列番号40)、CD8α膜貫通ドメイン(配列番号24)、4-1BB細胞内ドメイン(配列番号30)、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号32)等のタンパク質をコードする配列を合成し、それをpLVXベクター(Public Protein/Plasmid Library(PPL),商品番号:PPL00157-4a)にクローンするとともに、シーケンスにより対象配列の正しい挿入を確認する。ここで、hCAR7-1 CARに含まれる抗CD7 scFvのアミノ酸配列は、配列番号10で示され、hCAR7-2 CARに含まれる抗CD7 scFvのアミノ酸配列は、配列番号13で示され、hCAR7-3 CARに含まれる抗CD7 scFvのアミノ酸配列は、配列番号16で示され、hCAR7-4 CARに含まれる抗CD7 scFvのアミノ酸配列は、配列番号19で示される。
【0082】
無菌管に3mlのOpti-MEM(Gibco,商品番号31985-070)に加入して上記プラスミドを希釈してから、プラスミド:ウイルス包装ベクター:ウイルスエンベロープベクター=4:2:1という比率で、包装ベクターpsPAX2(Addgene,商品番号12260)及びエンベロープベクターpMD2.G(Addgene,商品番号12259)を加入する。そして、120ulのX-treme GENE HP DNAトランスフェクション試剤(Roche,商品番号06366236001)を加入し、すぐに均一に混ぜて、室温で15分間孵化させ、その後、プラスミド/ベクター/トランスフェクション試剤混合物を293T細胞の培養瓶に一滴ずつ加入する。24時間及び48時間の後にウイルスを収集し、それを合わせた後に、超遠心分離して(25000g,4℃,2.5時間)濃縮レンチウイルスを取得する。
【0083】
CD7もT細胞上で発現されるため、CAR-T細胞の相互殺傷を回避するように、発明者は、CRISP/Cas9システムにより、T細胞におけるCD7をノックアウトする。1日間培養した後、DynaBeads CD3/CD28 CTSTM(Gibco,商品番号40203D)を用いてT細胞を活性化し、37℃及び5%のCOで引き続き1日間培養する。そして、濃縮レンチウイルスを加入し、3日間連続培養後に、異なるCD7ヒト化scFvを発現するCAR T細胞を取得する。修飾されていない野生型T細胞は、陰性対照(NT)として用いられる。
【0084】
Biotin-SP(long spacer)AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG,F(ab`) Fragment Specific(min X Hu,Bov,Hrs Sr Prot)(jackson immunoresearch,商品番号115-065-072)を一次抗体とし、APC Streptavidin(BD Pharmingen,商品番号554067)又はPE Streptavidin(BD Pharmingen,商品番号554061)を二次抗体として用い、フローサイトメトリーによりhCAR7-1 T細胞、hCAR7-2 T細胞、hCAR7-3 T細胞及びhCAR7-4におけるscFvの発現レベルを検出し、結果を図1に示す。
【0085】
これからわかるように、本発明で調製されたCAR T細胞におけるCD7ヒト化scFvは、いずれも効果的に発現されることができる。
実施例3:CAR T細胞による標的細胞への殺傷効果及びサイトカイン放出
3.1 CAR-T細胞による標的細胞への殺傷効果
【0086】
T細胞による標的細胞への殺傷がある場合に、標的細胞の数は低減する。T細胞と発現可能なルシフェラーゼを持つ標的細胞を一緒に培養した後、標的細胞は、数が低減するとともに、分泌したルシフェラーゼもそれとともに低減する。ルシフェラーゼは、フルオレセインを酸化フルオレセインに変換するように促進することができるが、この酸化中に生物発光が発生し、かつこのような発光の強度は標的細胞発現のルシフェラーゼのレベルによって決められる。故に、検出した蛍光強度は、T細胞による標的細胞への殺傷能力を反映することができる。
【0087】
CAR-T細胞による標的細胞への殺傷能力を検出するために、まず1x10/孔でフルオレセイン遺伝子を持つJurkat標的細胞を96孔プレートに入れ、その後、1:1、0.5:1及び0.25:1のエフェクター:標的比(即ちエフェクターT細胞と標的細胞との比率)でCAR T細胞及びNT細胞を96孔プレートに入れて一緒に培養し、16~18時間後にマイクロプレートリーダーを用いて蛍光値を測定する。計算式:(標的細胞蛍光平均値-サンプル蛍光平均値)/標的細胞蛍光平均値×100%に基づいて、殺傷効率を算出して取得し、結果を図2に示す。
【0088】
これによって分かるように、NTに比べて、本発明のCAR T細胞は標的細胞に対していずれも特異的殺傷を有する。
3.2 CAR-T細胞のサイトカイン放出
【0089】
T細胞が標的細胞を殺傷する場合に、標的細胞は、数が低減するとともに、サイトカインも放出する。下記のステップに従って、サンドイッチ法(ELISA)で本発明のCAR T細胞が標的細胞を殺傷するときのサイトカインIFNγの放出レベルを測定する。
(1)細胞共培養上澄み液の収集
【0090】
1x10/孔で標的細胞を96孔プレートに入れ、その後、1:1の比率でCAR T及びNT細胞(陰性対照)を標的細胞とともに一緒に培養し、18~24時間後に細胞共培養上澄み液を収集する。
(2)ELISAによる上澄みにおけるIFNγ分泌量の検出
【0091】
捕獲抗体Purified anti-human IFN-γAntibody(Biolegend,商品番号506502)を用いて96孔プレートを被覆させて4℃で1晩孵化させ、その後、抗体溶液を除去し、2%BSA(sigma,商品番号V900933-1kg)含有の250μLのPBST(0.1%トゥイーン含有の1XPBS)溶液を加入し、37℃で2時間孵化させる。そして、250μLのPBST(0.1%トゥイーン含有の1XPBS)を用いてプレートを3回洗浄する。各孔に50μLの細胞共培養上澄み液又は標準品を加入し、37℃で1時間孵化させ、その後、250μLのPBST(0.1%トゥイーン含有の1XPBS)を用いてプレートを3回洗浄する。そして、各孔にそれぞれ50μLの検出抗体Anti-Interferon gamma抗体[MD-1](Biotin)(abcam,商品番号ab25017)を加入し、37℃で1時間孵化させた後、250μLのPBST(0.1%トゥイーン含有の1XPBS)を用いてプレートを3回洗浄する。HRP Streptavidin(Biolegend,商品番号405210)を加入して、37℃で30分間孵化させた後、上澄み液を放棄し、250μLのPBST(0.1%トゥイーン含有の1XPBS)を加入し、5回洗浄する。各孔に50μLのTMB基質溶液を加入する。反応を室温で暗い場所で30分間発生させ、その後、各孔に50μLの1mol/LのHSOを加入して反応を停止させる。反応停止中の30分間において、マイクロプレートリーダーを用いて450nmにおける吸光度を検出し、標準曲線(標準品の読み取り値及び濃度に基づいて描いたもの)に基づいてサイトカインの含有量を算出し、結果を図3に示す。
【0092】
これによって分かるように、本発明のCAR T細胞のサイトカイン放出レベルは、対照としてのNT細胞よりも顕著に高い。
【0093】
説明すべきこととして、上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎなく、本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明は様々の変更及び変化を行うことができる。当業者によって理解されるように、本発明の思想と原則で行われたいかなる修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
【配列表】
2023547425000001.app
【国際調査報告】