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特表2023-547468健康寿命を延長し加齢性疾患を処置する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】健康寿命を延長し加齢性疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231102BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231102BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20231102BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20231102BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P3/02
A61P3/04
A61P21/00
A61P3/06
A61P1/16
A61P9/00
A61P9/12
A61P13/12
A61P17/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/00
A61K31/7088
C07K16/24
C12N15/113 120Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526223
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021080202
(87)【国際公開番号】W WO2022090509
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】2017244.1
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(71)【出願人】
【識別番号】516275941
【氏名又は名称】シンガポール ヘルス サーヴィシーズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】コーデン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ウィジャジャ,アニッサ
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クック,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】シン,ブリジェシュ・クマール
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA44
4C084DA46
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA421
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZC211
4C084ZC331
4C084ZC412
4C084ZC521
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB17
4C085BB36
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZC21
4C086ZC33
4C086ZC41
4C086ZC52
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、加齢性疾患の診断、処置および予防、ならびに健康寿命を増加させることに関する。加齢性疾患/状態を処置または予防する方法、特に虚弱を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法が提供される。そのような方法で使用するためのインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤も提供される。そのような方法で使用するための医薬の製造におけるインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用もさらに提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢性疾患/状態を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与するステップを含み、前記加齢性疾患/状態は:虚弱、体脂肪量の加齢性増加、サルコペニア、加齢性高脂血症、加齢性高トリグリセリド血症、加齢性高コレステロール血症、加齢性肝臓脂肪症、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、加齢性非アルコール性脂肪肝(NAFL)、加齢性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、加齢性心血管疾患、加齢性高血圧、加齢性腎疾患および加齢性皮膚疾患から選択される、方法。
【請求項2】
虚弱、体脂肪量の加齢性増加、サルコペニア、加齢性高脂血症、加齢性高トリグリセリド血症、加齢性高コレステロール血症、加齢性肝臓脂肪症、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、加齢性非アルコール性脂肪肝(NAFL)、加齢性心血管疾患、加齢性高血圧、加齢性腎疾患および加齢性皮膚疾患:から選択される加齢性疾患/状態を処置または予防する方法で使用するためのインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
【請求項3】
虚弱、体脂肪量の加齢性増加、サルコペニア、加齢性高脂血症、加齢性高トリグリセリド血症、加齢性高コレステロール血症、加齢性肝臓脂肪症、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、加齢性非アルコール性脂肪肝(NAFL)、加齢性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、加齢性心血管疾患、加齢性高血圧、加齢性腎疾患および加齢性皮膚疾患:から選択される加齢性疾患/状態を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
【請求項4】
虚弱を処置または予防する方法で使用するためのインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
【請求項5】
虚弱を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造におけるインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
【請求項6】
虚弱を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項7】
体組成の加齢性変化を処置または予防する方法で使用するためのインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
【請求項8】
体組成の加齢性変化を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造におけるインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
【請求項9】
体組成の加齢性変化を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項10】
対象の健康寿命を延ばす方法で使用するためのインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
【請求項11】
対象の健康寿命を延ばす方法で使用するための医薬の製造におけるインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
【請求項12】
対象の健康寿命を延ばす方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項13】
前記薬剤が、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは小分子:からなる群から選択される、請求項1、4、7または10のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、請求項2、5、8または11のいずれか一項に記載の使用、または請求項3、6、9または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が、インターロイキン11(IL-11)のインターロイキン11の受容体(IL-11R)への結合を阻止または低減することが可能な薬剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項15】
前記薬剤がインターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)に結合することが可能である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項16】
前記薬剤が抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項17】
前記薬剤がIL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニストまたはその抗原結合性断片である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項18】
前記薬剤がIL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11Rα抗体アンタゴニストまたはその抗原結合性断片である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項19】
前記薬剤がIL-11のデコイ受容体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項20】
前記薬剤がIL-11の競合的阻害剤である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項21】
前記薬剤がインターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)の発現を阻止または低減することが可能である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項22】
前記薬剤がIL-11の発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項23】
前記薬剤がIL-11Rαの発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項24】
前記方法が、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御される対象に前記薬剤を投与するステップを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加齢性疾患の診断、処置および予防、ならびに健康寿命を増加させることに関する。
【背景技術】
【0002】
機能における年齢関連の衰退は複数の臓器および生理系統にわたって普通であり、ストレッサーへの全体的に増加した脆弱さ、回復力の減少および虚弱をもたらす。虚弱の発現は健康寿命(すなわち、健康である生物体の生存期間)を短くする主要な因子である。虚弱への著しい寄与因子は、体脂肪量の増加と同時の筋肉量の加齢性減少である。老化細胞の蓄積は反応性酸素種を増加させ、無菌の炎症は加齢過程における重要な病理である。
【0003】
加齢の根底にある重要な病理は「加齢の特質」として分類されており、その9つがある(Lopez-Otinら、2013)-具体的には、テロメア漸減、ゲノム不安定性、ミトコンドリア機能障害、細胞老化、幹細胞消耗、タンパク平衡の喪失、脱調節された栄養感知、後成的変化および変化した細胞間伝達。これらの中で、加齢関連の疾患を軽減するためにおよび/または寿命を延長するために、遺伝子的または治療的に操作することができる最も頑強な証拠を有する特質には、栄養感知(LiuおよびSabatini、2020)、タンパク平衡の喪失(KaushikおよびCuervo、2015)および細胞老化(Dolgin、2020)が含まれる。変化した細胞間伝達、特に増加した慢性炎症およびIL6上方制御も、加齢過程を予防、処置し、および/または後退させるために標的にすることができる重要な特質である(Furmanら、2019;FerrucciおよびFabbri、2018;ErshlerおよびKeller、2000)。
【0004】
加齢の特質の1つまたは複数を促進する経路および重要な遺伝子に関するデータの大半は、虫、ハエおよびマウスにおける遺伝子研究に由来している。種横断データは、インスリン/IGF-1シグナル伝達(IIS)、ラパマイシン1の哺乳動物標的(mTORC1)、AMP活性化キナーゼ(AMPK)およびMEK/ERK経路のための決定的な役割を指し示す(Slackら、2015;LiuおよびSabatini、2020;Burkewitz、ZhangおよびMair、2014)。老化だけを標的にすることが試みられたが、これは他の特質に対処せず、主な加齢経路(IIS、ERK、mTORC1、AMPK)に影響しない。
【0005】
インスリン、その受容体またはIRS1のレベルでのIISの治療的標的化は、主要な毒性と関連している。より少ないがなお顕著な毒性プロファイルを有する免疫抑制ラパマイシンを使用して、IIS下流のmTORC、栄養感知および他の加齢関連の過程の阻害が可能である。種を横断して、ラパマイシンおよびラパマイシン様薬物(ラパログ)は健康寿命を向上させ、寿命を延長することができる(Zhang、ZhangおよびWang、2021;FernandesおよびDemetriades、2021)。メトホルミンを使用したAMPKの活性化は代わりのアプローチであり、それは健康寿命を向上させ、寿命を延長するために首尾よく使用されている(Burkewitz、ZhangおよびMair、2014)。注目すべきは、メトホルミンは細胞エネルギー貯蔵を消耗させ、AMPK自体を直接的に活性化するよりもAMPK上流の栄養感知LKB1キナーゼを活性化する(Shawら、2005)。ハエでの実験は、トリメチニブによるMEK/ERKシグナル伝達の治療的阻害が寿命を延長することができることを示した(Slackら、2015)。全体として、今日まで治療的介入は加齢に関与する個々の経路を標的にし、主要な副作用と関連している。全ての経路を阻害する薬物はない。
【0006】
加齢性の疾患および状態の処置および予防のための療法の開発への満たされていない臨床必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本開示は、加齢性の疾患/状態を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与することを含み、加齢性の疾患/状態は:虚弱、体脂肪量の加齢性増加、サルコペニア、加齢性高脂血症、加齢性高トリグリセリド血症、加齢性高コレステロール血症、加齢性肝臓脂肪症、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、加齢性非アルコール性脂肪肝(NAFL)、加齢性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、加齢性心血管疾患、加齢性高血圧、加齢性腎疾患および加齢性皮膚疾患から選択される、方法を提供する。
【0008】
本開示は:虚弱、体脂肪量の加齢性増加、サルコペニア、加齢性高脂血症、加齢性高トリグリセリド血症、加齢性高コレステロール血症、加齢性肝臓脂肪症、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、加齢性非アルコール性脂肪肝(NAFL)、加齢性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、加齢性心血管疾患、加齢性高血圧、加齢性腎疾患および加齢性皮膚疾患から選択される加齢性疾患/状態を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤も提供する。
【0009】
本開示は:虚弱、体脂肪量の加齢性増加、サルコペニア、加齢性高脂血症、加齢性高トリグリセリド血症、加齢性高コレステロール血症、加齢性肝臓脂肪症、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、加齢性非アルコール性脂肪肝(NAFL)、加齢性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、加齢性心血管疾患、加齢性高血圧、加齢性腎疾患および加齢性皮膚疾患から選択される加齢性疾患/状態を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用も提供する。
【0010】
本開示は虚弱を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤も提供する。
本開示は虚弱を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用も提供する。
【0011】
本開示は、虚弱を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法も提供する。
【0012】
本開示は体組成の加齢性変化を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤も提供する。
本開示は体組成の加齢性変化を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用も提供する。
【0013】
本開示は、体組成の加齢性変化を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法も提供する。
【0014】
本開示は対象の健康寿命を延ばす方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤も提供する。
本開示は対象の健康寿命を延ばす方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用も提供する。
【0015】
本開示は、対象の健康寿命を延ばす方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法も提供する。
【0016】
一部の実施形態では、薬剤は:抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは小分子からなる群から選択される。
一部の実施形態では、薬剤は、インターロイキン11(IL-11)のインターロイキン11の受容体(IL-11R)への結合を阻止または低減することが可能な薬剤である。
【0017】
一部の実施形態では、薬剤は、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)に結合することが可能である。
一部の実施形態では、薬剤は抗体またはその抗原結合性断片である。
【0018】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニスト、またはその抗原結合性断片である。
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11Rα抗体アンタゴニスト、またはその抗原結合性断片である。
【0019】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11のデコイ受容体である。
一部の実施形態では、薬剤はIL-11の競合的阻害剤である。
一部の実施形態では、薬剤は、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)の発現を阻止または低減することが可能である。
【0020】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11の発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαの発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0021】
一部の実施形態では、本方法は、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御される対象に薬剤を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】110週齢のマウスの虚弱に及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。
図2】110週齢のマウスの体温に及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。
図3図3Aは、体脂肪量の変化に及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。図3Bは、除脂肪量の変化に及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。
図4図4Aは、体重の割合としてのヒラメ筋の質量に及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。図4Bは、体重の割合として腓腹筋の質量に及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。
図5】ウエスタンブロットによって決定したときの、3カ月齢マウスおよび28カ月齢マウスから得られた肝臓におけるIL-11タンパク質のレベルを示す画像である。
図6A】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のP21/Cdkn1aのレベルに及ぼす、抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体X209またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図6B】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のIl1bのレベルに及ぼす、抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体X209またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図6C】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のIl11のレベルに及ぼす、抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体X209またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図6D】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のTgfbmRNAのレベルに及ぼす、抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体X209またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図7A】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のP21/Cdkn1aのレベルに及ぼす、抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図7B】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のIl1bのレベルに及ぼす、抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図7C】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のIl11のレベルに及ぼす、抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図7D】細胞老化プログラムを経るように誘導されたAML12細胞の7日目のTgfb mRNAのレベルに及ぼす、抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフである。
図8】ウエスタンブロットによって決定したときの、110週齢または12週齢雌雄マウスの肝臓、心室(心臓)、腎臓、ヒラメ筋および腓腹筋におけるIL-11タンパク質のレベルを示す画像である。
図9】血中尿素窒素(BUN)レベルに及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。点線は、12週齢の雄(51.3mg/dl)および雌(31.8mg/dl)C57B1/6Jマウスの平均BUNレベルを示す。
図10】血清クレアチニンレベルに及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。点線は、12週齢の雄(0.92mg/dl)および雌(0.77mg/dl)C57B1/6Jマウスの平均血清クレアチニンレベルを示す。
図11】血清トリグリセリドレベルに及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。点線は、12週齢の雄(54mg/dl)および雌(37mg/dl)C57B1/6Jマウスの平均血清トリグリセリドレベルを示す。
図12】肝臓トリグリセリドレベルに及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。点線は、12週齢の雄(165mg/g)および雌(130mg/g)C57B1/6Jマウスの平均肝臓トリグリセリドレベルを示す。
図13】血清コレステロールレベルに及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。点線は、12週齢の雄(149mg/dl)および雌(90mg/dl)C57B1/6Jマウスの平均血清コレステロールレベルを示す。
図14】血清β-ヒドロキシブチレートレベルに及ぼす、55週齢からの抗IL-11アンタゴニスト抗体X203またはアイソタイプ一致対照IgGによる処置の影響を示すグラフおよび表である。点線は、12週齢の雄(0.159mM)および雌(0.236mM)C57B1/6Jマウスの平均血清β-ヒドロキシブチレートレベルを示す。
図15】IL11(10ng/ml)で15分間、2時間、4時間、6時間または24時間刺激される一次ヒト心臓線維芽細胞におけるp-LKB1、LKB1、p-mTOR、mTORのレベルを示すウエスタンブロット画像である。
図16】IL-11は、LKB1セリン325(S325)のERK媒介リン酸化およびLKB1セリン428(S428)のP90RSK媒介リン酸化を刺激し、その後AMPKが不活性化され、mTOR、P70RSKおよびS6RPが活性化される。(16A)A549細胞はヒトLKB1をコードするAAV8で24時間感染させ(感染多重度=20)、次に、IL11(10ng/ml)により示した時間(15分間、2時間、4時間、6時間または24時間)刺激した。細胞溶解物は、示したタンパク質についてイムノブロットした。(16B)IL-11媒介シグナル伝達によるERK(直接的)およびP90RSK(間接的)の活性化ならびに加齢の特質への下流の影響の模式図。Pまたはp;リン酸化されたアミノ酸。
図17】ヒトLKB1をコードするAAV8でヒト肝星状細胞(17A)および肝細胞(17B)を24時間感染させ(感染多重度=20)、次に、IL11(10ng/ml)により2時間刺激した。細胞溶解物は、示したタンパク質についてイムノブロットした。
図18】DMSO、ラパマイシン、ワートマニンまたはU0126の存在下での未刺激の(BL+DMSO)またはIL11で24時間刺激した一次ヒト心臓線維芽細胞におけるp-LKB1、LKB1、p-AMPK、AMPKのレベルを示すウエスタンブロット画像である。IL11(10ng/ml)、ラパマイシン(10nM)、ワートマニン(1μM)、U0126(10μM)。
図19】X203、X209またはIgG(11E10)アイソタイプ対照の存在下での、未刺激の(BL)またはIL11もしくはTGFβ1で24時間刺激した一次ヒト心臓線維芽細胞におけるp-ERK、ERK、p-P90RSK、P90RSK、p-LKB1、LKB1、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RP、SMAおよびGAPDHのレベルを示すウエスタンブロット画像である。IL11/TGFβ1(10ng/ml)、IgG/X203/X209(2μg/ml)。
図20】X203、X209またはIgG(11E10)アイソタイプ対照の存在下での、未刺激の(BL)またはIL11、0.5%BSAもしくはパルミテート(飽和脂肪酸)で24時間刺激した一次ヒト肝細胞における、p-ERK、ERK、p-P90RSK、P90RSK、p-LKB1、LKB1、p-AMPK、AMPK、p-アセチル-CoAカルボキシラーゼ(p-ACC)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RPのレベルを示すウエスタンブロット画像である。IL11(10ng/ml)、IgG/X203/X209(2μg/ml)、6:1の比で遊離BSA(0.5%BSA溶液)中でコンジュゲートしたパルミテート(0.5mM)。
図21】DMSOまたはU0126(10μM)の存在下での、未刺激の(BL+DMSO)またはIL11で24時間刺激した一次ヒト肝星状細胞におけるp-ERK、ERK、p-P90RSK、P90RSK、p-LKB1、LKB1、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RP、SMAおよびGAPDHのレベルを示すウエスタンブロット画像である。
図22】DMSOまたはU0126(10μM)の存在下での、未刺激の(BL+DMSO)またはIL11で24時間刺激した一次ヒト肝細胞における、p-ERK、ERK、p-P90RSK、P90RSK、p-LKB1、LKB1、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RPのレベルを示すウエスタンブロット画像である。
図23】未刺激の(BL)またはIL-11もしくはIL-6の増加する濃度(1.25、2.5、5、10または20ng/ml)で24時間刺激した一次ヒト肝細胞または一次ヒト肝星状細胞における、p-LKB1、LKB1、p-AMPK、AMPKのレベルを示すウエスタンブロット画像である。
図24】(24A)B~Fに示すデータのための老化予防実験の模式図である。Tripathiら(2020)によって記載されるように、7日間にわたって各日に細胞をHの致死量以下の濃度(0.75mM)で1時間処置し、その後23時間回復させることによって、老化AML12を生成させた。23時間の回復期間中にIgG/X209(2μg/ml)を10日間培養に加え;RNA抽出および以降のqPCR実験のために10日目に細胞を採取した。(24B)Cdkn2a(p16)、(24C)Cdkn1a(p21)、(24D)Il1β、(24E)Il8および(24F)Il11の相対的mRNA発現。
図25】(25A)B~Dに示すデータのための老化逆転実験の模式図である。前記のように老化AML12を7日間生成させた。72時間の老化誘導期間の終わりにIgG/X203/X209(2μg/ml)を培養に加え;RNA抽出および以降のqPCR実験のために10日目に細胞を採取した。(25B)Cdkn1a(p21)、(25C)Il1βおよび(25D)Il11の相対的mRNA発現。
図26】高齢マウスの腎臓の細胞中のIL-11発現を示す図である。110週齢IL11:EGFPリポーターマウスの腎臓全体:皮質、髄質、乳頭突起および腎臓血管におけるEGFP発現を示す画像(灰色;右欄)。野生型マウス(左欄)からの年齢を一致させた対照腎臓では、EGFP染色は見られなかった。スケールは、50μmを表す。
図27】高齢マウスの心室および心房の細胞中のIL-11発現を示す図である。高齢(110週)IL11:EGFPリポーターマウス心臓でEGFP発現(灰色)が見られる:特に間質および血管周囲で。心房では、高齢IL11:EGFPマウスの心外膜で特異な染色が見られる。年齢を一致させた対照または若齢(10週)IL11:EGFPリポーターマウスでEGFPの染色は見られなかった。スケールは、50μmを表す。
図28】高齢マウスの肺の細胞中のIL-11発現を示す図である。高齢(110週)IL11:EGFPリポーターマウスの肺でEGFP発現(灰色)が見られる:特に細気管支周辺で。年齢を一致させた対照または若齢(10週)IL11:EGFPリポーターマウスでEGFPの染色は見られなかった。スケールは、50μmを表す。
図29】高齢マウスの脾臓の細胞中のIL-11発現を示す図である。高齢(110週)IL11:EGFPリポーターマウス脾臓細胞でEGFP発現(灰色)が見られ、若齢(10週)IL11:EGFP脾臓でもずっと低い程度で見られる。野生型マウスからの年齢を一致させた対照脾臓では、EGFP染色は見られなかった。
図30】12および110週齢の野生型雌雄マウスの腹部脂肪組織におけるIL-11のレベルを示すウエスタンブロット画像である。
図31】高齢Il11ra1欠失マウスの肝臓は、野生型マウスと比較してより少ないERK/LKB1/mTORC1活性、より多くのAMPK活性、および重要な老化マーカー(p16およびp21)のより少ない発現を有する。画像は、ウエスタンブロットによって決定された、10または110週齢雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスから得られた肝臓における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RP、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す(n=3/群)。
図32】高齢Il11ra1欠失マウスの腓腹筋は、野生型マウスと比較してより少ないERK/LKB1/mTORC1活性、より多くのAMPK活性、および重要な老化マーカー(p16およびp21)のより少ない発現を有する。画像は、ウエスタンブロットによって決定された、10または110週齢雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスから得られた腓腹筋における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す。
図33】高齢Il11ra1欠失マウスのヒラメ筋は、野生型マウスと比較してより少ないERK/LKB1/mTORC1活性、より多くのAMPK活性、および重要な老化マーカー(p16およびp21)のより少ない発現を有する。画像は、ウエスタンブロットによって決定された、10または110週齢雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスから得られたヒラメ筋における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RP、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す。
図34】高齢Il11ra1欠失マウスの腹部脂肪は、野生型マウスと比較してより少ないERK/LKB1/mTORC1活性、より多くのAMPK活性、および重要な老化マーカー(p16およびp21)のより少ない発現を有する。画像は、ウエスタンブロットによって決定された、10または110週齢雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスから得られた腹部脂肪における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す。
図35】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較してより少ない体重を有した。グラフおよび表は、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの体重を示す;2元配置ANOVA。
図36】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較してより少ない体脂肪量を有した。グラフおよび表は、エコーMRIによって決定された、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの脂肪パーセンテージ(%で表した体脂肪量(g)/体重(g))を示す;2元配置ANOVA。
図37】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較してより多くの除脂肪筋肉質量パーセンテージを有した。グラフおよび表は、エコーMRIによって決定された、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの除脂肪筋肉質量パーセンテージ(%で表した筋肉質量(g)/体重(g))を示す;2元配置ANOVA。
図38】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較して低減された虚弱を示した。グラフおよび表は、Rizzoら(2018)、Healthspan and lifespan measures in aging mice:Optimization of testing protocols、replicability、and rater reliability、Current Protocols in Mouse Biology、8、e45.doi:10.1002/cpmo.45によって公開されたプロトコールを使用して盲検で実行された、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの虚弱スコアを示す;2元配置ANOVA。
図39】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較して低減された体温を示した。グラフおよび表は、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの体温を示す;2元配置ANOVA。
