(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】流体噴流で案内されたレーザ光による被加工物の旋削方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/146 20140101AFI20231102BHJP
B23K 26/0622 20140101ALI20231102BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20231102BHJP
【FI】
B23K26/146
B23K26/0622
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526069
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021079968
(87)【国際公開番号】W WO2022090386
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506387498
【氏名又は名称】シノヴァ エスアー
【氏名又は名称原語表記】SYNOVA SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】モワンジョン、ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ブルッケル、フローレン
(72)【発明者】
【氏名】ディボアン、ジェレミ
(72)【発明者】
【氏名】ズリッド、アメデ
(72)【発明者】
【氏名】リヘルツハーゲン、ベルナルド
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA06
4E168CA15
4E168CB22
4E168DA40
4E168DA45
4E168DA52
4E168EA17
4E168EA24
4E168FA05
4E168FB07
4E168FC05
4E168GA05
4E168JA05
4E168JA15
4E168JA16
(57)【要約】
【課題】本開示は、流体噴流に結合されたレーザ光、すなわち流体噴流で案内されたレーザ光で被加工物を旋削することに関するものである。
【解決手段】本開示はそれぞれ、被加工物を加工するための方法(20)及び装置(10)を提供し、加工は被加工物を旋削することを含んでいる。本方法は、流体噴流(11)で案内されたレーザ光(12)を提供するように構成された装置(10)によって実施される。本方法は、被加工物(30)を旋削することを含み、被加工物を旋削することは、加工中に回転軸(31)の周りに被加工物を回転させることと、被加工物の加工面(32)に流体噴流で案内されたレーザ光を照射することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(30)を加工するための方法(20)であって、この方法(20)は、流体噴流(11)で案内されたレーザ光(12)を提供する装置(10)によって実行され、この方法(20)は、前記被加工物(30)を旋削(21、22)することを含み、前記被加工物(30)の旋削(21、22)は、
加工中に回転軸(31)を中心に前記被加工物(30)を回転(21)させること、そして
前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)を前記被加工物(30)の加工面(32)に照射(22)することを含む、方法(20)。
【請求項2】
前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)は、前記加工面(32)に対して垂直、又は前記加工面(32)に対して接線方向、又は前記加工面(32)に対して実質的に接線方向に照射される、請求項1に記載の方法(20)。
【請求項3】
前記回転軸(31)は、前記装置(10)が提供する前記流体噴流(11)によって案内された前記レーザ光(12)の伝搬方向に対して垂直である、請求項1又は請求項2に記載の方法(20)。
【請求項4】
前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)の伝搬方向が前記回転軸(31)と交差しない、請求項3に記載の方法(20)。
【請求項5】
前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)は、前記加工面(32)に対してある角度で照射される、請求項3又は請求項4に記載の方法(20)。
【請求項6】
前記被加工物(30)の前記旋削(21、22)中に、前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)を移動方向に沿って移動(23)させることをさらに含む、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の方法(20)。
【請求項7】
前記移動方向は、前記回転軸(31)と平行又は垂直であり、前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)の伝搬方向と垂直である、請求項6に記載の方法(20)。
【請求項8】
前記回転軸(31)は、前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)と平行である、請求項1又は請求項2に記載の方法(20)。
【請求項9】
前記レーザ光(12)はパルス状にされ、そして
前記被加工物(30)の前記加工面(32)において、パルス状にされた前記レーザ光(12)の連続するパルスが互いに少なくとも50%重なるように、前記被加工物(30)を前記回転軸(31)の周りに回転させる回転速度が設定される、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の方法(20)。
【請求項10】
前記レーザ光(12)はパルス状にされ、そして
パルス状にされた前記レーザ光(12)は、前記被加工物(30)の特定の材料に基づいて選択された少なくとも2つの重ね合わされたパルスを含んでおり、
第1のパルスは、第2のパルスと異なるパワー及び周波数を有する、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の方法(20)。
【請求項11】
前記第1のパルスは、前記被加工物(30)の特定の材料を切除するのに適しており、そして
前記第2のパルスは、前記被加工物(30)の特定の材料を切除するのに適しておらず、及び/又は、前記被加工物(30)の特定の材料の表面を滑らかにするのに適しており、例えば、前記第1のパルスで特定の材料を切除することによって形成された表面を滑らかにするのに適している、請求項10に記載の方法(20)。
【請求項12】
前記被加工物(30)を旋削(21,22)する前に、前記被加工物(30)を部分切削(24)すること、を更に含み、
前記被加工物(30)の部分切削(24)は、前記被加工物(30)の前記回転軸(31)に関する直径を小さくするために、前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)で前記被加工物(30)から一連の一部分を切り離すことを含む、請求項1から請求項11の何れか一項に記載の方法(20)。
【請求項13】
前記被加工物(30)から前記一部分を切り離すことは、
前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)で前記被加工物(30)に切り込み(81)、
前記回転軸(31)の周りにある角度だけ前記被加工物(30)を回転(82)させ、そして
前記被加工物(30)から前記一部分を切除するために、前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)で前記被加工物(30)に再び切り込む(83)、請求項12に記載の方法(20)。
【請求項14】
前記被加工物(30)の前記部分切削(24)は、
前記被加工物(30)から一部分である第1のサブセットを切り離すことであって、前記回転軸(31)に対して前記被加工物(30)の直径を小さくするために前記ある角度がより大きな角度であり、そして
前記回転軸(31)に対して前記被加工物(30)の直径をさらに小さくするために、前記被加工物(30)から一部分である第2のサブセットを切り離すことであり、前記ある角度がより小さい角度である、請求項13に記載の方法(20)。
【請求項15】
前記被加工物(30)の大きさ及び/又は形状に基づき、加工された前記被加工物(30)の表面仕上げ及び/又は前記被加工物(30)を加工する際のプロセス時間に関して、最適化アルゴリズムを実行する工程と、
前記最適化アルゴリズムの結果に基づいて、前記被加工物(30)の部分切削(24)及び旋削(21、22)を実行することをさらに含む、請求項12から請求項14の何れか一項に記載の方法(20)。
【請求項16】
前記方法(20)は、前記装置(10)によって自動的に、かつ/又は途切れなく実行され、かつ/又は、
