(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】地熱井のための方解石スケール制御剤
(51)【国際特許分類】
C02F 5/00 20230101AFI20231102BHJP
C02F 5/10 20230101ALI20231102BHJP
【FI】
C02F5/00 620B
C02F5/10 610Z
C02F5/10 620C
C02F5/10 620D
C02F5/10 620E
C02F5/10 620Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525572
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 US2021055959
(87)【国際公開番号】W WO2022093611
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ディネシュ バルキサン マントリ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ハーディー ロッドマン
(57)【要約】
【課題】本開示は、水性系において、方解石スケールの形成及び堆積を抑制するための改善された方法に関する。
【解決手段】具体的には、本方法は、組成物を水性系又は坑井に注入することを含む。組成物は、方解石スケール抑制剤を含む。方解石スケール抑制剤は、アクリル酸又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性系中での方解石スケールの抑制又は低減のための方法であって、前記方法は、
組成物を地熱井に注入することを含み、前記組成物が、アクリル酸(AA)又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーを含む、方法。
【請求項2】
前記水性系が、約50℃~約350℃の温度を有する水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性系が、約100℃~約350℃の温度を有する水を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コポリマーが、AAを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、ポリ無水マレイン酸を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリ無水マレイン酸が、加水分解されたポリ無水マレイン酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加水分解されたポリ無水マレイン酸が、約300Da~約1,000Daの範囲の重量平均分子量を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アニオン性モノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スチレンスルホン酸、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホアルキルアクリル酸、スルホアルキルメタクリル酸、アリルスルホン酸、3-メタクリルアミド-2-ヒドロキシプロピルスルホン酸、これらの任意の塩、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コポリマーが、AA/AMPSコポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記AA/AMPSコポリマーの前記重量平均分子量が、約10,000Da~約30,000Daである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、約1ppm~約1,000ppmの範囲の量で添加される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コポリマーが、約40重量%~約80重量%のAA及び約20重量%~約60重量%のAMPSを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、トリアゾールを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、約5重量%~約15重量%の前記コポリマーと、約30重量%~約40重量%の任意形態のポリ無水マレイン酸と、約1重量%~約10重量%の前記トリアゾールと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記地熱井が、地熱生産井である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水性系が、地熱発電所であり、任意選択的に、前記地熱発電所が、乾燥蒸気ステーション、フラッシュ蒸気ステーション、及びバイナリサイクルステーションからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記水性系が、ブラインを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
地熱坑井における方解石スケールの抑制又は低減のための方法であって、
前記坑井中に組成物を注入することを含み、前記組成物が、AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーを含む、方法。