図40】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較してより少ない腹部脂肪およびより多くの筋肉(ヒラメ筋および腓腹筋)を有した。グラフおよび表は、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの、体重の割合としての(40A)腹部脂肪、(40B)ヒラメ筋および(40C)腓腹筋の質量を示す;2元配置ANOVA。
図41】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較して器官にわたってより少ない線維症を有した。グラフおよび表は、ヒドロキシプロリンアッセイによって決定した、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの(38A)腹部脂肪、(38B)腓腹筋、(38C)ヒラメ筋および(38D)肝臓中のコラーゲン含有量を示す;2元配置ANOVA。
図42】高齢Il11ra1 KOマウスは、野生型対照と比較して器官にわたってより少ない線維症を有した。グラフおよび表は、ヒドロキシプロリンアッセイによって決定した、110週齢の雌雄Il11ra1+/+(野生型、Il11ra1を発現する)またはIl11ra1-/-(Il11ra1ノックアウト)マウスの(42A)心房、(42B)心室、(42C)腎臓および(42D)肺におけるコラーゲン含有量を示す;2元配置ANOVA。
図43】画像は、ウエスタンブロットによって決定された、12週齢対照雄マウス(n=3)、IgG(n=5)およびまたはX203(n=5)を受けた110週齢雄マウスから得られた肝臓における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RP、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す。
図44図43のウエスタンブロット画像の半定量的デンシトメトリー分析(チューキーの補正による一元配置ANOVA)を示す図である。
図45】画像は、ウエスタンブロットによって決定された、12週齢対照雄マウス(n=3)、IgG(n=5)およびまたはX203(n=5)を受けた110週齢雄マウスから得られた腓腹筋における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す。
図46図45のウエスタンブロット画像の半定量的デンシトメトリー分析(チューキーの補正による一元配置ANOVA)を示す図である。
図47】画像は、ウエスタンブロットによって決定された、12週齢対照雄マウス(n=3)、IgG(n=5)およびまたはX203(n=5)を受けた110週齢雄マウスから得られたヒラメ筋における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p-p70S6K、p70S6K、p-S6RP、S6RP、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す。
図48図47のウエスタンブロット画像の半定量的デンシトメトリー分析(チューキーの補正による一元配置ANOVA)を示す図である。
図49】画像は、ウエスタンブロットによって決定された、12週齢対照雄マウス(n=3)、IgG(n=5)およびまたはX203(n=5)を受けた110週齢雄マウスから得られた腹部脂肪における、p-ERK、ERK、p-LKB、LKB、p-AMPK、AMPK、p-mTOR、mTOR、p16、p21およびGAPDHのレベルを示す。
図50図49のウエスタンブロット画像の半定量的デンシトメトリー分析(チューキーの補正による一元配置ANOVA)を示す図である。
図51】中和IL-11抗体は、高齢マウスの血清中のIL-6タンパク質のレベルを低減する。グラフは、高齢(110週齢)雌雄マウスの血清IL-6レベルに及ぼす、抗IL11(X203)またはIgGアイソタイプ対照による処置の影響を示す。点線は、12週齢対照雄(0.159pg/ml)および雌(0.236pg/ml)マウスの平均血清IL-6レベルを示す。データは、2元配置ANOVAによって分析した。
図52】中和IL-11抗体は、高齢マウスの腎臓中の複数の炎症マーカーを低減する。野生型C57BL6/Jマウスは、55週齢から110週齢まで抗IL11(X203;40mg/kg、3週間ごとに1回)またはアイソタイプIgG対照(11E10、40mg/kg、3週間ごとに1回)の腹腔内注射で処置した。110週齢マウスを屠殺し、器官を採取し、急速冷凍し、標準手順を使用してRNAを抽出した。試料は、Ccl2、Ccl5、Tnfα、Il1β、Il11、Il6またはGapdhに特異的なプライマーを使用した定量的RT-PCR(QPCR)によって分析した。
図53】中和IL-11抗体は、高齢マウスの肝臓中の複数の炎症マーカーを低減する。野生型C57BL6/Jマウスは、55週齢から110週齢まで抗IL11(X203;40mg/kg、3週間ごとに1回)またはアイソタイプIgG対照(11E10、40mg/kg、3週間ごとに1回)の腹腔内注射で処置した。110週齢マウスを屠殺し、器官を採取し、急速冷凍し、標準手順を使用してRNAを抽出した。試料は、Ccl2、Ccl5、Tnfα、Il1β、Il11、Il6またはGapdhに特異的なプライマーを使用した定量的RT-PCR(QPCR)によって分析した。
図54】中和IL-11抗体は、高齢マウスの骨格筋(ヒラメ筋)中の複数の炎症マーカーを低減する。野生型C57BL6/Jマウスは、55週齢から110週齢まで抗IL11(X203;40mg/kg、3週間ごとに1回)またはアイソタイプIgG対照(11E10、40mg/kg、3週間ごとに1回)の腹腔内注射で処置した。110週齢マウスを屠殺し、器官を採取し、急速冷凍し、標準手順を使用してRNAを抽出した。試料は、Ccl2、Ccl5、Tnfα、Il1β、Il11、Il6またはGapdhに特異的なプライマーを使用した定量的RT-PCR(QPCR)によって分析した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
インターロイキン11およびIL-11の受容体
脂質生成阻害因子としても知られる、インターロイキン11(IL-11)は、多面的なサイトカインであり、IL-6、IL-11、IL-27、IL-31、オンコスタチン、白血病阻害因子(LIF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびニューロポエチン(NP-1)を含むIL-6ファミリーのサイトカインのメンバーである。
【0024】
インターロイキン11(IL-11)は、様々な細胞型において発現される。IL-11のゲノム配列は、第19染色体および第7染色体のセントロメア領域上にマッピングされており、細胞からの効率的な分泌を確保する古典的シグナルペプチドと共に転写される。IL-11のアクチベータタンパク質複合体、そのプロモーター配列内に位置するcJun/AP-1は、IL-11の基本的転写調節にとって重要である(DuおよびWilliams.、Blood 1997、Vol 89:3897~3908頁)。未成熟型のヒトIL-11は、199アミノ酸のポリペプチドであるが、成熟型のIL-11は、178アミノ酸残基のタンパク質をコードする(GarbersおよびScheller、Biol.Chem.2013;394(9):1145~1161頁)。ヒトIL-11アミノ酸配列は、UniProt受託番号P20809(P20809.1 GI:124294;配列番号1)の下で入手可能である。組換えヒトIL-11(オプレルベキン)も商業的に入手可能である。マウス、ラット、ブタ、ウシ、いくつかの種の硬骨魚および霊長類などの他の種に由来するIL-11も、クローニングおよび配列決定されている。
【0025】
本明細書では、「IL-11」とは、任意の種に由来するIL-11を指し、任意の種に由来するIL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来する未成熟または成熟IL-11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、IL-11Rα(好ましくは、同じ種に由来する)に結合し、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でシグナル伝達を刺激する能力を特徴としてもよい(例えば、Curtisら、Blood、1997、90(11);またはKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003 9(2):75~80頁に記載されたように)。IL-11の断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟IL-11の長さの少なくとも25%であってもよく、成熟IL-11の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。IL-11の断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または195アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0026】
IL-11は、遍在的に発現される糖タンパク質130(gp130;糖タンパク質130、IL-6ST、IL-6-ベータまたはCD130としても知られる)のホモ二量体を介してシグナル伝達する。gp130は、IL-6受容体ファミリーとI型サイトカイン受容体の1つのサブユニットを形成する膜貫通タンパク質である。シグナル伝達に直接関与しない個々のインターロイキン11受容体サブユニットアルファ(IL-11Rα)を介して特異性が得られるが、α-受容体への初期のサイトカイン結合事象は、gp130との最終的な複合体形成をもたらす。
【0027】
ヒトgp130(22アミノ酸シグナルペプチドを含む)は、918アミノ酸のタンパク質であり、成熟型は、597アミノ酸の細胞外ドメイン、22アミノ酸の膜貫通ドメイン、および277アミノ酸の細胞内ドメインを含む866アミノ酸である。このタンパク質の細胞外ドメインは、gp130のサイトカイン結合モジュール(CBM)を含む。gp130のCBMは、gp130のIg様ドメインD1、ならびにフィブロネクチンIII型ドメインD2およびD3を含む。ヒトgp130のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P40189-1(配列番号2)の下で入手可能である。
【0028】
ヒトIL-11Rαは、422アミノ酸のポリペプチド(UniProt Q14626;配列番号3)であり、マウスIL-11Rαとの約85%のヌクレオチドおよびアミノ酸配列同一性を有する。細胞質ドメインが異なるIL-11Rαの2つのアイソフォームが報告されている(DuおよびWilliams、上掲)。IL-11受容体α鎖(IL-11Rα)は、IL-6受容体α鎖(IL-6Rα)との多くの構造的および機能的類似性を有する。細胞外ドメインは、特徴的な保存されたTrp-Ser-X-Trp-Ser(WSXWS)モチーフを含む24%のアミノ酸同一性を示す。短い細胞質ドメイン(34アミノ酸)は、JAK/STATシグナル伝達経路の活性化に必要とされるBox1および2領域を欠く。
【0029】
マウスIL-11上の受容体結合部位はマッピングされており、3つの部位(部位I、IIおよびIII)が同定されている。gp130への結合は、部位II領域中の置換および部位III領域中の置換によって低減される。部位III変異体は、検出可能なアゴニスト活性を示さず、IL-11Rαアンタゴニスト活性を有する(Cytokine Inhibitors Chapter 8;Gennaro CilibertoおよびRocco Savino(編)、Marcel Dekker,Inc.2001)。
【0030】
本明細書では、IL-11の受容体(IL-11R)は、IL-11に結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11に結合し、その受容体を発現する細胞中でシグナル伝達を誘導することができる。
【0031】
IL-11受容体は、任意の種に由来するものであってよく、任意の種に由来するIL-11受容体のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。
【0032】
一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11Rαであってもよい。一部の実施形態では、IL-11の受容体は、IL-11Rαを含むポリペプチド複合体であってもよい。一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11Rαとgp130とを含むポリペプチド複合体であってもよい。一部の実施形態では、IL-11受容体は、gp130またはIL-11が結合するgp130を含む複合体であってもよい。
【0033】
IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来するIL-11Rαのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、IL-11(好ましくは、同じ種に由来する)に結合し、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でシグナル伝達を刺激する能力を特徴としてもよい(例えば、Curtisら、Blood、1997、90(11);またはKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003 9(2):75~80頁に記載されたように)。IL-11受容体の断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟IL-11Rαの長さの少なくとも25%であってよく、成熟IL-11Rαの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。IL-11受容体断片の断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および15、20、25、30、40、50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、または415アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0034】
IL-11シグナル伝達
IL-11は低親和性でIL-11Rαに結合し(Kd約22nM;Metcalfeら、JBC(2020)原稿RA119.012351、を参照する)、これらの結合パートナー間の相互作用だけでは生物学的シグナルを伝達するには不十分である。シグナル伝達を可能にする高親和性の受容体(約400~800pmol/LのKd)の生成には、IL-11Rαとgp130との同時発現が必要である(Curtisら、Blood 1997;90(11):4403~12頁;Hiltonら、EMBO J 13:4765頁、1994;Nandurkarら、Oncogene 12:585頁、1996)。IL-11の、細胞表面IL-11Rαへの結合は、主に、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケードおよびJanusキナーゼ/シグナル伝達因子および転写(Jak/STAT)経路のアクチベータを介して、gp130のヘテロ二量体化、チロシンリン酸化、活性化ならびに下流のシグナル伝達を誘導する(GarbersおよびScheller、上掲)。
【0035】
原理的には、可溶型IL-11Rαも、IL-11との生物活性可溶型複合体を形成することができ(Pflanzら、1999、FEBS Lett、450、117~122頁)、IL-6と同様、IL-11が一部の例では、細胞表面gp130に結合する前に可溶型IL-11Rαに結合することができる可能性を上昇させる(GarbersおよびScheller、上掲)。Curtisら(Blood 1997 Dec 1;90(11):4403~12頁)は、可溶型マウスIL-11受容体アルファ鎖(sIL-11R)の発現を記載し、gp130を発現する細胞中でのシグナル伝達を検査した。膜貫通型IL-11Rではなく、gp130の存在下で、sIL-11Rは、膜貫通型IL-11Rによるシグナル伝達と同様、M1白血病細胞のIL-11依存的分化およびBa/F3細胞中での増殖ならびにgp130、STAT3およびSHP2のリン酸化を含む初期の細胞内事象を媒介した。可溶型IL-11Rアルファに結合したIL-11による細胞膜結合型gp130を介するシグナル伝達の活性化が、最近証明された(Lokauら、2016、Cell Reports 14、1761~1773頁)。このいわゆるIL-11トランスシグナル伝達は疾患病因にとって重要である可能性があるが、ヒト疾患におけるその役割はまだ研究されていない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「IL-11のtransシグナル伝達」は、IL-11Rαに結合したIL-11の、gp130への結合によって誘発されるシグナル伝達を指す。IL11は、非共有複合体としてIL-11Rαに結合してもよい。gp130は、膜結合型であり、シグナル伝達がIL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合後に起こる細胞によって発現される。一部の実施形態では、IL-11Rαは、可溶型IL-11Rαであってもよい。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶型(分泌型)アイソフォーム(例えば、膜貫通ドメインを欠く)である。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、細胞膜に結合したIL-11Rαの細胞外ドメインのタンパク質分解的切断の遊離産物である。一部の実施形態では、IL-11Rαは、細胞膜結合型であってよく、gp130を介するシグナル伝達は、細胞膜結合型IL-11Rαに結合したIL-11の結合によって誘発され、「IL-11のcisシグナル伝達」と呼ばれる。好ましい実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介シスシグナル伝達を破壊することによって達成される。
【0037】
IL-11媒介シグナル伝達は、造血および血小板新生を刺激し、破骨細胞活性を刺激し、神経形成を刺激し、脂質生成を阻害し、炎症誘発性サイトカイン発現を低減し、細胞外マトリックス(ECM)代謝をモジュレートし、胃腸上皮細胞の正常な増殖制御を媒介することが示されている(DuおよびWilliams、前掲)。
【0038】
インターロイキン11(IL-11)の生理的役割は、不明なままである。IL-11は、造血細胞の活性化と、および血小板生産と最も強く関連付けられている。IL-11は、移植片対宿主疾患、炎症性関節炎および炎症性腸疾患に対する防御を付与することも示されており、IL-11が抗炎症サイトカインと考えられるに至っている(PutoczkiおよびErnst、J Leukoc Biol 2010、88(6):1109~1117頁)。しかし、IL-11は炎症誘発性であると同時に抗炎症性、血管形成促進性であり、新生物にとって重要であることが示唆されている。近年の研究は、IL-11がマウス関節炎モデルおよびがんにおけるウイルス誘導炎症の間に容易に検出可能であることを示し、IL-11の発現を病理学的刺激が誘導することができることを示唆している。IL-11は、新生物性胃腸上皮における腫瘍促進標的遺伝子のStat3依存性活性化に関連付けられてもいる(PutoczkiおよびErnst、前掲)。
【0039】
本明細書で使用されるように、「IL-11シグナル伝達」および「IL-11媒介シグナル伝達」は、IL-11または成熟IL-11分子の機能を有するその断片の、IL-11の受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達を指す。「IL-11シグナル伝達」および「IL-11媒介シグナル伝達」は、IL-11/その機能的断片によって、例えばIL-11の受容体への結合を通して開始されるシグナル伝達を指すことを理解される。「シグナル伝達」は、次に細胞活動を支配するシグナル伝達および他の細胞過程を指す。
【0040】
IL-11の作用を阻害することが可能な薬剤
本開示の態様は、IL-11媒介シグナル伝達の阻害を含む。
本明細書では、「阻害」は対照条件と比較した低減、低下または減弱を指す。例えば、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤によるIL-11の作用の阻害は、薬剤の不在下、および/または適当な対照薬剤の存在下でのIL-11媒介シグナル伝達の範囲/程度の低減、低下または減弱を指す。
【0041】
阻害は、本明細書では中和または拮抗と呼ぶこともできる。すなわち、IL-11媒介シグナル伝達(例えばIL-11またはIL-11含有複合体によって媒介される相互作用、シグナル伝達または他の活性)を阻害することが可能な薬剤は、関連する機能または過程に関して「中和」または「拮抗」剤であると言うことができる。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11媒介性シグナル伝達を中和することができる薬剤と呼んでもよく、またはIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと呼んでもよい。
【0042】
IL-11シグナル伝達経路は、IL-11シグナル伝達の阻害のための複数の経路を提供する。IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、例えば、IL-11の受容体を通したシグナル伝達に関与するかまたは必要な1つまたは複数の因子の作用を阻害することを通してそうすることができる。
【0043】
例えば、IL-11シグナル伝達の阻害を、IL-11(またはIL-11含有複合体、例えば、IL-11とIL-11Rαとの複合体)と、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、IL-11Rαを含む受容体複合体、gp130またはIL-11Rαとgp130とを含む受容体複合体)との相互作用を破壊することによって達成することができる。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、例えば、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質発現を阻害することによって達成される。
【0044】
IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、IL-11受容体を発現する細胞による下流のシグナル伝達の活性化のために必要とされる多量体(例えば、六量体複合体)を形成するための、IL-11:11受容体複合体(すなわち、IL-11およびIL-11Rα、またはIL-11およびgp130、またはIL-11、IL-11Rαおよびgp130を含む複合体)の間の相互作用を破壊することによって達成することもできる。
【0045】
実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性transシグナル伝達を破壊するのではなく、IL-11媒介性cisシグナル伝達を破壊することによって達成され、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、膜結合型IL-11Rαを含むgp130媒介性cis複合体を阻害することによって達成される。実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性cisシグナル伝達を破壊するのではなく、IL-11媒介性transシグナル伝達を破壊することによって達成され、すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、可溶型IL-11Rαに結合したIL-11または可溶型IL-6Rに結合したIL-6などのgp130媒介性transシグナル伝達複合体を阻害することによって達成される。実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性cisシグナル伝達およびIL-11媒介性transシグナル伝達を破壊することによって達成される。本明細書に記載される任意の薬剤を使用して、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。
【0046】
他の例では、IL-11シグナル伝達の阻害は、IL-11/IL-11Rα/gp130の下流のシグナル伝達経路を破壊することによって達成することができる。すなわち、一部の実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害/拮抗は、IL-11/IL-11受容体複合体を通したシグナル伝達の下流のシグナル伝達経路/過程/因子の阻害を含む。
【0047】
一部の実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害/拮抗は、IL-11/IL-11受容体複合体によって活性化される細胞内シグナル伝達経路を通したシグナル伝達の阻害を含む。一部の実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害/拮抗は、その発現/活性がIL-11/IL-11受容体複合体を通したシグナル伝達の結果として上方制御される1つまたは複数の因子の阻害を含む。
【0048】
一部の実施形態では、本開示の方法は、JAK/STATシグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を用いる。一部の実施形態では、JAK/STATシグナル伝達を阻害することができる薬剤は、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5Bおよび/またはSTAT6の作用を阻害することができる。例えば、薬剤は、JAK/STATタンパク質の活性化を阻害する、JAKもしくはSTATタンパク質と、細胞表面受容体、例えば、IL-11Rαもしくはgp130との相互作用を阻害する、JAKタンパク質とSTATタンパク質との相互作用を阻害する、STATタンパク質のリン酸化を阻害する、STATタンパク質の二量体化を阻害する、STATタンパク質の細胞核への移行を阻害する、STATタンパク質のDNAへの結合を阻害する、ならびに/またはJAKおよび/もしくはSTATタンパク質の分解を促進することができてもよい。一部の実施形態では、JAK/STAT阻害剤は、ルキソリチニブ(Jakafi/Jakavi;Incyte)、トファシチニブ(Xeljanz/Jakvinus;NIH/Pfizer)、オクラシチニブ(Apoquel)、バリシチニブ(Olumiant;Incyte/Eli Lilly)、フィルゴチニブ(G-146034/GLPG-0634;Galapagos NV)、ガンドチニブ(LY-2784544;Eli Lilly)、レスタウルチニブ(CEP-701;Teva)、モメロチニブ(GS-0387/CYT-387;Gilead Sciences)、パクリチニブ(SB1518;CTI)、PF-04965842(Pfizer)、ウパダシチニブ(ABT-494;AbbVie)、ペフィシチニブ(ASP015K/JNJ-54781532;Astellas)、フェドラチニブ(SAR302503;Celgene)、ククルビタシンI(JSI-124)およびCHZ868から選択される。
【0049】
一部の実施形態では、本開示の方法は、MAPK/ERKシグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を用いる。一部の実施形態では、MAPK/ERKシグナル伝達を阻害することができる薬剤は、GRB2の作用を阻害する、RAFキナーゼの作用を阻害する、MEKタンパク質の作用を阻害する、MAP3K/MAP2K/MAPKおよび/もしくはMycの活性化を阻害する、ならびに/またはSTATタンパク質のリン酸化を阻害することができる。一部の実施形態では、ERKシグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、ERK p42/44を阻害することが可能である。一部の実施形態では、ERK阻害剤は、SCH772984、SC1、VX-11e、DEL-22379、ソラフェニブ(Nexavar;Bayer/Onyx)、SB590885、PLX4720、XL281、RAF265(Novartis)、エンコラフェニブ(LGX818/Braftovi;Array BioPharma)、ダブラフェニブ(Tafinlar;GSK)、ベムラフェニブ(Zelboraf;Roche)、コビメチニブ(Cotellic;Roche)、CI-1040、PD0325901、ビニメチニブ(MEK162/MEKTOVI;Array BioPharma)、セルメチニブ(AZD6244;Array/AstraZeneca)、およびトラメチニブ(GSK1120212/Mekinist;Novartis)から選択される。一部の実施形態では、本開示の方法は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達/活性を阻害することが可能な薬剤を用いる。一部の実施形態では、JNKシグナル伝達/活性を阻害することが可能な薬剤は、JNK(例えばJNK1、JNK2)の作用および/またはリン酸化を阻害することが可能である。一部の実施形態では、JNK阻害剤は、SP600125、CEP1347、TCS JNK 6o、c-Junペプチド、SU3327、AEG 3482、TCS JNK 5a、BI78D3、IQ3、SR3576、IQ1S、JIP-1(153-163)およびCC401二塩化水素化物から選択される。
【0050】
本実施例では、発明者はNOX4の発現および活性が、IL-11/IL-11Rα/gp130を通したシグナル伝達によって上方制御されることを実証する。NOX4はNADPHオキシダーゼであり、反応性酸素種(ROS)の供給源である。Nox4の発現は肝細胞特異的なIl11発現を有するトランスジェニックマウスで上方制御され、IL11で刺激した一次ヒト肝細胞はNOX4発現を上方制御する。
【0051】
一部の実施形態では、本開示は、NOX4の発現(遺伝子またはタンパク質発現)または機能を阻害することが可能な薬剤を用いる。一部の実施形態では、本開示は、NOX4発現/機能のIL-11媒介上方制御を阻害することが可能な薬剤を用いる。NOX4の発現または機能を阻害することが可能な薬剤は、本明細書ではNOX4阻害剤と呼ぶことができる。例えば、NOX4阻害剤は、NOX4の発現(例えば遺伝子および/またはタンパク質発現)を低減すること、NOX4をコードするRNAのレベルを低減すること、NOX4タンパク質のレベルを低減すること、および/またはNOX4活性のレベルを低減すること(例えば、NOX4媒介NADPHオキシダーゼ活性および/またはNOX4媒介ROS生産を低減すること)が可能である。
【0052】
NOX4阻害剤には、NOX4結合分子およびNOX4発現を低減することが可能な分子が含まれる。NOX4結合阻害剤には、ペプチド/核酸アプタマー、抗体(および抗体断片)、およびNOX4機能のアンタゴニストとしてふるまうNOX4の相互作用パートナーの断片、およびNOX4の小分子阻害剤が含まれる。NOX4発現を低減することが可能な分子には、NOX4へのアンチセンスRNA(例えば、siRNA、shRNA)が含まれる。一部の実施形態では、NOX4阻害剤は、Altenhoferら、Antioxid Redox Signal。(2015)23(5):406~427頁またはAugsburderら、Redox Biol。(2019)26:101272頁、に記載されるNOX4阻害剤、例えばGKT137831から選択される。
【0053】
結合剤
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11に結合してもよい。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合してもよい。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体、例えば、IL-11Rαおよび/またはgp130に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。薬剤は、IL-11および可溶型IL-11Rαなどのtransシグナル伝達複合体に結合し、gp130媒介性シグナル伝達を阻害することができる。
【0054】
IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、一部の実施形態では、薬剤は、抗体、その抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子であってもよい。薬剤を、単離もしくは精製された形態で提供するか、または医薬組成物もしくは医薬として製剤化することができる。
【0055】
抗体および抗原結合性断片
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、ポリペプチド、例えばデコイ受容体分子である。一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、アプタマーであってよい。
【0056】
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、抗体またはその抗原結合性断片である。「抗体」は、本明細書で最も広い意味で使用され、それらが関連する標的分子への結合を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに抗体断片を包含する。
【0057】
モノクローナル抗体技術と関連する今日の技術を考慮すると、多くの抗原に対する抗体を調製することができる。抗原結合部分は、抗体の一部(例えば、Fab断片)または合成抗体断片(例えば、一本鎖Fv断片[ScFv])であってもよい。選択された抗原に対するモノクローナル抗体を、公知の技術、例えば、「Monoclonal Antibodies:A manual of techniques」、H Zola(CRC Press、1988)および「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications」、J G R Hurrell(CRC Press、1982)に開示されたものによって調製することができる。キメラ抗体は、Neubergerら(1988、8th International Biotechnology Symposium Part 2、792~799頁)によって考察されている。モノクローナル抗体(mAb)は本開示の方法で特に有益であり、抗原上の単一のエピトープを特異的に標的にする抗体の均一集団である。
【0058】
ポリクローナル抗体も、本開示の方法において有用である。単一特異性ポリクローナル抗体が好ましい。好適なポリクローナル抗体を、当業界で周知の方法を使用して調製することができる。
【0059】
抗体および抗体断片を遺伝子操作することができるため、FabおよびFab断片などの抗体の抗原結合性断片を使用/提供することもできる。抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは、抗原認識に関与し、初期プロテアーゼ消化実験によって初めて認識された事実である。さらなる確認は、齧歯類抗体の「ヒト化」によって見出される。得られる抗体が齧歯類親抗体の抗原特異性を保持するように、齧歯類起源の可変ドメインを、ヒト起源の定常ドメインに融合することができる(Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sd.USA 81、6851~6855頁)。
【0060】
本開示による抗体および抗原結合性断片は、関連する標的分子(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体)に結合することができる抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0061】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11結合性抗体、またはそのIL-11結合性断片である。IL-11に結合する抗体には、例えば、例えばBockhornら、Nat.Commun.(2013)4(0):1393、で使用されるモノクローナルマウス抗ヒトIL-11抗体クローン#22626;カタログ番号MAB218(R&D Systems、MN、USA)、クローン6D9A(Abbiotec)、クローンKT8(Abbiotec)、クローンM3103F11(BioLegend)、クローン1F1(Abnova Corporation)、クローン3C6(Abnova Corporation)、クローンGF1(LifeSpan Biosciences)、クローン13455(Source BioScience)、11h3/19.6.1(Hermannら、Arthritis Rheum.(1998)41(8):1388~97頁)、AB-218-NA(R&D Systems)、X203(Ngら、Sci Transl Med.(2019)11(511)pii:eaaw1237)および米国特許出願公開第2009/0202533号、WO99/59608A2、WO2018/109174A2およびWO2019/238882A1で開示される抗IL-11抗体が含まれる。
【0062】