前記方法(20)は、前記装置(10)によって単一プロセスで実行される、請求項1から請求項15の何れか一項に記載の方法(20)。
【請求項17】
被加工物(30)を加工するための装置(10)であって、この装置(10)は、
流体噴流(11)で案内されたレーザ光(12)を提供するように構成された加工ユニット(101)と、
前記被加工物(30)を保持し回転させるように構成されたホルダ(102)、及び
前記加工ユニット(101)及び前記ホルダ(102)をそれぞれ制御して、前記被加工物(30)を旋削(21、22)するように構成される制御ユニット(103)と、を備え、この制御ユニット(103)は、
加工中に回転軸(31)を中心に前記被加工物(30)を回転(21)させ、そして
前記流体噴流(11)で案内された前記レーザ光(12)を前記被加工物(30)の加工面(32)に照射(22)する、装置(10)。
【請求項18】
プロセッサ、特に前記制御ユニット(103)のプロセッサによって実行されるときに請求項17に記載の装置(10)を制御するため、又は請求項1から請求項16の何れか一項に記載の方法(20)を実行するための何れかのためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被加工物を加工する分野に関し、特に、旋削によって被加工物を加工することに関する。特に、本開示は、流体噴流に結合されたレーザ光を用いた、すなわち流体噴流で案内されたレーザ光を用いた被加工物の旋削に関するものである。本開示はそれぞれ、被加工物を加工するための方法及び装置を提供し、加工は、被加工物を旋削することを含む。本方法は、装置によって実施されてもよく、装置は、流体噴流で案内されたレーザ光を提供するように構成される。
【背景技術】
【0002】
旋削は、被加工物を加工するプロセスであり、例えば、被加工物が回転する間に、切削工具を使用して被加工物に切り込むことからなる。これにより、切削工具は、例えば、切削工具が被加工物表面上で螺旋状の経路を描くように、被加工物が回転する間に直線的に移動する。すなわち、従来の被加工物の旋削は、被加工物を回転軸の周りに回転させると同時に、被加工物を加工、例えば、切削工具で切削することからなる。被加工物の旋削速度は、被加工物を回転させる回転速度によって決定される。従来の切削工具は、従来型のレーザーであってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の旋削にはいくつかの欠点がある。例えば、全ての材料が従来の方法、すなわち従来の切削工具を使用して容易に旋削できるわけではない。ダイヤモンドや超合金のように、切削工具にとって硬すぎる材料もあれば、ファイノックス(PHYNOX)やマジックゴールド(MAGIC GOLD)のように脆すぎたり、被加工物の旋削中に切削工具から発生する熱に対して弱い材料もある。さらに、被加工物を旋削するためにまだ実現可能な被加工物の大きさには一般的には制限がある。具体的には、高アスペクト比の被加工物は、従来の旋削では加工が困難である。さらに、より大きな被加工物(より大きな体積及び/又は直径を有する)は、従来のレーザーによる旋削で加工することが非常に困難である場合がある。最後に、旋削された被加工物の加工面の表面粗さは、従来の旋削の後では満足できないことが多く、すなわち、表面が粗すぎることが多く、研磨などのさらなる加工工程が必要となる。
【0004】
従来の旋削の別の欠点は、この加工工程を、被加工物の他の加工工程、例えば、被加工物(特に旋削された被加工物)のドリル加工、ミリング加工又は彫金加工も含む加工フローに容易に組み込むことができないことである。
【0005】
従って、本発明の実施形態は、旋削によって被加工物を加工する従来の方法を改善することを目的とする。目的は、特に、非常に硬く、及び/又は脆い材料や熱に弱い材料であっても、多くの種類の材料の被加工物を旋削することができる方法及び装置をそれぞれ提供することである。旋削は、全自動で行われることが望ましい。さらに、旋削を被加工物の1つ又は複数の他の加工工程と統合することが容易である。旋削は、さらに、加工された被加工物の加工面の表面粗さの改善をもたらす。さらに、より大きな被加工物に対しても旋削を実施することが十分に可能である。最後に、所定の精度、品質及び形状の被加工物を加工するためのプロセス時間が短縮され、同時に、加工プロセス中の工具消費量も低減される。本発明の実施形態は、硬くて脆い、及び/又は熱に弱い材料の被加工物に高アスペクト比の溝を加工するような、新しい形式の被加工物の加工も可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的及び他の目的は、本願の独立請求項で定義される実施形態によって達成される。これらの実施形態の有利な実施は、従属請求項に定義されているる。
【0007】
特に、本発明の実施形態は、一般に、被加工物を旋削することからなる被加工物の加工方法を実施するための装置の使用を基礎としている。この装置は、内部反射によって流体噴流内で案内されるレーザ光を提供する。この流体噴流で案内されるレーザ光は、被加工物を効率的に旋削することができる。それにより、本発明の実施形態によれば、レーザ光と被加工物の加工面との間の異なる方向付けが可能である。これらの実施形態により、超硬質材料の被加工物や脆く又は熱に弱い材料の被加工物であっても、特に高アスペクト比又は複雑な形状に対して、非常に高い精度で旋削することができる。
【0008】
第1の態様は、被加工物を加工するための方法を提供するものであり、この方法は、流体噴流で案内されたレーザ光を提供する装置によって実施され、この方法は、被加工物を旋削することを含み、被加工物を旋削することは、加工中に回転軸の周りに被加工物を回転させることと、被加工物の加工面に流体噴流で案内されたレーザ光を照射することと、を含む被加工物の加工方法である。
【0009】
被加工物は、旋削中、特に被加工物の加工中に連続的に回転している。流体噴流で案内されたレーザ光は、非常に硬い材料、脆い又は非常に熱に弱い材料を含む、多くの種類の材料の被加工物の旋削を可能にする。本装置により、旋削を全自動で行うことができる。流体噴流で案内されたレーザ光を使用しない従来の旋削方法と比較して、第1の態様の方法では、被加工物の旋削の改善された結果が達成される。例えば、速度、精度、及び表面粗さ、又は流体噴流の到達性の観点からの改善である。
【0010】
被加工物は、ある直径を有する円柱形のような規則的な形状を有する場合がある。被加工物の旋削は、そのような被加工物の1つ又は複数の円柱面を形成してもよく、1つ又は複数の円柱面は、縮小した直径を有してもよい。一般に、任意の回転形状が実現可能である。旋削はまた、被加工物の軸に対して主に垂直に配向された1つ又は複数の表面を形成してもよく、これは旋削によるフェイシング(facing)と呼ばれることがある。旋削はまた、被加工物の外面に1つ以上の溝、すなわち被加工物の直径に対して円周方向の溝を形成することができ、これは旋削による溝加工と呼ばれる場合がある。旋削はまた、被加工物の端面に1つ以上の溝、すなわち回転軸の周りの溝を形成することもでき、これはボーリング(Boring)と呼ばれる場合がある。被加工物はまた、不規則な形状、例えば、回転軸に沿って無段階に変化する半径を有する、又は螺旋形状を有することができる。不規則な形状の加工前の被加工物は、例えば、以下にさらに説明するように、部分切削(facetting)によって、より規則的な形状を有する被加工物に前加工される場合がある。
【0011】
本方法の実施において、流体噴流で案内されたレーザ光は、加工面に対して垂直、又は加工面に対して接線方向、又は加工面に対して実質的に接線方向に照射される。
【0012】
従って、レーザ光と加工面との間の異なる方向付けが可能であり、これにより、異なる適用シナリオが可能になる。例えば、垂直な方向は、より高い材除去率をもたらし、従って、より大きな被加工物を加工するのに有益であり、接線方向は、より高い精度、より高い表面品質、及び被加工物のより少ない応力発生を可能にする。接線方向の場合は、ノズル軸(装置内で流体噴流を生成するための流体生成ノズルのノズル軸が、流体噴流の伝搬方向と一致している)が被加工物の加工面に接している。なお、6軸の装置が使用される場合、レーザ光と加工面との角度は任意である。
【0013】
本方法の実施において、回転軸は、装置によって提供される流体噴流で案内されたレーザ光の伝搬方向に対して垂直である。
【0014】
本方法の実施において、流体噴流で案内されたレーザ光の伝搬方向は、回転軸と交差しない。
【0015】
例えば、流体噴流で案内されたレーザ光の伝搬方向は回転軸に垂直であるが、回転軸からオフセットされている。すなわち、回転軸と加工面との間の最短の接続は、流体噴流で案内されたレーザ光の伝搬方向に対して斜めであり、例えば、垂直方向に対しても斜めである。
【0016】
本方法の実施において、流体噴流で案内されたレーザ光は、加工面に対して斜めに照射される。
【0017】
