(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-10
(54)【発明の名称】BETブロモドメイン阻害剤及びナトリウム依存性グルコース輸送体2阻害剤の組み合わせを用いて腎機能を改善するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20231102BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20231102BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20231102BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20231102BHJP
A61K 31/382 20060101ALI20231102BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231102BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231102BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K31/351
A61K31/381
A61K31/357
A61K31/382
A61P3/10
A61P13/12
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526313
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 IB2021060043
(87)【国際公開番号】W WO2022091028
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115525
【氏名又は名称】レスバーロジックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】レビオダ,ケネス ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ハリデイ,クリストファー ロス アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】カーン,アジズ ナイーム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZC351
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086BB01
4C086BB02
4C086BC46
4C086CA01
4C086GA02
4C086GA03
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
推算糸球体濾過量(eGFR)の増加によって測定されるような腎疾患又は関連障害の治療及び/又は予防を必要とする対象に、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、及び式Iの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の組み合わせを投与することによって、それを行うための方法が本明細書に提供され、式Iの変数は、本明細書に定義されるとおりである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推算糸球体濾過量(eGFR)の増加によって測定されるような腎疾患又は関連障害を治療及び/又は予防するための方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、及び式Iの化合物:
【化1】
又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の組み合わせを投与することを含み、
式中、
R
1及びR
3は各々独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
5及びR
7は各々独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、及びアルコキシから選択され、
Wは、C及びNから選択され、
WがNである場合、pは0又は1であり、
WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1であり、R
4はHであるか、又はWはNであり、pは0である、方法。
【請求項2】
式Iの前記化合物が、式Iaの化合物:
【化2】
又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物であり、
R
1及びR
3は各々独立して、アルコキシ、アルキル、及び水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、及び水素から選択され、
R
5及びR
7は各々独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
6は、アルキル、ヒドロキシル、及びアルコキシから選択され、
Wは、C及びNから選択され、
WがNである場合、pは0又は1であり、
WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1であり、R
4はHであるか、又はWはNであり、pは0である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式I又はIaの前記化合物が、
2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208;RVX000222)又はその薬学的に許容される塩である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
100~300mgの1日用量の2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン又は相当量のその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
200mgの1日用量の2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン又は相当量のその薬学的に許容される塩を、前記対象に投与することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記SGLT2阻害剤が、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、及びHM41322から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記SGLT2阻害剤が、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、及びダパグリフロジンから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式Iの前記化合物が、別個の組成物として前記SGLT2阻害剤と同時に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式Iの前記化合物が、単一組成物として前記SGLT2阻害剤と投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象がヒトである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、2型糖尿病又は慢性腎疾患を有するヒトである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、スタチン療法を受けているヒトである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、低HDLコレステロール(男性は40mg/dL未満、及び女性は45mg/dL未満)、並びに最近の急性冠症候群(ACS)(過去7~90日間)を有するヒトである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記腎疾患又は関連障害が、eGFRの低減に関連した腎疾患である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
eGFRの低減に関連した前記腎疾患が、2型糖尿病又は糖尿病関連疾患若しくは障害にも関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
eGFRの低減に関連した前記腎疾患が、腎症である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
eGFRの低減に関連した前記腎疾患が、糖尿病性腎症である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
eGFRの低減に関連した前記腎疾患が、慢性腎疾患である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記慢性腎疾患が、2型糖尿病の併存症である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記治療及び/又は予防することが、eGFR勾配を増加させることによって腎機能を改善することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記治療及び/又は予防することが、eGFR勾配を増加させることによって腎機能の低下を軽減することを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年10月30日に出願された米国仮特許出願第63/107,853号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、腎機能を改善するための方法、あるいは腎疾患又は関連障害の治療及び/又は予防を必要とする対象に、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、及び式I若しくはIaの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の組み合わせを投与することによって、それを行うための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