特に、抗IL-11抗体クローン22626(MAB218としても知られる)は、例えばSchaeferら、Nature(2017)552(7683):110~115頁において、IL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストであることが示された。モノクローナル抗体11h3/19.6.1は、Hermannら、Arthritis Rheum.(1998)41(8):1388~97頁で中和抗IL-11 IgG1であると開示されている。例えばMcCoyら、BMC Cancer(2013)13:16で使用されるR&D SystemsからのAB-218-NAは、中和抗IL-11抗体の別の例である。WO2018/109174A2およびWO2019/238882A1は、IL-11媒介シグナル伝達のさらなる例示的抗IL-11抗体アンタゴニストを開示する。Ngら、「IL-11 is therapeutic target in idiopathic pulmonary fibrosis。」bioRxiv 336537;doi:https://doi.org/10.1101/336537およびWO2019/238882A1で開示されるX203(Enx203とも呼ばれる)は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニストであり、WO2019/238882A1の配列番号92(本開示の配列番号22)によるVH領域、およびWO2019/238882A1の配列番号94(本開示の配列番号23)によるVL領域を含む。X203のヒト化バージョンがWO2019/238882A1に記載され、例えば、WO2019/238882A1の配列番号117(本開示の配列番号30)によるVH領域、およびWO2019/238882A1の配列番号122(本開示の配列番号31)によるVL領域を含むhEnx203が含まれる。Enx108Aは、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニストのさらなる例であり、WO2019/238882A1の配列番号8(本開示の配列番号26)によるVH領域、およびWO2019/238882A1の配列番号20(本開示の配列番号27)によるVL領域を含む。
【0063】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11Rα結合性抗体、またはそのIL-11Rα結合性断片である。IL-11Rαに結合する抗体には、例えばモノクローナル抗体クローン025(Sino Biological)、クローンEPR5446(Abcam)、クローン473143(R&D Systems)、クローン8E2、8D10および8E4、および米国特許出願公開第2014/0219919号に記載される8E2の親和性成熟バリアント、Blancら(J.Immunol Methods。2000年7月31日;241(1-2);43~59頁)に記載されるモノクローナル抗体、X209(Widjajaら、「IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH。」bioRxiv 470062;doi:https://doi.org/10.1101/470062、としても公開されている、Widjajaら、Gastroenterology(2019)157(3):777~792頁)、WO2014121325A1および米国特許出願公開第2013/0302277号で開示される抗体、ならびに米国特許出願公開第2009/0202533号、WO99/59608A2、WO2018/109170A2およびWO2019/238884A1で開示される抗IL-11Rα抗体が含まれる。
【0064】
特に、抗IL-11Rα抗体クローン473143(MAB1977としても知られる)は、例えばSchaeferら、Nature(2017)552(7683):110~115頁において、IL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストであることが示された。米国特許出願公開第2014/0219919号は、抗ヒトIL-11Rα抗体クローン8E2、8D10および8E4の配列を提供し、IL-11媒介シグナル伝達に拮抗するそれらの能力を開示する-例えば米国特許出願公開第2014/0219919号の[0489]~[0490]を参照する。米国特許出願公開第2014/0219919号は、クローン8E2の追加の62個の親和性成熟バリアントの配列情報をさらに提供し、そのうちの61個はIL-11媒介シグナル伝達に拮抗すると開示されている-米国特許出願公開第2014/0219919号の表3を参照する。WO2018/109170A2およびWO2019/238884A1は、IL-11媒介シグナル伝達のさらなる例示的抗IL-11Rα抗体アンタゴニストを開示する。Widjajaら、「IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH。」bioRxiv 470062;doi:https://doi.org/10.1101/470062およびWO2019/238884A1で開示されるX209(Enx209とも呼ばれる)は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11Rα抗体アンタゴニストであり、WO2019/238884A1の配列番号7(本開示の配列番号24)によるVH領域、およびWO2019/238884A1の配列番号14(本開示の配列番号25)によるVL領域を含む。X209のヒト化バージョンがWO2019/238884A1に記載され、例えば、WO2019/238884A1の配列番号11(本開示の配列番号32)によるVH領域、およびWO2019/238884A1の配列番号17(本開示の配列番号33)によるVL領域を含むhEnx209が含まれる。
【0065】
当業者は、所定の種/対象での治療使用のために好適な抗体生産技術によく通じている。例えば、ヒトでの治療使用のために好適な抗体生産手順は、ParkおよびSmolen、Advances in Protein Chemistry(2001)56:369~421頁(ここに参照により完全に組み込まれる)に記載される。
【0066】
所定の標的タンパク質(例えば、IL-11またはIL-11Rα)に対する抗体はモデル種(例えば、齧歯動物、ウサギ)で作製し、その後所定の種/対象での治療使用のためのそれらの適性を向上させるために工学操作することができる。例えば、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列により類似している抗体配列に到達するために(それによって抗体で処置したヒト対象で抗外因性抗体免疫応答の可能性を低減する)、モデル種の免疫化によって作製したモノクローナル抗体の1つまたは複数のアミノ酸を置換することができる。抗体可変ドメインでの改変は、抗体パラトープを保存するためにフレームワーク領域に焦点を合わせることができる。抗体ヒト化は抗体技術の分野におけるルーチン慣行の問題であり、例えばAlmagroおよびFransson、Frontiers in Bioscience(2008)13:1619~1633頁、Safdariら、Biotechnology and Genetic Engineering Reviews(2013)29(2):175~186頁およびLoら、Microbiology Spectrum(2014)2(1)でレビューされており、その全てはここに参照により完全に組み込まれる。そのような動物で作製した抗体が完全にヒトであるようにヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックモデル種で所定の標的タンパク質(例えばIL-11またはIL-11Rα)に対する抗体を作製することによって、ヒト化のための要件を回避することができる(例えば、ここに参照により完全に組み込まれる、Bruggemannら、Arch Immunol Ther Exp(Warsz)(2015)63(2):101~108頁に記載される)。
【0067】
所定の標的タンパク質(例えばIL-11またはIL-11Rα)に対する抗体の同定のためにファージディスプレイ技術を用いることもでき、それらは当業者に周知である。例えば、ヒト標的タンパク質に対する完全ヒト抗体の同定のためのファージディスプレイの使用は、例えば、Hoogenboom、Nat.Biotechnol.(2005)23、1105~1116頁およびChanら、International Immunology(2014)26(12):649~657頁でレビューされ、それらはここに参照により完全に組み込まれる。
【0068】
抗体/断片は、IL-11の生物活性を阻害する、または低減させるアンタゴニスト抗体/断片であってもよい。抗体/断片は、IL-11の生物学的効果、例えば、IL-11受容体による産生シグナル伝達を刺激するその能力を中和する、中和抗体であってもよい。中和活性を、T11マウス形質細胞腫細胞系(Nordan,R.P.ら(1987)J.Immunol.139:813頁)においてIL-11誘導性増殖を中和する能力によって測定することができる。
【0069】
IL-11またはIL-11Rα結合性抗体は、例えば、米国特許出願公開第2014/0219919号またはBlancら(J.Immunol Methods.2000年7月31日;241(1~2);43~59頁に記載されるアッセイを使用してIL-11媒介シグナル伝達に拮抗する能力のために評価することができる。簡潔には、IL-11およびIL-11Rα結合性抗体は、適当な種からのIL-11による刺激に応答して、適当な種からのIL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞の増殖を阻害する能力のためにin vitroで評価することができる。あるいは、IL-11およびIL-11Rα結合性抗体は、αSMA発現の評価によって、TGFβ1による線維芽細胞の刺激の後に線維芽細胞から筋線維芽細胞への移行を阻害する能力のためにin vitroで分析することができる(例えば、WO2018/109174A2(実施例6)およびWO2018/109170A2(実施例6)、Ngら、Sci Transl Med.(2019)11(511)pii:eaaw1237およびWidjajaら、Gastroenterology(2019)157(3):777~792に記載されるように)。
【0070】
抗体は一般に、6つのCDRを含む;軽鎖可変領域(VL)中の3つ:LC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3、および重鎖可変領域(VH)中の3つ:HC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む。6つのCDRは一緒になって、標的分子に結合する抗体の部分である、抗体のパラトープを規定する。VH領域およびVL領域は各CDRのいずれかの側のフレームワーク領域(FR)を含み、それはCDRのために足場を提供する。N末端からC末端にかけて、VH領域は以下の構造を含む:N項-[HC-FR1]-[HC-CDR1]-[HC-FR2]-[HC-CDR2]-[HC-FR3]-[HC-CDR3]-[HC-FR4]-C項;VL領域は、以下の構造を含む:N項-[LC-FR1]-[LC-CDR1]-[LC-FR2]-[LC-CDR2]-[LC-FR3]-[LC-CDR3]-[LC-FR4]-C項。
【0071】
Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901~917頁(1987)に記載されたもの、およびRetterら、Nucl.Acids Res.(2005)33(suppl 1):D671~D674頁に記載されたようなVBASE2などの、抗体CDRおよびFRを定義するためのいくつかの異なる慣例がある。本明細書に記載される抗体のVH領域およびVL領域のCDRおよびFRは、カバットシステムによって規定される。
【0072】
一部の実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合性断片は、IL-11に特異的に結合する抗体に由来する(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)。一部の実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合性断片は、IL-11Rαに特異的に結合する抗体に由来する(例えば、Enx209またはhEnx209)。
【0073】
本開示による抗体および抗原結合性断片は、好ましくはIL-11媒介シグナル伝達を阻害する。そのような抗体/抗原結合性断片は、IL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストであると記載することができ、および/またはIL-11媒介シグナル伝達を中和する能力を有すると記載することができる。
【0074】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片はIL-11に結合する抗体のCDRを含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11結合性抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)のCDRまたはこのCDRに由来するCDRを含む。
【0075】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVH領域を含む:
(1)
配列番号34のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号35のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号36のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、
または、HC-CDR1、HC-CDR2もしくはHC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0076】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVL領域を含む:
(2)
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号38のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号39のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
または、LC-CDR1、LC-CDR2もしくはLC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0077】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVH領域を含む:
(3)
配列番号40のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号41のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号42のアミノ酸配列を有するHC-CDR3
または、HC-CDR1、HC-CDR2もしくはHC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0078】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVL領域を含む:
(4)
配列番号43のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号44のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号45のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
または、LC-CDR1、LC-CDR2もしくはLC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0079】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、(1)によるCDRを組み込むVH領域、および(2)によるCDRを組み込むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、(3)によるCDRを組み込むVH領域、および(4)によるCDRを組み込むVL領域を含む。
【0080】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、IL-11に結合する抗体のVH領域およびVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11結合性抗体(例えばEnx108A、Enx203またはhEnx203)のVH領域およびVL領域、またはこのVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
【0081】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0082】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0083】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0084】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片はIL-11Rαに結合する抗体のCDRを含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11Rα結合性抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)のCDRまたはこのCDRに由来するCDRを含む。
【0085】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVH領域を含む:
(5)
配列番号46のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号48のアミノ酸配列を有するHC-CDR3
または、HC-CDR1、HC-CDR2もしくはHC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0086】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVL領域を含む:
(6)
配列番号49のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号50のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号51のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
または、LC-CDR1、LC-CDR2もしくはLC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0087】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、(5)によるCDRを組み込むVH領域、および(6)によるCDRを組み込むVL領域を含む。
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、IL-11Rαに結合する抗体のVH領域およびVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11Rα結合性抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)のVH領域およびVL領域、またはこのVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
【0088】
参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されるCDR配列、VH領域配列またはVL領域配列)の1つまたは複数のアミノ酸が別のアミノ酸で置換される本開示による実施形態では、置換は、例えば以下の表による保存的置換であってよい。一部の実施形態では、中央欄の同じブロック中のアミノ酸が置換される。一部の実施形態では、右端の欄の同じ行のアミノ酸が置換される:
【0089】
【表1】
【0090】
一部の実施形態では、置換(複数可)は機能的に保存的であってよい。すなわち、一部の実施形態では、置換は、同等の非置換分子と比較して置換を含む抗体/断片の1つまたは複数の機能的特性(例えば標的結合性)に影響を及ぼすことができない(または、実質的に影響を及ぼすことができない)。
【0091】
一部の実施形態では、参照VH領域またはVL領域配列と比較した置換(複数可)は、VH領域またはVL領域配列の特定の領域または複数の領域に集中させることができる。例えば、参照VH領域またはVL領域配列からの変化は、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3および/またはFR4)の1つまたは複数に集中させることができる。
【0092】
本開示による抗体および抗原結合性断片を、関連する標的分子に結合することができるモノクローナル抗体(mAb)の配列を使用して設計および調製することができる。一本鎖可変断片(scFv)、FabおよびFab2断片などの抗体の抗原結合領域を使用/提供することもできる。「抗原結合性領域」または「抗原結合性断片」は、所定の抗体が特異的である標的に結合することが可能である抗体の任意の断片である。
【0093】
一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のVLおよびVH領域を含む。抗体の抗原結合領域のVLおよびVH領域は、一緒になってFv領域を構成する。一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のFv領域を含むか、またはそれからなる。Fv領域を、一本鎖として発現させることができるが、VHおよびVL領域は、例えば、可撓性オリゴペプチドによって共有的に連結される。したがって、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のVLおよびVH領域を含むscFvを含んでもよいか、またはそれからなってもよい。
【0094】
抗体の抗原結合領域のVLおよび軽鎖定常(CL)領域、ならびにVH領域および重鎖定常1(CH1)領域は、一緒になってFab領域を構成する。一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のFab領域を含むか、またはそれからなる。
【0095】
一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる全抗体を含むか、またはそれからなる。「全抗体」とは、免疫グロブリン(Ig)の構造と実質的に類似する構造を有する抗体を指す。様々な種類の免疫グロブリンおよびその構造が、例えば、SchroederおよびCavacini J Allergy Clin Immunol.(2010)125(202):S41~S52頁に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。G型の免疫グロブリン(すなわち、IgG)は、2つの重鎖と2つの軽鎖とを含む約150kDaの糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、重鎖は、VH、次いで、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含む重鎖定常領域を含み、同様に軽鎖は、VL、次いで、CLを含む。重鎖に応じて、免疫グロブリンを、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgE、またはIgMと分類することができる。軽鎖は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)であってもよい。
【0096】
一部の実施形態では、本開示の抗体/抗原結合性断片は免疫グロブリン重鎖定常配列を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列はヒト免疫グロブリン重鎖定常配列であってよい。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgEまたはIgM、例えばヒトIgG(例えば、hIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4)、hIgA(例えば、hIgA1、hIgA2)、hIgD、hIgEまたはhIgMの重鎖定常配列であるかまたはそれに由来する。一部では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、ヒトIgG1アロタイプ(例えば、G1m1、G1m2、G1m3またはG1m17)の重鎖定常配列であるかまたはそれに由来する。
【0097】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンG1定常(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、置換K214R、D356EおよびL358Mを含む(すなわち、G1m3アロタイプ)ヒト免疫グロブリンG1定常(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。
【0098】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンG4定常(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、置換S241Pおよび/またはL248Eを含むヒト免疫グロブリンG4定常(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。S241P突然変異はヒンジ安定性であるが、L248E突然変異はIgG4の既に低いADCCエフェクター機能をさらに低減する(DaviesおよびSutton、Immunol Rev.2015年11月;268(1):139~159頁;Angalら、Mol Immunol.1993年1月;30(1):105~8頁)。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。
【0099】
一部の実施形態では、本開示の抗体/抗原結合性断片は免疫グロブリン軽鎖定常配列を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列はヒト免疫グロブリン軽鎖定常配列であってよい。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖、例えばヒト免疫グロブリンカッパ定常(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2)、またはヒト免疫グロブリンラムダ定常(IGLC;Cλ)、例えばIGLC1(UniProt:P0CG04-1、v1)、IGLC2(UniProt:P0DOY2-1、v1)、IGLC3(UniProt:P0DOY3-1、v1)、IGLC6(UniProt:P0CF74-1、v1)、またはIGLC7(UniProt:A0M8Q6-1、v3)であるかまたはそれに由来する。
【0100】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は免疫グロブリン軽鎖定常配列を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンカッパ定常(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2;配列番号90)であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンラムダ定常(IGLC;Cλ)、例えばIGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6またはIGLC7である。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号54のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。
【0101】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は以下を含む:(i)配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド、および(ii)配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド。
【0102】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は以下を含む:(i)配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド、および(ii)配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド。
【0103】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は以下を含む:(i)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド、および(ii)配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド。
【0104】
Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体断片を全て、大腸菌(E.coli)中で発現させ、それから分泌させ、かくして、大量の前記断片の容易な産生を可能にすることができる。
【0105】
全抗体、およびF(ab’)断片は、「二価」である。「二価」とは、前記抗体およびF(ab’)断片が2つの抗原結合部位を有することを意味する。対照的に、Fab、Fv、ScFvおよびdAb断片は、ただ1つの抗原結合部位を有する一価である。IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる合成抗体を、当業界で周知のファージディスプレイ技術を使用して作製することもできる。
【0106】
抗体を、非改変親抗体と比較して、抗体の抗原に対する親和性が改善された、改変抗体が生成される親和性成熟のプロセスによって産生することができる。親和性成熟抗体を、当業界で公知の手順、例えば、Marksら、Rio/Technology 10:779~783頁(1992);Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809~3813頁(1994);Schierら、Gene 169:147~155頁(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994~2004頁(1995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):331 0-15 9(1995);およびHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896頁(1992)に記載の手順によって産生することができる。
【0107】
抗体/断片には、例えば2種類の抗原に結合するように2つの異なる抗体の2つの異なる断片で構成される二重特異性抗体が含まれる。二重特異性抗体は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能である、本明細書に記載される抗体/断片を含む。抗体は、任意の所望の抗原であってもよい、第2の抗原に対する親和性を有する異なる断片を含有してもよい。二重特異性抗体の調製のための技術は、当業界で周知であり、例えば、Mueller,D.ら、(2010 Biodrugs 24(2):89~98頁)、Wozniak-Knopp G.ら、(2010 Protein Eng Des 23(4):289~297頁)、およびBaeuerle,PA.ら、(2009 Cancer Res 69(12):4941~4944頁)を参照されたい。二重特異性抗体および二重特異性抗原結合性断片を、全体が参照により本明細書に組み込まれるKontermann MAbs 2012、4(2):182~197頁に記載された形式などの任意の好適な形式で提供することができる。例えば、二重特異性抗体または二重特異性抗原結合性断片は、二重特異性抗体コンジュゲート(例えば、IgG2、F(ab’)もしくはCovX-Body)、二重特異性IgGもしくはIgG様分子(例えば、IgG、scFv-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、2 in 1-IgG、mAb、もしくはTandemab common LC)、非対称性二重特異性IgGもしくはIgG様分子(例えば、kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、チャージペアもしくはSEED-body)、低分子二重特異性抗体(例えば、ダイアボディ(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAb、タンデムscFv(taFv)、タンデムdAb/VHH、トリプルボディ、トリプルヘッド、Fab-scFv、もしくはF(ab’)-scFv)、二重特異性FcおよびC3融合タンパク質(例えば、taFv-Fc、ジ-ダイアボディ、scDb-C3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih-Fc、もしくはscFv-kih-C3)、または二重特異性融合タンパク質(例えば、scFv-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-トキシン、DNL-Fab、DNL-Fab-IgG、DNL-Fab-IgG-サイトカイン)であってもよい。特に、Kontermann MAbs 2012、4(2):182~19頁の図2を参照されたい。
【0108】
二重特異性抗体を産生するための方法は、例えば、SegalおよびBast、2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1~2.13.16(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたように、抗体または抗体断片を、例えば、還元性ジスルフィドまたは非還元性チオエーテル結合と化学的に架橋するステップを含む。例えば、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオン酸(SPDP)を使用して、例えば、ヒンジ領域SH-基を介してFab断片を化学的に架橋して、ジスルフィド結合した二重特異性F(ab)ヘテロ二量体を創出することができる。
【0109】
二重特異性抗体を産生するための他の方法は、例えば、D.M.およびBast,B.J.2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1~2.13.16に記載されたように、抗体産生ハイブリドーマを、例えば、ポリエチレングリコールと融合して、二重特異性抗体を分泌することができるクアドローマ細胞を産生するステップを含む。
【0110】
二重特異性抗体および二重特異性抗原結合性断片を、例えば、Antibody Engineering:Methods and Protocols、第2版(Humana Press、2012)、Chapter 40:Production of Bispecific Antibodies:Diabodies and Tandem scFv(Horning and Farber-Schwarz)、またはFrench、How to make bispecific antibodies、Methods Mol.Med.2000;40:333~339頁に記載されたように、例えば、抗原結合分子のためのポリペプチドをコードする核酸構築物からの発現によって、組換え産生することもできる。
【0111】
例えば、2つの抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン(すなわち、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン、ならびに別の標的タンパク質に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン)をコードし、抗原結合ドメイン間に好適なリンカーまたは二量体化ドメインをコードする配列を含むDNA構築物を、分子クローニング技術によって調製することができる。その後、組換え二重特異性抗体を、好適な宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)中での構築物の発現(例えば、in vitroでの)によって産生させた後、発現された組換え二重特異性抗体を、必要に応じて精製することができる。
【0112】
本開示により使用されることが企図される抗体には、対象への投与の後に長期持続性を有する抗体が含まれる。抗体は、たまに、例えば約6カ月に1回、投与することができるような薬物動態特性を有することができる。例えば、本開示による抗体は、例えばここに参照により完全に組み込まれるFukuzawaら、SciRep.(2017)7(1):1080頁に記載されるように、連続モノクローナル抗体再利用技術(SMART-Ig)で工学操作することができる。抗体は、例えば、Igawaら、Nature Biotechnology(2010)28:1203~1207頁またはSampeiら、PLoS One(2018)13(12):e0209509(両方ともここに参照により完全に組み込まれる)に記載されているように工学操作された、SMART再利用抗体またはSMART一掃抗体であってよい。
【0113】
デコイ受容体
IL-11またはIL-11含有複合体に結合することができるペプチドまたはポリペプチドベースの薬剤は、IL-11受容体、例えば、IL-11受容体のIL-11結合断片に基づくものであってもよい。
【0114】
一部の実施形態では、結合剤は、IL-11Rα鎖のIL-11結合断片を含んでもよく、好ましくは、可溶型であってよい、および/または膜貫通ドメインの1つもしくは複数、または全部を含まなくてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、gp130のIL-11結合断片を含んでもよく、好ましくは、可溶型であってよい、および/または膜貫通ドメインの1つもしくは複数、または全部を含まなくてもよい。そのような分子は、デコイ受容体と記載することができる。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体、例えば、IL-11Rαまたはgp130に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。