この角度は、例えば、90°(この場合、流体噴流で案内されたレーザ光は加工面に対して垂直に照射される)から0°(この場合、流体噴流で案内されたレーザ光は加工面に対して接線方向に照射される)の間である。
【0018】
第1の態様の方法に従って被加工物を流体噴流で案内されたレーザ光で加工すると、上記実施では被加工物の半径が減少する。その結果、流体噴流で案内されたレーザ光が加工面に照射される角度も同様に減少し、流体噴流で案内されたレーザ光が加工面に対して接線方向に照射されるようになるまで、流体噴流で案内されたレーザ光は加工面に照射される。この利点は、被加工物の加工が、加工面からの高い材料除去率(MRR)での粗い加工から、加工面に表面仕上げを行う平滑加工(滑らかにする)に自動的に変化することを意味する。
【0019】
さらに、流体噴流で案内されたレーザ光を所定のプロファイルに沿って移動させると、回転軸に対するその伝搬方向のオフセットが変化し、その結果、流体噴流で案内されたレーザ光が加工面に照射される角度も変化する。例えば、流体噴流で案内されたレーザ光の伝播方向が回転軸に近い場合、前記角度は大きく(90°に近づく)、スループット及びMRRが高くなる。それに応じて、プロファイル経路が流体噴流で案内されたレーザ光を回転軸に近づけるように導くので、除去される材料の量は増加し得る。このように、第1の態様の方法では、機能的な加工計画(strategy)を適用することができ、これは、除去する材料の量が多い領域に対して高いスループットを提供する一方で、加工物の外径に近い領域を、パラメータの変更なしに、滑らかな態様で仕上げることができる。
【0020】
本方法の実施において、本方法は、被加工物を旋削する間に、移動方向に沿って流体噴流で案内されたレーザ光を移動させることをさらに含む。
【0021】
従って、レーザ光は、被加工物表面上の決められた経路に沿って移動することができ、例えば、螺旋状の経路を描くことができる。従って、旋削による被加工物の異なる形状を実現することができる。特に、レーザ光は、被加工物とレーザ光とを互いに対して相対的に変位させることによって移動させることができる。つまり、レーザ光の効果的な移動を実現するために、被加工物を移動させてもよいし、被加工物とレーザ光を移動させてもよい。レーザ光及び/又は被加工物を2軸又は3軸に沿って同時に又は連続して直線的に変位させてもよい。さらに、加工中に被加工物を2つ又は3つの異なる回転軸の周りに回転させることも可能である。1つ又は複数の回転軸の周りの被加工物の回転は、1つ又は複数の軸に沿った加工物及び/又はレーザ光の直線変位と同期させることができる。
【0022】
流体噴流は、それに応じて被加工物の上を移動できる。一実施形態において、流体噴流は、被加工物上でマルチパス移動を行うことができる。マルチパス移動は、被加工物の回転によって(主に)もたらされる。
【0023】
本方法の実施において、移動方向は、回転軸に平行又は垂直であり、流体噴流で案内されたレーザ光の伝搬方向に対して垂直である。
【0024】
本方法の実施において、回転軸は、流体噴流で案内されたレーザ光に平行である。
【0025】
本方法の実施において、レーザ光はパルス状にされ、そして、回転軸の周りに被加工物を回転させる回転速度は、加工物の加工面において、パルス状にされたレーザ光の連続するパルスが少なくとも50%だけ互いに重なるように設定される。
【0026】
つまり、レーザ光は、被加工物の加工面上で連続した経路を描くことができる。パルス状のレーザ光の50%以上の重なりは、被加工物の効率的な加工、特に、加工された被加工物の加工面の低い表面粗さをもたらす。
【0027】
本方法の実施において、レーザ光はパルス状にされ、パルス状にされたレーザ光は、被加工物の特定の材料に基づいて選択された少なくとも2つの重ね合わされたパルスを含み、第1のパルスは第2のパルスと異なるパワー及び周波数を有する。
【0028】
言い換えれば、第1の態様の方法を用いて加工される被加工物の単一の材料に対して、少なくとも2つのパルスが選択され、複合パルスレーザ光を形成するために組み合わされ得る。各レーザパルスは、複合パルスレーザ光にある特定の、特に規則的なパルス形状、すなわち、少なくとも、第1のレーザパワー及び第1のレーザ周波数を有する第1のレーザパルス形状と、第2のレーザパワー及び第2のレーザ周波数を有する第2のレーザパルス形状を与える。2つのレーザーパワーとレーザー周波数は重なり合う。従って、複合パルスレーザ光は、ビートパターン(Beating Pattern)を示すことができる。
【0029】
主に、この方法は、1種類の材料(すなわち、特定の材料)の固体ブロックから作られ、旋削によってこの特定の材料を加工するために少なくとも2つのパルスを使用する被加工物を加工するために指定される。しかしながら、この方法は、2つ以上の材料を含む被加工物、例えば、異なる材料の層で作られた被加工物にも適用することができる。この場合、各層は、理想的には、層あたり少なくとも2つのパルスを使用することによって個別に加工される。このような2つの層が同時に加工される場合、好ましくは複数のパルスが選択され、特に1つの層につき少なくとも2つのパルスが選択される。
【0030】
パルス状のレーザ光の第1のパルスは、例えば第1のレーザ光源によって出力されるドミナント/マスターレーザ発光によって生じ、第2のパルスは、例えば第2のレーザ光源によって出力されるスレーブレーザ発光によって生じる。各レーザ光源は、決められたパワー(絶対ピークパワー及び/又はパルス幅)及び周波数(パルス繰り返し率)を有する単純なパルスレーザ光を出力するように構成される。例えば、加工される特定の材料がそのレーザ光の強い吸収を示すように、及び/又はスレーブレーザ発光よりも高い強度を有するように、ドミナント/マスターレーザ発光が選択され、特定の材料がそのレーザ光の弱い吸収を示すように、及び/又はドミナントレーザ発光よりも低い強度を有するように、スレーブレーザ発光が選択され得る。しかしながら、ここで説明するマスター/スレーブレーザー発光に関連する効果は、本願では、必ずしも「第1」及び「第2」のパルスという名称に従って定義されるわけではない。各レーザーパルスのパワー及び周波数の選択は、加工される特定の材料の周波数依存吸収係数に基づく(依存する)ものであってもよい。言い換えれば、特定の材料は、異なるレーザ発振波長及びパルス特性で異なる吸収をする可能性がある。注目すべきは、2つの重ね合わされたレーザーパルスが、単一の専用レーザー光源によって生成される場合もあることである。
【0031】
複合パルスレーザ光は、被加工物の材料の除去(ablation)を生み出すように構成することができ、除去された表面は非常に均質なままである。特に、特定の被加工部材料に応じて少なくとも2つのパルスを選択することにより、非常に低い表面粗さ、及び少ないあるいは全く変化の無い表面品質を達成することができる。さらに、欠陥や欠けの発生を大幅に低減することができ、あるいは完全に抑制することもできる。従って、被加工物、特に硬質及び/又は脆い材料からなる被加工物の加工が改善される。
【0032】
本方法の実施において、第1のパルスは、被加工物の特定の材料を切除するのに適しており、そして第2のパルスは、被加工物の特定の材料を切除するのに適していない、及び/又は被加工物の特定の材料の表面を滑らかにする、例えば、第1のパルスで特定の材料を切断して形成された表面を滑らかにするのに適している。
【0033】
これは、単独で採用されたパルスレーザ光の第1のパルス(例えば、ドミナントレーザ発光)は、既に被加工物の材料を切断/切除するが、比較的悪い表面品質で切断/切除することを意味する。単独で採用された第2のパルス(第2のパルスレーザー発光)は、被加工材を切断/切除することはできないが、被加工材の表面を滑らかにしたり研磨したりすることだけは可能である。このような2つのレーザーパルス発光の能力は、それぞれの特性、特に、それぞれのパワーと周波数によるものである。これらの特性は、加工される被加工物の材料の種類に基づいて選択される。少なくとも2つのレーザパルスは、第1の態様の方法によって使用されるパルスレーザ光において重ね合わされるとき、改善された表面品質で被加工物を加工するために協働する。これは、かなり低い表面粗さにつながる可能性がある。さらに、欠陥や材料の欠けがほぼ回避され得る。
【0034】
本方法の実施において、本方法は、被加工物を旋削する前に、被加工物を部分切削(facetting)することをさらに含み、被加工物を部分切削することは、回転軸に対して被加工物の直径を小さくするために、流体噴流で案内されたレーザ光で被加工物から一連の一部分を切り離すことを含んでいる。
【0035】
部分切削は、旋削を含む被加工物の加工プロセス全体を高速化するために、より大きな被加工物のサイズを迅速に縮小するのに役立ち得る。部分切削は、特に被加工物の直径を小さくし、その後の旋削を効率的かつ高精度で実施することを可能にすることができる。
【0036】