National Kidney Foundationによると、推算糸球体濾過量(eGFR)は、腎機能及び慢性腎疾患(CKD)の段階を評価する最も強力な非侵襲的方法である(Levey and Inker 2016)。患者の血中クレアチニン濃度、年齢、体の大きさ、及び性別を使用して、医師は、腎疾患の段階、並びに腎疾患及び関連障害の進行を低減する可能性を改善する最も最適な治療計画を決定することができる。腎機能低下は、死亡リスクの顕著なマーカーである。米国の成人の約15%が、何らかの型のCKDを有すると推定される(Hill et al.2016)。腎疾患は現在、世界の死因の12位である。(Bikbov et al.2020)。この疾病負担の重要性は、最近の世界保健機関の報告書で更に強調されており、この報告書は最近、CKDを世界で最も重要な非感染性疾患の1つとして位置付けた。この報告書は、CKD及び腎機能の悪化が、他のいくつかの高リスク患者疾患群に影響を与え、糖尿病及び高血圧の併存症として作用すると同時に、心血管疾患、糖尿病、高血圧、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びマラリアの感染などの主要な死因の世界的な罹患率及び死亡率にも間接的に影響を与えることを強調している。世界の疾病負担研究では、120万人の死亡、1,900万の障害調整生存年(DALY)、及び心血管疾患による1,800万の損失生存年が、糸球体濾過量の低減に直接起因したと推定された(Kassembaum et al.2016;Wang et al.2016)。これらのデータは、リスク及び死亡率のマーカーとして、腎機能、より具体的には推算糸球体濾過量(eGFR)の決定的な重要性を強調している。
【0004】
したがって、スタチン、ベータブロッカー、血小板阻害剤、骨及びミネラル調節因子、並びにより最近導入されたナトリウム依存性グルコース輸送体(本明細書ではSGLT2と称される)阻害剤を含む、標準治療の療法の既存のポートフォリオを補完するための、eGFRを増加させること、又はeGFR勾配を増加させることによって示されるような、腎機能を改善する新規、安全、かつ経口的に活性な薬剤の開発が、満たされていないニーズのままである。これまでに、利用可能な治療は、eGFRの低下を遅くするだけである。患者におけるeGFR又はeGFR勾配を増加させることができる治療はなかった。
【0005】
CKD患者におけるeGFRの増加又はeGFRの低下速度の減速は、CKDに関連した合併症の改善、及びより重度の段階のCKDへの進行の予防と相関することが知られている(Levey et al.2020)。
【0006】
糖尿病、特にII型糖尿病(T2DM)は、血糖値の慢性的な上昇を特徴とする。糖尿病は、併存症、及び腎症などのいくつかの合併症としてCKDに関連している(Fowler 2008、Vithian and Hurel 2010、Beckman and Creager 2016、Rangel et al.2016)。T2DMと診断された米国の成人の最大40%が、糖尿病性腎症を原因とする慢性腎疾患を有し、その過半数が中等度から重度のCKDを有する(Bailey et al.2014、Zelnick et al.2017、Cressman et al.2018)。
【0007】
SGLT2阻害剤の導入は、CKD患者にとって潜在的な新しい治療選択肢をもたらした。SGLT2阻害剤は、ナトリウムグルコース輸送タンパク質2の阻害によって尿中のグルコースの分泌を低減し、既存の心血管疾患、糖尿病、及び慢性腎疾患を有する患者における腎機能の低下を軽減することが示されている(Zinman et al.2015、Neal et al.2017、Perkovic et al.2019、Wiviott et al.2019)。T2DM患者におけるeGFRの低下を軽減するSGLT2阻害剤の能力は、エンパグリホジン(Empaglifozin)(NCT01131676)に対するEMPA-REG OUTCOME、カナグリホジン(canaglifozin)(NCT01032629、NCT01989754、及びNCT02065791)に対するCANVASプログラム及びCREDENCE、並びにダパグリホジン(dapaglifozin)に対するDECLARE-TIMI 58(NCT01730534)など、いくつかの臨床試験において研究されている。これらの試験は、腎機能の低下を遅らせる何らかの証拠をもたらしたが、それらの試験のいずれも、ベースラインと比較してeGFRの増加、又はその結果として、腎機能の改善を実証しなかった(Davidson 2019)。
【0008】
DAPA-CKD研究は、2型糖尿病を伴う又は伴わないCKD患者におけるダパグリフロジンの効果を評価した。この研究からのデータは、腎機能低下の大幅な減速を表したが、ベースライン測定値と比較した30か月の治療にわたるeGFRの絶対値は、ダパグリフロジン群において-7.15単位、及びプラセボ群において-9.47単位であり、それによって、ダパグリフロジンが、プラセボと比較して腎機能低下を遅らせることができたが、eGFRを増加させることができなかったことを示している(Heerspink et al.2020)。
【0009】
これまで、慢性腎疾患に対する標準治療の療法のどの組み合わせ(スタチン、ベータブロッカー、血小板阻害剤、骨及びミネラル調節因子、及びSGLT2阻害剤を含む)も、これらの患者における腎機能の改善を報告していない。具体的には、これらのSGLT2阻害剤分子のいずれかによる、ベースラインと比較した腎機能改善(eGFRの増加として表される)又はベースラインと比較した腎勾配改善(eGFR勾配の増加として表される)の報告はない。
【0010】
式I又はIaの化合物であるアパベタロン(RVX-208又はRVX000222)は、ファーストインクラスのブロモドメイン及び末端外(BET)阻害剤(BETi)であり、BETタンパク質の第2のブロモドメインに選択的に結合する。BETタンパク質(BRD2、BRD3、BRD4、及びBRDT)は、ヒストン3及び4、並びにいくつかの転写因子上でアセチル化リジンを認識し、それに結合するエピジェネティックリーダーである。ヒストン結合BETは、転写因子及び機構を遺伝子エンハンサー及びプロモーター部位に動員し、近位遺伝子の転写を促進する。慢性疾患は、アセチル化の状況を大きく変化させ(Chen et al.2005、Villagra et al.2010、Bayarsaihan 2011)、炎症、脂質代謝、及び血管機能に関与する遺伝子のスーパーエンハンサー及びプロモーターにBETタンパク質を再配置する(Huang et al.2009、Brown et al.2014、Das et al.2017)。アパベタロンは、BETタンパク質転座を防ぎ、慢性疾患を駆動する遺伝子の転写を阻害する。BETタンパク質を標的化することによるアパベタロン処理は、より顕著な不適応なBET調節を有する条件下で増強される多面的な効果を特徴とする。
【発明の概要】
【0011】
最近完了した臨床第3相試験(BETonMACE、NCT02586155)では、低HDLコレステロール(男性は40mg/dL未満、及び女性は45mg/dL未満)、並びに最近のACS(過去7~90日間)を有する2型糖尿病患者における、アパベタロン(RVX-208)のMACEに対する効果を評価した。全ての患者が、高強度スタチン治療を受けた。BETonMACEは、T2DMを有する高リスク心血管疾患患者に、BET阻害剤及びSGLT2阻害剤の組み合わせを長期間投与する最初の臨床試験であった。同じBETonMACE臨床試験では、最近のACSを有するT2DM患者におけるeGFRレベルに対する、RVX-208単剤療法、SGLT2阻害剤単剤療法、並びにRVX-208及びSGLT2阻害剤から構成される併用療法の効果も評価された。
【0012】
BETonMACEの前に、第2相ASSURE(NCT01067820)及びSUSTAIN(NCT01423188)臨床試験の事後分析において、RVX-208単剤療法で治療された、既存の心血管疾患及び60mL/分/1.73m2未満のeGFRを有する患者では、プラセボ群における5.9%の減少と比較して、3.4%のeGFRの増加が観察された(ベースラインと比較してp=0.04)(Kulikowski et al.2017)しかしながら、より最近完了したBETonMACE試験における更なる臨床分析では、RVX-208単剤療法は、最近のACSを有するT2DM患者において、プラセボと比較して、eGFRを統計的に改善する能力を実証しなかった(Ray et al.2020)。全患者集団において、eGFRの統計的に有意な改善は観察されなかった(Ray et al.2020)。この研究において、SGLT2阻害剤単剤療法がeGFRを改善しなかったこともわかった。
【0013】
驚くべきことに、実施例2に詳述されるように、RVX-208及びSGLT2阻害剤の組み合わせで治療された患者は、いずれの療法単独による治療と比較しても、eGFRによって測定されるような腎機能の顕著な改善を示したことがわかった。以下で考察される結果の概要、及び実施例2の結果の詳細な説明は、RVX-208又はSGLT2阻害剤がそれら自体、最近のACS及びT2DMを有する患者におけるeGFRを改善しなかったことを実証する。しかしながら、アパベタロンをSGLT2阻害剤と組み合わせた場合、eGFRの予想外かつ統計的に有意な増加が観察され、この改善は、RVX-208及びSGLT2阻害剤の個々の相加効果を超えた。