【0115】
Curtisら(Blood 1997 Dec 1;90(11):4403~12頁)は、可溶型マウスIL-11受容体アルファ鎖(sIL-11R)が、膜貫通型IL-11Rおよびgp130を発現する細胞上で試験した場合、IL-11の活性と拮抗することができたと報告している。彼らは、sIL-11Rによる観察されたIL-11拮抗作用が、膜貫通型IL-11Rを既に発現している細胞上のgp130分子数の限定に依存すると提唱した。
【0116】
シグナル伝達の阻害および治療介入のための基礎としての可溶型デコイ受容体の使用は、他のシグナル伝達分子:受容体対、例えば、VEGFとVEGF受容体についても報告されている(De-Chao Yuら、Molecular Therapy(2012);20 5、938~947頁;KonnerおよびDupont Clin Colorectal Cancer 2004 Oct;4 Suppl 2:S81~5頁)。
【0117】
そのため、一部の実施形態では、結合剤は、デコイ受容体、例えば、IL-11および/またはIL-11含有複合体の可溶型受容体であってもよい。デコイ受容体によって提供されるIL-11および/またはIL-11含有複合体の競合は、IL-11アンタゴニスト作用をもたらすと報告されている(Curtisら、上掲)。デコイIL-11受容体は、WO2017/103108A1およびWO2018/109168A1にも記載されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
デコイIL-11受容体は、好ましくは、IL-11および/またはIL-11含有複合体に結合し、それによって、これらの種が、gp130、IL-11Rαおよび/またはgp130:IL-11Rα受容体に結合できないようにする。そのため、それらは、エタネルセプトがTNFαのデコイ受容体として作用するのとほぼ同じ方法で、IL-11およびIL-11含有複合体のための「デコイ」受容体として作用する。IL-11媒介性シグナル伝達は、デコイ受容体の非存在下でのシグナル伝達のレベルと比較して低減する。
【0119】
デコイIL-11受容体は、好ましくは、1つまたは複数のサイトカイン結合モジュール(CBM)を介してIL-11に結合する。CBMは、天然に存在するIL-11の受容体分子のCBMであるか、またはそれから誘導されるか、またはそれと相同である。例えば、デコイIL-11受容体は、gp130および/またはIL-11RαのCBMに由来する、それから誘導される、またはそれと相同である1つまたは複数のCBMを含むか、またはそれからなってもよい。
【0120】
一部の実施形態では、デコイIL-11受容体は、gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでもよい、またはそれからなってもよい。一部の実施形態では、デコイIL-11受容体は、IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでもよい。ここで、所与のペプチド/ポリペプチドの参照領域または配列に「対応する」アミノ酸配列は、参照領域/配列のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性のうちの1つを有する。
【0121】
一部の実施形態では、デコイ受容体は、例えば、少なくとも100μM以下、必要に応じて、10μM以下、1μM以下、100nM以下、または約1~100nMのうちの1つの結合親和性で、IL-11に結合することができてもよい。一部の実施形態では、デコイ受容体は、IL-11結合ドメインの全部または一部を含んでもよく、必要に応じて、膜貫通ドメインの全部または一部を欠いてもよい。デコイ受容体を、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域、例えば、IgG Fc領域に融合することができる。
【0122】
阻害剤
本開示は、IL-11またはIL-11含有複合体に結合してIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な阻害分子の使用を企図する。本開示は、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体に結合してIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な阻害分子の使用も企図する。
【0123】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11の競合的阻害剤である。すなわち、一部の実施形態では、薬剤はIL-11と競合してIL-11の作用を阻害する薬剤である。IL-11の競合的阻害剤には、IL-11受容体(すなわち、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体を含む受容体)への結合に関してIL-11と競合する薬剤が含まれる。
【0124】
IL-11の競合的阻害剤は、IL-11に基づくペプチドまたはポリペプチドに基づく結合性薬剤、例えばIL-11の突然変異体、バリアントまたは結合性断片であってよい。そのような薬剤は、IL-11またはその断片のアミノ酸配列と高い配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%またはそれ以上)を有するアミノ酸配列を含むことができる。好適なペプチドまたはポリペプチドに基づく薬剤は、シグナル伝達の開始へ導かないかまたは最適以下のシグナル伝達(すなわち、野生型IL-11の結合によって開始されるシグナル伝達のレベルと比較して低減されるシグナル伝達レベル)をもたらす方法で、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)に結合することができる。IL-11バリアントおよびこの種の断片は、内因性IL-11の競合的阻害剤として作用することができる。
【0125】
例えば、W147Aは、IL-11のいわゆる「部位III」を破壊する、アミノ酸147がトリプトファンからアラニンに突然変異されたIL-11アンタゴニストである。この変異体は、IL-11Rαに結合することができるが、gp130ホモ二量体の咬合が失敗し、IL-11シグナル伝達の効率的な遮断をもたらす(Underhill-Dayら、2003;Endocrinology 2003 Aug;144(8):3406~14頁)。Leeら(Am J respire Cell Mol Biol.2008 Dec;39(6):739~746頁)も、IL-11のIL-11Rαへの結合を特異的に阻害することができるIL-11アンタゴニスト変異体(「変異タンパク質」)の生成を報告している。IL-11変異タンパク質は、WO2009/052588A1にも記載されている。
【0126】
Menkhorstら(Biology of Reproduction May1、2009、vol.80、no.5、920~927頁)は、メスのマウスにおけるIL-11作用を阻害するのに有効である、PEG化されたIL-11アンタゴニスト、PEGIL11A(CSL Limited、Parkvill、Victoria、Australia)を記載している。
【0127】
Pasqualiniら、Cancer(2015)121(14):2411~2421頁は、IL-11Rαに結合することができる、リガンド指向性のペプチド模倣薬、骨転移標的化ペプチド模倣体-11(BMTP-11)を記載している。
【0128】
一部の実施形態では、IL-11の受容体に結合することができる結合剤を、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体のうちの1つの低分子阻害剤の形態で提供することができる。一部の実施形態では、結合剤を、IL-11またはIL-11含有複合体の低分子阻害剤、例えば、Layら、Int.J.Oncol.(2012);41(2):759~764頁(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたIL-11阻害剤の形態で提供することができる。
【0129】
アプタマー
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合することができる薬剤は、アプタマーである。核酸/ペプチドリガンドとも呼ばれるアプタマーは、高い特異性および高い親和性で標的分子に結合する能力を特徴とする核酸またはペプチド分子である。今まで同定されたほぼ全てのアプタマーは、天然には存在しない分子である。
【0130】
所与の標的(例えば、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体)に対するアプタマーを、Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEX(商標))の方法によって、またはSOMAmers(遅い解離速度の修飾アプタマー)(Gold Lら(2010)PLoS ONE 5(12):e15004)を開発することによって同定および/または産生することができる。アプタマーおよびSELEXは、TuerkおよびGold、Science(1990)249(4968):505~10頁、およびWO91/19813に記載されている。SELEXおよびSOMAmer技術の適用は、例えば、アプタマーの化学的多様性を拡張するためにアミノ酸側鎖を模倣する官能基を付加することを含む。結果として、標的のための高親和性アプタマーを富化し、同定することができる。
【0131】
アプタマーは、DNAまたはRNA分子であってもよく、一本鎖または二本鎖であってもよい。アプタマーは、例えば、糖および/またはリン酸および/または塩基が化学的に修飾された、化学的に修飾された核酸を含んでもよい。そのような修飾は、アプタマーの安定性を改善するか、またはアプタマーを、分解に対してより耐性にしてもよく、リボースの2’位に修飾を含んでもよい。
【0132】
アプタマーを、当業者には周知の方法によって合成することができる。例えば、アプタマーを、例えば、固相支持体上で化学的に合成することができる。固相合成は、ホスホロアミダイト化学を使用してもよい。簡単に述べると、固相支持されたヌクレオチドを脱トリチル化した後、好適に活性化されたヌクレオシドホスホロアミダイトとカップリングさせて、亜リン酸トリエステル結合を形成させる。次いで、キャッピングを行った後、酸化剤、典型的には、ヨウ素を用いた亜リン酸トリエステルの酸化を行うことができる。次いで、サイクルを繰り返して、アプタマーを集合させることができる(例えば、Sinha,N.D.;Biernat,J.;McManus,J.;Koster,H.Nucleic Acids Res.1984、12、4539頁;およびBeaucage,S.L.;Lyer,R.P.(1992).Tetrahedron 48(12):2223頁を参照されたい)。
【0133】
好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチドのうちの1つの最小の長さを有してもよい。好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80ヌクレオチドのうちの1つの最大の長さを有してもよい。好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80ヌクレオチドのうちの1つの長さを有してもよい。
【0134】
アプタマーは、特定の標的分子に結合するように選択および操作されたペプチドであってもよい。ペプチドアプタマーならびにその生成および同定のための方法は、Reverdattoら、Curr Top Med Chem.(2015)15(12):1082~101頁に概説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ペプチドアプタマーは、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸のうちの1つの最小の長さを有してもよい。ペプチドアプタマーは、必要に応じて、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。好適なペプチドアプタマーは、必要に応じて、2~30、2~25、2~20、5~30、5~25または5~20アミノ酸のうちの1つの長さを有してもよい。
【0135】
アプタマーは、nMまたはpM範囲、例えば、500nM、100nM、50nM、10nM、1nM、500pM、100pM未満のうちの1つのKを有してもよい。
IL-11結合剤の特性
本開示によるIL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、以下の特性の1つまたは複数を示すことができる:
・IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体への特異的結合;
・IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体への10μM以下、好ましくは≦5μM、≦1μM、≦500nM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦100pMのうちの1つのKDによる結合;
・IL-11およびIL-11Rαの間の相互作用の阻害;
・IL-11およびgp130の間の相互作用の阻害;
・IL-11およびIL-11Rα:gp130受容体複合体の間の相互作用の阻害;
・IL-11:IL-11Rα複合体およびgp130の間の相互作用の阻害;ならびに
・IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用の阻害(すなわち、そのような複合体の多量体化)。
【0136】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。
【0137】
例えば、試験抗体/抗原結合性断片がIL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体に結合する能力の分析のための好適な陰性対照は、非標的タンパク質に対する抗体/抗原結合性断片(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体に特異的ではない抗体/抗原結合性断片)であってもよい。好適な陽性対照は、既知の、検証された(例えば、市販の)IL-11またはIL-11受容体に結合する抗体であってもよい。対照は、分析される推定IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体結合抗体/抗原結合性断片と同じアイソタイプのものであってよく、例えば、同じ定常領域を有してもよい。
【0138】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体、またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に特異的に結合することができてもよい。所与の標的分子に特異的に結合する薬剤は、好ましくは、それが他の非標的分子に結合するよりも高い親和性、および/または長い持続期間で標的に結合する。
【0139】
一部の実施形態では、薬剤はIL-6サイトカインファミリー(例えばIL-6、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC))の1つまたは複数の他のメンバーへの結合の親和性より大きな親和性で、IL-11またはIL-11含有複合体に結合することができる。一部の実施形態では、薬剤は、IL-6受容体ファミリーの1つまたは複数の他のメンバーに結合する親和性よりも高い親和性でIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合してもよい。一部の実施形態では、薬剤は、IL-6Rα、白血病抑制因子受容体(LIFR)、オンコスタチンM受容体(OSMR)、毛様体神経栄養因子受容体アルファ(CNTFRα)およびサイトカイン受容体様因子1(CRLF1)の1つまたは複数への結合の親和性より大きな親和性でIL-11Rαに結合することができる。
【0140】
一部の実施形態では、結合剤の非標的への結合の程度は、例えば、ELISA、SPR、バイオレイヤー干渉法(BLI)、マイクロスケール熱泳動法(MST)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、薬剤の標的への結合の約10%未満である。あるいは、結合特異性は、結合剤が、別の非標的分子に対するKよりも少なくとも0.1桁高い(すなわち、0.1x10(式中、nは桁を表す整数である))Kで、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合する場合、結合親和性を単位として反映されてもよい。これは、必要に応じて、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、または2.0のうちの1つであってもよい。
【0141】
所与の結合剤の、その標的に対する結合親和性は、その解離定数(K)を単位として記載されることが多い。結合親和性は、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、Heartyら、Methods Mol Biol(2012)907:411~442頁;またはRichら、Anal Biochem.2008 Feb 1;373(1):112~20頁を参照されたい)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Ladら(2015)J Biomol Screen 20(4):498~507頁;もしくはConcepcionら、Comb Chem High Throughput Screen.2009 Sep;12(8):791~800頁を参照されたい)、マイクロスケール熱泳動(MST)分析(例えば、Jerabek-Willemsenら、Assay Drug Dev Technol.2011 Aug;9(4):342~353頁を参照されたい)、または放射標識抗原結合アッセイ(RIA)などの、当業界で公知の方法によって測定することができる。
【0142】
一部の実施形態では、薬剤は、50μM以下、好ましくは、10μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM、500nM以下、100nM以下、75nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、15nM以下、12.5nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下のうちの1つのKでIL-11またはIL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる。
【0143】
一部の実施形態では、薬剤は、EC50=10,000ng/ml以下、好ましくは、5,000ng/ml以下、1000ng/ml以下、900ng/ml以下、800ng/ml以下、700ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、400ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、90ng/ml以下、80ng/ml以下、70ng/ml以下、60ng/ml以下、50ng/ml以下、40ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、15ng/ml以下、10ng/ml以下、7.5ng/ml以下、5ng/ml以下、2.5ng/ml以下、または1ng/ml以下のうちの1つの結合の親和性(例えば、ELISAによって決定された場合)で、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合する。そのようなELISAを、例えば、Antibody Engineering、vol.1(第2版)、Springer Protocols、Springer(2010)、Part V、657~665頁に記載のように実施することができる。
【0144】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の受容体、例えば、gp130またはIL-11Rαへの結合にとって重要である領域中でIL-11またはIL-11含有複合体に結合することによって、IL-11もしくはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用、および/または受容体を介するシグナル伝達を阻害する。一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体への結合にとって重要である領域中でIL-11の受容体に結合することによって、IL-11もしくはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用を阻害する、および/または受容体を介するシグナル伝達を阻害する。
【0145】
所与の結合剤(例えば、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤)が2つのタンパク質間の相互作用を阻害する能力を、例えば、結合剤の存在下での、または相互作用パートナーの一方もしくは両方の、結合剤とのインキュベーション後の相互作用の分析によって決定することができる。所与の結合剤が2つの相互作用パートナー間の相互作用を阻害することができるかどうかを決定するための好適なアッセイの例は、競合ELISAである。
【0146】
所定の相互作用(例えば、IL-11およびIL-11Rαの間、またはIL-11およびgp130の間、またはIL-11およびIL-11Rα:gp130の間、またはIL-11:IL-11Rαおよびgp130の間、またはIL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間)を阻害することが可能である結合性薬剤は、結合性薬剤の不在下での(または適当な対照結合性薬剤の存在下での)相互作用のレベルと比較した、結合性薬剤の存在下での-またはそれとの相互作用パートナーの片方または両方のインキュベーションの後の-相互作用パートナーの間の相互作用のレベルの低減/低下の観察によって同定される。好適な分析を、例えば、組換え相互作用パートナーを使用して、または相互作用パートナーを発現する細胞を使用して、in vitroで実施することができる。相互作用パートナーを発現する細胞は、内因的にそうするか、または細胞中に導入された核酸からそうしてもよい。そのようなアッセイのために、相互作用パートナーおよび/または結合剤の一方または両方を、相互作用レベルを検出および/または測定するために検出可能な実体で標識するか、またはそれと共に使用することができる。例えば、薬剤を、放射性原子または着色された分子または蛍光分子または任意の他の方法で容易に検出することができる分子で標識することができる。好適な検出可能分子としては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、酵素基質、および放射標識が挙げられる。結合剤を、検出可能な標識で直接標識するか、またはそれを間接的に標識することができる。例えば、結合剤は未標識であってもよく、それ自体、標識されている別の結合剤によって検出することができる。あるいは、第2の結合剤は、それにビオチンを結合されていてもよく、標識されたストレプトアビジンのビオチンへの結合を使用して、第1の結合剤を間接的に標識することができる。
【0147】
結合剤が2つの結合パートナー間の相互作用を阻害する能力を、そのような相互作用の下流の機能的結果、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の分析によって決定することもできる。例えば、IL-11およびIL-11Rα:gp130の間、またはIL-11:IL-11Rαおよびgp130の間、またはIL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用の下流の機能的結果には、例えばIL-11、または例えばIL-11の遺伝子/タンパク質発現によって媒介される過程を含めることができる。
【0148】
IL-11またはIL-11含有複合体およびIL-11の受容体の間の相互作用の阻害は、3Hチミジン組込みおよび/またはBa/F3細胞増殖アッセイ、例えば、例えばCurtisら、Blood、1997、90(11)およびKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003、9(2):75~80頁に記載のものを使用して分析することができる。Ba/F3細胞は、IL-11Rαおよびgp130を同時発現する。
【0149】
一部の実施形態では、結合性薬剤は、IL-11およびIL-11Rαの間の相互作用を、結合性薬剤の不在下での(または適当な対照結合性薬剤の存在下での)IL-11およびIL-11Rαの間の相互作用のレベルの100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つまで阻害することが可能であってよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rαとの相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rαとの相互作用を阻害することができてもよい。
【0150】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とgp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とgp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0151】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0152】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下でのIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0153】
一部の実施形態では、結合性薬剤は、IL-11:IL-11Rα:gp130複合体(すなわち、そのような複合体の多量体化)の間の相互作用を、結合性薬剤の不在下での(または適当な対照結合性薬剤の存在下での)IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用のレベルの100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つまで阻害することが可能であってよい。一部の実施形態では、結合性薬剤は、IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用を、結合性薬剤の不在下でのIL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用のレベルの1倍未満、例えば≦0.99倍、≦0.95倍、≦0.9倍、≦0.85倍、≦0.8倍、≦0.75倍、≦0.7倍、≦0.65倍、≦0.6倍、≦0.55倍、≦0.5倍、≦0.45倍、≦0.4倍、≦0.35倍、≦0.3倍、≦0.25倍、≦0.2倍、≦0.15倍、≦0.1倍のうちの1つまで阻害することが可能である。
【0154】
IL-11またはIL-11受容体の発現を低減することが可能な薬剤
本開示の態様では、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を阻止または低減することが可能であってよい。
【0155】
発現は遺伝子またはタンパク質の発現であってよく、本明細書に記載されるように、または当業者に周知である当技術分野の方法によって決定することができる。発現は、対象の細胞/組織/臓器/臓器系によるものであってもよい。
【0156】
好適な薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、一部の実施形態では、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を防止するか、または低減することができる薬剤は、低分子またはオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0157】
IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を防止する、または低減することができる薬剤は、例えば、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードする遺伝子の転写を阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの転写後プロセッシングを阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの安定性を低減すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの分解を促進すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの翻訳後プロセッシングを阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの安定性を低減すること、またはIL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの分解を促進することによって、そうしてもよい。
【0158】
Takiら、Clin Exp Immunol(1998)Apr;112(1):133~138頁は、インドメタシン、デキサメタゾンまたはインターフェロン-ガンマ(IFNγ)を用いた処置時のリウマチ滑膜細胞中でのIL-11の発現の低減を報告した。
【0159】
本開示は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止/低減するアンチセンス核酸の使用を企図する。一部の実施形態では、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止または低減することが可能な薬剤は、RNA干渉(RNAi)によって発現の低減を引き起こすことができる。
【0160】
一部の実施形態では、薬剤は、限定されるものではないが、shRNAまたはsiRNAを含む、アンチセンスまたは低分子干渉RNAなどの阻害的核酸であってもよい。
一部の実施形態では、阻害性核酸はベクター中で提供される。例えば、一部の実施形態では、薬剤は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数のためのshRNAをコードするレンチウイルスベクターであってもよい。
【0161】
オリゴヌクレオチド分子、特に、RNAを用いて、遺伝子発現を調節することができる。これらのものは、オリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAの標的化された分解、転写後遺伝子サイレンシング(PTG)、マイクロRNA(miRNA)によるmRNAの発生調節された配列特異的翻訳抑制、および標的化された転写遺伝子サイレンシングを含む。
【0162】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的オリゴヌクレオチド、例えば、mRNAを相補的配列結合によって標的化し、それに結合する、好ましくは一本鎖のオリゴヌクレオチドである。標的オリゴヌクレオチドがmRNAである場合、アンチセンスのmRNAへの結合は、mRNAの翻訳および遺伝子産物の発現をブロックする。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、センスゲノム核酸に結合し、標的ヌクレオチド配列の転写を阻害するように設計することができる。
【0163】
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のための既知の核酸配列(例えば、受託番号BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)を考慮して、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制するか、またはサイレンシングするようにオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0164】
そのようなオリゴヌクレオチドは任意の長さを有することができるが、好ましくは短く、例えば100ヌクレオチド未満、例えば10~40ヌクレオチドまたは20~50ヌクレオチドであってよく、標的オリゴヌクレオチド、例えばIL-11、IL-11Rαまたはgp130のmRNA中の対応する長さのヌクレオチド配列と完全なまたはそれに近い相補性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相補性)を有するヌクレオチド配列を含むことができる。ヌクレオチド配列の相補領域は、任意の長さを有してもよいが、好ましくは、少なくとも5、必要に応じて、50以下のヌクレオチド長、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドのうちの1つである。
【0165】
IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制は、好ましくは、細胞/組織/臓器/臓器系/対象によって発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量の減少をもたらすと予想される。例えば、所与の細胞中での、好適な核酸の投与によるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の抑制は、未処理の細胞と比較して、その細胞によって発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量の減少をもたらすと予想される。抑制は、部分的であってもよい。好ましい抑制の程度は、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、85%または90%のうちの1つである。90%~100%の抑制のレベルは、発現または機能の「サイレンシング」と考えられる。
【0166】
ヘテロクロマチン複合体の標的化および特定の染色体遺伝子座でのエピジェネティックな遺伝子サイレンシングにおけるRNAi機構および低分子RNAの役割は証明されている。RNA干渉(RNAi)としても知られる、二本鎖RNA(dsRNA)依存的転写後サイレンシングは、dsRNA複合体が短期間でサイレンシングのための特定の相同遺伝子を標的化することができる現象である。それは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するためのシグナルとして作用する。20ntのsiRNAは、一般には遺伝子特異的サイレンシングを誘導するには十分に長いが、宿主応答を回避するには十分に短い。標的遺伝子産物の発現の減少は、広範囲に及んでもよく、90%のサイレンシングが少ないsiRNA分子によって誘導される。RNAiに基づく治療剤は、いくつかの適応症のための第I、IIおよびIII相臨床試験に進行している(Nature 2009 Jan 22;457(7228):426~433頁)。
【0167】
当業界では、これらのRNA配列は、その起源に応じて、「短い、または低分子干渉RNA」(siRNA)または「マイクロRNA」(miRNA)と呼ばれる。両方の型の配列を使用して、相補的RNAに結合し、mRNA除去を誘発する(RNAi)またはタンパク質へのmRNA翻訳を停止させることによって、遺伝子発現を下方調節することができる。siRNAは、長い二本鎖RNAのプロセッシングによって誘導され、天然に見出される場合、典型的には、外因性起源のものである。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、短いヘアピンのプロセッシングによって誘導される、内因性にコードされた低分子非コードRNAである。siRNAとmiRNAは両方とも、RNAを切断することなく、部分的に相補的な標的配列を担持するmRNAの翻訳を阻害し、完全に相補的な配列を担持するmRNAを分解することができる。
【0168】
siRNAリガンドは、典型的には、二本鎖であり、標的遺伝子の機能のRNA媒介性下方調節の有効性を最適化するためには、siRNA分子の長さは、mRNA標的のsiRNAによる認識を媒介するRISC複合体によるsiRNAの正確な認識を確保するように選択され、したがって、siRNAは宿主応答を低減させるのに十分に短いのが好ましい。
【0169】
miRNAリガンドは、典型的には、一本鎖であり、部分的に相補的であり、リガンドがヘアピンを形成するのを可能にする領域を有する。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列は、miRNAよりも長い。このDNA配列は、miRNA配列および近似逆相補体を含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写される場合、miRNA配列およびその逆相補体は、塩基対を形成して、部分的二本鎖RNAセグメントを形成する。マイクロRNA配列の設計は、Johnら、PLoS Biology、11(2)、1862~1879頁、2004に考察されている。
【0170】
典型的には、siRNAまたはmiRNAの効果を模倣するように意図されたRNAリガンドは、10~40個のリボヌクレオチド(またはその合成アナログ)、より好ましくは、17~30個のリボヌクレオチド、より好ましくは、19~25個のリボヌクレオチド、最も好ましくは、21~23個のリボヌクレオチドを有する。二本鎖siRNAを用いる一部の実施形態では、分子は、例えば、1または2個の(リボ)ヌクレオチドの、典型的には、dTdT3’突出部のUUの、対称性3’突出部を有してもよい。本明細書に提供される開示に基づいて、当業者であれば、例えば、Ambion siRNAファインダーなどの資源を使用して、好適なsiRNAおよびmiRNA配列を容易に設計することができる。siRNAおよびmiRNA配列を合成的に産生し、外因的に付加して、遺伝子下方調節を引き起こすか、または発現系(例えば、ベクター)を使用して産生することができる。好ましい実施形態では、siRNAは、合成される。