【請求項19】
AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーと、
ポリカルボン酸と、
トリアゾールと、を含む、組成物。
【請求項20】
地熱井における方解石スケール形成を抑制するための、AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーと、ポリカルボン酸と、トリアゾールと、を含む、組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性系における方解石スケールを抑制又は低減するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱エネルギーは、地球内部内の熱の形態のエネルギーであり、地熱井を使用して開発することができる。地球内部は、莫大な供給量の熱を含有するが、エネルギー生成のための熱の抽出には課題が残っている。地熱エネルギーは、岩盤を通じた熱伝導によって、地表に向かって移動している。熱エネルギーはまた、溶岩の移動によって、又は相互接続した亀裂及び孔を介した流体(蒸気若しくは水としてのH2O)の循環によって、地表に向かって伝達され得る。いずれの場合も、地熱井は、比較的深い井戸である。
【0003】
地熱ブライン及び蒸気は、一般に、エネルギー源として使用される。地熱ブラインは、発電、加熱、及び電気のプロセスにおいて使用される。地熱蒸気の温度は、約185℃~約370℃(約365°F~約700°F)の範囲である。蒸気は、フラッシングユニットを使用してブラインから分離される。低温ブラインはまた、電気二元ユニット(二次流体ユニット)を生産するためにも使用することができる。地熱ブラインは、約1000ppm未満~数十万ppmの塩分、及び約6パーセントまでの非凝縮性ガスの含有量を有し得る。塩含有量及び用途に応じて、地熱流体は、直接的に、又は二次流体サイクルを介して、使用することができる。他のエネルギー源の存在量が減り、それらがより高価になるにつれて、エネルギー源としての地熱エネルギーの使用は、重要性を増している。これは、持続可能で再生可能なエネルギー源であり、他の再生可能エネルギー源とは異なり、地熱エネルギーは、常に利用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉱物堆積は、地熱エネルギーの生産において遭遇される厳しい条件下での主要な問題であり、地熱地帯の開発を制限する要因であり得る。熱水卓越型貯留層の沸騰する地熱流体に由来する鉱物堆積は、特に問題である。
【0005】
方解石スケールの堆積は、主要な問題である。工業用水が大量の炭酸カルシウム及び重炭酸カルシウムを含有するとき、方解石スケールは、重大なファウリングの問題を引き起こす。一般に、高レベルの炭酸カルシウム又は重炭酸塩を含む工業用水は、少なくとも約5ppm又は最大約500ppmの溶解した炭酸塩及び重炭酸塩を含有する。より多量の炭酸塩及び重炭酸塩は、溶解、分散又はコロイド形態で水中に存在し得る。経時的な方解石の堆積物の蓄積は、様々な操作上の問題をもたらす可能性がある。例えば、堆積物は、パイプラインの構造的完全性の正確な測定を妨げる可能性がある。堆積物を除去するために、パイプラインは機械的に洗浄されなければならない。堆積物はまた、パイプラインバルブ系の安全な操作と干渉し、潜在的には壊滅的なシステム障害をもたらし得る。したがって、鉄及び硫化鉄の堆積物を含有するパイプライン網では、洗浄は日常茶飯事のことである。
【0006】
生産された流体の酸性化及び圧力下での二酸化炭素の添加などの他の技術が実装されているものの、スケール堆積物の問題は現在、主にスケール抑制剤化学物質のダウンホール添加によって対処されている。機械的な方法もまた、検討されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水性系における方解石スケールの抑制又は低減のための方法を提供する。本方法は、組成物を地熱井に注入することを含む。当該組成物は、アクリル酸(acrylic acid、AA)又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーを含む。
【0008】
いくつかの態様では、コポリマーはAAである。
【0009】
いくつかの態様では、組成物はポリ無水マレイン酸を含む。
【0010】
いくつかの態様では、ポリ無水マレイン酸は、加水分解ポリ無水マレイン酸である。
【0011】
いくつかの態様では、加水分解ポリ無水マレイン酸は、約300Da~約1,000Daの範囲の重量平均分子量を有する。
【0012】
いくつかの態様では、アニオン性モノマーは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(2-acrylamido-2-methylpropane sulfonic acid、AMPS)、スチレンスルホン酸、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホアルキルアクリレート、スルホアルキルメタクリレート、アリルスルホン酸、3-メタクリルアミド-2-ヒドロキシプロピルスルホン酸、それらの任意の塩、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0013】
いくつかの態様では、アゾールは、AA/AMPSコポリマーである。
【0014】
いくつかの態様では、コポリマーの重量平均分子量は、約10,000Da~約30,000Daの範囲である。