【0014】
注目すべきことに、SGLT2阻害剤と組み合わせたRVX-208は、ベースライン時の114mL/分の中央値から、治療の最終訪問(LVT)時の120mL/分の中央値までeGFRを増加させた。SGLT2阻害剤単剤療法は、ベースライン時の109mL/分のeGFR中央値、及びLVT時の110mL/分のeGFR中央値を有した(すなわち、eGFR中央値のわずかな増加)。RVX-208単剤療法群は、ベースライン時の97mL/分のeGFR中央値、及びLVT時の96mL/分のeGFR中央値を有した(すなわち、eGFR中央値の増加なし)。
【0015】
したがって、本開示によって提供される技術的解決法は、腎疾患又は関連障害を治療及び/又は予防する方法(その進行を遅らせることを含む)、あるいは推算糸球体濾過量(eGFR)の増加によって測定されるように、腎機能を改善するための方法であって、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、及び式Iの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の組み合わせを投与することを含む、方法を含む。
【0016】
式Iの化合物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,053,440号にすでに記載されている。式Iの化合物は、
【化1】
又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物を含み、
式中、
R
1及びR
3は各々独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
5及びR
7は各々独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、及びアルコキシから選択され、
Wは、C及びNから選択され、
WがNである場合、pは0又は1であり、
WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1であり、R
4はHであるか、又はWはNであり、pは0である。
【0017】
RVX-208は、式Iの化合物の代表的な例である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって治療及び/又は予防される腎疾患又は関連障害は、eGFRの低減(すなわち、60mL/分/1.73m2未満±10%)に関連した腎疾患から選択される。いくつかの実施形態では、eGFRの低減に関連した腎疾患はまた、糖尿病(2型糖尿病又はT2DM)及びeGFRの低減に関連した糖尿病関連疾患又は障害に関連している。一実施形態では、eGFRの低減に関連した腎疾患は、慢性腎疾患である(2型糖尿病の併存症である慢性腎疾患を含む)。一実施形態では、eGFRの低減に関連した腎疾患は、腎症である(糖尿病性腎症を含む)。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示の方法における腎疾患又は関連障害の治療及び/又は予防は、例えば、T2DM又はCKDを有する対象における、eGFR勾配の増加によって評価されるように、腎機能の低下を軽減する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示の方法における腎疾患又は関連障害の治療及び/又は予防は、例えば、T2DM又はCKDを有する対象における、eGFR勾配の増加によって定義されるように、腎機能を改善する。
【0021】
いくつかの実施形態では、腎疾患又は関連障害は、T2DM又はCKDを有する対象において、本開示の方法によって治療及び/又は予防される。
【0022】
いくつかの実施形態では、式I又はIaの化合物は、SGLT2阻害剤と同時に投与される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、SGLT2阻害剤と逐次的に投与される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、SGLT2阻害剤と単一の医薬組成物として投与される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物及びSGLT2阻害剤は、別個の組成物として投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、式Iaの化合物は、
【化2】
又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物から選択され、
式中、
R
1及びR
3は各々独立して、アルコキシ、アルキル、及び水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、及び水素から選択され、
R
5及びR
7は各々独立して、アルキル、アルコキシ、及び水素から選択され、
R
6は、アルキル、ヒドロキシル、及びアルコキシから選択され、
Wは、C及びNから選択され、
WがNである場合、pは0又は1であり、
WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1であり、R
4はHであるか、又はWはNであり、pは0である。
【0024】
いくつかの実施形態では、式I又はIaの化合物は、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208若しくはRVX000222)、又はその薬学的に許容される塩である。
【0025】
いくつかの実施形態では、式I若しくはIaの化合物、又は2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン、又は上記のいずれかの薬学的に許容される塩の1日用量は、100~300mg、例えば、200mgである。
【0026】
いくつかの実施形態では、式I又はIaの化合物は、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、1日2回投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、SGLT2阻害剤は、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、レモグリフロジン、イプラグリフロジン、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、又はHM41322である。
【0028】
いくつかの実施形態では、SGLT2阻害剤は、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、又はダパグリフロジンである。
【0029】
いくつかの実施形態では、SGLT2阻害剤は、ダパグリフロジンである。
【0030】
いくつかの実施形態では、ダパグリフロジンの1日用量は、5~10mgである。
【0031】
いくつかの実施形態では、ダパグリフロジンの1日用量は、5mg又は10mgである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】プラセボをSGLT2阻害剤と投与した患者と比較した、RVX-208をSGLT2阻害剤と投与した患者における、ベースラインからLVTへのeGFRの変化の比較を示す。
【
図2】RVX-208をSGLT2阻害剤なしで投与した患者と比較した、RVX-208をSGLT2阻害剤と投与した患者における、ベースラインからLVTへのeGFRの変化の比較を示す。
【
図3】SGLT2阻害剤あり又はなしでRVX-208を投与した患者における、ベースラインからLVTへのeGFRの変化中央値を比較する、薬物相互作用マトリックスを示す。
【
図4】SGLT2阻害剤あり又はなしでRVX-208を投与した患者における、ベースラインからLVTへのeGFRの平均変化を比較する、薬物相互作用マトリックスを示す。
【
図5】プラセボをSGLT2阻害剤と投与した患者と比較した、RVX-208をSGLT2阻害剤と投与した患者における、ベースラインからLVTへのeGFRの変化率(eGFR勾配)の比較を示す。
【
図6】RVX-208をSGLT2阻害剤なしで投与した患者と比較した、RVX-208をSGLT2阻害剤と投与した患者における、ベースラインからLVTへのeGFRの変化率(eGFR勾配)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