特に、被加工物の直径は、被加工物に沿って(例えば、旋削のための主回転軸に沿って)変化し得る。このような被加工物を、旋削前に部分切削を行うことにより、制御された形状に切削することができ、その結果、旋削後の結果をより良くすることができる。さらに、部分切削によって、加工された被加工物の様々な形状、例えば、球体や半球体を含む形状を得ることができる場合がある。
【0037】
本方法の実施において、被加工物から一部分を切り離すことは、流体噴流で案内されたレーザ光で被加工物に切り込むことと、被加工物を回転軸の周りにある角度だけ回転させることと、流体噴流で案内されたレーザ光で再び被加工物に切り込んで、被加工物から一部分を切り離すことを含んでいる。
【0038】
被加工物への最初の切り込みは、被加工物の厚さに部分的に切り込むことを含み得る。注目すべきは、被加工物の1つ以上の一部分は、2つの切り込みとその間の被加工物の回転に代えて、1つの切り込みで被加工物から切断し/切り離すこともできることである。
【0039】
本方法の実施において、被加工物を部分切削することは、被加工物から一部分である第1のサブセットを切り離すことであって、ある角度がより大きな角度であり、回転軸に対する被加工物の直径を小さくすることと、被加工物から一部分である第2のサブセットを切り離すことであって、ある角度がより小さな角度であり、回転軸に対する被加工物の直径をさらに小さくすることを含む。
【0040】
このように、角度の大きい部分切削では、被加工物の形状は粗くなるが、部分切削は高速で行われ、その後の角度の小さい部分切削では、被加工物の形状をより滑らかにすることができる。その結果、プロセス時間を短縮することができる。
【0041】
本方法の実施において、本方法は、被加工物の大きさ及び/又は形状に基づき、加工された被加工物の表面仕上げ及び/又は被加工物を加工するプロセス時間に関して最適化アルゴリズムを実行することと、最適化アルゴリズムの結果に基づいて被加工物の部分切削及び旋削を行うことと、をさらに含む。
【0042】
最適化アルゴリズムは、部分切削計画、すなわち、被加工物をどのように部分切削するかを選択することができる。最適化アルゴリズムによって考慮される制約は、被加工物の最大直径又は体積(典型的には、部分切削前)及び被加工物の最小直径又は体積(典型的には、その後の旋削後に所望される)を含む。最適化アルゴリズムは、特に、被加工物からいくつの一部分を切り離すか、いくつの面を形成するか、部分切削で使用する特定の角度は何度か、上述のように一部分である第1のサブセットと第2のサブセットを切り離すか、第1の特定の角度と第2の特定の角度との差、どの側から被加工物に切り込むか(例えば、各切り込みについて決定)、各切り込みごとにどのレーザ出力を使用するか、部分切削後に被加工物をどの程度速く旋削するかの少なくとも一つを決定してもよい。
【0043】
本方法の実施において、被加工物の材料は、ダイヤモンド、ダイヤモンド複合材、多結晶ダイヤモンド、多結晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、超合金、セラミック、ファイノックス、チタン、チタン合金、コバルト合金、前述の各材料を含む複合材料のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0044】
従って、(非常に)硬い材料や(非常に)脆い材料や熱に弱い材料、あるいは柔軟(compliant)及び/又は柔らかい材料など、多くの種類の材料の被加工物を旋削することができる。
【0045】
本方法の実施において、本方法は、被加工物を旋削することに加えて、流体噴流で案内されたレーザ光を用いて、被加工物にまっすぐ深く切り込むこと、被加工物に穴を開けること、被加工物を彫金すること、及び被加工物をレーザミリングすることのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0046】
本方法の実施において、本方法は、装置により自動的に及び/又は途切れなく実行され、及び/又は本方法は、装置により単一プロセスで実行される。
【0047】
本方法の実施において、加工された被加工物の加工面の算術平均粗さが0.4μm以下である。
【0048】
特に、算術平均粗さは、0.2μm以下であってもよい。本方法の実施において、被加工物の直径は30mmより大きい。例えば、被加工物の直径は125mm以上であってもよい。
【0049】
従って、流体噴流を用いないレーザによる旋削と比較して、特に接線方向照射の場合、第1の態様の方法を用いてより大きな被加工物(より大きな直径及び/又は体積)に対しても旋削を行うことは十分に可能である。注目すべきは、被加工物が、例えば、一定かつ明確に定義された直径を有する、円柱状の規則的な形状、又は球状などの形状等を有することである。しかしながら、被加工物は、不規則な形状及び/又は旋削軸に沿って変化する直径を有することもある。この場合の直径は、被加工物について測定可能な最大の直径を指す場合がある。直径は、1つの被加工物表面(例えば、加工された表面)から反対側の被加工物表面までの距離として測定される。被加工物の直径は、この技術分野の当業者によって一般的に理解されている通りであってもよい。
【0050】
第2の態様は、被加工物を加工するための装置を提供し、この装置は、流体噴流で案内されたレーザ光を提供するように構成された加工ユニットと、被加工物を保持し回転させるように構成されたホルダと、加工ユニット及びホルダをそれぞれ制御し、被加工物を旋削するために加工中に回転軸周りに被加工物を回転させ、被加工物の加工面へ流体噴流で案内されたレーザ光を照射するように構成された制御ユニットとを備える。
【0051】
本装置の実施において、装置は、ホルダを回転させて、2つ又は3つの異なる回転軸の周りに被加工物を回転させ、2つ又は3つの軸に沿って被加工物を直線変位させるように構成され、及び/又は、制御ユニットは、ホルダを制御して1つ又は複数の回転軸周りの被加工物の回転と1つ又は複数の軸に沿った被加工物の直線変位とを同期させるように構成される。
【0052】
第2の態様の装置は、第1の態様の方法について上述した全ての利点を提供し、同様に実施することが可能である。すなわち、装置の実施形態において、装置は、上述した方法の実施形態に従って構成され得る。
【0053】
本装置は、特に、被加工物の旋削を含む被加工物の加工と、オプションとして被加工物のさらなる加工とを、途切れなく、かつ/又は自動的に、かつ/又は単一のプロセスで行うことができる。
【0054】
第3の態様は、プロセッサ、特に制御ユニットのプロセッサによって実行されるときに第2の態様による装置を制御するため、又は第1の態様による方法を実行するためのいずれかのプログラムコードを含むコンピュータプログラムを提供する。
【0055】
本開示の第4の態様は、プロセッサによって実行されると、第1の態様による方法又はその実施を実行させる実行可能なプログラムコードを記憶する非伝送型(non-transitory)記憶媒体を提供する。
【0056】
本発明による一般的な実施形態を定義する上述の態様及び実施形態は、添付の図面に関連した具体的な実施形態の以下の説明において説明され、その中で、以下のように説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の一実施形態による方法、及びその方法を実行する本発明の実施形態による装置を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による方法の概略フロー図である。
【
図3】本発明の一実施形態による方法の異なる例を示す図であり、特に、流体噴流で案内されたレーザ光を加工面に照射する方法を示している。
【
図4】本発明の一実施形態による方法の異なる例を示す図であり、特に、被加工物の旋削中に流体噴流で案内されたレーザ光をどのように移動させることができるかを示している。
【
図5】本発明の一実施形態による方法の異なる例を示す図であり、特に、流体噴流で案内されたレーザ光をどのように加工面に照射するかを示している。
【
図6】本発明の一実施形態による方法の異なる例を示す図であり、特に、流体噴流で案内されたレーザ光をどのように加工面に照射するかを示している。
【
図7】本発明の一実施形態による方法の利点を示す図であり、流体噴流で案内されたレーザ光が、回転軸に対して垂直であるがオフセットした加工面に照射される場合である。
【
図8】
図7に示す方法のさらなる利点を説明する図である。
【
図9】本発明の一実施形態による方法の例を示す図であり、特に直径が変化する被加工物に対するものである。
【
図10】本発明の一実施形態による方法を示す図であり、この方法は、被加工物を旋削する前に被加工物を部分切削することを含む。
【
図11】本発明の一実施形態による方法の様々な部分切削計画を示す図であり、この方法は、被加工物を回転させる前に被加工物を部分切削することを含む。
【
図12】本発明の一実施形態による例示的な装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明の一実施形態による方法20を模式的に示している。方法20の各工程は、