【0015】
いくつかの態様では、組成物は、約1ppm~約1,000ppmの範囲の量で添加される。
【0016】
いくつかの態様では、コポリマーは、約40重量%~約80重量%のアクリル酸及び約20重量%~約60重量%のAMPSを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は、トリアゾールを更に含む。
【0018】
いくつかの態様では、組成物は、約5重量%~約15重量%のコポリマーと、約30重量%~約40重量%の任意の形態のポリ無水マレイン酸と、約1重量%~約10重量%のトリアゾールと、を含む。
【0019】
いくつかの態様では、地熱井は、地熱生産井である。
【0020】
いくつかの態様では、水性系は、地熱発電所に配置され、いくつかの態様では、地熱発電所は、乾燥蒸気ステーション、フラッシュ蒸気ステーション、及びバイナリサイクルステーションからなる群から選択される。
【0021】
いくつかの態様では、水性系はブラインを含む。
【0022】
地熱坑井における方解石スケールを抑制又は低減するための方法も提供する。当該方法は、坑井に組成物を注入することを含み、組成物は、AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーを含む。
【0023】
いくつかの態様では、水性系は、約50℃~約350℃又は約100℃~約350℃の温度を有する水を含む。
【0024】
本開示はまた、組成物も提供する。組成物は、AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマー、ポリカルボン酸、及びトリアゾールを含み得る。
【0025】
最後に、本開示は、地熱井における方解石スケール形成を抑制するための、AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマー、ポリカルボン酸、及びトリアゾールを含む組成物の使用を提供する。
【0026】
前述は、後に続く発明を実施するための形態をより良好に理解できるように、本開示の特徴及び技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示の更なる特徴及び利点は、以下に説明される。開示される概念及び具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者により理解されるべきである。そのような同等の実施形態が、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨及び範囲から逸脱しないことも、当業者によって認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
発明の詳細な説明を、以下の図面に対する具体的な参照とともに本明細書において以下に説明する。
【0028】
【0029】
【
図2】加熱(-H-)及び非加熱(-N-)加水分解ポリ無水マレイン酸、並びにAA、AMPS、及び4-メトキシ-N-(3-N’,N’-ジメチルアミノプロピル)ナフタルイミド、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピルクアット(HAPNQタグ)のコポリマーを含む加熱(-H-)及び非加熱(-N-)組成物を用いた方解石抑制性能の結果を示している図である。組成物はまた、ポリ(マレイン酸)及びベンゾトリアゾールも含んでいた。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、実施形態への言及を提供するが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更がなされ得ることを認識するであろう。様々な実施形態が、図面を参照して詳述される。様々な実施形態への言及は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。更に、本明細書に記載されたいかなる例も、限定を意図するものではなく、添付の特許請求の範囲の多くの可能な実施形態のうちのいくつかを単に述べるものである。
【0031】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が優先される。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料が、本発明の実施又は試験に使用され得るが、方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る(can)」、「含有する(contain(s))」、及びそれらの変形は、追加の作用又は構造の可能性を排除しない制限のない移行句、用語、又は単語であることが意図される。単数形「a」、「and」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0033】
「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である移行句「含む(comprising)」は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素、成分、原料、及び/又は方法ステップを除外しない。
【0034】
移行句「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に明記されていない任意の要素、成分、原料、及び/又は方法ステップを除外する。