【0171】
より長い二本鎖RNAを、細胞中でプロセッシングして、siRNAを産生してもよい(例えば、Myers(2003)Nature Biotechnology 21:324~328頁を参照されたい)。より長いdsRNA分子は、例えば、1もしくは2個の(リボ)ヌクレオチドの、対称性3’もしくは5’突出部を有してもよいか、または平滑末端を有してもよい。より長いdsRNA分子は、25ヌクレオチドまたはそれより長くてもよい。好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~30ヌクレオチド長である。より好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~27ヌクレオチド長である。最も好ましくは、より長いdsRNA分子は、27ヌクレオチド長である。30ヌクレオチド以上の長さのdsRNAを、ベクターpDECAP(Shinagawaら、Genes and Dev.、17、1340~5頁、2003)を使用して発現させることができる。
【0172】
別の選択肢は、細胞中での短いヘアピンRNA分子(shRNA)の発現である。shRNAは、合成siRNAよりも安定である。shRNAは、小さいループ配列によって隔てられた短い逆方向反復からなる。1つの逆方向反復は、遺伝子標的と相補的である。細胞中で、shRNAはDICERによって、標的遺伝子のmRNAを分解し、発現を抑制するsiRNAにプロセッシングされる。好ましい実施形態では、shRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。ヒトH1もしくは7SKプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下で、shRNA配列をコードするベクターを細胞にトランスフェクトすることによって、shRNAを細胞内で産生させることができる。あるいは、shRNAを、ベクターからの転写によって外因的に(in vitroで)合成することができる。次いで、shRNAを、細胞中に直接導入することができる。好ましくは、shRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含む。好ましくは、shRNA配列は、40~100塩基長、より好ましくは、40~70塩基長である。ヘアピンのステムは、好ましくは、19~30塩基対の長さである。ステムは、ヘアピン構造を安定化するためのG-U対を含有してもよい。
【0173】
siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子を、好ましくは、ベクター内に含有される核酸配列の転写によって組換え的に作製することができる。好ましくは、siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含む。
【0174】
一実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。ベクターは、当業界で公知の任意の方法で細胞中に導入してもよい。必要に応じて、RNA配列の発現を、組織特異的(例えば、心臓、肝臓、または腎臓特異的)プロモーターを使用して調節することができる。さらなる実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって外因的(in vitroで)産生される。
【0175】
好適なベクターは、IL-11、IL-11Rαまたはgp130抑制することができるオリゴヌクレオチド剤を発現するように構成されたオリゴヌクレオチドベクターであってもよい。そのようなベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターであってもよい。治療的オリゴヌクレオチドを、ウイルスベクターのゲノム中に組み込み、調節配列、例えば、その発現を駆動するプロモーターに作動可能に連結することができる。用語「作動可能に連結されている」は、選択されたヌクレオチド配列および調節ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を、調節配列の影響または制御下に置くような方法で共有的に連結される状況を含んでもよい。かくして、調節配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部または全部を形成するヌクレオチド配列の転写を行うことができる場合、調節配列は選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0176】
プロモーターにより発現されるsiRNA配列をコードするウイルスベクターは、当業界で公知であり、治療的オリゴヌクレオチドの長期的発現の利益を有する。例としては、レンチウイルス(Nature 2009 Jan 22;457(7228):426~433頁)、アデノウイルス(Shenら、FEBS Lett 2003 Mar 27;539(1~3)111~4頁)およびレトロウイルス(BartonおよびMedzhitov、PNAS November 12、2002、vol.99、no.23、14943~14945頁)が挙げられる。
【0177】
他の実施形態では、ベクターを、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制が必要とされる部位への治療的オリゴヌクレオチドの送達を補助するように構成することができる。そのようなベクターは、典型的には、オリゴヌクレオチドを、正に荷電したベクター(例えば、カチオン性細胞透過性ペプチド、カチオン性ポリマーおよびデンドリマー、ならびにカチオン性脂質)と複合体化すること;オリゴヌクレオチドを、低分子(例えば、コレステロール、胆汁酸、および脂質)、ポリマー、抗体、およびRNAとコンジュゲートすること;またはオリゴヌクレオチドを、ナノ粒子製剤中に封入すること(Wangら、AAPS J.2010 Dec;12(4):492~503頁)を含む。
【0178】
一実施形態では、RNAとして発現された場合、センスおよびアンチセンスセクションが会合して二本鎖RNAを形成するように、ベクターは、センス配向とアンチセンス配向の両方の核酸配列を含んでもよい。
【0179】
あるいは、siRNA分子を、当業界で公知である標準的な固相または液相合成技術を使用して合成することができる。ヌクレオチド間の連結は、ホスホジエステル結合であってもよく、またはあるいは、例えば、式P(O)S、(チオエート);P(S)S、(ジチオエート);P(O)NR’2;P(O)R’;P(O)OR6;CO;もしくはCONR’2(式中、RはH(もしくは塩)またはアルキル(1~12C)であり、R6はアルキル(1~9C)である)の連結基が、-O-もしくは-S-を介して隣接するヌクレオチドに連結される。
【0180】
修飾ヌクレオチド塩基を、天然に存在する塩基に加えて使用してもよく、それらは、それらを含有するsiRNA分子に対して有利な特性を付与してもよい。
例えば、修飾塩基は、siRNA分子の安定性を増大させることによって、サイレンシングにとって必要とされる量を低減することができる。修飾塩基の提供はまた、多かれ少なかれ、非修飾siRNAよりも安定であるsiRNA分子を提供することもできる。
【0181】
用語「修飾ヌクレオチド塩基」は、共有的に修飾された塩基および/または糖を有するヌクレオチドを包含する。例えば、修飾ヌクレオチドは、3’位でヒドロキシル基以外および5’位でリン酸基以外の低分子量有機基に共有的に結合される糖を有するヌクレオチドを含む。かくして、修飾ヌクレオチドはまた、2’-O-メチル-;2’-O-アルキル;2’-O-アリル;2’-S-アルキル;2’-S-アリル;2’-フルオロ-;2’-ハロまたはアジド-リボースなどの2’置換された糖、炭素環式糖アナログ、a-アノマー糖;アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、およびセドヘプツロースを含んでもよい。
【0182】
修飾ヌクレオチドは、当業界で公知であり、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンおよびピリミジン、ならびに他の複素環を含む。これらのクラスのピリミジンおよびプリンは、当業界で公知であり、シュードイソシトシン、N4,N4-エタノシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデニン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチル-アデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、D-マンノシルケオシン、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル5-オキシ酢酸、ケオシン、2-チオシトシン、5-プロピルウラシル、5-プロピルシトシン、5-エチルウラシル、5エチルシトシン、5-ブチルウラシル、5-ペンチルウラシル、5-ペンチルシトシン、および2,6ジアミノプリン、メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルシトシンが挙げられる。
【0183】
C.elegans、Drosophila、植物、および哺乳動物において遺伝子をサイレンシングするためのRNAiの使用に関する方法は、当業界で公知である(Fire A.ら、1998 Nature 391:806~811頁;Fire,A.Trends Genet.15、358~363頁(1999);Sharp,P.A.RNA interference 2001、Genes Dev.15、485~490頁(2001);Hammond,S.M.ら、Nature Rev.Genet.2、110~1119頁(2001);Tuschl,T.Chem.Biochem.2、239~245(2001);Hamilton,A.ら、Science 286、950~952頁(1999);Hammond,S.M.ら、Nature 404、293~296(2000);Zamore,P.D.ら、Cell 101、25~33頁(2000);Bernstein,E.ら、Nature 409、363~366頁(2001);Elbashir,S.M.ら、Genes Dev.15、188~200頁(2001);WO0129058;WO9932619、およびElbashir S M.ら、2001、Nature 411:494~498頁)。
【0184】
したがって、本開示は、さもなければIL-11、IL-11Rαまたはgp130を発現する哺乳動物、例えばヒトの細胞の中に適切に導入されるかまたはその中で発現されるときに、RNAiによってIL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制することが可能である核酸を提供する。
【0185】
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のための核酸配列(例えば、受託番号BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)のオリゴヌクレオチドを、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制するか、またはサイレンシングするように設計することができる。
【0186】
核酸は、例えば、GenBank受託番号NM_000641.3 GI:391353405(IL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(IL-11Rα)、NM_0011909891.1 GI:300244534(gp130)に定義された、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130 mRNAの一部または前記mRNAに対する相補配列に対する実質的な配列同一性を有してもよい。
【0187】
核酸は、二本鎖siRNAであってもよい(当業者であれば理解できるように、また、以下でさらに説明されるように、siRNA分子は、短い3’DNA配列をも含んでもよい)。
【0188】
あるいは、核酸は、哺乳動物細胞中で転写された場合、相補部分が互いにハイブリダイズする場合にRNAがヘアピンの形態を採るような、スペーサーを介して連結された2つの相補部分を有するRNAをもたらす、DNA(通常は二本鎖DNA)であってもよい。哺乳動物細胞中では、ヘアピン構造は、DICER酵素によって分子から切断され、2つの異なるが、ハイブリダイズしたRNA分子をもたらしてもよい。
【0189】
一部の好ましい実施形態では、核酸は、配列番号4~7(IL-11)の1つまたは配列番号8~11(IL-11Rα)の1つの配列に対して全体として標的化される。
mRNA転写物の一本鎖(すなわち、非自己ハイブリダイズ)領域のみが、RNAiのための好適な標的であると予想される。したがって、配列番号4~7または8~11の1つによって表される配列に、IL-11またはIL-11Rα mRNA転写物中の非常に近い他の配列も、RNAiのための好適な標的であり得ると提唱される。そのような標的配列は好ましくは長さが17~23ヌクレオチドであり、好ましくは配列番号4~7または8~11のうちの1つが少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または全19ヌクレオチドと重なる(配列番号4~7または8~11のうちの1つのいずれかの末端で)。
【0190】
したがって、本開示は、さもなければIL-11またはIL-11Rαを発現する哺乳動物細胞の中に適切に導入されるかまたはその中で発現されるときに、RNAiによってIL-11またはIL-11Rαの発現を抑制することが可能である核酸を提供し、ここで核酸は一般的に配列番号4~7または8~11のうちの1つの配列を標的にする。
【0191】
「全体として標的化された」核酸は、配列番号4~7または8~11と重複する配列を標的としてもよい。特に、核酸は、配列番号4~7または8~11の1つよりもわずかに長いか、または短いが、その他は配列番号4~7または8~11の1つと同一である、ヒトIL-11またはIL-11RαのmRNA中の配列(好ましくは、17~23ヌクレオチド長)を標的としてもよい。
【0192】
本開示の核酸および標的配列の間の完全な同一性/相補性は好ましいけれども、必須でないと予想される。したがって、本開示の核酸は、IL-11またはIL-11RαのmRNAと比較して単一のミスマッチを含むことができる。しかしながら、単一のミスマッチの存在であっても、効率の低下をもたらす可能性があるため、ミスマッチは存在しないのが好ましいと予想される。存在する場合、3’突出部を、ミスマッチの数の考慮から除外してもよい。
【0193】
用語「相補性」は、天然に存在するリボおよび/またはデオキシリボヌクレオチドからなる核酸間の従来の塩基対形成に限定されないだけでなく、mRNAと、非天然ヌクレオチドを含む本開示の核酸との塩基対形成も含む。
【0194】
一実施形態では、核酸(本明細書では二本鎖siRNAと呼ばれる)は、配列番号12~15に示される二本鎖RNA配列を含む。別の実施形態では、核酸(本明細書では二本鎖siRNAと呼ばれる)は、配列番号16~19に示される二本鎖RNA配列を含む。
【0195】
しかしながら、IL-11またはIL-11Rα mRNAの同じ領域を指向するわずかにより短いか、またはより長い配列も有効であることも予想される。特に、17~23bpの長さの二本鎖配列も有効であると予想される。
【0196】
二本鎖RNAを形成する鎖は、DNAまたはRNAであってもよい、短い3’ジヌクレオチド突出部を有してもよい。3’DNA突出部の使用は、3’RNA突出部と比較してsiRNA活性に対する効果を有しないが、核酸鎖の化学合成の費用を低減する(Elbashirら、2001c)。この理由から、DNAジヌクレオチドが好ましい場合がある。
【0197】
存在する場合、ジヌクレオチド突出部は、互いに対称的であってよいが、これは必須ではない。実際、センス(上)鎖の3’突出部は、mRNAの認識および分解には参画しないため、RNAi活性とは無関係である(Elbashirら、2001a、2001b、2001c)。
【0198】
DrosophilaにおけるRNAi実験は、アンチセンス3’突出部がmRNAの認識および標的化に参画し得ることを示すが(Elbashirら、2001c)、3’突出部は哺乳動物細胞中でのsiRNAのRNAi活性にとって必要ではないと考えられる。3’突出部の不正確なアニーリングは、したがって、哺乳動物細胞においてはほとんど効果がないと考えられる(Elbashirら、2001c;Czaudernaら、2003)。
【0199】
したがって、任意のジヌクレオチド突出部を、siRNAのアンチセンス鎖において使用することができる。それにも拘わらず、ジヌクレオチドは、好ましくは、-UUまたは-UG(または突出部がDNAである場合、-TTまたはTG)、より好ましくは、-UU(または-TT)である。-UU(または-TT)ジヌクレオチド突出部は、最も有効であり、転写シグナル(終結シグナルはTTTTTである)のRNAポリメラーゼIII末端と一致する(すなわち、その一部を形成することができる)。したがって、このジヌクレオチドが最も好ましい。ジヌクレオチドAA、CCおよびGGを使用してもよいが、有効性が低く、結果として、あまり好ましくはない。
【0200】
さらに、3’突出部を、siRNAから完全に省略してもよい。
本開示はまた、好ましくは、3’突出部を有するが、必要に応じて、有しない、上記二本鎖核酸の一方の成分鎖からそれぞれなる一本鎖核酸(本明細書では、一本鎖siRNAと称する)も提供する。本開示はまた、in vitroで互いにハイブリダイズして、上記二本鎖siRNAを形成した後、細胞中に導入することができるそのような一本鎖核酸の対を含有するキットも提供する。
【0201】
本開示は、哺乳動物細胞で転写させたときに、例えば配列番号12~15または16~19からなる群から選択される配列、または前記配列のいずれか1つと単一の塩基対置換で異なる配列を含む、自己ハイブリダイズして二本鎖モチーフを生成することが可能である2つの相補的部分を有するRNA(本明細書でshRNAとも呼ばれる)を与えるDNAも提供する。
【0202】
相補部分は一般に、2つの相補部分を互いにハイブリダイズさせる好適な長さおよび配列を有するスペーサーによって連結されると予想される。2つの相補(すなわち、センスおよびアンチセンス)部分を、いずれかの順序で5’-3’に連結することができる。スペーサーは、典型的には、約4~12ヌクレオチド、好ましくは、4~9ヌクレオチド、より好ましくは、6~9ヌクレオチドの短い配列と予想される。
【0203】
好ましくは、スペーサーの5’末端(上流の相補部分のすぐ3’側)は、ヌクレオチド-UU-または-UG-、再び好ましくは、-UU-からなる(しかし再度、これらの特定のジヌクレオチドの使用は必須ではない)。OligoEngine(Seattle、Washington、USA)のpSuper系における使用のために推奨される好適なスペーサーは、UUCAAGAGAである。このおよび他の場合では、スペーサーの末端は互いとハイブリダイズすること、例えば配列番号12~15または16~19の正確な配列を越えて二本鎖モチーフを少数(例えば1つまたは2つ)の塩基対分伸長させることができる。
【0204】
同様に、転写されるRNAは、好ましくは、下流の相補部分に由来する3’突出部を含む。再度、これは、好ましくは、-UUまたは-UG、より好ましくは、-UUである。
次いで、そのようなshRNA分子を、DICER酵素によって哺乳動物細胞中で切断して、ハイブリダイズしたdsRNAの一方またはそれぞれの鎖が3’突出部を含む、上記の二本鎖siRNAを得ることができる。
【0205】
本開示の核酸の合成のための技術は、勿論、当業界で周知である。
当業者であれば、周知の技術および市販の材料を使用して、本開示のDNAのための好適な転写ベクターを構築することができる。特に、DNAを、プロモーターおよび転写終結配列を含む制御配列と結合させる。
【0206】
特に好適なものは、OligoEngine(Seattle、Washington、USA)の市販のpSuperおよびpSuperior系である。これらのものは、ポリメラーゼ-IIIプロモーター(H1)および転写物の3’末端で2個のU残基に寄与するT5転写終結配列を使用する(DICERプロセッシング後、siRNAの一方の鎖の3’UU突出部を提供する)。
【0207】
別のポリメラーゼ-IIIプロモーター(U6)を使用する、別の好適な系は、Shinら(RNA、2009 May;15(5):898~910頁)に記載されている。
本開示の二本鎖siRNAは、IL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制するために、下記のように公知の技術を使用して哺乳動物細胞にin vitroまたはin vivoで導入することができる。
【0208】
同様に、本開示のDNAを含有する転写ベクターは、同じくIL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制するために、RNAの一時的または安定した発現のために、下記のように公知の技術を使用して腫瘍細胞にin vitroまたはin vivoで導入することができる。
【0209】
したがって、本開示は、哺乳動物、例えばヒトの細胞で、IL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制する方法であって、細胞に本開示の二本鎖siRNAまたは本開示の転写ベクターを投与することを含む方法も提供する。
【0210】
同様に、本開示は、本明細書に記載される疾患/状態を処置する方法であって、対象に本開示の二本鎖siRNAまたは本開示の転写ベクターを投与することを含む方法をさらに提供する。
【0211】
本開示は、本開示による疾患/状態を処置/予防する方法で使用するための本開示の二本鎖siRNAおよび本開示の転写ベクターをさらに提供する。
本開示は、本明細書に記載される疾患/状態の処置/予防のための医薬の調製における、本開示の二本鎖siRNAおよび本開示の転写ベクターの使用をさらに提供する。
【0212】
本開示は、本開示の二本鎖siRNAまたは本開示の転写ベクターを含む組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体との混合物でさらに提供する。好適な担体は、細胞膜の透過を補助することができる、親油性担体またはベシクルを含む。
【0213】
本開示のsiRNA二重鎖およびDNAベクターの投与にとって好適な材料および方法は、当業界で周知であり、RNAi技術の潜在能力を考慮した、改善された方法が開発中である。
【0214】
一般に、多くの技術が、核酸を哺乳動物細胞中に導入するために利用可能である。技術の選択は、核酸が、in vitroで培養細胞中に、またはin vivoで患者の細胞中に移入されるかどうかに依存すると予想される。in vitroでの核酸の哺乳動物細胞への移入にとって好適な技術としては、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE、デキストランおよびリン酸カルシウム沈降の使用が挙げられる。in vivoでの遺伝子移入技術としては、ウイルス(典型的には、レトロウイルス)ベクターおよびウイルスコートタンパク質-リポソーム媒介性トランスフェクション(Dzauら(2003)Trends in Biotechnology 11、205~210頁)が挙げられる。
【0215】
特に、in vitroとin vivoの両方での本開示の核酸の細胞投与のための好適な技術は、以下の論文に開示されている:
一般的概説:Borkhardt,A.2002.Blocking oncogenes in malignant cells by RNA interference-new hope for a highly specific cancer treatment?Cancer Cell.2:167~8頁。Hannon,G.J.2002.RNA interference.Nature.418:244~51頁。McManus,M.T.およびP.A.Sharp.2002.Gene silencing in mammals by small interfering RNAs.Nat Rev Genet.3:737~47頁。Scherr,M.、M.A.Morgan、およびM.Eder.2003b.Gene silencing mediated by small interfering RNAs in mammalian cells.Curr Med Chem.10:245~56頁。Shuey,D.J.、D.E.McCallus、およびT.Giordano.2002.RNAi:gene-silencing in therapeutic intervention.Drug Discov Today.7:1040~6頁。
【0216】
リポソームを使用する全身送達:Lewis,D.L.、J.E.Hagstrom,A.G.Loomis,J.A.Wolff、およびH.Herweijer.2002.Efficient delivery of siRNA for inhibition of gene expression in postnatal mice.Nat Genet.32:107~8頁。Paul,C.P.、P.D.Good、I.Winer、およびD.R.Engelke.2002.Effective expression of small interfering RNA in human cells.Nat Biotechnol.20:505~8頁。Song,E.、S.K.Lee、J.Wang、N.Ince、N.Ouyang、J.Min、J.Chen、P.Shankar、およびJ.Lieberman.2003.RNA interference targeting Fas protects mice from fulminant hepatitis.Nat Med.9:347~51頁。Sorensen,D.R.、M.Leirdal、およびM.Sioud.2003.Gene silencing by systemic delivery of synthetic siRNAs in adult mice.J Mol Biol.327:761~6頁。
【0217】
ウイルス媒介性移入:Abbas-Terki,T.、W.Blanco-Bose、N.Deglon、W.Pralong、およびP.Aebischer.2002.Lentiviral-mediated RNA interference.Hum Gene Ther.13:2197~201頁。Barton,G.M.、およびR.Medzhitov.2002.Retroviral delivery of small interfering RNA into primary cells.Proc Natl Acad Sci USA.99:14943~5頁。Devroe,E.、およびP.A.Silver.2002.Retrovirus-delivered siRNA.BMC Biotechnol.2:15頁。Lori,F.、P.Guallini、L.Galluzzi、およびJ.Lisziewicz.2002.Gene therapy approaches to HIV infection.Am J Pharmacogenomics.2:245~52頁。Matta,H.、B.Hozayev,R.Tomar、P.Chugh、およびP.M.Chaudhary.2003.Use of lentiviral vectors for delivery of small intergering RNA.Cancer Biol Ther.2:206~10頁。Qin,X.F.、D.S.An、I.S.Chen、およびD.Baltimore.2003.Inhibiting HIV-1 infection in human T cells by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA against CCR5.Proc Natl Acad Sci USA.100:183~8頁。Scherr,M.、K.Battmer、A.Ganser、およびM.Eder.2003a.Modulation of gene expression by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA.Cell Cycle.2:251~7頁。Shen,C.、A.K.Buck、X.Liu、M.Winkler、およびS.N.Reske.2003.Gene silencing by adenovirus-delivered siRNA.FEBS Lett.539:111~4頁。
【0218】
ペプチド送達:Morris,M.C.、L.Chaloin、F.Heitz、およびG.Divita.2000.Translocating peptides and proteins and their use for gene delivery.Curr Opin Biotechnol.11:461~6頁。Simeoni,F.、M.C.Morris、F.Heitz、およびG.Divita.2003.Insight into the mechanism of the peptide-based gene delivery system MPG:implications for delivery of siRNA into mammalian cells.Nucleic Acids Res.31:2717~24頁。siRNAの標的細胞への送達にとって好適であり得る他の技術は、米国特許第6,649,192B号および第5,843,509B号に記載されたものなどのナノ粒子またはナノカプセルに基づく。
【0219】
IL-11媒介シグナル伝達の阻害
本開示の実施形態では、IL-11の作用を阻害することが可能な薬剤は、以下の機能的特性のうちの1つまたは複数を有することができる:
・IL-11によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11のIL-11Rα:gp130受容体複合体への結合によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達(すなわち、IL-11トランスシグナル伝達)の阻害;
・IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の多量体化によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11によって媒介される過程の阻害;
・IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現の阻害。
【0220】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。
【0221】
IL-11媒介性シグナル伝達および/またはIL-11によって媒介されるプロセスは、IL-11の断片およびIL-11またはその断片を含むポリペプチド複合体によって媒介されるシグナル伝達を含む。IL-11媒介性シグナル伝達は、ヒトIL-11および/またはマウスIL-11によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。IL-11によって媒介されるシグナル伝達は、IL-11またはIL-11含有複合体の、IL-11または前記複合体が結合する受容体への結合後に起こってもよい。
【0222】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の生物活性を阻害することができてもよい。
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む受容体、例えば、IL-11Rα:gp130を介するシグナル伝達によって活性化される1つまたは複数のシグナル伝達経路のアンタゴニストである。一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む1つまたは複数の免疫受容体複合体、例えば、IL-11Rα:gp130を介するシグナル伝達を阻害することができる。本開示の様々な態様では、本明細書で提供される薬剤は、IL-11媒介のシスおよび/またはトランスシグナル伝達を阻害することが可能である。本開示の様々な態様による一部の実施形態では、本明細書で提供される薬剤はIL-11媒介のシスシグナル伝達を阻害することが可能である。
【0223】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11媒介性シグナル伝達を低減させることができる。
【0224】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11のIL-11Rα:gp130受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。そのようなシグナル伝達を、例えば、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞をIL-11で処理することによって、またはIL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でIL-11産生を刺激することによって分析することができる。
【0225】
IL-11媒介性シグナル伝達の阻害のための薬剤のIC50を、例えば、ヒトIL-11および薬剤の存在下でIL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞を培養すること、ならびにDNA中へのHチミジンの取込みを測定することによって決定することができる。一部の実施形態では、薬剤は、そのようなアッセイにおいて、10μg/ml以下、好ましくは、5μg/ml以下、4μg/ml以下、3.5μg/ml以下、3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.9μg/ml以下、0.8μg/ml以下、0.7μg/ml以下、0.6μg/ml以下、または0.5μg/ml以下のうちの1つのIC50を示してもよい。
【0226】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。一部の実施形態では、IL-11:IL-11Rα複合体は、可溶型の、例えば、IL-11RαとIL-11の細胞外ドメインの複合体、または可溶型IL-11Rαアイソフォーム/断片と、IL-11との複合体であってもよい。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶型(分泌型)アイソフォームであるか、または細胞膜に結合したIL-11Rαの細胞外ドメインのタンパク質分解的切断の遊離産物である。
【0227】
一部の実施形態では、IL-11:IL-11Rα複合体は、細胞に結合した、例えば、細胞膜に結合したIL-11RαとIL-11との複合体であってもよい。IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達は、gp130を発現する細胞をIL-11:IL-11Rα複合体、例えば、ペプチドリンカーによってIL-11Rαの細胞外ドメイン、例えばハイパーIL-11に連結されるIL-11を含む組換え融合タンパク質で処理することによって分析することができる。ハイパーIL-11は、IL-11Rα(ドメイン1~3からなるアミノ酸残基1~317;UniProtKB:Q14626)およびIL-11(UniProtKB:P20809のアミノ酸残基22~199)の断片を20アミノ酸長のリンカー(配列番号20)と使用して構築された。ハイパーIL-11のアミノ酸配列は、配列番号21に示される。
【0228】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達を阻害することができてもよく、また、IL-11のIL-11Rα:gp130受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達を阻害することもできる。
【0229】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11によって媒介される過程を阻害することが可能であってよい。
一部の実施形態では、薬剤はIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を阻害することが可能であってよい。遺伝子および/またはタンパク質の発現は本明細書に記載される通りに、または当業者に周知となる当技術分野の方法によって測定することができる。
【0230】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質発現を、薬剤の不在下での(または適当な対照薬剤の存在下での)発現のレベルの100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つまで阻害することが可能であってよい。一部の実施形態では、薬剤はIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を、薬剤の不在下での(または適当な対照薬剤の存在下での)発現のレベルの1倍未満まで、例えば≦0.99倍、≦0.95倍、≦0.9倍、≦0.85倍、≦0.8倍、≦0.75倍、≦0.7倍、≦0.65倍、≦0.6倍、≦0.55倍、≦0.5倍、≦0.45倍、≦0.4倍、≦0.35倍、≦0.3倍、≦0.25倍、≦0.2倍、≦0.15倍、≦0.1倍のうちの1つまで阻害することが可能である。
【0231】
治療および予防適応症
本開示は、加齢性疾患/状態の処置/予防に広く関連する。本明細書で言及される加齢性疾患/状態は、年齢と共に増加する発生率を有する疾患/状態である。加齢性疾患および状態は、例えばFranceschiら、Front Med(Lausanne)(2018)5:61頁ならびにJaulおよびBarron、Front Public Health(2017)5:335頁に記載され、この両方はここに参照により完全に組み込まれる。
【0232】
加齢性疾患/状態は、組織構造の進行性の変性および/または生理的組織機能の進行性の衰退によって一般的に特徴付けられる。そのような疾患/状態の根底にある分子および細胞の機構には、脱調節自己貪食、ミトコンドリア機能障害、テロメア短縮、酸化ストレス、炎症、代謝機能障害および一般的に細胞老化のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0233】