図2のフローダイアグラムに追加的に示されている。方法20は、被加工物30を加工するのに適しており、方法20は、流体噴流11で案内されたレーザ光12で被加工物30を旋削することからなる。
【0059】
方法20は、
図1にも概略的に示されているように、あるいは
図10により多くの任意の詳細を含んで示されているように、本発明の実施形態による装置10によって実施される。装置10は、(加圧された)流体噴流11に結合されたレーザ光12を提供するように、すなわち、流体噴流11で案内されたレーザ光12を被加工物30に照射するように構成されている。従って、流体噴流11は液体噴流から構成されてもよく、特に、水噴流(water jet)から構成されてもよい。
【0060】
被加工物30の材料は、ダイヤモンド、ダイヤモンド複合材、多結晶ダイヤモンド、多結晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、超合金、セラミック、ファイノックス、マジックゴールド、チタン、チタン合金、コバルト合金、これらの材料を含む1以上の複合材料のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。被加工物30は、任意の体積又は直径を有することができる。特に、被加工物は、20mmより大きく、30mmより大きく、あるいはさらに50mmより大きく、あるいはさらに100mmより大きく、あるいはさらに125mmより大きい直径を有していてもよい。
【0061】
方法20は、被加工物30を旋削(21,22)することからなる。被加工物30の旋削(21,22)は、加工中に被加工物30を回転軸31の周りに回転21させる工程を含んでいる。被加工物30は、被加工物30の旋削(21,22)の間、回転軸31の周りに連続的に回転させられてもよい。被加工物30は、さらに、旋削(21,22)の間、又はより一般的には被加工物30の加工の間、1つ又は複数のさらなる回転軸の周りに回転させられてもよい。さらに、旋削(21,22)は、流体噴流11で案内されたレーザ光12を被加工物30の加工面32に照射22する工程を含んでいる。流体噴流11で案内されたレーザ光12は、例えば、(
図1に例示的に示されているように)加工面32上に垂直に照射されてもよく、あるいは、例えば、
図4から
図7に関して以下にさらに説明されるように、加工面32に対して接線方向、又は加工面32に対して実質的に接線方向に照射されてもよい。
【0062】
図3は、
図1に示した実施形態に基づく、本発明の実施形態による方法20の異なる例を示す。特に、
図3は、(a)及び(b)において、流体噴流11で案内されたレーザ光12を被加工物30の加工面32上に照射する異なる例を示す。
図3中の
図1及び
図2における同じ要素には、同一の参照符号が付され、同様に実施される。
【0063】
図3(a)において、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、被加工物30の加工面32上に垂直に照射される。つまり、流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向は、加工面32が存在する面に対して垂直である。
図3(b)において、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、被加工物30の加工面32の接線方向に照射される。つまり、流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向は、加工面32に平行であり、加工面32に接する。
図3に示す両方の場合において、旋削(21,22)の間に被加工物30が少なくとも回転21される回転軸31は、例示的に、流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向に対して垂直である。
【0064】
レーザ光12のパワー、又はパルス状にされたレーザ光12のパルス特性(すなわち、パルス幅、パルスレート、パルスバーストレート、パルスパワーなど)は、レーザ光12が加工面32に垂直に照射される第1の場合(第1のパルス)と、レーザ光12が加工面32に接線方向に照射される第2の場合(第2のパルス)とで、加工、特に旋削(21,22)のために異なる場合がある。第1の場合は、垂直なレーザ光12がより高い被加工物材料除去率をもたらす可能性があるため、より大きな被加工物30(例えば、例えば大きな体積及び/又は30mm以上の直径を有する)を旋削(21,22)するために有益であり得る。第2の場合は、改善された精度及び被加工物表面を必要とする場合、及び加工中に被加工物30の応力発生の低減が必要な場合に、被加工物30を旋削21、22するのに有益であり得る。注目すべきは、レーザ光12が加工面32の接線方向に提供される第2の場合は、レーザ光12が流体噴流11内で案内されるという事実のためにのみ実現可能であることである。このような方向付けは、流体噴射を伴わないレーザ光では十分に実現することは不可能であり、そのようなレーザでは、長い平行焦点も、加工物の表面に対するレーザパワーの十分な結合も得られないからである。
【0065】
図4から
図7は、それぞれ、
図1及び
図2に示す実施形態に基づく、本発明の実施形態による方法20の異なる例を示す。特に、流体噴流11で案内されたレーザ光12を被加工物30の加工面32上に照射し(
図5から
図7)、被加工物30の旋削(21,22)(
図4)の間に流体噴流11で案内されたレーザ光12を被加工物30に対して移動させるという異なる例が示されている。
図4から
図7と
図1から
図3における同じ要素は、同じ参照符号でラベル付けされ、同様に実施される。
【0066】
特に、
図4(a)において、
図3で既に示されている、加工面32に対する流体噴流11で案内されたレーザ光12の2つの向きを示している。しかしながら、
図4(a)は、旋削(21,22)の間に、流体噴流11で案内されたレーザ光12が回転軸31と平行に移動され得ることを追加的に示す。注目すべきは、
図4(a)に示される移動方向は、例示的に、レーザ光12の伝搬方向に対して垂直であることである。それにより、
図4(a)にも示されるように、例えば、被加工物30の旋削(21,22)によって、被加工物30の一部の直径を小さくすることができる。
【0067】
図4は、さらに(b)において、
図3において既に示されている、加工面32に対する流体噴流11で案内されたレーザ光12の2つの向きを示す。しかしながら、
図4(b)は、旋削(21,22)の間に、流体噴流11で案内されたレーザ光12が回転軸31に対して垂直に移動され得ることを追加的に示している。しかしながら、レーザ光12が被加工物30の直径に対して垂直に移動することが示されている
図4(a)とは対照的に、
図4(b)では、レーザ光12が被加工物30の半径方向へ移動することが示されている。
図4(b)に示す手順は、特に、旋削(21,22)によって被加工物30に面を形成したり、溝を形成する場合に有用である。
【0068】
なお、被加工物30の加工のために、
図4(a)及び(b)にそれぞれ示される移動方向は、互いに追加することができ、又は同時に実施することができる。
【0069】
図4は、(c)においてさらに、回転軸31が、流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向と平行になることもできることを示している。この場合、
図4(c)に例示的に示されているように、レーザ光12は、被加工物30の端面に円形の溝を切り込むことができる。レーザ光12は、さらに、円形の溝を広げるために、例えば、回転軸31に対して垂直に移動させることができる。
図4(c)に示す手順は、特に、旋削(21,22)によって被加工物30に穴をあけるのに有用である。レーザ光12の移動を実施するために、複雑なポケットシネマティクス(pocketing cinematics)を適用することができる。
【0070】
図4に示す各ケース(a)、(b)、(c)において、加工される被加工物30のより複雑な形状を作成するために、例えば、被加工物30の加工中、具体的には被加工物30の旋削(21,22)の間に、被加工物30が別の回転軸の周りにさらに回転されることが可能である。これは、加工、具体的には被加工物30の旋削(21,22)の間のレーザ光12の1つ又は複数の移動方向と組み合わせることで可能となる。
【0071】
図5(a)において、先に説明した、流体噴流11で案内されたレーザ光12が被加工物30の加工面32の接線方向に照射される場合を示す。ここで、
図5(a)において、流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向は、回転軸31(
図5の平面内を走る)に垂直である。さらに、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、鉛直方向(
図5(a)において上から下へ走る方向)に沿って伝播し、すなわち、レーザ光12の伝播方向と鉛直方向(又は一般的には基準方向)との間の角度βは0°である。レーザ光12は、さらに、(回転軸31と加工面32との間の)最短の接続部と鉛直方向との間の角度αが90°となるように、加工面32の接線方向に接する。