【0035】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲を、特定の要素、成分、原料及び/又はステップ、並びに特許請求される発明の基本的な及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「任意選択の」又は「任意選択に」は、その後に記載された事象、又は状況が発生する可能性があるが発生する必要はなく、並びにその説明に事象又は状況が生じる事例及び生じない事例が含まれることを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の配合成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流速、圧力、及び同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は使用配合物を作製するために使用される典型的な測定及び取り扱い手順により;これらの手順における偶発的な誤りにより;方法を実行するために使用される出発物質若しくは配合成分の製造、供給源、又は純度の違いにより、及び同様の近似考慮事項により生じる可能性がある数値量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する配合物の劣化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する配合物を混合又は加工することに起因して異なる量を包含する。「約」という用語によって修飾されている場合、添付の特許請求の範囲は、これらの量と同等のものを含む。「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が判定され得ない場合、「約」は、例えば、引用された値の5%以内を指し得る。
【0038】
更に、「約」が値の範囲を説明するために使用される場合、文脈によって特に限定されない限り、例えば「約1~5」は、「1~5」及び「約1~約5」及び「1~約5」及び「約1~5」を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、「から本質的になる」を意味し、「からなる」を含む。「から本質的になる」及び「からなる」は、米国特許法に準じて解釈される。例えば、特定の化合物又は材料を「実質的に含まない」溶液は、その化合物若しくは材料を含まなくてもよいか、又は意図しない汚染、副反応、不完全な精製若しくは使用した試験方法などによって存在する少量のその化合物若しくは材料を有してもよい。「少量」は、微量、測定不可能な量、価値若しくは特性を妨げない量、又は文脈で提供されるようないくつかの他の量であり得る。提供された成分のリスト「のみ実質的に」有する組成物は、それらの成分のみからなるか、又は存在する微量のいくつかの他の成分を有するか、又は組成物の特性に物質的に影響を及ぼさない1つ以上の更なる成分を有し得る。更に、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の成分のタイプ若しくは量、特性、測定可能な量、方法、値、又は範囲を修飾する「実質的に」とは、意図された組成物、特性、量、方法、値、又は範囲を無効にする様式で、記載された組成物、特性、量、方法、値、又はその範囲に全体的に影響を及ぼさない変動を指す。用語「実質的に」で修飾されている場合、本明細書に添付の特許請求の範囲は、この定義による等価物を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、任意の列挙された値の範囲は、範囲内の全ての値を想定し、列挙された範囲内の実数値である終点を有する任意の部分範囲を列挙する特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきである。例として、1~5の範囲に関する本明細書における開示は、次の範囲、すなわち、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5、3~4、及び4~5のうちのいずれかに対する特許請求の範囲を支持するものとみなされるものとする。
【0041】
特に明記されていない限り、本明細書で言及される全ての分子量は、重量平均分子量であり、全ての粘度は、ニート(希釈されていない)ポリマーを用いて約25℃で測定した。
【0042】
水性系は、異なる化合物の混合物を含むスケールの堆積物を形成し得る。堆積物は、高温で方解石スケール抑制剤に対して耐性であり得る。本開示は、水性系において方解石堆積物を抑制又は低減するための組成物に関する。いくつかの実施形態では、水性系は、高温で機能している可能性がある。いくつかの実施形態では、水性系は、地熱井又は地熱発電所であり得る。地熱井及び坑外設備におけるより高温でのスケーリングを緩和するための安定なスケール抑制剤に対する需要が増大している。スケール抑制剤の性能は、地熱プラントにおける発電並びに維持コストに直接影響を与える。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態では、水性系での方解石スケールの抑制又は低減のための方法が開示される。当該方法は、組成物を水性系中に注入することを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物が適用されるときの地熱井における水性流中の水の温度は、約50℃~約350℃の範囲である。いくつかの実施形態では、水の温度は、約100℃~約320℃、約150℃~約320℃、約200℃~約350℃、約250℃~320℃、又は約270℃~約350℃である。