加齢は、多くの慢性疾患の主要なリスク因子である。肝臓では、加齢は急性肝損傷および肝線維症応答への感受性を増加させる(Kimら、Curr Opin Gastroenterol(2015)31(3):184~191頁;Huntら、Comput Struct Biotechnol J(2019)17:1151~1161頁、Ferrucciら、Aging Cell(2020)19(2):e13080頁)。さらに、加齢は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、アルコール性肝疾患、C型肝炎を含む様々な肝疾患のリスク増加および予後劣化と正に関連し、肝再生能力と負に関連している(Kimら、Curr Opin Gastroenterol(2015)31(3):184~191頁;Papatheodoridiら、Hepatology(2020)71(1):363~374頁)。
【0234】
本明細書で使用されるように、「加齢性」疾患/状態または表現型は、「加齢関連」または「年齢/加齢関連」と呼ぶこともできる。本開示の態様および実施形態では、「加齢性」と記載される疾患/状態または表現型は、別の病因よりも関連する疾患/状態または表現型を有する対象の年齢の結果として起こることができる。一部の態様および実施形態では、「加齢性」疾患/状態または表現型は、細胞老化の結果として起こることができる。実例として、体組成中の「加齢性」変化は、対象の食事よりも対象の加齢および/または細胞老化の結果として起こる体組成中の変化を指すことができる。
【0235】
老化細胞の蓄積は、加齢における特質の1つである(Huntら、Comput Struct Biotechnol J(2019)17:1151~1161頁)。細胞老化は減少した複製能力によって特徴付けられ、老化関連の分泌表現型(SASP)タンパク質を産生し、近隣細胞の慢性の低品質の炎症性環境をもたらす(Huntら、Comput Struct Biotechnol J(2019)17:1151~1161頁;Borghesanら、Trends Cell Biol.(2020)30(10):777~791頁)。病的ストレス状態の下で、影響を受けた組織中の老化細胞の過剰な蓄積は、様々な加齢性障害、例えばアルツハイマー病、がん、関節炎、白内障、骨粗しょう症、アテローム硬化症、高血圧、心血管疾患、2型糖尿病および慢性肝臓障害に似ることができる組織の再生能力および慢性炎症に悪影響を及ぼす(BakerおよびHaynes、Trends Biochem Sci(2011)36(5):254~261頁;Kimら、Curr Opin Gastroenterol(2015)31(3):184~191頁;Hernandez-Seguraら、Trends Cell Biol(2018)28(6):436~453頁;Stahlら、Front Immunol(2018)9:2795頁;Belikov、Ageing Res Rev(2019)49:11~26頁;Campisiら、Nature(2019)571(7764):183~192頁;Gorgoulisら、Cell(2019)179(4):813~827頁;Schmeerら、Cells(2019)8(11);Papatheodoridiら、Hepatology(2020)71(1):363~374頁)。したがって、細胞老化は、加齢性疾患の発達および進行における重要な生理過程であると考えられる(Borghesanら、Trends Cell Biol.(2020)30(10):777~791頁;Pignoloら、Trends Mol Med(2020)26(7):630~638頁)。
【0236】
一部の態様および実施形態では、本開示は細胞老化および細胞老化によって特徴付けられる疾患/状態の処置/予防を企図する。一部の態様および実施形態では、本開示の方法は細胞老化を阻害することを含む。一部の態様および実施形態では、本開示の方法は老化細胞を阻害することを含む。一部の態様および実施形態では、本方法は、老化細胞の数を低減すること、および/または老化細胞の活動を阻害することを含む。
【0237】
一部の実施形態では、老化細胞の数を低減することは、細胞老化の過程を阻害することを含む。すなわち、一部の実施形態では、老化細胞の数を低減することは、非老化前駆細胞からの老化細胞の発達を阻害することを含む。一部の実施形態では、老化細胞の数を低減することは、細胞老化の過程を覆すことを含む。すなわち、一部の実施形態では、老化細胞の数を低減することは、老化細胞の非老化表現型への復帰を促進することを含む。一部の実施形態では、老化細胞の数を低減することは、老化細胞を減少させることを含む。
【0238】
細胞老化は、例えば、Childsら、Nat Med(2015)21(12):1424~1435頁およびvan Deursen、Nature(2014)509(7501):439~446頁に記載され、その両方はここに参照により完全に組み込まれる。細胞老化は、細胞分裂の停止(p16INK4a、p21CIP1およびp53の活性化と関連する)、クロマチンリモデリング(例えば、DNA傷害応答(DDR)、前骨髄球性白血病タンパク質(PML)体の形成、および老化関連の異質染色質病巣(SAHF)を含む)、老化関連のβ-ガラクトシダーゼ活性、および老化関連分泌表現型(SASP)と呼ばれる炎症誘発性因子の混合物の生成によって特徴付けられる。
【0239】
本開示により、老化細胞は、同じ細胞型の/同じ組織からの同等の非老化細胞と比較して以下のうちの1つまたは複数を提示することができる:p16INK4a、p21CIP1および/またはp53の発現の増加;DDRのレベルの増加;PML体の数の増加;SAHFの数の増加、老化関連β-ガラクトシダーゼの発現および/または活性の増加;1つまたは複数のSASP因子(例えばIL-1bまたはIL-8)の発現の増加。
【0240】
特定の態様および実施形態では、本開示は、細胞老化を含むおよび/またはそれによって特徴付けられる疾患/状態、すなわち細胞老化が病理学上結びつけられる疾患/状態の処置に関する。細胞老化が「病理学上結びつけられる」疾患/状態は、老化細胞の数/割合および/または活性がその疾患または状態と正に関連している疾患/状態である。
【0241】
細胞老化が「病理学上結びつけられる」疾患/状態は、老化細胞の数/割合および/または活性の増加(非病的な健康状態と比較して)が、その疾患/状態の開始、発達および/または進行と正に関連している疾患/状態であってよい。細胞老化が「病理学上結びつけられる」疾患/状態は、老化細胞の数/割合および/または活性の増加(非病的な健康状態と比較して)が、その疾患/状態の1つまたは複数の症状の重症度と正に関連している疾患/状態であってよい。細胞老化が「病理学上結びつけられる」疾患/状態は、老化細胞の数/割合および/または活性の増加(非病的な健康状態と比較して)が、その疾患/状態の開始、発達および/または進行のリスク因子である疾患/状態であってよい。
【0242】
本開示により処置/提示されることが企図される疾患/状態(例えば加齢性疾患/状態)には、例えば老人病症候群、アルツハイマー病、がん、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脂肪症(例えば肝臓の)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、心血管疾患、高血圧(例えば、収縮期、拡張期)、低減または保存された駆出分画による心不全、腎臓病(例えば慢性腎臓病)、アテローム硬化症、高血圧、黄斑症、加齢性黄斑変性症(AMD)、白内障、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節炎、骨関節炎、骨減少症、骨粗しょう症、パーキンソン病、歯周炎、慢性関節リウマチ、真性糖尿病、II型真性糖尿病、慢性肝疾患、サルコペニア、便秘、不能症、膣乾燥、脱毛、皮膚疾患および皮膚脆弱性が含まれる。
【0243】
老人病症候群は高齢患者で一般的な状態であり、例には虚弱、認知障害、精神錯乱、認知症、失禁、聴力障害、視覚障害、サルコペニア、メタボリックシンドローム、栄養失調、歩行障害、転倒および褥瘡性潰瘍が含まれる。
【0244】
本開示により処置/提示されることが企図されるさらなる例示的な疾患/状態には、虚弱、体脂肪量の加齢性増加、サルコペニア、加齢性高脂血症、加齢性高トリグリセリド血症、加齢性高コレステロール血症、加齢性肝臓脂肪症、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、加齢性非アルコール性脂肪肝(NAFL)、加齢性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、加齢性心血管疾患、加齢性高血圧、加齢性腎疾患および加齢性皮膚疾患が含まれる。
【0245】
疾患/状態が本明細書で「加齢性」と記載される場合、他の可能な病因と異なるような、対象の年齢の結果として起こる疾患/状態に言及される。例えば、「加齢性脂肪症」は、加齢過程の結果として起こる脂肪症の特定のサブタイプを指し、例えば食事の結果として起こる脂肪症とは異なる。
【0246】
特定の実施形態では、本開示により処置/予防される疾患/状態は、以下から選択される:骨関節炎、骨減少症、骨粗しょう症、パーキンソン病、歯周炎、虚弱、認知障害、精神錯乱、認知症、失禁、聴力障害、視覚障害、栄養失調、歩行障害、転倒および褥瘡性潰瘍。
【0247】
一部の態様および実施形態では、本開示は虚弱の処置/予防を企図する。
虚弱は、Friedら、J Gerontol A Biol Sci Med Sci(2001)56(3):M146~56(ここに参照により完全に組み込まれる)によって確立された表現型判定基準によって:低握力、低エネルギー、遅い歩行速度、低い身体活動および/または非意図的体重減少の3つ以上を有する対象として決定することができ、それは次に、Xue、Clin Geriatr Med(2011)2月;27(1):1~15頁(ここに参照により完全に組み込まれる)の表1で要約されるように、女性の健康および加齢研究(Women's Health and Aging Studies)(WHAS)または心血管健康研究(Cardiovascular Health Study)(CHS)の虚弱規定判定基準によって規定することができる。
【0248】
一部の態様および実施形態では、本開示は、体組成中の加齢性変化の処置/予防を企図する。
体組成中の加齢性変化は、例えばSantanastoら、J Gerontol A Biol Sci Med Sci.(2017)72(4):513~519頁およびSt-OngeおよびGallagher、Nutrition(2010)26(2):152~155頁、に記載され、その両方はここに参照により完全に組み込まれる。体組成中の加齢性変化には以下のものが含まれる:筋肉量の低減(すなわちサルコペニア)、骨量の低減(例えば骨粗しょう症につながる)、体脂肪量の増加、軟骨の変性(例えば骨関節炎につながる)、腎臓の変化(例えば腎臓機能障害(例えば糸球体濾過率における年齢依存性悪化)につながる)、呼吸系の器官の変化(例えば肺、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)につながる)、消化器系の器官の変化(例えば便秘につながる)、膀胱の変化(例えば尿失禁につながる)、歯および/または歯肉の変性(例えば歯周病につながる)、脱毛、皮膚脆弱性(例えば乾燥および/またはしわにつながる)、聴覚系の器官の変化(例えば難聴につながる)、および生殖器官への変化(例えば不能症または膣乾燥につながる)。
【0249】
筋肉量の加齢性低減は、骨格筋肉量の低減を含むことができる。骨格筋肉はミトコンドリアへの年齢関連の変化を経て、より多くの反応性酸素種を放出する非効率的なミトコンドリアの形成につながる(Johnsonら、Trends Endocrinol Metab.(2013)24(5):247~56頁)。ミトコンドリアの機能障害は次に骨格筋肉のアポトーシスの活性化をもたらすと考えられ、骨格筋肉の萎縮をもたらす(Lenkら、J Cachexia Sarcopenia Muscle.(2010)1(1):9~21頁)。
【0250】
骨量の加齢性低減は、例えば、Demontieroら、Ther Adv Musculoskelet Dis.(2012)4(2):61~76頁に記載される。根底にある機構には、破骨細胞による骨吸収および骨芽細胞による骨組織の不十分な形成が含まれる。骨量の低減は骨粗しょう症をもたらすことができ、それは骨量およびマイクロアーキテクチャの悪化と規定され、脆弱性骨折のリスクを増加させる(RaiszおよびRodan、Endocrinol Metab Clin North Am.(2003)32(1):15~24頁)。
【0251】
加齢は、体重および肥満度指数(BMI)における一般的および生理的変動から独立した、総体脂肪量の増加によってしばしば特徴付けられる(Zongら、Obesity(2016)24(11):2414~2421頁)。特に、脂肪滴(LD)の形での筋肉脂肪、内蔵脂肪および肝脂肪の蓄積は、年齢依存性の増加を示す(Reindersら、Curr Opin Clin Nutr Metab Care.(2017)20(1):11~15頁)。
【0252】
一部の実施形態では、本開示による体組成の加齢性変化は以下から選択される:筋肉量の加齢性低減、サルコペニア、骨量の加齢性低減、骨粗しょう症および体脂肪量の加齢性増加。一部の実施形態では、本開示による体組成の加齢性変化は以下から選択される:筋肉量の加齢性低減、サルコペニアおよび体脂肪量の加齢性増加。
【0253】
加齢は、血清脂質レベルの増加としばしば関連している。より高齢の成人は、トリグリセリドおよびコレステロールのより高い血清レベルを示し、一部の場合には、高脂血症(例えば、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症または複合的高脂血症(高トリグリセリド血症および高コレステロール血症の組合せ))を示す。高脂血症は次に、例えばアテローム硬化症および心血管疾患と一般的に関連している。
【0254】
高トリグリセリド血症は、例えばBerglundら、J.Clin.Endocrinol.Metab.(2012)97(9):2969~89頁に記載され、≧150mg/dL(≧1.7mmol/L)の血中トリグリセリドレベルによって規定される。高コレステロール血症は、例えばBhatnagarら、BMJ(2008)337:a993に記載される。UK NHSは高コレステロール血症を≧5mmol/Lの血中総コレステロールレベル、または≧3mmol/Lの血中低密度リポタンパク質(LDL)レベルと規定する。US NIHは、高コレステロール血症を≧240mg/dLの血中総コレステロールレベルと規定する。
【0255】
加齢は、例えばNguyenら、Cell Rep(2018)8月7日;24(6):1597~1609頁に記載されるように、肝臓脂肪症としばしば関連している。脂肪症は、細胞/組織/器官の中での脂質の異常な保持を指す。脂肪症は大顆粒または微小胞であってよく、一般的に肝臓に影響を及ぼす。加齢性脂肪症は、加齢性非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に導くことがある。NAFLDは、例えば、BenedictおよびZhang、World J Hepatol.(2017)9(16):715~732頁およびAlbhaisiら、バージョン1。F1000Res.(2018)7:F1000 Faculty Rev-720でレビューされ、その両方はここに参照により完全に組み込まれる。NAFLDは、肝臓の、特に肝細胞の脂肪症によって特徴付けられる。NAFLDには、非アルコール性脂肪肝(NAFL)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が含まれる。NAFLは、肝細胞損傷の証拠のない、実質の5%より多くを巻き込む肝臓の脂肪症によって特徴付けられる。NAFLは、炎症および/または線維症と合併した脂肪症であるNASHへ進行することができる(脂肪肝炎)。
【0256】
特定の実施形態では、本開示により処置される疾患/状態は、以下の1つまたは複数を含むかまたはそれによって特徴付けることができる:虚弱、筋肉量の低減、体脂肪量の増加、血清脂質の増加(例えば高脂血症)、血清トリグリセリドの増加(例えば高トリグリセリド血症)、血清コレステロールの増加(例えば高コレステロール血症)、肝臓トリグリセリドの増加(例えば肝臓の脂肪症)および血清β-ヒドロキシブチレートの低減。低減/増加は非病的状態または状態の不在下と比較して決定されることが理解される。
【0257】
本開示の治療的および予防的効果は、例えば細胞、組織/器官/器官系/対象において、IL-11媒介シグナル伝達の阻害(すなわちIL-11媒介シグナル伝達の拮抗)を通して達成される。
【0258】
IL-11は、雄および雌マウスにおいて全ての組織にわたって年齢と共に上方制御される。それはERKを活性化してリン酸化し、LKB1(Serine325)の位置で直接的に、およびP90RSK(LKB1(Serine428))を通して間接的にLKB1を不活性化する。LKB1は、本明細書の発明者によるそのデモンストレーションにより、今日まで構成的に活性であってリン酸化によって調節されないと考えられていた。IL11によって媒介されるERKリン酸化およびLKB1不活性化は、AMPKからのLKB1の解離につながり、AMPKは次に脱リン酸化され、不活性化される。不活性のAMPKは、mTORC1を阻害する作用をするTSC複合体のメンバーをもはや活性化することができない。このように、mTORC1は活性化される。活性化mTORC1は、P70S6KおよびRPS6をリン酸化して活性化し、タンパク質合成およびタンパク平衡を害する自己貪食の阻害を含む多くの他の加齢促進経路を刺激する。このスキーマは、図16Bで概説される。したがって、IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、加齢に対して広く到達する大域的な治療的および予防的効果を有する。
【0259】
理論によって束縛されることを望まないが、IL-11は、LKB1に対するその上流の活性を通してAMPKを阻害してmTORを活性化し、発明者は、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、推定上の抗加齢性薬剤メトホルミンおよびラパマイシン併用と同等のまたは優れた効果を有し、AMPK活性を増加させ、mTOR活性を減少させることによって強力な抗加齢作用を発揮することを実証した。
【0260】
したがって、一部の実施形態では、本開示により処置または予防される疾患/状態は、ベースラインの健康な患者と比較して1つまたは複数の影響を受けた組織における増加したIL-11、減少したAMPK、および/または増加したmTORの機能、遺伝子および/またはタンパク質の発現もしくは活性と関連付けることができる。一部の実施形態では、本開示により処置または予防される疾患/状態は、1つまたは複数の影響を受けた組織におけるIL-11の機能獲得突然変異と関連付けることができる。実際、本明細書で概説される「加齢性」疾患/状態または表現型は、一部の実施形態では、1つまたは複数の影響を受けた組織におけるIL-11の機能獲得突然変異と関連付けることができる。
【0261】
一部の実施形態では、本開示により処置または予防される疾患/状態は、1つまたは複数の加齢の特質であってよいかまたはそれと関連付けることができる。Lopez-Otinら、2013、に記載される「加齢の特質」は、以下からなる:テロメア漸減、ゲノム不安定性、ミトコンドリア機能障害、細胞老化、幹細胞消耗、タンパク平衡の喪失、脱調節された栄養感知、後成的変化および変化した細胞間伝達。一部の実施形態では、本開示により処置または予防される疾患/状態は、脱調節された栄養感知、タンパク平衡の喪失および/または細胞老化から選択される特質であるかまたはそれと関連する。
【0262】
本開示の治療的および予防的方法の有用性は、上に記載される疾患/状態によって引き起こされるか悪化する、または上に記載される疾患/状態が劣った予後を提供する疾患/状態に及ぶ。
【0263】
一部の実施形態では、本開示により処置/予防される疾患/状態は、例えば正常な器官/組織/対象(すなわち、疾患/状態がない場合)と比較したときの、その疾患/状態による影響を受ける器官/組織/対象におけるIL-11および/またはIL-11Rαの発現(すなわち、遺伝子および/またはタンパク質の発現)の増加によって特徴付けることができる。
【0264】
一部の実施形態では、疾患/状態は、IL-11の上方制御、例えば疾患の症状が現れるかまたは起こるかもしれない細胞もしくは組織におけるIL-11の上方制御、または細胞外IL-11もしくはIL-11Rαの上方制御と関連付けることができる。
【0265】
処置は、疾患/状態の発達または進行を低減/遅延/阻止/後退させるのに有効であってよい。処置は、疾患/状態の1つまたは複数の症状の悪化を低減/遅延/阻止/後退させるのに有効であってよい。処置は、疾患/状態の1つまたは複数の症状を向上させるのに有効であってよい。処置は、疾患/状態の1つまたは複数の症状の重症度を低減するのに、および/またはそれを後退させるのに有効であってよい。処置は、疾患/状態の作用を後退させるのに有効であってよい。
【0266】
予防は、疾患/状態の発達の予防、および/または疾患/状態の悪化の予防、例えば、疾患/状態の、例えば後の/慢性ステージへの進行の予防を指すことができる。
本開示の態様および実施形態は、健康寿命を向上/増加させることに関する。本開示は、対象の健康寿命を向上/増加させることを含む方法、およびそのような方法で使用するための物品(薬剤、組成物)を提供する。
【0267】
本明細書で使用されるように、「健康寿命」は、加齢性疾患/状態のない生存期間と規定することができる。したがって、所定の対象の健康寿命は、対象が加齢性疾患/状態(例えば本明細書に記載される加齢性疾患)を有しない期間を指すことができる。対象は、彼らが関連する疾患状態を診断されるまで、所定の疾患/状態を有しないと考えることができる。
【0268】
向上した/増加した/延長された健康寿命を有する対象は、参照対象と比較してより長い期間加齢性疾患/状態のないままであることが理解される。本開示との関連で、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を投与された対象は、同等の未処置の対象と比較して増加した健康寿命を有する。
【0269】
本開示の一部の実施形態では、対象の健康寿命は、対象が以下のうちの1つを有しない(すなわち診断されない)期間を指すことができる:老人病症候群、アルツハイマー病、がん、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脂肪症(例えば肝臓の)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、心血管疾患、高血圧(例えば収縮期、拡張期)、低減または保存された駆出分画による心不全、腎臓病(例えば慢性腎臓病)、アテローム硬化症、高血圧、黄斑症、加齢性黄斑変性症(AMD)、白内障、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節炎、骨関節炎、骨減少症、骨粗しょう症、パーキンソン病、歯周炎、慢性関節リウマチ、真性糖尿病、II型真性糖尿病、慢性肝疾患、サルコペニア、便秘、不能症、膣乾燥、脱毛、皮膚疾患および皮膚脆弱性。
【0270】
あるいは、「健康寿命」は、対象が対象の組織、器官または器官系の機能で著しい加齢性悪化を示さない生存期間と規定することができる。機能の悪化は、加齢性疾患/状態の結果として起こることができる。所定の組織/器官/器官系の機能の悪化を示している対象は、関連する機能の悪化を経験していない同等の対象で観察されるレベルの1倍未満、例えば≦0.99倍、≦0.95倍、≦0.9倍、≦0.85倍、≦0.8倍、≦0.75倍、≦0.7倍、≦0.65倍、≦0.6倍、≦0.55倍、≦0.5倍、≦0.45倍、≦0.4倍、≦0.35倍、≦0.3倍、≦0.25倍、≦0.2倍、≦0.15倍または≦0.1倍のうちの1つである、関連する機能のレベルを示すことができる。
【0271】
本開示の様々な態様により、本方法は、以下の1つまたは複数(例えば本明細書に記載される疾患/状態の処置/予防との関連で)を含むことができる:
虚弱症状を低減すること;
除脂肪量を増加/維持すること;
除脂肪量の加齢性低減を阻害すること;
体脂肪量を低減/維持すること;
体脂肪量の加齢性増加を阻害すること;
代謝機能の加齢性衰退を低減すること;
加齢性高脂血症を低減すること;
加齢性高トリグリセリド血症を低減すること;
加齢性高コレステロール血症を低減すること;
加齢性脂肪症(例えば肝臓の)を低減すること;
脂肪酸の酸化および/またはケトン生産を増加/維持すること;
β-ヒドロキシブチレートの血清レベルを増加/維持すること;
老化病理的病巣の数/サイズおよび/または重症度を低減すること:
老化病理的病巣の発達を阻害すること;
加齢性線維症を低減すること;
加齢性線維症の発達を阻害すること;
細胞老化を阻害すること;
心機能を増加/維持すること;
心機能の加齢性悪化を阻害すること;
腎機能を増加/維持すること;
腎機能の加齢性悪化を阻害すること;
代謝機能を増加/維持すること;
代謝機能の加齢性悪化を阻害すること;
肝機能を増加/維持すること;
肝機能の加齢性悪化を阻害すること;
肺機能を増加/維持すること;
肺機能の加齢性悪化を阻害すること;
皮膚機能を増加/維持すること;および
皮膚機能の加齢性悪化を阻害すること。
【0272】
投与
IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の投与は、好ましくは「治療的に有効である」かまたは「予防的に有効である」量であり、これは対象への利益を示すのに十分である。
【0273】
投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、疾患の性質および重症度ならびに薬剤の性質に依存すると予想される。処置の処方、例えば、用量に関する決定などは、一般開業医および他の医師の責任の範囲内にあり、典型的には、処置しようとする疾患/状態、個々の対象の状態、送達部位、投与方法および医師にとって公知の他の因子を考慮に入れる。上記の技術およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000、pub.Lippincott,Williams & Wilkinsに見出すことができる。
【0274】
薬剤の複数の用量を提供することができる。用量の1つまたは複数、または各々は、別の治療剤の同時または連続的投与が付随してもよい。
複数の用量は所定時間間隔によって分離されてもよく、それは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日間、または1、2、3、4、5、6、8、10もしくは12カ月のうちの1つから選択することができる。例として、用量は7、14、21または28日(プラスマイナス3、2または1日)ごとに1回与えることができる。
【0275】
治療適用では、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、好ましくは、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、フィラー、バッファー、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、着香剤および甘味剤を限定されずに含む、当業者に周知である1つまたは複数の他の薬学的に許容される成分と一緒に医薬または医薬品として製剤化される。
【0276】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、正当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/危険比に見合う、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、問題の対象(例えば、ヒト)の組織との接触における使用にとって好適である、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。それぞれの担体、アジュバント、賦形剤などはまた、製剤の他の成分と適合する意味で「許容される」ものでなければならない。
【0277】
好適な担体、アジュバント、賦形剤などは、標準的な薬学の教科書、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company、Easton,Pa.、1990;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994に見出すことができる。
【0278】
製剤を、製薬業界における周知の任意の方法によって調製することができる。そのような方法は、活性化合物を、1つまたは複数の補助成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性化合物を、担体(例えば、液体担体、微細に分割された固体担体など)と均一かつ密接に会合させること、次いで、必要に応じて、生成物を形状化することによって調製される。
【0279】
製剤は、処置する疾患/状態により好適な投与、例えば、局所、非経口、全身、静脈内、動脈内、筋肉内、クモ膜下、眼内、結膜内、皮下、経口、皮内または注射を含むことができる経皮投与経路のために調製することができる。注射用製剤は、選択された薬剤を無菌または等張性の媒体中に含むことができる。局所製剤は、クリームまたはローションとして提供することができる。製剤および投与様式は、薬剤および処置する疾患により選択することができる。
【0280】
IL-11およびIL-11の受容体の検出
本開示の一部の態様および実施形態は、対象から得た試料中のIL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)の発現の検出に関する。
【0281】
一部の態様および実施形態では、本開示は、IL-11またはIL-11の受容体(IL-11またはIL-11の受容体のそれぞれをコードするタンパク質またはオリゴヌクレオチドとして)の発現の上方制御(過剰発現)、およびIL-11の作用を阻害することが可能な薬剤による、またはIL-11もしくはIL-11の受容体の発現を阻止もしくは低減することが可能な薬剤による処置への適合性の指標としてのそのような上方制御の検出に関する。
【0282】
上方制御される発現は、所定のタイプの細胞または組織で通常予想されるだろうものより大きいレベルでの発現を含む。上方制御は、細胞または組織中の関連する因子の発現レベルを測定することによって決定することができる。対象からの細胞または組織試料中の発現レベル、および関連因子の発現の参照レベル、例えば同じかまたは対応する細胞または組織タイプのための関連因子の発現の正常レベルを表す値または値の範囲の間で比較することができる。一部の実施形態では、参照レベルは、対照試料で、例えば健康対象からのまたは同じ対象の健康組織からの対応する細胞または組織で、IL-11またはIL-11の受容体の発現を検出することによって決定することができる。一部の実施形態では、参照レベルは標準曲線またはデータセットから得ることができる。
【0283】
発現レベルは絶対比較のために定量化することができるか、または相対比較を行うことができる。
一部の実施形態では、IL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)の上方制御は、試験試料中の発現レベルが参照レベルの少なくとも1.1倍であるとき、存在すると考えることができる。より好ましくは、発現レベルは、参照レベルのそれの少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.7、少なくとも2.8、少なくとも2.9、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも5.0、少なくとも6.0、少なくとも7.0、少なくとも8.0、少なくとも9.0または少なくとも10.0倍のうちの1つから選択することができる。
【0284】
発現レベルは、いくつかの公知のin vitroアッセイ技術の1つ、例えばPCRをベースとしたアッセイ、in situハイブリダイゼーションアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、免疫学的または免疫組織化学的アッセイによって決定することができる。
【0285】
例として、好適な技術は、試料をIL-11またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤と接触させ、薬剤およびIL-11またはIL-11の受容体の複合体の形成を検出することによって試料中のIL-11またはIL-11の受容体のレベルを検出する方法を含む。薬剤は任意の好適な結合性分子、例えば抗体、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは小分子であってよく、形成される複合体の検出、例えば可視化を許すために場合により標識されてもよい。それらの検出のための好適な標識および手段は当業者に周知であり、蛍光標識(例えばフルオレセイン、ローダミン、エオシンおよびNDB、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)およびサマリウム(Sm)などの希土類のキレート、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、4-メチルウンベリフェロン、7-アミノ-4-メチルクマリン、Cy3、Cy5)、同位体マーカー、放射性同位体(例えば32P、33P、35S)、化学発光標識(例えばアクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール)、酵素(例えばペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ)、抗体、リガンドおよび受容体が含まれる。検出技術は当業者に周知であり、標識剤に対応するように選択することができる。好適な技術には、オリゴヌクレオチドタグのPCR増幅、質量分析、例えばレポータータンパク質による基質の酵素変換後の蛍光もしくは色の検出、または放射能検出が含まれる。
【0286】
アッセイは、試料中のIL-11またはIL-11の受容体の量を定量化するように構成することができる。試験試料からのIL-11またはIL-11の受容体の定量化された量は参照値と比較することができ、この比較は、選択された程度の統計的有意性まで参照値のそれより高いかまたはより低いIL-11またはIL-11の受容体の量を試験試料が含有するかどうか決定するために使用することができる。
【0287】
検出されたIL-11またはIL-11の受容体の定量化は、IL-11またはIL-11の受容体をコードする遺伝子の上方もしくは下方制御または増幅を決定するために使用することができる。試験試料が線維性細胞を含有する場合、そのような上方制御、下方制御または増幅は、何らかの統計的有意差が存在するかどうか決定するために、参照値と比較することができる。
【0288】
対象から得られる試料は、いかなる種類のものであってよい。生体試料は、任意の組織または体液、例えば血液試料、血液由来の試料、血清試料、リンパ試料、精液試料、唾液試料、滑液試料からとることができる。血液由来の試料は、患者血液の選択された分画、例えば選択された細胞含有分画または血漿もしくは血清分画であってよい。試料は、組織試料または生検;または対象から単離された細胞を含むことができる。試料は、公知の技術、例えば生検または針吸引によって収集することができる。試料は、IL-11発現レベルの以降の決定のために保存および/または処理することができる。
【0289】
試料は、試料がとられた対象におけるIL-11またはIL-11の受容体の上方制御を決定するために使用することができる。
一部の好ましい実施形態では、試料は本明細書に記載される疾患/状態による影響を受ける組織/器官からとられる組織試料、例えば生検であってよい。試料は、細胞を含有することができる。対象は、IL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)の発現の上方制御されたレベルを対象が有するとの決定に基づいて、本開示による療法/予防のために選択することができる。IL-11またはIL-11の受容体の上方制御された発現は、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置のために好適である、本明細書に記載される疾患/状態のマーカーの役割をすることができる。
【0290】
上方制御は、所定の組織、または所定の組織からの選択された細胞においてであってよい。IL-11またはIL-11の受容体の発現の上方制御は、循環する流体、例えば血液中で、または血液由来の試料で決定することもできる。上方制御は、細胞外IL-11またはIL-11Rαのものであってよい。一部の実施形態では、発現は局所的に、または全身的に上方制御されてもよい。
【0291】
選択の後、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を対象に投与することができる。
診断および予後診断
IL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)の発現の上方制御の検出は、本明細書に記載される疾患/状態を診断し、本明細書に記載される疾患/状態を起こす危険がある対象を同定する方法で、およびIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置への対象の応答を予後診断または予測する方法で使用することもできる。
【0292】
「発達する」、「発達」および「発達する」の他の形は、障害/疾患の開始、または障害/疾患の継続もしくは進行を指すことができる。
一部の実施形態では、対象は、例えば、対象の体もしくは対象の体の選択される細胞/組織における疾患/状態の指標となる他の症状の存在に基づいて、本明細書に記載される疾患/状態を有することもしくは患っていることが疑われてもよいか、または例えば遺伝的素因、もしくは疾患/状態のリスク因子であることが知られている環境条件への曝露のために、疾患/状態を起こす危険があると考えることができる。IL-11またはIL-11の受容体の発現の上方制御の決定は、診断または疑われる診断を確定することができるか、または対象が疾患/状態を起こす危険があることを確認することができる。この決定は、疾患/状態または素因を、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置に好適なものであると診断することもできる。