「任意選択的な」又は「任意選択的に」とは、その後に記載される事象又は状況が発生する可能性があるか又は発生しない可能性があること、並びにその記載が、事象又は状況が発生する場合、及び発生しない場合を含むことを意味する。例えば、「任意選択的に置換されたアリール」は、以下に定義されるように、「アリール」及び「置換されたアリール」の両方を包含する。当業者であれば、1つ以上の置換基を含有する任意の基に関して、こうした基は、立体的に非実用的、合成的に実行不可能、及び/又は本質的に不安定な、いかなる置換又は置換パターンを導入することも意図していないことを理解するであろう。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「水和物」は、結晶構造に組み込まれた、化学量論的又は非化学量論的な量の水のいずれかを有する結晶形態を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、本明細書で(C2-C8)アルケニルと称される、2~8個の炭素原子の直鎖又は分岐基などの少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和直鎖又は分岐炭化水素を指す。例示的なアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキセニル、2プロピル2-ブテニル、及び4-(2-メチル-3-ブテン)-ペンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素に結合されたアルキル基(O-アルキル)を指す。「アルコキシ」基としてはまた、酸素と結合したアルケニル基(「アルケニルオキシ」)、又は酸素と結合したアルキニル基(「アルキニルオキシ」)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコキシ基としては、本明細書では(C1-C8)アルコキシと称される、1~8個の炭素原子のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を有する基が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ及びエトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、飽和直鎖又は分岐炭化水素、例えば、本明細書では(C1-C8)アルキルと称される、1~8個の炭素原子の直鎖又は分岐基を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「アミド」は、NRaC(O)(Rb)又はC(O)NRbRcの形態を指し、Ra、Rb、及びRcは各々独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択される。アミドは、炭素、窒素、Rb、又はRcを介して別の基に結合することができる。アミドはまた、環状であってもよく、例えば、Rb及びRcは結合されて、5又は6員環などの3~8員環を形成してもよい。用語「アミド」は、例えばスルホンアミド、尿素、ウレイド、カルバメート、カルバミン酸、及びその環状バージョンなどの、基を包含する。用語「アミド」はまた、カルボキシ基に付加されたアミド基、例えば、アミド-COOH又はアミド-COONaなどの塩、カルボキシ基に付加されたアミノ基(例えば、アミノ-COOH又はアミノ-COONaなどの塩)を包含する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「アミン」又は「アミノ」は、NRdRe又はN(Rd)Reの形態を指し、Rd及びReは独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、及び水素から選択される。アミノは、窒素を介して親分子基に結合することができる。アミノはまた、環状であってもよく、例えば、Rd及びReのうちの任意の2つが一緒に結合、又はNと結合されて、3~12員環(例えば、モルホリノ又はピペリジニル)を形成してもよい。アミノという用語は、対応する任意のアミノ基の四級アンモニウム塩も含む。例示的なアミノ基としては、アルキルアミノ基が挙げられるが、これに限定されず、Rd及びReのうちの少なくとも1つは、アルキル基である。いくつかの実施形態では、Rd及びReは各々、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、エステル、又はアミノで任意選択的に置換されてもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、単環式、二環式、又は他の多環式の炭素環式、芳香族環系を指す。アリール基は、任意選択的に、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択される1つ以上の環に融合されてもよい。本開示のアリール基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択される基で置換され得る。例示的なアリール基としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、及びナフチル、並びに5,6,7,8-テトラヒドロナフチルなどのベンゾ縮合炭素環部分が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアリール基としてはまた、単環式芳香族環系が挙げられるが、これに限定されず、環は、6個の炭素原子を含み、本明細書では「(C6)アリール」と称される。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「アリールアルキル」は、少なくとも1つのアリール置換基(例えば、アリール-アルキル)を有するアルキル基を指す。例示的なアリールアルキル基としては、単環式芳香族環系を有するアリールアルキルが挙げられるが、これに限定されず、環は、本明細書で「(C6)アリールアルキル」と称される6個の炭素原子を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「カルバメート」は、RgOC(O)N(Rh)、RgOC(O)N(Rh)Ri、又はOC(O)NRhRiの形態を指し、Rg、Rh及びRiは各々独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択される。例示的なカルバメートとしては、アリールカルバメート又はヘテロアリールカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Rg、Rh、及びRiの少なくとも1つは独立して、アリール及びヘテロアリール、例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジンから選択される)。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「炭素環」は、アリール基又はシクロアルキル基を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「カルボキシ」は、COOH又はその対応するカルボン酸塩(例えば、COONa)を指す。カルボキシという用語はまた、「カルボキシカルボニル」、例えば、カルボニル基と結合したカルボキシ基、例えば、C(O)-COOH又は塩、例えばC(O)-COONaを含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合されたシクロアルキル基を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和の環式、二環式、又は架橋された3~12個の炭素、又は3~8個の炭素の二環式炭化水素基を指し、本明細書では、シクロアルカンに由来して「(C3-C8)シクロアルキル」と称される。例示的なシクロアルキル基としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、及びシクロペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンで置換されてもよい。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル飽和基若しくは不飽和基、アリール基、又はヘテロシクリル基に融合され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「ジカルボン酸」は、飽和及び不飽和炭化水素ジカルボン酸及びその塩などの少なくとも2つのカルボン酸基を含む基を指す。例示的なジカルボン酸としては、アルキルジカルボン酸が挙げられるが、これに限定されない。ジカルボン酸は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンで置換されてもよい。ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、(+)/(-)-リンゴ酸、(+)/(-)酒石酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられるが、これらに限定されない。ジカルボン酸は、無水物、イミド、ヒドラジド(例えば、無水コハク酸及びスクシンイミド)などのカルボン酸誘導体を更に含む。
【0048】
用語「エステル」は、構造C(O)O-、C(O)ORj、RkC(O)O-Rj、又はRkC(O)O-を指し、Oは水素に結合されず、Rj及びRkは独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルから選択され得る。Rkは水素であり得るが、Rjは水素であり得ない。エステルは環状であってもよく、例えば、炭素原子及びRj、酸素原子及びRk、又はRj及びRkが結合されて、3~12員環を形成してもよい。例示的なエステルとしては、Rj及びRkのうちの少なくとも1つが、O-C(O)アルキル、C(O)-O-アルキル、及びアルキルC(O)-O-アルキルなどのアルキルである、アルキルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なエステルとしてはまた、アリール又はヘテロアリールエステルが挙げられるが、これらに限定されず、例えば、Rj及びRkのうちの少なくとも1つは、ヘテロアリール基、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジン、例えば、ニコチンエステルである。例示的なエステルとしてはまた、構造RkC(O)O-を有する逆エステルが挙げられるが、これに限定されず、酸素は親分子に結合される。例示的な逆エステルとしては、サクシネート、D-アルギニネート、L-アルギニネート、L-リジネート、及びD-リジネートが挙げられるが、これらに限定されない。エステルはまた、カルボン酸無水物及び酸ハロゲン化物を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、又はIを指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。