【0044】
いくつかの実施形態では、水性系には、冷却水、地熱水、脱塩目的の塩水、ボイラー処理及び蒸気生成用に調製される工業用水、石油原油回収用のダウンホール水、パルプ及び製紙工場用水、又は鉱業及び選鉱用水が含まれ得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物は、高温で機能する装置に注入される。例えば、組成物は、約50℃~約350℃の温度を有する水を運ぶ熱交換器中に注入され得る。いくつかの実施形態では、熱交換器における水の温度は、約100℃~約320℃、約150℃~約320℃、約200℃~約350℃、約250℃~320℃、又は約270℃~約350℃である。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、ステンレス鋼又は高耐食性合金から一般に形成され得る供給ラインを介して、地熱井に注入される。供給ラインは、上向きに流れる生産流の中を通り、スケール抑制剤をダウンホールにポンプで送り込む管である。生産流の流体は、約200℃~約260℃(約400°F~約500°F)ほどの温度を有する非常に高温であり、供給ラインの温度も同様に、約200℃~約260℃の温度に達し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、本組成物は、遭遇される最下部のスケール形成部位(一般に、フラッシュ帯域)の約200~約400フィート下にあり得る坑井内のある点で注入され得る。これは、最初の問題領域に達したときに、抑制剤が生産流体に適切に混合されるように、供給点がスケール堆積領域の十分前方にあることを確実にするためであり得る。地熱井自体は、少なくとも約1又は2km(約3,280又は6,560フィート)広がっている可能性があり、大幅により深くある可能性がある。約3,000フィート~約5,000フィートの長さのスケール抑制剤供給ラインは、珍しくない。供給ライン内でのスケール抑制剤の滞留時間は、約20~約30分以上であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、遭遇される最も下のスケール形成部位の約400フィート~約800フィート下に存在し得る坑井中のポイントで注入され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、発生する最下部のスケール形成部位の更に約800フィート下にあり得る坑井中のポイントで注入され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、水性系のプロセスユニット中に注入され得る。例えば、プロセスユニットとしては、分離器、熱交換器、凝縮器、還元井などが挙げられるが、これらに限定されない。分離器は、例えば、水又はブラインを含有し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、水性系は、ブラインを含み得る。水又はブラインは、少なくとも約5ppm又は最大約500ppmの溶解した炭酸塩及び重炭酸塩を含有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、ブラインは、鉄、硫化物、及びシリカを含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、水性系は、地熱系であり得る。いくつかの実施形態では、地熱井は、地熱生産井である。地熱系はまた、乾燥蒸気ステーション、フラッシュ蒸気ステーション、又はバイナリサイクルステーションなどの地熱発電所でもあり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物は、AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーを含む。いくつかの態様では、コポリマーはAAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ポリ無水マレイン酸を更に含む。
【0053】
アニオン性モノマーの例としては、AMPS、スチレンスルホン酸、2-メチルアクリルイミド-2-メチルプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホアルキルアクリレート、スルホアルキルメタクリレート、アリルスルホン酸、3-メタクリルアミド-2-ヒドロキシプロピルスルホン酸、及びそれらの任意の塩が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アニオン性モノマーはAMPSである。
【0054】
いくつかの態様では、コポリマーはAA/AMPSコポリマーである。コポリマー中のAAの量は、約40重量%~約80重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、コポリマー中のAAの量は、約50重量%、約60重量%、又は約70重量%であり得る。コポリマー中のAMPSの量は、約20重量%~約60重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、コポリマー中のAMPSの量は、約30重量%、約40重量%、又は約50重量%であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物は、トリアゾールを更に含む。トリアゾールの例には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロ-トリルトリアゾール、又はニトロ化トリアゾールが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、追加の腐食抑制剤は、2-置換ベンズイミダゾールであり得る。