【0072】
図5(b)において、流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32に対して垂直に照射された既述の場合を示している。ここで、
図5(b)において、流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向は、再び回転軸31に垂直な方向である。さらに、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、角度βが0°となるように、鉛直方向(基準方向)に沿って伝搬する。角度αは、この場合、0°であり、すなわち、(回転軸31と加工面32との間の)最短の接続は、鉛直方向に沿っている。
【0073】
図6(a)において、角度αについて異なる角度(値)が可能であることを示している。例えば、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、鉛直方向に沿って、すなわち角度βが0°の状態で照射されてもよいが、
図5(b)の位置に対してオフセットして、すなわちレーザ光12の伝播方向が回転軸31と交わることなく照射されてもよい。つまり、角度αは、0°より大きく、90°より小さくてもよい。これはまた、流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32に斜めに照射されることを意味し、前記角度は0°以上90°以下であり、流体噴流で案内されたレーザ光12が加工面32に照射される前記角度は(90°-α)である。
【0074】
図6(b)において、角度βについて異なる角度(値)も可能であることをさらに示している。例えば、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、垂直方向に対して傾いていてもよく、すなわち、角度βは、0°よりも大きく、90°よりも小さくてもよい。例えば、角度βは、
図6(b)において例示的に0°より大きく90°より小さい角度αと等しくてもよい。
【0075】
図7は、
図6に示す構成の利点、特に、
図6(a)に示す構成に対する利点を(a)から(d)に示す。流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向は、回転軸31に垂直であるが、回転軸31と交差していない。すなわち、前記伝搬方向は、
図6(a)に示すように、角度α>0°、α<90°となるように、回転軸31からオフセットしている。
図7(a)においては、特に角度α=α
1である。被加工物が方法20に従って旋削されると、
図7(b)、
図7(c)、そして最後に
図7(d)に示されるように、その半径は連続的に減少する。それにより、同様に示されるように角度αは増加する。
図7(b)では、角度は特にα=α
2であり、
図7(c)では、角度は特にα=α
3であり、
図6(d)では、角度は特にα=α
4であり、α
4>α
3>α
2>α
1である。同時に、流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32上に照射される角度(90°-αで計算される)も減少する。
図7(a)では、この角度は90°に近く(すなわち、
図5(b)に示す、流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32上に垂直に照射される構成に近く)、
図7(d)では、この角度は0°に近く(すなわち、
図5(a)に示す、流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32に接線方向に照射される構成に近い)になっている。流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32に照射される角度が減少するので(及び/又はαが増加するので)、加工工程は、被加工物30の加工面32の高い材料除去率の粗加工から表面仕上げ加工へと漸次変化する。
【0076】
図8は、
図7に関して説明した方法及び構成の更なる利点を示す。特に、
図8(a)は、例えば
図8(b)に示すように、複雑な形状である目標形状を有する製品に被加工物30を加工するために、流体噴流11で案内されたレーザ光12を所定のプロファイル経路70に沿って移動させることを示す。それにより、流体噴流11で案内されたレーザ光12の伝搬方向と回転軸31の距離が変化する。流体噴流11で案内されたレーザ光12が回転軸31に近づくと(その伝搬方向に沿った視線で)、高いスループットを実現することができる。プロファイル経路70が回転軸31に近いところでは、除去される材料の量がより多くなり得る。
【0077】
図8(c)は、2つの異なる例示的なケースを示している。製品の所望の最終形状を得るために被加工物30の半径を極端に減少させなければならない部位(ケース1)では、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、加工面32上により垂直に近く(「より垂直に」)照射され、すなわち、流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32上に照射される角度はより大きくなる。このような状況では、切除(ablation)効率が向上する一方で、表面品質が低下する。この状況は、粗い加工工程の最適な設定に相当すると考えられる。目標半径が既に初期半径に近い部位、すなわち、製品の所望の最終形状を得るために被加工物30の半径をより小さくする必要がある場所(ケース2)では、流体噴流11で案内されたレーザ光12は、加工面32に対してより接線方法に近い(「より接線方向」)状態で照射される。すなわち、流体噴流11で案内されたレーザ光12が加工面32に提供される角度はより小さい。この状況では、切除は効率的ではないが、より高い表面品質(より低い粗さ)をもたらす。この状況は、仕上げ加工工程のための最適な設定に対応し得る。特に、半径を極端に縮小しなければならない部位(すなわち、ケース1)では、被加工物30の旋削の進行は、目標半径に近づくにつれて、より少ない切除速度で半径を縮小することができるが、より良い品質で半径を縮小することができる。
【0078】
上記技術的効果は、被加工物30を回転(旋削)させながら、流体噴流11で案内されたレーザ光12を回転軸31に垂直な単一の不変のプロファイル経路70に沿って誘導することにより、旋削を効果的かつ簡易に行うことができるということである。粗い加工と仕上げ加工との間の移行は、回転軸31に沿ったあらゆる位置で局所的に自己最適化された切除を行い、自動的に行うことができる。被加工物30を加工するある時間の後、目標半径に近づくと、回転軸31に沿って直径が最も大きい場所において、加工品質がより良くなることがある。これらの表面は、有利には、加工された被加工物30、すなわち最終製品の機能的な表面に対応し得る。
【0079】
図9(a)及び(b)において他の例を示し、流体噴流11で案内されたレーザ光12が、加工面32に対して接線方向で、鉛直方向(基準方向)に沿って照射される。さらに、レーザ光12は、被加工物30が回転21される回転軸31に対して垂直に照射される。特に、示された手順は、
図9(a)及び
図9(b)の被加工物30についてそれぞれ例示されるように、被加工物の変化する直径を有する被加工物30を加工するために有用である。
【0080】
図10及び
図11は、
図1及び
図2に示された実施形態を基礎とする、本発明の実施形態による方法20を示す。特に、方法20は、
図10に示される、被加工物30を部分切削24する工程をさらに含んでもよい。被加工物30の部分切削24は、被加工物30の旋削(21,22)の前に実施されてもよい。部分切削24と被加工物30の旋削(21,22)は、同じ装置10によって実行されてもよく、及び/又は、途切れなく、又は1つの単一プロセスで実施されてもよい。
図10及び
図11中と
図1から
図9の同じ要素には、同じ参照符号でラベル付けされ、同様に実施される。
【0081】
被加工物30の部分切削24は、例えば、被加工物30の直径(ここで、直径は回転軸31に垂直である)を小さくするために、流体噴流11で案内されたレーザ光12を用いて被加工物30から一連の一部分を切り離すことからなる場合がある。特に、部分切削24は、被加工物30から一部分を切り離すために、流体噴流11で案内されたレーザ光12で被加工物30に切り込む工程(第1の切り込み)81と、さらにその後、回転軸31の周りにある角度だけ被加工物30を回転させる工程82と、流体噴流11で案内されたレーザ光12で被加工物30に再び切り込みを入れて被加工物30から一部分を切り離すさらに別の工程(第2の切り込み)83を含むことができる。このようにして、被加工物30から複数の一部分を切り離すことができる。
【0082】
図10にさらに示すように、被加工物30の部分切削24は、第1の切り込み81(