【0293】
このように、本明細書に記載される疾患/状態を有するかまたは有することが疑われる対象のために予後診断を提供する方法であって、対象から得られた試料中でIL-11またはIL-11の受容体の発現が上方制御されるかどうか決定すること、および、この決定に基づいてIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による対象の処置のための予後診断を提供することを含む方法を提供することができる。
【0294】
一部の態様では、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置への対象の応答の診断方法またはそれを予後診断もしくは予測する方法は、IL-11またはIL-11の受容体の発現の決定を必要としないが、発現または活性の上方制御を予測する対象中の遺伝因子の決定に基づくことができる。そのような遺伝因子は、IL-11、IL-11Rαおよび/またはgp130における、遺伝子突然変異、一塩基多型(SNP)または遺伝子増幅の決定を含むことができ、それらは発現もしくは活性および/またはIL-11媒介シグナル伝達の上方制御と相関し、および/またはそれを予測する。疾患状態への素因または処置への応答を予測する遺伝因子の使用は当技術分野で公知であり、例えば、Peter Starkel、Gut 2008;57:440~442頁;Wrightら、Mol.Cell.Biol.2010年3月、第30巻6号1411~1420頁、を参照する。
【0295】
遺伝因子は、PCRをベースとしたアッセイ、例えば定量的PCR、競合的PCRを含む当業者に公知である方法によって分析することができる。例えば対象から得られる試料で遺伝因子の存在を決定することによって、診断を確定することができ、および/または本明細書に記載される疾患/状態を起こす危険があると対象を分類することができ、および/またはIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置に好適であると対象を特定することができる。
【0296】
一部の方法は、IL-11の分泌または本明細書に記載される疾患/状態の発達への感受性に関連した1つまたは複数のSNPの存在の決定を含むことができる。SNPは通常二対立遺伝子であり、したがって、当業者に公知であるいくつかの従来のアッセイの1つを使用して容易に決定することができる(例えばAnthony J.Brookes.The essence of SNPs.Gene 第234巻、2号、1999年7月8日、177~186頁;Fanら、Highly Parallel SNP Genotyping.Cold Spring Harb Symp Quant Biol 2003.68:69~78頁;Matsuzakiら、Parallel Genotyping of Over 10,000 SNPs using one-primer assay on high-density oligonucleotide array.Genome Res.2004.14:414~425頁を参照する)。
【0297】
本方法は、どのSNP対立遺伝子が対象から得られた試料中に存在するか決定することを含むことができる。一部の実施形態では、劣性対立遺伝子の存在の決定は、増加したIL-11分泌または本明細書に記載される疾患/状態の発達への感受性に関連していてもよい。
【0298】
したがって、本開示の一態様では、対象をスクリーニングする方法であって、以下を含む方法が提供される:
対象から核酸試料を得ること;
試料中のWO2017/103108A1(本明細書に参照により組み込まれる)の図33図34または図35に掲載されるSNPの1つまたは複数、または掲載されるSNPの1つとr≧0.8で連鎖不均衡にあるSNPの多形性ヌクレオチド位置にどの対立遺伝子が存在するか決定すること。
【0299】
決定するステップは、劣性対立遺伝子が試料中の選択された多形性ヌクレオチド位置に存在するかどうかについて決定することを含むことができる。それは、0、1または2つの劣性対立遺伝子が存在するかについて決定することを含むことができる。
【0300】
スクリーニング方法は、本明細書に記載される疾患/状態の発達への対象の感受性を決定するための方法、または本明細書に記載される診断もしくは予後診断の方法であってよいかもしくはその一部を形成することができる。
【0301】
本方法は、例えば対象が多形性ヌクレオチド位置で劣性対立遺伝子を有すると決定される場合、本明細書に記載される疾患/状態を起こすことへの感受性またはその危険の増加を有すると対象を特定するステップをさらに含むことができる。本方法は、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置のために対象を選択するステップ、および/または、対象において本明細書に記載される疾患/状態のための処置を提供するために、または対象において疾患/状態の発達もしくは進行を阻止するために、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を対象に投与するステップをさらに含むことができる。
【0302】
一部の実施形態では、本明細書に記載される疾患/状態を診断し、本明細書に記載される疾患/状態を起こす危険がある対象を同定する方法、およびIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置への対象の応答を予後診断または予測する方法は、IL-11またはIL-11の受容体の発現の上方制御の検出でも遺伝因子の検出でもない指標を用いる。
【0303】
一部の実施形態では、本明細書に記載される疾患/状態を診断し、疾患/状態を起こす危険がある対象を同定する方法、およびIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置への対象の応答を予後診断または予測する方法は、疾患/状態の1つまたは複数の指標の検出、測定および/または同定に基づく。
【0304】
診断または予後診断の方法は、対象から得られる試料でin vitroで、または対象から得られる試料のプロセシングに続いて実行することができる。試料が収集されると、診断または予後診断のin vitro方法を実行するために患者の存在は必要でなく、したがって、この方法はヒトの体でも動物の体でも実践されないものであってよい。本明細書で前記のように、対象から得られる試料はいかなる種類のものであってよい。
【0305】
診断もしくは予後診断の精度を増強するために、またはここで記載される試験を使用して得られる結果を確認するために、他の診断または予後診断試験をここで記載されるものと併用することができる。
【0306】
対象
対象は、動物またはヒトであってもよい。対象は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。対象は、非ヒト哺乳動物であってよいが、より好ましくは、ヒトである。対象は、雄性または雌性であってもよい。対象は、患者であってもよい。患者は、本明細書に記載の疾患/状態を有してもよい。
【0307】
対象は、本開示による治療的/予防的介入を必要とする対象であってよい。対象は、本開示による治療的/予防的介入から恩恵を受ける対象であってよい。
対象は、処置を必要とする本明細書に記載される疾患/状態を診断されていてもよく、そのような疾患/状態を有することが疑われてもよく、またはそのような疾患/状態を起こす危険があってもよい。
【0308】
本開示による実施形態では、対象は好ましくはヒト対象である。本開示による実施形態では、本明細書に記載される疾患/状態のある特定のマーカーのための特徴付けに基づいて、本方法による処置のために対象を選択することができる。
【0309】
配列同一性
2つ以上のアミノ酸または核酸配列間の同一性パーセントを決定するためのペアワイズおよびマルチ配列アラインメントを、例えば、ClustalOmega(Soding,J.2005、Bioinformatics 21、951~960頁)、T-coffee(Notredameら、2000、J.Mol.Biol.(2000)302、205~217頁)、Kalign(LassmannおよびSonnhammer、2005、BMC Bioinformatics、6(298))およびMAFFT(KatohおよびStandley、2013、Molecular Biology
and Evolution、30(4)、772~780頁)ソフトウェアなどの公共的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者には公知の様々な方法で達成することができる。そのようなソフトウェアを使用する場合、好ましくは、例えば、ギャップペナルティおよび伸長ペナルティに関するデフォルトパラメータが使用される。
【0310】
配列
【0311】
【表2-1】
【0312】
【表2-2】
【0313】
【表2-3】
【0314】
番号付けされた段落
以下の番号付けされた段落(para)は、本発明に関連して企図される特徴および特徴の組合せのさらなる記述を提供する:
1.加齢性疾患/状態を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
2.加齢性疾患/状態を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
3.加齢性の疾患/状態を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法。
4.それを必要とする対象において細胞老化を阻害する方法および/または老化細胞の活性を阻害する方法で使用するためのインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
5.それを必要とする対象において細胞老化を阻害する方法および/または老化細胞の活性を阻害する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
6.それを必要とする対象において細胞老化を阻害する方法および/または老化細胞の活性を阻害する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
7.対象が、細胞老化によって特徴付けられる疾患または状態を有する対象である、段落4による使用のための薬剤、段落5による使用、または段落6による方法。
8.細胞老化によって特徴付けられる疾患または状態が加齢性の疾患または状態である、段落7による使用のための薬剤、使用または方法。
9.細胞老化によって特徴付けられる疾患または状態が:老人病症候群、アルツハイマー病、心血管疾患、アテローム硬化症、高血圧、黄斑症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨関節炎、骨減少症、骨粗しょう症、パーキンソン病、歯周炎、慢性関節リウマチ、真性糖尿病またはサルコペニアから選択される、段落7または段落8による使用のための薬剤、使用または方法。
10.老人病症候群、アルツハイマー病、がん、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脂肪症(例えば肝臓の)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、心血管疾患、高血圧(例えば収縮期、拡張期)、低減または保存された駆出分画による心不全、腎臓病(例えば慢性腎臓病)、アテローム硬化症、高血圧、黄斑症、加齢性黄斑変性症(AMD)、白内障、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節炎、骨関節炎、骨減少症、骨粗しょう症、パーキンソン病、歯周炎、慢性関節リウマチ、真性糖尿病、II型真性糖尿病、慢性肝疾患、サルコペニア、便秘、不能症、膣乾燥、脱毛、皮膚疾患および皮膚脆弱性:から選択される、加齢性の疾患または状態を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
11.老人病症候群、アルツハイマー病、がん、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脂肪症(例えば肝臓の)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、心血管疾患、高血圧(例えば収縮期、拡張期)、低減または保存された駆出分画による心不全、腎臓病(例えば慢性腎臓病)、アテローム硬化症、高血圧、黄斑症、加齢性黄斑変性症(AMD)、白内障、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節炎、骨関節炎、骨減少症、骨粗しょう症、パーキンソン病、歯周炎、慢性関節リウマチ、真性糖尿病、II型真性糖尿病、慢性肝疾患、サルコペニア、便秘、不能症、膣乾燥、脱毛、皮膚疾患および皮膚脆弱性:から選択される、加齢性疾患または状態を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
12.加齢性の疾患または状態を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を、老人病症候群、アルツハイマー病、がん、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、脂肪症(例えば肝臓の)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、心血管疾患、高血圧(例えば収縮期、拡張期)、低減または保存された駆出分画による心不全、腎臓病(例えば慢性腎臓病)、アテローム硬化症、高血圧、黄斑症、加齢性黄斑変性症(AMD)、白内障、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節炎、骨関節炎、骨減少症、骨粗しょう症、パーキンソン病、歯周炎、慢性関節リウマチ、真性糖尿病、II型真性糖尿病、慢性肝疾患、サルコペニア、便秘、不能症、膣乾燥、脱毛、皮膚疾患および皮膚脆弱性:から選択される加齢性疾患または状態を有する対象に投与するステップを含む方法。
13.虚弱を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
14.虚弱を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
15.虚弱を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法。
16.体組成の加齢性変化を処置または予防する方法で使用するためのインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
17.体組成の加齢性変化を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
18.体組成の加齢性変化を処置または予防する方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法。
19.体組成の加齢性変化が、筋肉量の低減、骨量の低減、体脂肪量の増加、軟骨の変性、腎臓の変化、呼吸系の器官の変化、消化器系の器官の変化、膀胱の変化、歯および/または歯肉の変性、脱毛、皮膚脆弱性、聴覚系の器官の変化および生殖器官の変化:から選択される、段落16~18のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
20.対象の健康寿命を延ばす方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
21.対象の健康寿命を延ばす方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
22.対象の健康寿命を延ばす方法であって、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的または予防的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法。
23.薬剤が、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは小分子:からなる群から選択される、段落1~22のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
24.薬剤が、インターロイキン11(IL-11)のインターロイキン11の受容体(IL-11R)への結合を阻止または低減することが可能な薬剤である、段落1~23のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
25.薬剤がインターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)に結合することが可能である、段落1~24のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
26.薬剤が抗体またはその抗原結合性断片である、段落1~25のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
27.薬剤がIL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニスト、またはその抗原結合性断片である、段落1~26のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
28.抗体または抗原結合性断片が:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号34のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号35のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号36のアミノ酸配列を有するHC-CDR3;および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号38のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号39のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む、段落1~27のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
29.抗体または抗原結合性断片が:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号40のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号41のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号42のアミノ酸配列を有するHC-CDR3;および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号43のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号44のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号45のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む、段落1~27のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
30.薬剤がIL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11Rα抗体アンタゴニスト、またはその抗原結合性断片である、段落1~26のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
31.抗体または抗原結合性断片が:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号46のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号48のアミノ酸配列を有するHC-CDR3;および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号49のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号50のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号51のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む、段落1~26または段落30のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
32.薬剤がIL-11のデコイ受容体である、段落1~25のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
33.IL-11のデコイ受容体が:(i)gp130のサイトカイン結合性モジュールに対応するアミノ酸配列、および(ii)IL-11Rαのサイトカイン結合性モジュールに対応するアミノ酸配列を含む、段落32による使用のための薬剤、使用または方法。
34.薬剤がIL-11の競合的阻害剤である、段落1~25のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
35.薬剤がIL-11突然変異タンパク質である、段落34による使用のための薬剤、使用または方法。
36.IL-11突然変異タンパク質がW147Aである、段落35による使用のための薬剤、使用または方法。
37.薬剤がインターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)の発現を阻止または低減することが可能である、段落1~23のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
38.薬剤が、IL-11の発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである、段落37による使用のための薬剤、使用または方法。
39.IL-11の発現を阻止または低減することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号12、13、14または15の配列を含むIL11を標的にするsiRNAである、段落38による使用のための薬剤、使用または方法。
40.薬剤がIL-11Rαの発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである、段落37による使用のための薬剤、使用または方法。
41.IL-11Rαの発現を阻止または低減することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号16、17、18または19の配列を含むIL11RAを標的にするsiRNAである、段落40による使用のための薬剤、使用または方法。
42.方法が、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御される対象に薬剤を投与することを含む、段落1~41のいずれか1つによる使用のための薬剤、使用または方法。
【0315】
本開示は、記載される態様および好ましい特徴の組合せを含むが、そのような組合せが明らかに許容されないかまたは明白に回避される場合を除く。
前述の記載、または以下の請求項、または添付図において開示され、それらの特異的形で、または開示される機能を実行するための手段、または開示される結果を得るための方法もしくはプロセスで適宜表される特徴は、別々に、またはそのような特徴の任意の組合せで、本開示をその多様な形で実現するために利用することができる。
【0316】
いかなる疑いも避けるために、本明細書で提供される任意の理論的な説明は、読者の理解を向上させるために提供される。発明者は、これらの理論的説明のいずれによっても縛られることを望まない。
【0317】
本明細書で使用されるいずれのセクション見出しも構成上の目的のためだけであり、記載される対象発明を限定するものと解釈されるべきでない。
後続の請求項を含むこの明細書全体で、文脈が別途要求しない限り、単語「含む(comprise)」ならびに「含む(include)」、ならびに「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」および「含んでいる(including)」などの変異形は、明示される整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群が含まれるが、いかなる他の整数もしくはステップも整数もしくはステップの群も排除されないことを意味するものと理解される。
【0318】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、本文が別途明確に記述しない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、一方の特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されると予想される。数値に関する用語「約」は任意選択であり、例えば+/-10%を意味する。
【0319】
本明細書に開示される方法はin vitro、ex vivoまたはin vivoで実行すること、または生成物が存在することができる。用語「in vitro」は、検査室条件または培養での材料、生体物質、細胞および/または組織による実験を包含するものであるが、用語「in vivo」は、インタクトな多細胞生物体による実験および手順を包含するものである。一部の実施形態では、in vivoで実行される方法は、非ヒト動物で実行することができる。「Ex vivo」は生物体の外、例えばヒトまたは動物体の外に存在するか生じ、生物体からとられる組織(例えば器官全体)または細胞の上にあってもよい事物を指す。
【0320】
核酸配列が本明細書で開示される場合、その逆相補体も明白に企図される。
標準の分子生物学技術については、Sambrook、J.、Russel、D.W.Molecular Cloning、Laboratory Manual.第3版2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照する。
【0321】
本開示の態様および実施形態は、添付図に関してこれから議論される。さらなる態様および実施形態が、当業者に明らかになる。このテキストで指摘される全ての文書は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示は下記の例示的な実施形態と共に記載されているが、この開示を考慮して、多くの同等の修正変更が当業者に明らかになる。したがって、上で示される本開示の例示的な実施形態は、例示的であって限定するものでないとみなされる。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、記載される実施形態に様々な変更を加えることができる。
【0322】
本開示の原理を例示する実施形態および実験は、添付図に関してこれから議論される。
【実施例
【0323】
以下の実施例で、発明者はIL-11媒介シグナル伝達の拮抗が、虚弱を含む加齢性疾患ならびに体組成の加齢性変化の処置および予防のために有益であることを実証する。
実施例1:虚弱および体組成の加齢性変化を処置するIL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストの能力の分析
発明者は、中和抗体を使用してIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが、老齢のマウスで虚弱および体組成の加齢性変化を低減することができるかどうかについて調査しようと追求した。
【0324】
46週齢C57B1/6JマウスをJackson Laboratoryから得、X203またはアイソタイプ対照IgG抗体を受けるように1:1にランダム化した。
X203はマウス抗マウスIL-11 IgGであり、例えば、Ngら、Sci Transl Med.(2019)11(511)pii:eaaw1237(Ngら、「IL-11 is a therapeutic target in idiopathic pulmonary fibrosis.」bioRxiv 336537;doi:https://doi.org/10.1101/336537、として公開されてもいる)に記載される。X203は、「Enx203」とも呼ばれる。X203は、WO2019/238882A1の配列番号92(本開示の配列番号22)によるVH領域、およびWO2019/238882A1の配列番号94(本開示の配列番号23)によるVL領域を含む。
【0325】
55週齢(ヒトの約45歳(すなわち中年)に相当)から110週齢(ヒトの約75歳に相当)まで、マウスは、X203またはアイソタイプマッチ対照IgGの40mg/kgを3週ごとに腹腔内注射を通して投与された。
【0326】
110週齢時に、ここに参照により完全に組み込まれる、Rizzoら、Curr Protoc Mouse Biol.(2018)8(2):e45に記載されるマウス虚弱指数を使用して、虚弱を調査した。このプロトコールでは、マウスは重症度のレベルに基づいて各々0、0.5または1と評価される、27の異なる特徴の有無および重症度について個々に観察され、評価される。虚弱指数スコアは、全ての測定の累積スコアとして計算される。虚弱の別個の測定として、コア体温を記録したが、その理由は、マウスではコア体温が虚弱の増加に伴って低下することが知られているからである(Reynoldsら、Mechanisms of Ageing and Development(1985)30(2):143~52頁)。データは、2元配置ANOVAによって分析した。
【0327】
結果は、図1および2に示す。X203による処置は虚弱指数の著しい低減を引き起こすことが見出され、著しくより高い体温とも関連付けられた。
虚弱に関する以前の研究(例えば、Sanchez-Alavezら(2011)Age 33(1):89~99頁)により、雄マウスは雌マウスと比較して低い体温を有することも見出された。
【0328】
マウスは、ベースライン(55週齢)および108~109週時にエコーMRIによる体組成評価も受けた。これは、X203およびIgG対照処置群における体脂肪量および除脂肪(筋肉)質量の変化の計算を可能にした。110週齢時に腓腹筋およびヒラメ筋もマウスから採取し、それらの重量を記録した。データは、2元配置ANOVAによって分析した。
【0329】
結果は、図3A、3B、4Aおよび4Bに示す。X203で処置したマウスは、IgG対照処置群のマウスより有意に少ない体脂肪量の増加を有することが見出された(図3A)。X203による処置は、IgG対照抗体による処置と比較して、有意により大きな除脂肪質量と関連していることも見出された。この知見と一致して、X203で処置したマウスの腓腹筋およびヒラメ筋の重量(それらの体重の割合としての)は、IgG対照抗体で処置したマウスからのそれらより大きかった(図4Aおよび4B)。
【0330】
実施例2:加齢性疾患を処置するIL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストの能力のさらなる分析
2.1虚弱および加齢の挙動相関の分析
55週齢から110週齢まで3週間ごとにIP注射を通してX203またはIgG対照抗体を40gm/kgの用量で受けるように、C57B1/6Jマウスをランダム化する。
【0331】
110週時に、握力メーターを使用してマウスを握力のために分析する。低下した握力は、マウスでは加齢関連の虚弱の頑強なマーカーである(ここに参照により完全に組み込まれる、Fischerら、Aging(2016)8:2370~2391頁を参照する)。
【0332】
マウスはメーターに付けられたワイヤメッシュを両方の前肢で握り、次にメーターのベースプレートと平行の水平面で尾が静かに引っ張られる。握力は、示された最大の力として記録される。
【0333】
X203で処置したマウスは、IgG対照抗体で処置したマウスより大きな握力を示す。
2.2 老化病巣の分析
55週齢から110週齢まで3週間ごとにIP注射を通してX203またはIgG対照抗体を40gm/kgの用量で受けるように、C57B1/6Jマウスをランダム化する。
【0334】
110週時に、マウスを安楽死させ、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓および骨格筋組織から切片を調製し、ヘマトキシリン-エオジンまたはマッソンの三重染色にかけ、光学顕微鏡検査によって分析する。組織切片は、Sniderら、Geroscience(2019)40:97~103頁およびSnyderら、Geroscience(2019)41:455~465頁(ここに参照により完全に組み込まれる)に記載されているように、加齢関連の病巣のために評価する。分析は、処置群に盲検化された獣医病理学者によって実行される。
【0335】
X203で処置したマウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して、より少ない、より小さいおよび/またはより発達していない老人病巣を示す。
2.3 器官線維症の分析
加齢は複数の器官、特に心臓、肺、腎臓および骨格筋での進行性の線維症と関連している(例えば、その全てはここに参照により完全に組み込まれる、Murthaら、Aging Dis.(2019)10:419~428頁、O’Sullivanら、J.Am.Soc.Nephrol.(2017)28:407~420頁およびEtienneら、Skelet.Muscle(2020)10:4頁を参照する)。
【0336】
55週齢から110週齢まで3週間ごとにIP注射を通してX203またはIgG対照抗体を40gm/kgの用量で受けるように、C57B1/6Jマウスをランダム化する。
【0337】
110週時に、ヒドロキシプロリンアッセイによって心臓、肺、腎臓および骨格筋組織で広域の組織コラーゲン含有量を評価する。これらの組織からの組織切片はさらにマッソンの三重染色にかけられ、光学顕微鏡検査によって分析される(処置群に盲検化される)。
【0338】
X203で処置したマウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して、分析した組織でより少ない線維症を示す。
2.4 細胞老化マーカーの分析
老化細胞の蓄積は加齢の特質であり、細胞老化の分子マーカーには、老化関連のβガラクトシダーゼ(SA-β-gal)活性ならびに細胞周期調節因子p16INK4a、p21CIP1およびp53のレベルが含まれる(ここに参照により完全に組み込まれる、Wangら、Front.Genet.(2018)9:247頁を参照する)。
【0339】
55週齢から110週齢まで3週間ごとにIP注射を通してX203またはIgG対照抗体を40gm/kgの用量で受けるように、C57B1/6Jマウスをランダム化する。
【0340】
110週時に、関連する組織のマウス細胞から組織を採取し、p16INK4a、p21CIP1およびp53の遺伝子および/またはタンパク質発現について、ならびにSA-β-gal活性について分析する。
【0341】
X203で処置したマウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して、細胞老化マーカーのより低いレベルを示す。
2.5 心臓および腎臓機能のマーカーの分析
心臓および腎臓機能の障害は、加齢の病理学的特質である(例えば、その全てはここに参照により完全に組み込まれる、Murthaら、Aging Dis.(2019)10:419~428頁、de Luciaら、J.Gerontol.A Biol.Sci.Med.Sci.(2019)74:455~461頁およびFeridooniら、J.Physiol.(2017)595:3721~3742頁を参照する)。心臓機能の加齢関連の障害は、一般的に左心室リモデリング/肥大および拡張期機能の障害として現れ、収縮期機能の低減も起こることがある。
【0342】
55週齢から110週齢まで3週間ごとにIP注射を通してX203またはIgG対照抗体を40mg/kgの用量で受けるように、C57B1/6Jマウスをランダム化し、尿素アッセイキット(ab83362、Abcam)およびクレアチニンアッセイキット(ab65340、Abcam)を製造業者の使用説明書に従って使用した、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチニンの血清レベルの分析によって腎機能を評価した。ベースラインレベルを決定するために、BUNおよび血清クレアチニンのレベルを12週齢の雌雄C57B1/6Jマウスでも分析した。データは、2元配置ANOVAによって分析した。
【0343】
結果は、図9および10に示す。
図9は、X203で処置した雄雌マウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較してBUNレベルの79%および42%の低減をそれぞれ示したことを示す(ベースラインとして、12週齢の雄(51.3mg/dl)および雌(31.8mg/dl)マウスの平均BUNレベルを使用した)。
【0344】
図10は、X203で処置した雄雌マウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較してクレアチニンレベルの60%および43%の低減をそれぞれ示したことを示す(ベースラインとして、12週齢の雄(0.92mg/dl)および雌(0.77mg/dl)マウスの平均クレアチニンレベルを使用した)。
【0345】
したがって、X203で処置したマウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して、向上した腎機能を示した。
2.6 代謝機能の分析
55週齢から110週齢まで3週間ごとにIP注射を通してX203またはIgG対照抗体を40mg/kgの用量で受けるように、C57B1/6Jマウスをランダム化し、血清トリグリセリド、肝臓トリグリセリド、血清コレステロールおよび血清β-ヒドロキシブチレートレベルを、トリグリセリドアッセイキット(ab65336、Abcam)、コレステロールアッセイキット(ab65390、Abcam)、およびβ-ヒドロキシブチレート比色アッセイキット(700190;Cayman chemicals)を製造業者の使用説明書に従って使用して測定した。ベースラインレベルを決定するために、血清トリグリセリド、肝臓トリグリセリド、血清コレステロールおよび血清β-ヒドロキシブチレートのレベルを12週齢の雌雄C57B1/6Jマウスでも分析した。データは、2元配置ANOVAによって分析した。