「ハロアルキル」はまた、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルケニル基又はアルキニル基を包含する。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素、及び硫黄などの1~3個のヘテロ原子などの、1つ以上のヘテロ原子を含む、一環、二環、又は多環の芳香族環系を指す。ヘテロアリールは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド及びチオケトンを含む1つ以上の置換基で置換され得る。ヘテロアリールはまた、非芳香族環に融合されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)-及び(1,2,4)トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、フェニル、イソオキサゾリル、及びオキサゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なヘテロアリール基としては、単環式芳香族環が挙げられるが、これに限定されず、環は、2~5個の炭素原子及び1~3個のヘテロ原子を含み、本明細書では「(C2-C5)ヘテロアリール」と称される。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル)」、又は「複素環式」は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される1つ、2つ、又は3つのヘテロ原子を含有する、飽和又は不飽和の3、4、5、6、又は7員環を指す。複素環は、芳香族(ヘテロアリール)又は非芳香族であり得る。複素環は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド及びチオケトンを含む1つ以上の置換基で置換され得る。複素環はまた、二環式、三環式、及び四環式基を含み、この時、上記複素環のいずれかは、アリール、シクロアルキル、及び複素環から独立して選択される1つ又は2つの環に融合される。例示的な複素環としては、アクリジニル、ベンジミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾキサゾリル、ビオチニル、シンノリニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソキサゾリジニル、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジン-2-オニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、キノキサロイル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、チオピラニル、及びトリアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」は、-OHを指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基に結合されるヒドロキシを指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアリール」は、アリール基に結合されるヒドロキシを指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「ケトン」は、C(O)-Rn(例えば、アセチルとしてC(O)CH3)又はRn-C(O)-Roの構造を指す。ケトンは、Rn又はRoを介して別の基に結合することができる。Rn及びRoは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリルあるいはアリールであってもよく、又はRn及びRoは結合して3~12の員環を形成することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「フェニル」は、6員の炭素環式芳香族環を指す。フェニル基はまた、シクロヘキサン又はシクロペンタン環に融合されてもよい。フェニルは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンを含む1つ以上の置換基で置換され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「チオアルキル」は、硫黄(S-アルキル)に結合されたアルキル基を指す。
【0059】
「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アルコキシ」、「アミノ」及び「アミド」基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボニル、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、チオケトン、ウレイド、及びNから選択される少なくとも1つの基で任意選択的に置換され得るか、又はそれらによって遮断され得るか、又はそれらで分岐し得る。置換基は分岐して、置換又は非置換の複素環又はシクロアルキルを形成してもよい。
【0060】
本明細書で使用される場合、任意選択的に置換される置換基上の適切な置換は、本開示の化合物又はそれらの調製に有益な中間体の合成的又は医薬的有用性を無効としない基を指す。好適な置換の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない。C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル又はアルキニル;C6アリール、5又は6員ヘテロアリール;C3-C7シクロアルキル;C1-C8アルコキシ;C6アリールオキシ;CN;OH;オキソ;ハロ、カルボキシ;アミノ、例えば、NH(C1-C8アルキル)、N(C1-C8アルキル)2、NH((C6)アリール)、又はN((C6)アリール)2;ホルミル;ケトン、例えば、CO(C1-C8アルキル)、-CO((C6アリール)エステル、例えば、CO2(C1-C8アルキル)、及びCO2(C6アリール)。当業者であれば、本開示の化合物の安定性及び薬理学的活性及び合成活性に基づいて、適切な置換を容易に選択することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される組成物」という用語は、1つ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化された本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む組成物を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬投与と適合性のある、あらゆる、全ての溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤及び吸収遅延剤などを指す。医薬的に活性な物質のためのこのような媒体及び製剤の使用は、当技術分野で周知である。組成物はまた、補足的、追加的、又は強化された治療機能を提供する他の活性化合物を含有してもよい。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される組成物」という用語は、1つ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化された、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物を含む組成物を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、健全な医薬的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答を伴わずに、ヒト及び下等動物の組織と接触して使用することに適し、妥当な便益/リスク比に見合っており、かつ意図される使用に有効である、本発明の化合物のプロドラッグ、並びに可能であれば、式I又はIaの化合物の双性イオン型を表す。考察は、Higuchi et al.,”Prodrugs as Novel Delivery Systems,”ACS Symposium Series,Vol.14、及びRoche,E.B.,ed. Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987にて提供されており、これら両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本組成物で使用される化合物中に存在し得る酸性又は塩基性基の塩を指す。本質的に塩基性である本組成物に含まれる化合物は、様々な無機酸及び有機酸を有する多種多様な塩を形成することができる。こうした塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩を形成する酸であり、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩(硫酸塩、クエン酸塩、メイターテ(matate)、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)塩が挙げられるが、これらに限定されない)。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、上述の酸に加えて、様々なアミノ酸を有する薬学的に許容される塩を形成し得る。本来酸性である本組成物に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンを有する塩基塩を形成することができる。こうした塩の例としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