図10(a)に示すように、完全な切断は必要ではないが可能である)を行うことからなる場合がある。さらに、その後、被加工物30は、(
図10(b)に示すように、特に、第1の切り込み81がそれ自体で被加工物30の一部分を除去しなかった場合に)回転し、さらなる切り込み(第2の切り込み)83(
図10(c)に示すように、さらなる切り込みは第1の切り込みと交差してよい)が行われ、切り屑を排出する、すなわち、被加工物30から一部分を除去することができる。この手順は、最終的に一連の一部分が被加工物30から除去されるように(
図10(d)に示すように)複数回にわたって同様に実施され得る(
図10(f))。一連の一部分の除去は、被加工物30の部分切削24をもたらし、すなわち、被加工物30は、規定された面を有する形状を有し得る。部分切削24において、被加工物30から切り離された最後の一部分(すなわち、被加工物30の最後の面が作成されるために、
図10(e)参照)は、この側からのより小さい/より短い切り込みが必要であるので、被加工物30の底面からカットされ得る。その後、部分切削された被加工物30は、方法20に従って、特に、旋削(21,22)によって加工することができる。
【0083】
図11は、被加工物30に対して適用され得る効率的な部分切削計画の異なる例を示す。被加工物30は、
図11において回転軸31に沿った図において示されている。様々な被加工物30に引かれている灰色の線は、それぞれの被加工物30の部分切削24のために実行することができる切削線90を表す。被加工物30の直径を効率的に縮小するために、切削の異なる配置、向き及び/又はシーケンスが実行され得ることが理解され得る。いくつかの切削計画の場合、示された切削線90に基づいて、第1の工程において、一部分である第1のサブセットが被加工物30から除去され、ここで、ある角度はより大きな角度であってもよく(回転軸31に関して被加工物30の直径を低減するために)、次に、第2の工程において、一部分である第2のサブセットが被加工物30から除去され、ここで、ある角度はより小さな角度であり(回転軸31に関する被加工物30の直径をさらに低減する)、と理解できることが分かる。このように、被加工物30は、第1の工程(粗削り)においてより粗く部分切削することができ、その後、第2の工程(仕上げ)においてより細かく部分切削することができる。同じことが逆の場合にも可能であり、すなわち、ある角度を小さくした第1の工程を実施し、次に、第2の角度を大きくした第2の工程を実施することができる。このようにして、より高い精度を実現することができる。
【0084】
方法20によって加工される被加工物30のための部分切削計画は、アルゴリズムによって決定することができる。例えば、被加工物30のサイズ(例えば、体積及び/又は直径)及び/又は形状に基づき、及び/又は加工された被加工物30の表面仕上げに関して、及び/又は被加工物30を加工するプロセス時間に基づき、最適化アルゴリズムが実行され得る。次に、最適化アルゴリズムの結果に基づいて、被加工物30の部分切削24(及びその後の旋削(21,22)も)を行うことができる。その結果は、切削線90、特にそのような切削線90によって表される切削のシーケンスで構成され得る。
【0085】
一例では、被加工物30の最良の部分切削計画を決定するための制約は、最大半径(例えば、被加工物30の初期半径又は直径、すなわち部分切削24の前)、及び最小半径(例えば、部分切削24後の被加工物30の所望の最終半径又は直径)であってもよい。さらなる制約は、被加工物30に対する加工後の最小欠陥サイズであってもよい。被加工物30の部分切削計画を決定するためのアルゴリズムは、次に、出力結果として、切削24の後に被加工物30が有するべき面の数、及び/又は被加工物30から一部分を切り離す、即ち被加工物30に面を切り込む最も効率の良い処理順序を提供し得る。さらに、部分切削24については、取り除かれるべき材料の最大体積、及び各切り込みの最大長さが、アルゴリズムによって考慮され得る。被加工物30の最終的な形状は、特に、例えば、真のジオメトリのオフセットを有する多角形であってよい。アルゴリズムは、装置10によって実行されてもよく、装置10は、アルゴリズムの結果を直接使用して、例えば、1回の実行で部分切削24を実施し、その後、旋削を実施してもよい。
【0086】
部分切削24を伴う又は伴わない旋削(21,22)は、1つ以上の更なる加工行程と組み合わせてもよく、例えば、流体噴流11で案内されたレーザ光12を用いて、被加工物30に直線的に深く切り込む、被加工物30に穴を開ける、被加工物30の番号を彫金する、及び被加工物30にレーザミリングすることからなる少なくとも1つの加工工程と組み合わせてもよい。装置10は、部分切削24及び旋削(21,22)に加えて、さらなる加工工程を実行してもよい。
【0087】
すべての実施形態において、方法20は、
図12に関して以下に説明する装置10によって、自動的に、及び/又は途切れなく、及び/又は単一のプロセスで実行され得る。
【0088】
図12は、本発明の一実施形態による装置10を示す。装置10は、
図1又は
図2に示すように、被加工物30を加工するように構成されており、すなわち、方法20で使用される装置10であってもよい。装置10は、少なくとも加工ユニット101と、ホルダ102と、制御ユニット103とから構成される。装置10は、光学センサ103a、距離センサ103b、さらに任意で以下に説明される(及び破線のボックスで示される)他の要素及びユニットをさらに含んでいてもよい。
【0089】
加工ユニット101は、加圧された流体噴流11に結合されたレーザ光12を提供するように構成されている。制御ユニット103は、加工ユニット101及びホルダ102を制御するように構成されている。特に、制御ユニット103は、ホルダ102を制御して、回転軸31の周りに被加工物30を回転21させることができる。さらに、制御ユニット103は、加工ユニット101を制御して、特に被加工物30が回転21している間に、被加工物30の加工面32に流体噴流11で案内されたレーザ光12を照射22することができる。これらの動作は、
図1及び
図2に示すような本発明の実施形態による方法20を実施することができる。
【0090】
オプションの光学センサ103aは、被加工物30の加工中に、被加工物30を加工している状態を判定するように構成されてもよい。例えば、レーザ光12が被加工物30を突き抜けたか、被加工物30を突き抜けようとしているか、被加工物30を突き抜けていないか(例えば、部分切削24の間に被加工物30の一部分が切り取られた場合)を判定することができる。この場合、その時点の加工工程は直ちに停止され、装置10は次の加工工程に移行することができる。距離センサ103bは、例えば、旋削(21,22)の間に、加工ユニット101と被加工物30の加工面32との間の距離を測定するように構成され得る。従って、装置10は、旋削(21,22)の間に被加工物からどれだけの材料が除去されたかを決定することができる。距離センサ103bは、被加工物30の加工面32の面方向を測定するようにさらに構成されてもよい。その後、制御ユニット103は、例えば、被加工物30の最も効率的な旋削(21,22)を可能にするために、測定された面方向に基づいて、加工面32上に流体噴流11で案内されたレーザ光12をどのように照射するかを決定することができる。
【0091】
加工ユニット101は、レーザ光12を、例えば、任意に装置10の一部であってもよいレーザ光源105から、又は例えば複数のレーザ光源105から受け取るように、流体噴流11に結合してもよい。この結合は、加工ユニット101において行われることがある。加工ユニット101は、特に、レーザ光12を流体噴流11に結合するための、少なくとも1つのレンズ106のような光学素子を含むことができる。レーザ光12は、加工ユニット101の外側で生成されてもよく、加工ユニット101に入射されてもよい。加工ユニット101において、ミラー、及び/又はビームスプリッタ107、及び/又は別の光学素子が、レーザ光12を例えば少なくとも1つのレンズ106に向けて案内してもよい。ビームスプリッタ107は、レーザ光12、又は被加工物30から来る電磁放射の一部を光学センサ103aに導くために使用されてもよい。加工ユニット101は、光学配置、ここでは例示的に光学素子を流体回路(例えば水回路)から、及び流体噴流11が生成される加工ユニット101の領域から分離するために、光学的に透明な保護窓109を設けることもできる。
【0092】
流体噴流11を生成するために、加工ユニット101は、一定の大きさの開口を有する流体噴流生成ノズル108を備えてもよい。流体噴流生成ノズル108は、保護された環境で流体噴流11を生成するために、加工ユニット101内に配置されてもよい。開口部は、流体噴流11の幅を規定してもよい。開口は、例えば、10から200μmの直径を有してもよく、流体噴流11は、例えば、開口直径の約0.6から1倍の直径を有してもよい。加圧された流体噴流11のための圧力は、典型的には装置10の一部ではない(しかし、そうすることもできる)外部の流体供給部104を介して提供されてもよい。例えば、圧力は、50から800barの間である。流体噴流11を装置10から出力するために、加工ユニット101は、出口開口を有する出口ノズルを含むことができる。出口開口は、特に、流体ノズル開口よりも広い。