【0056】
ポリ無水マレイン酸は、加水分解されたポリ無水マレイン酸であり得る。加水分解されたポリ無水マレイン酸の例としては、式I~IVの化合物のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【化1】
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は、約20重量%~約50重量%のポリ無水マレイン酸を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約30重量%~約40重量%のポリ無水マレイン酸を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、組成物は、約1重量%~約20重量%のコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約5重量%~約15重量%のコポリマーを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、組成物は、約1重量%~約10重量%のトリアゾールを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約2重量%~約6重量%のトリアゾールを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、組成物は、約10重量%のコポリマー、約35重量%のポリ無水マレイン酸、及び約4重量%のトリアゾールを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、組成物は、約1ppm~約1000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約500ppm、約1ppm~約300ppm、約1ppm~約200ppm、約1ppm~約100ppm、約1ppm~約50ppm、約100ppm~約1000ppm、約250ppm~約1000ppm、約500ppm~約1000ppm、又は約750ppm~約1000ppmの範囲の量で添加される。
【0062】
いくつかの実施形態では、加水分解されたポリ無水マレイン酸の重量平均分子量は、約300Da~約1,000Daの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、AA/AMPSコポリマーの重量平均分子量は、約18,000Da~約20,000Daである。コポリマーの重量平均分子量は、例えば、ゲルクロマトグラフィーを使用して測定され得る。
【0063】
特定の実施形態では、地熱坑井中での方解石スケールの抑制又は低減のための方法が開示される。本方法は、組成物を坑井に注入することを含み得る。組成物は、方解石スケール抑制剤を含み得る。組成物は、AA又はメタクリル酸とアニオン性モノマーとのコポリマーを含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、スケール抑制剤活性物質の水溶液として水性系に注入され得る。そのような組成物は、約15重量%~約70重量%の活性物質を含有し得る。ある特定の実施形態では、本組成物は、約20重量%~約30重量%の活性物質を含有し得る。いくつかの実施形態では、スケール抑制剤の水性組成物は、ダウンホールでの送達のために、約1重量%~約15重量%の活性物質濃度で、地熱井の供給ラインに導入され得る。活性物質濃度は、例えば、組成物と一緒に水性希釈剤を注入することによって調整され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本組成物は、硫化水素消去剤、腐食抑制剤、分散剤、ガス水和物抑制剤、殺生物剤、界面活性剤、溶媒、不活性トレーサー、又はそれらの任意の組み合わせなどの追加の添加剤を含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の腐食抑制剤、1つ以上の他のスケール抑制剤、1つ以上の蛍光トレーサー、1つ以上の水処理ポリマー、1つ以上のポリアルコキシ化合物、又は任意の他の好適な添加剤若しくは追加の成分を含み得る。代替的な実施形態では、そのような添加剤は、本発明のポリマーと同時に添加されても、連続的に添加されてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、組成物に不活性トレーサーを含めることで、組成物を、3D TRASAR(登録商標)技術(Nalco Water,an Ecolab Company,Naperville,Ill.,USAから入手可能)などの蛍光追跡技術と適合するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、不活性蛍光トレーサーは、組成物中に含められて、投与量レベルを決定する手段を提供することができる。既知の割合の蛍光トレーサーは、本組成物中のスケール抑制剤と同時又は連続的に添加することができる。有効な不活性蛍光トレーサーは、系内の他の成分と化学的に非反応性であり、かつ経時的に著しく劣化しない物質を含み得る。
【0068】