更に、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として取得される場合、遊離塩基は、酸性塩の溶液を塩基性化することによって取得することができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来的な手順に従って、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解し、溶液を酸で処理することによって、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩を生産し得る。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用され得る様々な合成方法を認識するであろう。
【0066】
式I又はIaの化合物は、1つ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含有してもよく、したがって、幾何異性体、エナンチオマー、又はジアステレオマーなどの立体異性体として存在する。本明細書で使用される場合、用語「立体異性体」は、全ての幾何異性体、エナンチオマー、又はジアステレオマーからなる。これらの化合物は、立体中心炭素原子の周りの置換基の構成に応じて、記号「R」又は「S」で指定され得る。本開示は、これらの化合物及びその混合物の様々な立体異性体を包含する。立体異性体には、エナンチオマー及びジアステレオマーが含まれる。エナンチオマー又はジアステレオマーの混合物は、術語では「(±)」と指定され得るが、当業者は、構造がキラル中心を黙示的に示し得ることを認識するであろう。
【0067】
本開示の方法で使用するための化合物の個々の立体異性体は、不斉中心又は立体中心を含有する市販の出発原料から合成的に調製され得るか、又はラセミ混合物の調製、それに続く当業者に周知の分割方法によって調製され得る。これらの分解方法は、(1)キラル補助剤へのエナンチオマー混合物の結合、再結晶化若しくはクロマトグラフィーによって得られたジアステレオマー混合物の分離、及び光学的に純粋な生成物の補助剤からの解放、(2)光学的に活性な分解剤を使用した塩の形成、又は(3)キラルクロマトグラフィーカラム上の光学エナンチオマーの混合物の直接的な分離によって例示される。立体異性混合物はまた、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩複合体としての化合物の結晶化、又はキラル溶媒中の化合物の結晶化などの周知の方法によって、その構成要素である立体異性体に分割され得る。立体異性体はまた、周知の非対称合成法によって、立体異性体的に純粋な中間体、試薬、及び触媒から取得することができる。
【0068】
幾何異性体は、式I又はIaの化合物中にも存在することができる。本開示は、炭素-炭素二重結合の周りの置換基の配置、又は炭素環の周りの置換基の配置から生じる、様々な幾何異性体及びその混合物を包含する。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」又は「E」構成で指定され、用語「Z」及び「E」は、IUPAC標準に従って使用される。特に指定のない限り、二重結合を示す構造は、E異性体及びZ異性体の両方を包含する。
【0069】
炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、代替的に、「シス」又は「トランス」と呼んでもよく、「シス」は、二重結合の同じ側の置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環の周りの置換基の配置は、「シス」又は「トランス」として示される。用語「シス」は、環の平面の同じ側の置換基を表し、用語「トランス」は、環の平面の反対側の置換基を表す。置換基が、環の平面の同一面及び対向面の両方上に配置される化合物の混合物は、「シス/トランス」と示される。
【0070】
本明細書に開示される式I又はIaの化合物は、互変異性体として存在してもよく、両方の互変異性体の形態が、1つの互変異性体構造のみが表現されているが、本開示の範囲に包含されることが意図される。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「SGLT2阻害剤」は、小分子有機化学化合物(1kDa以下)、又はペプチド(例えば、可溶性ペプチド)、タンパク質(例えば、抗体)、核酸(例えば、siRNA)、又は上記のうちの任意の2つ以上を組み合わせるコンジュゲートなどの大きな生体分子などの物質を指し、これは、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)を阻害する活性を有する。SGLT2阻害剤の非限定的な例としては、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、レモグリフロジン、イプラグリフロジン、HM41322、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、又は上記のいずれかの薬学的に許容される塩が挙げられる。SGLT2阻害剤の更なる例は、WO01/027128、WO04/013118、WO04/080990、EP1852439A1、WO01/27128、WO03/099836、WO2005/092877、WO2006/034489、WO2006/064033、WO2006/117359、WO2006/117360、WO2007/025943、WO2007/028814、WO2007/031548、WO2007/093610、WO2007/128749、WO2008/049923、WO2008/055870、及びWO2008/055940に開示され、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、疾患若しくは障害、又はその少なくとも1つの識別可能な症状の改善を指す。別の実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、必ずしも患者によって識別可能ではない、少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。更に別の実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、物理的、例えば識別可能な症状の安定化など、生理学的、例えば物理的パラメータの安定化など、のいずれか、又は両方で、疾患又は障害の進行を軽減することを指す。更に別の実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害の発症又は進行を遅らせることを指す。例えば、コレステロール障害を治療することは、血中コレステロール値の減少を含み得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「予防」又は「予防すること」は、所与の疾患若しくは障害、又は所与の疾患若しくは障害の症状を獲得するリスクの低減を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「糖尿病関連疾患又は障害」は、2型糖尿病及び/又は2型糖尿病の併存症の合併症を指し、それを患っている対象は、もし計算される場合又は計算されたとき、60mL/分/1.73m2未満±10%(すなわち、54~66mL/分/1.73m2)の、血液又は血清クレアチニンレベル、年齢、体の大きさ、及び性別によって決定されるような、eGFRを有する。本明細書に定義される糖尿病関連疾患又は障害の非限定的な例は、糖尿病性腎症、2型糖尿病の併存症である慢性腎疾患、及びそれらの組み合わせである。
【0075】
本明細書で使用される場合、「腎疾患又は関連障害」は、eGFRの低減に関連した腎疾患を指す。いくつかの実施形態では、腎疾患又は関連障害は、糖尿病(2型糖尿病)、又は糖尿病関連疾患若しくは障害にも関連している。eGFRの低減に関連した腎疾患の非限定的な例としては、慢性腎疾患、腎症(例えば、C1a腎症、多剤併用抗レトロウイルス(cART)関連腎症、シュウ酸腎症)、急性腎不全又は急性腎損傷、アルポート症候群、糸球体症(例えば、C3糸球体症、単クローン性免疫グロブリン血症を伴うC3糸球体症、C4糸球体症)、心腎症候群、糸球体症を伴うシャルコー・マリー・トゥース病、先天性ネフローゼ症候群、うっ血性腎不全、コロナウイルス(COVID-19)に関連した腎不全及び腎疾患、ファブリー病、糖尿病性腎疾患、糸球体疾患、糖尿、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、高カルシウム血症、高カリウム血症、低カルシウム血症、腎臓結石、腎石症、ループス腎疾患、ループス腎炎、悪性腫瘍随伴腎疾患、悪性高血圧、マルファン症候群及び腎疾患、多発性嚢胞腎疾患、タンパク尿(尿中のタンパク質)、腎動脈狭窄症、腎性骨形成異常症、造血細胞移植後の腎疾患、幹細胞移植に関連した腎疾患、並びに尿毒症が挙げられる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「慢性腎疾患」は、腎臓が血液から老廃物及び過剰な水分を濾過して尿中に排泄させる能力である、腎臓機能の段階的な喪失を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「腎機能」は、推算糸球体濾過量(eGFR)及び/又はeGFR勾配によって測定される腎臓機能を指す。腎機能を改善することとは、eGFRを増加させること、及び/又はeGFR勾配を増加させることを意味する。
【0078】
例示的な実施形態
一実施形態では、本開示は、腎機能を改善するための方法、又は推算糸球体濾過量(eGFR)の増加によって測定されるように、腎臓関連疾患若しくは関連障害を治療及び/若しくは予防するための方法(その進行を遅らせることを含む)を提供し、方法は、それを必要とする対象に、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、及び式Iの化合物:
【化3】
又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の組み合わせを投与することを含み、
式中、
R
1及びR
3は各々独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
5及びR
7は各々独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、及びアルコキシから選択され、
Wは、C及びNから選択され、
WがNである場合、pは0又は1であり、
WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1であり、R
4はHであるか、又はWはNであり、pは0である。
【0079】
一実施形態では、式Iの化合物は、式Iaの化合物:
【化4】
又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物であり、
式中、
R
1及びR
3は各々独立して、アルコキシ、アルキル、及び水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、及び水素から選択され、
R
5及びR
7は各々独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、及び水素から選択され、
R
6は、アルキル、ヒドロキシル、及びアルコキシから選択され、
Wは、C及びNから選択され、
WがNである場合、pは0又は1であり、
WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1であり、R
4はHであるか、又はWはNであり、pは0である。
【0080】
一実施形態では、式I又はIaの化合物は、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208若しくはRVX000222)、又はその薬学的に許容される塩である。
【0081】
一実施形態では、方法は、100~300mgの1日用量の2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン又は相当量のその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0082】
一実施形態では、方法は、1日200mgの1日用量の2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン又は相当量のその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0083】
一実施形態では、SGLT2阻害剤は、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、ベキサグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、及びHM41322から選択される。
【0084】
一実施形態では、SGLT2阻害剤は、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、及びダパグリフロジンから選択される。
【0085】
一実施形態では、式I又はIaの化合物は、SGLT2阻害剤と別個の組成物として同時に投与される。
【0086】
一実施形態では、式I又はIaの化合物は、SGLT2阻害剤と単一の医薬組成物として投与される。
【0087】
一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0088】
一実施形態では、対象は、スタチン療法を受けているヒトである。一実施形態では、対象は、高強度又は最大耐容スタチン療法を受けているヒトである。一実施形態では、高強度スタチン治療又は療法は、少なくとも20mg、又は少なくとも40mg、又は20~80mg、又は20~40mg、又は40~80mgの1日投与を指す。一実施形態では、最大耐容スタチン治療又は療法は、少なくとも40mg、又は40mg~80mg、又は80mgの毎日の損失を指す。一実施形態では、対象はロスバスタチン療法を受けている。一実施形態では、対象はアトルバスタチン療法を受けている。
【0089】
一実施形態では、対象は、2型糖尿病又は慢性腎疾患を有するヒトである。一実施形態では、対象は、低HDLコレステロール(男性は40mg/dL未満、及び女性は45mg/dL未満)、並びに最近の急性冠症候群(ACS)(過去7~90日間)を有するヒトである。
【0090】
一実施形態では、腎疾患又は関連障害は、例えば、2型糖尿病又は慢性腎疾患を有する対象における、eGFRの低減に関連した腎疾患である。
【0091】
一実施形態では、eGFRの低減に関連した腎疾患は、2型糖尿病又は糖尿病関連疾患若しくは障害に関連している。
【0092】
一実施形態では、eGFRの低減に関連した腎疾患は、腎症である。一実施形態では、eGFRの低減に関連した腎疾患は、糖尿病性腎症である。
【0093】
一実施形態では、eGFRの低減に関連した腎疾患は、慢性腎疾患である。一実施形態では、2型糖尿病の併存症である慢性腎疾患である。
【0094】
一実施形態では、方法は、例えば、2型糖尿病又は慢性腎疾患を有する対象におけるeGFR勾配を増加させることによって、腎機能を改善する。
【0095】
一実施形態では、方法は、例えば、2型糖尿病又は慢性腎疾患を有する対象にけるeGFR勾配を増加させることによって、腎機能の低下を軽減する。
【0096】
一実施形態では、本開示は、推算糸球体濾過量(eGFR)を増加させることによって、腎機能を改善するための方法を提供し、方法は、それを必要とする対象に、上で定義されるナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、及び式I若しくは式Iaの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の組み合わせを投与することを含む。別の実施形態では、本開示は、推算糸球体濾過量(eGFR)を増加させるための方法を提供し、方法は、それを必要とする対象に、上で定義されるナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT2)阻害剤、及び式I若しくは式Iaの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の組み合わせを投与することを含む。一実施形態では、腎機能を改善するための方法、又はeGFRを増加させるための方法は、腎疾患又は関連障害を治療及び/又は予防する。腎機能を改善するための方法、又はeGFRを増加させるための方法の例示的な実施形態、例えば、式I若しくはIaの特定の化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物;式I若しくはIaの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物の特定の1日用量;特定のSGLT2阻害剤;式I若しくはIaの化合物、又はその立体異性体、互変異性体、薬学的に許容される塩、若しくは水和物、及びSGLT2阻害剤の投与方法(すなわち、同時、逐次的、別個の組成物として、又は単一の組成物として);対象基準、対象部分集団;並びに特定の糖尿病関連疾患及び障害は、上記の例示的な実施形態のうちのいずれか1つ以上に記載されるとおりである。
【0097】
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【実施例】
【0098】
実施例1:臨床開発
アパベタロン(RVX-208)を、低HDLコレステロール(男性は40mg/dL未満、及び女性は45mg/dL未満)、並びに最近の急性冠症候群(ACS)(過去7~90日間)を有する2型糖尿病患者におけるMACEに対する効果について、最近完了した臨床第3相試験(BETonMACE;NCT02586155)で評価した。全ての患者は、高強度スタチン治療又は最大耐容スタチン治療を受け、これは、ロスバスタチンの場合は1日20~40mg若しくは40mgの最大1日用量、又はアトルバスタチンの場合は1日40~80mg若しくは80mgの最大1日用量であった。
【0099】
アトルバスタチン又はロスバスタチンによる集中又は最大耐容療法を受けている、2型糖尿病及び低HDLコレステロール(男性は40mg/dL以下、女性は45mg/dL以下)を有する、過去7~90日間のACS患者(n=2425)が、二重盲検様式で割り当てられ、アパベタロン100mgを1日2回又は対応するプラセボを経口投与された。ベースライン特性には、性別女性(25%)、インデックスACS事象としての心筋梗塞(74%)、インデックスACSとしての冠動脈血行再建(76%)、二重抗血小板療法による治療(87%)及びレニン・アンジオテンシン系阻害剤による治療(91%)、LDLコレステロール中央値65mg/デシリットル、並びにHbA1c中央値7.3%が含まれる。主要な有効性の尺度は、心血管死、非致死性心筋梗塞、又は脳卒中の最初の発生までの時間である。この研究には2425人の患者が登録され、MACE転帰集団は、2418人の患者からなった。
【0100】
実施例2:事後分析
BETonMACE臨床研究では、合計でN=298人の患者(RVX-208治療群でN=150、及びプラセボ治療群でN=148)に、特定のスタチン療法(アトルバスタチン及びロスバスタチン)を伴うRVX-208、並びに他のガイドラインで定義された治療に加えて、SGLT2阻害剤(エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、又はカナグリフロジン)を投与した。具体的に、合計で150人の患者にRVX-208及びSGLT2阻害剤の両方を投与し、合計で148人にSGLT2阻害剤を投与したがRVX-208は投与せず、合計で1062人にRVX-208を投与したがSGLT2阻害剤は投与せず、合計で1058人にRVX-208又はSGLT2阻害剤のいずれも投与しなかった。