【0093】
制御ユニット103は、さらに、少なくとも1つのレーザ光源105を制御してもよい(例えば、レーザ光源105のレーザコントローラに命令してもよい)。すなわち、制御ユニット103は、レーザ光源105のレーザーコントローラに指令し、それに応じたレーザー発光を出力するようにしてもよい。これにより、レーザ光源105のレーザコントローラは、制御ユニット103の指示に応じて、常時レーザ発光又はパルス状レーザ発光を設定することができ、後者の特にパルスパワー、パルス幅、パルス繰り返し率、パルスバースト率、又はパルス間の休止を設定することができる。例えば、旋削(21,22)については、レーザ光12のパルス強度が0.4から2GW/cm2の範囲内、及び/又はレーザ光12の平均パワーが20から300Wの範囲内、レーザ光12のパルス長が150から400nsの範囲内であってもよい。また、制御ユニット103は、流体供給部104を制御してもよい。
【0094】
旋削(21,22)の間、被加工物30は、ホルダ102によって保持され得る。装置10は、ホルダ102によって保持された被加工物30を加工することができるように配置することができる。ホルダ102は、装置10の回転可能な要素に取り付けられていてもよく、それ自体が装置10の回転可能な要素であってもよい。装置10、特に制御ユニット103は、それによって、ホルダ102の動きを最大3次元(例えば、
図12に示すようにx-y-zで、z方向は流体噴流11に平行であり、x方向及びy方向はz方向及び互いに垂直である)で制御してもよい。ホルダ102は、例えば、回転可能な要素を回転させることによって、装置10によって回転させることができる。そして、装置10は、特に、ホルダ102を回転させながら、上記のように流体噴流11で案内されたレーザ光12を移動23させることによって、被加工物30を旋削(21,22)することができる。それによって、マルチパス移動が行われ得る、すなわち、レーザ光12は、被加工物30上の同じ経路に沿って複数回移動され得る。さらに、レーザ光12の移動は、連続的又は段階的であってもよく、レーザ光12の移動の速度は、選択/変更され得る。注目すべきは、レーザ光12の移動が被加工物30に対して相対的であるため、(例えば、移動可能な被加工物ホルダに保持された)被加工物30も移動させることができることである。
【0095】
ホルダ102の回転は、モータやCNCによって駆動されてもよい。例えば、ホルダ102は、ロッドすなわち「ドップ(Dop)」で構成されてもよい。ホルダ102は、被加工物30の直径よりも少なくとも10%小さく、特に少なくとも20%小さく(直径/幅において)してもよい。ホルダ102は、回転軸31(
図12に示す)を中心に回転してもよい。ホルダ102の回転は、制御ユニット103によって、特に光学センサ103aからの入力に基づいて制御されてもよい。
【0096】
光学センサ103aは、(例えば、レーザ光12で被加工物30を切削している間に)被加工物30から伝播してくるレーザ誘導電磁放射を、例えば、流体噴流11を通して、さらに少なくとも1つの光学素子(レンズ、ビームスプリッタ)106,107を通して光学センサ103aに向かって受信するように配置されてもよい。光学センサ103aは、特に、流体噴流11を通り、レーザ光12を流体噴流11に結合するように構成された少なくとも1つの光学素子106を通るレーザ誘導電磁放射線を受信するように配置されてもよい。レーザ誘導電磁放射は、レーザ光12で切削される被加工物30の一部分から放出される二次放射を含み得る。例えば、被加工物30の加工面32がプラズマに変化するため、レーザ誘導電磁放射が誘導される場合がある。このプラズマは、光学センサ103a上で又は光学センサ103aによって容易に分離することができ、特徴的な放射線を放出することができる。レーザ誘導電磁放射は、被加工物30から反射される一次レーザ放射も含むことができる。また、レーザ誘導電磁放射は、流体噴流11におけるレーザ光12の散乱、好ましくはラマン散乱によって発生する二次放射を含んでもよい。
【0097】
距離センサ103bは、第2の光学センサ(すなわち、光学センサ103aに加えて)又は超音波センサであってもよい。この場合、距離センサ103bは、例えば、被加工物30から反射された光を測定することによって、被加工物表面までの距離及び/又は被加工物30の面方向を光学的に測定するように配置されてもよい。この目的のために、距離センサ103bはまた、光を被加工物30上に送るように構成されてもよい。また、距離センサ103bは、タッチプローブ(touch probe)であってもよい。この場合、面方向の測定を行うために被加工物30に接触できるように配置してもよいし、測定を行うために被加工物30に向かって移動又は移動させることができるように構成してもよい。
【0098】
光学センサ103a及び/又は距離センサ103bは、加工ユニット101に配置されてもよい。しかし、光学センサ103aは、レーザ光源105に配置されてもよい。この場合、レーザ誘導放射は、被加工物30から逆伝播し、加工ユニット101を通ってレーザ光源105に導かれ、そこで光学センサ103aによって受信される。加工ユニット101は、例えば、光ファイバによってレーザ光源105に光学的に接続され得る。
【0099】
さらに、光学センサ103aは、受信した放射線を信号に変換するように構成されてもよい。制御ユニット103は、信号に基づいて製品(被加工物)30を加工/切断する状態を決定するように構成されている、処理回路を含んでもよい。被加工物30を加工している状態とは、レーザ光12が被加工物30を突き抜けているかどうか、であってもよい。
【0100】
装置10、特に制御ユニット103は、本開示に記載の装置10の様々な動作、特に方法20を実行する、実施する、又は開始するように構成されたプロセッサ又は処理回路(図示せず)を含んでいてもよい。処理回路は、ハードウェアから構成されてもよく、及び/又は、処理回路は、ソフトウェアによって制御されてもよい。ハードウェアは、アナログ回路もしくはデジタル回路、又はアナログ回路とデジタル回路の両方から構成されてもよい。デジタル回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又は多目的プロセッサなどの構成要素で構成されてもよい。
【0101】
装置10は、メモリ回路をさらに含んでいてもよく、このメモリ回路は、プロセッサによって、又は処理回路によって、特にソフトウェアの制御下で実行可能な1つ又は複数の命令を記憶する。例えば、メモリ回路は、実行可能なソフトウェアコード又はプログラムコード(コンピュータプログラム)を記憶する非伝送性の記憶媒体を含んでいてもよく、このコードは、プロセッサ又は処理回路によって実行されると、本開示に記載の装置の様々な動作、特に方法20が実行されるようにする。
【0102】
本開示は、実施形態と同様に、例として様々な実施形態と組み合わせて説明されてきた。しかしながら、他の変形例は、当業者であり、請求された実施形態を実践する者により、図面、説明及び独立請求項の研究から理解され、効果を発揮することができる。特許請求の範囲及び説明において、単語「含む」は、他の要素又は工程を排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除しない。単一の要素又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載された複数のエンティティ(entity)又はアイテムの機能を果たすこともある。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利な実施形態で使用できないことを示すものではない。
【0103】
本発明の実施形態は、様々な適用シナリオを有する。例えば、方法20は、達成可能な低い表面粗さのため、又は装置10で可能な流体噴流11の垂直性のため、又は方法20の汎用性のため、例えば時計の製造に有益である可能性がある。例えば、方法20は、ピニオン又はカボションを製造又は成形するために実行され得る。さらに、方法20は、通常硬い材料を必要とする研削工具などを製造するのに有益である場合がある。その利点は、例えば、方法20で可能な高い材料除去率、又は装置10で可能な流体噴流11の垂直性から来る。さらに、方法20は、医療用セラミックの製造又は成形に有益であると考えられる。その利点は、例えば、方法20で可能な高い材料除去率、又は、特に接線方向において、流体噴流で案内されたレーザ光12による、(熱に)弱くかつ/又は壊れやすい材料の繊細な処理に由来する。
【符号の説明】
【0104】
10 装置
11 流体噴流(液体噴流)
12 レーザ光
20 方法
21、22 旋削
30 被加工物
31 回転軸
32 加工面
101 加工ユニット
102 ホルダ
103 制御ユニット
【国際調査報告】