代表的な不活性蛍光トレーサーとしては、フルオレセイン又はフルオレセイン誘導体、ローダミン又はローダミン誘導体、ナフタレンスルホン酸(モノ-、ジ-、トリ-など)、ピレンスルホン酸(モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-など)、スルホン酸を含有するスチルベン誘導体(蛍光増白剤を含む)、ビフェニルスルホン酸、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンE(a-トコフェロール)、エトキシキン、カフェイン、バニリン、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合ポリマー、フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、多環芳香族炭化水素、アミン、フェノール、スルホン酸、カルボン酸官能基を任意の組み合わせで含有する芳香族(ポリ)環式炭化水素、N、O又はSを有する(ポリ)複素環式芳香族炭化水素、以下の部分:ナフタレンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、又はスチルベンスルホン酸のうちの少なくとも1つを含有するポリマーが挙げられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本組成物は、硫化物及びシリカ以外のスケールを分散させるための追加のスケール抑制剤を含み得る。これらの追加のスケール抑制剤には、無機及び有機ポリリン酸、ホスホン酸、ならびにポリカルボン酸が含まれ得るが、これらに限定されない。これらの抑制剤は、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、及びシュウ酸カルシウムなどの他のスケールの抑制又は分散に役立ち得る。
【0070】
特定の実施形態では、開示される方法は、当該産業で既知である他の実用品と組み合わせることができる。代表的な実用品には、系内の様々な添加剤の含有量を測定するためのセンサ、溶解又は微粒子汚染物質センサ、抵抗、静電容量、分光吸収又は透過率、比色測定、及び蛍光に基づく他のセンサ、並びにセンサ/コントローラ結果を分析するための数学的ツール(例えば、多変量分析、計量化学、オン/オフ投与量制御、PID投与量制御など、及びこれらの組み合わせ)が含まれる。
【実施例】
【0071】
3つの異なる組成物を、水熱安定性及び性能について評価した。組成物及びそれらの主な原料成分のリストを、表1に示す。
【表1】
【0072】
組成物1及び3において使用されるHAPNQの構造及び調製は、参照により全体が本出願に組み込まれる米国特許第6,645,428号において公開されている通りである。HAPNQの化学構造を以下に示す。
【化2】
【0073】
HAPNQなどの蛍光モノマーの利点は、タグ付けされた処理ポリマーの形成におけるそれらの使用において、蛍光モノマーが、ポリマー中の他の構造によって、又は系中の他の配合成分によって、有意に影響を受けない点である。したがって、ポリマーは、塩素及びSTABREX(登録商標)の存在下で安定であり、STABREX(登録商標)は、Nalco Water,an Ecolab Companyから入手可能な酸化性殺生物剤の商品名である。タグ付けされた処理ポリマーの更なる利点は、スペクトル特性、すなわち、ポリマーの励起及び発光の両方が、近可視波長領域(>370nm)にあり、したがって、固体機器の使用を可能にし、UV波長領域において一般に生じる干渉が潜在的に最小限に抑えられる点である。
【0074】
様々なスケール抑制剤の分子構造に対する温度の効果を評価するために、水熱安定性実験を行った。非加熱試料及び加熱試料の両方を使用してスケール抑制剤性能を評価するために、静的スケール抑制試験を行った。
【0075】
実験の第1の部分は、箱形炉内に配置した非撹拌Parr反応器を使用して実施した。Parr反応器は、約500℃の最高温度及び約350バールの最大圧力を取り扱うことができる。箱形炉は、具体的には、Parr反応器を所望の温度に加熱するために使用される。箱形炉温度を制御することによって、Parr反応器の温度を維持した。反応器と試料との間の温度勾配は無視できると仮定した。分子構造及びスケール防止剤の性能に対する加熱の影響を見るために、約280o℃で実験を行った。
【0076】
組成物は、一般に、ppm範囲(約1重量%未満)で供給され、約90%の脱イオン水を含む約10重量%の生成物は、NMR分析から意味のある結論を出すための良好な希釈試料であることが分かった。スケール抑制剤は、一般に、目詰まりを回避するために坑井の中にポンプで注入される前に希釈された。
【0077】
試料は、約10重量%の組成物1、2、又は3を約90%のDI水と混合することによって、調製した。約50mlの試料をParr反応器に添加し、箱形炉中に保持した。箱形炉の温度を、1時間で約280℃に上昇させ、次いで、温度を約280℃で更に約1時間維持し、次いで、約2時間で室温まで冷却して、反応器内の圧力が大気圧条件に達するようにした(製品が高温であった実時間は約4時間)。これは密閉容器であったため、Parr反応器内の圧力は試料の飽和圧力に等しいと仮定された。
【0078】
地熱産業において、生産井は、他の単位操作と比較して最も高い温度を有し、方解石スケールの形成が主な問題である。静的性能試験実験を方解石スケールについて行った。NACE試験(TM0374-2007)手順を本研究で使用して、スケール抑制剤の方解石抑制性能効率を評価した。ブライン試料は、カルシウム優勢ブライン試料と重炭酸塩優勢ブライン試料とを混合することによって調製した。個々のブライン試料の詳細を表2に示す。カルシウムと重炭酸塩ブライン試料とを混合した後の各イオンの計算されたppm濃度を、表3に示す。NACE標準手順に従って混合する前に、カルシウム及び重炭酸塩が優勢な試料を、CO