【0101】
無作為化され、治験薬(RVX-208又はプラセボ)を積極的に投与されながら、少なくとも1用量のSGLT2治療を受けた患者を、RVX-208又はプラセボのいずれかとのSGLT2治療の組み合わせを投与された患者としてカウントした。SGLT2阻害剤クラス内で2つ以上の薬物療法を受けている患者を、治験薬(RVX-208又はプラセボ)による治療終了時に服用が継続されたいずれかの薬物療法に基づいて、1回のみカウントした。治験薬による治療終了時に、SGLT2阻害剤クラス内の2つ以上の薬物療法を受けていた患者の場合、いずれかより長く受けたSGLT2阻害剤療法をカウントした。
【0102】
血清クレアチニン値及びCockcroft-Gault式を使用して、中央検査室によって推算糸球体濾過量(eGFR)が計算された。血清クレアチニンを、以下の時点:ベースライン、24週目、52週目、76週目、100週目、及び治療の最終訪問(LVT)に、化学パネルの一部として採取した。Cockcroft-Gault式は、個人の年齢、性別、及び体重の入力を必要とする。治療の最終訪問(LVT)の時点は、SGLT2阻害剤あり及びなしでRVX-208又はプラセボを投与された患者にとって最長の研究曝露期間を表し、この分析の焦点である。SGLT2阻害剤を投与されたeGFRについてのベースライン及びLVT測定値を有する患者(N=298)のLVT(及び治験薬曝露)までの時間中央値は、742日(2.03年)であった。SGLT2阻害剤及びRVX-208で治療された患者(N=150)について、LVTまでの時間中央値は、748日(2.05年)であり、SGLT2阻害剤で治療され、プラセボを投与された患者(N=148)について、LVTまでの時間中央値は、734日(2.01年)であった。治験薬曝露期間の間に統計的差異は観察されず、治療群間でのバランスが観察されたことを示している。LVT時点において、合計でアパベタロン治療群のN=121人の患者及びプラセボ群のN=122人の患者がeGFRを有した。
【0103】
RVX-208に加えてSGLT2阻害剤の組み合わせ、プラセボに加えてSGLT2阻害剤の組み合わせ、及びSGLT2阻害剤なしのRVX-208を投与されている患者集団におけるeGFRの変化を、ベースラインからLVTまで評価した。
【0104】
RVX-208に加えてSGLT2阻害剤を投与されている患者(N=150)では、年齢中央値は58歳であり、16%が女性であり、92%が白人であり、糖尿病の平均期間は9.9年であり、平均BMIは30.3kg/m2であり、ベースラインeGFRは114mL/分であった。
【0105】
プラセボに加えてSGLT2阻害剤を投与されている患者(N=148)では、年齢中央値は59歳であり、18%が女性であり、89%が白人であり、糖尿病の平均期間は10.6年であり、平均BMIは30.2kg/m2であり、ベースラインeGFRは109mL/分であった。
【0106】
これらのパラメータのいずれにおいても統計的差異は観察されず、治療群間でのバランスが観察されたことを示している。
【0107】
eGFRの変化
図1~2は各々、以下のように記載される2つの患者群である試験群と対照群との間の、ベースラインから治療の最終訪問(LVT)までのeGFRの変化中央値を比較する。
【0108】
SGLT2阻害剤及びRVX-208で治療された患者(試験)、及びSGLT2阻害剤のみで治療され、プラセボを投与された患者(対照)(
図1)、並びに
【0109】
RVX-208及びSGLT2阻害剤で治療された患者(試験)、及びRVX-208のみで治療を受けた患者(対照)(
図2)。
【0110】
図1中、患者をSGLT2阻害剤で治療し、RVX-208又はプラセボのいずれかを投与した場合、RVX-208阻害剤及びSGLT2阻害剤の同時投与の効果(ベースラインからのeGFRレベルの変化を使用して定量化される)は、LVTにおいてプラセボ及びSGLT2阻害剤と比較して、eGFRの有意な増加を示し、治療差中央値は、+7.4mL/分/1.73m
2(p=0.05、マン・ホイットニー)であり、平均治療差は、+3.0mL/分/1.73m
2(ANOVA 95% CI、-2.1~8.1)(p=0.24、ANOVA;p=0.05、ランク-ANOVA)であった。
【0111】
具体的には、SGLT2阻害剤と組み合わせたRVX-208は、ベースライン時の114mL/分の中央値から、治療の最終訪問(LVT)時の120mL/分の中央値までのeGFR。この併用療法群におけるベースラインからLVTまでの平均変化は、+2.7mL/分/1.73m
2であり(
図4)、ベースラインからLVTまでの変化中央値は、+2.9mL/分/1.73m
2であった(
図3)。比較すると、SGLT2阻害剤単剤療法群は、ベースライン時に109mL/分のeGFR中央値、及びLVT時に110mL/分のeGFR中央値を有した。この群におけるベースラインからLVTまでの平均変化は、-0.3mL/分/1.73m
2であり(
図4)、ベースラインからLVTまでの変化中央値は、-4.5mL/分/1.73m
2であった(
図3)。
【0112】
図2中、患者をRVX-208及びSGLT2の組み合わせ、又はRVX-208単独で治療した場合、RVX-208阻害剤及びSGLT2阻害剤の同時投与の効果(ベースラインからのeGFRレベルの変化を使用して定量化される)は、LVT時にSGLT2阻害剤なしのRVX-208と比較して、eGFRの有意な増加を示し、治療差中央値は、+6.1mL/分/1.73m
2(p=0.0003、マン・ホイットニー)であり、平均治療差は、6.0mL/分/1.73m
2(ANOVA 95% CI、2.3~9.7)(p=0.002、ANOVA;p=0.002、ランク-ANOVA)であった。
【0113】
具体的には、RVX-208単剤療法群は、ベースライン時に97mL/分のeGFR中央値、及び治療の最終訪問(LVT)時に96mL/分のeGFR中央値を有した。この群におけるベースラインからLVTまでのeGFRの平均変化は、-3.3mL/分/1.73m
2であり(
図4)、ベースラインからLVTまでの変化中央値は、-3.2mL/分/1.73m
2であった(
図3)。RVX-208及びSGLT2阻害剤併用療法の統計パラメータは、上記のとおりである。
【0114】
結論として、
図1~4に示される結果は、RVX-208単剤療法が、T2DM及び最近のACSを有する患者におけるeGFRレベルの中央値又は平均を増加させることができなかったことを示す。SGLT2単剤療法に関して、単剤療法は、ベースラインからLVTまでのeGFR中央値の増加(すなわち、109mL/分から110mL/分)にわずかな効果を有するように見えたが、変化値の平均及び中央値は、いかなる増加も示さなかった(すなわち、それぞれ-0.3mL/分/1.73m
2及び4.5mL/分/1.73m
2)。したがって、RVX-208及びSGLT2阻害剤の併用療法が、同じ患者集団において、ベースラインからLVTまでのHbA1c変化の中央値及び平均の両方、並びにeGFRレベル中央値で統計的有意性を有する増加をもたらすことは予想外であった。
【0115】
eGFR勾配の変化
RVX-208に加えてSGLT2阻害剤の組み合わせ、プラセボに加えてSGLT2阻害剤の組み合わせ、及びSGLT2阻害剤なしのRVX-208を投与されている患者集団における、ベースラインからLVTまでeGFRの変化率(eGFR勾配)を、ベースラインからLVTまで評価した。ベースラインからLVTまでのeGFR測定値の差を、LVTの日付とベースラインの日付の差異+1として決定された治療日数で割ったものを使用して、各患者についてのeGFR勾配を計算した。
【0116】
図5~6は各々、
図1~2についての上記のとおり、同じ2つの患者間のベースラインから治療の最終訪問(LVT)までの、eGFRの変化率中央値(eGFR勾配)を比較する。
【0117】
図5中、患者をSGLT2阻害剤で治療し、RVX-208又はプラセボのいずれかを投与した場合、RVX-208及びSGLT2阻害剤の同時投与の効果(ベースラインからのeGFR変化率を使用して定量化される)は、LVT時にプラセボ及びSGLT2阻害剤と比較して有意な改善を示し、eGFR勾配中央値は、748日間(2.05年)の中央値の治験曝露にわたって、0.010(p=0.04、マン・ホイットニー)の増加があった。比較すると、SGLT2単剤療法では、eGFR勾配を増加させることができず、ベースラインからLVTまでのeGFR勾配中央値は、734日間(2.01年)の中央値の治験曝露にわたって、-0.006であった。
【0118】
図6中、患者をRVX-208及びSGLT2阻害剤の組み合わせ、又はRVX-208単独で治療した場合、RVX-208及びSGLT2阻害剤の同時投与の効果(ベースラインからのeGFR変化率を使用して定量化される)はまた、LVT時にSGLT2阻害剤なしのRVX-208と比較して有意な改善を示し、eGFR勾配中央値は、0.008(p=0.002、マン・ホイットニー)の差異があった。比較すると、RVX208単剤療法では、eGFR勾配を増加させることができず、ベースラインからLVTまでのeGFR勾配中央値は、785日間(2.15年)の中央値の治験曝露にわたって、-0.004であった。
【0119】
結論として、RVX-208単剤療法又はSGLT2単剤療法のいずれも、T2DM及び最近のACSを有する患者におけるeGFR勾配中央値を増加させることができなかった。したがって、RVX-208及びSGLT2阻害剤の併用療法が、同じ患者集団において、eGFR勾配中央値の任意の増加は言うまでもなく、統計的有意性を有する増加をもたらすことは予想外であった。
【国際調査報告】