【0346】
結果は、図11~14に示す。
図11は、X203で処置した雄雌マウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して血清トリグリセリドレベルの65%および47%の低減をそれぞれ示したことを示す(ベースラインとして、12週齢の雄(54mg/dl)および雌(37mg/dl)マウスの平均血清トリグリセリドレベルを使用した)。
【0347】
図12は、X203で処置した雄雌マウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して肝臓トリグリセリドレベルの71%および54%の低減をそれぞれ示したことを示す(ベースラインとして、12週齢の雄(165mg/g)および雌(130mg/g)マウスの平均肝臓トリグリセリドレベルを使用した)。
【0348】
図13は、X203で処置した雄雌マウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して血清コレステロールレベルの45%および51%の低減をそれぞれ示したことを示す(ベースラインとして、12週齢の雄(149mg/dl)および雌(90mg/dl)マウスの平均血清コレステロールレベルを使用した)。
【0349】
図14は、X203で処置した雄雌マウスは、IgG対照抗体で処置したマウスと比較して血清β-ヒドロキシブチレートレベルの66%および26%の低減をそれぞれ示したことを示す(ベースラインとして12週齢の雄(0.159mM)および雌(0.236mM)マウスの平均血清β-ヒドロキシブチレートレベルを使用した)。
【0350】
したがって、X203による処置は、加齢関連の高トリグリセリド血症、脂肪症(肝臓脂肪蓄積)および高コレステロール血症を低減させることが見出された。X203による処置は、脂肪酸酸化およびケトン生産の末梢マーカーである循環β-ヒドロキシブチレートのレベルを増加させることが見出された。まとめると、これらのデータはIL-11媒介シグナル伝達の拮抗が代謝機能の加齢関連の衰退を低減することを示す。
【0351】
実施例3:IL-11媒介シグナル伝達および老化の評価
3.1 若齢および高齢マウスにおけるIL-11タンパク質のレベル
発明者は、28カ月齢および3カ月齢のC57B1/6Jマウスの肝臓におけるIL-11タンパク質の発現を評価した。
【0352】
簡潔には、肝臓をマウスから採取し、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Roche)を含有する放射線免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解および抽出バッファー(ThermoFisher Scientific)の中でホモジナイズし、続いて遠心分離して溶解液を透明にした。タンパク質濃度は、ブラッドフォードアッセイ(Bio-Rad)によって決定した。等量のタンパク質溶解液をSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜に移し、3%BSAで1時間ブロックし、X203(1:2000)または抗GAPDH(1:1000、CST)と一晩インキュベートした。ECL検出システム(Pierce)を適当な二次抗体:抗マウスHRPおよび抗ウサギHRP(1:5000、CST)と使用して、タンパク質バンドを可視化した。ECL検出システム(Pierce)を適当な二次抗体と使用して、タンパク質を可視化した。
【0353】
結果は、図5に示す。IL-11タンパク質のレベルは、3カ月齢マウスと比較して28カ月齢マウスの肝臓でより大きいことが見出された。
さらなる実験では、発明者は、110週齢および12週齢の雄雌C57B1/6Jマウスの肝臓、心室、腎臓、腓腹筋およびヒラメ筋におけるIL-11タンパク質の発現を評価した。RIPA溶解および抽出バッファー中の肝臓、心室、腎臓、腓腹筋およびヒラメ筋から全タンパク質を抽出し、前記のようにウエスタンブロットによって分析した。
【0354】
結果は、図8に示す。IL-11タンパク質のレベルは、12週齢マウスと比較して110週齢マウスの肝臓、心室、腎臓、腓腹筋およびヒラメ筋でより大きいことが見出された。
【0355】
3.2 老化誘導のin vitroモデルにおける細胞による老化マーカーの発現に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の拮抗の影響
発明者は、X203またはX209を使用して、in vitroで老化細胞による老化および炎症のマーカーの発現に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の拮抗の影響を次に調査した。
【0356】
X209はマウス抗マウスIL-11RαIgGであり、例えばWidjajaら、Gastroenterology(2019)157(3:777~792頁)に記載される。X209は「Enx209」とも呼ばれ、WO2019/238884A1の配列番号7(本開示の配列番号24)によるVH領域、およびWO2019/238884A1の配列番号14(本開示の配列番号25)によるVL領域を含む。
【0357】
Tripathiら、Star Protocols(2020)1:100064(ここに参照により完全に組み込まれる)に記載される通りに、老化肝マウス細胞をマウス肝細胞細胞系AML12の細胞から生成した。
【0358】
簡潔には、AML12細胞を50%集密度まで増殖させ、合計7日間にわたって各日に細胞をHの致死量以下の濃度(0.75mM)で1時間処置し、その後23時間回復させることによって老化を誘導した(Tripathiら、Star Protocols(2020)1:100064に記載される通り)。2日目以降、23時間の回復期間中に、2μg/mlのX209/X203またはアイソタイプマッチ対照IgGを培養に加えた。
【0359】
7日目に全RNAを単離し、p21(Cdkn1a)、Il1b、Il11およびTgfb遺伝子発現のレベルをqRT-PCRによって評価した。簡潔には、Trizol(Invitrogen)を使用し、続いてRNeasyカラム(Qiagen)精製によって、全RNAを細胞溶解液から抽出した。製造業者の使用説明書に従ってiScript(商標)cDNA合成キット(Bio-Rad)でcDNAを合成した。遺伝子発現分析は、40サイクルにわたるStepOnePlusリアルタイムPCTシステム(Applied Biosystems)を使用して、TaqMan(Applied Biosystems)またはfast SYBR green(Qiagen)で実行した。p21(Cdkn1a)、Il1b、Il11およびTgfbの発現データをGapdh発現に正規化し、2-ΔΔCt方法を使用して変化倍率を計算した。
【0360】
結果は、図6A~6Dおよび図7A~7Dに示す。
X209による処置は、老化誘導のプログラムを受けたAML12細胞による、p21(Cdkn1a)、Il1b、Il11およびTgfbの遺伝子発現を有意に低減することが見出された(図6A~6D)。
【0361】
X203による処置は、老化誘導のプログラムを受けたAML12細胞によるTgfbの遺伝子発現を有意に低減することが見出され(図7D)、Il11の発現もレベルが低減する傾向を示した(図7C)。
【0362】
3.3 ヒト細胞を使用した老化誘導のin vitroモデルにおける細胞による老化マーカーの発現に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の拮抗の影響
一次ヒト肝細胞またはAML12細胞を50%集密度まで増殖させ、合計7日間にわたって各日に細胞をHの致死量以下の濃度(0.75mM)で1時間処置し、その後23時間回復させることによって老化を誘導する。2日目以降、23時間の回復期間中に、2μg/mlのX209/X203またはアイソタイプマッチ対照IgGを培養に加える。
【0363】
7日後、全RNAを細胞から単離し、実施例3.2に記載されているようにp21(Cdkn1a)、Il1b、Il11およびTgfbの、ならびにp16およびp53の発現を評価するために単離する。細胞は、細胞肥大および核拡大の表現型評価にもかける。細胞は、クロマチン凝縮、DNA傷害、複製能力、ROS生成および酸化的ストレス、SASP遺伝子およびタンパク質発現、エネルギー表現型分析およびミトコンドリア活性/傷害、細胞性解糖について、ならびに自己貪食および栄養感知経路(mTOR、AMPKなど)の活性についても分析される。
【0364】
IL-11媒介シグナル伝達の抗体アンタゴニストによる処置は、IgG対照抗体による処置と比較して細胞老化マーカーのレベルを低減することが示され、IL-11媒介シグナル伝達の拮抗が細胞老化の誘導を阻害することができることを示す。
【0365】
3.4 ヒト細胞を使用した老化誘導のin vitroモデルにおける細胞による老化マーカーの発現に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の拮抗の影響
一次ヒト肝細胞またはAML12細胞を50%集密度まで増殖させ、合計7日間にわたって各日に細胞をHの致死量以下の濃度(0.75mM)で1時間処置し、その後23時間回復させることによって老化を誘導する。
【0366】
7日目から、2μg/mlのX209/X203またはアイソタイプマッチ対照IgGで細胞を処置する。
14日後、全RNAを細胞から単離し、実施例3.2に記載されているようにp21(Cdkn1a)、Il1b、Il11およびTgfbの、ならびにp16およびp53の発現を評価するために単離する。細胞は、細胞肥大および核拡大の表現型評価にもかける。細胞は、クロマチン凝縮、DNA傷害、複製能力、ROS生成および酸化的ストレス、SASP遺伝子およびタンパク質発現、エネルギー表現型分析およびミトコンドリア活性/傷害、細胞性解糖について、ならびに自己貪食および栄養感知経路(mTOR、AMPKなど)の活性についても分析される。
【0367】
IL-11媒介シグナル伝達の抗体アンタゴニストによる処置は、IgG対照抗体による処置と比較して細胞老化マーカーのレベルを低減することが示され、IL-11媒介シグナル伝達の拮抗が細胞老化の誘導を逆転することが可能なことを示す。
【0368】
実施例4:加齢経路に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の影響のin vitro評価
細胞老化は、9つの「加齢の特質」、加齢過程を促進する経路のうちの1つである(Lopez-Otinら、2013、Cell 153(6):1194~1217頁)。
【0369】
発明者は、加齢の重要な特質:栄養感知(LiuおよびSabatini 2020、Nature Reviews.Molecular Cell Biology 21(4):183~203頁)、タンパク平衡の減少(KaushikおよびCuervo 2015、Nature Medicine 21(12):1406~15頁)および細胞老化(Dolgin 2020、Nature Biotechnology 38(12):1371~77頁)に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の影響を調査した。これらの特質と関連する加齢経路は以下の通りである:インスリン/IGF-1シグナル伝達(IIS)、ラパマイシン1の哺乳動物標的(mTORC1)、AMP活性化キナーゼ(AMPK)およびMEK/ERK経路。
【0370】
4.1 ヒト心臓線維芽細胞における加齢経路に及ぼすIL-11の影響
一次ヒト心臓線維芽細胞をIL-11(10ng/ml)で15分間、2時間、4時間、6時間または24時間刺激し、リン酸化されたLKB1(p-LKB1)、LKB1、リン酸化されたmTOR(p-mTOR)およびmTORのレベルをウエスタンブロットによって測定した。
【0371】
IL-11による刺激は、リン酸化されたLKB1およびリン酸化されたmTORのレベルを増加させる(図15)。このデータは、IL-11媒介シグナル伝達がリン酸化を通したLKB1の不活性化において役割をすることを示唆し、これは次にmTORC1の活性化につながる。発明者の知る限り、LKB1は構成的に活性であってリン酸化によって調節されないと考えられていただけであるので、これは新規の知見である。
【0372】
4.2 IL-11はLKB1のリン酸化を刺激する
IL-11がLKB1のリン酸化を刺激する機構を決定するために、ヒトLKB1(図16AのAA8-LKB1)を過剰発現するようにA549細胞を工学操作し、IL-11で処置した。ウエスタンブロット分析は、IL-11がLKB1セリン325(S325)のERK媒介リン酸化およびLKB1セリン428(S428)のP90RSK媒介リン酸化を刺激することを明らかにした。
【0373】
発明者は、IL-11媒介シグナル伝達がERKおよびP90RSKを活性化してLKB1を二重リン酸化し、それはその不活性化を引き起こし、加齢の重要な特質を促進することを特定した。IL-11の役割を概説する模式図を、図16Bに示す。本明細書で開示される実施例は、中和抗体またはIl11raの欠失によるIL-11媒介シグナル伝達の阻害がERK活性化を阻止し、LKB1/AMPKを刺激し、mTORC1/P70S6Kを阻害する間、老化のマーカー(P16およびp21)を減らし、それによってIL-11の阻害/不活性化は複数の決定的な加齢過程(代謝、炎症、タンパク質翻訳および老化)を同等に標的にすることを確認する。
【0374】
ヒト肝星状細胞(図17A)およびヒト肝細胞(図17B)を、野生型LKB1および二重突然変異体S325A、S428A(DM-LKB1)を過剰発現するように工学操作した。図17Aおよび17Bは、IL-11による刺激がWT LKB1細胞のS428(ERK部位)およびS325(P90RSK部位)でリン酸化を誘導することを確認する。予想されるように、リン酸化は二重突然変異体LKB1細胞で観察されない。
【0375】
発明者は、LKB1を過剰発現しない細胞(無)におけるS325リン酸化の無検出を抗体の低感受性によるものと考える。
4.3 IL-11刺激ヒト心臓線維芽細胞に及ぼすラパマイシン、ワートマニンまたはU0126の影響
一次ヒト心臓線維芽細胞をDMSO、ラパマイシン(mTOR阻害剤)、ワートマニン(ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤)またはU0126(MEK1/2阻害剤)の存在下で24時間IL-11で刺激し、p-LKB1およびp-AMPKのレベルをウエスタンブロットによって測定した(図18)。
【0376】
IL-11刺激線維芽細胞をラパマイシン、ワートマニンまたはU0126で処置するとき、p-LKB1のレベルが低下する一方でp-AMPKのレベルは増加する。このデータは、ラパマイシン、ワートマニンまたはU0126の各々がIL-11によるLKB1のリン酸化および以降のAMPKの脱リン酸を部分的に阻止することを示し、したがって、IL-11がMEK/ERK、AMPKおよびmTORC1経路を促進することを確認する。
【0377】
4.4 ヒト心臓線維芽細胞における加齢経路に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の拮抗の影響
一次ヒト心臓線維芽細胞をIL11またはTGFβ1で刺激したか、刺激しなかった(BL)。図19は、ウエスタンブロットによって決定された様々なマーカーのレベルを示す。
【0378】
第1に、このデータは、LKB1を直接的に、およびP90RSKを通して間接的にLKB1をリン酸化および不活性化するERKの活性化剤としてのIL-11の役割をさらに確認する。実施例4.1で説明されるように、LKB1は今日まで構成的に活性であってリン酸化によって調節されないと考えられていた。IL-11誘導p-ERKおよびp-p90RSKはLKB1をリン酸化および不活性化する作用をし、それは次にAMPKの不活性化(脱リン酸)につながる。不活性のAMPKは、mTORC1を阻害する作用をするTSC複合体のメンバーをもはや活性化することができない。このように、mTORC1は活性化される(リン酸化される)。活性化mTORC1はP70S6KおよびS6-リボソームタンパク質(RPS6またはS6RP)をリン酸化および活性化して、タンパク質合成およびタンパク平衡を害する自己貪食の阻害を含む多くの他の加齢促進経路を刺激する。
【0379】
X203(抗IL-11アンタゴニスト抗体)およびX209(抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体)の両方は、マーカーERK、p90RSK、LKB1、mTOR、p70S6KおよびS6RPのリン酸化のレベルを有意に低減する。X203またはX209による処置は、これらのマーカーに及ぼすIL-11/TGFβ1刺激の影響を未刺激対照で観察されるレベルへ本質的に逆転させる。
【0380】
4.5 ヒト肝細胞における加齢経路に及ぼすIL-11媒介シグナル伝達の拮抗の影響
一次ヒト肝細胞(IL-11、BSAまたはパルミテートで刺激したかまたは刺激しなかった)を、X203(抗IL-11アンタゴニスト抗体)およびX209(抗IL-11Rαアンタゴニスト抗体)で処置した。図20は、X203またはX209による処置がリン酸化されたマーカーp-ERK、p-p90RSK、p-LKB1、p-mTOR、p-p70S6Kおよびp-S6RPのレベルを低減するが、p-AMPKおよびp-ACCのレベルの増加によって証明されるように、AMPKおよびアセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACC)を刺激することを示す。X203またはX209による処置は、これらのマーカーに及ぼすパルミテート刺激の影響を未刺激対照で観察されるレベルへ本質的に逆転させる。
【0381】
4.6 U0126の存在下での一次ヒト肝星状細胞およびヒト肝細胞における加齢経路に及ぼすIL-11の影響
一次ヒト肝星状細胞およびヒト肝細胞を、DMSOまたはU0126の存在下でIL-11で24時間刺激した。実施例4.4で議論されるように、発明者はIL-11処置がp-mTOR、p-70S6Kおよびp-S6RPを刺激することを観察した。発明者の仮説と一致して、IL-11刺激細胞へのU0126の投与は、IL11誘導mTORC1/P70S6K活性化を停止するLKB1/AMPKのERK媒介不活性化を阻止する(それぞれ図21および図22)。
【0382】
4.7 一次ヒト肝星状細胞およびヒト肝細胞における加齢経路に及ぼすIL-11およびIL-6の相対的影響
一次ヒト肝星状細胞(HSC)およびヒト肝細胞を、IL-11またはIL-6の増加する濃度(1.25~20ng/ml)で24時間刺激した。IL-11と異なり、IL-6は最も高い濃度でさえLKB1の不活性化もAMPKの活性化も誘導しない(図23)。これらのマーカーに及ぼすIL-11の影響は、HSCおよび肝細胞の両方で1.25ng/mlの低濃度で観察可能である。
【0383】
4.8 老化のin vitroモデルにおけるX209およびX203の影響
老化予防実験は、図24Aに示す通りに実行した。簡潔には、Tripathiら(2020)STAR Protocols 1(2):100064によって記載されるように、細胞をHの致死性以下の濃度で処置することによって老化AML12を作製した。23時間の回復期間中にIgG/X209(2μg/ml)を10日間培養に加えた。qPCRによって測定されたCdkn2a(p16)、Cdkn1a(p21)、Il1β、Il8およびIl11の相対的mRNA発現を、それぞれ図24B、24C、24D、24Eおよび24Fに示す。X209によるIL-11媒介シグナル伝達の拮抗を受けた細胞では、老化のマーカー(P16およびp21)および炎症のマーカー(IL-1b、IL-11およびIL-6)は減少する。
【0384】
老化逆転実験は、図25Aに示す通りに実行した。簡潔には、前記の通りに老化AML12を7日間作製したが、72時間の老化誘導期間の終わりに、IgG/X203/X209(2μg/ml)を培養に加えた。IL-11媒介シグナル伝達のX203およびX209アンタゴニストは、老化マーカーp21(図25B)ならびに炎症マーカーIL-1b(図25C)およびIL-11(図25D)を有意に低減する。
【0385】
要約すると、老化のin vitroモデル(AML12細胞)では、抗IL-11または抗IL-11RAアンタゴニストは細胞老化を阻止し、逆転もさせる。
実施例5:in vivoでの年齢に伴うIL-11上方制御の検出
5.1 高齢EGFPリポーターマウスの組織におけるIL-11上方制御
IL11:EGFPリポーターマウス(Il11-Egfp+/-;(Widjajaら、2021、Science Translational Medicine 13(597)))を作製し、110週齢に到達させた。図26は、野生型110週齢マウスと比較した「高齢」IL11:EGFPリポーターマウスの腎臓の免疫蛍光画像を示す。野生型マウスからの年齢を一致させた対照腎臓では、EGFP染色は検出されなかった。
【0386】
心室および心房(図27)、肺(図28)および脾臓(図29)の細胞におけるIL-11発現を、高齢(110週)IL11:EGFPリポーターマウスで観察した。年齢を一致させた対照または若齢(10週)IL11:EGFPリポーターマウスで、EGFPの染色は全く(または、ほとんど)見られなかった。IL-11は高齢マウスの組織で上方制御され、これらの知見は加齢経路の促進におけるIL-11の役割を裏付ける。
【0387】
5.2 高齢WTマウスの腹部脂肪におけるIL-11上方制御
ウエスタンブロット分析(図30)は、110週齢野生型マウスの腹部脂肪組織でIL-11が上方制御されることを実証する。
【0388】
実施例6:IL11RA1ノックアウトマウスでのin vivo研究
6.1 加齢経路に及ぼすIl11ra1欠失の影響
Il11ra1-KO雄マウスを作製し、10~12週齢(若齢)および110週齢(高齢)に到達させた。図31は、高齢Il11ra1欠失マウスの肝臓が、野生型マウスおよび若齢Il11ra1欠失マウスと比較してより少ないERK/LKB1/mTORC1活性、より多くのAMPK活性、および重要な老化マーカー(p16およびp21)のより少ない発現を有することを実証し、したがって加齢経路の促進におけるIL-11の役割を確認する。高齢Il11ra1欠失マウスの腓腹筋(図32)、ヒラメ筋(図33)および腹部脂肪(図34)で、同じ結果が観察される。
【0389】
6.1 表現型に及ぼすIl11ra1欠失の影響
表現型研究は、高齢Il11ra1-KOマウスが野生型対照と比較してより少ない体重(図35)、より低い体脂肪パーセンテージ(図36)およびより多くの除脂肪筋肉質量パーセンテージ(図37)を有することを明らかにした。さらに、高齢Il11ra1-KOマウスは野生型対照と比較して有意に低減した虚弱(図38)、およびより高い体温(図39)を示した。
【0390】
Il11ra1の欠失は、野生型対照と比較してより少ない腹部脂肪およびより多くの筋肉(ヒラメ筋および腓腹筋)を有する高齢マウスに導いた(図40A、40Bおよび40C)。
【0391】
腹部脂肪、腓腹筋、ヒラメ筋、肝臓、心房、心室、腎臓および肺の線維症を、野生型対照と比較した高齢Il11ra1-KOマウスにおけるコラーゲン含有量に基づいて評価した(図41A~41Dおよび図42A~42D)。高齢Il11ra1 KOマウスは、これらの組織全体でより少ない線維症を有した。
【0392】
実施例6は、110週齢でIl11ra1を欠失させたマウスが、X203の投与で観察された表現型(実施例1および図1、2、3、4Aおよび4B)、すなわち、脂肪、グルコースのより優れた血清レベルによる向上した多罹患率、より少ない組織線維症、より優れた腎機能、低減された組織炎症、低減された肥満およびより少ない虚弱を写すことを実証する。それは、Il11ra1-KOマウスが組織を越えて若齢マウスにより類似した加齢シグナル伝達プロファイルを有することをさらに実証する。
【0393】
実施例7:in vivoで加齢経路に及ぼすIL-11拮抗(X203)の影響
図43および44は、中和IL-11抗体(X203)を受けた110週(齢)マウスの肝臓が、IgG対照を受けた高齢マウスおよび若齢(12週齢)マウスと比較して、より少ないERK/LKB1/mTORC1活性、より多くのAMPK活性、および重要な老化マーカー(p16およびp21)のより少ない発現を有することを実証する。X203で処置した高齢マウスの腓腹筋(図45および46)、ヒラメ筋(図47および48)および腹部脂肪(図49および50)で、同じ結果が観察される。
【0394】
要約すると、中和IL-11抗体はLKB1/AMPK活性を回復し、mTORC1活性を低減し、高齢マウスの肝臓、骨格筋(ヒラメ筋および腓腹筋)および腹部脂肪における重要な老化マーカーp16およびp21の発現を阻害する。
【0395】
実施例8:in vivoで炎症マーカーに及ぼすIL-11拮抗(X203)の影響
変化した細胞間伝達、特に増加した慢性炎症およびIL6上方制御は、老化過程を予防、処置し、および/または逆転させるために標的にすることができる加齢の重要な特質である(Furmanら、2019、Nature Medicine 25(12):1822~32頁;FerrucciおよびFabbri、2018、Nature Reviews.Cardiology 15(9):505~22頁;ErshlerおよびKeller 2000、Annual Review of Medicine 51:245~70頁)。
【0396】
8.1 IL-6の血清レベルに及ぼすX203の影響
IL-6は加齢と強く関連している(Maggioら、2006、J Gerontol A Biol Sci Med Sci.61(6):575~584頁;ErshlerおよびKeller 2000、Annual Review of Medicine 51:245~70頁)。図50は、高齢(110週齢)雄雌マウスの血清IL-6レベルに及ぼす、抗IL11(X203)またはIgGアイソタイプ対照による処置の影響を示す。X203中和IL-11抗体は、高齢マウスの血清中のIL-6タンパク質のレベルを有意に低減する。
【0397】
8.2 肝臓、腎臓および筋肉における炎症マーカーに及ぼすX203の影響
高齢マウスへの中和抗IL-11(X203)対IgGの投与は、炎症のマーカー(CCL2、CCL5、TNFa、IL-1b、IL-11およびIL-6)を低減し、それは肝臓(図52)、腎臓(図53)および骨格筋(図54)を含む組織にわたる加齢の変化した細胞間伝達特質に対応する。IL-6への影響は、さらにqPCRレベルで肝臓および腎臓で顕著である。
【0398】
要約すると、本明細書に開示されるデータは、IL-11媒介シグナル伝達の拮抗(例えば、抗IL-11療法による)が、加齢の複数の特質:栄養感知、タンパク平衡の減少、細胞老化および変化した細胞間伝達(炎症)を低減することを実証する。これは、複数の加齢モジュールを並行して同時に標的にすることによって達成される:ERK、AMPKおよびmTORC1。
【0399】
さらに、データは以下を開示する:
・ IL11刺激細胞へのMEK1/2阻害剤U0126の投与は、IL11誘導mTORC1/P70S6K活性化を停止するLKB1/AMPKのERK媒介不活性化を阻止する。
【0400】
・ 55~110週齢マウスへの抗IL11(X203)対IgG対照の投与は、より少ないERK活性化、LKB1/AMPK活性の回復ならびに低減されたmTORC1活性および老化マーカー(p16/p21)をもたらす。これは、組織を越えて見られる。
【0401】
・ 110週齢のIL11RA1の欠失したマウスはX203投与で見られる影響を写し、組織を越えて若齢マウスにより類似したシグナル伝達プロファイルを有する。
・ 高齢マウスへのX203対IgGの投与は、脂肪、グルコースのより優れた血清レベルによる向上した多罹患率、より少ない組織線維症、より優れた腎機能、低減された組織炎症、低減された肥満およびより少ない虚弱を写す。
【0402】
・ 高齢マウスへのX203対IgGの投与は、炎症のマーカー(CCL2、CCL5、TNFa、IL1b、IL11およびIL6)-加齢の変化した細胞間伝達特質-を、肝臓、腎臓および骨格筋を含む組織を越えて向上させる。加齢と強く関連するIL-6への影響は、QPCRレベルで肝臓および腎臓で顕著であり、IL6レベルは、抗IL11投与の後の高齢マウスの血清で系統的により低い(Maggioら、2006;ErshlerおよびKeller 2000)。
【0403】
・ 110週齢のIl11ra1欠失マウスでは、同腹仔対照と比較して、脂肪、グルコースのより優れた血清レベルによる低減された多罹患率、より少ない組織線維症、より優れた腎機能、低減された組織炎症、低減された肥満およびより少ない虚弱がある。
【0404】
・ 老化のin vitroモデル(AML12細胞)では、抗IL11または抗IL11RAは細胞老化を阻止し、逆転もさせる。
・ 認定された虚弱スコアリングシステム(Sukoff Rizzoら、2018)を使用して、55~110週の抗IL11によるマウスの処置は、対照と比較して統計学的に有意により少ない虚弱と関連している。
【0405】
・ 認定された虚弱スコアリングシステム(Sukoff Rizzoら、2018)を使用して、IL11RA1 KOマウスは、野生型同腹仔対照と比較して統計学的に有意により少ない虚弱を有する。
【0406】
実施例9:実施例5~8で使用した材料および方法
化学物質
過酸化水素(H、31642、Sigma)、パルミテート(P5585、Sigma)、ラパマイシン(9904、CST)、U0126(9903、CST)。U0126は、MEK1およびMEK2、一種のMAPK/ERKキナーゼ、ワートマニン(9951、CST)の高度に選択的な阻害剤である。
【0407】
細胞培養
細胞は37℃および5%COで増殖させ、維持した。増殖培地は2~3日ごとに更新し、細胞は標準のトリプシン処理技術を使用して80%集密で継代させた。全ての実験は、低い細胞継代(<P3)で実行した。細胞は、刺激の前に基礎培地中で一晩血清を絶食させた。図面凡例で概説されるように、細胞は異なる処置条件および期間で刺激した。刺激した細胞は、同じ条件下であるが刺激なしで同じ期間増殖させた未刺激細胞と比較した。
【0408】
一次ヒト心臓線維芽細胞(HCF)
一次HCF(6330、ScienCell)は、線維芽細胞培地2(2331、ScienCell)、線維芽細胞増殖補助剤2(FGS-2、2382、ScienCell)、5%ウシ胎児血清および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S、0353、ScienCell)を含有するFM-2完全培地で増殖させ、維持した。
【0409】
一次ヒト肝星状細胞(HSC)
HSC(5300、ScienCell)は、ポリ-L-リシンでコーティングされたプレート(2μg/cm、0403、ScienCell)の星状細胞完全培地(5301、ScienCell)で培養した。
【0410】
一次ヒト肝細胞
一次ヒト肝細胞(5200、ScienCell)は、2%ウシ胎児血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを追加した肝細胞培地(5201、ScienCell)で、37℃および5%COで維持した。
【0411】
AML12
AML12(ATCC)は、10%FBS、10μg/mlインスリン、5.5μg/mlトランスフェリン、5ng/mlセレンおよび40ng/mlデキサメタゾンを追加したDMEM:F12培地(30-2006、ATCC)で培養した。
【0412】
老化誘導
記載される通り(Tripathi、YenおよびSingh、2020 STAR Protocols1(2):100064)、7日間にわたって各日に細胞をHの致死量以下の濃度(0.75mM)で1時間処置し、その後23時間回復させることによって老化AML12を作製した。予防試験のために、AML12細胞を老化誘導段階(1日目から7日目)の回復期間中にIgGまたはX209の2μg/mlで処置し;10日目に全RNAの収集のために細胞を採取した。逆転試験のために、老化を先ず7日間誘導し、その後2μg/mlのIgG、X203またはX209で3日間処置し;10日目に全RNAの収集のために細胞を採取した。
【0413】
動物モデル
抗IL11(X203)のin vivo投与
46週齢の雄雌C57B1/6Jマウスを、Jackson Laboratoryから購入した。55週齢から開始して3週間ごとに40mg/kgのX203またはアイソタイプ対照IgG抗体(11E10)を受ける(IP)ように1:1でマウスをランダム化した。血液および組織収集のために、110週齢時にマウスを屠殺した。対照として使用した12週齢の雄雌C57B1/6Jマウスは、Invivos(Singapore)から購入した。
【0414】
Il11ra1欠失マウス(Il11ra1 KO、B6.129S1-Il11ratm1Wehi/J、Jackson’s Laboratory)
血液および組織の収集のために、110週齢時に雄雌のIl11ra1+/+(野生型)およびIl11ra1-/-マウスを屠殺し;それぞれの遺伝子型の10~12週齢の雄雌マウスを対照として使用した。
【0415】
体組成のためのエコーMRI分析
エンドポイント全体脂肪量および除脂肪質量の測定は、4in1 Body Composition Analyzer for Live Small Animalを使用したEchoMRI分析によって屠殺の2日前に実行した。
【0416】
虚弱スコアリング
エンドポイント虚弱スコアリングは、認定された虚弱スコアリングシステム(Sukoff Rizzoら、2018、Current Protocols in Mouse Biology 8(2):e45)を使用して、屠殺の2日前に実行した。
【0417】
イムノブロッティング
ウエスタンブロットは、一次ヒト心臓線維芽細胞(HCF)、肝星状細胞(HSC)、肝細胞、肝臓、腓腹筋、ヒラメ筋および腹部脂肪からの全タンパク質抽出物で実行した。プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Roche)を含有するRIPA溶解および抽出バッファー(89901、Thermo Scientific)で、細胞または組織溶解液をホモジナイズした。タンパク質溶解液をSDS-PAGEによって分離し、PVDF膜に移し、3%BSAで1時間ブロックし、ホスホ-ACC(11818、CST)、ACC(3676、CST)、ホスホ-AMPK(2535、CST)、AMPK(5832、CST)、ホスホ-ERK1/2(4370、CST)、ERK1/2(4695、CST)、GAPDH(2118、CST)、ホスホ-LKB1 S428(3482、CST)、ホスホ-LKB1(S325)、LKB1(3047、CST)、ホスホ-mTOR(2971、CST)、mTOR(2972、CST)、p16(ab232402、Abcam)、p21(64016、CST)、ホスホ-p70S6K(9205、CST)、p70S6K(2708、CST)、ホスホ-S6リボソームタンパク質(4858、CST)またはS6リボソームタンパク質(2217、CST)と一晩インキュベートした。全ての一次抗体は、1%BSAに1:1000で希釈される。ECL検出システム(Pierce)を抗ウサギHRP(3%BSAに1:2000、7074、CST)と使用して、タンパク質バンドを可視化した。
【0418】
ヒドロキシプロリンアッセイ
マウス肝臓中の全ヒドロキシプロリン含有量を、Quickzyme全コラーゲンアッセイキット(QZBtotco15、Quickzyme Biosciences)を使用して測定した。
【0419】
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)
マウス血清中のIL6のレベルは、マウスIL-6 Quantikine ELISAキット(M6000B;R&D Systems)を使用して定量化した。
【0420】
RT-qPCR
Trizol(Invitrogen)およびRNeasyミニキット(Qiagen)を使用して、全RNAをAML12または急速冷凍組織から抽出した。PCR増幅は、iScript cDNA合成キット(Biorad)を使用して実行した。遺伝子発現分析は、Il11(Mm00434162)の場合はTaqMan(Applied Biosystems)により、またはCcl2、Ccl5、Gapdh、Il1β、Il6、Il8、p16、p21、Tnfαの場合はStepOnePlus(商標)(Applied Biosystem)を使用したfast SYBR green(Qiagen)技術により、40サイクルにわたって2反復試料で実行した。発現データはGAPDH mRNA発現に正規化し、変化倍率は2-ΔΔCt方法を使用して計算した。
【0421】
【表3】
【0422】
免疫蛍光染色
110週齢の野生型およびIL11:EGFPリポーターマウス(Il11-Egfp+/-;(Widjajaら、2021、Science Translational Medicine 13(597))からの腎臓、心臓、肺および脾臓を採取し、4%パラホルムアルデヒドに固定し、15%および30%スクロースで脱水し、OCT cryoblockに包埋した。切片(7μm)は、マウス-オン-マウスブロッキング(MKB-2213-1、Vector Labs)および5%正常ヤギ血清と組み合わせたメタノール:アセトン(1:1)および0.1%Triton-X100中での固定によって標準方法を使用して調製した。腎臓切片は、EGFP(GFP、ab290、Abcam(1:500))およびαSMA(αSMA、ab7817、Abcam(1:200))のために染色し;心臓(心房および心室)切片は、EGFP(GFP、sc-9966、Santacruz(1:100))およびαSMA(αSMA、ab5694、Abcam(1:500))のために染色し;脾臓切片は、EGFP(GFP、sc-9966、Santacruz(1:100))のために染色した。組織切片はその後蛍光体とコンジュゲートしている適当な二次抗体:ヤギ抗ウサギIgG AF647(A27040、ThermoFisher Scientific(1:500))およびヤギ抗マウスIgG AF555(A28180、ThermoFisher Scientific(1:500))とインキュベートし、続いて70%エタノール中の0.1%スーダンブラックBによる自己蛍光クエンチングを行った。
【0423】
参考文献
以下の引用は、参照により完全に組み込まれる。
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【配列表】
2023547468000001.app
【国際調査報告】