2で、約30分間パージした。
【表2】
【表3】
【0079】
NACE試験で使用されたブラインの化学的性質及び条件は、実際の地熱ブラインの化学的性質の多くとは異なっていたことに留意することが重要である。試験は、加熱試料対非加熱試料の性能を比較するために選択された。NACE化学のために方解石スケールを抑制するのに必要な用量は、実際の地熱現場で必要とされる用量を表していない。
【0080】
抑制効率は以下の式を使用して計算した。
【数1】
式中、C
a=沈殿後の、スケール抑制剤で処理された試料中のCa
2+濃度、C
b=沈殿後の、処理されていない(スケール抑制剤無し)試料中のCa
2+濃度、C
c=沈殿前の、ブランク中のCa
2+濃度(スケール抑制剤及び重炭酸塩ブライン無し)。
【0081】
実施例1
【0082】
スペクトルのNMR分析は、熱処理が、スペクトル中に鋭い線を引き起こす小分子の形成をもたらしたことを示唆している。小分子は、AMPS官能基の加水分解から生じた可能性が最も高い。試料間にはpH差があった。特定の理論に束縛されるものではないが、試料間のpH差は、加熱試料に関する小分子シグナルの化学シフトの差の原因であると仮定した。NMR分析は、存在するポリマーがAA又はアクリル酸/アクリルアミドコポリマーへと加水分解されたことを示唆している。
【0083】
この組成物は、
図1に示したように、加熱後により良好な性能を示した。通常は、試料がより高い温度に加熱されると、性能は低下する。しかしながら、この場合、結果は逆になっている。性能実験を3回繰り返してこれらの結果を確認した。加熱された試料の性能傾向の増加が観察された。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、性能の増加は、主に、加熱後の活性成分のアクリル基への変換に起因しているものであり、それによって方解石スケール抑制が強化されたと仮定される。
【0084】
実施例2
【0085】
次に、組成物2を試験した。非加熱及び加熱試料の炭素NMR分析は、ポリマー分解の証拠を示した。定量は困難であったが、カルボニル基の喪失があった。脱炭酸がある場合、二酸化炭素の発生が予想されるが、追加の炭酸塩は加熱試料中に観察されなかった。カルボン酸基の喪失は、約20モルパーセントの範囲であったと概算される。試料を加熱することによって発生したいくつもの更なる脂肪族シグナルが存在する。
【0086】
非加熱組成物は、方解石抑制について適度に良好な性能を示したが、抑制性能は加熱後に低下した。これらの結果は、NMRの予測と一致する。この結果を考慮すると、この組成物は、試験温度で安定ではなかった。
【0087】
実施例3
【0088】
この実施例では、組成物3を試験した。この組成物は、2つのポリマー、すなわち、AA/AMPSコポリマー及びポリ(マレイン酸)を、ベンゾトリアゾールと一緒に含有していた。加熱及び非加熱組成物の炭素NMR分析は、
図2に示したように、温度に基づくポリマーの非常にわずかな分解を表している。AA/AMPSポリマーシグナルは鋭くなったが、これは、AMPS単位のいくつかの加水分解と、おそらくAA/AMPSポリマーの分子量の減少との組み合わせに起因するものであった。ポリ(マレイン)酸ポリマーは、唯一の活性成分であるポリ無水マレイン酸を加水分解した組成物と比較して、これらの条件によって分解されるようには見えなかった。ベンゾトリアゾールがこれらの条件によって分解されたという有力な証拠はない。ベンゾトリアゾール成分から生じる有意な量の新たな芳香族シグナルは観察されなかった。
【0089】
方解石抑制に関する性能データもまた、NMR分析からの知見を確認した。加熱組成物の性能は、非加熱組成物よりもわずかに低かった。しかしながら、それは、活性配合成分として加水分解ポリ無水マレイン酸のみを有する組成物の性能よりも良好であった。
【0090】
本明細書で開示及び特許請求される組成物及び方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験を伴わずに作製及び実行され得る。本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。加えて、異なるように明示的に述べられない限り、「a(ある1つの)」という用語は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を含むことを意図する。例えば、「1つのモノマー(a monomer)」は、「少なくとも1つのモノマー」又は「1つ以上のモノマー」を含むことを意図している。
【0091】
絶対項又は近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、双方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲及びパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲(全ての小数値及び全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0092】
更に、本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態の一部又は全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】